マスクブランクの欠陥分析方法
【課題】パターン形成用薄膜の際、どのプロセスで欠陥が発生したのかを正確に特定することができるマスクブランクの欠陥分析方法を得る。
【解決手段】基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法であって、前記薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて前記異物の形状を観察する工程と、前記異物を除去する工程と、前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程と、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程とを含むことを特徴とする、マスクブランクの欠陥分析方法である。
【解決手段】基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法であって、前記薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて前記異物の形状を観察する工程と、前記異物を除去する工程と、前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程と、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程とを含むことを特徴とする、マスクブランクの欠陥分析方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置等の電子デバイスの製造において使用されるフォトマスク(転写用マスク)を作製するために用いるマスクブランクの欠陥分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚ものフォトマスク(以下、「転写用マスク」という。)と呼ばれている基板が使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0003】
フォトリソグラフィー法による転写用マスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に転写パターン(マスクパターン)を形成するための薄膜(例えば遮光膜など)を有するマスクブランクが用いられる。半導体装置の高集積化に伴い、マスクブランクが有する欠陥を低減することが必要なっているため、マスクブランク表面に存在する欠陥の検査が行われている。欠陥検査のためには、レーザー散乱光を検出する方式や共焦点光学系を用いる方式の欠陥検査装置が主に用いられている。また、走査型電子顕微鏡(SEM)によりマスクブランク表面の欠陥を観察する場合もある。
【0004】
走査型電子顕微鏡(SEM)により基板の表面の欠陥を観察する場合には、基板表面が帯電(チャージアップ)することにより、鮮明なSEM像が得られないという問題がある。SEM観察の際の基板表面の帯電を避けるために、例えば、特許文献1には、基板の表面上に微細なパターンが形成された試料であって、前記基板及びパターンのうちの少なくとも一方が絶縁体で構成されている試料の前記パターンを走査型電子顕微鏡によって観察する際に前記パターンの観察を良好にするために前記試料に施される観察試料処理方法において、前記試料のパターン及び前記基板のうち少なくとも絶縁体から構成されているものの表面を、水又は溶剤等によって容易に剥離させることのできる導電性薄膜で覆うことを特徴とした観察試料処理方法が開示されている。
【0005】
また、SEM観察の際の基板表面の帯電を避けるために、特許文献2には、試料表面を、前記試料表面から2次電子を放出する1次電子ビームでスキャンする段階と、前記1次電子ビームをスキャンする以前に前記試料表面に意図的に電荷を帯電させて前記表面での電荷分布の均一性を強め、前記1次電子が前記表面に接近する時に電気的な引付け又は反発により回折される傾向を弱める段階と、前記試料表面から放出される2次電子を捕獲する段階と、前記捕獲された2次電子を信号に転換する段階と、前記信号を基にして前記1次電子ビームがスキャンされた前記試料表面の画像を得る段階とを含むことを特徴とする走査型電子顕微鏡画像を得る方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、マスクブランク表面の欠陥の発生を低減するための洗浄方法として、異物を除去するためにブラシ等の摩擦材料を用いたスクラブ洗浄機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−221637号公報
【特許文献2】特開2002−222635号公報
【特許文献3】特開平3−29474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体装置の高集積化に伴い、マスクブランクが有する欠陥に対する要求は厳しくなっている。そのため、マスクブランク製造における歩留まり向上のためには、欠陥検査装置を用いて欠陥の寸法、形状及び位置を測定し、どの時期に欠陥が発生したのかを明らかにすることが必要である。
【0009】
従来、欠陥検査装置による検査によって、基板上に形成したパターン形成用薄膜に欠陥が存在するマスクブランクが発見された場合、欠陥発生原因の特定のために、マスクブランクの欠陥分析が行われている。マスクブランクの欠陥分析方法としては、具体的には、(1)成膜直後の未洗浄薄膜の分析及び(2)薄膜に対する異物除去洗浄が行われた後の分析が行われている。(1)成膜直後の未洗浄薄膜の分析では、薄膜の表面にPtやAu蒸着等の導電性膜をコーティング後、SEMを用いて、SEM観察画像による薄膜上の異物の形状観察及びエネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いた成分分析による異物の成分特定を行う。また、(2)異物除去洗浄後の分析では、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、例えば原子間力顕微鏡(AFM)によって、薄膜の凹部欠陥の深さの測定を行う。
【0010】
しかしながら、(1)SEM及びEDXによる分析並びに(2)SPMによる分析を、異なるマスクブランクを用いて分析するのでは、両分析の間に確実な相関が得られないという欠点がある。(1)SEM及びEDXによる分析の後に、剥離液により導電性膜を剥離し、さらに異物除去洗浄を行った後に、同じマスクブランクのSPM測定をするという方法も考えられる。しかしながら、導電性膜の材料として用いるAuやPtの除去には、加熱した王水や濃硫酸を使用する必要がある。そのため、マスクブランクのパターン形成用薄膜の表面が少なからず除去(減膜)されて膜厚が減少してしまったり、AuやPtの除去不足により導電性膜が残ってしまう(残膜)などの問題が生じる。減膜又は残膜(導電性膜)した薄膜表面に対してSPMによる欠陥の深さ測定を行うと、実際の欠陥の深さとは誤差が生じてしまう。パターン形成用薄膜は、通常、複数層の積層構造であるため、欠陥の深さによっては、どの層の成膜プロセスで欠陥が発生したか特定することが困難になる場合があるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、SEM観察時に従来形成していた導電性膜に関して生じる問題を回避し、同じマスクブランクを用いて異物の形状観察及び走査型プローブ顕微鏡(SPM)による欠陥深さの測定を正確に行うことができるマスクブランクの欠陥分析方法を提供することを目的とする。また、本発明は、パターン形成用薄膜の際、どのプロセスで欠陥が発生したのかを正確に特定することができるマスクブランクの欠陥分析方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来、走査型電子顕微鏡(SEM)による異物の形状観察のために、基板上の薄膜に対してPtやAu蒸着等の導電性膜コーティングを行っている。本発明者らは、同一の試料に対して、SEMによる形状観察及び走査型プローブ顕微鏡(SPM)による凹部の深さ測定を組み合せて行うことにより、基板上の薄膜に対してPtやAu蒸着等の導電性膜コーティングを行わなくても、パターン形成用薄膜の際、どのプロセスで欠陥が発生したのかを正確に特定することができることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0013】
本発明は、下記の構成1〜6であることを特徴とするマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0014】
(構成1)
基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法であって、前記薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて前記異物の形状を観察する工程と、前記異物を除去する工程と、前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程と、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程とを含むことを特徴とする、マスクブランクの欠陥分析方法である。
【0015】
(構成2)
前記異物を、前記薄膜の表面が露出した状態で、エネルギー分散型X線分光法を用いて検出し、前記異物の含有元素を特定する工程をさらに含むことを特徴とする、構成1に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0016】
(構成3)
前記薄膜が、スパッタリング法によって成膜されていることを特徴とする、構成1又は2に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0017】
(構成4)
前記検査が、前記薄膜表面に照射した検査光に対する反射光の光量差で前記異物に起因するものを含む欠陥の有無を検出する欠陥検査装置によって行われるものであることを特徴とする、構成1〜3のいずれか1項に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0018】
(構成5)
前記薄膜が、金属若しくは金属シリサイド、又はこれらの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物若しくは酸化窒化炭化物を含有する材料からなることを特徴とする、構成1〜4のいずれか1項に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0019】
(構成6)
前記金属は、クロム、タンタル又はモリブデンであることを特徴とする、構成5に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0020】
次に、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法の構成1〜6について説明する。
【0021】
本発明は、構成1にあるように、基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法であって、前記薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて前記異物の形状を観察する工程と、前記異物を除去する工程と、前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程と、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程とを含むことを特徴とする、マスクブランクの欠陥分析方法である。
【0022】
構成1にあるように、本発明は、基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法である。薄膜に対する検査は、公知の欠陥検査装置を用いて行うことができる。欠陥検査装置により、薄膜上に存在する欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)を検出することができる。欠陥検査装置等による検査によって、薄膜上に異物の存在が確認されたマスクブランクに対して本発明の欠陥分析方法を実施することができる。
【0023】
本発明の構成1のマスクブランクの欠陥分析方法は、薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて異物の形状を観察する工程を含む。「薄膜の表面が露出した状態」とは、PtやAu蒸着等の導電性膜コーティングを薄膜表面に行うことなく、導電性膜を有せずに薄膜の表面が露出した状態のことをいう。近年のマスクブランクは、導電性の低いガラス系材料で形成された基板上に、100nm前後の薄い膜厚で、金属に酸素や窒素などが含有された材料からなる薄膜が形成された構造である。一般に、走査型電子顕微鏡を用いて被検体の形状を観察する際に高い導電性が必要とされるのは、被検体の詳細な形状を観察する必要性が高い場合が多いためである。被検体の高精細なSEM画像を取得するためには導電性が重要なのである。導電性膜コーティングを施していないマスクブランクの全体の導電度は、高詳細なSEM画像を取得できるレベルには至らない場合が多い。しかし、マスクブランクの薄膜表面の異物を走査型電子顕微鏡で異物の形状を観察する場合、異物のおおよその形状、例えば、不定形、片状、欠片状、破片状、粒状等のいずれであるかの判別ができる程度、及び異物の寸法を測定することができる程度で十分であり、異物の表面の詳細な状態を観察できる高精細なSEM画像は必ずしも必要とされない。本発明では、マスクブランクの薄膜表面における異物の詳細な表面形態がわかるような高精細なSEM画像を取得することを重視するのではなく、その後に行われる走査型プローブ顕微鏡による異物除去後にできる薄膜表面の凹部の深さを検出する精度を重視するものである。なお、欠陥検査装置により、薄膜上に存在する欠陥の座標は明らかになっているので、走査型電子顕微鏡による所定の異物の発見は容易である。
【0024】
次に、本発明の構成1のマスクブランクの欠陥分析方法は、走査型電子顕微鏡を用いて観察した異物を除去する工程を含む。異物の除去には、例えば、スクラブ洗浄、超音波洗浄及び走査型プローブ顕微鏡のプローブにダイヤモンド針を装着して針を異物に当てて除去する方法等の公知の方法から適宜選択して用いることができる。異物の除去を確実かつ容易に行うために、異物の除去は、スクラブ洗浄により行うことが好ましい。
【0025】
次に、本発明の構成1のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程を含む。本発明に用いられる走査型プローブ顕微鏡としては、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)などが挙げられる。原子間力顕微鏡は、絶縁性の被検体に対しても凹部の深さを測定可能であるので、特に好ましい。前記に列挙した走査型プローブ顕微鏡は、公知のものを用いることができる。
【0026】
次に、本発明の構成1のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程を含む。走査型電子顕微鏡による観察によって測定した異物の形状及び寸法と、走査型プローブ顕微鏡により測定された凹部の深さとを考慮することにより、薄膜を成膜する工程における異物が付着した時期を特定することができる。具体的には、凹部の深さから、異物がどの成膜工程で付着したのかを特定することができ、異物の形状及び寸法から異物の種類(成膜した膜が剥がれたものであるか、外部から混入した異物であるか等)を推測することができるため、これらの情報に基づいて、異物が付着した時期の特定を総合的に判断することができる。
【0027】
また、構成2にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記異物を、前記薄膜の表面が露出した状態で、エネルギー分散型X線分光法を用いて検出し、前記異物の含有元素を特定する工程をさらに含むことを特徴とすることが好ましい。
【0028】
構成2にあるように、走査型電子顕微鏡による観察の際、走査型電子顕微鏡に付属しているエネルギー分散型X線分光法による測定装置を用いて、異物の含有元素を特定することができる。異物の含有元素に関する情報を得ることにより、異物が付着した時期の特定をより正確に行うことができる。なお、非破壊測定で異物の含有元素を特定できるのであれば、エネルギー分散型X線分光法による測定装置に限らない。また、走査型電子顕微鏡による観察後であれば、非破壊測定でなくても適用可能である。異物の含有元素を特定できる測定方法としては、例えば、波長分散型X線分光法(WDX)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、オージェ電子分光法(AES)などが挙げられる。
【0029】
また、構成3にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記薄膜が、スパッタリング法によって成膜されていることを特徴とすることが好ましい。
【0030】
構成3にあるように、基板上への薄膜の形成が、スパッタリング法によって行われることが好ましい。各種マスクブランクの遮光膜等の薄膜の形成には、スパッタリング法を用いることが一般的である。スパッタリングターゲットの種類及びスパッタリング中に導入するガスの種類を適切に選択することにより、単体の元素の薄膜のみならず、各種化合物の薄膜の形成も容易に行うことができるためである。なお、マスクブランクの薄膜の形成には、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法を用いることが特に好ましい。
【0031】
また、構成4にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記検査が、前記薄膜表面に照射した検査光に対する反射光の光量差で前記異物に起因するものを含む欠陥の有無を検出する欠陥検査装置によって行われるものであることを特徴とすることが好ましい。
【0032】
構成4にあるように、基板上に成膜された薄膜に対する検査をするための欠陥検査装置は、薄膜表面に照射した検査光に対する反射光の光量差で異物に起因するものを含む欠陥の有無を検出する欠陥検査装置であることが好ましい。この欠陥検査装置により、薄膜上に存在する欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)を検出することができる。欠陥検査装置の検査方式としては、レーザー散乱光を検出する方式や共焦点光学系を用いる方式などが挙げられる。
【0033】
また、構成5にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記薄膜が、金属若しくは金属シリサイド、又はこれらの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物若しくは酸化窒化炭化物を含有する材料からなることを特徴とすることが好ましい。
【0034】
構成5にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、金属又は金属シリサイドを含有する材料の薄膜を有するマスクブランクに対して好ましく用いることができる。また、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、金属又は金属シリサイドの、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物又は酸化窒化炭化物を含有する材料の薄膜を有するマスクブランクに対して好ましく用いることができる。上記材料は、マスクブランクを構成する薄膜の材料として一般的に用いられているものである。本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、上記材料のいずれに対しても、異物が付着した時期の特定を総合的に判断することを好適に行うことができる。
【0035】
また、構成6にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記金属は、クロム、タンタル又はモリブデンであることを特徴とすることが好ましい。
【0036】
構成6にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、クロム、タンタル若しくはモリブデンの単体又はそれらのシリサイドを含有する材料の薄膜を有するマスクブランクに対して好ましく用いることができる。また、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、クロム、タンタル若しくはモリブデンの単体又はそれらのシリサイドの、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物又は酸化窒化炭化物を含有する材料の薄膜を有するマスクブランクに対して好ましく用いることができる。上記材料は、マスクブランクを構成する薄膜の材料として、好ましく用いられているものである。本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、上記材料のいずれに対しても、異物が付着した時期の特定を総合的に判断することを好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、SEM観察時に従来形成していた導電性膜に関して生じる問題を回避し、同じマスクブランクを用いて異物の形状観察及びAFMによる欠陥深さの測定を正確に行うことができるマスクブランクの欠陥分析方法を提供することができる。また、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法により得られた情報を用いれば、パターン形成用薄膜の際、どのプロセスで欠陥が発生したのかを正確に特定することができる。この結果、マスクブランクの製造工程を改善することができるので、マスクブランクの製造の歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】マスクブランクの一例を示す断面図である。
【図2】実験番号4の異物を傾斜角0度で観察したSEM観察画像である。
【図3】実験番号4の異物を傾斜角50度で観察したSEM観察画像である。
【図4】実験番号4の異物除去後の凹部のAFM観察画像(左図)及びその微分画像(右図)である。
【図5】実験番号5の異物を傾斜角0度で観察したSEM観察画像である。
【図6】実験番号5の異物を傾斜角50度で観察したSEM観察画像である。
【図7】実験番号5の異物除去後の凹部のAFM観察画像(左図)及びその微分画像(右図)である。
【図8】実験番号6の異物を傾斜角0度で観察したSEM観察画像である。
【図9】実験番号6の異物を傾斜角50度で観察したSEM観察画像である。
【図10】実験番号6の異物除去後の凹部のAFM観察画像(左図)及びその微分画像(右図)である。
【図11】実験番号1〜9のAFM測定による異物の長さ及び深さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。なお、図1に示す例では、透光性基板1上の薄膜が遮光膜2である例について説明するが、本発明の欠陥分析方法は、遮光膜2の欠陥分析に限られるものではない。
【0040】
図1は、本発明の欠陥分析方法の分析対象となるマスクブランクの一例を示す断面図である。図1のマスクブランク10は、透光性基板1上に薄膜を遮光膜2として有する形態のものである。ここで、透光性基板1としては、ガラス基板が一般的である。ガラス基板は、平坦度及び平滑度に優れるため、転写用マスクを使用して半導体基板上へのパターン転写を行う場合、転写パターンの歪み等が生じないで高精度のパターン転写を行うことができる。ガラス基板としては、合成石英ガラス基板を用いることが好ましい。合成石英ガラスは化学的に安定で、他の工業材料と比較して熱膨張係数が極めて小さいなどの特徴を有する。また、合成石英ガラスは、FPD製造用途の転写用マスクで使用される超高圧水銀灯の露光光に対する光透過性も高い。さらには、合成石英ガラスは、半導体デバイス製造用途の転写用マスクで使用されるKrFエキシマレーザ(波長:約248nm)やArFエキシマレーザ(波長:約193nm)の露光光に対する光透過性も高い。これらのことからもわかるように、マスクブランク用基板の材料として、合成石英ガラスを好適に用いることができる。使用される露光光の光源によっては、基板の材料にソーダライムガラスやアルミのシリケートガラスなども適用可能である。
【0041】
マスクブランク10の遮光膜2は、その上に形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチングによってパターニングする際にレジスト膜の膜減りが起こっても、遮光膜2のパターニング終了時点でレジスト膜が残存するように、レジスト膜の膜厚と、遮光膜2のドライエッチング速度が制御される。具体的な遮光膜2の材料としては、例えば、クロムと、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素とを含む材料を用いることができる。このようなクロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素としては、酸素、窒素及び/又は炭素を挙げることができる。
【0042】
本発明の欠陥分析方法では、マスクブランク10の遮光膜2の材料となる金属として、クロムに加えて、タンタル及び/又はモリブデンを用いることもでき、それらのシリサイドを用いることもできる。またそれらの金属材料の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物及び/又は酸化窒化炭化物を含有する材料を用いることもできる。
【0043】
上記遮光膜2の形成方法は、特に制限されないが、遮光膜2の形成方法として、スパッタリング法を好ましく挙げることができる。スパッタリング法によると、均一で膜厚の一定な遮光膜2を形成することができる。透光性基板1上に、スパッタリング法によってクロムを含む遮光膜2を成膜する場合、スパッタリングターゲットとしてクロム(Cr)ターゲットを用いる。また、チャンバー内に導入するスパッタガスは、アルゴンガスに酸素、窒素若しくは二酸化炭素等のガスを混合したものを用いることができる。アルゴンガスに酸素ガス又は二酸化炭素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロム及び酸素を含む遮光膜2を形成することができる。また、アルゴンガスに窒素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロム及び窒素を含む遮光膜2を形成することができる。
【0044】
遮光膜を形成方法するためのスパッタリング装置としては、枚葉式スパッタリング装置及びインライン式スパッタリング装置を挙げることができる。枚葉式スパッタリング装置及びインライン式スパッタリング装置のどちらで遮光膜2の成膜をする場合でも、本発明の欠陥分析方法によって、好適に欠陥の分析を行うことができる。
【0045】
また、遮光膜2は、単層であることに限られず、多層の遮光膜2であることができる。例えば、基板上にクロム及び窒素を含む薄膜を形成し、さらにその薄膜の上にクロム、酸素及び窒素を含む薄膜を形成することによって、二層からなる遮光膜2を形成することができる。また、遮光膜2は、表層部(上層部)に反射防止層を含むものであってもよい。その場合、反射防止層としては、例えばCrO,CrCO,CrNO,CrCON等の材質を好ましく挙げることができる。反射防止層を設けることによって、露光波長における反射率を例えば20%以下、好ましくは15%以下に抑えることが、フォトマスク使用時の定在波の影響を低減する上で望ましい。さらに、マスクブランクやフォトマスクの欠陥検査に用いる波長(例えば257nm、364nm、488nm等)に対する反射率を例えば30%以下とすることが、欠陥を高精度で検出する上で望ましい。特に、反射防止層として炭素を含む膜とすることにより、露光波長に対する反射率を低減させ、かつ、上記検査波長(特に257nm)に対する反射率が20%以下とすることができるので望ましい。具体的には、炭素の含有量は、5〜20原子%とすることが好ましい。炭素の含有量が5原子%未満の場合、反射率を低減させる効果が小さくなり、また、炭素の含有量が20原子%超の場合、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜2をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜の薄膜化することが困難となるので好ましくない。但し、反射防止層として炭素を含む場合には、ドライエッチング速度が低下する傾向にあるので、本発明の効果を最大限に発揮するために、遮光膜2全体に占める反射防止層の割合を0.45以下、さらに好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.20以下とすることが望ましい。なお、反射防止層は裏面(ガラス面)側にも設けてもよい。また、遮光膜2は、表層部の反射防止層と、それ以外の層との間で段階的、又は連続的に組成傾斜した組成傾斜膜としても良い。
【0046】
また、上記遮光膜2の上に、非クロム系反射防止膜を設けてもよい。このような反射防止膜としては、例えばSiO2,SiON,MSiO,MSiON(Mはモリブデン等の非クロム金属)等の材質が挙げられる。
【0047】
上述のようにして遮光膜2等の薄膜を形成する際に、異物がしばしば発生し、基板又は成長中の薄膜に付着する場合がある。本発明のマスクブランクの欠陥分析方法を用いるならば、薄膜成長中の異物の発生理由及び発生時期を特定することができる。
【0048】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、まず、上述のようにして薄膜、例えば遮光膜2の形成後、欠陥検査装置を用いて、薄膜上に存在する欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)を検出する。欠陥検査装置としては、薄膜上に存在する欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)の検出が可能な公知のものを用いることができる。欠陥検査装置としては、例えばレーザーテック社製M1350(レーザーテック社の商品名)を用いることができる。
【0049】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、次に、薄膜の表面に導電性膜の蒸着等をしないまま、欠陥検査装置によって欠陥が検出された座標を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察する。このSEM観察により、欠陥として検出された異物の形状及び寸法を測定することができる。また、異物の発生理由をより明確にするために、SEM観察の際に、SEMに付属するエネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて、異物を構成する元素を測定することが好ましい。
【0050】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、次に、スクラブ洗浄装置等によって、薄膜の表面をスクラブ洗浄することにより、SEMによって観察した異物を除去する。異物の除去の方法としては、例えば、スクラブ洗浄、超音波洗浄及び走査型プローブ顕微鏡のプローブにダイヤモンド針を装着して針を異物に当てて除去する方法等の方法を挙げることができる。異物の除去を確実かつ容易に行うために、異物の除去は、スクラブ洗浄により行うことが好ましい。スクラブ洗浄とは、スポンジブラシ等の摩擦材料を用いて薄膜表面の異物を機械的に除去する洗浄方法である。スクラブ洗浄装置としては、例えば、特許文献3に開示されているような洗浄装置を用いることができる。
【0051】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、次に、SEMによって異物を観察した座標を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)によって観察し、異物が除去された部分である凹部欠陥の深さを測定する。走査型プローブ顕微鏡は、公知のものを用いることができるが、特に原子間力顕微鏡(AFM)が望ましい。なお、欠陥検査装置により、薄膜上に存在する欠陥の座標は明らかになっているので、走査型プローブ顕微鏡による所定の異物の発見は容易である。
【0052】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、次に、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、薄膜の成膜の際に異物が付着した時期を特定する。上述の走査型電子顕微鏡による観察によって測定した異物の形状及び寸法を得ることができる。また、エネルギー分散型X線分光法により異物の含有元素を特定することができる。さらに、走査型プローブ顕微鏡により、異物が存在していた部分である凹部の深さを得ることができる。以上得られた情報から、薄膜を成膜する際に異物が付着した時期を特定することができ、また、どのような理由で異物が発生したのかを推測することができる。この結果、マスクブランクの製造工程を改善することができるので、マスクブランクの製造の歩留まりを向上することができる。
【0053】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、例えば、以下のような遮光膜、光半透過膜及び吸収体膜等の薄膜を有するマスクブランクに好適に用いることができる。
(1)前記薄膜が遷移金属を含む材料からなる遮光膜であるバイナリマスクブランク
かかるバイナリマスクブランクは、透光性基板上に遮光膜を有する形態のものであり、この遮光膜は、クロム、タンタル、ルテニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ロジウム等の遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料からなる。例えば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したクロム化合物で構成した遮光膜が挙げられる。また、例えば、タンタルに、酸素、窒素、ホウ素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したタンタル化合物で構成した遮光膜が挙げられる。
かかるバイナリマスクブランクは、遮光膜を、遮光層と表面反射防止層の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層を加えた3層構造としたものなどがある。
また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0054】
(2)前記薄膜が、前記の遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる光半透過膜である位相シフトマスクブランク
かかる位相シフトマスクブランクとしては、透光性基板(ガラス基板)上に光半透過膜を有する形態のものであって、該光半透過膜をパターニングしてシフタ部を設けるタイプであるハーフトーン型位相シフトマスクが作製される。かかる位相シフトマスクにおいては、光半透過膜を透過した光に基づき転写領域に形成される光半透過膜パターンによる被転写基板のパターン不良を防止するために、透光性基板上に光半透過膜とその上の遮光膜(遮光帯)とを有する形態とするものが挙げられる。また、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクのほかに、透光性基板をエッチング等により掘り込んでシフタ部を設ける基板掘り込みタイプであるレベンソン型位相シフトマスク用やエンハンサー型位相シフトマスク用のマスクブランクが挙げられる。
【0055】
前記ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差(例えば180度)を有するものであり、この光半透過膜をパターニングした光半透過部と、光半透過膜が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0056】
この光半透過膜は、例えば遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイドを含む)の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
また、光半透過膜上に遮光膜を有する形態の場合、上記光半透過膜の材料が遷移金属及びケイ素を含むので、遮光膜の材料としては、光半透過膜に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物で構成することが好ましい。
【0057】
レベンソン型位相シフトマスクは、バイナリマスクブランクと同様の構成のマスクブランクから作製されるため、パターン形成用薄膜の構成については、バイナリマスクブランクの遮光膜と同様である。エンハンサー型位相シフトマスク用のマスクブランクの光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものではあるが、透過する露光光に生じさせる位相差が小さい膜(例えば、位相差が30度以下。好ましくは0度。)であり、この点が、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜とは異なる。この光半透過膜の材料は、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜と同様の元素を含むが、各元素の組成比や膜厚は、露光光に対して所定の透過率と所定の小さな位相差となるように調整される。
【0058】
(3)前記薄膜が、遷移金属、遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる遮光膜であるバイナリマスクブランク
この遮光膜は、遷移金属及びケイ素の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、遮光膜は、遷移金属と、酸素、窒素及び/又はホウ素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
特に、遮光膜をモリブデンシリサイドの化合物で形成する場合であって、遮光層(MoSi等)と表面反射防止層(MoSiON等)の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層(MoSiON等)を加えた3層構造がある。
また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0059】
また、レジスト膜の膜厚を薄膜化して微細パターンを形成するために、遮光膜上にエッチングマスク膜を有する構成としてもよい。このエッチングマスク膜は、遷移金属シリサイドを含む遮光膜のエッチングに対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。このとき、エッチングマスク膜に反射防止機能を持たせることにより、遮光膜上にエッチングマスク膜を残した状態で転写用マスクを作製してもよい。
【0060】
(4)前記薄膜が、1以上の半透過膜と遮光膜との積層構造である多階調マスクブランク
半透過膜の材料については、前記のハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜と同様の元素のほか、クロム、タンタル、チタン、アルミニウムなどの金属単体や合金あるいはそれらの化合物を含む材料も含まれる。各元素の組成比や膜厚は、露光光に対して所定の透過率となるように調整される。遮光膜の材料についても、前記のバイナリマスクブランクの遮光膜が適用可能であるが、半透過膜との積層構造で、所定の遮光性能(光学濃度)となるように、遮光膜材料の組成や膜厚は調整される。
【0061】
また、上記(1)〜(4)において、透光性基板と遮光膜との間、又は光半透過膜と遮光膜との間に、遮光膜や光半透過膜に対してエッチング耐性を有するエッチングストッパー膜を設けてもよい。エッチングストッパー膜は、エッチングストッパー膜をエッチングするときにエッチングマスク膜を同時に剥離することができる材料としてもよい。
【0062】
さらに、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、以下のような反射型マスクブランクに好適に用いることができる。
【0063】
(5)高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層してなる多層反射膜上に吸収体膜を備える反射型マスクブランク
反射型マスクは、EUVリソグラフィに用いられるマスクである。反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成された構造を有する。露光装置(パターン転写装置)に搭載された反射型マスクに入射した光(EUV光)は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では多層反射膜により反射された光像が反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
【0064】
反射型マスクの場合、基板には露光光(EUV光)に対する高い透過率は求められず、合成石英ガラスよりも低い熱膨張係数(例えば、0±1.0×10−7/℃の範囲内、より好ましくは、0±0.3×10−7/℃の範囲内)が求められる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えばアモルファスガラスであれば、SiO2に例えば5〜10重量%程度の範囲でTiO2を添加したSiO2−TiO2系ガラス基板が好ましい。
【0065】
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成される。多層反射膜の例としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長により、材質を適宜選択することができる。
【0066】
吸収体膜は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、例えばタンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。
【0067】
Taを主成分とする材料としては、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、さらにOとNの少なくともいずれかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、TaとHfを含む材料、TaとHfとNを含む材料、TaとZrを含む材料、TaとZrとNを含む材料、等を用いることができる。TaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができるという効果が得られる。
【0068】
EUV反射型マスクブランクの場合、表面欠陥に対する非常に高いレベルの条件を満たす必要がある。本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、EUV反射型マスクブランクに用いる吸収体膜の成膜の歩留まり向上のために、特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
【0070】
合成石英ガラスからなる基板上に、枚葉式スパッタリング装置を用いて、ハーフトーン型位相シフト膜を形成した。具体的には、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=12at%:88at%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N2)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N2:He=8:72:100)で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、ケイ素及び窒素からなるMoSiN膜を69nmの膜厚で形成した。次いで、上記MoSiN膜が形成された基板に対して、アニール処理として加熱処理を施した。加熱処理後のMoSiN膜(ハーフトーン型位相シフト膜)は、ArFエキシマレーザー光に対する透過率が6.16%、位相差が184.4度であった。
【0071】
次に、基板のMoSiN膜上に、インライン式スパッタリング装置を用いて、遮光膜を形成した。インライン式スパッタリング装置には、横長のスパッタ室内に2つのクロムターゲットが配置されており、基板を2つのクロムターゲットの間を低速で移動させながら、組成傾斜した積層構造の遮光膜を膜厚48nmで形成した。最初のクロムターゲットでは、アルゴン(Ar)と窒素(N2)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N2:He=30:30:40)での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、CrN層を約28nmの膜厚で形成した。また、2つ目のクロムターゲットでは、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:NO:He=65:3:40)での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、CrON層を約20nmの膜厚で形成した。以上のようにして、合成石英ガラスからなる基板上に、膜厚69nmのMoSiN膜からなるハーフトーン位相シフト膜と、CrN層及びCrON層が明確な界面を持たずに組成傾斜した膜からなる膜厚48nmの遮光膜とが積層したマスクブランク(ハーフトーン型位相シフトマスクブランク)を50枚製造した。
【0072】
製造した50枚のマスクブランクの遮光膜に対し、欠陥検査装置(レーザーテック社製M1350、レーザーテック社の商品名)を用いて、遮光膜上の欠陥の有無の検出と、欠陥が存在する場合はその欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)を記録した。
【0073】
次に、遮光膜に凸欠陥が検出されたマスクブランクに対し、遮光膜の表面に導電性膜の蒸着等をしないまま、欠陥検査装置によって凸欠陥が検出された座標を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、凸欠陥として検出された異物の形状及び寸法を測定した。また、SEMに付属するエネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて、異物を構成する元素を測定した。走査型電子顕微鏡は、日本電子社製 JWS−7855Sを用いた。
【0074】
続いて、SEM観察及びEDX分析によって、異物に起因する凸欠陥が存在することが確認されたマスクブランクに対して、イソプロピルアルコール液に浸漬させるIPA洗浄を行った。次に、スクラブ洗浄装置によって、遮光膜の表面をスクラブ洗浄し、SEMによって観察した異物を除去した。
【0075】
次に、SEMによって異物を観察した座標を、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察し、遮光膜の異物が除去された部分である凹部欠陥の深さ(表面を0nmとして、深さが深いほど、マイナスの値が大きくなるように示す。)を測定した。基板直上のCrN層の厚さは約28nmであり、CrN層の上のCrON層の厚さは20nmであることから、例えば、凹部欠陥の深さが20nm以上である場合には、異物がCrN層を成膜するプロセス中あるいは、CrN層を成膜する前の段階で付着したことを意味する。原子間力顕微鏡は、ビーコ・インスツルメンツ社製 D5000を用いた。
【0076】
SEM、EDX及びAFMによる測定結果を表2に示す。表1に示すように、本実施例では実験番号1〜9として示す9つの異物を測定した。
【0077】
【表1】
【0078】
また、図2及び図3に、実験番号4の異物のSEM観察画像を示す。図2は、傾斜角0度で観察したSEM観察画像、図3は、傾斜角50度で観察したSEM観察画像を示す。また、図4に、実験番号4の異物除去後の凹部のAFM観察画像を示す。図4の左図は通常のAFM観察画像であり、右図はその微分画像である。表2及び図2〜図4から、実験番号4の異物は、堆積したクロム膜が剥がれたものと推測できる。また、凹部欠陥の深さが−12.6nmであることから、実験番号4の異物は、CrON層の成膜中に付着したものと推測できる。
【0079】
また、図5及び図6に、実験番号5の異物のSEM観察画像を示す。図5は、傾斜角0度で観察したSEM観察画像、図6は、傾斜角50度で観察したSEM観察画像を示す。また、図7に、実験番号5の異物除去後の凹部のAFM観察画像を示す。図7の左図は通常のAFM観察画像であり、右図はその微分画像である。表2及び図5〜図7から、実験番号5の異物は、何らかの理由でグラファイトカーボンが形成されたものと推測できる。また、凹部欠陥の深さが−24.0nmであることから、実験番号5の異物は、CrN層の成膜中に付着したものと推測できる。
【0080】
また、図8及び図9に、実験番号6の異物のSEM観察画像を示す。図8は、傾斜角0度で観察したSEM観察画像、図9は、傾斜角50度で観察したSEM観察画像を示す。また、図10に、実験番号6の異物除去後の凹部のAFM観察画像を示す。図10の左図は通常のAFM観察画像であり、右図はその微分画像である。表2及び図8〜図10から、実験番号6の異物は、堆積したクロム膜が剥がれたものと推測できる。また、凹部欠陥の深さが−19.1nmであることから、実験番号6の異物は、厚さ20nmのCrON層の成膜開始直後に付着したものと推測できる。
【0081】
同様に、実験番号4〜6以外の異物についても、その形成理由及びどの時期に付着したのかを特定することができる。
【0082】
図11は、実験番号1〜9のAFM測定による異物の長さ及び深さを示す図である。図11から、異物の付着は、CrON層の成膜開始直後又は成膜初期段階に生じたことが明らかである。マスクブランクの欠陥分析方法によれば、上記の分析結果及びその結果を解析することによる推測等から、薄膜を成膜する工程における異物が付着した時期を特定することができ、どのような理由で異物が発生したのかを推測することができる。この結果、マスクブランクの製造工程を改善することができるので、マスクブランクの製造の歩留まりを向上することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 透光性基板
2 遮光膜
10 マスクブランク
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置等の電子デバイスの製造において使用されるフォトマスク(転写用マスク)を作製するために用いるマスクブランクの欠陥分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚ものフォトマスク(以下、「転写用マスク」という。)と呼ばれている基板が使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0003】
フォトリソグラフィー法による転写用マスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に転写パターン(マスクパターン)を形成するための薄膜(例えば遮光膜など)を有するマスクブランクが用いられる。半導体装置の高集積化に伴い、マスクブランクが有する欠陥を低減することが必要なっているため、マスクブランク表面に存在する欠陥の検査が行われている。欠陥検査のためには、レーザー散乱光を検出する方式や共焦点光学系を用いる方式の欠陥検査装置が主に用いられている。また、走査型電子顕微鏡(SEM)によりマスクブランク表面の欠陥を観察する場合もある。
【0004】
走査型電子顕微鏡(SEM)により基板の表面の欠陥を観察する場合には、基板表面が帯電(チャージアップ)することにより、鮮明なSEM像が得られないという問題がある。SEM観察の際の基板表面の帯電を避けるために、例えば、特許文献1には、基板の表面上に微細なパターンが形成された試料であって、前記基板及びパターンのうちの少なくとも一方が絶縁体で構成されている試料の前記パターンを走査型電子顕微鏡によって観察する際に前記パターンの観察を良好にするために前記試料に施される観察試料処理方法において、前記試料のパターン及び前記基板のうち少なくとも絶縁体から構成されているものの表面を、水又は溶剤等によって容易に剥離させることのできる導電性薄膜で覆うことを特徴とした観察試料処理方法が開示されている。
【0005】
また、SEM観察の際の基板表面の帯電を避けるために、特許文献2には、試料表面を、前記試料表面から2次電子を放出する1次電子ビームでスキャンする段階と、前記1次電子ビームをスキャンする以前に前記試料表面に意図的に電荷を帯電させて前記表面での電荷分布の均一性を強め、前記1次電子が前記表面に接近する時に電気的な引付け又は反発により回折される傾向を弱める段階と、前記試料表面から放出される2次電子を捕獲する段階と、前記捕獲された2次電子を信号に転換する段階と、前記信号を基にして前記1次電子ビームがスキャンされた前記試料表面の画像を得る段階とを含むことを特徴とする走査型電子顕微鏡画像を得る方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、マスクブランク表面の欠陥の発生を低減するための洗浄方法として、異物を除去するためにブラシ等の摩擦材料を用いたスクラブ洗浄機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−221637号公報
【特許文献2】特開2002−222635号公報
【特許文献3】特開平3−29474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体装置の高集積化に伴い、マスクブランクが有する欠陥に対する要求は厳しくなっている。そのため、マスクブランク製造における歩留まり向上のためには、欠陥検査装置を用いて欠陥の寸法、形状及び位置を測定し、どの時期に欠陥が発生したのかを明らかにすることが必要である。
【0009】
従来、欠陥検査装置による検査によって、基板上に形成したパターン形成用薄膜に欠陥が存在するマスクブランクが発見された場合、欠陥発生原因の特定のために、マスクブランクの欠陥分析が行われている。マスクブランクの欠陥分析方法としては、具体的には、(1)成膜直後の未洗浄薄膜の分析及び(2)薄膜に対する異物除去洗浄が行われた後の分析が行われている。(1)成膜直後の未洗浄薄膜の分析では、薄膜の表面にPtやAu蒸着等の導電性膜をコーティング後、SEMを用いて、SEM観察画像による薄膜上の異物の形状観察及びエネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いた成分分析による異物の成分特定を行う。また、(2)異物除去洗浄後の分析では、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、例えば原子間力顕微鏡(AFM)によって、薄膜の凹部欠陥の深さの測定を行う。
【0010】
しかしながら、(1)SEM及びEDXによる分析並びに(2)SPMによる分析を、異なるマスクブランクを用いて分析するのでは、両分析の間に確実な相関が得られないという欠点がある。(1)SEM及びEDXによる分析の後に、剥離液により導電性膜を剥離し、さらに異物除去洗浄を行った後に、同じマスクブランクのSPM測定をするという方法も考えられる。しかしながら、導電性膜の材料として用いるAuやPtの除去には、加熱した王水や濃硫酸を使用する必要がある。そのため、マスクブランクのパターン形成用薄膜の表面が少なからず除去(減膜)されて膜厚が減少してしまったり、AuやPtの除去不足により導電性膜が残ってしまう(残膜)などの問題が生じる。減膜又は残膜(導電性膜)した薄膜表面に対してSPMによる欠陥の深さ測定を行うと、実際の欠陥の深さとは誤差が生じてしまう。パターン形成用薄膜は、通常、複数層の積層構造であるため、欠陥の深さによっては、どの層の成膜プロセスで欠陥が発生したか特定することが困難になる場合があるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、SEM観察時に従来形成していた導電性膜に関して生じる問題を回避し、同じマスクブランクを用いて異物の形状観察及び走査型プローブ顕微鏡(SPM)による欠陥深さの測定を正確に行うことができるマスクブランクの欠陥分析方法を提供することを目的とする。また、本発明は、パターン形成用薄膜の際、どのプロセスで欠陥が発生したのかを正確に特定することができるマスクブランクの欠陥分析方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来、走査型電子顕微鏡(SEM)による異物の形状観察のために、基板上の薄膜に対してPtやAu蒸着等の導電性膜コーティングを行っている。本発明者らは、同一の試料に対して、SEMによる形状観察及び走査型プローブ顕微鏡(SPM)による凹部の深さ測定を組み合せて行うことにより、基板上の薄膜に対してPtやAu蒸着等の導電性膜コーティングを行わなくても、パターン形成用薄膜の際、どのプロセスで欠陥が発生したのかを正確に特定することができることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0013】
本発明は、下記の構成1〜6であることを特徴とするマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0014】
(構成1)
基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法であって、前記薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて前記異物の形状を観察する工程と、前記異物を除去する工程と、前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程と、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程とを含むことを特徴とする、マスクブランクの欠陥分析方法である。
【0015】
(構成2)
前記異物を、前記薄膜の表面が露出した状態で、エネルギー分散型X線分光法を用いて検出し、前記異物の含有元素を特定する工程をさらに含むことを特徴とする、構成1に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0016】
(構成3)
前記薄膜が、スパッタリング法によって成膜されていることを特徴とする、構成1又は2に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0017】
(構成4)
前記検査が、前記薄膜表面に照射した検査光に対する反射光の光量差で前記異物に起因するものを含む欠陥の有無を検出する欠陥検査装置によって行われるものであることを特徴とする、構成1〜3のいずれか1項に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0018】
(構成5)
前記薄膜が、金属若しくは金属シリサイド、又はこれらの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物若しくは酸化窒化炭化物を含有する材料からなることを特徴とする、構成1〜4のいずれか1項に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0019】
(構成6)
前記金属は、クロム、タンタル又はモリブデンであることを特徴とする、構成5に記載のマスクブランクの欠陥分析方法である。
【0020】
次に、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法の構成1〜6について説明する。
【0021】
本発明は、構成1にあるように、基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法であって、前記薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて前記異物の形状を観察する工程と、前記異物を除去する工程と、前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程と、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程とを含むことを特徴とする、マスクブランクの欠陥分析方法である。
【0022】
構成1にあるように、本発明は、基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法である。薄膜に対する検査は、公知の欠陥検査装置を用いて行うことができる。欠陥検査装置により、薄膜上に存在する欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)を検出することができる。欠陥検査装置等による検査によって、薄膜上に異物の存在が確認されたマスクブランクに対して本発明の欠陥分析方法を実施することができる。
【0023】
本発明の構成1のマスクブランクの欠陥分析方法は、薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて異物の形状を観察する工程を含む。「薄膜の表面が露出した状態」とは、PtやAu蒸着等の導電性膜コーティングを薄膜表面に行うことなく、導電性膜を有せずに薄膜の表面が露出した状態のことをいう。近年のマスクブランクは、導電性の低いガラス系材料で形成された基板上に、100nm前後の薄い膜厚で、金属に酸素や窒素などが含有された材料からなる薄膜が形成された構造である。一般に、走査型電子顕微鏡を用いて被検体の形状を観察する際に高い導電性が必要とされるのは、被検体の詳細な形状を観察する必要性が高い場合が多いためである。被検体の高精細なSEM画像を取得するためには導電性が重要なのである。導電性膜コーティングを施していないマスクブランクの全体の導電度は、高詳細なSEM画像を取得できるレベルには至らない場合が多い。しかし、マスクブランクの薄膜表面の異物を走査型電子顕微鏡で異物の形状を観察する場合、異物のおおよその形状、例えば、不定形、片状、欠片状、破片状、粒状等のいずれであるかの判別ができる程度、及び異物の寸法を測定することができる程度で十分であり、異物の表面の詳細な状態を観察できる高精細なSEM画像は必ずしも必要とされない。本発明では、マスクブランクの薄膜表面における異物の詳細な表面形態がわかるような高精細なSEM画像を取得することを重視するのではなく、その後に行われる走査型プローブ顕微鏡による異物除去後にできる薄膜表面の凹部の深さを検出する精度を重視するものである。なお、欠陥検査装置により、薄膜上に存在する欠陥の座標は明らかになっているので、走査型電子顕微鏡による所定の異物の発見は容易である。
【0024】
次に、本発明の構成1のマスクブランクの欠陥分析方法は、走査型電子顕微鏡を用いて観察した異物を除去する工程を含む。異物の除去には、例えば、スクラブ洗浄、超音波洗浄及び走査型プローブ顕微鏡のプローブにダイヤモンド針を装着して針を異物に当てて除去する方法等の公知の方法から適宜選択して用いることができる。異物の除去を確実かつ容易に行うために、異物の除去は、スクラブ洗浄により行うことが好ましい。
【0025】
次に、本発明の構成1のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程を含む。本発明に用いられる走査型プローブ顕微鏡としては、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)などが挙げられる。原子間力顕微鏡は、絶縁性の被検体に対しても凹部の深さを測定可能であるので、特に好ましい。前記に列挙した走査型プローブ顕微鏡は、公知のものを用いることができる。
【0026】
次に、本発明の構成1のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程を含む。走査型電子顕微鏡による観察によって測定した異物の形状及び寸法と、走査型プローブ顕微鏡により測定された凹部の深さとを考慮することにより、薄膜を成膜する工程における異物が付着した時期を特定することができる。具体的には、凹部の深さから、異物がどの成膜工程で付着したのかを特定することができ、異物の形状及び寸法から異物の種類(成膜した膜が剥がれたものであるか、外部から混入した異物であるか等)を推測することができるため、これらの情報に基づいて、異物が付着した時期の特定を総合的に判断することができる。
【0027】
また、構成2にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記異物を、前記薄膜の表面が露出した状態で、エネルギー分散型X線分光法を用いて検出し、前記異物の含有元素を特定する工程をさらに含むことを特徴とすることが好ましい。
【0028】
構成2にあるように、走査型電子顕微鏡による観察の際、走査型電子顕微鏡に付属しているエネルギー分散型X線分光法による測定装置を用いて、異物の含有元素を特定することができる。異物の含有元素に関する情報を得ることにより、異物が付着した時期の特定をより正確に行うことができる。なお、非破壊測定で異物の含有元素を特定できるのであれば、エネルギー分散型X線分光法による測定装置に限らない。また、走査型電子顕微鏡による観察後であれば、非破壊測定でなくても適用可能である。異物の含有元素を特定できる測定方法としては、例えば、波長分散型X線分光法(WDX)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、オージェ電子分光法(AES)などが挙げられる。
【0029】
また、構成3にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記薄膜が、スパッタリング法によって成膜されていることを特徴とすることが好ましい。
【0030】
構成3にあるように、基板上への薄膜の形成が、スパッタリング法によって行われることが好ましい。各種マスクブランクの遮光膜等の薄膜の形成には、スパッタリング法を用いることが一般的である。スパッタリングターゲットの種類及びスパッタリング中に導入するガスの種類を適切に選択することにより、単体の元素の薄膜のみならず、各種化合物の薄膜の形成も容易に行うことができるためである。なお、マスクブランクの薄膜の形成には、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法を用いることが特に好ましい。
【0031】
また、構成4にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記検査が、前記薄膜表面に照射した検査光に対する反射光の光量差で前記異物に起因するものを含む欠陥の有無を検出する欠陥検査装置によって行われるものであることを特徴とすることが好ましい。
【0032】
構成4にあるように、基板上に成膜された薄膜に対する検査をするための欠陥検査装置は、薄膜表面に照射した検査光に対する反射光の光量差で異物に起因するものを含む欠陥の有無を検出する欠陥検査装置であることが好ましい。この欠陥検査装置により、薄膜上に存在する欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)を検出することができる。欠陥検査装置の検査方式としては、レーザー散乱光を検出する方式や共焦点光学系を用いる方式などが挙げられる。
【0033】
また、構成5にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記薄膜が、金属若しくは金属シリサイド、又はこれらの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物若しくは酸化窒化炭化物を含有する材料からなることを特徴とすることが好ましい。
【0034】
構成5にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、金属又は金属シリサイドを含有する材料の薄膜を有するマスクブランクに対して好ましく用いることができる。また、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、金属又は金属シリサイドの、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物又は酸化窒化炭化物を含有する材料の薄膜を有するマスクブランクに対して好ましく用いることができる。上記材料は、マスクブランクを構成する薄膜の材料として一般的に用いられているものである。本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、上記材料のいずれに対しても、異物が付着した時期の特定を総合的に判断することを好適に行うことができる。
【0035】
また、構成6にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、前記金属は、クロム、タンタル又はモリブデンであることを特徴とすることが好ましい。
【0036】
構成6にあるように、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、クロム、タンタル若しくはモリブデンの単体又はそれらのシリサイドを含有する材料の薄膜を有するマスクブランクに対して好ましく用いることができる。また、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、クロム、タンタル若しくはモリブデンの単体又はそれらのシリサイドの、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物又は酸化窒化炭化物を含有する材料の薄膜を有するマスクブランクに対して好ましく用いることができる。上記材料は、マスクブランクを構成する薄膜の材料として、好ましく用いられているものである。本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、上記材料のいずれに対しても、異物が付着した時期の特定を総合的に判断することを好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、SEM観察時に従来形成していた導電性膜に関して生じる問題を回避し、同じマスクブランクを用いて異物の形状観察及びAFMによる欠陥深さの測定を正確に行うことができるマスクブランクの欠陥分析方法を提供することができる。また、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法により得られた情報を用いれば、パターン形成用薄膜の際、どのプロセスで欠陥が発生したのかを正確に特定することができる。この結果、マスクブランクの製造工程を改善することができるので、マスクブランクの製造の歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】マスクブランクの一例を示す断面図である。
【図2】実験番号4の異物を傾斜角0度で観察したSEM観察画像である。
【図3】実験番号4の異物を傾斜角50度で観察したSEM観察画像である。
【図4】実験番号4の異物除去後の凹部のAFM観察画像(左図)及びその微分画像(右図)である。
【図5】実験番号5の異物を傾斜角0度で観察したSEM観察画像である。
【図6】実験番号5の異物を傾斜角50度で観察したSEM観察画像である。
【図7】実験番号5の異物除去後の凹部のAFM観察画像(左図)及びその微分画像(右図)である。
【図8】実験番号6の異物を傾斜角0度で観察したSEM観察画像である。
【図9】実験番号6の異物を傾斜角50度で観察したSEM観察画像である。
【図10】実験番号6の異物除去後の凹部のAFM観察画像(左図)及びその微分画像(右図)である。
【図11】実験番号1〜9のAFM測定による異物の長さ及び深さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。なお、図1に示す例では、透光性基板1上の薄膜が遮光膜2である例について説明するが、本発明の欠陥分析方法は、遮光膜2の欠陥分析に限られるものではない。
【0040】
図1は、本発明の欠陥分析方法の分析対象となるマスクブランクの一例を示す断面図である。図1のマスクブランク10は、透光性基板1上に薄膜を遮光膜2として有する形態のものである。ここで、透光性基板1としては、ガラス基板が一般的である。ガラス基板は、平坦度及び平滑度に優れるため、転写用マスクを使用して半導体基板上へのパターン転写を行う場合、転写パターンの歪み等が生じないで高精度のパターン転写を行うことができる。ガラス基板としては、合成石英ガラス基板を用いることが好ましい。合成石英ガラスは化学的に安定で、他の工業材料と比較して熱膨張係数が極めて小さいなどの特徴を有する。また、合成石英ガラスは、FPD製造用途の転写用マスクで使用される超高圧水銀灯の露光光に対する光透過性も高い。さらには、合成石英ガラスは、半導体デバイス製造用途の転写用マスクで使用されるKrFエキシマレーザ(波長:約248nm)やArFエキシマレーザ(波長:約193nm)の露光光に対する光透過性も高い。これらのことからもわかるように、マスクブランク用基板の材料として、合成石英ガラスを好適に用いることができる。使用される露光光の光源によっては、基板の材料にソーダライムガラスやアルミのシリケートガラスなども適用可能である。
【0041】
マスクブランク10の遮光膜2は、その上に形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチングによってパターニングする際にレジスト膜の膜減りが起こっても、遮光膜2のパターニング終了時点でレジスト膜が残存するように、レジスト膜の膜厚と、遮光膜2のドライエッチング速度が制御される。具体的な遮光膜2の材料としては、例えば、クロムと、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素とを含む材料を用いることができる。このようなクロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素としては、酸素、窒素及び/又は炭素を挙げることができる。
【0042】
本発明の欠陥分析方法では、マスクブランク10の遮光膜2の材料となる金属として、クロムに加えて、タンタル及び/又はモリブデンを用いることもでき、それらのシリサイドを用いることもできる。またそれらの金属材料の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物及び/又は酸化窒化炭化物を含有する材料を用いることもできる。
【0043】
上記遮光膜2の形成方法は、特に制限されないが、遮光膜2の形成方法として、スパッタリング法を好ましく挙げることができる。スパッタリング法によると、均一で膜厚の一定な遮光膜2を形成することができる。透光性基板1上に、スパッタリング法によってクロムを含む遮光膜2を成膜する場合、スパッタリングターゲットとしてクロム(Cr)ターゲットを用いる。また、チャンバー内に導入するスパッタガスは、アルゴンガスに酸素、窒素若しくは二酸化炭素等のガスを混合したものを用いることができる。アルゴンガスに酸素ガス又は二酸化炭素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロム及び酸素を含む遮光膜2を形成することができる。また、アルゴンガスに窒素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロム及び窒素を含む遮光膜2を形成することができる。
【0044】
遮光膜を形成方法するためのスパッタリング装置としては、枚葉式スパッタリング装置及びインライン式スパッタリング装置を挙げることができる。枚葉式スパッタリング装置及びインライン式スパッタリング装置のどちらで遮光膜2の成膜をする場合でも、本発明の欠陥分析方法によって、好適に欠陥の分析を行うことができる。
【0045】
また、遮光膜2は、単層であることに限られず、多層の遮光膜2であることができる。例えば、基板上にクロム及び窒素を含む薄膜を形成し、さらにその薄膜の上にクロム、酸素及び窒素を含む薄膜を形成することによって、二層からなる遮光膜2を形成することができる。また、遮光膜2は、表層部(上層部)に反射防止層を含むものであってもよい。その場合、反射防止層としては、例えばCrO,CrCO,CrNO,CrCON等の材質を好ましく挙げることができる。反射防止層を設けることによって、露光波長における反射率を例えば20%以下、好ましくは15%以下に抑えることが、フォトマスク使用時の定在波の影響を低減する上で望ましい。さらに、マスクブランクやフォトマスクの欠陥検査に用いる波長(例えば257nm、364nm、488nm等)に対する反射率を例えば30%以下とすることが、欠陥を高精度で検出する上で望ましい。特に、反射防止層として炭素を含む膜とすることにより、露光波長に対する反射率を低減させ、かつ、上記検査波長(特に257nm)に対する反射率が20%以下とすることができるので望ましい。具体的には、炭素の含有量は、5〜20原子%とすることが好ましい。炭素の含有量が5原子%未満の場合、反射率を低減させる効果が小さくなり、また、炭素の含有量が20原子%超の場合、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜2をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜の薄膜化することが困難となるので好ましくない。但し、反射防止層として炭素を含む場合には、ドライエッチング速度が低下する傾向にあるので、本発明の効果を最大限に発揮するために、遮光膜2全体に占める反射防止層の割合を0.45以下、さらに好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.20以下とすることが望ましい。なお、反射防止層は裏面(ガラス面)側にも設けてもよい。また、遮光膜2は、表層部の反射防止層と、それ以外の層との間で段階的、又は連続的に組成傾斜した組成傾斜膜としても良い。
【0046】
また、上記遮光膜2の上に、非クロム系反射防止膜を設けてもよい。このような反射防止膜としては、例えばSiO2,SiON,MSiO,MSiON(Mはモリブデン等の非クロム金属)等の材質が挙げられる。
【0047】
上述のようにして遮光膜2等の薄膜を形成する際に、異物がしばしば発生し、基板又は成長中の薄膜に付着する場合がある。本発明のマスクブランクの欠陥分析方法を用いるならば、薄膜成長中の異物の発生理由及び発生時期を特定することができる。
【0048】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、まず、上述のようにして薄膜、例えば遮光膜2の形成後、欠陥検査装置を用いて、薄膜上に存在する欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)を検出する。欠陥検査装置としては、薄膜上に存在する欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)の検出が可能な公知のものを用いることができる。欠陥検査装置としては、例えばレーザーテック社製M1350(レーザーテック社の商品名)を用いることができる。
【0049】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、次に、薄膜の表面に導電性膜の蒸着等をしないまま、欠陥検査装置によって欠陥が検出された座標を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察する。このSEM観察により、欠陥として検出された異物の形状及び寸法を測定することができる。また、異物の発生理由をより明確にするために、SEM観察の際に、SEMに付属するエネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて、異物を構成する元素を測定することが好ましい。
【0050】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、次に、スクラブ洗浄装置等によって、薄膜の表面をスクラブ洗浄することにより、SEMによって観察した異物を除去する。異物の除去の方法としては、例えば、スクラブ洗浄、超音波洗浄及び走査型プローブ顕微鏡のプローブにダイヤモンド針を装着して針を異物に当てて除去する方法等の方法を挙げることができる。異物の除去を確実かつ容易に行うために、異物の除去は、スクラブ洗浄により行うことが好ましい。スクラブ洗浄とは、スポンジブラシ等の摩擦材料を用いて薄膜表面の異物を機械的に除去する洗浄方法である。スクラブ洗浄装置としては、例えば、特許文献3に開示されているような洗浄装置を用いることができる。
【0051】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、次に、SEMによって異物を観察した座標を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)によって観察し、異物が除去された部分である凹部欠陥の深さを測定する。走査型プローブ顕微鏡は、公知のものを用いることができるが、特に原子間力顕微鏡(AFM)が望ましい。なお、欠陥検査装置により、薄膜上に存在する欠陥の座標は明らかになっているので、走査型プローブ顕微鏡による所定の異物の発見は容易である。
【0052】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法では、次に、前記異物の形状及び前記凹部の深さから、薄膜の成膜の際に異物が付着した時期を特定する。上述の走査型電子顕微鏡による観察によって測定した異物の形状及び寸法を得ることができる。また、エネルギー分散型X線分光法により異物の含有元素を特定することができる。さらに、走査型プローブ顕微鏡により、異物が存在していた部分である凹部の深さを得ることができる。以上得られた情報から、薄膜を成膜する際に異物が付着した時期を特定することができ、また、どのような理由で異物が発生したのかを推測することができる。この結果、マスクブランクの製造工程を改善することができるので、マスクブランクの製造の歩留まりを向上することができる。
【0053】
本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、例えば、以下のような遮光膜、光半透過膜及び吸収体膜等の薄膜を有するマスクブランクに好適に用いることができる。
(1)前記薄膜が遷移金属を含む材料からなる遮光膜であるバイナリマスクブランク
かかるバイナリマスクブランクは、透光性基板上に遮光膜を有する形態のものであり、この遮光膜は、クロム、タンタル、ルテニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ロジウム等の遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料からなる。例えば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したクロム化合物で構成した遮光膜が挙げられる。また、例えば、タンタルに、酸素、窒素、ホウ素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したタンタル化合物で構成した遮光膜が挙げられる。
かかるバイナリマスクブランクは、遮光膜を、遮光層と表面反射防止層の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層を加えた3層構造としたものなどがある。
また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0054】
(2)前記薄膜が、前記の遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる光半透過膜である位相シフトマスクブランク
かかる位相シフトマスクブランクとしては、透光性基板(ガラス基板)上に光半透過膜を有する形態のものであって、該光半透過膜をパターニングしてシフタ部を設けるタイプであるハーフトーン型位相シフトマスクが作製される。かかる位相シフトマスクにおいては、光半透過膜を透過した光に基づき転写領域に形成される光半透過膜パターンによる被転写基板のパターン不良を防止するために、透光性基板上に光半透過膜とその上の遮光膜(遮光帯)とを有する形態とするものが挙げられる。また、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクのほかに、透光性基板をエッチング等により掘り込んでシフタ部を設ける基板掘り込みタイプであるレベンソン型位相シフトマスク用やエンハンサー型位相シフトマスク用のマスクブランクが挙げられる。
【0055】
前記ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差(例えば180度)を有するものであり、この光半透過膜をパターニングした光半透過部と、光半透過膜が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0056】
この光半透過膜は、例えば遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイドを含む)の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
また、光半透過膜上に遮光膜を有する形態の場合、上記光半透過膜の材料が遷移金属及びケイ素を含むので、遮光膜の材料としては、光半透過膜に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物で構成することが好ましい。
【0057】
レベンソン型位相シフトマスクは、バイナリマスクブランクと同様の構成のマスクブランクから作製されるため、パターン形成用薄膜の構成については、バイナリマスクブランクの遮光膜と同様である。エンハンサー型位相シフトマスク用のマスクブランクの光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものではあるが、透過する露光光に生じさせる位相差が小さい膜(例えば、位相差が30度以下。好ましくは0度。)であり、この点が、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜とは異なる。この光半透過膜の材料は、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜と同様の元素を含むが、各元素の組成比や膜厚は、露光光に対して所定の透過率と所定の小さな位相差となるように調整される。
【0058】
(3)前記薄膜が、遷移金属、遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる遮光膜であるバイナリマスクブランク
この遮光膜は、遷移金属及びケイ素の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、遮光膜は、遷移金属と、酸素、窒素及び/又はホウ素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
特に、遮光膜をモリブデンシリサイドの化合物で形成する場合であって、遮光層(MoSi等)と表面反射防止層(MoSiON等)の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層(MoSiON等)を加えた3層構造がある。
また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0059】
また、レジスト膜の膜厚を薄膜化して微細パターンを形成するために、遮光膜上にエッチングマスク膜を有する構成としてもよい。このエッチングマスク膜は、遷移金属シリサイドを含む遮光膜のエッチングに対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。このとき、エッチングマスク膜に反射防止機能を持たせることにより、遮光膜上にエッチングマスク膜を残した状態で転写用マスクを作製してもよい。
【0060】
(4)前記薄膜が、1以上の半透過膜と遮光膜との積層構造である多階調マスクブランク
半透過膜の材料については、前記のハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜と同様の元素のほか、クロム、タンタル、チタン、アルミニウムなどの金属単体や合金あるいはそれらの化合物を含む材料も含まれる。各元素の組成比や膜厚は、露光光に対して所定の透過率となるように調整される。遮光膜の材料についても、前記のバイナリマスクブランクの遮光膜が適用可能であるが、半透過膜との積層構造で、所定の遮光性能(光学濃度)となるように、遮光膜材料の組成や膜厚は調整される。
【0061】
また、上記(1)〜(4)において、透光性基板と遮光膜との間、又は光半透過膜と遮光膜との間に、遮光膜や光半透過膜に対してエッチング耐性を有するエッチングストッパー膜を設けてもよい。エッチングストッパー膜は、エッチングストッパー膜をエッチングするときにエッチングマスク膜を同時に剥離することができる材料としてもよい。
【0062】
さらに、本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、以下のような反射型マスクブランクに好適に用いることができる。
【0063】
(5)高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層してなる多層反射膜上に吸収体膜を備える反射型マスクブランク
反射型マスクは、EUVリソグラフィに用いられるマスクである。反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成された構造を有する。露光装置(パターン転写装置)に搭載された反射型マスクに入射した光(EUV光)は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では多層反射膜により反射された光像が反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
【0064】
反射型マスクの場合、基板には露光光(EUV光)に対する高い透過率は求められず、合成石英ガラスよりも低い熱膨張係数(例えば、0±1.0×10−7/℃の範囲内、より好ましくは、0±0.3×10−7/℃の範囲内)が求められる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えばアモルファスガラスであれば、SiO2に例えば5〜10重量%程度の範囲でTiO2を添加したSiO2−TiO2系ガラス基板が好ましい。
【0065】
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成される。多層反射膜の例としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長により、材質を適宜選択することができる。
【0066】
吸収体膜は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、例えばタンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。
【0067】
Taを主成分とする材料としては、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、さらにOとNの少なくともいずれかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、TaとHfを含む材料、TaとHfとNを含む材料、TaとZrを含む材料、TaとZrとNを含む材料、等を用いることができる。TaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができるという効果が得られる。
【0068】
EUV反射型マスクブランクの場合、表面欠陥に対する非常に高いレベルの条件を満たす必要がある。本発明のマスクブランクの欠陥分析方法は、EUV反射型マスクブランクに用いる吸収体膜の成膜の歩留まり向上のために、特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
【0070】
合成石英ガラスからなる基板上に、枚葉式スパッタリング装置を用いて、ハーフトーン型位相シフト膜を形成した。具体的には、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=12at%:88at%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N2)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N2:He=8:72:100)で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、ケイ素及び窒素からなるMoSiN膜を69nmの膜厚で形成した。次いで、上記MoSiN膜が形成された基板に対して、アニール処理として加熱処理を施した。加熱処理後のMoSiN膜(ハーフトーン型位相シフト膜)は、ArFエキシマレーザー光に対する透過率が6.16%、位相差が184.4度であった。
【0071】
次に、基板のMoSiN膜上に、インライン式スパッタリング装置を用いて、遮光膜を形成した。インライン式スパッタリング装置には、横長のスパッタ室内に2つのクロムターゲットが配置されており、基板を2つのクロムターゲットの間を低速で移動させながら、組成傾斜した積層構造の遮光膜を膜厚48nmで形成した。最初のクロムターゲットでは、アルゴン(Ar)と窒素(N2)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N2:He=30:30:40)での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、CrN層を約28nmの膜厚で形成した。また、2つ目のクロムターゲットでは、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:NO:He=65:3:40)での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、CrON層を約20nmの膜厚で形成した。以上のようにして、合成石英ガラスからなる基板上に、膜厚69nmのMoSiN膜からなるハーフトーン位相シフト膜と、CrN層及びCrON層が明確な界面を持たずに組成傾斜した膜からなる膜厚48nmの遮光膜とが積層したマスクブランク(ハーフトーン型位相シフトマスクブランク)を50枚製造した。
【0072】
製造した50枚のマスクブランクの遮光膜に対し、欠陥検査装置(レーザーテック社製M1350、レーザーテック社の商品名)を用いて、遮光膜上の欠陥の有無の検出と、欠陥が存在する場合はその欠陥の座標(位置)及び種類(凸欠陥又は凹欠陥のいずれであるか)を記録した。
【0073】
次に、遮光膜に凸欠陥が検出されたマスクブランクに対し、遮光膜の表面に導電性膜の蒸着等をしないまま、欠陥検査装置によって凸欠陥が検出された座標を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、凸欠陥として検出された異物の形状及び寸法を測定した。また、SEMに付属するエネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて、異物を構成する元素を測定した。走査型電子顕微鏡は、日本電子社製 JWS−7855Sを用いた。
【0074】
続いて、SEM観察及びEDX分析によって、異物に起因する凸欠陥が存在することが確認されたマスクブランクに対して、イソプロピルアルコール液に浸漬させるIPA洗浄を行った。次に、スクラブ洗浄装置によって、遮光膜の表面をスクラブ洗浄し、SEMによって観察した異物を除去した。
【0075】
次に、SEMによって異物を観察した座標を、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察し、遮光膜の異物が除去された部分である凹部欠陥の深さ(表面を0nmとして、深さが深いほど、マイナスの値が大きくなるように示す。)を測定した。基板直上のCrN層の厚さは約28nmであり、CrN層の上のCrON層の厚さは20nmであることから、例えば、凹部欠陥の深さが20nm以上である場合には、異物がCrN層を成膜するプロセス中あるいは、CrN層を成膜する前の段階で付着したことを意味する。原子間力顕微鏡は、ビーコ・インスツルメンツ社製 D5000を用いた。
【0076】
SEM、EDX及びAFMによる測定結果を表2に示す。表1に示すように、本実施例では実験番号1〜9として示す9つの異物を測定した。
【0077】
【表1】
【0078】
また、図2及び図3に、実験番号4の異物のSEM観察画像を示す。図2は、傾斜角0度で観察したSEM観察画像、図3は、傾斜角50度で観察したSEM観察画像を示す。また、図4に、実験番号4の異物除去後の凹部のAFM観察画像を示す。図4の左図は通常のAFM観察画像であり、右図はその微分画像である。表2及び図2〜図4から、実験番号4の異物は、堆積したクロム膜が剥がれたものと推測できる。また、凹部欠陥の深さが−12.6nmであることから、実験番号4の異物は、CrON層の成膜中に付着したものと推測できる。
【0079】
また、図5及び図6に、実験番号5の異物のSEM観察画像を示す。図5は、傾斜角0度で観察したSEM観察画像、図6は、傾斜角50度で観察したSEM観察画像を示す。また、図7に、実験番号5の異物除去後の凹部のAFM観察画像を示す。図7の左図は通常のAFM観察画像であり、右図はその微分画像である。表2及び図5〜図7から、実験番号5の異物は、何らかの理由でグラファイトカーボンが形成されたものと推測できる。また、凹部欠陥の深さが−24.0nmであることから、実験番号5の異物は、CrN層の成膜中に付着したものと推測できる。
【0080】
また、図8及び図9に、実験番号6の異物のSEM観察画像を示す。図8は、傾斜角0度で観察したSEM観察画像、図9は、傾斜角50度で観察したSEM観察画像を示す。また、図10に、実験番号6の異物除去後の凹部のAFM観察画像を示す。図10の左図は通常のAFM観察画像であり、右図はその微分画像である。表2及び図8〜図10から、実験番号6の異物は、堆積したクロム膜が剥がれたものと推測できる。また、凹部欠陥の深さが−19.1nmであることから、実験番号6の異物は、厚さ20nmのCrON層の成膜開始直後に付着したものと推測できる。
【0081】
同様に、実験番号4〜6以外の異物についても、その形成理由及びどの時期に付着したのかを特定することができる。
【0082】
図11は、実験番号1〜9のAFM測定による異物の長さ及び深さを示す図である。図11から、異物の付着は、CrON層の成膜開始直後又は成膜初期段階に生じたことが明らかである。マスクブランクの欠陥分析方法によれば、上記の分析結果及びその結果を解析することによる推測等から、薄膜を成膜する工程における異物が付着した時期を特定することができ、どのような理由で異物が発生したのかを推測することができる。この結果、マスクブランクの製造工程を改善することができるので、マスクブランクの製造の歩留まりを向上することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 透光性基板
2 遮光膜
10 マスクブランク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法であって、
前記薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて前記異物の形状を観察する工程と、
前記異物を除去する工程と、
前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程と、
前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程と
を含むことを特徴とする、マスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項2】
前記異物を、前記薄膜の表面が露出した状態で、エネルギー分散型X線分光法を用いて検出し、前記異物の含有元素を特定する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項3】
前記薄膜が、スパッタリング法によって成膜されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項4】
前記検査が、前記薄膜表面に照射した検査光に対する反射光の光量差で前記異物に起因するものを含む欠陥の有無を検出する欠陥検査装置によって行われるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項5】
前記薄膜が、金属若しくは金属シリサイド、又はこれらの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物若しくは酸化窒化炭化物を含有する材料からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項6】
前記金属は、クロム、タンタル又はモリブデンであることを特徴とする、請求項5に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項1】
基板上に成膜された薄膜に対する検査によって異物の存在が確認されたマスクブランクの欠陥分析方法であって、
前記薄膜の表面が露出した状態で、走査型電子顕微鏡を用いて前記異物の形状を観察する工程と、
前記異物を除去する工程と、
前記異物を除去することによって前記薄膜の表面に形成された凹部の深さを、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する工程と、
前記異物の形状及び前記凹部の深さから、前記薄膜を成膜する工程における前記異物が付着した時期を特定する工程と
を含むことを特徴とする、マスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項2】
前記異物を、前記薄膜の表面が露出した状態で、エネルギー分散型X線分光法を用いて検出し、前記異物の含有元素を特定する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項3】
前記薄膜が、スパッタリング法によって成膜されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項4】
前記検査が、前記薄膜表面に照射した検査光に対する反射光の光量差で前記異物に起因するものを含む欠陥の有無を検出する欠陥検査装置によって行われるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項5】
前記薄膜が、金属若しくは金属シリサイド、又はこれらの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物若しくは酸化窒化炭化物を含有する材料からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【請求項6】
前記金属は、クロム、タンタル又はモリブデンであることを特徴とする、請求項5に記載のマスクブランクの欠陥分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−203074(P2012−203074A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65492(P2011−65492)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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