説明

マスキングテープ貼付け具

【課題】 作業者の作業負担を軽減しつつも面取りを含めて確実にマスキングすることのできるマスキングテープ貼付け具を提供する。
【解決手段】 ベースと、ベースの一方の面側に設けられ、テープロールを着脱可能に構成されとともにテープロールをベースの一方の面と直交する方向に延びる第一軸線周りで回転自在に保持するロール保持体と、ベースの一方の面側に設けられ、第一軸線と平行な第二軸線周りで回転自在に構成されるとともに外周が弾性材料からなる押圧ローラとを備え、ベースの一方の面から隆起し、押圧ローラの一端部の外周と部分的に対向する隆起部を備え、隆起部には、マスキングテープを貼り付ける面と直角をなす面に沿わせるためのガイド面が形成され、隆起部と押圧ローラの一端部の外周との間に、テープロールから引き出したマスキングテープの幅方向の一端部を介挿入できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料やシーラー等の塗布材料の塗布の対象となる領域の境界に沿ってマスキングテープを貼り付けるためのマスキングテープ貼付け具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗料やシーラー等の塗布材料を対象となる領域(以下、背景技術において、塗布領域という)に塗布するに当り、塗布領域の境界に沿うように該塗布領域と隣り合う領域(以下、背景技術において、マスキング領域という)に対してマスキングテープを貼り付ける(マスキングする)ことで、塗布領域を超えて塗布材料が塗布されるのを防止するようにしている。
【0003】
このようにマスキングテープを貼り付ける作業は、一般には作業者が長尺なマスキングテープの巻かれたテープロールから手作業でマスキングテープを引き出しつつマスキング領域に対して順々に貼り付けるようにしているが、塗布領域の境界に沿ってマスキングテープを貼り付ける作業は煩雑で作業者に対する作業負担が大きくなるとして、作業者の作業負担を軽減するためのマスキングテープ貼付け具が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかるマスキングテープ貼付け具は、プレート状のベースと、該ベースの一方の面側に設けられ、長尺なマスキングテープの巻かれたテープロールを着脱可能に構成されるとともに該テープロールをベースの一方の面と直交する方向に延びる第一軸線周りで回転自在に保持するロール保持体と、ベースの一方の面側に設けられ、前記第一軸線と平行又は略平行な第二軸線周りで回転自在に構成されるとともに外周が弾性材料からなる押圧ローラとを備えている。
【0005】
そして、上記構成のマスキングテープ貼付け具は、ベースの先端部が押圧ローラの外周よりも外方に突出しており、該ベースの先端部の一方の面がマスキング領域(マスキングの対象となる面)に対して略直角をなす面(以下、背景技術において、この面を立面という。)に沿わせるガイドとして機能するように構成されている。
【0006】
すなわち、上記マスキングテープ貼付け具は、タイル間の目地や建物の壁面が塗布材料の塗布の対象とされる場合、タイルの端面や、直角をなす二つの壁面のうちの一方の壁面にベースの先端部の一方の面を沿わせることができるようになっている。
【0007】
上記構成のマスキングテープ貼付け具は、マスキングするに際し、ロール保持体に保持させたテープロールからマスキングテープを引き出した上で、該マスキングテープの表面(粘着面とは反対側の面)を押圧ローラに巻き掛けるようになっている。これにより、押圧ローラに巻き掛けられたマスキングテープの粘着面が外側に向くことになり、押圧ローラをマスキング領域に向けて押圧しつつ移動させることで、マスキングテープをテープロールから引き出しつつマスキング領域に貼り付けることができるようになっている。
【0008】
そして、上記構成のマスキングテープ貼付け具は、上述の如く、マスキングテープをマスキング領域に貼り付ける際(押圧ローラをマスキングの長手方向に移動させる際)に、ベース(ガイド)を立面に沿わせることで、マスキングテープを塗布領域の境界に沿って貼り付けることができるようになっている。
【0009】
このように、上記構成のマスキングテープ貼付け具は、マスキング領域に向けて押圧しつつ移動させるだけで、塗布領域の境界に沿ってマスキングテープを貼り付けることができるため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【特許文献1】特開平11−292384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、マスキング領域と立面との境界(角部)を面取りしたものがあるが、上記構成のマスキングテープ貼付け具では、面取りまで完全にマスキングテープを貼り付けることができないといった問題がある。
【0011】
具体的には、上記構成のマスキングテープ貼付け具は、押圧ローラの外周(弾性材料)の変形に伴ってマスキングテープが面取りに沿うよう変形する際に、マスキングテープの幅方向の一端部が倒れ込むような態様となるが、マスキング領域と面取りとの境界から立面の沿ったベース(ガイド)までの距離、すなわち、マスキング領域と面取りとの境界からベースに向けて延出したマスキングテープの端部の延出量が、マスキング領域と面取りとの境界から立面と面取りとの境界までの距離(面取り幅)よりも短くなる。
【0012】
そうすると、押圧ローラの外周の変形に伴ってマスキング領域と面取りとの境界を支点にマスキングの端部が倒れ込んだとしても、その倒れ込んだ部分が面取りよりも短いため、面取りを確実にマスキングできないといった問題があった。
【0013】
そのため、作業者の作業負担を軽減できるとしたマスキングテープ貼付け具を用いながらも、マスキングテープの貼り直しや手作業よる修正が余儀なくされるといった問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、作業者の作業負担を軽減しつつも面取りを含めて確実にマスキングすることのできるマスキングテープ貼付け具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るマスキングテープ貼付け具は、プレート状のベースと、該ベースの一方の面側に設けられ、長尺なマスキングテープの巻かれたテープロールを着脱可能に構成されとともに該テープロールをベースの一方の面と直交する方向に延びる第一軸線周りで回転自在に保持するロール保持体と、ベースの一方の面側に設けられ、前記第一軸線と平行又は略平行な第二軸線周りで回転自在に構成されるとともに外周が弾性材料からなる押圧ローラとを備えたマスキングテープ貼付け具において、ベースの一方の面から隆起し、該一方の面と隣り合う押圧ローラの一端部の外周と部分的に対向する隆起部を備え、該隆起部には、マスキングテープを貼り付ける面と直角又は略直角をなす面に沿わせるためのガイド面が押圧ローラの一端よりも他端側でベースの一方の面と同方向に向いて形成され、隆起部と押圧ローラの一端部の外周との間に、テープロールから引き出したマスキングテープの幅方向の一端部を介挿入できるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成のマスキングテープ貼付け具は、ロール保持体に保持させたテープロールからマスキングテープを引き出し、該マスキングテープの粘着面とは反対側の面(非粘着面)を押圧ローラに巻き掛けるとともに、ベースの一方の面から隆起した隆起部と押圧ローラの一端部の外周との間に、テープロールから引き出したマスキングテープの幅方向の一端部を介挿入した状態で使用される。この状態で、マスキングテープは、押圧ローラに巻き掛けられた部分で粘着面が外側に向いた状態となるため、マスキングテープの巻き掛けられた押圧ローラをマスキングする領域(面)に押し付けることで、押圧ローラに巻き掛けられたマスキングテープの粘着面がマスキングする領域に圧接した状態となる。そして、この状態を維持しつつマスキングする領域と直角をなす面にガイド面に沿わせてマスキングテープ貼付け具を移動させることで、マスキングテープがテープロールから引き出されつつマスキングする面に順々に貼り付けられることになる。
【0017】
そして、上記構成のマスキングテープ貼付け具は、押圧ローラの外周が弾性材料からなるため、上述のように押圧ローラがマスキングする領域に押し付けられると、その領域の態様に応じて押圧ローラの外周が変形し、該押圧ローラに巻き掛けられたマスキングテープについても追従して変形することになる。従って、マスキングする領域とこれに対して直角をなする面(ガイド面を沿わせた面)との境界部(角部)が面取りされていると、押圧ローラの外周が面取りに対応するように変形するのに伴って、マスキングテープの幅方向の一端部も面取りに沿うように変形する(倒れ込む)ことになる。
【0018】
そして、上記構成のマスキングテープ貼付け具は、ベースの一方の面から隆起した隆起部と押圧ローラの一端部の外周との間に、テープロールから引き出したマスキングテープの幅方向の一端部を介挿入されるため、押圧ローラの外周の変形に伴ってマスキングテープの幅方向の一端部が面取りに沿うように変形したときに、その面取り全体に密着することになる。すなわち、隆起部と押圧ローラの一端部の外周との間に、テープロールから引き出したマスキングテープの幅方向の一端部を介挿入することで、ガイド面をマスキングする領域と直角をなす面に沿わせた状態で、マスキングテープの一端部がガイド面を沿わせた面(面取りの端)よりも外側に位置することになる。これにより、マスキングする領域と面取りとの境界からベースの一方の面に向けて延出したマスキングテープの端部の延出量が、マスキング領域と面取りとの境界からマスキング領域と直角をなす面(該面に沿ったベースの一方の面)と面取りとの境界までの距離(面取り幅)と同等またはそれよりも長くなる。
【0019】
従って、マスキングテープの一端部が面取りに沿って変形した(曲がった)ときに、その面取りに沿う部分が不足することがなく、面取り全体をマスキングテープの端部で覆うことができる。
【0020】
前記隆起部は、第一軸線と第二軸線とを通る仮想線を基準にした対称位置に一対設けられてもよい。このようにすれば、一対の隆起部の何れか一方と押圧ローラの一端部との間にマスキングテープの幅方向の端部を介挿入することができるため、押圧ローラにマスキングテープを巻き掛けた状態で粘着面が外向きになるようにテープロールを適宜反転させてロール保持部に保持させることで、当該マスキングテープ貼付け具を前記仮想線周りで反転させて使用することができる。すなわち、ガイド面を沿わせる面の向きに拘束されることなく、一つのマスキングテープ貼付け具でマスキングテープを境界に沿って貼り付けることができる。
【0021】
前記ロール保持体は、マスキングテープの幅方向の一端がベースの一方の面に沿った状態で引き出し可能に構成され、前記押圧ローラは、一端がベースの一方の面と近接するように設けられてもよい。このようにすれば、マスキングテープを位置決めしつつ安定した状態で引き出すことができる。また、マスキングテープの幅方向の一端がベースの一方の面に沿うことで、押圧ローラと隆起部との間に介装入されるマスキングテープの端部の範囲を一定の所定幅にすることができる。すなわち、押圧ローラと隆起部との間に介装入されるマスキングテープの範囲を、ベースの一方の面と直交する方向でのガイド面とベースの一方の面との距離(間隔)に対応した範囲にすることができる。
【0022】
前記押圧ローラは、外周の弾性材料が交換可能に構成されていることが好ましい。このようにすれば、弾性材料の弾性が使用や経年によって弱くなったときに新たなものにすることができるので、常に押圧ローラの外周に適正な弾性を賦与することができる。これにより、長期に亘ってマスキングテープを適正に貼り付けることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明に係るマスキングテープ貼付け具によれば、作業者の作業負担を軽減しつつも面取りを含めて確実にマスキングすることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るマスキングテープ貼付け具について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態に係るマスキングテープ貼付け具は、図1及び図2に示す如く、プレート状のベース10と、該ベース10の一方の面100側に設けられ、長尺なマスキングテープTの巻かれたテープロールRを着脱可能に構成されるとともに該テープロールRをベース10の一方の面100と直交する方向に延びる第一軸線周りで回転自在に保持するロール保持体20と、ベース10の一方の面100側に設けられ、前記第一軸線と平行又は略平行な第二軸線周りで回転自在に構成されるとともに外周が弾性材料からなる押圧ローラ30と、ベース10の一方の面100から隆起し、該一方の面100と隣り合う押圧ローラ30の一端部の外周と部分的に対向する隆起部40とを備えている。
【0026】
本実施形態に係るベース10は、板材を所定形状に切断して形成されており、本実施形態においては、一方向で長手をなすように形成されている。そして、該ベース10は、長手方向の一端部に作業者が把持するための棒状のグリップ50が連設されている。
【0027】
本実施形態に係るベース10は、長方形状に形成され、長手方向の一端がグリップ50に接続されたベース本体部101と、該ベース本体部101の他端に連設されたベース先端部102とで構成されている。前記ベース本体部101は、長手方向に延びる中心線CLがグリップ50の中心軸線と連続するように設けられている。これに対し、前記ベース先端部102の中心線CLは、ベース本体部101の中心線CLと共通している。これを前提に、ベース先端部102は、ベース本体部101に接続された基端から先端側に向けて中心線CLの両側で同じ割合で拡大し、その最大に拡大した部分から先端に向けて所定幅にまで縮小するように形成されている。なお、本実施形態に係るベース先端部102は、先端の幅が前記ベース本体部101の長手方向と直交する短手方向の長さ(幅)に対応する幅に設定されている。
【0028】
このように本実施形態に係るベース10は、長手方向に延びる中心線CLがグリップ50の中心軸線と連続した直線となるように設けられ、また、長手方向に延びる中心線CLを基準にした対称形状に形成されている。そして、該ベース10には、前記ロール保持体20を軸支する第一軸103と、押圧ローラ30を軸支する第二軸104とが設けられている。
【0029】
前記第一軸103は、軸心がベース10の一方の面100と直角をなすように該ベース10の一方の面100に延設されている。本実施形態において、前記第一軸103は、ベース10の中央部に設けられている。すなわち、第一軸103は、前記中心線CL上に位置するようにベース本体部101の他端部近傍に設けられている。
【0030】
前記第二軸104は、軸心がベース10の一方の面100と直角をなすように該ベース10の一方の面100に延設されている。本実施形態において、前記第二軸104は、ベース10の先端部の中央に設けられている。すなわち、第二軸104は、ベース10の中心線CL上に位置するようにベース先端部102の先端側に設けられている。
【0031】
本実施形態に係るロール保持体20は、取り付けたテープロールRとともに第一軸線周りで回転するようになっている。具体的には、ロール保持体20は、円柱状に形成された保持体本体200と、該保持体本体200の外周に対し、周方向に間隔をあけて凸設された複数のロール保持片201とを備えている。前記保持体本体200は、中心部に第一軸103が挿通されており、これによって第一軸103(第一軸線)周りで回転できるようになっている。特に採番しないが、ロール保持体20(保持体本体200)の円滑な回転を確保するために、保持体本体200と第一軸103体との間には軸受部材を介装されている。すなわち、ロール保持体20は、第一軸103に外嵌された軸受部材に対して外嵌状態で固定されている。かかる軸受部材としては、ベアリングや無給油ブッシュ等を採用することができる。
【0032】
そして、保持体本体200は、一端面がベース10の一方の面100と近接した配置で維持できるように、第一軸103に対して抜け止めが施されている。なお、抜け止めに関する構成は、一般的な構成であるところ、図示を省略している。
【0033】
各ロール保持片201は、保持体本体200の軸線方向に延びる凸条により構成されている。そして、本実施形態において、各ロール保持片201は、保持体本体200の最も外側にある他端面から一端面に向けて、保持体本体200の外周からの突出量が大きくなるように形成されている。すなわち、ロール保持片201は、保持体本体200の一端側から他端側に向けて先下りに傾斜するように形成されている。
【0034】
上記構成のロール保持体20は、テープロールRの筒状の芯体を外嵌したときに、各ロール保持片201が該芯体の内周面に圧接することで該テープロールRを保持できるようになっている。本実施形態においては、ロール保持片201がテープロールRの嵌め込み方向に向けて徐々に突出量が大きくなっているため、外嵌当初は嵌め込みに対する抵抗が小さく、嵌め込みの最終段階で各ロール保持片201がテープロールRの芯体に圧接するようになっている。これにより、テープロールRの着脱が迅速且つ円滑に行えるようになっている。
【0035】
本実施形態に係る押圧ローラ30は、図3に示す如く、第二軸104に外嵌された筒状のローラ本体300と、該ローラ本体300の外周に外嵌された筒状の外輪体301とを備えている。なお、本実施形態においては、ローラ本体300の回転の円滑性を確保すべく、ローラ本体300と第二軸104との間に無給油式のブッシュ302が介装されている。
【0036】
前記ローラ本体300は、第二軸104に対して外嵌されることで、該第二軸104(第二軸線)と同心で回転可能に設けられている。そして、ローラ本体300は、ベース10の一方の面100と隣り合う一端が該ベース10の一方の面100と近接するように配置されている。かかるローラ本体300は、その配置で維持できるように第二軸104の延びる方向(第二軸線方向)に移動が規制されている。すなわち、該ローラ本体300は、一端をベース10に近接させた状態を維持できるように抜け止めされている。なお、この場合においても、抜け止めに関する構成は、一般的な構成であるところ、図示を省略している。
【0037】
前記外輪体301は、弾性材料を筒状に成形したもので、ローラ本体300に対して着脱できるようになっている。ここで弾性材料としては、スポンジ、ゴム等の軟質なものが採用される。すなわち、外輪体301は、小さな力で変形できるものを採用することが好ましい。
【0038】
前記隆起部40は、図2及び図3に示す如く、押圧ローラ30の一端部の外周との間に、ロール保持体20に保持させたテープロールRから引き出したマスキングテープTの幅方向の端部(ベース10の一方の面100側にある端部)を介挿入できるように配置される。本実施形態においては、隆起部40と押圧ローラ30の一端部の外周との間にマスキングテープTの端部を介挿入したときに、該端部が隆起部40と押圧ローラ30の一端部の外周とに挟み込まれるように、隆起部40は押圧ローラ30の外周に対して部分的に接触して対向している。そして、隆起部40は、押圧ローラ30との間にマスキングテープTの端部を介挿入させることを前提に、ロール保持体20に保持させたテープロールRから引き出して押圧ローラ30に巻き掛けたマスキングテープTが通過する領域を躱すように設けられている(図3参照)。すなわち、隆起部40は、押圧ローラ30の外周とテープロールRの外周との接線が存在する領域を躱して設けられている。
【0039】
そして、該隆起部40は、テープロールRの回転中心となる第一軸線と押圧ローラ30の回転中心となる第二軸線とを通る仮想線を境に二分される領域の少なくとも何れか一方の領域に設けられる。本実施形態に係る隆起部40は、二分される領域のそれぞれに対して設けられている。かかる二つの隆起部40は、第一軸線と第二軸線とを通る仮想線を基準とした対称位置に配置されている。なお、本実施形態においては、ベース10の中心線CL上に第一軸線と第二軸線とが設定されているため、前記仮想線はベース10の中心線CLと一致している。
【0040】
本実施形態に係る隆起部40は、所定厚みに設定された短冊状をなす樹脂製の板材をベース10の一方の面100に貼り付けることで形成されている。本実施形態において、押圧ローラ30を挟んで短冊状をなす二つの板材をハの字状に配置することで、二つ(一対)の隆起部40がベース10の中心線CLを基準にした対称位置に形成されている。
【0041】
前記隆起部40には、マスキングテープTを貼り付ける面(マスキングする領域:以下、マスキング領域という)と直角又は略直角をなす面(以下、この面を立面という)に沿わせるためのガイド面400が押圧ローラ30の一端よりも他端側でベース10の一方の面100と同方向に向いて形成されている。本実施形態の隆起部40は、上述の如く、板材で構成されているため、該板材のベース10に貼り付けられた面とは反対側の面が前記ガイド面400を構成している。
【0042】
本実施形態に係るマスキングテープ貼付け具1は、以上の構成からなり、次に、かかるマスキングテープ貼付け具1の使用方法について説明する。
【0043】
まず、図1及び図2に示す如く、ロール保持体20に保持させたテープロールRからマスキングテープTを引き出し、該マスキングテープTの粘着面とは反対側の面(非粘着面)を押圧ローラ30に巻き掛けるとともに、ベース10の一方の面100から隆起した隆起部40と押圧ローラ30の一端部の外周との間に、テープロールRから引き出したマスキングテープTの幅方向の一端部を介挿入した状態にする。この状態で、マスキングテープTは、押圧ローラ30に巻き掛けられた部分で粘着面が外側に向いた状態となる。
【0044】
そして、図4及び図5(a)に示す如く、マスキングテープTの巻き掛けられた押圧ローラ30をマスキング領域Mに押し付けることで、押圧ローラ30に巻き掛けられたマスキングテープTの粘着面がマスキング領域Mに圧接した状態となるので、この状態を維持しつつ立面Sにガイド面400に沿わせてマスキングテープ貼付け具1を移動させる。これにより、マスキングテープTがテープロールRから引き出されつつマスキング領域Mに順々に貼り付けられることになる。なお、図5(a)及び図5(b)において、マスキングテープT、押圧ローラ30、マスキング領域M、面取りCaのそれぞれが間隔をあけて示されているが、これはそれぞれの状態を明確に示すためのもので、実際にはそれぞれが密接した状態となっている。
【0045】
そして、上記構成のマスキングテープ貼付け具1は、押圧ローラ30の外周(外輪体301)が弾性材料からなるため、上述のように押圧ローラ30がマスキング領域Mに押し付けられると、図5(b)に示す如く、そのマスキング領域Mの態様に応じて押圧ローラ30の外周が変形し、該押圧ローラ30に巻き掛けられたマスキングテープTも追従して変形することになる。
【0046】
従って、マスキング領域Mと立面(ガイド面400を沿わせた面)Sとの境界部(角部)に面取りCaが設けられていると、押圧ローラ30の外周が面取りCaに対応するように変形するのに伴って、マスキングテープTの幅方向の一端部も面取りCaに沿うように変形する(倒れ込む)ことになる。
【0047】
そして、上記構成のマスキングテープ貼付け具1は、ベース10の一方の面100から隆起した隆起部40と押圧ローラ30の一端部の外周との間に、テープロールRから引き出したマスキングテープTの幅方向の一端部を介挿入されるため、押圧ローラ30の外周の変形に伴ってマスキングテープTの幅方向の一端部が面取りCaに沿うように変形したときに、その面取りCa全体に密着することになる。
【0048】
すなわち、図5(a)に示す如く、隆起部40と押圧ローラ30の一端部の外周との間に、テープロールRから引き出したマスキングテープTの幅方向の一端部を介挿入することで、ガイド面400をマスキング領域Mと直角をなす立面Sに沿わせた状態で、マスキングテープTの一端がガイド面400を沿わせた立面S(面取りCaの端)よりも外側に位置することになる。これにより、マスキング領域Mに沿った方向におけるマスキング領域Mと面取りCaとの境界P1からベース10の一方の面100に向けて延出したマスキングテープTの端部の延出量Xが、マスキング領域と面取りCaとの境界P1からマスキング領域Mと直角をなす立面S(該面に沿ったベース10の一方の面100)と面取りCaとの境界P2までの距離(面取りCaの幅W)と同等またはやや長くなる(W≦X)。
【0049】
従って、マスキングテープTの一端部が面取りCaに沿って変形した(曲がった)ときに、その面取りCaに沿う部分が不足することがなく、面取りCa全体を覆うことができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るマスキングテープ貼付け具1は、全体を移動させるだけでマスキング領域Mに対してマスキングテープTを順々に貼り付けていくことができる上に、マスキングテープTの幅方向の端部を面取りCa全体に重ねることができ、作業者の作業負担を軽減しつつも面取りCaを含めて確実にマスキングすることができる。
【0051】
また、二つの隆起部40が、第一軸線と第二軸線とを通る仮想線(ベース10の中心線CL)を基準にした対称位置に設けられているので、ガイド面400を沿わせる面の向きに拘束されることなく、一つのマスキングテープ貼付け具1でマスキングテープTを面に沿って貼り付けることができる。
【0052】
さらに、ロール保持体20は、マスキングテープTの幅方向の一端がベース10の一方の面100に沿った状態で引き出し可能に構成され、前記押圧ローラ30は、一端がベース10の一方の面100と近接するように設けられているので、マスキングテープTを位置決めしつつ安定した状態で引き出すことができ、押圧ローラ30と隆起部40との間に介装入されるマスキングテープTの範囲を、ベース10の一方の面100と直交する方向でのガイド面400とベース10の一方の面100との距離に対応した範囲にすることができる。
【0053】
さらに、押圧ローラ30の外周の弾性材料(外輪体301)が交換可能に構成されているので、弾性材料の弾性が使用や経年によって弱くなったときに新たなものにすることができ、常に押圧ローラ30の外周に適正な弾性を賦与することができる。これにより、長期に亘ってマスキングテープTを適正に貼り付けることができる。
【0054】
尚、本発明のマスキングテープ貼付け具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0055】
上記実施形態において、二つの隆起部40を対称位置に設け、マスキングテープ貼付け具1を反転させて使用できるようにたが、これに限定されるものではなく、一つの隆起部40を設けるようにしてもよい。
【0056】
上記実施形態において、短冊状に形成された樹脂製の板材をベース10の一方の面100に貼り付けることで隆起部40を形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、隆起部40を構成する板材を金属製のものにしたり、板材を削りだしてベース10とともに隆起部40を形成したりしてもよい。
【0057】
上記実施形態において、ロール保持体20にロール保持片201を設け、テープロールRの芯体の内周面にロール保持片201を圧接させることで保持するようにしたが、例えば、保持体本体200よりも外径が大きな抜け止め用のプレートを保持体本体200の他端面にネジ等で固定するようにしてもよい。このようにしてもテープロールRが第一軸線方向に移動することを規制した状態でテープロールRを取り付けることができる。但し、この場合、テープロールRを交換する際にネジ等の着脱作業が必要となるので、上記実施形態のようにすることが好ましい。
【0058】
また、上記実施形態において、ロール保持体20を第一軸103周りで回転自在に設けることで、テープロールRを第一軸線周りで回転できるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ロール保持体20を軸状に形成してベース10の一方の面100に固定し、テープロールRの芯体をロール保持体20周りで回転可能にしてもよい。但し、テープロールRの円滑な回転や抜け止めの構成を考慮すれば、上記実施形態のようにすることが好ましい。
【0059】
上記実施形態において、押圧ローラ30の外輪体301(弾性材料)のみを交換可能としたが、これに限定されるものではなく、例えば、第二軸104をベース10に対して着脱可能に構成し、押圧ローラ30と第一軸103とを交換するようにしてもよい。そして、外輪体301(弾性材料)を交換可能にしたものに限定されるものではなく。弾性材料を押圧ローラ30に対して固定したものであってもよい。
【0060】
上記実施形態において、ベース10をベース本体部101とベース先端部102とで構成し、ベース10の先端側に拡大部分を形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ベース10全体を長方形状に形成してもよいし、非四角形状に形成してもよい。すなわち、ベース10の形状は一定形状に限定されるものではなく、ロール保持体20及び押圧ローラ30を取り付けることができるものであれば種々変更可能である。また、ベース10の基端にグリップ50を連設したものに限定されるものではなく、例えば、ベース10自体を把持してグリップとしてもよいし、また、ベース10の他方の面に把持可能なグリップを連設するようにしてもよい。但し、ベース10の他方の面にグリップを連設する場合、少なくともベース10の先端部を避けてグリップを設けることは勿論のことである。すなわち、グリップは、ガイド面400の存在する領域であって、少なくとも作業時に立面Sに沿わせる部分の裏側を避けて設けることは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係るマスキングテープ貼付け具の全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係るマスキングテープ貼付け具の部分拡大図であって、ベース、ロール保持体、及び押圧ローラを含む部分拡大図を示す。
【図3】同実施形態に係るマスキングテープ貼付け具の先端側から見た正面図であって、ベース及び押圧ローラの部分破断を含んだ正面図を示す。
【図4】同実施形態に係るマスキングテープ貼付け具の使用態様を説明するための説明図であって、ベース、ロール保持体、及び押圧ローラを含む部分側面図を示す。
【図5】同実施形態に係るマスキングテープ貼付け具の使用態様を説明するための説明図であって、(a)は、押圧ローラに力を加えていない状態の説明図を示し、(b)は、押圧ローラに力を加えた状態の説明図を示す。
【符号の説明】
【0062】
1…マスキングテープ貼付け具、10…ベース、20…ロール保持体、30…押圧ローラ、40…隆起部、50…グリップ、100…面、101…ベース本体部、102…ベース先端部、103…第二軸、200…保持体本体、201…ロール保持片、300…ローラ本体、301…外輪体、302…ブッシュ、400…ガイド面、CL…中心線、M…マスキング領域、P1…境界、P2…境界、R…テープロール、S…立面、T…マスキングテープ、X…延出量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート状のベースと、該ベースの一方の面側に設けられ、長尺なマスキングテープの巻かれたテープロールを着脱可能に構成されとともに該テープロールをベースの一方の面と直交する方向に延びる第一軸線周りで回転自在に保持するロール保持体と、ベースの一方の面側に設けられ、前記第一軸線と平行又は略平行な第二軸線周りで回転自在に構成されるとともに外周が弾性材料からなる押圧ローラとを備えたマスキングテープ貼付け具において、ベースの一方の面から隆起し、該一方の面と隣り合う押圧ローラの一端部の外周と部分的に対向する隆起部を備え、該隆起部には、マスキングテープを貼り付ける面と直角又は略直角をなす面に沿わせるためのガイド面が押圧ローラの一端よりも他端側でベースの一方の面と同方向に向いて形成され、隆起部と押圧ローラの一端部の外周との間に、テープロールから引き出したマスキングテープの幅方向の一端部を介挿入できるように構成されていることを特徴とするマスキングテープ貼付け具。
【請求項2】
前記隆起部は、第一軸線と第二軸線とを通る仮想線を基準にした対称位置に一対設けられている請求項1に記載のマスキングテープ貼付け具。
【請求項3】
前記ロール保持体は、マスキングテープの幅方向の一端がベースの一方の面に沿った状態で引き出し可能に構成され、前記押圧ローラは、一端がベースの一方の面と近接するように設けられている請求項1又は2に記載のマスキングテープ貼付け具。
【請求項4】
前記押圧ローラは、外周の弾性材料が交換可能に構成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載のマスキングテープ貼付け具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−291702(P2009−291702A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146933(P2008−146933)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(598049469)宝寿産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】