説明

マクロライド

本発明は、新規なクラスの抗生物質に関し、より詳細にはオキサゾリジノン構造を有するマクロライド、マクロライドの製造方法、マクロライドを含む組成物、マクロライドの使用方法、およびマクロライドを使用した治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なクラスの抗生物質に関し、より詳細にはオキサゾリジノン構造を有するマクロライド、マクロライドの製造方法、マクロライドを含む組成物、マクロライドの使用方法、およびマクロライドを使用した治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能な抗菌剤に対する細菌の耐性の発現は、増大している世界的な健康上の問題である。従って広範囲な研究が、新しい作用機序を有する新規なクラスの抗菌剤を発見するために行われている。そのような抗菌剤は既存の抗菌薬との交差耐性性を欠くものと思われる。
【0003】
細菌中のマクロライド結合部位は、ペプチジル転移酵素部位の近くの蛋白質出口トンネルの内部の50Sリボソームのサブユニットに位置することを示された。一旦ペプチド鎖が一定の長さに達すると、マクロライドは同マクロライド結合部位においてタンパク質生産のための成長中の鎖に対する分子ブロックを構築する1
【0004】
リンコサミドやストレプトグラミンBのような他の構造上無関係な抗生物質も、上記のマクロライド結合部位でその作用を発揮する。この共通の結合部位で細菌が変異すると、MLSB耐性と呼ばれる3つの抗生物質のすべてに対する組み合わされた耐性が生じる2
【0005】
マクロライド抗生物質は、特許文献1〜5等のいくつかの特許文献に開示されている。特許文献6〜12は、N11位の原子がアラルキルまたはヘテロアリールアルキル等で置換された11,12オキサゾリジノン基を有するエリスロマイシン誘導体に関する。これらの特許文献の教示は、N11とフェニル基との間には4−6個の炭素原子を有する脂肪族リンカーがあるはずであるということである(特許文献13の表Iおよび特許文献12の実施例39を参照)。
【0006】
特許文献7〜12はオキサゾリジノン構造を有するマクロライドを開示している。しかしながら、これらの特許文献のいずれも、置換フェニル環がオキサゾリジノン構造の窒素原子に直接結合されたマクロライドを開示しておらず、フェニル環が少なくとも1つの窒素原子を含む飽和環に直接結合されたマクロライドも開示していない。
【特許文献1】米国特許第6590083号
【特許文献2】欧州特許出願公開第248279号
【特許文献3】米国特許第5635485号
【特許文献4】特許協力条約国際公開第WO 9809978号
【特許文献5】特許協力条約国際公開第WO 9854197号
【特許文献6】フランス国出願公開第2692579号
【特許文献7】欧州特許出願公開第487411号
【特許文献8】欧州特許出願公開第 680967号
【特許文献9】欧州特許出願公開第606024号
【特許文献10】欧州特許第596802号
【特許文献11】米国特許第5527780号
【特許文献12】米国特許第6399582号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は抗菌活性を有する新規なマクロライドを提供することにある。この目的
は請求項に記載の発明のマクロライドにより叶えられる。さらに驚くべきことには、N−11とパラ置換フェニル環との間の脂肪族リンカーは必要でないことが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
最も広い範囲では、本発明は、11−アミノと12−オキシ基が共通のカルボニル基により結合してN−11位が置換4−アミノフェニル環によりアリール化された環状オキサゾリジン−2−オンを形成する11−デオキシ−11−アミノマクロライド(無形体または多形体の両方を含む)と、その医薬として許容される塩、プロドラッグ、および溶媒和物に関する。好ましくは、フェニル基は式Iに示されるような構造を有し、より好ましくはベンゼン環のパラ位がモルホリノ、チオモルホリノまたはピペラジノ置換基等の任意に置換されたアミノ基を有する。ピペラジノ置換基はさらに第2の窒素原子において置換されてもよい。ベンゼン環中のパラ位置は、アシル化されたインドール系の一部としてアミノ基を有してもよいし、またはベンゼン環中のパラ位置は低級アルカノイル系の一部として、または、ベンゼン環中のオルト位に結合された環状ペンタノイル又はヘキサノイル系の一部としてアシル置換基を有してもよい。ベンゼン環は、フッ素または塩素原子もしくはメトキシ基のいずれかによりさらに置換されてもよい。2′−オキシおよび3′−N−脱メチルアミノ基が共通のカルボニル基により相互に連結され、オキサゾリジン−2−オン誘導体を形成できるか、または3′−脱メチルアミノ基は水素原子またはメチル基を含む追加のC1−6アルキルを有し、2′−オキシ基は水素またはC1−6アルカノイル基を有する。式Iの2位のZ−置換基が水素、フッ素または塩素により表わされることが現時点で好ましい。
【0009】
本発明の化合物は、それ自体周知の方法すなわち上記特許文献に開示されている方法で製造することができる。上記特許文献は引用により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1実施形態では、本発明は、式I((無形体または多形体の両方を含む)のマクロライド、および同マクロライドの医薬として許容される塩、プロドラッグならびに溶媒和物に関する。
【0011】
【化1】

式中、
XとYは独立して水素、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、COOR13(R13は任意に置換された脂肪族基を表わす)、ハロゲン、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、またはニトロであり、ベンゼン環はさらに2位または6位の少なくとも一方で任意に置換され;
Zは水素またはハロゲンを表し;
Rは、(i)モルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジノまたはピペラジノであり、前記環は、環のC原子および環のN原子の少なくとも一方の上で任意に置換され(例えば水素
、アルキル、アルコキシ、−CO2−アルキル、−CO2−アルキル−OH、−CO−アルカンジイル−OH、−アルカンジイル−O−アルキル、−アルカンジイル−ハロゲン、−アルケニル−O−アルキル、−アルケニルハロゲン(前記基のいずれも任意に置換される)により置換される);
(ii)任意に置換されたアルカノイル;
(iii)−N(R8)R9、R8およびR9は独立して水素または任意に置換されたアルキルを表わすかまたはR8およびR9は共に任意に置換された−アルカンジイル−R11−アルカンジイル−基を表し、R11はCH2、S、O、SO、SO2、SNR12、S(O)NR12またはNR12を表し、R12は水素または任意に置換されたアルキル(例えばハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換される)、もしくはp−トルエンスルホニル;または
(iv)−N(R8)R9、R8およびR9は独立して水素または任意に置換されたアルキルを表わすかまたはR8およびR9は共に任意に置換されるアルケニル−R11−アルケニル−を表わし、R11はCH2、S、O、SO、SO2、SNR12、S(O)NR12またはNR12を表わし、R12は水素または任意に置換されたアルキル(例えばハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換される)、もしくはp−トルエンスフホニル;を表し、
Rは、隣接するXと共に、
(i)任意に置換された−CO−アルカンジイル−;
(ii)任意に置換された−NR5−アルカンジイル−、R5は任意に置換されたアルカノイルを表す;
(iii)任意に置換された−CO−アルケニル−;または
(iv)任意に置換された−NR5−アルケニル−、R5は任意に置換されたアルカノイルを表す;を表し、
6は水素または任意に置換されたアルキルを表す;R7は水素、ヒドロキシ保護基、または任意に置換されたアルカノイルを表すか;または、R6およびR7は共に−CO−を表す。
【0012】
本発明は以下の構造を有する請求項1に記載のマクロライド、医薬として許容されるその塩、プロドラッグ、および溶媒和物に関する。すなわち
XとYは独立して水素、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、COOR13(R13は任意に置換された脂肪族基を表わす)、ハロゲン、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、またはニトロであり、ベンゼン環はさらに2位または6位の少なくとも一方で任意に置換され;
Zは水素またはハロゲンを表し;
Rは、(i)モルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジノまたはピペラジノであり、前記環は、環のC原子および環のN原子の少なくとも一方の上で任意に置換され(例えば水素、アルキル、アルコキシ、−CO2−アルキル、−CO2−アルキル−OH、−アルケニル−O−アルキル、−アルケニルハロゲン(前記基のいずれも任意に置換される)により置換される);
(ii)任意に置換されたアルカノイル;もしくは
(iii)−N(R8)R9、R8およびR9は独立して水素または任意に置換されたアルキルを表わすかまたはR8およびR9は共に任意に置換された−アルケニル−R11−アルケニル−基を表し、R11はCH2、S、O、SO、SO2、SNR12、S(O)NR12またはNR12を表し、R12は水素または任意に置換されたアルキル(例えばハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換される)、もしくはp−トルエンスルホニル;であるか、または
Rは、隣接するXと共に、
(i)任意に置換された−CO−アルカンジイル−;もしくは
(ii)任意に置換された−NR5−アルカンジイル−、R5は任意に置換されたアルカノ
イルを表す;であり、
6は水素または任意に置換されたアルキルを表す;R7は水素、ヒドロキシ保護基、または任意に置換されたアルカノイルを表すか;または、R6およびR7は共に−CO−を表す。
【0013】
好ましいマクロライドは以下の構造を有する。
XとYは独立して水素、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、COOR13(R13はC1−6アルキルを表わす)、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはニトロを表す;
Zは水素またはハロゲンを表し;
Rは:(i)モルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジノまたはピペラジノ(任意にハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、−CO2−C1−6アルキル、−CO−
1−6アルカンジイル−OH、−C1−6アルカンジイル−O−C1−6アルキル、−C1−6アルカンジイル−ハロゲンで置換され);もしくは
(ii)任意にヒドロキシで置換されたC1−6アルカノイル;もしくは
(iii)−N(R8)R9、R8およびR9は独立して水素またはC1−6アルキルを表わすか;またはR8およびR9は共にC1−6アルカンジイル−R11−C1−6アルカンジイル−基を表わし、R11はCH2、S、O、SO、SO2、SNR12、S(O)NR12またはNR12を表し、R12は水素またはC1−6アルキル(例えばハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、またはジ−C1−6アルキルアミノで任意に置換)、もしくはp−トルエンスフホニル;であるか、または
Rは、隣接するXと共に、
(i)−CO−C1−6−アルカンジイル−;もしくは
(ii)−NR5−C1−6−アルカンジイル−、R5はC1−6アルカノイルを表す;を表し、
6は水素またはC1−6アルキルを表す;R7は水素、ヒドロキシ保護基またはC1−6アルカノイルを表わすか;または、R6およびR7は共に−CO−を表わす。
【0014】
本発明の代表的なマクロライドは式Iのマクロライドであり、
XとYは独立して水素、ハロゲンまたはMeOである。ハロゲン原子は好ましくはフッ素である。
【0015】
Zは水素、フッ素または塩素である。
R置換基は以下の選択肢により定義される。
(i)モルホリノ、チオモルホリノまたはN4位でR4により置換されたピペラジノ。
【0016】
このようなヘテロ環部分はR2およびR3=H、F、Cl、OMeにより独立して定義される置換基R2およびR3をさらに有する。
前記ピペラジノユニットのN4位の置換基はR4=H、CO2Me、COCH2OH、C
2CH2OMe、CH2CH2Fにより定義される。
【0017】
(ii)少なくとも1つのヒドロキシル基により置換された低級アルカノイル基。
(iii)RとXがR−X=−CO(CH2−(n=2,3)により相互連結可能な
隣り合う置換基である場合、この請求項の構造はインダノン誘導体およびテトラノン誘導体である。
(iv)RとXがR−X=−NR5CH2CH2−(R5は少なくとも1つのヒドロキシ、好ましくは−COCH2OHにより置換された低級アルカノイルを表わす場合、この請求項
の構造はインドリン誘導体である。
【0018】
マクロライドのデソサミン糖部分の置換基は、
6=Hまたは低級アルキル、好ましくはメチル基。
7=Hまたは低級アルカノイル、好ましくはH。
【0019】
6およびR7は共にR6およびR7=−CO−により定義される。
この請求項の構造は環状オキサゾリジノン誘導体である。
本発明はさらに、本発明のマクロライドの製造方法と、そのような方法に使用可能な新規な中間体に関する。本発明のマクロライドの製造方法または中間体は、明細書および図面に開示されており、開示された反応物、反応の詳細、ならびに代替の反応物および/または代替の反応の詳細と共に、すべての本発明の実施形態とみなされるべきである。
【0020】
1実施形態では、本発明は、11−アミノ基と12−オキシ基が共通のカルボニル基により結合してN11位が置換フェニル環によりアリール化された環状オキサゾリジン−2−オンを形成する、11−デオキシ−11−アミノマクロライド、その医薬として許容される塩、プロドラッグおよび溶媒和物のうちの少なくとも一つの製造方法であって、11−デオキシ−11−アミノマクロライドをフェニル環が任意に置換されたイソシアン酸フェニルと反応させることを含む方法に関する。好ましいのは、CuClおよびNaHの少なくとも一つが試薬として使用されるか、イソシアン酸フェニル中のフェニル環がハロゲン原子等の電子求引性置換基を有するかの少なくとも一方である。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、以下の式Iの化合物、その医薬として許容される塩、プロドラッグ、多形体および/または溶媒和物の製造方法に関する。
【0022】
【化2】

式中、置換基は上述と同じ意味を有する。
【0023】
方法は、
11−デオキシ−マクロライド(式Iに対応する化合物であるが、C10とC11の間に二重結合があり、11位置の置換基がHであり、12位の置換機がOHおよびメチルである)を3−Y、4−R、5−Xイソシアン酸フェニル(Y、RおよびXは上記に定義した通り)と反応させる(図3に図示);または
11−デオキシ−マクロライド(式Iに対応する化合物であるが、C10とC11の間に二重結合があり、11位置の置換基がHであり、12位の置換機がOHおよびメチルである)をCDIおよび3−Y、4−R、5−Xアニリン(Y、RおよびXは上記に定義した通り)と反応させる(図2に図示);または
11−アミノ−11−デオキシ−11,12ウレタンマクロライド(式Iに対応する化合物であるが、オキサゾリジノン環のN原子が非置換である)を3−Y、4−R、5−Xハロゲン化フェニル(Y、RおよびXは上記に定義した通り)と反応させる(図1に図示);こと、
式Iのマクロライドの保護誘導体(例えばR7が保護基である式Iのマクロライド)化
合物を脱保護すること、
式Iのマクロライドを式Iの別のマクロライドに変換すること、
式Iのマクロライドを医薬として許容される酸または塩基と反応させること、および
式Iのマクロライドを適切な溶媒中で結晶させること、
の少なくともいずれかを含む方法。
【0024】
フェニル環がハロゲン原子等の電子求引性置換基を有する場合、イソシアン酸塩の反応は非常に促進される。
本発明の方法は、以下のスキームでさらに開示される:特段他に定義がない限り、任意の置換基は上記と同じ意味を有する。
【0025】
スキーム2−8では、環状11,12−ウレタン目標化合物(19〜の合成が示される。構造類似体は相応して製造される。最初の基質は、構造5のデソサミン糖への脱メチル化およびオキサゾリジノン環化を達成するようにホスゲンと反応させられたクラリスロマイシン(4)であった。エリスロマイシン誘導体のジメチルアミノ基が酸塩化物と反応するであろうことは以前に確認されていた。エリスロマイシン生成物はメチル基の損失後の対応するNメチルカルバモイル誘導体である。クロロホルムがより一般に使用される。初期の例は、エリスロマイシンAとクロロギ酸ベンジルの反応により提供されるが、これは対応するN−ベンジルオキシカルボニルN−脱メチル誘導体を高収率で生成した7。本願
発明者は、ホスゲンが環状生成物すなわちオキサゾリジノン誘導体を提供すると考えた。非保護クラリスロマイシン(4)中のケトンのカルボニル基は、スキーム2で示されるようなホスゲンカルボニル化反応に関与しなかった。ホスゲンによる処理で、ヒドロキシル基はC−11およびC−12で環状カーボネートヒドロキシに閉鎖した。反応速度および温度を増加させることにより、C−2′ヒドロキシ基および3′−ジメチルアミノ基が反応し、環状2′,3′−ウレタンをデソサミン糖の形で提供した。したがって、デソサミン糖のジメチルアミノ−アルコール部分はN−脱メチル化を受けて、2′、3′−カルバメート(5)へと環化された。この手順により、本願発明者はエリスロマイシンA誘導体の新たな未発掘の構成要素の形成によるカルボニル化反応を見出した。2′,3′−ウレタン要素の、抗菌活性に対するその影響は、以前は研究されていなかった。しかしながら、文献によると、特定のエリスロマイシン誘導体におけるC−2におけるエピマー化のNMR研究の副反応から、2′,3′−ウレタン要素が化学構造として期せずして得られた8。利用可能な別の例は、2′,3′−ウレタンがマクロラクトン化の間の2′−ヒドロ
キシル基および3′−ジメチルアミノ基の保護のために使用されるエリスロマイシン抗生剤を完全に合成する試みについて記述している9
【0026】
デソサミン糖は、抗菌活性にとって不可欠であると考えられていた。非環式2′−カルバメートは低い抗菌活性を有することが分かった10。環状2′,3′−カルバメートに対する言及はなく、抗菌活性も報告されていない。
【0027】
第2の工程でアリルアルコールが最初に形成された塩化カルボニルに加えられると、クラジノース糖のC−4″に炭酸アリルユニットが形成された。最初の生成物(5)中のC−4″炭酸アリルの除去は、触媒系として酢酸パラジウムおよびトリフェニルフォスフィンならびに還元剤としてギ酸トリエチルアンモニウムのエタノール水溶液中で還流により処理することにより、93%の収率で達成され得る。脱アリル化生成物は93%の収率で得られた。求核性アミンがない状態で触媒としてPd(dba)2およびdppbを使用
する修正プロトコルでは、収率が74%まで低下した。
【0028】
【化3】

スキーム3にケトリド8の3工程から成る合成が示される。最初に、クラジノース糖を除去した。クラジノース除去のための一般に使用される手順には、塩酸水溶液または水−アルコール混合物溶液を伴う。そのような溶媒系では基質5の溶解度が低いために、条件はトリフルオロ酢酸のDMSO:水(9:1)混合溶液の使用に修正され、3−アルコール(7)が63%の収率で提供された。アルコール(7)の目標ケトリド(8)への続く酸化は、Corey−Kimの酸化プロトコルにより高収率で行われた2,11。Pfitzner−Moffat酸化の修正版と共に、Corey−Kim手順はエリスロマイシンA誘導体のC−3位でのヒドロキシ基の酸化の最もよく用いられる方法を構成する12
【0029】
【化4】

代わりに、反応の順序は変更してもよい。クラジノース糖を最初に除去してから、その
後、カルボニル化と酸化を続けてもよい。そのストラテジーがスキーム4に示される。デスクラジノシルクラリスロマイシン(9)はクラジノース糖の加水分解除去により利用可能となった13。クエンチ剤としてアリルアルコールを用いて化合物9をホスゲンカルボニル化させると、C−3炭酸アリル(10)が形成される。クラジノース糖をインタクトに備えた完全な対応するマクロライド基質(4)よりも、反応はより遅くクリーンではなかった。化合物の収率は41%に減少した。この挙動は、クラジノース糖中のC−4″のヒドロキシル基と比較して、化合物(9)のC−3ヒドロキシル基へのアクセスがより低いにことより説明される。したがって、C−3 クロロホルム中間体の構成はより遅い。
【0030】
基質(10)は、炭酸アリルのPd触媒除去で通常使用される溶媒にはほとんど不溶であった。Genetら14により報告されたプロトコルから始まって、条件は基質(10)に適合するように修正された。元の条件は触媒系としてPd(dba)2とdppeまた
はdppbとを含んでいる。ジエチルアミンが求核分子として使用された。反応は周囲温度でTHF溶液にて行なわれた。溶媒をDMSO:THF(1:1)に変更し、温度を70℃に増加させることにより、化合物(10)の溶解が起こった。その後、Pd(dba)2/dppbおよびジエチルアミンを加えらると、炭酸アリルの除去が滑らかに進行し
た。その後、ジエチルアミンがない状態でも反応が同様によく進行することが判明した。
【0031】
【化5】

カルボニル化種5への求核分子の追加はスキーム5で示されるように合成上有用な反応である。アジ化ナトリウムまたはリチウムプロパンチオラートを使用して、環状カーボネートを4″−炭酸アリル部分と同様に除去した。二重結合は10,11−位置に同時に導入された。二重結合はケトンのカルボニル基と共役する。ウレタン部分は反応させずそのままにした。対照的に、非循式カルバメート保護基はリチウムプロパンチオラートにより除去される15。アジ化ナトリウムとの反応は高い温度の使用を必要とし、プロパンチオラ
ートリチウム反応は周囲温度で進行しだ。一般に、エリスロマイシンマクロライド中の10,11−二重結合は、11,12−カーボネート16または11−メシレート13の塩基(DBU)媒介による除去により導入される。
【0032】
【化6】

3−ヒドロキシ誘導体(12)が66%の収率で形成されると、クラジノースの加水分解による除去が穏和な条件すなわち70℃の酢酸水溶液の使用により達成された。穏和な酸条件は、より強い酸性条件下で起こるラクトン環に関する再配置プロセスを回避するために使用される。アルコール(12)がDess−Martinペルヨージンナン(perodinane)条件を受けると、目標のケトラクトン(13)は94%の収率で得られた17。これらの条件はケトン形成に一般に非常に優れている。生成物(13)はアルカリ抽出後にほぼ純粋な形で得られた。
【0033】
11,12−カルバメート構造の導入のためのスキーム6で示されるようなよく使用されている2つの方法のうちの1つにおいて、1,1′−カルボニルジイミダゾール(CDI)はマクロライド中の12−OH基と反応し、O−アシルイミダゾール中間体(14)
を形成し、これは続いて第1級アミンによる処理を受ける。最初のカルバメートは続いてMichael方法でC−C二重結合上にアミド窒素を追加することにより環化され、オキサゾリジノン生成物(16)を形成する。代わりに、N−非置換の環状11,12−ウレタン(15)を生産するためにはアンモニアが使用される。ウレタン(15)は、塩基条件下のアルキル化反応または金属触媒されたクロスカップリング反応により、目標化合物(16)を供給するように置換され得る。クラリスロマイシンのC−10およびC−11における絶対配置は、10,11−二重結合がマクロライドに導入された時に失われる。続く分子内Michael追加により、C−10およびC−11の2つの立体中心に対する立体化学的結果が決定される。マクロライド環のコンホメーションの制限により、C−12置換機と同じ側からC−11にカルバメートが攻撃することとなり、天然の(11R)形状が生じる。続いて、C−10における立体化学的結果は中間体のエノラートのプ
ロトン化により決定される。混合物は、天然(10R)−構成が支配的な状態で得られ得る16。嵩高い(bulky)アミンが導入される場合には、天然(10R)−異性体がただ一
つの生成物として分離される。反対の(10S)−構成は、11,12−カルバメートを事実上生物学的不活性にする13
【0034】
【化7】

第2のアプローチでは、C−12アルコールがイソシアン酸塩と反応させられ、先の場合で説明したのと同じカルバメート中間体が得られる。後の環閉鎖反応によりオキサゾリジノン構造が与えられる。この研究における後者のアプローチのための試薬は、4−ブロモフェニルイソシアネート、水素化ナトリウムおよび塩化銅(I)であった。4−ブロモフェニルカルバメート(17)は62%の収率で得られた。TLCは約2時間後に完全に変換されることを示したが、NMRスペクトルは立体異性体生成物の混合物を示した。より長時間撹拌すると、単一の立体異性体が提供された。塩化銅(I)の役割は、第1の反応工程を促進するためのイソシアン酸塩との複合体を形成することである。生成物中の臭素は、カルビル化のようなクロスカップリング反応およびアミノ基により例証されたヘテロ置換基の導入によるさらなるフェニル置換基に対する多用途の基質を有するために導入される。Pd触媒反応により達成されるハロゲン化アリールのアミノ化のための最近公表された手順について文献を参照する18-21。後者の基のメンバーは、反応物として対応す
るイソシアン酸アミノを直接使用して製造することもできる。その例がスキーム7のアミノ誘導体(18)の製造により与えられる。
【0035】
【化8】

代替アプローチでは、ベンゼンの4位のアミノ窒素は、高酸化状態の窒素と、その後のアミノ基への還元によって導入することができる。この概念は、基質(13)との反応にp−ニトロフェニルイソシアネートを使用してR12=NO2である環状生成物(18)
をもたらすことにより示される。マクロライド構造はイソシアン酸塩経路により製造することができる。スキーム8の目標化合物(19)はエノン(13)を3−フルオロ−4−モルホリノフェニルイソシアネートと結合されることにより利用可能であった。C−10およびC−11における立体化学は、2つの位置のプロトン間でカップリングが観察されないため、天然生成物におけるのと同様であった。H−11は1H NMRスペクトルに
シングレットとして現われた。文献によれば、マクロライド中のC−10およびC−11における天然の配置ではカップリング定数JH10,H11が0に近いことがわかっている15
【0036】
従って、生成物(19)には天然のマクロライド配置が与えられた。イソシアネート側鎖はリネゾリド合成について報告されているように22,23別個のよく確立された反応順序
で調製される。基質(13)へのイソシアネート側鎖のさらなる挿入反応により、目標化合物(19)が56%の収率で得られた。
【0037】
【化9】

次の研究は、デソサミン中のアミノ窒素が1または2つのアルキルによって置換されたグループのメンバーとしての、スキーム9の化合物の製造方法を例証する。プロセス全体に適した基質はスキーム9のケトリド(20)である。第1の反応工程には、NaOAc等の塩基の存在下でのヨウ素分子とエリスロマイシンおよびその誘導体との光分解または熱による脱メチル化反応24との類似の反応による、基質20の脱メチルアミノ基のモノ脱メチル化が関与する。N−ヨードスクシンイミド(NIS)による選択的なモノ脱メチル化は、優れた方法として権利請求される25
【0038】
【化10】

代わりに、クロロギ酸エステルがより一般に使用される。その場合の最初の生成物は、モノ脱メチル化された基質であるウレタンである。クロロギ酸ベンジルを用いると、水素化分解時のN−ベンジルオキシカルボニル N−脱メチル生成物は、遊離アミンを放出する7。1−クロロエチルクロロギ酸エステルはN−脱メチル化の好ましい試薬である。最
初の生成物はN−脱メチル N−1−クロロエチルカルバメートであり、これはメタノール中でメタノール分解を受けて、塩酸アミンを提供する26。このメチルアミン誘導体は、
続いて、適切なアルデヒドからの還元的アルキル化手順によるかまたは単純な直接的N−アルキル化により、アルキル化され、非対称のジアルキルアミン(22)を提供する。環状の炭酸塩部分は、塩基条件下で好ましくはDBUにより開裂され、共役エノン(23)を提供する。カルボニルジイミダゾールを用いると、最初の生成物は、12−O−アシルイミダゾリド(24)であり、これは第一級アミンと反応して目標化合物(26)を形成する。代わりに、イミダゾリド(24)はアンモニアまたはその等価物と反応して、第二級アミド(25)を形成し、これがアリール基により窒素の位置で置換され、目標分子26を与えてもよい。より直接的な手順では、二工程またはワンポット反応のいずれかで目標分子(26)を形成するように、共役エノン(23)が適切なイソシアン酸塩と反応させられる。2′−保護基は適切な方法を用いて除去することが可能である。
【0039】
【化11】

環状11,12−カルバメート29は2′−O−ベンゾイル保護されたエノン27(文献の手順27,28により調製される)から2工程で調製された。塩化銅(I)とビス(トリ
メチルシリル)アミドナトリウム(NaHMDS)の存在下で基質(27)を3−フルオロ−4−モルホリノフェニルイソシアン酸と反応させると、N−置換された11,12−カルバメート(28)が精製後に17%の収率で得られた。2′−O−ベンゾイル基の除去は、遊離のヒドロキシ基を形成するが、昇温で4日間メタノール中で撹拌することにより遂行された。
【0040】
本発明は、本発明による化合物を、医薬として許容されるキャリアまたは賦形剤と共に含む医薬組成物、ならびに抗菌組成物等の医薬組成物の製造のための本発明による化合物
の使用方法に関する。
【0041】
さらに、本発明は、ヒトを含む哺乳動物等の動物の治療方法であって、本発明の医薬組成物(または化合物)を動物に投与することを含む方法に関する。
定義
化学式に関し、別段定義がされていない場合には、置換基は化学用語についてのIUPAC抄録(IUPAC Compendium of Chenical Terminology)におけるのと同じ意味を有している。置換基の定義がある範囲(例えばC1−C6またはC1−C10)を含む場合、その範
囲はその範囲内にあるすべての整数、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11,12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22等を含むものとする。
【0042】
用語「置換された」は、1または複数の(例えば1、2、3、4、5または6の)水素原子が、以下の基から独立して選択された置換基と置換されることを意味する:ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、カルバモイル、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルキル(パーハロゲンアルキル)、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル(アルキニル、アルケニル)、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアルコキシカルボニル、任意に置換されたアリールオキシカルボニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアルキルチオ、任意に置換された(ヘテロ)アリール、任意に置換された(ヘテロ)アリールオキシまたはアリール基。同じ炭素原子上にある2つの水素原子は、任意に置換されたC1−C6アルキレン、O、NH、S等の二価の置換基と置き換えることができる。
【0043】
用語「ハロゲン」(または「ハロゲン化物」)は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを表わす。
用語「ヘテロ原子」または「ヘテロ」は、O、SまたはN等の原子を含む。
【0044】
用語「アルキル」は、飽和で1〜15個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基を含む。好ましくは、アルキル基は1−10個の炭素原子を有し、最も好ましくは1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する。アルキル基は1または複数のヘテロ原子によって中断されてもよいし、上記に定義したハロゲン、ヒドロキシ、アリール、シクロアルキル、アリールオキシ、またはアルコキシ等の基で置換されてもよい。好ましい直鎖または分岐鎖のアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびt−ブチルが含まれる。用語「アルコキシ」は−O−アルキル基を表わす。
【0045】
用語「シクロアルキル」は、融合されていても孤立していてもよい好ましくは3、4、5、6、または7個の環員を有する1または複数の環を形成するように接続している直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を含む。環は、上記に定義したハロゲン、ヒドロキシ、アリール、アリールオキシ、アルコキシまたはアルキル等の基で置換されてもよい。好ましいシクロアルキル基にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。
【0046】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、鎖が1または複数のヘテロ原子によって任意に中断されてもよい、2〜15個の炭素原子(例えば2、3、4、5、6または10個の炭素原子)を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基を含む。鎖の水素は上記に定義したハロゲン等の基で置換されてもよい。好ましい直線鎖または分岐鎖のアルケニル基にはビニル、アリール、1−ブテニルおよび1−メチルプロペニル、および4−ペンテニルが含まれる。
【0047】
用語「アルキレン」は、例えば−CH(CH3)CH2−プロピレンのように、隣接する
共通ではあるが必須ではない自由原子価を有するアルカンジイル基を表わす。例として、CO−アルカンジイル−OH基は例えばCO(CH2n−OH基(nは1から6の間の整数であり得る)を含む。
【0048】
用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有し、鎖が1または複数のヘテロ原子によって任意に中断されてもよい、2〜15個の炭素原子(例えば2、3、4、5、6または10個の炭素原子)を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基を含む。鎖の水素は上記に定義したハロゲンなどの基で置換されてもよい。好ましい直線鎖または分岐鎖のアルキニル基にはエチニル、プロピニル、1−ブチニルおよび4−ペンチニルが含まれる。
【0049】
用語「シクロアルケニル」は、融合されていても孤立していてもよい好ましくは3、4、5、6、または7個の環員を有する1または複数の非芳香族環を形成するように接続している直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を含む。環は、上記に定義したハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシまたはアルキル等の基で置換されてもよい。好ましいシクロアルケニル基にはシクロペンテニルおよびシクロヘキセニルが含まれる。
【0050】
用語「アリール」は、芳香族である炭素環を指す。環はフェニル基のように孤立していてもよいし、ナフチル基のように融合されていてもよい。環の水素は上記に定義したアルキル、ハロゲン、自由または官能化ヒドロキシ、トリハロメチル等の基で置換されてもよい。好ましいアリール基にはフェニル、3−(トリフルオロメチル)フェニル、3−クロロフェニル、3−フルオロ−4−モルホリノフェニルおよび4−フルオロフェニルが含まれる。
【0051】
用語「ヘテロアリール」は、環に少なくとも1つの(例えば1、2、3、4、または5個の)ヘテロ原子を含む(例えば3、4、5、6、または7個の環員を有する)芳香族炭化水素環を指す。ヘテロアリール環は好ましくは5〜6個の環構成原子を有して孤立してもよいし、好ましくは8、9、または10個の環構成原子を有して融合されてもよい。開いた原子価を有するヘテロアリール環の水素またはヘテロ原子は、上記に定義した例えばアルキルまたはハロゲン等の基により置換されてもよい。ヘテロアリール基の例にはイミダゾール、ピリジン、インドール、キノリン、フラン、チオフェン、ピロール、テトラヒドロキノリン、ジヒドロベンゾフランおよびジヒドロベンズインドールが含まれる。
【0052】
用語「脂肪族基」は、1または複数の官能基で任意に置換される、飽和および不飽和の両方の、直鎖(すなわち分岐がない)、分岐鎖、環式、または多環式の脂肪族炭化水素を含む。「脂肪族基」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルの部分を含むが、それらに限定されるわけではない。アルキルまたは別の脂肪族基は1−6の炭素原子(定めた通りに置換されても置換されなくてもよい)を有することが好ましい。例えば、適切な脂肪族基は、置換または非置換の直鎖、分岐鎖または環式のアルキル、アルケニル、アルキニルおよび(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル等のそれらのハイブリッドを含む。
【0053】
用語「ヘテロ脂肪族基」は炭素原子の代わりに1または複数の酸素、硫黄、窒素、リン原子またはシリコン原子等を含む脂肪族の部分(「脂肪族」という用語は上記に定義した通りである)を指す。ヘテロ脂肪族部分には置換または非置換で、分岐、非分岐、環式、または非環式鎖であり、モルホリノ、ピロリジニル等の飽和および不飽和の複素環式化合物が含まれる。
【0054】
用語「炭素環式の基/環」は、任意に1−2個の二重結合を含み、任意に上記に定義し
た1〜3個の適切な置換基によって置換されてもよい、一環または二環の炭素環式環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等のシクロアルキルまたはシクロアルケニル、ならびにビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニル、およびビシクロ[5.2.1]ノナニル)を含む。
【0055】
用語「複素環式の基/環」は、上記に定義したようなヘテロアリールと、1または複数、好ましくは1〜4個の環の炭素が各々N、OまたはS等のヘテロ原子に置換された5〜14個、好ましくは5〜10個の環員を有する芳香族環の構造とをいずれも含んでいる。複素環の例には、3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、(1−置換)−2−オキソ−ベンズイミダゾール−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル、[1,3]−ジオキサラニル、[1,3]−ジチオラニル、[1,3]−ジオキサニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリニル、3−モルホリニル、4−モルホリニル、2−チオモルホリニル、3−チオモルホリニル 4−チオモルホリニル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、ジアゾロニル、N−置換ジアゾロニル、1−フタルイミジニル、ベンズオキサニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾピペリジニル、ベンズオキソラニル、ベンゾチオラニルおよびベンゾチアニルが含まれる。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「複素環」の範囲には、インドリニル、クロマニル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロキノリニルのように1または複数の芳香族または非芳香族環に非芳香族のヘテロ原子含有環が融合された基も含まれる。接続ラジカルまたは箇所は非芳香族のヘテロ原子含有環の上である。さらに用語「複素環」は、飽和であるか部分的に不飽和であるかを問わず、上記に定義した置換機で任意に置換される環のことも指す。
【0057】
用語「アシル」は、式A−C(=O)−を有するカルボキシル基を有するアシル基を含む。式中Aはアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリールまたはアラルキル基等の上記に定義した置換基を表わし、同基の鎖は1または複数のヘテロ原子により任意に中断されてもよく、同基は例えば上記に定義した1または複数の置換基により任意に置換されてもよい。アシル基の例は、ホルミル、C1−C6アルキル(アルケニル/アルキニル)カルボニル、アリールカルボニル、アリール−C1−C6アルキル(アルケニル/アルキニル)カルボニル、シクロアルキルカルボニルまたはシクロアルキル)−C1−C6アルキル(アルケニル/アルキニル)カルボニル基がある。さらに用語「アシル」は、C(=O)基がC(=S)またはC(N−R)(RはHまたは上記に定義した置換基である)に置換された任意の上記の基も含む。
【0058】
用語「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ基の一時的保護のために使用される任意の基を意味し、例えばアルコキシカルボニル、アシル、アルキルシリル、アルキルアリールシリル(以下単に「シリル」基と呼ぶ)、およびアルコキシアルキル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル保護基は、アルキル−O−−CO−−の基であり、これにはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはアリルオキシカルボニル等の基が含まれる。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチルまたはテトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロピラニル等の基である。好ましいシリル保護基はトリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル−t−ブチルシリル、およ
び類似体のアルキル化シリルラジカルである。
【0059】
「保護されるヒドロキシ」基は、上記に定義したシリル、アルコキシアルキル、アシル、またはアルコキシカルボニル基のようにヒドロキシ基を一時的または永久的に保護するために一般に使用される上記の任意の基によって誘導体化または保護されるヒドロキシである。
【0060】
用語「溶媒和物」は、本発明の化合物の1または複数の分子を、溶媒の1または複数の分子と共に含む凝集体を表わす。溶媒は、例えば、水、エタノール、アセトン、THF、DMAまたはDMFであってよい。本発明の化合物の溶媒和物(例えば水和物)も本発明の範囲内にある。溶媒和の方法は当該技術分野において周知である。
【0061】
本明細書に使用する場合、用語「医薬として許容される塩」は、適切な医学的判断内で、過度な毒性、炎症、アレルギー反応およびその他同等な反応を起こさずにヒトまたはそれより下等な動物の組織と接触させるべく使用するのに適し、合理的な損益比に見合う塩を指す。医薬として許容される塩は、当該技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeら
は、J. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977)で医薬として許容される塩について
詳細に記述している。同文献は引用により本明細書に組み込まれる。塩は、本発明の化合物の最後の単離および精製中にその場で調製することもできるし、適切な自由塩基基を有機酸と反応させることにより別に調製することもできる。医薬として許容される無毒な酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸等の無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸等の有機酸を用いて、もしくはイオン交換等の当該技術分野で使用される別の方法を用いて形成された、アミノ基の塩がある。別の医薬として許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコビル酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、硼酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン塩、ヒドロヨウ素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオチン酸塩、乳酸塩、ラウリル酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、蓚酸塩、パルミチン酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、およびその等価物が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびその等価物が含まれる。さらに、医薬として許容される塩には、適切な場合には、無毒アンモニウム塩、第四アンモニウム塩、ならびにハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩等のカウンターイオンを使用して形成されたアミン陽イオンが含まれる。
【0062】
本明細書に使用する場合、用語「医薬として許容されるエステル」は、生体内で加水分解し、人体中で容易に分解して親化合物またはその塩を残すエステルを指す。適切なエステル基には例えば、アルキル部分またはアルケニル部分が有利には6個以下の炭素原子を有する医薬として許容される脂肪族のカルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸、およびアルカン二酸を含む。特定のエステルの例には、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、およびエチルスクシン酸エステル含まれるが、それらに限定されるわけではない。さらに、両性イオン(「分子内塩」)が本発明の化合物から形成されてもよい。
【0063】
用語「プロドラッグ」は、本明細書に使用する場合、適切な医学的判断内で、過度な毒性、炎症、アレルギー反応およびその他同等な反応を起こさずにヒトまたはそれより下等な動物の組織と接触させるべく使用するのに適し、合理的な損益比に見合い、その意図した使用に有効な本発明の化合物のプロドラッグと、可能な場合には本発明の化合物の両性イオンの形とを指す。用語「プロドラッグ」は、上記の式の親化合物を生成するよう例えば血液中での加水分解等により急速に生体内で変換される化合物を指す。徹底的な議論がT. Higuchi and V. Stella, "Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the ACS Symposium SeriesおよびEdward B. Roche, ed., "Bioreversible Carriers in Drug Design", American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987で提供されており、これらの文献は引用により本明細書に組み込まれ、本発明のマクロライドの医薬として許容されるエステルを含む。
【0064】
種々の形式のプロドラッグが当該技術分野において周知である。そのようなプロドラッグ誘導体の例については以下の文献を参照されたい。
a) Design of Prodrugs, H. Bundgaard編, (Elsevier, 1985) and Methods in Enzymology, Vol. 42, p. 309-396, K. Widder, et al. 編(Academic Press, 1985)
b) A Textbook of Drug Design and Development, edited by Krosgaard-Larsen and H. Bundgaard, Chapter 5, "Design and Application of Prodrugs," by H. Bundgaard, p. 113-191 (1991)
c) H. Bundgaard, et al., Advanced Drug Delivery Reviews, 8, 1-38 (1992)
d) H. Bundgaard, et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, 77, 285 (1998)
e) N. Kakeya, et al., Chem Phar Bull, 32, 692 (1984)
本発明の医薬組成物は、1または複数の医薬として許容されるキャリアまたは賦形剤と共に製剤化された治療上有効な量の本発明の化合物を含む。本明細書に使用する場合、用語「医薬として許容されるキャリア」は、無毒で不活性な固体、半固体、または液体の充填剤、希釈剤、封入(カプセル)材料または任意の種類に製剤補助剤を意味する。医薬として許容されるキャリアとしての役割を果たし得る材料のいくつかの例には、ラクトース、グルコースおよびスクロース等の糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン等のデンプン;セルロースならびにナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロース等のセルロース誘導体;粉末トラガカントガム;麦芽;ゼラチン;滑石;カカオ脂と坐薬ワックス等の賦形剤;落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油等の油;プロピレングリコール等のグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル等のエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;発熱物質(pyrogen)を含まない水;等張食
塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;およびリン酸緩衝溶液;ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等の他の無毒の対応する潤滑剤がある。着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、フレーバ剤および香料、防腐剤ならびに酸化防止剤も製剤する物の判断基準に従って組成物に存在してもよい。本発明の医薬組成物は、ヒトおよび別の動物に、経口、直腸、腸管外(parenterally)、大槽内、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、またはドロップで)、頬側、または口腔または鼻腔スプレーとして投与することができる。
【0065】
単数で示されるか数詞を示さない用語は、本発明の文脈(特に請求項の文脈)では、本明細書に別段示したり文脈に明らかに矛盾したりする場合を除き、単数と複数の両方を包含するものと解釈されるものとする。用語「備える」「有する」「含む」「含有する」は、別段示さない限り、オープンエンドの用語(すなわち包含するが、それに限定されるわけではないという意味)として解釈されるものとする。
【0066】
本明細書に示した値の範囲の記載は、別段示さない限り、その範囲内にある各々の値を個別に参照するための簡単な方法としての役割を果たすものであって、各値はあたかもそ
れが本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に別段示したり文脈に明らかに矛盾したりする場合を除き、本明細書で説明したすべての方法は任意の適切な順序で行なうことができる。本明細書で提供したすべての実施例および例証的な用語(例えば「〜等」)は、単に本発明をより良好に注意を促すことを意図とし、特に請求項に記載していない限り、本発明の範囲に対する限定を提示するものではない。明細書中の言葉は、特許請求の範囲に記載していない本発明の実施に不可欠な構成要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0067】
本発明の好ましい実施形態を、本発明の実施のための発明者に判明している最良の態様を含めて、本明細書に記載している。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、上記の説明を読めば当業者には明白となるであろう。発明者は当業者がそのようなバリエーションを適切に使用できると期待しており、発明者は本発明が本明細書に特に記載された以外の方法でも実施されると考えている。従って、本発明は、適用される法律が許可する本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての修正物および等価物を包含する。さらに、上述の構成要素の、考えられるそのすべてのバリエーションでのすべての組み合わせも、本明細書に別段示したり文脈に明らかに矛盾したりする場合を除き、本発明に包含される。
【0068】
実施例
4″−O−(アリルオキシカルボニル)−N−脱メチルクラリストマイシン−11,12−カーボネート2′,3′−ウレタン(5)
クラリスロマイシン((4)、5.00g、6.69mmol)をジクロロメタン(100ml)に溶解し、ピリジン(6.30ml、77.9mmol)およびホスゲン(20%トルエン溶液、20.0ml、38.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で5時間撹拌した。アリルアルコール(9.00ml、132mmol)を加え、さらに30分間撹拌を続けた(黄色溶液)。水酸化ナトリウム水溶液を加え、生成物をジクロロメタンで抽出した。合一した有機層を、水と食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過した。ろ液を蒸発させ、トルエンで追跡すると、トルエンから再結晶された黄白色の固体が得られた;白色固体としての5.07g(収率87%)の炭酸アリル(5);融点:307−310℃(トルエン)、C4367NO17に対する計算値:C、59.36;H、7.76.実測値:C、60.01;H、7.36%)。HRMS ESIポジティブ:M+Na+=C4367NNaO17に対する計算値:892.4301、実測値:892.4327。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
N−脱メチルクラリスロマイシン11,12−カーボネート−2′,3′−ウレタン(6)
方法1:基質(5)(300mg、0.35mmol)、トリエチルアミン(0.17ml、1.2mmol)、ギ酸(0.040ml、1.1mmol)、酢酸パラジウム(5mg、0.022mmol、6mol%)、およびトリフェニルフォスフィン(22mg、0.080mmol)の80%エタノール水溶液(6ml)からなる懸濁液を1.5時間還流させた。得られた黄色混合物を室温まで冷却し、蒸発乾燥させ、残留物質を酢酸エチル:トリエチルアミン 98:2を使用してシリカゲル(25g)上でフラッシュクロマトグラフィにて精製した;白色固体としての251mg(収率93%)の脱保護された化合物(6)。イソプロパノールからの再結晶により、最後の微量のトリフェニルフォスフィンが除去された。
方法2:基質(5)(103mg、0.12mmol)を70℃でTHF:DMSO(1:1、2.6ml)に溶解した。1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb、8mg、0.019mmol)およびビス(ジベンジリデン−アセトン)パラジウム(Pd(dba)2、10mg、0.017mmol)、14mol%)を加え、反応混合物を70℃で4時間15分撹拌した。混合物を室温まで冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合物をジクロロメタンで抽出し、合一した有機層を水と食塩水で洗浄した。
合一した有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧で蒸発させ、残留物質をヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン 23:75:2を使用してシリカゲル(10g)上でフラッシュクロマトグラフィに供した。;白色固体としての69mg(収率74%)の化合物(6);融点292−295℃(イソプロパノール)。(C3963NO15に対する計算値:C、59.60;H、8.08、実測値:C、58.91;H、7.89%)。HRMS ESIポジティブ:M+Na+=C3963NNaO15に対する計算値:808.4089、実測値:808.4111。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
N−脱メチル−3−O−デスクラジノシルクラリスロマイシン11,12−カーボネート2′,3′−ウレタン(7)
トリフルオロ酢酸(0.60ml、7.8mmol)を基質(5)(1.00g、1.15mmol)のDMSO:水(9:1、50ml)溶液からなる撹拌懸濁液に加えた。4時間15分撹拌した後、すべての材料は溶解した。TLCは、6時間後に完全に変換することを示した。混合物を室温まで冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合物をジクロロメタンで抽出し、合一した有機層を水と食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、ろ液を蒸発させ、残留物質をジクロロメタン:イソプロパノール:トリエチルアミン 97:1:2を使用してシリカゲル(80g)上でフラッシュクロマトグラフィに供し、ジクロロメタン/トルエンから再結晶する;白色固体としての456mg(収率63%)の生成物(7);融点294℃(ジクロロメタン:トルエン)。(C3149NO12に対する計算値:C、59.31;H、7.87.実測値:C、58.71;H;7.64% )。HRMS ESIポジティブ:M++=C3149NO12に対する計算値:628.3327、実測値:628.3347。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
N−脱メチル−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12−カーボネート2′,3′−ウレタン(8)
N−クロロスクシンイミド(NCS、59mg、0.44mmol)をジクロロメタン(3ml)に溶解し、−16℃まで冷却した。硫化ジメチル(0.037ml、0.50mmol)を5分間かけて滴下し、混合物をさらに10分間撹拌した。アルコール(7)(170mg、0.27mmol)のジクロロメタン(20ml)溶液を30分間かけて滴下し、温度を−16℃〜−10℃の間に保持した。トリエチルアミン(0.041ml、0.29mmol)を5分間かけて滴下した。反応混合物を−5℃で1.5時間かけて攪拌し、室温までそのまま戻し、水酸化ナトリウム水溶液を加え、字黒路メタンで生成物を抽出した。合一した有機層を水と食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過した。ろ液を蒸発させると、149mgの白色固体が得られた。ジクロロメタン:トリメチルアミン 98.5:1.5を使用してシリカゲル(2g)上でフラッシュクロマトグラフィにより生成すると、白色固体として124mg(収率73%)の目標ケトリド(8)が得られた。;融点283−285℃(ジクロロメタン:ヘキサン)。(C3147NO12に対する計算値:C、59.51;H、7.57、実測値:C、58.55;H、7.45%)。HRMS ESIポジティブ:計算値M+Na+=C3147NNaO12:648.2990、実測値:648.3019。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
【0069】
3−O−デスクラジノシルクラリスロマイシン(9)13
クラリスロマイシン((4)、1.25g、1.67mmol)を、1.0M塩酸(30ml、30mmol)へ部分に分けて加え、すべての固体が溶液の中に入り込んだら混合物を30分間周囲温度で撹拌した。反応は2時間後に完了した。水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合物を酢酸エチルで抽出し、合一した有機抽出物を水と食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を蒸発させ、残留物質を酢酸エチル:トリエチルアミン 96:4を使用してシリカゲル(50g)上でフラッシュクロマトグラフィに供し、白い泡状物として802mg(収率81%)生成物(9)を生成した。HRMS
ESIポジティブ:M++=C3056NO10に対する計算値:590.3898、実測値:590.3914。13C NMR(125MHz、CDCl3):δ220.7(C−
9)、175.0(C−1)、106.7(C−1′)、88.4(C−5)、78.9(C−3)、78.0(C−6)、76.5(C−13)、74.1(C−12)、70.6(C−2′)、70.2(C−5′)、69.7(C−11)、65.6(C−3′)、49.5(OMe)、45.5(C−8)、44.5(C−2)、40.2(NMe2)、38.7(C−7)、37.5(C−10)、35.8(C−4)、28.0(C
−4′)、21.4(C−14)、21.2(C−5′におけるMe)、18.7(C−6におけるMe)、17.7(C−8におけるMe)、16.1(C−12におけるMe)、15.2(C−2におけるMe)、12.6(C−10におけるMe)、10.4(C−15)、8.2(C−4におけるMe);MS ESIポジティブ、m/z(rel.int.):558.4(8)、590.3(100、[M+H+])、612.4(4、[M+Na+])
3−O−(アリルオキシカルボニル)−N−脱メチル−3−O−デスクラジノシルクラリスロマイシン11,12−カーボネート2′,3′−ウレタン(10)
ホスゲン(20%トルエン溶液、2.8ml、5.4mmol)を、基質(9)(545mg、0.92mmol)のジクロロメタン(12ml)溶液およびピリジン(0.87ml、11mmol)からなる溶液に加えた。反応混合物を室温で7時間撹拌してから、アリルアルコール(1.5ml、22mmol)を加えた。混合物はさらに30分撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合物をジクロロメタンで抽出し、合一した有機層を水と食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、ろ液を蒸発させた。残った黄色固体をヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン 49:49:2を使用してシリカゲル(35g)上でフラッシュクロマトグラフィにより精製し、黄白固体として271mg(収率41%)の炭酸アリル(10)を得た。クロロホルム:ヘキサンからの再結晶により、脱色部分を除去し、白色固体を得た;融点:290−295℃(昇華)(クロロホルム:ヘキサン)。(C3553NO14に対する計算値:C、59.06;H、7.51.実測値:C、59.75;H、8.08%)。HRMS ESIポジティブ:M=C3553NNaO14に対する計算値:734.3358.実測値:734.3349。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
炭酸アリル(10)からN−脱メチル−3−O−デスクラジノシルクラリスロマイシン 11,12−カーボネート2′,3′−ウレタン(7)
炭酸アリル(10)(377mg、0.53mmol)を70℃のDMSO:THF(1:1、12ml)に溶解し、1,4−2ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb、14mg、0.033mmol)およびビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2、17mg、0.030mmol、6mol%)を加えた。反応混合
物をこの同じ温度である70℃で2時間撹拌し、室温まで冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、混合物をジクロロメタンで抽出し、合一した有機層を水と食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、ろ液を蒸発させた。残った黄色固体(349mg)はジクロロメタン:イソプロパノール:トリエチルアミン 97:1:2を用いてシリカゲル(30g)上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。生成物を続いてジクロロメタン:トルエンから再結晶し、;白色固体として179mg(収率54%)の目標化合物(7)を得た。分析により、生成物が炭酸アリル(5)(前掲)から準備された化合物(7)と同一であることが確認された。
10,11−アンヒドロ−N−脱メチルクラリスロマイシン 2′,3′−ウレタン(11)
カルボニル化種5(500mg、0.58mmol)を、DMSO(14ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(222mg、3.41mmol)を添加した。反応混合物を100℃で26時間撹拌した。生じた黄色溶液を室温まで冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を加え、コールドの反応混合物を酢酸エチル(追記:ジクロロメタンとNaN3は爆発性の
一つの原子に同種原子が二つ結合したジアジドを形成する)で抽出し、合一した有機層を
水と食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過した。ろ液を蒸発させると441mgの黄白色固体が残り、これをヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン 23:75:2;を使用してシリカゲル(22g)上でフラッシュクロマトグラフィにより精製すると、白色固体として381mg(収率89%)の共役エノン(11)が得られた;融点:157−160℃(アセトン;ヘキサン)。(C3863NO13に対する計算値:C、61.52;H、8.56、実測値:C、60.81;H、8.26%)。HRMS ESIポジティブ:MNa=C386SNNaO13に対する計算値:764.4191
.実測値:764.4215。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
10,11−アンヒドロ−N−脱メチル−3−O−デスクラジノシルクラリスロマイシン
2′,3′−ウレタン(12)
基質(11)(1.28g、1.73mmol)を酢酸:水(1:1、18ml)に溶解し、反応混合物を70℃で1時間撹拌した。その後、混合物を室温まで冷却し、さらに2時間撹拌した。沈殿した固体物をろ過して除去し、1時間真空乾燥し;白色固体として661mg(収率66%)の3−O−デスクラジノシル化合物(12)を得た;融点:282−285C℃(酢酸:水)。(C3049NO10に対する計算値:C、61.73;H、8.46、実測値:C、61.63;H、8.57%)。HRMS ESIポジティブ:MNa=C3049NNaO10に対する計算値:606.3248、実測値:606.3272。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
10,11−アンヒドロ−N−脱メチル−3−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン 2′,3′−ウレタン(13)
3−ヒドロキシ化合物(12)(645mg、1.11mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、Dess-Martinペルヨージナン(DMP、709mg、1.67mm
ol)を加えた。反応混合物を室温で30分撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液を添加し、反応混合物をジクロロメタンで抽出した。合一した有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過した。溶媒を除去して742mgの白色泡状物を得た。この粗物質をジクロロメタン:イソプロパノール:トリエチルアミン98:1:1を用いてシリカゲル(30g)上でフラッシュクロマトグラフィにより精製すると、白色固体として603mg(収率94%)のβ−ケトエステル(13)が得られた。;融点:231−234℃(トルエン:ヘキサン)、(C3047NO10に対する計算値:C、61.94;H、8.14、実測値:C、61.74;H、8.31%)。HRMS ESIポジティブ:MNa=C3047NNaO10に対する計算値:604.3092、実測値:604.3121。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
11−アミノ−N−(4−ブロモフェニル)−N′−脱メチル−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12:2′,3′−ジウレタン(17)
エノンアルコール(13)(420mg、0.72mmol)をTHF(12ml)に溶解し、水素化ナトリウム(60%ミネラルオイル液、58mg、1.5mmol)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌してから、4−ブロモフェニルイソシアン酸(433mg、2.19mmol)および塩化銅(I)(80mg、0.81mmol)を加えた。混合物を50℃で42時間撹拌し、室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。食塩水を加え、混合物をTHFで抽出し、合一した有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、ろ液を蒸発させた。残った黄色固体(823mg)をトルエン:THF 84:16を使用してシリカゲル(42g)上でフラッシュクロマトグラフィにより精製し、白色固体として351mg(収率62%)の環状11,12−ウレタン(17)を得た;融点:253−256℃(ジエチルエーテル)、C3751BrN211に対する計算値:C、56.99;H、6.59、実測値:C、56.03;H
、6.55%)。HRMS ESIポジティブ:MNa=C3751BrN2NaO11
に対する計算値:801.2568、実測値:801.2595。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
11−アミノ−N−(3−フルオロ−4−モルホリノフェノール)−N′−脱メチル−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12:2′,3′−ジウレタン(19)
共役エノン(13)(250mg、0.43mmol)のTHF(5ml)溶液に水素化ナトリウム(60%ミネラルオイル液、38mg、0.95mmol)を加え、混合物を室温で10分間撹拌してから、新たに調製した3−フルオロ−4−モルホリノフェニルイソシアネート(1.29mmol)および塩化銅(I)(52mg、0.53mmol)のTHF(3ml)溶液を加えた。反応混合物を50℃で42時間密封チューブ中で撹拌し、混合物を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、1時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合物を酢酸エチルで抽出した。合一した有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過した。ろ液を蒸発乾燥させると、463mgのピンク色の固体が残った。粗生成物をジクロロメタン:イソプロパノール:トリエチルアミン98:1:1を使用してシリカゲル(30g)上でフラッシュクロマトグラフィにより精製し、;オフホワイトの粉末として193mg(収率56%)の表題の化合物(19)を得た;融点:231−235℃(アセトン:ジエチルエーテル)。C4158FN312に対する計算値:C、61.26;H、7.27、実測値:C、62.
06;H、7.24%)。HRMS ESIポジティブ:M=C4158FN312
に対する計算値:804.4077、実測値:804.4103。さらなるスペクトルのデータに関しては、図4を参照されたい。
11−アミノ−N−(3−フルオロ−4−モルホリノフェノール)−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12−カルバメート(29)
共役エノン(27)(250mg、0.43mmol)のTHF(5ml)溶液に水素化ナトリウム(60%ミネラルオイル液、38mg、0.95mmol)を加え、混合物を室温で10分間撹拌してから、新たに調製した3−フルオロ−4−モルホリノフェニルイソシアネート(1.29mmol)および塩化銅(I)(52mg、0.53mmol)のTHF(3ml)溶液を加える。反応混合物を50℃で42時間密封チューブ中で撹拌する。この長い反応時間は反応生成物が一つの立体異性体に異性化するためである。室温の反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加え、1時間撹拌する。水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合物を酢酸エチルで抽出し、合一した有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過する。ろ液を蒸発させ、残留物をジクロロメタン:イソプロパノール:トリエチルアミン 98:1:1を使用してシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィにより精製し、表題の化合物(29)を得る。
11−アミノ−N−(3−フルオロ−4−モルホリノフェノール)−2′−O−ベンゾイル−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12−カルバメート(28)
基質(27、200mg、0.30mmol)のTHF(4ml)溶液にビス(トリメチルシリル)アミドナトリウム(NaHMDS、約1MのTHF溶液、0.66ml、0.66mmol)を加えた。混合物をN2の存在下で室温で10分間撹拌した。塩化銅(
I)(36mg、0.36mmol)と、3−フルオロ−4−モルホリノフェニルイソシアネート(0.89mmol)のTHF(2ml)溶液とを加え、反応混合物を50℃まで加熱した。混合物を同温度である50℃で42時間撹拌し、室温まで冷却した。水酸化ナトリウム水溶液(pH約12、約50ml)を加え、生成物を酢酸エチル(約50ml)で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。黒色の固体物質(350mg)が得られた。溶出剤としてヘプタン/酢酸エチル/トリエチルアミン 49:49:2を使用したシリカゲル(20g)上でのフラッシュクロマトグラフィにより、黄色の油として39mg(収率17%)のカルバメート(28)を得た。MS ESIポジティブ m/z(%rel.int.):674.7(6、[基質+H+])、897.1(100、[M+H+])、912.6(6)、1814.3(4、[2M+Na+])。
11−アミノ−N−(3−フルオロ−4−モルホリノフェノール)−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12−カルバメート(29)
基質(28、35mg、0.039mmol)をメタノール(1.5ml)に溶解し、30℃で3時間および40℃で1時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(約20ml)で希釈し、希塩酸(pH約1、約20ml)を加えた。層を分離し、水酸化ナトリウム水溶液をpH約12になるまで水相に加えた。生成物を酢酸エチル(約30ml)で抽出し、有機層を塩水で洗浄し、ろ過し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。オフホワイトの固体として18mg(収率58%)のC−2′アルコール(29)が単離された。MS ESIポジティブ m/z(%rel.int.):570.9(5)、793.3(100、[M+H+])、808.8(10)、1361.5(5)、1584.1(8、
[2M+H+])。
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【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】対応する11,12ウレタン誘導体を置換されたフェニルハライド(すなわち式中のX′はハロゲンを表す)と反応させることによる、本発明の化合物の製造方法を示す。反応は、塩基条件下または金属触媒されたクロスカップリング反応の少なくとも一方により行われ得る。
【図2】対応する11−デオキシマクロライドを置換アニリンと反応させることによる、本発明の化合物の製造方法を示す。
【図3】対応する11−デオキシマクロライドを置換イソシアン酸フェニルと反応させることによる、本発明の化合物の製造方法を示す。この方法では、NaHおよびCuClの少なくとも一方を試薬として使用し、THFを溶媒として使用することができる。図1〜3に示されたいずれの方法でも、R7がHを表わす化合物は、R7がAcを表す化合物をアルカノール(例えばメタノール)と反応させることにより得ることができる。式中の置換基は請求項1に記載のものと同じ意味を有する。
【図4A】実施例に列挙された化合物についてのより詳細なスペクトルデータを示す。
【図4B】実施例に列挙された化合物についてのより詳細なスペクトルデータを示す。
【図4C】実施例に列挙された化合物についてのより詳細なスペクトルデータを示す。
【図4D】実施例に列挙された化合物についてのより詳細なスペクトルデータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I(多形体を含む)のマクロライド、および同マクロライドの医薬として許容される塩、プロドラッグならびに溶媒和物
【化1】

式中、
XとYは独立して水素、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、COOR13(R13は任意に置換された脂肪族基を表わす)、ハロゲン、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、またはニトロであり、ベンゼン環はさらに2位または6位の少なくとも一方で任意に置換され;
Zは水素またはハロゲンを表わし;
Rは、(i)モルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジノまたはピペラジノであり、前記環は、環のC原子および環のN原子の少なくとも一方の上で任意に置換され(例えば水素、アルキル、アルコキシ、−CO2−アルキル、−CO2−アルキル−OH、−CO−アルカンジイル−OH、−アルカンジイル−O−アルキル、−アルカンジイル−ハロゲン、−アルケニル−O−アルキル、−アルケニルハロゲン(前記基のいずれも任意に置換される)により置換される);
(ii)任意に置換されたアルカノイル;
(iii)−N(R8)R9、R8およびR9は独立して水素または任意に置換されたアルキルを表わすかまたはR8およびR9は共に任意に置換される−アルカンジイル−R11−アルカンジイル−基を表し、R11はCH2、S、O、SO、SO2、SNR12、S(O)NR12またはNR12を表し、R12は水素または任意に置換されたアルキル(例えばハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換される)、もしくはp−トルエンスルホニル;または
(iv)−N(R8)R9、R8およびR9は独立して水素または任意に置換されたアルキルを表わすかまたはR8およびR9は共に任意に置換されるアルケニル−R11−アルケニル−を表わし、R11はCH2、S、O、SO、SO2、SNR12、S(O)NR12またはNR12を表わし、R12は水素または任意に置換されたアルキル(例えばハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換される)、もしくはp−トルエンスフホニル;を表し、
Rは、隣接するXと共に、
(i)任意に置換された−CO−アルカンジイル−;
(ii)任意に置換された−NR5−アルカンジイル−、R5は任意に置換されたアルカノイルを表わし;
(iii)任意に置換された−CO−アルケニル−;または
(iv)任意に置換された−NR5−アルケニル−、R5は任意に置換されたアルカノイルを表す;を表し、
6は水素または任意に置換されたアルキルを表す;R7は水素、ヒドロキシ保護基、または任意に置換されたアルカノイルを表すか;または、R6およびR7は共に−CO−を表
す、マクロライド。
【請求項2】
XとYは独立して水素、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、COOR13(R13はC1−6アルキルを表わす)、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはニトロを表す;
Zは水素またはハロゲンを表し;
Rは:(i)モルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジノまたはピペラジノ(任意にハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、−CO2−C1−6アルキル、−CO−
1−6アルカンジイル−OH、−C1−6アルカンジイル−O−C1−6アルキル、−C1−6アルカンジイル−ハロゲンで置換され);もしくは
(ii)任意にヒドロキシで置換されたC1−6アルカノイル;もしくは
(iii)−N(R8)R9、R8およびR9は独立して水素またはC1−6アルキルを表わすか;またはR8およびR9は共にC1−6アルカンジイル−R11−C1−6アルカンジイル−基を表わし、R11はCH2、S、O、SO、SO2、SNR12、S(O)NR12またはNR12を表し、R12は水素またはC1−6アルキル(例えばハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、またはジ−C1−6アルキルアミノで任意に置換)、もしくはp−トルエンスフホニル;であるか、または
Rは、隣接するXと共に、
(i)−CO−C1−6−アルカンジイル−;もしくは
(ii)−NR5−C1−6−アルカンジイル−、R5はC1−6アルカノイルを表す;を表し、
6は水素またはC1−6アルキルを表す;R7は水素、ヒドロキシ保護基またはC1−6アルカノイルを表わすか;または、R6およびR7は共に−CO−を表わす、請求項1に記載のマクロライド。
【請求項3】
医薬として許容されるその塩、プロドラッグ、および溶媒和物を含む、以下の式Iの化合物。
【化2】

式中、
XとYは独立して水素、ハロゲンまたはC1−6アルコキシを表す;
Zは水素またはハロゲンを表し;
Rは(i)モルホリノ、チオモルホリノまたはN4位でR4により置換されたピペラジ
ノであり、前記環は、水素、ハロゲンまたはC1−6アルコキシを独立して表わすR2
よびR3によって任意に置換され;R4は水素、−CO2−(C1−6アルキル)、−CO
CH2OH、−CH2CH2O−(C1−6アルキル)、−CH2CH2Fを表すか;もしく

(ii)少なくとも1つのヒドロキシル基によって任意に置換されたC1−6アルカノイル;を表すか、または
Rは、隣接するXと共に、
(i)−CO(CH2n−、nは整数2または3を表わす;もしくは
(ii)−NR5CH2CH2−、R5は少なくとも1つのヒドロキシによって任意に置換されたC1−6アルカノイルを表す;であり、
6は水素またはC1−6アルキルを表す;R7は水素またはC1−6アルカノイルを表わすか;またはR6およびR7は共に−CO−を表わす、化合物。
【請求項4】
医薬として許容されるその塩、プロドラッグおよび溶媒和物を含む、以下の式Iの化合物。
【化3】

式中、
XとYは独立して水素、フルオロ等のハロゲン、またはメトキシ等のC1−6アルコキシであり;
Zは水素またはフルオロまたはクロロ等のハロゲンを表し;
Rは(i)モルホリノ、チオモルホリノまたはN4位でR4により置換されたピペラジ
ノであり、前記環は、水素、フルオロまたはクロロ等のハロゲン、またはメトキシ等のC1−6アルコキシを独立して表わすR2およびR3により任意に置換され;R4は水素、−
CO2−(C1−6アルキル)、−COCH2OH、−CH2CH2O−(C1−6アルキル)、−CH2CH2Fを表す;もしくは
(ii)−COCH2OH等の少なくとも1つのヒドロキシによって任意に置換された
1−6アルカノイル(すなわちインドリン誘導体);であるか、または
Rは、隣接するXと共に、
(i)−CO(CH2n−、nは整数2または3を表わす(すなわちインダノン誘導体およびテトラノン誘導体;もしくは
(ii)−NR5CH2CH2−、R5は少なくとも1つのヒドロキシによって任意に置換されたC1−6アルカノイルを表す;
6は水素またはメチル等のC1−6アルキルを表す;R7は水素またはC1−6アルカノイルを表わすか;またはR6およびR7は共に−COを表わす(すなわちオキサゾリジノン誘導体)、化合物。
【請求項5】
11−アミノ基と12−オキシ基が共通のカルボニル基により結合してN11位が置換フェニル環によりアリール化された環状オキサゾリジン−2−オンを形成する、11−デオキシ−11−アミノマクロライドならびにその医薬として許容される塩、プロドラッグおよび溶媒和物。
【請求項6】
11−アミノ基と12−オキシ基が共通のカルボニル基により結合してN11位が(請求項2の式Iの構造のような)置換フェニル環によりアリール化された環状オキサゾリジン−2−オンを形成する請求項5に記載の11−デオキシ−11−アミノマクロライド。
【請求項7】
ベンゼン環中のパラ位が好ましくはモルホリノ、チオモルホリノまたはピペラジノ置換基
である任意に置換されたアミノ基を有し、前記ピペラジノ置換基は第2の窒素原子でさらに置換され得る、請求項5または6に記載のマクロライド、
【請求項8】
ベンゼン環中のパラ位がアシル化されたインドール系の一部としてアミノ基を有する請求項5−7のいずれかに記載のマクロライド。
【請求項9】
ベンゼン環中のパラ位は、低級アルカノイル系の一部として、またはベンゼン環中のオルト位に結合された環状ペンタノイルまたはヘキサノイル系の一部としてアシル置換基を有する請求項5−8のいずれかに記載のマクロライド。
【請求項10】
フッ素もしくは塩素原子またはメトキシ基のいずれかによりベンゼン環がさらに置換されている請求項5−9のいずれかに記載のマクロライド。
【請求項11】
2′−オキシおよび3′−N−脱メチルアミノ基が共通のカルボニル基によって相互に連結され、オキサゾリジン−2−オン誘導体を形成する請求項5−10のいずれかに記載のマクロライド。
【請求項12】
3′−脱メチルアミノ基は水素原子またはメチル基を含む追加のC1−6アルキル基を有し、2′−オキシ基は水素またはC1−6アルカノイル基を有する請求項5−11のいずれかに記載のマクロライド。
【請求項13】
式Iの2位のZ−置換基が水素、フッ素または塩素により表わされる請求項5−12のいずれかに記載のマクロライド。
【請求項14】
11−アミノ−N−(3−フルオロ−4−モルホリノフェニル)−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン 11,12−オキサゾリジノン。
【請求項15】
11−アミノ−N−(3−フルオロ−モルホリノフェニル)−N′−脱メチル−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12:2′,3′−ジウレタン(19)。
【請求項16】
11−アミノ−(3−フルオロ−4−モルホリノフェニル)−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12−カルバメート。
【請求項17】
11−アミノ−(3−フルオロ−4−モルホリノフェニル)−2′−O−ベンゾイル−11−デオキシ−3−O−デスクラジノシル−3−オキソクラリスロマイシン11,12−カルバメート。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の化合物と、医薬として許容されるキャリアまたは賦形剤とを共に含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の医薬組成物または請求項1〜17のいずれかに記載の化合物をヒトを含む哺乳動物等の動物に投与することを含む、動物の治療方法。
【請求項20】
11−アミノ基と12−オキシ基が共通のカルボニル基により結合してN11位が置換フェニル環によりアリール化された環状オキサゾリジン−2−オンを形成する、11−デオキシ−11−アミノマクロライド、その医薬として許容される塩、プロドラッグおよび溶媒和物のうちの少なくとも一つの製造方法であって、11−デオキシ−11−アミノマクロライドをフェニル環が任意に置換されたイソシアン酸フェニルと反応させることを含む
方法。
【請求項21】
CuClおよびNaHの少なくとも一つが試薬として使用されるか、イソシアン酸フェニル中のフェニル環がハロゲン原子等の電子求引性置換基を有するかの少なくとも一方である請求項18に記載の方法。
【請求項22】
式Iのマクロライド、その医薬として許容される塩、プロドラッグ、多形体および溶媒和物の少なくとも一つの製造方法であって、
【化4】

式中、置換基は請求項1に記載におけるのと同じ意味を有し、
前記方法は、
対応する11−デオキシ−マクロライドを3−Y、4−R、5−Xイソシアン酸フェニル(Y、RおよびXは上記に定義した通り)と反応させる;または
対応する11−デオキシ−マクロライドをCDIおよび3−Y、4−R、5−Xアニリン(Y、RおよびXは上記に定義した通り)と反応させる;または
対応する11−アミノ−11−デオキシ−11,12ウレタンマクロライドを3−Y、4−R、5−Xハロゲン化フェニル(Y、RおよびXは上記に定義した通り)と反応させる;こと、
式Iのマクロライドの保護誘導体(例えばR7が保護基である式Iのマクロライド)を
脱保護すること、
式Iのマクロライドを式Iの他のマクロライドに変換すること、
式Iのマクロライドを医薬として許容される酸または塩基と反応させること、および
式Iのマクロライドを適切な溶媒中で結晶させること、
の少なくともいずれかを含む方法。
【請求項23】
抗菌組成物等の医薬組成物を製造するための請求項1〜17に記載の化合物の使用方法。
【請求項24】
明細書に開示されている式Iの化合物の製造方法。
【請求項25】
明細書に開示されている請求項24に記載の製造方法に使用される中間体等の化合物。
【請求項26】
式Iのマクロライド、および同マクロライドの医薬として許容される塩、プロドラッグならびに溶媒和物。
【化5】

XとYは独立して水素、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、COOR13(R13は任意に置換された脂肪族基を表わす)、ハロゲン、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、またはニトロであり、ベンゼン環はさらに2位または6位の少なくとも一方で任意に置換され;
Zは水素またはハロゲンを表し;
Rは、(i)モルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジノまたはピペラジノであり、前記環は、環のC原子および環のN原子の少なくとも一方の上で任意に置換され(例えば水素、アルキル、アルコキシ、−CO2アルキル、−CO−アルキル−OH、−アルケニル−
O−アルキル、アルケニル−ハロゲン(前記基のいずれも任意に置換される)により置換される);
(ii)任意に置換されたアルカノイル;もしくは
(iii)−N(R8)R9、R8およびR9は独立して水素または任意に置換されたアルキルを表わすかまたはR8およびR9は共に任意に置換された−アルケニル−R11−アルケニル−を表し、R11はCH2、S、O、SO、SO2、SNR12、S(O)NR12またはNR12を表し、R12は水素または任意に置換されたアルキル(例えばハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換される)もしくはp−トルエンスフホニル;であるか、または
Rは、隣接するXと共に、
(i)任意に置換された−アルケニル−;もしくは
(ii)任意に置換された−NR5−アルケニル−、R5は任意に置換されたアルカノイルを表す;であり、
6は水素または任意に置換されたアルキルを表す;R7は水素、ヒドロキシ保護基、または任意に置換されたアルカノイルを表わすか;または、R6およびR7は共に−CO−を表す、マクロライド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公表番号】特表2008−526808(P2008−526808A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549877(P2007−549877)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000336
【国際公開番号】WO2006/074962
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(505371232)アルファーマ エーピーエス (13)
【氏名又は名称原語表記】ALPHARMA APS
【住所又は居所原語表記】11 Dalslandsgade,DK−2300 Copenhagen S,DENMARK
【Fターム(参考)】