説明

マイクロ波漏洩抑制部材およびハイブリッド式加熱炉

【課題】製造コストが低く、軸部材の軸方向の熱変形を許容することができ、軸部材の周囲からのマイクロ波の漏洩を抑制することができるマイクロ波漏洩抑制部材およびハイブリッド式加熱炉を提供することを課題とする。
【解決手段】マイクロ波漏洩抑制部材4は、挿通孔204と軸部材5との間の隙間からのマイクロ波Mの漏洩を抑制する。マイクロ波漏洩抑制部材4は、弛緩状態で隙間に配置され、軸部材5が軸方向に熱変形する際の変形量の少なくとも一部を吸収すると共にマイクロ波Mの波長よりも小さい網目を有する導体製であって筒状の網部材40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部材の周囲からのマイクロ波の漏洩を抑制するマイクロ波漏洩抑制部材、および当該マイクロ波漏洩抑制部材がヒータ周囲に配置されるハイブリッド式加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ハイブリッド式加熱炉の炉殻のヒータ取付部に配置されるマイクロ波漏洩抑制部材が開示されている。同文献記載のマイクロ波漏洩抑制部材によると、ヒータの周囲からのマイクロ波の漏洩を抑制することができる。また、同文献記載のマイクロ波漏洩抑制部材は、ヒータを軸方向に拘束していない。すなわち、ヒータの外周面は、マイクロ波漏洩抑制部材の内周面に対して、軸方向に摺動可能である。このため、通電によりヒータが発熱し、ヒータが熱変形(熱膨張および熱収縮のうち、少なくとも一方)する場合であっても、マイクロ波漏洩抑制部材は、ヒータの軸方向の熱変形を、吸収することができる。このように、同文献記載のマイクロ波漏洩抑制部材によると、ヒータの軸方向の熱変形を許容しつつ、ヒータの周囲からのマイクロ波の漏洩を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−282628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同文献記載のマイクロ波漏洩抑制部材は、ヒータの軸方向の熱変形を、ヒータとマイクロ波漏洩抑制部材との摺動により吸収していた。このため、マイクロ波漏洩抑制部材の内周面およびヒータの外周面に、高い面精度が要求されていた。したがって、製造コストが高かった。
【0005】
本発明のマイクロ波漏洩抑制部材およびハイブリッド式加熱炉は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、製造コストが低く、軸部材の軸方向の熱変形を許容することができ、軸部材の周囲からのマイクロ波の漏洩を抑制することができるマイクロ波漏洩抑制部材およびハイブリッド式加熱炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するため、本発明のマイクロ波漏洩抑制部材は、導体製の壁部材を貫通する挿通孔と、該挿通孔に挿通される軸部材と、の間の隙間からのマイクロ波の漏洩を抑制するマイクロ波漏洩抑制部材であって、自然状態に対して軸方向全長が短い弛緩状態で前記隙間に配置され、前記挿通孔に対して前記軸部材が軸方向に熱変形する際の変形量の少なくとも一部を吸収すると共に前記マイクロ波の波長よりも小さい網目を有する導体製であって筒状の網部材を備えることを特徴とする(請求項1に対応)。ここで、「自然状態」とは、網部材の筒壁に略弛みがない状態をいう。
【0007】
本発明のマイクロ波漏洩抑制部材は、筒状の網部材を備えている。網部材は、挿通孔と軸部材との間の隙間に、弛緩状態で配置されている。このため、網部材は、軸方向に変形可能である。したがって、網部材は、挿通孔に対して軸部材が軸方向に熱変形する際、軸部材の変形の少なくとも一部に追随して、変形することができる。すなわち、軸部材の軸方向の熱変形を許容することができる。
【0008】
また、網部材の網目は、マイクロ波の波長よりも小さい。このため、軸部材の周囲からのマイクロ波の漏洩を抑制することができる。
【0009】
また、マイクロ波漏洩抑制部材の内周面および軸部材の外周面に、高い面精度が要求されない。このため、製造コストが低い。
【0010】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記網目の大きさは、前記マイクロ波の波長の1/4以下である構成とする方がよい。本構成によると、よりマイクロ波の漏洩を抑制することができる。さらに好ましくは、上記(1)の構成において、前記網目の大きさは、前記マイクロ波の波長の1/40以下である構成とする方がよい。本構成によると、さらにマイクロ波の漏洩を抑制することができる。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、さらに、前記軸部材に配置される可動部と、前記壁部材に配置される不動部と、を備え、前記網部材は、該不動部と該可動部との間に介装される構成とする方がよい(請求項2に対応)。可動部は、軸部材の熱変形の少なくとも一部に伴って変位する。本構成によると、不動部に対する可動部の変位を、網部材が変形することにより、吸収することができる。
【0012】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記軸部材は、導体製であって、通電用の外部端子が接続され、前記可動部は、前記軸部材に環装され絶縁体製のチューブ本体と該チューブ本体の外周面に配置される導体製の被膜とを有するチューブと、該軸部材に環装され該チューブと該外部端子との間に介装される絶縁体製のリングと、を有し、前記不動部は、前記壁部材における前記挿通孔の周囲に固定される導体製のサポートリングを有し、前記網部材の軸方向一端は該被膜に、該網部材の軸方向他端は該サポートリングに、各々固定される構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0013】
軸部材は通電する。軸部材と網部材および不動部とは、絶縁体製のチューブ本体により絶縁されている。このため、軸部材と壁部材とが導通するおそれが小さい。また、導体製の被膜と外部端子とは、絶縁体製のリングにより絶縁されている。このため、外部端子と壁部材とが導通するおそれが小さい。このように、本構成によると、軸部材および外部端子から壁部材への漏電を、抑制することができる。
【0014】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記不動部は、さらに、前記サポートリングと前記チューブとの間に介装され該サポートリングに内嵌される絶縁体製のスリーブを有する構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0015】
本構成によると、軸部材の径方向の揺動を規制することができる。また、スリーブは絶縁体製である。このため、軸部材と壁部材との間に、共に絶縁体製のチューブ本体とスリーブとが二重筒状に配置されることになる。したがって、軸部材から壁部材への漏電を、さらに抑制することができる。
【0016】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記網部材は、金属製の金網である構成とする方がよい(請求項5に対応)。本構成によると、網部材の耐熱性が高くなる。
【0017】
(6)また、上記課題を解決するため、本発明のハイブリッド式加熱炉は、外壁と、該外壁の内部に区画される加熱室と、該外壁を貫通すると共に該加熱室と外部とを連通するヒータ挿通孔と、を有するハウジングと、該ヒータ挿通孔に挿通されるヒータと、を備え、マイクロ波と該ヒータの熱とを併用して、該加熱室において被加熱物を加熱するハイブリッド式加熱炉であって、さらに、上記(1)ないし(5)のいずれかのマイクロ波漏洩抑制部材を備え、前記壁部材は前記外壁であり、前記挿通孔は前記ヒータ挿通孔であり、前記軸部材は前記ヒータであることを特徴とする(請求項6に対応)。本発明のハイブリッド式加熱炉によると、ヒータの軸方向の熱変形を許容しつつ、ヒータの周囲からのマイクロ波の漏洩を抑制することができる。また、マイクロ波漏洩抑制部材、延いてはハイブリッド式加熱炉の製造コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、製造コストが低く、軸部材の軸方向の熱変形を許容することができ、軸部材の周囲からのマイクロ波の漏洩を抑制することができるマイクロ波漏洩抑制部材およびハイブリッド式加熱炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態であるハイブリッド式加熱炉の長手方向一部の斜視図である。
【図2】図1のII−II方向断面図である。
【図3】上段の多数のヒータの配線図である。
【図4】上段のヒータの前端に配置されているマイクロ波漏洩抑制部材の斜視図である。
【図5】同マイクロ波漏洩抑制部材の分解斜視図である。
【図6】同マイクロ波漏洩抑制部材の軸方向断面図である。
【図7】図6の枠VII内の拡大図である。
【図8】同マイクロ波漏洩抑制部材のヒータ熱膨張時における軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のハイブリッド式加熱炉の実施の形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明のマイクロ波漏洩抑制部材の説明を兼ねる。
【0021】
<ハイブリッド式加熱炉の構成>
まず、本実施形態のハイブリッド式加熱炉の構成について説明する。図1に、本実施形態のハイブリッド式加熱炉の長手方向(左右方向)一部の斜視図を示す。図2に、図1のII−II方向断面図を示す。
【0022】
図1、図2に示すように、ハイブリッド式加熱炉1は、ローラーハースキルンタイプの加熱炉である。ハイブリッド式加熱炉1は、ハウジング2と、ローラ3と、マイクロ波漏洩抑制部材4と、ヒータ5と、マイクロ波発生装置6と、スターラ7と、モータ8と、を備えている。なお、ハイブリッド式加熱炉1の左側が、上流側(搬入側)に相当する。また、ハイブリッド式加熱炉1の右側が、下流側(搬出側)に相当する。
【0023】
[ハウジング2]
ハウジング2は、ハウジング本体20と、加熱室21と、駆動側ケース29aと、従動側ケース29bと、を備えている。
【0024】
ハウジング本体20は、外壁200と、断熱材201と、アプリケータ209と、を備えている。外壁200は、ステンレス鋼製(SUS製)であって、薄肉の角筒状を呈している。外壁200は、左右方向に延在している。外壁200は、電気的に接地されている。断熱材201は、セラミックファイバー製あるいは耐火煉瓦製であって、厚肉の角筒状を呈している。断熱材201は、外壁200の内側に配置されている。
【0025】
ハウジング本体20には、ローラ挿通孔202と、アプリケータ取付孔203と、ヒータ挿通孔204と、が穿設されている。これらの孔は、各々、左右方向(ハイブリッド式加熱炉1の長手方向)に所定間隔ずつ離間して、複数配置されている。また、これらの孔は、後述する加熱室21と、加熱室21の外部と、を連通している。
【0026】
ローラ挿通孔202は、ハウジング本体20の前壁および後壁に、多数配置されている。前壁の多数のローラ挿通孔202と、後壁の多数のローラ挿通孔202と、は前後方向に対向している。
【0027】
ヒータ挿通孔204は、ハウジング本体20の前壁および後壁に、多数配置されている。前壁の多数のヒータ挿通孔204は、前壁の多数のローラ挿通孔202を挟んで、上下二段に配置されている。後壁の多数のヒータ挿通孔204は、後壁の多数のローラ挿通孔202を挟んで、上下二段に配置されている。前壁の多数のヒータ挿通孔204と、後壁の多数のヒータ挿通孔204と、は前後方向に対向している。アプリケータ取付孔203は、ハウジング本体20の上壁に、所定数だけ配置されている。
【0028】
アプリケータ209は、SUS製であって、有底角筒状を呈している。アプリケータ209は、下方に開口している。アプリケータ209は、アプリケータ取付孔203に伏設されている。アプリケータ209は、導波管取付孔209aと、回転軸挿通孔209bと、を備えている。導波管取付孔209aは、アプリケータ209の前壁に配置されている。回転軸挿通孔209bは、アプリケータ209の上壁に配置されている。
【0029】
加熱室21は、断熱材201の内側に区画されている。すなわち、加熱室21は、断熱材201および外壁200により、外側から二層に囲まれている。
【0030】
駆動側ケース29aは、SUS製であって、前方に開口する箱状を呈している。駆動側ケース29aは、ハウジング本体20の後壁に伏設されている。駆動側ケース29aは、ヒータ5の後端、ローラ3の後端、を外部から遮断している。
【0031】
従動側ケース29bは、SUS製であって、後方に開口する箱状を呈している。従動側ケース29bは、ハウジング本体20の前壁に伏設されている。従動側ケース29bは、ヒータ5の前端、ローラ3の前端、を外部から遮断している。
【0032】
[マイクロ波発生装置6]
マイクロ波発生装置6は、加熱室21にマイクロ波Mを供給している。マイクロ波発生装置6は、マグネトロン60と、導波管61と、を備えている。マグネトロン60は、アプリケータ209の前方に配置されている。マグネトロン60は、2.45GHzのマイクロ波Mを発生する。
【0033】
導波管61は、マグネトロン60と、アプリケータ209内部と、を連通している。すなわち、導波管61の一端は、マグネトロン60に連結されている。一方、導波管61の他端は、導波管取付孔209aに連結されている。
【0034】
[モータ8、スターラ7]
モータ8は、アプリケータ209の上壁に配置されている。モータ8の回転軸は、回転軸挿通孔209bに挿通されている。スターラ7は、回転軸の下端に取り付けられている。スターラ7は、四枚の羽根を有している。モータ8に通電すると、スターラ7の四枚の羽根は、回転軸の軸回りに回転する。スターラ7の四枚の羽根により、導波管61からアプリケータ209内部に供給されるマイクロ波Mが、加熱室21に拡散される。
【0035】
[ローラ3]
ローラ3は、炭化ケイ素製(SiC製)であって、円筒状を呈している。ローラ3は、前後方向に延在している。ローラ3は、左右方向に並んで、加熱室21に多数配置されている。ローラ3の前端は、ローラ挿通孔202を介して、加熱室21からハウジング本体20の外部に突出している。ローラ3の後端は、ローラ挿通孔202を介して、加熱室21からハウジング本体20の外部に突出している。ローラ3は、モータ(図略)の駆動力により、軸回りに回転可能に支持されている。
【0036】
被加熱物Wは、回転するローラ3により、図1に白抜き矢印で示すように、加熱室21を左側から右側に向かって搬送される。搬送中、被加熱物Wは、マイクロ波Mおよびヒータ5により、所定の温度パターンで加熱される。
【0037】
[ヒータ5]
ヒータ5は、いわゆる電熱ヒータであって、通電することにより発熱する。ヒータ5は、加熱室21に熱を供給している。ヒータ5は、SiC製であって、円筒状を呈している。ヒータ5は、前後方向に延在している。ヒータ5は、左右方向に並んで、加熱室21に、多数配置されている。多数のヒータ5は、ローラ3を挟んで、上下二段に配置されている。ヒータ5の前後方向両端は、各々、ヒータ挿通孔204を介して、加熱室21からハウジング本体20の外部に突出している。
【0038】
図3に、上段の多数のヒータの配線図を示す。図3に示すように、左右方向に並ぶ多数のヒータ5は、電源Bの正極側と負極側とに、交互に、接続されている。すなわち、左から数えて奇数番目のヒータ5は、電源Bの正極側に接続されている。また、左から数えて偶数番目のヒータ5は、電源Bの負極側に接続されている。左から数えて一番目と二番目のヒータ5、三番目と四番目のヒータ5、五番目と六番目のヒータ5(以下、同様)は、直列に接続されている。また、これらのヒータ5対同士は、並列に接続されている。なお、下段の多数のヒータ5の配線も、図3同様である。
【0039】
[マイクロ波漏洩抑制部材4]
図4に、上段のヒータの前端に配置されているマイクロ波漏洩抑制部材の斜視図を示す。図5に、同マイクロ波漏洩抑制部材の分解斜視図を示す。図6に、同マイクロ波漏洩抑制部材の軸方向断面図を示す。図7に、図6の枠VII内の拡大図を示す。
【0040】
図4〜図7に示すように、ヒータ5の前端には、マイクロ波漏洩抑制部材4が配置されている。マイクロ波漏洩抑制部材4は、金網40と、可動部41と、不動部42と、を備えている。
【0041】
可動部41は、チューブ410と、リング411と、を備えている。チューブ410は、円筒状を呈している。チューブ410は、ヒータ5の外周面に環装されている。チューブ410の前端の外周面には、クランプリング400を介して、金網40の前端が固定されている。図7に示すように、チューブ410は、マイカ製のチューブ本体410aと、アルミ箔製の被膜410bと、を備えている。被膜410bは、チューブ本体410aの外周面に配置されている。リング411は、マイカ製であって円環状を呈している。リング411は、ヒータ5の外周面に環装されている。リング411は、チューブ410の前方に配置されている。なお、ヒータ5の前端には、鋼製の外部端子90が接続されている。外部端子90には、ボルト900を介して、配線91が圧着されている。リング411は、チューブ410と外部端子90との間に、介装されている。
【0042】
不動部42は、サポートリング420と、スリーブ421と、を備えている。サポートリング420は、SUS製であって、リング部420aと、ボス部420bと、を備えている。リング部420aは、円環状を呈している。リング部420aは、外壁200の前面に固定されている。リング部420aは、ヒータ挿通孔204を前方(外方)から塞いでいる。リング部420aは、ヒータ挿通孔204よりも、内径が小さい。ボス部420bは、円筒状を呈している。ボス部420bは、リング部420aの前面から、前方に突設されている。ボス部420bは、リング部420aよりも、内径が大きい。また、ボス部420bは、ヒータ挿通孔204よりも、内径が小さい。ボス部420bの外周面には、クランプリング401を介して、金網40の後端が固定されている。スリーブ421は、コージライト製であって、円筒状を呈している。スリーブ421は、リング部420aの径方向内側、かつチューブ410の径方向外側に配置されている。スリーブ421は、リング部420aに内嵌されている。スリーブ421の前端には、フランジ部421aが形成されている。フランジ部421aは、径方向外側に張り出している。フランジ部421aは、ボス部420bの径方向内側に配置されている。フランジ部421aとリング部420aとは、前後方向に係合している。
【0043】
金網40は、SUS製であって、円筒状を呈している。また、図5に点線で示すように、自然状態の金網40aは、後方から前方に向かって尖る、テーパ状を呈している。金網40の後端は、ボス部420bつまり不動部42に固定されている。また、金網40の前端は、チューブ410つまり可動部41に、固定されている。金網40は、自然状態に対して軸方向全長が短い弛緩状態で、不動部42と可動部41との間に介装されている。このため、金網40は、軸方向(前後方向)に伸縮可能である。金網40の網目の大きさは、マイクロ波Mの波長の1/40以下である。
【0044】
なお、上段のヒータ5の後端、下段のヒータ5の前後方向両端に配置されているマイクロ波漏洩抑制部材4の構成も、上段のヒータの前端に配置されているマイクロ波漏洩抑制部材4の構成と、同様である。また、外壁200前方のマイクロ波漏洩抑制部材4の配置と、外壁200後方のマイクロ波漏洩抑制部材4の配置と、は前後対称である。
【0045】
<マイクロ波漏洩抑制部材4の動き>
次に、マイクロ波漏洩抑制部材4の動きについて説明する。図3に示すように、ヒータ5は通電している。このため、図6に示すように、ヒータ5、外部端子90、配線91には、電流が流れている。図6に示すように、ヒータ挿通孔204は、サポートリング420により、覆われている。このため、加熱室から漏洩しようとするマイクロ波は、サポートリング420により反射される。また、図7に示すように、加熱室のマイクロ波Mは、サポートリング420のリング部420aの径方向内側から漏洩しようとする。しかしながら、サポートリング420とチューブ410との間の隙間は、金網40により封止されている。このため、マイクロ波Mは、金網40により反射される。
【0046】
図8に、上段のヒータの前端に配置されているマイクロ波漏洩抑制部材の、ヒータ熱膨張時における、軸方向断面図を示す。ヒータ5は通電により発熱する。このため、ヒータ5は、熱膨張する。図8に白抜き矢印で示すように、熱膨張により、ヒータ5は、前後方向(軸方向)に伸張する。このため、可動部41は、ヒータ5の前端と共に、前方に変位する。一方、不動部42は、外壁200に固定されている。したがって、不動部42と可動部41との間の前後方向間隔は、広くなる。金網40は、当該前後方向間隔の広がり分を吸収するために、軸方向に伸張する。このように、金網40が伸張することにより、ヒータ5の軸方向の熱膨張による変形量を吸収している。
【0047】
一方、ヒータ5の発熱が終了すると、ヒータ5は前後方向に収縮する。このため、不動部42と可動部41との間の前後方向間隔は、狭くなる。金網40は、当該前後方向間隔の狭まり分を吸収するために、軸方向に収縮する。このように、金網40が収縮することにより、ヒータ5の軸方向の熱収縮による変形量を吸収している。
【0048】
<作用効果>
次に、本実施形態のハイブリッド式加熱炉1の作用効果について説明する。本実施形態のハイブリッド式加熱炉1のマイクロ波漏洩抑制部材4は、金網40を備えている。金網40は、ヒータ挿通孔204とヒータ5との間の隙間に、弛緩状態で配置されている。このため、金網40は、前後方向(軸方向)に変形可能である。したがって、金網40は、ヒータ挿通孔204に対してヒータ5が前後方向に熱変形する際、ヒータ5の変形に追随して、変形することができる。すなわち、ヒータ5の前後方向の熱変形を許容することができる。また、金網40の網目の大きさは、マイクロ波Mの波長の1/40以下である。このため、確実にマイクロ波Mの漏洩を抑制することができる。
【0049】
本実施形態のハイブリッド式加熱炉1によると、ヒータ5と金網40および不動部42とが、マイカ製のチューブ本体410aにより絶縁されている。このため、ヒータ5と外壁200とが導通するおそれがない。また、被膜410bと外部端子90とは、マイカ製のリング411により絶縁されている。このため、外部端子90と外壁200とが導通するおそれがない。このように、本実施形態のハイブリッド式加熱炉1によると、ヒータ5および外部端子90から外壁200への漏電を、抑制することができる。
【0050】
また、不動部42は、スリーブ421を備えている。このため、ヒータ5の径方向の揺動を規制することができる。また、スリーブ421はコージライト製である。このため、ヒータ5と外壁200との間に、共に絶縁体製のチューブ本体410aとスリーブ421とが二重筒状に配置されることになる。したがって、ヒータ5から外壁200への漏電を、さらに抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態のハイブリッド式加熱炉1のマイクロ波漏洩抑制部材4は耐熱性に優れている。このため、ヒータ5の加熱室21内に配置されている部分の温度が1500℃程度であり、ヒータ5の加熱室21外に配置されている部分の温度が300℃程度であっても、ヒータ5の熱膨張を許容しながら、マイクロ波Mの漏洩を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態のハイブリッド式加熱炉1によると、外壁200とマイクロ波漏洩抑制部材4とにより、いわゆるファラデーケージを形成することができる。また、チューブ410の被膜410b、金網40、サポートリング420を、外壁200を介して、電気的に接地することができる。
【0053】
<その他>
以上、本発明のハイブリッド式加熱炉の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0054】
例えば、金網40、クランプリング400、クランプリング401、サポートリング420、被膜410bの材質は特に限定しない。鉄製、銅製、SUS製、カーボン製などであってもよい。また、スリーブ421、チューブ本体410a、リング411の材質も特に限定しない。アルミナ製、マイカ製などであってもよい。すなわち、耐熱性、絶縁性が良好な材料を用いればよい。また、ヒータ5の材質も特に限定しない。SiC製、金属製、二ケイ化モリブデン製などであってもよい。また、本発明のマイクロ波漏洩抑制部材4は、導通体が外部に露出しているタイプのヒータ5の周囲に配置するのに好適である。また、本発明のマイクロ波漏洩抑制部材4は、加熱室21の温度を測定するための熱電対の周囲に配置してもよい。また、マグネトロン60から発射されるマイクロ波Mの周波数は、2.45GHzの他、800MHz〜30GHzであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1:ハイブリッド式加熱炉、2:ハウジング、3:ローラ、4:マイクロ波漏洩抑制部材、5:ヒータ、6:マイクロ波発生装置、7:スターラ、8:モータ。
20:ハウジング本体、21:加熱室、29a:駆動側ケース、29b:従動側ケース、40:金網、40a:金網、41:可動部、42:不動部、60:マグネトロン、61:導波管、90:外部端子、91:配線。
200:外壁、201:断熱材、202:ローラ挿通孔、203:アプリケータ取付孔、204:ヒータ挿通孔、209:アプリケータ、209a:導波管取付孔、209b:回転軸挿通孔、400:クランプリング、401:クランプリング、410:チューブ、410a:チューブ本体、410b:被膜、411:リング、420:サポートリング、420a:リング部、420b:ボス部、421:スリーブ、421a:フランジ部、900:ボルト。
B:電源、M:マイクロ波、W:被加熱物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体製の壁部材を貫通する挿通孔と、該挿通孔に挿通される軸部材と、の間の隙間からのマイクロ波の漏洩を抑制するマイクロ波漏洩抑制部材であって、
自然状態に対して軸方向全長が短い弛緩状態で前記隙間に配置され、前記挿通孔に対して前記軸部材が軸方向に熱変形する際の変形量の少なくとも一部を吸収すると共に前記マイクロ波の波長よりも小さい網目を有する導体製であって筒状の網部材を備えることを特徴とするマイクロ波漏洩抑制部材。
【請求項2】
さらに、前記軸部材に配置される可動部と、前記壁部材に配置される不動部と、を備え、
前記網部材は、該不動部と該可動部との間に介装される請求項1に記載のマイクロ波漏洩抑制部材。
【請求項3】
前記軸部材は、導体製であって、通電用の外部端子が接続され、
前記可動部は、前記軸部材に環装され絶縁体製のチューブ本体と該チューブ本体の外周面に配置される導体製の被膜とを有するチューブと、該軸部材に環装され該チューブと該外部端子との間に介装される絶縁体製のリングと、を有し、
前記不動部は、前記壁部材における前記挿通孔の周囲に固定される導体製のサポートリングを有し、
前記網部材の軸方向一端は該被膜に、該網部材の軸方向他端は該サポートリングに、各々固定される請求項2に記載のマイクロ波漏洩抑制部材。
【請求項4】
前記不動部は、さらに、前記サポートリングと前記チューブとの間に介装され該サポートリングに内嵌される絶縁体製のスリーブを有する請求項3に記載のマイクロ波漏洩抑制部材。
【請求項5】
前記網部材は、金属製の金網である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマイクロ波漏洩抑制部材。
【請求項6】
外壁と、該外壁の内部に区画される加熱室と、該外壁を貫通すると共に該加熱室と外部とを連通するヒータ挿通孔と、を有するハウジングと、
該ヒータ挿通孔に挿通されるヒータと、
を備え、マイクロ波と該ヒータの熱とを併用して、該加熱室において被加熱物を加熱するハイブリッド式加熱炉であって、
さらに、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のマイクロ波漏洩抑制部材を備え、
前記壁部材は前記外壁であり、前記挿通孔は前記ヒータ挿通孔であり、前記軸部材は前記ヒータであることを特徴とするハイブリッド式加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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