説明

マッサージ機

【課題】マッサージ実行前に、使用者がマッサージ個所を正確に把握することのできるマッサージ機を提供する。
【解決手段】背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体によりマッサージを実行可能としたマッサージ機において、マッサージ位置を決定するに際し、前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマッサージ機に関し、特に、座部と背もたれ部を備え、前記背もたれ部にマッサージ用の施療体を備えた椅子型のマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マッサージ機として、使用者が腰掛ける座部の後部に背もたれ部を設けた椅子型のマッサージ機があり、前記背もたれ部に施療手段を設け、この施療手段により使用者の背中をマッサージする構成のものが広く知られている。
【0003】
これは、使用者が腰掛けて背もたれ部にもたれかかった状態で、その背中に対して前記施療手段を前後動、あるいは上下動させ、使用者の背中に「もみ」や「たたき」と同様の刺激を与えてマッサージを行うものである。
【0004】
また、かかるマッサージ機において、前記施療手段により実際にマッサージを開始する前に、マッサージ位置において前記施療手段を動作させて使用者にマッサージ位置を知らせることのできるものがあった(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、上記してきた椅子型のマッサージ機においては、前記施療手段の動きがプログラムされた自動コースを有するものがあり、この自動コースを選択すると、プログラムに沿って前記「もみ」や「たたき」などを含む複数種のマッサージを連続して自動的に行うものがあるが、このような自動コースによるマッサージでは、施療手段の動作位置などを使用者の体形など(特に座高)に合わせなければ使用者の満足は得られないので、予め、前記施療手段を動作させて使用者の背中に当接させながら昇降させ、使用者ごとに施療手段の動作位置の基準となる位置、例えば肩位置を検出し、この肩位置を基準として前記施療手段をマッサージ位置まで昇降させるようにしたマッサージ機も知られている。
【特許文献1】特開平11−178877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したように肩位置を自動的に検出した場合、検出した肩位置が実際のマッサージに最適な位置かどうかは不明であり、そのため、実際にマッサージを行った後に、再度肩位置の調整を行わなければならないことが多かった。
【0007】
そこで、上記特許文献1に開示されているように、実際にマッサージを開始する前に施療手段を動作させて肩位置を確認させることが試みられ、施療手段に実際のマッサージに即した施療動作、例えば「もみ」動作などを行わせることが考えらえた。しかし、かかる施療動作では施療手段が上下動することになるので、使用者は施療手段が動作している位置が果たして自分に最適な肩位置となるのかを識別することが難しかった。
【0008】
また、使用者にとって、施療手段の動作位置の基準となる肩位置を決定することは、腰部から首部までにわたる背中の各位置で快適なマッサージを実現するためには極めて重要なことであるが、この肩位置を決定するために、使用者に不適当な押圧力が付与されてしまってはマッサージを開始する前に不快感を与えてしまうおそれがあった。
【0009】
さらに、前記肩位置が決定された場合、複数種のマッサージがこの肩位置を基準として行われることになるが、例えば「もみ」と「たたき」のようにマッサージの種類が異なる場合は、施療手段が本来位置すべき望ましい位置がマッサージの種類によって異なる場合がある。したがって、せっかくマッサージ開始前に肩位置を決定しても、実際にマッサージが開始されると、「もみ」や「たたき」などのマッサージが最良位置で行われずに、快適なマッサージを体感できないおそれがあった。
【0010】
本発明は上記課題を解決し、マッサージ位置を正確に得ることができ、かつこのマッサージ位置に基づいて快適なマッサージを体感することのできるマッサージ機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の本発明では、背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体によりマッサージを実行可能としたマッサージ機において、マッサージ位置を決定するに際し、前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させることとした。
【0012】
請求項2記載の本発明では、背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体によりマッサージを実行可能としたマッサージ機において、マッサージ位置を決定するに際し、予め検出した体形データに基づく進出量で前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させることとした。
【0013】
請求項3記載の本発明では、背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体により複数種のマッサージを実行可能としたマッサージ機において、マッサージ位置を前記施療体の位置データにより定め、前記施療体によりマッサージを実行する際に、マッサージの種類に応じて前記位置データを自動補正することとした。
【0014】
請求項4記載の本発明では、請求項3記載のマッサージ機において、前記施療体の位置データを、当該施療体の上下方向及び前後方向の座標により定め、マッサージを実行する際に、前記施療体の位置データを上下方向のみならず前後方向についても自動補正することを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の本発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマッサージ機において、前記マッサージ位置を、マッサージを実行する際に前記施療体の移動量を決定する基準となる基準位置としたことを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の本発明では、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマッサージ機において、前記マッサージ位置を使用者の肩位置としたことを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の本発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマッサージ機において、前記マッサージ位置を複数の指標で表示する表示部と、前記指標を選択してマッサージ位置を決定する操作部とを備えたマッサージ位置決定手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
(1)請求項1記載の本発明では、背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体によりマッサージを実行可能としたマッサージ機において、マッサージ位置を決定するに際し、前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させることとしたために、施療体は前後移動のみによる動作だけなので、使用者は押圧された位置を正確に体感できるようになり、マッサージ位置を極めて正確に使用者に知らせることができる。
【0019】
(2)請求項2記載の本発明では、背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体によりマッサージを実行可能としたマッサージ機において、マッサージ位置を決定するに際し、予め検出した体形データに基づく進出量で前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させることとしたために、施療体は前後移動のみによる動作だけなので、使用者は押圧された位置を正確に体感できるようになり、マッサージ位置を極めて正確に使用者に知らせることができるとともに、予め検出した使用者の体形に基づく適切な施療体の進出量となっているので、マッサージ位置を決定するに際して施療手段による押圧により背中が痛むなどの不都合がなく、使用者に不快感を与えるおそれがない。
【0020】
(3)請求項3記載の本発明では、背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体により複数種のマッサージを実行可能としたマッサージ機において、マッサージ位置を前記施療体の位置データにより定め、前記施療体によりマッサージを実行する際に、マッサージの種類に応じて前記位置データを自動補正することとしたために、複数種のマッサージを実行する際に、どのような種類のマッサージを行う場合でも最適なマッサージ位置で使用者が満足するマッサージを行うことができる。
【0021】
(4)請求項4記載の本発明では、前記施療体の位置データを、当該施療体の上下方向及び前後方向の座標により定め、マッサージを実行する際に、前記施療体の位置データを上下方向のみならず前後方向についても自動補正することとしたために、マッサージの種類によってマッサージ力の体感強さがそれぞれ異なっていても、いつでも最適な強さで快適なマッサージを実行することができるようになり、使用者をより満足させることができる。
【0022】
(5)請求項5記載の本発明では、前記マッサージ位置を、マッサージを実行する際に前記施療体の移動量を決定する基準となる基準位置としたために、この基準位置を正確に決定することができ、この正確な基準位置に基づいて前記施療体の移動量が決定されるので、上記(1)〜(4)の効果に加え、マッサージ位置がどの位置であっても正確なマッサージ位置によるマッサージが可能となり、使用者の満足するマッサージが行える。したがって、例えば予め設定されたプログラムにしたがって前記施療体が移動する自動コースによりマッサージを実行する場合に、コース全体を通して快適なマッサージが実現できる。
【0023】
(6)請求項6記載の本発明では、前記マッサージ位置を使用者の肩位置としている。すなわち、マッサージ機を一般的に肩こりなどを解消するために利用されることが多い。したがって、マッサージ位置が肩位置であれば、正確な肩位置を決定してその位置において即座に肩のマッサージが行えるようになるので、マッサージ機としての使い勝手が良好となる。
【0024】
(7)請求項7記載の本発明では、前記マッサージ位置を複数の指標で表示する表示部と、前記指標を選択してマッサージ位置を決定する操作部とを備えたマッサージ位置決定手段を具備することとしたために、上記(1)〜(6)の効果に加え、使用者はマッサージ位置を容易に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本実施形態に係るマッサージ機は、背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体によりマッサージを実行可能としたマッサージ機において、マッサージ位置を決定するに際し、前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させるようにしたものである。
【0026】
すなわち、使用者が身体への押圧力を感じて押圧個所を認識する場合、極力ピンポイントで押圧されなければ正確な位置を特定することが難しい。本実施形態によれば、施療体は前後移動のみによる動作だけなので、押圧された位置を正確に体感することができ、マッサージ位置を極めて正確に使用者に知らせることができる。
【0027】
また、他の実施形態として、前記マッサージ位置を決定するに際し、予め検出した体形データに基づく進出量で前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させることができる。
【0028】
この場合も施療体は前後移動のみによる動作だけなので、使用者は押圧された位置を正確に体感できるようになり、マッサージ位置を極めて正確に使用者に知らせることができるとともに、その上、施療体の前後移動は、予め検出した使用者の体形に基づく適切な施療体の進出量によるものとなっているので、マッサージ位置を決定するに際して施療手段による押圧により背中が痛むなどの不都合がなく、使用者に不快感を与えるおそれがない。また、マッサージ位置を決定した後に当然ながら実際のマッサージが行われるが、マッサージ強さに直接影響する前記施療手段の前後方向の位置が前記体形に基づくものであれば、実際のマッサージ時における施療手段の前後方向の位置も、上下位置と同じようにマッサージ位置を決定する際に確認することができる。
【0029】
さらなる他の実施形態として、前記施療体を用いて複数種のマッサージを可能とした場合において、前記マッサージ位置を前記施療体の位置データにより定め、前記施療体によりマッサージを実行する際に、マッサージの種類に応じて前記位置データを自動補正するようにしてもよい。
【0030】
この場合は、引き続き複数種のマッサージを実行する際に、どのような種類のマッサージを選択して行う場合でも最適なマッサージ位置で使用者が満足するマッサージを行うことができるようになる。
【0031】
また、このときに前記施療体の位置データを、当該施療体の上下方向及び前後方向の座標により定め、マッサージを実行する際に、前記施療体の位置データを上下方向のみならず前後方向についても自動補正するとよい。
【0032】
このように、施療体の位置データを前後方向についても自動補正可能とすれば、マッサージの種類によってマッサージ力の体感強さがそれぞれ異なっていても、いつでも最適な強さで快適なマッサージを実行することができるようになり、使用者をより満足させることができる。
【0033】
ところで、本発明を、施療体の動きが予めプログラムされた自動コースを有するマッサージ機に適用したものとした場合は、上述したようにマッサージ位置を正確に決定することによって、より快適なマッサージが実現できるようになる。
【0034】
すなわち、自動コースでは、プログラムに沿って前記「もみ」や「たたき」などを含む複数種のマッサージを連続して自動的に行うが、このような自動コースによるマッサージでは、施療手段の動作位置などを使用者の体形など(特に座高)に合わせなければ使用者の満足は得られない。
【0035】
そこで、前記マッサージ位置を、マッサージを実行する際に前記施療体の移動量を決定する基準となる基準位置とするのである。
【0036】
このように、正確に決定したマッサージ位置を施療体の移動量を決定するための基準にすることで、本マッサージ機の使用者である被施療者が前記自動コースを選択すると、施療体は正確に所定のマッサージ位置へ移動することになり、コース全体を通して快適なマッサージが実現できる。
【0037】
また、基準位置となる前記マッサージ位置は、使用者の肩位置とすることが好ましい。
【0038】
すなわち、マッサージ機は、一般的に肩こりなどを解消するために利用されることが多いので、正確な肩位置を決定してその位置において即座に肩のマッサージが行えるようになると、マッサージ機としての使い勝手が良好となる。
【0039】
また、より使い勝手を向上させるために、前記マッサージ位置を複数の指標で表示する表示部と、前記指標を選択してマッサージ位置を決定する操作部とを備えたマッサージ位置決定手段を具備する構成とすることが望ましい。
【0040】
マッサージ位置決定手段としては、例えばマッサージ機の駆動制御全体を司るようにしたリモートコントローラ(以下「リモコン」という)を用いることができる。
【0041】
かかるリモコンに、マッサージ位置を複数の指標で表示する表示部を設け、この表示部を見ながら操作部として配設された操作ボタンを操作することにより、前記マッサージ位置を容易に設定することができる。また、前記自動コースにおいては、コース中に施療手段が移動する際に基準とするための基準位置を容易に設定することができる。さらに、複数の指標を選択して設定するので、所望するマッサージ位置を微調整して正確に設定することができる。
【0042】
なお、自動コースを有するマッサージ機に本発明を適用する場合、マッサージを実行する際に施療体の移動量を決定する基準となる基準位置として、予め標準的な肩位置を定め、その位置をマッサージ機に記憶させておき、自動コースが選択されると、前記施療体がこの標準肩位置に先ず移動するようにして、この位置において使用者が前記リモコンを用いて肩位置の微調整を行うようにすることができる。
【0043】
そして、この微調整時においては、操作部を操作すると、前記施療体が操作に応じて所定昇降量ごとに進退動作して、使用者に対して前後移動のみによる押圧力を付与するのである。このように、施療体は直進的な動きのみで上下にぶれることがないので、使用者は自分に最適な肩位置を誤って認識したり、最適位置と錯覚したりすることがなく、最適な肩位置を的確に決定することが可能となる。
【0044】
以下、本発明に係るマッサージ機について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0045】
図1は本実施の形態に係るマッサージ機を示す斜視図、図2は同マッサージ機よりカバーなどを取り除いた状態を示す斜視図、図3は同マッサージ機の側面視による説明図、図4はリクライニング可能とした背もたれ部の側面視による説明図、図5は背もたれ部の横断面図、図6は機械式のマッサージユニットの説明図、図7は本実施の形態に係るマッサージ機の駆動制御系を示すブロック図である。
【0046】
本実施形態に係るマッサージ機Aは、図1〜図4に示すように、使用者M(図3)が着座する座部1と、同座部1を支持する基台部2と、前記座部1の後側に倒伏自在にリクライニングできるように連結され、左右両側に体側施療部として機能する側壁部6,6を取付けた背もたれ部3と、座部1の前側上部近傍に設けた枢支部1aを中心に上下方向へ揺動可能に連結した脚載部4とを具備する椅子型のマッサージ機としている。
【0047】
また、図1に示すように、前記基台部2を除く各部については、必要に応じて合成皮革などからなるカバーにより直接被覆するか、あるいは同じくカバーで被覆したクッション部材を配設している。C1は座部2に載置された座部クッション、C30は背もたれ部3の全体を被覆するように適宜手段を介して着脱自在に取付けられた背もたれクッション、C31は、前記背もたれクッションC30に図示しない面ファスナーを介して上端同士を着脱自在とした枕状クッション、C4は前記脚載部4を被覆する脚載部用カバー、C6は前記側壁部6に設けたエアバッグa3(図2参照)を被覆しているエアバッグ用カバーである。
【0048】
前記背もたれ部3は、図3及び図5に示すように、縦に伸延する左右の縦フレーム30,30を具備しており、この縦フレーム30,30の前側に、図2に示すように、略中央に所定幅の長孔31aを形成した背もたれ板31を取付けるとともに、後側には背面カバー体32を取付け、この背面カバー体32と前記背もたれ板31との間にユニット配設空間Qを形成している。そして、このユニット配設空間Qに、左右のもみ玉7,7を備え、このもみ玉7,7を前記長孔31aから臨ませた状態で昇降可能とした機械式のマッサージユニット11を配設している。なお、このマッサージユニット11については後に詳述する。
【0049】
また、図2に示すように、前記背もたれ部3の長孔31aを挟んで、背もたれ板31の左右側上部には背中部用エアバッグa1,a1を、左右側下部に腰部用エアバッグa2,a2をそれぞれ配設し、エアポンプ25(図7参照)から供給されるエアによって背中や腰を押圧するエアマッサージを実行可能としている。
【0050】
また、図1〜図4に示すように、前記座部1には、その左右側に肘掛部5,5を設けている。また、座部1の後部側には臀下部用エアバッグa4を、前部側には腿部用エアバッグa5を、左右側には臀側部用エアバッグa6をそれぞれ取付けている。
【0051】
前記脚載部4は、左右の脚を受ける半円筒状の左右脚受部18,18を並設した本体部15と、同本体部15の先端に連設するとともに左右の足裏を受ける半円筒状の左右足裏受16,16を並設した足裏受部17とから側面視略L字状に形成しており、前記本体部15の各脚受部18,18の両内側面に左右で対をなす脚上部用エアバッグa7,a7,a7,a7を取付けるとともに、前記足裏受部17の各足裏受16,16の両内側面に左右で対をなす脚下部用エアバッグa8,a8,a8,a8を取付けている。
【0052】
また、体側を施療可能とした上記側壁部6,6は、取付基端部61側の上下長よりも先端部側の上下長を長くした略扇形形状としており、座部1に着座した使用者Mの上腕側方に位置するように、図5に示すように、内側部が前記背もたれ部3の左右側端面に当接するように配置されている。
【0053】
かかる構成とするために、本実施の形態では、前記背もたれ板31における前記側壁部6の側をなす端部に立ち上り部35を形成して強度を向上させるとともに、鋼製のアングル材からなる前記左右の縦フレーム30,30に取付け、しかも、各縦フレーム30と背もたれ板31の前記立ち上り部との間には所定の間隔Dを設けている。そして、前記側壁部6と背もたれ板31とを、体側施療部取付部40aと背もたれ部側伸延部40bとからなる略L字状に形成したステイ40を用いて連結している。すなわち、前記側壁部6を前記体側施療部取付部40aに連結する一方、背もたれ部側伸延部40bを前記背もたれ板31の裏面に連結固定している。図5中、41は側壁連結用ボルト、42は背もたれ板連結用ビス、14bはマッサージユニット11の昇降案内用のガイドローラであり、縦フレーム30に沿って転動可能としている。また、35aは前記ステイ40の背もたれ部側伸延部40bを逃がすために前記立ち上り部35に形成した切欠部である。この切欠部35aを介して前記背もたれ部側伸延部40bを前記背もたれ板31の背面に直接当接させることができるので、ステイ40を背もたれ板31に対してしっかりと連結固定することができる。
【0054】
このように、前記背もたれ板31に立ち上り部35を形成したことから強度が向上し、背もたれ部3の全体としても十分な強度を有している。
【0055】
また、上述した構成により、前記側壁部6のエアバッグa3を膨張させて使用者Mの体側を押圧した場合、そのときに側壁部6が受ける反力は、前記ステイ40を介して前記背もたれ板31にかかることになるが、この背もたれ板31には使用者Mの体重がかかるので、結果的には使用者Mが受け止めることになって、樹脂製の背もたれ板31であっても前記側壁部6との連結部分に特に大きな負荷がかかることがない。
【0056】
また、側壁部6が反力を受けた場合のように当該側壁部6が外側へ開く方向に力が加わったとしても、当該側壁部6は広がり方向へ撓み易くなっているので、略L字状とした前記ステイ40が前記間隔D内で撓み、受けた力を逃がすことができる。したがって、前記縦フレーム30,30には力が加わらず、縦フレーム30,30が変形するおそれもないので、この縦フレーム30,30に取付けた前記ラック13を介して昇降自在に配設した前記マッサージユニット11の昇降動作に支障をきたしたり、昇降中に異音が発生したりすることも防止できる。
【0057】
また、上述の構成とすることで、背もたれ板31を樹脂製とすることが可能であり、さらに前記背面カバー体32についても同様な樹脂製とすることによってマッサージ機A全体の軽量化を図るとともに、コストダウンを図ることができる。
【0058】
また、側壁部6と背もたれ部3との連結構造を上述のようにしたことで、側壁部6の内側部が前記背もたれ部3の左右側端面に当接するように配置されることになり、背もたれ部3の前面、すなわち使用者Mの背中受け面を狭めることなく、面全体を有効に利用することができる。したがって、使用者Mがどのような体格のものであっても、肩部分を含む身体両側部のマッサージをゆったりと行うことができる。特に、肩部分には、「肩ぐう」と呼ばれるツボがあるので、使用者Mは誰でもこのツボを効果的にマッサージすることが可能となる。
【0059】
次に、前記マッサージユニット11の構成と、このマッサージユニット11及び前記エアバッグa1〜a8の駆動を制御する制御部Gについて説明する。
【0060】
マッサージユニット11は、図6に示すように、もみ玉駆動ユニット9を収納配設しており、同もみ玉駆動ユニット9は、施療体として配設した左右一対のもみ玉7,7を前後方向に揺動させることによってたたき作動を行わせるたたき機構70と、前記もみ玉7,7を偏心回動させることによってもみ作動を行わせるもみ機構8とを具備するとともに、背もたれ部3の表側(使用者Mと接する側)に向けて進退移動可能に構成され、進退した位置によってマッサージ強度が変わるように、すなわちもみ玉7,7による使用者Mへの押圧力が変わるようにしている。
【0061】
かかるもみ玉駆動ユニット9の動きによって、後述する多種のマッサージを実行できるとともに、マッサージ位置や強度をさらに組み合わせることで多彩なマッサージモードで施療することができる。また、本実施形態では、前記もみ玉駆動ユニット9内にバイブ用モータm6(図9参照)を配設し、もみ玉ユニット9を振動させてバイブマッサージも行えるようにするとともに、脚載部4内にもバイブレータ(図示せず)を設け、より多彩なマッサージモードを実行できるようにしている。
【0062】
なお、図中、22はユニットケース、m1はマッサージユニット11を昇降させるための昇降用モータ、28は前記昇降用モータm1と連動連結するとともに、前記もみ玉駆動ユニット9を前後揺動自在に支持した昇降軸、29,29は同昇降軸28の両端に取り付けたピニオンギヤであり、前記縦フレーム30,30に設けたラック13,13と噛合している(図5参照)。
【0063】
また、m2は前記もみ玉駆動ユニット9を前後方向へ進退移動させるための進退用モータであり、同モータm2の駆動により進退軸43を回転させ、円弧状ラック46,46上を前記進退軸43に取付けたピニオン44,44を前後方向に移動させてもみ玉駆動ユニット9を揺動させて前後進退可能としている。49は前記進退軸43を回動自在に支持するための軸受である。
【0064】
また、m3は前記もみ機構8の主構成要素であるもみ用モータであり、もみ用回動軸(図示せず)を介してもみ玉7,7と連動連結している。なお、図3においては省略したが、たたき用モータm4を前記もみ用モータm3と並設しており(図5参照)、たたき用回動軸(図示せず)を介してもみ玉7,7と連動連結している。なお、前記各モータm1〜m4と連動連結した回動軸には、回動角(駆動量)を検出するためのロータリーエンコーダE(図7参照)を取付けている。
【0065】
上記構成のマッサージユニット11による上述の多様なマッサージ動作は、エアマッサージ動作などの他の機能を含めて全て制御部Gにより制御されている。なお、本実施形態では、前記もみ玉駆動ユニット9によるメカ的なマッサージとして、もみ(もみ上げ/もみ下げ)、たたき、さざなみ(もみ下げとたたきの複合動作)、深もみ上げ/深もみ下げ/さすり、指圧、ストレッチなどが行える。
【0066】
本実施例における制御部Gは、前記基台部2内に配設されており、これに接続した遠隔操作可能な操作手段としての後述するリモコンRを介して電源投入から電源オフ、及びマッサージ機Aの単機能動作からプログラミングされた自動コースなどの制御動作、さらには後述するように、マッサージ位置を事前に使用者Mに知らせる機能に至る各種動作及び機能をコントロールすることができる。また、同制御部Gにより、リモコンRに設けた液晶表示装置からなる表示画面Kへの表示についても制御している。
【0067】
すなわち、図7に示すように、制御部GはCPUと後述する各種プログラムなどを格納したROMやその他データなどを記憶するRAMなどからなるメモリ部G1と、各種モータなどの駆動制御を行う駆動制御部G2とを備えており、インターフェイスG3を介してリモコンRとリクライニング角度検出センサG5及び各ロータリーエンコーダEと接続している。また、インターフェイスG4を介して前記マッサージユニット11内に配設した昇降用モータm1、進退用モータm2、もみ用モータm3、たたき用モータm4、さらには背もたれ3のリクライニング動作を行うリクライニングモータm5、バイブレータを駆動するバイブ用モータm6、さらには後述するエアバッグ用エアポンプ25及び前記座部1に配設したヒータHとを接続している。このヒータHにより冬などでも心地好くマッサージすることが可能となっている。
【0068】
また、前記メモリ部G1には、複数のマッサージプログラムが格納されており、前記リモコンRに設けた操作部Sからの指令信号に基づき、疲労回復、リフレッシュ、リラックスなどを目的として様々なマッサージモードを組合わせた複数の自動コースを実行可能としている。
【0069】
すなわち、指圧、もみ、たたき、さすり、バイブ、ストレッチなどの基本マッサージ、さらにはローリング、エアマッサージなどの種類の異なったマッサージモードを、前記マッサージユニット11を駆動して実行させることができ、これらを適宜組合わせた多様なマッサージを実行する複数の自動コースが予めプログラミングされている。なお、本実施形態では、自動コースとして首・肩コース、全身コース、腰コースがあり、各コースのマッサージ時間は15分に設定されている。
【0070】
また、前記複数のエアバッグa1〜a8は前記エアポンプ25と連通連結している(図7参照)。このエアポンプ25には、同エアポンプ25から圧入される大気を一時的に貯留して各エアバッグa1〜a8へ分流する分流器(図示せず)を連通連結し、この分流器には、各エアバッグa1〜a8に対応する複数の吐気口が設けられ、各吐気口には同吐気口の開口を開閉する電磁弁(図示せず)を設けている。そして、分流器の各吐気口と対応するエアバッグa1〜a8とを、これも図示しない耐圧ホースによってそれぞれ連結し、前記電磁弁の開閉動作を制御部Gにより制御して所要のエアバッグa1〜a8を個別に給排気し、エアバッグa1〜a8を膨張(膨出)・収縮させることにより、使用者Mに対してエアマッサージを施すように構成している。なお、電磁弁B1〜B18の開閉動作によって、エアバッグa1〜a8を膨張(膨出)・収縮させることができる他、エアバッグa1〜a8を膨張状態(膨出状態)に保持することもできる。
【0071】
このように、エアバッグa1〜a8についても、前記もみ玉7,7などの作動についても前記制御部Gによって制御されており、この制御部Gは、もみ玉7,7の動作やマッサージユニット11の昇降動作を制御して、もみ玉7,7による機械的マッサージを実行させるとともに、エアバッグa1〜a8の膨縮に関わるエアポンプ25のオン・オフ動作や各エアバッグa1〜a8に対して給排気を行うための電磁弁の開閉動作を制御して、所要のエアバッグa1〜a8を膨張(膨出)・収縮させてエアマッサージを実行させることができる。
【0072】
図8及び図9に本実施形態に係るマッサージ機Aに付設したリモコンRを示す。
【0073】
このリモコンRは、本マッサージ機1の操作手段として機能するものであり、各種操作ボタンを配した操作部Sと、液晶表示装置からなる表示画面Kとを備えている。そして、かかる操作部S及び表示画面Kを用いることにより、後に詳述するように肩位置の微調整を含め、マッサージの種類や強度の選択機能など各種機能を本マッサージ機に実行させる指令が前記制御部Gに与えられるようになっている。なお、リモコンRは、前記肘掛部5に例えば収容ポケットを設け、この収納ポケットに収容することもできる。
【0074】
図示するように、リモコンRは、上側部に液晶表示装置からなる前記表示画面Kが設けられ、その下側に複数のボタン群からなる前記操作部Sが設けられている。また、操作部Sの下半部は開閉式になっており、蓋部R1には、機械的マッサージとエアマッサージとを複合させた自動コースなどを選択し得るようになっている。図9に示すように、蓋部R1を開いた本体部R2では、機械的マッサージやエアマッサージを個別操作により選択できるようになっている。そして、かかるマッサージ動作以外にも、背もたれ部3のリクライニングや脚載部4の上げ下げなどを行えるようにしている。
【0075】
ここで、リモコンRに設けた各種操作ボタンについて簡単に説明する。
【0076】
図8において、S1はリピートボタンであり、気に入ったマッサージ態様であればこれを繰り返して実行させることができる。S2はスキップボタンであり、逆に、不要なマッサージであればスキップすることができる。また、S3はスタート/収納ボタンであり、マッサージを開始させるとき、又はマッサージを終了してもみ玉7,7を収納するときに使用する。S4は停止ボタンであり、マッサージを中途で停止させることができる。
【0077】
S5は上下ボタンであり、前記マッサージユニット11ごともみ玉7,7を上下に移動させることができるもので、本実施形態の要部となる操作ボタンであり、後述する肩位置の微調整を実行することができる。
【0078】
また、S6は自動コースボタン群であり、首・肩、全身、腰のコースから選択できる。S7は強さボタンであり、前記自動コースでのマッサージ強さを5段階で設定できる。S8は短縮ボタンであり、半分程度に短縮された自動コースを選択できる。
【0079】
また、S9〜S13は自動コース中におけるエアマッサージ用の操作ボタンであって、S9は肩ボタンであり、自動コース中の側壁部6に設けたエアバッグa3へのエアの供給を入/切する。エアの圧力としては5段階の強度を選択できる。S10はフットストレッチボタンであり、自動コース中にフットストレッチの入/切ができる。S11はパルスボタンであり、自動コース中にパルスを入/切できる。S12は脚エアーボタンであり、脚、脚同時、脚切を切り換えることができる。S13はエア強さボタンであり、自動コース中のエア圧の強さを5段階で切り換えることができる。S14はバイブボタンであり、バイブマッサージの入/切を行う。S15はヒータボタンであり、座部1や背もたれ部3に設けたヒータ(図示せず)の入/切を行う。S16はオットマンボタンであり、脚載部4を上げ/下げする。なお、ボタン操作中はエアの給気を停止るようにしている。S17はリクライニングボタンであり、背もたれ部3の角度を変えることができる。ボタン操作中はエアの給気を停止するようにしている。
【0080】
また、図9に示す本体部R2には、個別機能を操作可能な操作ボタンが配置されている。S20は機能選択ボタンであり、10種類のマッサージの中から機能を選択することができる。S21はストレッチボタンであり、ストレッチ動作に、もみやたたきを加えた複合動作を選択することができる。S22は3Dボタンであり、3D動作にもみやたたきを加えた複合動作を選択することができる。なお、ここで3D動作とは、「もみ上げ」「もみ下げ」「たたき」「さざなみ」のマッサージに、前記もみ玉7,7の前後移動動作を加えたマッサージ機能である。S23は全体/部分ボタンであり、マッサージユニット11を上下に移動しながらマッサージする範囲をセットすることができる。S24は速さ調節ボタン、S25は幅調節ボタン、S26は強さ調節ボタンであり、マッサージの強さを7段階で調節することができる。
【0081】
S27は肩ボタンであり、側壁部6のエアバッグa3へのエアの給気及び停止を行う。この肩ボタンS27により、「肩ぐう」と呼ばれるツボを含め、肩、体側の効果的なエアマッサージが行える。
【0082】
また、S28は部位ボタンであり、エアマッサージを行う個所を選択することができる。S29はフットストレッチボタンであり、フットストレッチの入/切を行う。S30はパルスボタンであり、エアパルスを入/切する。S31は脚同時ボタンであり、他の個所をエアマッサージしているときにボタン操作すると脚も同時にエアマッサージが行える。S32はエア強さボタンであり、エア圧を5段階に切り換えることができる。
【0083】
かかる構成のリモコンRを操作することにより、所定のマッサージあるいは自動コースを実施する指令が与えられた場合、制御部Gは与えられた指令に基づいて前記マッサージユニット11やエアバッグa1〜a8の動作を制御する。
【0084】
上述してきたマッサージ機Aにおいて、本発明において特徴となるのは、マッサージ位置を決定するに際し、前記もみ玉7,7を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者Mに識別させることにある。これをマッサージ位置識別機能とすると、このマッサージ位置識別機能では、もみ玉7,7は前後移動のみによる動作だけであり、「もみ」や「たたき」などのマッサージ動作のような上下動が伴わないので、使用者Mは押圧された位置を正確に体感できる。したがって、マッサージ位置を極めて正確に使用者Mに知らせることができる。
【0085】
本実施形態では、前記マッサージ位置識別機能を、肩位置調節機能に適用している。また、このマッサージ位置識別機能を実行するためのマッサージ位置決定手段として、前記リモコンR及び制御部Gがその機能を担っている。
【0086】
肩位置調節機能とは、使用者Mが自動コースを選択した場合に、もみ玉7,7を正確に移動させて最適な位置で快適なマッサージを実行できるように、使用者Mが、基準位置としての自分の肩位置を調節可能とした機能である。
【0087】
すなわち、自動コースのマッサージを実行する際に、実行開始に先立って、前記もみ玉7,7の移動量を決定するための基準となる基準位置として肩位置を決定する必要があるが、その肩位置を使用者Mに確認させるときに、本実施形態では前記もみ玉7,7を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、マッサージ機Aが認識している肩位置を使用者Mに極めて正確に知らせることが可能となっている。
【0088】
本実施形態に係るマッサージ機Aでは、自動コースが選択された場合、選択された自動コースが実行されるまでの間に、前記肩位置調節を、リモコンRを用いて実施することができる。図10にその手順を示す。
【0089】
図10に示すように、リモコンRの自動コースボタン群S6のいずれかが押下されてマッサージの実施指令が制御部Gに与えられると(STEP1)、体形検出を実行する(STEP2)。
【0090】
体形検出は、本マッサージ機Aが有する機能の一つであり、前記もみ玉7,7が使用者Mを押圧したときに所定の負荷電流が印加されていることを検出する負荷電流検出手段を設け、複数のポイントにおける負荷電流をもみ玉7,7の前後方向の座標に変換し、この座標を体形データとして使用者Mの体形を測定可能としている。
【0091】
すなわち、図3に示すように、前記昇降用モータm1を駆動して、マッサージユニット11を降下させ(矢印f1)、先ず使用者Mの腰位置である最下端位置において進退用モータm2を駆動してもみ玉7,7を最後方位置に後退させる。そして、その位置で前記進退用モータm2を駆動してもみ玉7,7を使用者Mの背中に向けて突出させていき(矢印f2参照)、背中に当たったときの前記進退用モータm2の負荷電流の増加を前記負荷電流検出手段により検出して前記メモリ部G1のRAMに記憶する。具体的には、進退用駆動量検出手段としてマッサージユニット11に設けたロータリーエンコーダEの検出出力を、制御部Gを介して座標換算し、腰位置として、もみ玉7,7の前後方向の座標(Y座標)を位置データとしてRAMに記憶するのである。
【0092】
その後、さらに前記進退用モータm2を駆動してもみ玉7,7を最後方位置まで後方に向けて移動するとともに、前記昇降用モータm1を駆動して、これも前記マッサージユニット11内に設けたロータリーエンコーダEの検出に基づいて所定距離だけマッサージユニット11を上昇させ、上述同様に、その位置で進退用モータm2を駆動してもみ玉7,7を前方に向けて移動する。このような動作を使用者Mの首位置までの複数ポイントで繰り返し行うことによって、使用者Mの肩の高さや幅、背中の形状等といった使用者Mの体形を検出することができる。
【0093】
このようにして体形検出が終了すると、制御部Gは、もみ玉7,7を予め設定されている標準肩位置に移動する(STEP3)。
【0094】
そして、リモコンRの表示画面Kには、図11に示すように、「肩位置調節画面」が表示され、現在の設定値として予め定められた標準肩位置が表示される(STEP4)。画面中には、図示するように、肩位置を示す指標として7つの設定用セルWが表示されており、本実施形態では所定の昇降量で7段階にマッサージユニット11を昇降させることができる。また、ここではレベル4が標準肩位置となっており、前記7つの設定用セルWのうち、中間に位置した設定用セルWが白黒反転表示されている。また、この表示画面K中には「肩位置を微調節できます」との案内が表示され、使用者Mに肩位置を最適位置に変更可能であることを報知するようにしている。
【0095】
また、前記STEP4で標準肩位置が表示されるときには、同時にもみ玉7,7が前方へ略直線的に進出し、直進運動的な押圧力を使用者Mに付与する。本実施形態では、この動作を4回行うようにしている。このように、もみ玉7,7を略直線的に進退動作させて前後移動のみによる押圧力を使用者Mに付与するので、使用者Mは押圧された位置を正確に体感することができる。
【0096】
そして、このときに標準肩位置が自分自身の肩位置とはずれていると感じた場合、使用者Mは4回の動作が終わる前にリモコンRの上下ボタンS5を押下し、実際のもみ玉7,7の昇降移動に対応した前記設定用セルWの反転表示を参考にしながら肩位置微調整を行うことができる。すなわち、標準肩位置が適切でないと使用者Mが感じた場合、前記上下ボタンS5を押下するのである。
【0097】
かかる上下ボタンS5の操作により、制御部Gが肩位置微調整の実施指令が与えられたと判断すると(STEP5)、マッサージユニット11に設けられた昇降駆動機構12が備える昇降用モータm1が駆動してマッサージユニット11が新たに設定された肩位置へと実際に移動し(STEP6)、同時に前記設定用セルWの反転表示位置が移動して新たに設定された肩位置を表示する(STEP7)。そして、この新たに移動した肩位置において、図3に示すように、もみ玉7,7自体は略直進動作だけで使用者Mに押圧力を付与する。
【0098】
使用者Mは、上下ボタンS5を押下してかかる動作を繰り返しながら、自分に適した肩位置を決定するのであるが、本実施形態では、肩位置調節後、もみ玉7,7が前述した直進的な進退動作を4回繰り返すまでに上下ボタンS5を押さず放置すると(STEP8)、制御部Gは現在のもみ玉7,7の位置を最終的に正規の肩位置として決定し、これを登録する(STEP9)。すなわち、制御部Gはもみ玉7,7の上下方向の座標(X座標)を肩位置データとして取得し、RAM内の所定記憶領域内に格納する。
【0099】
このようにして正規の肩位置が最終的に決定されると、制御部Gは所定のプログラムを読み出して自動コースによるマッサージを開始する(STEP10)。そして、この自動コース中においては、前記正規の肩位置を、もみ玉7,7の移動に関する基準として各種のマッサージが行われることになる。そして、この自動コースでは、前記正確な肩位置データを基準として前記もみ玉7,7を駆動させてマッサージが行われるので、使用者Mは十分な満足を得ることができる。
【0100】
以上説明したように、本実施の形態に係るマッサージ機Aでは、リモコンRを用いた肩位置調節時において、もみ玉7,7の位置を当該もみ玉7,7の前後方向への直進的動作のみによる押圧力を使用者Mに付与することによって知らせ、この位置を体感しながら肩位置調節を行うようにしている。したがって、従来のようにもみ玉7,7が使用者Mに当接するときに「もみ」や「たたき」のようなマッサージ動作を行うのに比べて、もみ玉7,7の上下へのぶれがないことから、使用者Mが最適な肩位置を誤ったり、最適位置と錯覚したりすることがなく、使用者M自身に最適な肩位置を的確に決定することが可能である。
【0101】
また、上述した肩位置調整を行う際に、前記もみ玉7,7を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を使用者Mに付与するようにしているが、このときのもみ玉7,7の進出量を、前述した体形検出で取得した体形データに基づいて決定することができる。
【0102】
すなわち、もみ玉7,7の前後移動を、予め検出した使用者Mの体形に基づく適切な進出量となるように補正することで、肩位置調整時にもみ玉7,7による押圧力が過大で背中が痛む、あるいは過小すぎて押圧された個所を特定できないなどの不都合がなく、使用者に不快感を与えるおそれがなくなる。また、肩位置を決定した後に自動コースによるマッサージが行われるが、上述したように、マッサージ強さに直接影響する前記もみ玉7,7の前後位置が前記体形データに基づくものであれば、実際のマッサージ時における前後方向の位置もマッサージ前の肩位置調整時において確認できることになり、安心してマッサージを楽しむことができる。
【0103】
また、自動コースでマッサージを実行している途中でも、肩位置が合わないと感じた場合、使用者Mは、前記上下ボタンS5を操作することで、いつでも肩位置調整を行うことができる。
【0104】
本実施形態では、上下ボタンS5を押すと、図11で示した肩位置調節画面と同様な画面をリモコンRの表示画面K上に表示し、現在の肩位置が白黒反転表示される。続いて上下ボタンS5を押下すると、前述同様設定用セルWの表示位置(白黒反転位置)が移動する。なお、この肩位置調節実行中は、自動コースによるマッサージが行われているので、実際にはもみ玉7,7は移動することはない。また、自動コース実行中に上下ボタンS5が押下されると、肩位置調整を受け付けることを示す受付ブザー音を鳴らすようにすることもできる。
【0105】
そして、使用者Mが適切と思った位置であると判断したところで2秒間放置すると、すなわち、2秒の間に前記上下ボタンS5の押下がないと制御部Gが判断すると、その反転表示位置された設定用セルWのレベルが設定値として制御部Gに登録されて新たな肩位置として更新され、このレベルに応じたマッサージユニット11のX座標が基準となすべき肩位置のデータとして前記メモリ部G1のRAMに上書きされる。
【0106】
そして、この更新された「肩位置」にしたがって、その後の自動コースによるマッサージは実行されることになる。
【0107】
ところで、上述したように、もみ玉7,7の位置は、位置データとなるX座標とY座標とにより定められている。
【0108】
そこで、前記もみ玉7,7を用いて複数種のマッサージを様々なマッサージ位置で実行する自動コースにおいては、マッサージの種類に応じて前記位置データを自動補正することができる。
【0109】
すなわち、「もみ」、「たたき」、「指圧」、「さすり」など様々な種類のマッサージ態様があるが、各マッサージ態様においてはもみ玉7,7の動きが異なっている。例えば「もみ」ではもみ玉7,7が上下動を伴うものであり、図12に示すように、「もみ」の中でも、もみ用モータm3を正回転させてもみ玉7,7を下から上へと動作させて筋肉をほぐす「もみ上げ」やもみ用モータm3を逆回転させてもみ玉7,7を上から下へと動作させて筋肉をほぐす「もみ下げ」では、一箇所を集中的に押圧する「指圧」とでは、使用者が望むマッサージ位置が微妙にずれることが考えられる。
【0110】
そこで、各マッサージの種類に応じた補正テーブルを制御部Gのメモリ部G1内に格納しておき、実行するマッサージの種類に応じてマッサージ位置を示す位置データのY座標を自動的に補正するのである。
【0111】
このように、前述した肩位置調整によって、自動コースにおける各マッサージ位置は適切な位置となっている上に、マッサージの種類に応じて位置データの自動補正を行うことで、使用者Mはいかなる種類のマッサージを実施してもいつも最適位置をマッサージされることになるので極めて快適となる。
【0112】
また、この場合において、Y座標のみならずX座標についても自動補正することができる。すなわち、前記補正テーブルに、もみ玉7,7の進退量に関するX座標の補正値を記憶させておき、マッサージの種類に応じてもみ玉7,7の進退量も補正するのである。
【0113】
したがって、マッサージの種類によってマッサージ力の体感強さがそれぞれ異なっていても、いつでも最適な強さで快適なマッサージを実行することができるようになり、使用者Mをより満足させることができる。
【0114】
なお、上述したようにマッサージの種類に応じてもみ玉7,7の位置データを補正するのは、必ずしも自動コースに限るものではない。マッサージの種類を単独で選択して実施する場合であっても、そのマッサージの種類に応じてマッサージ位置を使用者Mにとって最適となるように補正することが可能である。「もみ」、「たたき」、「さすり」などの各種のマッサージ態様ごとに、前述したように予め補正値を定めておき、使用者Mがマッサージの種類を選択するたびに最適なマッサージ位置となるように補正するのである。
【0115】
以上説明したようなマッサージ位置を示す位置データを自動補正する機能を備えたマッサージ機Aであれば、いかなる種類のマッサージを使用者Mが選択しようとも、もみ玉7,7の位置は適切な肩位置を基準として正確に移動し、かつその移動した位置からさらにマッサージの種類に応じた最適位置に補正されるので、使用者Mにとって常に快適なマッサージを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本実施の形態に係るマッサージ機を示す斜視図である。
【図2】同マッサージ機よりクッション材などを取り除いた状態を示す斜視図である。
【図3】同マッサージ機の側面視による説明図である。
【図4】リクライニング可能とした背もたれ部の側面視による説明図である。
【図5】背もたれ部の横断面図である。
【図6】機械式のマッサージユニットの説明図である。
【図7】本実施の形態に係るマッサージ機の駆動制御系を示すブロック図である。
【図8】リモコンの説明図である。
【図9】リモコンの説明図である。
【図10】肩位置調整の手順を示すフローチャートである。
【図11】リモコンの表示画面を示す説明図である。
【図12】マッサージの種類によるもみ玉の動きを表す説明図である。
【符号の説明】
【0117】
A マッサージ機
K 表示画面
M 使用者
R リモコン
S 操作部
S5 上下ボタン
1 座部
2 基台部
3 背もたれ部
4 脚載部
5 肘掛部
6 側壁部
7 もみ玉
11 マッサージユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体によりマッサージを実行可能としたマッサージ機において、
マッサージ位置を決定するに際し、前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体によりマッサージを実行可能としたマッサージ機において、
マッサージ位置を決定するに際し、予め検出した体形データに基づく進出量で前記施療体を進退動作させて前後移動のみによる押圧力を付与し、この押圧力により前記マッサージ位置を使用者に識別させることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
背もたれ部に昇降可能及び前後進退可能に配設した施療体により複数種のマッサージを実行可能としたマッサージ機において、
マッサージ位置を前記施療体の位置データにより定め、前記施療体によりマッサージを実行する際に、マッサージの種類に応じて前記位置データを自動補正することを特徴とするマッサージ機。
【請求項4】
前記施療体の位置データを、当該施療体の上下方向及び前後方向の座標により定め、マッサージを実行する際に、前記施療体の位置データを上下方向のみならず前後方向についても自動補正することを特徴とする請求項3記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記マッサージ位置を、マッサージを実行する際に前記施療体の移動量を決定する基準となる基準位置としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
前記マッサージ位置を使用者の肩位置としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマッサージ機。
【請求項7】
前記マッサージ位置を複数の指標で表示する表示部と、前記指標を選択してマッサージ位置を決定する操作部とを備えたマッサージ位置決定手段を具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−26152(P2006−26152A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210117(P2004−210117)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000136491)株式会社フジ医療器 (137)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】