説明

マッサージ方法又はマッサージ料の評価方法

【課題】顔面のシワを予防、又は改善させるための、マッサージ方法及び/又はマッサージ料の評価技術を提供することを課題とする。
【解決手段】顔面のシワを予防、又は改善させるための、マッサージ方法及び/又はマッサージ料の評価技術であって、体幹部に施術されるマッサージに対して、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を施術の前後に計測し、施術前後の筋緊張度の緩和の度合いが大きいほど顔面のシワの予防、及び/又は改善の効果が高いと判別し、また、前記同一手技で、異なるマッサージ料を用いて施術を行い、その施術の前後における、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を計測し、該筋緊張度の緩和の度合いを比較し、指標とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ方法の評価方法及びマッサージ料の評価方法に関する。さらに詳しくは、筋緊張度を計測することを特徴とする、顔面のシワを防ぐ及び/又は弛緩させるマッサージ方法の評価方法及びマッサージ料の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージという行為は、皮膚の血行を促進し、皮膚の新陳代謝を促し皮膚の状態を改善するようなフェイシャルマッサージやエステティックマッサージ、筋肉・筋・関節に直接或いは間接に作用させ、その血行状態の改善や疲労の回復を促すことを目的とするスポーツマッサージのような生理的な効果にのみとどまらず、例えば、心身をリラックスさせるとか心地よくさせるなどの様々な効果があることが長い間示唆されている。しかしながら、マッサージが人体に与える影響は極めて緩和で、また人体そのものが微妙に変化することから、その短期的或いは持続的な効果を計測することが難しく、実際にマッサージが生体に及ぼしている有用な作用を客観的な数値として計測する技術が望まれていた。
【0003】
このような計測・評価技術として、非侵襲的な方法による生体指標を用いることが不可欠であり、例えば、特許文献1では唾液中の免疫グロブリン濃度、特許文献2では皮膚表面温度等の自律神経系バランス、特許文献3では唾液中の副腎皮質ホルモン濃度、特許文献4では脳波のアルファ波、特許文献5では対象部位の立体形状変化の度合い、特許文献6では血中ヘモグロビンの酸素飽和度、また特許文献7では血中酸素濃度や筋硬度等の複合的な指標とする評価方法、等が開示されており、施術の目的に適切な指標の選択が為され、使用されている。一方、筋電位(筋電図)は、筋肉の緊張度の変化を示す数値であり、この測定法は既に確立している。かかる数値は、筋ジストロフィーの診断や電位依存性カルシウムチャネル作用薬のスクリーニングの指標に用いられている(例えば、特許文献8を参照)。その他、筋肉の緊張度の変化の指標として、数多くの研究・発表が行われ、医療やスポーツ領域への応用が盛んであるが、美容や化粧分野域でのメリットが明らかでないことから、その利用は殆ど為されていない状況である。
【0004】
一方、マッサージ方法については、心身へのより高い効果を提供するために、マッサージの装置や道具の検討を初めとして、マッサージ施術の技術やその対象部位についての技術開発が行われている。例えば、特許文献9では非施術者の呼吸リズムに同調させた施術によってリラクゼーションを高める方法、特許文献10では非施術者の心身の症状に対応したツボに対する施術によって症状の改善を図る方法、特許文献11では皮膚構造に基づいて真皮繊維や動静脈血流の方向への施術によって美容効果を高める方法等が開示されており、心身生理機能の利用が重要であることが示唆されてきている。これらのことからも、マッサージ方法を的確に評価する技術が重要であることが明らかである。
【0005】
多くの女性にとって、美の要素として重要なシワや皮膚のハリに代表される皮膚の形態変化は、容貌に及ぼすマイナスの影響が非常に大きいことから、特に深刻な問題である。この為、各種のシワ予防用のための手術方法、化粧料、道具、食品等の技術が開示され、また、シワの形成や抑制のための研究等が行われている。例えば、特許文献12のボツリヌス菌の神経毒を利用した美容治療方法や特許文献13の筋電図を用いた表情ジワ抑制のための筋肉弛緩用化粧料の開示、非特許文献1のシワについての分類、発生機序及び評価技術の総説等が提示されている。しかし、このようなシワに対して手術方法、化粧料や道具ではなく、より手軽で安全で、且つ確実な効果のあるマッサージ方法や技術が望まれていた。しかし、マッサージ方法によるシワ抑制効果は期待されるに拘わらず、単に化粧料やマッサージ料自身の保湿効果や血行促進効果に誘起される体液循環改善に基づくシワ軽減効果に止まっている状況にあった。即ち、シワが、体幹への施術に起因する生理機能の変化に関連することは知られておらず、特に、シワの形成部から遠隔部に存する、体幹の筋肉の緊張度を改善するマッサージによって、顔面筋の緊張が緩和し、顔面のシワを改善できることは今まで全く知られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特許第3499293号公報
【特許文献2】特開平09−047480号公報
【特許文献3】特開平11−023579号公報
【特許文献4】特開平05−300926号広報
【特許文献5】特開2004−113527号公報
【特許文献6】特開2004−129705号公報
【特許文献7】特開2002−224182号公報
【特許文献8】特開2004−125786号公報
【特許文献9】特開2002−126024号公報
【特許文献10】特開2004−188010号公報
【特許文献11】特開2004−195255号公報
【特許文献12】特表2003−505343号公報
【特許文献13】特開2004−277407号公報
【非特許文献1】薬事日報社,化粧品の有用性,2001,p162−177
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況下で為されたものであり、顔面のシワを予防又は改善させるための、マッサージ方法及び/又はマッサージ料の、評価技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況を鑑みて、本発明者らは、顔面のシワを予防、又は改善させるための、マッサージ方法及び/又はマッサージ料の評価技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、体幹部に施術されるマッサージに対して、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を施術の前後に計測し、該筋緊張度の緩和の度合いを指標とすることを特徴とする、マッサージ方法の評価方法によって、顔面のシワを予防、又は改善させるためのマッサージ方法やマッサージ料を評価できることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)顔面のシワを予防、及び/又は改善させる為の、体幹部に施術されるマッサージ方法の評価方法であって、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を施術の前後に計測し、該筋緊張度の緩和の度合いを指標とすることを特徴とする、マッサージ方法の評価方法。
(2)前記評価の指標は、施術前後の筋緊張度の緩和の度合いが大きいほど顔面のシワの予防、及び/又は改善の効果が高いと判別するものであることを特徴とする、(1)に記載のマッサージ方法の評価方法。
(3)前記マッサージに於いて、マッサージ料を介在させることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のマッサージ方法の評価方法。
(4)顔面のシワを予防、及び/又は改善させる為の、体幹部に施術されるマッサージ方法に用いられるマッサージ料の評価方法であって、前記同一手技で、異なったマッサージ料を用い、施術を行い、マッサージの施術前後における、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を計測し、該筋緊張度の緩和の度合いを比較し、指標とすることを特徴とする、マッサージ料の評価方法。
(5)体幹の筋緊張度が筋硬度であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れか1項に記載のマッサージ方法の評価方法。
(6)顔面の筋緊張度が表面筋電位であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れか1項に記載の評価方法。
(7)顔面が前額であることを特徴とする、(6)に記載の評価方法。
(8)体幹の筋緊張度が筋硬度であることを特徴とする、(4)に記載のマッサージ方法の評価方法。
(9)顔面の筋緊張度が表面筋電位であることを特徴とする、(4)に記載の評価方法。
(10)顔面が前額であることを特徴とする、(9)に記載の評価方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顔面のシワを予防、又は改善させるための、体幹部に施術されるマッサージ方法及び/又はマッサージ料の評価技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、顔面のシワを予防、又は改善させるための、マッサージ方法及び/又はマッサージ料の評価技術であって、体幹部に施術されるマッサージに対して、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を施術の前後に計測し、施術前後の筋緊張度の緩和の度合いが大きいほど顔面のシワの予防、及び/又は改善の効果が高いと判別し、また、前記同一手技で、異なるマッサージ料を用いて施術を行い、その施術の前後における、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を計測し、該筋緊張度の緩和の度合いを比較し、指標とすることを特徴とする。即ち、前記筋緊張度の緩和の度合いが大きいほど、顔面におけるシワの改善度の高いマッサージ施術であり、シワ改善のためのマッサージとしては好ましいものであると判別する。ここで、本発明において、体幹部とは、手、足、頭を除いたからだの部位の総称を意味し、マッサージを受けるべき体幹としては、体幹背部が好ましく、背中、肩乃至は首の側面及び背面が好ましく例示できる。体幹部に施術されるマッサージとしては、背中、肩や頚部に対する軽擦、圧迫及び指圧等を行う、図1に示すような手技が好ましい。
【0011】
ここで、筋緊張とは、精神的なストレスや肉体の酷使、内臓の疾患、姿勢の悪さ等の外的要因、或いは食生活の乱れや睡眠不足等によって筋肉の緊張状態が持続し、血液循環やリンパの流れが悪くなり、筋肉、血液、リンパ内に老廃物が蓄積された状態で、そのような状態がさらに神経系を刺激し、筋肉の緊張を促進し、首や肩のこり、頭痛等の身体の変調を引き起こしていると考えられている。
【0012】
筋肉の緊張度合である筋緊張度の客観的に計測方法としては、非侵襲的な方法が望ましく、一般的に身体の部位や症状に対応した計測方法が用いられている。このような計測方法として、例えば、顔面や体幹部位に対しては、多くの筋繊維や筋肉の筋緊張情報を表す表面筋電位計測が例示でき、一方、肩こり等の体幹部の筋肉の状態に対しては、その筋硬度を計測する筋硬度計が例示できる。
【0013】
表面筋電位計としては、例えば、ハラダ・ハイパープレシジョン株式会社の筋電位計測器、日本GEマルケットメディカルシステム(株)のデジタル脳波計アライアンスワークス、株式会社日本メディックスのホルター筋電計ME3000P等が例示できる。表面筋電位法によって筋緊張度を求めるには、図2に示すように前額部等に電極を装着し、座位閉眼での安静時及び眉引き上げ状態での緊張時において、図3のような筋電図が得られることを確認後、同時に脳波計又は筋電計に表示されるか、又は、付属のソフトウェアより求められる筋電図を積分した筋電図積分値(μV)を用いて前頭筋の安静時筋緊張度を算出する。「前頭筋の安静時筋緊張度」=「安静時5秒間筋電図積分値(μV)」/「眉引き上げ状態の5秒間筋電図積分値(μV)」、として定義される。安静時筋緊張度は眉引き上げ状態の筋電図積分値で除することによって個人差が排除され、被験者固有の日常的な筋緊張度が反映されるものと考えられる。
【0014】
前記筋硬度計としては、株式会社井元製作所又はヘンリージャパン(株)の生体組織硬度計PEK−1(図4参照)、有限会社トライオールの組織硬度計ニュートン等が例示できる。筋硬度計PEK−1を用いて肩こり部位の筋硬度を計測するには、図5に示すように解剖学的特徴部位である経穴(ツボ)や頸椎を基準に、肩こり位置を選定することが再現性上が好ましい。得られた筋硬度計の値の平均値で以て、体幹の筋緊張度として定義できる。
【0015】
本発明のマッサージ方法の評価方法においては、評価の蓋然性を担保するために、複数の被験者を用いて評価を行い、有意差(t)検定などの統計学的な解析を行うことが好ましい。この時被験者数は、統計的な処理に耐える程度の例数を用いれば良く、具体的には少なくとも10例、より好ましくは50例以上である。この様な評価は、次に示す手順によって行われる。
(1)パネラーを選別し、安静時筋緊張度(筋電図)などの基礎生理機能を予め測定しておく。
(2)複数のマッサージ方法を比較する場合には、前記基礎生理機能を指標に、基礎生理機能の分散が偏らないように群分けを行う。
(3)施術前に、安静時筋緊張度(筋電図)を計測しておく。
(4)施術者の習熟度の差が無いように、体幹部にマッサージを行い、しかる後に再び安静時筋緊張度(筋電図)の計測を行う。
(5)(3)と(4)との計測値の比較を行い、施術による、群ごとの安静時筋緊張度の平均緩和の度合いを求める。これを統計学的に比較し、安静時筋緊張の緩和の度合いの高いものほど、シワ改善により好適なマッサージ方法であると判別する。
【0016】
前記のマッサージ方法の評価方法を応用して、同一のマッサージ施術で、介在するマッサージ料のみを変えて、マッサージ施術を行い、安静時筋緊張の緩和の度合いを求め、これを比較することにより、マッサージ料の評価、より詳細には、顔面のシワを改善或いは予防するための体幹部に行うマッサージ用のマッサージ料の評価ができる。かかる評価は以下の手順に従って、好ましく行われる。
(1)パネラーを選別し、安静時筋緊張度(筋電図)などの基礎生理機能を予め測定しておく。
(2)前記基礎生理機能を指標に、評価すべきマッサージ料の種類の数と同数の群に、基礎生理機能の分散が偏らないように群分けを行う。この時、1群あたりの例数はマッサージ方法の評価と同様に、統計的な処理に耐える程度の例数を用いれば良く、具体的には少なくとも10例、より好ましくは50例以上である。
(3)施術前に、安静時筋緊張度(筋電図)を計測しておく。
(4)施術者の習熟度の差が無いように、群毎にマッサージ料を変え、マッサージの施術は変えずに、体幹部にマッサージを行い、しかる後に再び安静時筋緊張度(筋電図)の計測を行う。
(5)(3)と(4)との計測値の比較を行い、施術による、群ごとの安静時筋緊張度の平均緩和の度合いを求める。これを統計学的に比較し、安静時筋緊張の緩和の度合いの高いものほど、シワ改善により好適なマッサージ料であると判別する。
【0017】
前記顔面のシワの評価は、安静状態において図6のように前額部からレプリカを採取した後、そのレプリカに対してシワの官能評価及びシワのレプリカ画像解析を行うことによって為される。レプリカ剤としては、有限会社アサヒバイオメッドの反射型シリコンASB−01−WW等が例示できる。シワ官能評価は、予め女性被験者の前額部より採取したレプリカのサンプルを、シワレベルによって図7に示すような5段階のシワスコアの標準画像を作成し、そのシワスコア基準を基に新規に採取したレプリカにシワスコアを割り付けることによって為される。
【0018】
シワのレプリカ画像解析は、一般的な画像解析ソフトウェアを用いて、日本化粧品工業連合会(http://www.jcia.org/)のガイドラインに従って、シワ画像解析パラメータである、面積比率(%)、総シワ平均深さ(mm)、最大シワ平均深さ(mm)、及び最大シワ最大深さ(mm)を求めることができる。このような画像解析ソフトウェアとしては、例えば、三谷商事(株)のWinROOF(登録商標)、有限会社アサヒバイオメッドの反射用レプリカ解析システムASA−03−R、ナノシステム(株)のNanoHunter(登録商標)等が例示できる。
【0019】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれらの実施例にのみ限定されないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0020】
本発明の顔面のシワと顔面部の前頭筋緊張度との関係を確認した。無作為に選抜した健常な女性被験者85名(21〜57才)を対象に、洗顔20分後に有限会社アサヒバイオメッドの反射型シリコンを用いて前額部中央(図6参照)よりレプリカを採取した。予め作成されたシワスコア基準(図7参照)に従って、85名のレプリカを3名の専門評価者によって5段階目視評価を行い、評価が不一致の場合には2名が一致した評価に合わせた。また、そのレプリカを日本化粧品工業連合会のガイドラインに従い、画像解析ソフトウェアを用いてシワ画像解析パラメータである面積比率(%)、総シワ平均深さ(mm)、最大シワ平均深さ(mm)、及び最大シワ最大深さ(mm)を求めた。
【0021】
レプリカ採取した後シールドルームにて、前額部等に皿電極を縦方向1cm間隔で1対の左右2箇所に装着(図2参照)した後、座位閉眼での安静時と眉引き上げ状態での緊張時の2条件の筋電位計測を行い、筋電図積分値(μV)から前頭筋の安静時筋緊張度を算出した。
【0022】
前額部の筋電位計測から得られた前頭筋の安静時筋緊張度と、前額部のレプリカから得られたシワの目視評価値のシワスコア及びそのレプリカからのシワ画像解析パラメータとの関係について相関解析を行い、その結果を表1(シワスコアはSpearman相関係数、画像解析パラメータはPearsonの相関係数)に示す。表1から、安静時筋緊張度と、シワの指標であるシワスコア及びシワ画像解析パラメータとの間には、有意で、且つ非常に高い正の相関関係が認められ、安静時に前頭筋(表情筋)の緊張レベルが高い人ではシワが多いことが分かる。即ち、シワの指標として顔面の筋緊張度や表面筋電位が有効であり、安静時の前頭筋の筋緊張度を低下させることでシワの予防や改善の可能性が示された。
【0023】
【表1】

【実施例2】
【0024】
本発明の顔面のシワと体幹部の筋緊張度との関係を確認した。実施例1の被験者において、肩こりの自覚度を調べるアンケートであるVAS用紙(Visual Analogue Scale、図8参照)を用いて、現在の肩こり度(VAS値、単位cm)を記入させた後、肩部位で肩こりが起こり易い肩峰と第七頸椎の中点部位(図5参照)の筋硬度を生体組織硬度計PEK−1(図4参照)を用いて計測した。
【0025】
肩こりが起こりやすい肩部の筋硬度と、シワ画像解析パラメータ、肩こりの自覚度であるVAS値(cm)及び前額部の筋電位計測から得られた前頭筋の安静時筋緊張度との関係について相関解析を行い、その結果を表2(Pearsonの相関係数)に示す。表2から、肩部の筋硬度と、シワ画像解析パラメータ、肩こりの自覚度の指標であるVAS値及び前頭筋の安静時筋緊張度との間には、有意で、且つ非常に高い正の相関関係が認められ、肩部の筋硬度が高い人では、シワが多く、肩がこり易いことを自覚し、且つ前頭筋の安静時筋緊張度が高いことが分かる。即ち、筋硬度が肩こりの指標として有効であり、筋硬度の低下、即ち肩こりを低下させることでシワの予防や改善の可能性が示された。
【0026】
【表2】

【実施例3】
【0027】
体幹部へのマッサージ施術による顔面のシワと、体幹部及び顔面の筋緊張度への影響を確認した。実施例1及び2と同様の計測手段にて、肩こりに悩んでいる女性被験者11名(41〜53才)を対象に、洗顔20分から、前額部よりレプリカ採取、前額部の表面筋電位計測、肩部の筋硬度計測を行った後、図1に示すような、軽擦、圧迫及び指圧等の背中、肩及び頚部へのマッサージ施術を、オイルタイプのマッサージ料を用い、専門家のエステティシャンに20分間行ってもらった。施術終了後に、施術前と同様に表面筋電位と筋硬度の計測を行った。体幹部へのマッサージは毎週2回で同じ時間帯に実施するようにし、1ヶ月後に初回と同様に施術を行い、施術前後に計測を行った。
【0028】
計測したレプリカ、表面筋電位、筋硬度について解析した結果を表3に示す。表3より、マッサージ施術後に、安静時筋緊張度(緩和度77%)及び筋硬度とも有意(P<0.01)に低下し、また、1ヶ月後に安静時筋緊張度(緩和度70%)と筋硬度に加えて、シワ画像解析パラメータも有意(P<0.01)に低下した。このことから、顔面のシワを予防及び/又は改善させる為の、体幹部に施術されるマッサージ方法及び/又はマッサージ料の評価方法として有効であることが分かる。
【0029】
【表3】

【比較例】
【0030】
<比較例1>
顔面部へのマッサージ施術による顔面のシワと、体幹部及び顔面の筋緊張度への影響を確認した。実施例3と同様の計測手段、実験手順に従い、肩こりに悩んでいる女性被験者10名(45〜50才)を対象に、洗顔20分から、前額部よりレプリカ採取、前額部の表面筋電位計測、肩部の筋硬度計測を行った後、オイルタイプのマッサージ料を用いて顔面への軽擦、圧迫及び指圧等のマッサージ施術を20分間行った。施術終了後に、施術前と同様に表面筋電位と筋硬度の計測を行った。顔面部へのマッサージは毎週2回で同じ時間帯に実施するようにし、1ヶ月後に初回と同様に、施術前後に計測を行った。
【0031】
計測したレプリカ、表面筋電位、筋硬度について解析した結果を表4に示す。表4より、マッサージ施術後に、安静時筋緊張度(緩和度91%)は低下傾向にあるが、1ヶ月後に安静時筋緊張度(緩和度88%)や筋硬度の変化は認められず、シワ画像解析パラメータの変化も認められなかった。このことから、顔面のシワを予防及び/又は改善させる為の、顔面部に施術されるマッサージ方法及び/又はマッサージ料の評価方法として有効でないことが分かる。
【0032】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によって、顔面のシワを予防、又は改善させるための、マッサージ方法及び/又はマッサージ料の評価技術を提供することことができる。その結果、アドバイスやカウンセリングの分野においては、顧客と直接接する場所、例えば、デパート、店頭や顧客の家において、シワ等の肌悩みや美容のカウンセリング等に使用できるマッサージ料やマッサージ施術等の有用な情報を提供でき、また、新規なマッサージ料やマッサージ技術の開発現場においては、より有効で顧客に満足してもらえるマッサージ料やマッサージ施術を開発するための技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】体幹部に施術されるマッサージ方法の例を示す図である(図面代用写真)。
【図2】筋電位計測のための前額部位における電極装着の位置を示す図である。
【図3】安静時及び筋緊張時の筋電図を示す図である(図面代用写真)。
【図4】筋硬度計PEK−1の形状を示す図である(図面代用写真)。
【図5】肩こり部位で筋硬度を計測する位置を示す図である。
【図6】前額部位のシワ評価のためのレプリカ採取を行う位置を示す図である。
【図7】前額部位のシワ官能評価のためのシワスコアの標準画像を示す図である(図面代用写真)。
【図8】肩こり度を調べるVAS(Visual Analogue Scale)の記入用紙を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面のシワを予防、及び/又は改善させる為の、体幹部に施術されるマッサージ方法の評価方法であって、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を施術の前後に計測し、該筋緊張度の緩和の度合いを指標とすることを特徴とする、マッサージ方法の評価方法。
【請求項2】
前記評価の指標は、施術前後の筋緊張度の緩和の度合いが大きいほど顔面のシワの予防、及び/又は改善の効果が高いと判別するものであることを特徴とする、請求項1に記載のマッサージ方法の評価方法。
【請求項3】
前記マッサージに於いて、マッサージ料を介在させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマッサージ方法の評価方法。
【請求項4】
顔面のシワを予防、及び/又は改善させる為の、体幹部に施術されるマッサージ方法に用いられるマッサージ料の評価方法であって、前記同一手技で、異なったマッサージ料を用い、施術を行い、マッサージの施術前後における、体幹及び/又は顔面の筋緊張度を計測し、該筋緊張度の緩和の度合いを比較し、指標とすることを特徴とする、マッサージ料の評価方法。
【請求項5】
体幹の筋緊張度が筋硬度であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のマッサージ方法の評価方法。
【請求項6】
顔面の筋緊張度が表面筋電位であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の評価方法。
【請求項7】
顔面が前額であることを特徴とする、請求項6に記載の評価方法。
【請求項8】
体幹の筋緊張度が筋硬度であることを特徴とする、請求項4に記載のマッサージ方法の評価方法。
【請求項9】
顔面の筋緊張度が表面筋電位であることを特徴とする、請求項4に記載の評価方法。
【請求項10】
顔面が前額であることを特徴とする、請求項9に記載の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−334186(P2006−334186A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163478(P2005−163478)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】