説明

マイクロリアクタ

【課題】短時間で十分な加熱効果及び冷却効果の得られるマイクロリアクタを提供すること。
【解決手段】コイル状に巻回され内部にマイクロ流路(5)が形成されたマイクロチューブ(32)と、マイクロチューブ(32)を加熱するシースヒータ(31)と、マイクロチューブ(32)及びシースヒータ(31)に冷却用流体を作用させる冷却部(6)とを備えるマイクロリアクタ(1)において、長尺円柱状且つ細径の細長いシースヒータ(31)をコイル状に巻回し且つマイクロチューブ(32)に伝熱可能な位置に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路を用いて、流体の混合や反応を行うマイクロリアクタに関する。より詳しくは、コイル状に巻回され内部にマイクロ流路が形成されたマイクロチューブと、マイクロチューブを加熱するシースヒータと、マイクロチューブ及びシースヒータに冷却用流体を作用させる冷却部とを備えるマイクロリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のマイクロリアクタとして、本出願人は、以前に特許文献1を特許出願した。図7は従来のマイクロリアクタの基本構成を示す斜視図である。図7に示すように、従来のマイクロリアクタ10Aは、ケーシング2、リアクタ本体3A、断熱材4及び冷却部6を備える。なお、後述の本発明に係るマイクロリアクタ1と同一の構成要素には、それらと同一の符号を付してある。
【0003】
ケーシング2は、中空箱状体のケーシング本体21と、このケーシング本体21に対して開閉自在となるように取り付けられた蓋体22とを備える。
【0004】
リアクタ本体3Aは、シースヒータ31Aとマイクロチューブ32Aとを備える。シースヒータ31Aは、長尺の略円柱形状をなし、内部に充填された発熱体312Aを通電により発熱させることで、その表面温度を900°Cまで昇温可能とされる。その太さは、直径30mm程度の径太のものとされる。マイクロチューブ32Aは、内部にマイクロ流路が形成された長尺可撓性のチューブ体をシースヒータ31Aにコイル状に巻回した形態とされる。マイクロチューブ32Aは、被反応液が導入される被反応液入口ポート321Aを一端に備え、マイクロ流路内で反応を済ませた反応済液を導出する反応済液出口ポート322Aを他端に備える。
【0005】
断熱材4は、リアクタ本体3Aを収容するための溝空間42Mを有し、リアクタ本体3Aを取り囲むように設けられる。この溝空間42Mは、リアクタ本体3Aとの間に所定広さの空間が形成されるサイズとされる。
【0006】
冷却部6は、冷却空気入口ポート61、冷却空気出口ポート62及び冷却空気貯留タンク(図示せず)などからなる。冷却空気入口ポート61及び冷却空気出口ポート62は溝空間42Mに連通するように設けられる。冷却空気入口ポート61は、バルブ及び加圧ポンプを介して冷却空気貯留タンクの空気供給側に配管接続される。冷却空気出口ポート62は、冷却空気貯留タンクのリターン側に配管接続される。
【0007】
マイクロリアクタ10Aは、蓋体22を閉めた状態で、マイクロ化学プラントに組み込まれて、次のようにして使用される。即ち、被反応液入口ポート321Aからは被反応液を導入する。一方、リード部材314Aを介して発熱体312Aに電力を供給する。これにより、シースヒータ31Aの表面温度を所望の温度まで昇温させる。シースヒータ31Aの昇温によりマイクロチューブ32Aが加熱される。マイクロチューブ32Aがシースヒータ31Aから得た熱は、マイクロチューブ32A内の被反応液に伝わり、これを昇温させる。このようにして、被反応液入口ポート321Aから導入された被反応液は、マイクロ流路を通過中に、昇温されつつ反応を進行させ、反応済液出口ポート321Aから反応済液として導出される。
【0008】
ところで、マイクロリアクタ10Aにおいて、被反応液の反応が発熱を伴う反応である場合、被反応液の温度が目的温度よりも上昇することがある。このような反応の場合には、冷却空気入口ポート61から冷却空気を加圧導入して溝空間42Mを循環させる。これにより、マイクロチューブ32A及びシースヒータ31Aを冷却することができ、延いてはマイクロチューブ32A内を流れる被反応液を冷却することができる。このようにマイクロリアクタ10Aでは、マイクロチューブ32A及びシースヒータ31Aを強制的に冷却できるため、シースヒータ31Aをオフにしただけでは得られない冷却効果を奏する。つまり、被反応液の反応が発熱を伴う反応である場合でも、過加熱とすることなく、最適の温度を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2008−335619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来のマイクロリアクタ10Aでは、シースヒータ31Aとして、直径30mm程度の径太のものを使用し、これにマイクロチューブ32Aを巻回した構成としていた。このようなシースヒータ31Aは、それ自体の熱容量がかなり大きいため、冷却空気入口ポート61から冷却用エアーを導入し、溝空間42Mを循環させても、短時間では十分な冷却効果が得られず、シースヒータ31A及びマイクロチューブ32Aを冷却するのに長い時間を要した。その結果、発熱を伴う反応プロセスに要する時間が長くかかるといった問題があった。また、加熱する際にも、シースヒータ31Aの熱容量が大きいことから、目的の高温まで上昇させるのに長い時間を要した。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、短時間で十分な加熱効果及び冷却効果の得られるマイクロリアクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、下記の本発明により達成される。なお本欄(「課題を解決するための手段」)において各構成要素に付した括弧書きの符号は、後述する第1実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0013】
請求項1の発明は、コイル状に巻回され内部にマイクロ流路(5)が形成されたマイクロチューブ(32)と、マイクロチューブ(32)を加熱するシースヒータ(31)と、マイクロチューブ(32)及びシースヒータ(31)に冷却用流体を作用させる冷却部(6)とを備えるマイクロリアクタ(1)において、長尺円柱状且つ細径の細長いシースヒータ(31)をコイル状に巻回し且つマイクロチューブ(32)に伝熱可能な位置に設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項1の発明によると、シースヒータ(31)として、長尺円柱状且つ細径の細長いもの、即ちそれ自体の熱容量が小さいものを使用している。これにより、加熱されたシースヒータ(31)を冷却部(6)により短時間で冷却することができる。つまり短時間で十分な冷却効果が得られる。また、加熱する際にも、シースヒータ(31)の熱容量が小さいことから、短時間で目的の高温まで上昇させることが可能である。なお、細長いシースヒータ(31)を使用することにより、単位長さあたりの放熱面積が小さくなるため、単位長さあたり発熱量が少なくなるが、この不都合はコイル状に巻回して長さを十分に確保することで補っている。これにより放熱面積を十分に確保することができ、十分な発熱量を得ることができるようにしている。
【0015】
請求項2の発明は、前記シースヒータ(31)及び前記マイクロチューブ(32)を固定支持するための円筒状の伝熱性材からなる固定支持手段(30)を備え、前記シースヒータ(31)は固定支持手段(30)の外周面または内周面のいずれか一方に外接または内接するように設けられ、前記マイクロチューブ(32)は固定支持手段(30)において前記シースヒータ(31)が設けられない側の周面に内接または外接するように設けられ、前記冷却部(6)は、固定支持手段(30)の中空部と外側とに冷却用流体を流すように構成される。
【0016】
請求項2の発明によると、反応を開始させる段階において、シースヒータ(31)が持つ熱は、まず固定支持手段(30)の肉厚部を介してマイクロチューブ(32)に伝わる。マイクロチューブ(32)に伝わった熱は、マイクロ流路(5)を流れる被反応流体に伝わる。ここで、被反応液の反応が発熱を伴う反応である場合は、必要温度以上に被反応流体を昇温させないために、冷却部(6)により、固定支持手段(30)の中空部と外側とに冷却用流体を流すことで、マイクロチューブ(32)及びシースヒータ(31)を冷却することができる。この冷却は、シースヒータ(31)としてそれ自体の熱容量が小さいものを選択したために、短時間で実現される。また、シースヒータ(31)及びマイクロチューブ(32)は、固定支持手段(30)への内接または外接により支持されるので、巻回部分が外力等によって歪んだり潰れたりすることがなくなり、安定したコイル形状を保持できる。
【0017】
請求項3の発明は、前記固定支持手段(30)の外周面に外接したシースヒータ(31)またはマイクロチューブ(32)のいずれか一方が、溶接または接着剤等の固着手段によって前記固定支持手段(30)の外周面に固着してなる。
【0018】
請求項3の発明によると、前記固定支持手段(30)の外周面に外接したシースヒータ(31)またはマイクロチューブ(32)が当該外周面に確実に固定され、浮き上がったり、位置ズレを生じたりすることがない。
【0019】
請求項4の発明は、前記シースヒータ(31)は直径4.8mm以下の細長い長尺円柱状体とされる。なお「直径」とは、シースヒータ(31)をその長手方向に垂直な平面で切ったときの断面の直径である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、短時間で十分な加熱効果及び冷却効果が得られるマイクロリアクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1実施形態のマイクロリアクタの概略を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のリアクタ本体を示す外観斜視図である。
【図3】シースヒータの内部構造を示す正面一部断面図である。
【図4】第1実施形態のマイクロリアクタの側面一部断面図である。
【図5】第1実施形態のマイクロリアクタにおけるリアクタ本体の要部を示す正面一部断面図である。
【図6】第2実施形態のリアクタ本体の要部を示す正面一部断面図である。
【図7】従来のマイクロリアクタの基本構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明に係る第1実施形態のマイクロリアクタの概略を示す斜視図、図2は第1実施形態のリアクタ本体を示す外観斜視図、図3はシースヒータの内部構造を示す正面一部断面図、図4は第1実施形態のマイクロリアクタの側面一部断面図、図5は第1実施形態のマイクロリアクタにおけるリアクタ本体の要部を示す正面一部断面図である。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態に係るマイクロリアクタ1は、ケーシング2、リアクタ本体3及び断熱材4を備え、リアクタ本体3が、断熱材4により取り囲まれた状態でケーシング2内に収容された構成とされる。
【0024】
ケーシング2は、ケーシング本体21と蓋体22とを備える。ケーシング本体21は、上方が開放され且つ外形が直方体を呈する中空箱状体であり、ステンレス鋼等の金属を材質としている。蓋体22は、ケーシング本体21の上部に蝶番23を介して開閉自在となるように取り付けられ、ケーシング本体21と同様にステンレス鋼等の金属を材質としている。蓋体22はフック部材24を有しており、蓋体22を閉めた状態でこのフック部材24をケーシング本体21の留め部材25に留めることでロック状態とすることができる。
【0025】
リアクタ本体3は、図2に示すように、コア体30とシースヒータ31とマイクロチューブ32とを備える。
【0026】
コア体30は、ステンレス鋼等の金属を材質とした円筒体であり、その肉厚は1mm〜1.5mm程度が好ましく、外径は30mm〜50mm程度が好ましい。これらの諸元は、コア体30の熱伝導性等の諸条件から考慮された値である。コア体30の外周面は、コイル状に巻回されたシースヒータ31が外接する被外接面とされ、また、その内周面は、コイル状に巻回されたマイクロチューブ32が内接する被内接面とされる。コア体30は、シースヒータ31が発した熱をマイクロチューブ32に伝熱する手段として機能する。また、シースヒータ31及びマイクロチューブ32を固定支持する手段として機能する。また、冷却空気M1,M2を流す流路を形成するための流路形成体としても機能する。
【0027】
シースヒータ31は、直径4.8mm以下の細長い長尺円柱状体からなるマイクロヒータを、図2,4,5に示すように、コア体30の外周面にコイル状に巻回する(つまり外接させる)と共に、接着剤または溶接等の固着手段によりコア体30の外周面に固定したものである。マイクロチューブ32の巻回の中心軸は、コア体30の中心軸に一致している。シースヒータ31の巻回は、互いに隣合う外周面同士が互いに一定間隔d(図5参照)をあける形態とされる。これにより、シースヒータ31の発する熱をコア体30に対してほぼ均一に伝熱可能としている。また、マイクロチューブ32の巻回は、その外周面とコア体30の内周面とが接触点P2で接触する形態とされる。
【0028】
シースヒータ31は、図3に示すように、シース311、発熱体312、絶縁材313及びリード部材314を備える。このようなシースヒータ31は、リード部材314を介して発熱体312に電力を供給することで発熱体312を発熱させ、この発熱体312の熱をシース311に伝えることで、その表面温度を900°Cまで昇温可能とされる。
【0029】
上記シース311は、発熱体312の発熱により加熱可能な加熱表面を有する。発熱体312は、グラファイト、ニクロム、タンタル等の導電体粉末または粒体などを使用でき、シース311の内部における中心軸線まわりにほぼ均等となるように収納されている。絶縁材313は、マグネシア、アルミナ等の粉末からなり、発熱体312とシース311の内周面との間に充填されている。リード部材314は、シース311の一端部側において、発熱体312に接続された金属線等からなる。
【0030】
また、シース311の途中には、熱電対式温度センサ315を備え、リード部材317を介してその温度信号をフィードバック信号として、図示しない制御装置に取り込むようになっている。なお、シースヒータ31の表面温度は、この制御装置により、所望する任意の値に設定可能とされる。熱電対式温度センサ315は、感熱部としての熱電対を先端に備え、シース311の外周面上の一箇所または複数箇所に取り付けられる。熱電対316はリード部材317に電気接続されている。この位置で熱電対が検出した温度に基づいて、シース311が所望の設定温度に保たれるように、フィードバック制御されるようになっている。
【0031】
マイクロチューブ32は、内径が0.5mm以上且つ3mm以下のマイクロ流路5を有した長尺可撓性の筒状体をコイル状に巻回してなる。このコイル状体は、コア体30の内周面に内接するように挿設される。マイクロチューブ32の巻回の中心軸は、コア体30の中心軸に一致している。マイクロチューブ32は、全体に亘ってコア体30の内周面と接触部P1(図5参照)で接触するようになっており、コア体30の内周面から離れることなく設けられる。これによりコア体30を介して伝わったシースヒータ31の熱を、接触部P1を介して直接にマイクロチューブ32に伝熱可能としている。また、互いに隣り合うマイクロチューブ32,32の外周面同士が接触部P3を有するように巻回されている。これにより、コア体30を介して伝わったシースヒータ31の熱が、接触部P3を介して、当該マイクロチューブ32に隣接するマイクロチューブ32に伝わるようにし、伝熱効率を良くしている。
【0032】
なお、マイクロチューブ32の材質に金属を用いることにより、接触部P2におけるコア体30からマイクロチューブ32への熱伝導性、及び接触部P3で互いに隣接するマイクロチューブ32,32間での熱伝導性を良くすることができる。これにより、マイクロ流路5を流れる被反応液への伝熱速度を高めることができる。このような金属としては例えば、ステンレス鋼やハステロイ(米国ヘインズ・インターナショナル社の登録商標)等を用いることができる。また、上記のように巻回することで、互いに隣接するマイクロチューブ32,32とコア体30とにより、微小な空間S1が形成される。このような微小な空間S1の中で存在する空気は熱容量が極めて小さいため、容易に加熱される。マイクロリアクタ1では、コア体30を介して伝わるシースヒータ31の熱を、この加熱空気からもマイクロチューブ32に伝えることができるようにしている。
【0033】
このようなマイクロチューブ32は、コア体30に対して密に巻回される。具体的には、コア体30の表面のうち80パーセント以上をマイクロチューブ32で巻回することが好ましい。これにより、接触部P2はコア体30における広範囲に亘って存在することになる。つまり、マイクロチューブ32がコア体30に直接に接触する箇所が、一つのコア体30について多く確保できる。これにより、コア体30を介して伝わるシースヒータ31の熱をマイクロチューブ32に損失少なく伝えるようにできる。
【0034】
また、マイクロチューブ32に形成されるマイクロ流路5は、上述したように、内径が0.5mm以上且つ3mm以下という微小なものであるため、次に示す理由により、伝熱効率が良い。即ち、マイクロチューブ32においてマイクロ流路5の単位容積Vと、その単位容積Vに対する周面の表面積Sとしたとき、Vが非常に小さい分、S/Vの値を大きくすることができ、マイクロ流路5を流れる単位容積あたりの流体に伝わる熱量を大きく確保できるからである。
【0035】
断熱材4は、図1,4に示すように、リアクタ本体3を取り囲むように設けられる。断熱材4は、第1断熱材41と第2断熱材42とからなる。第1断熱材41は、リアクタ本体3を収容するための溝空間42Mを形成するように設けられる。この溝空間42Mは、リアクタ本体3との間に所定広さの空間を形成するように設けられる。この所定広さの空間は、冷却空気が流れる部屋とされる。第2断熱材42は、第1断熱材41に密着してこれを取り囲むように設けられる。第1断熱材41及び第2断熱材42は、例えばファインフレックス(株式会社ニチアス社の登録商標)ハードボードからなる。断熱材4により、リアクタ本体3の保温性を確保し、シースヒータ31から放射される熱の有効利用を図ると共に、ケーシング2が高温になることを防止している。
【0036】
冷却部6は、冷却空気入口ポート61、冷却空気出口ポート62及び冷却空気ファン(図示せず)などからなる。冷却空気入口ポート61及び冷却空気出口ポート62は溝空間42Mに連通するように設けられる。冷却空気入口ポート61は、冷却空気ファンの空気供給側に配管接続される。冷却空気出口ポート62は、外部空間に連通しており、冷却空気ファンから供給され溝空間42Mを流れた冷却空気が系外排気として外部へ排気されるようになっている。
【0037】
次に、本発明に係るマイクロリアクタ1の使用例について説明する。マイクロリアクタ1は、蓋体22をロックした状態でマイクロプラントに組み込まれて使用される。具体的には、マイクロリアクタ1における入口ポート321は、図示しない被反応液供給部に配管接続される。この被反応液供給部は、被反応液を所定の圧力で圧送可能に構成される。ここでの被反応液は、反応に必要とされる温度がT1(常温以上且つ600°C以下)の液体であるものとする。このような被反応液は、異なる複数種類の液体の混合液からなるものとする。また、出口ポート322は、図示しない反応済み液回収タンクに配管接続される。シースヒータ31は、図示しない制御装置にリード部材314,317により電気接続される。この制御装置は、シース311の温度がT2となるように設定可能とされる。この温度T2は、具体的には、マイクロ流路5を流れる被反応液を、T1の温度に昇温できる設定温度であり、少なくともT1よりも高い値である。
【0038】
このような構成・設定の下で、リアクタ本体3における入口ポート321(図1参照)からは被反応液が導入される。導入された被反応液は、マイクロ流路5を流れて出口ポート322へと向かう。一方、シースヒータ31は、シース311がT2の温度に昇温するように加熱される。これによりマイクロチューブ32は、次のようにして昇温する。即ち、T2の温度に昇温したシース311が持つ熱は、図5に示す接触部P1を介してコア体30に伝わる。シース311からコア体30に伝わった熱は、接触部P2を介してマイクロチューブ32に伝わる。また、接触部P2を介してマイクロチューブ32に伝わった熱は、接触部P3を介して、当該マイクロチューブ32に隣接するマイクロチューブ32に伝わる。更に、コア体30の熱は、微小空間S1に存在する空気を介してもマイクロチューブ32に伝わる。このようにしてシースヒータ31の熱がマイクロチューブ32に伝わる。
【0039】
以上のようにしてマイクロチューブ32に伝わった熱は、マイクロ流路5を流れる被反応液に伝わる。被反応液は、マイクロチューブ32におけるマイクロ流路5を通過中に、温度T1に昇温されつつ反応を進行させて、反応済み液が出口ポート322(図1参照)から導出される。このとき断熱材4により、シースヒータ31の熱が外部に逃げることが防止される。これにより、シースヒータ31から放出される熱の有効利用を図ることができる。それと共にケーシング2が高温になることを防止することができる。
【0040】
マイクロリアクタ1において、被反応液の反応が発熱を伴う反応である場合、被反応液の温度が目的温度よりも上昇することがある。このような反応の場合には、冷却空気ファンにより加圧した冷却空気を冷却空気入口ポート61から導入して溝空間42Mを流す。この冷却空気は、コア体30の中空部とコア体30の外側部とをコア体30の長手方向に沿って流れる。図5に示すように、コア体30の中空部を流れる冷却空気M1は、マイクロチューブ32を冷却し、コア体30の外側部を流れる冷却空気M2は、シースヒータ31を冷却する。マイクロリアクタ1では、シースヒータ31として、直径4.8mm以下の細長い長尺円柱状体のもの、即ちそれ自体の熱容量が小さいものを使用している。これにより、加熱されたシースヒータ31を冷却部6により短時間で冷却することができる。つまり、短時間で十分な冷却効果が得られる。また、加熱する際にも、シースヒータ31の熱容量が小さいことから、短時間で目的の高温まで上昇させることが可能である。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図6は第2実施形態のリアクタ本体の要部を示す正面一部断面図である。
【0042】
第2実施形態に係るマイクロリアクタ1Aは、第1実施形態に係るマイクロリアクタ1の変形例であり、基本的には、第1実施形態に係るマイクロリアクタ1におけるリアクタ本体3に代えてリアクタ本体3′を有する。リアクタ本体3′は、マイクロチューブ32′、コア体30及びシースヒータ31′を備える。マイクロチューブ32′は、第1実施形態におけるマイクロチューブ32と同様な巻回形態であるが、コア体30の外周面に外接するように設けられる点で、第1実施形態とは異なる。マイクロチューブ32′は、溶接または接着剤等の固着手段によって、コア体30の外周面に固着される。
【0043】
第2実施形態に係るマイクロリアクタ1Aにおいても、第1実施形態に係るマイクロリアクタ1と同様にシースヒータ31として、直径4.8mm以下の細長い長尺円柱状体のもの、即ちそれ自体の熱容量が小さいものを使用しているため、冷却空気M1,M2を作用させたときに、短時間で十分な冷却効果を得ることができる。また、加熱する際にも、短時間で目的の高温まで上昇させることが可能である。
【0044】
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明を行ったが、上に開示した2つの実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。即ち、マイクロリアクタ1,1Aの全体または一部の構造、形状、サイズ、材質、個数などは、本発明の趣旨に沿って種々に変更することができる。また、上に開示した実施形態では、被反応流体は液体として例示したが、気体とすることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 マイクロリアクタ
1A マイクロリアクタ
5 マイクロ流路
6 冷却部
31 シースヒータ
31′ シースヒータ
32 マイクロチューブ
32′ マイクロチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状に巻回され内部にマイクロ流路が形成されたマイクロチューブと、マイクロチューブを加熱するシースヒータと、マイクロチューブ及びシースヒータに冷却用流体を作用させる冷却部とを備えるマイクロリアクタにおいて、長尺円柱状且つ細径の細長いシースヒータをコイル状に巻回し且つマイクロチューブに伝熱可能な位置に設けたことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項2】
前記シースヒータ及び前記マイクロチューブを固定支持するための円筒状の伝熱性材からなる固定支持手段を備え、
前記シースヒータは固定支持手段の外周面または内周面のいずれか一方に外接または内接するように設けられ、
前記マイクロチューブは固定支持手段において前記シースヒータが設けられない側の周面に内接または外接するように設けられ、
前記冷却部は、固定支持手段の中空部と外側とに冷却用流体を流すように構成された請求項1に記載のマイクロリアクタ。
【請求項3】
前記固定支持手段の外周面に外接したシースヒータまたはマイクロチューブのいずれか一方が、溶接または接着剤等の固着手段によって前記固定支持手段の外周面に固着してなる請求項2に記載のマイクロリアクタ。
【請求項4】
前記シースヒータは直径4.8mm以下の細長い長尺円柱状体とされた請求項1から請求項3のいずれかに記載のマイクロリアクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−227901(P2010−227901A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81223(P2009−81223)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】