説明

マイクロ流体デバイス

【課題】
マイクロ流体デバイスにおいて、デバイス内の処理のばらつきを低減する。
【解決手段】
第1の基板103の一方の表面に、凹部を形成する。この第1の基板の凹部形成面に対向して第2の基板104を配置する。第1の基板の背面側に、第1および第2の基板を密着させるために、第3の基板102を配置する。第1の基板の凹部と第2の基板との間に微細な流路および微細な空間を形成する。微細流路および微細な空間は連通しているとともに、少なくとも1個の入口と出口を有している。第1ないし第3の基板を収容する第5の基板105を有する。第5の基板には、第4の基板101が嵌合する。第4の基板と第5の基板とをねじ締め(加圧手段)すると、第1の基板と第2の基板が加圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な流体を取り扱うマイクロ流体デバイスに係り、特に流体の攪拌や合成、抽出、濃縮に好適なマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロ流体デバイスの例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載のエマルションを作成する装置では、直径が数10μmの均一なマイクロスフィアを効率よく連続的に作成するために、高融点油脂を融点以上に加熱して液状にし、この液状の分散相を加圧し、多数のマイクロチャンネルを介して連続相中に分散させてエマルションを形成している。そして、エマルションから連続相を除去して、高融点油脂のマイクロスフィアを回収している。
【0003】
この公報に記載のマイクロデバイスでは、プレートと蓋体との間に基板を配置している。そして、基板のプレートに対向する面に平坦なテラスを形成し、このテラス上に一定間隔で多数突部を形成し、この突部間をマイクロチャネルとしている。マイクロチャネルの寸法は、例えば幅13.1μm、高さ5.7μmであり、ウェットまたはドライエッチングで形成している。
【0004】
【特許文献1】特開2000−273188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の分析に用いられるマイクロ流体デバイス内の処理空間は、数マイクロリットル程度であり、この処理空間で処理される量は、毎分数十マイクロリットル程度である。そのため、実機プラントとして稼動させるためには、膨大な数のマイクロ流体デバイスを並列処理する必要が生じる。
【0006】
マイクロ流体デバイスのような微小空間では、流体の体積とマイクロ流体デバイスと接する表面積の比率である界面面積比率が大きくなり、表面の状態に流体の流れの安定性が依存する。10mmの直径の配管を加工するときの加工精度が±0.1mmであれば、断面積に及ぼす加工精度の影響は±2%であるのに対して、直径が0.1mmの配管では、加工精度が一桁上の±0.01mmであっても、断面積のばらつきは±20%となる。このように、加工精度がそのまま、流量のばらつきとなって現れる。上記特許文献1には、このような流路間のばらつきを低減することについては、十分には考慮されていない。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、マイクロ流体デバイスにおいて、デバイス内の処理のばらつきを低減することにある。本発明の他の目的は、マイクロ流体デバイスの処理量を増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、微細な流路に流体を導入して処理するマイクロ流体デバイスにおいて、一方の表面に凹部が形成された第1の基板と、この第1の基板の凹部形成面に対向して配置した第2の基板と、第1および第2の基板を密着させるものであって第1の基板の背面側に配置した第3の基板とを有し、前記第1の基板の凹部と第2の基板との間に微細な流路および微細な空間を形成し、この微細流路および微細な空間は連通しているとともに少なくとも1個の入口と出口を有しており、前記第1の基板と第2の基板を加圧する加圧手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
そしてこの特徴において、第1ないし第3の基板を収容する第5の基板と、この第5の基板に嵌合する第4の基板とを有し、前記加圧手段はこれら第4、第5の基板を締結する締結手段であるのが好ましく、前記第3の基板は変形可能であり、第1の基板の板厚のばらつきや第1の基板および第2の基板の表面のうねりを弾性変形により吸収可能なゴムまたは樹脂材料からなるのがよい。
【0010】
また上記特徴において、第3の基板は、前記第1の基板と前記第2の基板の間に形成した微細な流路または微細な空間の少なくとも一部を加圧しないのがよく、第3の基板は、第1の基板の板厚のばらつきや第1の基板および第2の基板の表面のうねりを塑性変形で吸収可能な金属材料であってもよい。また、第4の基板は、前記第2の基板と一体であってもよく、第1ないし第3の基板を、第5の基板に位置決めする位置決め部を第1ないし第3および第5の基板に設けることが望ましい。
【0011】
上記特徴において、位置決め部は、円板の少なくとも1箇所を直線で切り取った切頭円形状あるか、位置決め部に孔が形成されているのがよく、微小空間または微小流路に少なくとも2個の入口と一個の出口を形成し、前記第4の基板にこの入口と出口に連通する流路を形成し、前記第1ないし第5の基板を第5、第3、第1、第2、第4の基板の順に積層するのがよい。
【0012】
また上記特徴において、第1の基板に形成した凹部は、中心に位置する第1の円と、この第1の円から放射状に延びる微細な流路とを有し、この流路は中間部で分岐しその後合流する形状に形成されており、分岐した部分に第2の円からなる凹部を有し、この第2の円と分岐した流路との間に形成された隔壁に流路と第2の円とを連通するノズルを形成するのがよく、第1の円に第1の液を、前記第2の円に第2の液を供給して、前記第2の円で第1の液と第2の液からエマルションを形成するための流路を前記第5の基板に形成するのが望ましい。
【0013】
さらに上記特徴において、第1および第2の基板の少なくともいずれかの対向する表面に金属および樹脂の少なくともいずれかの薄膜を形成するのがよく、第1および第2の基板の少なくともいずれかの対向する表面であって、微小空間および微小流路少なくともいずれかが形成された面にガラスをコーティングするのがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、マイクロ流体デバイスの機能を果たす微小空間を1枚の基板上に多数集積し、一括して加工および表面処理したので、加工および表面処理に起因するばらつきが低減される。また、並列に処理される微小空間への送液における流体抵抗を均一化したので、均一な攪拌や合成、濃縮等が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るマイクロ流体デバイスの一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、マイクロ流体デバイス100の分解斜視図を、図2にこのマイクロ流体デバイス100に用いる並列処理部の上面図(同図(a))および縦断面図(同図(b))を示す。なお、図2(b)では、2個の基板101、105ではさまれる3個の基板102〜104のハッチングを省略している。本実施例で示したマイクロ流体デバイス100では、2種の液体を合流させて1種類の液として排出する。
【0016】
マイクロ流体デバイス100は、中央部に窪みが形成され下側に配置される第5の基板100と、第5の基板100の窪みに嵌合する第4の基板101との間に、3枚の板状に形成された第1〜第3の基板102〜104を挟み込んで構成されている。第4の基板101と第5の基板105とは、第5の基板105に形成された窪み内部を密閉空間とするために、図示しないねじを挿通するための貫通孔113が第4の基板101に、第5の基板105のこの貫通孔113に対応する位置にねじ孔106がそれぞれの外周部複数箇所に形成されている。第4、第5の基板101、105の側面には、切り落とした平行2平面101a、101b、105a、105bが形成されている。
【0017】
最上層の基板である第4の基板101の中央には、貫通孔112aが形成されており、この孔112aには、第1の流体を導く継手112が形成または取り付けられている。最下側の基板である第5の基板105の窪み部よりも下側には、詳細を後述するマイクロ流路が形成されており、このマイクロ流路に第2の流体を導く導入路107aが側面の平面部105aから半径方向に中心部まで延びている。この導入路107aの平面部105a側端部には、継手が形成または取り付けられている。第5の基板105の中央部には、導入路107aに接続する第2の液供給流路108が上面から上下方向に形成されている。
【0018】
第5の基板105の窪みは、2段に形成されており、第1〜第3の基板102〜104を収容する上段部分は、それらの基板102〜104の外径形状よりもわずかに大きい穴に形成されている。この上段の窪みの下に、リング状の下段窪み105fが形成されている。リング上の下段窪み105fの外径は、基板102〜104の外径よりも小径に形成されている。第5の基板105の側面105bから半径方向内側に下段窪み105fの位置まで排出用穴117aが形成されており、この穴117aの平面部105b側端部には、継手117が形成または取り付けられている。下段窪み105fの底面から排出用穴117aに連通する穴117bが、上下方向に形成されている。第5の基板105の中央部105dの上面には、液供給流路108に連通する放射状の均等分配流路109が等間隔に複数個、図1では8個形成されている。
【0019】
第4、第5の基板101、105に挟持される第1〜第3の基板102〜104の詳細を、以下に説明する。最も上側に位置する第3の基板102は、中央部に第1の液を供給するための孔111が形成された円板であり、第4の基板101の底面側に対向配置されている。なお、この第3の基板の外径形状を円形にしているが、後述する第1、第2の基板102、103と同形の切頭円形状としてもよい。
【0020】
第3の基板102の下側には、第1の基板103が配置されている。第1の基板103は薄い円板の2箇所を平行線で切り落とした切頭円形状である。これにより、第4の基板に形成した均等分配流路109との周方向位置決めを可能にしている。本実施例では、円形の基板の対向面を切り欠いた切頭円形状にしたが、円形に1個の切り欠きや位置決め用の孔を形成してもよく、基板103の形状を多角形にしてもよい。
【0021】
第1の基板103の下側には、第1の基板103に形成した微小流路用溝に第2の流体を供給するための孔110が、第4の基板の均等分配流路109に対応した位置に形成された、第2の基板104が配置されている。第2の基板104は、第1の基板103とほぼ同一形状の切頭円形状である。
【0022】
ところで、本実施例ではマイクロ流体デバイス100での処理量を増大させるために、数千層以上が平行して流れる層流流れの流路を形成する。そのため、第1の基板に、2種類の液を均等に合流させる。第1の基板103の下面側を、半導体のフォトリソグラフィーで用いられる手法で加工して、微小空間や微細流路を形成する。具体的には、第1の基板103と第2の基板104との間であって中心部にほぼ円形の第1微小空間201を形成する。この第1微小空間201に、第1の基板103の中央の孔204から第1の液体を導く。このとき第1微小空間201に、第1微小空間201を中心とする放射状の8本の微細流路202を連通形成したので、第1微小空間201に導かれた第1の液体は、8本の微細流路202に均等に分配されて、外径側に流出する。この流れは、連続相の流れである。
【0023】
次に、この連続相の流れに、原料となる他の液体である分散相の流れを混ぜて均一化する。具体的には、放射状に形成された8本の微細流路202の中間部であってほぼ等半径位置で、連続相の流れ方向を2つに分岐する。その後この分岐流路は、再度合流する。この分岐部に、円形の第2微小空間203を形成する。この第2の微小空間203と分岐流路との間は、薄い壁で分離されている。第2微小空間203に、第2の基板104に形成した貫通孔110から第2の液を導入するとともに、薄い壁に形成した微細なノズルから第1の液を導き、第2微小空間203で2液を混合する。
【0024】
この混合の詳細を、図3を用いて説明する。図2で示した第1微小空間201に相当する第1微小空間307から供給される第1の液は、8本の微細流路301を通って放射状に流出する。微細流路301は、第1の液に第2の液を混合するための第2微小空間302を挟み込む形で2本に分岐している。微細流路301と第2微小空間302とは、隔壁303により分離されている。第2微小空間302に貫通孔305から供給された第2の液は、隔壁303に形成された無数の微小なノズル304を経て微細流路301へ吐出され、第1の液と第2の液が混合される。
【0025】
8個の第2微小空間302を、半径方向に等距離の位置に形成し、8本の微細流路301をほぼ同一形状にしたので、第1の液は8本の全ての流路で均等に流れる。第2の液も、8個の円形の第2微小空間302で半径方向に流れ出るので、流れる距離が均等になる。この結果、隔壁303に加工された多数の微小なノズル304から、第1の液がほぼ均等に吐出される。
【0026】
このとき、微細流路301と第2微小空間302を隔てる壁303は、十分なシール性能を有する必要がある。そこで、シール性を確保するために、第3の基板102で均等加圧して密着させる。このときの均等加圧力は、第1の基板103と第2の基板104を密着させるのに十分な面圧を発生させる圧力である。第1の微小空間307や第2微小空間302のように、高さが数100μm程度で、直径が数mmの空間で、厚み1mm程度のダイアフラム構造になっているときには、ダイアフラムの変形が微小空間の高さ数100μmに対して無視できなくなる。
【0027】
この様子を、図5を用いて説明する。図5を用いて説明する。第1の基板501と第2の基板502を密着させて形成した微細流路503を流れる第1の液に対して、第2の液を微細なノズル504から均等に吐出させる。φ40mm程度の第一の基板501の内部で数千層の並行流を作り出すためには、幅が数μmから数10μmの微細なノズル504を高密度に実装する必要がある。そこで、微細なノズル504の間にあるシール面505の幅を、数10μmから数100μmにする。このシール面でのシール性が損なわれると、数千層の並行流を作り出すことができないので、第1の基板501と第2の基板502を全面にわたって密着させて、シール性を確保する。
【0028】
本実施例では、ダイアフラム構造を有する部分において、第3の基板104を第2の基板103に接触しないように配置し、変形する部分に均等加圧力が作用しないようにしている。つまり、第1の微小空間201の部分に接触する第3の基板102の中央部にだけ貫通穴111を形成した。第1の微小空間201の部分の加圧を、回避している。もちろん、第3の基板102の第2の微小空間203に接触する部分にも加圧しない部分を形成することが望ましい。なお、第3の基板102には、ゴム弾性を有する材料や塑性変形し易い銅やアルミ等の金属を用いる。また、加圧力は第4の基板101に形成した貫通孔113にねじを挿入し、第5の基板105に加工したネジ孔106をねじ締めして得る。
【0029】
第3の基板102は、第1の基板103と第2の基板104の厚みムラや反りを吸収して密着させるのに用いる。そのため、変形能の大きいシートで構成するので第1、第2の基板103、104よりも一回り小さい。圧縮された時には、平面方向に伸びることが出来る。第3の基板102に最も適している材料は、ゴム弾性を有し耐薬品性の高い樹脂シートである。ただし、使いきりで使用するときは、金属の塑性変形を利用することもできる。
【0030】
第1の基板103と第2の基板104で形成される微小空間の平面寸法に比べて、厚み寸法が1桁小さい部分が第1、第2の基板103、104にあるときは、第3の基板102が均等加圧して微小空間容積が小さくなるのを防止するために、それらの部分を加圧しないようにする。さらに、第1の基板103と第2の基板104の密着面は、シール性を確保できるだけの面粗さが必要である。そのため、微小空間同士を隔てるシール面の幅や基板の材質にもよるが、ステンレス鋼を基板材料として用いるときには、数10μm程度の幅でRmaxとして0.8μm程度の粗さを有するものとする。
【0031】
このように構成したマイクロ流体デバイス100を用いて、2種類の混じり合わない液からエマルジョンを作成する例を、図4の並列処理部の拡大図を用いて説明する。本実施例では、分岐した微細流路401の幅が、流れ方向下流に行くに従い広がっている。つまり、微細流路401の下流側を流れるしたがって第2の液を噴出する微細ノズル404の数が増し、無数の微細ノズル404から吐出される液量により、流量が増大する。微細流路401の幅が同一であれば、液量の増大に従い下流側ほど流速が増加するが、微細流路の幅を下流に行くに従い広げているので、流速の変化を低減でき、エマルジョン径の均一性を向上できる。
【0032】
マイクロ流体デバイス100の各基板101〜105を構成する材質は、温度制御する必要がある場合には、熱伝導性の良い金属を用いる。ただし、第1、第2の液体に相当する薬液の種類によっては、金属が腐食するおそれがある。そこで、スパッタや蒸着、CVD等の成膜技術を用いて、基板101〜105の表面を耐薬品性の薄膜でコーティングする。基板101〜105がガラスや樹脂の場合には、コーティングとして、コーティング剤を溶剤に溶かした液を基板上に塗布等して薄膜を形成し、その後熱処理して不要物を揮発させればよい。
【0033】
金属表面をガラスでコーティングする場合には、過飽和状態のガラス溶解液を金属表面に塗布した後、ガラスを析出させればよい。なお、金属薄膜や樹脂薄膜のように塑性変形する材質の場合には、成膜することでシール性が向上するなどの更なるメリットが付加される。ただし、ガラスやセラミックスのような脆性材料の場合には、片当たりが発生する恐れがあるので、コーティング後に平坦化処理をするのがよい。
【0034】
上記実施例では、マイクロ流体デバイス100をステンレス鋼やガラス基板を用いて構成している。これらの材料を用いてマイクロ流体デバイスを加工するときには、金属部分については、ウエットエッチングを用いて、流路となる部分の金属を溶かして除去するか、流路となる部分の型を作成し厚膜メッキで覆ったあとに型を除去して流路を加工する。
【0035】
ウエットエッチングを使用する場合には、さらに、微細な流路を高精度に加工するために、エッチングで発生する温度差や濃度差に起因するエッチング液の流れを考慮して流路設計する必要がある。この場合、エッチングが拡散律速で進行するので、所望の流路幅や深さでエッチング速度が限りなくゼロに近い遅い速度になるように、エッチング用マスクの開口面積を設計する。
【0036】
厚膜メッキを採用する場合には、厚膜レジストはフィルムレジストなどを用いて型を作成する。または、単結晶シリコンやガラスなどの、金属とは溶ける液の性質が異なる材料に、半導体の微細加工技術、例えば、Deep-RIEなどを用いて型を成形する。型にメッキすれば、半導体の高精度な寸法精度を利用した微細流路加工が可能となる。また、メッキで作成した流路基板の表面は、シール性を確保できるほどの平坦性を持っていないので、最終的には研摩して鏡面状態に仕上げる。
【0037】
第1、第2の液に接する部分をガラスで構成する場合は、ガラス基板に流路を加工するか、別の材料の基板に流路を加工してその基板表面にガラスをコーティングする。単結晶シリコンを基板材料に用いるときには、半導体の加工技術を用いて単結晶シリコン基板上に微細流路を高精度に成形する。その後、基板を熱酸化処理すると、均質なガラスを表面に形成することができる。
【0038】
ガラス基板に流路を直接加工する場合には、加工精度を考慮して、ウエットエッチングにおいてフッ酸系のエッチング液を用いて溶かすか、半導体のドライエッチングを用いる。ガラス基板のウエットエッチングの場合には、金属のウエットエッチングとその方法は同様であり、同様の精度の向上が図られる。また、ラフな流路加工でよい場合には、サンドブラストを用いて、除去加工により流路を形成することもできる。この場合、サンド材料として用いる粒子の径を小さくし、チッピングの大きさを小さくする。ホットエンボス加工で微細流路を転写により形成すると、量産時に低コスト化できる。基板材料が樹脂のときには、ポリジメチルシロキサンのようなゴム弾性を有する基板、厚膜レジストを用いて転写する。ポリスチレンやポリカーボネイトのような樹脂基板では、射出成形やホットエンボス加工を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るマイクロ流体デバイスの一実施例の分解斜視図。
【図2】図1に示したマイクロ流体デバイスに用いる並列処理部の上面図および縦断面図。
【図3】図2に示した並列処理部の部分拡大上面図。
【図4】図2に示した並列処理部の部分拡大上面図。
【図5】第1の液と第2の液の混合を説明する図。
【符号の説明】
【0040】
101…第4の基板(加圧上基板)、102…第3の基板(均等加圧基板)、103…第1の基板(微細流路基板)、104…第2の基板(蓋基板)、105…第5の基板(加圧下基板)、106…ネジ孔、107…第2の液用継手、108…第2の液供給流路、109…第2の液の均等分配流路、110…第2の液供給孔、111…第1の液供給孔、112…第1の液用継手、113…ネジ用貫通孔、201…第1微小空間(第1液用)、202…分岐用微細流路(第1液用)、203…第2微小空間(第2液用)、204…第1液供給用貫通孔(第1の基板)、205…第2液供給用貫通孔(第2の基板)、206…シール部1、207…シール部2、301…分岐用微細流路(第1液用)、302…第2微小空間(第2液用)、303…壁(第2のシール部)、304…微細ノズル(第2液吐出用)、305…第2液供給用貫通孔(第2の基板)、306…混合液出口用貫通孔(第2の基板)、307…第1微小空間(第1液用)、308…シール部1、401…分岐用微細流路(第1液用)、402…第2微小空間(第2液用)、403…壁(第2のシール部)、404…微細ノズル(第2液吐出用)、405…第2液供給用貫通孔(第2の基板)、406…混合液出口用貫通孔(第2の基板)、407…第1微小空間(第1液用)、408…第1のシール部、501…第1の基板、502…第2の基板、503…分岐用微細流路(第1液用)、504…微細ノズル(第2液吐出用)、505…第2のシール部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な流路に流体を導入して処理するマイクロ流体デバイスにおいて、一方の表面に凹部が形成された第1の基板と、この第1の基板の凹部形成面に対向して配置した第2の基板と、第1および第2の基板を密着させるものであって第1の基板の背面側に配置した第3の基板とを有し、前記第1の基板の凹部と第2の基板との間に微細な流路および微細な空間を形成し、この微細流路および微細な空間は連通しているとともに少なくとも1個の入口と出口を有しており、前記第1の基板と第2の基板を加圧する加圧手段を設けたことを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記第1ないし第3の基板を収容する第5の基板と、この第5の基板に嵌合する第4の基板とを有し、前記加圧手段はこれら第4、第5の基板を締結する締結手段であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記第3の基板は変形可能であり、第1の基板の板厚のばらつきや第1の基板および第2の基板の表面のうねりを弾性変形により吸収可能なゴムまたは樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記第3の基板は、前記第1の基板と前記第2の基板の間に形成した微細な流路または微細な空間の少なくとも一部を加圧しないものであることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記第3の基板は、第1の基板の板厚のばらつきや第1の基板および第2の基板の表面のうねりを塑性変形で吸収可能な金属材料であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記第4の基板は、前記第2の基板と一体であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記第1ないし第3の基板を、第5の基板に位置決めする位置決め部を第1ないし第3および第5の基板に設けたことを特徴とする請求項2または請求項6に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記位置決め部は、円板の少なくとも1箇所を直線で切り取った切頭円形状あることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記位置決め部に孔が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記微小空間または微小流路に少なくとも2個の入口と一個の出口を形成し、前記第4の基板にこの入口と出口に連通する流路を形成し、前記第1ないし第5の基板を第5、第3、第1、第2、第4の基板の順に積層したことを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記第1の基板に形成した凹部は、中心に位置する第1の円と、この第1の円から放射状に延びる微細な流路とを有し、この流路は中間部で分岐しその後合流する形状に形成されており、分岐した部分に第2の円からなる凹部を有し、この第2の円と分岐した流路との間に形成された隔壁に流路と第2の円とを連通するノズルを形成したことを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
前記第1の円に第1の液を、前記第2の円に第2の液を供給して、前記第2の円で第1の液と第2の液からエマルションを形成するための流路を前記第5の基板に形成したことを特徴とする請求項11に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
前記第1および第2の基板の少なくともいずれかの対向する表面に金属および樹脂の少なくともいずれかの薄膜を形成したことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
前記第1および第2の基板の少なくともいずれかの対向する表面であって、微小空間および微小流路の少なくともいずれかが形成された面にガラスをコーティングしたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−320772(P2006−320772A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143391(P2005−143391)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】