説明

マスク

【課題】ウイルスや細菌等を効率的に遮断できるとともに、捕集したウイルスや細菌等を不活性化・死滅し得るマスクを提供すること。
【解決手段】鼻口を覆う被覆体と、この被覆体に配設された装着用部材とを有し、前記被覆体が、無機多孔質物質を含み、平均繊維径1〜100μmのマイクロファイバー不織布または織布層と、この不織布または織布層に積層された、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノファイバー不織布層と、を備えるマスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバー不織布を含むマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
風邪・感冒その他の疾患の原因となる細菌、ウイルス、真菌や、気管炎・喘息・アレルギー性疾患等の原因となる花粉、ハウスダスト、粉塵、排気ガス中の浮遊粒子状物質(SPM:Suspended Particulate Matter)などの空気中に浮遊する微小な有害物の吸入を防ぐためのマスクや、血液、吐瀉物などの含まれる各種の細菌、ウイルス、真菌などに接触することによる感染を防ぐための防護服などが、日常生活や医療現場などの様々な場所で使用されている。
これらマスクや防護服の構成素材として、不織布が用いられることも多い。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2005−124777号公報)には、複数の不織布の積層体からなり、表層の不織布が所定目付けのポリオレフィンまたはポリエステル不織布であり、かつ、その表面に二酸化チタンアパタイト光触媒を添着させた感染予防マスクが開示されている。
特許文献2(特開2005−7072号公報)には、外側から、目の粗い不織布、目の細かい不織布、化繊布、および綿布が積層されてなる多層式マスクが開示されている。
特許文献3(実登第3068551号公報)には、メルトブロー法による超極細繊維のポリプロピレン樹脂製不織布による中間不織布層と、この表裏面に配置されたスパンボンド法による連続長繊維のポリプロピレン樹脂製不織布による外面補強不織布層とを一体化した3層構造の生地素材からなる感染防止衣が開示されている。
さらに、特許文献4(特開2003−166155号公報)には、ポリエステル系繊維等の合成繊維からなり、所定量の防カビ剤が付着した不織布が開示されており、この不織布が衛生材料をはじめとした様々な用途に適していることが開示されている。
【0004】
上記特許文献1のマスクは、良好な捕集能および光触媒能を有しているものの、ウイルスや粉塵等の捕集能を高めるべく4層以上の不織布が積層されているため、通気性が悪く、長時間使用時に蒸れ易いという問題がある。また、光エネルギーが不十分な場合、光触媒による殺菌効果が十分に発揮されずにウイルスが人体に侵入する可能性がある。
上記特許文献2のマスクは、目の細かい不織布や、帯電させた化繊布を積層することにより、ウイルスの捕集効率を高めてはいるものの、ウイルスを強固に吸着して不活性化することができないため、ウイルスがマスクを通過する可能性がある。
上記特許文献3の感染防止衣では、細菌やウイルス等の侵入を効率的に防ぐべくポリプロピレン不織布層を厚くしているため通気性が悪く蒸れ易いうえに、この場合もウイルス等を吸着し、不活性化させることはできない。
また、特許文献4の不織布を、マスクや感染防止衣に適用した場合でも、ウイルス等の捕集・吸着能は不十分であるため、ウイルスが通過する可能性は残り、またウイルス捕集能を高めるために不織布層を厚くすると、蒸れ等により着用感が低下するという問題が生じる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−124777号公報
【特許文献2】特開2005−7072号公報
【特許文献3】実登第3068551号公報
【特許文献4】特開2003−166155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ウイルスや細菌等を効率的に遮断できるとともに、捕集したウイルスや細菌等を不活性化・死滅し得るマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層と、ナノファイバー不織布層とを積層してなる生地が、細菌やウイルス等の吸着・捕集能に優れるとともに、吸着した細菌やウイルス等を効率的に死滅または不活性化でき、かつ、大気圧下で水蒸気は通過させるが、液体を透過させないため、マスク用の生地として好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 鼻口を覆う被覆体と、この被覆体に配設された装着用部材とを有し、前記被覆体が、無機多孔質物質を含み、平均繊維径1〜100μmのマイクロファイバー不織布または織布層と、この不織布または織布層に積層された、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノファイバー不織布層と、を備えることを特徴とするマスク、
2. 前記ナノファイバー不織布が、ポリ乳酸および/またはポリアミドからなるナノファイバーを含む1のマスク、
3. 前記ナノファイバー不織布が、厚み1μm以上である1または2のマスク、
4. 前記ナノファイバー不織布の最小細孔径が0.1μm以下、最大細孔径が0.1μm超1μm以下である1〜3のいずれかのマスク、
5. 前記無機多孔質物質が、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、活性炭、珪藻土、シリカゲルおよび粘土鉱物類から選ばれる1種または2種以上である1〜4のいずれかのマスク、
6. 前記無機多孔質物質が、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金から選ばれる1種または2種以上の金属を担持する1〜5のいずれかのマスク、
7. 前記無機多孔質物質が、銅、銀および亜鉛から選ばれる1種または2種以上の金属を担持するゼオライトである6のマスク、
8. 前記不織布または織布層上に、静電紡糸法により直接ナノファイバー不織布層が形成されてなる1〜7のいずれかのマスク、
9. 前記ナノファイバー不織布が鼻口側に配置され、前記マイクロファイバー不織布または織布が鼻口側とは反対側に配置された1〜8のいずれかのマスク、
10. 前記被覆体が、前記ナノファイバー不織布層と、その一方の側に積層された前記マイクロファイバー不織布または織布層と、その他方の側に積層された無機多孔質物質を含まないマイクロファイバー不織布または織布層と、の3層を備える1〜8のいずれかのマスク、
11. 前記被覆体が、前記ナノファイバー不織布層と、その両側に積層された前記マイクロファイバー不織布または織布層と、の3層を備える1〜8のいずれかのマスク、
12. 前記被覆体が、マイクロファイバー不織布または織布層と、これに積層された前記ナノファイバー不織布層とからなる積層体の一対を備える1〜8のいずれかのマスク、
13. 前記ナノファイバー不織布層同士が内側になるように積層された12のマスク
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスクを構成する被覆体は、無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層と、ナノファイバー不織布層とを備えているから、マイクロファイバー不織布または織布層で、空気中の細菌、ウイルス、真菌等を吸着し、これらを死滅・不活性化させる効果と、ナノファイバー不織布層で、空気中からこれらウイルス等を捕集・除去する効果とを併せ持つ。
また、ナノファイバー不織布層は撥水性が高く、大気圧下において、空気や水蒸気は通過させる一方、有機溶剤、消毒用アルコール液、血液、体液等の液体は浸透させないという効果を有する。
したがって、本発明のマスクは、粉塵、ハウスダスト、SPMや花粉等の微小な有害粒子を除去し得るだけでなく、空気中に浮遊するウイルス等や、血液、吐瀉物等に含まれる各種の細菌、ウイルス、真菌などに起因する各種の感染症への罹患を防止できる。
さらに、不織布を複数積層した従来のマスクに比べ、薄いナノファイバー不織布層を採用することで軽量化でき、しかも通気性が良好になるため、長時間作業しても蒸れが少なく、装着感が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るマスクは、鼻口を覆う被覆体と、この被覆体に配設された装着用部材とを有し、被覆体が、無機多孔質物質を含み、平均繊維径1〜100μmのマイクロファイバー不織布または織布層と、この不織布または織布層に積層された、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノファイバー不織布層と、を備えるものである。
【0011】
本発明において、マイクロファイバー不織布または織布としては、平均繊維径1〜100μm、好ましくは、1〜60μmの繊維からなるものであれば、特に限定はなく、天然繊維、合繊繊維、これらの混合繊維からなる任意の不織布または織布を用いることができる。
天然繊維としては、綿,麻等の植物繊維、毛,絹等の動物繊維のいずれでもよいが、綿が好適である。
合成繊維としては、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアクリロニトリル系、ポリウレタン系繊維等が挙げられるが、ポリオレフィン系、ポリエステル系繊維が好適である。中でも、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0012】
織布および不織布は、上記の平均繊維径を有する繊維から構成されていれば、その形態は任意であり、織布としては、縦糸と緯糸とを従来公知の手法で織った各種織布を、不織布としては、スパンボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法、メルトブロー法などの従来公知の手法で得られた各種不織布を、本発明に利用できる。
【0013】
上記マイクロファイバー不織布または織布の厚みは特に限定されるものではないが、0.01〜5mm程度、特に、0.01〜3mm程度とすることが好適である。
また、マイクロファイバー不織布または織布の目付も特に限定されるものではないが、2〜100g/mm2程度、特に、10〜70g/mm2程度とすることが好適である。
【0014】
無機多孔質物質としては、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、活性炭、珪藻土、シリカゲル、粘土鉱物類、多孔質泥、セピオライト、アロフェン、イモゴライト、活性白土、パーライト、多孔質ガラス、アルミナ多孔体等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性、安全性、安定性という点から、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、活性炭、珪藻土、シリカゲル、粘土鉱物類が好ましく、最も用途が広いという点からゼオライトが好適である。
マイクロファイバー不織布または織布中に含まれる無機多孔質物質の含有量は特に限定はなく、例えば、0.1〜60質量%程度とすることができる。
【0015】
また、無機多孔質物質には、金属が担持されていてもよい。
金属としては、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金が挙げられ、これらは1種単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、マイクロファイバー不織布または織布における抗菌・抗ウイルス性を向上させるという点から、銅、銀、亜鉛が好ましく、銅、銀がより好ましい。銅、銀を担持した無機多孔質物質を用いることで、インフルエンザウイルスを死滅させる効果、および硫化水素やアンモニアを吸着・分解する防臭効果を高めることができる。
特に、本発明のマスクを構成するマイクロファイバー不織布または織布としては、銅ゼオライト、銀ゼオライト、亜鉛ゼオライトを担持した不織布が好適である。
【0016】
無機多孔質物質に金属を担持させる方法としては、例えば、使用する金属塩の水溶液を調製し、これに無機多孔質物質を浸漬させる方法、使用する金属を含有するエマルジョン溶液を調製し、無機多孔質物質をコーティングする方法などを用いることができる。特に、無機多孔質物質全体に無駄なく金属を担持できることから、浸漬法が好適である。
浸漬法に用いる金属塩水溶液中の金属濃度に特に制限はないが、好ましくは、1.0〜100mmol/Lである。
【0017】
無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布を製造する手法としては、(1)樹脂溶液あるいは樹脂エマルジョンに無機多孔質物質粒子を分散させてなる液状組成物を、マイクロファイバー不織布または織布に付着または含浸させ、これを乾燥し、マイクロファイバー不織布または織布を構成する繊維の表面に無機多孔質物質粒子を結着させる方法、(2)無機多孔質物質の原料溶液を、マイクロファイバー不織布または織布に含浸させた後、マイクロファイバー不織布または織布を構成する繊維の表面および内部で無機多孔質物質粒子を析出させる方法が挙げられる。
また、金属を担持した無機多孔質物質をマイクロファイバー不織布または織布に含有させる場合は、結着させる無機多孔質物質として、金属を担持した無機多孔質物質を用いる、無機多孔質物質粒子を析出させる際に金属を担持させる、あるいは繊維の表面・内部に結着・析出した無機多孔質物質粒子に金属を担持させればよい。
【0018】
本発明のマスクにおいて、ナノファイバー不織布を構成する樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、でんぷん、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。中でも、ポリアミドや、生分解性に優れるポリ乳酸が好ましく、ポリ乳酸のみ、ポリアミドのみ、およびポリ乳酸とポリアミドのみの組み合わせをナノファイバー不織布用樹脂として用いることが好適である。
【0019】
ポリ乳酸としては、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸等のオキシ酸の重合体、またはこれらの共重合体等のポリラクチド類が挙げられ、具体的にはポリ乳酸、ポリ(α−リンゴ酸)、ポリグリコール酸、グリコール酸−乳酸共重合体などが挙げられる。特に、ポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルが好適である。
ポリアミドとしては、アミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸とを重合または重縮合して得られるものが挙げられ、具体的には、6ナイロン、4.6ナイロン、6.6ナイロン、6.10ナイロン、6.12ナイロン、11.6ナイロン、11ナイロン、12ナイロンが挙げられる。
【0020】
本発明において、ナノファイバー不織布を構成する繊維の平均繊維径は、1nm以上1000nm未満であり、好ましくは10〜800nm、より好ましくは50〜700nmである。平均繊維径が1000nm以上であると、汚染源(細菌、ウイルス、真菌、粉塵など)の捕集能が低下する虞がある。
また、ナノファイバー不織布の厚みは、1μm以上が好ましい。厚みが1μm未満であると、ハンドリング性および加工性が低下する場合がある。また厚すぎてもナノファイバー不織布を用いる軽量化や、蒸れ防止などの効果が損なわれることから、その上限は200μm程度、特に150μm程度とすることが好適である。好ましくは、10〜100μmである。
【0021】
さらに、上記ナノファイバー不織布は、最小細孔径が0.1μm以下、最大細孔径が0.1μm超1μm以下であることが好ましい。最大細孔径が1μmを超えたり、最小細孔径が0.1μmを超えたりする場合、汚染源の捕集効率が低下する虞がある。
汚染源の捕集効率をより高めるためには、最大細孔径が0.1μ超0.9μm以下、特に0.3〜0.8μmが好ましい。また、マスクとして十分な通気性を確保することを考慮すると、最小細孔径は0.03〜0.1μm、特に0.03〜0.08μmが好ましい。
このようなマイクロファイバー不織布または織布と、ナノファイバー不織布とを含む被覆体を有する本発明のマスクは、0.06μmの塩化ナトリウム粒子を90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上捕集する性能を有する。
【0022】
本発明のマスクを構成するナノファイバー不織布は、微細な凹凸を有しているため撥水性が高い。このため、本発明のマスクにおいて、ナノファイバー不織布層は、汚染物質(有機溶剤、消毒用アルコール液、血液、体液、病原菌、雑菌)を浸透させない効果を有する。
【0023】
ナノファイバー不織布は、静電紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等により製造することができる。中でも、ナノファイバー層を直接マイクロファイバー不織布または織布層に積層させる場合、熱の影響が少ない静電紡糸法が好ましい。
静電紡糸法は、電界中で、帯電した樹脂溶液を曳糸しつつ、その電荷の反発力により樹脂溶液を破裂させ、樹脂からなる極微細な繊維状物を形成する方法である。
静電紡糸を行う装置の基本的な構成は、樹脂溶液を排出するノズルを兼用し、樹脂溶液に数千から数万ボルトの高電圧で印加する一方の電極と、その電極に対向する他方の電極とからなる。一方の電極から吐出あるいは振出された樹脂溶液は、2つの対向する電極間の電界中で高速ジェットおよびそれに引き続くジェットの折れ曲がりや膨張によってナノファイバーになり、他方の電極表面上に堆積し、ナノファイバー不織布が得られる。
【0024】
この場合、樹脂溶液に使用される溶媒は、使用する樹脂によって異なるため一概に規定することはできないが、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、蟻酸、乳酸、酢酸等が挙げられる。
【0025】
ナノファイバー不織布を構成する繊維は、単独樹脂からなる繊維でも2種類以上の樹脂からなる複合繊維でもよい。複合繊維の形状は、サイドバイサイド型複合繊維、芯鞘繊維、複合中空繊維などが挙げられる。
また、繊維の単糸断面形状は、円形、三角形、扁平、多葉、多孔などの適宜な形状とすることができる。
【0026】
無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層と、ナノファイバー不織布層とを積層する方法としては、(1)無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層とナノファイバー不織布層とをそれぞれ作製して積層する方法、(2)無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層に、電解紡糸法などにより、直接ナノファイバー層を積層させる方法が挙げられ、本発明ではいずれの方法を用いても構わない。
ナノファイバー不織布層の厚みが40μm以下である場合、薄さのため取扱にくくなることから、無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層に直接ナノファイバー層を積層させる方法が好ましい。また、静電紡糸法で、マイクロファイバー不織布上に直接ナノファイバー不織布を形成することで、ナノファイバーとマイクロファイバーとの接触部分が増加して、汚染源の捕集およびその死滅・不活性化の効率が高まる場合がある。
マイクロファイバー不織布または織布層とナノファイバー不織布層とを積層する場合、これらを単に重ね合わせるだけでもよいが、これらをニードリングして絡合一体化してもよいし、熱処理して融着一体化してもよい。
【0027】
また、本発明のマスクの被覆体は、無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層とナノファイバー不織布層とを、それぞれ1層以上有していればよく、マイクロファイバー不織布または織布層およびナノファイバー不織布層の双方またはどちらか一方を複数層有していてもよい。この場合、積層する順序は任意であるが、3層構造とする場合、マイクロファイバー不織布または織布層/ナノファイバー不織布層/マイクロファイバー不織布または織布層の構成とすることが好ましい。
4層構造とする場合、マイクロファイバー不織布または織布層を2層/ナノファイバー不織布層/マイクロファイバー不織布または織布層の構成とすることが好ましい。さらに、マイクロファイバー不織布または織布とナノファイバー不織布との積層体を1単位としてこれを2枚積層してもよく、この場合、ナノファイバー不織布同士を内側にして積層し、マイクロファイバー不織布または織布層/ナノファイバー不織布層/ナノファイバー不織布層/マイクロファイバー不織布または織布層の4層構造とすることが好ましい。
【0028】
なお、上記マイクロファイバー不織布または織布層およびナノファイバー不織布層は、無機多孔質物質を含むマイクロファイバーと、ナノファイバーとの混紡不織布で構成されていてもよい。ただし、この場合、マイクロファイバー不織布または織布層では、平均繊維径1〜100μmとなるように、ナノファイバー不織布層では、平均繊維径1nm以上1000nm未満となるように各層を構成する。
また、本発明のマスクにおいては、マイクロファイバー不織布または織布層だけでなく、ナノファイバー不織布層に無機多孔質物質を担持させることもできる。
【0029】
上述した無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層とナノファイバー不織布層とを含む被覆体をマスクに適用するにあたっては、細菌、ウイルス、真菌、粉塵ハウスダスト、SPMや花粉などの汚染源側に無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層が位置する態様とすることが好ましい。このような態様で使用すると、汚染源を含む外気や呼気などが、まず無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層と接触し、これを通過する際に汚染源が無機多孔質物質で強固に吸着・捕集され、さらに続いてナノファイバー不織布で残った汚染源が捕集され、汚染源の飛散を効率的に防止することができる。特に、細菌、ウイルス等は、マイクロファイバー不織布または織布層に吸着・捕集されたものが死滅・不活性化されるだけでなく、ナノファイバー不織布とマイクロファイバー不織布または織布層とが接する部分において捕集されたものも死滅・不活性化される。
【0030】
例えば、細菌やウイルス感染症などに罹患した患者用のマスクとしては、鼻口側に無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層を配置するような構成とする。このようにすることで、患者の呼吸器や口内から飛沫する分泌物中に含まれる菌やウイルスを、マスクの内側で死滅させて周囲への飛散を防ぎ、感染症の拡大を防止できる。
反対に、感染予防用のマスクとしては、鼻口側にナノファイバー不織布層を配置し、その外側に無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層を配置するような構成とする。このようにすることで、菌やウイルスを含む外気が、まず無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層を通過し、ここで大部分の菌やウイルスが無機多孔質物質に吸着保持され、次いで捕集しきれなかった菌やウイルスがナノファイバー不織布層で捕集され、細菌やウイルスへの感染を防ぐことができる。
なお、上述の3層構造や4層構造の態様にすれば、汚染源の捕集・除去と、汚染源の飛散防止との双方に対応することができるため、万一、当初汚染源が存在しなかった側に汚染源が発生したり、本発明の生地を通らない別のルートから汚染源が侵入したりした場合でも、感染症の拡大防止効果や予防効果が良好に発揮される。
【0031】
本発明のマスクでは、無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層とナノファイバー不織布層との積層体のみを含む被覆体を用いても、この積層体と、その他の繊維不織布、織物、編物などとを含む被覆体を用いてもよい。例えば、ナノファイバー不織布層の一方の側に無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層を積層し、ナノファイバー不織布層の他方の側に無機多孔質物質を含まないマイクロファイバー不織布または織布層を積層した3層を少なくとも備える被覆体をマスクに用いてもよい。
さらに、マスクは直接肌に接する製品であるため、内層(鼻口側)に毛羽の発生しにくい天然繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維またはポリエチレン・ポリプロピレン芯鞘繊維を素材する繊維などからなる織布または不織布層などを用いることが好ましい。特に、天然系素材であるレーヨン繊維、セルロース繊維などからなる織布または不織布層を用いると廃棄の際の環境配慮ができ好ましい。
【0032】
本発明のマスクでは、無機多孔質物質を含むマイクロファイバー不織布または織布層とナノファイバー不織布層とを有する被覆体を採用することが特徴であるため、被覆体の形状や、装着用部材の素材や形状などは任意であり、従来公知の各種形状および素材を採用することができる。例えば、マスクの形状は、折り畳み型、カップ型、フラット型などを採用でき、装着用部材は、被覆体の両側に設けられた、一対の耳掛け部材や、バンド部材などを採用できる。
好ましくは、少なくとも装着者の鼻口を覆うハーフマスクで、その有効面積は約100〜300cm2である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の各実施例、比較例における評価項目は下記手法にて実施した。また、以下において、「部」は「質量部」を意味する。
【0034】
[1]平均繊維径
試料表面を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製「S−4800I」)により撮影倍率5000倍で撮影して得た写真から、無作為に20箇所を選んで繊維径を測定した。全ての繊維径の平均値(n=20)を求めて平均繊維径とした。
[2]不織布の厚み
デジタルシックネスゲージ((株)テクロック製「SMD−565」)を用いて、測定力1.5Nにより無作為に5箇所を選んで厚みを測定した。全ての厚みの平均値(n=5)を求めて、不織布の厚みとした。
[3]不織布の目付
試料の質量を測定し、平方メートル当たりに換算した。
【0035】
[4]捕集試験
NaCl粒子の捕集効率試験方法(防じんマスクの規格第6条)に準じ、以下の条件でウイルスを模したNaCl粒子を、生地の特定側から累積試験粒子量が100mgに達するまで通気させ、初期吸気抵抗を求めた。また光散乱式粉じん計により連続的に捕集効率を測定し、その間の1分毎の平均捕集効率を測定した。
試験サンプル:130φ(有効面積100cm2)の大きさ
測定装置:柴田科学製AP-9000(光散乱方式AP−632F)
試験粒子:NaCl粒子(柴田科学製AP−9000Gにより発生)
試験粒子平均粒子径:60nm〜100nm
試験濃度:約28mg/m3
試験流量率:85L/min
粒子供給量:試料に供給したNaCl粒子の累積量が100mgに達した時点で終了
【0036】
[5]抗菌性能測定試験(菌数測定法)
繊維製品衛生加工協議会が策定した抗菌防臭加工製品の加工効果評価試験マニュアルに記載された以下の菌数測定法を採用した。
黄色ぶどう球菌を試験菌体とし、これを予め普通ブイヨン培地で106〜107個/mlになるように培養調整し、試験菌懸濁液とした。この懸濁液0.2mlを減菌処理したネジ付きバイアル瓶中の試料0.4gに均一に接種し、36〜38℃で18時間静置培養後、容器内に減菌緩衝生理食塩液を20ml加え、振幅30cmで手により25〜30回強く振とうして試験中の生菌を液中に分散させた後、減菌緩衝生理食塩液で適当な希釈系列を作り、各段階の希釈液1mlをシャーレ2枚に入れ、さらに標準寒天培地約15ml入れた。これを36〜38℃で24〜48時間培養した後、生育コロニー数を計測し、その希釈倍率に応じて試料中の生菌数を算出した。そしてその効果の判定は、増殖値が1.5を超える場合、試験成立を判定した。また、下記式により静菌活性値Sおよび殺菌活性値Lを求めた。静菌活性値が2.2以上の場合を「○」、静菌活性値が2.2未満の場合を「×」とした。
静菌活性値S=B−C
殺菌活性値L=A−C
A:標準布の試験菌接触直後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
B:標準布の18時間培養後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
C:抗菌加工試料の18時間培養後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
【0037】
[6]透水性試験
直径3.0cmのステンレス製透水セル下部に、直径2.2cmの試料を載置し、圧力0MPaで、純水20mlをステンレス製透水セルに入れた。1分経過した後に透水した水量(mg)を求め、単位時間、単位面積当たりの透水量(L/m2・min)に換算した。測定は、室温23℃の室内で行った
[7]最小細孔径、最大細孔径測定試験
バブルポイント法(ASTM F316、JISK3832)に基づき、以下の手法により細孔径を測定・評価した。
PMI社製パームポロメーター(型式CFP−1200A)を用い、サンプル試料の測定径φ25mmで乾燥空気をサンプル試料に通し、段階的に気体圧力を増加させてその時の気体流量を観測した。(Dry流量曲線)
次に、サンプル試料を表面張力16dynes/cmのPMI社製Galwickに浸液し、浸液したサンプル試料を真空乾燥機にて脱気してサンプル試料内に泡が残らないように前処理した。前処理したサンプル試料に乾燥空気を通じ、段階的に気体圧力を増加させてその時の気体流量を観測した。(Wet流量曲線)
この2つのDry、Wet流量曲線から最大細孔径、最大細孔径を求めた。
【0038】
[製造例1]
綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を、アルミ、ケイ素、ナトリウムを含む水溶液に浸漬し、ゼオライト結晶を析出させて繊維内部にゼオライトが担持された綿不織布を得た。このゼオライトが担持された綿不織布を0.1モル%の硫酸銅水溶液中に室温で24時間浸漬した後、取り出して純水でよく洗浄し、真空中、80℃で乾燥し、10質量%の銅ゼオライトが担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)を得た。
一方、ポリ乳酸樹脂(LACEA H280、三井化学社製)100部とジメチルホルムアミド570部とを60℃で混合し、ジメチルホルムアミド中にポリ乳酸樹脂を溶解させて紡糸溶液を作成した。この紡糸溶液を内口径0.4mmの吐出口を有するシリンジに入れ、印加電圧30KV、室温、大気圧下、吐出口に対向して配置されたアルミニウム製の繊維状物質捕集電極までの距離15cmの条件で静電紡糸を行い、厚み0.02mmのナノファイバー不織布を得た。得られたナノファイバー不織布の平均繊維径は500nmであり、繊維径2μm以上の繊維は観察されなかった。
以上のようにして作製した銅ゼオライト担持マイクロファイバー綿不織布とポリ乳酸ナノファイバー不織布とを積層し、マスク素材を得た。
【0039】
[製造例2]
6.6ナイロン(マラニール A125、ユニチカ社製)100部と蟻酸570部とを室温で混合し、蟻酸中に6.6ナイロンを溶解させて調製した紡糸溶液を、内口径0.4mmの吐出口を有するシリンジに入れ、印加電圧30KV、室温下大気圧、吐出口に対向させて配置した繊維状物質捕集電極までの距離15cmの条件で静電紡糸を行い、厚み0.02mmのナイロンナノファイバー不織布を得た。なお、ナノファイバー不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1μm以上の繊維は観察されなかった。
製造例1で得られた銅ゼオライト担持マイクロファイバー綿不織布と、上記で得られたナイロンナノファイバー不織布とを積層し、マスク素材を得た。
【0040】
[製造例3]
0.1モル%の硫酸銅水溶液を0.1モル%の硝酸銀水溶液に換えた以外は、製造例1と同様にして、10質量%の銀ゼオライトが担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)を得た。この銀ゼオライトが担持されたマイクロファイバー綿不織布と製造例1のポリ乳酸樹脂のナノファイバー不織布とを積層し、マスク素材を得た。
【0041】
[実施例1]
製造例1で得られたマスク素材のポリ乳酸ナノファイバー不織布側にメルトブロー不織布(材質ポリプロピレン、平均繊維径10μm、厚み0.13mm、目付20g/m2)を積層し、大きさ15cm×10cmの3層構造の被覆体を作製した。この被覆体の短縁側に一対のゴム製耳掛け部材を取り付けてマスクを得た。
【0042】
[実施例2]
製造例1で得られたマスク素材のポリ乳酸ナノファイバー不織布側に湿式不織布(材質綿、平均繊維径15μm、厚み0.25mm、目付45g/m2)を積層し、大きさ15cm×10cmの3層構造の被覆体を作製した。この被覆体の短縁側に一対のゴム製耳掛け部材を取り付けてマスクを得た。
【0043】
[実施例3]
製造例1で得られたマスク素材の両面にメルトブロー不織布(材質ポリプロピレン、平均繊維径10μm、厚み0.13mm、目付20g/m2)をそれぞれ積層し、大きさ15cm×10cmの4層構造の被覆体を作製した。この被覆体の短縁側に一対のゴム製耳掛け部材を取り付けてマスクを得た。
【0044】
[実施例4]
製造例1で得られたマスク素材の銅ゼオライト担持マイクロファイバー綿不織布側にメルトブロー不織布(材質ポリプロピレン、平均繊維径10μm、厚み0.13mm、目付20g/m2)を、ポリ乳酸ナノファイバー不織布側に湿式不織布(材質綿、平均繊維径15μm、厚み0.25mm、目付45g/m2)を、それぞれ積層し、大きさ15cm×10cmの4層構造の被覆体を作製した。この被覆体の短縁側に一対のゴム製耳掛け部材を取り付けてマスクを得た。
【0045】
[実施例5]
製造例2で得られたマスク素材を用いた以外は、実施例3と同様にし、大きさ15cm×10cmの4層構造の被覆体を作製した。この被覆体の両短縁側に一対のゴム製耳掛け部材を取り付けてマスクを得た。
【0046】
[実施例6]
製造例2で得られたマスク素材を用いた以外は、実施例4と同様にし、大きさ15cm×10cmの4層構造の被覆体を作製した。この被覆体の両短縁側に一対のゴム製耳掛け部材を取り付けてマスクを得た。
【0047】
[実施例7]
製造例3で得られたマスク素材を用いた以外は、実施例2と同様にし、大きさ15cm×10cmの3層構造の被覆体を作製した。この被覆体の短縁側に一対のゴム製耳掛け部材を取り付けてマスクを得た。
【0048】
[比較例1]
綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)をそのまま被覆体とした以外は、実施例1と同様にしてマスクを得た。
【0049】
[比較例2]
綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)に、尿素と85%のリン酸のDMF溶液中で150℃でリン酸基を導入した後、得られた綿不織布を、飽和水酸化カルシウム水溶液中に浸漬した。この不織布を、さらにナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩素、炭酸、リン酸、硫酸イオンを含む水溶液に浸漬し、綿不織布の表面に水酸化アパタイトを析出させ、厚さ約25μmの水酸化アパタイト被膜が形成された綿不織布を得た。次いで水酸アパタイト皮膜を形成した綿不織布を、0.05モル%の硝酸銀水溶液中、室温で24時間浸漬した後、取り出して純水でよく洗浄し、真空中、80℃で乾燥し、10質量%の銀アパタイトが担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)を得た。
この銀担持アパタイトマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)のみを被覆体とした以外は、実施例1と同様にしてマスクを得た。
【0050】
[比較例3]
綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を3枚重ねて被覆体とした以外は、実施例1と同様にしてマスクを得た。
【0051】
[比較例4]
製造例1で得られたマスク素材に換えて、綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を用いた以外は、実施例3と同様にして被覆体を製造し、マスクを得た。
【0052】
[比較例5]
製造例1で得られたマスク素材に換えて、綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を用いた以外は、実施例4と同様にして被覆体を製造し、マスクを得た。
【0053】
[比較例6]
平均粒径20μmの活性炭微粒子(白鷺、日本エンバイロケミカルズ株式会社製)10部を60%アクリル系樹脂水溶液(ファイレックスRC−104、明成化学株式会社製)に分散した分散液に、綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を浸漬した後、真空中、60℃で乾燥して、活性炭微粒子を含有した綿不織布を得た。この活性炭微粒子を含有した綿不織布を、0.1モル%の硫酸銅水溶液中に室温で24時間浸漬した後、1時間自然乾燥し、10質量%の銅活性炭が担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60/m2)を得た。
製造例1で得られたマスク素材に換えて、上記で調製した銅担持活性炭マイクロファイバー綿不織布を用いた以外は、実施例3と同様にして被覆体を製造し、マスクを得た。
【0054】
[比較例7]
比較例4の銅担持活性炭マイクロファイバー綿不織布を用いた以外は、実施例4と同様にして被覆体を製造し、マスクを得た。
【0055】
上記実施例1〜7および比較例1〜7で得られたマスクについて、捕集試験、抗菌性能測定試験、および透水性試験を行った。捕集試験および抗菌性能試験の結果を表1に、透水性試験の結果を表2に示す。
なお、実施例1〜7における捕集試験は、無機多孔質物質含有マイクロファイバー不織布側から試験粒子含有空気を通して行った。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
表1,2に示されるように、実施例1〜7で得られたマスクは、試験粒子の捕集効率および抗菌性に優れているとともに、透水性が低く耐水性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻口を覆う被覆体と、この被覆体に配設された装着用部材とを有し、
前記被覆体が、無機多孔質物質を含み、平均繊維径1〜100μmのマイクロファイバー不織布または織布層と、この不織布または織布層に積層された、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノファイバー不織布層と、を備えることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記ナノファイバー不織布が、ポリ乳酸および/またはポリアミドからなるナノファイバーを含む請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記ナノファイバー不織布が、厚み1μm以上である請求項1または2記載のマスク。
【請求項4】
前記ナノファイバー不織布の最小細孔径が0.1μm以下、最大細孔径が0.1μm超1μm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載のマスク。
【請求項5】
前記無機多孔質物質が、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、活性炭、珪藻土、シリカゲルおよび粘土鉱物類から選ばれる1種または2種以上である請求項1〜4のいずれか1項記載のマスク。
【請求項6】
前記無機多孔質物質が、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金から選ばれる1種または2種以上の金属を担持する請求項1〜5のいずれか1項記載のマスク。
【請求項7】
前記無機多孔質物質が、銅、銀および亜鉛から選ばれる1種または2種以上の金属を担持するゼオライトである請求項6記載のマスク。
【請求項8】
前記不織布または織布層上に、静電紡糸法により直接ナノファイバー不織布層が形成されてなる請求項1〜7のいずれか1項記載のマスク。
【請求項9】
前記ナノファイバー不織布が鼻口側に配置され、前記マイクロファイバー不織布または織布が鼻口側とは反対側に配置された請求項1〜8のいずれか1項記載のマスク。
【請求項10】
前記被覆体が、前記ナノファイバー不織布層と、その一方の側に積層された前記マイクロファイバー不織布または織布層と、その他方の側に積層された無機多孔質物質を含まないマイクロファイバー不織布または織布層と、の3層を備える請求項1〜8のいずれか1項記載のマスク。
【請求項11】
前記被覆体が、前記ナノファイバー不織布層と、その両側に積層された前記マイクロファイバー不織布または織布層と、の3層を備える請求項1〜8のいずれか1項記載のマスク。
【請求項12】
前記被覆体が、マイクロファイバー不織布または織布層と、これに積層された前記ナノファイバー不織布層とからなる積層体の一対を備える請求項1〜8のいずれか1項記載のマスク。
【請求項13】
前記ナノファイバー不織布層同士が内側になるように積層された請求項12記載のマスク。

【公開番号】特開2008−188082(P2008−188082A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22753(P2007−22753)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】