説明

マスク

【課題】 マスク本体の辺部の顔面への密着性が良く、眼鏡をかけても曇らないマスク、紐の長さも調整できる使い心地の良いマスクを安価に提供する事にある。
【解決手段】 衛生マスクに多く使用されている顔面の凹凸にフィットさせる為の本体上辺部に組込まれている可変的形状保持芯による形が崩れないように、マスクを着用する紐の取付け方法を、本体を左右から引っ張る形でなく、紐を本体上辺部の顔面凸部当接箇所の表の紐通し具を通す事により、表側から押付ける力のみになるように変える事。及びくさび型切抜きを持つプラスチック片等に着用紐を簡単に留めさせる事による着用紐の長さ調整を可能とすることにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスク本体の辺部の顔面への密着性を高めた、マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛生マスクで、マスク本体の辺部と顔面の密着性を高めるこれまでの発明では、マスク本体の鼻梁部当接部にノーズフィッターと呼ばれる適度な塑性と弾性を備えた線状あるいは帯状の金属やプラスチック芯材を組込んだものが多かった(特許文献1参照)。本願ではこの組み込んだ芯材を可変的形状保持芯と呼ぶ。しかしこの可変的形状保持芯のみによっては鼻梁部周辺の充分な密着性を担保出来なかった。
【0003】
また鼻梁部や頬骨部に当接する部分に顔面の凹凸を合わせてスポンジや布での鼻型の隙間充填閉塞部材をつけて呼気が上の眼鏡へ流れるのを遮断するものがあった(特許文献2参照)。しかし製作に手間が掛かる事と、立体製品になり流通にかさばると言う欠点があった。
アイマスクでは鼻梁部当接部にその凹凸部に合わせて布を立体的に縫い合わせ隙間を遮断したのが多かったが、遮光効果は充分ではなかった。
【0004】
マスクの紐の長さ調整に関しては、プラスチック製薄板の数段のフックに耳掛け着用紐のループをかける引っ掛け具があった(特許文献3参照)。しかしこれは直接頭部の皮膚に触れ傷つける恐れが在った事と、軽い使い捨てマスクにしてはやや大げさな部材だった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−39051号公報
【特許文献2】特開2003−236000号公報
【特許文献3】特開2005−124818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当発明はこれらの改良課題として次の2つに取り組む。
第一に、顔面の凹凸部である鼻梁部から頬骨部に当たる本体辺部に可変的形状保持芯が組み込まれたマスクが多いが、それだけでは顔面への密着性が十分機能しなかった。
それは原理的には、一方で可変的形状保持芯を顔面の凹凸に合わせて曲げ、他方でマスクの着用紐でこれを左右に引き伸ばす、と言う矛盾する力が作用していたからである。着用紐の力を程々にすることによってどうにかバランスを保ってきたが、密着性を充分に確保できない基本構造になっていた。
【0007】
当発明はマスクの本体を顔面にフィットさせる可変的形状保持芯の力と、本体を着用する紐の力を完全に独立させ、無理なく小さな力でマスクの気密性を確保する事を目的とする。
【0008】
第二に、マスクの着用紐の長さに関して、人によってまた男女によって顔の大きさが異なり、マスクサイズの選択が面倒で、適切な着用紐の長さに調整する用具として紐長短調整具の必要性は大きかった。しかしマスクは顔面に掛けるため軽量で、その着用紐も軽量でなければならない。更に衛生マスクでは不織布製の使い捨ての物が普及しており、紐長短調整具も、これに合わせて安価でもなければならない。また当然誰でも使えるように、使用法が簡単でなければならない。
本発明はこれらの課題を解決する為になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
顔面に着用するマスクであって、本体と着用紐より成っている。
鼻梁部から頬骨部の顔面の凹凸部に当接する本体の辺部に、該凹凸に合わせて変形させた形状を保持し得る帯状または線状の可変的形状保持芯を備える。
また着用紐の一部を該辺部に沿って配し、
該辺部と鼻梁部及び頬骨部との当接点、或いは該辺部と頬骨部との当接点の本体表に、紐通し具を設ける。
そして着用紐は自在に紐通し具の中を移動する事が出来るように構成する。
【0010】
次に中央に鋭角的な紐食い込み口を持ち、該紐食い込み口によって、着用紐を固定可能とする紐長短調整具を、本体と着用紐の接続部近くに設ける。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、着用紐が本体と独立して伸縮し、且つ紐通し具の中を通る事で、可変的形状保持芯と一体の本体を顔面に押付ける力が働くので、可変的形状保持芯は引き伸ばされず形がそのままで、前記の辺部は顔面の凹凸に隙間なく当接することが出来るようになった。
そこで衛生マスクでは気密性が高まり、本体のフィルター機能が充分活用されるようになり、アイマスクでは遮光性が高まった。
【0012】
具体的には衛生マスクでは花粉症対策、インフルエンザ対策また防塵対策等に充分寄与できるようになった。また呼気がマスク本体上部へ漏れなくなって眼鏡が曇らなくなった。またアイマスクでは鼻梁部の脇よりの光の漏れが無くなり、その機能を充分に果たせるようになった。
【0013】
気密性は着用紐を強化して得られたのでないので、着用紐の耳にかかる特別な負担も無い。力学的な基本構造を変えたにも拘らず、着用のし易さは従来品と変わらない。着用紐は顔面凹部に対応する前記の辺部ではマスクの表を離れて、目のすぐ下を通る事に成るが、視界に殆ど入らず煩わしさは無い。
未使用の本体はほぼ平面で、流通にかさばる事も無い。
【0014】
紐長短調整具により使う着用紐の長さを調整できるので、本体のサイズさえ合えば、一つのマスクで全ての人に合わせられる。更に同一人物が同一マスクを使っても、運動時、着座時、就寝時とそれぞれのシーンに合わせて着用紐の強度を、その長さ調整により実現できる。
【0015】
紐長短調整具は本体表側に取付けられるので、頭部や顔面の皮膚に触れて傷付ける恐れは無い。紐が通るだけの小さな切抜きの有るプラスチックや金属の小片なので、軽く安価で本体に取付けても重さ・コスト・製作面で負担は小さい。
【0016】
利用方法はくさび型の切抜きあるいは間隙の鋭角端に着用紐を食込ませるだけなので、誰にでも使え説明が簡単である。そして左右の着用紐が一本に繋がっている場合は、この紐長短調整具は一箇で済み、且つ左右の着用紐を合わせた長い紐として調整するのでより微妙な張力の調整も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1の形態の衛生マスク正面図である。
【図2】本発明の実施例1の形態の衛生マスクの使用状態での平断面図である。
【図3】本発明の実施例1の紐長短調整具の正面拡大図である。
【図4】本発明の全実施例の紐長短調整具(切抜き型)の斜視図である。
【図5】本発明の実施例2の形態の衛生マスク正面図である。
【図6】本発明の実施例3のアイマスクの正面図である。
【図7】本発明の全実施例の図4の他の実施例である。
【図8】本発明の全実施例の図4、図7の他の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
本願ではマスクの部分の上下、左右、表内の位置関係はマスク着用者を中心として表す。先ず衛生マスクに関し、図1および図2を使って説明する。
可変的形状保持芯20を本体の上辺部12のほぼ左右全長に亘って組み込む。
【0019】
着用紐18は、紐長短調整具30への食い込みが良い丸ゴム紐を使う。また本体10は軽いので引くゴムの力を弱くした、逆に紐は太くして耳当たりをソフトにした。そして長く本体の左右に一本に繋がったゴム紐にした。
【0020】
そして紐通し具25を鼻梁部01と頬骨部02が当たる上辺部12の表側に取り付け、着用紐を通した。更に頬骨部当接点の本体表の紐通し具から上辺部の端まで開きがある場合は、紐通し具を上辺部両端にも設けてこれにも着用紐を通せば、端を押さえられて見た目が良い。
【0021】
紐通し具25とは鼻梁部や頬骨部などの顔面凸部で着用紐がこれより外れないで、その中で自在に移動できるように保つ用具あるいは潜り穴を言う。具体的には紐通し具は、着用紐18と別の紐や糸で略円形あるいは略半円形を作り取付けても良いが、上辺部12の紐通し具取り付け位置の表面に潜り穴を設けて紐通し具としても良い。
【0022】
要は可変的形状保持芯による顔面の凹凸に合わせた上辺部の形を崩さず、着用紐で本体を顔面部に縛りつける力とする時に、押さえの着用紐が上辺部凸部からずり落ちないように紐通し具を配するのである。
【0023】
換言すれば、顔面の凸部である鼻梁部01と頬骨部02に当接する本体表に紐通し具が設けられ、マスク着用時にはこの3点間の凹部での着用紐は、本体表から離れた状態になる。
【0024】
他方、本体下辺部が当接する顔面には凹部が存在しないので、可変的形状保持芯20は不要で、従来通り本体下辺部の左右各端14、15に着用紐18の各端を取り付ける。
【0025】
尚、図1では着用紐は耳掛け用になっているが、本発明は可変的形状保持芯と着用紐と紐通し具の構成によるもので、着用紐の先が耳掛けか頭部に巻きつけるかは関係なく、双方の場合に利用できる。
【0026】
上記の紐通し具を通る着用紐と可変的形状保持芯の構成により、実用的には充分なマスクの気密性が得られた。しかし本体の任意の辺部に布を取り付け、畳んで本体内側に折り込む折込み布は、マスクの辺部の顔面への密着性を更に高め本体のフィルター機能の利用を強化するので、必要に応じて本体の上辺部や左右側辺部にも付けても良い。
【0027】
次に図1、図3、図4、図7と図8を使って紐長短調整具30、32、34につき説明する。
プラスチック片の中央にくさび型の切り抜きを空け、当該切り抜の鋭角端31にマスク着用紐18を食い込ませる事によって、着用紐を固定する紐長短調整具30とする。鋭角端と逆方向に着用紐18をずらせば食い込みは無くなり着用紐は自由にすり抜けられるようになる。
【0028】
そして紐長短調整具が取付けられた内側の本体下辺部左端14には、取りつけた紐長短調整具の切抜きと重なるように切抜きを設け、着用紐がこれらの切抜きを通って本体下辺部左の内側に固定されるようにした。因みに紐長短調整具は本体下辺部右端15に取付けられても、左右が入れ替わるだけで基本構造は同じである。
【0029】
本実施例では着用紐は一本なので、この紐長短調整具は本体下辺部左あるいは同右の1ヶ所のみの取付けで済む。着用紐が一本であるとはそれだけ紐が長く、微妙な張力の調整も可能となった。また紐長短調整具が一個で済むことは材料費・取付け制作費ともに経済的であり、使い捨てマスクに最適である。
【0030】
紐長短調整具の紐食い込み口の鋭角の先端部31、33、35は食い込み方向に細かい山と溝の筋目を入れると、食い込んだ紐が横にずれ難くい。また紐は断面が円形の丸ゴム紐が食い込み易い。
【0031】
紐長短調整具は、他に図7の鰐口の開放型32、あるいは図8の鰐口の閉鎖型34等も考えられるが、いずれも鋭角的食い込み口に紐を食込ませて留める、同様な機能を持った紐長短調整具である。
【0032】
最後に外見上の問題について、紐長短調整具30の切抜きの鋭角端に着用紐を食込ませて留めた時、余ったループ状の着用紐は本体の内側に押し留めれば、外見も悪くない。
本発明の外見上の特徴は着用紐が本体の上辺部の表を通る事であり、従来品と比べ奇異に映るのを和らげる為には、本体10と着用紐18を同色にする、また着用紐のうち本体10の表を通る部分のみを糸等の細い材料にする工夫があっても良い。
【実施例2】
【0033】
次に着用紐が左右二本に分離した試作品について図5を使って説明する。
基本的構造は、実施例1の着用紐が一本の場合と同様である。相違点は、二本の着用紐18の各一端が本体の上辺部12中央の鼻梁部当接点の表13で固定され、また着用紐が二本になったことにより、紐長短調整具も本体の下辺部の左右14、15に各一個ずつ備わった事である。
【0034】
着用紐が本体の上辺部の鼻梁部当接点の表13に繋がっても、頬骨部当接点の表では各着用紐18はそれぞれ紐通し具25をくぐるので、この本体上辺部に装着された可変的形状保持芯20に作られた形状はマスク着用紐の力によって崩される事は無く、マスクにかかる力学と効果は実施例1の着用紐が一本の時と同じになる。
【実施例3】
【0035】
図6はアイマスクの試作品である。本体11は眼を覆い、その下辺部が鼻梁部01・頬骨部02に当たるので、原理的には実施例1の衛生マスクの本体の上辺部と下辺部を入れ替えた形で、その他の着用紐、紐長短調整具については実施例1と同様である。また光を覆うので本体11は黒の不織布で、従来の布製のものより軽量・安価にして使い捨てできるようにして、着用紐も頭巻き方式のみで無く、耳掛け方式も可能である。
【0036】
従来はアイマスクを付けても鼻梁部01の脇から光が侵入し気になったが、本発明品は可変的形状保持芯20が鼻梁部周辺部の凹凸をカバーして、かつ同保持芯は着用紐で伸ばされないので遮光は充分で、かつ顔面や耳06に特別な力が掛からないので安眠できる。
【0037】
尚、衛生マスクについて実施例2があったように、アイマスクに於いても着用紐を2本に分けて、鼻梁部当接の本体部表で本体に繋げる事が出来、その力学と遮光効果は着用紐が1本の場合と同じである。
【符号の説明】
【0038】
01 鼻梁部
02 頬骨部
04 目
05 眉
06 耳
10 本体(衛生マスク)
11 本体(アイマスク)
12 上辺部(衛生マスク)
13 鼻梁部当接点の表
14 本体下辺部左(衛生マスク)
15 本体下辺部右(衛生マスク)
18 着用紐
20 可変的形状保持芯
25 紐通し具
30 紐長短調整具(切抜き型)
31 紐長短調整具鋭角端(切抜き型)
32 紐長短調整具(鰐口型開放型)
33 紐長短調整具鋭角端(鰐口型開放型)
34 紐長短調整具(鰐口型閉鎖型)
35 紐長短調整具鋭角端(鰐口型閉鎖型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面に着用するマスクであって、本体と着用紐より成り、
本体は、鼻梁部から頬骨部の顔面の凹凸に当接する本体の辺部に、該凹凸に合わせて変形させた形状を保持し得る帯状または線状の可変的形状保持芯が備えられ、
着用紐の一部が、該辺部に沿って配され、
該辺部と鼻梁部及び頬骨部との当接点、或いは該辺部と頬骨部との当接点の本体表に、紐通し具が設けられ、
着用紐が自在に紐通し具の中を移動する事が出来るように、構成されている事を特徴とするマスク。
【請求項2】
中央に鋭角的な紐食い込み口を持ち、該紐食い込み口によって、着用紐を固定可能とする紐長短調整具を、本体と着用紐の接続部近くに設けた請求項1記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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