説明

マスフローコントローラ用ボディ構造

【課題】 締付けトルク管理等の取付作業者のスキルに左右されることなく、ネジ止め時に発生する応力歪の伝達を抑制して計測精度、質量流量制御精度の向上を図ることができ、かつ、全体の軽量化も図ることができるようにする。
【解決手段】 複数の凹部5内に静電容量型圧力計3を収容配置して固定し、肉厚部には各圧力計3に流体圧力を作用させるための流体流路10a〜10dが形成されている直方体形状のボディブロック2のうち、圧力計3の固定保持部分2A及び流体流路10a〜10d外周の取り囲み部分2Bを除く残りの肉厚部分2Dが切り落とし除去され、かつ、複数の圧力計3の固定保持部分2Aに対応させてマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネル11へのネジ止め固定用の複数の取付部12a〜12cを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体や液晶等の製造プロセスに送給される反応性ガスやキャリアガス等の流体の質量流量制御に用いられるマスフローコントローラ用ボディ構造に関する。詳しくは、直方体形状のボディブロックに形成した複数の凹部それぞれに流体流量計測用の圧力計が収容配置され、これら各圧力計はその取付用フランジ部を前記凹部の開口端周りに形成の段部にシールリングを挟んで嵌合し締付けることにより前記ボディブロックに気密・水密状態に固定保持されているともに、前記ボディブロックの肉厚部には前記各圧力計の受圧部に流体圧力を作用させるべく前記凹部に連通接続される流体流路が形成され、かつ、このボディブロックをマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネルにネジ止め固定するように構成されているマスフローコントローラ用ボディ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マスフローコントローラにおいては、流体の質量流量を精度よく制御するために、流体圧力を複数点で計測し、それら複数の計測圧力から実流体流量を算出する手段を採用しているものがある。このような手段を実現するためのマスフローコントローラ用ボディとして、従来一般には、図3及び図4に示すように、通称バーと呼ばれる直方体形状のボディブロック20に複数の凹部21を形成し、これら凹部21にそれぞれ流体流量計測用の圧力計25を気密・水密状態に収容配置して固定するとともに、前記ボディブロック20の肉厚部に各圧力計25の受圧部に流体圧力を作用させるための流体流路22を形成し、このボディブロック20をマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネル23にボルト等のネジ類24を介して締付け固定するように構成されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように直方体形状のボディブロック20をマスフローコントローラの本体ボックスにネジ止め固定する際は、ボディブロック20とマスフローコントローラの本体ボックスとの相互接触面の平面度に高い精度が要求される。もし、いずれか一方の接触面の平面精度が低いと、ネジ類24を強く締付けた場合、複数の圧力計25の少なくとも一方が傾くだけでなく、ボディブロック20に大きな応力が発生して機械的な歪を生じ、その結果、圧力計測精度に悪影響を及ぼしやすい。また、ボディブロック20を肉薄のマスフローコントローラのパネル23にネジ止め固定する際は、ネジ類24の強い締付け力による大きな応力によってパネル23自体がうねり状態に歪変形し、その歪が複数の圧力計25の収容固定部にも伝達されて圧力計25の本来性能が損なわれ圧力計測精度、ひいては流体の質量流量制御精度に悪影響を及ぼしやすい。
【0004】
このような計測精度、質量流量制御精度への悪影響は、取付作業者によるネジ類の締付けトルク管理等のスキルアップによって、ある程度解消することが可能であるが、取付作業者のスキルに依存する場合は計測精度がスキルに左右されてばらつきやすいということであり、そのことが製品(マスフローコントローラ)歩留まりの悪化原因になりかねず、実際問題として好ましくなく許容されるものではない。
【0005】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、締付けトルク管理等の取付作業者のスキルに左右されることなく、ネジ止め時に発生する応力歪が圧力計の収容固定部に伝達されることを抑制して計測精度、質量流量制御精度の向上を図ることができ、かつ、全体の軽量化も図ることができるマスフローコントローラ用ボディ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るマスフローコントローラ用ボディ構造は、直方体形状のボディブロックに形成した複数の凹部それぞれに流体流量計測用の圧力計が収容配置され、これら各圧力計はその取付用フランジ部を前記凹部の開口端周りに形成の段部にシールリングを挟んで嵌合し締付けることにより前記ボディブロックに気密・水密状態に固定保持されているともに、前記ボディブロックの肉厚部には前記各圧力計の受圧部に流体圧力を作用させるべく前記凹部に連通接続される流体流路が形成され、かつ、このボディブロックをマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネルにネジ止め固定するように構成されているマスフローコントローラ用ボディ構造であって、前記ボディブロックのうち、前記複数の圧力計を収容し固定保持する部分及び前記流体流路外周の取り囲み部分を除く残りの肉厚部分を切り落とし除去し、かつ、複数の圧力計の固定保持部分に対応させて前記マスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネルへのネジ止め固定用の複数の取付部を形成していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
上記のような特徴構成を採用した本発明のマスフローコントローラ用ボディ構造は、マスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネルへのネジ止め固定用取付部と複数の圧力計の収容固定部との間、及び、複数の圧力計の収容固定部の相互間が機械的に大きな強度をもって剛に連結されているのではなく、それらの間にスリットや切り込みが存在する柔構造で連結されているので、ネジ止め時に発生する大きな応力によって各部に歪を生じたり、その歪が他の部分に伝達されたりすることを抑制することができる。したがって、締付けトルクを厳格に管理する等の高度なスキルが不要で、たとえスキルの低い取付作業者であっても、各圧力計の本来性能を良好に保持した状態でボディブロックをマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネルにネジ止め固定して計測精度、ひいては、流体の質量流量制御精度の著しい向上を達成することができる。しかも、余分な部分の切り落とし除去によって、ボディの軽量化が図れてマスフローコントローラ全体の軽量化、コストダウンにも貢献できるという効果を奏する。
【0008】
本発明に係るマスフローコントローラ用ボディ構造において、請求項2に記載のように、前記ボディブロックに、前記複数の圧力計に並列させて、それら圧力計による計測圧力に応じて流体流量または圧力を自動制御する流体制御用バルブを取付けてもよい。この場合は、複数の圧力計による計測圧力に応じた流体制御用バルブの制御動作に伴う流体の質量流量または圧力制御作用を安定よく行え、マスフローコントローラ全体の性能向上を達成することができる。
【0009】
また、本発明に係るマスフローコントローラ用ボディ構造においては、各部分の固定(取付)強度を十分に保持しつつ、上述したような計測精度の向上及び軽量化を図れるようにするために、請求項3に記載のように、前記複数の圧力計を収容し固定保持する部分及び前記流体流路外周の取り囲み部分並びに複数の取付部を、それぞれが所要強度を有するように形成されていることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るマスフローコントローラ用ボディ構造の一例を示す縦断面図、図2はその平面図である。このマスフローコントローラ用ボディ1は、ステンレス鋼等の耐腐食性素材から構成された直方体形状のボディブロック2に、その長手方向に並列させて複数(図面上では2つで示すが、3つ以上でもよい。)の流体流量計測用の静電容量型圧力計3と流体流量もしくは圧力の自動制御用のバルブ4を設けて構成されている。
【0011】
前記各静電容量型圧力計3は、円筒状ケース3Aの一端開口側に受圧部となるダイヤフラム3Bが張設されているとともに、前記円筒状ケース3Aの他端側に外方へ突出する環状フランジ部3Cが一体形成されている。これら静電容量型圧力計3は、ボディブロック2に形成された凹部5内に前記ダイヤフラム3Bが底部側に位置するように収容配置されるとともに、前記環状フランジ部3Cと前記凹部5の開口端周りに形成された環状段部6との間に金属ガスケット等のシールリング7を介在させた上で、押え部材8及び締め付けボルト9を介して前記ボディブロック2に気密・水密状態に固定保持されている。また、前記自動制御用バルブ4は、前記ボディブロック2の上面に固定されている。
【0012】
また、前記ボディブロック2の肉厚部内には、二つの静電容量型圧力計3のうち上流側の静電容量型圧力計3のダイヤフラム3Bに流体圧力を作用させるべく該静電容量型圧力計3を収容する凹部5に連通接続される流体導入流路10a、上流側の静電容量型圧力計3のダイヤフラム3Bに作用した後の流体圧力を下流側の静電容量型圧力計3のダイヤフラム3Bに作用させるべく二つの静電容量型圧力計3を収容する両凹部5間を連通接続する流体流路10b、下流側の静電容量型圧力計3のダイヤフラム3Bに作用した後の流体圧力を前記自動制御用バルブ4におけるオリフィス開閉弁体の駆動部となるダイヤフラム(これは周知であるため、図示は省略する。)に作用させるための流体流路10c、及び、前記自動制御用バルブ4からの流体排出流路10dが形成されている。
【0013】
前記ボディブロック2のうち、前記二つの静電容量型圧力計3を収容し固定保持する凹部5及び環状段部6周りを取り囲む略円筒状部分2A及び前記各流体流路10a〜10dの外周を取り囲む流路壁部分2B並びに前記自動制御用バルブ4を固定する平面視矩形状部分2Cを除く残りの肉厚部分2D(図1及び図2の点線で囲んだ部分)は切り落とし除去され、かつ、前記二つの略円筒状部分2A及び矩形状部分2Cに対応するボディブロック2の下端部にはそれぞれマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネル11へのネジ止め固定用の三つの取付部12a,12b,12cが形成されている。
【0014】
上記のように構成されたマスフローコントローラ用ボディ1は、そのボディブロック2に形成された三つの取付部12a,12b,12cにおいてマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネル11にネジ類13を介して締め付け固定され、また、流体導入流路10a及び流体排出流路10dをマスフローコントローラの本体ボックス内の流体流路もしくはマスフローコントローラのパネル11下に配設された流体配管に接続して用いられる。
【0015】
そして、上記のような使用態様において、流体導入流路10aに導入されたガスなどの流体圧力が二つの静電容量型圧力計3によりそれぞれ計測され、それら両計測圧力から流体の実質量流量が算出され、それに基づいて自動制御用バルブ4が制御動作されて流体の質量流量または圧力が設定値となるように自動制御される。
【0016】
このように用いられるマスフローコントローラ用ボディ1において、マスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネル11へのネジ止め固定用取付部12a,12b,12cと二つの静電容量型圧力計3の収容固定部となる略円筒状部分2Aの間、及び、二つの略円筒状部分2Aの相互間は機械的に大きな強度をもって剛に連結されているのでなく、それらの間にスリットSや切り込みCが存在する柔構造で連結されているので、各取付部12a,12b,12cでネジ類13を強く締め付けることに伴い発生する大きな応力によって各部に歪を生じたり、その歪が他の部分に伝達されたりすることを抑制することができる。したがって、締付けトルクを厳格に管理する等の高度なスキルを要することなく、各圧力計3の本来性能を良好に保持した状態でボディブロック2をマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネル11に強力にネジ止め固定して計測精度、さらには流体の質量流量の制御精度を著しく向上することができる。
【0017】
加えて、ボディブロック2の余分な肉厚部分を可能な限り切り落とし除去することによって、ボディ1の軽量化が図れてマスフローコントローラ全体の軽量化、コストダウンを促進することができる。
【0018】
なお、上記実施の形態では、ボディブロック2に、2つの静電容量型圧力計3に並列させて流体流量もしくは圧力の自動制御用のバルブ4を設けたものについて説明したが、そのバルブ4を省いた、いわゆる、マスフローメータにも同様に適用することが可能である。
【0019】
また、上記実施の形態では、流体流量計測用の圧力計として、静電容量型の圧力計を用いたが、これ以外どのような型式の圧力計を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るマスフローコントローラ用ボディ構造の一例を示す縦断面図である。
【図2】同上マスフローコントローラ用ボディ構造の平面図である。
【図3】従来のマスフローコントローラ用ボディの概要を示す平面図である。
【図4】同上従来のマスフローコントローラ用ボディの取付状態の概要を示す側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 マスフローコントローラ用ボディ
2 ボディブロック
2D 切り落とし肉厚部分
3 静電容量型圧力計
3B ダイヤフラム(受圧部)
3C フランジ部
4 自動制御用バルブ
5 凹部
6 段部
7 シールリング
10a〜10d 流体流路
11 マスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネル
12a〜12c 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状のボディブロックに形成した複数の凹部それぞれに流体流量計測用の圧力計が収容配置され、これら各圧力計はその取付用フランジ部を前記凹部の開口端周りに形成の段部にシールリングを挟んで嵌合し締付けることにより前記ボディブロックに気密・水密状態に固定保持されているともに、前記ボディブロックの肉厚部には前記各圧力計の受圧部に流体圧力を作用させるべく前記各凹部に連通接続される流体流路が形成され、かつ、このボディブロックをマスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネルにネジ止め固定するように構成されているマスフローコントローラ用ボディ構造であって、
前記ボディブロックのうち、前記複数の圧力計を収容し固定保持する部分及び前記流体流路外周の取り囲み部分を除く残りの肉厚部分を切り落とし除去し、かつ、複数の圧力計の固定保持部分に対応させて前記マスフローコントローラの本体ボックスもしくはパネルへのネジ止め固定用の複数の取付部を形成していることを特徴とするマスフローコントローラ用ボディ構造。
【請求項2】
前記ボディブロックには、前記複数の圧力計に並列させて、それら圧力計による計測圧力に応じて流体流量または圧力を自動制御する流体制御用バルブが取付けられている請求項1に記載のマスフローコントローラ用ボディ構造。
【請求項3】
前記複数の圧力計を収納し固定保持する部分及び前記流体流路外周の取り囲み部分並びに複数の取付部は、それぞれが所要強度を有するように形成されている請求項1または2に記載のマスフローコントローラ用ボディ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−58516(P2007−58516A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242559(P2005−242559)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】