説明

マイコバクテリウム・ツベルクローシスesat−6遺伝子ファミリーベースの結核ワクチン及び診断法

【課題】esat-6遺伝子のメンバーによってエンコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドフラグメントを提供する。
【解決手段】esat-6遺伝子ファミリーのメンバーは、小さなタンパク質をエンコードする遺伝子として定義され、そのような2つの遺伝子は、ゲノム上に互いに隣合って配置されており、少なくとも1つの遺伝子産物がRv3874、Rv3875又はRv0288のいずれかと少なくとも15%同一のアミノ酸配列を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)由来の免疫学的に活性で、新規な幾つかのポリペプチドフラグメント、免疫原性成分としてフラグメントを含むワクチン及び他の免疫組成物、及びポリペプチドの調製方法及び使用に関する。また、この発明は、この発明のポリペプチドフラグメントの調製及びエム・ツベルクローシスでの感染診断に有用なエム・ツベルクローシス由来の新規な核酸フラグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
マイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされるヒトの結核は、WHOによれば年に約300万件の死亡の原因である深刻な全世界的な健康問題である。新しいTB症例の世界的な発生率は最近10年間のあいだ徐々に低下していたが、ここ数年間のこの傾向は、AIDSの出現及びエム・ツベルクローシスの多重薬剤耐性株の発生により、著しく変化した。
臨床上の使用に現在利用可能な唯一のワクチンはBCGで、このワクチンの効力は依然として論議課題である。BCGは一般にTBの動物モデルに高レベルの後天的耐性を誘発するが、発展途上国での幾つかのヒトの試験では、有意な保護を立証できなかった。特に、BCGは合衆国での使用がFDAにより許可されていない。というのは、BCGワクチン接種は、TB感染診断のためのツベルクリン皮膚試験の特異性を損なうためである。
【0003】
このため、TBに対して新規かつ改良されたワクチンの開発が緊急の課題となっており、WHOによって極めて高い優先性が示されている。保護マイコバクテリア物質を明らかにするための多くの試みがなされており、1950〜1970年に数人の研究者が実験的なワクチン接種後の耐性の増加を報告した。しかし、BCGの効能での特異的な長期間にわたる保護免疫応答の立証は、いまだなされていない。
エム・ツベルクローシスに対する免疫は、3つの基本的な特徴によって特徴付けられる; 1) 生細菌は、効果的に保護免疫応答を誘発する; 2) 特異的に感作されたTリンパ球は、この保護を媒介する、及び3) 最も重要な媒介分子はインターフェロンガンマ(IFN-γ)と思われる。
エム・ツベルクローシスは、新しい結核(TB)ワクチンの形成を潜在的に示す幾つかのタンパク質を保持し、ならびに分泌する。数年のあいだ、主な努力は、TBに対する新しいワクチンの開発のため新しい保護抗原を同定することに向けられた。候補分子の研究は、最初は分裂細菌から放出されるタンパク質に焦点を絞った。幾つかの分子が、このマイコバクテリアタンパク質画分から同定され、特徴付けられた。培養ろ液由来のある低分子質量タンパク質、ESAT-6は、結核(TB)患者由来のヒト末梢血液単核細胞(PBMC)の刺激に使用される際に特別な潜在性のIFN-γインデューサーであることが見出された(Ravnら、 1999)。
【0004】
エム・ツベルクローシスゲノムの全シーケンシングにより、幾つかの重要な知見がもたらされた。興味深い内容は、効力のあるT-細胞抗原ESAT-6は別の低質量タンパク質(CFP10)とともに転写されるという知見であった。これらの2つのタンパク質をエンコードする遺伝子は、言い換えれば、同じオペロンに位置するマイコバクテリアゲノム上で互いに隣合うことが見出され、同じプロモーターで制御された。2つの遺伝子は、約40%の配列同一性を有する。アミノ酸レベルでは、配列同一性は約15%であった。タンパク質は、大きさとpIがほぼ同じであった。
【0005】
推定上の幾つかのオープンリーディングフレーム(ORF)とともに、これらの2つの分子は、esat-6遺伝子ファミリーと称されるものを構成している(Coleら、1998, Berthetら、1998)。このファミリーの遺伝子は全て、低質量タンパク質をエンコードしており、これらはESAT-6 及びCFP10のようにオペロン様構造に位置している。ファミリーは、最初にColeら(1998)により以下の言葉: 「おそらくはSec-独立の手法で分泌される、効力のあるT-細胞抗原ESAT-6は、多重遺伝子ファミリーのメンバーでエンコードされている。遺伝子の関連試験は、輸送体として作用しうる大きなATP-加水分解性膜タンパク質をエンコードする遺伝子を含む幾つかの同じく組織化されたオペロンを示している」で記載され、その後、Berthetら(1998)によって、以下:「esat-6との弱い類似性を共有する幾つかの遺伝子は、エム・ツベルクローシスのゲノムシーケンシング計画中に先に同定された。これらの遺伝子は互いに35%未満の配列類似性を共有するが、それらは全て約100アミノ酸の小さなポリペプチドを潜在的にコードしているので、esat-6遺伝子ファミリーに分類された。これらの遺伝子は全てオペロン様構造に組織化され、PE及びPPEファミリーの反復タンパク質をエンコードする遺伝子によって頻繁に先行される」のように記載された。
【0006】
もっとも初期段階でのエム・ツベルクローシスの診断は、疾患の有効な治療に重要である。エム・ツベルクローシス感染を決定付ける現在の診断アッセイは高価で、大きな労働力を要する。世界の一部では、エム・ツベルクローシスに暴露された大多数の患者は胸部x-線を受け、唾液試料から細菌をインビトロで培養する試みがなされている。診断アッセイとしてのX-線は無感覚で、極めて進行した段階でしか感染を同定できない。エム・ツベルクローシスの培養は、診断ツールとしても理想的ではない。なぜなら、細菌は体外で不完全かつゆっくり成長し、このため偽陰性の試験結果を生じ、結果を得るまでに数週間を要するからである。世界の第三国で用いられる安価なアッセイは、標準的なツベルクリン皮膚試験である。それはエム・ツベルクローシス感染個体をエム・ボビス(M. bovis)BCGのワクチン接種個体と区別できず、そのためにエム・ツベルクローシスに関連した細菌株でのワクチン接種(BCGワクチン接種)を受けるか、又は子供時代に受けた地域世界で使用できないため、感染の検出において少しも理想的ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
最も広い観点において、この発明は、esat-6遺伝子ファミリーのメンバーによってエンコードされるアミノ酸配列からなるか、又はesat-6遺伝子ファミリーのメンバーによってエンコードされるポリペプチドフラグメントと少なくとも70%の配列同一性を有し、同時にesat-6遺伝子ファミリーのメンバーによってエンコードされるポリペプチドフラグメントに免疫学的に等価なアミノ酸類似体からなる、実質的に純粋なポリペプチドフラグメントに関する。esat-6遺伝子ファミリーのメンバーは、小さなタンパク質をエンコードする遺伝子として定義され、2つのかかる遺伝子はゲノム上で互いに隣合って配置され、遺伝子産物の少なくとも1つはRv3874、Rv3875又はRv0288のいずれかと少なくとも15%のアミノ酸配列同一性を有する。現在、以下の遺伝子がesat-6遺伝子ファミリーのメンバーである: Rv0287、 Rv0288、 Rv1036c、 Rv1037c、 Rv1038c、 Rv1197、 Rv1198、 Rv1792、 Rv1793、 Rv2346c、 Rv2347c、 Rv2348c 、Rv2653c、 Rv2654c、 Rv3019c、 Rv3020c、 Rv3444c、 Rv3445c、 Rv3619c、 Rv3620c、 Rv3874、 Rv3875、 Rv3890c、 Rv3891c、 Rv3904c及び Rv3905c。
これらのタンパク質は、マクロファージ食胞の細胞内環境に関連し得る重要なマイコバクテリアの特異的な機能を有している。さらに、それらは、実施例1、3a 及び 3bに記載するように、高い免疫学的効力を示す。したがって、それらは、TBに対するワクチン又はTB用の診断調製物の有用な候補として提案される。これらのタンパク質をエンコードする遺伝子は、TBに対するDNAワクチンの成分として提案される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】rTB7.3、rTB10.4及びrCFP10に対するヒトリンパ球の応答。2人のヒトTB患者(○)、及びrTB7.3 (A)、rTB10.4 (B)及びrCFP10 (C)の濃度を増していった、2人のBCGワクチン接種を受けた健康なヒトドナー(△) 由来のPBMCの刺激から得られたIFN-γ 応答。全てのIFN-γ 分析は、3つのウェルからプールした上清について2回行い、平均として示した。複数のウェルにおける偏差は、常に、平均の10%未満であった。 50 pg/ml より下のIFN-γレベルを、陰性として考えた。
【図2】異なるドナー群におけるエム.ツベルクローシスからの低質量抗原に対するIFN-γ応答。7人の健康なワクチン接種を受けていないドナー、7人の健康な BCG ワクチンを受けたドナー及び17人の TB患者を、5μg/mlのST-CF又は組換え抗原で刺激した。個々の抗原特異的応答は、デルタ値(抗原刺激したウェルにおけるIFN-γ放出−非刺激ウェルにおけるIFN-γ放出)として示す。ST-CF: 短期間培養濾液、rTB7.3: Rv3221cの組み換え型、rTB10.4: Rv0288の組換え型、rCFP10: CFP10の組換え型、rESAT-6: ESAT-6の組換え型。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な開示
この明細書及び請求の範囲において、用語「ポリペプチドフラグメント」又はその変形は、少なくとも2アミノ酸残基、多くて10アミノ酸残基の短いペプチド、オリゴペプチド(11〜100アミノ酸残基)及びより長いペプチドを意味する。ポリペプチドフラグメントは、グリコシル化により、脂質化により、あるいは置換基からなることにより化学的に修飾されていてもよい。
この明細書において、用語「実質的に純粋なポリペプチドフラグメント」は、自然に結合する他のポリペプチド物質を多くて5重量%含むポリペプチド調製物を意味する(他のポリペプチド物質についてはより低い%、例えば多くて4%、多くて3%、多くて2%、多くて1%及び多くて1/2%が好ましい)。実質的に純粋なポリペプチドは、少なくとも96%純粋、つまりポリペプチドが調製物中の全ポリペプチド物質の少なくとも96重量%を構成することが好ましい。%は高い方が好ましく、例えば少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99,25%、少なくとも99,5%及び少なくとも99,75%である。ポリペプチドフラグメントは「本質的に純粋な形態」、つまりポリペプチドフラグメントが自然に結合するいずれかの他の抗原、つまり結核菌群に属する細菌由来のいずれかの他の抗原を本質的に有しないことが好ましい。これは、後述する非マイコバクテリア宿主細胞における組換え手段によりポリペプチドフラグメントを調製することによって、又は固相もしくは液相ペプチド合成の周知方法、例えばMerrifieldにより記載される方法あるいはその変形でポリペプチドフラグメントを合成することによって、行うことができる。
【0010】
「結核菌群」はその通常の意味を有する。つまり、TBを引起こすマイコバクテリアには、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・ボビスBCG及びマイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobacterium africanum)がある。
用語「毒性マイコバクテリア」によれば、ヒトを含む哺乳動物で結核疾患を引起こし得る細菌と理解される。毒性マイコバクテリアの例は、エム・ツベルクローシス、エム・アフリカヌム及びエム・ボビスである。
用語「TB患者」によれば、毒性マイコバクテリアでの感染が培養又は顕微鏡学的に明らかにされた個体、及び/又はTBと臨床的に診断された個体及び抗-TB化学療法に感受性の個体と理解される。TBの培養、顕微鏡及び臨床的な診断は、当業者に周知である。
用語「PPD陽性個体」によれば、マントー試験が陽性の個体又はPPDが末梢血液単核細胞(PBMC)もしくは血液全体からの少なくとも1,000pg/mlのINF-γの放出によって測定されるリコール反応(recall reaction)のインビトロでの増加を誘発する個体と理解される。誘発は、約1.0〜2.5 x 105 PBMCからなる懸濁液に2.5〜5 μgのPPD/mlを加えて行われる。IFN-γの放出は、懸濁液にPPDを添加してから5日後に回収される上清中のINF-γを、PPDを加えないINF-γの放出と比較した測定によって評価される。
【0011】
用語「遅延型過敏反応」によれば、ポリペプチドの注射後又は皮膚への塗布後に誘発されるT-細胞介在性炎症反応が理解される。この炎症反応は、ポリペプチドの注射又は塗布から72〜96時間後に現れる。
用語「IFN-γ」によれば、インターフェロン-ガンマが理解される。
この明細書をとおして特記しない限り、用語「包含する」、又は「含む」もしくは「からなる」のようなその変形は、記述した要素又は完全体又は要素もしくは完全体の群の包括を意味するが、いずれかの他の要素又は完全体又は要素もしくは完全体の群を排除するものではないものと理解されるであろう。
【0012】
用語「配列同一性」は、同じ長さの2つのアミノ酸配列間又は同じ長さの2つのヌクレオチド配列間のホモロジーの程度の定量的な測定を示す。比較される2つの配列が等しい長さではない場合、可能な限り最も良く適合するように配列を配置しなければならない。配列同一性は、
【数1】

[Ndifは、配置した際の2つの配列における非同一残基の全数であり、Nrefは配列の1つにおける残基数である]として算出できる。つまり、DNA配列AGTCAGTCは、配列 AATCAATC (Ndif=2 及び Nref=8)と75%の同一性を有するであろう。ギャップは、非同一の特定残基として計測し、つまりDNA配列AGTGTCは、DNA配列AGTCAGTC (Ndif=2 及び Nref=8)と75%の配列同一性を有するであろう。配列同一性は、あるいは、BLASTプログラム、例えばBLASTPプログラム(Pearson W.R及びD.J. Lipman (1988) PNAS USA 85:2444-2448) (www.ncbi.nlm.nih.gov/ cgi-bin/BLAST)により算出することができる。発明の1つの観点において、アライメントは、http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN form.html で入手可能なX. Huang 及びW. Millerら(Adv. Appl. Math. (1991) 12:337-357)によって記載されるデフォルトパラメータで世界的なアラインアルゴリズムを用いて行われる。
【0013】
配列同一性について最も好ましい最少%は、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%及び少なくとも99.5%である。
ここに示されるエム・ツベルクローシス抗原は、ここに具体的に示される1以上のDNA配列に実質的に相同のDNA配列でエンコードされる変異型を含む。ここで用いられる配列同一性は、適度なストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA配列を意味する。適切で適度なストリンジェントな条件には、5X SSC、0.5 % SDS、 1.0 mM EDTA (pH 8.0)溶液での予備洗浄; 50〜60℃で、5X SSC一晩、又は交差種のホモロジーの場合には、45℃、0.5XSSCでのハイブリダイズ; 次いで、0.1 % SDS 含有の2X、 0.5X 及び 0.2X SSCそれぞれでの 65℃で 20分の2回の洗浄が含まれる。このようなハイブリダイズ化DNA配列も、ハイブリダイズ化DNA配列によってエンコードされる免疫原性ポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列のように、コード縮重により、この発明の範囲内である。
【0014】
このように、各ポリペプチドフラグメントは、特定のアミノ酸及び核酸配列によって特徴づけることができる。このような配列には、かかる核酸及びポリペプチド配列が核酸配列における1以上のヌクレオチドの置換、挿入、付加及び/又は欠失によって修飾され、組換えポリペプチドに1以上のアミノ酸残基の置換、挿入、付加又は欠失を引起こす組換え法によって産生される類似体及び変異型が含まれるものと理解されるであろう。
用語ヌクレオチドを以下に用いる際、幾つかの目的には、それはDNA、RNA、PNA 又は LNAとして同じく理解され得る。しかし、当業者が理解するように、明らかな制限が課される。PNA又はLNAは、DNAの代わりに用いることができる。 PNAは、極めて動的なハイブリダイゼーションプロフィルを示すことが分かっている(PNAはNielsen P Eら、1991, Science 254: 1497-1500に記載)。 LNA (Locked Nucleic Acids)は、ビシクロヌクレオシドモノマーを含む、最近導入されたオリゴヌクレオチド類似体である(Koshkinら、1998, 54, 3607-3630;Nielsen, N.K.ら、J.Am.Chem.Soc 1998, 120, 5458-5463)。
【0015】
esat-6遺伝子ファミリーは、以下の基準a)〜c)を満たす遺伝子からなる:
a) 小さなタンパク質をコードする遺伝子;
b) ゲノム上で互いに隣合って配置している少なくとも2つのかかる遺伝子;
c) 基準b)の遺伝子産物の少なくとも1つは、Rv3874 (SEQ ID NO: 1)、Rv3875 (SEQ ID NO: 2)又はRv0288 (SEQ ID NO: 3)のいずれかと少なくとも15%のアミノ酸配列同一性を有する。
esat-6 ファミリーに関する共通特性の1つは、遺伝子のタンパク質生成物の大きさが小さいことである。これに関し、小さいタンパク質は約80アミノ酸、例えば約90アミノ酸、約100アミノ酸、約110アミノ酸、約120アミノ酸、約130アミノ酸、約140アミノ酸又は約150アミノ酸である。
これらのタンパク質は重要なマイコバクテリアの特異的な機能を有しており、その機能がマクロファージ食胞の細胞内環境に関連し、これらの分子の発現が細胞内成長中の特定の感染段階で同時にアップレギュレートされ得ることを示唆している。このアップレギュレーションは、このタンパク質ファミリーの高い抗原性を説明できる可能性がある。基準c)のアミノ酸配列同一性は15 %以上、例えば20%以上、例えば25%、30%以上又は35%以上ですらあることが好ましい。
【0016】
現在、以下の遺伝子が上記の基準a)〜c)を満たし、この結果esat-6遺伝子ファミリーメンバーが同定されている(表1参照):
Rv0287、 Rv0288 (TB10.4)、 Rv1036c、 Rv1037c、 Rv1038c、 Rv1197、 Rv1198、 Rv1792、 Rv1793、 Rv2346c、 Rv2347c、 Rv2348c、 Rv2653c、 Rv2654c、 Rv3019c、 Rv3020c、 Rv3444c、 Rv3445c、 Rv3619c、 Rv3620c、 Rv3874 (CFP10)、 Rv3875 (ESAT-6)、 Rv3890c、 Rv3891c、Rv3904c及び Rv3905c。
実施例1に開示されるように、CFP10、 ESAT-6及び TB10.4 (以前はCFP7と命名)は、精製組換え抗原をヒトTB患者由来PBMCの刺激に用いる際に、極めて良好な IFN-γインデューサーである。このような(後述の基準 d) ii)に記載されるような)作用は、このタンパク質がワクチン又は診断組成物の成分としてさらに開発されるべきであるかどうかを決定する前の、重要な最初の試験である。
興味深いことに、組み換え体Rv1793 及びこのタンパク質及びRv0287(ともにesat-6遺伝子ファミリーのメンバーである)から誘導される合成ペプチドは、2人のPPD-陽性ドナー由来のPBMCにおいてT-細胞増殖及びIFN-γ産生を刺激した (WO98/53075 及びWO98/53076)。
【0017】
この発明の1つの具体例で、esat-6 ファミリーメンバーのタンパク質生成物は、さらに基準 d)を満たすべきである:
d) 少なくとも1つの後述する性質が、陽性であるべきである:
i) それは、5 x 104 個の毒性マイコバクテリアで感染させてから28日後のマウスから回収したT-リンパ球からの少なくとも1,500 pg/mlのIFN-γの放出によって測定される毒性マイコバクテリアでの一次感染中にインビトロの反応を誘発する。誘発は、脾臓から単離した約2 x 105個の細胞からなる懸濁液にポリペプチドを加えて行われる。ポリペプチドを加えた結果、濃度は20μg/懸濁液ml未満となり、 IFN-γの放出は、懸濁液にポリペプチドを加えてから3日後に回収した上清中のIFN-γの測定により評価できる。
ii) それは、診断から0〜6ヶ月後のTB患者、又はPPD陽性個体から回収した末梢血液単核細胞(PBMC)又は全血液から少なくとも500 pg/ml、好ましくは 1,000 pg/mlのIFN-γの放出により測定されるリコール反応をインビトロで誘発する。誘発は、約1.0〜2.5 x 105個のPBMC又は全血液細胞からなる懸濁液に、ポリペプチドを加えて行われる。ポリペプチドを加えた結果、濃度は20μg/懸濁液ml未満となり、IFN-γの放出は、懸濁液にポリペプチドを加えてから5日後に回収した上清中のIFN-γの測定により評価できる。
【0018】
iii) それは、血清がPBSで1:20に希釈され、高くて20μg/mlの濃度でポリペプチドとインキュベートされる際に、ELISA技術又はウエスタンブロットによって測定されるようなTB患者で特異的な抗体反応を誘発し、ELISAで少なくとも0.1のOD又はウエスタンブロットで視覚確認できる反応を誘発する。
iv) それは、臨床的に又は半臨床的(subclinically)に毒性マイコバクテリア感染した個体から回収した末梢血液単核細胞(PBMC)からの少なくとも500pg/mlのIFN-γ放出によって測定される陽性のインビトロ反応を誘発する。誘発は、約1.0〜2.5 x 105個のPBMCからなる懸濁液に、ポリペプチドを加えて行われる。ポリペプチドを加えた結果、濃度は20μg/懸濁液ml未満となり、IFN-γの放出は、懸濁液にポリペプチドを加えてから5日後に回収した上清中のIFN-γの測定により評価できる。毒性マイコバクテリアに感染していない個体では、このようなIFN-γの放出を誘発しないことが好ましい。
v) それは、PPD陽性個体から生じるT細胞系からの少なくとも500pg/mlのIFN-γの放出によって測定される陽性のインビトロ反応を誘発する。誘発は、1〜5 x105細胞/mlからなる懸濁液に、ポリペプチドを加えて行われる。ポリペプチドを加えた結果、濃度は20μg/ml未満となり、IFN-γの放出は、懸濁液にポリペプチドを加えてから3〜5日後に回収した上清中のIFN-γの測定により評価できる。
【0019】
vi) それは、PPD陽性個体から生じるT細胞系からの少なくとも5の刺激指数(SI)のT-細胞増殖によって測定される陽性のインビトロ反応を誘発する(SI、抗原存在下における分当たりの平均数/無抗原の分当たりの平均数として算出)。誘発は、1〜5 x 105細胞/mlからなる懸濁液に、ポリペプチドを加えて行われる。ポリペプチドを加えた結果、濃度は20μg/ml未満となり、IFN-γの放出は、懸濁液にポリペプチドを加えてから3〜5日後に回収した上清中のIFN-γの測定により評価できる。
vii) それは、臨床的に又は半臨床的に毒性マイコバクテリア感染した個体に、高くて100μgのポリペプチドの皮膚内注射又は局所塗布パッチで測定される陽性DTH反応を誘発する。陽性反応は、注射又は塗布から72〜96時間後に少なくとも10mmの直径を有する。
viii) それは、臨床的に又は半臨床的に毒性マイコバクテリア感染した個体に、高くて100μgのポリペプチドの皮膚内注射又は局所塗布パッチで測定される陽性DTH反応を誘発する。陽性反応は、注射から72〜96時間後に少なくとも5mmの直径を有する。毒性マイコバクテリアに明らかに感染した個体にかかる反応を誘発しないことが好ましい。
【0020】
i)に記載の性質は、再活性化した記憶T-リンパ球からのIFN-γの放出が2,000 pg/ml、例えば3,000 pg/mlの際にも、充足されるであろう。この発明の別の具体例で、ポリペプチドの免疫学的な作用は、ポリペプチドを加えず、有意な増加は免疫学的に有効なポリペプチドを示す同様のアッセイからのIFN-γの放出で記載されるようなIFN-γ放出と比較して測定される。この発明の好ましい具体例で、ポリペプチドを加えた結果、濃度は20μg/懸濁液ml未満、例えば15μg、10μg、5μg、3μg、2μg又は1μgポリペプチド/懸濁液mlとなる。
性質i)についてのマウス系統の1つの例は、動物モデルとしてのC57Bl/6jである。当業者に公知であるように、種々の系統が、遺伝学的変化により同じポリペプチドに対する強度を変えて免疫応答と反応しうる。どのマウス系統がどのヒト群で免疫原性反応性の最も良好な予想を生じるかは、現在知られていない。したがって、他のマウス系統、例えばC3H/HeN、 CBA (好ましくは CBA/J)、 DBA (好ましくは DBA/2J)、A/J、AKR/N、DBA/1J、FVB/N、SJL/N、129/SvJ、 C3H/HeJ-Lps又はBALBマウス (好ましくはBALB/cA、 BALB/cJ)を試験することが重要である。現在、モルモットモデルやラットモデルのような別の動物モデルで行われる同様の試験が臨床上、予想されることも考えられている。ヒトに対する臨床上の予想を良好に得るためには、いずれかの家畜動物のモデル、例えばウシモデル、ブタモデル、シカモデル、又はいずれかの霊長類モデルが臨床上の予想を与え、この結果動物モデルとして役立つと考えられる。
【0021】
さらに、結核疾患は、幾つかの異なる動物種、例えば牛、霊長類、モルモット、アナグマ、オポッサム及びシカなどにも影響を及ぼしていることに留意すべきである。上述のいずれかのモデルにおいて有効であることが分かっているポリペプチドは、たとえヒトに有効でなくても、動物の治療に重要である可能性がある。
毒性マイコバクテリアに感染してから28日以内のマウスから回収した再活性化Tリンパ球からのIFN-γの放出を測定することが提案される。これは、免疫宿主が保護免疫反応を高める際に、感染マクロファージの初期認識の原因となる特定のT-細胞がIFN-γの産生をとおして強力な殺菌活性を刺激するとの事実に起因している(Rook, G.A.W. 1990., Flesch, I.ら、1987)。しかし、他のサイトカインは、IL-12、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-10、IL-6、TGF-βのように、ポリペプチドに対する免疫応答をモニターする際に関連している可能性がある。通常、1以上のサイトカインは例えばPCR技術又はELISAを利用して測定されるであろう。特定のポリペプチドによって誘発されるこれらのサイトカインのいずれかの量の有意な増加又は減少がポリペプチドの免疫効力の評価に使用できることは、当業者に高く評価されるであろう。IFN-γをコードする遺伝子が崩壊しているマウスはマイコバクテリア感染を制御できず、広範囲な播種、チーズ様の壊死及び大きなアブセス(abcesse)を伴って極めて迅速に死ぬので、IFN-γ反応を誘発するポリペプチドの能力は、保護免疫と最も関連した相関現象であると現在は考えられている(Flynnら、(1993) J.Exp.Med 178: 2249-2254, Cooperら、(1993) J.Exp.Med.178:2243-2248)。記憶モデルにおける保護免疫の抗原標的に関する情報を得るための特定モデルはLefford (Leffordら(1973) Immunology 25:703) によって最初に開発され、最近の数年に広範囲に使用されている(Orme ら、(1988). Infect.Immun. 140:3589, P.Andersenら、(1995) J.Immunol.154: 3359)。
【0022】
ii)に記載される性質も、PBMCからのIFN-γの放出が診断から6ヶ月以上、例えば診断から9ヶ月、1年、2年、5年又は10年経つTB患者又はPPD陽性個体から回収したPBMCで測定される際には、満たされるであろう。
IFN-γ、ポリペプチド濃度及び他のサイトカインの有意な増加に関する性質 i)についてのコメントは、性質ii)に等しく関連している。
iii)に記載される性質は、特にELISAが以下のように行われるならば、満たされるであろう: 1〜10μg/ml濃度の興味あるポリペプチドを、96ウェルのポリスチレンプレート(NUNC, Denmark)に被覆し、0.37 M NaCl及び0.5% Tween-20を含有するリン酸緩衝液pH 7.3での洗浄工程の後、TB患者由来の血清又は血漿を、1%Tween-20を有するPBSで1:10〜1:1000に希釈する。ポリペプチドに対する抗体結合は、標識(例えばペルオキシダーゼ標識)した第二抗体を加えて測定し、その後、製造者(DAKO, Denmark)によって記載されるように、OPD 及びH2O2を用いて反応を可視化する。各ウェルのOD値は、適当なELISAリーダーを用いて測定する。
好ましい具体例では、ウエスタンブロットは以下のように行われる: 1〜40μg濃度のポリペプチドをSDS-PAGEに用い、電気泳動後、ポリペプチドを膜、例えばニトロセルロース又はPVDFに移す。その後、0.37 M NaCl 及び0.5% Tween-20を含むリン酸緩衝液pH 7.3で膜を30分洗浄する。1人以上のTB患者から得た血清を、0.37 M NaClを含むリン酸緩衝液pH 7.3で1:10〜1:1000に希釈する。
その後、結合緩衝液で4回5分膜を洗浄し、ペルオキシダーゼ又はホスファターゼ標識した第二抗体でインキュベートする。次いで、製造者(DAKO, Denmark)によって推奨される染色方法を用いて反応を可視化する。
【0023】
ポリペプチドが毒性マイコバクテリウムに感染していない個体、つまりBCGワクチン接種を受けたか、又はマイコバクテリウム・アビウム(Mycobaterium avium)に感染しているかもしくは非結核のマイコバクテリウムで感作された個体、又は毒性マイコバクテリウムに感染していない個体、つまり毒性マイコバクテリウムで進行中の感染が、陽性の培養物、顕微鏡上又は臨床上、全く明らかにされていない個体でかかるIFN-γ放出を誘発しない場合には、iv)に記載される性質も特に満たされるであろう。IFN-γの有意な増加、ポリペプチド濃度及び他のサイトカインに関する性質i)についてのコメントは、性質iv)に等しく関連しているであろう。
ポリペプチドが毒性マイコバクテリウムに感染していない個体、つまりBCGワクチン接種しているか、又はマイコバクテリウム・アビウムに感染もしくは非結核のマイコバクテリウムに感作している個体でかかる反応を誘発しない場合には、vii)に記載される性質が特に満たされるであろう。好ましい具体例において、皮膚内に注射されるか、又は塗布されるポリペプチド量は90μg、例えば 80μg、70μg、60μg、50μg、40μg又は30μgである。この発明の別の具体例で、陽性反応の直径は少なくとも6 mm、例えば7 mm、8 mm、9 mm又は10 mmである。好ましい具体例で、硬化又は紅斑又はその双方は、皮膚内注射、パッチ試験又は多重穿刺によるポリペプチドの投与後に測定できる。反応直径は、48時間以上後、例えば72又は96時間後に陽性であり得る。
【0024】
ポリペプチドが、毒性マイコバクテリアに感染していない、つまり毒性マイコバクテリウムで進行中の感染が、陽性の培養物又は顕微鏡上、全く明らかにされていない個体でかかる反応を誘発しない場合には、viii)に記載の性質が特に満たされるであろう。皮膚内に注射されるかもしくは塗布されるポリペプチド量及び陽性反応の直径に関する性質vii)についてのコメントは、性質 viii)に等しく関連している。
この発明の1つの観点は、esat-6遺伝子ファミリーのメンバーによってエンコードされるアミノ酸配列からなる実質的に純粋なポリペプチドフラグメントと少なくとも70%の配列同一性を有し、同時に該ポリペプチドフラグメントに免疫学的に等価であり、但しRv0287、 Rv0288、 Rv1037c、 Rv1038c、 Rv1197、 Rv1198、 Rv1792、 Rv1793、 Rv2346c、 Rv2347c、 Rv3019c、 Rv3619c、 Rv3620c、 Rv3874及びRv3875からなる群からは選択されない、上記の実質的に純粋なポリペプチドフラグメントに関する。
この明細書において、2つのポリペプチドフラグメントは、性質i)、性質ii)、性質iii)、性質iv)、性質v)、性質vi)、性質vii)又は性質viii)を満たすならば、免疫学的に等価である。
【0025】
【表1】

【0026】
免疫診断及びワクチン調製の双方において、既知の免疫原性タンパク質又はポリペプチドのセグメントから抗原を調製することはしばしば可能かつ実際的なことである。あるエピトープ領域は、完全な抗原性ポリペプチドによって産生されるものと同様の反応を生じるのに用いることができる。
免疫反応中に認識される関連T-細胞エピトープを同定するために、「ブルート・フォース(brute force)」法を使用することもできる:T-細胞エピトープは直線状であるので、SEQ ID NOs: 5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29又は 31を有するポリペプチドの欠失変異体は、組織的に構築される場合には、例えばこれらの欠失変異体をここに記載されるIFN-γアッセイに付すことによって、免疫認識に必須なポリペプチドの領域を示すであろう。別の方法は、SEQ ID NOs: 5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29 又は31を有するポリペプチド由来のオリゴペプチド(好ましくは約20アミノ酸残基長の合成物)の重複を利用する。これらの幾つかはIFN-γアッセイで陽性の反応を生ずるであろうが、他のものは生じないであろう。
【0027】
この発明の好ましい具体例で、この発明のポリペプチドフラグメントは、B-細胞又はT-細胞のエピトープからなる。
T-細胞エピトープの最短長は少なくとも6アミノ酸であることが分かっているが、このようなエピトープはより長いアミノ酸のストレッチからなることが普通である。つまり、この発明のポリペプチドフラグメントは、少なくとも7アミノ酸残基長、例えば少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも24及び少なくとも30のアミノ酸残基長を有することが好ましい。
1つの好ましい具体例で、この発明のポリペプチドフラグメントは、いずれのシグナル配列も有しない;これは、ポリペプチドフラグメントが合成で調製される際に特に興味深いが、ポリペプチドフラグメントが組換えで調製される場合ですら、それらが宿主細胞により周辺細胞質又は細胞外空間に輸送されないことが通常容認される;ポリペプチドフラグメントは、宿主細胞の崩壊後に細胞質から従来の方法(後述参照)で回収することができ、ポリペプチドフラグメントの再生(refolding)が必要な際には、全体的な再生スキームを用いることができる(例えば、このような全体的な再生法が記載されるWO 94/18227の開示参照)。
【0028】
融合ポリペプチドを産生することにより、この発明のポリペプチドフラグメントの優れた特性が得られる。例えば、組換えによって産生された場合にポリペプチドの輸出を助ける融合パートナー、ポリペプチドの精製を助ける融合パートナー及びこの発明のポリペプチドフラグメントの免疫原性を高める融合パートナーが、興味ある可能性の全てである。従って、この発明はまた、上記の少なくとも1個のポリペプチドフラグメントと少なくとも1個の融合パートナーとを含む融合ポリペプチドに関する。免疫原性を高めるためには、融合パートナーは、例えば、上記の(関連エピトープの多重発現を可能にする)別のポリペプチドフラグメント、及び、ESAT-6、TB10.4、CFP10、FP17、CFP21、CFP25、CFP29、MPB59、MPT59、MPB64及びMPT64又はこれらの抗原のいずれかの少なくとも1つのT-細胞エピトープのような結核菌群に属する細菌由来の別のポリペプチドからなる群から選択することができる。融合パートナーとして役立ち得る免疫原性を高める他のポリペプチドは、T細胞エピトープ(例えばポリペプチドESAT-6、MPB64、MPT64又はMPB59から誘導されたT細胞エピトープ)、又は、標的遺伝子産物の免疫原性を高める免疫原性エピトープ、例えばIFN-γ、IL-2及びIL-12のようなリンホカインである。発現及び/又は精製を容易にするためには、融合パートナーは、例えば、細菌の線毛タンパク質、例えば毛成分pilin及びpapA; プロテイン A; ZZ-ペプチド (ZZ-融合体はスウェーデンの Pharmaciaにより市販);マルトース結合タンパク質; グルタチオン S-トランスフェラーゼ; β-ガラクタトシダーゼ;又はポリ-ヒスチジンであってもよい。
【0029】
他の興味ある融合パートナーは、脂質化され、免疫原性ポリペプチドが免疫系に適切な方法で提示されるようにするポリペプチドである。この作用は、例えば、ポリペプチド中の脂質化された膜アンカーが、これを産生する細胞から単離されているときに、自己-アジュバント作用を(天然に脂質化されている)ポリペプチドに付与するボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)OspA ポリペプチドベースのワクチンから知られている。反対に、OspA ポリペプチドは、脂質化アンカーなしに調製された場合には、免疫学的に比較的不活である。
【0030】
この発明の別の部分は、単離形態の核酸フラグメントに関する。この核酸フラグメントは、
1) esat-6 遺伝子ファミリーのメンバーである核酸配列からなり、及び/又は
2) 少なくとも10ヌクレオチド長を有し、かつ、ストリンジェントなハイブリッド形成条件 (当該分野で定義される条件、すなわち、融点Tm 下の5〜10℃、Sambrookら、1989年、11.4〜11.49頁参照)下で、1)の核酸フラグメントと容易にハイブリッド形成し、及び/又は
3) 少なくとも10ヌクレオチド長を有し、かつストリンジェントなハイブリッド形成条件 (当該技術分野で定義されている条件、すなわち、融点Tm 下の5〜10℃、Sambrookら、1989年、11.45〜11.49頁参照)下で、
SEQ SEQ ID NO: 6 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 12 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 14 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 16 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 18 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 20 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 22 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 24 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 26 又はこれに相補的な配列、
SEQ ID NO: 28 又はこれに相補的な配列、又は
SEQ ID NO: 30 又はこれに相補的な配列
から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸フラグメントと容易にハイブリッド形成する。
【0031】
核酸フラグメントは、DNAフラグメントであるのが好ましい。
この発明による利点を確実にするためには、ハイブリッド形成研究又はアッセイに用いられる場合の好ましい核酸配列には、選択された配列の少なくとも10〜40程度のヌクレオチドのストレッチに相補的な配列が含まれる。少なくとも10ヌクレオチド長の大きさは、フラグメントが、安定かつ選択的な二重らせん分子を形成するのに十分な長さを確実に有するのを助ける。しかしながら、ハイブリッドの安定性と選択性とを増し、それによって、得られる特異的なハイブリッド分子の質と程度を向上させるためには、10塩基長より大きいストレッチにわたって相補配列を有する分子が一般的には好ましい。
【0032】
従って、用語「サブ配列」は、この発明の核酸フラグメントに関係して用いられる場合、上記ハイブリッド形成パターンを示す少なくとも10ヌクレオチドの連続ストレッチを示すことを意図する。通常、これは、SEQ ID NO: 6、12、14、16、18、20、22、24、26、28 又は30を有するハイブリッド形成パートナーのサブ配列と少なくとも70%の最小配列同一性を要するであろう。核酸フラグメントは、10ヌクレオチドよりも長く、例えば少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも 40、少なくとも 45、少なくとも50、少なくとも 55、少なくとも 60、少なくとも 65、少なくとも 70及び少なくとも 80のヌクレオチド長であることが好ましく、また配列同一性は好ましくは70%よりも高く、例えば少なくとも 75%、少なくとも 80%、少なくとも 85%、少なくとも90%、少なくとも 92%、少なくとも 94%、少なくとも 96%及び少なくとも 98%であるべきである。配列同一性は100%であることが、最も好ましい。こうしたフラグメントは、例えば米国特許第4,603,102号のPCR技術のような核酸再生技術の適用による、化学的手段でフラグメントを直接合成することによって、又は組換え産生用の組換えベクターに選択した配列を導入することによって、容易に調製することができる。
【0033】
同一アミノ酸が種々のコドンによりエンコードされることがあり、特にコドンの用途が、ヌクレオチド配列を発現する当該生物の好みに関係していることは周知である。このように、この発明の核酸フラグメントの少なくとも1つのヌクレオチド又はコドンは他のものと交換され、発現した場合には、当該核酸フラグメントによりエンコードされたポリペプチドに同一又は実質的に同一なポリペプチドを生じる可能性がある。したがって、この発明では、1以上のヌクレオチドの置換、挿入(イントロンを含む)、付加、 欠失及び転移(rearrngement)のような配列変異が可能である。これらの変異は、核酸フラグメント又はそのサブ配列によりエンコードされたポリペプチドに実質的な作用を及ぼさない。用語「置換」は、全ヌクレオチド配列中の1以上のヌクレオチドの1以上の異なるヌクレオチドでの交換を意味することを意図する。「付加」は、全ヌクレオチド配列のいずかの末端での1以上のヌクレオチドの追加を意味すると理解される。「挿入」は、全ヌクレオチド配列内での1以上のヌクレオチドの導入を意味することを意図する。「欠失」は、1以上のヌクレオチドが、全ヌクレオチド配列から、配列のいずれかの末端において又はその内部の適当な点において、欠失されることを示すことを意図する。「転移」は、2以上のヌクレオチド残基が、互いに交換されることを意味することを意図する。
【0034】
修飾されるヌクレオチド配列は、上に説明したようにcDNA又はゲノム由来であってもよいが、合成由来であってもよい。さらに、配列は、上に説明したようにcDNAとゲノムとの混合、cDNAと合成又はゲノムと合成との混合であってもよい。配列は、例えば部位特異的突然変異誘発により修飾されて、所望のポリペプチドをエンコードする所望の核酸フラグメントを生じてもよい。ポリペプチドをエンコードする核酸の修飾に焦点を当てた以下の説明は、こうした可能性ならびに所望の核酸フラグメントを得るために2以上のDNAフラグメントの連結反応により核酸を構築する可能性及び上記原理の組合わせを包含するものと理解されるべきである。
ヌクレオチド配列をいずれかの適当な技術を用いて修飾し、この発明のポリペプチドをエンコードする核酸フラグメントを産生することができる。
この発明のポリペプチドのアミノ酸配列をエンコードするヌクレオチド配列の修飾は、得られるポリペプチドの免疫学的機能を損なわないものであるべきである。
【0035】
ここに開示される抗原の変異型を調製する好ましい方法は、部位特異的突然変異誘発である。この技術は、基礎となる核酸の特異的突然変異誘発により抗原配列から誘導される、個々のペプチド、又は生物学的機能が等しいタンパク質もしくはペプチドの調製に有用である。さらに、この技術により、1以上のヌクレオチド変形配列を核酸に導入することによって、例えば、上記に考慮した項目の1以上を導入して、配列変異体を容易に調製し、試験することができる。部位特異的突然変異誘発は、所望の突然変異のヌクレオチド配列をエンコードする特異的なオリゴヌクレオチド配列ならびに十分数の隣合ったヌクレオチドの使用により突然変異体を産生でき、検討されている欠失結合の両側に安定な二重らせんを形成するのに十分な大きさのプライマー配列と配列コンプレキシティーを生じる。代表的には、変更される配列の結合の両側に約5〜10残基を持った約17〜25ヌクレオチド長のプライマーが好ましい。
一般的に、この発明による部位特異的突然変異誘発は、まず、この発明のポリペプチドをエンコードする核酸配列をその配列内に含む一本鎖ベクターを得ることによって行われる。所望の突然変異配列を持ったオリゴヌクレオチドプライマーは、一般的には合成によって、例えばCreaら(1978)の方法により調製される。次いで、このプライマーを一本鎖ベクターとアニーリングし、大腸菌ポリメラーゼI クレノウフラグメントのようなDNA重合酵素に付し、突然変異を有する鎖の合成を完了する。こうして、1方の鎖が本来の、突然変異していない配列をエンコードし、第2の鎖が所望の突然変異を有するヘテロ二重らせんが形成される。次いで、このヘテロ二重らせんベクターを用いて大腸菌細胞のような適当な細胞を形質転換し、突然変異配列が配置されている組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0036】
この発明の選択された核酸フラグメントの配列変異体を、部位特異的突然変異誘発を用いて調製することは、潜在的に有用な遺伝子種を産生する手段として提供されるものであり、この発明の核酸フラグメントの配列変異体を得る方法は他にもあるので、限定的であることを意味しない。例えば、所望の遺伝子をエンコードする組換えベクターを突然変異誘発剤で処理して、ヒドロキシルアミンを用いるプラスミドDNAの突然変異誘発用の配列変異体(例えば、Eichenlaub, 1979に記載の方法を参照)を得ることができる。
また、この発明は、上記核酸フラグメントを含む複製可能な発現ベクター、特にこの発明のポリペプチドフラグメントをエンコードする核酸フラグメントからなるベクターに関する。
ベクターは、組換えDNA手順に好都合に付されるベクターであればいかなるベクターであってもよく、ベクターの選択は、大抵の場合、これが導入される宿主細胞に依存している。従って、ベクターは、自律複製ベクター、即ち、その複製が染色体複製から独立した、染色体外的なものとして存在するベクターであってもよい。こうしたベクターの例は、プラスミド、ファージ 、コスミド、ミニ染色体又はウィルスである。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されたときに、宿主細胞ゲノム中に組み込まれ、これが組み込まれた染色体と共に複製されるベクターであってもよい。
【0037】
発現ベクターは、ここに開示されるいずれのDNAセグメントも含むように構築されていてもよい。こうしたDNAは、毒性マイコバクテリア株に、又は試料中のマイコバクテリア核酸検出用のハイブリッド形成プローブにすら特異的な抗原性タンパク質をエンコードし得る。所望の抗原性タンパク質に応じて、長い又は短いDNAセグメントを用いることができる。開示されているDNAにより発現又はエンコードされるタンパク質のエピトープ領域が、比較的に短いDNAセグメントとして含まれていもよい。種々の発現ベクターが可能であり、これらの発現ベクターには、例えば、異種遺伝子産物の同定に有用な遺伝子リポーター遺伝子産物をエンコードするDNAセグメント及び/又は形質転換細胞の同定に有用であり得る抗生物質耐性遺伝子のような耐性遺伝子が含まれる。
【0038】
この発明のベクターを用いて細胞を形質転換させ、この発明の核酸フラグメントを増殖させるか、又はこの発明のポリペプチドフラグメントを発現させることができる。従って、この発明は、この発明による少なくとも1個のこうしたベクターを有する形質転換細胞にも関する。かかる形質転換細胞(これもこの発明の一部である)は、いずれかの好適な細菌宿主細胞又は他のいずれかの細胞型、例えば単細胞真核生物、真菌又は酵母、又は多細胞生物、例えば動物もしくは植物由来の細胞であってもよい。哺乳動物の細胞が用いられるのは、特にグリコシル化が望ましい場合においてであるが、タンパク質のグリコシル化は原核生物では稀な現象である。しかしながら、通常は、マイコバクテリウム、サルモネラ、シュードモナス、バシラス及びエシェリキア属に属する細菌のような原核細胞が好ましい。形質転換細胞は、大腸菌、枯草菌又はエム.ボビスBCG 細胞が好ましく、特に形質転換細胞が、この発明によるポリペプチドを発現することが好ましい。後者は、単に形質転換細胞を含む培養物からの回収によって、この発明のポリペプチドを産生する可能性を拓くものである。この発明のこの部分の最も好ましい実施態様においては、形質転換細胞は、Copenhagen BCG Laboratory(Statens Seruminstitut、デンマーク)からのマイコバクテリウム・ボビス株Copenhagenであるマイコバクテリウム・ボビスBCG株: Danish 1331である。
この発明の核酸フラグメントは、この発明のポリペプチドフラグメントの組み換え体を産生することができる。しかし、天然源からの単離も、ペプチド合成のように、ポリペプチドフラグメントを提供する手段である。
【0039】
従って、この発明は、この発明のポリペプチドフラグメントの産生方法にも関する。この方法は、上記核酸フラグメントを、 宿主細胞中で複製可能なベクターに挿入し、得られた組換えベクターを宿主細胞に導入し(形質転換細胞は、分画ハイブリッド形成、融合レポーター遺伝子産物、抵抗マーカー、抗-抗原抗体等の同定によるスクリーニングを含む種々の技術を用いて選択できる)、この宿主細胞を、ポリペプチドの発現を行うのに十分な条件下、培養培地で培養し(当然、細胞は状況に適した条件下で培養でき、DNAが所望される場合には複製条件を用いる)、宿主細胞又は培養培地からポリペプチドを回収するか; 又は、
結核菌群の全マイコバクテリアの全体から、又はその溶解物又はフラクション、例えば細胞壁含有フラクションから、ポリペプチドを単離するか、又は
固相又は液相のペプチド合成によってポリペプチドを合成することからなる。
形質転換細胞の成長に用いられる培地は、目的にかなった通常の培地であればいかなる培地であってもよい。好適なベクターは上記ベクターのいずれであってもよく、好適な宿主細胞は上記細胞型のいずれであってもよい。ベクターを構築し、それを宿主細胞に導入するのに用いられる方法は、組換えDNA分野におけるこうした目的の場合に知られるいずれの方法であってもよい。以下に、可能性についてより詳細に説明する:
【0040】
一般的には、当然、原核生物は、この発明の核酸配列の初期クローニング、及びこの発明に有用なベクターの構築に好ましい。例えば、後述のより詳細な開示に記載される特定の菌株に加えて、例として、大腸菌K12 株294 (ATCC No. 31446)、大腸菌B、及び大腸菌X 1776 (ATCC No. 31537)のような菌株が挙げられる。これらの例は、当然、例示的なものであり限定的なものではない。
原核生物は、発現にも好ましい。上記の菌株ならびに大腸菌W3110 (F-、λ-、野生株、ATCC No. 273325)、枯草菌のような桿菌、又はサルモネラ・ティフィムリムもしくはセラチア・マルセッセンスのような他の腸内細菌、及び種々の シュードモナス種を用いてもよい。特に興味あるものは、成長の早いマイコバクテリア、例えばエム.スメグマチスである。というのは、これらの細菌は、結核菌群のマイコバクテリアに高度に類似しており、従って、発現産物の翻訳後修飾を行う必要性を低減する良好な可能性を有するためである。この発明の1つの局面においては、この発明のポリペプチドをGRAS生物、例えばラクトコッカス(lactococcus)において産生するのが好ましい。
【0041】
一般的には、 レプリコンを含み、かつ、宿主細胞に和合性を有する種由来の制御配列を含むプラスミドベクターが、これらの宿主に関係して用いられる。ベクターは、通常は複製部位ならびに形質転換細胞に表現型選択を提供し得るマーキング配列を有する。例えば、大腸菌は通常は、大腸菌種由来のプラスミド、pBR322を用いて形質転換される(例えばBolivarら、1977, Gene 2: 95参照)。pBR322 プラスミドは、アンピシリンとテトラサイクリンに対する耐性遺伝子を含み、従って、形質転換細胞を同定する容易な手段を提供する。また、pBR プラスミド、又は他の微生物プラスミド、又はファージは、微生物により使用されうる発現用のプロモーターを含むか、又は含むように修飾されなければならない。
組換えDNA構築に最も一般的に用いられるこれらのプロモーターには、B-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)及びラクトースプロモーター系(Changら、1978; Itakuraら、1977; Goeddelら、1979)、及びトリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、1979; EPO Appl. Publ. No. 0036776)が含まれる。これらは最も一般的に用いられるプロモーターであるが、他の微生物プロモーターも発見され利用されており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細は公開されているので、当業者はそれらをプラスミドベクターと機能的に連結することができる(Siebwenlistら、1980)。原核生物由来の所定の遺伝子が、それらの自身のプロモーター配列から大腸菌で効率的に発現され、人工的手段により別のプロモーターを付加する必要性を排除するようにしてもよい。
【0042】
この発明によるポリペプチドの組換え産生後、例えば、この発明によるポリペプチドに実質的に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィー (又はクロマトグラフィーベースの他の通常の生化学的手順)により、ポリペプチドの単離を行ってもよい。他の可能性は、Andersen ら. J.Immunol. Methods 161: 29〜39に記載の同時電気溶出技術を用いることである。
この発明によると、翻訳後修飾には、ポリペプチドの脂質化、グリコシル化、切断、又は伸長が含まれてもよい。
ある局面においては、この発明により提供されるDNA 配列情報により、マイコバクテリアの遺伝子配列に特異的にハイブリッド形成することのできる比較的短いDNA (又はRNA、PNA、又はLNA) 配列を調製することができる。これらの局面においては、適当な長さの核酸プローブが、関連配列を考慮して調製される。こうした核酸プローブがマイコバクテリアの遺伝子配列に特異的にハイブリッド形成できることによって、核酸プローブは、種々の実施態様に特別な有用性をもたらしている。最も重要なことには、プローブは、所定の試料中の病原性生物の存在を検出するために、種々の診断的アッセイで用いることができる。しかしながら、変異体種プライマー、又は他の遺伝子構築物の調製に用いられるプライマーの調製に配列情報を使用することをはじめとする、いかなる使用も想定される。
【0043】
この発明の核酸フラグメントは、この発明のポリペプチド合成及びハイブリッド形成プローブ(直接的なハイブリッド形成アッセイ、又は例えばPCRもしくは他の分子増幅法におけるプライマーとして有用)のための開始点として用いることとは別に、抗原のインビボ発現に用いてもよい。即ち、核酸フラグメントをいわゆるDNAワクチンに用いてもよい。最近の研究から、真核細胞において非複製的なベクターでクローンされたDNAフラグメントは、例えば筋肉内注射又は経皮投与 (いわゆる"遺伝子銃"法)により動物(ヒトを含む)に導入され得ることが明らかにされている。DNAは、例えば筋肉細胞により吸収され、興味ある遺伝子が、真核生物において機能しているプロモーター、例えばウィルス性プロモーターにより発現され、その後、遺伝子産物が免疫系を刺激する。これらの新しく発見された方法は、引用によりここに組み込まれるUlmerら, 1993において検討されている。
従って、この発明は、この発明による核酸フラグメントからなるワクチンにも関し、このワクチンは、これを投与したヒトを含む動物により、抗原をインビボで発現する。発現される抗原の量は、ヒトを含む動物における結核菌群のマイコバクテリア感染に対する耐性を実質的に増大するのに有効である。
【0044】
こうした"DNA ワクチン"の効能は、発現産物をエンコードする遺伝子を、免疫応答調節能を有するポリペプチドをエンコードするDNAフラグメントと共に投与することにより高められる可能性がある。例えば、リンホカイン前駆体又はリンホカイン(例えばIFN-γ、IL-2又はIL-12)をエンコードする遺伝子は、2個の個々のDNAフラグメントを投与するか、同一ベクターに含まれる両方のDNAフラグメントを投与することにより、免疫原性タンパク質をエンコードする遺伝子と共に投与することができる。また、それぞれがここに開示されるポリペプチドの関連するエピトープをエンコードする多数のヌクレオチド配列からなるDNAフラグメントを投与し、それにより、これらのエピトープの幅広いスペクトルで免疫系の連続的感作を行うこともあり得る。
上記のとおり、この発明のポリペプチドフラグメントは、ワクチン成分、又は免疫診断剤中成分の優れた候補である。
従って、この発明の他の部分は、この発明によるポリペプチド又は融合ポリペプチドからなる免疫組成物に関する。こうした免疫組成物の最適な効能を確保するために、免疫組成物は、免疫学的及び医薬的に許容される担体、ビヒクル又はアジュバントからなることが好ましい。
【0045】
適当な担体は、プラスチックのようなポリペプチドが疎水性非共有相互作用により結合しているポリマー、例えばポリスチレン、又は多糖、もしくはポリペプチドのようなポリペプチドが共有結合しているポリマー、例えばウシ血清アルブミン、オバルブミン、又はキーホールリンペットヘモシアニンからなる群から選択される。適当なビヒクルは、希釈液及び懸濁剤からなる群から選択される。アジュバントは、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド (DDA)、 Quil A、ポリ I:C, フロイント不完全アジュバント、IFN-γ、IL-2、IL-12、モノホスホリルリピド A (MPL)、及びムラミルジペプチド(MDP)からなる群から選択されることが好ましい。
この発明による好ましい免疫組成物は、それぞれ異なるポリペプチドフラグメントがポリペプチドか又は上記融合ポリペプチドかである、少なくとも 2個の異なるポリペプチドフラグメントからなる。免疫組成物は、2〜20個、例えば3〜20個の異なるポリペプチドフラグメント又は融合ポリペプチドからなることが好ましい。
こうした免疫組成物は、好ましくはワクチンの形態又は皮膚試験試薬の形態であってもよい。
【0046】
上記にしたがって、この発明はそれ故に、この発明による免疫組成物の産生方法にも関する。この方法は、この発明によるポリペプチドを調製、合成又は単離し、ポリペプチドをワクチン用媒体に可溶化又は分散し、任意に他のエム.ツベルクローシス抗原及び/又は担体、ビヒクル及び/又はアジュバント物質を加えることからなる。
活性成分としてペプチド配列を含むワクチンの調製は、全て引用によりここに組み込まれる米国特許第 4,608,251号; 第 4,601,903号; 第4,599,231号及び第4,599,230号により例示されているように、当該分野において一般的に十分に理解されている。代表的には、こうしたワクチンは、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして注射可能物質として製造され、注射に先立って液体に溶解又は懸濁するのに適した固体の形態で製造されてもよい。調製品は、乳化されてもよい。活性な免疫原性成分は大抵の場合、医薬的に許容されかつ活性成分と相溶性を有する賦形剤と混合される。適当な賦形剤は例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等及びそれらの組合わせである。加えて、ワクチンは、必要であれば、ワクチンの有効性を高める湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、又はアジュバントのような補助物質を少量含んでもよい。
【0047】
ワクチンは通常は、非経口で、注射によって、例えば経皮的に又は筋肉注射によって投与される。他の投与形態に適した追加の製剤には、坐薬、及び、場合によっては、経口製剤が含まれる。坐薬の場合には、通常の結合剤と担体が、例えばポリアルカレングリコール又はトリグリセリドを含んでいてもよい。こうした坐薬は、活性成分を0.5〜10%、好ましくは1〜2%の範囲で含有する混合物から調製されてもよい。経口製剤には、こうした通常使用される賦形剤、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、 炭酸マグネシウム等が含まれる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤又は散剤の形態をとり、10〜95%、好ましくは25〜70%の活性成分を含有する。
タンパク質は、中性又は塩の形態としてワクチンに製剤化されてもよい。医薬的に許容される塩には、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と形成)が含まれる。それらは、例えば塩酸又はリン酸のような無機酸、又は、酢酸、蓚酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩も、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化鉄のような無機塩、及び、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等のような有機塩から誘導され得る。
【0048】
ワクチンは、用量製剤に適合するように、及び治療上効果的かつ免疫原性的になるような量で投与される。投与量は、例えば、免疫応答を高める個々の免疫系の能力、及び所望の保護程度をはじめとする治療対象に依存する。適当な用量範囲は、好ましくは約0.1〜1000μgの範囲、例えば約1〜300μgの範囲、特に約10 〜50 μgの範囲のワクチンにつき数百μgオーダーである。初期投与及びブースター注射に適当な生活規制も様々であるが、初期投与に次いで接種又は他の投与を行うのが代表的である。
適用方法は、実に様々である。通常のワクチン投与法は、いずれも使用可能である。これらには、固形の生理的に許容される基体又は生理的に許容される分散剤での経口投与、非経口的な、注射等による投与が含まれると考えられる。ワクチンの用量は投与経路に依存し、ワクチンを投与される人の年齢、及びそれよりも度合いは低いがワクチンを投与する人の体格にしたがって変化するであろう。
ワクチンのポリペプチドは、ワクチンにおいて十分に免疫原性なものもあるが、ワクチンがアジュバント物質をさらに含む場合に免疫応答が高められるものもある。
【0049】
ワクチンのアジュバント効果を得るための種々の方法には、リン酸緩衝生理食塩水中0.05〜0.1%溶液として通常用いられる水酸化アルミニウム又はホスフェート(alum)のような薬剤の使用、0.25%溶液として用いられる合成ポリマーと糖(Carbopol)との混合、それぞれ、70〜101℃の温度範囲で 30秒〜2 分間の熱処理によるワクチン中のタンパク質の凝集が含まれる。アルブミンに対するペプシン処理(Fab)抗体を用いた再活性化による凝集、又はシー.パルブム(C. parvum)のような細菌細胞又はエンドトキシン又はグラム-陰性細菌のリポポリサッカライド成分との混合、マンニッドモノ-オレエート(Aracel A) のような生理的に許容される油状ビヒクル中での乳化又はブロック代体として用いられるパーフルオロカーボン(Fluosol-DA)の20%溶液を用いた乳化も、用いることができる。この発明によれば、DDA (ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)はアジュバントの興味ある候補であるが、フロイント不完全アジュバントならびにQuilAが可能性として興味深い。さらなる可能性は、モノホスホリルリピド A (MPL)及びムラミルジペプチド (MDP)である。
アジュバント効果の獲得に関し非常に興味ある(従って好ましい)他の可能性は、Gosselin ら, 1992 (引用によりここに組み込まれる)に記載の技術を用いることである。手短に言えば、この発明の抗原のような関連抗原の提示は、単核細胞/マクロファージのFcγリセプターに対する抗体(又は抗原結合抗体フラグメント)に抗原を接合することにより、高めることができる。特に、抗原と抗FcγRIとの接合により、ワクチン接種の目的のための免疫原性が高められることが示されている。
【0050】
他の可能性としては、上記のアジュバントと組合わせられるリンホカイン(例えばIFN-γ、IL-2 及びIL-12)のような免疫調節物質又は合成IFN-γインデューサー、例えばポリ I:Cの使用が含まれる。実施例 3bで説明したように、こうした抗原とアジュバントとの混合により、優れたワクチン製剤がもたらされると考えられる。
多くの場合、ワクチンの多回数の投与、通常は6回を越えないワクチン接種、より通常は4回を越えないワクチン接種、好ましくは1回以上、通常は少なくとも約3回のワクチン接種が必要であろう。ワクチン接種は、通常は2〜12週間の間隔、より通常は3〜5週間の間隔を置く。所望の保護免疫レベルを維持するためには、1〜5年、通常は3年の間隔の周期的ブースターが望ましい。免疫化の過程後には、ワクチンに用いられる1以上のポリペプチドメンバーと同時培養(co-culture)、例えばESAT-6 又はST-CFと同時培養したPBMCのインビトロでの増殖アッセイ、特に、感作リンパ球から放出されたIFN-γレベルの測定を行ってもよい。アッセイは、通常の標識、例えば放射性核種、酵素、螢光剤等を用いて行ってもよい。これらの技術は周知であり、これらのタイプのアッセイの例示として種々の特許、例えば、米国特許第3,791,932号; 第4,174,384号、及び 第3,949,064号に見ることができる。
【0051】
遺伝的な変異により、異なる個体は、同一ポリペプチドに対して強度の異なる免疫応答に反応し得る。従って、この発明のワクチンは、免疫応答を高めるために幾つかの異なるポリペプチドからなってもよい。ワクチンは、2以上のポリペプチドからなってもよい。それらのポリペプチドは全て上記されるとおりであるか、全てではなく幾つかのペプチドが、エム.ツベルクローシスに属する細菌から誘導されもよい。後者の例においては、ポリペプチドについて上記した基準を必ずしも満たさないポリペプチドが、それら自身の免疫原性により作用したり、あるいは単にアジュバントとして作用することができる。こうした興味あるポリペプチドの例は、ESAT-6、TB10.4及びMPT64であるが、マイコバクテリアから単離され得る他のあらゆる物質が候補として可能である。
ワクチンは、1〜20個、例えば2〜20個又は3〜20個の異なるポリペプチド、例えば3〜10 個の異なるポリペプチドからなってもよい。
この発明のポリペプチドとアジュバントとを混合する理由の1つは、細胞性免疫応答を効果的に活性化するためである。しかしながら、この効果は、他の方法で、例えば、ワクチン中の有効な抗原を非病原性微生物で発現させることにより得ることができる。こうした微生物の周知の例は、マイコバクテリア・ボビスBCGである。
【0052】
従って、この発明の他の重要な局面は、現在入手可能な生BCGワクチンの改良であって、上記ポリペプチドをエンコードするDNA配列の1以上のコピーが、微生物がポリペプチドを発現し、分泌し得るように微生物ゲノムに導入されている微生物を有効成分として含むことからなる、結核菌群に属するマイコバクテリアによって引き起こされるTBに対する、ヒトを含む動物の免疫化用ワクチンである。
この明細書において、用語「ゲノム」は、微生物の染色体ならびに染色体外のDNA又はRNA、例えば プラスミドを指す。しかしながら、この発明のDNA配列は、非病原性微生物の染色体に導入されていることが好ましい。というのは、これにより、導入された遺伝物質の損失が防止されるからである。
非病原性微生物は、例えばマイコバクテリウム、サルモネラ、シュードモナス及びエシェリキア属からなる群から選択される細菌が好ましい。非病原性微生物は、マイコバクテリウム・ボビスBCG、例えばマイコバクテリウム・ボビス BCG 菌株: Danish 1331であることが特に好ましい。
【0053】
この発明によるポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列の1以上のコピーをエム.ボビスBCG 株由来のマイコバクテリウムに組み込むことにより、BCG菌株の免疫原性効果が高まるであろう。この発明のヌクレオチド配列の1以上のコピーの組み込みにより、一層免疫応答が高まると考えられ、その結果、この発明の一局面は、ポリペプチドをエンコードするDNA配列の少なくとも2コピー、例えば少なくとも5コピーが、微生物のゲノムに組み込まれているワクチンである。DNA 配列のコピーは、同一ポリペプチドをエンコードする同一物、同一又は相同のポリペプチドをエンコードする同一のDNA配列の変異体であってもよく、あるいは別の具体例では、ポリペプチドの少なくとも1つがこの発明によるものである異なるポリペプチドをエンコードする異なるDNA配列であってもよい。
この発明の生ワクチンは、この発明による形質転換非病原性細胞を培養し、これらの細胞をワクチン用媒体に移し、任意に担体、ビヒクル及び/又はアジュバント物質を加えることにより調製することができる。
【0054】
また、この発明は、ヒトを含む動物に、この発明によるポリペプチド又は上記皮膚試験試薬を皮内注射することからなる、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・アフリカヌム又はマイコバクテリウム・ボビスによって動物に引起こされるTBを診断する方法に関する。注射部位における陽性の皮膚応答は動物がTBを有していることを示し、注射部位における陰性の皮膚応答は動物がTBを有していないことを示す。陽性の応答は、少なくとも 5 mmの直径を有する皮膚応答であるが、より大きい、例えば少なくとも 1 cm、1.5 cm及び 少なくとも 2 cm の直径を有する反応が好ましい。皮膚試験試薬に用いられる組成物は、ワクチンについて上記したのと同じ方法で調製することができる。
ワクチンの調製及び使用に関する上記の開示に伴い、この発明は、この発明のポリペプチド、又は上述のこの発明のワクチン組成物、又は上述の生ワクチンをヒトを含む動物に投与することからなる、結核菌群に属するマイコバクテリアによって引き起こされたTBに対して動物を免疫感作する方法にも関する。好ましい投与経路は、非経口(例えば静脈内及び動脈内)、腹膜内、筋肉内、皮下、皮内、経口、頬、舌下、鼻、直腸又は経皮経路である。
【0055】
多数の可能な診断アッセイ及び方法が想定される:
毒性マイコバクテリアによる過去又は現在の感染についての診断が目的である場合、患者由来の単核細胞(すなわちTリンパ球)からなる血液試料を、この発明の1以上のポリペプチドの試料と接触させることができる。この接触はインビトロで行うことができ、陽性反応は、例えば、T細胞の増殖又はγ-インターフェロンのようなサイトカインの細胞外相(例えば培養上清)への放出であってもよい。適当なインビボ試験は、上記皮膚試験であろう。患者由来の血清試料をこの発明のポリペプチドに接触させることも考えられ、血清試料中の抗体とポリペプチドとの結合に関する立証が、過去又は現在の感染を示す。
従って、この発明は、結核菌群に属する細菌による動物又はヒトでの現在又は過去の感作をインビトロで診断する方法にも関する。この方法は、動物又はヒト由来の血液試料を提供し、動物由来の試料とこの発明のポリペプチドとを接触させることからなり、血液試料中の単核細胞による少なくとも1個のサイトカインの細胞外相への有意な放出が、動物が感作していることを示す。用語「有意な放出」は、サイトカインの放出が、TB診断のない患者由来の血液試料からのサイトカインの放出よりも(スチューデントの両側(two-tailed)T 検定のような適当な統計分析により定義された95%の信頼区間で)著しく多いことを意味する。通常は、有意な放出は、こうした試料から観察される放出の少なくとも2倍である。
【0056】
あるいは、感染の可能性がある器官の試料を、この発明のポリペプチドに対して生じる抗体に接触させてもよい。当該分野で周知の方法による試料と抗体との反応の立証は、現在の感染を示す。また、当然に、患者由来の血清試料をこの発明のポリペプチドフラグメントの少なくとも1つと接触させ、抗体と抗原との反応を可視化する周知の方法を用いることにより、血清中の抗マイコバクテリア抗体の存在を立証できる可能性がある。
この発明の核酸フラグメントを動物に投与するか、又はこの発明の核酸フラグメントもしくはそれに相補的な核酸フラグメントとともに試料をインキュベートし、インキュベーションから得られるハイブリダイズした核酸の存在を(当該分野で周知であるハイブリダイゼーションアッセイを用いて)検出することからなる、ヒトを含む動物、又は試料においてマイコバクテリアの核酸の存在を立証する方法も、この発明に含まれる。こうしたTB診断法には、上記ヌクレオチド配列の少なくとも一部からなり、PCR技術の使用により核酸フラグメント(又は相補的なフラグメント)とハイブリッド形成する被試験動物又はヒト由来の試料中でヌクレオチド配列の存在を検出する組成物の使用が含まれる。
【0057】
開示された抗原のうちのある抗原がエム.ボビスBCGには存在しないが毒性マイコバクテリアには存在するという事実は、それらが、興味ある薬剤標的であることを示している。抗原は、マイコバクテリウムによる感染を容易にするレセプター分子又は毒素を構成している可能性があり、こうした機能が阻害された場合には、マイコバクテリウムの感染力が低減されるであろう。
この発明の抗原から特に適当な薬剤標的を決定するためには、この発明のポリペプチドの少なくとも1つをエンコードする遺伝子と必要な制御配列をマイコバクテリアの無毒性株(例えばBCG)に導入し、どのポリペプチドが毒性に重要であるかを決定することができる。特定のタンパク質が毒性に重要である/毒性に寄与するといったん同定されれば、抗マコバクテリア剤を合理的に設計して、重要遺伝子の発現を阻害するか、又は重要遺伝子産物を攻撃することができる。例えば、抗体又はそのフラグメント、例えばFab及び(Fab')2 フラグメントを、当該分野で公知の方法によってこうした重要なポリペプチドに対して調製し、その後、予防又は治療剤として用いることができる。あるいは、例えば遺伝子の内因性プロモーターを含む組換え発現系を用いて、重要な遺伝子産物の発現を選択的に抑制する能力に関して、又は標的の作用を直接妨げる能力に関して、小分子をスクーニングすることができる。次いで、これらの小分子が、マイコバクテリアの毒性を抑制する治療剤又は予防剤として用いられる。
【0058】
あるいは、毒性マイコバクテリウムを無毒性にする抗マイコバクテリア剤は、制御配列を発現するように操作可能に連結し、毒性マイコバクテリウムを形質転換するために用いることができる。こうした抗マイコバクテリア剤は、マイコバクテリウムにおける剤の転写又は翻訳によって特定のマイコバクテリウムの複製を阻害する。このような「新たな無毒」マイコバクテリウムは、例えばBCGと比較して毒性マイコバクテリウムに免疫学的に極めて類似しているので、ワクチンの目的について上記修飾BCGの優れた代替物となろう。
最後に、イムノアッセイにおいてこの発明のポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、又は上記抗体の特異的な結合フラグメントも、この発明の一部である。こうしたポリクローナル抗体の産生では、適当な動物がポリペプチドによって免疫感作されること、及びこれらの抗体が次いで、好適にはイムノアフィニティークロマトグラフィーにより単離されることが必要である。モノクローナルの産生は、この発明が、免疫感作及び陽性ハイブリドーマのスクリーニングの双方に十分量の抗原を提供するため、当該分野で周知の方法により行うことができる。
【0059】
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米国特許第3,791,932号
米国特許第4,174,384号
米国特許第3,949,064号
【0060】
図面の説明
図1
rTB7.3、rTB10.4及びrCFP10に対するヒトリンパ球の応答。2人のヒトTB患者(○)、及びrTB7.3 (A)、rTB10.4 (B)及びrCFP10 (C)の濃度を増していった、2人のBCGワクチン接種を受けた健康なヒトドナー(△) 由来のPBMCの刺激から得られたIFN-γ 応答。全てのIFN-γ 分析は、3つのウェルからプールした上清について2回行い、平均として示した。複数のウェルにおける偏差は、常に、平均の10%未満であった。 50 pg/ml より下のIFN-γレベルを、陰性として考えた。
図2
異なるドナー群におけるエム.ツベルクローシスからの低質量抗原に対するIFN-γ応答。7人の健康なワクチン接種を受けていないドナー、7人の健康な BCG ワクチンを受けたドナー及び17人の TB患者を、5μg/mlのST-CF又は組換え抗原で刺激した。個々の抗原特異的応答は、デルタ値(抗原刺激したウェルにおけるIFN-γ放出−非刺激ウェルにおけるIFN-γ放出)として示す。ST-CF: 短期間培養濾液、rTB7.3: Rv3221cの組み換え型、rTB10.4: Rv0288の組換え型、rCFP10: CFP10の組換え型、rESAT-6: ESAT-6の組換え型。
【0061】
実施例
実施例1 ヒトTB患者由来PBMC の刺激に対するCFP10, ESAT-6及びTB10.4 の効果
ESAT-6 抗原を、高レベルの放出されたIFN-γとの強いT細胞応答により、培養濾液の低分子量フラクションで同定した(Andersenら、1995)。この抗原は現在、多くの研究により、良好な刺激性の抗原特性を有することが立証され、TB患者ならびにTBに感染した異なる種の動物の高い%によって強く認められている。最近、他の小さないくつかのタンパク質が種々のマイコバクテリア抽出物から同定され、それらの免疫学的な関連性について評価された。近年、ESAT-6と同じオペロンでエンコードされる10 kDaの分子(CFP10)が同定された(Berthet, F.X.1998)。
2つの新規な低量のエム.ツベルクローシスタンパク質:TB10.4及びTB7.3 (Rv3221c と同一であり、ESAT-6 遺伝子ファミリーのメンバーではない)が同定された。TB10.4 は、ESAT-6ファミリーの新規なメンバーとして同定された。我々のデータは、今までに試験されたESAT-6 ファミリーの3つのメンバー(TB10.4、CFP10及びESAT-6)が、全てエム.ツベルクローシスに対するヒトの免疫応答によって強く認識された標的であることを立証している。
【0062】
CFP10、TB7.3及びTB10.4をエンコードする遺伝子のクローニング
CFP10 をエンコードする遺伝子を前記のようにクローンした(Berthet, F.X. 1998)。TB7.3 (以前CFP7Aと呼ばれた) をST-CFから同定し、相当する遺伝子を(WO98/44119)に記載のようにクローンした。
TB10.4 (以前CFP7と呼ばれた) をエンコードする遺伝子は、Mab PV-2でλgt11エム.ツベルクローシスのゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって同定し、以前(WO98/44119)に記載されるようにクローンした。
【0063】
組換え型TB7.3、TB10.4及びCFP10の発現及び精製
ヒスチジンタグ標識した組換え型タンパク質 (rTB7.3、rTB10.4及びrCFP10)は、本質的には製造業者により記載されるように、8M の尿素の存在下、タロンカラム(Clonetech, Palo Alto, Ca) を用いて金属アフィニティークロマトグラフィーによって発現及び精製した。均質化のためのタンパク質の精製は、1mlのHitrapカラム(Pharmacia, Uppsala, Sweden)を用いて陰イオン交換クロマトグラフィーによって行った。タンパク質の濃度は、BCA試験(Micro BCA Protein Assay Reagent kit, Pierce, Oud-Beijerland,オランダs)によって測定した。カブトガニアメーバ様細胞溶解物/Limulus Amoebocyte Lysate (LAL)-試験により測定したこれらの調製物中のLPS含量は、常に0.05ng LPS/タンパク質μg未満であった。
【0064】
低量のエム.ツベルクローシスタンパク質の免疫学的認識
PBMCは、デンマーク、コペンハーゲン大学病院、肺医学部(Department of Pulmonary Medicine, University Hospital of Copenhagen)で診断及び治療された17人のデンマーク人のTB患者、及びBCG ワクチン接種した7人ならびにエム.ツベルクローシスへの暴露が知られてない、ワクチン接種していない健康な7人から得た。血液試料を、結核の診断後0〜6ヶ月間、BCGワクチン接種後2ヶ月〜40年間回収した。
上清におけるPBMCの分離、培養及び IFN-γの測定は、Ravnらによって以前記載されたように行った。3つの組換え型タンパク質(rTB7.3、rTB10.4及びrCFP10)の容量応答の研究は、0.3〜10μg抗原/培養液mlを用いて行った。2人のデンマーク人のTB患者及びBCGワクチン接種した2人の健康なデンマーク人ドナーのリンパ球培養物を3つの抗原で刺激した。TB7.3 で刺激後のリンパ球の応答は、一般に1000pg/ml未満のIFN-γの放出を伴って低かった(図 1A)。IFN-γも、この抗原に対する増殖応答(データは提示せず)も、ST-CF で見られる応答の20%以上に達しなかった。他の2つの抗原に対して、高レベルのIFN-γが、抗原の濃度が増大するにつれて誘発された(図 1 B 及びC)。 抗原の最適濃度は1.25〜10μg/ml で、これらの濃度はml当たり1000〜4000pg の範囲でIFN-γの応答を生じた。
抗原を13〜17 人のTB患者、4〜7人の BCGワクチン接種者及び7人の非ワクチン接種のドナーで調査した (図2)。TB7.3 は認識されたが、患者とワクチン接種したドナーとの両者において低レベルであった。TB患者の約40 % (13人中5人) は、バックグラウンド以上のかなりのレベルでこの分子を認識し、応答中央値は、これらのドナーの場合、ST-CF の場合の同じドナーでの4024pg IFN-γ/mlに対し、659pg IFN-γ/mlであった。
【0065】
TB10.4 は、BCG ワクチン接種をしたドナー(71% の応答者、IFN-γの中央値= 1mlにつき3968pgに対し、 ST-CFの場合、同じドナーで1mlにつき5335pg)及びTB患者 (88% の応答者、IFN-γの中央値 = 3298pg/mlに対し、ST-CFの場合、同じドナーで4707pg/ml)の両者によってより高いレベルで認識された。TB患者では、CFP10 は著しいIFN-γの放出(IFN-γの中央値 = 2135pg/mlに対し、ST-CF の場合、同じドナーで4755pg/ml)を誘発した。
TB10.4、CFP10及びESAT-6に対する著しいT細胞応答と比較すると、TB7.3は、非常に低い活性を有する、弱くではあるが認識された抗原であった。
ESAT-6に例えると、TB患者では、TB10.4は著しく高いレベルのIFN-γを誘発した(P = 0.0017, ウィルコキソン・サイン(Wilcoxon Signed)・ランク試験)のに対し、CFP10 及びESAT-6に対するT 細胞の応答は類似していた(P = 0.121)。CFP10及びTB10.4の両方は、70%未満のTB患者により認識され、興味深いことに、これら2つの効力のある免疫原性分子は、ESAT-6との共通点をいくつか有する:即ち、それらは大きさとpI (10kDa と4.5)がほぼ同じで、ESAT-6に対するアミノ酸配列同一性をそれぞれ15 % 及び21.9 %示し、上記で定義したようにesat-6遺伝子ファミリーのメンバーである。
表示されたデータは、ESAT-6 ファミリーのメンバーに対する宿主の免疫応答に厳密に集束しており、このファミリーが将来的なTBのワクチン及び診断法に関連し得る幾つかの分子を含むことを立証している。
【0066】
実施例2 ESAT-6 ファミリーから低量のタンパク質をエンコードする遺伝子のクローニング
タンパク質の大腸菌中での組換え型発現のため、Rv0287、Rv1036c、Rv1037c、Rv2346c、Rv2348c、Rv2653c、Rv2654c、Rv3020c、Rv3444c、Rv3445c、Rv3890c、Rv3891c、Rv3904c及びRv3905cをエンコードする遺伝子を、遺伝子特異的なプライマーでのPCR 増幅によって、発現ベクターpMCT3 (6つの N-末端ヒスチジン残基を含むことだけを除いては、pMCT6 (Harboe ら、1998)と同一)にクローンした。
タンパク質のクローニングのため、以下の遺伝子特異的なプライマーを使用した:
Rv0287:
PA0287: 5'- CTGAGATCTATGAGCCTTTTGGATGC- 3' (BglII)
PB0287: 5'- CTAAGCTTGGATCCTCAGAACCCGGTATAGG - 3' (BamHI)
Rv1036c:
PA1036c: 5'- CTGAGATCTTTGATCCCCGGTCGGATGGTG (BglII)
PB1036c: 5'- CTCCCATGGGTCAGGTGATCGAATCAGCCA (NcoI)
Rv1037c:
PA1037c: 5'- CTGAGATCTATGACCATCAACTATC - 3' (BglII)
PB1037c: 5'- CTAAGCTTGGATCCTTAGGCCCAGCTGGAGCC - 3' (BamHI)
Rv2346c:
PA2346c: 5'- CTGAGATCTATGACCATCAACTATC - 3' (BglII)
PB2346c: 5'- CTAAGCTTGGATCCTCAGGCCCAGCTGGAGCC - 3' (BamHI)
Rv2348c:
PA2348c: 5'- CTGAGATCTGTGCTTTTGCCTCTTGGTCCG (BglII)
PB2348c: 5'- CCCAAGCTTCTAGCCGGCCGCCGGAGA (HindIII)
Rv2653c:
PA2653c: 5'- CTGAGATCTTTGACCCACAAGCGCACTAAA (BglII)
PB2653c: 5'- CTCCCATGGTCACTGTTTCGCTGTCGGGTTC (NcoI)
Rv2654c:
PA2654c: 5'- CTGAGATCTATGAGCGGCCACGCGTTGGCT (BglII)
PB2654c: 5'- CTCCCATGGTCACGGCGGATCACCCCGGTC (NcoI)
Rv3020c:
PA3020c: 5'- CTGAGATCTATGAGTTTGTTGGATGCCCAT (BglII)
PB3020c: 5'- CTCCCATGGTTAAAACCCGGTGTAGCTGGA (NcoI)
Rv3444c:
PA3444c: 5'- CTGAGATCTATGAACGCAGACCCCGTG - 3' (BglII)
PB3444c: 5'- CTAAGCTTGGATCCCTAGCGTGCCCAAGCTCC - 3' (BamHI)
Rv3445c:
PA3445c: 5'- CTGAGATCTATGGTTGAACCGGGAAGG - 3' (BglII)
PB3445c: 5'- CTAAGCTTGGATCCCTATAGGTCGCCGCCGGC - 3' (BamHI)
Rv3890c:
PA3890c: 5'- CTGAGATCTATGTCAGATCAAATCACG - 3' (BglII)
PB3890c: 5'- CTAAGCTTGGATCCTTAGAACAAGCCCGCG - 3' (BamHI)
Rv3891c:
PA3891c: 5'- CTGAGATCTATGGCAGACACAATTCAGG - 3' (BglII)
PB3891c: 5'- CTAAGCTTCCCGGGTCAGGATCCGTGGCTAGC - 3' (SmaI)
Rv3904c:
PA3904c: 5'- CTGAGATCTATGGATCCGACCGTGTTGG - 3' (BglII)
PB3904c: 5'- CTGCCATGGTCACGACCACATACCC - 3' (NcoI)
Rv3905c:
PA3905c: 5'- CTGAGATCTATGGGTGCCGACGACAC - 3' (BglII)
PB3905c: 5'- CTAAGCTTGGATCCTCAGCCACCGCCCACC - 3' (BamHI)
【0067】
上記に挙げたプライマーは、各配列の後に示した制限部位をもたらす。制限部位は、pMCT3にクローニングするために用いられる。ATGに代わる開始コドンが本来の配列で用いられる場合、プライマーは、代わりにATGコドンを導入する。PCR反応物は、400μMのdNTP混合物(Boehringer Mannheim)を有する1×PCR緩衝液+Mg (Boehringer Manheim) 中10 ngのエム.ツベルクローシスの染色体DNA、0.4 pMの各プライマー及び50 μlの反応容量中1.5 ユニットの Tag DNA ポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)を含有した。PTC-200サーマルサイクラー(M J Research, Inc.)を用いて、反応物をはじめ94℃に5分間加熱し、92℃で1分間、52℃で1分間及び72℃で2分間のプログラムを30サイクル行い、7分72℃で終了した。PCR産物をpRC2.1クローニングベクターにクローンし、製造業者によって記載されるように、ワン・ショット(One Shot)(登録商標)大腸菌細胞(Invitrogen, Leek, オランダ)に形質転換した。プラスミドDNAを適当な制限酵素(プライマー配列を参照)で消化し、pMCT3にクローンし、大腸菌XL-1 Blue細胞に形質転換した。正確な挿入は、常に塩基配列決定によって確認した。DNA塩基配列決定法は、自動ゲル読み取り装置(model 373A; Applied Biosystems)と組み合わせてサイクル塩基配列決定システムを用いてStatens Serum Institutで行った。
【0068】
組換え型Rv0287、Rv1036c、Rv1037c、Rv2346c、Rv2348c、Rv2653c、Rv2654c、Rv3020c、Rv3444c、Rv3445c、Rv3890c、Rv3891c、Rv3904c及びRv3905cの発現及び精製
組換え型タンパク質の発現及び金属アフィニティー精製は、本質的に製造業者によって記載されるようにして行った。100μg/mlのアンピシリン及び12.5μg/mlのテトラサイクリンを含むLB-培地に、組換え型pMCT3プラスミドを収容するXL1-Blue 細胞の一晩培養液を接種した。培養物を、OD600 の密度が0.5に達するまで37℃で振盪した。その後、IPTG を1 mMの最終濃度まで添加し、培養物をさらに2〜16時間インキュベートした。細胞を採収し、1×超音波処理緩衝液+ 8 Mの尿素で再懸濁し、パルス間で30秒停止しながら5×30秒超音波処理した。遠心分離した後、溶解物を10 mlのタロン樹脂 (Clontech, Palo Alto, USA)を含むカラムに加えた。カラムを洗浄し、製造業者によって記載されるように溶離した。
組換え型タンパク質を含むフラクションを貯留し、均質なタンパク質調製物を得て、貯留したフラクションを多溶離技術(multielution technique) (Andersen and Heron, 1993) 又はHitrapカラムで陰イオン交換(Pharmacia, Uppsala, Sweden)のどちらか一方に付した。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
合成ペプチドの合成
3つの抗原(Rv3444c, Rv3890c及びRv3905c)は、ライデン大学 (Leiden University) メディカルセンター(Albinusdreef 2, 2333 Leiden, オランダ)の感染症及び免疫血液学/血液銀行C5-P部で、ABIMED ペプチドシンセサイザー (ABIMED, Langenfeld,ドイツ)で標準的な固相方法によって合成ペプチドとして合成した。
ペプチドには以下のアミノ酸を含めた;
Rv3444c p1: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 1-18
Rv3444c p2: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 11-28
Rv3444c p3: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 21-38
Rv3444c p4: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 31-48
Rv3444c p5: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 41-58
Rv3444c p6: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 51-68
Rv3444c p7: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 61-78
Rv3444c p8: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 71-88
Rv3444c p9: SEQ. ID. NO. 21: アミノ酸 81-100
【0072】
Rv3890c p1: SEQ. ID. NO. 25: アミノ酸1-18
Rv3890c p2: SEQ. ID. NO. 25: アミノ酸11-28
Rv3890c p3: SEQ. ID. NO. 25: アミノ酸 21-38
Rv3890c p4: SEQ. ID. NO. 25: アミノ酸 31-48
Rv3890c p5: SEQ. ID. NO. 25: アミノ酸 41-58
Rv3890c p6: SEQ. ID. NO. 25: アミノ酸 51-68
Rv3890c p7: SEQ. ID. NO. 25: アミノ酸 61-78
Rv3890c p8: SEQ. ID. NO. 25: アミノ酸 71-95
【0073】
Rv3905c p1: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 1-18
Rv3905c p2: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 11-28
Rv3905c p3: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 21-38
Rv3905c p4: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 31-48
Rv3905c p5: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 41-58
Rv3905c p6: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 51-68
Rv3905c p7: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 61-78
Rv3905c p8: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 71-88
Rv3905c p9: SEQ. ID. NO. 31: アミノ酸 81-103
【0074】
実施例3A: T細胞系のインターフェロン-γの誘導
精製した組換え型タンパク質を、IFN-γの放出として測定されるT細胞応答の誘導能についてスクリーンした。スクリーニングは、PPD陽性ドナーから生じたT細胞系のIFN-γの誘導の試験及び/又はTB患者、PPDが陽性ならびに陰性の健康なドナーから得られるPBMC調製物における応答の測定を伴った。
ヒトのドナー: PBMC は、インビトロでPPDに対する応答が陽性の健康なドナーから得た。
T細胞系の調製: 1 mlの総容量中5細菌/細胞の割合で、新たに単離された1〜5×106 のPBMCを生存可能なエム.ツベルクローシスと1.5時間培養することによって、T細胞系を調製した(ドナー1及び2)。 洗浄後、細胞をHEPESで補足したRPMI 1640培地(Gibco, Grand Island, N.Y)及び10%の熱不活化NHS中で培養した。あるいは、1〜5 ×106 の新たに単離されたPBMCを5 μg/mlの ST-CFと培養することによって、T細胞系統を調製した(ドナー3〜5)。37℃及び5% CO2で7日培養した後、T細胞をウェル当たり30-50 Uのr-IL-2 (組換え型インターロイキン 2) (Boehringer Mannheim)でおよそ7日間補足した。最後に、5 ×105のオートロガス抗原提示細胞/ml(ドナー1及び2)又は1×106細胞/照射(2000 RAD)オートロガスPBMCのml(ドナー3〜5) の存在下、5μg/mlのPPD及び/又はST-CF、組み換え型のRv2653c、Rv3891c、Rv3904cならびにRv3444c、Rv3890c及びRv3905cのペプチド貯留(2〜9ペプチド)で1-5×105細胞/mlを刺激することによって、組換え抗原及び合成ペプチドに対する反応性について、T細胞系を試験した。抗原なし(No ag) 及びPHA を陰性及び陽性の対照としてそれぞれ使用した。上清を培養の4日後採収し、IFN-γの存在が分析されるまで-20℃で貯蔵した。
異なるT細胞系で得られた応答を表4に示す。ここで、ドナー1及び2は、生存可能なエム.ツベルクローシスにより駆動されるT細胞系に基づくのに対し、ドナー3〜5は、ST-CFで刺激することによって生じる。
【0075】
【表4】

【0076】
組換え型抗原Rv2653c、Rv3891c及びRv3904c ならびに抗原Rv3444c、Rv3890c及びRv3905cをカバーするペプチドに関する表4に示す結果は、これらの抗原がPPD陽性の個体から生じるT細胞系でIFN-γ産生を誘導できることを示す。
【0077】
実施例3B ヒトのTB患者又はBCGワクチン接種者におけるインターフェロン-γの誘導ヒトのドナー: PBMC は、エム.ツベルクローシスへの暴露が知られていないBCGワクチンを接種した健康なドナー及び培養又は顕微鏡検査法を用いてTBに感染したと判明した患者から得た。血液試料は、診断の0〜6ヶ月後TB患者から採取した。
リンパ球の調製及び細胞培養: PBMC をLymphoprep (Nycomed, Oslo, ノルウェー)でヘパリン添加血液の勾配遠心分離によって新たに単離し、使用するまで液体窒素で貯蔵した。1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Gibo BRL, Life Technologies)、1% の非必須アミノ酸(FLOW, ICN Biomedicals, CA, USA)、及び地方の血液銀行の正常なヒトのAB0 血清(NHS)10%で補足した完全RPMI 1640 培地(Gibco, Grand Island, N.Y.)で、細胞を再懸濁した。細胞の数及び生存能力を、ニグロシン染色によって測定した。マイクロタイタープレート(Nunc, Roskilde, Denmark)に50 μl中1.25×105 のPBMCとともに培養物を定着させ、ST-CF PDD、Rv0287、Rv1036c、 Rv1037c、Rv2653c、Rv3445c、Rv3891c及びRv3904cで刺激した。抗原なし(No ag)及び植物性赤血球凝集素(PHA)を、陰性ならびに陽性の対照としてそれぞれ使用した。培養、貯留の5日後、サイトカインを検出するための上清を採収し、使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0078】
サイトカインの分析: インターフェロン-γ(IFN-γ) を、市販のモノクローナル抗体ペア(Endogen)を用いて標準的なサンドウィッチELISA 技術で検出し、製造業者の指示に従って使用した。組換え型IFN-γ(Endogen) を基準として用いた。全てのデータは2つ(duplicate)のウェルの平均であり、ウェル間の偏差は平均の10% を超過しなかった。50 pg/ml 未満のサイトカインのレベルは、陰性であると考えた。42人の各ドナーの応答を、表5及び6に示す。
表5に示すように、幾つかの組換えタンパク質で刺激した後、著しいIFN-γの放出が認められる。6人のドナーに対して、Rv0287での刺激は高いIFN-γの応答を生じる。Rv1037c、 Rv3891c及びRv3904cで刺激した場合、ドナーの40%〜60%はIFN-γ応答の中央値を示すのに対し、この実験のRv3445c での刺激によっては、限定された応答が得られるに過ぎない。
【0079】
【表5】

【0080】
【表6−1】

【0081】
【表6−2】

【0082】
【表6−3】

【0083】
組換え型抗原Rv1036c、 Rv2653c、Rv3891c及びRv3904c に関する表6に示す結果は、これらの抗原が健康なPPD及び/又はST-CF陽性の個体及び/又はTb患者由来のPBMCでIFN-γ産生を誘導できることを示す。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図2a】

【図2b】

【図2c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)SEQ ID NO:15と少なくとも90%の配列同一性を有すると同時に、SEQ ID NO:15に免疫学的に等価なアミノ酸配列類似体;
2)SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列のT-細胞エピトープ;及び
3)少なくとも12アミノ酸残基長を有し、SEQ ID NO:15と少なくとも90%の配列同一性を有すると同時に、SEQ ID NO:15に免疫学的に等価であるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも96%純粋なポリペプチドフラグメント。
【請求項2】
少なくとも20アミノ酸残基長を有する請求項1によるポリペプチドフラグメント。
【請求項3】
少なくとも30アミノ酸残基長を有する請求項2によるポリペプチドフラグメント。
【請求項4】
いずれのシグナル配列も有しない請求項1〜3のいずれか1つによるポリペプチドフラグメント。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに規定されるアミノ酸配列と少なくとも1つの融合パートナーとを含んでなる融合ポリペプチド。
【請求項6】
融合パートナーが、
1)SEQ ID NOs:7、13、15、17、19、21、23、25、27、29又は31に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドフラグメント;
2)SEQ ID NOs:7、13、15、17、19、21、23、25、27、29又は31に示すアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有すると同時に、該配列に免疫学的に等価なアミノ酸配列類似体を含んでなるポリペプチドフラグメント;
3)SEQ ID NOs:7、13、15、17、19、21、23、25、27、29又は31に示すアミノ酸配列のT-細胞エピトープを含んでなるポリペプチドフラグメント;
4)SEQ ID NOs:7、13、15、17、19、21、23、25、27、29又は31に示すアミノ酸配列のT-細胞エピトープと少なくとも70%の配列同一性を有すると同時に、そのアミノ酸配列に免疫学的に等価なアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドフラグメント;及び
5)ESAT-6又はその少なくとも1つのT-細胞エピトープ、TB10.4又はその少なくとも1つのT-細胞エピトープ、及びMPT59又はその少なくとも1つのT-細胞エピトープのような、結核菌群に属する細菌由来のポリペプチドフラグメント
からなる群から選択される請求項5による融合ポリペプチド。
【請求項7】
融合パートナーが、DnaK、GroEL、ウレアーゼ、グルタミンシンセターゼ、プロリンリッチ複合体、L-アラニンデヒドロゲナーゼ、ホスフェート結合タンパク質、Ag 85複合体、HBHA(ヘパリン結合血球凝集素)、MPT51、スーパーオキシドジスムターゼ、19 kDaリポプロテイン、α-クリスタリン、GroES及びMPT59からなる群から選択される請求項5又は6による融合ポリペプチドフラグメント。
【請求項8】
ポリペプチドの自己アジュバント作用を可能にするよう脂質化されている請求項1〜4のいずれか1つによるポリペプチド又は請求項5〜7のいずれか1つによる融合タンパク質。
【請求項9】
配列同一性が少なくとも95%である前記請求項のいずれか1つによるポリペプチドフラグメント。
【請求項10】
医薬に用いるための請求項1〜4のいずれか1つによる実質的に純粋なポリペプチド又は請求項5〜7のいずれか1つによる融合タンパク質。
【請求項11】
マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・アフリカヌム又はマイコバクテリウム・ボビスによって哺乳動物に引き起こされる結核の診断用又は該結核に対するワクチン接種用の医薬組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1つによる実質的に純粋なポリペプチド又は請求項5〜7のいずれか1つによる融合タンパク質の使用。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1つによるポリペプチド又は請求項5〜7のいずれか1つによる融合タンパク質を含んでなる免疫組成物。
【請求項13】
さらに、
− SEQ ID NO:13、15、17、19、21、23、25、27、29又は31に示すアミノ酸配列;
− SEQ ID NO:13、15、17、19、21、23、25、27、29又は31に示すアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有すると同時に、該アミノ酸配列に免疫学的に等価な類似体;
− SEQ ID NO:13、15、17、19、21、23、25、27、29又は31に示すアミノ酸配列のT-細胞エピトープ;及び
− SEQ ID NO:13、15、17、19、21、23、25、27、29又は31に示すアミノ酸配列のT-細胞エピトープと少なくとも70%の配列同一性を有すると同時に、該アミノ酸配列に免疫学的に等価なアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのポリペプチドフラグメントを含んでなる請求項12による免疫組成物。
【請求項14】
さらに免疫学的かつ医薬的に許容される担体、ビヒクル又はアジュバントを含んでなる請求項12又は13のいずれか1つによる免疫組成物。
【請求項15】
担体が、ポリペプチドが疎水性の非共有相互作用により結合するポリマー、ポリペプチドが共有結合するポリマー及びポリペプチドからなる群から選択され;ビヒクルが希釈剤及び懸濁剤からなる群から選択され;かつアジュバントがジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、Quil A、ポリI:C、フロイントの不完全アジュバント、IFN-γ、IL-2、IL-12、モノホスホリルリピドA(MPL)及びムラミルジペプチド(MDP)からなる群から選択される請求項14による免疫組成物。
【請求項16】
少なくとも2つの異なるポリペプチドフラグメントを含んでなり、異なるポリペプチドフラグメントがそれぞれ請求項1〜9のいずれか1つによるポリペプチドである請求項12〜15のいずれか1つによる免疫組成物。
【請求項17】
3〜20個の異なるポリペプチドフラグメントからなる請求項16による免疫組成物。
【請求項18】
ワクチンの形態である請求項12〜17のいずれかによる免疫組成物。
【請求項19】
皮膚検査試薬の形態である請求項12〜18のいずれかによる免疫組成物。
【請求項20】
非病原性微生物を有効成分として含み、該微生物のゲノム中には、請求項1〜9のいずれか1つによるポリペプチドをエンコードするDNA配列を含んでなるDNAフラグメントの少なくとも1つのコピーが、該微生物がポリペプチドを発現し、任意に分泌し得るように導入されている、結核菌群に属するマイコバクテリアによって引き起こされる結核に対する、ヒトを含む動物の免疫化用ワクチン。
【請求項21】
微生物が細菌である請求項20によるワクチン。
【請求項22】
細菌が、マイコバクテリウム属、サルモネラ属、シュードモナス属及びエシェリキア属からなる群から選択される請求項21によるワクチン。
【請求項23】
微生物が、マイコバクテリウム・ボビスBCG、例えばマイコバクテリウム・ボビスBCG株: Danish 1331である請求項22によるワクチン。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれか1つによるポリペプチドをエンコードするDNAフラグメントの少なくとも2つのコピーが、微生物のゲノム中に導入される請求項20〜23のいずれか1つによるワクチン。
【請求項25】
コピー数が少なくとも5である請求項24によるワクチン。
【請求項26】
請求項1〜9のいずれか1つによるポリペプチドを含んでなる、ヒトを含む動物における結核診断用組成物。
【請求項27】
検出手段を含んでなる請求項26による組成物。
【請求項28】
1)SEQ ID NO:14に記載される配列を有する核酸配列を含んでなり、2)少なくとも40ヌクレオチド長を有し、かつSEQ ID NO:14に記載される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸フラグメントを、宿主細胞中で複製可能なベクターに挿入し、得られた組換えベクターを宿主細胞に導入し、該宿主細胞を培養培地でポリペプチドを発現させるに十分な条件下で培養し、該宿主細胞又は培養培地からポリペプチドを回収するか、又は、
結核菌群の全マイコバクテリアから、又はその溶解物又はフラクション、例えば細胞壁含有フラクションから、ポリペプチドを単離するか、又は
固相又は液相のペプチド合成によってポリペプチドフラグメントを合成することからなる、請求項1〜4のいずれか1つによるポリペプチドの産生方法。
【請求項29】
請求項1〜9のいずれか1つによるポリペプチドを調製し、合成又は単離し、かつワクチン用媒体にポリペプチドを可溶化又は分散し、任意に他のエム.ツベルクローシス抗原及び/又は担体、ビヒクル及び/又はアジュバント物質を加えるか、又は
1)SEQ ID NO:14に記載される配列を有する核酸配列を含んでなり、2)少なくとも40ヌクレオチド長を有し、かつSEQ ID NO:14に記載される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸フラグメントを含んでなる少なくとも1つの複製可能な発現ベクターを有する形質転換細胞を培養し、ワクチン用媒体に細胞を移し、任意に担体、ビヒクル及び/又はアジュバント物質を加えることを含んでなる、請求項12〜19のいずれか1つによる免疫組成物の産生方法。
【請求項30】
動物又はヒト由来の血液試料を提供し、請求項1〜4のいずれか1つによるポリペプチド又は請求項5〜7のいずれか1つによる融合ポリペプチドと動物由来の試料を接触させることを含んでなり、血液試料中の単核細胞による少なくとも1つのサイトカインの細胞外相への有意な放出が、動物が感作されていることを示す、動物又はヒトにおいて結核菌群に属する細菌での過去もしくは現在の感作を診断する方法。
【請求項31】
イムノアッセイで、請求項1〜9のいずれか1つによるポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、又は該抗体の特異的結合性フラグメント。

【公開番号】特開2011−102299(P2011−102299A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262852(P2010−262852)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【分割の表示】特願2001−509760(P2001−509760)の分割
【原出願日】平成12年7月13日(2000.7.13)
【出願人】(500226616)スタテンズ セーラム インスティテュート (2)
【氏名又は名称原語表記】STATENS SERUM INSTITUT
【住所又は居所原語表記】Artillerivej 5,DK−2300 Copenhagen S DENMARK
【Fターム(参考)】