説明

マスクされ混合されたイソシアネート組成物及び粉体ペイントでのその使用

【課題】融点、ガラス転移温度(T)等に関する要求を満たすマスクされたイソシアネート類の新しい分類を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも部分的にマスクされたイソシアネートに関する。ここで、このイソシアネートは、少なくとも2種類の薬剤によってマスクされていることを特徴とし、この少なくとも2種類の薬剤のうちの1つが炭素系以外のカルボキシル官能基である。また、本発明は有機合成に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスクされたイソシアネート類の新しい分類に関する。より詳しくは本発明は、2種類のマスキング剤を使用してマスクされたイソシアネート、及び粉体コーティング技術におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
作業の安全性及び環境保護的な理由から、コーティング技術、特に塗装技術で溶媒を使用しないようにする努力が行われてきている。
【0003】
これに関連して、粉体を使用するコーティング技術が開発されている。
【0004】
マスクされたイソシアネートが使用され始めているが、粉体の化学的要求を満たす化合物が非常に少ないという事実によってそれらの使用は制限されている。
【0005】
最初の難点は、通常の貯蔵条件において粉体状を維持するマスクされたイソシアネート又はマスクされたイソシアネートの混合物を見つけることである。これらの貯蔵条件は場所によってかなり変化することがある。このために、これらの化合物は比較的高い融点及び/又はガラス転移温度(T)を持たなければならない。
【0006】
本研究の課題である誘導体は常に明確な融点を持つわけではなく、従ってこの場合には、Koffler blockを使用して又はいわゆる毛管タイプの方法を使用して明らかな融点を測定する(例えば、いわゆる「Buechi」融点)。
【0007】
ガラス転移温度は、示差熱解析(DTA)技術を使用して測定することができる。
【0008】
これらの化合物は、この粉体を使用する条件下において反応させるのに十分に低いガラス転移温度及び融点を持つことも必要である。
【0009】
更に、架橋反応によってもたらされる化合物は、人間若しくは動物の健康に又は環境に対して有害であってはならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
結果として本発明の目的の1つは、ここまでで概略を示した制約を満たすマスクされたイソシアネート類の新しい分類を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、粉体コーティングで使用でき且つマスクされたイソシアネートを含有する化合物を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、上述の制約を満たすイソシアネートの合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的及び以下で明らかになる他の目的は、少なくとも部分的にマスクされたイソシアネートから作られたイソシアネート成分を含む組成物によって達成される。ここで、このイソシアネート成分は、少なくとも1つのマスキング剤によってマスクされ、少なくとも1つの炭素系以外のカルボキシル官能基(fonction carboxylique non carboneee)を有する。
【0014】
このカルボキシル官能基は、組成物のイソシアネート成分と良く混合された混合物であることが有利である。これを行うために、前記組成物の先駆物質と、自由イソシアネート官能基に反応性のある官能基及びカルボキシル官能基を持つ薬剤との反応によって、カルボキシル官能基を組成物にグラフトさせることも望ましい。言い換えると、イソシアネート官能基に反応性のある官能基(すなわち、「不安定な」水素を有する官能基)及びカルボキシル官能基(塩の形、又は有利には自由な形のCOOH)の両方を持つ薬剤によって、カルボキシル官能基をイソシアネート系にグラフトさせることが望ましい。
【0015】
イソシアネート官能基に対して反応性がある官能基(すなわち、いわゆる不安定な水素を有する官能基)及びカルボキシル官能基を持つこの薬剤は、有利にはマスキング剤である。このことは、250℃以下、有利には200℃以下(有効数字2桁)、好ましくは180℃以下の温度において、解離することを意味している(オクタノール試験)。
【0016】
焼き付け条件において解離しない薬剤がカルボン酸官能基を有する場合、架橋能力を維持するために、解離しない薬剤が有する酸の量を、イソシアネート官能基(自由なもの、マスクされたもの、及び解離しないマスキング剤に結合したもの)の全量の1/2以下、有利には1/3以下にすることが望ましい。
【0017】
最も一般的に使用されるマスキング剤は、M.Wicksの「blocked isocyanates」(Progress in Organic Coatings、1975年、Vol.3、p.73)で言及されている。
【0018】
本発明に関して好ましいマスキング剤は、脂肪族イソシアネートからの脱ブロッキング(又は脱マスキング)温度が90℃以上、有利には100℃(有効数字2桁)以上、好ましくは110℃以上であるものである。(オクタノール試験、以下参照)。
【0019】
考慮するマスキング剤を単独で使用して当業者が意図するイソシアネートをマスキングする場合、マスクされるイソシアネートのガラス転移温度(T)は、0℃よりも有意に低くはないことが望まれる(約260°K以上、有利には約270°K以上、好ましくは約280°K以上)。これは一般にカルボキシル官能基は、ガラス転移温度(T)を30℃以上増加させることが難しいためである。本発明の好ましいイソシアネート(例えばHDT)、すなわち第2又は第3又はネオペンチルのいずれでもない少なくとも1つ、好ましくは2つの脂肪族官能基を有するモノマー(例えばHDI)から主に得られる(すなわち、少なくとも半分を占める)イソシアネートの場合にこれは事実である。
【0020】
本発明の明細書の記載において、「約」という用語は、これに続く数値を数学的に丸めていることを強調しており、特に数値の右端の1又は複数の値が0の場合は、これらの0は位取りのための0であり、特に言及しなければ特定の数値を示すものではない。
【0021】
マスキング剤は、
カルコゲンが不安定な水素を持つもの、
窒素が不安定な水素を持つもの、及び
炭素が不安定な水素を持つもの、
の3つの大きな分類に分けることができる。
【0022】
不安定な水素をカルコゲン(好ましくは軽いカルコゲン、すなわち硫黄及び酸素)が持つマスキング剤の場合は、カルコゲンが酸素であるものが特に使用され、ここでは特に、
>N−OH結合を有する生成物、例えばオキシム(=N−OH)又はヒドロキシイミド([−CO−]N−OH)、並びに
フェノール類(広い意味で)、特に電子が乏しい芳香族環、例えばヒドロキシピコリン及びヒドロキシベンゾエート(例えば、ヨーロッパ特許出願公開第680984号及び国際公開第98/4608号明細書を参照)、
を挙げることができる。
【0023】
また、ヨーロッパ特許出願公開第661278号明細書に記載された化合物も挙げることができる。
【0024】
不安定水素を窒素が作るマスキング剤の場合は特に、
1置換アミド、特にラクタム類(一般的に使用されるものはカプロラクタム)、
イミド類([−CO−]N−H)、特に環状イミド、例えばスクシンイミド、
不飽和窒素ヘテロ環、特に5員環のもの(有利には2つの不飽和部分を有している)、好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子(好ましくは窒素)を有するものであって、後者としては、ジアゾール(例えば、イミダゾール及びピラゾール)、トリアゾール、又はテトラアゾールがあり、並びに
ヨーロッパ特許出願公開第661278号明細書に記載された化合物、
を挙げることができる。
【0025】
不安定水素を炭素が有するマスキング剤の場合は、重要な化合物はマロン酸の性質を持つもの、すなわち2つの求電子性の基(例えば、カルボニル[ケトン、酸、エステル、又は酸塩のようなもの]、ニトリル、Rf[ペルフルオロアルキル])を持つラジカルRCH<である。
【0026】
マスクされた分子が過剰な重量になるのを避けるためには、マスキング剤は上述の炭素系以外のカルボキシル官能基を持たずに、炭素原子数が10以下、有利には7以下、好ましくは5以下であることが望ましい。
【0027】
酸素又は窒素を経由してイソシアネート官能基と反応して−NH−CO−O−の配列(すなわち、R−NCO+HO− → R−NH−CO−O−)又は−NH−CO−N<の配列(すなわち、R−NCO+NH< → R−NH−CO−N<)を与える不安定水素をマスキング基が有していることは比較的容易であり従って好ましい。
【0028】
また、前記イソシアネート成分は少なくとも2種のマスキング剤でマスクされた組成物であることが好ましい。ここで前記少なくとも2種のマスキング剤のうちの1つは、炭素系以外のカルボキシル官能基を有している。炭素系以外のこのカルボキシル官能基は、酸に対応するカルボキシル官能基を除いて、炭素系のラジカルを有していない、つまり炭素系以外のカルボキシル官能基はエステルを含まない。
【0029】
有利には、前記炭素系以外のカルボキシル官能基は、その酸及びその塩(好ましくは無機塩)から選択する。前記炭素系以外のカルボキシル官能基は酸官能基(−COOH)であることが望ましい。遊離酸の形は好ましい。
【0030】
イソシアネート官能基をマスキングするためにいくつかの基(経済的な理由から好ましくは2つ)を考慮することが可能である。この相違は、マスクされた様々な化合物(一般に1種の基によってマスクされている)を混合することによって、又は好ましくは共反応によって(1種のマスキング剤を反応させてその後他のマスキング剤を反応させることによって連続的に、若しくはマスキング剤の混合物でマスキング作用を行わせることによって同時に)、達成することができる。
【0031】
カルボン酸官能基(COOH−)の存在、特に芳香族環、有利にはベンゼン環に直接グラフトしたカルボン酸官能基の存在は、マスクされたイソシアネートの融点を高めることを可能にする。しかしながら、本発明の系の優れた機械的性質を維持するために、酸官能基の量を(当量で)、マスクされるイソシアネート官能基の、約9/10以下、有利には約4/5以下、好ましくは2/3以下にすることが望ましい。この酸官能基がガラス転移温度(T)に与える有益な影響は約10%超の割合で既に明らかになるが、少なくとも20%の割合を達成することが望ましい。この酸官能基の含有率が100%に増加するまで、融点及びガラス転移温度(T)は連続的に増加する。しかしながら、炭素系以外のカルボキシル官能基を持つマスキング剤の含有率は90%以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の1つの態様によれば、イソシアネート成分をマスキングするこれらの基は、全て定義しているもの(式(I)を参照)でよく、又はそれらの一部がこれらの定義を満たすものでよい。後者の場合には、カルボニル(エステル又は酸)官能基を持つそれら(すなわち、それらの総計)が有利には以下の式(I)に対応し、且つ約10%以上(マスクされたイソシアネート官能基に対して)、有利には約20%以上、好ましくは1/3以上である。
【0033】
従って、本発明の最も有利な態様の1つは、酸官能基を持つ化合物によって、有利にはZが酸官能基である式(I)の化合物によって、少なくとも部分的にマスクされたイソシアネートを使用することからなる。この場合、酸官能基を持つもの以外の他のマスキング剤の基でイソシアネートをマスクすること、及びマスキング系の酸官能基が90〜10%(マスクされたイソシアネート官能基に対して)であることが望ましい。ここで他のマスキング剤とは、それ自体は既知のマスキング剤(本発明で特定するマスキング温度若しくは解離温度の制約を満たすもの)、又は式(I)に対応するエステルでよい。この選択肢の後者は好ましい態様の1つである。
【0034】
本発明の化合物の合成において、一般的な方法を参照することができ、特にヨーロッパ特許出願公開第0680984号明細書を参照することができる。これは、式(I)の化合物でのマスキング操作(随意に部分的に)で良い結果を与える。
【0035】
意外なことに、カルボキシル官能基の存在はマスキング操作に全く問題をもたらさない。マスキング官能基は、あたかもカルボキシル官能基が存在しないかのように反応する。しかしながら、約150℃以下、有利には130℃以下、好ましくは110℃以下の温度でマスキング反応を行うことが好ましい(特に自由イソシアネートの量が少ないことが望ましい場合)。
【0036】
有機塩基の存在は、マスキング反応を触媒し(以下参照)且つその存在量は一般に10%(マスクされたイソシアネート官能基の当価量に対して)又は5%を超えない。
【0037】
添加の最後に系のイソシアネート/マスキング剤の化学量論量が±10%、5%、2%に近づくようにして、反応を行うことが好ましい。
【0038】
本発明において既に言及したように、得られる化合物の融点又は化合物の混合物の融点は、最低でも30℃、好ましくは最低でも50℃の明確な融点を示すことが好ましい。
【0039】
ガラス転移温度は、20℃以上、有利には40℃以上であることも好ましい。
【0040】
本発明の化合物は30分以内で250℃において第1アルコールと完全に反応するように選択することが好ましい。
【0041】
反応は90%以上進行したときに完了したと考える。
【0042】
上述のように、本発明が最も有利なイソシアネートは、炭素、特に脂肪族炭素のsp混成軌道に窒素原子が結合したもの、特にポリメチレンジイソシアネート(例えばTMDI[テトラメチレンジイソシアネート]、及びHMDI[ヘキサメチレンジイソシアネートOCN−(CH)6 −NCO])、並びにそれらの様々な縮合誘導体(ビウレット等)及びそれらの「2量体化」及び「3量体化」誘導体である(考慮した分野では、「3量体」という用語は3つのイソシアネート官能基からなるイソシアヌル環の形成によってもたらされる混合物に言及している。実際には、3量体自身と並んで3量体化によってもたらされた比較的重い生成物が存在している)。
【0043】
本発明においては、環外ポリメチレン鎖(上記参照)を有する骨格に結合した残留自由イソシアネート官能基(当量で表す)の割合は、5%以下、有利には3%以下、好ましくは1%以下であることが望ましく、また場合によってはこのことが必要である。最も高い融点又はガラス転移温度は、0.5%を超えない割合の場合に得られる。環がヒドロキシル化された芳香族誘導体の含有率も有利には低く、すなわち5%以下、有利には3%以下、好ましくは1%以下である。
【0044】
しかしながら、IPDT又はnBDTのような環状脂肪族モノマーのマスクされていないオリゴマー(特に、3量体)又は低分子量縮合体が、前記イソシアネート中に質量分率で1/3まで存在することは、ガラス転移温度(T)に非常に好ましい影響を与え、且つ高品質のコーティングの製造に全く悪影響を与えない。そのような組成物は、溶融したマスク化合物中にマスクしていない3量体を混合することによって容易に得ることができる。
【0045】
本発明によれば、イソシアネートは、酸性の官能基からもたらした少なくとも1つの官能基、特に酸及びエステル官能基を持つ少なくとも1つのマスキング基で有利にマスクする。マスキング剤は混合することができ、また複数のマスキング基を含むことができる。
【0046】
イソシアネート構造中において、2つのイソシアネート官能基を結合する骨格の一部は少なくとも1つのポリメチレン配列(CH)π(ここでπは2〜10、有利には4〜8の整数を表している)を有することが望ましい。この好ましさは機械的な性質に影響を与える。複数の配列がある場合、これらの配列は同じであっても異なっていてもよい。加えて、これらの配列の少なくとも1つ、好ましくは全てが自由に回転できること、つまり環外に存在することが望ましい。
【0047】
解離の程度は、オクタール試験(以下参照)によって定量化する。
【0048】
本発明によれば、純粋な又は混合されたマスクされたイソシアネートは、ポリイソシアネート、すなわち少なくとも2つ、有利には2つよりも多いイソシアネート官能基を持つポリイソシアネートから得る(一般にポリイソシアネートは比較的多く縮合したオリゴマーと比較的少なく縮合したオリゴマーの混合物なので、イソシアネート官能基の数は分数となることもある)。通常、ポリイソシアネート自身は、単位ジイソシアネート(本発明においては「モノマー」として言及することがある)の予備縮合又はプレポリマー化によってもたらす。
【0049】
一般に、これらのプレポリマー又はこれらの予備縮合体の平均分子量は2000以下(有効数字1桁)、より一般的には1000以下(有効数字1桁、好ましくは2桁)である。
【0050】
これらの値に関する1つの大きな例外は、分子量が2000〜15000のポリオールの予備縮合の場合に存在する。これは数平均分子量Mnの値が2000〜15000g/molである。分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定する。この技術で使用するゲルは、2つのポリスチレンゲル(104 Å及び500ÅのUltrastyragel(商標))、溶媒としてのTHF、及び標準としての硫黄である。しかしながら、これらのプレポリマーが常に最良というわけではない。
【0051】
従って、本発明において使用するポリイソシアネートとしては、ビウレットタイプのもの、及び2量体化又は3量体化反応が4、5又は6員環をもたらすものが挙げられる。6員環としては、さまざまなイソシアネート単独の、又は他のイソシアネート[モノ、ジ、若しくはポリイソシアネート]との、又は二酸化炭素との、ホモ又はヘテロ3量体化からもたらされるイソシアヌル環に言及することができる。この場合、イソシアヌル環の窒素は酸素で置き換える。イソシアヌル環を有するオリゴマーが好ましい。
【0052】
好ましいポリイソシアネートは、少なくとも1つの脂肪族イソシアネート官能基を有するものである。言い換えると、本発明の少なくとも1つのマスクされたイソシアネート官能基は、有利には1つの水素原子、好ましくは2つの水素原子を持つspタイプの炭素によって骨格に結合している。前記spタイプの炭素自身はspタイプの炭素に結合しており、且つ有利には1つ、好ましくは2つの水素原子を有し、それによって考慮するイソシアネート官能基がネオペンチル位に存在しないようにすることが望ましい。言い換えると、第2又は第3又はネオペンチルのいずれでもない少なくとも1つの脂肪族官能基を持つ少なくとも1つの化合物を、モノマー(一般に2つのイソシアネート官能基を持つ)として選択することが望まれる。
【0053】
複数(通常は2つ)のタイプのモノマーから得られる混合物の場合、上述の条件及び/又は(有利には及び)ポリメチレン配列(CH)πの存在に関する条件を満たすモノマーは、マスクされたイソシアネート官能基の少なくとも、1/3、有利には1/2、好ましくは2/3の量で存在することが好ましい。従って、本発明の研究においては2/3のHMDT(ヘキサメチレンジイソシアネート「3量体」)とIPDI又はIPDT(IPDI「3量体」)を含む混合物で良好な結果が得られた。ここで、これら2つは本発明によってマスクされている(nBDI、ノルボルナンジイソシアネート、及びその3量体は同様である)。
【0054】
全てのイソシアネートが脂肪族であり且つ更に上述の制約を満たすことが好ましいのは明らかである。
【0055】
本発明の特に好ましい態様では、ヨーロッパ特許出願公開第661278号明細書で意図している一般式に対応する薬剤を、前記炭素系以外のカルボキシル官能基を持つマスキング剤として使用することができる。パラ−ヒドロキシ安息香酸/アルキルパラ−ヒドロキシベンゾエートの対の場合のように、他の薬剤も前記一般式に対応することがある。ヨーロッパ特許出願公開第661278号明細書の要点は以下に示す。
【0056】
本発明の特徴的なマスキング基をもたらす薬剤は、イソシアネートと共に、ニトリル官能基及び好ましくはカルボニル官能基から選択される官能基を持ち且つ環がヒドロキシル化された芳香族誘導体の縮合によってもたらされるものから有利には選択する。縮合がフェノール官能基で起こることは自明である。
【0057】
この分類の中では、明確な融点を持つものを選択すべきである。ここでこの測定は室温(20℃)において行う。この融点は最低でも30℃(有効数字1桁)、有利には最低でも50℃であるべきである。
【0058】
式(I)の化合物の中では、酸及びその塩(アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、及び/又は第4リンの塩)を、第1のマスキング剤として選択するが、他のものを第2又は第3のマスキング剤として選択することができる。
Ar(R)(Y−Z)(OH) (I)
【0059】
ここで、Arは芳香族基部(reste)であり、これにはn個の置換基R、ニトリル基及びカルボニル基から選択されるm個の極性官能基Z、及びp個のヒドロキシル官能基がグラフトしている。
【0060】
n、m、及びpの値は、n+m+pの値が置換可能な部分の数を超えない値であり、有利にはpは2以下、好ましくは1である。
【0061】
有利には、mは2以下であり、好ましくは1である。
【0062】
有利にはnは3以下であり、好ましくは0、1及び2の中から選択し、より好ましくは0である。
【0063】
Rはマスキング反応に関わらない置換基を表しており、一般に炭化水素に基づく鎖に対応しており、通常は語源的な意味でのアルキル鎖、すなわちヒドロキシル官能基を除去したアルコールである。
【0064】
2つの近接した置換基Rは共に結合して、例えば芳香環であることもある環を形成することができる。
【0065】
Zは有利には、カルボニル官能基を含む基から選択する。これらの官能基の中では、アルコキシカルボニル官能基(又は言い換えるとエステル官能基)、アミド官能基、ケトン官能基であって、カルボニル官能基(エステル、ケトン、又はアミド)に対してα位の酸性水素を持たない優先的な条件のものに言及すべきである。ここで、酸性の水素を持たない優先的な条件とは、言い換えると、官能基が水素を持たない、又は水素を持っている場合には、対応するpKaが少なくとも約20(有効数字1桁、好ましくは2桁)、より好ましくは少なくとも25であることを意味している。従って、好ましいアミド(ラクタム、又は尿素を含む)は、好ましくはアミド官能基の窒素上に水素が存在しないのに十分に、又は反応性の水素が存在しないように、有利には置換されている。
【0066】
ここで、Yは二価の基、有利には−O−、−S−、NR’−、−CR’R”−(ここでR’及びR”は炭化水素に基づくラジカルから選択し、有利には炭素数が1〜6のアルキルラジカル、有利には炭素数が1〜4のアルキルラジカル、好ましくはメチル、より好ましくは水素から選択し)、また好ましくはYは1重結合を持つ。
【0067】
極性官能基Z(一般に、ニトリル官能基及び/又はカルボニル官能基から選択する)は、例えばサリチル酸でのように、基Zに近接していないことが好ましい。
【0068】
芳香族基部Arは、1又は複数の縮合、ヘテロ、又はホモ環からなっている。Arは2よりも多い、好ましくは1よりも多くの環を持っていないことが好ましい。
【0069】
芳香族基部Arは、1又は複数のヘテロ、又はホモ環からなっていてよく、通常は容易さのためにホモ環からなっている。しかしながら、対応するホモ環の解離温度よりもかなり低い解離温度を持つ6員環のヘテロ環の利点に注目すべきである。
【0070】
環がヒドロキシル化された芳香族誘導体中の全炭素数は、20以下、好ましくは10以下(有効数字1桁)であることが望ましい。
【0071】
この環は有利には6員環であり、また炭素又は窒素からなっていて、これらの原子の原子価が必要とする数の置換基を伴っている。
【0072】
酸及びその誘導体、特に最も満足のできる結果を与えるエステルとしては、ベンゼン環又はピリジン環にグラフトした酸に言及すべきである。メタ−ヒドロキシ安息香酸、特にパラ−ヒドロキシ安息香酸、及びそれらの誘導体は良い結果を与える。
【0073】
本発明の特に有利な態様の1つでは、ヒドロキシアリールカルボン酸、特にヒドロキシ安息香酸は、ガラス転移温度(T)及び融点の制約を満たす場合、1(又は複数)の通常のマスキング剤、例えばオキシム、ラクタム、ピラゾール、又はトリアゾールと組み合わせることができる。
【0074】
有利には置換されていない少なくとも1つのトリアゾール、及び特にヒドロキシアリールカルボン酸から選択されるカルボキシル官能基を持つ少なくとも1つの薬剤を含む組み合わせは、特に有利である。
【0075】
従って、カルボキシル官能基を有する前記マスキング剤は当量で、全てのマスキング剤の少なくとも10%、有利には全ての薬剤の少なくとも20%、好ましくは少なくとも1/3の量で存在することが望ましいが、割合が50%に近づく又はこれを超えると、効果がかなり明確になる。
【0076】
しかしながら、硬化条件において解離しない薬剤がカルボキシル官能基を有する場合、架橋能力を維持にするために、この解離しない薬剤が持つ酸の量を、全イソシアネート官能基(自由なもの、マスクされたもの、及び解離しないマスキング剤に結合したもの)の量の、1/2以下、有利には1/3以下にすることが望ましい。
【0077】
固化を促進するために、カルボキシル官能基を持つマスキング剤は、マスキング剤1つ当たり、4以下、有利には2以下の自由に回転するメチル基又はメチレン基(すなわち、環に加わっていない基)を持つ。
【0078】
焼き付け(架橋)温度を低下させるために、ウレタン形成触媒、例えばDBTDL(ジブチルスズジラウレート)を添加することができる。これらは混合前のものに直接添加すること、又は貯蔵混合物とすることができる。
【0079】
本発明の化合物と共に使用することができるポリオールは、当業者に知られるようなものである。
【0080】
このことは添加剤の場合に同様である。
【0081】
本発明の目的である粉体ペイントは有利には、化合物の配合物を溶融混合することによって製造することができる。第1に、それらは配合装置によって予備混合し、溶融し、そして1スクリュー若しくは複数スクリュー押し出し装置で均一化及び分散を行う。
【0082】
混合、配合、及び押し出しの温度は約130℃以下であることが望ましく、有利には約110℃以下、好ましくは100℃以下(有効数字3桁)である。押し出し温度は60℃以上であることが望ましく、有利には約70℃以上、好ましくは約80〜90℃である。得られる押し出された物質を放冷して、鉄鋼、アルミニウム、若しくは他の合金のような金属支持体、ガラス、プラスチック、又は木に適用するのに所望の粒度のペイントが得られるまで粉砕装置に通す(この粒度については一般に、d90が約200μm以下、有利には100μm以下(有効数字2桁)であり、またd10が約20μm以上、有利には約50μm以上である)。
【0083】
ポリオールとイソシアネートとの比は、脱ブロッキングの化学量論量によって決定することができる。選択されるイソシアネートの量は一般に、全ての自由ヒドロキシルと反応するのに化学量論的に必要とされる量であり、許容公差は20%、有利には10%、好ましくは5%である。過剰なイソシアネートを用いることが好ましいので、わずかに等しくない範囲が好ましい。言い換えると、添加するイソシアネートの量は化学量論量の約90%〜約120%であることが有利であり、好ましくは化学量論量の95%〜約110%、最も一般的、従って最も望ましくは化学量論量の100%(有効数字3桁)〜105%である。自由酸の割合が高い系(例えばマスクされたイソシアネート官能基の少なくとも2/3、上記参照)を使用する場合、イソシアネート官能基とヒドロキシル官能基の比を、上述の値に比べて約10〜30ポイント(%)増加させることを考慮できる。
【0084】
マスキング反応のための触媒として使用できる触媒は、コーティングの品質を損なうことがないものである。つや消し又は梨地のコーティングをもたらす配合物を使用する場合、それらはコーティングのつや消しの性質を促進する。このことは、つや消しの性質がカルボキシル官能基と関連している配合物の場合に特にいえる(国際公開第98/04608号明細書を参照)。光沢のある配合物を使用する場合、それらは架橋を促進する。
【0085】
従って、塩基性の官能基を窒素又はリン、好ましくは窒素の原子が有する有機塩基が、組成物中に存在することがある。塩基性の原子は水素原子を持っていないことが望ましい。この塩基性は、少なくともピリジン環(例えば、ピリジン自身、ピコリン、又はキノリン)のそれに等しい。好ましい塩基はホスフィン又は好ましくは第3アミンである。この第3アミンは、塩基性官能基(1分子当たり1つのみが存在することが比較的一般的であることが思い出される)1つ当たり3〜約50の炭素原子を有することができる。重いアミン、特に脂肪アミンは、ペイントされた表面のなめらかな外観に好ましい影響を与える。
【0086】
アミンは機械的な性質に好ましい影響を与え、これは粉体相の架橋触媒を示す。
【0087】
明らかに、有機塩基そのものは比較的不揮発性(沸点が80℃以上、有利には100℃以上、好ましくは200℃以上)であることが好ましいが、粉体が架橋する条件においては、低揮発度の観察はあまり限定的ではなく、また特にバインダー中に少なくとも塩基の量に等しい量で自由酸が存在する場合(当量で表す)は容易に達成される。そうでなくても、比較的重い塩基の使用を考慮することができ、すなわち、分子量が少なくとも100、有利には少なくとも180、好ましくは脂肪塩基、すなわち分子量が250よりも大きい塩基の使用を考慮することができる。有機塩基は純粋なものであっても混合物であってもよい。アミンは他の官能基、特にアミノ酸官能基及び環状エーテル官能基、例えばN−メチルモルフォリンに対応する官能基を、有していても有していなくてもよい。これらの他の官能基は有利には、イソシアネート官能基と反応しない形である。
【0088】
アミンの量は、粉体中のマスクされた官能基の少なくとも、約1%(当量で)、有利には2%、好ましくは3%であってよい。アミンは、単独で、又は粉体ペイントの他の成分と組み合わせて使用することができる。
【0089】
得られる粉体は、静電気ガン又は流動床によって適用することができる。本発明の好ましい用途は、コロナ効果及びコロナ充電静電気ガン又は摩擦(摩擦電気)によって行うものである。
【0090】
主に鉄鋼又はアルミニウムであるペイントを適用する基材は、適用の前に予熱してもしなくてもよい。適用の後で、この系が触媒されているかいないかに依存して140℃〜220℃の温度で10分間〜2時間にわたって炉において粉体を溶融して硬化させる。一般的には180℃〜220℃の温度で10分〜30分にわたって行う。
【0091】
上述のように、焼成温度を上げると対称的に焼成時間を短くできることを考慮して、当業者はこの焼成を調節することができる。
【0092】
本発明のイソシアネート組成物及び化合物は、粉体状で使用することができる。それらは溶解した形でも使用することができる。それらはサスペンションの形で使用すると特別な価値があり、これは特に自由イソシアネートの含有率が低いときにいえる(自由イソシアネート/全イソシアネートの比(当量で)は有利には5%以下、好ましくは2%以下)。
【実施例】
【0093】
以下に限定をしない本発明の例を示す。
【0094】
以下の全ての例において、HDT又はHMDTはヘキサメチレンジイソシアネート3量体を示しており、これはTolonate(商標)HDTという商標名で知られており、またIPDTはイソホロンジイソシアネート3量体を意味している。
【0095】
[オクタノール試験]
[定義]
「解離(又は脱ブロッキング)温度」
イソシアネートをマスクしている薬剤が第1モノアルコール(この第1アルコールは通常オクタノール)によって9/10まで(数学的に丸める)置き換えられる最も低い温度。
「貯蔵寿命」
良い貯蔵寿命を確実にするために、オクタノール試験において80℃、有利には90℃で90%以下の「解離」を示すマスクされたイソシアネート官能基を選択することが好ましい。
「反応の進行」
反応が90%以上進行した段階で反応が完了したとみなす。
【0096】
[方法]
評価する約5mmolの保護されマスクされたNCO等価物を、磁気撹拌装置を具備したSchottタイプチューブに配置する。
【0097】
2.5〜3mlの1,2−ジクロロベンゼン(溶媒)及び当量の1−オクタノール(5mmol、すなわち6.1g、随意にマスキング基と共に試験する触媒を伴う)を添加する。
【0098】
反応媒体を試験温度にする。その後これを6時間にわたって試験温度に加熱して、イソシアネート官能基を脱ブロッキング化して活性化する。反応が完了してから、減圧条件下での蒸留によって溶媒を除去し、残留物をNMR、質量スペクトル、及び赤外線によって解析する。
【0099】
これらのデータから1−オクタノールと縮合したマスクされたイソシアネート官能基の割合を評価した。
【0100】
構成成分のうちのあるものの沸点が試験をしようとする温度よりもかなり高い場合、この方法は対応する自生圧力で行う。
【0101】
[例1 メチルパラ−ヒドロキシベンゾエート及びパラ−ヒドロキシ安息香酸の混合物(モル比で80:20)でマスクされたHDTの合成]
136.2gのTolonate(商標)HDT生成物を、機械的撹拌機を具備し且つサーモスタットによって制御された500ml反応装置に導入する。ここで、前記HDTのイソシアネート(NCO)官能基含有量は、HDT100g当たり0.521モルである。86.4gのメチルパラ−ヒドロキシベンゾエート及び19.6gのパラ−ヒドロキシ安息香酸を連続的に添加する。反応媒体の温度は86℃に上げ、3.7gのトリエチルアミンを加える。その後、反応媒体の温度を100℃に上げる。100℃で2時間45分経った後で、反応媒体を冷却し、そして粉砕して粉体にする。自由イソシアネート官能基の含有率は1.05%であり、生成物のTは約30℃であった。
【0102】
[例2 メチルパラ−ヒドロキシベンゾエート及びパラ−ヒドロキシ安息香酸の混合物(モル比で65:35)でマスクされたHDTの合成]
200gのTolonate(商標)HDT生成物を、機械的撹拌機を具備し且つサーモスタットによって制御された500ml反応装置に導入する。ここで、前記HDTのイソシアネート(NCO)官能基含有量は、HDT100g当たり0.521モルである。113.3gのメチルパラ−ヒドロキシベンゾエート及び50.4gのパラ−ヒドロキシ安息香酸を連続的に添加する。反応媒体の温度は26℃に上げ、3gのトリエチルアミンを加える。その後、反応媒体の温度を93℃に上げる。93℃で30分経った後で、反応媒体の温度を130℃に上げる。溶融した塊を取り出し、冷却し、そして粉砕して344gの粉体を得た。自由イソシアネート官能基の含有率はHDTに対して1.3%であり、生成物のTは約32℃であった。KBrディスク中での赤外線解析は、2500cm−1で酸官能基のピークの存在を示し、酸官能基に対応するピーク(1650cm−1〜1550cm−1)は非常に含有率が低いこと又は存在しないことを示し、またカルバミン官能基の存在を示す。
潜在的なイソシアネート官能基の含有率は12.03%である。
【0103】
[例3 メチルパラ−ヒドロキシベンゾエート及びパラ−ヒドロキシ安息香酸の混合物(モル比で50:50)でマスクされたHDTの合成]
例2で説明したのと同じ方法を適用する。それによって、342gの白色粉体を回収する。
自由NCOの含有率はマスクされていないHDTに対して0.7%、すなわち残留NCO官能基の0.175重量%である。生成物のガラス転移温度Tは約35℃である。
潜在的なNCOの含有率は11.95%である。
赤外線解析は、期待される生成物の特徴的なピークを示す。
【0104】
[例4 メチルパラ−ヒドロキシベンゾエート及びパラ−ヒドロキシ安息香酸の混合物(モル比で65:35)でマスクされたHDT/IPDTの混合物(重量比で85/15)の合成]
例2で説明したのと同じ方法を使用する。但し、HDTの代わりに2つのポリイソシアネート、HDTとIPDT(119gと21g)の混合物を導入する。マスキング剤の量を調節して、160℃で取り出した。取り出し及び冷却の後で、生成物を粉砕した。
生成物のガラス転移温度Tは約35℃であり、自由イソシアネートの含有率は0.2重量%、つまりマスクされていないHDTの0.82%である。
赤外線解析は、期待される生成物の特徴的なピークを示す。
【0105】
[例5 メチルパラ−ヒドロキシベンゾエート及びパラ−ヒドロキシ安息香酸カルシウム塩の混合物(モル比で94:6)でマスクされたHDTの合成]
141.25gのTolonate(商標)HDT生成物を、機械的撹拌機を具備し且つサーモスタットによって制御された500ml反応装置に導入する。ここで、前記HDT生成物のNCO含有量は、HDT100g当たり0.521モルである。111.9gのメチルパラ−ヒドロキシベンゾエート、6.07gのパラ−ヒドロキシ安息香酸、及び4.4gの炭酸カルシウムを連続的に添加する。反応媒体の温度は120℃に上げ、45分間維持する。反応媒体を80℃に冷却し、そして1.3gのトリエチルアミンを加える。その後、反応媒体の温度を95℃に上げる。反応媒体を除去し、室温で粉砕して粉体を与える。有利NOCの含有率は0.69%であり、この生成物のガラス転移温度Tは約26℃である。
【0106】
[例6〜19 いずれかがカルボキシル官能基を持つ2つのマスキング剤の混合物でマスクされたHDTの合成]
イソシアネートがHDT単独であるときは例2の方法で、またイソシアネートがHDT/IPDT混合物のときは例3の方法で、必要な変更(マスキング剤及びその割合)を伴って方法を行う。
【0107】
【表1】

*ナイロン塩はアジピン酸にヘキサメチレンジアミンを加えて形成される塩(mol/mol)
【0108】
[例20 質的な試験]
以下の組み合わせで合成を行った(例2の方法に従って)。これらは、カルボキシル官能基を持たないマスキング剤を含む化合物と比べて、ガラス転移温度(T)の上昇を示している。
【0109】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にマスクされたイソシアネート組成物であって、
少なくとも1つの炭素系以外のカルボキシル官能基を含んでおり、且つ少なくとも1つのマスキング剤によってマスクされていることを特徴とする、少なくとも部分的にマスクされているイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記組成物の先駆物質と、自由イソシアネート官能基に対して反応性がある官能基及び前記カルボキシル官能基を有する試薬との反応によって、前記カルボキシル官能基をグラフトさせたことを特徴とする、請求項1に記載のイソシアネート組成物。
【請求項3】
自由イソシアネート官能基に対して反応性がある官能基及びカルボキシル官能基を有する前記試薬が、カルボキシル官能基を持つマスキング剤であることを特徴とする、請求項2に記載のイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記組成物が少なくとも2つのマスキング剤によってマスクされた組成物であり、このマスキング剤のうちの少なくとも1つが、炭素系以外のカルボキシル官能基を持つことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記カルボキシル官能基とイソシアネート官能基(マスクされたもの、自由なもの、及びカルボキシル官能基を持つ任意の薬剤と反応したもの)との当量比が少なくとも5%、有利には少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記カルボキシル官能基とイソシアネート官能基(マスクされたもの、自由なもの、及びカルボキシル官能基を持つ任意の薬剤と反応したもの)との当量比が約9/10以下、有利には約4/5以下、好ましくは2/3以下、より好ましくは1/3以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項7】
焼き付け条件において解離しない薬剤が前記カルボキシル官能基を持つこと、及び架橋能力を維持するために、解離しないこの試薬が持つ酸の量を、イソシアネート官能基の全量(自由なもの、マスクされたもの、及び解離しないマスキング剤に結合したもの)の1/2以下、有利には1/3以下にすることが望ましいことを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項8】
前記炭素系以外のカルボキシル官能基を、酸又はその塩から選択することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項9】
前記炭素系以外のカルボキシル官能基が酸官能基(−COOH)であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項10】
カルボキシル官能基を有する前記マスキング剤が、当量で、全マスキング剤の少なくとも10%を占めることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項11】
カルボキシル官能基を有する前記マスキング剤が、当量で、全マスキング剤の少なくとも20%を占めることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項12】
カルボキシル官能基を有する前記マスキング剤が、マスキング剤1つ当たり、4以下、有利には2以下の自由に回転するメチル又はメチレン基を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項13】
カルボキシル官能基を有する前記マスキング剤が以下の式(I)に対応していることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載のイソシアネート組成:
Ar(R)(Y−Z)(OH) (I)
(ここで、Arは芳香族基部であり、これにはn個の置換基R、カルボン酸官能基及びその塩からから選択されるm個の極性官能基Z、並びにp個のヒドロキシル官能基がグラフトしており、n、m、及びpの値は、n+m+pの値が置換可能な部分の数を超えない値であり、有利にはpは2以下、好ましくは1である。)。
【請求項14】
前記カルボキシル官能基が、芳香族環に直接に結合していることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項15】
カルボキシル官能基を持たないマスキング剤を、それ自体は既知のマスキング剤から選択することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項16】
カルボキシル官能基を持たないマスキング剤を、オキシム類、ラクタム類、ピラゾール類、及びトリアゾール類から選択することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項17】
前記イソシアネート組成物を、少なくとも1つのマスクされた脂肪族イソシアネート官能基を持つオリゴマー又は低分子量縮合体から作ることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項18】
前記マスクされた脂肪族官能基が、有利には1つ、好ましくは2つの水素原子を持つspタイプの炭素によって骨格に結合していることを特徴とする、請求項17に記載のイソシアネート組成物。
【請求項19】
前記脂肪族官能基が、第2級、第3級又はネオペンチルのいずれでもないことを特徴とする、請求項18に記載のイソシアネート組成物。
【請求項20】
前記イソシアネート組成物が、複数のモノマーの低分子量縮合又はオリゴマー化によって得られる混合物の少なくとも部分的なマスキングによって得られ、ここで前記複数のモノマーのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つ、有利には2つの、第2又は第3又はネオペンチルのいずれでもない脂肪族官能基を有することを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項21】
第2又は第3又はネオペンチルのいずれでもなく、少なくとも1つ、有利には2つの脂肪族官能基を持つ前記モノマーから得られる単位が、1/3以上、有利には1/2以上、好ましくは2/3以上のマスクされたイソシアネート官能基を持つことを特徴とする、請求項20に記載のイソシアネート組成物。
【請求項22】
前記イソシアネート組成物が、複数のモノマーのオリゴマー化又は低分子量縮合によって得られる混合物の少なくとも部分的なマスキングによって得られ、前記複数のモノマーのうちの少なくとも1つがポリメチレン鎖を有し、少なくとも1つのポリメチレン鎖を有するこのモノマーから得られる単位が、1/3以上、有利には1/2以上、好ましくは2/3以上のマスクされたイソシアネート官能基を有することを特徴とする、請求項1〜21のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項23】
カルボキシル官能基を持たないマスキング剤を、トリアゾール類から選択することを特徴とする、請求項1〜22のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項24】
有機塩基、有利には第3級アミンも含むことを特徴とする、請求項1〜23のいずれかに記載のイソシアネート組成物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の組成物の、粉体ペイント配合物中での使用。
【請求項26】
請求項25に従って得られることを特徴とするコーティング。

【公開番号】特開2008−260953(P2008−260953A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181591(P2008−181591)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【分割の表示】特願2000−505214(P2000−505214)の分割
【原出願日】平成10年7月29日(1998.7.29)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】