説明

マクロライド固体状形態

本発明は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの溶媒和および非溶媒和結晶形態、ならびにこのような結晶形態の製造方法、このような結晶形態を含む(またはこれらから誘導される)薬剤、このような結晶形態を含む(またはこれらから誘導される)薬剤の製造方法、このような結晶形態を用いる治療方法、およびこのような結晶形態を含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの溶媒和および非溶媒和結晶形態、ならびにこのような結晶形態の製造方法、このような結晶形態を含む(またはこれらから誘導される)薬剤、このような結晶形態を含む(またはこれらから誘導される)薬剤の製造方法、このような結晶形態を用いる治療方法、およびこのような結晶形態を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
マクロライドは、ヒト、家畜、家禽、および他の動物において感染性疾患を治療するのに有効であることが長く知られている。初期のマクロライドには、例えばタイロシンA:
【0003】
【化1】

などの16員マクロライドが含まれた。例えば、U.S.Patent No.4920103(5欄、12から18行)を参照されたい。さらにU.S.Patent No.4820695(7欄、1から32行)、およびEP0103465B1(5頁、3行)も参照されたい。長年にわたって、抗菌活性および選択性を高めることを目的に種々のタイロシン誘導体が開発されてきた。
【0004】
タイロシン誘導体には、例えば
【0005】
【化2】

【0006】
【化3】

【0007】
【化4】

が含まれる。タイロシン誘導体にはまた、例えば、式(I)に構造上相当する、米国特許第6514946号に記載されている化合物が含まれる。
【0008】
【化5】

式中、
およびRはそれぞれメチルであり、Rは水素であるか、RおよびRはそれぞれ水素であり、Rはメチルであるか、またはR、R、およびRはそれぞれ水素であり、
およびRはそれぞれメチルであり、Rは水素であるか、RおよびRはそれぞれ水素であり、Rはメチルであるか、またはR、R、およびRはそれぞれ水素である。このような化合物の例には、例えば以下の構造を有する20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドが含まれる。
【0009】
【化6】

これらの化合物、特に20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、例えばパスツレラ症、ウシ呼吸器疾患、およびブタ呼吸器疾患を安全かつ有効に治療するための薬物動態学的および薬力学的属性を有すると考えられている。家畜および家禽の疾患を治療するためのこれらの化合物の使用に関する考察は、米国特許第6514946号に包含されている。この考察は参照により本明細書の一部とする。出願人等は、記載されている20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのいずれの安定な結晶形態も認識していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4920103号
【特許文献2】米国特許第4820695号
【特許文献3】欧州特許第0103465B1号
【特許文献4】米国特許第6514946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多くの病的状態の治療におけるマクロライドの重要性の観点から、マクロライドを製造する費用効果の高い高収率な方法が引き続き求められている。さらに、例えば、有利な物理安定性、化学安定性、充填特性、熱力学特性、動態特性、表面特性、機械特性、濾過特性、もしくは化学純度を示すか、またはこのような特性を示す固体状形態を製造するのに有利に用いることのできるマクロライド結晶形態も求められている。以下の開示はこれらの要求に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態に関する。
【0013】
簡潔には、本発明は、一部には、第1の結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド形態(本明細書では「多形I型」と称される。)に関する。多形I型は一般に、例えば以下の特徴の少なくとも1つ(典型的には1つより多い。)を有すると特徴づけることができる:
a.約2935、約1633、約1596、約1712、約1683、および約781cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
b.5.0(±0.2)および5.6(±0.2)度2θからなる群から選択された少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折スペクトル;
c.約2932、約1711、約1682、約1635、約1599、約1442、約1404、約1182、約1079、約1053、約1008、約985、約842、および約783cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;
d.約192から約195℃の融点;または
e.約57J/gの融解エンタルピー。
【0014】
本発明はまた、一部には、第2の結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド形態(本明細書では「多形II型」と称される。)に関する。多形II型は一般に、例えば以下の特徴の少なくとも1つ(典型的には1つより多い。)を有すると特徴づけることができる:
a.約2929、約1625、約1595、約1685、および783cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
b.6.5(±0.2)度2θのピークを含む粉末X線回折スペクトル;
c.約2935、約1736、約1668、約1587、約1451、約1165、約1080、約1057、約1042、約1005、約981、約838、および約755cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;
d.約113から約119℃の融点;または
e.約15J/gの融解エンタルピー。
【0015】
本発明は、一部には、第3の結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド形態(本明細書では「多形III型」と称される。)に関する。多形III型は一般に、例えば以下の特徴の少なくとも1つ(典型的には1つより多い。)を有すると特徴づけることができる:
a.約2943、約2917、約1627、約1590、約1733、約1669、約1193、約1094、および約981cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
b.5.6(±0.2)および6.1(±0.2)度2θからなる群から選択された少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折スペクトル;
c.約2931、約1732、約1667、約1590、約1453、約1165、約1081、約1057、約1046、約1005、約981、約834、および約756cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;
d.約107から約134℃の融点;または
e.約38J/gの融解エンタルピー。
【0016】
本発明は、一部には、第4の結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド形態(本明細書では「多形IV型」と称される。)に関する。多形IV型は一般に、例えば以下の特徴の少なくとも1つ(典型的には両方)を有すると特徴づけることができる:
a.約3559、約2933、約1743、約1668、約1584、約1448、約1165、約1075、約1060、約1045、約1010、約985、約839、および約757cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;または
b.約149から約155℃の融点。
【0017】
本発明はまた、一部には、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの溶媒和結晶形態に関する。
【0018】
幾つかの実施形態において、溶媒和結晶形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチル(または「EtOAc」)、エタノール、またはジエチルケトン溶媒和結晶形態、ならびに酢酸エチル、エタノール、またはジエチルケトン溶媒和結晶形態と同形である他の任意の結晶溶媒和物を含む。これらの結晶溶媒和物は、本明細書ではまとめて「S1結晶溶媒和物」と称される。
【0019】
幾つかの実施形態において、溶媒和結晶形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのtert−ブチルメチルエーテル(または「tBME」)溶媒和結晶形態、ならびにtBME溶媒和結晶形態と同形である他の任意の結晶溶媒和物を含む。これらの結晶溶媒和物は、本明細書ではまとめて「S2結晶溶媒和物」と称される。
【0020】
幾つかの実施形態において、溶媒和結晶形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのテトラヒドロフラン(または「THF」)溶媒和結晶形態、ならびにTHF溶媒和結晶形態と同形である他の任意の結晶溶媒和物を含む。これらの結晶溶媒和物は、本明細書ではまとめて「S3結晶溶媒和物」と称される。
【0021】
幾つかの実施形態において、溶媒和結晶形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸メチルまたはギ酸エチル溶媒和結晶形態、ならびに酢酸メチルまたはギ酸エチル溶媒和結晶形態と同形である他の任意の結晶溶媒和物を含む。これらの結晶溶媒和物は、本明細書ではまとめて「S4結晶溶媒和物」と称される。
【0022】
本発明また、一部には、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物に関する。これらの実施形態において、組成物中のある量(一般に少なくとも検出可能量)の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、上述の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの溶媒和または非溶媒和結晶形態の1つからなる。
【0023】
本発明はまた、一部には、パスツレラ症、ブタ呼吸器疾患、またはウシ呼吸器疾患などの疾患を治療する方法に関する。この方法は、
治療有効量の上述の結晶含有組成物を少なくとも1種の賦形剤と合わせて、医薬組成物を形成するステップ、および
医薬組成物をこのような治療を必要としている動物に投与するステップを含む。このような幾つかの実施形態において、例えば、治療有効量の結晶含有組成物を液体賦形剤に溶解して溶液を形成し、次いでこれを非経口または経口投与に用いることができる。このような他の実施形態において、治療有効量の結晶含有組成物を液体賦形剤に懸濁して懸濁液を形成し、次いでこれを非経口または経口投与に用いることができる。
【0024】
本発明はまた、一部には、動物において疾患(例えば、パスツレラ症、ブタ呼吸器疾患、またはウシ呼吸器疾患)を治療する薬剤を調製するための、治療有効量の上述の結晶含有組成物の使用に関する。
【0025】
本発明はまた、一部には、少なくとも1種の賦形剤を治療有効量の上述の結晶含有組成物と合わせることを含む方法によって調製された医薬組成物に関する。このような幾つかの実施形態において、例えば、治療有効量の結晶含有組成物を液体賦形剤に溶解して溶液を形成し、次いでこれを非経口または経口投与に用いることができる。このような他の実施形態において、例えば、治療有効量の結晶含有組成物を液体賦形剤に懸濁して懸濁液を形成し、次いでこれを非経口または経口投与に用いることができる。
【0026】
本発明はまた、一部には、キットに関する。このキットは、
治療上有効量の上述の結晶含有組成物、および
結晶含有組成物を少なくとも1種の賦形剤と合わせるための使用説明書を含む。このキットはさらに(または代わりに)、例えば1種以上の賦形剤、1種以上の追加の医薬材料もしくは生物学的材料、および/または1種以上の診断ツールなどの追加構成成分を含むことができる。
【0027】
出願人等の発明のさらなる態様および利益は、本明細書を読むことにより当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の例示的な粉末X線回折(「PXRD」)スペクトルを示す図である。
【図2】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の例示的なフーリエ変換ラマン(「FT−ラマン」)スペクトルを示す図である。
【図3】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の例示的なフーリエ変換赤外分光に接続した熱重量分析(「TG−FTIR」)の結果を示す図である。
【図4】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の例示的な示差走査熱量測定(「DSC」)の結果を示す図である。
【図5】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の例示的な動的蒸気吸着測定(「DVS」)の結果を示す図である。
【図6】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の例示的な減衰全反射赤外(「ATR−IR」)スペクトル(または「吸収帯プロファイル」)を示す図である。
【図7】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型を含有するヌジョール懸濁液の例示的なIRスペクトルを示す図である。
【図8】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の例示的なPXRDスペクトルを示す図である。
【図9】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の例示的なFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図10】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の例示的なTG−FTIRの結果を示す図である。
【図11】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の例示的なDSCの結果を示す図である。実線は第1回走査を示し、破線は第2回走査を示す。
【図12】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の例示的なDVSの結果を示す図である。
【図13】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の例示的なATR−IRスペクトルを示す図である。
【図14】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型を含有するヌジョール懸濁液の例示的なIRスペクトルを示す図である。
【図15】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の例示的なPXRDスペクトルを示す図である。
【図16】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の例示的なFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図17】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の例示的なTGの結果を示す図である。
【図18】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の例示的なDSCの結果を示す図である。実線は第1回走査を示し、破線は第2回走査を示す。
【図19】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の例示的なDVSの結果を示す図である。
【図20】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の例示的なATR−IRスペクトルを示す図である。
【図21】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型を含有するヌジョール懸濁液の例示的なIRスペクトルを示す図である。
【図22】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形IV型の例示的なPXRDスペクトルを示す図である。
【図23】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形IV型の例示的なDSCの結果を示す図である。
【図24】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形IV型の例示的なATR−IRスペクトルを示す図である。
【図25】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形IV型を含有するヌジョール懸濁液の例示的なIRスペクトルを示す図である。
【図26】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物試料の例示的なPXRDスペクトルを示す図である。
【図27】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物試料の例示的なFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図28】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物試料の例示的なTG−FTIRの結果を示す図である。
【図29】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのエタノールS1結晶溶媒和物試料の例示的なTG−FTIRの結果を示す図である。
【図30】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのジエチルケトンS1結晶溶媒和物試料の例示的なTG−FTIRの結果を示す図である。
【図31】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのtBMES2結晶溶媒和物試料の例示的なPXRDスペクトルを示す図である。
【図32】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのtBMES2結晶溶媒和物試料の例示的なFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図33】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのtBMES2結晶溶媒和物試料の例示的なTG−FTIRの結果を示す図である。
【図34】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのTHFS3結晶溶媒和物試料の例示的なPXRDスペクトルを示す図である。
【図35】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのTHFS3結晶溶媒和物試料の例示的なFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図36】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのTHFS3結晶溶媒和物試料の例示的なTG−FTIRの結果を示す図である。
【図37】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸メチルS4結晶溶媒和物試料の例示的なPXRDスペクトルを示す図である。
【図38】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸メチルS4結晶溶媒和物試料の例示的なFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図39】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸メチルS4結晶溶媒和物試料の例示的なTG−FTIRの結果を示す図である。
【図40】20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのギ酸エチルS4結晶溶媒和物試料の例示的なTG−FTIRの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
好ましい実施形態のこの詳細な説明は、特定の使用の要件にもっとも適するように、当業者が本発明を多数の形態で適合および適用できるように、出願人等の発明、この原理、および実際の適用を当業者に伝えることのみを意図するものである。この詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例示の目的のみを意図するものである。従って、本発明は本明細書に記載の好ましい実施形態に限定されず、様々に変更することができる。
【0030】
A.20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態
マクロライド、特に20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの化学特性および物理特性は、これらの商業的開発において多くの場合重要である。これらの特性には、例えば(1)物理安定性、(2)化学安定性、(3)モル体積、密度、および吸湿性などの充填特性、(4)融解温度、蒸気圧、および溶解度などの熱力学特性、(5)溶出速度および安定性(周囲条件、特に湿潤および保存条件下での安定性を含む。)などの動態特性、(6)表面積、湿潤性、界面張力、および形状などの表面特性、(7)硬度、引張強度、圧縮性、取扱い性、流動性、および配合などの機械特性、(8)濾過特性、ならびに(9)化学純度が含まれる。これらの特性は、例えば20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む医薬組成物の処理および貯蔵に影響を与え得る。出願人等は本明細書に記載したすべての20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態が治療上有効であると考えるが、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して1つ以上の上記の特性の改善をもたらす固体状形態が望ましく、所望の抗体状形態を製造する方法に中間体として用いることのできる固体状形態も同様である。
【0031】
本発明に従って、幾つかの20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態が調製された。これらの結晶形態は一般に、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して1つ以上の上記の有利な化学特性および/または物理特性を有し、および/または1つ以上の他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態の調製において中間体として有用である。発見された特定の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態には以下のものが含まれる:
(1)他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して独自の特性を有する第1の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの無水および非溶媒和結晶形態(本明細書では「多形I型」と称される。);
(2)他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して独自の特性を有する第2の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの無水および非溶媒和結晶形態(本明細書では「多形II型」と称される。);
(3)他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して独自の特性を有する第3の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの無水および非溶媒和結晶形態(本明細書では「多形III型」と称される。);
(4)他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して独自の特性を有する第4の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの無水および非溶媒和結晶形態(本明細書では「多形IV型」と称される。);
(5)20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの同形酢酸エチル、エタノール、およびジエチルケトン溶媒和結晶形態(本明細書ではまとめて「S1結晶溶媒和物」と称される。);
(6)20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのtert−ブチルメチルエーテル溶媒和結晶形態(本明細書では「S2結晶溶媒和物」と称される。);
(7)20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのテトラヒドロフラン溶媒和結晶形態(本明細書では「S3結晶溶媒和物」と称される。);ならびに
(8)20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの同形酢酸メチルおよびギ酸エチル溶媒和結晶形態(本明細書ではまとめて「S4結晶溶媒和物」と称される。)。
【0032】
幾つかの実施形態において、本発明は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型に関する。多形I型を製造する例示的な方法には、例えば、実施例3(パートF)および12から16に示すものが含まれる。出願人等の観察に基づいて、多形I型は一般に、特に溶媒の不在下において、他の上記の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比べて周囲温度でより高い安定性を有すると考えられる。多くの実施形態において、典型的に特別な処理条件または貯蔵条件を必要とせず、頻繁な在庫交換の必要性を回避する、多形I型などの固体状形態を用いることが望ましい。例えば、製造工程中(粒度が低減され、表面積が増大された材料を得るための粉砕中など)に物理的に安定である固体状形態を選択することによって、特別な処理条件の必要性、および一般にこのような特別な処理条件に伴う費用の増大を回避できる。同様に、広範な貯蔵条件にわたって(特に20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド製品の寿命期間中に起こり得る種々の考えられる貯蔵条件を考慮して)物理的に安定である固体状形態を選択することによって、製品損失または製品有効性の低下をもたらし得る20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形変化または他の分解性変化の回避を助けることができる。従って、より高い物理安定性を有する固体状形態の選択は、より不安定な20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比べて有意な利益を提供する。多形I型はまた、例えば周囲条件下(例えば25℃)で、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比べて低い水分の取り込みを示す傾向がある。多形I型は、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して、有利な充填特性、熱力学特性、動態特性、表面特性、機械特性、濾過特性、または化学純度を示すことがさらに仮定される。
【0033】
多形I型は、様々な分析技法を用いて同定することができる。幾つかの実施形態において、多形I型は、以下の特徴の1つ(典型的には2、3、4、または5つすべて)を有すると定義される:
a.約2935、約1633、約1596、約1712、約1683、および約781cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
b.5.0(±0.2)および5.6(±0.2)度2θからなる群から選択された少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折スペクトル;
c.約2932、約1711、約1682、約1635、約1599、約1442、約1404、約1182、約1079、約1053、約1008、約985、約842、および約783cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;
d.約192から約195℃の融点;または
e.約57J/gの融解エンタルピー。
【0034】
幾つかの実施形態において、多形I型は、2935cm−1の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトルを有すると定義される。他の実施形態において、多形I型は、約1633cm−1の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトルを有すると定義される。
【0035】
幾つかの実施形態において、多形I型は、5.0(±0.2)度2θのピークを含む粉末X線回折スペクトルを有すると定義される。
【0036】
幾つかの実施形態において、多形I型は、約1711、約1682、約1635、約1599、約1404、約1182、および約783cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトルを有すると定義される。幾つかのこのような実施形態において、例えば、多形I型は、約1711および約1682cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトルを有すると定義される。他のこのような実施形態において、多形I型は、約1635、約1404、および約1182cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトルを有すると定義される。
【0037】
幾つかの実施形態において、多形I型は、以下の特徴の1つ(典型的には2または3つすべて)を有すると定義される:
a.実質的に図1に示すとおりの粉末X線回折スペクトル;
b.実質的に図2に示すとおりの減衰FT−ラマンスペクトル;または
c.実質的に図6に示すとおりの減衰全反射赤外スペクトル。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物に関し、組成物中の少なくとも検出可能量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形I型である。幾つかのこのような実施形態において、例えば、組成物中の少なくとも約50%(または少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、もしくは少なくとも約99.9%)の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形I型である。他のこのような実施形態において、組成物中の治療有効量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形I型である。さらに他のこのような実施形態において、組成物中の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、実質的に純粋相のI型結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドである。
【0039】
他の実施形態において、本発明は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型に関する。多形II型を製造する方法には、例えば、実施例4に示す方法が含まれる。多形I型と同様に、多形II型は、例えば周囲条件下で、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比べて低い水分の取り込みを示す傾向がある。多形II型は、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して、有利な物理安定性、化学安定性、充填特性、熱力学特性、動態特性、表面特性、機械特性、濾過特性、または化学純度を示すことが仮定される。多形II型はまた、他の様々な固体状形態を調製するための中間体として有用である。表1はこのような方法の例を要約するものである。
【0040】
【表1】

【0041】
多形II型は、様々な分析技法を用いて同定することができる。幾つかの実施形態において、多形II型は、以下の特徴の1つ(典型的には2、3、4、または5つすべて)を有すると定義される:
a.約2929、約1625、約1595、約1685、および783cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
b.6.5(±0.2)度2θのピークを含む粉末X線回折スペクトル;
c.約2935、約1736、約1668、約1587、約1451、約1165、約1080、約1057、約1042、約1005、約981、約838、および約755cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;
d.約113から約119℃の融点;または
e.約15J/gの融解エンタルピー。
【0042】
幾つかの実施形態において、多形II型は、約2929cm−1の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトルを有すると定義される。他の実施形態において、多形II型は、約1685cm−1の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトルを有すると定義される。
【0043】
幾つかの実施形態において、多形II型は、6.5(±0.2)度2θのピークを含む粉末X線回折スペクトルを有すると定義される。
【0044】
幾つかの実施形態において、多形II型は、以下の特徴の1つ(典型的には2または3つすべて)を有すると定義される:
a.実質的に図8に示すとおりの粉末X線回折スペクトル;
b.実質的に図9に示すとおりのFT−ラマンスペクトル;または
c.実質的に図13に示すとおりの減衰全反射赤外スペクトル。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物に関し、組成物中の少なくとも検出可能量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形II型である。幾つかのこのような実施形態において、例えば、組成物中の少なくとも約50%(または少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、もしくは少なくとも約99.9%)の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形II型である。他のこのような実施形態において、組成物中の治療有効量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形II型である。さらに他のこのような実施形態において、組成物中の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、実質的に純粋相のII型結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドである。
【0046】
他の実施形態において、本発明は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型に関する。多形III型を製造する例示的な方法には、例えば、実施例7、10、および11に示すものが含まれる。多形III型は、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較してより高い安定性を有すると考えられる。多形III型はまた、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して、有利な充填特性、熱力学特性、動態特性、表面特性、機械特性、濾過特性、または化学純度を示すことも仮定される。多形III型はまた、例えば、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型を製造するのに有用である。これは、例えば、多形III型結晶をtBME/ヘプタン溶媒に溶解し、この溶媒を除去することによって達成することができる。例えば実施例15を参照されたい。
【0047】
多形III型は、様々な分析技法を用いて同定することができる。幾つかの実施形態において、多形III型は、以下の特徴の1つ(典型的には2、3、4、または5つすべて)を有すると定義される:
a.約2943、約2917、約1627、約1590、約1733、約1669、約1193、約1094、および約981cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
b.5.6(±0.2)および6.1(±0.2)度2θからなる群から選択された少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折スペクトル;
c.約2931、約1732、約1667、約1590、約1453、約1165、約1081、約1057、約1046、約1005、約981、約834、および約756cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;
d.約107から約134℃の融点;または
e.約38J/gの融解エンタルピー。
【0048】
幾つかの実施形態において、多形III型は、約2943、約2917、約1590、約1733、約1669、約1193、約1094、および約981cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトルを有すると定義される。幾つかのこのような実施形態において、例えば、多形III型は、約2943、約2917、約1590、約1733、約1094、および約981cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトルを有すると定義される。
【0049】
幾つかの実施形態において、多形III型は、6.1(±0.2)度2θのピークを含む粉末X線回折スペクトルを有すると定義される。
【0050】
幾つかの実施形態において、多形III型は、以下の特徴の1つ(典型的には2または3つすべて)を有すると定義される:
a.実質的に図15に示すとおりの粉末X線回折スペクトル;
b.実質的に図16に示すとおりのFT−ラマンスペクトル;または
c.実質的に図20に示すとおりの減衰全反射赤外スペクトル。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物に関し、組成物中の少なくとも検出可能量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形III型である。幾つかのこのような実施形態において、例えば、組成物中の少なくとも約50%(または少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、もしくは少なくとも約99.9%)の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形III型である。他のこのような実施形態において、組成物中の治療有効量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形III型である。さらに他のこのような実施形態において、組成物中の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、実質的に純粋相のIII型結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドである。
【0052】
他の実施形態において、本発明は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形IV型に関する。多形IV型を製造する方法には、例えば、実施例23に示す方法が含まれる。多形IV型は、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して、有利な物理安定性、化学安定性、充填特性、熱力学特性、動態特性、表面特性、機械特性、濾過特性、または化学純度を示すことが仮定される。
【0053】
多形IV型は、様々な分析技法を用いて同定することができる。幾つかの実施形態において、多形IV型は、以下の特徴の1つ(典型的には両方)を有すると定義される:
a.約3559、約2933、約1743、約1668、約1584、約1448、約1165、約1075、約1060、約1045、約1010、約985、約839、および約757cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;または
b.約149から約155℃の融点。
【0054】
幾つかの実施形態において、多形IV型は、1743cm−1に吸収帯を有する減衰全反射赤外スペクトルを有すると定義される。他の実施形態において、多形IV型は、3559cm−1の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトルを有すると定義される。
【0055】
他の実施形態において、多形IV型は、以下の特徴の1つ(典型的には両方)を有すると定義される:
a.実質的に図22に示すとおりの粉末X線回折スペクトル;または
b.実質的に図24に示すとおりの減衰全反射赤外スペクトル。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物に関し、組成物中の少なくとも検出可能量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形IV型である。幾つかのこのような実施形態において、例えば、組成物中の少なくとも約50%(または少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、もしくは少なくとも約99.9%)の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形IV型である。他のこのような実施形態において、組成物中の治療有効量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは多形IV型である。さらに他のこのような実施形態において、組成物中の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、実質的に純粋相のIV型結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドである。
【0057】
他の実施形態において、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態は溶媒和結晶形態を含む。幾つかの実施形態において、特に対象となる溶媒和結晶形態は、より望ましい固体状形態に転換され得るものである。他の実施形態において、医薬的に許容される20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの溶媒和結晶形態は、医薬組成物に直接用いられる。例えば、幾つかの結晶溶媒和物は、他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態と比較して、有利な物理安定性、化学安定性、充填特性、熱力学特性、動態特性、表面特性、機械特性、濾過特性、または化学純度を示す傾向があると仮定される。さらに溶媒和結晶形態は集合的に、例えば固体剤形において様々な溶出速度を提供できると考えられる。医薬組成物に直接用いられるとき、溶媒和結晶形態は、好ましくは医薬的に許容されない溶媒和物を実質的に除く。
【0058】
幾つかの実施形態において、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのS1結晶溶媒和物を含む。酢酸エチルS1結晶溶媒和物を製造する例示的な方法には、例えば、実施例3(パートE)、6、8、および9に示すものが含まれる。エタノールS1結晶溶媒和物を製造する方法には、例えば、実施例17に示す方法が含まれる。さらにジエチルケトンS1結晶溶媒和物を製造する方法には、例えば、実施例18に示す方法が含まれる。酢酸エチルS1結晶溶媒和物は、例えば、他の固体状形態を調製するための中間体として有用である。表2はこのような方法の例を要約するものである。
【0059】
【表2】

【0060】
幾つかの実施形態において、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのS2結晶溶媒和物を含む。S2結晶溶媒和物を製造する方法には、例えば、実施例19に示す方法が含まれる。S2結晶溶媒和物(すなわち、tBME溶媒和結晶形態)は医薬組成物に直接用いるのに特に適している可能性のあることが企図される。この結晶溶媒和物は、例えば60℃、1日間1mbar(絶対圧)で安定性を示す。
【0061】
幾つかの実施形態において、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのS3結晶溶媒和物を含む。S3結晶溶媒和物を製造する方法には、例えば、実施例20に示す方法が含まれる。
【0062】
幾つかの実施形態において、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのS4結晶溶媒和物を含む。酢酸メチルS4結晶溶媒和物を製造する方法には、例えば、実施例21に示す方法が含まれる。さらにギ酸エチルS4結晶溶媒和物を製造する方法には、例えば、実施例22に示す方法が含まれる。
【0063】
本発明の幾つかの実施形態は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物に関し、組成物中の少なくとも検出可能量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、上述の結晶溶媒和形態の1つである。幾つかの実施形態において、例えば、組成物中の少なくとも約50%(または少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、もしくは少なくとも約99.9%)の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは結晶溶媒和形態である。幾つかのこのような実施形態において、組成物中の少なくとも約50%(または少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、もしくは少なくとも約99.9%)の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、酢酸エチルS1結晶溶媒和物である。他の実施形態において、組成物中の治療有効量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、上述の結晶溶媒和形態の1つである。さらに他の実施形態において、組成物中の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、上述の結晶溶媒和形態の1つとして実質的に純粋相である。幾つかのこのような実施形態において、例えば、組成物中の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、実質的に純粋相の酢酸エチルS1結晶溶媒和物である。
【0064】
他の実施形態において、本発明は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型、多形II型、多形III型、多形IV型、および溶媒和結晶形態からなる群から選択された2つ以上の固体状形態の組み合わせに関する。このような組み合わせは、例えば、放出制御組成物を含む、様々な溶出プロファイルを有する固体医薬組成物の調製に有用である可能性がある。一実施形態において、ある組み合わせは、少なくとも検出可能量の多形I型と、多形II型、多形III型、多形IV型、および溶媒和結晶形態からなる群から選択された1つ以上の固体状形態であるその他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドとを含む。他の実施形態において、組み合わせは、少なくとも検出可能量の多形II型と、多形I型、多形III型、多形IV型、および溶媒和結晶形態からなる群から選択された1つ以上の固体状形態であるその他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドとを含む。他の実施形態において、組み合わせは、少なくとも検出可能量の多形III型と、多形I型、多形II型、多形IV型、および溶媒和結晶形態からなる群から選択された1つ以上の固体状形態であるその他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドとを含む。さらに他の実施形態において、組み合わせは、少なくとも検出可能量の多形IV型と、多形I型、多形II型、多形III型、および溶媒和結晶形態からなる群から選択された1つ以上の固体状形態であるその他の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドとを含む。
【0065】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態の使用目的に応じて、処理を考慮することが特定の固体状形態、またはこのような固体状形態の特定の組み合わせの選択に有利である可能性がある。20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態(または最小相純度を有する20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態)を調製する容易さは一般に固体状形態ごとに異なる。
【0066】
固体状形態の特徴評価
技法
本発明に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状形態を、幾つかの異なる技法を用いて特徴評価した。これらの技法には以下のものが含まれる。
【0067】
多形IV型を除くすべての試料の粉末X線回折(「PXRD」)スペクトルは、Cu Kα放射(d値算出の波長:λ=1.5418Å);管電力35kV/45mA;VANTEC1検出器;ならびにステップサイズ0.017°2θ、105±5秒/ステップ、および走査範囲2°から50°2θを用いて、Bruker D8 Advance X線回折計で得た。直径12mmおよび深さ0.1mmを有するシリコン単結晶試料ホルダを用いた。多形IV型のPXRDスペクトルは、Diffract Plusソフトウェア、ステップサイズ0.04°2θ、ステップ時間2秒、走査範囲5.0°から80.0 2θ、V20に設定した発散スリット、V20に設定した散乱除去スリット、検出器スリットアウト、回転、発電機電圧40kV、発電機電流30mA、高感度シンチレーションカウンタ、およびCuX線管を用いて、Siemens D5000 X線回折計で得た。
【0068】
フーリエ変換ラマン(「FT−ラマン」)スペクトルは、励起波長1064nm、レーザ出力100mW、Ge検出器、64スキャン、範囲50から3500cm−1、分解能2cm−1、およびアルミニウム試料ホルダを用いて、Nd:YAGレーザを備えたBruker RFS100 FT−ラマン分光計で得た。
【0069】
フーリエ変換赤外分光に接続した熱重量分析(「TG−FTIR」)の測定は、アルミニウムるつぼ(微細孔または開口部を備える。)、N雰囲気、加熱速度10℃/分、および温度範囲25から250℃を用い、Bruker Vector22 FT−IR分光計を備えたNetzsch Thermo−Microbalance TG209を用いて得た。
【0070】
重熱量分析(「TG」)測定は、アルミニウムるつぼ(開口)、N雰囲気、加熱速度10℃/分、および温度範囲25から500℃を用いて、Perkin Elmer TGS2熱重量分析計で得た。
【0071】
多形I型、II型、およびIII型の示差走査熱量(「DSC」)測定は、金るつぼ、加熱速度10℃/分を用いて、Perkin Elmer DSC7示差走査熱量計で得た。これらの測定は、残存する溶媒および湿分を除去した後、不活性ガス下(すなわち、酸素の不在下)、閉鎖した密閉試料パンで行った。多形I型では1回の走査を行った。この走査は−50℃から約210℃で行った。多形II型およびIII型では2回の走査を行い、第1回走査を−50℃から150℃で行い、第2回走査を−50℃から200℃で行った。多形IV型のDSC測定は、アルミニウムるつぼ、カバーガスとして空気、加熱速度10K/分、および加熱範囲30から200℃、および試料サイズ5mgを用いて、Mettler DSC−822eで得た。出願人等は、DSCは特に変動する傾向があり、従って慎重に用いるべきであると考える。
【0072】
動的蒸気吸着(「DVS」)測定は、Projekt Messtechnik SPS11−100n水蒸気吸着分析器で得た。試料を微量天秤上でアルミニウムるつぼに入れ、25℃および相対湿度50%で平衡させ、その後、25℃で次の所定の湿度プログラムを開始した:相対湿度50−95−0−50%、ならびに1時間当たり相対湿度5%変化、および極値での等湿度平衡時間を用いて走査。
【0073】
赤外(「IR」)スペクトルは、Portmann Instruments AG(現在Varian)のExcalibur FT−IR分光計を用いて得た。2つの技法を用いた。第1の技法は、減衰全反射(「ATR」)赤外分光法である。ATRを用いてスペクトルを得るために、スパチュラ先端量の試料をATRセルの試料領域に載せ(トルク120n*cm)、3600から700cm−1まで赤外スペクトルを記録した。第2の技法は、ヌジョールに混練した試料(すなわち、ヌジョール懸濁液)を用いた。このような試料を用いてスペクトルを得るために、スパチュラ先端量の試料を、均質なペーストが得られるまで2または3滴のヌジョールと共に乳鉢で十分に摩砕した。次いで、このペーストをNaClプレート上に広げ、2枚目のNaClプレートで押圧して、薄い均質フィルムを形成した。これらの試料について、3600から600cm−1まで赤外スペクトルを記録した。
【0074】
最後に、出願人等は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド固体状形態の形状および大きさに関して様々な観察を行い、これらの観察を以下に要約した。しかしながら、固体状形態を製造するのに用いられる手順に応じて、他の形状および/または大きさの結晶形態が存在する可能性があるため、この情報は慎重に用いるべきであることを出願人等は特に言及する。
【0075】
多形I型
以下の考察は観察された多形I型の様々な特徴を提供する。
【0076】
i.多形I型の外観
多形I型は、一般に小粒子の形態であった。
【0077】
ii.多形I型の粉末X線回折スペクトル
多形I型の観察されたPXRDスペクトルを図1に示し、対応するデータを次の表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
特徴的なスペクトルには、2θ=5.0°および5.6°の初期ピークが含まれる。
【0080】
幾つかの試料では、PXRDスペクトルは、ある程度の非晶質20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの混入を示した。しかしながら、上記のPXRDスペクトルに対応する試料にはこのような非晶質材料は本質的に存在しないと考えられる。
【0081】
iii.多形I型のFT−ラマンスペクトル
多形I型の観察されたFT−ラマンスペクトルを図2に示し、対応するデータを次の表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
特徴的なスペクトルには、2935cm−1、1633cm−1、および1596cm−1の強いピーク、ならびに1712cm−1、1683cm−1、および781cm−1のより小さいピークが含まれる。
【0084】
iv.多形I型の熱重量分析
図3は、多形I型のTG−FTIR分析の結果を示す。60から180℃の温度範囲で、0.6%の重量損失が認められた。出願人等は、これは水分損失に起因するものであると考える。少量であるため、出願人等はさらに、この水分損失は水和物に起因するものではなく、表面に吸収された水に由来するものであると考える。
【0085】
v.多形I型の示差走査熱量測定
図4は、多形I型のDSC分析の結果を示す。融解エンタルピーΔHfus57J/gで、195℃に鋭い融解ピークが存在する。以下に示すとおり、これらはいずれも多形II型およびIII型の融点および融解エンタルピーより高い。図4において、Tステップはほとんど識別できない。これによりこの試料は結晶度90%超であると考えられる。
【0086】
多形I型の試料を個別に分析して融点を求めた。純度約98%(w/w)を有する試料は、融点192から195℃を示した。
【0087】
vi.多形I型の動的蒸気吸着
図5は、多形I型のDVS分析の結果を示す。この分析は25℃で行った。相対湿度95%で1%(重量)未満の最大水分取り込みが観察された。
【0088】
vii.多形I型のIRスペクトル
図6は、多形I型のATR−IRスペクトルを示し、図7は、多形I型ヌジョール懸濁液のIRスペクトルを示す。対応するデータを次の表5に示す。
【0089】
【表5】

【0090】
特徴的なスペクトル、具体的にはATRスペクトルには、2932cm−1、1711cm−1、1682cm−1、1599cm−1、1442cm−1、1182cm−1、1079cm−1、1053cm−1、1008cm−1、985cm−1、842cm−1、および783cm−1の強い吸収帯が含まれる。1711cm−1および1682cm−1の吸収帯は、この多形に特に固有であると考えられる。1635cm−1、1404cm−1、および1182cm−1の吸収帯も、この多形に特に固有であると考えられる。
【0091】
多形II型
以下の考察は観察された多形II型の様々な特徴を提供する。
【0092】
i.多形II型の外観
多形II型は、一般に数百ミクロンまでの大きさを有するプリズム状結晶の形態であった。
【0093】
ii.多形II型の粉末X線回折スペクトル
多形II型の観察されたPXRDスペクトルを図8に示し、対応するデータを次の表6に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
特徴的なスペクトルには、2θ=6.5°である初期の最強ピークが含まれる。
【0096】
iii.多形II型のFT−ラマンスペクトル
多形II型の観察されたFT−ラマンスペクトルを図9に示し、対応するデータを次の表7に示す。
【0097】
【表7】

【0098】
特徴的なスペクトルには、2929cm−1、1625cm−1、および1595cm−1の強いピーク、ならびに1685cm−1および783cm−1の小さいが鋭いピークが含まれる。
【0099】
iv.多形II型の熱重量分析
図10は、多形II型のTG−FTIR分析の結果を示す。主として50から100℃の温度範囲で、0.7%の重量損失が認められた。出願人等は、これは水分損失に起因するものであると考える。分解は220℃より高い温度で開始した。
【0100】
v.多形II型の示差走査熱量測定
図11は、多形II型のDSC分析の結果を示す。第1回走査(実線)は、融解エンタルピーΔHfus15J/gで、113℃に融解ピークを示す。第2回走査(破線)は、ガラス転移温度(「T」)96.1℃を示す。再結晶は観察されなかった。
【0101】
多形II型の試料を個別に分析して融点を求めた。純度約96%(w/w)を有する試料は、融点113から119℃を示した。
【0102】
vi.多形II型の動的蒸気吸着
図12は、多形II型のDVS分析の結果を示す。この分析は25℃で行った。相対湿度95%で約2%(重量)の最大水分取り込みが観察された。
【0103】
vii.多形II型のIRスペクトル
図13は、多形II型のATR−IRスペクトルを示し、図14は、多形II型ヌジョール懸濁液のIRスペクトルを示す。対応するデータを次の表8に示す。
【0104】
【表8】

【0105】
特徴的なスペクトル、具体的にはATRスペクトルには、2935cm−1、1736cm−1、1668cm−1、1587cm−1、1451cm−1、1165cm−1、1080cm−1、1057cm−1、1042cm−1、1005cm−1、981cm−1、838cm−1、および755cm−1の強い吸収帯が含まれる。
【0106】
多形III型
以下の考察は観察された多形III型の様々な特徴を提供する。
【0107】
i.多形III型の外観
多形III型は、一般に微細針状の形態であった。
【0108】
ii.多形III型の粉末X線回折スペクトル
多形III型の観察されたPXRDスペクトルを図15に示し、対応するデータを次の表9に示す。
【0109】
【表9】

【0110】
特徴的なスペクトルには、2θ=6.1°である最強ピークが含まれ、2θ=5.6°のより小さいピークを伴う。これら2つのピークの相対強度は、スペクトルの他のピークの相対強度と同様に、バッチによって異なることが観察された。このような変動は、PXRDでは珍しくない。多くの場合、このような変動は、特に異方性(すなわち、針様および板様)結晶において、配向効果によって生じるものである。しかしながら、多形形態の同定は通常ピークの強度ではなく位置に依存するため、これらの変動は一般にこの同定に影響を及ぼさない。
【0111】
iii.多形III型のFT−ラマンスペクトル
多形III型の観察されたFT−ラマンスペクトルを図16に示し、対応するデータを次の表10に示す。
【0112】
【表10】

【0113】
特徴的なスペクトルには、2943cm−1、2917cm−1、1627cm−1、および1590cm−1の強いピーク、ならびに1733cm−1、1669cm−1、1193cm−1、1094cm−1、および981cm−1のより小さいピークが含まれる。
【0114】
iv.多形III型の熱重量分析
1つの試料のTG−FTIR分析は、220℃までに1.7%の重量損失を示し、ほとんどの損失は50から120℃の間に生じた。この重量損失は試料中の水またはアセトニトリルによるものであると仮定される(IR検出器のアセトニトリルに対する感度は低い。)。
【0115】
図17は、多形III型のTG分析の結果を示す。200℃までに0.05%未満の重量損失が認められた。分解は270℃より高い温度で開始した。
【0116】
v.多形III型の示差走査熱量測定
図18は、多形III型のDSC分析の結果を示す。第1回走査(実線)は、融解エンタルピーΔHfus38J/gで、134℃に融解ピークを示す。冷却すると、材料は非晶質状態に固化した。第2回走査(破線)は、T96℃、再結晶、195℃の再融解を示す。
【0117】
多形III型の試料を個別に分析して融点を求めた。純度約99%を有する試料は、融点122から126℃を示した。
【0118】
vi.多形III型の動的蒸気吸着
図19は、多形III型のDVS分析の結果を示す。この分析は25℃で行った。相対湿度70から85%で約6%の水分取り込みが観察された。
【0119】
vii.多形III型のIRスペクトル
図20は、多形III型のATR−IRスペクトルを示し、図21は、多形III型ヌジョール懸濁液のIRスペクトルを示す。対応するデータを次の表11に示す。
【0120】
【表11】

【0121】
特徴的なスペクトル、具体的にはATRスペクトルには、2931cm−1、1732cm−1、1667cm−1、1590cm−1、1453cm−1、1165cm−1、1081cm−1、1057cm−1、1046cm−1、1005cm−1、981cm−1、834cm−1、および756cm−1の強い吸収帯が含まれる。
【0122】
多形IV型
以下の考察は観察された多形IV型の様々な特徴を提供する。
【0123】
i.多形IV型の粉末X線回折スペクトル
多形IV型の観察されたPXRDスペクトルを図22に示し、対応するデータを次の表12に示す。
【0124】
【表12】

【0125】
ii.多形IV型の示差走査熱量測定
図23は、多形IV型のDSC分析の結果を示す。この曲線は155℃でピークを示し、これは多形IV型に相当すると考えられる。この曲線はまた、191℃でピークを示し、これは多形I型に相当すると考えられる。試料が多形I型とIV型の両方を含有するか、または加熱中に多形IV型が多形I型に転換されると考えられる。
【0126】
多形IV型の試料を個別に分析して融点を求めた。純度約90.0(w/w)である試料は、融点149から152℃を示した。
【0127】
iv.多形IV型のIRスペクトル
図24は、多形IV型のATR−IRスペクトルを示し、図25は、多形IV型ヌジョール懸濁液のIRスペクトルを示す。対応するデータを次の表13に示す。
【0128】
【表13】

【0129】
特徴的なスペクトル、具体的にはATRスペクトルには、2933cm−1、1743cm−1、1668cm−1、1584cm−1、1448cm−1、1165cm−1、1075cm−1、1060cm−1、1045cm−1、1010cm−1、985cm−1、839cm−1、および757cm−1の強い吸収帯が含まれる。3559cm−1の吸収帯は、この多形に特に固有であると考えられる。
【0130】
S1結晶溶媒和物
以下の考察は観察されたS1結晶溶媒和物の様々な特徴を提供する。下記のPXRDおよびFT−ラマンデータは酢酸エチルS1結晶溶媒和物に相当するが、ジエチルケトンおよびエタノール結晶溶媒和物は酢酸エチル結晶溶媒和物と同形であるため、このデータは一般にこれらの特徴評価に適用できる。
【0131】
i.酢酸エチルS1結晶溶媒和物の外観
酢酸エチルS1結晶溶媒和物は、一般に微細針状、または繊維に分解される傾向のあるより大きな結晶の形態であった。
【0132】
ii.酢酸エチルS1結晶溶媒和物の粉末X線回折スペクトル
酢酸エチルS1結晶溶媒和物の観察されたPXRDスペクトルを図26に示し、対応するデータを次の表14に示す。
【0133】
【表14】

【0134】
特徴的なスペクトルには、2θ=5.6°および6.1°の初期ピークが含まれる。
【0135】
iii.酢酸エチルS1結晶溶媒和物のFT−ラマンスペクトル
酢酸エチルS1結晶溶媒和物の観察されたFT−ラマンスペクトルを図27に示し、対応するデータを次の表15に示す。
【0136】
【表15】

【0137】
特徴的なスペクトルには、2936cm−1、1625から1627cm−1、および1586cm−1の強いピーク、ならびに1745cm−1、1669cm−1、および978cm−1のより小さいが鋭いピークが含まれる。
【0138】
iv.S1結晶溶媒和物の熱重量分析
図28、29、および30は、それぞれ酢酸エチル、エタノール、およびジエチルケトンS1結晶溶媒和物のTG−FTIRの結果を示す。これらの結果によって、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド分子当たり約1溶媒分子との結晶溶媒和物の存在が確認されるが、これは本質的に純粋な20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを仮定している。酢酸エチルS1結晶溶媒和物は、酢酸エチルの遊離に起因する約4.1%の重量損失を示した。これは酢酸エチルの20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドに対するモル比0.36に相当する。エタノールS1結晶溶媒和物は、200℃までにエタノールの遊離に起因する約6.6%の重量損失を示した(このS1結晶溶媒和物は少量の水も含有する可能性があり、これも同様に遊離した可能性がある。)。これはエタノールの20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドに対するモル比1.1に相当する。さらにジエチルケトンS1結晶溶媒和物は、ジエチルケトンの遊離に起因する10%の重量損失を示した。これはジエチルケトンの20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドに対するモル比1.0に相当する。これらの結果を表16に要約する。
【0139】
【表16】

【0140】
それぞれの結晶溶媒和物では、重量損失が40から50℃で始まる。これは比較的低い安定性を示しており、酢酸エチル結晶溶媒和物は、例えば、周囲温度での真空乾燥によって容易に多形III型に転換され得るという観察と一致している。例えば、実施例7を参照されたい。酢酸エチル結晶溶媒和物の結果は、この溶媒分子が水に置換され得ることを示しており、多形III型のDVSの結果と一致している。
【0141】
S2結晶溶媒和物
以下の考察は観察されたS2結晶溶媒和物の様々な特徴を提供する。
【0142】
i.tBMES2結晶溶媒和物の外観
tBMES2結晶溶媒和物は、一般に明確な輪郭のない結晶の形態であり、酢酸エチルS1結晶性溶媒和結晶と比較して、繊維に分解される傾向を示さなかった。
【0143】
ii.tBMES2結晶溶媒和物のtBMEへの溶解度
tBMES2結晶溶媒和物のtBMEへの溶解度は、40から50mg/mlの間である。従って、溶解度は、多形II型のtBMEへの溶解度より少なくとも1桁低い。
【0144】
iii.tBMES2結晶溶媒和物の粉末X線回折スペクトル
tBMES2結晶溶媒和物の観察されたPXRDスペクトルを図31に示し、対応するデータを次の表17に示す。
【0145】
【表17】

【0146】
特徴的なスペクトルには、2θ=6.1°、10.0°、10.3°、17.0°、18.6°、および20.1°の類似の強度を有する幾つかのピークが含まれる。
【0147】
iv.tBMES2結晶溶媒和物のFT−ラマンスペクトル
tBMES2結晶溶媒和物の観察されたFT−ラマンスペクトルを図32に示し、対応するデータを次の表18に示す。
【0148】
【表18】

【0149】
特徴的なスペクトルには、2928cm−1、1623cm−1、および1587cm−1の強いピーク、ならびに1674cm−1、1244cm−1、1190cm−1、780cm−1、および728cm−1のより小さいが鋭いピークが含まれる。
【0150】
v.tBMES2結晶溶媒和物の熱重量分析
図33は、tBMES2結晶溶媒和物試料のTG−FTIRの結果を示す。tBMEの遊離に起因して、約8.7から10%の重量損失が生じた。この重量損失は20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド分子当たり0.8から0.9tBME分子に相当するが、これは本質的に純粋な20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを仮定している。ほとんどすべての重量損失が90℃超で起こり、温度が100℃超に上昇するとき、鋭いステップを伴う。このように、大部分の重量損失は、tBMEの沸点より高い温度で生じる。tBME結晶溶媒和物は、酢酸エチルS1結晶溶媒和物より安定であると考えられる。安定性は脱溶媒和実験によって確認され、周囲温度と70℃の両方において、真空下で乾燥したとき溶媒の損失は観察されなかった。
【0151】
S3結晶溶媒和物
以下の考察は観察されたS3結晶溶媒和物の様々な特徴を提供する。
【0152】
i.THFS3結晶溶媒和物の外観
THFS3結晶溶媒和物は、一般に不規則な塊(chunk)の形態であり、S1溶媒和結晶と比較して、繊維に分解される傾向を示さなかった。
【0153】
ii.THFS3結晶溶媒和物の粉末X線回折スペクトル
THFS3結晶溶媒和物の観察されたPXRDスペクトルを図34に示し、対応するデータを次の表19に示す。
【0154】
【表19】

【0155】
特徴的なスペクトルには、2θ=6.2°、10.1°、10.5°、13.6°、16.7°、17.2°、18.8°、および20.5°の類似の強度を有する幾つかのピークが含まれる。
【0156】
iii.THFS3結晶溶媒和物のFT−ラマンスペクトル
THFS3結晶溶媒和物の観察されたFT−ラマンスペクトルを図35に示し、対応するデータを次の表20に示す。
【0157】
【表20】

【0158】
特徴的なスペクトルには、2928cm−1、1622cm−1、および1586cm−1の強いピーク、ならびに1673cm−1、1244cm−1、1191cm−1、および782cm−1のより小さいが鋭いピークが含まれる。
【0159】
iv.THFS3結晶溶媒和物の熱重量分析
図36は、THFS3結晶溶媒和物のTG−FTIRの結果を示す。大部分の重量損失は、THFの沸点より高い温度で生じた。具体的には、10%未満の重量損失が60から100℃で生じたのに対して、約80%の損失が110から180℃で生じた。これらの結果は、THFの遊離のため、約8.1%の重量損失が100℃超の温度で生じることを示している。これは20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド分子当たり約0.8THF分子に相当するが、これは本質的に純粋な20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを仮定している。
【0160】
S4結晶溶媒和物
以下の考察は観察されたS4結晶溶媒和物の様々な特徴を提供する。下記のPXRDおよびFT−ラマンデータは酢酸メチルS4結晶溶媒和物に相当するが、ギ酸エチル結晶溶媒和物は酢酸メチル結晶溶媒和物と同形であるため、このデータは一般にギ酸エチル結晶溶媒和物の特徴評価に適用できる。
【0161】
i.酢酸メチルS4結晶溶媒和物の外観
酢酸メチルS4結晶溶媒和物は、いくらかの十分に成長したプリズム状結晶を含有した。これらの結晶は、S1溶媒和結晶と比較して、繊維に分解される傾向を示さなかった。
【0162】
ii.酢酸メチルS4結晶溶媒和物の粉末X線回折スペクトル
酢酸メチルS4結晶溶媒和物の観察されたPXRDスペクトルを図37に示し、対応するデータを次の表21に示す。
【0163】
【表21】

【0164】
特徴的なスペクトルには、2θ=6.3°、10.1°、10.5°、14.8°、16.8°、17.4°、18.9°、および20.9°の類似の強度を有する幾つかのピークが含まれる。
【0165】
iii.酢酸メチルS4結晶溶媒和物のFT−ラマンスペクトル
酢酸メチルS4結晶溶媒和物の観察されたFT−ラマンスペクトルを図38に示し、対応するデータを次の表22に示す。
【0166】
【表22】

【0167】
特徴的なスペクトルには、2949cm−1、2934cm−1、1619から1621cm−1、および1581から1584cm−1の強いピーク、ならびに1671cm−1、1243cm−1、1191cm−1、981cm−1、および782cm−1のより小さいが鋭いピークが含まれる。
【0168】
iv.S4結晶溶媒和物の熱重量分析
図39および40は、それぞれ酢酸メチルおよびギ酸エチルS4結晶溶媒和物のTG−FTIRの結果を示す。これらの結果によって、結晶溶媒和物の存在が確認される。酢酸メチル結晶溶媒和物では、酢酸メチルの遊離のため、約8.4%の重量損失があった。さらにギ酸エチル結晶溶媒和物では、約7.7%の重量損失があった。観察された結果に基づいて、酢酸メチル結晶溶媒和物は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド分子当たり約0.9酢酸メチル分子を有し、ギ酸エチル結晶溶媒和物は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド分子当たり約0.6から約0.8ギ酸エチル分子を有すると推定される。これらの推定はいずれも本質的に純粋な20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを仮定している。酢酸メチル結晶溶媒和物では70から110℃、ギ酸エチル結晶溶媒和物では60から90℃で、10%未満の重量損失が生じた。いずれの結晶溶媒和物の場合にも、脱溶媒和は迅速に進んだ。脱溶媒和は、酢酸メチル結晶溶媒和物では160℃で、ギ酸エチル結晶溶媒和物では130℃でほぼ完了した。
【0169】
B.薬剤の調製、およびマクロライドを用いる治療方法
例えば、動物、特に家畜および家禽においてパスツレラ症を治療するために、上記の様々な20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態を用いることができる。幾つかの実施形態において、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、およびヒストフィルス・ソムニ(Histophilus somni)に関連するウシ呼吸器疾患(BRD)を有するウシ動物を治療するために、結晶マクロライド形態が用いられる。他の実施形態において、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、およびボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)に関連するブタ呼吸器疾患を有するブタ動物を治療するために、結晶マクロライド形態が用いられる。
【0170】
一般に、治療有効量のマクロライドをレシピエント動物に投与する。本明細書で用いられる用語「治療有効量」は、標的病原体感染を予防、このリスクを低減、この発症を遅延、これを改善、抑制、または根絶するのに十分な量である。通常、治療有効量は、感染部位(または、感染を予防、このリスクを低減、もしくはこの発症を遅延するために用いられるときには感染しやすい部位)において標的病原体を制御するのに有効な濃度を得るのに必要な量として定義される。感染部位(または感染しやすい部位)の濃度は、好ましくは標的病原体に対するマクロライドのMIC90レベル(最小阻止濃度、すなわち標的病原体の増殖の90%を阻止する濃度)に少なくとも等しい。このような量を2回以上の分割用量で動物レシピエントに投与することができるが、好ましくは単回用量で投与される。マクロライドが別の活性成分と共に投与される場合、用語「治療有効量」は、標的病原体感染を予防、このリスクを低減、この発症を遅延、これを改善、抑制、または根絶するのに合わせて十分な量であるマクロライドと他の活性成分の合計量を指す。
【0171】
好ましい投与計画に影響を及ぼす要因には、動物レシピエントの種類(例えば、種および品種)、年齢、体重、性別、食餌、活動、および状態;病的状態の重症度;組成物を投与するために用いられる装置、ならびに用いられる投与の種類;薬理学的検討事項、例えば投与される特定の組成物の活性、有効性、薬物動態、および毒性プロファイルなど;組成物中の追加活性成分の存在;ならびに組成物が薬物および/またはワクチンの組み合わせの一部として投与されるかどうかが含まれる。このように実際に用いられる用量は、特定の動物患者によって異なることができ、従って上記の典型的な用量からはずれることができる。このような用量の調節の決定は、一般に通常の手段を用いて当業者の技術の範囲内である。
【0172】
一般に、マクロライドは動物に1回投与することができるが、複数回投与してもよいことが企図される。
【0173】
ウシの場合、投与されるマクロライドの総量は、典型的に体重1kg当たり約0.1から約40mg、より典型的には体重1kg当たり約1から約10mgである。例えば、幾つかの実施形態において、ウシに投与される量は、体重1kg当たり約4mgである。マクロライドは任意の年齢のウシに投与することができるが、幾つかの実施形態では、マクロライドは約1カ月から約1.5年齢、または約6カ月から約1年齢のウシに投与される。幾つかの実施形態において、マクロライドはフィードロットにはいる離乳した子ウシ(多くの場合、約6カ月齢)に投与される。さらに他の実施形態において、ウシは約2から約12週齢の子ウシであり、マクロライドは、予防のためには体重1kg当たり約1から約10mgの用量で、既存の感染の治療のためには体重1kg当たり約2から約20mgの用量で投与される。
【0174】
ブタの場合、投与されるマクロライドの総量は、典型的に体重1kg当たり約0.1から約50mg、より典型的には体重1kg当たり約1から約10mgである。例えば、幾つかの実施形態において、ブタに投与される量は、体重1kg当たり約4mgである。他の実施形態において、ブタに投与される量は、体重1kg当たり約5mgである。マクロライドは任意の年齢のブタに投与することができるが、幾つかの実施形態では、マクロライドはグロワーからフィニッシャーブタに投与される。
【0175】
投与方法は動物に応じて変えることができるが、ウシ、ブタ、およびウマなどの大型哺乳動物の場合、経口または非経口で投与するのが好ましい。「非経口投与」には、例えば皮下注射、静脈注射、筋肉注射、胸骨内注射、粘膜下注射、および注入が含まれる。幾つかの実施形態において、例えば、動物レシピエントはウシ動物であり、マクロライド組成物は、頸部など皮下に投与される。他の実施形態において、例えば、動物レシピエントはブタ動物であり、マクロライド組成物は筋内に投与される。
【0176】
結晶マクロライド形態は、医薬組成物(または「薬剤」)を形成するために用いることができる。このような組成物は1種以上のこのような結晶マクロライド形態だけを含んでもよいことが企図される。しかしながら、通常、組成物は他の成分も含む。
【0177】
組成物中の他の成分は、例えば、他の活性成分を含むことができる。あるいは(または加えて)、このような他の成分は、1種以上の医薬的に許容される担体、ビヒクル、および/または補助剤(まとめて「賦形剤」と称する。)を含むことができる。このような賦形剤の選択は、投与様式;組成物を投与するために用いられる装置;薬理学的検討事項、例えば特定の組成物の活性、有効性、薬物動態、および毒性プロファイルなど;組成物中の追加活性成分の存在;ならびに組成物が薬物および/またはワクチンの組み合わせの一部として投与されるかどうかなどの様々な要因によって決まることになる。
【0178】
固体マクロライド組成物は、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプン、およびジャガイモでんぷんなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロース誘導体などを含むことができる。
【0179】
液体マクロライド組成物は、例えば、水、等張生理食塩液、リンガー溶液、エチルアルコール、および/またはリン酸緩衝溶液を含むことができる。このような組成物はまた、落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油、ならびに/またはグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、およびポリ(エチレングリコール−2−プロピレングリコール−2−ポリエチレングリコール)などの多価アルコールを含むこともできる。さらに、例えば、場合によって組成物は1種以上の保存剤を含むことが望ましい可能性がある。保存剤を存在させることによって、例えば、長期間(例えば、数日間、数週間、数カ月間、または数年間)にわたって貯蔵することのできる利益を組成物または溶媒にもたらすことができる。適切な保存剤を選択するとき、考慮される要因には、例えばこの抗菌活性;所望の抗菌活性を有するpH範囲;所望の抗菌活性を有する最低濃度;水溶解度および他の物理特性(例えば、発泡を生じる可能性);非経口で用いるための適合性;起こり得る活性成分との相互作用(例えば、活性成分の溶解性に対する影響);起こり得る非活性成分との相互作用(例えば、溶媒の安定性に対する影響);ならびにこの組成物または溶媒を製造、販売、または使用する場合に適用される可能性のある任意の政府条例が含まれる。企図される保存剤には、例えば、パラベン、プロピレングリコール、塩化ベンザルコニウム、フェニルエタノール、クロロクレゾール、メタクレゾール、エタノール、フェノキシエタノール、およびベンジルアルコールが含まれる。
【0180】
マクロライド組成物に適している可能性のある医薬的に許容される賦形剤に関するさらなる考察は、例えば「Gennaro,Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(第20版、2000)(参照により本明細書の一部とする。)に見出すことができる。例示すると、他の適切な賦形剤には、例えば、着色剤;香味剤;ポビドンカルボキシメチルセルロースおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘剤を含むことができる。
【0181】
通常、マクロライドは医薬組成物の少なくとも約0.5重量%を占める。例えば、ブタに用いる幾つかの実施形態において、非経口投与に適したマクロライドの濃度は、例えば約5から約500mg/ml、約10から約100mg/ml、または約20から約60mg/ml(例えば約40mg/ml)であることができる。さらに例示すると、ウシに用いる幾つかの実施形態において、非経口投与に適したマクロライドの濃度は、例えば約5mg/mlから約2.0g/ml、約10mg/mlから約1.0g/ml、50から約500mg/ml、または約100から約300mg/ml(例えば約180mg/ml)であることができる。
【0182】
マクロライドの濃度は投与形態に応じて変更できることが認識されるべきである。例えば、マクロライドが非経口で投与される場合、マクロライドの濃度は、好ましくは非経口投与に許容される容量で所望の治療有効量を提供するのに十分な濃度である。最大許容容量は、例えば投与に用いられる装置、非経口投与の種類、レシピエント動物の大きさ、および使用者の主観的な要望に応じて変化してよい。
【0183】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態を賦形剤に溶解することを含む方法によって形成された液体組成物を含む。他の実施形態において、組成物は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態を賦形剤に懸濁することを含む方法によって形成された懸濁液を含む。
【0184】
家畜および家禽の疾患を治療するための20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドおよびこの誘導体の使用に関するさらなる考察は、例えば米国特許第6514946号に見出すことができる。前述のとおり、この考察は参照により本明細書の一部とする。
【0185】
本発明はまた、例えば、上記の治療方法を実行するのに使用するために適したキットに関する。幾つかの実施形態において、キットは、治療有効量の少なくとも1種の上記20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態(例えば、治療有効量の多形I型)、および、結晶形態を少なくとも1種の賦形剤と組み合わせるための使用説明書、例えば結晶形態を液体賦形剤に溶解または懸濁させるための使用説明書などを含む。キットはさらに(または、代わりに)、例えば、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶形態を含む(またはこれから誘導される)組成物を投与するための1つ以上の装置(例えば、注射器)、1種以上の追加の医薬材料もしくは生物学的材料、1種以上の賦形剤、および/または1種以上の診断ツールなどの追加構成成分を含むことができる。
【0186】
実施例
以下の実施例は本発明の実施形態を単に例示するものであり、いずれの形でも本開示の残りの部分を限定するものではない。
【実施例1】
【0187】
タイロシンAからの20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの調製
【0188】
【化7】

【0189】
パートA 還元的アミノ化:23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物(2)の調製
【0190】
【化8】

【0191】
トルエン(19.2kg)、タイロシンA(1)(3.68kg;≧80%タイロシンA;≧95%タイロシンA、B、C、およびD)、ピペリジン(0.40kg)、およびギ酸(0.55kg)を反応器に充填した。混合物を攪拌しながら、70から80℃に加熱した。次いで、この温度でさらに1から2時間攪拌を続けた。HPLCで20−ピペリジニル−タイロシン化合物(2)の形成をモニターした。反応完了後(≦2%タイロシンA(1))、生成混合物を周囲温度に冷却した。
【0192】
パートB マイカロシルオキシ置換基の酸加水分解:23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物(3)の調製
【0193】
【化9】

【0194】
攪拌し、混合物を40℃未満に保ちながら、パートAの生成混合物に
HBr(24%に希釈した48%HBr)を添加した。その後、20分の相分離期間を用いて、生成混合物の相を分離した。この相分離中、生成混合物は20から25℃であった。下相のHPLCを用いて、反応完了を確認した(≦2%20−ピペリジニル−タイロシン化合物(2))。
【0195】
パートC マイシノシルオキシ置換基の酸加水分解:23−ヒドロキシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(4)の調製
【0196】
【化10】

【0197】
パートBで得た水相に、周囲温度で24%HBr(18.4L)を添加し、その後攪拌しながら約1時間以内に54±3℃に加熱した。HPLCを用いて反応をモニターしながら、この温度でさらに2から4時間攪拌を続けた。反応完了後(≦2%23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物(3))、−10℃の冷却ジャケットを用いて、混合物を周囲温度に冷却した。冷却後、混合物をジクロロメタンで3回抽出した(各回9.8kg)。水性生成物を4から8℃に冷却し、次いで、6N NaOH(33.6kg)をゆっくりと添加して、pHを≧10に調節した。得られた混合物をジクロロメタンで3回(32.6kg、29.3kg、および24.5kg)、周囲温度で抽出した。合わせた有機相を別の反応器に充填した。硫酸ナトリウム(2.9kg;NaSO)を添加し、濾別した。次いで、ジクロロメタン(4.9kg)を添加し、蒸留によって除去した。得られた粗生成物を周囲温度でtert−ブチルメチルエーテル(各回6.1kg)に2回溶解し、再結晶した。その後、生成物をNutschフィルタで単離し、tert−ブチルメチルエーテル(各回1.0kg)で2回洗浄し、棚式乾燥機において真空下、40℃で一晩乾燥した。HPLCを用いて、最終生成物を分析した。
【0198】
パートD ヨウ素化:活性化化合物(5)の調製
【0199】
【化11】

【0200】
トリフェニルホスフィン(0.9kg)およびピリジン(0.3kg;水を含まない。)を周囲温度でジクロロメタン(11.7kg)に溶解した。次いで、ヨウ素(0.8kg)を添加した。次いで、ヨウ素がすべて溶解するまで、得られた混合物を攪拌した。その後、混合物を13℃に冷却した。冷却した混合物を、15±3℃で攪拌しながら、ジクロロメタン(11.7kg)中のパートCの生成物に添加した。反応をHPLCでモニターし、2から2.5時間で完了と判定した(≦2%23−ヒドロキシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物)。
【0201】
パートE アミノ化:20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(6)の調製
【0202】
【化12】

【0203】
炭酸カリウム(1.8kg)、アセトニトリル(16.7kg)、およびピペリジン(1.1kg)をパートDの生成物に添加した。次いで、得られた混合物を78℃に加熱し、ジクロロメタンを留去した。溶媒をアセトニトリルに交換した後、混合物を還流下で2から2.5時間攪拌し、次いで周囲温度に冷却した。その後、残留炭酸カリウムを濾別し、濾過ケーキをアセトニトリル(2.8kg)で洗浄、真空下、ジャケット温度50℃で溶媒を留去した。得られた残留物を酢酸エチル(15.8kg)に溶解し、0.5N HCl(35.6kg)と混合した。周囲温度で相を分離し、下部の水相を酢酸エチルで3回抽出した(各回15.8kgを使用した)。得られた水相を、6N NaOH(6.4kg)を添加してpH11に調節し、ジクロロメタンで3回(各回18.7kg)、周囲温度で抽出した。合わせた下部有機相を硫酸ナトリウム(5.3kg)と共に再び反応器に充填した。次いで、混合物を濾過してケーキを形成し、これをジクロロメタン(4.9kg)で洗浄し、真空下、ジャケット温度50℃で乾燥して、マクロライド生成物を形成した。次いで、この生成物をアセトニトリル(21.7L)と混合し、再結晶した。得られた結晶をNutschフィルタで単離し、冷アセトニトリルで2回洗浄(各回3.5L)、真空下、40℃で一晩乾燥して、マクロライド(5)生成物を形成した。HPLCを用いて、生成物の組成を確認した。
【実施例2】
【0204】
代替アミノ化:20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(2)の調製
【0205】
【化13】

【0206】
炭酸カリウム(0.94kg)、キシレン(5L)、およびピペリジン(0.55kg)を、パートDの手順に従って製造した活性化化合物(1)1.0kgに添加する。次いで、得られた混合物を15時間、95から105℃に加熱する。後処理は、KCOを水に溶解すること、過剰ピペリジンを除去すること、希釈HClに抽出すること、pH11でtert−ブチルメチルエーテルに抽出すること、溶媒をエタノールに交換すること、ならびに粗生成物を沈澱させ、単離し、乾燥することを含む。次いで、生成物を酢酸メチルまたは酢酸エチルから再結晶する。HPLCを用いて、生成物の組成を確認する。
【実施例3】
【0207】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の調製
パートA 還元的アミノ化:23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物(2)の調製
【0208】
【化14】

【0209】
リン酸タイロシン(1)およびジクロロメタン(リン酸タイロシン1kg当たり1.3L)を反応器に充填した。得られた混合物を攪拌して、透明な溶液を生成した。次いで、ピペリジン(リン酸タイロシンに対して1.2当量)、ギ酸(リン酸タイロシンに対して4.5当量)、およびトルエン(リン酸タイロシン1kg当たり6.7L)を順次反応器に充填した。得られた混合物を攪拌しながら、76℃に加熱した。その後、この温度で2.5時間攪拌を続けた。次いで、追加のピペリジン(リン酸タイロシンに対して0.1当量)を充填し、得られた混合物をさらに1時間76℃で攪拌した。生成混合物を50℃に冷却した。
【0210】
パートB マイカロシルオキシ置換基の酸加水分解:23−ヒドロキシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(4)の調製
【0211】
【化15】

【0212】
パートAの生成混合物に、50℃でHBr水溶液(パートAで用いたリン酸タイロシンに対して23.3当量)を添加した。得られた混合物を56℃で5時間攪拌した。HPLCを用いて、反応をモニターした。
【0213】
所望の転換が得られたら、生成混合物を冷却した。水相を25から30℃で、ジクロロメタンで2回抽出した。次いで、水相を0℃に冷却し、≦5℃でNaOHを用いて、pHを10から10.5に調節した。その後、水相を20℃で、ジクロロメタンで2回抽出した。結果として生じる合わせた有機相をNaHCO水溶液で2回抽出した。次いで、合わせた有機相から蒸留によってジクロロメタンを除去し、イソプロピルアルコールと置き換えた。その後、ヘプタンを45℃で添加して、沈澱を開始させた。次いで、混合物を0℃で攪拌した。その後、結晶生成物を濾過によって単離した。単離した結晶をヘプタンおよびイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥し、HPLCを用いて分析した。
【0214】
上記の手順によって、パートAで用いたリン酸タイロシン1kg当たり0.23kgの生成物を製造した。この生成物はイソプロピルアルコールを含有する可能性がある。イソプロピルアルコールを除去するために、生成物をトルエンおよびジクロロエタンに溶解し、その後、蒸留することができる。
【0215】
パートC ヨウ素化:活性化化合物(5)の調製
【0216】
【化16】

【0217】
トリフェニルホスフィン(パートBの生成物1kg当たり0.41kg)を25℃でジクロロメタン(トリフェニルホスフィン1kg当たり12L、≦100ppmHO)に溶解した。次いで、ピリジン(トリフェニルホスフィン1kg当たり0.3kg)を添加した。次いで、ヨウ素(トリフェニルホスフィン1kg当たり0.9kg)を25℃で5回に分けて添加した。得られた混合物を25℃で40分間攪拌し、その後−6℃に冷却した。次いで、−6℃で攪拌しながら、50分間かけて混合物をパートBの生成物に添加した。その後、混合物を−5℃に保ちながら、7時間攪拌を続けた。反応をHPLCでモニターした(十分な転換に到達していない場合、混合物を追加の時間、例えば1.5時間、−5℃で攪拌することができる。)。
【0218】
所望の転換に到達したら、生成混合物を−5℃で、NaSO水溶液で洗浄した。次いで、蒸留によって有機相からジクロロメタンを除去し、テトラヒドロフランで置き換えた。
【0219】
パートD アミノ化:20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(6)の調製
【0220】
【化17】

【0221】
ピペリジン(パートBの生成物1kg当たり0.55kg)をパートCの生成物に添加し、次いで炭酸カリウム(パートBの生成物1kg当たり0.94kg)を添加した。得られた混合物を55℃に加熱し、次いで攪拌しながら、この温度を3時間保持した。その後、混合物を1時間かけて72℃に加熱し、次いでこの温度で6時間攪拌した。HPLCを用いて、生成物の組成を分析した。
【0222】
所望の転換が得られたら、生成混合物を20℃に冷却し、トルエンを添加した。得られた混合物を水で2回洗浄し、有機相をHCl水溶液で2回抽出し、pH≦3を有する水相を得た。この混合物を0から5℃に冷却した。
【0223】
パートE 20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物の調製
パートDに従って調製した酸性生成物水溶液を3℃で酢酸エチル(パートBの生成物1kg当たり6.7L)と合わせた。得られたエマルションのpHを、3℃で苛性ソーダを用いて10.5から11.0に調節した。相を3℃で分離した。有機相を水で1回洗浄した。相を分離した後、有機相を蒸留によって濃縮して、酢酸エチル溶液を得た。種を導入すると、結晶化が開始した。得られた生成物を濾別して、酢酸エチル結晶溶媒和物の濾過ケーキを得た。濾過ケーキを0℃でヘプタンを用いて洗浄した。これにより、用いたパートBの生成物1kg当たり約0.78kgの粗製湿潤結晶溶媒和物を得た。
【0224】
パートF 20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の調製
パートEに従って形成された、洗浄結晶溶媒和物湿潤ケーキをヘプタン(湿潤ケーキ1kg当たり6.1L)と合わせた。得られた懸濁液を72℃に加熱し、種を導入した。その後、懸濁液を72℃、次いで20℃で攪拌した。その後、懸濁液を濾過し、得られた固体をヘプタンで洗浄し、乾燥した。これにより、用いたパートBの生成物1kg当たり約0.53kgのI型結晶(または用いたパートEの粗製湿潤結晶溶媒和生成物1kg当たり0.68kgのI型結晶)を得た。
【実施例4】
【0225】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の調製
パートA 活性化合物の調製
実施例1、パートAからCに記載した方法に従って23−ヒドロキシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(50g)を調製したが、ただし酸加水分解反応(すなわち、パートBおよびC)に用いた酸はHBrではなくHClであった。この23−ヒドロキシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを13℃で、ジクロロメタン(13℃で250ml)を含有する攪拌した反応器に充填した。得られた混合物を13℃で約5分間攪拌した。並行して、ジクロロメタン(周囲温度で250ml)を別の反応器に充填し、攪拌を開始した。次いで、トリフェニルホスフィン(周囲温度で24.6g)を反応器に充填し、その後ピリジン(周囲温度で7.8ml)、次いでヨウ素(周囲温度で22.83g)を充填した。その後、混合物を周囲温度で2分間攪拌し、その後、滴下漏斗を用いて、13℃で23−ヒドロキシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含有するジクロロメタン混合物と合わせた。得られた混合物を13℃で130分間攪拌して、活性化生成物を形成した。
【0226】
パートB 20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の調製
炭酸カリウム(51.81g)、次いでアセトニトリル(600ml)、最後にピペリジン(37.1ml)を13℃でパートAの活性化生成物に添加した。次いで、得られた混合物を90分間かけて78℃に加熱し、その温度(還流)でさらに130分間攪拌した。次いで、混合物を60分間かけて15から25℃に冷却し、攪拌を中止した。その後、残留炭酸カリウムを濾別し、濾過ケーキをアセトニトリル(100ml)で洗浄、真空下、50℃で60分間かけて溶媒を留去した。得られた残留物を酢酸エチル(500ml)に溶解し、0.5N HCl(1000ml)と混合した。5分間攪拌した後、攪拌を止め、相を分離した。下部の水相を酢酸エチルで3回抽出した(各回500mlを用いた)。得られた水相の攪拌を開始し、温度を5から8℃に下げた。次いで、6N NaOH(150ml)を添加してpH11に調節した。次いで、pHを調節した混合物をジクロロメタンで3回(各回400ml)、周囲温度で抽出した。合わせた下部有機相を硫酸ナトリウム(150g)と共に周囲温度で再び反応器に充填した。得られた混合物を15分間攪拌し、次いで濾過してケーキを形成し、これをジクロロメタン(100ml)で洗浄した。蒸留によって溶媒を除去し、得られた生成物を真空下、50℃で60分間乾燥した。これによって57.5gの粗マクロライド生成物を得た。
【0227】
粗生成物を50℃でアセトニトリル(90ml)から結晶化した。油の形成を回避するために、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの種結晶を周囲温度で添加した(種結晶は前に粗製20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド3gをアセトニトリル12mlに溶解し、周囲温度で24時間後に形成した結晶を濾過により収集することによって得た)。周囲温度で5時間、および5℃で一晩(15時間)かけて、オフホワイト色の固体として生成物を沈澱させた。固体を濾過によって分離し、冷アセトニトリル(2×25ml)で2回洗浄した。残存する固体を減圧下(8mbar)、40℃で一晩乾燥し、18.2gの20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(含量:90%(w/s)HPLCによって決定)を得た。この生成物(15g)をアセトニトリルで再結晶することによってさらに精製した。これにより10.7gの生成物を得た(HPLC 254nmでの純度:100%;含量94%(w/s)HPLCによって決定)。
【実施例5】
【0228】
アセトニトリルでの20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型の再結晶
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(80mg)をアセトニトリル(2ml)に溶解した。得られた溶液を濾過し、アセトニトリルを周囲温度で蒸発させて、結晶を形成した。生成物結晶のFT−ラマンスペクトルは、実施例4の生成物結晶のスペクトルとほぼ同じであった。
【実施例6】
【0229】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(312mg)を酢酸エチル(0.5ml)に溶解した。溶解完了の数分後、新しい結晶が形成し、さらに数分後、溶液を占めた。追加の酢酸エチル(1ml)を添加し、結晶を濾別し、周囲温度および大気圧で乾燥した。
【実施例7】
【0230】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の調製
実施例6に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物(50mg)を、真空下、周囲温度で20時間乾燥することによって、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型を調製した。
【実施例8】
【0231】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(146.1mg)を、攪拌しながら、酢酸エチル(0.5ml)に溶解した。結晶化開始後、攪拌を継続しながら、ヘプタン(5ml)を添加した。3日後、得られた固体を濾別した。これらのステップはすべて周囲温度で行った。得られた結晶は非常に微細な針状の形態であった。この結晶のFT−ラマンスペクトルは、実施例6の結晶のFT−ラマンスペクトルと一致した。
【実施例9】
【0232】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(99.6mg)を酢酸エチル(2ml)に溶解した。得られた溶液を濾過し、溶媒を蒸発させた。ほぼすべての溶媒が蒸発した後、非晶質が残存した。再び酢酸エチルを添加し、蒸発させた。実施例6で調製した少数の種結晶を蒸発の様々な段階で添加した。これにより針状の形態の結晶を得た。これらの結晶のFT−ラマンスペクトルは、実施例6の結晶のFT−ラマンと一致した。
【実施例10】
【0233】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の調製
実施例9に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチルS1結晶溶媒和物を、真空下、約40から約70℃で3日間乾燥することによって、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型を調製した。これらの結晶のFT−ラマンスペクトルは、実施例7の結晶のFT−ラマンスペクトルと一致した。
【実施例11】
【0234】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(150.5mg)およびアセトニトリル(1ml)を合わせ、それぞれ加熱/冷却ステップおよび温度保持に関して1時間の時間間隔で20から40℃の温度サイクルに供した。このサイクルを5日後に停止した。得られた結晶(微細針状形態)を濾別し、周囲温度で乾燥させた。これらの結晶のPXRDスペクトルは、実施例7のPXRDスペクトルと一致した。
【実施例12】
【0235】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(170.5mg)を、ヘプタン/tBME比95:5(体積/体積)のヘプタンおよびtert−ブチルメチルエーテル(「tBME」)からなる溶媒(1ml)と共に周囲温度で4日間攪拌した。その後、得られた結晶を濾別し、追加のヘプタン/tBME(95:5体積/体積)溶媒で洗浄し、真空乾燥した。
【実施例13】
【0236】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(147.4mg)を攪拌しながらtBME(0.5ml)に溶解して、透明な溶液を形成した。次いでヘプタンを添加し、わずかな沈澱を生じた。3日後、結晶を単離した。これらのステップはすべて周囲温度で行った。得られた結晶のFT−ラマンスペクトルは、実施例12の結晶のFT−ラマンスペクトルと一致した。
【実施例14】
【0237】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(164.5mg)を周囲温度で4日間、ヘプタン(1ml)と共に攪拌した。得られた固体を濾別し、ヘプタンで洗浄し、真空乾燥した。洗浄し乾燥した生成物(90mg)および20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型結晶(98mg)をヘプタンに懸濁し、攪拌した。温度を10日間25℃で保持したが、ただし5日目の夜に短時間、偶発的に60℃まで温度が上昇した。得られた結晶のFT−ラマンスペクトルは、実施例12の結晶のFT−ラマンスペクトルと一致した。
【実施例15】
【0238】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の調製
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形III型結晶(171.8mg)を、ヘプタン/tBME比95:5(体積/体積)のヘプタンおよびtBME溶媒(1ml)に懸濁した。得られた溶液を9日間攪拌した。固体を濾別し、ヘプタン(1ml)で洗浄した。これらのステップはすべて周囲温度で行った。得られた結晶のFT−ラマンスペクトルは、実施例12の結晶のFT−ラマンスペクトルと一致した。
【実施例16】
【0239】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形I型の調製
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型結晶(173.4mg)を、ヘプタン/tBME比95:5(体積/体積)のヘプタンおよびtBME溶媒(1ml)に懸濁した。得られた溶液を9日間攪拌した。固体を濾別し、ヘプタン(1ml)で洗浄した。これらのステップはすべて周囲温度で行った。5日目および9日間最後の結晶のFT−ラマンスペクトルは、実施例12の結晶のFT−ラマンスペクトルと一致した。
【実施例17】
【0240】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのエタノールS1結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(150mg)をエタノール(1ml)に溶解した。濾過した後、エタノールを周囲温度で蒸発させた。固体が形成し、これを再びエタノール(1ml)に溶解した。濾過した後、エタノールを周囲温度で蒸発させた。得られた結晶のPXRDおよびFT−ラマンスペクトルは、実施例6の結晶生成物の対応するスペクトルと一致した。
【実施例18】
【0241】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのジエチルケトンS1結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(206.6mg)をジエチルケトン(0.5ml)に溶解し、一晩静置した。翌朝、濾過を用いて結晶を得た。得られた結晶のPXRDスペクトルは、実施例6の結晶生成物のPXRDスペクトルと一致した。
【実施例19】
【0242】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのtBMES2結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(304mg)をtert−ブチルメチルエーテル(0.5ml)に溶解した。一晩で容器の底部に大きな結晶が形成した。スクラッチすると、15分以内で溶液容量全体を結晶が占めた。追加のtert−ブチルメチルエーテル(1ml)を添加した。その後、結晶を濾別し、周囲温度で乾燥した。
【0243】
S2溶媒和結晶を形成するためにこの手順を首尾よく繰り返したが、追加量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型をtert−ブチルメチルエーテルに溶解し、第1のバッチのS2溶媒和結晶の種を導入し、tert−ブチルメチルエーテルを除去することによって、S2溶媒和結晶の追加のバッチを形成した。1つの実験において、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(245.7mg)をtert−ブチルメチルエーテル(0.5ml)に溶解し、溶媒の一部を周囲温度でゆっくりと蒸発させることによって、S2結晶溶媒和物を調製した。結晶は形成せず、その後、追加のtert−ブチルメチルエーテルを添加し、次いで第1のバッチのS2溶媒和結晶の種を導入した。その後、溶媒を完全に蒸発させた。これらの結晶のFT−ラマンスペクトルは、第1のバッチの結晶のFT−ラマンスペクトルとほぼ一致した。さらなる試験において、結晶を周囲温度で20時間真空乾燥し、次いで約70℃で24時間、再び真空下で乾燥した。各乾燥ステップ後の結晶のFT−ラマンスペクトルは、第1のバッチのFT−ラマンスペクトルと一致した。
【実施例20】
【0244】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのテトラヒドロフランS3結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(150mg)をテトラヒドロフラン(1.0ml)に溶解した。得られた混合物を濾過し、その後、溶媒を周囲温度で蒸発させた。比較的に大部分の溶媒が蒸発した後、結晶化が起こった。
【実施例21】
【0245】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸メチルS4結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(204.0mg)を酢酸メチル(0.5ml)に溶解した。溶解中に再結晶が開始した。15分後、全容量を針状物が占めた。この固体を濾別した。最終結晶はプリズム形状であった。
【実施例22】
【0246】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのギ酸エチルS4結晶溶媒和物の調製
実施例4に従って調製した20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形II型(208.3mg)をギ酸エチル(0.5ml)に溶解した。フラスコを数分間開放すると、材料がゆっくりと結晶化して、大きな針状物が形成した。この固体を濾別した。最終結晶はプリズム形状であった。得られた結晶のPXRDスペクトルは、実施例21の結晶生成物のPXRDスペクトルと一致した。
【実施例23】
【0247】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの多形IV型の調製
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの溶媒湿潤酢酸エチルS1結晶溶媒和物(3.4g、乾燥生成物2.0gに相当)をヘプタン27.7g(溶媒14gと生成物1gの比に相当する。)と混合した。混合物を73から95℃で蒸留して、溶媒(酢酸エチルとヘプタンを合わせたもの)8.4gを除去し、これにより生成物の溶解も起こった。この溶液を2時間以内に45℃に冷却し、これにより45℃でいくらかの粘着性固体の沈澱が生じた。溶液を60℃に加熱し、種結晶を添加した(これらの種結晶は前に粗製20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(0.9g)をヘプタン(4.5g)と混合し、混合物を80℃で8時間攪拌し、混合物を23℃で21時間攪拌し、得られた結晶を濾別することによって調製した)。溶液を45℃に冷却すると、いくらかの固体が形成した。混合物を80℃に加熱し、その後、8時間攪拌しながら、この温度に保持した。その後、混合物を22℃に冷却し、生成物が反応フラスコの壁に形成した。この生成物を分離した。
【0248】
本明細書(請求の範囲を含む。)において語「含む(comprise、comprises、およびcomprising)」は、排他的ではなく包含的に解釈されるものである。この解釈はこれらの語が米国特許法に示されている解釈と同じであることが意図される。
【0249】
用語「医薬的に許容される」は、修飾された名詞が医薬製品で用いられるのに適していることを意味するために本明細書において形容詞的に用いられる。例えば、賦形剤または塩を説明するために用いられるとき、この賦形剤または塩が意図されるレシピエント動物に対して有する可能性のある任意の有害な影響に勝る利点を有するものと賦形剤または塩はみなされる。
【0250】
本明細書によって別段の記載のないかぎり、用語「周囲温度」は約20から約25℃の温度を意味する。
【0251】
本明細書において20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドに適用される用語「非晶質」は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド分子が無秩序な配置で存在し、識別可能な結晶格子または単位セルを形成しない固体状態を指す。粉末X線回折に供したとき、非晶質20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドはどのような特徴的な結晶性ピークも生じない。
【0252】
本明細書において20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドに適用される用語「結晶形態」は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド分子が(i)識別可能な単位セルを含み、(ii)粉末X線照射に供したとき回折ピークを生じる識別可能な結晶格子を形成するように配置されている固体状形態を指す。
【0253】
用語「結晶化」は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド調製の出発材料に関して適用可能な状況に応じて、結晶化および/または再結晶化を指すことができる。
【0254】
用語「直接結晶化」は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの中間体溶媒和結晶固体状形態の形成および脱溶媒和を伴わない、適切な溶媒からの直接的な20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの結晶化を指す。
【0255】
用語「粒度」は、レーザ光散乱、沈降フィールドフロー分別、光子相関分光法、またはディスク遠心などの当分野でよく知られている通常の粒度測定技法によって測定された粒度を指す。粒度を測定するために用いることのできる技法の非限定的な例は、Sympatec Particle Size Analyzerを利用する液分散技法である。
【0256】
用語「HPLC」は、高圧液体クロマトグラフィを意味する。
【0257】
本明細書によって別段の記述のないかぎり、用語「純度」は、通常のHPLC分析による20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの化学純度を意味する。
【0258】
本明細書で用いられる用語「相純度」は、本明細書に記載した粉末X線回折分析法によって求められる、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの特定の結晶または非晶質形態に関する20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの固体状態純度を意味する。用語「純粋相」は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの他の固体状形態に関する純度を指し、他の化合物に関する高度の化学純度を必ずしも意味しない。用語「実質的に純粋相」は、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの他の固体状形態に関して少なくとも約90%の純度(例えば、少なくとも約95%の純度)を指す。
【0259】
本明細書に言及される参照文献はすべて参照により本明細書の一部とする。
【0260】
好ましい実施形態の上記の詳細な説明は、特定の使用の要件にもっとも適するように、当業者が本発明を多数の形態で適合および適用できるように、本発明、この原理、およびこの実際の適用を当業者に伝えることのみを意図するものである。従って、本発明は上記の実施形態に限定されず、様々に変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴の少なくとも1つを有する結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド形態:
約2935、約1633、約1596、約1712、約1683、および約781cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
5.0(±0.2)および5.6(±0.2)度2θからなる群から選択された少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折スペクトル;
約2932、約1711、約1682、約1635、約1599、約1442、約1404、約1182、約1079、約1053、約1008、約985、約842、および約783cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;または
約192から約195℃の融点。
【請求項2】
以下の特徴の少なくとも1つを有する結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド形態:
約2929、約1625、約1595、約1685、および783cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
6.5(±0.2)度2θのピークを含む粉末X線回折スペクトル;または
約2935、約1736、約1668、約1587、約1451、約1165、約1080、約1057、約1042、約1005、約981、約838、および約755cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル。
【請求項3】
以下の特徴の少なくとも1つを有する結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド形態:
約2943、約2917、約1627、約1590、約1733、約1669、約1193、約1094、および約981cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含むFT−ラマンスペクトル;
5.6(±0.2)および6.1(±0.2)度2θからなる群から選択された少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折スペクトル;または
約2931、約1732、約1667、約1590、約1453、約1165、約1081、約1057、約1046、約1005、約981、約834、および約756cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル。
【請求項4】
以下の特徴の少なくとも1つを有する結晶20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド形態:
約3559、約2933、約1743、約1668、約1584、約1448、約1165、約1075、約1060、約1045、約1010、約985、約839、および約757cm−1からなる群から選択された1つ以上の波数の吸収帯を含む減衰全反射赤外スペクトル;または
約149から約155℃の融点。
【請求項5】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの溶媒和結晶形態。
【請求項6】
溶媒和結晶形態が、以下の少なくとも1つを含む、請求項5に記載の溶媒和結晶形態:
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸エチル溶媒和結晶形態;
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのエタノール溶媒和結晶形態;
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのジエチルケトン溶媒和結晶形態;
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのtert−ブチルメチルエーテル溶媒和結晶形態;
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのテトラヒドロフラン溶媒和結晶形態;
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの酢酸メチル溶媒和結晶形態;または
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドのギ酸エチル溶媒和結晶形態。
【請求項7】
組成物中の少なくとも検出可能量の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドが、請求項1、2、3、4、および6のいずれか一項に記載の結晶形態からなる、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物。
【請求項8】
組成物中の少なくとも50%の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドが、請求項1、2、3、4、および6のいずれか一項に記載の結晶形態からなる、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物。
【請求項9】
組成物中の20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドが、請求項1、2、3、4、および6のいずれか一項に記載の結晶形態として実質的に純粋相である、20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを含む組成物。
【請求項10】
動物において疾患を治療する薬剤を調製するための、治療有効量の請求項7に記載の組成物の使用。
【請求項11】
疾患が、パスツレラ症、ウシ呼吸器疾患、およびブタ呼吸器疾患からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ウシ呼吸器疾患が、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、およびヒストフィルス・ソムニ(Histophilus somni)の少なくとも1つに関連し、
ブタ呼吸器疾患が、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、およびボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)の少なくとも1つに関連する、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
医薬組成物が、少なくとも1種の賦形剤を請求項7に記載の組成物と合わせることを含む方法によって調製される、医薬組成物。
【請求項14】
医薬組成物が、少なくとも1種の賦形剤に治療有効量の請求項7に記載の組成物を溶解することを含む方法によって形成された溶液を含む、医薬組成物。
【請求項15】
医薬組成物が、少なくとも1種の賦形剤に治療有効量の請求項7に記載の組成物を懸濁することを含む方法によって形成された懸濁液を含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公表番号】特表2010−534635(P2010−534635A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517412(P2010−517412)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059775
【国際公開番号】WO2009/013351
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【出願人】(000173913)財団法人微生物化学研究会 (29)
【Fターム(参考)】