説明

マイクロレンズ基板の製造方法、マイクロレンズ基板及びこれを用いた電気光学装置

【課題】透明電極膜との密着性を向上し、配向膜の剥れを防止することができるマイクロレンズ基板の製造方法、マイクロレンズ基板及びこれを用いた液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】ベースガラス基板2に、マイクロレンズ3が形成されたカバーガラス基板4を接着材5にて接合した構造体6を生成する工程と、この工程で生成された前記構造体6の前記カバーガラス基板4の上に表面が凹凸を有する透明膜7を形成する工程と、この工程で生成された前記透明膜7の凹凸面上に透明電極膜13を形成する工程と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズ基板の製造方法、マイクロレンズ基板及びこれを用いた電気光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像をスクリーン上に投影する投射型表示装置が知られている。このような投射型表示装置では、その画像形成に主として液晶パネルが用いられている。この液晶パネルは、例えば、液晶を駆動するTFT基板とこれに対向配置される対向基板とが、液晶層を介して接合された構成となっている。
【0003】
このような構成の液晶パネルの中には、光の利用効率を高め、より明るい画面とするべく、液晶パネル用対向基板の各画素に対応する位置に多数の微小なマイクロレンズを設けたものが知られている。これにより、高い光の利用効率を有する液晶パネルを得ている。マイクロレンズ及びそのの近辺の周辺層を含めたものをマイクロレンズ基板と称する。
【0004】
マイクロレンズ基板、液晶パネル用対向基板、液晶パネル、及び投射型表示装置に関する先行技術には、例えば特許文献1がある。
【0005】
特許文献1において、マイクロレンズ基板は、透明基板上に設けられたマイクロレンズ形成層と、該マイクロレンズ形成層上に形成された中間層と、該中間層上に形成されたバリア層とを有している。中間層は、例えば、バリア層の密着性を向上するために設けられている。この中間層は省略されていてもよい。バリア層は例えばSiO2で構成され、透明基板やマイクロレンズ形成層中の金属などの不純物が液晶中に溶出したり或いは液晶層中の不純物がマイクロレンズ形成層中に移行したりするのを防止するために設けられている。
【特許文献1】特開2003−177212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液晶パネルの製造工程においては、上記の少なくとも透明基板,マイクロレンズ形成層及びバリア層から成るマイクロレンズ基板が完成された後、その後のブラックマトリックス(BMと略記)と呼ばれる遮光膜の形成工程(なおこの遮光膜形成工程についてはTFT基板側で完全に遮光ができれば無くてもよい)を経て、その上に更に透明電極膜を形成した後、液晶層に直接接して液晶の配向性を決めるための膜としてポリイミド等による配向膜を形成する。この配向膜の形成工程では、ラビンローラによるラビングを行った後更にラビングに伴うラビング屑を除去するために洗浄が行われる。このため、バリア層の上に更に透明電極膜を形成した際の透明電極膜の密着性が悪いと、配向膜形成後に行われるラビング処理(ラビング及び洗浄)によって配向膜が剥れ易いという問題があった。
【0007】
前述の特許文献1に示される中間層は、マイクロレンズ形成層に対するバリア層の密着性を向上できるが、その後の工程で形成される透明電極膜や配向膜の密着性については特に配慮されていなかった。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、透明電極膜との密着性を向上し、配向膜の剥れを防止することができるマイクロレンズ基板の製造方法、マイクロレンズ基板及びこれを用いた電気光学装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるマイクロレンズ基板の製造方法は、第1のガラス基板に、マイクロレンズが形成された第2のガラス基板を接着材にて接合した構造体を生成する工程と、この工程で生成された前記構造体の前記第2のガラス基板の上に表面が凹凸を有する透明膜を形成する工程と、この工程で生成された前記透明膜の凹凸面上に透明電極膜を形成する工程と、を備えたものである。
【0010】
本発明のこのような方法によれば、第1のガラス基板,接着材及び第2のガラス基板からなる構造体の前記第2のガラス基板の表面に、ガラス材に含まれる金属不純物が溶出するのを防ぐための止ぐための透明膜を形成する際に、表面が凹凸を有する透明膜を形成し、その透明膜の凹凸面上に透明電極膜を形成するようにしたので、透明電極膜との密着性を向上することができ、例えば液晶表示装置に適用した場合、後段のラビン処理が行われても、それによって配向膜に剥れが生じるのを防ぐことが可能となる。
【0011】
本発明において、前記透明膜の前記凹凸の表面粗さは、ガラス材料より粗く形成されることが好ましい。
【0012】
このような方法によれば、透明電極膜との密着性を向上させることができる。
【0013】
本発明において、前記第2のガラス基板の平均表面粗さ(Ra)はネオセラムガラスで0.45〜0.55nm、石英ガラスでは0.22〜0.23nmとされ、前記透明電極膜の平均表面粗さ(Ra)は2.01〜2.43nm、前記透明膜の平均表面粗さ(Ra)は0.50nmとされることが好ましい。
【0014】
このような方法によれば、透明電極膜との密着性を向上させることができる。
【0015】
本発明によるマイクロレンズ基板は、第1のガラス基板に、マイクロレンズが形成された第2のガラス基板を接着材にて接合して成る構造体の前記第2のガラス基板の上に、表面が凹凸を有する透明膜が形成され、その透明膜の凹凸面上に透明電極膜が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のこのような構成によれば、第1のガラス基板,接着材及び第2のガラス基板からなる構造体の前記第2のガラス基板の表面に、透明膜を形成する際に、表面が凹凸を有する透明膜が形成され、その透明膜の凹凸面上に透明電極膜が形成されるので、透明電極膜との密着性を向上することができ、例えば液晶表示装置に適用した場合、配向膜に剥れが生じにくくすることが可能となる。
【0017】
本発明による電気光学装置は、前記マイクロレンズ基板を用いて形成される対向基板と、該対向基板に対向して配置される電気光学装置用基板と、前記対向基板と前記電気光学装置用基板の間に配置された電気光学物質と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明のこのような構成によれば、透明電極膜との密着性を向上することができるマイクロレンズ基板を実現できるので、高品質で高寿命の電気光学装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施例1のマイクロレンズ基板の構成を示す側断面図である。
【0021】
図1に示すように、マイクロレンズ基板1は、第1のガラス基板であるベースガラス基板2に、画素毎にマイクロレンズ3が形成された第2のガラス基板であるカバーガラス基板4を樹脂製の接着材5にて接合して成る構造体6の裏表両面に、それぞれ透明膜7,8を形成し、かつ透明膜7,8のうちカバーガラス基板4側に設けた透明膜7の表面には粗さを持った凹凸に形成され、その透明膜7の凹凸面上にCr膜等を成膜し且つ画素対応部を開口させた遮光膜9aが形成され、遮光膜9aの開口を埋めるように透明電極膜13を形成した構成となっている。従って、透明膜7の凹凸面上に透明電極膜13が形成された状態となっている。
【0022】
なお、カバーガラス基板4に形成される略半球面状の1つ1つのレンズをマイクロレンズと呼び、これらが複数配列されたものをマイクロレンズアレイ(MLA)と呼ぶ。また、このようなマイクロレンズアレイが形成されたカバーガラス基板4に、ガラス材とは屈折率の異なる接着材5でベースガラス基板2を貼りつけ、更にカバーガラス基板4のガラス厚を適宜調整してなる基板の少なくとも裏面側(図示下側)に上述の透明膜7を形成し、かつ更にその透明膜7上に少なくとも透明電極膜13を形成したものをマイクロレンズ基板と呼ぶことにする。
【0023】
上記マイクロレンズ基板1の裏表両面の透明膜7は、その後に行われる工程においてカバーガラス基板4からそれに含まれる金属不純物がその表面(図示下面)に溶出するのを防止するためのパッシベーション膜(保護膜)として機能する。透明膜8は、マイクロレンズ基板1の用途として、マイクロレンズ基板1を、液晶表示装置に用いるマイクロレンズ付き対向基板20(図8参照)に用いる際に、後に行われるブラックマトリックス(BMと略記)と呼ばれる遮光膜9aの形成工程などにおけるエッチング処理(エッチング及び洗浄処理)にてエッチャントに混入した汚染物質が構造体6の表面側(即ちベースガラス基板2の表面側)に回り込んで汚染するのを防止するために設けられている。構造体6と透明電極膜との密着性を向上する目的を達成するには、透明膜8自体は必ずしも必要ではない。また、遮光膜(BM)9aは後述のTFT基板側で完全に遮光できていれば、無くてもよい。遮光膜(BM)9aが無い場合は、透明膜7の下側表面の全面に透明電極膜13が形成されることになる。
【0024】
ガラス基板2,4としては例えばネオセラムまたはソーダガラスが用いられる。また、透明膜7,8としては例えばシリコン酸化膜(SiO2)が用いられる。
【0025】
このようなマイクロレンズ基板1を製造するには、ベースガラス基板に、マイクロレンズが形成された第2のガラス基板であるカバーガラス基板4を接着材5にて接合した構造体6を生成する工程と、この工程で生成された前記構造体6の前記カバーガラス基板4の上に表面が凹凸を有する透明膜7を形成する工程と、この工程で生成された前記透明膜7の凹凸面上に透明電極膜13を形成する工程とが、少なくとも必要となる。
【0026】
遮光膜9aについては、マイクロレンズ基板1を、液晶表示装置に用いるマイクロレンズ付き対向基板に用いる際に、マイクロレンズ基板1の一面(図示下面)の透明膜7上に遮光膜9aが、マイクロレンズアレイを構成する画素単位のマイクロレンズ3の周囲に遮光可能に成膜され、更にそれに重ねてインジウムティンオキサイド(ITOと呼ばれる)による透明電極膜13を成膜し、更にその上に液晶層に接して液晶の配向を決めるための配向膜を形成することによって、対向基板20(図8参照)として構成される。遮光膜9aとしては、クロム(Cr)膜が用いられる。
【0027】
ベースガラス基板2,接着材5及びカバーガラス基板4から成る構造体6の裏表両面に透明膜7,8を形成する方法には、スパッタリング等を行う同一の装置で構造体6の裏表両面に連続的に成膜する連続成膜の方法でも、或いは構造体6の裏表両面に一面ずつ成膜する単独成膜の方法であってもよい。連続成膜方法の方が、洗浄が不要となり生産性が上がるメリットがある。
【0028】
次に、図2及び図3を参照して、上記のマイクロレンズ基板1の製造における製造工程(1)〜(11)を順を追って説明する。この場合、マイクロレンズ基板1は、液晶表示装置を製造する際に行われる液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板とほぼ同様の構成となる。
【0029】
(1) 画素パターンニング工程
厚さが約1.0mmのカバーガラス基板4の一面に、多数の画素に対応するようにレジスト11をマトリックス状に多数形成する。
【0030】
(2) 高温ポストベーク工程
工程(1)にて形成したレジスト11を備えたカバーガラス基板4を高温にて焼成する。カバーガラス基板4の一面にマトリックス状に形成されたレジスト11が加熱され、多数のレジスト11の角部分を溶かして略半球面状に形成する。
【0031】
(3) ドライエッチング工程
工程(2)にて形成した略半球面形状を有した多数のレジスト11を備えたカバーガラス基板4をドライエッチングする。このドライエッチングにより、レジスト11及びカバーガラス基板4が同時に同程度のエッチング速度にてエッチングされ、その結果、ガラス材からなる多数のマイクロレンズ3がカバーガラス基板4の面上に形成される。マイクロレンズ3の形状は略半球面状となる。このとき、エッチングにより、ガラス厚は約500μm程度に薄くなる。
【0032】
(4) カバーガラス接着工程
工程(3)にて形成されたマイクロレンズ3を備えたカバーガラス基板4を、ベースガラス基板2に対して樹脂製の接着材5を用いて接着する。ガラス基板4,2がネオセラムの場合、例えば、ガラス屈折率は1.54、接着材屈折率は1.40とされる。すなわち、ガラス屈折率>接着材屈折率 とされ、このような屈折率の差を設けることと、前述の略半球面状のレンズ形状とで、光の集光率を高めるように設計される。
【0033】
(5) 研削・研磨(カバーガラス)工程
工程(4)にて形成された構造体におけるカバーガラス基板4のガラス厚を研磨により研削し、焦点距離を調整する。これにより、ガラス厚を約20〜30μmまで研磨する。
【0034】
研磨プロセスは、粗ずり、研削(中仕上げ)、研磨(仕上げ)の順に行う。
【0035】
(6) 透明膜形成工程
工程(5)にて形成された構造体6の裏表面にそれぞれSiO2の透明膜7,8を成膜する。透明膜7,8は、例えば、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等の気相成膜法などにより形成することができる。
【0036】
次に述べる(7)以降の工程は、液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板としての製造工程である。
【0037】
(7) Cr膜成膜工程
工程(6)にて透明膜7,8が形成された構造体6の裏面側(図示下側)の透明膜7の面上に、遮光膜(BM)となるCr膜9を成膜する。遮光膜(BM)となるCr膜9は、対向基板側から入射した光を、該対向基板に液晶層を介して対向配置されるTFT基板上のトランジスタ(TFT)に光を当てないための遮光機能を果たすものであり、後段の工程(9),(10)によるエッチング工程及びレジスト剥離工程を経てTFT部分のみを遮光すべく格子状に形成した遮光膜となる。
【0038】
Cr膜9は、例えば、気相成膜法(例えば蒸着、スパッタリング等)により形成することができる。Cr膜9の成膜後の膜厚は90〜200nmである。
【0039】
(8) レジストパターニング工程
工程(7)にて形成されたCr膜9上にマイクロレンズ3の周辺領域(即ち遮光予定領域)に対応した領域に、予めレジストパターン12を格子状に形成する。これによって次工程(9)のウエットエッチング処理に備える。
【0040】
(9) ウエットエッチング工程
工程(8)にてレジストパターン12が形成されたマイクロレンズ基板に対してエッチング溶液によるウエットエッチングを行う。このウエットエッチング処理によってマイクロレンズアレイの各マイクロレンズ3の周辺領域(即ち遮光予定領域)を除く各マイクロレンズ3の対応領域のCr膜9を除去する。これによって、マイクロレンズアレイの各マイクロレンズ3に対応してCr膜9に開口が形成される。この開口が形成されたCr膜を遮光膜9aとする。
【0041】
エッチング溶液としては、硝酸系、又は過塩素酸系の強酸を用いる。このウエットエッチング工程では、マイクロレンズ基板を強酸に浸漬するため、ネオセラムガラス中の金属イオン(Li, Al3+)10が表面へ溶出する可能性がある。しかし、工程(6)で形成した透明膜7,8によってガラス基板4,2は裏表両面が覆われた状態とされているので、ネオセラムガラス中の金属イオン(Li, Al3+)が表面へ溶出するのを防止することができる。
【0042】
ウエットエッチング処理後は、通常、純水などによる洗浄処理が行われる。
【0043】
(10) レジスト剥離工程
工程(9)によるウエットエッチング工程後、レジストパターン12を剥離することによって、裏面側(図示下面側)に遮光膜(BM)9aが付加された基板を得ることができる。
【0044】
(11) ITO成膜工程
工程(10)にて形成された基板の遮光膜(BM)9aの上に、透明電極膜13としてのITO膜を形成する。これによってマイクロレンズ基板1が完成する。ITO膜は、例えば、蒸着、スパッタリング等の気相成膜法などにより設けることができる。なお、ITO成膜工程の後は、配向膜の形成を行うことによって、液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板20が製造される。
【0045】
以上の工程で、(8)〜(10)の遮光膜(BM)の形成工程は、液晶表示装置を構成する上で必ず必要なものではなく、無くてもよい。遮光膜(BM)を設けない場合は、工程(6)の後に、工程(6)によって形成される基板の裏面側(図示下側)の透明膜7の面上に透明電極膜13としてのITO膜を形成する工程がくることになる。
【0046】
透明膜7の表面に凹凸を付ける方法としては、上記の工程(6)で表面がフラットな透明膜を形成した後、そのフラット面を機械的に研磨することにより凹凸を形成する方法と、透明膜をスパッタリングなどの成膜プロセスで形成する際に、スパッタリングなどの成膜条件を変えることによって凹凸を形成する方法と、がある。どちらの方法であってもよい。
【0047】
透明膜7の前記凹凸の表面粗さは、ガラス基板のガラス材料より粗い膜に形成すると、透明電極膜であるITO膜との密着性を向上させることができる。
【0048】
図4は、ガラス表面,ITO表面,透明膜のそれぞれの好ましい表面粗さを示したものである。表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)にて測定されている。Raは、平均表面粗さを表している。
【0049】
前記カバーガラス基板4の平均表面粗さ(Ra)はネオセラムガラスで0.45〜0.55nm、石英ガラスでは0.22〜0.23nmとされ、前記透明電極膜13の平均表面粗さ(Ra)は2.01〜2.43nm、前記透明膜7の平均表面粗さ(Ra)は0.50nmとされる。
【0050】
本発明の実施例1によれば、表面粗さ(凹凸)が大きい透明膜を形成することで、上層の透明電極膜(ITO膜)との密着性が向上する。これにより、配向膜の剥れを防止することができる。また、透明電極膜(ITO膜)の膜硬度も向上することから、配向膜の均一性を向上させることができる。
【実施例2】
【0051】
図5は本発明の実施例2のマイクロレンズ基板の構成を示す側断面図である。
【0052】
図5に示すように、マイクロレンズ基板1Aは、第1のガラス基板であるベースガラス基板2に、画素毎にマイクロレンズ3が形成された第2のガラス基板であるカバーガラス基板4を樹脂製の接着材5にて接合して成る構造体6の表裏面に、それぞれ透明膜8,7が形成されるが、本実施例2では、図1の実施例1の場合とは異なり、透明膜7については、構造体6の表面に透明膜8を形成した後、構造体6の裏面(図示下面)に開口(マイクロレンズ3の周辺領域を除いた画素部分に設けた開口)を持った遮光膜9aを形成し、その後に、遮光膜9aの開口を埋める形で表面に凹凸がある(即ち表面粗さのある)透明膜7が成膜され、更にその透明膜7の凹凸面上に透明電極膜13が形成された構成となっている。
【0053】
次に、図2及び図6を参照して、上記のマイクロレンズ基板1Aの製造における製造工程(1)〜(11)を順を追って説明する。この場合、マイクロレンズ基板1Aは、液晶表示装置を製造する際に行われる液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板とほぼ同様の構成となる。
【0054】
(1)画素パターンニング工程、(2)高温ポストベーク工程、(3)ドライエッチング工程、(4)カバーガラス接着工程、(5)研削・研磨(カバーガラス)工程は、実施例1の図2と同様であるので、説明を省略する。ここでは、実施例1の図3とは工程内容に差異のある工程(6)〜(11)について説明する。
【0055】
(6) 透明膜形成工程
工程(5)にて形成された構造体6の表面にSiO2の透明膜8を成膜する。透明膜8は、例えば、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等の気相成膜法などにより形成することができる。
【0056】
次に述べる(7)以降の工程は、液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板としての製造工程である。
【0057】
(7) Cr膜成膜工程
工程(6)にて透明膜8が形成された構造体6の裏面側(図示下側)即ちカバーガラス基板4の面上に、遮光膜(BM)となるCr膜9を成膜する。遮光膜(BM)となるCr膜9は、対向基板側から入射した光を、該対向基板に液晶層を介して対向配置されるTFT基板上のトランジスタ(TFT)に光を当てないための遮光機能を果たすものであり、後段の工程(9),(10)によるエッチング工程及びレジスト剥離工程を経てTFT部分のみを遮光すべく格子状に形成した遮光膜となる。
【0058】
Cr膜9は、例えば、気相成膜法(例えば蒸着、スパッタリング等)により形成することができる。Cr膜9の成膜後の膜厚は90〜200nmである。
【0059】
(8) レジストパターニング工程
工程(7)にて形成されたCr膜9上にマイクロレンズ3の周辺領域(即ち遮光予定領域)に対応した領域に、予めレジストパターン12を格子状に形成する。これによって次工程(9)のウエットエッチング処理に備える。
【0060】
(9) ウエットエッチング工程
工程(8)にてレジストパターン12が形成されたマイクロレンズ基板に対してエッチング溶液によるウエットエッチングを行う。このウエットエッチング処理によってマイクロレンズアレイの各マイクロレンズ3の周辺領域(即ち遮光予定領域)を除く各マイクロレンズ3の対応領域のCr膜9を除去する。これによって、Cr膜9にはマイクロレンズアレイの各マイクロレンズ3に対応して開口が形成される。この開口が形成されたCr膜を遮光膜9aとする。
【0061】
エッチング溶液としては、硝酸系、又は過塩素酸系の強酸を用いる。このウエットエッチング工程では、マイクロレンズ基板を強酸に浸漬するため、ネオセラムガラス中の金属イオン(Li, Al3+)10が表面へ溶出し、エッチング溶液を介してベースガラス基板2の表面側を汚染する可能性がある。しかし、工程(6)で形成した透明膜8によってガラス基板2はその表面が覆われた状態とされているので、カバーガラス基板2のネオセラムガラス中の金属イオン(Li, Al3+)がベースガラス基板2の表面を汚染するのを防止することができる。
【0062】
ウエットエッチング処理後は、通常、純水などによる洗浄処理が行われ、次工程へ移行する。
【0063】
(10) レジスト剥離工程
工程(9)によるウエットエッチング工程後、レジストパターン12を剥離することによって、裏面側(図示下面側)に開口を持った遮光膜(BM)9aが付加された基板を得ることができる。
【0064】
(11) 透明膜形成
工程(10)にて形成された遮光膜(BM)9aの開口を埋める形で表面に凹凸がある透明膜7が形成される。この透明膜7は、後に液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板として使用されたときに、対向基板に隣接して存在する液晶層に対して、カバーガラス基板4に含まれる金属が不純物として液晶層中に溶出するのを防止する機能を有する。
【0065】
(12) ITO成膜工程
工程(11)にて形成された透明膜7の上に、透明電極膜13としてのITO膜を形成する。これによってマイクロレンズ基板1Aが完成する。ITO膜は、例えば、蒸着、スパッタリング等の気相成膜法などにより設けることができる。なお、ITO成膜工程の後は、配向膜の形成を行うことによって、液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板20が製造される。
【0066】
透明膜7の表面に凹凸を付ける方法としては、上記の工程(11)で表面がフラットな透明膜を形成した後、そのフラット面を機械的に研磨することにより凹凸を形成する方法と、透明膜をスパッタリングなどの成膜プロセスで形成する際に、スパッタリングなどの成膜条件を変えることによって凹凸を形成する方法と、がある。どちらの方法であってもよい。さらに、遮光膜の表面に凹凸を形成し、その上に透明膜7を形成することで透明膜7に遮光膜の凹凸を反映した凹凸を形成することもできる。
【0067】
前述したように、透明膜7の前記凹凸の表面粗さは、ガラス基板のガラス材料より粗い膜に形成すると、透明電極膜であるITO膜との密着性を向上させることができる。
【0068】
ガラス表面,ITO表面,透明膜のそれぞれの好ましい表面粗さの一例は、図4に示したものと同様である。すなわち、好ましくは、前記カバーガラス基板4の平均表面粗さ(Ra)はネオセラムガラスで0.45〜0.55nm、石英ガラスでは0.22〜0.23nmとされ、前記透明電極膜13の平均表面粗さ(Ra)は2.01〜2.43nm、前記透明膜7の平均表面粗さ(Ra)は0.50nmとする。
【0069】
次に、上記の液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板20を用いて構成される液晶表示装置の全体構成について、図7及び図8を参照して説明する。ここでは、液晶表示装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置を例にとる。
【0070】
図7は、TFT基板をその上に形成された各構成要素と共に、上述のマイクロレンズ付き対向基板から見た平面図であり、図8は、図7のH−H’断面図である。
【0071】
図7及び図8において、本実施形態に係る液晶表示装置では、少なくともTFT,が素電極,透明電極膜及び配向膜を形成したTFT基板30と、マイクロレンズ基板1又は1A(図1又は図5参照)に少なくとも配向膜(図示せず)を形成した対向基板20とが対向配置されている。TFT基板30と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFT基板30と対向基板20とは、画像表示領域30aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0072】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFT基板30上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFT基板30と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。即ち、本実施形態の液晶表示装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。但し、当該液晶表示装置が液晶ディスプレイや液晶テレビのように大型で等倍表示を行う液晶表示装置であれば、このようなギャップ材は、液晶層50中に含まれてもよい。
【0073】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域30aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜の一部又は全部は、TFT基板30側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0074】
画像表示領域の周辺に広がる領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する周辺領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFT基板30の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更にTFT基板30の残る一辺には、画像表示領域30aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、図7に示すように、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFT基板30にはこれらのコーナーに対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFT基板30と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0075】
図8において、TFT基板30上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極31上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20には、前述したカバーガラス基板4、ベースガラス基板2等の他、対向電極としての透明電極膜13が形成され、更に最上層部分(図8で、対向基板20の下側表面)に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0076】
尚、図7及び図8に示したTFT基板30上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該液晶表示装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0077】
次に以上の如く構成された液晶表示装置における回路構成及び動作について図9を参照して説明する。図9は、液晶表示装置の画像表示領域を構成するマトリックス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路を示すブロック図である。
【0078】
図9において、本実施形態における液晶表示装置の画像表示領域を構成するマトリックス状に形成された複数の画素には夫々、画素電極31と、当該画素電極31をスイッチング制御するためのTFT32とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線42が当該TFT32のソースに電気的に接続されている。そして、画像信号S1、S2、…、Snが、各データ線42に供給されるように構成されている。このようにデータ線42に書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線42同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。
【0079】
また、画素スイッチング用のTFT32のゲートに走査線41が電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線41にパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極31は、TFT32のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT32を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線42から供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極31を介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電位レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶表示装置からは画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極31と対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。走査線41と並行して、蓄積容量70の固定電位側容量電極を含むと共に定電位に固定された容量線300が設けられている。
【0080】
本発明の実施例2においても、表面粗さ(凹凸)が大きい透明膜を形成することで、上層の透明電極膜(ITO膜)との密着性が向上する。これにより、配向膜の剥れを防止することができる。また、透明電極膜(ITO膜)の膜硬度も向上することから、配向膜の均一性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、マイクロレンズ基板、液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板、液晶表示装置、及びこれを用いた投射型の液晶表示装置にも応用できるものである。さらに、本発明は透過型、反射型、および半透過型の電気光学装置に利用することができる。また、本発明にかかる電気光学装置は、パッシブマトリクス型の電気光学装置やアクティブマトリクス型の電気光学装置(例えば、トランジスタやTFD(薄膜ダイオード)をスイッチング素子として備えた電気光学パネル)に利用することができる。さらに、本発明にかかる電気光学装置は、液晶表示装置に限らず、有機エレクトロルミネッセンス装置、無機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動表示装置、電子放出表示装置(Field Emission DisplayおよびSurface-Conduction Electron-Emitter Display等)、LED(ライトエミッティングダイオード)表示装置等のように、複数の画素毎に表示状態を制御可能な各種の電気光学装置に利用することができる。電気光学装置の例として有機エレクトロルミネッセンス装置の場合は、電気光学物質としてエレクトロルミネッセンス層が配置される。
【0082】
なお、本発明の電気光学装置を携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯型パーソナルコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、デジタルスチルカメラ、車載用モニタ、デジタルビデオカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話機、およびPOS端末機などの電子機器に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施例1のマイクロレンズ基板の構成を示す側断面図。
【図2】図1に示すマイクロレンズ基板の製造、及び液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板の製造における製造工程を説明する断面図。
【図3】図1に示すマイクロレンズ基板の製造、及び液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板の製造における製造工程を説明する断面図。
【図4】ガラス表面,ITO表面,透明膜のそれぞれの好ましい表面粗さを示す図表。
【図5】本発明の実施例2のマイクロレンズ基板の構成を示す側断面図。
【図6】図5に示すマイクロレンズ基板の製造、及び液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板の製造における製造工程を説明する断面図。
【図7】液晶表示装置用のマイクロレンズ付き対向基板を用いて構成される液晶表示装置の全体構成を示す平面図。
【図8】図7のH−H’断面図。
【図9】液晶表示装置の画像表示領域を構成するマトリックス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路を示すブロック図。
【符号の説明】
【0084】
1…マイクロレンズ基板(第1のガラス基板)、2…ベースガラス基板、3…マイクロレンズ、4…カバーガラス基板(第2のガラス基板)、5…接着材、6…構造体、7,8…透明膜、9a…遮光膜、13…透明電極膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス基板に、マイクロレンズが形成された第2のガラス基板を接着材にて接合した構造体を生成する工程と、
この工程で生成された前記構造体の前記第2のガラス基板の上に表面が凹凸を有する透明膜を形成する工程と、
この工程で生成された前記透明膜の凹凸面上に透明電極膜を形成する工程と、
を備えたことを特徴とするマイクロレンズ基板の製造方法。
【請求項2】
前記透明膜の前記凹凸の表面粗さは、ガラス材料より粗く形成されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズ基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2のガラス基板の平均表面粗さ(Ra)はネオセラムガラスで0.45〜0.55nm、石英ガラスでは0.22〜0.23nmとされ、前記透明電極膜の平均表面粗さ(Ra)は2.01〜2.43nm、前記透明膜の平均表面粗さ(Ra)は0.50nmとされることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズ基板の製造方法。
【請求項4】
前記第2のガラス基板に開口を備えた遮光膜を形成する工程を備え、
前記透明膜を前記開口を埋めるように、前記遮光膜上に形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロレンズ基板の製造方法。
【請求項5】
第1のガラス基板に、マイクロレンズが形成された第2のガラス基板を接着材にて接合して成る構造体の前記第2のガラス基板の上に、表面が凹凸を有する透明膜が形成され、その透明膜の凹凸面上に透明電極膜が形成されていることを特徴とするマイクロレンズ基板。
【請求項6】
請求項5に記載のマイクロレンズ基板を用いて形成される対向基板と、
該対向基板に対向して配置される電気光学装置用基板と、
前記対向基板と前記電気光学装置用基板の間に配置された電気光学物質と、
を備えたことを特徴とする電気光学装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−330332(P2006−330332A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153557(P2005−153557)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】