説明

マクロファージまたは葉酸受容体を標的とする狼瘡治療法

本発明はエリテマトーデス(紅斑性狼瘡)の治療法に関する。一つの実施態様では、この方法は、エリテマトーデスを患う患者に対して、一般式L−Xの結合体または複合体を含む組成物の有効量を投与する工程を含む。式中、基Lは、活性化マクロファージ、またはその他の刺激された免疫細胞に結合することが可能なリガンドを含み、基Xは、免疫原物質、細胞毒素、または、マクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物を含む。別の実施態様では、この方法は、エリテマトーデスを患う患者に対して、一般式L−Xの結合体を含む組成物の有効量を投与する工程を含む。式中、基Lは、ビタミン、または、そのビタミン受容体結合性類縁体または誘導体を含み、基Xは、免疫原物質、細胞毒素、または、マクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本出願は、2003年5月6日出願の米国仮出願第60/468,330号の利益を主張する。
本発明はエリテマトーデス(紅斑性狼瘡)の治療法に関する。より詳細には、活性化されたマクロファージ、またはその他の刺激された免疫細胞に結合するリガンドが、免疫原物質、細胞毒素、または、別の薬剤であって、マクロファージ機能、または、その他の刺激された免疫細胞の機能を改変する薬剤と結合され、エリテマトーデス治療のために患者に投与される。
【背景技術】
【0002】
哺乳類免疫系は、外来の病原体を認識し、排除するための手段を提供する。正常時、免疫系は、外来病原体に対する防衛線を実現する一方で、免疫反応そのものが病気の進行に関わる場合が数多くある。宿主自身の免疫反応によって引き起こされる、または悪化させられる病気の例としては、多発性硬化症、エリテマトーデス、乾癬、肺繊維症、および、慢性関節リューマチのような自己免疫疾患、および、動脈硬化症、炎症性疾患、骨髄炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、および、多くの場合臓器移植拒絶反応にいたる移植片対宿主疾患のような、免疫反応が病気発生に寄与する疾患がある。
【0003】
一般に、マクロファージは、外来の病原体に立ち向かう最初の細胞であり、従って、この細胞は、免疫反応において重要な役割を演ずる。活性化されたマクロファージは、外来の病原体を非特異的に取り込み、細胞内部において、加水分解的および酸化的攻撃によって病原体を殺戮し、これは、病原体の分解をもたらす。分解されたタンパク由来のペプチドは、マクロファージの細胞表面に提示され、これはT細胞によって認識され、T細胞は、直接、B細胞表面の抗体と相互作用を持つことが可能となり、これによって、TおよびB細胞の活性化、およびさらに続く免疫反応刺激がもたらされる。
【0004】
エリテマトーデスは、その病気の全身型および皮膚型を含め、組織が自己抗体および免疫複合体によって損傷される、病因未知の自己免疫疾患である。エリテマトーデスには遺伝的素因があるという証拠があり、この病気の発生率は、男性に対し、出産年齢の女性において約8倍高い。エリテマトーデスのエピソードを誘発する可能性のある環境因子もあり、その中には、例えば、ある食物の摂取、およびある薬物および紫外線に対する暴露が含まれる。都市域における全身性エリテマトーデスの発生率は、人口10万人当たり約15-50人である。
【0005】
全身性エリテマトーデスに関与することが知られている異常な免疫反応としては、TおよびBリンパ球の活性の増大をもたらす、自己反応的TおよびBリンパ球の調節異常が挙げられる。このTおよびB細胞の活性増大は、自己抗体および免疫複合体の持続的生産を可能とする。生産された自己抗体のあるものは、直接自己抗原に結合することによってエリテマトーデスの症状を誘発し、また別の自己抗体は、電荷相互作用によって、または、細胞または組織成分との交差反応を通じて、細胞膜に付着する。従って、エリテマトーデスの病因は未知であるばかりでなく、エリテマトーデスにTおよびB細胞が関与することを除いては、エリテマトーデスにおける他の細胞の関与もよく理解されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エリテマトーデスについては多数の臨床症状がある。そのようなものとして、例えば、筋肉痛および間欠性関節炎のような筋骨格系症状、紅斑性発疹を含む皮膚症状、糸球体における免疫グロブリンの沈着および腎炎のような腎臓症状、軽度の認識機能不全、頭痛、および痙攣のような神経系症状、および、血栓症、貧血、溶血、白血球減少症、および血小板減少症を含む血管系および血液学的症状、心膜炎、不整脈症、胸膜炎、および胸水のような心肺症状、悪心および下痢のような消化管症状、および、網膜血管炎のような眼球症状が挙げられる。エリテマトーデスの治療としては、グルココルチコイドおよび非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)の使用が挙げられ、かつ、皮膚病巣の改善のためには、ヒドロキシクロロキンのような抗マラリア剤による連日治療が用いられる。しかしながら、特に、グルココルチコイドおよびNSAIDは有害な副作用を持っており、有害な副作用を抑えるためにそれら薬剤の使用を制限するために種々の試みが為されている。従って、エリテマトーデスの多数の臨床症状の治療のために現在利用が可能な治療法は、有害な副作用を持っており、このために、この病気を治療するための新規療法が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、活性化されたマクロファージ、またはその他の刺激された免疫細胞を抹殺する、または、それらの細胞の機能を抑制することによって、エリテマトーデスを治療する方法に向けられる。一つの実施態様によれば、宿主免疫反応が、免疫原物質によって活性化マクロファージを「標識する」ことによって、活性化マクロファージに対して改めて振り向けられる。別の実施態様では、活性化マクロファージの抹殺またはその機能の抑制を促進するために、不活性化マクロファージに比べて活性化マクロファージに好んで結合するリガンドを、活性化マクロファージを直接抹殺する、または、その機能を抑制する細胞毒素に結合させる。さらに別の実施態様では、活性化マクロファージに好んで結合するリガンドを、その活性化マクロファージ集団の活性を抑制するように改変することのできる別の化合物に結合させる。本発明の結合体に使用が可能なリガンドとしては、不活性化マクロファージに比べて、活性化マクロファージにおいて好んで発現される、または提示される受容体、例えば、葉酸受容体、に結合するリガンド、あるいは、活性化マクロファージにおいて好んで発現される細胞表面マーカーに向けられるモノクロナール抗体のようなリガンドが挙げられる。
【0008】
一つの実施態様では、エリテマトーデスの治療法が提供される。この方法は、エリテマトーデスを患う患者に対して、一般式L−Xの結合体を含む組成物の有効量を投与する工程を含む。式中、基Lは、活性化マクロファージに結合することが可能なリガンドを含み、基Xは、免疫原物質、細胞毒素、または、マクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物を含む。
【0009】
別の実施態様では、エリテマトーデスの治療法が提供される。この方法は、エリテマトーデスを患う患者に対して、一般式L−Xの結合体を含む組成物の有効量を投与する工程を含む。式中、基Lは、ビタミン、または、そのビタミン受容体結合性類縁体または誘導体を含み、基Xは、免疫原物質、細胞毒素、または、マクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物を含む。
【0010】
別の実施態様では、エリテマトーデス治療用薬剤の製造における、一般式L−Xの結合体の使用が提供される。式中、基Lは、活性化マクロファージに結合することが可能なリガンドを含み、基Xは、免疫原物質、細胞毒素、または、マクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物を含む。別の実施態様では、基Lは、ビタミン、または、そのビタミン受容体結合性類縁体または誘導体を含むことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
エリテマトーデスの治療法が本発明に従って提供される。本発明によれば、エリテマトーデスは、一般式L−Xの組成物の有効量を投与することによって治療が可能である。式中、基Lは、活性化マクロファージに結合することが可能なリガンドを含み、基Xは、免疫原物質、細胞毒素、または、マクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物、例えば、サイトカインを含む。このようなマクロファージ標的化結合体は、エリテマトーデスを患う患者に投与されると、その結合された細胞毒素、免疫原物質、またはマクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物を、活性化マクロファージ集団に対して濃縮し、結合させて、その活性化マクロファージを抹殺する、または、マクロファージ機能を改変するように作用することが可能である。活性化マクロファージ集団の除去または不活性化は、エリテマトーデスに固有の病因を除去する、または低減させるように作用することが可能である。この結合体は、典型的には、リガンド結合体および製薬学的に受容可能なその担体を含む組成物として非経口的に投与される。結合体の投与は、典型的には、病気の症状が低減される、または除去されるまで続けられる。
【0012】
本発明の方法は、ヒトの臨床医学および獣医学的応用の両方に使用が可能である。従って、エリテマトーデス、または類似の病態を患う患者はヒトであってもよいし、あるいは、獣医学的応用の場合では、患者は、実験動物、農業動物、家畜、または野生動物であってもよい。本発明の方法に従って投与される結合体は、エリテマトーデスを患う患者に対して、非経口的に、例えば、皮内に、皮下に、筋肉内に、腹腔内に、または静脈内に投与されるのが好ましい。あるいは別に、結合体は、その他の医学的に有効な手順によって患者に投与されてもよいし、また、有効用量は、標準剤形において、または、徐放剤形において、例えば、低速ポンプとして投与されてもよい。本発明の治療法は、単独に用いられてもよいし、エリテマトーデスの治療として認められているものを含めた他の治療法と組み合わせて用いられてもよい。
【0013】
本発明によれば、リガンド結合体は、多様なリガンド、例えば、不活性化マクロファージの表面には発現/提示されないか、または、不活性化マクロファージの表面には目立った量として存在しないが、活性化マクロファージの表面には発現または提示される受容体に結合することが可能な全てのリガンドを用いて形成することが可能である。このようなリガンドとしては、N−フォルミルペプチド(例えば、f-Met-Leu-Phe)、高移動性グループ1タンパク(HMGB1)、ヒアルロナン断片、HSP−70、toll様受容体のリガンド、スカベンジャー受容体のリガンド、抗原提示用共受容体、活性化マクロファージ上のCD68、BER−MAC3、RFD7、CD4、CD14、および、HLA−Dマーカーに結合するリガンド、活性化マクロファージに好んで結合する抗体またはその断片、ビタミン、または受容体結合性のビタミン類縁体/誘導体が挙げられる。このリガンド結合体は、活性化マクロファージには不活性化マクロファージに比べてリガンドに対する受容体が好んで発現されるために、不活性化マクロファージと比べると活性化マクロファージに対してより高度に結合することが可能である。
【0014】
本発明に従ってリガンドとして使用が可能な、受容可能なビタミン成分としては、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12、および、脂溶性ビタミンA、D、EおよびKが挙げられる。これらのビタミン、およびその受容体結合性類縁体および誘導体は、免疫原物質、細胞毒素、またはマクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物と結合されることが可能な、標的化の実体を構成し、本発明に従って使用が可能なリガンド結合体を形成する。好ましいビタミン成分としては、葉酸、ビオチン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、および、これらビタミン分子の受容体結合性類縁体および誘導体、およびその他の関連ビタミン受容体結合性分子が挙げられる(米国特許第5,688,488号を参照されたい、なおこの特許文献を引用することにより本明細書に含める)。
【0015】
本発明の一つの実施態様による一般式L−Xのリガンド結合体では、基Lは、前述したように、不活性化マクロファージに比べて活性化マクロファージの方により結合することが可能なリガンドである。一つの実施態様では、活性化マクロファージ結合性リガンドは、葉酸、葉酸類縁体、またはその他の、葉酸受容体結合性の分子である。別の実施態様では、活性化マクロファージ結合性リガンドは、特異的モノクロナールまたはポリクロナール抗体、または、不活性化マクロファージに比べて活性化マクロファージに対して好んで結合することが可能な抗体のFab、またはscFv(すなわち、単一鎖可変域)断片である。
【0016】
活性化マクロファージは、葉酸、および葉酸誘導化合物にナノモル以下の親和度(すなわち、<1nM)で結合する、38kDのGPI−アンカー型葉酸受容体を発現する。重要なことは、葉酸に対して、小型分子、タンパク、およびリポソームが共有結合した場合でも、このビタミンの葉酸受容体への結合能力は改変されないことである。多くの細胞は、必要な葉酸を獲得するのに、無関係な還元型葉酸担体を用いるために、葉酸受容体の発現は二三の細胞タイプに限られる。腎臓および胎盤を除いては、正常組織は、低レベルの、または、非検出レベルの葉酸受容体しか発現しない。一方、卵巣ガン、乳ガン、気管支ガン、および脳腫瘍を含む多くの悪性腫瘍組織は、際立って高レベルの受容体を発現する。事実、全卵巣ガンの95%は、葉酸受容体を過剰発現すると推定されている。さらに、葉酸受容体の非上皮性アイソフォームである葉酸受容体βは、活性化された滑液マクロファージには発現されるが、不活性化滑液マクロファージには発現されないことが最近報告されている。このようにして、本出願人は、本発明の方法において葉酸-免疫原物質結合体を用いて、エリテマトーデスを患う動物において宿主の免疫反応を活性化マクロファージに改めて振り向けさせて、マクロファージを取り除き、病症を低減させることが可能であることを見出した。
【0017】
その基Lが葉酸、葉酸類縁体、または、別の葉酸受容体結合性リガンドである結合体のことは、米国特許第5,688,488号に精しく記述されている。なお、この特許文献を引用することにより本明細書に含める。前記特許を始め、関連米国特許第5,416,016および5,108,921号も、これらもそれぞれ引用することにより本明細書に含めるが、本発明において有用な結合体を調製するための方法および実例を記述する。本発明のマクロファージ標的化リガンド結合体は、上記特許文献に記載される一般的プロトコールに従って調製・使用することが可能である。
【0018】
葉酸、プテロイン酸、プテロポリグルタミン酸、および葉酸受容体結合性プテリジン、例えば、テトラヒドロプテリン、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、および、それらのデアザおよびジデアザ類縁体も、本発明に従って使用することが可能である。「デアザ」および「ジデアザ」類縁体という用語は、天然に見られる葉酸構造において、一つまたは二つの窒素原子が一つの炭素原子に置換された、従来技術で認知された葉酸類縁体を指す。例えば、デアザ類縁体としては、1-デアザ、3-デアザ、5-デアザ、8-デアザ、および、10-デアザ類縁体が挙げられる。ジデアザ類縁体としては、例えば、1,5ジデアザ、5,10-ジデアザ、8,10-ジデアザ、および、5,8-ジデアザ類縁体が挙げられる。前記は葉酸の類縁体または誘導体であり、葉酸受容体に結合することが可能である。本発明に従って有用なその他の葉酸類縁体または誘導体は、葉酸受容体結合性類縁体であるアミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキセート)、N10-メチルフォレート、2-デアミノ-ヒドロキシフォレートや、デアザ類縁体、例えば、1-デアザメトプテリンまたは3-デアザメトプテリン、および、3’5’-ジクロロ-4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキセート)、等である。また別の葉酸類縁体は、D型配置のグルタミン酸残基を含む葉酸である(葉酸は通常、プテロイン酸に結合する、一つのL型配置のグルタミン酸を含む)。
【0019】
リガンドの結合部位は、活性化マクロファージ、またはその他の刺激された免疫細胞の表面に好んで発現/提示される、任意のリガンド分子、あるいは、その誘導体または類縁体に対する受容体が挙げられる。好んで活性化マクロファージによって発現される、表面に提示されるタンパクは、不活性化マクロファージにおいては存在しないか、無視できる濃度でしか存在しない受容体であって、これは、活性化マクロファージに対する選択的結合手段を提供する。従って、不活性化マクロファージに比べて、活性化マクロファージにおいて発現レベルが上昇した受容体、あるいは、不活性化マクロファージの表面には発現/提示されない受容体、あるいは、不活性化マクロファージの表面には目立った量として発現/提示されない受容体は、どのようなものであれ、標的として使用が可能である。一つの実施態様では、本発明に従って用いられるリガンド結合体と結合する部位は、ビタミン受容体、例えば、葉酸、あるいはその類縁体または誘導体に結合する葉酸受容体である。
【0020】
本発明によれば、このリガンド結合体は、活性化マクロファージ上の受容体に対して高い親和度をもって結合することが可能である。高親和度結合は、リガンド自身がそなえていてもよいし、あるいは、結合親和度を、化学的に修飾されたリガンド(すなわち、類縁体または誘導体)を用いることによって、または、リガンド結合体において、リガンドと、免疫原物質、細胞毒素、または、その他の、マクロファージ機能を改変することが可能な化合物との特定の化学的結合によって、増強させることも可能である。
【0021】
リガンド結合体における、リガンドと、免疫原物質、細胞毒素、または、その他の、マクロファージ機能を改変することが可能な化合物との間の化学的結合は、直接結合であってもよいし、あるいは、仲介リンカーを介したものであってもよい。仲介リンカーは、もし存在する場合、生体適合性であれば、従来技術で既知の任意のリンカーであってよい。典型的には、リンカーは、約1から約30個の炭素または他の原子を、より典型的には約2から約20個の原子を含む。それよりも低い分子量のリンカー(すなわち、約30から約300の分子量を持つもの)も通常用いられる。
【0022】
一般的に、リガンドと免疫原物質、リガンドと細胞毒素、リガンドと、マクロファージ機能を改変することが可能な化合物、リンカーとリガンド、あるいは、リンカーと、免疫原物質、細胞毒素、またはマクロファージ機能を改変することが可能な化合物、のそれぞれの間に結合体を形成するに当たっては、本発明に従って任意の方法の利用が可能である。リンカーが存在する場合も無い場合も、複合体は、結合体の成分を、例えば、水素結合、イオン結合、または共有結合を介して結合させることによって形成することが可能である。結合体成分の共有結合は、酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、またはヒドラゾ基の間に、アミド、エステル、ジスルフィド、またはイミノ結合を形成することによって実現することが可能である。さらに、本発明によれば、リンカーは、リガンドを、免疫原物質/細胞毒素/マクロファージ機能を改変可能な化合物、に結合させる間接的手段、例えば、スペーサーアームまたは架橋分子を介して接続する手段を含んでもよい。リンカーの化学的性質は、溶解に抵抗するように設計されてもよいし、標的マクロファージによる捕捉後に溶解に感受性を持つように設計されてもよい。結合のための直接手段、間接手段の両方とも、本発明の方法の動作のためには、リガンドが活性化マクロファージ表面の受容体に結合するのを妨げてはならない。
【0023】
リガンドが葉酸、葉酸類縁体、または、その他任意の、葉酸受容体結合性分子である実施態様では、葉酸リガンドは、免疫原物質、細胞毒素、または、その他の、マクロファージ機能を改変することが可能な化合物に対し、従来技術で認知された手法によって結合することが可能である。その手法は、無水トリフルオロ酢酸を用いて、プテロイルアジド中間体を介して葉酸のγ-エステルを調製するものである。この手法によって、免疫原物質/細胞毒素/他のマクロファージ機能改変性化合物に対して、葉酸塩のグルタミン酸基のγ-カルボキシ基のみを介して結合する葉酸リガンドが合成される。あるいは別に、葉酸類縁体同士を、従来技術で認知された手法によって、グルタミン酸基のα-カルボキシ成分を介して、または、αカルボン酸成分およびγカルボン酸成分の両方を介して結合させることも可能である。
【0024】
あるいは別に、リガンド結合体は、リポソームを含むものであってもよい。この場合、標的化成分、例えば、細胞毒素またはマクロファージ機能を改変可能な他の化合物は、リポソームの中に包含され、リポソーム自体は、活性マクロファージ結合性リガンドに共有的に結合される。
【0025】
一つの実施態様によれば、エリテマトーデスの治療法であって、そのような病態を患う患者に対して、式L−Xの結合体を含む組成物の有効量を投与することによって治療する方法が提供される。式中、Lは上に定義した通りであり、基Xは、細胞毒素、免疫原物質、または、マクロファージ機能を改変することが可能な別の化合物を含む。本発明の方法に従って使用される結合体を形成するのに有用な細胞毒性成分の例としては、クロドロネート、炭疽菌、シュードモナス細胞外毒素、等であって、典型的には、これらの細胞毒性成分が正常細胞に結合することがないように修飾されたもの、および、その他の毒素または細胞毒性因子、例えば、従来技術で認知される化学療法剤、例えば、p38 MAPキナーゼ阻害剤、アドレノコルチコイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、エストロゲン、シトシンアラビノシドのような代謝拮抗剤、プリン類縁体、ピリミジン類縁体およびメトトレキセート、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチンおよびその他の白金化合物、タモキシフェン、タキソール、シクロフォスファミド、植物アルカロイド、プレドニソン、ヒドロキシウレア、テニポシドおよびブレオマイシン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、ビンクリスチン、ビンブラスチン、抗炎症剤および炎症促進剤、等が挙げられる。このような毒素または細胞毒素成分は、活性化マクロファージ結合成分、例えば、葉酸、またはその他の葉酸受容体結合性リガンドに直接結合されてもよいし、あるいは、上記毒素または細胞毒素成分は、リポソームに含まれるように処方されてもよい。この場合、リポソーム自体は、典型的には、成分リン脂質に対する共有結合を通じてマクロファージ結合性リガンドの結合体として標的になる。
【0026】
同様に、基Xが、マクロファージ機能を改変することが可能な化合物、例えば、IL−10またはIL−11のようなサイトカインを含む場合、このサイトカインは、標的化成分L、例えば、葉酸受容体結合性リガンド、あるいは、抗体または抗体断片に共有的に結合されてもよく、あるいは、マクロファージ機能改変性サイトカインはリポソームの中に封入されてもよい。この場合、リポソームは、リポソームの一つ以上のリン脂質成分に共有的に結合される、側基性マクロファージ標的化実体Lを通じて活性化マクロファージの標的に向けられる。
【0027】
本発明の方法は、活性化マクロファージ、または、他の、刺激された免疫細胞(例えば、正常の、安静な(不活性化された)、組織滞在性マクロファージとは区別される、刺激された樹状細胞または刺激されたマクロファージ)の除去または減少、あるいは、活性化/刺激細胞の活性の抑制をもたらすことができる。エリテマトーデス症状の治療が本発明によって考慮される。さらに、エリテマトーデス症状の再発を防止するための予防処置も本発明によって考慮される。予防処置は、リガンド結合体による初期治療、例えば、連日複数投与スケジュールの治療、および、初期治療(単数回または複数回)後数日から数ヶ月の間隔を置いて1回以上の追加治療、または、連続治療を含むことも可能である。
【0028】
一つの実施態様では、活性化マクロファージ標的化結合体L−Xの基Xは免疫原物質を含み、このリガンド結合体は、エリテマトーデスを患う患者において、内因性免疫反応または共投与による抗体をによる特異的な除去のために、活性化マクロファージ集団を「標識する」のに有効である。基Xが本発明に従って免疫原物質であるリガンド結合体を用いた場合、免疫反応介在による活性化マクロファージ集団の除去が実現される。これは、共投与された抗体によって実現される、内因性免疫反応を通じて、または、受動免疫反応によってもたらされる。内因性免疫反応としては、体液性反応、細胞介在性免疫反応、および、患者にもともと備わった、他の、任意の免疫反応、例えば、補体介在性細胞溶解、抗体依存的な細胞介在性細胞傷害(ADCC)、ファゴサイトーシスをもたらす抗体オプソニン作用、アポトーシス、抗増殖または分化のシグナルをもたらす抗体結合による受容体の集密化、および、送達された免疫原物質の、免疫細胞による直接認識が挙げられる。内因性免疫反応は、免疫細胞の増殖および移動のような過程を調節する、サイトカイン分泌を用いることも考慮される。内因性免疫反応は、複数の免疫細胞タイプ、例えば、B細胞、ヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞を含むT細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、LAK細胞等、の参加を含んでもよい。
【0029】
別の実施態様では、基Xが免疫原物質であるリガンド結合体をマクロファージ細胞内に取り込ませ、免疫原物質を分解させて、マクロファージ細胞表面に提示させ、免疫細胞によって認識されるようにし、そうすることによって、その分解免疫原物質を提示するマクロファージに向けた免疫反応を惹起させることも可能である。
【0030】
体液性反応は、通常のスケジュールに基づいて実施されるワクチン接種、天然抗原による、あるいは、非天然抗原、または、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはジニトロフェニル(DNP)などのハプテンと非天然抗原とによる、新規の免疫を誘発する積極的免疫化のような過程によって誘発される反応となりうる。積極的免疫化は、正常のワクチン接種スケジュール以外に、免疫を誘発するようにスケジュールされた天然抗原、非天然抗原、またはハプテンの複数回注射を含んでもよい。体液性免疫はまた、患者が天然の生得的免疫を持つ自然免疫、例えば、α-ガラクトシル、または外来の血液型に対する免疫のような自然免疫に由来することも可能である。
【0031】
あるいは別に、血清から採取した天然抗体、あるいは、遺伝子工学的に加工された、ヒト化抗体を含めたモノクローナル抗体、又は加工されていないモノクローナル抗体を、患者に対して投与することによって、受動的免疫を確立することも可能である。受動免疫を起こすためにある特定量の抗体試薬を利用すること、および、基Xが免疫原物質であり、受動的投与される抗体がその免疫原物質に向けられるリガンド結合体を用いることは、患者の生得的抗体の抗体価が治療的に有効でない場合に使用される、標準的な複数試薬のセットの利点を提供する可能性がある。この受動的に投与される抗体は、このリガンド結合体と「共投与」することが可能であり、共投与とは、リガンド結合体の投与前の、投与と同時の、または投与後の時点における抗体の投与と定義される。
【0032】
式L−Xのリガンド結合体における基Xが免疫原物質である前述の実施態様では、生得的抗体、誘起抗体、または受動的に投与された抗体を、リガンド結合体が活性化マクロファージ細胞集団に好んで結合するという性質に基づいて、活性化マクロファージに改めて振り向けるようにし、補体介在性細胞溶解、ADCC、抗体依存性ファゴサイトーシス、または、受容体に対する抗体の集密化を通じて、これらの細胞を抹殺することが考慮される。この細胞傷害過程は、他のタイプの免疫反応、例えば、細胞介在性免疫や、二次反応、すなわち、引き付けられた抗原提示細胞が活性化マクロファージを貪食し、それらの細胞の抗原を免疫系に提示することで、そのような抗原を提示する他の活性化マクロファージを除去することを促す際に起こる反応、を含んでもよい。
【0033】
本発明の方法に用いられる結合体を調製する際に使用可能な免疫原物質は、患者において抗体生産を誘発することが可能な免疫原物質、あるいは、患者において以前に抗体生産を惹起し、既存免疫を形成した免疫原物質、あるいは、自然免疫系の一部を構成する免疫原物質である。あるいは別に、その免疫原物質に向けた抗体を、受動的免疫を確立するために宿主動物に投与してもよい。本発明に使用するのに好適な免疫原物質としては、正常なスケジュールのワクチン接種によって発生した既得免疫が向けられる抗原、または抗原ペプチド、あるいは、前もって、例えば、ポリオウィルス、破傷風、チフス、風疹、麻疹、おたふく風邪、百日咳、結核、およびインフルエンザ抗原、外来血液型決定因子、および、α-ガラクトシルグループのような媒体に対して天然に暴露したことによって発生した既得免疫が向けられる抗原、または抗原ペプチドが挙げられる。このような場合、リガンド結合体は、以前に獲得された体液性または細胞性免疫を、患者の活性化マクロファージ集団に改めて振り向けて、それらの細胞を除去するために用いることが可能である。
【0034】
その他の、好適な免疫原物質としては、天然のまたは非天然の抗原、またはハプテン、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはジニトロフェニル(DNP)に対する免疫化を通じて、患者がそれに対する免疫を獲得した抗原または抗原ペプチド、および、それに対して自然免疫が存在する抗原、例えば、スーパー抗原およびムラミルジペプチドが挙げられる。さらに、MHC I限定ペプチドをリガンドにリンクさせて、細胞性免疫をマクロファージに改めて振り向け、マクロファージに対するT細胞の殺作用を誘発するために使用することも可能であることが考慮される。
【0035】
活性化マクロファージの除去を強化するために、少なくとも一つの追加の治療因子を、上に詳述した方法と組み合わせて患者に投与すること、あるいは、一つを越える追加の治療因子を投与することも可能である。この治療因子は、内因性免疫反応を刺激することが可能な化合物、細胞毒素、投与されたリガンド結合体の効力を補完することが可能な別の治療因子の内から選ばれてもよい。本発明の方法は、前述のリガンド結合体に加えてさらに、内因性免疫反応を刺激することが可能な化合物または組成物、例えば、以下に限定されるものではないが、サイトカイン、または免疫細胞成長因子、例えば、インターロイキン1〜18、幹細胞因子、塩基性FGF、EGF、G-CSF、GM-CSF、FLK-2リガンド、HILDA、MIP-1α、TGF-α、TGF-β、M-CSF、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、可溶性CD23、LIF、および、それらの組み合わせを含む、化合物または組成物を患者に投与することによって実行することが可能である。
【0036】
それ自体が細胞傷害性を持ち、かつ、活性化マクロファージの抹殺またはその活性の抑制が可能な化学療法剤で、本発明の方法においてリガンド結合体と組み合わせて使用するのに好適な化学療法剤としては、p38 MAPキナーゼ阻害剤、アドレノコルチコイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、エストロゲン、シトシンアラビノシドのような代謝拮抗剤、プリン類縁体、ピリミジン類縁体、メトトレキセート、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチンおよびその他の白金化合物、タモキシフェン、タキソール、シクロフォスファミド、植物アルカロイド、プレドニソン、ヒドロキシウレア、テニポシド、マイトマイシンCおよびブレオマイシンのような抗生物質、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、ビンクリスチン、ビンブラスチン、および、その他、従来技術で認知された任意の細胞傷害性または化学療法剤が挙げられる。あるいは別に、リガンド結合体は、エリテマトーデスの治療に有用であることが既知の、他の、任意の化合物、例えば、クロロキンと組み合わせて投与することも可能である。
【0037】
添加される治療因子は、リガンド結合体の投与に先立って、投与後に、または、投与と同時に投与してもよく、また、治療因子は、リガンド結合体を含む同じ組成物の一部として、または、リガンド結合体とは異なる組成物の一部として投与することも可能である。添加治療因子を治療的効果量として含有するものであれば、任意のそのような治療組成物を、本発明の方法において使用することが可能である。治療因子は、その治療因子に対する患者の耐性の発生を回避するために、リガンド結合体と組み合わせた療法において、至適用量以下で投与することも可能である。
【0038】
本発明による使用において効果的なリガンド結合体の量は、例えば、治療される病気の性質、結合体の分子量、結合体の投与ルートとその組織分布、および、他の治療剤との併用の可能性を含む、多くのパラメータに依存する。ある患者に投与される効果的量は、典型的には、体表面積、患者の体重、および患者の状態に関する医師の評価に基づく。本発明によれば、リガンド結合体の「効果的量」は、活性化マクロファージ、またはその他の、刺激された免疫細胞に結合するのに十分で、エリテマトーデスの治療に有効な量である。エリテマトーデスの治療のために患者に対して投与されるリガンド結合体の効果的量は、例えば、約1 ng/kgから約10 mg/kgの範囲、約10 μg/kgから約1 mg/kgの範囲、約100 μg/kgから約500 μg/kgの範囲を持つことが可能である。
【0039】
リガンド結合体の投与において、効果的であればどのような投与スケジュールを用いることも可能である。例えば、リガンド結合体は、単発投与として与えることも可能であるし、あるいは、分割されて、一日複数回投与スケジュールとして与えることも可能である。さらに、不定スケジュール、例えば、週当たり1から3日スケジュールも、連日服用に代わる代替として用いることが可能であり、本発明を定義するためにも、このような断続的または不定期的連日スケジュールは、規則的連日スケジュールと等価的なものと見なされ、本発明の範囲に含まれる。一つの実施態様では、患者は、活性化マクロファージ集団を除去するために、リガンド結合体の複数回注射によって治療される。一つの実施態様では、患者は、リガンド結合体を、例えば、12-72時間間隔で、または48-72時間間隔で複数回注射されて治療される。リガンド結合体の追加の注射を、初回の注射から数日または数ヶ月の間隔を置いて患者に投与して病気の再発を防ぐことも可能である。あるいは別に、エリテマトーデスを発症し易い性向を持つことが知られる患者において病気の発生を阻止するために予防的にリガンド結合体を投与することも可能である。
【0040】
一つの実施態様では、1種を越えるリガンド結合体が使用される。例えば、共投与プロトコールにおいて、患者をあらかじめフルオレセインイソチオシアネートおよびジニトロフェニルによって予備免疫化し、その後、同じ、または異なる標的化リガンドに結合されたフルオレセインイソチオシアネートおよびジニトロフェニルを投与する、共投与スケジュールによって治療することも可能である。あるいは別に、1種を越えるリガンドを、一つ以上の標的実体(例えば、免疫原物質)に結合させることもできるし、異なるリガンドを持つ複数の結合体を共投与スケジュールにおいて使用することも可能である。
【0041】
本発明の方法に従って投与されるリガンド結合体は、エリテマトーデスの治療を受ける患者に対して非経口的に、例えば、静脈内に、皮内に、皮下に、筋肉内に、または腹腔内に、製薬学的に受容可能な担体と組み合わせて投与されるのが好ましい。あるいは別に、結合体は、エリテマトーデスの治療を受ける患者に対して、他の医学的に有効な手順に従って、例えば、経口的に利用可能な処方として投与することも可能である。本発明によれば、「エリテマトーデスの治療を受ける患者」とは、本発明の方法によって治療効果が上がると予測される、エリテマトーデスに罹っていることが疑われる全ての患者を意味する。
【0042】
本発明に従って用いられる、式L−Xの結合体は、本発明の一つの局面において、その結合体の効果的量と、結合体のための受容可能な担体を含む診断組成物を処方するのに使用される。非経口剤形の例としては、結合体の水溶液、例えば、等張性生食液、5%グルコース、または、その他の、既知の製薬学的に受容可能な液性担体、例えば、アルコール、グリコール、エステル、およびアミドに溶解させた溶液が挙げられる。本発明に従って用いられる非経口組成物は、1回以上の投与量のリガンド結合体を含む、再構成可能な凍結乾燥体の形を取ってもよい。従来技術で既知の、任意の、経口的に利用可能な剤形も使用が可能である。
【0043】
リガンド結合体はまた、浸透圧ポンプを用いて患者に輸送されてもよい。本発明の別の局面では、リガンド結合体は、従来技術で既知の、いくつかの徐放剤形、例えば、米国特許第4,713,249、5,266,333、および5,417,982号に記載される生体分解性炭水化物基質、の内から任意に選ばれるものとして処方することも可能である。なお、これらの開示を引用することにより本明細書に含める。
【実施例】
【0044】
<実施例1>
[エリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスの器官におけるEC20取り込みの分析]
葉酸塩標的99mTcキレート化学成分(EC20、国際公開第WO 03/092742号参照、引用により本明細書に含む)の結合が、エリテマトーデスに罹り易いマウスの器官に検出されるかどうかを確定するために、エリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスを用いた。エリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスは、Tnfrsfタンパク(腫瘍壊死因子ファミリーの一員である)をコードする遺伝子内部に突然変異を持ち、3月齢で、免疫複合体の循環レベルに著明な増大と、重篤な糸球体腎炎を呈する。雌のMRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスは17週の寿命を持つ。MRL/MpJマウスと表示される対照グループのマウスでは、3月齢では軽度の糸球体病巣しか見られず、雌は73週の寿命を持つ。
【0045】
雌の、エリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウス(グループ当たりn=3)、および、雌の、MRL/Mpjマウス(グループ当たりn=3)を、ジャクソン・ラボラトリーズ(バーハーバー、メイン州)から購入した。これらのマウスを、12週齢において葉酸欠損食餌で養った。3週後、EC20の生体分布を、エリテマトーデス感受性マウスと対照マウスにおいて評価した。のEC20生体分布実験のために、各マウスに、1.8 mCiの99mTc、および6.25 x 10-9モルのEC20を投与した。各マウスに対する全注入容量は400 μlであり、注入は腹腔内であった。マウスは、注入4時間後に屠殺し、器官を摘出して、EC20生体分布分析、すなわち、組織1グラム当たりの放射能を測定した(組織の湿潤重量における注入量パーセント(%ID/g)、図1参照)。
【0046】
図1の結果は、99mTc-EC20の結合は、MRL/MpJ対照マウスの器官と比べると、エリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスでは、調べた全ての器官においてより大きかった。特に、、エリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスの肝臓、脾臓、十二指腸、皮膚、および筋肉において、99mTc-EC20の結合が対照マウスよりも大きかった。
【0047】
<実施例2>
[エリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスの生存率に及ぼす葉酸-FITC結合体の効果]
雌の、エリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスをジャクソン・ラボラトリーズ(バーハーバー、メイン州)から購入した。5週齢のマウス(グループ当たりn=9)を、0日目に、TiterMax Gold(登録商標)アジュバント(葉酸−FITC結合体と1:1容量/容量比)を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)−KLH結合体と組み合わせて、複数箇所に(2箇所にそれぞれ50 μl容量で)(1匹のマウス当たり合計50 μg)皮下投与して免疫化した。有効であれば、従来技術で既知の、任意のアジュバントを使用することが可能である。20日目に、マウスを葉酸欠損食餌で養った。28日目(9週齢時)に、前述のようにして、マウスを再度TiterMax Gold(登録商標)とフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-KLH結合体で免疫化した。
【0048】
全てのマウスにおいて抗FITC抗体価が高いことを確認した後(33日目に行ったマウスの血清サンプルのELISAアッセイの結果に基づく)、35日目を開始日として、各動物に対し、リン酸バッファー生食液(PBS)、または、600ナノモル/kgの葉酸−FITCを腹腔の1箇所に注入した。次の25週間、マウスに対し、連日、前述のようにPBSまたは葉酸−FITCを注入した。
【0049】
次に、この免疫療法の効果を、対照マウス(すなわち、PBSを注入したマウス)と比較した場合の、葉酸−FITC治療マウスの生存率を時間の関数としてモニターすることによって評価した。図3に示すように、対照マウスは17週に斃死し始め、全ての対照マウスは25週までに死亡した。それと対照的に、葉酸−FITC結合体による治療開始後25週において全ての葉酸−FITC治療マウスは生存していた。これは、本発明の方法が、エリテマトーデスに対して有望な治療法であることを示す。図2は、本実験のエリテマトーデス感受性MRL/MpJ-Tnfrsf6lprマウスの拡大写真であって、葉酸-FITCを注入されたもの(左側のマウス)、または、PBSを注入されたもの(対照、右側のマウス)を示す。この拡大写真は、エリテマトーデス感受性対照マウスに対して、葉酸-FITC結合体で治療されたエリテマトーデス感受性マウスにおいて健康面に著明な差が生じていることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、対照マウス(各器官について右側のバー)に対する、エリテマトーデス感受性MRL/lprマウス(各器官について左側のバー)の器官におけるEC20のパーセント取り込みを示す。
【図2】図2は、エリテマトーデス感受性MRL/lprマウスにおいて、本発明のリガンド結合体を注入されたもの(左側のマウス)、または、PBSを注入されたもの(対照、右側のマウス)の拡大写真を示す。
【図3】図3は、エリテマトーデス感受性MRL/lprマウスにおいて、本発明の方法で使用されるリガンド結合体、葉酸−FITCを注入されたもの(白抜きダイアモンド型)、または、PBSを注入されたもの(対照、黒塗りダイアモンド型)の生存率曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)治療用薬剤の製造における、一般式
L−X
の結合体の用法であって、
式中、基Lは、活性化マクロファージに結合することが可能なリガンドを含み、かつ、基Xは、免疫原物質、細胞毒素、または、マクロファージ機能を改変することが可能な他の化合物を含むことを特徴とする前記用法。
【請求項2】
前記基Lは、ビタミン、または、そのビタミン受容体結合性類縁体または誘導体を含むことを特徴とする、請求項1の用法。
【請求項3】
Lは、葉酸受容体結合性リガンドを含むことを特徴とする、請求項1または2の用法。
【請求項4】
Lは、抗体、または活性化マクロファージ結合性抗体断片を含むことを特徴とする、請求項1の用法。
【請求項5】
前記基Xは免疫原物質を含むことを特徴とする、請求項1、2、または3の用法。
【請求項6】
前記基Xは細胞毒素を含むことを特徴とする、請求項1、2、または3の用法。
【請求項7】
前記基Xはさらにリポソームを含むことを特徴とする、請求項6の用法。
【請求項8】
前記基Xはサイトカインを含むことを特徴とする、請求項2の用法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−526238(P2007−526238A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532814(P2006−532814)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014097
【国際公開番号】WO2004/100983
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】