説明

マクロ細孔質セメント硬化体による組立体

シールによって互いに接続されたブロックを備えるセラミック組立体であって、場合によってはそのセラミック体の側面が周囲被覆材で被覆され、そのシールおよび/またはその周囲被覆材が、乾燥鉱物質を基準とした質量百分率で10%未満の無機繊維を含むセメント硬化体を含み、前記シールにより組み立てられたブロックの向き合う面の少なくとも1面に垂直な断面上に、以後「マクロ細孔」と称される200μmから40mmの範囲の等価直径を有する気孔を、前記断面において前記マクロ細孔により占有される全表面が実測される全表面の15%を超えかつ80%未満であるような量で有する組立体。自動車排気ガスの濾過への適用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、自動車車両からの排気ガスを濾過するためのセラミック組立体(assembled ceramic body)であって、ブロック間にシールをはさみ込むことによって一緒に結合された複数のブロックを備える組立体を提供する。
【背景技術】
【0002】
大気中に排出される前に、自動車車両からの排気ガスは、図1および2に示されるものなどの、従来技術から知られている粒子フィルターによって浄化することができる。(種々の図において、同様なまたは類似の手段を示すため、同一の参照番号を使用した。)
【0003】
粒子フィルター1は、図1において図2の断面B〜Bに沿った断面が示され、図2において図1の断面A〜Aに沿った長手部分が示される。
【0004】
粒子フィルター1は、従来、長さLを有し、金属缶5中に挿入された、少なくとも1つのフィルター体3を備える。
【0005】
フィルター体3は、モノリシックとすることができる。しかし、特に再生段階の間の、その熱機械的強度を向上させるために、参照番号11a〜11iを有する、複数のブロック11を組み立て、機械加工して得られるものが有利であることが判明している。したがって、それは「組立(assembled)」フィルター体と呼ばれる。
【0006】
フィルターブロック11を製造するため、多孔質ハニカム構造を形成するように、セラミック材料(コージライト、炭化ケイ素など)が押し出される。押し出された多孔質構造体は、従来、2つの実質的に正方形の上流面12と下流面13との間に伸びる、長方形の平行管状物(parallelepiped)の形態を有しており、その中へ、複数の隣接する、直線で囲まれ、かつ平行な流路14が外まで開口している。
【0007】
特許文献1(WO 05/016491)は、例えば、考慮下の流路に応じて様々な断面の流路を有する多孔質ハニカム構造体も知られていることを示す。「非対称構造」と呼ばれる、これらの構造体は、一般に大きな貯蔵体積を提供し、フィルター通過における圧力低下を制限する。
【0008】
押出しの後、押し出された多孔質構造体は、よく知られているように、交互に、それぞれ上流および下流プラグ15sおよび15eによって、上流面12または下流面13にプラグ止めされて、それぞれ「出口流路」および「入口流路」型の流路14sおよび14eを形成する。出口および入口流路14sおよび14eは、それぞれ上流および下流プラグ15sおよび15eから離れた出口および入口流路14sおよび14eの末端で、それぞれ、出口および入口開口部19sおよび19eを介して外部に開いている(それぞれ下流面および上流面13および12の間にわたって伸びている)。したがって、入口および出口流路14eおよび14sは、側壁22eおよび22s、密封用プラグ15eおよび15s、ならびに、外部に開いているそれぞれの開口部19sまたは19eによって画定される内部空間20eおよび20sを画定している。2つの隣接する入口および出口流路14eおよび14sは、それらの側壁22eおよび22sの共通部分を介して流体連結されている。
【0009】
プラグを施した後、押し出された多孔質構造体は、焼結される。
【0010】
それにより、それぞれ4面の、上流面12から下流面13まで広がった外側平坦面を有する、長方形の平行管状物であるフィルターブロックがもたらされる。
【0011】
フィルターブロックを組み立てるために、以下において「シール面(seal faces)」と呼ばれる向き合った外側面が、シリカおよび/または炭化ケイ素および/または窒化アルミニウムから一般に構成されるセラミックセメントから形成されるシール271〜12によって接合される。
【0012】
フィルターブロック組立体のシール271〜12のセラミックセメント、または「セラミックシール層」を構成するために、特に、30質量%〜60質量%の範囲の炭化ケイ素を含むセメント硬化体が知られている。炭化ケイ素は高い熱伝導率を有し、それはフィルター体内の温度を速やかに均斉化できることを有利に意味する。しかし、炭化ケイ素は、比較的高い膨張率を有する。したがって、その型のセメント硬化体の炭化ケイ素含量は、粒子フィルターに適用されるように適応させた熱機械的強度を提供するため、制限されなければならない。
【0013】
その結果として構成される組立体は、次いで、例えば、円形断面を帯びるように、機械加工することができる。セメント硬化体は、その機械加工操作に耐えることが可能でなければならない。
【0014】
フィルター体の横面全体を実質的に被覆するように、周囲コーティング(peripheral coating)27’を塗布することも好ましい。その結果は、缶5に挿入することができる、長軸C〜Cを有する円筒形フィルター体3であり;排気ガス気密性(exhaust gas−tight)の、外側フィルターブロック11a〜11h間に配置される、または必要な場合、コーティング27’と缶5の間に配置される周囲材料28である。シール271〜12に使用されるセメント硬化体は、場合によって、周囲コーティング27’を作製するのに使用できる。その場合、缶中への挿入、または「キャンニング(canning)」に耐える十分な機械的強度を有しなければならない。
【0015】
図2に示される矢印が示すように、排気ガス流Cは、入口流路14eの開口部19eを通って、フィルター体3に入り、これらの流路の濾過用側壁を通過して出口流路14sに達し、次いで開口部19sを介して外部に流出する。
【0016】
シールは、入口流路と出口流路を分離する濾過用壁を通ってガスが通過することに限定するために、排気ガスに対して排気ガス気密性としなければならない。
【0017】
ある時間使用した後、フィルター体3の流路内に蓄積された粒子、または「すす(soot)」は、フィルター体3による圧力低下を増大させ、こうしてエンジンの性能を変化させる。このため、フィルター体は、定期的に、例えば、500キロメートル毎に再生しなければならない。
【0018】
再生または「清浄化」は、すすを酸化させることにある。これを達成するため、すすが強熱される温度まで、すすを加熱する必要がある。したがって、フィルター体3内における温度の均一性の不足、ならびに、フィルターブロック11a〜11iおよびシール271〜12に使用される材料の特性差の可能性が、強い熱機械的応力を発生させる恐れがある。シールのセメントは、再生の間、熱機械的応力に耐えることが可能でなければならない。
【0019】
シールへの応力は、非対称構造、すなわち、入口流路の断面が出口流路の断面と異なる構造を有するフィルターブロックの組立体で特に過酷である。これらのブロックは、密封用プラグが構成する質量の比率が大きいため弱体化されて、一方が他方から離れる傾向がある。セメント硬化体も破壊される傾向を有し得る。
【0020】
応力は、自発的再生または制御の悪い再生の場合にも非常に高くなる。
【0021】
例えば特許文献2(EP 0 816 065)から、セメント硬化体にセラミック繊維を組み込むと、シールの弾性を増大させ、したがってフィルター組立体の熱機械的強度を増加させることが可能になることが知られている。しかし、セラミック繊維が存在すると、健康および安全性に関する危険の可能性が生じ、フィルター体のリサイクルをより困難にしている。さらに、繊維の組込みは、特にショット(非繊維粒子)の存在が少なくなることと共に、とりわけ高価である。
【0022】
最後に、セラミック繊維は、組み立てようとするブロック表面にフレッシュセメントを塗布する間、フレッシュセメントを均一に分布させることを困難にする。
【0023】
その上、特許文献3(EP 1 142 619)は、低い熱伝導率を有するセメント硬化体を使用したフィルター組立体について開示しており、伝導性のあるセメント硬化体の使用は、接着性および耐熱性に有害であると考えられている。
【0024】
特許文献4(EP 1 479 882)は、フィルター組立体について記述し、シールおよびフィルターブロックの熱膨張率に対処するパラメータを推奨している。発泡剤または樹脂を添加することにより、シールの気孔率の度合いを制御することができる。
【0025】
特許文献5(EP 1 437 168)は、フィルターの周囲部分と中心部分の間の熱不均一性を取り扱い、特定の熱伝導率および密度を有するセメント硬化体およびフィルターブロックを推奨している。
【0026】
特許文献6(EP 1 447 535)も、シールの厚さ、およびフィルターブロックの外壁の厚さを考慮に入れることを提案している。
【0027】
特許文献7(FR 2 902 424)は、炭化ケイ素(SiC)および中空球体を含むセメント硬化体であって、前記中空球体の数の少なくとも80%が、5マイクロメートル(μm)〜150μmの範囲にある寸法を有するセメント硬化体を開示している。
【0028】
特許文献8(FR 2 902 423)は、30%〜90%の範囲にある炭化ケイ素(SiC)含量、および熱硬化性樹脂を有するセメント硬化体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】国際公開第05/016491号
【特許文献2】欧州特許第0816065号明細書
【特許文献3】欧州特許第1142619号明細書
【特許文献4】欧州特許第1479882号明細書
【特許文献5】欧州特許第1437168号明細書
【特許文献6】欧州特許第1447535号明細書
【特許文献7】仏国特許発明第2902424号明細書
【特許文献8】仏国特許発明第2902423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
したがって、セラミック組立体、特に、非対称構造を有するブロックを備え、上述の応力に有効に耐えることが可能で、かつ内燃機関、とりわけディーゼル機関からの排気ガスを濾過する用途に適したセラミック体が必要とされる。
【0031】
本発明の一目的は、この必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の第1の主実施形態によると、この目的は、シールによって互いに結合されたブロックを備えるセラミック組立体、特にフィルター組立体であって、場合によってはこのセラミック体の横面が周囲コーティングで被覆され、このシールおよび/またはこの周囲コーティングが、セメント硬化体を含み、好ましくはセメント硬化体で構成され、前記セメント硬化体、特に前記シールのセメント硬化体が、前記シールにより組み立てられたブロックの向き合う面の少なくとも1面に垂直な断面において、200μm〜40ミリメートル(mm)の範囲にある等価直径を有する気孔(以下において「マクロ細孔(macropore)」と呼ばれる)を、前記断面において、前記マクロ細孔により占有される全表面積が、実測される全表面積(気孔間の表面積、前記マクロ細孔の表面積および他の気孔の表面積)の15%を超える、好ましくは20%を超え、かつ好ましくは80%未満、好ましくは65%未満、より好ましくは50%未満であるような量で有する組立体によって、達成される。
【0033】
特に、前記シールは、向き合い、かつ実質的に平行な、好ましくは実質的に平面であるシールの2つの面の間で広がることができる。
【0034】
以下の記述においてより詳細に見られるように、前記セメント硬化体は良好な接着力を有し、特に自動車車両からの排気ガスを濾過する用途において、良好な機械的強度を有するセラミック組立体をもたらす。
【0035】
ブロックは、特に多孔質ブロックとすることができ、とりわけ自動車両からの排気ガスを濾過するフィルターブロックとすることができる。セメント硬化体は、非対称流路が含まれているフィルターブロックの組立体に特に適している。
【0036】
前記断面により、必ずしもそれぞれの気孔の最大の断面を観察することが可能になるわけではない。したがって、マクロ細孔の中でもいくつかの気孔は、他の断面では計数されるとしても、計数されず、逆の場合も同様である。
【0037】
本発明による組立体は、1種または複数の下記の場合による特性を含むこともできる:
セメント硬化体は、乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として10%未満、好ましくは9.9%未満、好ましくは9%未満、好ましくは5%未満、好ましくは3%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.1%未満の無機繊維、特にセラミック繊維を含むことが好ましい。セメント硬化体は、このような繊維を含有しないことが好ましい。本発明者は、セメント硬化体の性能が、少量の無機繊維、特にセラミック繊維の存在によって、著しく影響を受けないことに気付いている;
セメント硬化体は、脱バインダー操作を受けていない。セメント硬化体には、乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として0.1%を超える、好ましくは2%を超える、より好ましくは3%を超える、かつ/または10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満の量の有機繊維が含まれる;
数において少なくとも80%、またはさらに少なくとも90%、またはさらに実質的に100%のマクロ細孔は、発泡体のセルの相互連結からもたらされる;
前記断面における細孔径分布は、500μm〜5mmの範囲にある孔径に集中する第1のモードと、1μm〜50μmの範囲にある孔径に集中する第2のモードとを含む。この分布は、前記第1のモードおよび第2のモードが、主モードであるようなものとなってよい;
数において50%を超える、またはさらに70%を超える前記マクロ細孔が、前記断面において、それらの長さとそれらの幅の間の比率が2を超えるような形状を有する;
前記シールにおいて、マクロ細孔は、前記シールがその間に配置されているブロックの面に実質的に平行に広がる;
前記断面において、数において50%を超える、60%を超える、またはさらに80%を超えるマクロ細孔が実質的にシールの厚さ全体にわたって広がり、前記マクロ細孔と前記ブロックの間に(すなわち、前記マクロ細孔の任意の1個と最も近いシール面との間に)少なくとも50μmの厚さのセメント硬化体が配置されることが好ましい;
前記断面において、数において50%を超える、60%を超える、またはさらに80%を超える、またはさらに実質的に100%のマクロ細孔は、シールの局所的厚さから100μmを引いたもの以下の幅を有することが好ましい;
前記断面において、数において50%を超える、60%を超える、またはさらに80%を超える、またはさらに実質的に100%のマクロ細孔は、100μmを超える、好ましくは300μmを超える、またはさらに400μmを超える、より一層好ましくは500μmを超える、または800μmを超える幅を有することが好ましい;
前記断面において、数において50%を超える、60%を超える、またはさらに80%を超える、またはさらに実質的に100%のマクロ細孔は、30mm以下、好ましくは15mm未満、かつ/または500μm以上、好ましくは1mm以上、もしくはさらに2mm以上、より好ましくは5mm以上の長さを有することが好ましい;
セメント硬化体は、鉱物質の質量に対する百分率として5%を超える無機中空球体を含む;
無機中空球体の分布は、合計100質量%について、下記の2つの部分に分かれる:
無機中空球体の60質量%〜80質量%の範囲にあり、110μmを超えかつ150μm未満のメディアン寸法を有する部分、および
無機中空球体の20質量%〜40質量%の範囲にあり、35μmを超えかつ55μm未満のメディアン寸法を有する部分;
セメント硬化体の全気孔率は、10%を超え、90%未満、好ましくは30%を超えかつ85%未満である;
セメント硬化体には、乾燥鉱物質の質量に対する百分率として0.05%を超えかつ5%未満の熱硬化性樹脂が含まれる;
セメント硬化体は、乾燥鉱物質に対する質量百分率として0.5%未満の酸化カルシウムCaO含量を有し、かつ/または50%を超える炭化ケイ素を含む;
炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)およびシリカ(SiO)は、セメント硬化体の乾燥鉱物質の質量の85%を超える;
炭化ケイ素は、200μm未満のメディアン寸法を有する粒子の形態で存在する;
セメント硬化体は、乾燥鉱物質に対する質量百分率として、少なくとも5%の耐火性粒子、特に、0.1μm〜10μmの範囲、好ましくは0.3μm〜5μmの範囲にある粒径を有するSiC粒子を有する;
前記断面において、数において50%を超える、またはさらに70%を超える、またはさらに80%を超えるマクロ細孔は、500μm〜5mmの範囲にある等価直径を有することが好ましい;
前記断面において、数において20%を超える、またはさらに30%を超えるマクロ細孔は、5mm〜10mmの範囲にある等価直径を有することが好ましい;
前記断面において、数において5%を超える、好ましくは10%を超えるマクロ細孔は、10mmを超える等価直径を有することが好ましい;
数において5%を超える、好ましくは10%を超えるマクロ細孔は、それらの実厚さ(actual thickness)の2倍を超える、もしくはさらに3倍を超える、もしくはさらに4倍を超える実長さおよび/または実幅、好ましくは実長さおよび実幅を有する気孔であることが好ましい;
前記断面において、セメント硬化体は、200μm〜20mmの範囲にある等価粒径を有する気孔であって、前記断面における前記気孔により占有される全表面積が、実測される全表面積の15%を超える、好ましくは20%を超えるような、好ましくは80%未満、好ましくは65%未満、より好ましくは50%未満であるような気孔を有することが好ましい;
シールの厚さは、実質的に一定である;
フィルターブロックは、実質的に直線で囲まれるかつ/または平行な、隣接する入口流路および出口流路がハニカムに配置された、覆瓦状(imbricated)の組立体を備える。入口および出口流路は、断面においてチェッカー盤状模様を形成するように、交互であることが好ましい;
ブロックには、入口流路と出口流路とが含まれ、前記入口流路の全体体積は、前記出口流路の全体体積を超える;
フィルターブロックは、30%を超える、もしくはさらに40%を超える、かつ/または65%未満、もしくはさらに50%未満の開気孔率を有する、多孔質セラミックブロックである;
前記ブロックは、連続的なシールを使用して組み立てられない。言い換えると、前記ブロック間にセラミックシール層がない領域が存在し、前記領域が、空気でまたは、ブロックに結合させる必要のない、場合によるスペーサーで占有されることが可能である;ならびに
前記ブロックは、シール面と接触する面の全体にわたって、前記シール面に接合されるわけではない、または考慮下にある帯域の機能として差異がある接着力で前記シール面に接合されるシールによって組み立てられる。
【0038】
前記セメント硬化体、特に前記シールのセメント硬化体は、考慮下にある前記シールにより組み立てられたブロックの向き合っている面の少なくとも1面に垂直な前記断面にかかわらずに前記量におけるマクロ細孔を有することが好ましい。一実施形態において、前記断面は、シールの横断方向の正中断面および/または長手方向の正中断面である。
【0039】
前記セメント硬化体、特に前記シールのセメント硬化体は、シールの横断方向の正中断面および/または長手方向の正中断面において、前記量におけるマクロ細孔を有することが好ましい。前記セメント硬化体、特に前記シールのセメント硬化体は、シールの横断方向の正中断面および長手方向の正中断面の両方において、前記量におけるマクロ細孔を有することが好ましい。
【0040】
前記周囲コーティングの前記セメント硬化体は、本体の長手軸、特に本体の長さの中央部に垂直な断面、および/または実質的に放射方向に広がる断面(すなわち、本体の長手軸を含む)において前記量におけるマクロ細孔を有することが好ましい。
【0041】
第2の主実施形態によると、本発明は、シールによって互いに結合されたブロックを備えるセラミック組立体、特にフィルター組立体であって、場合によってはこのセラミック体の横面が周囲コーティングで被覆され、このシールおよび/またはこの周囲コーティングが、セメント硬化体を含み、好ましくはセメント硬化体で構成され、前記セメント硬化体、特に前記シールのセメント硬化体が、このシールの横断方向の正中断面および/または長手方向の正中断面において、好ましくはこのシールの横断方向の正中断面および長手方向の正中断面の両方において、200μm〜40mmの範囲にある等価直径を有する気孔を、前記断面において、前記マクロ細孔により占有される全表面積が、実測される全表面積の15%を超える、好ましくは20%を超えるような、好ましくは80%未満、好ましくは65%未満、より好ましくは50%未満であるような量で有する組立体を提供する。
【0042】
第2の主実施形態によるセラミック組立体も、第1の主実施形態に従うセラミック体の1種または複数の任意の特性とすることができる特性を含むことができ、第1の主実施形態のマクロ細孔に関するこれらの特性は、第2の主実施形態の200μm〜40mmの範囲にある等価直径を有する前記気孔に当てはまる。
【0043】
特に、50%を超える数の前記気孔は、前記断面において500μm〜5mmの範囲にある等価直径を有することが好ましい。
【0044】
第3の主実施形態によると、本発明は、シールによって互いに結合されたブロックを備えるセラミック組立体、特にフィルター組立体であって、場合によってはこのセラミック体の横面が周囲コーティングで被覆され、このシールおよび/またはこの周囲コーティングが、数において5%を超える、好ましくは10%を超える「平坦化気孔(flattened pore)」と呼ばれる気孔であり、それらの実厚さの好ましくは2倍を超える、もしくはさらに3倍を超える、もしくはさらに4倍を超える実長さおよび/または実幅、好ましくは実長さおよび実幅を有する気孔を有するセメント硬化体を含み、好ましくはセメント硬化体で構成される組立体を提供する。
【0045】
数において50%を超える、60%を超える、またはさらに80%を超える、またはさらに実質的に100%の平坦化気孔は、30mm以下、好ましくは15mm未満、かつ/または500μm以上、好ましくは1mm以上、もしくはさらに2mm以上、より好ましくは5mm以上の実長さを有することが好ましい。
【0046】
数において50%を超える、60%を超える、またはさらに80%を超える、またはさらに実質的に100%の平坦化気孔は、100μmを超える、好ましくは300μmを超える、またはさらに400μmを超える、さらにより好ましくは500μmを超えるまたは800μmを超える実厚さを有することが好ましい。
【0047】
平坦化気孔、特に前記シールのセメント硬化体の平坦化気孔は、このシールの横断方向の正中断面および/または長手方向の正中断面において、好ましくはこのシールの横断方向の正中断面および長手方向の正中断面の両方において、200μm〜40mmの範囲にある等価直径を有することが好ましい。
【0048】
このシールの横断方向の正中断面および/または長手方向の正中断面において、前記平坦化気孔、特に前記シールのセメント硬化体の平坦化気孔により占有される全表面積が、実測される全表面積の15%を超える、好ましくは20%を超える、好ましくは、80%未満、好ましくは65%未満、より好ましくは50%未満であることが好ましい。
【0049】
数において50%を超える前記平坦化気孔は、前記断面において500μm〜5mmの範囲にある等価直径を有することが好ましい。
【0050】
数において50%を超える、60%を超える、またはさらに80%を超える、前記シールのセメント硬化体の平坦化気孔は、実質的にシールの厚さ全体にわたって広がり、好ましくは前記平坦化気孔と前記ブロックの間に(すなわち、前記平坦化気孔の任意の1個と最も近いシール面との間に)少なくとも50μmの厚さのセメント硬化体が配置されることが好ましい。
【0051】
第3の主実施形態によるセラミック組立体も、他の主実施形態によるセラミック体の1種または複数の任意の特性とすることが可能な特性を含むことができ、第1の主実施形態のマクロ細孔に関するこれらの特性は前記平坦化気孔に当てはまる。
【0052】
本発明はまた、考慮下にある実施形態にかかわらず、前記セメント硬化体それ自体も提供する。このセメントは、以下において、「本発明によるセメント硬化体」と呼ばれる。
【0053】
本発明による組立体の全てのシールは、本発明によるセメント硬化体から形成されることが好ましい。
【0054】
本発明はまた、本発明によるセメント硬化体を作製することが可能な微粒子混合物およびフレッシュセメントも提供する。
【0055】
最後に、本発明は、セラミック組立体、特にフィルター組立体の作製方法であって、連続して下記の段階:
a)出発装入物からフレッシュセメントを調製する段階と、
b)組み立てようとするブロック間に、前記フレッシュセメントをはさみ込む段階と、
c)任意で熱処理を用いて、前記フレッシュセメントを硬化させて、本発明によるセメント硬化体を得る段階と、
を含む方法を提供する。
【0056】
本発明者は、セメント硬化体において十分な量のマクロ細孔を得るいくつかの方法を発見している。特に、出発装入物に有機繊維を添加し、次いで場合によって、セメントが硬化した後、熱処理によってそれらを除去することが可能である。
【0057】
別法として、または相補的方法として、段階a)において調製したフレッシュセメント中に、特に、好ましくはそのフレッシュセメントにおいて分布させた複数の注入点でガスを吹き込むことにより、ガスを浸透させることが可能である。
【0058】
一実施態様において、段階a)において、発泡体の形態でフレッシュセメントが調製される。その場合、出発供給物に発泡剤を添加することが好ましい。
【0059】
気孔形成剤を添加することも有利であろう。
【0060】
最後に、本発明者は、無機中空球体を添加することも、マクロ細孔を作り出すのに容易にすることを発見している。
【0061】
無機中空球体の添加は、
無機中空球体の合計の60質量%〜80質量%の範囲にあり、110μmを超えかつ150μm未満のメディアン寸法を有する中空球体の第1の粉末と、
無機中空球体の合計の20質量%〜40質量%の範囲にあり、35μmを超えかつ55μm未満のメディアン寸法を有する中空球体の第2の粉末と
を添加する段階から、もたらされることが好ましい。
【0062】
前記第1および第2の粉末は、あわせて添加される無機中空球体の実質的に100%である。
【0063】
一実施形態において、組み立てようとするブロックは、段階c)の間、固定化される。
【0064】
定義
従来通り、用語「シール」は、耐火セメントの連続塊、すなわち、2つの隣接するフィルターブロックに向き合う2つのシール面の間に広がる、中断されず、かつ不連続ではない塊に適用される。
【0065】
フィルター組立体の「長手」方向は、前記本体を通過して濾過される流体の流れの一般的方向と定義される。フィルター体のもしくはシールの長手軸とは、前記フィルター体または前記シールの中心部を通り、長手方向に沿って伸びる軸である。「長手」面は、長手方向に平行な平面である。「メディアン」長手面は、考慮下にあるシールの厚さにわたって広がる長手平面(すなわち、シールが広がる一般的な平面に実質的に垂直である)であり、シールの長手軸を含む。
【0066】
「横断」面は、長手方向に垂直な平面である。「メディアン」横断面は、考慮下にあるシールを、そのシールの長さの実質的に中央部で横切る横断面である。
【0067】
一般に、ブロックは、シールの向き合う面が、少なくとも局所的に、実質的に平行となるように組み立てられる。ハニカム型ブロックでは、流路は、従来通り互いに平行に、ブロックの横面に平行に、ブロックの長手軸に沿って伸びる。その場合、横断面は、シールによって組み立てられるブロックの向き合う面(「シール面」)に実質的に垂直である。しかし、流路の他の配列も想定できる。
【0068】
図8では、長手軸Xを有する長方形の平行管状シール27について、メディアン横断面「Pt」と、メディアン長手面「Pl」の位置決めについて例示している。
【0069】
セメント硬化体の断面における気孔の「等価直径」は、その表面積が、セメント硬化体の前記断面について、例えば光学顕微鏡で撮影した前記断面の写真について、測定した気孔の開口部の表面積に等しい円板の直径である。一例として、図7は、断面図に現れる気孔Pを示す。この断面図では、気孔は面積Aを有する。この面積は、直径「d」を有する円板Dの面積と同じである。したがって、この断面において、気孔Pの等価直径は「d」である。
【0070】
断面における気孔の長さは、その断面におけるその最大寸法である。断面における気孔の幅は、その長さの方向と垂直な、その断面におけるその最大測定寸法である。
【0071】
気孔の実長さは、その最大寸法である。気孔の実幅は、その実長さの方向と垂直に測定したその最大寸法である。気孔の実厚さは、その実長さの方向およびその実幅の方向と垂直に測定したその最大寸法である。
【0072】
繊維の「等価直径」は、繊維の長さに垂直な、繊維の最大断面の表面積と等しい表面積を有する円板の直径である。
【0073】
「微粒子混合物」は、活性化に続いて硬化させるのに適した、乾燥したまたは湿った粒子の混合物である。
【0074】
微粒子混合物は、それが硬化過程を受ける場合、「活性化」されると言われる。活性化状態は、従来通り、水または他の液体で湿らせる結果得られる。活性化した微粒子混合物は、「フレッシュセメント」と呼ばれる。凝固(硬化)は、乾燥または例えば、樹脂の硬化によりもたらすことができる。最後に、加熱により、硬化した後の水分または残留液体の蒸発を促進することができる。
【0075】
フレッシュセメントの硬化により得られる固体塊は、「セメント硬化体」と呼ばれる。
【0076】
用語「一時的(temporary)」は、「熱処理により生成物から除去されること」を意味する。
【0077】
用語「球体」は、その球形を得ている方法にかかわらず、球形を有する、すなわち、その最小直径と最大直径の比率が0.75を超える粒子を意味する。球体は、完全に閉じたまたは外部に開いた、その体積が、その中空球体の全体の外側体積の50%を超える、中心部の空洞を有する場合「中空」と呼ばれる。
【0078】
用語、球体のまたは粒子の「粒径」は、その最大寸法である。
【0079】
従来通り、用語「メディアン寸法」または「メディアン直径」または「d50」は、粒子の混合物または1組の結晶粒であって、この粒径により、その混合物の粒子もしくはその組の結晶粒が、同数の第1および第2の母集団に分けられ、前記第1および第2の母集団が、それぞれメディアン寸法を超える粒径を有する粒子もしくは結晶粒、またはメディアン寸法未満である粒径を有する粒子もしくは結晶粒だけを含む、粒子の混合物または1組の結晶粒に与えられる。
【0080】
用語「熱硬化性樹脂」は、熱処理(熱、放射線)または物理−化学的処理(触媒、硬化剤)の後、非溶融性または不溶性の材料に変換することができるポリマーを意味する。こうして熱硬化性樹脂は、最初に冷えると、それらの定義された形態を獲得する。特に、使用条件下において、また自動車車両に用いられるフィルター体の再生下において、その形態を逆戻りさせることは不可能である。
【0081】
「溶融した」生成物は、特に電融により出発材料を溶融し、次いで融液を冷却することによる凝固を含む方法によって得られる。
【0082】
特に指示されない限り、用語「含む」は、「少なくとも1つを含む」を意味すると理解されるべきである。
【0083】
本発明の他の特性および利点は、下記の詳細な記述および添付図面の検討から、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】フィルター体の、平面A〜Aに沿った断面を図式的に示す図である。
【図2】フィルター体の、平面B〜Bに沿った断面を図式的に示す図である。
【図3】以下に記述される実施例1に従うセメント硬化体から形成されたシールを含むフィルター体の細部の断面の写真である。
【図4】以下に記述される実施例1に従うセメント硬化体から形成されたシールを含むフィルター体の細部の長手部分の写真である。
【図5】以下に記述される実施例2に従うセメント硬化体から形成されたシールを備えるフィルター体の細部の断面の写真である。
【図6】マクロ細孔により占有される表面積を測定するため、図5の写真を処理した結果を示す図である。
【図7】等価直径の定義を例示することを意図した気孔のイメージを示す図である。
【図8】長方形の平行管状シールについて、横断メディアン平面および長手メディアン平面の位置取りを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明による組立体は、下記の段階a)〜c)による方法を使用して、作製できる。
【0086】
段階a)において、本発明によるフレッシュセメントは、従来の方法を使用し、本発明による微粒子混合物を活性化する段階によって、調製できる。
【0087】
以下に記述されるように、本発明による微粒子混合物は、特に、耐火性粉末、有機繊維、無機中空球体、熱硬化性樹脂、気孔形成剤、分散剤、ならびに形成および焼結添加剤を含むことができる。一実施形態において、この微粒子混合物には、他の成分は含まれない。
【0088】
本明細書および特許請求範囲において、用語「耐火性粉末」は、用語「無機中空球体」と区別される。したがって、特に指示されない限り、耐火性粉末に関する特性は、無機中空球体を考慮せずに決定される。
【0089】
フィルターブロックを組み立てるための耐火性セラミックシール向けを意図したセメント硬化体を作製するのに従来使用されたいずれの耐火性粉末も、使用できる。
【0090】
耐火性粉末は、特に、炭化ケイ素および/またはアルミナおよび/またはジルコニアおよび/またはシリカ系の粉末とすることができる。
【0091】
耐火性粉末は、溶融生成物であることが好ましい。焼結生成物の使用も可能である。
【0092】
耐火性粉末は、微粒子混合物の乾燥鉱物質の質量の50%を超えることが好ましく、好ましくは70%を超える。
【0093】
一実施形態において、炭化ケイ素、ジルコニア、アルミナ、シリカ、および前記化合物の組合せ、例えば、ムライトまたはムライト−ジルコニアは一緒になって、乾燥鉱物質の質量の80%を超える、好ましくは95%を超える。
【0094】
微粒子混合物は、無機中空球体を除いて、
10%を超える、もしくはさらに30%を超える、もしくはさらに65%を超える、もしくはさらに良好には80%を超える、かつ/または90%未満の炭化ケイ素と、
1%〜50%の範囲にあるアルミナと、
1%〜50%の範囲にあるシリカと
を、乾燥鉱物質に対する質量百分率として、好ましくは合計およそ100%について含むことが好ましい。アルミナおよびシリカについてのこれらの範囲により、使用することが、また焼結後の機械的強度を増加させることがより容易になる。この炭化ケイ素の範囲により、セメント硬化体の良好な化学抵抗性、熱間剛性および熱伝導率が確保される。
【0095】
使用される耐火性粉末は、20μmを超える、好ましくは45μmを超える、より好ましくは60μmを超える、かつ/または200μm未満の、150μm未満の、好ましくは120μm未満の、より好ましくは100μm未満のメディアン寸法を有することが好ましい。
【0096】
しかし、この微粒子混合物には、乾燥鉱物質に対する質量百分率として5%を超える、もしくはさらに10%を超える、かつ/または50%未満の、もしくはさらに20%未満の、メディアン直径5μm未満、好ましくは1μm未満を有する耐火性粉末を補充されることが好ましい。このことは、フレッシュセメントの凝集力が、乾燥後向上されることを意味する。
【0097】
微粒子混合物は、脱バインダーの間に任意で除去される有機繊維を含むことが好ましい。
【0098】
微粒子混合物中の有機繊維の量は、微粒子混合物の乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として0.1%を超える、好ましくは2%を超える、より好ましくは3%を超える、かつ/または10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満であることが好ましい。
【0099】
有機繊維は、特に、アクリル繊維またはポリエチレン繊維などの合成有機繊維、および木材またはセルロース繊維などの天然繊維によって構成される群から選択できる。
【0100】
有機繊維は、段階c)における場合による熱処理の前にセメント硬化体中に存在することができるように、水溶性ではないことが好ましい。
【0101】
好ましい実施形態において、有機繊維はセルロース繊維である。前記繊維の使用は、それらを除去する間の有害な発散物(emanation)を制限するのに有利である。
【0102】
有機繊維の平均長さは、好ましくは0.03mmを超える、好ましくは0.1mmを超える、かつ/または20mm未満、好ましくは10mm未満である。
【0103】
有機繊維の平均等価直径は、5μmを超える、好ましくは10μmを超える、より好ましくは20μmを超える、かつ/または200μm未満、好ましくは100μm未満、好ましくは50μm未満、より一層好ましくは40μm未満であることが好ましい。
【0104】
有機繊維を添加することは、特に有利である。前記繊維は、熱処理により除去でき、それにより気孔のための余地を残す。その場合、セメント硬化体における細孔径およびそれらの分布を制御することは容易である。
【0105】
その上、有機繊維の使用は、ブロック表面にフレッシュセメントを塗布した後にもたらされる水分の移動中における、それらの粒子の保持によって、また集塊化によって、マクロ細孔の形成に寄与する。この集塊化はまた、細長い気孔の形成ももたらす。しかし、これらのマクロ細孔形成についての機構のための学説は、本発明者により説明されていない。
【0106】
微粒子混合物中の無機中空球体の存在も、マクロ細孔を作り出すのに寄与する。また再び、その機構は、説明されていない。以下に記述されるものなどの無機中空球体を添加するだけでは、本発明に従うマクロ細孔を作り出すのに十分ではない。
【0107】
微粒子混合物は、乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として3%を超える、好ましくは少なくとも5%の、かつ/または好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満の無機中空球体を含むことが好ましい。
【0108】
無機中空球体は、出発材料、例えば冶金学的過程からのフライアッシュの溶融または燃焼の段階、次いで、一般に凝縮段階を含む方法によって得られる球体であることが好ましい。
【0109】
無機中空球体は、質量百分率として、好ましくは合計少なくとも99%について、次の化学組成:20%〜99%の範囲におけるシリカ(SiO)、および1%〜80%の範囲におけるアルミナ(Al)を有することが好ましい;残量は不純物、特に酸化鉄(Fe)またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物により構成される。
【0110】
使用できる無機中空球体の例は、商標名「e−spheres」(登録商標)のもとにEnviro−spheres社によって供給されるものである。それらは典型的に、シリカSiO 60%、およびアルミナAl 40%を含み、従来、ペイントの、もしくは土木工学用途のコンクリートのレオロジーを改良するのに使用され、またはプラスチック製品のコストを低減させるため、鉱物質フィラーを構成するのに使用されている。
【0111】
無機中空球体は、0.8以上、好ましくは0.9以上の球形度を有することが好ましい。数において80%を超える、好ましくは90%を超える無機中空球体が、閉じられていることがより好ましい。
【0112】
無機中空球体の壁が緻密であり、または低気孔率であることが好ましい。無機中空球体は、それらの理論密度の90%を超える密度を有することが好ましい。
【0113】
一実施形態において、無機中空球体の母集団のメディアン寸法は、80μmを超える、好ましくは100μmを超える、かつ/または160μm未満、より好ましくは160μm未満である。無機中空球体のメディアン寸法は、およそ120μmであることがより好ましい。
【0114】
好ましい実施形態において、無機中空球体の分布は、合計100質量%について、下記の2つの部分に分かれる:
無機中空球体の60質量%〜80質量%の範囲にあり、好ましくはおよそ70質量%であり、110μmを超える、好ましくは120μmを超える、かつ/または150μm未満、好ましくは140μm未満、好ましくはおよそ130μmのメディアン寸法を有する部分、および
無機中空球体の20質量%〜40質量%の範囲にあり、好ましくはおよそ30質量%であり、35μmを超える、好ましくは40μmを超える、かつ/または55μm未満、好ましくは50μm未満、好ましくはおよそ45μmのメディアン寸法を有する部分。
【0115】
微粒子混合物はまた、乾燥鉱物質に対する質量百分率として0.05%を超える、好ましくは0.1%を超える、より好ましくは0.2%を超える、かつ/または5%未満の熱硬化性樹脂も含むことができる。
【0116】
熱硬化性樹脂は、エポキシ、シリコーン、ポリイミド、フェノールおよびポリエステル樹脂から選択されることが好ましい。
【0117】
熱硬化性樹脂は、外界温度で水に可溶であることが好ましい。
【0118】
少なくとも微粒子混合物を活性化した後、熱硬化性樹脂は、それが硬化されるまで粘着性(tacky nature)を有することが好ましい。こうして、フレッシュセメントの位置決めが容易になり、熱処理までその形状が保持される。熱硬化性樹脂は、Haake社VT550粘度計を使用して測定し、せん断勾配(shear gradient)1秒当たり12(s−1)について、50パスカル−秒(Pa・s)未満の粘度を有することが好ましい。
【0119】
用途に応じて、外界温度で硬化するように、例えば触媒の添加に続いて乾燥温度で、または熱処理温度で硬化するように、樹脂が選択されると有利である。
【0120】
熱硬化性樹脂の存在は、特に寒冷時、セメント硬化体の機械的強度を向上させるのに有利である。
【0121】
熱硬化性樹脂はまた、組立体の機械的強度も向上させ、このことは、組立体を操作する場合有用であり、特にキャンニングの場合有利である。
【0122】
好ましい実施形態において、使用される任意の熱硬化性樹脂は、それを添加する前に、例えば水で溶解されて、その粘性を低下させる。
【0123】
樹脂の硬化を促進するため、樹脂用の触媒も添加できる。触媒、例えばフルフリルアルコールまたは尿素は、その型の樹脂の一機能として選択され、当業者によく知られている。
【0124】
気孔を作り出すため、例えば、セルロース誘導体、アクリル粒子、黒鉛粒子およびこれらの混合物から選択される気孔形成剤を、本発明による微粒子混合物に組み込むこともできる。
【0125】
しかし、現在知られている気孔形成剤を単に添加するだけでは、本発明による組立体を得るため必要なマクロ気孔率を作り出すのに十分ではない。
【0126】
従来型の現行気孔形成剤を添加することにより作り出される気孔率は、一般にセメント中に不均一な形で分散される。さらに、シールによって組み立てられたブロックの向き合う面の少なくとも1面に垂直な断面では、気孔形成剤による気孔の等価直径は一般に200μm未満である。
【0127】
本発明者はまた、気孔形成剤を増量すると、または気孔形成剤粉末の粒子直径を増加させると、発生する気孔の直径の増加をもたらし得ること、またシールの機械的性質の劣化をもたらし、これは組立体の操作に特に有害であることも確立している。したがって、乾燥微粒子混合物の体積に対して、10体積%を超える気孔形成剤の添加は、逆効果であると考えられる。
【0128】
発泡体の形態のフレッシュセメントを作製するために、微粒子混合物に、乾燥鉱物質に対する質量百分率として0.5%〜10%の範囲にある、石鹸または石鹸誘導体などの相溶性発泡剤を添加することが好ましい。
【0129】
乾燥鉱物質に対する質量百分率として1%を超える、2%を超える、かつ/または8%未満の、6%未満のもしくは5%未満の発泡剤を添加することが可能である。
【0130】
発泡剤は一時的であることが好ましい。発泡剤は、アンモニウム誘導体、例えば、重炭酸アンモニウム、好ましくは硫酸アンモニウムもしくは炭酸アンモニウム、酢酸アミル、酢酸ブチルまたはジアゾアミノベンゼンから選択されることが好ましい。
【0131】
微粒子混合物に、乾燥鉱物質に対する質量百分率として0.05%〜5%の範囲にある、動物または植物由来の親水コロイドなどのゲル化剤を、さらに補充することが好ましく、このゲル化剤は、発泡に続いて熱可逆的な形でゲルを形成することができる。挙げ得るゲル化剤の例は、キサンタンおよびカラゲーン(carrageen)である。
【0132】
乾燥鉱物質に対する質量百分率として0.1%を超える、0.15%を超える、かつ/または3%未満の、2%未満の、1%未満の、もしくはさらに0.8%未満のゲル化剤を添加することが可能である。
【0133】
使用できる発泡剤およびゲル化剤は、例えばFR 2 873 686またはEP 1 329 439に記述されている。これらの文献によれば、安定剤も添加できる。
【0134】
発泡剤およびゲル化剤の両方を添加すると、セル間の相互連結性が増大する。
【0135】
微粒子混合物は、乾燥鉱物質に対する質量百分率として0.1%〜2%の範囲にある、好ましくは0.1%〜0.5%の範囲にある、好ましくは0.5質量%未満の分散剤を含むことができる。
【0136】
分散剤は、例えば、アルカリ金属のポリリン酸塩またはメタクリレート誘導体から選択できる。任意の知られている分散剤は:完全イオン性例えばHMPNa、完全立体型(steric)例えばポリメタクリル酸ナトリウム型のもの、またはイオン性および立体型の両方、として考えることができる。分散剤を添加することは、50μm未満の寸法を有する微細粒子がより良好に分布され、そのためセメント硬化体の機械的強度の助けになることを意味する。
【0137】
上述の成分の他に、微粒子混合物は、1種もしくは複数の成形または焼結添加剤を、当業者によく知られている割合で所定の使用において含むこともできる。
【0138】
挙げ得る、使用できる添加剤の非限定的な例は下記の通りである:
一時的有機結合剤、例えば樹脂、カルボキシメチルセルロース、デキストリンなどのセルロースもしくはリグノン(lignone)誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、またはリン酸もしくはケイ酸ナトリウムなどの他の化学的硬化剤など;
無機結合剤、例えばシリカゲルまたはコロイド形態のシリカなど;
化学的硬化剤、例えばリン酸、モノリン酸アルミニウムなど;
焼結促進剤、例えば二酸化チタンまたは水酸化マグネシウムなど;
成形剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはカルシウムなど。
【0139】
微粒子混合物は、特に、乾燥鉱物質に対する質量百分率として5%〜20%の範囲にあるシリカおよび/またはアルミナおよび/またはジルコニアゾルを含むことができ、前記ゾルは、20質量%〜60質量%のコロイドを含む。
【0140】
一実施形態において、微粒子混合物には、COなどのガスを封入した樹脂のマイクロカプセルは含まれない。
【0141】
成形または焼結添加剤が種々の割合で組み込まれるが、脱バインダー後にセメント硬化体の種々の成分の質量割合が実質的に変更されないように十分に低い割合である。
【0142】
微粒子混合物の種々の成分は、例えば、強力な遊星型混合機または他の方法で、均斉化されるまで練混ぜることが好ましい。
【0143】
本発明による微粒子混合物は、乾燥していることが好ましい。しかし、この実施形態が好ましくない場合でも、上述の成分のいくつか、特に熱硬化性樹脂または分散剤は、液体形態で添加できる。本発明は、このような湿った微粒子混合物も提供する。
【0144】
通常、微粒子混合物に、活性化させ、本発明によるフレッシュセメントを得るために水分が添加される。
【0145】
フレッシュセメントは、乾燥物(鉱物質または非鉱物質)に対する質量百分率として40%未満の水分含量を有することが好ましい。
【0146】
水分を含む他の成分を互いに練混ぜた後、有機繊維を添加することがより好ましい。
【0147】
有機繊維を添加する代替策として、または有機繊維を添加する相補策として、マクロ細孔を作り出すために、フレッシュセメントを発泡させることが可能である。
【0148】
この目的のために使用できる、ゲル化による発泡方法の例は、FR 2 873 686またはEP 1 329 439に記述されている。
【0149】
混合機が回転している間に粉末を添加し、適正な場合、続いて発泡剤を添加することが好ましい。
【0150】
本発明によるフレッシュセメントを発泡させるため、フレッシュセメント中へのガス、とりわけ空気の進入に有利な渦流を作り出すことによる、強力な練混ぜを特に用いることができ;かつ/またはガスを吹き込むことができる。
【0151】
強力な練混ぜの効率は、混合機ブレードの回転速度、寸法および形状、ならびに、混合機の直径に対するブレードの直径を変更することにより調節できる。練混ぜは大気圧で行うことができる。
【0152】
ガスを吹き込むと、特に正確な形でマクロ気孔率を制御することができる。ガス、とりわけ空気を吹き込むことはまた、マクロ細孔以外の他の型の気孔率を作り出すことができることも意味する。さらに発泡剤を添加することは、有利な任意選択となる。
【0153】
ガスは、適切な混合機を使用して注入できる。フレッシュセメント内で気孔が実質的に均一な形で分布されるように、ガスは複数の注入点を介して吹き込まれることが好ましい。0.05mmを超える、かつ/または5mm未満の直径を有するオリフィスを通して、ガスが吹き込まれることが好ましい。こうして、ガス気泡の直径は、一般に200μm未満にとどまる。水分の添加に続く練混ぜまたは均斉化段階の間に、ガスが吹き込まれることがより好ましい。
【0154】
フレッシュセメント1リットル当たり0.5リットルを超える、好ましくは0.7リットルを超える、好ましくは1リットルを超えるガスが、かつ/または、フレッシュセメント1リットル当たり2.5リットル未満、好ましくは2.0リットル未満、より好ましくは1.8リットル未満のガスが注入されることが好ましい。注入の圧力は、一定であることが好ましいが、決定的因子ではない。
【0155】
発泡体を作製する場合、微粒子混合物粒子の粒度を選択することは、セラミックシール層として塗布する前に、その発泡体の構造的凝集力を調節することができることを意味する。
【0156】
段階b)において、組み立てようとするブロック、特にフィルターブロックの間に、または準備が整った組立体の周囲に、フレッシュセメントがはさみ込まれる。
【0157】
任意のブロックが使用できる。特に、それらのブロックは、30%を超える、もしくはさらに40%を超える、かつ/または60%未満の、もしくはさらに50%未満の開気孔率を有する多孔質セラミックブロック、とりわけ序説において記述されたものなどのフィルターブロックとすることができ、その場合は、このセラミック体はフィルター体である。
【0158】
内燃機関、特にディーゼル機関からの排気ガス中に含有される粒子を濾過することを意図した、このようなブロックは、ハニカム配列に、好ましくは実質的に長方形の、隣接する入口流路と出口流路との重なり合った列を備える。入口および出口流路は、断面においてチェッカー盤模様を形成するように、交互であることが好ましい。
【0159】
前記入口流路の全体の体積は、前記出口流路の全体の体積を超えることが好ましい。2つの水平または垂直な列の流路を分離している中間の壁は、特に、断面が波打っている形状、例えば図3および5などのシヌソイド(正弦曲線)形状を有することができる。図のように、流路の幅は、実質的に正弦波の周期の半分に等しいことが好ましい。
【0160】
ブロックは、焼結材料から形成され、50質量%を超える、もしくはさらに80質量%を超える再結晶炭化ケイ素SiC、および/またはアルミナチタン酸塩および/またはムライトおよび/またはコージライトおよび/または窒化ケイ素および/または焼結金属を含むことが好ましい。
【0161】
フレッシュセメントは、組み立てようとするブロックの表面に連続した形で塗布できる、すなわち、ブロックの向き合う面の全表面にわたって塗布できる。
【0162】
しかし、好ましい実施形態において、フレッシュセメントは、前記表面の一部、10%と90%の間だけを被覆する。したがって、2つのブロック間のシールが中断される。2つのブロック間に所定の距離を確保するため、フレッシュセメントの小塊(blob)の間に、スペーサーを配置することができる。
【0163】
一実施形態において、発生する可能性のある熱機械的応力を最適な形で弱めるように、複数の、局所的に適応させたシール部分を形成するため、フレッシュセメントは不連続な形で塗布される。
【0164】
下記の特定的な適応が可能である:
少なくとも2箇所の前記シール部分が、それらの組成および/またはそれらの構造および/またはそれらの厚さにおいて異なる材料を含む;
前記シール部分のセメントが、値が10%以上異なる弾性率を有する;
少なくとも1箇所の前記シール部分が、異方性の弾性性状を有する;
前記シール部分が、セメントに含浸したシリカを含む;
少なくとも2箇所の前記シール部分の厚さが、少なくとも2倍の比率で異なる;
少なくとも1箇所の前記シール部分が、隙間を備える;
前記隙間が、前記本体の上流面および下流面の一方の上に向かって開いている;
前記隙間が、前記シール部分で組み立てられた前記ブロックの面に実質的に平行な平面(「シール面」)内に形成される;
前記隙間の長さまたは深さが、前記本体の全長の0.1〜0.9倍の範囲にある;
前記隙間が、前記ブロックの片側に実質的に隣接している;
前記隙間には、前記ブロックにも、それが配置されている前記シール部分のセメントにも接着されない充填材料が、少なくとも一部充填されている;また
前記充填材料は、窒化ホウ素またはシリカである。
【0165】
FR 2 833 857は、前記シールの作製方法を記述している。
【0166】
フレッシュセメントは、得られたセメント硬化体が、それが結合するブロックの2つのシール面上に、同一の力で接着するように、または同一シール面内で異なることができる接着力で接着するように配置できる。
【0167】
一実施形態において、フレッシュセメントは、シールの第1の面が、少なくとも1つの、シールによる強い接着力の第1の領域と、前記シールによる弱いまたはゼロ接着力の領域とを含むように塗布され、前記領域がそれぞれ、そのシールの第2の面の弱いまたはゼロ接着力の第1の領域と、前記シールによる第2の面の強い接着力の領域とに向き合って、配置されることが好ましい。シールの第1の面は、シールの第2の面の弱いまたはゼロ接着力の第2の領域に向き合って配置されたシールによる強い接着力の第2の領域を含むこともできる。FR 2 853 255は、このようなシールの作製方法を記述している。
【0168】
次いで、ブロックは、フレッシュセメントを使用して、一体化される。
【0169】
フレッシュセメントの量は、一定であることが好ましいシールの厚さが4mm未満、好ましくは3mm未満であるように決定されることが好ましい。
【0170】
フレッシュセメントが位置決めされると直ぐに、その間にフレッシュセメントが配置されているブロック面と実質的に平行に、有機繊維がそれ自体配向され、マクロ細孔を作り出す。したがって、有機繊維を除去する何らかの操作の前に、本発明による組立体を作製することが可能である。
【0171】
段階c)において、フレッシュセメントが硬化中に膨張するのを防止するため、例えばEP 1435348において記述されるように、例えば、ブロックをスペーサーで留め、こうして留めたブロックを結束することによって、フィルターブロックは、所定の位置に保持されることが好ましい。
【0172】
発泡剤およびゲル化剤が存在する場合、ゲル化剤がキサンタン、アガロースまたは、増粘剤として作用する他のゲル化剤であれば、フィルターブロックは、所定の位置に保持されることが好ましい。
【0173】
一実施形態において、ゲル化剤は、ゼラチンまたは、冷却するとゲル化する他のゲル化剤である。
【0174】
乾燥中の膨張は、こうして有利に制限される。したがって、フィルターブロックを、所定の位置に保持することは、もはや不可欠ではなくなる。
【0175】
ブロック間に打ち込んだ後、フレッシュセメントは好ましくは、空気中でまたは好ましくは残留湿分が0〜20%の範囲にある湿気調整した雰囲気中で、好ましくは100℃〜200℃の範囲にある温度で乾燥される。
【0176】
一実施形態において、発泡剤およびゲル化剤が存在する場合、ゲル化が終わる前に、より好ましくはゲル化を開始する前に、またはゲル化なしでも、フレッシュセメントは乾燥される。例えば、ゼラチン型ゲル化剤では、ゲル化温度未満まで温度が低下する前に、乾燥を行うことができる。
【0177】
乾燥期間は、特にシールの方式、およびセラミック組立体の方式の関数として、数秒〜10時間の範囲にあることが好ましい。乾燥は、熱硬化樹脂の重合、および有機バインダーの硬化を促進する。こうして、本発明によるセメント硬化体が得られる。
【0178】
場合による熱処理は、酸化性雰囲気中で、好ましくは大気圧で、好ましくは400℃〜1200℃の範囲にある温度で行われることが好ましい。
【0179】
熱処理は、脱バインダーおよび/または焼成を含む。
【0180】
脱バインダーは、有機成分の除去をもたらす温度で行われる。
【0181】
乾燥後、有機繊維は、依然として存在できる。したがって、これらの繊維を除去するのに十分な温度における脱バインダーは、気孔を有利に作り出すことができる。
【0182】
焼成は一般に、機械的強度の向上を伴う。
【0183】
冷時から冷時までおよそ1〜20時間の範囲にあることが好ましい焼成時間は、材料に応じてだけでなく、シールの寸法および形状に応じても変動する。
【0184】
焼成は、インサイチューで行うこともできる。特に、自動車車両向けフィルターを意図されるフィルター体について、フィルター体は、有機繊維を除去する前に自動車車両に取り付けることができ、有機繊維を除去するには、再生温度で十分である。一例として、セルロース繊維の燃焼温度はおよそ200℃である一方、フィルター体の再生温度は、典型的におよそ500℃またはもっと高い。
【0185】
焼成後、本発明による組立体が得られる。
【0186】
図3〜5において、組立体50の細部が示される。この組立体は、非対称構造を有するハニカム中にブロック52および54を備えていた。これらのブロックは、マクロ細孔58を有するシール57の2つのシール面55および56によって組み立てられる。
【0187】
マクロ細孔58は、図3および4のように、シール面間で平坦化した気泡に似た、比較的規則正しい形状を有することができ、または図5のように、特にそれらが、フレッシュセメントが発泡する結果である場合、高度に不規則なものとなり得る。この図では、マクロ細孔は、発泡体のセルの相互連結からもたらされる。
【0188】
次いで、組立体は機械加工することができ、場合によって例えば、EP 1 142 619またはEP 1 632 657において記述されるように、周囲セラミックコーティングで被覆することができる。前記周囲コーティングは、本発明によるフレッシュセメントから作製することができる。
【0189】
組立体は、相補的な緻密化熱処理、または焼結さえも受けることができる。焼結温度は、1000℃を超えることが好ましいが、ブロックの劣化を招いてはならない。
【0190】
セメント硬化体の全気孔率は10%を超える、好ましくは30%を超える、かつ/または90%未満、好ましくは85%未満とすることができる。
【0191】
細孔径分布は、多峰性、好ましくは双峰性となってよい。特に、セメント硬化体は、マクロ細孔の量が測定される前記断面において、典型的に50μm未満の等価直径を有するミクロ細孔を含むことができる。
【0192】
細孔径分布は、500μm〜5mmの範囲にある孔径(マクロ細孔)に中心のある第1のモードと、1μm〜50μmの範囲にある孔径(ミクロ細孔)に中心のある第2のモードとを含むことが好ましい。この分布は、前記第1のモードおよび第2のモードが、主なモードであるようなものとなってよい。
【0193】
ミクロ細孔の存在は、熱機械的強度を向上させる一方、断熱性を増大させる。ミクロ細孔の存在はまた、セメント硬化体の密度の低下、したがって本体の質量の減少に寄与し、このことは、本体が、自動車車両に搭載するフィルター体である用途のために特に有利である。
【0194】
しかし、マクロ細孔の量が評価される前記断面において、ミクロ細孔の表面積は、全表面積の20%未満であることが好ましい。
【0195】
マクロ細孔は、例えば、発泡体型構造において、相互連結させることができる。しかし、このような相互連結は、本発明にとって不可欠ではない。
【0196】
一実施形態において、数において50%を超える、好ましくは80%を超える、またはさらに90%を超えるマクロ細孔が細長い形状を有する、すなわち、それらの長さとそれらの幅の間の比率が2を超えるようなものである(この長さと幅は、マクロ細孔の量が評価される前記断面において測定される)。
【0197】
図4において見ることができるように、数において50%を超える、好ましくは80%を超える、またはさらに90%を超えるマクロ細孔が、シールがその間に配置されているブロック面に実質的に平行に広がることが好ましい。数において50%を超える、好ましくは80%を超える、またはさらに90%を超えるマクロ細孔が、実質的にシールの全体厚さにわたって広がることがより好ましい。図4において見ることができるように、マクロ細孔は、それにより、向き合っているブロック面を接続する「ブリッジ」となる物質を、マクロ細孔間で画定している。しかし、少なくとも50μmのセメント硬化体の厚さ「e」は、マクロ細孔をシール面から離している。
【0198】
セメント硬化体は、質量百分率として酸化カルシウム(CaO)含量0.5%未満を有することが好ましい。こうして、CaOの存在によって時々生じる脆弱化が、制限される。出発材料によって持ち込まれる何らかの不純物の形態で存在するものでない限り、セメント硬化体にはCaOが含まれないことが好ましい。こうして、特にフィルター体への適用におけるセメント硬化体の寿命が長くなる。この機械的強度における向上はまた、セラミック繊維含量を制限することができ、もしくはセラミック繊維を除く(dispensed)ことさえもでき、かつ/または炭化ケイ素含量を増加させることができることも意味する。
【0199】
(実施例)
下記の実施例は、非限定的な例示として提供される。
【0200】
表1の上部部分は、試験した種々のセメント硬化体の出発装入物の組成を質量百分率として提供する。
【0201】
下記の出発材料を使用した:
無機シリカ−アルミナ繊維:長さ<100mmおよびショット<5%;
SiC含量>98%を有する0〜0.2mm SiC粉末、Saint Gobain Materials社製;
SiC含量>98%を有するメディアン直径およそ60μmのSiC粉末、Saint Gobain Materials社製;
SiC含量>98%を有するメディアン直径およそ30μmのSiC粉末、Saint Gobain Materials社製;
メディアン直径およそ10μmの、SiC含量>98%を有するDPF C SiC粉末、Saint Gobain Materials社製;
SiC含量>98%を有するメディアン直径およそ2.5μmのSiC粉末、Saint Gobain Materials社製;
メディアン直径0.3μmのSiC粉末;
メディアン直径およそ40μmの、Treibacher社により供給された電融ムライトジルコニア粉末;
メディアン直径およそ120μmを有する、Treibacher社により供給された電融ムライトジルコニア粉末(参照:「FZM 0〜0.15」);
Envirospheres社によりE spheresとして供給された、メディアン直径およそ137μmのSLG中空球体;
Envirospheres社によりE spheresとして供給された、およそ40μmのSLG75中空球体;
Almatis社により供給された、CL370仮焼アルミナ;
Elkem社により供給された、971Uフュームドシリカ;
Kerphalite KF5(d50:5μm)、Damrec社より;
Rettenmaier Arbocel社により供給されたセルロース有機繊維、等級B400、長さ900μm、平均等価直径20μm、密度20〜40g/リットル;
ケイ酸ナトリウム粉末分散剤;
トリポリリン酸ナトリウム粉末分散剤;
SKW Biosystems社により供給されたsatiaxane(登録商標)CX90T型のキサンタンガム;
セルロース由来の有機結合剤;
30%コロイドシリカゾル;
粉末エポキシ樹脂;
樹脂用触媒(液体);
Zschimmer Schwarz GmbH社により供給された、W53FL発泡剤(アクリル酸アンモニウム系の分散剤)。
【0202】
例Ref.1、Ref.2および実施例1の活性化した微粒子混合物を、非強力型遊星型混合機内で、
乾燥出発材料を2分間乾式混合する段階;次いで
任意で結合剤(多糖)および適正な場合触媒と共に、水を添加する段階;
5〜10分間練混ぜ、十分な調和を得てシールを形成する段階
を含む従来の手順を使用して調製した。
【0203】
こうして得られたフレッシュセメントについて測定した粘度は、Haake社VT550粘度計を使用して測定し、せん断勾配12s−1について、典型的に5mPa・s−1〜20mPa・s−1の範囲にあり、好ましくは10mPa・s−1〜13mPa・s−1の範囲にあった。
【0204】
対照標準1および2(「Ref.1」、「Ref.2」)は、EP 0 816 065の実施例1に従う繊維質セメント硬化体、およびFR 2 902 424において記述されるセメント硬化体に対応する。
【0205】
実施例2および3は、ガス吹き込みによる発泡に適応させた混合機内で調製した発泡セメント硬化体であり、下記の手順を用いた:
水+シリカゾル+樹脂触媒+キサンタンガムの混合物を、500rpm(1分当たりの回転数)の回転速度で15分間均斉化する段階;
回転を500rpmに維持しながら、他の粉末を添加する段階;
硫酸アンモニウム系発泡剤を添加し、5分間練混ぜる段階;
フレッシュセメント1リットル当たり体積1.5リットルの空気を吹き込むように空気を注入する段階であり、均質なペーストが得られるまで混合機の速度を200rpmに減速する段階。
【0206】
実施例1〜3は、本発明によるセメント硬化体である。
【0207】
水銀ポロシメーター法を使用して、開気孔率を測定した。
【0208】
調製したフレッシュセメントにより、フィルター体を作製するための、外側寸法:35.8×35.8×8.75mmを有する、日常使用における平行管状フィルターブロックを組み立てた。シールの厚さを一定に保持するため、組み立てようとするフィルターブロックのシール面の間に、厚さ1mmのくさび、または「スペーサー」を配置した。
【0209】
このやり方で、3個のフィルターブロックを互いに連続させて組み立てた。
【0210】
実施例2および3(発泡セメント硬化体)において、乾燥中のフレッシュセメントの膨張を抑えるまたはさらに止めるために、3個のフィルターブロックを結束した。
【0211】
次いで、3個のフィルターブロックにより構成される本体を、空気中で100℃において1時間乾燥した。
【0212】
実施例1〜3の特定の場合、操作および機械加工のための十分な凝集力をもたらすため、次いで本体を、空気中で1100℃において1時間焼成した。
【0213】
シールの断面(ブロックの長さに平行して伸びる流路の方向に垂直な平面における)についての、光学顕微鏡を使用して撮影した写真の画像解析により、マクロ細孔として現れている気孔の表面積を測定することが可能となり、また前記マクロ細孔の合計表面積の、観察される全表面積に対する比率を計算することが可能となった。
【0214】
下記の接着力試験を使用して、セラミックシール層の接着力を測定した。2個の周囲のフィルターブロックを支持し、支持点間の距離を70mmとするように、組立体を置いた。中心のフィルターブロックに、1分間当たり0.5ミリメートル(mm/分)移動するパンチ(押し抜き具)により圧力を掛けた。中心のフィルターブロックが組立体から外れるときの力を測定し、Nで表されるこの破断力を、積2×35.8×75mmで割ることにより、MPaにおける応力を計算した。このセメントによる組立体の十分な凝集力を確保するには、0.1MPa以上の接着抵抗力が必要であると考えられる。
【0215】
【表1】

【0216】
表1は、本発明のセメント硬化体が、高度に満足される接着性状を有することを示す。その上、それらの、特に実施例2および3によるセメント硬化体についての、非常に高いマクロ気孔率は、いくつかの用途において本発明のセメント硬化体に有利な断熱性状をもたらす。
【0217】
特に、驚くべきことに、良好な断熱能力は、自発的または制御の悪い再生段階の間、極めて過酷な熱機械的応力に曝されるフィルター体にとって有利なものである。
【0218】
本発明が、非限定的な例示として提供されている、記述した実施形態に限定されないことは明らかである。
【符号の説明】
【0219】
SiC 炭化ケイ素
50 組立体
52、54 ブロック
57 シール
58 マクロ細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールによって互いに結合されたブロックを備えるセラミック組立体であって、場合によっては前記セラミック体の横面が周囲コーティングで被覆され、前記シールおよび/または前記周囲コーティングが、セメント硬化体を含み、前記シールにより組み立てられた前記ブロックの向き合う面の少なくとも1面に垂直な断面内に、以下において「マクロ細孔」と称する200μm〜40mmの範囲にある等価直径を有する気孔を、前記断面において前記マクロ細孔により占有される全表面積が、実測される全表面積の15%を超えかつ80%未満であり、50%を超える数の前記マクロ細孔が、500μm〜5mmの範囲にある等価直径を有する組立体。
【請求項2】
前記セメント硬化体が、乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として10%未満の無機繊維を含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記セメント硬化体が、前記乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として0.1%を超える量の有機繊維を含む、請求項1または2に記載の組立体。
【請求項4】
少なくとも80%の数の前記マクロ細孔が、発泡体のセルの相互連結からもたらされたものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項5】
前記セメント硬化体が、前記乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として3%を超えかつ10%未満の量の有機繊維を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項6】
5%を超える数の前記マクロ細孔が、それらの実厚さの2倍を超える実長さおよび実幅を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項7】
50%を超える数の前記マクロ細孔が、前記断面において測定した、それらの長さとそれらの幅の間の比率が2を超えるような形状を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項8】
前記マクロ細孔により占有される全表面積が、前記断面において、前記実測される全表面積の20%を超えかつ50%未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項9】
前記断面において、20%を超える数の前記マクロ細孔が、5mm〜10mmの範囲にある等価直径を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項10】
前記断面において、5%を超える数の前記マクロ細孔が、10mmを超える等価直径を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項11】
前記シールにおける前記マクロ細孔は、前記シールがその間に配置されている前記ブロックの面に、実質的に平行に広がる、請求項1から10のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項12】
前記断面における細孔径分布が、500μm〜5mmの範囲にある寸法に集中する第1のモードと、1μm〜50μmの範囲にある寸法に集中する第2のモードとを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項13】
50%を超える数の前記マクロ細孔が、実質的に前記シールの厚さ全体にわたって広がるが、前記マクロ細孔と前記ブロックとの間に少なくとも50μmの厚さのセメントが配置される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項14】
前記セメント硬化体が、鉱物質の質量に対する百分率として5%を超える無機中空球体を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項15】
前記無機中空球体の分布は、合計100質量%について、次の2つの部分:
前記無機中空球体の60質量%〜80質量%の範囲にあり、110μmを超えかつ150μm未満のメディアン寸法を有する部分、および
前記無機中空球体の20質量%〜40質量%の範囲にあり、35μmを超えかつ55μm未満のメディアン寸法を有する部分
に分かれる、請求項14に記載の組立体。
【請求項16】
前記セメント硬化体の全気孔率が、30%を超えかつ90%未満である、請求項1から15のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項17】
前記セメント硬化体が、前記乾燥鉱物質の質量に対する百分率として0.05%を超えかつ5%未満の熱硬化性樹脂を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項18】
前記セメント硬化体が、前記乾燥鉱物質に対する質量百分率として0.5%未満の含量の酸化カルシウムCaOを有し、かつ/または50%を超える炭化ケイ素を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項19】
炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニアおよびシリカが、前記セメント硬化体の乾燥鉱物質の質量の85%を超える、請求項1から18のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項20】
前記炭化ケイ素が、200μm未満のメディアン寸法を有する粒子の形態で存在する、請求項19に記載の組立体。
【請求項21】
前記セメント硬化体が、前記乾燥鉱物質に対する質量百分率として、0.1〜10μmの範囲にある粒径を有する耐火性粒子を少なくとも5%含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項22】
前記ブロックが、30%を超える開気孔率を有するフィルターブロックである、請求項1から21のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項23】
前記ブロックが、入口流路と出口流路とを備え、前記入口流路の全体の体積が、前記出口流路の全体の体積を超えている、請求項1から22のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項24】
前記シールが、前記ブロックとの接触面全体にわたって接着するものではない、請求項1から23のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項25】
前記ブロックが、連続的なシールによって組み立てられない、請求項1から24のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項26】
前記断面が、前記シールの横断方向の正中断面および/または長手方向の正中断面である、請求項1から25のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一項に記載のフィルター組立体の作製方法であって、連続して下記の段階:
a)出発装入物からフレッシュセメントを調製する段階と、
b)組み立てようとするブロック間に、前記フレッシュセメントをはさみ込む段階と、
c)前記フレッシュセメントを、任意の熱処理により硬化させる段階と、
を含み、
前記出発装入物が、
乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として0.1%〜10%の範囲にある有機繊維、および/もしくは、
前記乾燥鉱物質に対する質量百分率として0.5%〜10%の範囲にある発泡剤、および0.05%〜5%の範囲にあるゲル化剤
を含み、ならびに/または
段階a)において、前記フレッシュセメント中にガスを浸透させ、
場合によって、前記出発装入物が、前記乾燥鉱物質を基準とする質量百分率として5%を超える無機中空球体を含む方法。
【請求項28】
段階a)において、フレッシュセメント1リットル当たり0.5〜2.5リットルのガスを吹き込む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
組み立てようとする前記ブロックを、段階c)の間に固定化する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
段階c)において、100℃〜200℃の範囲にある温度で硬化を行う、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
段階c)において、400℃〜1200℃の範囲にある温度で熱処理を行う、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−507461(P2012−507461A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533912(P2011−533912)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054834
【国際公開番号】WO2010/049909
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(506426269)サン−ゴベン・セントル・ドゥ・レシェルシェ・エ・デチュード・ユーロペアン (42)
【Fターム(参考)】