説明

マイクロレンズ基板製造用成形型、マイクロレンズ基板の製造方法、マイクロレンズ基板、透過型スクリーンおよびリア型プロジェクタ

【課題】 マイクロレンズ基板を生産性良く製造すること、マイクロレンズ基板を生産性良く製造するのに好適に用いることができる凸部付き部材製造用成形型を提供すること、マイクロレンズの欠損(カケ)等の欠陥の発生が効果的に防止されたマイクロレンズ基板を提供すること、また、当該マイクロレンズ基板を備えた透過型スクリーン、リア型プロジェクタを提供すること。
【解決手段】 本発明の凸部付き部材製造用成形型6は、凸曲面を備えた凸レンズとしてのマイクロレンズを多数個有するマイクロレンズ基板の製造に用いる成形型であって、ロール形状をなすものであり、その周面に、マスクを用いたエッチングにより形成され、かつ、前記マイクロレンズに対応する形状の凹部61を有することを特徴とする。前記マスクは、主としてCrで構成された層と、主として酸化Crで構成された層とを有する積層体である。また、凹部61は、略楕円形状を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸部付き部材製造用成形型、凸部付き部材の製造方法、凸部付き部材、透過型スクリーンおよびリア型プロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リア型プロジェクタは、ホームシアター用モニター、大画面テレビ等に好適なディスプレイとして、需要が高まりつつある。
リア型プロジェクタに用いられる透過型スクリーンには、レンチキュラレンズが一般的に用いられている。このようなレンチキュラレンズを備えた従来のリア型プロジェクタでは、左右の視野角が大きいが、上下の視野角が小さい(視野角に偏りがある)という問題があった。
【0003】
このような問題を解決する目的で、光学的に凹または凸の回転対称な形状のマイクロレンズが形成されたマイクロレンズシートを用いる試みがあった(例えば、特許文献1参照)。
そして、上記のようなマイクロレンズシート(マイクロレンズ基板)は、従来、複数のマイクロレンズ形成用凹部を有する凹部付き基板に、未硬化の樹脂を供給し、平滑な透明基板を接合し、押圧・密着させ、その後、樹脂を硬化させるという、いわゆる2P法を用いて製造されていた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、上記のような方法では、硬化した樹脂を凹部付き基板から離型させるのが困難であるという問題がある。また、このような問題は、製造すべきマイクロレンズ基板が大面積であるとより一層顕著なものとなり、大型のマイクロレンズ基板を製造する際の歩留りが著しく低下する。
また、製造すべきマイクロレンズ基板が大型のもの(例えば、対角線長が140cm以上の基板)である場合、上記のような問題がより一層顕著になるとともに、マイクロレンズ基板の製造に用いる凹部付き基板の大きさも大きくなり、マイクロレンズ基板の製造設備がさらに大型化するという問題があった。また、ホームシアター用モニター、ディスプレイ等の近年の急速な大型化に伴い、それに対応するように凹部付き基板の大型化も求められており、各サイズに対応する多数種の凹部付き基板を製造する必要があった。その結果、マイクロレンズ基板の低価格化を阻害するという問題を引き起こしていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−131506号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−279949号公報(段落番号0167〜0173)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)を生産性良く製造すること、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)を生産性良く製造するのに好適に用いることができる凸部付き部材製造用成形型を提供すること、マイクロレンズ(凸部)の欠損(カケ)等の欠陥の発生が効果的に防止されたマイクロレンズ基板(凸部付き部材)を提供すること、また、当該マイクロレンズ基板を備えた透過型スクリーン、リア型プロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の凸部付き部材製造用成形型は、型押しすることで、凸曲面を備えた凸部を多数個有する凸部付き部材を製造する成形型であって、
成形型はロール形状をなすものであり、
成形型の型押しする周表面に、マスクを用いたエッチングにより形成され、かつ、前記凸部に対応する形状の凹部を有することを特徴とする。
これにより、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)を生産性良く製造するのに好適に用いることができる凸部付き部材製造用成形型を提供することができる。
【0008】
本発明の凸部付き部材製造用成形型では、前記マスクは、主としてCrで構成された層と、主として酸化Crで構成された層とを有する積層体であることが好ましい。
これにより、凸部付き部材製造用成形型の製造時において、マスクに対して、凹部形成用の開口部を所望の形状のものとして容易かつ確実に形成することができるとともに、エッチング時における基材(ロール状基材)とマスクとの密着性を特に優れたものとすることができる。したがって、凸部付き部材製造用成形型が有する凹部を容易かつ確実に所望の形状に形成することができ、結果として、凸部付き部材の凸部の形状を容易かつ確実に所望の形状に形成することができる。
【0009】
本発明の凸部付き部材製造用成形型では、前記凹部は、略楕円形状を有するものであることが好ましい。
これにより、凸部付き部材製造用成形型を用いて製造されるマイクロレンズ基板(凸部付き部材)を、モアレ等の不都合等が特に発生し難く、かつ、視野角特性に優れたものとすることができる。
【0010】
本発明の凸部付き部材製造用成形型では、前記凹部の長軸方向の長さが、10〜500μmであることが好ましい。
これにより、凸部付き部材製造用成形型を用いて製造されるマイクロレンズ基板(凸部付き部材)について、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)の生産性を優れたものとすることができる。
【0011】
本発明の凸部付き部材製造用成形型では、前記凹部の短軸方向の長さが、10〜400μmであることが好ましい。
これにより、凸部付き部材製造用成形型を用いて製造されるマイクロレンズ基板(凸部付き部材)について、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)の生産性を優れたものとすることができる。
【0012】
本発明の凸部付き部材製造用成形型では、前記凹部の深さが、5〜250μmであることが好ましい。
これにより、凸部付き部材製造用成形型を用いて製造されるマイクロレンズ基板(凸部付き部材)について、視野角特性を特に優れたものとすることができるとともに、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)の生産時における、マイクロレンズ(凸部)の形状の欠陥の発生をより効果的に防止することができる。
【0013】
本発明の凸部付き部材製造用成形型では、前記エッチングは、前記マスクが付されたロール状の基材を、その軸を中心に回転させつつ行うものであることが好ましい。
これにより、各凹部について、その形状のばらつきを特に小さくすることができ、製造されるマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の特性を特に優れたものとすることができる。
【0014】
本発明の凸部付き部材製造用成形型では、前記凹部は、マイクロレンズ形成用凹部であることが好ましい。
これにより、例えば、凸部付き部材製造用成形型を用いて製造される凸部付き部材を透過型スクリーン、リア型プロジェクタの構成部品(マイクロレンズ基板)として好適に用いることができる。
【0015】
本発明の凸部付き部材の製造方法は、本発明の凸部付き部材製造用成形型を用いて凸部付き部材を製造することを特徴とする。
これにより、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)を生産性良く製造することができる。特に、マイクロレンズ(凸部)の欠損(カケ)等の欠陥の発生を効果的に防止しつつ、生産性良くマイクロレンズ基板(凸部付き部材)を製造することができる。
【0016】
本発明の凸部付き部材の製造方法では、主として樹脂材料で構成された母材に対して、加熱した状態の前記凸部付き部材製造用成形型を、相対的に回転させつつ押圧し、前記母材に前記成形型の周面の形状を転写することが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)を生産性良く製造することができる。特に、マイクロレンズ(凸部)の欠損(カケ)等の欠陥の発生を効果的に防止しつつ、生産性良くマイクロレンズ基板(凸部付き部材)を製造することができる。
【0017】
本発明の凸部付き部材の製造方法では、板状またはシート状の基材の表面付近に、流動性を有する樹脂材料を付与しつつ、相対的に回転する前記成形型で、前記樹脂材料を前記母材に対して押圧し、前記成形型の周面の形状を転写することが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)を生産性良く製造することができる。特に、マイクロレンズ(凸部)の欠損(カケ)等の欠陥の発生を効果的に防止しつつ、生産性良くマイクロレンズ基板(凸部付き部材)を製造することができる。
【0018】
本発明の凸部付き部材の製造方法では、押圧時における前記型の温度は、前記樹脂材料のガラス転移点以上であることが好ましい。
これにより、成形型の周面形状をより確実に転写することができる。
本発明の凸部付き部材は、本発明の凸部付き部材製造用成形型を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、マイクロレンズ(凸部)の欠損(カケ)等の欠陥の発生が効果的に防止されたマイクロレンズ基板(凸部付き部材)を提供することができる。
【0019】
本発明の凸部付き部材は、本発明の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、マイクロレンズ(凸部)の欠損(カケ)等の欠陥の発生が効果的に防止されたマイクロレンズ基板(凸部付き部材)を提供することができる。
本発明の透過型スクリーンは、本発明の凸部付き部材を備えたことを特徴とする。
これにより、優れた画像を安定的に表示することができる透過型スクリーンを提供することができる。
本発明のリア型プロジェクタは、本発明の透過型スクリーンを備えたことを特徴とする。
これにより、優れた画像を安定的に表示することができるリア型プロジェクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、本発明において、「基板」とは、実質的に可撓性を有さない、比較的肉厚の大きいものから、シート状のものや、フィルム状のもの等の含む概念のことを指す。
また、本発明の凸部付き部材等の用途は、特に限定されないが、本実施形態では、主に、凸部付き部材を、透過型スクリーン、リア型プロジェクタを構成するマイクロレンズ基板(凸レンズ基板)として用い、凸部付き部材製造用成形型を、上記マイクロレンズ基板の製造用の成形型として用いるものとして説明する。
まず、凸部付き部材製造用成形型、凸部付き部材製造用成形型を用いた凸部付き部材の製造方法の説明に先立ち、本発明の凸部付き部材(マイクロレンズ基板)および透過型スクリーンの構成について説明する。
【0021】
図1は、本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図、図2は、図1に示すマイクロレンズ基板の平面図、図3は、図1に示すマイクロレンズ基板を備えた、本発明の透過型スクリーンの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。なお、以下の説明では、図1、図3中の左側を「(光の)入射側」、右側を「(光の)出射側」と言う。また、本発明においては、特に断りのない限り、「(光の)入射側」、「(光の)出射側」とは、それぞれ、画像光(映像光)を得るための光の「入射側」、「出射側」のことを指し、外光等の「入射側」、「出射側」のことを指すものではない。
【0022】
マイクロレンズ基板(凸部付き部材)1は、後述する透過型スクリーン10を構成する部材であり、図1に示すように、所定のパターンで配列された複数個のマイクロレンズ(凸部)21を備えた基板本体2と、遮光性を有する材料で構成されたブラックマトリックス(遮光層)3とを備えている。また、マイクロレンズ基板1の光の入射側(すなわち、マイクロレンズ21の光の入射側)には、着色部(外光吸収部)22が設けられている。
【0023】
基板本体2は、通常、透明性を有する材料で構成される。
基板本体2の構成材料は、特に限定されないが、主として樹脂材料で構成され、所定の屈折率を有する透明な材料で構成されている。
基板本体2の具体的な構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
【0024】
基板本体2を構成する樹脂材料は、一般に、各種気体(マイクロレンズ基板1が用いられる雰囲気)より大きな絶対屈折率を有するものであるが、絶対屈折率の具体的な値は、1.2〜1.9であるのが好ましく、1.35〜1.75であるのがより好ましく、1.45〜1.6であるのがさらに好ましい。樹脂材料の絶対屈折率が前記範囲内の値であると、光(入射光)の利用効率を特に優れたものとしつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0025】
マイクロレンズ基板1は、光の入射する面側に凸面を有する凸レンズとしてのマイクロレンズ21を複数個備えている。
本実施形態において、マイクロレンズ21は、マイクロレンズ基板1を平面視した際の縦幅が横幅よりも大きい略楕円形(扁平形状、略俵形)を有している。マイクロレンズ21がこのような形状を有することにより、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。特に、水平方向および鉛直方向の視野角特性をともに優れたものとすることができる。
【0026】
平面視したときのマイクロレンズ21の短軸方向(横方向)の長さをL[μm]、長軸方向(縦方向)の長さをL[μm]としたとき、0.10≦L/L≦0.99の関係を満足するのが好ましく、0.5≦L/L≦0.95の関係を満足するのがより好ましく、0.6≦L/L≦0.8の関係を満足するのがさらに好ましい。上記のような関係を満足することにより、上述したような効果がさらに顕著なものとなる。
【0027】
平面視したときのマイクロレンズ21の短軸方向の長さは、10〜500μmであるのが好ましく、30〜300μmであるのがより好ましく、50〜100μmであるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の短軸方向の長さが前記範囲内の値であると、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、スクリーンに投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板1(透過型スクリーン10)の生産性をさらに高めることができる。
【0028】
また、平面視したときのマイクロレンズ21の長軸方向の長さは、15〜750μmであるのが好ましく、45〜450μmであるのがより好ましく、75〜150μmであるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の短軸方向の長さが前記範囲内の値であると、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、スクリーンに投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板1(透過型スクリーン10)の生産性をさらに高めることができる。
【0029】
また、マイクロレンズ21の短軸方向についての曲率半径(以下、単に「マイクロレンズ21の曲率半径」とも言う)は、5〜250μmであるのが好ましく、15〜150μmであるのがより好ましく、25〜50μmであるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の曲率半径が前記範囲内の値であると、視野角特性を特に優れたものとすることができる。特に、水平方向および鉛直方向の視野角特性をともに優れたものとすることができる。
【0030】
また、マイクロレンズ21の高さは、5〜250μmであるのが好ましく、15〜150μmであるのがより好ましく、25〜100μmであるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の高さが前記範囲内の値であると、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
また、マイクロレンズ21の高さをH[μm]、マイクロレンズ21の短軸方向の長さをS[μm]としたとき、0.90≦S/H≦2.50の関係を満足するのが好ましく、1.0≦S/H≦1.8の関係を満足するのが好ましく、1.2≦S/H≦1.6の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0031】
また、これら複数個のマイクロレンズ21は、千鳥格子状に配列している。このようにマイクロレンズ21が配列することにより、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止することができる。これに対し、例えば、マイクロレンズが正方格子状等に配列したものであると、モアレ等の不都合の発生を十分に防止することが困難となる。また、マイクロレンズをランダムに配した場合、マイクロレンズが形成されている有効領域におけるマイクロレンズの占有率を十分に高めるのが困難となり、マイクロレンズ基板の光の透過率(光の利用効率)を十分に高めるのが困難となり、得られる画像が暗いものとなる。
【0032】
上記のように、マイクロレンズ21は、マイクロレンズ基板1を平面視したときに、千鳥格子状に配列しているが、複数のマイクロレンズ21で構成される第1の行25と、それに隣接する第2の行26とが、横方向に半ピッチ分だけずれているのが好ましい。これにより、光の干渉によるモアレの発生等をより効果的に防止するとともに、かつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0033】
上記のように、マイクロレンズ(凸部)の形状や配列方式、占有率等を厳密に規定することにより、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
また、各マイクロレンズ21は、入射側に突出した凸レンズとして形成されており、焦点fが、ブラックマトリックス(遮光層)3に設けられた開口部31の近傍に位置するように設計されている。すなわち、マイクロレンズ基板1に対して、ほぼ垂直な方向から入射した平行光La(後述するフレネルレンズ部5からの平行光La)は、マイクロレンズ基板1の各マイクロレンズ21によって集光され、ブラックマトリックス3の開口部31近傍で焦点fを結ぶ。このように、ブラックマトリックス3の開口部31の近傍でマイクロレンズ21が焦点を結ぶことにより、光の利用効率を特に優れたものとすることができる。また、開口部31の近傍でマイクロレンズ21が焦点を結ぶことにより、開口部31の面積を小さくすることができる。すなわち、マイクロレンズ基板1を平面視したときの、ブラックマトリックス3(開口部31以外の領域)で覆われた面積の割合を大きくすることができる。その結果、マイクロレンズ基板を透過した光により形成される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0034】
また、マイクロレンズ基板1を光の入射面側(図2で示した方向)から平面視したときの、マイクロレンズ21が形成されている有効領域において、マイクロレンズ21の占有率は、90%以上であるのが好ましく、96%以上であるのがより好ましく、97〜99.5%であるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の占有率が90%以上であると、マイクロレンズ21以外を通過する直進光をより少なくすることができ、光利用効率をさらに向上させることができる。なお、マイクロレンズ21の占有率は、平面視したときのマイクロレンズ21の中心(頂部の中心)211と、当該マイクロレンズ21に隣接する、マイクロレンズ21が形成されていない部位の中心部とを結ぶ線分において、マイクロレンズ21が形成されている部位の長さL[μm]と、前記線分の長さL[μm]との比率(L/L×100[%])として求めることができる(図2参照)。
【0035】
また、前述したように、マイクロレンズ基板1の光の入射側(すなわち、マイクロレンズ21の光の入射側)には、着色部22が設けられている。着色部22は、入射側から入射した光を十分に透過することができるとともに、外光(例えば、光の出射側等から不本意に入射した外光等)が、出射側に反射するのを防止する機能を有する。このような着色部を有することにより、コントラストに優れた画像を得ることができる。
【0036】
特に、本実施形態において、着色部22は、後に詳述するように、基板本体2に着色液(特に、組成に特徴を有する着色液)を付与することにより形成されたものである。より詳しく説明すると、着色部22は、後に詳述するような着色液を基板本体2に付与することにより、着色剤が基板本体2(マイクロレンズ21)の内部に含浸して形成されたものである。着色部22がこのようにして形成されたものであると、基板本体上に着色層を積層(外付け)した場合に比べて、着色層の密着性が高くなる。その結果、例えば、界面付近での屈折率の変化等によるマイクロレンズ基板の光学特性への悪影響の発生をより確実に防止することができる。
【0037】
また、着色部22は、基板本体2に着色液を付与することにより形成されたものであるため、各部位での厚さのばらつき(特に、基板本体の表面形状に対応しない厚さのばらつき)が小さい。これにより、投射される画像において、色ムラ等の不都合が発生するのをより確実に防止することができる。
また、着色部22は、着色剤を含む材料で構成されているものの、通常、その主成分は、基板本体2(マイクロレンズ21)の主成分と同一である。したがって、着色部22と、それ以外の非着色部との境界付近での急激な屈折率の変化等が生じ難い。したがって、マイクロレンズ基板1全体としての光学特性を設計し易く、また、マイクロレンズ基板1としての光学特性は安定し、信頼性の高いものとなる。
【0038】
着色部22の濃度は、特に限定されないが、分光透過率に基づいたY値(D65/2°視野)で20〜85%であるのが好ましく、35〜70%であるのがより好ましく、35〜70%であるのがさらに好ましい。着色部22の濃度が前記範囲内の値であると、マイクロレンズ基板を透過した光により形成される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。これに対し、着色部22の濃度が前記下限値未満であると、入射光の透過率が低下し、得られる画像において十分な輝度が得られず、結果として、画像のコントラストが不十分となる可能性がある。また、着色部22の濃度が前記上限値を超えると、外光(光の入射側とは反対側から入射する外光)の反射を十分に防止することが困難となり、明室において光源を全消灯させた際の、黒表示の表面輝度の増加量(黒輝度)が大きくなるため、画像のコントラストを向上させるという効果が十分に得られない可能性がある。
【0039】
着色部22の色は、特に限定されないが、青色を基調とし、赤色あるいは茶色あるいは黄色を混色した着色剤を用い、外観としては無彩色で黒色であり、光源の光の三原色のバランスを制御する特定の波長の光を選択的に吸収または透過するものであるのが好ましい。これにより、外光の反射を防止し、マイクロレンズ基板を透過した光により形成される画像の色調を正確に表現し、さらに色座標が広く(色調の表現の幅が十分に広く)、より深い黒を表現できることで、結果的にコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0040】
また、マイクロレンズ基板1の光の出射側の面には、ブラックマトリックス3が設けられている。ブラックマトリックス3は、遮光性を有する材料で構成され、層状に形成されたものである。このようなブラックマトリックス3を有することにより、当該ブラックマトリックス3に、外光(投影画像を形成する上で好ましくない外光)を吸収させることができ、スクリーンに投影される画像を、コントラストに優れたものとすることができる。特に、前述したような着色部22を有するとともに、ブラックマトリックス3を有することにより、マイクロレンズ基板1による画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
このようなブラックマトリックス3は、各マイクロレンズ21を透過した光の光路上に開口部31を有している。これにより、各マイクロレンズ21で集光された光を、効率良く、ブラックマトリックス3の開口部31を通過させることができる。その結果、マイクロレンズ基板1の光利用効率を高いものとすることができる。
【0041】
また、ブラックマトリックス3の厚さ(平均厚さ)は、0.01〜5μmであるのが好ましく、0.01〜3μmであるのがより好ましく、0.03〜1μmであるのがさらに好ましい。ブラックマトリックス3の厚さが前記範囲内の値であると、ブラックマトリックス3の不本意な剥離、クラック等をより確実に防止しつつ、ブラックマトリックス3としての機能をより効果的に発揮させることができ、例えば、マイクロレンズ基板1を備えた透過型スクリーン10において、投影される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0042】
次に、上述したようなマイクロレンズ基板1を備えた透過型スクリーン10について説明する。
図3に示すように、透過型スクリーン10は、フレネルレンズ部5と、前述したマイクロレンズ基板1とを備えている。フレネルレンズ部5は、光(画像光)の入射側に設置されており、フレネルレンズ部5を透過した光が、マイクロレンズ基板1に入射する構成になっている。
フレネルレンズ部5は、出射側表面に、ほぼ同心円状に形成されたプリズム形状のフレネルレンズ51を有している。このフレネルレンズ部5は、投射レンズ(図示せず)からの画像光を屈折させ、マイクロレンズ基板1の主面の垂直方向に平行な平行光Laにするものである。
【0043】
以上のように構成された透過型スクリーン10では、投射レンズからの映像光が、フレネルレンズ部5によって屈折し、平行光Laとなる。そして、この平行光Laは、マイクロレンズ基板1の着色部が形成された面側からに入射し、各マイクロレンズ21によって集光し、焦点を結んだ後に拡散する。このとき、マイクロレンズ基板1に入射した光は、十分な透過率でマイクロレンズ基板1を透過する。開口部31を通過した光は、拡散し、観察者に平面画像として観測される。
次に、上述したマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造に好適に用いることができる本発明の凸部付き部材製造用成形型(マイクロレンズ基板製造用成形型)、および、その製造方法について説明する。
【0044】
図4は、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造に用いる凸部付き部材製造用成形型を示す模式的な斜視図、図5は、図4に示す凸部付き部材製造用成形型の縦断面図、図6は、図4、図5に示す凸部付き部材製造用成形型の製造方法を示す模式的な縦断面図である。なお、凸部付き部材製造用成形型の製造においては、実際には凸部付き部材製造用成形型の周面を構成する基材上に多数の凹部(マイクロレンズ形成用凹部)を形成するが、ここでは、説明をわかりやすくするために、その一部分を強調して示した。
【0045】
図4に示すように、凸部付き部材製造用成形型(マイクロレンズ基板製造用成形型)6は、ロール形状をなしており、その周面に、多数個の凹部61を有している。これらの凹部61は、前述したマイクロレンズ基板(凸部付き部材)1を構成するマイクロレンズ(凸部)21に対応する形状を有し、かつ、これらのマイクロレンズ21の配列方式に対応する方式で配列している。すなわち、凹部61は、通常、マイクロレンズ21と、実質的に同一の(マイクロレンズが凸部であるのに対し凹部であり、かつ、転写された形状、位置関係である以外は同一の)形状(寸法)、配列方式を有している。
【0046】
より詳しく説明すると、本実施形態において、凹部(マイクロレンズ形成用凹部)61は、凸部付き部材製造用成形型(マイクロレンズ基板製造用成形型)6を平面視した際の縦幅が横幅よりも大きい略楕円形(扁平形状、略俵形)を有している。凹部61がこのような形状を有することにより、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができるマイクロレンズ基板1の製造に好適に用いることができる。
【0047】
また、平面視したときの凹部61の短軸方向(横方向)の長さをL[μm]、長軸方向(縦方向)の長さをL[μm]としたとき、0.10≦L/L≦0.99の関係を満足するのが好ましく、0.5≦L/L≦0.95の関係を満足するのがより好ましく、0.6≦L/L≦0.8の関係を満足するのがさらに好ましい。上記のような関係を満足することにより、上述したような効果がさらに顕著なものとなる。
【0048】
また、平面視したときの凹部61の短軸方向の長さは、10〜500μmであるのが好ましく、30〜300μmであるのがより好ましく、50〜100μmであるのがさらに好ましい。凹部61の短軸方向の長さが前記範囲内の値であると、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、スクリーンに投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板1(凸部付き部材製造用成形型6)の生産性をさらに高めることができる。
【0049】
また、平面視したときの凹部61の長軸方向の長さは、15〜750μmであるのが好ましく、45〜450μmであるのがより好ましく、75〜150μmであるのがさらに好ましい。凹部61の短軸方向の長さが前記範囲内の値であると、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、スクリーンに投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板1(凸部付き部材製造用成形型6)の生産性をさらに高めることができる。
【0050】
また、凹部61の短軸方向についての曲率半径(以下、単に「凹部61の曲率半径」とも言う)は、5〜250μmであるのが好ましく、15〜150μmであるのがより好ましく、25〜50μmであるのがさらに好ましい。凹部61の曲率半径が前記範囲内の値であると、視野角特性を特に優れたものとすることができる。特に、水平方向および鉛直方向の視野角特性をともに優れたものとすることができる。
【0051】
また、凹部61の深さは、5〜250μmであるのが好ましく、15〜150μmであるのがより好ましく、25〜100μmであるのがさらに好ましい。凹部61の深さが前記範囲内の値であると、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
また、凹部61の深さをD[μm]、凹部61の短軸方向の長さをS[μm]としたとき、0.02≦S/D≦50の関係を満足するのが好ましく、0.1≦S/D≦1.40の関係を満足するのが好ましく、0.5≦S/D≦1.0の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0052】
また、これら複数個の凹部61は、千鳥格子状に配列している。このように凹部61が配列することにより、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止することができる。これに対し、例えば、凹部が正方格子状等に配列したものであると、モアレ等の不都合の発生を十分に防止することが困難となる。また、凹部をランダムに配した場合、凹部が形成されている有効領域における凹部の占有率を十分に高めるのが困難となり、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)の光の透過率(光の利用効率)を十分に高めるのが困難となり、得られる画像が暗いものとなる。
【0053】
また、本実施形態では、凹部61の長軸方向が、凸部付き部材製造用成形型6の軸方向とほぼ同一である。これにより、後に詳述するようなマイクロレンズ基板1の製造方法において、基板本体2となるべき樹脂材料(凸部付き部材製造用成形型6の表面形状が転写された樹脂材料)と凸部付き部材製造用成形型6との剥離において、形成されたマイクロレンズ21に欠陥が生じるのをより確実に防止することができる。凹部61の長軸方向と凸部付き部材製造用成形型6の軸方向とのなす角は、0〜10°であるのが好ましく、0〜7°であるのがより好ましく、0〜5°であるのがさらに好ましい。これにより、上記のような効果は更に顕著なものとして現れる。
【0054】
また、上記のように、凹部61は、凸部付き部材製造用成形型6を平面視したときに、千鳥格子状に配列しているが、複数の凹部61で構成される第1の行と、それに隣接する第2の行とが、横方向に半ピッチ分だけずれているのが好ましい。これにより、光の干渉によるモアレの発生等をより効果的に防止するとともに、かつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0055】
なお、上記の説明では、凹部61が、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)1を構成する凸部(マイクロレンズ21)と、実質的に同一の形状(寸法)、配列方式を有しているものとして説明したが、例えば、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)1の基板本体2の構成材料が収縮し易いものである場合(基板本体2を構成する樹脂材料が固化等により収縮する場合)、その収縮率等を考慮し、マイクロレンズ基板1を構成するマイクロレンズ(凸部)21と、凸部付き部材製造用成形型(マイクロレンズ基板製造用成形型)6を構成する凹部61とについて、これらの間で、形状(寸法)、占有率等が異なるようにしてもよい。
【0056】
また、凸部付き部材製造用成形型6の周面において、複数個の凹部61は、凸部付き部材製造用成形型(ロール)6の軸62を中心として螺旋状に配されていてもよい。凹部61がこのように配されていると、マイクロレンズ基板1の製造において、上述したような配列パターンのマイクロレンズ21を容易かつ確実に形成することができる。また、複数個の凹部61が螺旋状に配されていると、凸部付き部材製造用成形型6の製造時(後述する初期孔形成工程)において、マスク8に対して、凹部形成用の初期孔(開口部)81を所望の形状のものとして容易かつ確実に形成することができるとともに、エッチング工程における基材7とマスク8との密着性を特に優れたものとすることができる。したがって、凸部付き部材製造用成形型6が有する凹部61を容易かつ確実に所望の形状に形成することができ、結果として、マイクロレンズ基板1のマイクロレンズ21の形状を容易かつ確実に所望の形状に形成することができる。
【0057】
凸部付き部材製造用成形型6は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、その周面部付近が、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、銀、金、鉛、マグネシウム、チタン、ジルコニア、タングステン、モリブデン、コバルト等の他、金属ステンレス、42ニッケル−鉄合金、真鍮、ジュラルミン等の各種金属材料や、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスで構成されたものであるのが好ましい。凸部付き部材製造用成形型6の周面部付近が、上記のような材料で構成されたものであると、凸部付き部材製造用成形型6が有する凹部61の形状、配列パターンをより精確に転写することができるとともに、凸部付き部材製造用成形型6の耐久性を優れたものとのすることができる。また、凸部付き部材製造用成形型6の周面部付近が、上記のような材料で構成されたものであると、凸部付き部材製造用成形型6の製造時において、所望の形状、配列パターンの凹部61を容易かつ確実に形成することができる。
【0058】
また、凸部付き部材製造用成形型6は、例えば、その内部に図示しない加熱手段を有していてもよい。これにより、後述するような方法において、より容易に、所望の形状、配列パターンのマイクロレンズ21を形成することができる。
次に、本発明の凸部付き部材製造用成形型の製造方法について、図6を参照しながら説明する。
まず、凸部付き部材製造用成形型6を製造するに際し、ロール状の基材7を用意する。
【0059】
この基材7としては、略円柱状または略円筒状のものが好適に用いられる。また、基材7は、洗浄等により、その表面が清浄化されているものが好ましい。
基材7の材料としてはソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられるが、中でも、ソーダガラス、結晶性ガラス(例えば、ネオセラム等)、無アルカリガラスが好ましい。ソーダガラス、結晶性ガラス、無アルカリガラスは、加工が容易であるとともに、比較的安価であり、製造コストの面からも有利である。
【0060】
<A1>図6(a)に示すように、用意した基材7の表面に、マスク8を形成する(マスキング工程)。
マスク8の構成材料は、特に限定されず、例えば、Cr、Au、Ni、Ti、Pt等の金属やこれらから選択される2種以上を含む合金、前記金属の酸化物(金属酸化物)、シリコン、樹脂等が挙げられる。
また、マスク8は、例えば、実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、異なる複数の層を有する積層体等であってもよい。
【0061】
上記のように、マスク8の構成は、特に限定されるものではないが、主としてCrで構成される層と、主として酸化Crで構成される層とを有する積層体であるのが好ましい。このような構成のマスク8は、様々な組成のエッチング液に対して優れた安定性を有している(後述するエッチング工程において基材7をより確実に保護することができる)とともに、後述するようなレーザ光の照射等により、所望の形状の開口部を容易かつ確実に形成することができる。また、マスク8が上記のような構成のものであると、例えば、後述するエッチング工程において、エッチング液として一水素二フッ化アンモニウムを含む液体を好適に用いることができる。一水素二フッ化アンモニウムは毒劇物ではないため、作業中の人体や環境への影響をより確実に防止することができる。また、上記のような構成のマスク8は、マスクの内部応力を効率良く緩和することができ、基材7との密着性(特に、エッチング工程における密着性)に特に優れている。このようなことから、上記のような構成のマスク8を用いることにより、所望の形状の凹部61を容易かつ確実に形成することができる。
【0062】
マスク8の形成方法は特に限定されないが、マスク8をCr、Au等の金属材料(合金を含む)や金属酸化物(例えば酸化Cr)で構成されたものとする場合、マスク8は、例えば、蒸着法やスパッタリング法等により、好適に形成することができる。また、マスク8をシリコンで構成されたものとする場合、マスク8は、例えば、スパッタリング法やCVD法等により、好適に形成することができる。
【0063】
マスク8の厚さは、マスク8を構成する材料によっても異なるが、0.01〜2.0μm程度が好ましく、0.03〜0.2μm程度がより好ましい。厚さが前記下限値未満であると、マスク8の構成材料等によっては、後述する初期孔形成工程(開口部形成工程)において形成される初期孔81の形状が歪んでしまう可能性がある。また、後述するエッチング工程でウェットエッチングを施す際に、基材7のマスクした部分を十分に保護できない可能性がある。一方、上限値を超えると、マスク8の構成材料等によっては、後述する初期孔形成工程において、貫通する初期孔81を形成するのが困難になるほか、マスク8の内部応力によりマスク8が剥がれ易くなる場合がある。
【0064】
<A2>次に、図6(b)に示すように、マスク8に、後述するエッチングの際のマスク開口となる、複数個の初期孔81を形成する(初期孔形成工程)。
初期孔81の形成方法は、特に限定されないが、レーザ光の照射による方法であるのが好ましい。これにより、所望のパターンに配列した所望の形状の初期孔81を容易かつ精確に形成することができる。その結果、凹部61の形状、配列方式等をより確実に制御することができる。また、初期孔81をレーザの照射により形成することにより、凸部付き部材製造用成形型を生産性良く製造することができる。特に、大面積の基板にも簡単に凹部を形成することができる。また、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、その照射条件を制御することにより、後述するような初期凹部71を形成することなく初期孔81のみを形成したり、初期孔81とともに、形状、大きさ、深さのばらつきの小さい初期凹部71を、容易かつ確実に形成することができる。また、レーザ光の照射でマスク8に初期孔81を形成することで、従来のようなフォトリソグラフィ法によってマスクに開口部を形成する場合に比べて、簡単かつ安価にマスク8に開口部(初期孔81)を形成することができる。また、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、上述したような螺旋状に配された複数個の凹部61に対応する複数個の初期孔(開口部)81を効率良く形成することができる。より具体的には、例えば、ロール状の基材7を、その軸を中心に回転させ、かつ、レーザ光の照射方向を一軸方向に走査させつつ、レーザ光の照射を間欠的に行うことにより、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、上述したような螺旋状に配された複数個の凹部61に対応する複数個の初期孔(開口部)81を効率良く形成することができる。その結果、凸部付き部材製造用成形型の生産性、マイクロレンズ基板1の生産性が向上する。
【0065】
また、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、使用するレーザ光の種類は、特に限定されないが、ルビーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、フェムト秒レーザ、ガラスレーザ、YVOレーザ、Ne−Heレーザ、Arレーザ、COレーザ、エキシマレーザ等が挙げられる。また、各レーザのSHG、THG、FHG等の波長を使っても良い。
【0066】
マスク8に初期孔81を形成するとき、図6(b)に示すように、マスク8だけでなく基材7の表面の一部も同時に除去し、初期凹部71を形成してもよい。これにより、後述するエッチング工程でエッチングを施す際に、エッチング液との接触面積が大きくなり、侵食を好適に開始することができる。また、この初期凹部71の深さの調整により、凹部61の深さ(レンズの最大厚さ)を調整することもできる。初期凹部71の深さは、特に限定されないが、5μm以下とするのが好ましく、0.1〜0.5μm程度とするのがより好ましい。なお、初期孔81の形成をレーザの照射により行う場合、初期孔81とともに形成される複数個の初期凹部71について、深さのばらつきをより確実に小さくすることができる。これにより、凸部付き部材製造用成形型6を構成する各凹部61の深さのばらつきも小さくなり、最終的に得られるマイクロレンズ基板1の各マイクロレンズ21の大きさ、形状のばらつきも小さくなる。その結果、各マイクロレンズ21の直径、焦点距離、レンズ厚さのばらつきを特に小さくさせることができる。
【0067】
本工程で形成する初期孔81の形状、大きさは特に限定されないが、初期孔81が略円形である場合、その直径は、0.8〜20μmであるのが好ましく、1.0〜10μmであるのがより好ましく、1.5〜4μmであるのがさらに好ましい。初期孔81の直径が前記範囲内の値であると、後述するエッチング工程において、前述したような形状の凹部61を確実に形成することができる。ただし、初期孔81が、略楕円形のように扁平形状のものである場合、短軸方向の長さを、直径の値として代用することができる。すなわち、本工程で形成する初期孔81が扁平形状のものである場合、初期孔81の幅(短軸方向の長さ)は、特に限定されないが、0.8〜20μmであるのが好ましく、1.0〜10μmであるのがより好ましく、1.5〜4μmであるのがさらに好ましい。初期孔81の幅が前記範囲内の値であると、後述するエッチング工程において、前述したような形状の凹部61を確実に形成することができる。
【0068】
また、本工程で形成する初期孔81が扁平形状のものである場合、初期孔81の長さ(長軸方向の長さ)は、0.9〜30μmであるのが好ましく、1.5〜15μmであるのがより好ましく、2.0〜6μmであるのがさらに好ましい。初期孔81の長さが前記範囲内の値であると、後述するエッチング工程において、前述したような形状の凹部61をより確実に形成することができる。
また、形成されたマスク8に対してレーザ光の照射で初期孔81を形成するだけでなく、例えば、基材7にマスク8を形成する際に、予め基材7上に所定パターンで異物を配しておき、その上にマスク8を形成することでマスク8に積極的に欠陥を形成し、当該欠陥を初期孔81としてもよい。
【0069】
<A3>次に、図6(c)に示すように、初期孔81が形成されたマスク8を用いて基材7にエッチングを施し、基材7上に多数の凹部61を形成する(エッチング工程)。
このように、本発明では、凹部の形成をエッチングにより行う。これにより、生産性の高い型形成が可能である。また、凹部の形成を、プレス、研削、研磨等のエッチング以外の方法で行った場合には、高価で欠陥が多く、また、ムラのある型形成になるという問題があるのに対して、本発明では、安価で欠陥の少なくムラの無い型形成が可能である。
【0070】
エッチングの方法は、特に限定されず、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング等が挙げられる。以下の説明では、ウェットエッチングを用いる場合を例に挙げて説明する。
初期孔81が形成されたマスク8で被覆された基材7に対して、エッチング(ウェットエッチング)を施すことにより、図6(c)に示すように、基材7は、マスク8が存在しない部分より食刻され、基材7上に多数の凹部61が形成される。上述したように、マスク8に形成された初期孔81が千鳥状の配置であるため、形成される凹部61は、基材7の表面に千鳥状に配置されたものとなる。
【0071】
また、本実施形態では、工程<A2>でマスク8に初期孔81を形成した際に、基材7の表面に初期凹部71を形成している。これにより、エッチングの際、エッチング液との接触面積が大きくなり、侵食を好適に開始することができる。
また、ウェットエッチング法を用いると、凹部61を好適に形成できる。そして、エッチング液として、例えば、一水素二フッ化アンモニウムを含むエッチング液を用いると、基材7をより選択的に食刻することができ、凹部61を好適に形成することができる。
【0072】
マスク8が主としてCrで構成されたものである場合、フッ酸系エッチング液としては、一水素二フッ化アンモニウムを含む液体が特に好適である。一水素二フッ化アンモニウム溶液は毒劇物ではないため、作業中の人体や環境への影響を防止することができる。また、エッチング液として、一水素二フッ化アンモニウムを用いる場合、該エッチング液中には、例えば、過酸化水素が含まれていてもよい。これにより、エッチングスピートをより速くすることができる。
【0073】
また、ウェットエッチングによれば、ドライエッチングに比べて簡単な装置で処理を行うことができ、さらに、一度に多くの基板に対して処理を行うことができる。これにより生産性が向上し、安価に凸部付き部材製造用成形型6を提供することができる。
また、エッチング工程は、マスク8が付された基材7を、その軸71を中心に回転させつつ行うのが好ましい。これにより、各凹部61について、その形状のばらつきを特に小さくすることができ、製造されるマイクロレンズ基板1の特性(特に、光学特性)を特に優れたものとすることができる。特に、エッチング工程をウェットエッチングにより行う場合、エッチング液の深さの違いによる圧力差(水圧差)により、エッチングの進行の度合いが各部位で異なるものとなりやすいが、基材7を回転させることにより、このような問題の発生も効果的に防止することができる。
【0074】
また、エッチング工程において、基材7の回転(相対的な回転を含む)を行う場合、基材7の回転方向(相対的な回転方向)を、経時的に変化させるのが好ましい。すなわち、基材7の回転方向を反転させつつ、エッチングを行うのが好ましい。これにより、例えば、エッチング液の液流やエッチングガスのガス流による不均一なエッチングが進行するのをより確実に防止することができ、形成する凹部61の形状をより好適なものとすることができる。
【0075】
<A4>次に、図6(d)に示すように、マスク8を除去する(マスク除去工程)。
マスク8が、前述したような主としてCrで構成される層と、主として酸化Crで構成される層とを有する積層体である場合、マスク8の除去は、例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含む混合物を用いたエッチングにより行うことができる。
以上により、図6(d)および図4に示すように、基材7上に多数の凹部61が千鳥状に形成された凸部付き部材製造用成形型6が得られる。
【0076】
基材7上に千鳥状に配された複数個の凹部61を形成する方法は、特に限定されないが、上述したような方法(レーザ光の照射によりマスク8に初期孔81を形成し、その後、そのマスク8を用いてエッチングを行うことにより、基材7上に凹部61を形成する方法)により形成した場合、以下のような効果が得られる。
すなわち、レーザ光の照射によりマスク8に初期孔81を形成することで、従来のようなフォトリソグラフィ法によってマスクに開口部を形成する場合に比べて簡単かつ安価にマスク8に所定パターンで開口部(初期孔81)を形成することができる。これにより生産性が向上し、安価に凸部付き部材製造用成形型6を提供することができる。また、本発明では、マイクロレンズ基板の製造に用いる凸部付き部材製造用成形型がロール形状であるため、フォトリソグラフィ法によってマスクに開口部を形成する場合、凹部(凹部に対応する開口部)を設計の形状通りに形成するのは極めて困難であるが、レーザ光の照射により行う場合、容易かつ確実に所望の形状、配列パターンの凹部(凹部に対応する開口部)を形成することができる。
【0077】
なお、凸部付き部材製造用成形型6の周面には、離型剤等により、離型性を向上させるため等の処理が施されていてもよい。これにより、この凸部付き部材製造用成形型6を用いて製造されるマイクロレンズ基板1のマイクロレンズ21の形状、配置等をより確実に好適なものとすることができる。
次に、上述した凸部付き部材製造用成形型6を用いて、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)1を製造する方法について説明する。
【0078】
マイクロレンズ基板(凸部付き部材)は、凸部付き部材製造用成形型を用いて製造されるものであるが、以下の実施形態では、特に、凸部付き部材製造用成形型を備えたマイクロレンズ基板製造装置(凸部付き部材製造装置)を用いて、マイクロレンズ基板を製造するものとして説明する。
図7は、本発明のレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の一例を示す模式的な縦断面図、図8、図9は、本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造方法の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0079】
まず、本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造方法を説明するに先立ち、本発明のマイクロレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の構成の一例について説明する。
マイクロレンズ基板製造装置100は、図7に示すように、マイクロレンズ基板1の母材としての基板4を搬送する基板搬送手段110と、上述したような凸部付き部材製造用成形型6とを有している。
【0080】
基板搬送手段110は、基板4を搬送する機能を有している。図示の構成では、基板搬送手段110は、基板4をマイクロレンズ基板製造装置100の左から右へ搬送するよう構成されている。
凸部付き部材製造用成形型6は、基板搬送手段110により搬送されてきた基板4を押圧して、その周面の形状を基板4に転写する機能を有している。
【0081】
凸部付き部材製造用成形型6は、ロール形状をなしており、軸(回転軸)62を中心に回転可能となっている。また、上述したように、凸部付き部材製造用成形型6は、マイクロレンズ21に対応する形状を有する、複数の凹部61を備えている。
また、凸部付き部材製造用成形型6は、軸62を中心に回転可能なものである。凸部付き部材製造用成形型6は、搬送されてきた基板4により押圧され、基板4の移動(搬送)に伴って回転させられる(回転自在に保持された)構成のものであってもよいし、モータ等の図示しない駆動手段により回転するものであってもよい。このような駆動手段を有する場合、基板4の搬送速度等に応じて、凸部付き部材製造用成形型6の回転速度をより精確に制御することができる。その結果、好適な形状のマイクロレンズ21をより確実に形成することができる。
【0082】
また、このような凸部付き部材製造用成形型6は、搬送手段30と所定距離だけ離間するように配置されている。通常、凸部付き部材製造用成形型6と搬送手段30との最短距離は、基板4の厚さよりも小さく(短く)なっている。
また、この凸部付き部材製造用成形型6は、その内部に図示しない加熱手段を有していてもよい。これにより、基板4に凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状を容易かつ確実に転写することができる。このような加熱手段としては、例えば、電熱線やカートリッジヒータ等が挙げられる。
次に、上記のようなマイクロレンズ基板製造装置(凸部付き部材製造用成形型)を用いた、本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造方法について説明する。
【0083】
<B1>まず、マイクロレンズ基板(レンズ基板)1を製造するに際し、基板4を用意する。
基板4は、前述した基板本体2の構成材料に対応する材料で構成されたものである。また、基板4は、厚さが均一で、傷等のないものが好適に用いられる。基板4は、凸部付き部材製造用成形型6の押圧により変形可能なものであれば、いかなるものであってもよいが、凸部付き部材製造用成形型6の凹部61に対応する形状、配置のマイクロレンズ21を精確に形成するためには、主として、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂で構成されたものであるのが好ましい。
【0084】
基板4の平均厚さは、凸部付き部材製造用成形型6と基板搬送手段110とのギャップ(最短長さ)、基板4を構成する材料、屈折率等の種々の条件により異なるが、通常、0.005〜5mm程度であるのが好ましく、0.1〜4mm程度であるのがより好ましく、0.5〜3mm程度であるのがさらに好ましく、1〜3mm程度であるのがもっとも好ましい。
【0085】
なお、基板4を構成する材料には、例えば、微粒子状(ビーズ状)のシリカ、ガラス、樹脂(基板4を構成する樹脂とは異なる樹脂)等の光拡散剤を含んでいてもよい。これにより、マイクロレンズ基板1を後述する透過型スクリーンに適用した場合等における、視野角特性を特に優れたものとすることができる。また、拡散板等の構成を省略しても視野角特性を優れたものとすることができるので、例えば、透過型スクリーンの薄型化、リア型プロジェクタの薄型化を図ることができる。
【0086】
<B2>上記のような基板4を基板搬送手段110により搬送する(図8(a)参照)。この際、基板4は、必要に応じて、加温(加熱)されていてもよい。これにより、凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状の転写を容易かつ確実に行うことができる。
基板搬送手段110により搬送されてきた基板4は、基板搬送手段110と凸部付き部材製造用成形型6との間に送り込まれる(図8(b)参照)。これにより、基板4が凸部付き部材製造用成形型6により押圧される。また、基板4の搬送に伴って、凸部付き部材製造用成形型6が軸62を中心にして回転し、凸部付き部材製造用成形型6による基板4の押圧部位が経時的に変化する(図8(c)参照)。その結果、凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状が基板4に転写される。その後、基板4の構成材料を固化(ただし、硬化(重合)を含む)させることにより、凹部61に対応する形状、配置のマイクロレンズ21が形成された、基板本体2が得られる(図8(d)参照)。基板4の構成材料の固化を硬化(重合)により行う場合、その方法としては、例えば、紫外線等の光の照射、電子線の照射、加熱等の方法が挙げられる。
【0087】
基板4が樹脂材料で構成されたものである場合、基板4を押圧する際の凸部付き部材製造用成形型6の温度は、基板4を構成する樹脂材料のガラス転移点以上の温度であるのが好ましい。これにより、基板4に凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状をより確実に転写できる。これに対し、凸部付き部材製造用成形型6の温度が低すぎると、押圧する前の基板4の温度や、基板4の構成材料によっては、基板4に対して凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状を十分に転写するのが困難となる場合がある。
【0088】
このように、本発明においては、ローラ状の凸部付き部材製造用成形型を用いるため、製造すべき凸部付き部材(マイクロレンズ基板)が大型のものであっても、容易かつ確実に製造することができ、また、製造される凸部付き部材の特性(特に光学特性)を優れたものとすることができる。また、凸部付き部材(マイクロレンズ基板)を連続して製造することができ、凸部付き部材の生産性が向上する。また、製造すべき凸部付き部材(マイクロレンズ基板)に対して、凸部付き部材製造用成形型の大きさを十分に小さいものとすることができるとともに、凸部付き部材製造用成形型の大きさ(特に、径)が比較的小さいものであっても、様々な大きさの凸部付き部材の製造に適用することができる。したがって、凸部付き部材(マイクロレンズ基板)の製造コストの低減に大きく寄与することができる。
【0089】
また、基板4がシート状、フィルム状、可撓性を有する板状等のものである場合、例えば、基板4をローラ等の基板供給部に巻きつけておき、基板搬送手段110による基板4の搬送に伴い、基板4を基板供給部から引き出すような構成にすることにより、凸部付き部材(マイクロレンズ基板)の生産性の更なる向上(製造設備の省スペース化)を図ることができる。また、このような場合、例えば、製造された凸部付き部材(マイクロレンズ基板)を、ローラ等の凸部付き部材回収手段に巻き取ることにより回収してもよい。
【0090】
<B3>次に、上記のようにして作製された基板本体2の出射側表面に、ブラックマトリックス3を形成する。
まず、図9(a)に示すように、基板本体2の出射側表面に、遮光性を有するポジ型のフォトポリマー32を付与する。基板本体2表面へのフォトポリマー32の付与方法としては、例えば、ディップコート、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、ロールコーター等の各種塗布法等を用いることができる。フォトポリマー32は、遮光性を有する樹脂で構成されたものであってもよいし、(遮光性の低い)樹脂材料に、遮光性の材料が分散または溶解したものであってもよい。フォトポリマー32の付与後、必要に応じて、例えば、プレベーク処理等の熱処理を施してもよい。
【0091】
<B4>次に、図9(b)に示すように、基板本体2に、入射側表面に対して垂直方向の露光用光Lbを照射する。照射された露光用光Lbは各マイクロレンズ21を通過することによって集光する。これにより、マイクロレンズ21の焦点f近傍の(集光された光が入射した部位の)フォトポリマー32が露光され、それ以外の部分のフォトポリマー32は露光されないか、または露光量が少なくなり、焦点f近傍のフォトポリマー32のみが感光する。
【0092】
その後、現像を行う。ここで、このフォトポリマー32はポジ型のフォトポリマーであるので、感光した焦点f近傍のフォトポリマー32が現像により溶解、除去される。その結果、図9(c)に示すように、マイクロレンズ21の光軸Lに対応する部分に開口部31が形成されたブラックマトリックス3が形成される。現像の方法は、フォトポリマー32の組成等により異なるが、例えば、KOH水溶液等のアルカリ性溶液を用いて行うことができる。
【0093】
このように、本実施形態の製造方法では、フォトポリマーにマイクロレンズによって集光させた露光用光を照射することにより、ブラックマトリックスを形成するので、例えばフォトリソグラフィ技術を使用するのに比べて、簡易な工程でブラックマトリックスを形成することができる。
また、現像後、必要に応じて、例えば、ポストベーク処理等の熱処理を施してもよい。
【0094】
<B5>その後、ブラックマトリックス3が形成された基板本体2に対して着色液を付与することにより、着色部22を形成し、マイクロレンズ基板1を得る(図9(d)参照)。
着色液は、いかなるものであってもよいが、本実施形態では、着色剤とベンジルアルコールとを含むものである。このような着色液を用いることにより、基板本体の着色を容易かつ確実に行うことができることを、本発明者は見出した。特に、アクリル系樹脂のように、従来、着色が困難であった材料で構成された基板本体に対しても、容易かつ確実に着色を施すことができる。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
【0095】
すなわち、ベンジルアルコールを含む着色液を用いることにより、着色液中のベンジルアルコールが基板本体中に侵入、拡散し、基板本体を構成する分子の結合(分子間結合)を緩め、着色剤が侵入するための空間を確保する。そして、ベンジルアルコールと着色剤が置換することにより、前記空間(着色剤のための座席(着色座席)に例えることができる)に着色剤が保持され、基板本体が着色される。
【0096】
また、上記のような着色液を用いることにより、均一な厚さの着色部を容易かつ確実に形成することができる。特に、着色に供される基板本体(ワーク)が、その表面にマイクロレンズのような微細な構造を有するもの(二次元方向への凹凸の周期がいずれも小さいもの)、また、着色されるべき領域が大面積のものであっても、均一な厚さで(色ムラなく)着色部を形成することができる。
【0097】
着色液の付与方法としては、例えば、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、捺染、ロールコーター等の各種塗布法や、基板本体2を着色液中に浸漬するディッピング等の方法が挙げられるが、中でも、ディッピング(特に、浸染)が好ましい。これにより、容易かつ確実に着色部22(特に、均一な厚さの着色部22)を形成することができる。また、特に、着色液の付与を浸染により行う場合、着色液が付与される基板本体2が、アクリル系樹脂のような、従来の方法では、着色するのが困難であった材料で構成されたものであっても、容易かつ確実に着色することができる。これは、浸染に用いることができる染料が、アクリル系樹脂等が有するエステル基(エステル結合)との親和性が高いためであると考えられる。
【0098】
着色液を付与する工程は、着色液および/または基板本体2を、60〜100℃とした状態で行うのが好ましい。これにより、着色部22を形成すべき基板本体2に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)を十分に防止しつつ、効率良く着色部22を形成することができる。
また、着色液を付与する工程は、例えば、雰囲気圧を高めた状態(加圧した状態)で行ってもよい。これにより、着色液の基板本体内部への侵入を促進することができ、結果として、着色部22を短時間で効率良く形成することができる。
【0099】
なお、着色液の付与は、必要に応じて(例えば、形成すべき着色部22の厚さが比較的大きい場合等においては)、複数回繰り返し行ってもよい。
また、着色液の付与後、必要に応じて、加熱、冷却等の熱処理、光照射、雰囲気の減圧等の処理を施してもよい。これにより、着色部22の定着(安定化)を促進することができる。
【0100】
以下、本工程で用いる着色液について、より詳細に説明する。
着色液中におけるベンジルアルコールの含有率は、特に限定されないが、0.01〜10.0wt%であるのが好ましく、0.05〜8.0wt%であるのがより好ましく、0.1〜5.0wt%であるのがさらに好ましい。ベンジルアルコールの含有率が上記範囲内の値であると、着色部22を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、容易かつ確実に好適な着色部22を形成することができる。
【0101】
着色液中に含まれる着色剤は、各種染料、各種顔料等、いかなるものであってもよいが、染料であるのが好ましく、分散染料および/またはカチオン系染料であるのがより好ましく、分散染料であるのがさらに好ましい。これにより、着色部を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)を十分に防止しつつ、効率良く着色部を形成することができる。特に、着色液が付与される基板本体2が、アクリル系樹脂のような、従来の方法では、着色するのが困難であった材料で構成されたものであっても、容易かつ確実に着色することができる。これは、上記のような着色剤が、アクリル系樹脂等が有するエステル基(エステル結合)を染着座席とするために、より着色しやすいためであると考えられる。
【0102】
前述したように、本実施形態で用いる着色液は、少なくとも、着色剤およびベンジルアルコールを含むものであるが、さらに、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含むものであるのが好ましい。これにより、着色部を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、さらに効率良く着色部を形成することができる。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
【0103】
すなわち、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、ベンジルアルコールとを含む着色液(以下、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンジルアルコールを総称して、「添加物」ともいう)を用いることにより、着色液中の添加物が基板本体中に侵入、拡散し、基板本体を構成する分子の結合(分子間結合)を緩め、着色剤が侵入するための空間を確保する。そして、添加物と着色剤が置換することにより、前記空間(着色剤のための座席(着色座席)に例えることができる)に着色剤が保持され、基板本体が着色される。これは、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、ベンジルアルコールとを併用することにより、これらが相補的に作用し合い、着色液による着色を良好なものとするためであると考えられる。
【0104】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン骨格を有する化合物、あるいはこれらの互変異性体、または、その誘導体(例えば、付加反応生成物、置換反応生成物、還元反応生成物、酸化反応生成物等)を用いることができる。
このような化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾフェノンアニル、ベンゾフェノンオキシム、ベンゾフェノンクロリド(α,α’−ジクロルジフェニルメタン)等が挙げられる。中でも、ベンゾフェノン骨格を有する化合物であるのが好ましく、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンがより好ましい。このようなベンゾフェノン系化合物を用いることにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして現れる。
【0105】
また、ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、あるいはこれらの互変異性体、または、その誘導体(例えば、付加反応生成物、置換反応生成物、還元反応生成物、酸化反応生成物等)を用いることができる。
このような化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。中でも、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であるのが好ましく、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールがより好ましい。このようなベンゾトリアゾール系化合物を用いることにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして現れる。
【0106】
着色液中にベンゾフェノン系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物が含まれる場合、着色液中における、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物の含有率の総和は、特に限定されないが、0.001〜10.0wt%であるのが好ましく、0.005〜5.0wt%であるのがより好ましく、0.01〜3.0wt%であるのがさらに好ましい。ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物の含有率の総和が上記範囲内の値であると、着色部22を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、容易かつ確実に好適な着色部22を形成することができる。
【0107】
また、着色液中にベンゾフェノン系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物が含まれる場合、着色液中における、ベンジルアルコールの含有率をX[wt%]、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物の含有率の総和をY[wt%]としたとき、0.001≦X/Y≦10000の関係を満足するのが好ましく、0.05≦X/Y≦1000の関係を満足するのがより好ましく、0.25≦X/Y≦500の関係を満足するのがさらに好ましい。上記のような関係を満足することにより、ベンゾフェノン系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物と、ベンジルアルコールとを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、着色部22を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、容易かつ確実に好適な着色部22を形成することができる。
【0108】
また、着色液は、さらに界面活性剤を含むものであるのが好ましい。これにより、着色剤をベンジルアルコールの存在下においても、安定的に、均一に分散させることができ、着色液が付与される基板本体2が、アクリル系樹脂のような、従来の方法では、着色するのが困難であった材料で構成されたものであっても、容易かつ確実に着色することができる。界面活性剤としては、例えば、非イオン系(ノニオン系)、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。非イオン系(ノニオン系)界面活性剤としては、例えば、エーテル系界面活性剤、エステル系界面活性剤、エーテルエステル系界面活性剤、含窒素系界面活性剤等が挙げられ、より具体的には、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。また、アニオン系界面活性剤としては、例えば、各種ロジン、各種カルボン酸塩、各種硫酸エステル塩、各種スルホン酸塩、各種リン酸エステル塩等が挙げられ、より具体的には、ガムロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、マレイン化ロジン、フマール化ロジン、マレイン化ロジンペンタエステル、マレイン化ロジングリセリンエステル、トリステアリン酸塩(例えば、アルミニウム塩等の金属塩等)、ジステアリン酸塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等の金属塩等)、ステアリン酸塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、リノレン酸塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、オクタン酸塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等の金属塩等)、オレイン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等の金属塩等)、パルミチン酸塩(例えば、亜鉛塩等の金属塩等)、ナフテン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、レジン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、ポリアクリル酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、ポリメタクリル酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、ポリマレイン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、セルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、アルキルスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)等が挙げられる。また、カチオン系界面活性剤としては、例えば、1級アンモニウム塩、2級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩等の各種アンモニウム塩等が挙げられ、より具体的には、(モノ)アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、テトラアルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。また、両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン等の各種ベタイン、各種アミノカルボン酸、各種リン酸エステル塩等が挙げられる。
【0109】
次に、上述した凸部付き部材製造用成形型6を用いて、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)1を製造する方法の他の実施形態について説明する。
図10は、本発明のレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の他の一例を示す模式的な縦断面図、図11は、本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造方法の他の実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0110】
以下の説明では、主に、前述した実施形態との相違点について説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態のマイクロレンズ基板製造装置100’は、マイクロレンズ基板1の母材としての基板4を搬送する基板搬送手段110と、流動性を有する樹脂材料(流動性樹脂材料)9を供給する流動性樹脂供給部120と、凸部付き部材製造用成形型6とを有している。すなわち、本実施形態のマイクロレンズ基板製造装置100’は、流動性樹脂供給部120を有する点において、前記実施形態のマイクロレンズ基板製造装置100と異なっている。流動性樹脂供給部120を有することにより、基板4の温度を比較的低い温度に維持しつつ、凸部付き部材製造用成形型6の周面形状を転写することができる。その結果、基板4の熱変形等を効果的に防止しつつ、好適な形状、配置のマイクロレンズ21を備えたマイクロレンズ基板1を容易かつ確実に得ることができる。
【0111】
流動性樹脂供給部120は、供給される樹脂材料9が基板4のほぼ全面(マイクロレンズ基板1の有効レンズ領域に対応する部分)に付与されるように構成されている。
そして、本実施形態においては、基板搬送手段110と凸部付き部材製造用成形型6とのギャップ(凸部付き部材製造用成形型6と搬送手段30との最短距離)は、前記実施形態のマイクロレンズ基板製造装置100でのギャップより大きく設定されている。基板搬送手段110と凸部付き部材製造用成形型6とのギャップは、特に限定されないが、通常、基板4の厚さより大きく設定されている。
次に、上記のようなマイクロレンズ基板製造装置100’を用いた、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造方法について説明する。
【0112】
<B1’>まず、マイクロレンズ基板(レンズ基板)1を製造するに際し、基板4、樹脂材料9を用意する。
基板4は、前述した実施形態と同様のものを好適に用いることができるが、樹脂材料9により形成される部位の厚さを考慮して、前述したものに比べてやや薄いものを用いてもよい。
また、樹脂材料9としては、比較的低い温度で流動性を維持できる材料を用いるのが好ましい。
【0113】
樹脂材料9のガラス転移点は、15〜200℃であるのが好ましく、20〜150℃であるのがより好ましく、24〜130℃であるのがさらに好ましい。樹脂材料9のガラス転移点が前記範囲内の値であると、基板4の熱変形等を効果的に防止しつつ、樹脂材料9に凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状をより確実に転写できる。
なお、樹脂材料9には、例えば、微粒子状(ビーズ状)のシリカ、ガラス、樹脂(基板4を構成する樹脂とは異なる樹脂)等の光拡散剤を含んでいてもよい。これにより、マイクロレンズ基板1を後述する透過型スクリーンに適用した場合等における、視野角特性を特に優れたものとすることができる。また、拡散板等の構成を省略しても視野角特性を優れたものとすることができるので、例えば、透過型スクリーンの薄型化、リア型プロジェクタの薄型化を図ることができる。
【0114】
<B2’>上記のような基板4を基板搬送手段110により搬送する(図11(a)参照)。この際、基板4は、必要に応じて、加温(加熱)されていてもよい。これにより、凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状の転写を容易かつ確実に行うことができる。
基板搬送手段110により搬送されてきた基板4は、基板搬送手段110と凸部付き部材製造用成形型6との間に送り込まれる。この際、流動性樹脂供給部120から、基板4と凸部付き部材製造用成形型6との間に、樹脂材料9が供給される(図11(b)参照)。これにより、樹脂材料9が凸部付き部材製造用成形型6および基板4により押圧される。ここで、樹脂材料9は適度に流動性を有する(軟化した)状態のものなので、凸部付き部材製造用成形型6の表面形状に対応するように変形する。また、基板4の搬送に伴って、凸部付き部材製造用成形型6が軸62を中心にして回転し、凸部付き部材製造用成形型6による樹脂材料9の押圧部位が経時的に変化する(図11(c)参照)。その結果、凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状が転写された樹脂材料9が、順次、基板4上に接合されることとなる。その後、樹脂材料9の構成材料を固化(ただし、硬化(重合)を含む)させることにより、凹部61に対応する形状、配置のマイクロレンズ21が形成された、基板本体2が得られる(図11(d)参照)。樹脂材料9の構成材料の固化を硬化(重合)により行う場合、その方法としては、例えば、紫外線等の光の照射、電子線の照射、加熱等の方法が挙げられる。
【0115】
樹脂材料9を押圧する際の凸部付き部材製造用成形型6の温度は、樹脂材料9を構成する樹脂材料のガラス転移点以上の温度であるのが好ましい。これにより、樹脂材料9に凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状をより確実に転写できる。これに対し、凸部付き部材製造用成形型6の温度が低すぎると、押圧する前の樹脂材料9の温度や、樹脂材料9の構成材料によっては、樹脂材料9に対して凸部付き部材製造用成形型6の周面の形状を十分に転写するのが困難となる場合がある。
なお、図示の構成では、樹脂材料9は、凸部付き部材製造用成形型6の近傍で、基板4上に供給されるようになっているが、樹脂材料9が供給される部位はこれに限定されるものではない。例えば、樹脂材料9は、基板4上ではなく、凸部付き部材製造用成形型6上に供給されるものであってもよい。
【0116】
上記のようにして得られた基板本体2に対して、前述した実施形態と同様にしてブラックマトリックス3、着色部22を形成することにより(上記<B3>〜<B5>および図9参照)、マイクロレンズ基板1を得ることができる。
以下、前記透過型スクリーンを用いたリア型プロジェクタについて説明する。
図12は、本発明のリア型プロジェクタの構成を模式的に示す図である。
同図に示すように、リア型プロジェクタ300は、投写光学ユニット310と、導光ミラー320と、透過型スクリーン10とが筐体340に配置された構成を有している。
【0117】
そして、このリア型プロジェクタ300は、上記のような透過型スクリーン10を備えている。このため、リア型プロジェクタ300を大型でかつ高品質のものとすることができる。
また、特に、前述したマイクロレンズ基板1では、楕円形状のマイクロレンズ21が千鳥状(千鳥格子状)に配されているので、リア型プロジェクタ300では、モアレ等の問題が特に発生し難い。
【0118】
以上、本発明の凸部付き部材製造用成形型、凸部付き部材の製造方法、凸部付き部材、透過型スクリーンおよびリア型プロジェクタについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、凸部付き部材製造用成形型、凸部付き部材(マイクロレンズ基板)、透過型スクリーン、リア型プロジェクタを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。例えば、本発明の透過型スクリーンは、マイクロレンズ基板の出射面側に、光拡散板や他のレンズ等がさらに配されたものであってもよい。
【0119】
また、本発明の凸部付き部材の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、凸部付き部材製造用成形型の製造方法の初期孔形成工程において、初期孔81とともに、基材7に初期凹部71を形成するものとして説明したが、このような初期凹部71は形成されなくてもよい。初期孔81の形成条件(例えば、レーザのエネルギー強度、ビーム径、照射時間等)を適宜調整することにより、所望の形状の初期凹部71を形成したり、初期凹部71が形成されないように初期孔81のみを選択的に形成することができる。
【0120】
また、前述した実施形態では、ロール状の基材に対して、直接エッチングを施すことにより、周面に凹部を形成するものとして説明したが、例えば、エッチングにより形成された凹部を有するシート材を、ロール状の基材の周面に巻き付けること等により製造されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)が、着色部、ブラックマトリックスを有するものとして説明したが、このような構成はなくてもよい。
【0121】
また、前述した実施形態では、基板にマイクロレンズ(凸部)を形成した後に、ブラックマトリックスを形成するものとして説明したが、例えば、基板のマイクロレンズ(凸部)を形成すべき面とは反対側の面に、予めフォトポリマーを付与しておいた状態で、マイクロレンズを形成してもよい。
また、前述した実施形態では、凸部付き部材製造用成形型を用いて、凸部付き部材としてのマイクロレンズ基板を製造するものとして説明したが、例えば、凸部付き部材製造用成形型を用いて製造される部材を凹部付き部材製造用成形型として用いてもよい。言い換えると、凸部付き部材製造用成形型の表面形状を転写することにより表面付近に凸部を有する部材(凹部付き部材製造用成形型)を製造し、この部材を用いて、表面付近に凹部を有する部材を製造してもよい。これにより、例えば、凹レンズとしてのマイクロレンズを有するマイクロレンズ基板等を好適に製造することができる。なお、このような場合、凹部付き部材製造用成形型は、板状のものであってもよいし、ロール状のものであってもよい。
【0122】
また、前述した実施形態では、透過型スクリーンが、マイクロレンズ基板(凸部付き部材)とフレネルレンズとを備えるものとして説明したが、本発明の透過型スクリーンは、必ずしも、フレネルレンズを備えたものでなくてもよい。例えば、本発明の透過型スクリーンは、実質的に、本発明の凸部付き部材(マイクロレンズ基板)のみで構成されたものであってもよい。
【0123】
また、前述した実施形態では、凸部付き部材は、透過型スクリーン、リア型プロジェクタを構成する部材として説明したが、本発明の凸部付き部材の用途は、前記のようなものに限定されず、いかなるものであってもよい。例えば、本発明の凸部付き部材は、拡散板、ブラックマトリックススクリーン、投射型表示装置(フロントプロジェクタ)のスクリーン(フロントプロジェクションスクリーン)、投射型表示装置(フロントプロジェクタ)の液晶ライトバルブの構成部材等に適用されるものであってもよい。
【実施例】
【0124】
[マイクロレンズ基板および透過型スクリーンの作製]
(実施例1)
以下のように、凸部付き部材製造用成形型(マイクロレンズ基板製造用成形型)を製造した。
まず、基材として、直径35cm×幅(高さ)165mの円柱状(ロール状)のソーダガラス基材を用意した。
【0125】
このソーダガラス基材を、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む洗浄液に浸漬して6μmエッチングを行い、その表面を清浄化した。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
次に、このソーダガラス基材の周面上に、スパッタリング法にて、Cr/酸化Crの積層体(Crの外表面側に酸化Crが積層された積層体)を形成した。すなわち、ソーダガラス基材の表面に、Cr/酸化Crの積層体で構成されたのマスクを形成した。Cr層の厚さは0.03μm、酸化Cr層の厚さは0.01μmであった。
【0126】
次に、マスクに対してレーザ加工を行い、その全体に均等に多数の初期孔を形成した。
なお、レーザ加工は、YAGレーザを用いて、エネルギー強度1mW、ビーム径2.0μm、主走査方向における走査速度100mm/秒という条件で、間欠的にレーザ光を照射することにより行った。また、レーザ光の照射は、ロール状のソーダガラス基材の周面の端部付近から、幅(長さ)方向についての走査(主走査)を、他端付近まで行い、その後、ロール状のソーダガラス基材を所定角度回転させ、さらに、前記と同様な走査(主走査)を繰り返すことにより行った。
【0127】
これにより、マスクのほぼ全面に亘って、ソーダガラス基材の幅方向に、所定の大きさを有する初期孔が、千鳥状に配されたパターンが形成された。初期孔の平均幅は2μmであり、平均長さは2.1μmであった。
また、この際、ソーダガラス基材の表面に深さ0.05μmの凹部および変質層も形成した。
【0128】
次に、ソーダガラス基材にウェットエッチングを施し、ソーダガラス基材上に多数の平面視したときの形状が略楕円形状(扁平形状)の凹部(マイクロレンズ形成用凹部)を形成した。形成された多数の凹部は、互いにほぼ同一の形状を有していた。形成された凹部の短軸方向の長さ(直径)は54μm、長軸方向の長さは72μm、曲率半径は37.5μm、深さは36.5μmであった。また、凹部が形成されている有効領域における凹部の占有率は97%であった。
【0129】
なお、ウェットエッチングは、エッチング液として、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む水溶液を用い、浸漬時間は2時間とした。また、ウェットエッチングは、エッチング液中において、ソーダガラス基材を、その軸を中心に回転させつつ行った。また、ソーダガラス基材の回転方向は、ソーダガラス基材が3.5回転する毎に反転するようにした。
【0130】
次に、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸との混合物を用いてエッチングすることにより、マスクを除去した。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
これにより、図4に示すような、ソーダガラス基材上に、マイクロレンズ形成用の多数の凹部が千鳥状に配列された凸部付き部材製造用成形型を得た。得られた凸部付き部材製造用成形型の凹部が形成されている有効領域において、凹部が占める面積の割合(占有率)が97%であった。
【0131】
上記のようにして得られた凸部付き部材製造用成形型においては、凹部の長軸方向と凸部付き部材製造用成形型の軸方向とのなす角が0°であった。
次に、上記のようにして得られた凸部付き部材製造用成形型の周面(凹部が形成された面)に、離型剤(GF−6110)を付与した。
次に、上記のようにして得られた凸部付き部材製造用成形型を用いて、図7に示すようなマイクロレンズ基板製造装置を製造した。
次に、基板本体形成用の母材としての基板を用意した。当該基板としては、アクリル樹脂(ガラス転移点150℃)で構成され、横1.7m×1.1m、厚さ2mmのシート状部材を用意した。
次に、上記のような基板をマイクロレンズ基板製造装置の基板搬送手段上に配置した。
【0132】
基板搬送手段上の基板は、加熱手段により200℃に加熱された。その後、基板搬送手段により、加熱された基板を所定速度で搬送し、凸部付き部材製造用成形型により、搬送されてきた基板に、凸部付き部材製造用成形型の表面形状を転写した。この際、凸部付き部材製造用成形型は、加熱手段により、その表面付近が185℃に加熱された状態であった。
【0133】
その後、冷却することで、樹脂材料を固化させ、基板本体を得た。得られた基板本体(硬化後の樹脂)の屈折率は、1.50であった。また、得られた基板本体の樹脂層(マイクロレンズを除く部分)の厚さは1.095mmであった。また、略楕円形状(扁平形状)のマイクロレンズは、その短軸方向の長さ(直径)が54μm、長軸方向の長さが72μm、曲率半径が38μm、高さが36.0μmであった。また、マイクロレンズが形成されている有効領域におけるマイクロレンズの占有率は97%であった。
【0134】
その後、基板本体に対して、浸染により着色液を付与した。このとき、マイクロレンズが形成された面側全体が着色液に接触し、かつ、ロール状の凸部付き部材製造用成形型で押圧された面側には着色液が接触しないようにした。また、着色液を付与する際の基板本体および着色液の温度は、90℃に調整した。また、着色液付与時には、雰囲気の圧力が120kPaとなるように加圧した。着色液としては、分散染料(Blue(双葉産業製)):2重量部、分散染料(Red(双葉産業製)):0.1重量部、分散染料(Yellow(双葉産業製)):0.05重量部、ベンジルアルコール:10重量部、界面活性剤:2重量部、純水:1000重量部の混合物を用いた。
【0135】
上記のような条件で、基板本体と着色液とを20分間接触させた後、着色液が貯留された槽から、基板本体を取り出し、十分に水洗した後、乾燥させた。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行うことにより、着色部が形成されたマイクロレンズ基板(横1.6m×縦1.0m)を得た。形成された着色部の濃度は、5%であった。
また、上記の凸部付き部材製造用成形型を用いて、上記と同様な操作を繰り返し行うことにより、合計500枚のマイクロレンズ基板を製造した。
そして1枚目のマイクロレンズ基板および500枚目のマイクロレンズ基板を用いて、図3に示すような透過型スクリーンを得た。
【0136】
(実施例2)
まず、前記実施例1と同様にして凸部付き部材製造用成形型を製造した。
次に、この凸部付き部材製造用成形型の周面(凹部が形成された面)に、離型剤(GF−6110)を付与した。
次に、上記のようにして得られた凸部付き部材製造用成形型を用いて、図10に示すようなマイクロレンズ基板製造装置を製造した。
【0137】
次に、基板本体形成用の母材としての基板、および流動性を有する樹脂材料を用意した。前記基板としては、アクリル樹脂(ガラス転移点150℃)で構成され、横1.7m×縦1.1m、厚さ0.1mmのシート状部材を用意した。また、前記樹脂材料(流動性を有する樹脂材料)としては、アクリル樹脂(ガラス転移点110℃)を用意した。
次に、前記基板をマイクレンズ基板製造装置の基板搬送手段上に配置し、前記樹脂材料(流動性を有する樹脂材料)を流動性樹脂供給部に接続された樹脂貯留部に貯留した。
【0138】
基板搬送手段上の基板は、加熱手段により180℃に加熱された。また、樹脂貯留部に貯留された樹脂材料は、加熱手段により190℃に加熱された。
その後、基板搬送手段により、加熱された基板を所定速度で搬送し、流動性樹脂供給部から、搬送されてきた基板上に樹脂材料を供給した。樹脂材料が付与された基板は、基板搬送手段と凸部付き部材製造用成形型との間に導入され、この領域において、基板上の樹脂材料に、凸部付き部材製造用成形型の表面形状を転写した。この際、凸部付き部材製造用成形型は、加熱手段により、その表面付近が185℃に加熱された状態であった。
【0139】
その後、凸部付き部材製造用成形型の表面形状が転写された樹脂材料に紫外線を照射することにより、基板上の樹脂材料を硬化させ、基板本体を得た。得られた基板本体(硬化後の樹脂)の屈折率は、1.62であった。また、得られた基板本体の樹脂層(マイクロレンズを除く部分)の厚さは0.05μmであった。また、略楕円形状(扁平形状)のマイクロレンズは、その短軸方向の長さ(直径)が54μm、長軸方向の長さが72μm、曲率半径が38μm、高さが35.5μmであった。また、マイクロレンズが形成されている有効領域におけるマイクロレンズの占有率は97%であった。
【0140】
次に、上記のようにして得られた基板本体の出射側(マイクロレンズが形成されている面とは反対側の面)表面に、遮光性材料(カーボンブラック)が添加されたポジ型のフォトポリマー(PC405G:JSR株式会社製)を、ロールコーターにより付与した。フォトポリマー中における遮光性材料の含有量は、20wt%であった。
次に、90℃×30分のプレベーク処理を施した。
【0141】
次に、フォトポリマーが付与された面とは反対の面側から、80mJ/cmの平行光としての紫外線を照射した。これにより、照射した紫外線は、各マイクロレンズで集光され、各マイクロレンズの焦点f(ブラックマトリックスの厚さ方向の中心付近)近傍のフォトポリマーを選択的に露光した。
その後、0.5wt%のKOH水溶液を用いて、40秒の現像処理を施した。
【0142】
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行い、さらに、200℃×30分のポストベーク処理を施した。これにより、各マイクロレンズに対応した開口部を有するブラックマトリックスが形成された。形成されたブラックマトリックスの厚さは5μmであった。
次に、基板本体のブラックマトリックスが形成された面側に、拡散部を形成することにより、マイクロレンズ基板(横1.6m×縦1.0m)を得た。拡散部の形成は、アクリル系樹脂中に、拡散材としてのシリカ粒子が分散した構成の拡散板を熱融着により接合することにより行った。
また、上記の凸部付き部材製造用成形型を用いて、上記と同様な操作を繰り返し行うことにより、合計500枚のマイクロレンズ基板を製造した。
そして1枚目のマイクロレンズ基板および500枚目のマイクロレンズ基板を用いて、前記実施例1と同様にして図3に示すような透過型スクリーンを得た。
【0143】
(実施例3、4)
マスクの構成、レーザ光の照射条件(形成される初期孔の形状)、エッチング液への浸漬時間を変更することにより、凸部付き部材製造用成形型の凹部の形状、配列パターンを変更し、これにより、マイクロレンズ基板に形成されるマイクロレンズの形状、配列パターンを表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
【0144】
(実施例5、6)
マスクの構成、レーザ光の照射条件(形成される初期孔の形状)、エッチング液への浸漬時間を変更することにより、凸部付き部材製造用成形型の凹部の形状、配列パターンを変更し、これにより、マイクロレンズ基板に形成されるマイクロレンズの形状、配列パターンを表1に示すように変更した以外は、前記実施例2と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
【0145】
(実施例7)
レーザ光の照射条件(形成される初期孔の形状)、エッチング液への浸漬時間を変更することにより、凸部付き部材製造用成形型の凹部の形状、配列パターンを変更し、これにより、マイクロレンズ基板に形成されるマイクロレンズの形状、配列パターンを表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
【0146】
(実施例8)
レーザ光の照射条件(形成される初期孔の形状)、エッチング液への浸漬時間を変更することにより、凸部付き部材製造用成形型の凹部の形状、配列パターンを変更し、これにより、マイクロレンズ基板に形成されるマイクロレンズの形状、配列パターンを表1に示すように変更した以外は、前記実施例2と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
【0147】
(比較例1)
以下のように、マイクロレンズ形成用の凹部を備えた平板状の凹部付き基板(凸部付き部材製造用成形型)を製造した。
まず、基板として、横1.7m×縦1.1m角、厚さ2.0mmのソーダガラス基板を用意した。
【0148】
このソーダガラス基板を、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む洗浄液に浸漬して6μmエッチングを行い、その表面を清浄化した。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
次に、このソーダガラス基板上に、スパッタリング法にて、Cr/酸化Crの積層体(Crの外表面側に酸化Crが積層された積層体)を形成した。すなわち、ソーダガラス基板の表面に、Cr/酸化Crの積層体で構成されたのマスクおよび裏面保護膜を形成した。Cr層の厚さは0.02μm、酸化Cr層の厚さは0.02μmであった。
【0149】
次に、マスクに対してレーザ加工を行い、マスクの中央部1.65cm×1.05cmの範囲に多数の初期孔を形成した。
なお、レーザ加工は、YAGレーザを用いて、エネルギー強度1mW、ビーム径3μm、走査速度0.1m/秒という条件で行った。
これにより、マスクの上記範囲全面に亘って、所定の長さを有する初期孔が、格子状(正方格子状)に配されたパターンが形成された。初期孔の平均。幅は2.0μmであり、平均長さは2.1μmであった。
【0150】
また、この際、ソーダガラス基板の表面に深さ0.005μmの凹部および変質層も形成した。
次に、ソーダガラス基板にウェットエッチングを施し、ソーダガラス基板上に多数の平面視したときの形状が円形状の凹部(マイクロレンズ形成用凹部)を形成した。形成された多数の凹部は、互いにほぼ同一の形状を有していた。形成された凹部の直径は100μm、曲率半径は60μm、深さは48μmであった。また、凹部が形成されている有効領域における凹部の占有率は100%であった。
【0151】
なお、ウェットエッチングは、エッチング液として、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む水溶液を用い、浸漬時間は2.5時間とした。
次に、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸との混合物を用いてエッチングすることにより、マスクおよび裏面保護膜を除去した。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
これにより、ソーダガラス基板上に、マイクロレンズ形成用の多数の凹部が格子状(正方格子状)に配列された凹部付き基板を得た。得られた凹部付き基板を平面視したときに、凹部が形成されている有効領域において、凹部が占める面積の割合が100%であった。
【0152】
次に、上記のようにして得られた凹部付き基板の凹部が形成された側の面に、離型剤(GF−6110)を付与し、さらに、未重合(未硬化)のアクリル樹脂を付与した。
次に、ソーダガラスで構成された平板で、前記アクリル樹脂を押圧した。この際、平板とアクリル樹脂との間に、空気が侵入しないようにした。また、平板としては、アクリル樹脂を押圧する側の面に離型剤(GF−6110)が塗布されたものを用いた。
【0153】
その後、紫外線を照射することにより、アクリル樹脂を硬化させ、基板本体を得た。得られた基板本体(硬化後の樹脂)の屈折率は、1.5であった。また、得られた基板本体の樹脂層(マイクロレンズを除く部分)の厚さは2.0μmであった。また、円形状のマイクロレンズは、その直径が100μm、曲率半径が50μm、高さが47μmであった。また、マイクロレンズが形成されている有効領域におけるマイクロレンズの占有率は100%であった。
次に、基板本体から、平板、凹部付き基板を取り外した。この際、平板の除去は容易に行うことができたが、凹部付き基板の除去は極めて困難であった。十分慎重に凹部付き基板の除去を試みたが、形成されたマイクロレンズにカケ等の欠陥を生じてしまった。
【0154】
次に、上記のようにして得られた基板本体に対して、前記実施例1と同様にして、着色部を形成することにより、マイクロレンズ基板(横1.6m×縦1.0m)を得た。形成された着色部の濃度は、55%であった。
また、上記の凹部付き基板(凸部付き部材製造用成形型)を用いて、上記と同様な操作を繰り返し行うことにより、合計500枚のマイクロレンズ基板を製造した。
そして1枚目のマイクロレンズ基板および500枚目のマイクロレンズ基板を用いて、前記実施例1と同様にして図3に示すような透過型スクリーンを得た。
【0155】
(比較例2)
基板本体に対して、着色部を形成しなかった以外は、前記比較例1と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
前記各実施例および各比較例について、凸部付き部材製造用成形型を製造する際に用いたマスクの構成、レーザ光の照射により形成された初期孔の形状、製造された凸部付き部材製造用成形型が有する凹部の形状、配列パターン、製造されたマイクロレンズ基板が有するマイクロレンズの形状、配列パターン、マイクロレンズ基板(基板本体)の生産性等を表1にまとめて示す。
【0156】
【表1】

【0157】
表1から明らかなように、本発明では、生産性良くマイクロレンズ基板を製造することができたのに対し、比較例では、マイクロレンズ基板の生産性が著しく悪かった。より詳しく説明すると、本発明では、凸部付き部材製造用成形型から基板本体(マイクロレンズ基板)を剥離する操作を容易かつ確実に行うことができたのに対し、比較例では、凹部付き基板(凸部付き部材製造用成形型)からの基板本体の剥離が困難であり、剥離には、本発明に比べて大きな力が必要であった。
【0158】
[リア型プロジェクタの作製]
前記各実施例および各比較例の透過型スクリーンを用いて、図12に示すようなリア型プロジェクタを、それぞれ作製した。
[凹部付き部材の耐久性評価]
前記各実施例および各比較例の凸部付き部材製造用成形型について、500枚のマイクロレンズ基板の製造を行った後の(基板本体の剥離を500回繰り返し行った後の)凸部付き部材製造用成形型について、凹部が形成された面を、顕微鏡を用いて観察した。凸部付き部材製造用成形型表面の凹凸パターンの状態について以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:凹凸パターンの欠けが全く認められない。
○:凹凸パターンの欠けがほとんど認められない。
△:凹凸パターンの欠けがわずかに認められる。
×:凹凸パターンの欠けが顕著に認められる。
【0159】
[ドット抜け等の評価]
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタの透過型スクリーンにサンプル画像を表示させた。表示された画像について、ドット抜け、明るさのムラの発生状況を以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:ドット抜け、明るさのムラが全く認められない。
○:ドット抜け、明るさのムラがほとんど認められない。
△:ドット抜け、明るさのムラのうち少なくとも一つがわずかに認められる。
×:ドット抜け、明るさのムラのうち少なくとも一つが顕著に認められる。
【0160】
[回折光、モアレ、色ムラの評価]
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタの透過型スクリーンにサンプル画像を表示させた。表示された画像について、回折光、モアレ、色ムラの発生状況を以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:回折光、モアレ、色ムラが全く認められない。
○:回折光、モアレ、色ムラがほとんど認められない。
△:回折光、モアレ、色ムラのうち少なくとも一つがわずかに認められる。
×:回折光、モアレ、色ムラのうち少なくとも一つが顕著に認められる。
【0161】
[コントラストの評価]
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタについて、コントラストの評価を行った。
コントラスト(CNT)として、暗室において413lxの全白光が入射した時の白表示の正面輝度(白輝度)LW[cd/m]と、明室において光源を全消灯した時の黒表示の正面輝度の増加量(黒輝度増加量)LB[cd/m]との比LW/LBを求めた。なお、黒輝度増加量は、暗室の黒表示の輝度に対する増加量をいう。また、明室での測定は、外光照度が約185lxの環境下で行った。暗室での測定は、外光照度が5lx以下の環境下で行った。
【0162】
LW/LBで表されるコントラストについて、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:LW/LBで表されるコントラストが500以上。
○:LW/LBで表されるコントラストが400以上500未満。
△:LW/LBで表されるコントラストが300以上400未満。
×:LW/LBで表されるコントラストが300未満。
【0163】
[視野角の測定]
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタの透過型スクリーンにサンプル画像を表示させた状態で、鉛直方向および水平方向での視野角の測定を行った。
視野角の測定は、変角光度計(ゴニオフォトメータ)で、1度間隔で測定するという条件で行った。
これらの結果を表2にまとめて示す。
【0164】
【表2】

【0165】
表2から明らかなように、本発明では、基板本体(マイクロレンズ基板)の製造(剥離)を繰り返し行った後でも、凸部付き部材製造用成形型において凹凸パターンの欠陥は認められなかった。また、本発明では、ドット抜け、明るさのムラ、回折光、モアレ、色ムラ等のない優れた画質の画像が得られた。また、本発明では、優れたコントラストが得られ、また、視野角特性にも優れていた。すなわち、本発明では、優れた画像を安定的に表示することができた。特に、凸部付き部材製造用成形型を繰り返し使用した後に製造されたマイクロレンズ基板を備えた透過型スクリーン、リア型プロジェクタにおいても、優れた結果が得られた。
【0166】
これに対し、比較例では、基板本体(マイクロレンズ基板)の製造(剥離)を繰り返し行った凹部付き基板(凸部付き部材製造用成形型)では凹凸パターンの破壊がみられ、得られた基板本体(マイクロレンズ基板)を用いて製造された透過型スクリーンおよびリア型プロジェクタでも満足な結果が得られなかった。これは、凹部付き基板において、カケ等の凹凸パターンの欠陥が発生することにより、製造されたマイクロレンズ基板においても、所望の形状のマイクロレンズを形成することができなかったり、基板本体を凹部付き基板から剥離する際に、マイクロレンズにカケ等の欠陥が生じてしまったためであると考えられる。
【0167】
また、凸部付き部材製造用成形型からの転写方法として、加熱して柔らかくした樹脂に型を押し付け冷却する、熱プレス転写法(押し出し成形含む)、モノマ樹脂を反応重合させ固める注型重合方法(キャステング法)、樹脂を光硬化させる2P法等の方法を用いた以外は、前記各実施例、前記各比較例と同様にして、マイクロレンズ基板、透過型スクリーン、リア型プロジェクタを製造し、前記と同様な評価を行ったところ、前記と同様な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図2】図1に示すマイクロレンズ基板の平面図である。
【図3】図1に示すマイクロレンズ基板を備えた、本発明の透過型スクリーンの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図4】本発明の凸部付き部材製造用成形型を示す模式的な斜視図である。
【図5】図4に示す凸部付き部材製造用成形型の縦断面図である。
【図6】図4、図5に示す凸部付き部材製造用成形型の製造方法を示す模式的な縦断面図である。
【図7】本発明のマイクロレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の一例を示す模式的な縦断面図である。
【図8】本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造方法の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図9】本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造方法の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図10】本発明のマイクロレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の他の一例を示す模式的な縦断面図である。
【図11】本発明のマイクロレンズ基板(凸部付き部材)の製造方法の他の実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図12】本発明のリア型プロジェクタの構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0169】
1…マイクロレンズ基板(凸部付き部材) 2…基板本体 21…マイクロレンズ(凸部) 22…着色部(外光吸収部) 25…第1の行 26…第2の行 3…ブラックマトリックス(遮光層) 30…搬送手段 31…開口部 32…フォトポリマー 4…基板 5…フレネルレンズ部 51…フレネルレンズ 6…凸部付き部材製造用成形型(マイクロレンズ基板製造用成形型) 61…凹部(マイクロレンズ形成用凹部) 62…軸(回転軸) 7…基材 71…初期凹部 8…マスク 81…初期孔(開口部) 9…樹脂材料(流動性樹脂材料) 10…透過型スクリーン 100、100’…マイクロレンズ基板製造装置(凸部付き部材製造装置) 110…基板搬送手段 120…流動性樹脂供給部 300…リア型プロジェクタ 310…投写光学ユニット 320…導光ミラー 340…筐体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズ基板製造用成形型、マイクロレンズ基板の製造方法、マイクロレンズ基板、透過型スクリーンおよびリア型プロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リア型プロジェクタは、ホームシアター用モニター、大画面テレビ等に好適なディスプレイとして、需要が高まりつつある。
リア型プロジェクタに用いられる透過型スクリーンには、レンチキュラレンズが一般的に用いられている。このようなレンチキュラレンズを備えた従来のリア型プロジェクタでは、左右の視野角が大きいが、上下の視野角が小さい(視野角に偏りがある)という問題があった。
【0003】
このような問題を解決する目的で、光学的に凹または凸の回転対称な形状のマイクロレンズが形成されたマイクロレンズシートを用いる試みがあった(例えば、特許文献1参照)。
そして、上記のようなマイクロレンズシート(マイクロレンズ基板)は、従来、複数のマイクロレンズ形成用凹部を有する凹部付き基板に、未硬化の樹脂を供給し、平滑な透明基板を接合し、押圧・密着させ、その後、樹脂を硬化させるという、いわゆる2P法を用いて製造されていた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、上記のような方法では、硬化した樹脂を凹部付き基板から離型させるのが困難であるという問題がある。また、このような問題は、製造すべきマイクロレンズ基板が大面積であるとより一層顕著なものとなり、大型のマイクロレンズ基板を製造する際の歩留りが著しく低下する。
また、製造すべきマイクロレンズ基板が大型のもの(例えば、対角線長が140cm以上の基板)である場合、上記のような問題がより一層顕著になるとともに、マイクロレンズ基板の製造に用いる凹部付き基板の大きさも大きくなり、マイクロレンズ基板の製造設備がさらに大型化するという問題があった。また、ホームシアター用モニター、ディスプレイ等の近年の急速な大型化に伴い、それに対応するように凹部付き基板の大型化も求められており、各サイズに対応する多数種の凹部付き基板を製造する必要があった。その結果、マイクロレンズ基板の低価格化を阻害するという問題を引き起こしていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−131506号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−279949号公報(段落番号0167〜0173)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、マイクロレンズ基板を生産性良く製造すること、マイクロレンズ基板を生産性良く製造するのに好適に用いることができるマイクロレンズ基板製造用成形型を提供すること、マイクロレンズの欠損(カケ)等の欠陥の発生が効果的に防止されたマイクロレンズ基板を提供すること、また、当該マイクロレンズ基板を備えた透過型スクリーン、リア型プロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型は、型押しすることで、凸曲面を備えたマイクロレンズを多数個有するマイクロレンズ基板を製造する成形型であって、
成形型はロール形状をなすものであり、
成形型の型押しする周面に、マスクを用いたエッチングにより形成され、かつ、前記マイクロレンズに対応する形状の凹部を有することを特徴とする。
これにより、マイクロレンズ基板を生産性良く製造するのに好適に用いることができるマイクロレンズ基板製造用成形型を提供することができる。
【0008】
本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型では、前記マスクは、主としてCrで構成された層と、主として酸化Crで構成された層とを有する積層体であることが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板製造用成形型の製造時において、マスクに対して、凹部形成用の開口部を所望の形状のものとして容易かつ確実に形成することができるとともに、エッチング時における基材(ロール状基材)とマスクとの密着性を特に優れたものとすることができる。したがって、マイクロレンズ基板製造用成形型が有する凹部を容易かつ確実に所望の形状に形成することができ、結果として、マイクロレンズ基板のマイクロレンズの形状を容易かつ確実に所望の形状に形成することができる。
【0009】
本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型では、前記凹部は、略楕円形状を有するものであることが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板製造用成形型を用いて製造されるマイクロレンズ基板を、モアレ等の不都合等が特に発生し難く、かつ、視野角特性に優れたものとすることができる。
【0010】
本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型では、前記凹部の長軸方向の長さが、10〜500μmであることが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板製造用成形型を用いて製造されるマイクロレンズ基板について、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板の生産性を優れたものとすることができる。
【0011】
本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型では、前記凹部の短軸方向の長さが、10〜400μmであることが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板製造用成形型を用いて製造されるマイクロレンズ基板について、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板の生産性を優れたものとすることができる。
【0012】
本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型では、前記凹部の深さが、5〜250μmであることが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板製造用成形型を用いて製造されるマイクロレンズ基板について、視野角特性を特に優れたものとすることができるとともに、マイクロレンズ基板の生産時における、マイクロレンズの形状の欠陥の発生をより効果的に防止することができる。
【0013】
本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型では、前記エッチングは、前記マスクが付されたロール状の基材を、その軸を中心に回転させつつ行うものであることが好ましい。
これにより、各凹部について、その形状のばらつきを特に小さくすることができ、製造されるマイクロレンズ基板の特性を特に優れたものとすることができる。
【0014】
本発明のマイクロレンズ基板の製造方法は、本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型を用いてマイクロレンズ基板を製造することを特徴とする。
これにより、マイクロレンズ基板を生産性良く製造することができる。特に、マイクロレンズの欠損(カケ)等の欠陥の発生を効果的に防止しつつ、生産性良くマイクロレンズ基板を製造することができる。
【0015】
本発明のマイクロレンズ基板の製造方法では、主として樹脂材料で構成された母材に対して、加熱した状態の前記マイクロレンズ基板製造用成形型を、相対的に回転させつつ押圧し、前記母材に前記成形型の周面の形状を転写することが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板を生産性良く製造することができる。特に、マイクロレンズの欠損(カケ)等の欠陥の発生を効果的に防止しつつ、生産性良くマイクロレンズ基板を製造することができる。
【0016】
本発明のマイクロレンズ基板の製造方法では、板状またはシート状の基材の表面付近に、流動性を有する樹脂材料を付与しつつ、相対的に回転する前記成形型で、前記樹脂材料を前記母材に対して押圧し、前記成形型の周面の形状を転写することが好ましい。
これにより、マイクロレンズ基板を生産性良く製造することができる。特に、マイクロレンズの欠損(カケ)等の欠陥の発生を効果的に防止しつつ、生産性良くマイクロレンズ基板を製造することができる。
【0017】
本発明のマイクロレンズ基板の製造方法では、押圧時における前記型の温度は、前記樹脂材料のガラス転移点以上であることが好ましい。
これにより、成形型の周面形状をより確実に転写することができる。
本発明のマイクロレンズ基板は、本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、マイクロレンズの欠損(カケ)等の欠陥の発生が効果的に防止されたマイクロレンズ基板を提供することができる。
【0018】
本発明のマイクロレンズ基板は、本発明の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、マイクロレンズの欠損(カケ)等の欠陥の発生が効果的に防止されたマイクロレンズ基板を提供することができる。
本発明の透過型スクリーンは、本発明のマイクロレンズ基板を備えたことを特徴とする。
これにより、優れた画像を安定的に表示することができる透過型スクリーンを提供することができる。
本発明のリア型プロジェクタは、本発明の透過型スクリーンを備えたことを特徴とする。
これにより、優れた画像を安定的に表示することができるリア型プロジェクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、本発明において、「基板」とは、実質的に可撓性を有さない、比較的肉厚の大きいものから、シート状のものや、フィルム状のもの等の含む概念のことを指す。
また、本発明のマイクロレンズ基板等の用途は、特に限定されないが、本実施形態では、主に、マイクロレンズ基板を、透過型スクリーン、リア型プロジェクタを構成する凸レンズ基板として用いるものとして説明する。
まず、マイクロレンズ基板製造用成形型、マイクロレンズ基板製造用成形型を用いたマイクロレンズ基板の製造方法の説明に先立ち、本発明のマイクロレンズ基板および透過型スクリーンの構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明のマイクロレンズ基板の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図、図2は、図1に示すマイクロレンズ基板の平面図、図3は、図1に示すマイクロレンズ基板を備えた、本発明の透過型スクリーンの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。なお、以下の説明では、図1、図3中の左側を「(光の)入射側」、右側を「(光の)出射側」と言う。また、本発明においては、特に断りのない限り、「(光の)入射側」、「(光の)出射側」とは、それぞれ、画像光(映像光)を得るための光の「入射側」、「出射側」のことを指し、外光等の「入射側」、「出射側」のことを指すものではない。
【0021】
マイクロレンズ基板1は、後述する透過型スクリーン10を構成する部材であり、図1に示すように、所定のパターンで配列された複数個のマイクロレンズ21を備えた基板本体2と、遮光性を有する材料で構成されたブラックマトリックス(遮光層)3とを備えている。また、マイクロレンズ基板1の光の入射側(すなわち、マイクロレンズ21の光の入射側)には、着色部(外光吸収部)22が設けられている。
【0022】
基板本体2は、通常、透明性を有する材料で構成される。
基板本体2の構成材料は、特に限定されないが、主として樹脂材料で構成され、所定の屈折率を有する透明な材料で構成されている。
基板本体2の具体的な構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
【0023】
基板本体2を構成する樹脂材料は、一般に、各種気体(マイクロレンズ基板1が用いられる雰囲気)より大きな絶対屈折率を有するものであるが、絶対屈折率の具体的な値は、1.2〜1.9であるのが好ましく、1.35〜1.75であるのがより好ましく、1.45〜1.6であるのがさらに好ましい。樹脂材料の絶対屈折率が前記範囲内の値であると、光(入射光)の利用効率を特に優れたものとしつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0024】
マイクロレンズ基板1は、光の入射する面側に凸面を有する凸レンズとしてのマイクロレンズ21を複数個備えている。
本実施形態において、マイクロレンズ21は、マイクロレンズ基板1を平面視した際の縦幅が横幅よりも大きい略楕円形(扁平形状、略俵形)を有している。マイクロレンズ21がこのような形状を有することにより、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。特に、水平方向および鉛直方向の視野角特性をともに優れたものとすることができる。
【0025】
平面視したときのマイクロレンズ21の短軸方向(横方向)の長さをL[μm]、長軸方向(縦方向)の長さをL[μm]としたとき、0.10≦L/L≦0.99の関係を満足するのが好ましく、0.5≦L/L≦0.95の関係を満足するのがより好ましく、0.6≦L/L≦0.8の関係を満足するのがさらに好ましい。上記のような関係を満足することにより、上述したような効果がさらに顕著なものとなる。
【0026】
平面視したときのマイクロレンズ21の短軸方向の長さは、10〜500μmであるのが好ましく、30〜300μmであるのがより好ましく、50〜100μmであるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の短軸方向の長さが前記範囲内の値であると、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、スクリーンに投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板1(透過型スクリーン10)の生産性をさらに高めることができる。
【0027】
また、平面視したときのマイクロレンズ21の長軸方向の長さは、15〜750μmであるのが好ましく、45〜450μmであるのがより好ましく、75〜150μmであるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の短軸方向の長さが前記範囲内の値であると、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、スクリーンに投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板1(透過型スクリーン10)の生産性をさらに高めることができる。
【0028】
また、マイクロレンズ21の短軸方向についての曲率半径(以下、単に「マイクロレンズ21の曲率半径」とも言う)は、5〜250μmであるのが好ましく、15〜150μmであるのがより好ましく、25〜50μmであるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の曲率半径が前記範囲内の値であると、視野角特性を特に優れたものとすることができる。特に、水平方向および鉛直方向の視野角特性をともに優れたものとすることができる。
【0029】
また、マイクロレンズ21の高さは、5〜250μmであるのが好ましく、15〜150μmであるのがより好ましく、25〜100μmであるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の高さが前記範囲内の値であると、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
また、マイクロレンズ21の高さをH[μm]、マイクロレンズ21の短軸方向の長さをL[μm]としたとき、0.90≦L/H≦2.50の関係を満足するのが好ましく、1.0≦L/H≦1.8の関係を満足するのが好ましく、1.2≦L/H≦1.6の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0030】
また、これら複数個のマイクロレンズ21は、千鳥格子状に配列している。このようにマイクロレンズ21が配列することにより、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止することができる。これに対し、例えば、マイクロレンズが正方格子状等に配列したものであると、モアレ等の不都合の発生を十分に防止することが困難となる。また、マイクロレンズをランダムに配した場合、マイクロレンズが形成されている有効領域におけるマイクロレンズの占有率を十分に高めるのが困難となり、マイクロレンズ基板の光の透過率(光の利用効率)を十分に高めるのが困難となり、得られる画像が暗いものとなる。
【0031】
上記のように、マイクロレンズ21は、マイクロレンズ基板1を平面視したときに、千鳥格子状に配列しているが、複数のマイクロレンズ21で構成される第1の行25と、それに隣接する第2の行26とが、横方向に半ピッチ分だけずれているのが好ましい。これにより、光の干渉によるモアレの発生等をより効果的に防止するとともに、かつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0032】
上記のように、マイクロレンズの形状や配列方式、占有率等を厳密に規定することにより、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
また、各マイクロレンズ21は、入射側に突出した凸レンズとして形成されており、焦点fが、ブラックマトリックス(遮光層)3に設けられた開口部31の近傍に位置するように設計されている。すなわち、マイクロレンズ基板1に対して、ほぼ垂直な方向から入射した平行光La(後述するフレネルレンズ部5からの平行光La)は、マイクロレンズ基板1の各マイクロレンズ21によって集光され、ブラックマトリックス3の開口部31近傍で焦点fを結ぶ。このように、ブラックマトリックス3の開口部31の近傍でマイクロレンズ21が焦点を結ぶことにより、光の利用効率を特に優れたものとすることができる。また、開口部31の近傍でマイクロレンズ21が焦点を結ぶことにより、開口部31の面積を小さくすることができる。すなわち、マイクロレンズ基板1を平面視したときの、ブラックマトリックス3(開口部31以外の領域)で覆われた面積の割合を大きくすることができる。その結果、マイクロレンズ基板を透過した光により形成される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0033】
また、マイクロレンズ基板1を光の入射面側(図2で示した方向)から平面視したときの、マイクロレンズ21が形成されている有効領域において、マイクロレンズ21の占有率は、90%以上であるのが好ましく、96%以上であるのがより好ましく、97〜99.5%であるのがさらに好ましい。マイクロレンズ21の占有率が90%以上であると、マイクロレンズ21以外を通過する直進光をより少なくすることができ、光利用効率をさらに向上させることができる。なお、マイクロレンズ21の占有率は、平面視したときのマイクロレンズ21の中心(頂部の中心)211と、当該マイクロレンズ21に隣接する、マイクロレンズ21が形成されていない部位の中心部とを結ぶ線分において、マイクロレンズ21が形成されている部位の長さL[μm]と、前記線分の長さL[μm]との比率(L/L×100[%])として求めることができる(図2参照)。
【0034】
また、前述したように、マイクロレンズ基板1の光の入射側(すなわち、マイクロレンズ21の光の入射側)には、着色部22が設けられている。着色部22は、入射側から入射した光を十分に透過することができるとともに、外光(例えば、光の出射側等から不本意に入射した外光等)が、出射側に反射するのを防止する機能を有する。このような着色部を有することにより、コントラストに優れた画像を得ることができる。
【0035】
特に、本実施形態において、着色部22は、後に詳述するように、基板本体2に着色液(特に、組成に特徴を有する着色液)を付与することにより形成されたものである。より詳しく説明すると、着色部22は、後に詳述するような着色液を基板本体2に付与することにより、着色剤が基板本体2(マイクロレンズ21)の内部に含浸して形成されたものである。着色部22がこのようにして形成されたものであると、基板本体上に着色層を積層(外付け)した場合に比べて、着色層の密着性が高くなる。その結果、例えば、界面付近での屈折率の変化等によるマイクロレンズ基板の光学特性への悪影響の発生をより確実に防止することができる。
【0036】
また、着色部22は、基板本体2に着色液を付与することにより形成されたものであるため、各部位での厚さのばらつき(特に、基板本体の表面形状に対応しない厚さのばらつき)が小さい。これにより、投射される画像において、色ムラ等の不都合が発生するのをより確実に防止することができる。
また、着色部22は、着色剤を含む材料で構成されているものの、通常、その主成分は、基板本体2(マイクロレンズ21)の主成分と同一である。したがって、着色部22と、それ以外の非着色部との境界付近での急激な屈折率の変化等が生じ難い。したがって、マイクロレンズ基板1全体としての光学特性を設計し易く、また、マイクロレンズ基板1としての光学特性は安定し、信頼性の高いものとなる。
【0037】
着色部22の濃度は、特に限定されないが、分光透過率に基づいたY値(D65/2°視野)で20〜85%であるのが好ましく、35〜70%であるのがより好ましく、35〜70%であるのがさらに好ましい。着色部22の濃度が前記範囲内の値であると、マイクロレンズ基板を透過した光により形成される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。これに対し、着色部22の濃度が前記下限値未満であると、入射光の透過率が低下し、得られる画像において十分な輝度が得られず、結果として、画像のコントラストが不十分となる可能性がある。また、着色部22の濃度が前記上限値を超えると、外光(光の入射側とは反対側から入射する外光)の反射を十分に防止することが困難となり、明室において光源を全消灯させた際の、黒表示の表面輝度の増加量(黒輝度)が大きくなるため、画像のコントラストを向上させるという効果が十分に得られない可能性がある。
【0038】
着色部22の色は、特に限定されないが、青色を基調とし、赤色あるいは茶色あるいは黄色を混色した着色剤を用い、外観としては無彩色で黒色であり、光源の光の三原色のバランスを制御する特定の波長の光を選択的に吸収または透過するものであるのが好ましい。これにより、外光の反射を防止し、マイクロレンズ基板を透過した光により形成される画像の色調を正確に表現し、さらに色座標が広く(色調の表現の幅が十分に広く)、より深い黒を表現できることで、結果的にコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0039】
また、マイクロレンズ基板1の光の出射側の面には、ブラックマトリックス3が設けられている。ブラックマトリックス3は、遮光性を有する材料で構成され、層状に形成されたものである。このようなブラックマトリックス3を有することにより、当該ブラックマトリックス3に、外光(投影画像を形成する上で好ましくない外光)を吸収させることができ、スクリーンに投影される画像を、コントラストに優れたものとすることができる。特に、前述したような着色部22を有するとともに、ブラックマトリックス3を有することにより、マイクロレンズ基板1による画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
このようなブラックマトリックス3は、各マイクロレンズ21を透過した光の光路上に開口部31を有している。これにより、各マイクロレンズ21で集光された光を、効率良く、ブラックマトリックス3の開口部31を通過させることができる。その結果、マイクロレンズ基板1の光利用効率を高いものとすることができる。
【0040】
また、ブラックマトリックス3の厚さ(平均厚さ)は、0.01〜5μmであるのが好ましく、0.01〜3μmであるのがより好ましく、0.03〜1μmであるのがさらに好ましい。ブラックマトリックス3の厚さが前記範囲内の値であると、ブラックマトリックス3の不本意な剥離、クラック等をより確実に防止しつつ、ブラックマトリックス3としての機能をより効果的に発揮させることができ、例えば、マイクロレンズ基板1を備えた透過型スクリーン10において、投影される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0041】
次に、上述したようなマイクロレンズ基板1を備えた透過型スクリーン10について説明する。
図3に示すように、透過型スクリーン10は、フレネルレンズ部5と、前述したマイクロレンズ基板1とを備えている。フレネルレンズ部5は、光(画像光)の入射側に設置されており、フレネルレンズ部5を透過した光が、マイクロレンズ基板1に入射する構成になっている。
フレネルレンズ部5は、出射側表面に、ほぼ同心円状に形成されたプリズム形状のフレネルレンズ51を有している。このフレネルレンズ部5は、投射レンズ(図示せず)からの画像光を屈折させ、マイクロレンズ基板1の主面の垂直方向に平行な平行光Laにするものである。
【0042】
以上のように構成された透過型スクリーン10では、投射レンズからの映像光が、フレネルレンズ部5によって屈折し、平行光Laとなる。そして、この平行光Laは、マイクロレンズ基板1の着色部が形成された面側からに入射し、各マイクロレンズ21によって集光し、焦点を結んだ後に拡散する。このとき、マイクロレンズ基板1に入射した光は、十分な透過率でマイクロレンズ基板1を透過する。開口部31を通過した光は、拡散し、観察者に平面画像として観測される。
次に、上述したマイクロレンズ基板の製造に好適に用いることができる本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型、および、その製造方法について説明する。
【0043】
図4は、マイクロレンズ基板の製造に用いるマイクロレンズ基板製造用成形型を示す模式的な斜視図、図5は、図4に示すマイクロレンズ基板製造用成形型の縦断面図、図6は、図4、図5に示すマイクロレンズ基板製造用成形型の製造方法を示す模式的な縦断面図である。なお、マイクロレンズ基板製造用成形型の製造においては、実際にはマイクロレンズ基板製造用成形型の周面を構成する基材上に多数の凹部(マイクロレンズ形成用凹部)を形成するが、ここでは、説明をわかりやすくするために、その一部分を強調して示した。
【0044】
図4に示すように、マイクロレンズ基板製造用成形型6は、ロール形状をなしており、その周面に、多数個の凹部61を有している。これらの凹部61は、前述したマイクロレンズ基板1を構成するマイクロレンズ21に対応する形状を有し、かつ、これらのマイクロレンズ21の配列方式に対応する方式で配列している。すなわち、凹部61は、通常、マイクロレンズ21と、実質的に同一の(マイクロレンズが凸部であるのに対し凹部であり、かつ、転写された形状、位置関係である以外は同一の)形状(寸法)、配列方式を有している。
【0045】
より詳しく説明すると、本実施形態において、凹部(マイクロレンズ形成用凹部)61は、マイクロレンズ基板製造用成形型6を平面視した際の縦幅が横幅よりも大きい略楕円形(扁平形状、略俵形)を有している。凹部61がこのような形状を有することにより、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができるマイクロレンズ基板1の製造に好適に用いることができる。
【0046】
また、平面視したときの凹部61の短軸方向(横方向)の長さをL[μm]、長軸方向(縦方向)の長さをL[μm]としたとき、0.10≦L/L≦0.99の関係を満足するのが好ましく、0.5≦L/L≦0.95の関係を満足するのがより好ましく、0.6≦L/L≦0.8の関係を満足するのがさらに好ましい。上記のような関係を満足することにより、上述したような効果がさらに顕著なものとなる。
【0047】
また、平面視したときの凹部61の短軸方向の長さは、10〜500μmであるのが好ましく、30〜300μmであるのがより好ましく、50〜100μmであるのがさらに好ましい。凹部61の短軸方向の長さが前記範囲内の値であると、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、スクリーンに投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板1(マイクロレンズ基板製造用成形型6)の生産性をさらに高めることができる。
【0048】
また、平面視したときの凹部61の長軸方向の長さは、15〜750μmであるのが好ましく、45〜450μmであるのがより好ましく、75〜150μmであるのがさらに好ましい。凹部61の短軸方向の長さが前記範囲内の値であると、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止しつつ、スクリーンに投影される画像において十分な解像度を得ることができるとともに、マイクロレンズ基板1(マイクロレンズ基板製造用成形型6)の生産性をさらに高めることができる。
【0049】
また、凹部61の短軸方向についての曲率半径(以下、単に「凹部61の曲率半径」とも言う)は、5〜250μmであるのが好ましく、15〜150μmであるのがより好ましく、25〜50μmであるのがさらに好ましい。凹部61の曲率半径が前記範囲内の値であると、視野角特性を特に優れたものとすることができる。特に、水平方向および鉛直方向の視野角特性をともに優れたものとすることができる。
【0050】
また、凹部61の深さは、5〜250μmであるのが好ましく、15〜150μmであるのがより好ましく、25〜100μmであるのがさらに好ましい。凹部61の深さが前記範囲内の値であると、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
また、これら複数個の凹部61は、千鳥格子状に配列している。このように凹部61が配列することにより、モアレ等の不都合の発生を効果的に防止することができる。これに対し、例えば、凹部が正方格子状等に配列したものであると、モアレ等の不都合の発生を十分に防止することが困難となる。また、凹部をランダムに配した場合、凹部が形成されている有効領域における凹部の占有率を十分に高めるのが困難となり、マイクロレンズ基板の光の透過率(光の利用効率)を十分に高めるのが困難となり、得られる画像が暗いものとなる。
【0051】
また、本実施形態では、凹部61の長軸方向が、マイクロレンズ基板製造用成形型6の軸方向とほぼ同一である。これにより、後に詳述するようなマイクロレンズ基板1の製造方法において、基板本体2となるべき樹脂材料(マイクロレンズ基板製造用成形型6の表面形状が転写された樹脂材料)とマイクロレンズ基板製造用成形型6との剥離において、形成されたマイクロレンズ21に欠陥が生じるのをより確実に防止することができる。凹部61の長軸方向とマイクロレンズ基板製造用成形型6の軸方向とのなす角は、0〜10°であるのが好ましく、0〜7°であるのがより好ましく、0〜5°であるのがさらに好ましい。これにより、上記のような効果は更に顕著なものとして現れる。
【0052】
また、上記のように、凹部61は、マイクロレンズ基板製造用成形型6を平面視したときに、千鳥格子状に配列しているが、複数の凹部61で構成される第1の行と、それに隣接する第2の行とが、横方向に半ピッチ分だけずれているのが好ましい。これにより、光の干渉によるモアレの発生等をより効果的に防止するとともに、かつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
【0053】
なお、上記の説明では、凹部61が、マイクロレンズ基板1を構成するマイクロレンズ21と、実質的に同一の形状(寸法)、配列方式を有しているものとして説明したが、例えば、マイクロレンズ基板1の基板本体2の構成材料が収縮し易いものである場合(基板本体2を構成する樹脂材料が固化等により収縮する場合)、その収縮率等を考慮し、マイクロレンズ基板1を構成するマイクロレンズ21と、マイクロレンズ基板製造用成形型6を構成する凹部61とについて、これらの間で、形状(寸法)、占有率等が異なるようにしてもよい。
【0054】
また、マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面において、複数個の凹部61は、マイクロレンズ基板製造用成形型(ロール)6の軸62を中心として螺旋状に配されていてもよい。凹部61がこのように配されていると、マイクロレンズ基板1の製造において、上述したような配列パターンのマイクロレンズ21を容易かつ確実に形成することができる。また、複数個の凹部61が螺旋状に配されていると、マイクロレンズ基板製造用成形型6の製造時(後述する初期孔形成工程)において、マスク8に対して、凹部形成用の初期孔(開口部)81を所望の形状のものとして容易かつ確実に形成することができるとともに、エッチング工程における基材7とマスク8との密着性を特に優れたものとすることができる。したがって、マイクロレンズ基板製造用成形型6が有する凹部61を容易かつ確実に所望の形状に形成することができ、結果として、マイクロレンズ基板1のマイクロレンズ21の形状を容易かつ確実に所望の形状に形成することができる。
【0055】
マイクロレンズ基板製造用成形型6は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、その周面部付近が、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、銀、金、鉛、マグネシウム、チタン、ジルコニア、タングステン、モリブデン、コバルト等の他、金属ステンレス、42ニッケル−鉄合金、真鍮、ジュラルミン等の各種金属材料や、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスで構成されたものであるのが好ましい。マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面部付近が、上記のような材料で構成されたものであると、マイクロレンズ基板製造用成形型6が有する凹部61の形状、配列パターンをより精確に転写することができるとともに、マイクロレンズ基板製造用成形型6の耐久性を優れたものとのすることができる。また、マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面部付近が、上記のような材料で構成されたものであると、マイクロレンズ基板製造用成形型6の製造時において、所望の形状、配列パターンの凹部61を容易かつ確実に形成することができる。
【0056】
また、マイクロレンズ基板製造用成形型6は、例えば、その内部に図示しない加熱手段を有していてもよい。これにより、後述するような方法において、より容易に、所望の形状、配列パターンのマイクロレンズ21を形成することができる。
次に、本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型の製造方法について、図6を参照しながら説明する。
まず、マイクロレンズ基板製造用成形型6を製造するに際し、ロール状の基材7を用意する。
【0057】
この基材7としては、略円柱状または略円筒状のものが好適に用いられる。また、基材7は、洗浄等により、その表面が清浄化されているものが好ましい。
基材7の材料としてはソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられるが、中でも、ソーダガラス、結晶性ガラス(例えば、ネオセラム等)、無アルカリガラスが好ましい。ソーダガラス、結晶性ガラス、無アルカリガラスは、加工が容易であるとともに、比較的安価であり、製造コストの面からも有利である。
【0058】
<A1>図6(a)に示すように、用意した基材7の表面に、マスク8を形成する(マスキング工程)。
マスク8の構成材料は、特に限定されず、例えば、Cr、Au、Ni、Ti、Pt等の金属やこれらから選択される2種以上を含む合金、前記金属の酸化物(金属酸化物)、シリコン、樹脂等が挙げられる。
また、マスク8は、例えば、実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、異なる複数の層を有する積層体等であってもよい。
【0059】
上記のように、マスク8の構成は、特に限定されるものではないが、主としてCrで構成される層と、主として酸化Crで構成される層とを有する積層体であるのが好ましい。このような構成のマスク8は、様々な組成のエッチング液に対して優れた安定性を有している(後述するエッチング工程において基材7をより確実に保護することができる)とともに、後述するようなレーザ光の照射等により、所望の形状の開口部を容易かつ確実に形成することができる。また、マスク8が上記のような構成のものであると、例えば、後述するエッチング工程において、エッチング液として一水素二フッ化アンモニウムを含む液体を好適に用いることができる。一水素二フッ化アンモニウムは毒劇物ではないため、作業中の人体や環境への影響をより確実に防止することができる。また、上記のような構成のマスク8は、マスクの内部応力を効率良く緩和することができ、基材7との密着性(特に、エッチング工程における密着性)に特に優れている。このようなことから、上記のような構成のマスク8を用いることにより、所望の形状の凹部61を容易かつ確実に形成することができる。
【0060】
マスク8の形成方法は特に限定されないが、マスク8をCr、Au等の金属材料(合金を含む)や金属酸化物(例えば酸化Cr)で構成されたものとする場合、マスク8は、例えば、蒸着法やスパッタリング法等により、好適に形成することができる。また、マスク8をシリコンで構成されたものとする場合、マスク8は、例えば、スパッタリング法やCVD法等により、好適に形成することができる。
【0061】
マスク8の厚さは、マスク8を構成する材料によっても異なるが、0.01〜2.0μm程度が好ましく、0.03〜0.2μm程度がより好ましい。厚さが前記下限値未満であると、マスク8の構成材料等によっては、後述する初期孔形成工程(開口部形成工程)において形成される初期孔81の形状が歪んでしまう可能性がある。また、後述するエッチング工程でウェットエッチングを施す際に、基材7のマスクした部分を十分に保護できない可能性がある。一方、上限値を超えると、マスク8の構成材料等によっては、後述する初期孔形成工程において、貫通する初期孔81を形成するのが困難になるほか、マスク8の内部応力によりマスク8が剥がれ易くなる場合がある。
【0062】
<A2>次に、図6(b)に示すように、マスク8に、後述するエッチングの際のマスク開口となる、複数個の初期孔81を形成する(初期孔形成工程)。
初期孔81の形成方法は、特に限定されないが、レーザ光の照射による方法であるのが好ましい。これにより、所望のパターンに配列した所望の形状の初期孔81を容易かつ精確に形成することができる。その結果、凹部61の形状、配列方式等をより確実に制御することができる。また、初期孔81をレーザの照射により形成することにより、マイクロレンズ基板製造用成形型を生産性良く製造することができる。特に、大面積の基板にも簡単に凹部を形成することができる。また、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、その照射条件を制御することにより、後述するような初期凹部71を形成することなく初期孔81のみを形成したり、初期孔81とともに、形状、大きさ、深さのばらつきの小さい初期凹部71を、容易かつ確実に形成することができる。また、レーザ光の照射でマスク8に初期孔81を形成することで、従来のようなフォトリソグラフィ法によってマスクに開口部を形成する場合に比べて、簡単かつ安価にマスク8に開口部(初期孔81)を形成することができる。また、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、上述したような螺旋状に配された複数個の凹部61に対応する複数個の初期孔(開口部)81を効率良く形成することができる。より具体的には、例えば、ロール状の基材7を、その軸を中心に回転させ、かつ、レーザ光の照射方向を一軸方向に走査させつつ、レーザ光の照射を間欠的に行うことにより、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、上述したような螺旋状に配された複数個の凹部61に対応する複数個の初期孔(開口部)81を効率良く形成することができる。その結果、マイクロレンズ基板製造用成形型の生産性、マイクロレンズ基板1の生産性が向上する。
【0063】
また、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、使用するレーザ光の種類は、特に限定されないが、ルビーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、フェムト秒レーザ、ガラスレーザ、YVOレーザ、Ne−Heレーザ、Arレーザ、COレーザ、エキシマレーザ等が挙げられる。また、各レーザのSHG、THG、FHG等の波長を使っても良い。
【0064】
マスク8に初期孔81を形成するとき、図6(b)に示すように、マスク8だけでなく基材7の表面の一部も同時に除去し、初期凹部71を形成してもよい。これにより、後述するエッチング工程でエッチングを施す際に、エッチング液との接触面積が大きくなり、侵食を好適に開始することができる。また、この初期凹部71の深さの調整により、凹部61の深さ(レンズの最大厚さ)を調整することもできる。初期凹部71の深さは、特に限定されないが、5μm以下とするのが好ましく、0.1〜0.5μm程度とするのがより好ましい。なお、初期孔81の形成をレーザの照射により行う場合、初期孔81とともに形成される複数個の初期凹部71について、深さのばらつきをより確実に小さくすることができる。これにより、マイクロレンズ基板製造用成形型6を構成する各凹部61の深さのばらつきも小さくなり、最終的に得られるマイクロレンズ基板1の各マイクロレンズ21の大きさ、形状のばらつきも小さくなる。その結果、各マイクロレンズ21の直径、焦点距離、レンズ厚さのばらつきを特に小さくさせることができる。
【0065】
本工程で形成する初期孔81の形状、大きさは特に限定されないが、初期孔81が略円形である場合、その直径は、0.8〜20μmであるのが好ましく、1.0〜10μmであるのがより好ましく、1.5〜4μmであるのがさらに好ましい。初期孔81の直径が前記範囲内の値であると、後述するエッチング工程において、前述したような形状の凹部61を確実に形成することができる。ただし、初期孔81が、略楕円形のように扁平形状のものである場合、短軸方向の長さを、直径の値として代用することができる。すなわち、本工程で形成する初期孔81が扁平形状のものである場合、初期孔81の幅(短軸方向の長さ)は、特に限定されないが、0.8〜20μmであるのが好ましく、1.0〜10μmであるのがより好ましく、1.5〜4μmであるのがさらに好ましい。初期孔81の幅が前記範囲内の値であると、後述するエッチング工程において、前述したような形状の凹部61を確実に形成することができる。
【0066】
また、本工程で形成する初期孔81が扁平形状のものである場合、初期孔81の長さ(長軸方向の長さ)は、0.9〜30μmであるのが好ましく、1.5〜15μmであるのがより好ましく、2.0〜6μmであるのがさらに好ましい。初期孔81の長さが前記範囲内の値であると、後述するエッチング工程において、前述したような形状の凹部61をより確実に形成することができる。
また、形成されたマスク8に対してレーザ光の照射で初期孔81を形成するだけでなく、例えば、基材7にマスク8を形成する際に、予め基材7上に所定パターンで異物を配しておき、その上にマスク8を形成することでマスク8に積極的に欠陥を形成し、当該欠陥を初期孔81としてもよい。
【0067】
<A3>次に、図6(c)に示すように、初期孔81が形成されたマスク8を用いて基材7にエッチングを施し、基材7上に多数の凹部61を形成する(エッチング工程)。
このように、本発明では、凹部の形成をエッチングにより行う。これにより、生産性の高い型形成が可能である。また、凹部の形成を、プレス、研削、研磨等のエッチング以外の方法で行った場合には、高価で欠陥が多く、また、ムラのある型形成になるという問題があるのに対して、本発明では、安価で欠陥の少なくムラの無い型形成が可能である。
【0068】
エッチングの方法は、特に限定されず、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング等が挙げられる。以下の説明では、ウェットエッチングを用いる場合を例に挙げて説明する。
初期孔81が形成されたマスク8で被覆された基材7に対して、エッチング(ウェットエッチング)を施すことにより、図6(c)に示すように、基材7は、マスク8が存在しない部分より食刻され、基材7上に多数の凹部61が形成される。上述したように、マスク8に形成された初期孔81が千鳥状の配置であるため、形成される凹部61は、基材7の表面に千鳥状に配置されたものとなる。
【0069】
また、本実施形態では、工程<A2>でマスク8に初期孔81を形成した際に、基材7の表面に初期凹部71を形成している。これにより、エッチングの際、エッチング液との接触面積が大きくなり、侵食を好適に開始することができる。
また、ウェットエッチング法を用いると、凹部61を好適に形成できる。そして、エッチング液として、例えば、一水素二フッ化アンモニウムを含むエッチング液を用いると、基材7をより選択的に食刻することができ、凹部61を好適に形成することができる。
【0070】
マスク8が主としてCrで構成されたものである場合、フッ酸系エッチング液としては、一水素二フッ化アンモニウムを含む液体が特に好適である。一水素二フッ化アンモニウム溶液は毒劇物ではないため、作業中の人体や環境への影響を防止することができる。また、エッチング液として、一水素二フッ化アンモニウムを用いる場合、該エッチング液中には、例えば、過酸化水素が含まれていてもよい。これにより、エッチングスピートをより速くすることができる。
【0071】
また、ウェットエッチングによれば、ドライエッチングに比べて簡単な装置で処理を行うことができ、さらに、一度に多くの基板に対して処理を行うことができる。これにより生産性が向上し、安価にマイクロレンズ基板製造用成形型6を提供することができる。
また、エッチング工程は、マスク8が付された基材7を、その軸71を中心に回転させつつ行うのが好ましい。これにより、各凹部61について、その形状のばらつきを特に小さくすることができ、製造されるマイクロレンズ基板1の特性(特に、光学特性)を特に優れたものとすることができる。特に、エッチング工程をウェットエッチングにより行う場合、エッチング液の深さの違いによる圧力差(水圧差)により、エッチングの進行の度合いが各部位で異なるものとなりやすいが、基材7を回転させることにより、このような問題の発生も効果的に防止することができる。
【0072】
また、エッチング工程において、基材7の回転(相対的な回転を含む)を行う場合、基材7の回転方向(相対的な回転方向)を、経時的に変化させるのが好ましい。すなわち、基材7の回転方向を反転させつつ、エッチングを行うのが好ましい。これにより、例えば、エッチング液の液流やエッチングガスのガス流による不均一なエッチングが進行するのをより確実に防止することができ、形成する凹部61の形状をより好適なものとすることができる。
【0073】
<A4>次に、図6(d)に示すように、マスク8を除去する(マスク除去工程)。
マスク8が、前述したような主としてCrで構成される層と、主として酸化Crで構成される層とを有する積層体である場合、マスク8の除去は、例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含む混合物を用いたエッチングにより行うことができる。
以上により、図6(d)および図4に示すように、基材7上に多数の凹部61が千鳥状に形成されたマイクロレンズ基板製造用成形型6が得られる。
【0074】
基材7上に千鳥状に配された複数個の凹部61を形成する方法は、特に限定されないが、上述したような方法(レーザ光の照射によりマスク8に初期孔81を形成し、その後、そのマスク8を用いてエッチングを行うことにより、基材7上に凹部61を形成する方法)により形成した場合、以下のような効果が得られる。
すなわち、レーザ光の照射によりマスク8に初期孔81を形成することで、従来のようなフォトリソグラフィ法によってマスクに開口部を形成する場合に比べて簡単かつ安価にマスク8に所定パターンで開口部(初期孔81)を形成することができる。これにより生産性が向上し、安価にマイクロレンズ基板製造用成形型6を提供することができる。また、本発明では、マイクロレンズ基板の製造に用いるマイクロレンズ基板製造用成形型がロール形状であるため、フォトリソグラフィ法によってマスクに開口部を形成する場合、凹部(凹部に対応する開口部)を設計の形状通りに形成するのは極めて困難であるが、レーザ光の照射により行う場合、容易かつ確実に所望の形状、配列パターンの凹部(凹部に対応する開口部)を形成することができる。
【0075】
なお、マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面には、離型剤等により、離型性を向上させるため等の処理が施されていてもよい。これにより、このマイクロレンズ基板製造用成形型6を用いて製造されるマイクロレンズ基板1のマイクロレンズ21の形状、配置等をより確実に好適なものとすることができる。
次に、上述したマイクロレンズ基板製造用成形型6を用いて、マイクロレンズ基板1を製造する方法について説明する。
【0076】
マイクロレンズ基板は、マイクロレンズ基板製造用成形型を用いて製造されるものであるが、以下の実施形態では、特に、マイクロレンズ基板製造用成形型を備えたマイクロレンズ基板製造装置を用いて、マイクロレンズ基板を製造するものとして説明する。
図7は、本発明のレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の一例を示す模式的な縦断面図、図8、図9は、本発明のマイクロレンズ基板の製造方法の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0077】
まず、本発明のマイクロレンズ基板の製造方法を説明するに先立ち、本発明のマイクロレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の構成の一例について説明する。
マイクロレンズ基板製造装置100は、図7に示すように、マイクロレンズ基板1の母材としての基板4を搬送する基板搬送手段110と、上述したようなマイクロレンズ基板製造用成形型6とを有している。
【0078】
基板搬送手段110は、基板4を搬送する機能を有している。図示の構成では、基板搬送手段110は、基板4をマイクロレンズ基板製造装置100の左から右へ搬送するよう構成されている。
マイクロレンズ基板製造用成形型6は、基板搬送手段110により搬送されてきた基板4を押圧して、その周面の形状を基板4に転写する機能を有している。
【0079】
マイクロレンズ基板製造用成形型6は、ロール形状をなしており、軸(回転軸)62を中心に回転可能となっている。また、上述したように、マイクロレンズ基板製造用成形型6は、マイクロレンズ21に対応する形状を有する、複数の凹部61を備えている。
また、マイクロレンズ基板製造用成形型6は、軸62を中心に回転可能なものである。マイクロレンズ基板製造用成形型6は、搬送されてきた基板4により押圧され、基板4の移動(搬送)に伴って回転させられる(回転自在に保持された)構成のものであってもよいし、モータ等の図示しない駆動手段により回転するものであってもよい。このような駆動手段を有する場合、基板4の搬送速度等に応じて、マイクロレンズ基板製造用成形型6の回転速度をより精確に制御することができる。その結果、好適な形状のマイクロレンズ21をより確実に形成することができる。
【0080】
また、このようなマイクロレンズ基板製造用成形型6は、搬送手段30と所定距離だけ離間するように配置されている。通常、マイクロレンズ基板製造用成形型6と搬送手段30との最短距離は、基板4の厚さよりも小さく(短く)なっている。
また、このマイクロレンズ基板製造用成形型6は、その内部に図示しない加熱手段を有していてもよい。これにより、基板4にマイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状を容易かつ確実に転写することができる。このような加熱手段としては、例えば、電熱線やカートリッジヒータ等が挙げられる。
次に、上記のようなマイクロレンズ基板製造装置(マイクロレンズ基板製造用成形型)を用いた、本発明のマイクロレンズ基板の製造方法について説明する。
【0081】
<B1>まず、マイクロレンズ基板(レンズ基板)1を製造するに際し、基板4を用意する。
基板4は、前述した基板本体2の構成材料に対応する材料で構成されたものである。また、基板4は、厚さが均一で、傷等のないものが好適に用いられる。基板4は、マイクロレンズ基板製造用成形型6の押圧により変形可能なものであれば、いかなるものであってもよいが、マイクロレンズ基板製造用成形型6の凹部61に対応する形状、配置のマイクロレンズ21を精確に形成するためには、主として、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂で構成されたものであるのが好ましい。
【0082】
基板4の平均厚さは、マイクロレンズ基板製造用成形型6と基板搬送手段110とのギャップ(最短長さ)、基板4を構成する材料、屈折率等の種々の条件により異なるが、通常、0.005〜5mm程度であるのが好ましく、0.1〜4mm程度であるのがより好ましく、0.5〜3mm程度であるのがさらに好ましく、1〜3mm程度であるのがもっとも好ましい。
【0083】
なお、基板4を構成する材料には、例えば、微粒子状(ビーズ状)のシリカ、ガラス、樹脂(基板4を構成する樹脂とは異なる樹脂)等の光拡散剤を含んでいてもよい。これにより、マイクロレンズ基板1を後述する透過型スクリーンに適用した場合等における、視野角特性を特に優れたものとすることができる。また、拡散板等の構成を省略しても視野角特性を優れたものとすることができるので、例えば、透過型スクリーンの薄型化、リア型プロジェクタの薄型化を図ることができる。
【0084】
<B2>上記のような基板4を基板搬送手段110により搬送する(図8(a)参照)。この際、基板4は、必要に応じて、加温(加熱)されていてもよい。これにより、マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状の転写を容易かつ確実に行うことができる。
基板搬送手段110により搬送されてきた基板4は、基板搬送手段110とマイクロレンズ基板製造用成形型6との間に送り込まれる(図8(b)参照)。これにより、基板4がマイクロレンズ基板製造用成形型6により押圧される。また、基板4の搬送に伴って、マイクロレンズ基板製造用成形型6が軸62を中心にして回転し、マイクロレンズ基板製造用成形型6による基板4の押圧部位が経時的に変化する(図8(c)参照)。その結果、マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状が基板4に転写される。その後、基板4の構成材料を固化(ただし、硬化(重合)を含む)させることにより、凹部61に対応する形状、配置のマイクロレンズ21が形成された、基板本体2が得られる(図8(d)参照)。基板4の構成材料の固化を硬化(重合)により行う場合、その方法としては、例えば、紫外線等の光の照射、電子線の照射、加熱等の方法が挙げられる。
【0085】
基板4が樹脂材料で構成されたものである場合、基板4を押圧する際のマイクロレンズ基板製造用成形型6の温度は、基板4を構成する樹脂材料のガラス転移点以上の温度であるのが好ましい。これにより、基板4にマイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状をより確実に転写できる。これに対し、マイクロレンズ基板製造用成形型6の温度が低すぎると、押圧する前の基板4の温度や、基板4の構成材料によっては、基板4に対してマイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状を十分に転写するのが困難となる場合がある。
【0086】
このように、本発明においては、ローラ状のマイクロレンズ基板製造用成形型を用いるため、製造すべきマイクロレンズ基板が大型のものであっても、容易かつ確実に製造することができ、また、製造されるマイクロレンズ基板の特性(特に光学特性)を優れたものとすることができる。また、マイクロレンズ基板を連続して製造することができ、マイクロレンズ基板の生産性が向上する。また、製造すべきマイクロレンズ基板に対して、マイクロレンズ基板製造用成形型の大きさを十分に小さいものとすることができるとともに、マイクロレンズ基板製造用成形型の大きさ(特に、径)が比較的小さいものであっても、様々な大きさのマイクロレンズ基板の製造に適用することができる。したがって、マイクロレンズ基板の製造コストの低減に大きく寄与することができる。
【0087】
また、基板4がシート状、フィルム状、可撓性を有する板状等のものである場合、例えば、基板4をローラ等の基板供給部に巻きつけておき、基板搬送手段110による基板4の搬送に伴い、基板4を基板供給部から引き出すような構成にすることにより、マイクロレンズ基板の生産性の更なる向上(製造設備の省スペース化)を図ることができる。また、このような場合、例えば、製造されたマイクロレンズ基板を、ローラ等のマイクロレンズ基板回収手段に巻き取ることにより回収してもよい。
【0088】
<B3>次に、上記のようにして作製された基板本体2の出射側表面に、ブラックマトリックス3を形成する。
まず、図9(a)に示すように、基板本体2の出射側表面に、遮光性を有するポジ型のフォトポリマー32を付与する。基板本体2表面へのフォトポリマー32の付与方法としては、例えば、ディップコート、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、ロールコーター等の各種塗布法等を用いることができる。フォトポリマー32は、遮光性を有する樹脂で構成されたものであってもよいし、(遮光性の低い)樹脂材料に、遮光性の材料が分散または溶解したものであってもよい。フォトポリマー32の付与後、必要に応じて、例えば、プレベーク処理等の熱処理を施してもよい。
【0089】
<B4>次に、図9(b)に示すように、基板本体2に、入射側表面に対して垂直方向の露光用光Lbを照射する。照射された露光用光Lbは各マイクロレンズ21を通過することによって集光する。これにより、マイクロレンズ21の焦点f近傍の(集光された光が入射した部位の)フォトポリマー32が露光され、それ以外の部分のフォトポリマー32は露光されないか、または露光量が少なくなり、焦点f近傍のフォトポリマー32のみが感光する。
【0090】
その後、現像を行う。ここで、このフォトポリマー32はポジ型のフォトポリマーであるので、感光した焦点f近傍のフォトポリマー32が現像により溶解、除去される。その結果、図9(c)に示すように、マイクロレンズ21の光軸Lに対応する部分に開口部31が形成されたブラックマトリックス3が形成される。現像の方法は、フォトポリマー32の組成等により異なるが、例えば、KOH水溶液等のアルカリ性溶液を用いて行うことができる。
【0091】
このように、本実施形態の製造方法では、フォトポリマーにマイクロレンズによって集光させた露光用光を照射することにより、ブラックマトリックスを形成するので、例えばフォトリソグラフィ技術を使用するのに比べて、簡易な工程でブラックマトリックスを形成することができる。
また、現像後、必要に応じて、例えば、ポストベーク処理等の熱処理を施してもよい。
【0092】
<B5>その後、ブラックマトリックス3が形成された基板本体2に対して着色液を付与することにより、着色部22を形成し、マイクロレンズ基板1を得る(図9(d)参照)。
着色液は、いかなるものであってもよいが、本実施形態では、着色剤とベンジルアルコールとを含むものである。このような着色液を用いることにより、基板本体の着色を容易かつ確実に行うことができることを、本発明者は見出した。特に、アクリル系樹脂のように、従来、着色が困難であった材料で構成された基板本体に対しても、容易かつ確実に着色を施すことができる。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
【0093】
すなわち、ベンジルアルコールを含む着色液を用いることにより、着色液中のベンジルアルコールが基板本体中に侵入、拡散し、基板本体を構成する分子の結合(分子間結合)を緩め、着色剤が侵入するための空間を確保する。そして、ベンジルアルコールと着色剤が置換することにより、前記空間(着色剤のための座席(着色座席)に例えることができる)に着色剤が保持され、基板本体が着色される。
【0094】
また、上記のような着色液を用いることにより、均一な厚さの着色部を容易かつ確実に形成することができる。特に、着色に供される基板本体(ワーク)が、その表面にマイクロレンズのような微細な構造を有するもの(二次元方向への凹凸の周期がいずれも小さいもの)、また、着色されるべき領域が大面積のものであっても、均一な厚さで(色ムラなく)着色部を形成することができる。
【0095】
着色液の付与方法としては、例えば、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、捺染、ロールコーター等の各種塗布法や、基板本体2を着色液中に浸漬するディッピング等の方法が挙げられるが、中でも、ディッピング(特に、浸染)が好ましい。これにより、容易かつ確実に着色部22(特に、均一な厚さの着色部22)を形成することができる。また、特に、着色液の付与を浸染により行う場合、着色液が付与される基板本体2が、アクリル系樹脂のような、従来の方法では、着色するのが困難であった材料で構成されたものであっても、容易かつ確実に着色することができる。これは、浸染に用いることができる染料が、アクリル系樹脂等が有するエステル基(エステル結合)との親和性が高いためであると考えられる。
【0096】
着色液を付与する工程は、着色液および/または基板本体2を、60〜100℃とした状態で行うのが好ましい。これにより、着色部22を形成すべき基板本体2に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)を十分に防止しつつ、効率良く着色部22を形成することができる。
また、着色液を付与する工程は、例えば、雰囲気圧を高めた状態(加圧した状態)で行ってもよい。これにより、着色液の基板本体内部への侵入を促進することができ、結果として、着色部22を短時間で効率良く形成することができる。
【0097】
なお、着色液の付与は、必要に応じて(例えば、形成すべき着色部22の厚さが比較的大きい場合等においては)、複数回繰り返し行ってもよい。
また、着色液の付与後、必要に応じて、加熱、冷却等の熱処理、光照射、雰囲気の減圧等の処理を施してもよい。これにより、着色部22の定着(安定化)を促進することができる。
【0098】
以下、本工程で用いる着色液について、より詳細に説明する。
着色液中におけるベンジルアルコールの含有率は、特に限定されないが、0.01〜10.0wt%であるのが好ましく、0.05〜8.0wt%であるのがより好ましく、0.1〜5.0wt%であるのがさらに好ましい。ベンジルアルコールの含有率が上記範囲内の値であると、着色部22を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、容易かつ確実に好適な着色部22を形成することができる。
【0099】
着色液中に含まれる着色剤は、各種染料、各種顔料等、いかなるものであってもよいが、染料であるのが好ましく、分散染料および/またはカチオン系染料であるのがより好ましく、分散染料であるのがさらに好ましい。これにより、着色部を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)を十分に防止しつつ、効率良く着色部を形成することができる。特に、着色液が付与される基板本体2が、アクリル系樹脂のような、従来の方法では、着色するのが困難であった材料で構成されたものであっても、容易かつ確実に着色することができる。これは、上記のような着色剤が、アクリル系樹脂等が有するエステル基(エステル結合)を染着座席とするために、より着色しやすいためであると考えられる。
【0100】
前述したように、本実施形態で用いる着色液は、少なくとも、着色剤およびベンジルアルコールを含むものであるが、さらに、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含むものであるのが好ましい。これにより、着色部を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、さらに効率良く着色部を形成することができる。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
【0101】
すなわち、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、ベンジルアルコールとを含む着色液(以下、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンジルアルコールを総称して、「添加物」ともいう)を用いることにより、着色液中の添加物が基板本体中に侵入、拡散し、基板本体を構成する分子の結合(分子間結合)を緩め、着色剤が侵入するための空間を確保する。そして、添加物と着色剤が置換することにより、前記空間(着色剤のための座席(着色座席)に例えることができる)に着色剤が保持され、基板本体が着色される。これは、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、ベンジルアルコールとを併用することにより、これらが相補的に作用し合い、着色液による着色を良好なものとするためであると考えられる。
【0102】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン骨格を有する化合物、あるいはこれらの互変異性体、または、その誘導体(例えば、付加反応生成物、置換反応生成物、還元反応生成物、酸化反応生成物等)を用いることができる。
このような化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾフェノンアニル、ベンゾフェノンオキシム、ベンゾフェノンクロリド(α,α’−ジクロルジフェニルメタン)等が挙げられる。中でも、ベンゾフェノン骨格を有する化合物であるのが好ましく、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンがより好ましい。このようなベンゾフェノン系化合物を用いることにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして現れる。
【0103】
また、ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、あるいはこれらの互変異性体、または、その誘導体(例えば、付加反応生成物、置換反応生成物、還元反応生成物、酸化反応生成物等)を用いることができる。
このような化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。中でも、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であるのが好ましく、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールがより好ましい。このようなベンゾトリアゾール系化合物を用いることにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして現れる。
【0104】
着色液中にベンゾフェノン系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物が含まれる場合、着色液中における、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物の含有率の総和は、特に限定されないが、0.001〜10.0wt%であるのが好ましく、0.005〜5.0wt%であるのがより好ましく、0.01〜3.0wt%であるのがさらに好ましい。ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物の含有率の総和が上記範囲内の値であると、着色部22を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、容易かつ確実に好適な着色部22を形成することができる。
【0105】
また、着色液中にベンゾフェノン系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物が含まれる場合、着色液中における、ベンジルアルコールの含有率をX[wt%]、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物の含有率の総和をY[wt%]としたとき、0.001≦X/Y≦10000の関係を満足するのが好ましく、0.05≦X/Y≦1000の関係を満足するのがより好ましく、0.25≦X/Y≦500の関係を満足するのがさらに好ましい。上記のような関係を満足することにより、ベンゾフェノン系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物と、ベンジルアルコールとを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、着色部22を形成すべき基板本体に対する悪影響の発生(例えば、基板の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、容易かつ確実に好適な着色部22を形成することができる。
【0106】
また、着色液は、さらに界面活性剤を含むものであるのが好ましい。これにより、着色剤をベンジルアルコールの存在下においても、安定的に、均一に分散させることができ、着色液が付与される基板本体2が、アクリル系樹脂のような、従来の方法では、着色するのが困難であった材料で構成されたものであっても、容易かつ確実に着色することができる。界面活性剤としては、例えば、非イオン系(ノニオン系)、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。非イオン系(ノニオン系)界面活性剤としては、例えば、エーテル系界面活性剤、エステル系界面活性剤、エーテルエステル系界面活性剤、含窒素系界面活性剤等が挙げられ、より具体的には、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。また、アニオン系界面活性剤としては、例えば、各種ロジン、各種カルボン酸塩、各種硫酸エステル塩、各種スルホン酸塩、各種リン酸エステル塩等が挙げられ、より具体的には、ガムロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、マレイン化ロジン、フマール化ロジン、マレイン化ロジンペンタエステル、マレイン化ロジングリセリンエステル、トリステアリン酸塩(例えば、アルミニウム塩等の金属塩等)、ジステアリン酸塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等の金属塩等)、ステアリン酸塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、リノレン酸塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、オクタン酸塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等の金属塩等)、オレイン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等の金属塩等)、パルミチン酸塩(例えば、亜鉛塩等の金属塩等)、ナフテン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、レジン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、ポリアクリル酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、ポリメタクリル酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、ポリマレイン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、セルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、アルキルスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)等が挙げられる。また、カチオン系界面活性剤としては、例えば、1級アンモニウム塩、2級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩等の各種アンモニウム塩等が挙げられ、より具体的には、(モノ)アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、テトラアルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。また、両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン等の各種ベタイン、各種アミノカルボン酸、各種リン酸エステル塩等が挙げられる。
【0107】
次に、上述したマイクロレンズ基板製造用成形型6を用いて、マイクロレンズ基板1を製造する方法の他の実施形態について説明する。
図10は、本発明のレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の他の一例を示す模式的な縦断面図、図11は、本発明のマイクロレンズ基板の製造方法の他の実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0108】
以下の説明では、主に、前述した実施形態との相違点について説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態のマイクロレンズ基板製造装置100’は、マイクロレンズ基板1の母材としての基板4を搬送する基板搬送手段110と、流動性を有する樹脂材料(流動性樹脂材料)9を供給する流動性樹脂供給部120と、マイクロレンズ基板製造用成形型6とを有している。すなわち、本実施形態のマイクロレンズ基板製造装置100’は、流動性樹脂供給部120を有する点において、前記実施形態のマイクロレンズ基板製造装置100と異なっている。流動性樹脂供給部120を有することにより、基板4の温度を比較的低い温度に維持しつつ、マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面形状を転写することができる。その結果、基板4の熱変形等を効果的に防止しつつ、好適な形状、配置のマイクロレンズ21を備えたマイクロレンズ基板1を容易かつ確実に得ることができる。
【0109】
流動性樹脂供給部120は、供給される樹脂材料9が基板4のほぼ全面(マイクロレンズ基板1の有効レンズ領域に対応する部分)に付与されるように構成されている。
そして、本実施形態においては、基板搬送手段110とマイクロレンズ基板製造用成形型6とのギャップ(マイクロレンズ基板製造用成形型6と搬送手段30との最短距離)は、前記実施形態のマイクロレンズ基板製造装置100でのギャップより大きく設定されている。基板搬送手段110とマイクロレンズ基板製造用成形型6とのギャップは、特に限定されないが、通常、基板4の厚さより大きく設定されている。
次に、上記のようなマイクロレンズ基板製造装置100’を用いた、マイクロレンズ基板の製造方法について説明する。
【0110】
<B1’>まず、マイクロレンズ基板(レンズ基板)1を製造するに際し、基板4、樹脂材料9を用意する。
基板4は、前述した実施形態と同様のものを好適に用いることができるが、樹脂材料9により形成される部位の厚さを考慮して、前述したものに比べてやや薄いものを用いてもよい。
また、樹脂材料9としては、比較的低い温度で流動性を維持できる材料を用いるのが好ましい。
【0111】
樹脂材料9のガラス転移点は、15〜200℃であるのが好ましく、20〜150℃であるのがより好ましく、24〜130℃であるのがさらに好ましい。樹脂材料9のガラス転移点が前記範囲内の値であると、基板4の熱変形等を効果的に防止しつつ、樹脂材料9にマイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状をより確実に転写できる。
なお、樹脂材料9には、例えば、微粒子状(ビーズ状)のシリカ、ガラス、樹脂(基板4を構成する樹脂とは異なる樹脂)等の光拡散剤を含んでいてもよい。これにより、マイクロレンズ基板1を後述する透過型スクリーンに適用した場合等における、視野角特性を特に優れたものとすることができる。また、拡散板等の構成を省略しても視野角特性を優れたものとすることができるので、例えば、透過型スクリーンの薄型化、リア型プロジェクタの薄型化を図ることができる。
【0112】
<B2’>上記のような基板4を基板搬送手段110により搬送する(図11(a)参照)。この際、基板4は、必要に応じて、加温(加熱)されていてもよい。これにより、マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状の転写を容易かつ確実に行うことができる。
基板搬送手段110により搬送されてきた基板4は、基板搬送手段110とマイクロレンズ基板製造用成形型6との間に送り込まれる。この際、流動性樹脂供給部120から、基板4とマイクロレンズ基板製造用成形型6との間に、樹脂材料9が供給される(図11(b)参照)。これにより、樹脂材料9がマイクロレンズ基板製造用成形型6および基板4により押圧される。ここで、樹脂材料9は適度に流動性を有する(軟化した)状態のものなので、マイクロレンズ基板製造用成形型6の表面形状に対応するように変形する。また、基板4の搬送に伴って、マイクロレンズ基板製造用成形型6が軸62を中心にして回転し、マイクロレンズ基板製造用成形型6による樹脂材料9の押圧部位が経時的に変化する(図11(c)参照)。その結果、マイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状が転写された樹脂材料9が、順次、基板4上に接合されることとなる。その後、樹脂材料9の構成材料を固化(ただし、硬化(重合)を含む)させることにより、凹部61に対応する形状、配置のマイクロレンズ21が形成された、基板本体2が得られる(図11(d)参照)。樹脂材料9の構成材料の固化を硬化(重合)により行う場合、その方法としては、例えば、紫外線等の光の照射、電子線の照射、加熱等の方法が挙げられる。
【0113】
樹脂材料9を押圧する際のマイクロレンズ基板製造用成形型6の温度は、樹脂材料9を構成する樹脂材料のガラス転移点以上の温度であるのが好ましい。これにより、樹脂材料9にマイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状をより確実に転写できる。これに対し、マイクロレンズ基板製造用成形型6の温度が低すぎると、押圧する前の樹脂材料9の温度や、樹脂材料9の構成材料によっては、樹脂材料9に対してマイクロレンズ基板製造用成形型6の周面の形状を十分に転写するのが困難となる場合がある。
なお、図示の構成では、樹脂材料9は、マイクロレンズ基板製造用成形型6の近傍で、基板4上に供給されるようになっているが、樹脂材料9が供給される部位はこれに限定されるものではない。例えば、樹脂材料9は、基板4上ではなく、マイクロレンズ基板製造用成形型6上に供給されるものであってもよい。
【0114】
上記のようにして得られた基板本体2に対して、前述した実施形態と同様にしてブラックマトリックス3、着色部22を形成することにより(上記<B3>〜<B5>および図9参照)、マイクロレンズ基板1を得ることができる。
以下、前記透過型スクリーンを用いたリア型プロジェクタについて説明する。
図12は、本発明のリア型プロジェクタの構成を模式的に示す図である。
同図に示すように、リア型プロジェクタ300は、投写光学ユニット310と、導光ミラー320と、透過型スクリーン10とが筐体340に配置された構成を有している。
【0115】
そして、このリア型プロジェクタ300は、上記のような透過型スクリーン10を備えている。このため、リア型プロジェクタ300を大型でかつ高品質のものとすることができる。
また、特に、前述したマイクロレンズ基板1では、楕円形状のマイクロレンズ21が千鳥状(千鳥格子状)に配されているので、リア型プロジェクタ300では、モアレ等の問題が特に発生し難い。
【0116】
以上、本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型、マイクロレンズ基板の製造方法、マイクロレンズ基板、透過型スクリーンおよびリア型プロジェクタについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、マイクロレンズ基板製造用成形型、マイクロレンズ基板、透過型スクリーン、リア型プロジェクタを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。例えば、本発明の透過型スクリーンは、マイクロレンズ基板の出射面側に、光拡散板や他のレンズ等がさらに配されたものであってもよい。
【0117】
また、本発明のマイクロレンズ基板の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ基板製造用成形型の製造方法の初期孔形成工程において、初期孔81とともに、基材7に初期凹部71を形成するものとして説明したが、このような初期凹部71は形成されなくてもよい。初期孔81の形成条件(例えば、レーザのエネルギー強度、ビーム径、照射時間等)を適宜調整することにより、所望の形状の初期凹部71を形成したり、初期凹部71が形成されないように初期孔81のみを選択的に形成することができる。
【0118】
また、前述した実施形態では、ロール状の基材に対して、直接エッチングを施すことにより、周面に凹部を形成するものとして説明したが、例えば、エッチングにより形成された凹部を有するシート材を、ロール状の基材の周面に巻き付けること等により製造されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ基板が、着色部、ブラックマトリックスを有するものとして説明したが、このような構成はなくてもよい。
【0119】
また、前述した実施形態では、基板にマイクロレンズを形成した後に、ブラックマトリックスを形成するものとして説明したが、例えば、基板のマイクロレンズを形成すべき面とは反対側の面に、予めフォトポリマーを付与しておいた状態で、マイクロレンズを形成してもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ基板製造用成形型を用いて、マイクロレンズ基板を製造するものとして説明したが、例えば、マイクロレンズ基板製造用成形型を用いて製造される部材を凹部付き部材製造用成形型として用いてもよい。言い換えると、マイクロレンズ基板製造用成形型の表面形状を転写することにより表面付近に凸部を有する部材(凹部付き部材製造用成形型)を製造し、この部材を用いて、表面付近に凹部を有する部材を製造してもよい。これにより、例えば、凹レンズとしてのマイクロレンズを有するマイクロレンズ基板等を好適に製造することができる。なお、このような場合、凹部付き部材製造用成形型は、板状のものであってもよいし、ロール状のものであってもよい。
【0120】
また、前述した実施形態では、透過型スクリーンが、マイクロレンズ基板とフレネルレンズとを備えるものとして説明したが、本発明の透過型スクリーンは、必ずしも、フレネルレンズを備えたものでなくてもよい。例えば、本発明の透過型スクリーンは、実質的に、本発明のマイクロレンズ基板のみで構成されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ基板は、透過型スクリーン、リア型プロジェクタを構成する部材として説明したが、本発明のマイクロレンズ基板の用途は、前記のようなものに限定されず、いかなるものであってもよい。
【実施例】
【0121】
[マイクロレンズ基板および透過型スクリーンの作製]
(実施例1)
以下のように、マイクロレンズ基板製造用成形型を製造した。
まず、基材として、直径35cm×幅(高さ)165mの円柱状(ロール状)のソーダガラス基材を用意した。
【0122】
このソーダガラス基材を、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む洗浄液に浸漬して6μmエッチングを行い、その表面を清浄化した。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
次に、このソーダガラス基材の周面上に、スパッタリング法にて、Cr/酸化Crの積層体(Crの外表面側に酸化Crが積層された積層体)を形成した。すなわち、ソーダガラス基材の表面に、Cr/酸化Crの積層体で構成されたのマスクを形成した。Cr層の厚さは0.03μm、酸化Cr層の厚さは0.01μmであった。
【0123】
次に、マスクに対してレーザ加工を行い、その全体に均等に多数の初期孔を形成した。
なお、レーザ加工は、YAGレーザを用いて、エネルギー強度1mW、ビーム径2.0μm、主走査方向における走査速度100mm/秒という条件で、間欠的にレーザ光を照射することにより行った。また、レーザ光の照射は、ロール状のソーダガラス基材の周面の端部付近から、幅(長さ)方向についての走査(主走査)を、他端付近まで行い、その後、ロール状のソーダガラス基材を所定角度回転させ、さらに、前記と同様な走査(主走査)を繰り返すことにより行った。
【0124】
これにより、マスクのほぼ全面に亘って、ソーダガラス基材の幅方向に、所定の大きさを有する初期孔が、千鳥状に配されたパターンが形成された。初期孔の平均幅は2μmであり、平均長さは2.1μmであった。
また、この際、ソーダガラス基材の表面に深さ0.05μmの凹部および変質層も形成した。
【0125】
次に、ソーダガラス基材にウェットエッチングを施し、ソーダガラス基材上に多数の平面視したときの形状が略楕円形状(扁平形状)の凹部(マイクロレンズ形成用凹部)を形成した。形成された多数の凹部は、互いにほぼ同一の形状を有していた。形成された凹部の短軸方向の長さ(直径)は54μm、長軸方向の長さは72μm、曲率半径は37.5μm、深さは36.5μmであった。また、凹部が形成されている有効領域における凹部の占有率は97%であった。
【0126】
なお、ウェットエッチングは、エッチング液として、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む水溶液を用い、浸漬時間は2時間とした。また、ウェットエッチングは、エッチング液中において、ソーダガラス基材を、その軸を中心に回転させつつ行った。また、ソーダガラス基材の回転方向は、ソーダガラス基材が3.5回転する毎に反転するようにした。
【0127】
次に、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸との混合物を用いてエッチングすることにより、マスクを除去した。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
これにより、図4に示すような、ソーダガラス基材上に、マイクロレンズ形成用の多数の凹部が千鳥状に配列されたマイクロレンズ基板製造用成形型を得た。得られたマイクロレンズ基板製造用成形型の凹部が形成されている有効領域において、凹部が占める面積の割合(占有率)が97%であった。
【0128】
上記のようにして得られたマイクロレンズ基板製造用成形型においては、凹部の長軸方向とマイクロレンズ基板製造用成形型の軸方向とのなす角が0°であった。
次に、上記のようにして得られたマイクロレンズ基板製造用成形型の周面(凹部が形成された面)に、離型剤(GF−6110)を付与した。
次に、上記のようにして得られたマイクロレンズ基板製造用成形型を用いて、図7に示すようなマイクロレンズ基板製造装置を製造した。
次に、基板本体形成用の母材としての基板を用意した。当該基板としては、アクリル樹脂(ガラス転移点150℃)で構成され、横1.7m×1.1m、厚さ2mmのシート状部材を用意した。
次に、上記のような基板をマイクロレンズ基板製造装置の基板搬送手段上に配置した。
【0129】
基板搬送手段上の基板は、加熱手段により200℃に加熱された。その後、基板搬送手段により、加熱された基板を所定速度で搬送し、マイクロレンズ基板製造用成形型により、搬送されてきた基板に、マイクロレンズ基板製造用成形型の表面形状を転写した。この際、マイクロレンズ基板製造用成形型は、加熱手段により、その表面付近が185℃に加熱された状態であった。
【0130】
その後、冷却することで、樹脂材料を固化させ、基板本体を得た。得られた基板本体(硬化後の樹脂)の屈折率は、1.50であった。また、得られた基板本体の樹脂層(マイクロレンズを除く部分)の厚さは1.095mmであった。また、略楕円形状(扁平形状)のマイクロレンズは、その短軸方向の長さ(直径)が54μm、長軸方向の長さが72μm、曲率半径が38μm、高さが36.0μmであった。また、マイクロレンズが形成されている有効領域におけるマイクロレンズの占有率は97%であった。
【0131】
その後、基板本体に対して、浸染により着色液を付与した。このとき、マイクロレンズが形成された面側全体が着色液に接触し、かつ、ロール状のマイクロレンズ基板製造用成形型で押圧された面側には着色液が接触しないようにした。また、着色液を付与する際の基板本体および着色液の温度は、90℃に調整した。また、着色液付与時には、雰囲気の圧力が120kPaとなるように加圧した。着色液としては、分散染料(Blue(双葉産業製)):2重量部、分散染料(Red(双葉産業製)):0.1重量部、分散染料(Yellow(双葉産業製)):0.05重量部、ベンジルアルコール:10重量部、界面活性剤:2重量部、純水:1000重量部の混合物を用いた。
【0132】
上記のような条件で、基板本体と着色液とを20分間接触させた後、着色液が貯留された槽から、基板本体を取り出し、十分に水洗した後、乾燥させた。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行うことにより、着色部が形成されたマイクロレンズ基板(横1.6m×縦1.0m)を得た。形成された着色部の濃度は、5%であった。
また、上記のマイクロレンズ基板製造用成形型を用いて、上記と同様な操作を繰り返し行うことにより、合計500枚のマイクロレンズ基板を製造した。
そして1枚目のマイクロレンズ基板および500枚目のマイクロレンズ基板を用いて、図3に示すような透過型スクリーンを得た。
【0133】
(実施例2)
まず、前記実施例1と同様にしてマイクロレンズ基板製造用成形型を製造した。
次に、このマイクロレンズ基板製造用成形型の周面(凹部が形成された面)に、離型剤(GF−6110)を付与した。
次に、上記のようにして得られたマイクロレンズ基板製造用成形型を用いて、図10に示すようなマイクロレンズ基板製造装置を製造した。
【0134】
次に、基板本体形成用の母材としての基板、および流動性を有する樹脂材料を用意した。前記基板としては、アクリル樹脂(ガラス転移点150℃)で構成され、横1.7m×縦1.1m、厚さ0.1mmのシート状部材を用意した。また、前記樹脂材料(流動性を有する樹脂材料)としては、アクリル樹脂(ガラス転移点110℃)を用意した。
次に、前記基板をマイクレンズ基板製造装置の基板搬送手段上に配置し、前記樹脂材料(流動性を有する樹脂材料)を流動性樹脂供給部に接続された樹脂貯留部に貯留した。
【0135】
基板搬送手段上の基板は、加熱手段により180℃に加熱された。また、樹脂貯留部に貯留された樹脂材料は、加熱手段により190℃に加熱された。
その後、基板搬送手段により、加熱された基板を所定速度で搬送し、流動性樹脂供給部から、搬送されてきた基板上に樹脂材料を供給した。樹脂材料が付与された基板は、基板搬送手段とマイクロレンズ基板製造用成形型との間に導入され、この領域において、基板上の樹脂材料に、マイクロレンズ基板製造用成形型の表面形状を転写した。この際、マイクロレンズ基板製造用成形型は、加熱手段により、その表面付近が185℃に加熱された状態であった。
【0136】
その後、マイクロレンズ基板製造用成形型の表面形状が転写された樹脂材料に紫外線を照射することにより、基板上の樹脂材料を硬化させ、基板本体を得た。得られた基板本体(硬化後の樹脂)の屈折率は、1.62であった。また、得られた基板本体の樹脂層(マイクロレンズを除く部分)の厚さは0.05μmであった。また、略楕円形状(扁平形状)のマイクロレンズは、その短軸方向の長さ(直径)が54μm、長軸方向の長さが72μm、曲率半径が38μm、高さが35.5μmであった。また、マイクロレンズが形成されている有効領域におけるマイクロレンズの占有率は97%であった。
【0137】
次に、上記のようにして得られた基板本体の出射側(マイクロレンズが形成されている面とは反対側の面)表面に、遮光性材料(カーボンブラック)が添加されたポジ型のフォトポリマー(PC405G:JSR株式会社製)を、ロールコーターにより付与した。フォトポリマー中における遮光性材料の含有量は、20wt%であった。
次に、90℃×30分のプレベーク処理を施した。
【0138】
次に、フォトポリマーが付与された面とは反対の面側から、80mJ/cmの平行光としての紫外線を照射した。これにより、照射した紫外線は、各マイクロレンズで集光され、各マイクロレンズの焦点f(ブラックマトリックスの厚さ方向の中心付近)近傍のフォトポリマーを選択的に露光した。
その後、0.5wt%のKOH水溶液を用いて、40秒の現像処理を施した。
【0139】
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行い、さらに、200℃×30分のポストベーク処理を施した。これにより、各マイクロレンズに対応した開口部を有するブラックマトリックスが形成された。形成されたブラックマトリックスの厚さは5μmであった。
次に、基板本体のブラックマトリックスが形成された面側に、拡散部を形成することにより、マイクロレンズ基板(横1.6m×縦1.0m)を得た。拡散部の形成は、アクリル系樹脂中に、拡散材としてのシリカ粒子が分散した構成の拡散板を熱融着により接合することにより行った。
また、上記のマイクロレンズ基板製造用成形型を用いて、上記と同様な操作を繰り返し行うことにより、合計500枚のマイクロレンズ基板を製造した。
そして1枚目のマイクロレンズ基板および500枚目のマイクロレンズ基板を用いて、前記実施例1と同様にして図3に示すような透過型スクリーンを得た。
【0140】
(実施例3、4)
マスクの構成、レーザ光の照射条件(形成される初期孔の形状)、エッチング液への浸漬時間を変更することにより、マイクロレンズ基板製造用成形型の凹部の形状、配列パターンを変更し、これにより、マイクロレンズ基板に形成されるマイクロレンズの形状、配列パターンを表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
【0141】
(実施例5、6)
マスクの構成、レーザ光の照射条件(形成される初期孔の形状)、エッチング液への浸漬時間を変更することにより、マイクロレンズ基板製造用成形型の凹部の形状、配列パターンを変更し、これにより、マイクロレンズ基板に形成されるマイクロレンズの形状、配列パターンを表1に示すように変更した以外は、前記実施例2と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
【0142】
(実施例7)
レーザ光の照射条件(形成される初期孔の形状)、エッチング液への浸漬時間を変更することにより、マイクロレンズ基板製造用成形型の凹部の形状、配列パターンを変更し、これにより、マイクロレンズ基板に形成されるマイクロレンズの形状、配列パターンを表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
【0143】
(実施例8)
レーザ光の照射条件(形成される初期孔の形状)、エッチング液への浸漬時間を変更することにより、マイクロレンズ基板製造用成形型の凹部の形状、配列パターンを変更し、これにより、マイクロレンズ基板に形成されるマイクロレンズの形状、配列パターンを表1に示すように変更した以外は、前記実施例2と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
【0144】
(比較例1)
以下のように、マイクロレンズ形成用の凹部を備えた平板状の凹部付き基板(マイクロレンズ基板製造用成形型)を製造した。
まず、基板として、横1.7m×縦1.1m角、厚さ2.0mmのソーダガラス基板を用意した。
【0145】
このソーダガラス基板を、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む洗浄液に浸漬して6μmエッチングを行い、その表面を清浄化した。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
次に、このソーダガラス基板上に、スパッタリング法にて、Cr/酸化Crの積層体(Crの外表面側に酸化Crが積層された積層体)を形成した。すなわち、ソーダガラス基板の表面に、Cr/酸化Crの積層体で構成されたのマスクおよび裏面保護膜を形成した。Cr層の厚さは0.02μm、酸化Cr層の厚さは0.02μmであった。
【0146】
次に、マスクに対してレーザ加工を行い、マスクの中央部1.65cm×1.05cmの範囲に多数の初期孔を形成した。
なお、レーザ加工は、YAGレーザを用いて、エネルギー強度1mW、ビーム径3μm、走査速度0.1m/秒という条件で行った。
これにより、マスクの上記範囲全面に亘って、所定の長さを有する初期孔が、格子状(正方格子状)に配されたパターンが形成された。初期孔の平均。幅は2.0μmであり、平均長さは2.1μmであった。
【0147】
また、この際、ソーダガラス基板の表面に深さ0.005μmの凹部および変質層も形成した。
次に、ソーダガラス基板にウェットエッチングを施し、ソーダガラス基板上に多数の平面視したときの形状が円形状の凹部(マイクロレンズ形成用凹部)を形成した。形成された多数の凹部は、互いにほぼ同一の形状を有していた。形成された凹部の直径は100μm、曲率半径は60μm、深さは48μmであった。また、凹部が形成されている有効領域における凹部の占有率は100%であった。
【0148】
なお、ウェットエッチングは、エッチング液として、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む水溶液を用い、浸漬時間は2.5時間とした。
次に、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸との混合物を用いてエッチングすることにより、マスクおよび裏面保護膜を除去した。
その後、純水洗浄およびNガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
これにより、ソーダガラス基板上に、マイクロレンズ形成用の多数の凹部が格子状(正方格子状)に配列された凹部付き基板を得た。得られた凹部付き基板を平面視したときに、凹部が形成されている有効領域において、凹部が占める面積の割合が100%であった。
【0149】
次に、上記のようにして得られた凹部付き基板の凹部が形成された側の面に、離型剤(GF−6110)を付与し、さらに、未重合(未硬化)のアクリル樹脂を付与した。
次に、ソーダガラスで構成された平板で、前記アクリル樹脂を押圧した。この際、平板とアクリル樹脂との間に、空気が侵入しないようにした。また、平板としては、アクリル樹脂を押圧する側の面に離型剤(GF−6110)が塗布されたものを用いた。
【0150】
その後、紫外線を照射することにより、アクリル樹脂を硬化させ、基板本体を得た。得られた基板本体(硬化後の樹脂)の屈折率は、1.5であった。また、得られた基板本体の樹脂層(マイクロレンズを除く部分)の厚さは2.0μmであった。また、円形状のマイクロレンズは、その直径が100μm、曲率半径が50μm、高さが47μmであった。また、マイクロレンズが形成されている有効領域におけるマイクロレンズの占有率は100%であった。
次に、基板本体から、平板、凹部付き基板を取り外した。この際、平板の除去は容易に行うことができたが、凹部付き基板の除去は極めて困難であった。十分慎重に凹部付き基板の除去を試みたが、形成されたマイクロレンズにカケ等の欠陥を生じてしまった。
【0151】
次に、上記のようにして得られた基板本体に対して、前記実施例1と同様にして、着色部を形成することにより、マイクロレンズ基板(横1.6m×縦1.0m)を得た。形成された着色部の濃度は、55%であった。
また、上記の凹部付き基板(マイクロレンズ基板製造用成形型)を用いて、上記と同様な操作を繰り返し行うことにより、合計500枚のマイクロレンズ基板を製造した。
そして1枚目のマイクロレンズ基板および500枚目のマイクロレンズ基板を用いて、前記実施例1と同様にして図3に示すような透過型スクリーンを得た。
【0152】
(比較例2)
基板本体に対して、着色部を形成しなかった以外は、前記比較例1と同様にしてマイクロレンズ基板、透過型スクリーンを製造した。
前記各実施例および各比較例について、マイクロレンズ基板製造用成形型を製造する際に用いたマスクの構成、レーザ光の照射により形成された初期孔の形状、製造されたマイクロレンズ基板製造用成形型が有する凹部の形状、配列パターン、製造されたマイクロレンズ基板が有するマイクロレンズの形状、配列パターン、マイクロレンズ基板(基板本体)の生産性等を表1にまとめて示す。
【0153】
【表1】

【0154】
表1から明らかなように、本発明では、生産性良くマイクロレンズ基板を製造することができたのに対し、比較例では、マイクロレンズ基板の生産性が著しく悪かった。より詳しく説明すると、本発明では、マイクロレンズ基板製造用成形型から基板本体(マイクロレンズ基板)を剥離する操作を容易かつ確実に行うことができたのに対し、比較例では、凹部付き基板(マイクロレンズ基板製造用成形型)からの基板本体の剥離が困難であり、剥離には、本発明に比べて大きな力が必要であった。
【0155】
[リア型プロジェクタの作製]
前記各実施例および各比較例の透過型スクリーンを用いて、図12に示すようなリア型プロジェクタを、それぞれ作製した。
[マイクロレンズ基板製造用成形型の耐久性評価]
前記各実施例および各比較例のマイクロレンズ基板製造用成形型について、500枚のマイクロレンズ基板の製造を行った後の(基板本体の剥離を500回繰り返し行った後の)マイクロレンズ基板製造用成形型について、凹部が形成された面を、顕微鏡を用いて観察した。マイクロレンズ基板製造用成形型表面の凹凸パターンの状態について以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:凹凸パターンの欠けが全く認められない。
○:凹凸パターンの欠けがほとんど認められない。
△:凹凸パターンの欠けがわずかに認められる。
×:凹凸パターンの欠けが顕著に認められる。
【0156】
[ドット抜け等の評価]
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタの透過型スクリーンにサンプル画像を表示させた。表示された画像について、ドット抜け、明るさのムラの発生状況を以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:ドット抜け、明るさのムラが全く認められない。
○:ドット抜け、明るさのムラがほとんど認められない。
△:ドット抜け、明るさのムラのうち少なくとも一つがわずかに認められる。
×:ドット抜け、明るさのムラのうち少なくとも一つが顕著に認められる。
【0157】
[回折光、モアレ、色ムラの評価]
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタの透過型スクリーンにサンプル画像を表示させた。表示された画像について、回折光、モアレ、色ムラの発生状況を以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:回折光、モアレ、色ムラが全く認められない。
○:回折光、モアレ、色ムラがほとんど認められない。
△:回折光、モアレ、色ムラのうち少なくとも一つがわずかに認められる。
×:回折光、モアレ、色ムラのうち少なくとも一つが顕著に認められる。
【0158】
[コントラストの評価]
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタについて、コントラストの評価を行った。
コントラスト(CNT)として、暗室において413lxの全白光が入射した時の白表示の正面輝度(白輝度)LW[cd/m]と、明室において光源を全消灯した時の黒表示の正面輝度の増加量(黒輝度増加量)LB[cd/m]との比LW/LBを求めた。なお、黒輝度増加量は、暗室の黒表示の輝度に対する増加量をいう。また、明室での測定は、外光照度が約185lxの環境下で行った。暗室での測定は、外光照度が5lx以下の環境下で行った。
【0159】
LW/LBで表されるコントラストについて、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:LW/LBで表されるコントラストが500以上。
○:LW/LBで表されるコントラストが400以上500未満。
△:LW/LBで表されるコントラストが300以上400未満。
×:LW/LBで表されるコントラストが300未満。
【0160】
[視野角の測定]
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタの透過型スクリーンにサンプル画像を表示させた状態で、鉛直方向および水平方向での視野角の測定を行った。
視野角の測定は、変角光度計(ゴニオフォトメータ)で、1度間隔で測定するという条件で行った。
これらの結果を表2にまとめて示す。
【0161】
【表2】

【0162】
表2から明らかなように、本発明では、基板本体(マイクロレンズ基板)の製造(剥離)を繰り返し行った後でも、マイクロレンズ基板製造用成形型において凹凸パターンの欠陥は認められなかった。また、本発明では、ドット抜け、明るさのムラ、回折光、モアレ、色ムラ等のない優れた画質の画像が得られた。また、本発明では、優れたコントラストが得られ、また、視野角特性にも優れていた。すなわち、本発明では、優れた画像を安定的に表示することができた。特に、マイクロレンズ基板製造用成形型を繰り返し使用した後に製造されたマイクロレンズ基板を備えた透過型スクリーン、リア型プロジェクタにおいても、優れた結果が得られた。
【0163】
これに対し、比較例では、基板本体(マイクロレンズ基板)の製造(剥離)を繰り返し行った凹部付き基板(マイクロレンズ基板製造用成形型)では凹凸パターンの破壊がみられ、得られた基板本体(マイクロレンズ基板)を用いて製造された透過型スクリーンおよびリア型プロジェクタでも満足な結果が得られなかった。これは、凹部付き基板において、カケ等の凹凸パターンの欠陥が発生することにより、製造されたマイクロレンズ基板においても、所望の形状のマイクロレンズを形成することができなかったり、基板本体を凹部付き基板から剥離する際に、マイクロレンズにカケ等の欠陥が生じてしまったためであると考えられる。
【0164】
また、マイクロレンズ基板製造用成形型からの転写方法として、加熱して柔らかくした樹脂に型を押し付け冷却する、熱プレス転写法(押し出し成形含む)、モノマ樹脂を反応重合させ固める注型重合方法(キャステング法)、樹脂を光硬化させる2P法等の方法を用いた以外は、前記各実施例、前記各比較例と同様にして、マイクロレンズ基板、透過型スクリーン、リア型プロジェクタを製造し、前記と同様な評価を行ったところ、前記と同様な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明のマイクロレンズ基板の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図2】図1に示すマイクロレンズ基板の平面図である。
【図3】図1に示すマイクロレンズ基板を備えた、本発明の透過型スクリーンの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図4】本発明のマイクロレンズ基板製造用成形型を示す模式的な斜視図である。
【図5】図4に示すマイクロレンズ基板製造用成形型の縦断面図である。
【図6】図4、図5に示すマイクロレンズ基板製造用成形型の製造方法を示す模式的な縦断面図である。
【図7】本発明のマイクロレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の一例を示す模式的な縦断面図である。
【図8】本発明のマイクロレンズ基板の製造方法の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図9】本発明のマイクロレンズ基板の製造方法の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図10】本発明のマイクロレンズ基板の製造方法に適用されるマイクロレンズ基板製造装置の他の一例を示す模式的な縦断面図である。
【図11】本発明のマイクロレンズ基板の製造方法の他の実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図12】本発明のリア型プロジェクタの構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0166】
1…マイクロレンズ基板 2…基板本体 21…マイクロレンズ 22…着色部(外光吸収部) 25…第1の行 26…第2の行 3…ブラックマトリックス(遮光層) 30…搬送手段 31…開口部 32…フォトポリマー 4…基板 5…フレネルレンズ部 51…フレネルレンズ 6…マイクロレンズ基板製造用成形型 61…凹部(マイクロレンズ形成用凹部) 62…軸(回転軸) 7…基材 71…初期凹部 8…マスク 81…初期孔(開口部) 9…樹脂材料(流動性樹脂材料) 10…透過型スクリーン 100、100’…マイクロレンズ基板製造装置 110…基板搬送手段 120…流動性樹脂供給部 300…リア型プロジェクタ 310…投写光学ユニット 320…導光ミラー 340…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型押しすることで、凸曲面を備えた凸部を多数個有する凸部付き部材を製造する成形型であって、
成形型はロール形状をなすものであり、
成形型の型押しする周表面に、マスクを用いたエッチングにより形成され、かつ、前記凸部に対応する形状の凹部を有することを特徴とする凸部付き部材製造用成形型。
【請求項2】
前記マスクは、主としてCrで構成された層と、主として酸化Crで構成された層とを有する積層体である請求項1に記載の凸部付き部材製造用成形型。
【請求項3】
前記凹部は、略楕円形状を有するものである請求項1または2に記載の凸部付き部材製造用成形型。
【請求項4】
前記凹部の長軸方向の長さが、10〜500μmである請求項3に記載の凸部付き部材製造用成形型。
【請求項5】
前記凹部の短軸方向の長さが、10〜400μmである請求項3または4に記載の凸部付き部材製造用成形型。
【請求項6】
前記凹部の深さが、5〜250μmである請求項1ないし5のいずれかに記載の凸部付き部材製造用成形型。
【請求項7】
前記エッチングは、前記マスクが付されたロール状の基材を、その軸を中心に回転させつつ行うものである請求項1ないし6のいずれかに記載の凸部付き部材製造用成形型。
【請求項8】
前記凹部は、マイクロレンズ形成用凹部である請求項1ないし7のいずれかに記載の凸部付き部材製造用成形型。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の凸部付き部材製造用成形型を用いて凸部付き部材を製造することを特徴とする凸部付き部材の製造方法。
【請求項10】
主として樹脂材料で構成された母材に対して、加熱した状態の前記凸部付き部材製造用成形型を、相対的に回転させつつ押圧し、前記母材に前記成形型の周面の形状を転写する請求項9に記載の凸部付き部材の製造方法。
【請求項11】
板状またはシート状の基材の表面付近に、流動性を有する樹脂材料を付与しつつ、相対的に回転する前記成形型で、前記樹脂材料を前記母材に対して押圧し、前記成形型の周面の形状を転写する請求項9に記載の凸部付き部材の製造方法。
【請求項12】
押圧時における前記型の温度は、前記樹脂材料のガラス転移点以上である請求項10または11に記載の凸部付き部材の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし8のいずれかに記載の凸部付き部材製造用成形型を用いて製造されたことを特徴とする凸部付き部材。
【請求項14】
請求項9ないし12のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする凸部付き部材。
【請求項15】
請求項13または14に記載の凸部付き部材を備えたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項16】
請求項15に記載の透過型スクリーンを備えたことを特徴とするリア型プロジェクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型押しすることで、凸曲面を備えたマイクロレンズを多数個有するマイクロレンズ基板を製造する成形型であって、
成形型はロール形状をなすものであり、
成形型の型押しする周面に、マスクを用いたエッチングにより形成され、かつ、前記マイクロレンズに対応する形状の凹部を有することを特徴とするマイクロレンズ基板製造用成形型。
【請求項2】
前記マスクは、主としてCrで構成された層と、主として酸化Crで構成された層とを有する積層体である請求項1に記載のマイクロレンズ基板製造用成形型。
【請求項3】
前記凹部は、略楕円形状を有するものである請求項1または2に記載のマイクロレンズ基板製造用成形型。
【請求項4】
前記凹部の長軸方向の長さが、10〜500μmである請求項3に記載のマイクロレンズ基板製造用成形型。
【請求項5】
前記凹部の短軸方向の長さが、10〜400μmである請求項3または4に記載のマイクロレンズ基板製造用成形型。
【請求項6】
前記凹部の深さが、5〜250μmである請求項1ないし5のいずれかに記載のマイクロレンズ基板製造用成形型。
【請求項7】
前記エッチングは、前記マスクが付されたロール状の基材を、その軸を中心に回転させつつ行うものである請求項1ないし6のいずれかに記載のマイクロレンズ基板製造用成形型。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のマイクロレンズ基板製造用成形型を用いてマイクロレンズ基板を製造することを特徴とするマイクロレンズ基板の製造方法。
【請求項9】
主として樹脂材料で構成された母材に対して、加熱した状態の前記マイクロレンズ基板製造用成形型を、相対的に回転させつつ押圧し、前記母材に前記成形型の周面の形状を転写する請求項8に記載のマイクロレンズ基板の製造方法。
【請求項10】
板状またはシート状の基材の表面付近に、流動性を有する樹脂材料を付与しつつ、相対的に回転する前記成形型で、前記樹脂材料を前記母材に対して押圧し、前記成形型の周面の形状を転写する請求項8に記載のマイクロレンズ基板の製造方法。
【請求項11】
押圧時における前記型の温度は、前記樹脂材料のガラス転移点以上である請求項9または10に記載のマイクロレンズ基板の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし7のいずれかに記載のマイクロレンズ基板製造用成形型を用いて製造されたことを特徴とするマイクロレンズ基板。
【請求項13】
請求項8ないし11のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とするマイクロレンズ基板。
【請求項14】
請求項12または13に記載のマイクロレンズ基板を備えたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項15】
請求項14に記載の透過型スクリーンを備えたことを特徴とするリア型プロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−116826(P2006−116826A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307460(P2004−307460)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】