説明

マゼンタカラートナー用顔料

【課題】光沢及び透明性に優れたマゼンタカラートナーを得ることができるマゼンタカラートナー用顔料、マゼンタカラートナー用顔料分散体及びマゼンタカラートナー用顔料マスターバッチを提供する。
【解決手段】モノアゾ系顔料と、フタルイミドメチルキナクリドン顔料誘導体とを含有するマゼンタカラートナー用顔料である。従来のように複雑な調色によることなく、例えば優れた分散性を持つジャパンカラーを極めて容易かつ簡便に調色できるので、複写機器等の分野で利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マゼンタカラートナー用顔料に関し、更に詳細には、顔料の分散性を向上させることにより、光沢及び透明性を改良したマゼンタカラートナー用顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的潜像をカラートナーにより現像して可視画像を形成する方法としては、静電荷印刷法、電子写真法等がある。これらの方法では、種々の手段により光導電性を示す感光体上に電気的潜像を形成し、次いでその潜像をトナーを用いて現像することにより可視画像を得るか、又は必要に応じて紙等に粉等を転写した後、加熱、加圧あるいは溶剤蒸気等により定着して可視像を得るのが一般的である。従来の電子写真法ではカラートナーの一つとしてマゼンタカラートナーが使用されており、このトナーに使用されるマゼン夕顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料等が知られており、これらの顔料を用いて各種のマゼンタカラートナーが調製されている。
【0003】
これらのマゼンタカラートナー用顔料においては、カラートナーとしての種々の物理的、化学的特性について、年々高度な特性が要求されるに至っている。従って、これらの特性に対応するため、顔料自体により高い分散性を付与したり、添加される分散剤や樹脂を変更するなどその種類が多様化されるようになってきている(特許文献1)。このように、マゼンタカラートナー用顔料においては、顔料の分散性が一つの大きな課題となっている。
【特許文献1】特開平11−272014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高い分散性を発現することにより、光沢及び透明性に優れたマゼンタカラートナーを得ることができるマゼンタカラートナー用顔料、マゼンタカラートナー用顔料分散体及びマゼンタカラートナー用顔料マスターバッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料は、下記一般式(I)で示されるモノアゾ系顔料と、下記一般式(II)で示される顔料誘導体とを含有することを特徴とする。
【0006】
【化1】

【0007】
ここで、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコシキ基であり、
【0008】
【化2】

【0009】
Qはキナクリドン基であって置換基を含むものであってもよく、Aは、エチレン基、フェニレン基又はナフチレン基であって置換基を含むものであってもよく、R2は水酸基又は−NH−A−Zで示される基を表し、Zは−SO3H又は−COOHで示される基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【0010】
前記一般式(I)で示されるモノアゾ系顔料は、下記式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0011】
【化3】

【0012】
また、前記一般式(II)で示される顔料誘導体は、下記式(IV)で表される化合物であることが好ましい。
【0013】
【化4】

【0014】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料分散体は、上記の何れかに記載のマゼンタカラートナー用顔料と、分散剤と、溶剤とを含有することを特徴とする。
【0015】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料分散体は、上記に加えて更に分散樹脂を含有していてもよい。
【0016】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料マスターバッチは、上記の何れかに記載のマゼンタカラートナー用顔料と、分散樹脂とを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料分散体は、一般式(I)で示されるモノアゾ系顔料に、一般式(II)で示される顔料誘導体が添加されているので、極めて分散性の高いマゼンタカラートナーを提供することができ、従来のように複雑な調色によることなく、例えば優れた分散性を持つジャパンカラーを極めて容易かつ簡便に調色することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料に使用されるモノアゾ系顔料は、ジアゾニウム塩を含有するジアゾニウム溶液と、このジアゾニウム塩とカップリング反応を行うカップラーを含有するカップラー溶液とを混合することにより生成される。ここで、カップラーとは、ジアゾニウム塩とのカップリング反応によりアゾ化合物を生成する化合物をいう。具体的には、通常、以下のようにして得ることができる。即ち、従来公知のモノアゾ顔料の製造法と同様に芳香族アミンを常法に従ってジアゾ化してジアゾニウム溶液を得る。これとは別に、ジアゾニウム塩とカップリング反応させるカップラー成分を常法に従って調製してカップラー溶液を得る。そして、ジアゾニウム溶液及びカップラー溶液の両者を混合してジアゾニウム塩とカップラー成分とをカツプリング反応させることにより、一般式(I)で示されるモノアゾ系顔料が得られる。
【0019】
一般式(II)で示されるモノアゾ系顔料に於けるAは、上述のようにエチレン基、フェニレン基又はナフチレン基であって置換基を含むものでよい。また、Zは−SO3H又は−COOHで示される基である。一般式(I)に於ける−NH−A−Z基のうち、Z基としてスルホン基1個を有するものを与える代表的な脂肪族又は芳香族アミンとしては、タウリン、スルファニル酸、メタニル酸、オルタニル酸、ナフチオン酸、トビアス酸、2−アミノフェノール−4−スルホン酸、2−メトキシアニリン−5−スルホン酸、4−クロロアニリン−3−スルホン酸、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸、4B酸(p−トルイジン−m−スルホン酸)、2B酸(o−クロロ−p−トルイジン−m−スルホン酸)、C酸(3−アミノ−6−クロロトルエン−4−スルホン酸)、CB酸(3−アミノ−6−クロロ安息香酸−4−スルホン酸)、ガンマー酸(2−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸)などが挙げられる。
【0020】
Aがフェニレン基であってZ基としてカルボキシル基1個を有する−NH−A−Z基を与える代表的な芳香族アミンとしては、アンスラニル酸(o−アミノ安息香酸)、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸等が挙げられる。
【0021】
また、一般式(II)で示される顔料誘導体の製造は、一般式(V)の4−アミノフタルイミドメチル化したキナクリドン系色素を用いて行うことができる。一般式(V)のキナクリドン系色素は、濃硫酸中でキナクリドン系色素とパラホルムアルデヒドおよび4−アミノフタルイミドとを添加して加熱し、キナクリドン系色素に4−アミノフタルイミドメチル基を導入することにより得るのが有利である。しかし、他の方法で4−アミノフタルイミドメチル基を導入した一般式(V)のキナクリドン系色素でも、使用することができる。
【0022】
【化5】

【0023】
なお、式中Qは、キナクリドン基(置換基を含むものであってもよい)を表す。上記の方法で4−アミノフタルイミドメチル基を有するキナクリドン系色素を予め調製した後、本発明の誘導体は、下記の1)又は2)の何れかの方法で調製するのが一般的である。
【0024】
1)キナクリドン系色素に4−アミノフタルイミドメチル基1個を導入した化合物のアミノ基と塩化シアヌルを反応させる。次に、この反応生成物とスルファニル酸等の−A−Z基を有する化合物1個とを反応させた後、残りの1個のClを加水分解すると、一般式(II)で示される顔料誘導体が得られる。
【0025】
2)塩化シアヌルとスルファニル酸の−A−Z基を有する化合物1個とを反応させ、この反応生成物と、キナクリドンに4−アミノフタルイミドメチル基1個を導入した化合物とを反応させた後、残りの1個のClを加水分解すると、一般式(II)で示される顔料誘導体が得られる。なお、上記1)および2)で示した以外にも、様々な調製法を採用することが可能である。
【0026】
一般式(I)で示されるモノアゾ系顔料と、一般式(II)で示される顔料誘導体との配合比率は、調色が可能であれば特に制限されるものではないが、モノアゾ系顔料(I)が99〜80重量%、顔料誘導体(II)が1〜20重量%の範囲が好ましく、モノアゾ系顔料(I)が97〜85重量%、顔料誘導体(II)が3〜15重量%の範囲が更に好ましく、モノアゾ系顔料(I)が94〜87重量%、顔料誘導体(II)が6〜13重量%の範囲が最も好ましい。これにより、極めて光沢性、透明性、及び光学濃度バランスに優れたトナー用分散体が得られる。なお、顔料誘導体(II)が20重量%より多いと調色が難しくなる場合がある。
【0027】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料は、分散剤及び溶剤、必要により分散樹脂を混合することにより顔料分散体とした後、トナーとして調製することができる。また、本発明のマゼンタカラートナー用顔料は、分散樹脂と混合することによりマスターバッチとした後、トナーとして調製することができる。
【0028】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料分散体に使用し得る分散樹脂としては、公知のものを使用可能であるが、例えばポリスチレン、ポリp−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、ペンテル樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが単独あるいは混合して使用できる。これらのうち、特に好適に用いられるのは、透明性、機械強度の点から、ポリエステル樹脂である。
【0029】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料分散体に於ける分散樹脂の配合量は、モノアゾ系顔(I)と顔料誘導体(II)とを含有するマゼンタカラートナー用顔料100重量部に対して、0〜60重量部、好ましくは1.0〜50重量部である。この配合量がこの範囲を外れると、分散体調製時にマゼンタカラートナー用顔料が分散不良を起こしたり、分散体としての保存安定性が低下する傾向が現れる。なお、分散樹脂が0重量部の場合でも分散可能であるが、分散効果のある樹脂を用いることにより、前記分散剤の量を減らすことができる。
【0030】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料分散体に使用し得る分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子系分散剤を用いることができる。高分子系分散剤としては、例えば、塩基性高分子系分散剤、中性高分子系分散剤、酸性高分子系分散剤等が挙げられる。このような高分子系分散剤として、例えば、アクリル系、変性アクリル系の共重合体からなる分散剤、ウレタン系分散剤、ポリアミノアマイド塩、ポリエーテルエステル、リン酸エステル系、脂肪族多価カルボン酸等からなる分散剤等が挙げられる。
【0031】
分散剤の具体例としては、ディスパービック101、ディスパービック102、ディスパービック103、ディスパービック104、ディスパービック104S、ディスパービック220S、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2095、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製)、EFKA−4008、EFKA−4009、EFKA−4010、EFKA−4015、EFKA−4020、EFKA−4046、EFKA−4047、EFKA−4050、EFKA−4055、EFKA−4060、EFKA−4080、EFKA−4400、EFKA−4401、EFKA−4402、EFKA−4403、EFKA−4406、EFKA−4408、EFKA−4300、EFKA−4330、EFKA−4340、EFKA−4800、EFKA−5010、EFKA−5065、EFKA−5066、EFKA−5070、EFKA−7500、EFKA−7554(以上、チバスペシャリティー社製)、ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース38500、ソルスパース41000、ソルスパース41090(以上、ルーブリゾール社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製)、ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製)、フローレンDOPA−14、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−44、フローレンTG−710、フローレンD−90(以上、共栄社化学社製)、Anti−Terra−205(ビックケミー社製)等を挙げることができ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
分散剤(複数種の分散剤を併用する場合はそれらの総和)の含有率は、特に限定されないが、モノアゾ系顔料(I)及び顔料誘導体(II)からなる顔料100重量部に対し、5〜50重量部が好ましく、10〜40重量部がより好ましい。分散剤の含有率がこの範囲であれば、顔料分散の効果が適切に発揮される。
【0033】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料分散体に使用し得る溶剤としては、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,ベンゼン,トルエン,キシレン,シクロヘキサン,石油エーテル等の炭化水素類、塩化メチレン,クロロホルム,ジクロロエタン,ジクロロエチレン,トリクロロエタン,トリクロロエチレン,四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類などが用いられる。これらの溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、バインダー樹脂を溶解あるいは分散するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましい。
【0034】
溶剤の配合量は、モノアゾ系顔料(I)及び顔料誘導体(II)からなるマゼンタカラートナー用顔料100重量部に対して通常250〜10,000重量部、好ましくは400〜2,000重量部である。この配合量が上記範囲を超えると、生産効率等に支障をきたすことがある。また、上記範囲を下回ると、分散不良を起こすことがある。
【0035】
本発明のマゼンタカラートナー用マスターバッチの調製に使用し得る分散樹脂としては、スチレン系重合体、アリルアルコール系重合体、ポリビニルケトン類、(メタ)アクリル酸系重合体、ハロゲン含有ビニル重合体、オレフィン系重合体、ポリエステル系重合体等の樹脂を挙げることができる。これらのうち、優れた定着性を発揮し得るという観点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、多価アルコールと多塩基酸からなり、必要に応じてこれら多価アルコールおよび多塩基酸の少なくとも一方が3価以上の多官能成分(架橋成分)を含有するモノマー組成物を重合することにより得られるものが挙げられる。
【0036】
上記において、ポリエステル樹脂の合成に用いられる2価のアルコールとしては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどのビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができる。これらのモノマーのうち、特にビスフェノールAアルキレンオキシド付加物を主成分モノマーとして用いるのが好ましく、中でも1分子当たりのアルキレンオキシド平均付加数2〜7の付加物が好ましい。
【0037】
ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多価アルコールとしては、たとえばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
【0038】
一方、ポリエステル樹脂の合成に用いられる多塩基酸としては、たとえばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル、又はn−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、その他の2価の有機酸を挙げることができる。
【0039】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料マスターバッチは、粉砕法、重合法のいずれでも製造することができる。粉砕法の場合は公知の製造方法すべてを本発明の顔料に適用することができ、分散樹脂に高濃度でマゼンタカラートナー用顔料を分散させることによりマスターバッチを得ることができる。
【0040】
重合法、特に懸濁重合法にて本発明のマゼンタカラートナー用顔料を含むマスターバッチを得る場合は、重合性単量体中に本発明のマゼンタカラートナー用顔料、重合開始剤、必要ならばさらに帯電制御剤、ワックス、分散剤等を均一に分散混合が行われる。得られた混合物を懸濁安定剤を含む水中に分散し加熱して懸濁重合することでマゼンタカラートナー用顔料マスターバッチを得る。懸濁安定剤としては、ポリビニルアルコール、リン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0041】
本発明のマゼンタカラートナー用顔料マスターバッチに於ける、分散樹脂の配合量は、モノアゾ系顔料(I)及び顔料誘導体(II)を含有するマゼンタカラートナー用顔料100重量部に対して40〜500重量部であり、好ましくは60〜400重量部であり、最も好ましくは100〜250重量部である。この配合量がこの範囲を超えると、着色力が弱くなり、この範囲を下回ると、顔料の分散が不十分となることがある。
【0042】
なお、本発明のマゼンタカラートナー用顔料分散体及びマゼンタカラートナー用顔料マスターバッチには、更に荷電制御剤、流動化剤、研磨剤、帯電性改良剤、クリーニング向上剤などを添加助剤として使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げて、本発明の実施形態を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、下記に示される「部」および「%」は、特に明示する場合を除き、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0044】
以下の実施例では、モノアゾ系顔料(I)としてC.I.Pigment Red 269を使用した。また、顔料誘導体(II)として、以下の置換基を有するものを用いた。即ち、
顔料誘導体(II):
Q=2,9−ジメチルキナクリドン
R=ヒドロキシル基
A=フェニル基
Z=スルホン酸
である。
【0045】
(実施例1)
C.I.Pigment Red 269顔料13.5部、顔料誘導体(II)1.5部、ポリエステル樹脂(花王(株)製、タフトン、軟化点:105℃)4.5部、分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ社製)4.5部、酢酸エチル76部を、0.5mmのジルコニアビーズ400部とともにサンドミルに仕込み、30分間分散を実施し、本実施例のマゼンタカラートナー用顔料を含有する組成物を得た。
【0046】
(実施例2)
C.I.Pigment Red 269顔料14.55部、顔料誘導体(II)0.45部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、本実施例のマゼンタカラートナー用顔料を含有する組成物を得た。
【0047】
(実施例3)
C.I.Pigment Red 269顔料14.1部、顔料誘導体(II)0.9部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、本実施例のマゼンタカラートナー用顔料を含有する組成物を得た。
【0048】
(実施例4)
C.I.Pigment Red 269顔料12部、顔料誘導体(II)3部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、本実施例のマゼンタカラートナー用顔料を含有する組成物を得た。
【0049】
(比較例1)
C.I.Pigment Red 269顔料15部、ポリエステル樹脂(花王(株)製タフトン、軟化点:105℃)4.5部、分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ社製)4.5部、酢酸エチル76部を0.5mmのジルコニアビーズ400部とともにサンドミルに仕込み、周速20m/sで30分間分散した。
【0050】
(実施例5)
ポリエステル樹脂(花王(株)製、タフトン、軟化点:105℃)1000部を3L加圧ニーダーに投入し、撹拌混合しながら徐々に加熱した。ポリエステル樹脂が溶融したのを確認した後、C.I.Pigment Red 269顔料900部を含むペースト(顔料含有率24.5重量%)及び顔料誘導体(II)100部を含むペースト(誘導体含有率24.5重量%)の合計量の1/3量をニーダーに投入し、撹拌混合しながら徐々に加熱した。その後、徐々に昇温し、顔料が溶融樹脂に移行して水相と着色樹脂相とが明確に分離した時点でニーダーを横転させ、分離した水分を排出した。この操作を更に二回繰り返し、顔料ペースト全量を完全に樹脂に移行させた。次いで、温度を90℃に保ち、約60分混練して顔料の分散を行なった。この間、内部温度が100℃を超えないように冷却水で温度をコントロールした。次に、ニーダーから内容物を取り出し、冷却した後、更に105℃に加熱した3本ロールでロール圧25.0×105〜35.0×105Paで混練し、分散処理を行なった。このようにして得た分散処理物を冷却し、粗砕した後、更に粉砕して、本実施例のマゼンタカラートナー用顔料を50%濃度で含有する組成物を得た。
【0051】
(実施例6)
C.I.Pigment Red 269顔料の仕込量を970部、顔料誘導体(II)の仕込量を30部としたこと以外は実施例5と同様の操作を行い、本実施例のマゼンタカラートナー用顔料を含有する組成物を得た。
【0052】
(実施例7)
C.I.Pigment Red 269顔料の仕込量を930部、顔料誘導体(II)の仕込量を60部としたこと以外は実施例5と同様の操作を行い、本実施例のマゼンタカラートナー用顔料を含有する組成物を得た。
【0053】
(実施例8)
C.I.Pigment Red 269顔料の仕込量を800部、顔料誘導体(II)の仕込量を200部としたこと以外は実施例5と同様の操作を行い、本実施例のマゼンタカラートナー用顔料を含有する組成物を得た。
【0054】
(比較例2)
ポリエステル樹脂(花王(抹)製、タフトン、軟化点:105℃)1000部を3L加圧ニーダーに投入し、撹拌混合しながら徐々に加熱した。ポリエステル樹脂が溶離したのを確認した後、C.I.Pigment Red 269顔料1000部を含むペースト(顔料含有率24.5重量%)の1/3量をニーダーに投入し、撹拌混合しながら徐々に加熱した。その後、徐々に昇温し、顔料が溶融樹脂に移行して水相と着色樹脂相とが明確に分離した時点でニーダーを横転させ、分離した水分を排出した。この操作を更に二回繰り返し、顔料ペースト全量を完全に樹脂に移行させた。次いで、温度を90℃に保ち、約60分混練して顔料の分散を行なった。この間、内部温度が100℃を超えないように冷却水で温度をコントロールした。次に、ニーダーから内容物を排出し、冷却した後、更に105℃に加熱した3本ロールでロール圧25.0×105〜35.0×105Paで混練し、分散処理を行なった。このようにして得た分散処理物を冷却し、粗砕した後、更に粉砕して、本比較例のマゼンタカラートナー用顔料を50%濃度で含有する組成物を得た。
【0055】
(評価試験)
(1)エナメルの作成
実施例1〜4及び比較例1〜2の組成物は、上記各操作の後、テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=1/1の溶剤40部に着色組成物4部を添加して、ペイントコンディショナーで30分分散処理して、エナメルを調製した。実施例5〜8及び比較例3の組成物は、得られた分散液をそのままエナメルとして用いた。
【0056】
評価試験の項目及び試験機器は、表1に示すとおりである。
【0057】
【表1】

【0058】
(2)評価
各実施例及び各比較例で得た着色組成物をそれぞれマイクロスコープ(ハイロックス製パワーハイスコープKH−2700)で目視し、視野内の粗大粒子の数を確認した。評価基準は、
○ … 粗大粒子が少ない、
× … 粗大粒子が多い、
である。
【0059】
また、上記(1)で得られたエナメルを光沢紙に0.15mmバーコーターで展色し、OD値と色度を確認した。さらに、このエナメルを0.15mmバーコーターでPETフィルムに展色し、ヘイズ、グロス、色度を確認した。これらの結果を表2及び表3に示した。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、極めて分散性が高く、光沢及び透明性に優れたマゼンタカラートナーを提供することができ、従来のように複雑な調色によることなく、例えば優れた分散性を持つジャパンカラーを極めて容易かつ簡便に調色できるので、複写機器等の分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるモノアゾ系顔料と、下記一般式(II)で示される顔料誘導体とを含有するマゼンタカラートナー用顔料。
【化1】

ここで、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコシキ基であり、
【化2】

Qはキナクリドン基であって置換基を含むものであってもよく、Aは、エチレン基、フェニレン基又はナフチレン基であって置換基を含むものであってもよく、R2は水酸基又は−NH−A−Zで示される基を表し、Zは−SO3H又は−COOHで示される基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【請求項2】
前記一般式(I)で示されるモノアゾ系顔料が、下記式(III)で表される化合物である請求項1記載のマゼンタカラートナー用顔料。
【化3】

【請求項3】
前記一般式(II)で示される顔料誘導体が、下記式(IV)で表される化合物である請求項1又は2記載のマゼンタカラートナー用顔料。
【化4】

【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のマゼンタカラートナー用顔料と、分散剤と、溶剤とを含有するマゼンタカラートナー用顔料分散体。
【請求項5】
更に分散樹脂を含有する請求項4記載のマゼンタカラートナー用顔料分散体。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかに記載のマゼンタカラートナー用顔料と、分散樹脂とを含有するマゼンタカラートナー用顔料マスターバッチ。

【公開番号】特開2009−210701(P2009−210701A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51945(P2008−51945)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000180058)山陽色素株式会社 (30)
【Fターム(参考)】