説明

マゼンタ金属錯体アゾ化合物とインク及びそれらのインクジェットプリンティングにおける使用

遷移金属塩を式(1):


[式中、pは1〜2である]
の化合物又はその塩と接触させることによって得られる金属キレート化合物。並びに、組成物、インク、印刷基材、インクジェットカートリッジ及びインクジェットプリンタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、インク及びそれらのインクジェットプリンティング(“IJP”)における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IJPは、ノンインパクト方式の印刷技術で、インク滴が微細ノズルを通じて基材上に吐出される。その際ノズルが基材に接触することはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
IJPに使用される化合物及びインクに要求される性能要件はたくさんある。例えば、それらは、良好な耐水性、耐光性及び光学濃度を有する鮮鋭で滲みのない画像を提供するのが望ましい。インクは基材に適用されたら汚れ防止のために速乾性を要求されることが多いが、インクジェットノズルの先端にクラストを形成してはならない。プリンタの運転を止める原因になるからである。またインクは、分解したり微細ノズルを詰まらせかねない沈殿物を形成することなく長期間の貯蔵に対しても安定でなければならない。
【0004】
カラーインクジェットプリンタは、典型的には4種類の異なる色相:マゼンタ、イエロー、シアン、及びブラックのインクを使用する。これら以外の色は、これらのインクの様々な組合せを使用して得ることができる。従って、最適のプリント品質のために、使用される着色剤は、特定の正確な色相を有するインクを形成できるものでなくてはならない。これは着色剤の混合によって達成することもできるが、要求される正確な色相を有する単一の着色剤の使用によって達成されるほうが好都合である。
【0005】
さらに、得られた画像は、光又はオゾンのような酸化ガスへの暴露で迅速に退色しないのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インクに使用でき、インクジェットプリンティングに要求される技術的要件に適合する新規マゼンタ着色剤に関する。
本発明の第一の側面に従って、遷移金属塩を式(1):
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、pは1〜2である]
の化合物又はその塩と接触させることによって得られる金属キレート化合物を提供する。
フェナントレン及び/又はピリジン環のスルホン化は、それを受容可能な任意の位置であってよく、一態様において、pは、式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物が主としてモノ及びジ−置換化合物の混合物であることを反映する数平均を表す。
【0009】
式(1)の化合物は、インクジェットプリンティング用インクに配合された場合に高耐光性及び良好な光学濃度を示す印刷物を提供する。
式(1)から得られる金属キレート化合物は、遊離酸又は塩の形態でありうる。好適な塩は、水溶性の、例えばアルカリ金属塩、特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、置換アンモニウム及びそれらの混合塩である。好適なアルカリ金属塩は、ナトリウム又はリチウムを有するもの、アンモニウム及び置換アルキルアンモニウムの塩である。
【0010】
好適なアンモニウム及び置換アンモニウム塩は、式NVのカチオンを有する。式中、各Vは独立してH又は置換されていてもよいアルキル、又はVで表される2個の基がH又は置換されていてもよいアルキルで、Vで表される残りの2個の基が、それらが結合しているN原子と一緒になって5又は6員環を形成する(好ましくはモルホリニル、ピリジニル又はピペリジニル環)。
【0011】
好ましくは、各Vは独立してH又はC1−4アルキル、更に好ましくはH、CH又はCHCH、特にHである。
カチオンの例は、NH、モルホリニウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、(CHH、(CH、H(CH)(CHCH)、CH、CHCH、H(CHCH、CHCHCH、(CHCHN、N(CH、N(CHCH、N−メチルピリジニウム、N,N−ジメチルピペリジニウム及びN,N−ジメチルモルホリニウムなどである。
【0012】
化合物は、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、又は置換アンモニウム塩の形態であるのが特に好適である。なぜならば、これらの塩は、インクジェットプリンティング用インクに配合した場合に高耐光性を示す印刷物を提供することが分かったからである。
【0013】
金属キレート化合物は、金属キレート化合物の製造に関して知られている技術と類似の技術を用いて製造できる。例えば、適切な方法は、遷移金属塩の溶液と式(1)の化合物の溶液を、好ましくは水溶液又は水性溶液の形態で混合することを含む。
【0014】
遷移金属塩が式(1)の化合物と金属キレート化合物を形成するには通常0.5〜24時間で十分である。
式(1)の化合物は、例えば、2−アミノピリジン−N−オキシドをジアゾ化してジアゾニウム塩にし、得られたジアゾニウム塩をスルホン化又は非スルホン化フェナントレンとカップリングさせることによって製造できる。次にN−オキシド官能基を還元して本発明による化合物を得る。
【0015】
ジアゾ化は好ましくは6℃未満の温度、更に好ましくは−10℃〜5℃の範囲の温度で実施される。好ましくは、ジアゾ化は好ましくはpH7未満の水中で実施される。所望の酸性条件を達成するのに希鉱酸、例えばHCl又はHSOが使用されることが多い。
【0016】
そのような化合物の代替の製造法は、フェナントレンキノン(スルホン化又は非スルホン化)と2−ヒドラジノピリジンとの縮合によりアゾフェナントレンを生成させることを含む。これは公知方法を用いてスルホン化し、次いで金属化できる。
【0017】
上記プロセスの生成物は、本明細書中で先に記載したように従来技術によって塩に変換できる。あるいは、該生成物を、反応混合物を好ましくは鉱酸、例えば塩酸を用いて酸性化することによって遊離酸形で単離してもよい。生成物が固体として沈殿する場合はろ過によって混合物から分離すればよい。
【0018】
遷移金属塩は、好ましくは以下の金属、すなわちニッケル、クロム、コバルト、銅、亜鉛、鉄又はマンガンの一つ以上を含む。
好ましくは、遷移金属塩は、ニッケル又は銅、更に好ましくはニッケルを含む。
【0019】
式(1)の化合物は、好ましくは、遷移金属とそれぞれ1:1、2:1、2:2又は2:3の比率、特にそれぞれ1:1又は2:1の比率でキレート結合する。
金属キレート化合物中に存在する式(1)のリガンドが2個以上ある場合、その式(1)のリガンドは同じでも異なっていてもよいが、好ましくはそれらは同じである。
【0020】
式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は1個以上の追加のリガンドを含むこともある。これらのリガンドは有色又は無色であってよく、2個以上存在する場合、それらは同じでも異なっていてもよい。
【0021】
遷移金属塩はニッケル塩が特に好適である。なぜならば、ニッケル塩は得られる化合物に良好な彩度特性をもたらすからである。また、遷移金属は、角括弧内の部分に1:1及び2:1の比率で配位できるのが好適である。
【0022】
式(1)の化合物及び式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は、前述のように、本明細書中に示したもの以外の互変異性体形で存在してもよい。これらの互変異性体も本発明の範囲内に含まれる。
【0023】
式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は、異なる幾何学、例えば8面体又は平面四角形で存在することもある。これらの異なる幾何学形も本発明の範囲内に含まれる。
【0024】
本発明は、式(1)の化合物から得られる2種類以上の金属キレート化合物又はその塩を含む混合物もカバーする。さらに、本発明の金属キレート化合物は、その他の色素、特に国際カラーインデックス(International Color Index)に掲載されているものと混合して、所望に応じてシェード(濃淡)又は他の性質を調整することができる。
【0025】
本発明の第二の側面に従って、(a)本発明の第一の側面による1種類以上の金属キレート化合物;及び(b)液体媒体を含む組成物を提供する。
液体媒体は、好ましくは、
(i)水;
(ii)水と有機溶媒の混合物;又は
(iii)水を含まない有機溶媒
を含む。
【0026】
インクの成分(a)の重量部数は、好ましくは0.01〜30、更に好ましくは0.1〜20、特に0.5〜15、さらに特に1〜5部である。成分(b)の重量部数は、好ましくは99.99〜70、更に好ましくは99.9〜80、特に99.5〜85、さらに特に99〜95部である。(a)+(b)の部数は100であり、ここで述べたすべての部は重量部である。
【0027】
好ましくは、成分(a)は成分(b)中に完全に溶解する。好ましくは、成分(a)は、20℃における成分(b)中の溶解度が少なくとも5%である。これによって、より希薄なインクを製造するのに使用できる濃縮物の製造が可能になり、また貯蔵中に液体媒体の蒸発が起こってもインクの成分(a)の化合物が析出する機会が削減される。
【0028】
液体媒体が水と有機溶媒の混合物を含む場合、水と有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1〜1:99、更に好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20である。
【0029】
水と有機溶媒の混合物中に存在する有機溶媒は、水混和性有機溶媒又はそのような溶媒の混合物であるのが好ましい。好適な水混和性有機溶媒は、C1−6アルカノール、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノール及びシクロヘキサノール;直鎖アミド、好ましくはジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;ケトン及びケトン−アルコール、好ましくはアセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノン及びジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくはテトラヒドロフラン及びジオキサン;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール及びチオジグリコール並びにオリゴ−及びポリ−アルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくはグリセロール及び1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]−エタノール及びエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタム及び1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド及びスルホランなどである。好ましくは、液体媒体は、水と2種類以上、特に2〜8種類の水混和性有機溶媒を含む。
【0030】
特に好適な水溶性有機溶媒は、環状アミド、特に2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン及びN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール;そしてジオールのモノ−C1−4アルキル及びC1−4アルキルエーテル、さらに好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノールである。
【0031】
水と1種類以上の有機溶媒の混合物を含む更なる適切なインク媒体の例は、米国特許第4,963,189号、米国特許第4,703,113号、米国特許第4,626,284号及びEP4,251,50Aに記載されている。
【0032】
液体媒体が水を含まない(すなわち水1重量%未満)有機溶媒を含む場合、該溶媒は、好ましくは30℃〜200℃、更に好ましくは40℃〜150℃、特に50〜125℃の沸点を有する。該有機溶媒は水非混和性、水混和性、又はそのような溶媒の混合物でありうる。好適な水混和性有機溶媒は、本明細書中で先に記載した水混和性有機溶媒のいずれか及びそれらの混合物である。好適な水非混和性溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素;エステル、好ましくは酢酸エチル;塩素化炭化水素、好ましくはCHCl;及びエーテル、好ましくはジエチルエーテル;並びにそれらの混合物などである。
【0033】
液体媒体が水非混和性有機溶媒を含む場合、極性溶媒を含めるのが好ましい。なぜならば、こうすることによって液体媒体における色素の溶解度が増大するからである。極性溶媒の例はC1−4アルコールなどである。前述の好適な選択に照らして考えると、液体媒体が水を含まない有機溶媒の場合、それはケトン(特にメチルエチルケトン)及び/又はアルコール(特にC1−4アルカノール、例えばエタノール又はプロパノール)を含むのが特に好適である。
【0034】
水を含まない有機溶媒は、単一の有機溶媒であっても2種類以上の有機溶媒の混合物であってもよい。媒体が水を含まない有機溶媒の場合、2〜5種類の異なる有機溶媒の混合物であるのが好ましい。これによって、インクの乾燥特性及び貯蔵安定性に良好な制御を提供する媒体の選択が可能になる。
【0035】
好ましくは、本発明の第二の側面による組成物は、インクジェットプリンタでの使用に適切なインクである。
本発明の第二の側面による組成物がインクジェット用インクの場合、金属キレート化合物及びインクの両方とも、望ましくない不純物を除去するために精製できる(好ましくは精製する)。精製のためには従来技術が使用できる。例えば限外ろ過、逆浸透及び/又は透析などである。
【0036】
水を含まない有機溶媒を含むインク媒体は、速い乾燥時間が要求される場合、及び特に疎水性及び非吸収性基材、例えばプラスチック、金属及びガラス上に印刷する場合に特に有用である。
【0037】
特に好適なインクは、
(a)全部で1〜10部の、本発明の第一の側面に記載した通りの金属キレート化合物;
(b)2〜60部、更に好ましくは5〜40部の水混和性有機溶媒;及び
(c)30〜97部、更に好ましくは40〜85部の水
を含む。以上の部はいずれも重量部である。
【0038】
好ましくは、部の合計(a)+(b)+(c)=100である。
インク中の液体媒体が水と有機溶媒の混合物;又は水を含まない有機溶媒を含む場合、インクの成分(a)は、本発明の第一の側面に関連して本明細書中で先に定義した化合物を含みうる。
【0039】
好適な低融点固体媒体は60℃〜125℃の範囲の融点を有する。適切な低融点固体は、長鎖脂肪酸又はアルコール、好ましくはC18−24鎖を持つもの、及びスルホンアミドなどである。本発明の第一の側面の化合物は低融点固体に溶解しうる又はその中に微細に分散しうる。
【0040】
本発明によるインクは、インクジェットプリンティング用インクに従来使用されている追加の成分、例えば、粘度及び表面張力変性剤、腐蝕防止剤、殺生物剤、コゲ削減用添加剤、用紙のカールを削減する皺防止剤及びイオン性又は非イオン性でありうる界面活性剤を含有することもできる。
【0041】
インクのpHは好ましくは4〜11、更に好ましくは7〜10である。
25℃におけるインクの粘度は、好ましくは50cP未満、更に好ましくは20cP未満、特に5cP未満である。
【0042】
本発明によるインクをインクジェットプリンティング用インクとして使用する場合、該インクは好ましくは、500ppm未満、更に好ましくは100ppm未満のハロゲン化物イオンの濃度を有する。
【0043】
また、インクは100未満、更に好ましくは50ppm(100万分の50部)未満の二価及び三価金属(式(1)の化合物に結合しているあらゆる二価及び三価金属イオン又はインクのあらゆるその他の成分以外)を有するのが好適である。ここで、部はインクの総重量に対する重量部のことである。
【0044】
我々は、インクを精製してこれらの望ましくないイオンの濃度を低減することは、特にサーマルインクジェットプリンタにおけるインクジェットプリンティング用ヘッドのノズルの詰まりを削減することを見出した。
【0045】
本発明の第三の側面は、基材上に画像を印刷する方法を提供する。該方法は、本発明の第二の側面に記載のインクをインクジェットプリンタによって基材に適用することを含む。
【0046】
この方法で使用されるインクは好ましくは本発明の第二の側面で定義した通りである。
インクジェットプリンタは、好ましくはインクを液滴の形態で基材に適用する。該液滴は、小オリフィスを通して基材上に吐出される。好適なインクジェットプリンタは、ピエゾエレクトリックインクジェットプリンタ及びサーマルインクジェットプリンタである。サーマルインクジェットプリンタでは、プログラムされた熱のパルスを、オリフィスに隣接する抵抗器(レジスタ)によってインク貯め(リザーバ)のインクに印加することによって、インクを小液滴の形態で基材に向かって吐出させる。その間基材とオリフィスとは相対的運動をする。ピエゾエレクトリックインクジェットプリンタでは、小型水晶の発振によってオリフィスからのインクの吐出を起こす。あるいは、可動式パドル又はプランジャに接続された電気機械式アクチュエータによってインクを吐出させてもよい。これについては、例えば、国際特許出願WO00/48938及び国際特許出願WO00/55089に記載されている。
【0047】
基材は、好ましくは、紙、プラスチック、布地、金属又はガラス、更に好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクタ用スライド又は繊維材料、特に紙である。好適な紙は、酸性、アルカリ性又は中性の特性を有しうる普通紙又は加工紙である。光沢紙は特に好適である。さらに特に写真用紙は好適である。
【0048】
市販紙の例は、HPプレミアムコート紙(HP Premium Coated Paper)、HPフォトペーパー(HP Photopaper)(いずれもHewlett Packard Inc.社製)、スタイラスプロ720dpiコート紙(Stylus Pro 720 dpi Coated Paper)、エプソンフォトクオリティ光沢フィルム(Epson Photo Quality Glossy Film)、エプソンフォトクオリティ光沢紙(Epson Photo Quality Glossy Paper)(Seiko Epson Corp.社製)、キャノンHR101高解像度紙(Canon HR 101 High Resolution Paper)、キャノンGP201光沢紙(Canon GP 201 Glossy Paper)、キャノンHG101高光沢フィルム(Canon HG 101 High Gloss Film)(いずれもCanon Inc.社製)、ウィギンズコンケラー紙(Wiggins Conqueror Paper)(Wiggins Teape Ltd社製)、ゼロックス酸性紙(Xerox Acid Paper)及びゼロックスアルカリ性紙(Xerox Alkaline Paper)(Xerox社製)などである。
【0049】
本発明の第四の側面は、本発明の第一の側面による金属キレート化合物で印刷される、本発明の第二の側面による組成物又はインクで印刷される、又は本発明の第三の側面による方法によって印刷される基材、好ましくは紙、オーバーヘッドプロジェクタ用スライド又は繊維材料を提供する。
【0050】
本発明の第五の側面に従って、チャンバとインクを含むインクジェットプリンタ用カートリッジを提供する。インクはチャンバ内にあり、そして該インクは本発明の第二の側面に記載の通りである。
【0051】
本発明の第六の側面に従って、インクジェットプリンタ用カートリッジを含有するインクジェットプリンタを提供する。インクジェットプリンタ用カートリッジは、本発明の第六の側面で定義の通りである。
【実施例】
【0052】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。実施例中、すべての部及びパーセントは別途記載のない限り重量による。
実施例1
式:
【0053】
【化2】

【0054】
の化合物のニッケルキレートの製造
段階1(a)
フェナントレンキノン(2.08g、0.01mol)と2−ヒドラジノピリジン(1.09g、0.01mol)を撹拌氷酢酸(25ml)に加えた。該混合物を100℃に2時間加熱し、次いで室温に冷却してろ過した。ろ液を減圧下で蒸発させたところタール状物質が残った。この残渣を水の下で粉砕し、得られた固体をろ過によって回収した。該生成物を水洗し、次いで50℃のオーブンで乾燥させ、橙色/赤色固体を得た。
【0055】
段階1(b)
段階(a)で製造したアゾフェナントレン(2.99g、0.01mol)を98%硫酸の氷冷撹拌溶液(35ml)に加えた。反応混合物を100℃に加熱し、さらに2時間撹拌した。該反応混合物を注意深く氷上に注いだ後、氷/水浴で該温度を維持しながら、濃水酸化ナトリウムを用いてpHをpH8に上げた。該混合物を透析して導電率を下げ、ろ過し、ろ液を減圧下で蒸発させることによってスルホン化リガンドを得た。生成物は、オクタデカシリルカラムと0.01Mの酢酸アンモニウム溶液から最終溶液90%アセトニトリル:10%酢酸アンモニウムの傾斜溶離を用いる逆相HPLCによって、モノ−及びジ−スルホン化物の混合物であることが示された。ジ−及びトリ−スルホン化種の相対量は各種に対応するピークから推定した。
【0056】
段階1(c)
酢酸ニッケル四水和物(1.25g、0.005mol)の水(15ml)中溶液を、水(250ml)に溶解した段階1(b)の生成物(4.59g、0.01mol)(pH7)に滴下添加した。該反応混合物を室温で撹拌し、溶液のpHを2M NaOHでpH8に上げた後、透析して導電率を下げた。溶液をろ過し、次いでろ液を減圧下で蒸発することによって標記化合物を得た。
【0057】
比較色素1
比較色素1をEP1270676Aの実施例4に記載のように製造した。該色素の式は以下の通りである。
【0058】
【化3】

【0059】
比較色素2
比較色素2をEP0902064Bの実施例IVに記載のように製造した。該色素の式は以下の通りである。
【0060】
【化4】

【0061】
実施例2:インク及びインクジェットプリンティング
実施例1に記載の色素と比較色素1及び2を、96.5部の液体媒体に各3.5部ずつ溶解することによって対応するインクにそれぞれ変換した。液体媒体は、
5部の2−ピロリドン;
5部のチオジグリコール;
2部のSurfynol(登録商標)465(非イオン性界面活性剤、Air Products Inc.社より入手);
88部の水
を含み、水酸化アンモニウムでpH9.5に調整。
【0062】
このようにして製造したインクを、配合された色素に応じてインク1、比較インク1及び比較インク2と名付けた。
【0063】
インクジェットプリンティング
インク1と比較インク1及び2を、0.45ミクロンのナイロンフィルタを通してろ過した後、シリンジを用いて空のインクジェットプリント用カートリッジに入れた。
【0064】
次に、該インクをHP560Cプリンタを用いてHewlett Packard社のプレミアムプラスフォトペーパー(Premium Plus Photo Paper)とCanon社のプロフェッショナルフォトペーパー(Professional Photo Paper)PR101の両方に、100%及び70%の強度で印刷した。
【0065】
これらのプリントを、Hampden 903 Ozoneキャビネット内で、40℃、相対湿度50%で1ppmのオゾンに24時間暴露することによって耐オゾン性について試験した。また該プリントを、Atlas Ci5000 ウェザロメータ(塗膜耐候性試験装置)内でキセノンアーク灯に100時間暴露することによって耐光性についても試験した。印刷されたインクのオゾン及び光に対する堅牢度は、暴露前後の反射光学濃度(ROD)の差によって判定した。
【0066】
オゾン及び光への暴露前後のプリントの測色は、以下のパラメータにセットしたGretagスペクトロリノ分光光度計を用いて実施した。
測定幾何学: 0°/45°
スペクトル範囲: 400−700nm
スペクトル間隔: 20nm
光源: D65
観測視野: 2°(UE1931)
濃度: ANSI A
外部フィラー: なし
【0067】
耐オゾン性及び耐光性は、プリントのシェード(濃淡)の変化によって評価した。これはプリントのRODロス%によって判定した。数字が小さいほど高い堅牢度を示す。括弧内の数字は70%の強度でのプリントに対応する。結果を表1に示す。
表1
【0068】
【表1】

【0069】
表1から、本発明のインクは、同様の類似物と比較した場合、非常に改善された耐オゾン性及び耐光性を有することが分かる。
【0070】
更なるインク
表A及びBに記載のインクは、実施例1の化合物を色素として用いて製造できる。第2カラム以降に引用されている数字は、関係成分の部数を表す。すべて重量部である。インクは、サーマル又はピエゾインクジェットプリンティングによって紙に適用できる。
【0071】
以下の略号が表A及びBに使用されている。
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2,3−ジオール
CET=セチルアンモニウムブロミド
PHO=NaHPO及び
TBT=ターシャリー(tert)ブタノール
TDG=チオジグリコール
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属塩を式(1):
【化1】

[式中、pは1〜2である]
の化合物又はその塩と接触させることによって得られる金属キレート化合物。
【請求項2】
遷移金属塩がニッケル塩である、請求項1に記載の金属キレート化合物。
【請求項3】
ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、又は置換アンモニウム塩の形態である、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の金属キレート化合物。
【請求項4】
(a)請求項1〜3のいずれか1項に記載の一つ以上の金属キレート化合物;及び(b)液体媒体を含む組成物。
【請求項5】
インクジェットプリンタでの使用に適切なインクである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項4又は請求項5のいずれかに記載のインクであって、
(a)全部で1〜10部の、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属キレート化合物;
(b)2〜60部の水混和性有機溶媒;及び
(c)30〜97部の水
(全ての部は重量部である)を含むインク。
【請求項7】
画像を基材に印刷する方法であって、請求項4〜6のいずれか1項に記載のインクをインクジェットプリンタによって該基材に適用することを含む方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属キレート化合物で印刷される、請求項4〜6のいずれか1項に記載の組成物又はインクで印刷される、又は請求項7に記載の方法によって印刷される基材。
【請求項9】
チャンバ及びインクを含むインクジェットプリンタ用カートリッジであって、インクがチャンバ内にあり、該インクは請求項5又は請求項6のいずれかに記載の通りであるインクジェットプリンタ用カートリッジ。
【請求項10】
インクジェットプリンタ用カートリッジを含有するインクジェットプリンタであって、該インクジェットプリンタ用カートリッジは請求項9に定義の通りである、インクジェットプリンタ用カートリッジ。

【公表番号】特表2006−527273(P2006−527273A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508372(P2006−508372)
【出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002200
【国際公開番号】WO2004/108835
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】