説明

マッサージ機用の駆動機構、マッサージ機、及び、椅子型マッサージ機

【課題】マッサージのための異なる複数の動作を共にギア機構によって行うことができる駆動機構を備えたマッサージ機を提供する。
【解決手段】筒状の固定ケースと76、この内部に回転自在に収納された回転ベース77と、回転軸心C1方向に出退するカム面78aを有している駆動カム78と、回転軸心C1方向に進退自在に設けられた移動ベース89と、駆動カム78のカム面78aとの係合を介して回転軸心C1方向に駆動されこれによって移動ベース89を進退させる従動カム80とを備えている。ギアを有する第一駆動手段81によって回転ベース77を回転させる。また、ギアを有する第二駆動手段82によって駆動カム78のカム面78aを出退させる。これにより、回転ベース77の回転運動、及び、その回転軸心C1方向への移動ベース89の進退動作の両者を生じさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マッサージ機用の駆動機構、この駆動機構によるマッサージ機、及び、このマッサージ機を備えた椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
被施療者に対してマッサージを施すことができるマッサージ機として従来知られているものに、被施療者に対して動作する施療子(揉み玉)を備えたものがある。このようなマッサージ機において、例えば特許文献1のように従来に比べて多様な方向へ施療子を移動させることが可能となる駆動機構が提案されている。
特許文献1に記載されているマッサージ機用の駆動機構は、歯車部を外周面に有している円盤状のベースと、一対の施療子を有している施療部と、これらを連結している伸縮リンクとを備えている。そして、ベースの歯車に小歯車が噛合しており、この小歯車をモータによって回転させることでベースが施療子を有している施療部とともに回転する。
また、この施療部において、各施療子を取り付けている腕部は、当該施療部の本体部に揺動自在として取り付けられており、腕部と本体部との間に空気袋が設けられている。そして、この空気袋をエア源からの空気の給排によって膨縮させることで、一対の施療子を接近又は離反させることができ、これにより一対の施療子によって挟み揉み動作を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−159295号公報(図20参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているマッサージ機の駆動機構は、一対の施療子の回転はモータによって行われており、両施療子による挟み揉み動作は膨縮する空気袋によって行われている。つまり、特許文献1のマッサージ機は、回転及び挟み揉みの二種類のマッサージ動作をそれぞれ行わせるために異なる種類の機構を用いている。このため、駆動機構の構造が非常に複雑となりコストが高くなるという問題点がある。
そこでこの発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、マッサージのための異なる複数の動作を共にギア機構によって行うことができ、また、簡単な構造とすることができるマッサージ機用の駆動機構、この駆動機構によるマッサージ機、及び、これを用いた椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するためのこの発明のマッサージ機用の駆動機構は、筒状の固定ケースと、この固定ケースの内部に回転自在に収納された回転ベースと、この回転ベースの中心部分に設けられ回転軸心方向に出退するカム面を有している駆動カムと、前記回転ベースに対して前記回転軸心方向に進退自在に設けられた移動ベースと、前記駆動カムのカム面との係合を介して前記回転軸心方向に駆動されこれによって前記移動ベースを進退させる従動カムと、前記回転ベースを回転させるためのギアを有する第一駆動手段と、前記駆動カムの前記カム面を出退させるためのギアを有する第二駆動手段とを備えている。
【0006】
この構成によれば、第一駆動手段が有するギアによって、固定ケースに対して回転ベースを回転させることができる。そして、ギアを有する第二駆動手段が駆動カムのカム面を回転軸心方向に出退させると、そのカム面との係合を介して従動カムが回転軸心方向に駆動される。これによって移動ベースを当該回転軸心方向に進退移動させることができる。このように、第一駆動手段及び第二駆動手段がそれぞれ有しているギアによって、回転ベースの回転運動及びその回転軸心方向への移動ベースの進退動作の両者を生じさせることができる。
【0007】
また、このマッサージ機用の駆動機構は、前記回転軸心方向に延設され前記回転ベースに対して自転自在に設けられた自転軸と、この自転軸を自転させるためのギアを有する第三駆動手段とを更に備えているのが好ましい。
これによれば、第三駆動手段は回転ベースに対して自転自在に設けられた自転軸を自転させることができる。この構造によれば、前記移動ベースの進退動作、前記回転ベースの回転、及び、この回転ベースに対する自転軸の自転の各種動作が、ギア機構によって生じる。
【0008】
また、この発明のマッサージ機は、前記マッサージ機用の駆動機構と、前記回転軸心方向に延設され前記回転ベースに対して固定された固定軸と、この固定軸の前記回転軸心方向の被施療者側に揺動自在として枢着されている第一施療子と、前記自転軸の前記回転軸心方向の被施療者側に揺動自在として枢着されている第二施療子と、前記移動ベースの前記回転軸心方向の進退動作を前記第一及び第二施療子の揺動動作に変換するリンク部材とを備えている。
この構成よれば、前記回転ベースが回転することによって、当該回転ベースに固定された固定軸と、当該固定ベースに対して自転自在に設けられた前記自転軸とを、前記固定ケースに対して回転させることができる。つまり、固定軸に枢着された第一施療子と、自転軸に枢着された第二施療子とが前記固定ケースに対して回転する。これにより、第一及び第二施療子によってローリングによるマッサージが行われる。
また、前記移動ベースが回転軸心方向に進退動作することによって、リンク部材が当該進退動作を第一及び第二施療子の揺動動作に変換させることができる。これにより、第一及び第二施療子によって揉みによるマッサージが行われる。
【0009】
また、このマッサージ機において、前記第一及び第二施療子は前記回転軸心を挟んで相互が対向するように配設され、当該第一及び第二施療子は、曲率の異なる部分をそれぞれ表裏に有する同じ揉み玉とされ、当該第一及び第二施療子は、前記回転軸心に対するこの表裏の取り付け方向が入れ替えられて前記固定軸及び前記自転軸にそれぞれ取り付けられているのが好ましい。
これにより、第一及び第二施療子は相互が対向するように配設されているため、両施療子が揺動することによって、被施療者に対して挟み揉みによるマッサージが行われる。そして、第一及び第二施療子は同じ揉み玉とされていることにより、施療子の種類が一種類とされコスト低減が図れる。さらに、第一及び第二施療子は、曲率の異なる部分をそれぞれ有する表裏の取り付け方向が入れ替えられて、固定軸及び自転軸に取り付けられているため、両施療子が同じ揉み玉とされているが、第一及び第二施療子による被施療者に対する当接面積が異なる。したがって、第一及び第二施療子はそれぞれ異なるマッサージ感を与えることができる。
【0010】
また、本発明の椅子型マッサージ機は、座部と、この座部の後部側に設けられた背もたれ部と、前記座部と前記背もたれ部の内の少なくとも一方に備えられたマッサージ装置とを備えており、そのマッサージ装置を前記のマッサージ機とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転ベースの回転運動及び移動ベースの進退動作を共にギア機構によって行うことができ、構造を簡単にすることができる。そして、回転ベースの回転運動と移動ベースの進退動作とによって、二種類のマッサージ動作を生じさせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明のマッサージ機を搭載している椅子型マッサージ機の実施の一形態を示す後方からの斜視図であり、図2はその側面図である。
この椅子型マッサージ機は、上面が被施療者を着座させる座面3aとされた座部3と、この座部3の後部に設けられた背もたれ部4と、座部3の前部に設けられた脚載せ部5と、座部3の左右両側に設けられて座部3と背もたれ部4と脚載せ部5とを床面に対して支持している左右一対の脚部16とを備えている。そして、座部3と背もたれ部4と脚載せ部5の少なくとも一つに、被施療者に対してマッサージを施すことができるマッサージ機が設けられている。
【0013】
背もたれ部4にガイド通路6が形成されており、このガイド通路6にマッサージユニット8が移動自在に設けられている。また、この椅子型マッサージ機では、ガイド通路6は背もたれ部4の内部に左側と右側に振り分けて左右一対配置されており、左右のガイド通路6a,6bは背もたれ部4の長手方向に沿って延設されている。これに対応して、マッサージユニット8は左右一対設けられている。そして、椅子型マッサージ機が備えている移動機構(図示せず)が、これらのマッサージユニット8a,8bを各ガイド通路6a,6bに沿ってそれぞれ独立して移動させることができる。また、前記ガイド通路6a,6bは背もたれ部4のみならず、座部3と脚載せ部5の内部にも延伸して設けられている。したがって、マッサージユニット8a,8bのそれぞれは、背もたれ部4から座部3、さらに、脚載せ部5の内部に移動することができる。
【0014】
なお、これらマッサージユニット8a,8bのそれぞれは、図示しないが、フレームを有しており、このフレームに本発明のマッサージ機57(図3参照)が搭載されている。また、フレームの四隅にはそれぞれローラが回転自在に取り付けられている。これらローラの少なくとも一つが回転駆動することで前記ガイド通路6に沿ってマッサージユニットは移動することができる。これについて具体的に説明すると、図示しないが、四個の前記ローラのうちの少なくとも一つが、その外周面に歯が形成されてピニオンを構成している。また、前記ガイド通路6a,6bにはこのピニオンに噛み合うラック部が形成されている。そして、マッサージユニット8に搭載したモータの回転を減速機構を介して前記ピニオンに伝達し、ピニオンを回転させることでマッサージユニット8をガイド通路6に沿って移動させている。
【0015】
図3は本発明のマッサージ機の実施の一形態を示す斜視図であり、図4はその要部を示す斜視図である。また図5はこのマッサージ機の断面側面図である。
まず、このマッサージ機57の全体構成について説明する。
マッサージ機57は被施療者をマッサージするための施療子(揉み玉)と、この施療子を駆動するための駆動機構とを備えている。本発明の施療子は、複数個の第一施療子と、この第一施療子より少ない個数の第二施療子とからなっている。なお、図に示している施療子は、二個の第一施療子1a,1bと、一個の第二施療子2とからなる。
そして本発明のマッサージ機57は、前記駆動機構として、これら第一施療子1a,1b及び第二施療子2を互いに接近又は離反させる揉み駆動機構62(図8参照)を備えている。なお、図8は本発明のマッサージ機57が備えている機構の概略を示しているブロック図である。
【0016】
図3と図4において、二個の第一施療子1a,1bは隣り合わせで並んで配設されており、第二施療子2はこれら第一施療子1a,1bと対向して設けられている。これにより、前記揉み駆動機構62が第一施療子1a,1b及び第二施療子2を互いに接近又は離反させる動作を行わせることによって、第一施療子1a,1bは人の手の親指以外の指(人差し指と中指)に見立てられるとともに、第二施療子2は親指に見立てられ、これら三個の施療子によって挟み揉みによるマッサージが可能となる。つまり人の手によるマッサージにより近似した好適なマッサージを行うことができる。
【0017】
また、このマッサージ機57は、第一及び第二施療子を駆動させる駆動機構として、図5において、これら第一施療子1a,1b及び第二施療子2を軸心C1(回転軸心)回りに回転させる回転駆動機構61を備えている。これにより、人の手の指に見立てられた第一施療子1a,1b及び第二施療子2は、被施療者に対して一体回転するローリングマッサージが可能となる。また、図5の状態から、これら施療子が回転駆動機構61によって所定角度(被施療者側からマッサージ機57を軸心方向に見て反時計回りに90°)回転した状態を図6に示している。
【0018】
さらに、図5において、このマッサージ機57は、前記第一施療子1a,1b及び第二施療子2を互いに接近又は離反させる揉み駆動機構62以外に、駆動機構として、第二施療子2がこの接近又は離反以外のより複雑なマッサージ運動を行うように駆動する自転駆動機構63を備えている。この自転駆動機構63によって第二施療子2に行わせる複雑なマッサージ運動は、被施療者(人体)に対して第二施療子2を円軌道に沿って回転させる捏ね揉み動作とすることができる。具体的には、自転駆動機構63は、第二施療子2が取り付けられている自転軸70aを、その軸心(回転軸心)C2回りに自転させる構成とされている。これによれば、人の手の親指に見立てられた第二施療子2は、被施療者に対して円軌道を描く捏ね揉みによるマッサージが可能となる。なお、自転軸70aの軸心C2と軸心C1とは平行とされている。
また、第二施療子2の円軌道は、マッサージ機の基準軸心C1(軸線)と平行な軸線回りの場合と、当該基準軸心C1と交差する傾いた軸線回りの場合とがある。これは、後述するが、複数の転動体97を有する軸受部の中心線を軸心C1(軸心C2)に対して傾けた状態としているためである。そして、この円軌道を傾いた軸線回りとした場合、被施療者の身体に対する第二施療子2の距離を変化させることができるため、当該第二施療子2によるマッサージ力(押圧力)を変化させることができる。
以上において、本発明のマッサージ機の駆動機構は、第一施療子1a,1b及び第二施療子2を互いに接近又は離反させる揉み駆動機構62、第一施療子1a,1b及び第二施療子2を一体として軸心C1回りに大きく回転させる回転駆動機構61、及び、第二施療子2を小さく回転させる自転駆動機構63とを備えている。
【0019】
次に、本発明のマッサージ機が備えている前記駆動機構について具体的に説明する。
図5と図6において、駆動機構は、円筒状の固定ケース76と、この固定ケース76の内部に収納されている円筒状の回転ベース77と、この回転ベース77の中心部分に設けられている駆動カム78と、回転ベース77に対して軸心C1方向に進退自在に設けられた移動ベース89と、前記駆動カム78に隣接して回転ベース77の中心部分に設けられている従動カム80とを備えている。さらに、この駆動機構は、回転ベース77を軸心C1回りに回転させるための第一駆動手段81と、駆動カム78を軸心C1方向に進退動作させるための第二駆動手段82とを備えている。さらに、この駆動機構は、軸心C1方向に延設され回転ベース77に対して自転自在に設けられた自転軸70aと、この自転軸70aを自転させるための第三駆動手段83とを備えている。
【0020】
固定ケース76は軸心C1を中心とする円筒状であり、この固定ケース76の施療子側と反対側の部分に板状のフランジ部76aが固定されている。このフランジ部76aに、第一駆動手段81、第二駆動手段82、及び、第三駆動手段83がそれぞれ備えているモータ91,98,96が固定されている。
固定ケース76の内部において、軸心C1を中心とする回転軸92が当該固定ケース76に自転自在に取り付けられている。さらに、この回転軸92の外周側に軸受を介して円筒状の回転筒93が自転自在として設けられている。この回転筒93は軸心C1を中心としている。そして、この回転筒93のさらに外周側に軸受を介して前記回転ベース77が自転自在として設けられている。回転ベース77は軸心C1を中心としている。これにより、回転ベース77は固定ケース76の内部に回転自在に収納された状態となる。
【0021】
第一駆動手段81は、回転ベース77を軸心C1回りに回転させるためのギア部84を有している。ギア部84は、回転ベース77の小径部77aに外嵌固定されているギア84aと、これに噛合するウォーム84bとを有している。そして、第一駆動手段81が有しているモータ91からの回転駆動力がこのウォーム84bに伝達される。このモータ91の回転により、回転ベース77を軸心C1回りに回転駆動させることができる。なお、モータ91とウォーム84bの軸(図示せず)との動力伝達はベルトによって行われている(図3参照)。
【0022】
駆動カム78は前記回転筒93に外嵌固定されている。駆動カム78は厚肉の円筒部材とされており、施療子側の端面が軸心C1に対して傾斜しているカム面78aとされている。
そして、第二駆動手段82は、この駆動カム78のカム面78aを軸心C1方向に出退させるためのギア部85を有している。ギア部85は、回転筒93に外嵌固定されているギア85aと、これに噛合するウォーム85bとを有している。そして、第二駆動手段82が有しているモータ98からの回転駆動力がこのウォーム85bに伝達される。このモータ98の回転によりギア部85を介して回転筒93が回転し、回転筒93と共に駆動カム78が軸心C1回りに回転する。これにより駆動カム78のカム面78aを軸心C1方向に出退させることができる。なお、モータ98とウォーム85bの軸(図示せず)との動力伝達はベルトによって行われている(図3参照)。
【0023】
そして、従動カム80は駆動カム78のカム面78aに隣接して設けられている。従動カム80は厚肉の円筒部80aと、この円筒部80aから連続して施療子側へ延伸しているアーム部80bとを有している。円筒部80aは軸心C1方向に移動自在とされて回転筒93に外嵌している。なお、この従動カム80は回転方向に拘束されている。また、この従動カム80の駆動カム78側の端面は、当該駆動カム78のカム面78aと接触するカム面80cとされている。このカム面80cについても軸心C1に対して傾斜する面とされている。また、従動カム80のアーム部80bは、施療子側へ延びるバー部材とされており、移動ベース89と連結固定されている。これにより、移動ベース89は従動カム80とともに、回転ベース77に対して軸心C1方向に進退自在とされている。
【0024】
そして、前記第二駆動手段82の駆動により、駆動カム78のカム面78aは軸心C1方向へ出退動作する。これにより、従動カム80は、当該駆動カム78のカム面78aとの係合を介して、軸心C1方向に進退駆動し、従動カム80が移動ベース89を軸心C1方向に進退させることができる。なお、駆動カム78のカム面78aの頂部と従動カム80のカム面80cの頂部とが接触した状態で、移動ベース89は回転ベース77から最も離れた状態となる。また、駆動カム78のカム面78aの頂部が従動カム80のカム面80cの低部と接触した状態で、移動ベース89は回転ベース77に最も接近した状態となる。
【0025】
図5において、前記自転軸70aは回転ベース77内において軸受を介してその軸心C2回りに自転自在に取り付けられており、かつ、回転ベース77に軸心C2方向の移動が規制されて取り付けられている。また自転軸70aは駆動カム78の外周側に位置している。
そして、第三駆動手段83は、自転軸70aをその軸心C2回りに回転させるための第一ギア部86と、第二ギア部87とを有している。第一ギア部86は回転軸92の施療子側である一端部側に設けられており、第二ギア部87は回転軸93の他端部側に設けられている。
【0026】
第一ギア部86は、回転軸92に外嵌固定されているギア86aと、これに噛合するとともに自転軸70aに外嵌固定されているギア86bとを有している。第二ギア部87は、回転軸92に外嵌固定されているギア87aと、これに噛合するウォーム87bとを有している。そして、第三駆動手段83が有しているモータ96からの回転駆動力がこのウォーム87bに伝達される。このモータ96の回転により、第二ギア部87を介して回転軸92が軸心C1回りに回転し、第一ギア部86を介して自転軸70aが軸心C2回りに自転することができる。さらに、この自転軸70aの自転駆動は、回転ベース77が軸心C1回りに回転しながらであっても可能となる。なお、モータ96とウォーム87bの軸(図示せず)との動力伝達はベルトによって行われている(図3参照)。
【0027】
図6において、マッサージ機57は、更に、軸心C1方向に延設され回転ベース77に対して固定された二本の固定軸70bを備えている。
すなわち、回転ベース77は、軸心C1に直交する方向の環状の中間底壁部77bと、この中間底壁部77bを挟むように配設されている筒状の小径部77aと筒状の大径部77cとを有しており、二本の固定軸70b及び一本の自転軸70aの合計三本が、突出部材として、前記中間底壁部77bから軸心C1方向へ突出して設けられている。これら突出部材の数は施療子の数に対応している。また、突出部材(固定軸70b及び自転軸70a)はまっすぐな円柱部材とされており、その基端部側が回転ベース77に取り付けられており、その先端部側において移動ベース39を貫通している。つまり、回転ベース77はこれら突出部材を一体として取り付けているベース部材とされている。
【0028】
そして、これら突出部材の先端部側に前記第一施療子1a,1b及び第二施療子2の内の一つがそれぞれ揺動自在として枢着されている。具体的には、二本の固定軸70bのそれぞれに第一施療子1a,1bが枢着され、単一の自転軸70aに第二施療子2が枢着されている。これにより、突出部材の突出方向が被施療者側へ向かう方向とされている。さらに、その突出方向(軸心方向)は、回転ベース77が有している中間底壁部77bの面に垂直な方向、すなわち、中間底壁部77bの法線方向(軸心C1方向)に平行な方向とされている。
【0029】
図5において、一対の第一施療子1a,1bはそれぞれ第一の固定部材67aに固定されている。そして、この固定部材67aが固定軸70bの先端部に固定した取付部70dに、ピン69を介して、揺動自在に枢着されている。そして、第二施療子2は第二の固定部材67bに固定されている。そして、この固定部材67bが自転軸70aの先端部に固定した取付部70cに、ピン75を介して、揺動自在に枢着されている。
【0030】
そして、プレート状(平板状)の移動ベース89は、回転ベース77と前記複数の施療子との間で被施療者側へ進退自在に設けられており、その方向に駆動される。この移動ベース89の進退駆動の方向は軸心C1に平行な方向とされており、進退駆動は、第二駆動手段82の駆動による駆動カム78の動作によって従動カム80を介して行われる。
前記自転軸70a及び固定軸70bは移動ベース89をその板厚方向に貫通している。そして、移動ベース89が自転軸70a及び固定軸70bにガイドされてスムーズに直線移動するように構成することができる。
【0031】
図4において、更に、このマッサージ機57は、移動ベース89と第二施療子2との間、及び、移動ベース89と第一施療子1a,1bとの間にそれぞれ設けられているリンク部材72a,72bを備えている。
具体的に説明すると、第一施療子1a,1b側において、一つの第一施療子(固定部材67a)を挟んでリンク部材72bは一対設けられており、それぞれが直線部材とされている。リンク部材72bの一端部が移動ベース89の外縁部に、ピン94を介して、揺動自在に枢着されており、その他端部が第一施療子1a,1bをそれぞれ固定している固定部材67aに、ピン68を介して、揺動自在に枢着されている。
【0032】
また、第二施療子2側において、リンク部材72aは第二施療子2(固定部材72a)を挟んで一対設けられており、それぞれが直線部材とされている。リンク部材72aの一端部が移動ベース89側に、ピン95を介して、揺動自在に枢着されており、その他端部が第二施療子2を固定している固定部材67bに、ピン74を介して、揺動自在に枢着されている。なお、このリンク部材72aは、後述する回転リンク73に揺動自在に枢着されており、リンク部材72aは、当該回転リンク73を介して移動ベース89に対して揺動自在とされている。
【0033】
以上より、第一と第二の各施療子をそれぞれ固定している固定部材67a,67bは、回転ベース77から被施療者側に突出している突出部材としての固定軸70b、自転軸70aのそれぞれに揺動自在として枢着されているとともに、進退駆動する移動ベース89側のリンク部材72b,72aとも枢着されている。
【0034】
また、図4と図5において、自転軸70aについてはその軸心C2回りに自転することで、先端部側に取り付けた第二施療子2を当該軸心C2回りに回転させることができる。そこで、この第二施療子2を軸心C2回りに回転させるために、移動ベース89上に回転自在とされている回転リンク73が設けられており、この回転リンク73に前記リンク部材72aが枢着されている。そして、回転リンク73とリンク部材72aとともに第二施療子2と自転軸70aが回転する。すなわち、回転リンク73は、移動ベース89と進退運動はともにするが、同移動ベース89に対して軸心C2側を中心として相対回転可能となるように移動ベース89に連結されている。
【0035】
図5により回転リンク73についてさらに説明する。
移動ベース89上において、環状部材89bが自転軸70aに外嵌して設けられている。なお、自転軸70aは環状部材89bに対して回転自在とされている。そして、回転リンク73は、この環状部材89に転動体(円筒ころ)97を介して回転自在として設けられている取付部73aと、リンク部材72aと枢着されている枢着部73bとを有している。つまり、回転リンク73の取付部73aは、移動ベース89側の環状部材89bに対して回転自在に支持されている。そして、自転軸70aに枢着されている第二施療子2(固定部材67b)と移動ベース89上に設けられた回転リンク73の枢着部73bとが、リンク部材72aで連動連結されている。
【0036】
これによれば、第二施療子2を固定している固定部材67bとリンク部材72aとを介して自転軸70aと連結されている回転リンク73は、移動ベース89に対して相対回転可能となるように構成される。このため、自転軸70aはその軸心C2回りに自転することができる。これにより、第三駆動手段83の駆動によって、第二施療子2を枢着している自転軸70aを自転させることができ、当該第二施療子2は軸心C2回りに回転動作し被施療者に対して捏ね揉みによるマッサージを行うことができる。
【0037】
また、第二駆動手段82の駆動によって、移動ベース89が進退駆動し、回転リンク73は当該移動ベース89とともに進退運動する。第二施療子2を固定している固定部材67bと、進退運動する回転リンク73とがリンク部材72aで連動連結されているため、第二施療子2を自転軸70aとの枢着軸心(ピン75)を中心として揺動させることができる。さらに、前記移動ベース89の進退駆動によって、当該移動ベース89と、第一施療子1a,1bを固定している固定部材67aとがリンク部材72bで連動連結されているため、第一施療子1a,1bを固定軸70bとの枢着軸心(ピン69)を中心として揺動させることができる。
これにより第一施療子1a,1bと第二施療子2とは被施療者に対して挟み揉みによるマッサージを行うことができる。
【0038】
また、回転リンク73の取付部73aは、移動ベース89側の環状部材89bに対して、軸心C2に対して直交する面上を回転するように構成されないで、軸心C2に直交する面に対して傾斜した面上を回転する構成とされている。したがって、回転リンク73は、軸心C2に傾斜した面に沿って回転することとなる。これによれば、自転軸70aの回転によって、第二施療子2を軸心C2回りに回転させながら、当該第二施療子2と回転ベース77との間の距離が変化することとなり、第二施療子2による被施療者に対する接触強さが変化する。
【0039】
以上のように、このマッサージ機が有している自転駆動機構63は、第三駆動手段83と、この第三駆動手段83の第二ギア部87の駆動によって軸心C1回りに回転する回転軸92と、軸心C2回りに自転自在とされている自転軸70aと、回転軸92から回転動力を自転軸70aに伝達させる第三駆動手段83の第一ギア部86とを有して構成されている。この自転駆動機構63によれば自転軸70aを自転させることができ、自転軸70aの先端部側に取り付けられている第二施療子2を軸心C2回りに回転させることができる。これにより、第二施療子2は捏ね揉みによるマッサージ動作が可能となる。
この捏ね揉み動作は、自転軸70aの軸心C2回りの自転によって行われる運動から得られるものであるため、第二施療子2に捏ね揉み動作をさせるための構造が簡素化できる。
【0040】
また、このマッサージ機が有している前記揉み駆動機構62は、第二駆動手段82と、この第二駆動手段82のギア部85の駆動によって軸心C1回りに回転する回転筒93と、この回転筒93と共回りしてカム面78aを出退させる駆動カム78と、この駆動カム78に応じて軸心C1方向に進退動作する従動カム80と、従動カム80と連結されており共に進退直線移動する移動ベース89と、この移動ベース89の進退直線運動を第一及び第二施療子の揺動運動に変換するリンク部材72a,72bとを有して構成されている。この揉み駆動機構62によって第一及び第二施療子を揺動させ、相互を接近又は離反させることができ、第一及び第二施療子は挟み揉みによるマッサージ動作が可能となる。
【0041】
さらに、この揉み駆動機構62によれば、一台の移動ベース89の進退駆動によって複数個の施療子を同時に揺動させることができ、これら施療子によって挟み揉みによるマッサージを行わせることができる。また、移動ベース89の進退運動をリンク部材72a,72bを介して各施療子の揺動運動に変換しているため、各施療子(固定部材67a,67b)の揺動軸心の方向を変更することによって、各施療子の揺動方向を任意にかつ簡単に設定できる。さらに、施療子の数を三個よりも増加させても共通の一台の移動ベース89から動力が得られるため、施療子の数が増えても構造の簡素化が可能となる。
【0042】
また、このマッサージ機が有している前記回転駆動機構61は、第一駆動手段81を有して構成されており、この回転駆動機構61によれば、第一駆動手段81のギア部84の駆動によって、回転ベース77を固定ケース76に対して軸心C1回りに回転させることができる。そして、回転ベース77が回転することによって、当該回転ベース77に固定された固定軸70bと、当該固定ベース77に対して自転自在に設けられた自転軸70aとを、軸心C1回りに回転させることができる。つまり、固定軸70bに枢着された第一施療子1a,1bと、自転軸70aに枢着された第二施療子2とが前記固定ケース76に対して軸心C1回りに回転する。これにより、第一及び第二施療子によってローリングによるマッサージが行われる。
また、回転駆動機構61による回転ベース77の軸心C1回りの回転は、時計回り方向又は反時計回り方向へ360°回転させ、これを連続させたり、時計回り方向へ所定角度回転させその後反対の反時計回り方向へ所定角度回転させ、これを繰り返す動作をさせたりすることができる。
【0043】
このマッサージ機57によって行われる挟み揉みによるマッサージ運動についてさらに説明する。図7は軸心C1方向に沿って施療子を見た図である。
図7において、複数個の第一施療子1a,1bによって施療子群が構成されており、前記揉み駆動機構は、この施療子群と単一の第二施療子2とを互いに接近又は離反させるとともに、その接近又は離反運動に際して当該施療子群の内の第一施療子1a,1b同士も互いに接近又は離反させるように駆動する構造とされている。すなわち、施療子群と第二施療子2とが互いに接近又は離反すると同時に、複数個の第一施療子1a,1b同士が互いに接近又は離反するようにマッサージ機57は構成され、また、各施療子の揺動方向が設定されている。
第一施療子1a,1b及び第二施療子2は、軸心C1を中心として当該軸心C1を周方向から囲むように配置されており、第一施療子1a,1b及び第二施療子2は揺動によって軸心C1側に向かって接近し又はこの軸心C1側から離れる揺動を行うことができるように構成されている。
【0044】
これについて図5と図7により具体的に説明すると、第一施療子1a,1bをそれぞれ取り付けている各固定部材67aにおいて、この固定部材67aとリンク部材72bとを枢着しているピン68が、当該固定部材67aと固定軸70b側とを枢着しているピン69よりも、軸心C1から離れた位置とされている。そして、第一施療子1a,1bの揺動方向は、第二施療子2に接近又は離反する方向とされている。
さらに、第二施療子2を取り付けている固定部材67bにおいて、この固定部材67bとリンク部材72aとを枢着しているピン74が、当該固定部材67bと自転軸70a側とを枢着しているピン75よりも、軸心C1から離れた位置とされている。そして、第二施療子2の揺動方向は、軸心C1に接近又は離反する方向とされている。
また、軸心C1の方向に沿って施療子を見た場合に(図7)、第一及び第二施療子のそれぞれは、当該軸心C1から放射状に延びる複数の直線上に配置されている。
【0045】
この構成によれば、複数個の第一施療子1a,1bからなる施療子群と、単一の第二施療子2が接近又は離反して挟み揉みを行うに当たって、複数個の第一施療子1a,1b同士も互いに接近又は離反するので、被施療者に対して人の手によるマッサージにより近似した好適な挟み揉みによるマッサージを行うことができる。
また、軸心C1の方向に沿って施療子を見た場合において、第一施療子1aの動作方向の直線と、第一施療子1bの動作方向の直線とは、平行とすることもできる。
【0046】
さらに、この揉み駆動機構は、第二施療子2の接近又は離反のストロークが第一施療子1a,1bの同ストロークよりも大きくなるように駆動させる機能を有している。これは、第二施療子2の揺動角度が第一施療子1a,1bの揺動角度よりも大きくなるように構成することで実現できる。具体的には、図5において、第二施療子2側における第一のピン74と第二のピン75との間隔が、第一施療子1a,1b側のそれぞれにおける第一のピン68と第二のピン69との間隔よりも小さく設定されている。これにより、第一及び第二施療子を揺動させるための移動ベース89の進退ストロークが同じであっても、第一及び第二施療子のストロークが相違する。
以上より、親指に見立てられた第二施療子2のストロークが、親指以外の指に見立てられた第一施療子1a,1bのストロークよりも大きくなり、親指を大きく動かして行う人の手によるマッサージにより近いマッサージ感を達成することができる。
【0047】
第一施療子1a,1b及び第二施療子2は同じ形状、同じ大きさの揉み玉とされている。そして、各施療子は、曲率の異なる部分をそれぞれ表裏に有する形状とされている。そして、図7に示しているように、第一施療子1a,1b及び第二施療子2は軸心C1を挟んで相互が対向するように配設されている。第一施療子1a,1bと第二施療子2とは、軸心Cに対するこの表裏の取り付け方向が入れ替えられて、固定軸70b及び自転軸70aにそれぞれ取り付けられている。つまり、第一施療子1a,1b及び第二施療子2は同じ形状、同じ大きさとされているが、図7に示している基本状態で、第一施療子1a,1bと第二施療子2とでは、軸心C1に向かう面が異なるようにして取り付けられている。なお、前記基本状態とは、第二施療子2の軸心C2回りの回転位置のうち、第二施療子2が軸心C1から最も離れた位置にある状態をいう。
【0048】
これによれば、第一施療子1a,1b及び第二施療子2は相互が対向するように配設されているため、両施療子が揺動することによって、被施療者に対して挟み揉みによるマッサージが行われる。そして、第一及び第二施療子は、曲率の異なる部分をそれぞれ有する表裏の取り付け方向が入れ替えられて、固定軸70b及び自転軸70aに取り付けられているため、両施療子が同じ揉み玉とされているが、第一及び第二施療子による被施療者に対する当接面積が異なる。したがって、第一及び第二施療子はそれぞれ異なるマッサージ感を与えることができる。さらに、第一及び第二施療子は同じ揉み玉とされていることにより、施療子の種類が一種類とされコスト低減が図れる。
【0049】
さらに本発明の揉み駆動機構と自転駆動機構とによれば、第一施療子1a,1b及び第二施療子2は互いに接近又は離反する挟み揉み動作をし、さらに、第二施療子2がこの接近又は離反以外のより複雑なマッサージ運動、すなわち捏ね揉みによるマッサージ運動を行うことができる。したがって、このマッサージ機57は被施療者に対して変化に富んだマッサージが可能となる。
さらに、これら駆動機構によって施療子に挟み揉み動作と捏ね揉み動作、又は、これらの内の一方の動作をさせながら、回転駆動機構によって、第一及び第二施療子を一体的に回転させるローリング動作をさせることができ、より一層被施療者に対して変化に富んだマッサージが可能となる。
【0050】
また、このマッサージ機57は、第一施療子1a,1b及び第二施療子2の接近又は離反によって被施療者を挟み込む通常の揉み動作を行いながら、第二施療子2が被施療者に対して捏ね揉み動作をすることができるので、同じ患部に対して挟み揉み動作と捏ね揉み動作による複合的なマッサージを行うことができる。そして、マッサージ機57がこの複合的なマッサージを施療子に行わせるために、マッサージ機57は、揉み駆動機構(第二駆動手段82)及び自転駆動機構(第三駆動手段83)を同時に動作させる制御手段10(図8参照)を更に備えている。
【0051】
挟み揉み動作のために、第一施療子1a,1bと第二施療子2との揺動の周期は同じとされており、その周期は2〜4秒に設定されるのが好ましい。また、第二施療子2による捏ね揉み動作の周期、すなわち回転周期は2〜4秒に設定されるのが好ましい。
そして、前記複合的なマッサージとして同じ患部に対して行う挟み揉み動作と捏ね揉み動作はいずれも揉み動作であるから、概ね同じ周期で動作させることが好ましい。具体的には、両者の周期は2〜4秒に設定されるのが好ましい。
【0052】
また、捏ね揉み動作における第二施療子2の回転動作において、自転軸70aを中心とする回転軌跡の直径は50mm〜60mm程度に設定されるのが好ましい。また、自転軸70aの軸心C2に対して傾斜して回転するように設けられている前記回転リンク73によって、第二施療子2を当該軸心C2方向に沿って移動させた場合の移動ストロークは5mm〜10mm程度に設定されるのが好ましい。
また、挟み揉み動作における第一及び第二施療子の揺動動作において、軸心C1に直交する方向の当該第一及び第二施療子の移動距離は、15mm〜25mmに設定されるのが好ましい。
【0053】
また、以上本発明が備えている回転駆動機構61、揉み駆動機構62及び自転駆動機構63は、図8に示しているように、制御手段10による制御によって動作することができる。つまり、制御手段10は、回転駆動機構61が有している第一駆動手段81、揉み駆動機構62が有している第二駆動手段82、及び、自転駆動機構63が有している第三駆動手段83のそれぞれに対して動作信号を与えることができる。
【0054】
自転駆動機構63がさらに備えている機能について説明する。
図5において、上記のとおり自転駆動機構63が連続的に駆動することによって、第二施療子2を連続的に回転させ被施療者に対して捏ね揉みが可能となるが、この自転駆動機構63が有しているその他の機能としては、第二施療子2の第一施療子1a,1bに対する接近又は離反する方向を変化させる方向切り替え機構としての機能がある。
【0055】
すなわち、この方向切り替え機構は、第二施療子2が先端部に取り付けられた自転軸70aを自転させることによって、当該第二施療子2の接近又は離反する方向を変更させることができる。
この方向切り替え機構による第二施療子2の動作を具体的に説明すると、図7の状態から自転軸70aをその軸心C2回りに所定角度θだけ反時計回りに回転させると、第二施療子2は破線によって示されている位置に変位する。これにより、第二施療子2の揺動方向は、図7の軸心C1に向かう左右方向から、一方側(図7の右側)の第一施療子1a側へ向かう斜め方向に変化する。この状態で自転軸70aを静止させ、揉み駆動機構62(第二駆動手段82)が動作することによって第一及び第二施療子に挟み揉み動作を行わせることで、異なる挟み揉み方向のマッサージが可能となる。
【0056】
このように、方向切り替え機構を間欠的に動作させることで当該自転軸70aを所定角度ずつ自転させることができる。したがって、第二施療子2の揺動方向の向きを刻々と変化させることができ、第二施療子2の第一施療子1a,1bに対する接近又は離反する方向を変更することができる。これにより、このマッサージ機57は被施療者に対して変化に富んだマッサージが可能となる。さらに、第二施療子2の接近又は離反させる方向を変化させることによって、被施療者に対する第二施療子2の押圧度合いを微妙に変化させることが可能となる。これにより、人の手によるマッサージにより近似した好適なマッサージを行うことができる。そして、方向切り替え機構をこの自転軸70aを用いて構成することによって、挟み揉みの方向の切り替えを簡単な構造によって実現できる。
【0057】
図5と図6において、回転駆動機構61が有しているローリングによるマッサージの機能についてさらに説明する。第一施療子1a,1b及び第二施療子2は回転ベース77(ベース部)に搭載されている。そして、回転駆動機構61は、この回転ベース77を連続的に回転させることで、被施療者に対して両施療子を軸心C1回りに回転させるローリングマッサージを行わせることができる。すなわち、第一駆動手段81を連続的に駆動させることで実現できる。なお、回転ベース77は一方向(時計回り方向)又は他方向(反時計回り方向)の回転駆動をすることができ、さらに、制御手段10(図8)の働きによって、これら方向が交互に切り替えられてローリングマッサージが行われるものであってもよい。
【0058】
また、この回転駆動機構61が有しているその他の機能としては、回転ベース77を回転させることで、第一及び第二施療子が接近または離反する挟み方向を調整する角度調整機構64としての機能がある。
この角度調整機構64は、回転ベース77を軸心C1回りに所定角度について回転させることで、第一施療子1a,1bと第二施療子2との両者による挟み方向を変更することができ、所望の方向に調整することができる。すなわち、第一駆動手段81を駆動させ、回転ベース77を所定角度だけ一方向又は他方向に回転させることで実現できる。なお、回転ベース77の回転角度や回転方向は制御手段10(図8)からの制御信号によって制御される。
【0059】
また、このマッサージ機57は、第一及び第二施療子を搭載している回転ベース77を被施療者に対して接近又は離反させることにより、これら第一及び第二施療子の被施療者に対する押圧度合いを調整する指圧調整機構(図示せず)を更に備えている構成とできる。具体的には、図3に示しているマッサージ機57は、マッサージユニット8(図1参照)に搭載されており、図示しないが、このマッサージ機57全体が被施療者側へ接近又は離反自在にマッサージユニット8に取り付けられており、マッサージ機57を被施療者側へ接近又は離反させる駆動手段を備えている。これによれば、指圧調整機構が、回転ベース77を備えているマッサージ機57を被施療者に対して接近又は離反させることにより、回転ベース77上の両施療子が被施療者を指圧することができ、さらに被施療者に対する押圧度合いを調整できる。
【0060】
以上のように構成されたマッサージ機用の駆動機構によれば、コンパクトでありながら第一及び第二施療子に複雑なマッサージ動作を行わせることができる。また、回転ベース77の回転運動、移動ベース89の進退動作(施療子の揺動)、及び、自転軸70aの自転(第二施療子2の回転)を共にギア機構によって行うことができ、また、その構造を簡単にすることができる。さらに、本発明による施療子の配置、及び、その動作により、人の手によるマッサージにより近似した好適なマッサージを行うことができる。そして、椅子型マッサージ機の背もたれ部4内において(図1と図2参照)、マッサージユニット8を被施療者の身長方向に昇降移動させながら、マッサージ機57を各種動作させることができる。
【0061】
なお、本発明のマッサージ機は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、施療子を三個以上としてもよい。例えば第一施療子を四個として、単一の第二施療子とともに、五本指の人の手と見立てるように構成してもよい。
また、本発明の椅子型マッサージ機は、図1と図2に示した形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、例えば、背もたれ部4が起立状態又は後方へ倒れた状態に揺動可能とされていたり、脚載せ部5が上下揺動可能とされていたりしてもよい。または、脚載せ部が無いものであってもよい。さらに、被施療者に対してマッサージを施すことができるマッサージ装置(前記マッサージ機57)を、背もたれ部4にのみ設けたものや、座部3についても設けたものであってもよい。または、マッサージ機57が背もたれ部4から座部3へ移動することができるものや、さらに、脚載せ部5まで移動することができるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のマッサージ機を搭載している椅子型マッサージ機の実施の一形態を示す後方からの斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】本発明のマッサージ機を搭載しているマッサージユニットの実施の一形態を示す斜視図である。
【図4】マッサージ機の要部を示す斜視図である。
【図5】マッサージ機の断面側面図である。
【図6】マッサージ機の断面側面図であり、図5の状態から、施療子が所定角度について回転した状態を示している。
【図7】施療子を被施療者側から見た場合の図である。
【図8】本発明のマッサージ機が備えている機構の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
1a,1b 第一施療子
2 第二施療子
3 座部
4 背もたれ部
5 脚載せ部
7 マッサージ機
8 マッサージユニット
70a 自転軸
70b 固定軸
72a,72b リンク部材
76 固定ケース
77 回転ベース
78 駆動カム
78a カム面
80 従動カム
81 第一駆動機構
82 第二駆動機構
83 第三駆動機構
89 移動ベース
C1,C2 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の固定ケースと、
この固定ケースの内部に回転自在に収納された回転ベースと、
この回転ベースの中心部分に設けられ回転軸心方向に出退するカム面を有している駆動カムと、
前記回転ベースに対して前記回転軸心方向に進退自在に設けられた移動ベースと、
前記駆動カムのカム面との係合を介して前記回転軸心方向に駆動されこれによって前記移動ベースを進退させる従動カムと、
前記回転ベースを回転させるためのギアを有する第一駆動手段と、
前記駆動カムの前記カム面を出退させるためのギアを有する第二駆動手段と、
を備えていることを特徴とするマッサージ機用の駆動機構。
【請求項2】
前記回転軸心方向に延設され前記回転ベースに対して自転自在に設けられた自転軸と、この自転軸を自転させるためのギアを有する第三駆動手段と、を更に備えている請求項1に記載のマッサージ機用の駆動機構。
【請求項3】
請求項2に記載のマッサージ機用の駆動機構と、
前記回転軸心方向に延設され前記回転ベースに対して固定された固定軸と、
この固定軸の前記回転軸心方向の被施療者側に揺動自在として枢着されている第一施療子と、
前記自転軸の前記回転軸心方向の被施療者側に揺動自在として枢着されている第二施療子と、
前記移動ベースの前記回転軸心方向の進退動作を前記第一及び第二施療子の揺動動作に変換するリンク部材と、を備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項4】
前記第一及び第二施療子は前記回転軸心を挟んで相互が対向するように配設され、当該第一及び第二施療子は、曲率の異なる部分をそれぞれ表裏に有する同じ揉み玉とされ、当該第一及び第二施療子は、前記回転軸心に対するこの表裏の取り付け方向が入れ替えられて前記固定軸及び前記自転軸にそれぞれ取り付けられている請求項3に記載のマッサージ機。
【請求項5】
座部と、この座部の後部側に設けられた背もたれ部と、前記座部と前記背もたれ部の内の少なくとも一方に備えられたマッサージ装置と、を備え、
前記マッサージ装置が請求項3又は4に記載のマッサージ機とされたことを特徴とする椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−325635(P2007−325635A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157130(P2006−157130)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】