説明

マスクアラインメント光学システム

【課題】透過照明方式により性能に優れ、かつ、マスクの有効活用が可能となるマスクアラインメント光学システムを提供する。
【解決手段】蒸着材料を基板上に蒸着する真空蒸着チャンバ1中において、基板6とメタルマスク102とのアライメントを行うマスクアラインメント光学システムでは、メタルマスクの周囲に形成されて四隅にL字状の導光路が形成された固定フレーム101と、基板を表面に搭載すると共に、その四隅にL字状の導光路が形成されたステージ201を備えており、固定フレームの一部に形成された導光路103、及び、ステージの一部に形成された導光路内に導かれた光によるアラインメントマークの透過像によって、メタルマスクとのアライメントを行うマスクアライメント光学システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイスを製造するためにメタルマスクを基板に対して配置するためのマスクアラインメントに関し、特に、マスクのフレームの一部を利用したマスクアラインメント光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスを製造する有力な方法としては、真空蒸着法がある。かかる真空蒸着においては、基板とマスクとのアライメントが必要である。ところで、有機ELデバイスに対しても、年々、その処理基板の大型化の波が押し寄せており、例えば、G6世代の基板サイズは1500mm×1800mmになっており、これに伴い、基板サイズの大型化と共に、当然、マスクも大型化し、その寸法は2000mm×2000mm程度にも及ぶ。特に、鋼製のマスクを使用すると有機ELデバイスでは、その重量は300Kgにも達し、従来では、基板及びマスクを水平にして位置合せをしていた。なお、かかる従来技術は、例えば、下記の特許文献1に既に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-302896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL蒸着装置では、メタルマスクを用いて発光材料を基板上に蒸着するが、その際、デバイスの大型化に伴って、高精度なアラインメントシステムが要求される。
【0005】
ところで、有機EL蒸着装置は、メタルマスクとターゲットである基板上のマークを使ってアラインメントを行った後に、当該メタルマスクと基板を密着した状態にして蒸着を行う。その際の配置は、まず、蒸着源を、次に、マスクを配置し、その後、基板を配置するという順序で行われるが、その際、特に、蒸着源の特性上、当該蒸着源とマスクとの間には固定機構を置くことが出来ない。
【0006】
また、上記のプロセスは、その全てが、真空チャンバ内の高真空中で行われることから、複雑な機構を配置することは不可能であった。
【0007】
加えて、従来の蒸着装置におけるアラインメントシステムには、以下のような問題点があった。
【0008】
1.パターン効率
従来は、パターンの蒸着エリア内にアラインメントマーク(パターン)が配置されているため、製品を製造するためのエリアである、製品パターンエリアが縮小してしまう、更には、当該アラインメントマーク(パターン)が蒸着されてしまうという問題があった。
【0009】
2.透過照明
アラインメントのための照明には、所謂、「反射方式」と「透過方式」とがあり、一般的に、透過方式のほうが優れてはいるが、上述した蒸着源とマスク間の制約により、光学系を配置することが出来ないことから、反射方式が多く採用されている。なお、装置としては、反射方式と透過方式の何れかが、状況に応じて使い分けられることが理想的であろう。
【0010】
3.反射照明
アラインメントマークを蒸着エリア外に配置すると、マスクフレームと当該マークとが重複し、そのため、マスクフレームの背面反射では、当該アラインメントマークの認識し難くなるという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、より具体的には、特に、透過照明方式を採用しながら、マスクの有効活用が可能となるマスクアラインメント光学システムを提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため、本発明によれば、まず、蒸着材料を基板上に蒸着する真空蒸着チャンバ中において、当該基板と金属薄膜からなるメタルマスクとのアライメントを行うマスクアラインメント光学システムであって、前記メタルマスクの周囲に形成され、かつ、その四隅には「L」字状の導光路が形成された固定フレームと、前記基板を表面に搭載すると共に、その四隅には、前記固定フレームの導光路に対応した位置に「L」字状の導光路が形成されたステージとを備えており、前記マスクフレームに形成された導光路、及び、前記ステージに形成された導光路内に導かれた光による、前記メタルマスクの一部に設けられたメタルマスクマークと前記基板の一部に設けられたアラインメントマークの透過照明による像によって、メタルマスクとのアライメントを行うマスクアラインメント光学システムが提供される。
【0013】
更に、本発明では、前記に記載したマスクアラインメント光学システムにおいて、前記固定フレームに形成された「L」字状の導光路の一端は、前記固定フレームの上辺又は下辺に開口し、前記ステージの一部に形成された「L」字状の導光路の一端は、前記ステージの上辺又は下辺に開口していることが好ましい。更には、前記導光路に光を入射する光源と、前記導光路から出射する前記アラインメントマークの透過照明による像を撮像するためのカメラ部を、前記真空蒸着チャンバの外部に設けたことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明によれば、透過照明方式により性能に優れ、かつ、マスクの有効活用が可能となるマスクアラインメント光学システムが提供されるという実用的にも優れた技術的な効果が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のマスクアラインメント光学システムが採用される有機ELデバイス製造装置の内部構成の一例を示す斜視図である。
【図2】上記装置のアラインメント部を構成するマスク部の詳細な構成の一例を示す一部拡大斜視図である。
【図3】上記装置のアラインメント部を構成するマスク部の詳細な構成の一例を示す一部拡大斜視図である。
【図4】上記マスク部とステージ部によるマスクアラインメントシステムの詳細を説明するための一部拡大断面図である。
【図5】撮像素子により基板の表面に形成したアラインメントマークとメタルマスクを同時に撮像した画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の詳細な説明では、まず、本発明が採用される有機ELデバイス製造装置、特に、その有機EL成膜装置について、その概略を説明すると共に、当該装置内における本発明になるマスクアラインメント光学システムについて詳細に説明する。
【0017】
有機ELデバイス製造装置を構成する有機EL成膜装置は、真空雰囲気中で発光材料を蒸着して基板上にEL層を形成する真空蒸着チャンバとして機能するものであり、以下、この真空蒸着チャンバについて、搬送チャンバと共に、添付の図1に示す。図において、搬送チャンバ内の搬送ロボット5は、全体を上下に移動可能(図1の矢印59を参照)で、左右に旋回可能な3リンク構造のアーム51を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド58を有する。
【0018】
一方、真空蒸着チャンバ1は、大別して、発光材料を昇華させて基板6に蒸着する蒸着部71、76と、シャドウマスクとの間の位置合せを行って、例えば、ガラス板等、基板6上の必要な部分に発光材料を蒸着するアライメント部8と、そして、上記搬送ロボット5との間で基板6の受渡しを行い、当該基板6を蒸着部71、76へ移動させる受渡部91、93からなる。アライメント部8と受渡部91、93は、右側Rラインと左側Lラインの2系統に分けられて設けられる。
【0019】
即ち、マスクは、基板上に単に発光材料層(EL層)を形成して電極で挟むだけではなく、陽極の上に正孔注入層や輸送層を形成し、更には、陰極の上に電子注入層や輸送層をなどを、様々な材料で薄膜として多層形成したり、基板を洗浄したりするものであり、一般に、大別して、処理対象の基板6を搬入するロードクラスタ、前記基板を処理する複数のクラスタ、各クラスタ間又はクラスタとロードクラスタ、或いは、次工程(封止工程)との間の設置された複数の受渡室などから構成されている。なお、本実施形態では、基板を、その蒸着面を上面にして搬送し、他方、蒸着するときには、当該基板を立てた状態で蒸着する。
【0020】
そして、本発明の実施例によれば、上記のアライメント部8(即ち、マスクアラインメント光学システム)は、以下に詳述するマスク部100とステージ部200から構成されている。
【0021】
まず、添付の図2には、マスク部100の構成が示されており、図にも示すように、例えば、金属材料により外形を「ロ」の字状に形成された固定フレーム101と、当該固定フレームの一面(図の例では裏面)に縦横方向に引っ張った(張力を与えた)状態で取り付けられる、金属薄膜から形成される板厚40〜100μmのメタルマスク102を備えている。そして、当該固定フレーム101の一部、より具体的には、本例では、「ロ」の字状の周辺四隅には、それぞれ導光路を形成する貫通穴103が形成されている。
【0022】
なお、この導光路となる貫通穴103の詳細は、添付の図4に示すように、固定フレーム101の上辺を構成する端面104から上記メタルマスク102の面に沿って、垂直方向に伸びると共に、当該フレームの内周面を形成する傾斜面(例えば、傾斜角度=45度)105からは、上記メタルマスク102の面に対して垂直な方向に、所謂、「L」字状に形成されている。そして、当該傾斜面105には(即ち、これらの貫通穴103の底部には)、反射ミラー106が、傾斜角度=45度で取り付けられている。即ち、貫通穴103及び反射ミラー106により、「L」字状の導光路を形成している。なお、図2及び図3において、符号107は、上記メタルマスク102に孔状に形成されたメタルマスクマークを示している。
【0023】
一方、ステージ部200は、添付の図4に示すように、その表面に基板6を搭載するための板状のステージ201から構成されると共に、その四隅、即ち、上記固定フレーム101の一部に形成した貫通穴103に対応した位置には、上記と同様に、「L」字状に形成された導光路となる貫通穴202が形成されている。なお、この図3において、符号61は、上記基板6の表面に形成したアラインメントマークを示している。
【0024】
なお、この導光路となる貫通穴202の詳細も、上記と同様に、添付の図4に示されており、図からも明らかなように、その上辺を構成する端面203から上記メタルマスク102の面に沿って、垂直方向に伸びると共に、上記メタルマスク102の面に対して垂直な方向にも形成されており、そして、これらの貫通穴202の底部には傾斜面(例えば、傾斜角度=45度)204が形成され、そして、当該傾斜面204には、反射ミラー205が、傾斜角度=45度で取り付けられている。即ち、貫通穴202及び反射ミラー205により、「L」字状の導光路を形成している。
【0025】
続いて、上述したマスクアラインメント光学システムの動作について、図4を参照しながら説明を加える。即ち、図4にも示すように、上記ステージ部200のステージ201がその表面に基板6を搭載して直立した後、メタルマスク102が上記基板6に対して所定の位置になるように、上記マスク部100を移動する(即ち、マスクアラインメントを行う)。また、ここでは、例えば、EL材料を蒸着するための蒸発源は、図の左側に設けられているものとする。
【0026】
その際、以上にその詳細な構成について説明したマスクアラインメント光学システムによれば、真空蒸着チャンバ1の一部に形成した窓部(ガラス等の透過性材料)301を介して、外部に設けた、例えば、ランプ等の光源302からの照明光を、上記マスク部100の固定フレーム101の上辺を端面104に形成した貫通穴103(即ち、導光路)に向かって照射する(図の矢印を参照)。この照明光は、上記貫通穴103の底部に取り付けられた反射ミラー106によって反射され(図の矢印を参照)、対向する基板6を通過して、ステージ201の表面に形成された貫通穴202(導光路)に入射する。この入射した光は、更に、当該貫通穴202の底部に取り付けられた反射ミラー204により反射されて、上記ステージ201の上辺端面203に形成された貫通穴202(導光路)から出射する。この出射光は、図の矢印からも明らかなように、他の窓部(ガラス等の透過性材料)303を介して、上記光源302と同様に真空蒸着チャンバ1の外部に設けられたカメラ部304に入射する。
【0027】
即ち、このカメラ部304は、例えば、レンズを含む入射光学系と共に、CCD等の撮像素子を備えており、この撮像素子は、上記光源302からの照明光を透過照明として、上記基板6の表面に形成したアラインメントマーク61とメタルマスク102を同時に撮像することが出来る(図5を参照)。そして、この撮像素子により撮像されたアラインメントマークとメタルマークを利用して、ここでは図示しない駆動機構やその制御部により、メタルマスク102が上記基板6に対して所定の位置になるようにその位置を調整する。
【0028】
以上の説明からも明らかなように、上述した本発明になるマスクアラインメント光学システムによれば、上記マスク部を構成するマスクフレームの一部に導光路を設けることにより、アラインメントマークを、メタルマスクの蒸着エリアの外側に(より具体的には、メタルマスクとマスクフレームとの間)に配置することが可能となることから、メタルマスクにより製品を製造するためのエリアである、製品パターンエリアが縮小されてしまうことなく、即ち、マスクの有効活用が可能となる。また、上述した本発明になるマスクアラインメント光学システムによれば、透過照明方式により、より優れた性能のメタルマスクと基板とのマスクアラインメントを実現することが出来る。
【符号の説明】
【0029】
1…真空蒸着チャンバ、8…アライメント部、100…マスク部、101…固定フレーム、102…メタルマスク、103、202…貫通穴、104、203…端面、106、204…反射ミラー、200…ステージ部、201…ステージ、6…基板、61…アラインメントマーク、301、303…窓部、302…光源、304…カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着材料を基板上に蒸着する真空蒸着チャンバ中において、当該基板と金属薄膜からなるメタルマスクとのアライメントを行うマスクアラインメント光学システムであって、
前記メタルマスクの周囲に形成され、かつ、その四隅には「L」字状の導光路が形成された固定フレームと、
前記基板を表面に搭載すると共に、その四隅には、前記固定フレームの導光路に対応した位置に「L」字状の導光路が形成されたステージとを備えており、
前記固定フレームに形成された導光路、及び、前記ステージに形成された導光路内に導かれた光による、前記メタルマスクの一部に設けられたメタルマスクマークと前記基板の一部に設けられたアラインメントマークの透過照明による像によって、メタルマスクとのアライメントを行うことを特徴とするマスクアラインメント光学システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載したマスクアラインメント光学システムにおいて、前記固定フレームの一部に形成された「L」字状の導光路の一端は、前記固定フレームの上辺又は下辺に開口し、前記ステージの一部に形成された「L」字状の導光路の一端は、前記ステージの上辺又は下辺に開口していることを特徴とするマスクアラインメント光学システム。
【請求項3】
前記請求項2に記載したマスクアラインメント光学システムにおいて、更に、前記導光路に光を入射する光源と、前記導光路から出射する前記アラインメントマークの透過照明による像を撮像するためのカメラ部を、前記真空蒸着チャンバの外部に設けたことを特徴とするマスクアラインメント光学システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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