説明

マッサージ機

【課題】既存のマッサージ機の構成を大幅に変更することなく、特に、脊柱周辺等身体にとって重要な部位や施療をする際に細心の注意を払ってすべき部位に対しても、素早く、十分に且つ適切な施療を行うことができるマッサージ機を提供する。
【解決手段】もみ玉及びもみ玉を動作させる機構を有し、前後に移動可能な移動部及び該移動部を前後に移動可能な状態で支持するベースからなり、該ベースが所定若しくは任意方向に移動可能なメカユニットを備えるマッサージ機において、前記メカユニットの前側にエアセルを配設し、エアセルの膨張によりマッサージ動作をするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊柱を含めた脊柱周辺を流体セルによってマッサージをするマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマッサージ機としては、特開2001−333952号公報に開示されるものがあり、以下このマッサージ機(以下、第1の従来のマッサージ機)について図11に基づいて説明する。この第1の従来のマッサージ機は、マッサージ機本体100と、この本体に設けられた施療用空気袋106と、この空気袋106にエアーを給排気するエアー給排気装置106bと、前記マッサージ機本体100に設けられた力学的マッサージ用の施療子151を有する機械式マッサージ部105とを具備し、前記空気袋106を支持するベース及び前記機械式マッサージ部105の夫々を前記マッサージ機本体100に移動可能に設けて、これらの移動により前記空気袋106と前記施療子151とを互いの移動跡に配置できる構成である。この第1の従来のマッサージ機によれば、空気袋106を支持したベースが移動可能であるとともに、機械式マッサージ部105も移動可能であり、これらを互いの移動跡に配置できるので、マッサージ機本体100のほぼ同じ位置に空気袋106と機械式マッサージ部105の施療子151とを配置し、これらを用いてマッサージ機本体100に支持された使用者に対してマッサージを施すことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−333952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記第1の従来のマッサージ機は以上のように構成されており、もみ玉と空気袋によりもみ玉によるマッサージ及び空気袋によるマッサージを組み合わせてマッサージをすることができるが、空気袋がメカユニットの前側になく、施療者との距離があるため、当接するまでに時間がかかる上に十分な当接力が得られないという課題を有する。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、既存のマッサージ機の構成を大幅に変更することなく、特に、脊柱周辺等身体にとって重要な部位や施療をする際に細心の注意を払ってすべき部位に対しても、素早く、十分に且つ適切な施療を行うことができるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るマッサージ機は、もみ玉及びもみ玉を動作させる機構を有し、前後に移動可能な移動部及び該移動部を前後に移動可能な状態で支持するベースからなり、該ベースが所定若しくは任意方向に移動可能なメカユニットを備えるマッサージ機において、前記メカユニットの前側にエアセルを配設し、エアセルの膨張によりマッサージ動作をするものである。このような本発明において、前記メカユニットの前側にエアセルを配設しているので、メカユニットを配設済みのマッサージ機に対して、大幅な設計変更を施すことなくエアセルを導入することができ、また、通常のメカユニットがもみ玉を揺動させて体の中心線上のマッサージをするため、このメカユニットの前側にエアセルを配設することで、必然的に脊柱周辺に対してソフトな押圧効果のあるマッサージをすることができる。また、メカユニットの前側にエアセルを配設しているので、被施療者の背中を優しく支持することができる。
【0007】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記メカユニットのベースの前側にエアセルを配設するものである。このような本発明においては、前記ベースの前側にエアセルを配設しているので、メカユニット自体の移動以外でベースが移動することはなく、自由度が少ないため、脊柱を含めた脊柱周辺に安定してエアセルによるマッサージ動作を提供することができると共に、ベースが前記移動部を適切に支持するため所定以上の大きさを有しているため大きな設計変更を施すことなくエアセルを容易に配設することができる。
【0008】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記メカユニットの移動部の前側にエアセルを配設するものである。このような本発明においては、前記移動部の前側にエアセルを配設しているので、エアセルの膨張と移動部の移動とメカユニット自体の移動との連携により多種多様なマッサージ動作をすることができ、また、もみ玉の間にエアセルを配設することで今までデッドスペースであった部分を有効活用することができる。この多種多様なマッサージ動作の一態様としては、移動部が傾動可能な傾動部により実装されている場合、エアセルを膨張させ、傾動部を施療部位方向に傾動させることで、ソフトな指圧のようなマッサージ動作をするものがあり、具体的には、エアセルを膨張させながら傾動部を施療部位方向に傾動させる動作、エアセルを収縮させながら傾動部を施療部位方向に傾動させる動作、エアセルを膨張させながら傾動部の傾動を戻す動作及びエアセルを収縮させながら傾動部の傾動を戻す動作からなるマッサージ動作である。
【0009】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記移動部のもみ玉若しくはもみ玉を支持するもみ玉支持アームにエアセルを配設するものである。このような発明においては、前記もみ玉若しくはもみ玉支持アームにエアセルを配設しているので、エアセルを膨張させてエアセルのみ若しくはもみ玉と共に従来のもみ玉のマッサージ動作を行え、もみ玉ではマッサージが強すぎてマッサージができなかった脊柱に対して、もみ玉と同様なマッサージをすることができる。
【0010】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記移動部にエアセルを支持するエアセル支持アームを介してエアセルを配設するものである。このような発明においては、前記エアセルはエアセル支持アームを介して配設しているので、もみ玉支持アームとエアセル支持アームとが連結している場合には連動してマッサージ動作ができ、連結していない場合にはエアセルが単体で若しくはもみ玉と連携してマッサージ動作をすることができる。
【0011】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記メカユニットにエアセルに給気するエアポンプを配設するものである。このような発明においては、前記メカユニットにエアポンプを配設しているので、通常は座部からホースを介してエアセルに給気するのに比べて、ホースの取り回しがよく、ホースがネックとなって、メカユニットの移動範囲、移動部の移動が制限されることなく十分な移動範囲を担保できるので、十分なエアセルによるマッサージを行うことができ、さらに、ホースの絡みによる故障を考慮する必要がない。
【0012】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記ベースの移動中にはエアセルを膨張させないように制御したものである。このような発明においては、前記ベースの移動中にはエアセルを膨張させないことで、エアセルと介在させるものとの圧接が可及的に回避されるので、摩擦力が軽減される。これにより、エアセルと介在されるもとの間の摩擦による発熱と摩耗を減少することができる。ここでは、エアセルは介在されるものを介して施療部位に当接する場合について説明したが、ここで、当接とはエアセルが施療部位に直接的に当たっている状態も含まれ、同様な効果が得られる。具体的には、エアセルと施療部位との圧接が可及的に回避されるので、摩擦力が軽減され、これにより、エアセルと施療部位との間の摩擦による発熱と摩耗を減少することができる。また、介在されるものとしては、マッサージ機を覆う合皮等のカバー、エアセル表面に固着した別体のシートや板体等が該当する。なお、本実施例ではベースの移動として昇降方向に移動する場合について記載するが、ベースの移動は昇降方向だけではなく、身体の幅方向に移動するものも含まれる。
【0013】
以上のような本発明においては、前記メカユニットの前側に流体セルを配設し、流体セルの膨張によりマッサージ動作をしているので、身体にとって重要な部位である脊柱を含めた脊柱周辺に対して、適度で十分な押圧マッサージをすることができるという効果を有する。特に、硬い通常のもみ玉のようなもので行うマッサージ動作に比べ、流体セルはいかように硬度を大きくしたとしても施療部位にダメージを与える程は大きくならないので、安全且つ優しいマッサージをすることができるという効果を有する。また、メカユニットを配設済みのマッサージ機に対して、大幅な設計変更を施すことなく流体セルを導入することができるという効果を有する。また、通常のメカユニットがもみ玉を揺動させて体の中心線上のマッサージをするため、このメカユニットの前側に流体セルを配設することで、必然的に脊柱周辺に対してマッサージをすることができるという効果を有する。また、メカユニットの前側に流体セルを配設しており、被施療者の背中を優しく支持することができるという効果を有する。
【0014】
また、本発明においては、前記メカユニットのベースの前側にエアセルを配設しているので、メカユニット自体の移動以外でベースが移動することはなく、自由度が少ないため、脊柱を含めた脊柱周辺に安定してエアセルによるマッサージ動作を提供することができると共に、ベースが前記移動部を適切に支持するために所定以上の大きさを有しているので、大きな設計変更を施すことなくエアセルを容易に配設することができるという効果を有する。
【0015】
また、本発明においては、前記移動部の前側にエアセルを配設しているので、エアセルの膨張と移動部の移動とメカユニット自体の移動との連携により多種多様なマッサージ動作をすることができ、また、もみ玉の間にエアセルを配設することで、今までデッドスペースであった部分を有効活用することができるという効果を有する。この多種多様なマッサージ動作の一態様としては、移動部が傾動可能な傾動部により実装されている場合、エアセルを膨張させ、傾動部を施療部位方向に傾動させることで、ソフトな指圧のようなマッサージ動作をするものがあり、具体的には、エアセルを膨張させながら傾動部を施療部位方向に傾動させる動作、エアセルを収縮させながら傾動部を施療部位方向に傾動させる動作、エアセルを膨張させながら傾動部の傾動を戻す動作及びエアセルを収縮させながら傾動部の傾動を戻す動作からなるマッサージ動作である。
【0016】
また、本発明においては、前記もみ玉若しくはもみ玉支持アームにエアセルを配設しているので、エアセルを膨張させてエアセルのみ若しくはもみ玉と共に従来のもみ玉のマッサージ動作を行え、もみ玉ではマッサージが強すぎてマッサージができなかった脊柱に対して、もみ玉と同様なマッサージをすることができるという効果を有する。
【0017】
また、本発明においては、前記エアセルはエアセル支持アームを介して配設しているので、もみ玉支持アームとエアセル支持アームとが連結している場合には、連動してマッサージ動作ができ、連結していない場合には、エアセルが単体で若しくはもみ玉と連携してマッサージ動作をすることができるという効果を有する。
【0018】
また、本発明においては、前記メカユニットにエアポンプを配設しているので、通常座部からホースを介してエアセルに給気するのに比べて、ホースの取り回しがよく、ホースがネックとなってメカユニットの移動範囲、移動部の移動が制限されることなく十分な移動及び傾動範囲を担保できるので、十分なエアセルによるマッサージを行うことができ、さらに、ホースの絡みによる故障を考慮する必要がないという効果を有する。
【0019】
また、本発明においては、前記メカユニットのベースの移動中にはエアセルを膨張させないように制御しているので、昇降時におけるエアセルと介在させるものとの摩擦力が軽減されることにより、メカユニットの昇降がスムーズになり、エアセルと介在されるものとの間の摩擦による発熱と摩耗を減少することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施例1)本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機について図1ないし図4に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るマッサージ機の全体斜視図、図2は本実施形態に係るマッサージ機の正面図、図3は本実施形態に係るメカユニットの正面図、図4は本実施形態に係るメカユニットの右側面図を示す。
【0021】
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機は、被施療者の背中を支持する背もたれ部1と、この背もたれ部1下端と接し被施療者の臀部を支持する座部2と、被施療者の肘を支持する肘置き3と、座部2の先端下側に枢設され被施療者の足が載置されるフットレスト4とを備え、背もたれ部1の内部にもみ玉51及びもみ玉51を動作させるもみ玉機構を有するメカユニット5を配設し、このメカユニット5の前側にエアセル6を配設する構成である。ここで、本実施形態に係るマッサージ機の背もたれ部1を座部2に枢着して回動自在にし、リクライニング機能を付加することもできる。また、本実施形態に係るマッサージ機は、いす式マッサージ機に関するものであるが、ベッド式マッサージ機に適用することもできる。
【0022】
前記メカユニット5は、もみ玉51及びもみ玉51を動作させるもみ玉機構を有し、傾動可能な傾動部52と、この傾動部52を傾動可能な状態で支持するベース53とからなる。このベース53にはメカユニット5が昇降するための昇降軸54が配設され、この昇降軸54の両端にローラ55a、55bがそれぞれ設けられている。ベース53のローラ55a、55bの上部位置にさらにローラ55c、55dが設けられている。このローラ55a、55b、55c、55dが挿嵌されるガイドレール7が両端を背もたれ部1に固定することで配設されている。このガイドレール7は、断面凹状の一対で背もたれ部1に沿った形状をしている。このガイドレール7にローラ55a、55b、55c、55dを挿嵌すると、昇降軸54がベース53に配設される昇降モータ53cが回転することで、ウォーム53d及びウォームホイール53eを介して昇降軸54が回転し、昇降軸54に応じてローラ55a、55bが回転し、それに伴いローラ55c、55dも回転し、ローラ55a、55b、55c、55dの回転と共にローラ55a、55b、55c、55dがガイドレール7に沿って移動する。このようなローラ55a、55b、55c、55dの移動により、ローラ55a、55b、55c、55dを配設したメカユニット5自体の移動が可能となる。
【0023】
前記傾動部52は、昇降軸54を介して傾動部52がベース53に枢着し、傾動部52の上部に設けられた傾動ラックギア52aとベース53の上部に設けられた傾動ギア53aとが噛合して所定角のみ傾動部52が回転することで傾動可能となる。さらに詳細には、ベース53の上部に設けられた傾動モータ53bが回転することにより、図示しないウォームギアを介して傾動ギア53aが回転し、傾動ギア53aと噛合している傾動ラックギア52aを介して傾動部52が傾動することとなる。この傾動部52は、移動部の一種であり、前後移動を傾動により、実現しているものである。
【0024】
前記エアセル6は、メカユニット5のベース53の前側で下端中央部の位置に配設されている。エアセル6自体が直接ベース53に取り付けられているのではなく、被施療者の背中側方向にのみ膨張できるように保持板6aがベース53に取り付けられ、その保持板6aの上にエアセル6が固着されている。保持板6aは、傾動部52の傾動範囲を阻害しないように、前方に突出した形状をしている。エアセル6の膨縮は、エアセル6への空気の給気・排気により行われており、座部2の下に形成された空間に載置されているエアポンプ6bからホース(図字しない)を介して空気の給排を行っている。ここで、ホースはメカユニット5の移動及び傾動部52の傾動を阻害しないように吊設されている。また、同様にメカユニット5に駆動電力を供給する電源ケーブル(図字しない)もホース同様に吊設されている。エアセル6は、繊維性基材は木綿、麻等の天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維、ビスコースレーヨン等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維及びポリエステルやナイロン等の合成繊維から選ばれた一種ないし二種類以上の組み合わせで出来た布の内側に、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン等の軟質樹脂或いは天然ゴム、合成ゴムを内側コーティングしたものである。ここで、本実施形態に係るエアセル6はメカユニット5の移動の際に介在されるものと例え当接したとしても、少なくとも滑動に適し(つまり当接している対象との抵抗が少ない、以下滑動性)、好ましくは滑動動作によって生じる熱を拡散するものであるとよい。したがって、前記繊維からなる布に表面加工を施して、滑動性、熱拡散性、耐摩耗性のうち少なくとも一つの性質を向上させてもよい。また、PP(ポリプロピレン)若しくはPE(ポリエチレン)をブロー成形することでエアセル6を成形することもできる。滑動性、熱拡散性、耐摩耗性の良いものという観点からは、金属そのものからエアセル6を成形することも好ましく、また、エアセル6自体ではなく表面を金属加工する金属コートを施すこともできる。さらには、別体のシートや板体をエアセル6表面に固着する形態とすることもできる。ここで、板体を含めているのは、通常板体というものは人の触感として硬いと感じる部類に入るものであるが、押圧力を加えるとエアセル6の反発性により弾性をもって移動自在となる。
【0025】
背もたれ部1の裏側であって、エアセル6が当接可能な部分も、前記エアセル6と同様な部材で成形することが好ましい。このことにより、エアセル6とかかる当接可能な部分との間で、滑動性、熱拡散性、耐摩耗性をより確実に担保することができるからである。
【0026】
次に、本実施形態に係るマッサージ機のマッサージ動作について説明する。被施療者は、座部2に着座し、背もたれ部1に背中を当接した状態でリモコン8を操作して、マッサージ機に対してマッサージ動作を開始するように指示する。この被施療者の指示がもみ玉51を用いた肩に対するマッサージ動作である場合には、所定位置に位置していたメカユニット5が昇降モータ53cを用いて、ガイドレール7に従って、被施療者の肩位置まで移動する。肩位置まで移動した後に、メカユニット5のもみ玉51が傾動部52の内部に配設されているもみ玉機構によって駆動し、この駆動に応じた揺動運動がもみ玉支持アーム51aを介して行われる。このようなもみ玉51の揺動運動により、たたき、もみ等の各種マッサージを実施することができる。特に、メカユニット5を用いている場合には、傾動部52にもみ玉51が配設されており、傾動部52が傾動可能であるために、もみ玉51が被施療者方向への変移が可能となって、より効果的なマッサージ及びより多種なマッサージをすることができる。
【0027】
被施療者が、もみ玉51による肩へのマッサージから脊柱周辺のマッサージへの変更はリモコン8の操作によりマッサージ機に指示する。マッサージ機はこの指示を受けて、もみ玉51による肩へのマッサージを停止してもみ玉51を突出しない状態(この突出しない状態とは、もみ玉51の揺動運動中におけるもみ玉51の状態のうち比較的に突出していない状態をいう)にしてメカユニット5を頚椎部分に移動させる。頚椎部分に移動したメカユニット5は、エアポンプ6bが駆動し、空気を生成して、ホースを介し、エアセル6へ給気を開始する。給気を受けてエアセル6は、保持板6aに保持された状態で被施療者方向へ膨張し、被施療者に当接して施療部位である頚椎を含めた頚椎周辺を圧迫する。ここで、頚椎周辺に対する圧迫は、エアセル6で行っているため、危険性は当然ながらなく、痛みも生じることがない。
【0028】
このように本実施形態に係るマッサージ機によれば、体の中心線上を移動するメカユニット5のベース53の前側にエアセル6を配設し、エアセル6に給気してエアセル6を膨張させ、脊柱周辺に過剰な負荷を掛けずに安全にマッサージ動作をすることができる。ここで、メカユニット5のベース53を昇降させる場合には、エアセル6を膨張させないので、介在させるものとの摩擦力が軽減されるのである。さらに、メカユニット5のベース53に保持板6aを介してエアセル6を配設しているだけであるため、設計変更を大幅にすることなく実現できるので、既存のマッサージ機に導入することも容易にできる。
【0029】
なお、本実施形態に係るマッサージ機において、エアセル6は保持板6aを介してベース53に取り付けられているが、もみ玉51の揺動動作を阻害しない位置に取り付ければ、保持板6aがなくとも、ベース53自体が保持板6aの役目を果たし、被施療者方向にのみエアセル6を膨張させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係るマッサージ機においては、エアセル6によるマッサージ動作をする際に、メカユニット5を頚椎部分に移動させているが、開始部分が脊柱上であればどの部分でもよく、胸椎若しくは腰椎からマッサージを開始してもよい。
【0031】
また、本実施形態に係るマッサージ機においては、エアセル6によるマッサージ動作は、頚椎から胸椎、胸椎から腰椎の順に下方向に行われているが、逆に、腰椎から胸椎、胸椎から頚椎の順に上方向に行うこともできる。
【0032】
また、本実施形態に係るマッサージ機においては、エアセル6の膨張の強さについて言及していないが、エアセル6の空気の給排によって調整可能であり、被施療者のリモコン8の操作による指示に従って、空気の給排を調整することができ、さらに、施療部位に合わせて自動的に空気の給排を調整することもできる。
【0033】
また、本実施の形態に係るマッサージ機においては、もみ玉51を被施療者の背中より離間させて収納状態にし、エアセル6によるマッサージを開始することもでき、もみ玉51が被施療者の背中に接触することがないため、エアセル6によるマッサージを広い範囲で行うことができる。具体的には、もみ玉51が連結しているもみ玉機構自体を移動して離間させること、もみ玉支持アーム51aをリンクとばねを用いた構成として伸縮可能とし、使用するときは伸ばし、収納するときは縮ませること等で実現することができる。
【0034】
(実施例2)本発明の第2の実施形態に係るマッサージ機について図5または図6に基づいて説明する。図5は本実施形態に係るメカユニットの正面図、図6は本実施形態に係るメカユニットの右側面図である。
本実施形態に係るマッサージ機は、前記第1の実施形態に係るマッサージ機と同様な構成であり、エアセル6の配置位置がベース53の前側から傾動部52の前側に変更されたことを異にする構成である。
【0035】
前記エアセル6は、一端を傾動部52の上部と固着し、他端を傾動部52の下部と固着して固定される湾曲状の保持板6aに固着されている。保持板6aが湾曲上の形状をしているのは、もみ玉51の揺動動作を阻害しないためであり、メカユニット5の構成要素の動きを制限せず、所定範囲を保持可能なものであればどのような形状でも構わない。
【0036】
次に、本実施形態に係るマッサージ動作について説明する。被施療者が、リモコン8の操作によってもみ玉51を用いたマッサージを指示した場合、もみ玉機構の駆動によりこの、この駆動に応じた揺動運動を行う。この場合において、もみ玉51の揺動運動は、前期保持板6aの形状が湾曲状の形状をしており、保持板6aに阻害されることなく、従来通りの揺動運動をすることができる。
【0037】
被施療者が、もみ玉51によるマッサージから脊柱周辺のマッサージへの変更をリモコン8の操作によりマッサージ機に指示する。マッサージ機はこの指示を受けて、もみ玉51によるマッサージを停止し、もみ玉51を突出しない状態にしてからメカユニット5を頚椎部分に移動させる。メカユニット5が頚椎部分に移動した後、エアポンプ6bからの給気によりエアセル6を膨張させて頚椎周辺を圧迫し、エアセル6によるマッサージをすることができる。この状態でも十分なマッサージができるが、ここで、傾動部52による傾動動作を加えることで、当接力をより向上させたマッサージをすることもできる。
【0038】
このように本実施形態に係るマッサージ機によれば、ベース53より体の中心線上にあるメカユニット5の傾動部52の前側にエアセル6を配設し、エアセル6に給気してエアセル6をもみ玉51が突出しない状態まで膨張させて、エアセル6によるマッサージをする。また、エアセル6の膨張だけでなく、傾動部52の傾動によっても被施療者に対して圧迫を強めたり弱めたりすることができるので、より多種多様なマッサージをすることができる。ここで、メカユニット5のベース53を昇降させる場合には、エアセル6を膨張させないようにしてから、または、傾動部52の傾動を戻してから、最も好ましいのは両方を行った後で昇降させることで、介在させるものとの摩擦力が軽減することができる。また、もみ玉51の間にエアセル6を配設することで、今までデッドスペースであった部分を有効活用することができる。
【0039】
(実施例3)本発明の第3の実施形態に係るマッサージ機について図7または図8に基づいて説明する。図7は本実施形態に係るマッサージ機の正面図、図8は本実施形態に係るマッサージ機の右側面図である。
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機は、前記第1の実施形態に係るマッサージ機と同様な構成であり、エアセル6の配置位置がベース53の前側からもみ玉51に変更されたことを異にする構成である。
【0040】
前記エアセル6は円形筒状の形状を有し、もみ玉51ともみ玉支持アーム51aとを接続する接続点に介在材6cを介して固着されている。エアセル6は膨張時に被施療者の背中側方向に突出させるために、膨張状態でもみ玉51より大きく形成しなければならない。ここでの介在材6cは、前記保持板6aとは異なり、エアセル6に固着させ、また、エアセル6を膨張させた場合に、もみ玉51ともみ玉支持アーム51a等と過剰な接触を防ぐためのものである。ここで、さらに、半弧状の保持板6aを前記接着点に固着し、膨張時のエアセル6の背面の湾曲部分に接触可能とし、エアセル6の膨張を被施療者の背中側方向のみにすることもできる。なお、接触可能となるのは、保持板6aの形状を円形筒状に合わせて半弧状としているからである。
【0041】
次に、本実施形態に係るマッサージ機の動作について説明する。被施療者が、リモコン8の操作によりもみ玉51を用いたマッサージを指示した場合、もみ玉機構の駆動により、この駆動に応じた揺動運動を行う。この場合において、もみ玉51の揺動運動は、膨張していないエアセル6になんら影響を受けずに、通常通りのマッサージ動作を行うことができる。このもみ玉51による揺動運動により、脊柱等の重要な部位を除いた施療部位をマッサージする。
【0042】
被施療者が、リモコン8の操作により脊柱へのマッサージを指示した場合、メカユニット5を所定施療部位に移動させた後に、エアセル6に給気し膨張させる。エアセル6を膨張させた後、もみ玉機構を駆動させ、もみ玉支持アーム51aを介して膨張させたエアセル6に揺動運動をさせる。この時、もみ玉支持アーム51aを介してもみ玉51が揺動運動するが、エアセル6が膨張しているために、もみ玉51がエアセル6より突出せず、施療部位にもみ玉51が接触することはない。
【0043】
このように本実施形態に係るマッサージ機によれば、もみ玉支持アーム51aに介在材6cを介してエアセル6を配設しているので、エアセル6を膨張させてもみ玉機構を利用し、もみ玉51と同様なマッサージ動作をしており、もみ玉51ではマッサージが強すぎてマッサージができなかった脊柱に対して、もみ玉51と同様なマッサージをすることができる。ここで、メカユニット5のベース53を昇降させる場合には、エアセル6を膨張させないようにしてから、または、もみ玉機構の駆動による揺動運動を止めてから、最も好ましいのは両方を行った後で昇降させることで、介在させるものとの摩擦力が軽減することができる。
【0044】
なお、本実施形態に係るマッサージ機においては、単に、エアセル6を収縮させているだけであるが、エアセル6の収縮状態が完全にもみ玉51のマッサージを阻害しないように、介在材6cの内部に空間を設け、エアセル6を収縮した後には、かかる空間に引き込んで収納することもできる。
【0045】
(実施例4)本発明の第4の実施形態に係るマッサージ機について図9または図10に基づいて説明する。図9は本実施形態に係るマッサージ機の正面図、図10は本実施形態に係るマッサージ機の右側面図である。
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機は、前記第1の実施形態に係るマッサージ機と同様な構成であり、エアセル6の配置位置がベース53の前側からエアセル支持アーム6dを介して傾動部52に変更されたことを異にする構成である。
【0046】
前記エアセル6は、もみ玉機構と連結するエアセル支持アーム6dに保持板6aが取り付けられ、この保持板6aに固着されている。エアセル6収縮時において、エアセル6及び保持板6aが、もみ玉51の揺動運動を阻害しないように形成する。なぜならば、もみ玉51の揺動運動中に膨張していないエアセル6が被施療者の背中に接触すると、エアセル6が固着している保持板6aにも接触することとなり、予測していないマッサージ動作となるからである。逆に、エアセル6膨張時にはもみ玉51が被施療者の背中に接触しないようにする。ここで、保持板6a自体が被施療者の背中にあたる可能性がある場合、保持板6aを軟材で成形することが望ましい。
【0047】
次に、本実施形態に係るマッサージ機の動作についてであるが、前記第1の実施形態と同様な動作をするために略す。
【0048】
このように本実施形態に係るマッサージ機によれば、エアセル6はエアセル支持アーム6dを介して配設しているので、もみ玉支持アーム51aとエアセル支持アーム6dとがもみ玉機構を介して連結している場合には連動してマッサージ動作ができ、連結していない場合にはエアセル6が単体で若しくはもみ玉51と連携してマッサージ動作をすることができる。
【0049】
なお、本実施形態に係るマッサージ機において、エアセル支持アーム6dを伸縮可能な構成とすることもでき、例えば、エアセル支持アーム6dをリンクとばねで構成することで伸縮可能とすることができ、エアセル6を使用しない場合には、エアセル支持アーム6dを縮ませて、もみ玉51が揺動運動中にエアセル6若しくは保持板6aが被施療者に接触することがないようにできる。このようにエアセル支持アーム6dを伸縮できる構成とした場合には、エアセル6によるマッサージともみ玉51によるマッサージとを迅速に連携させたマッサージ動作をすることができ、例えば、もみ玉51の揺動運動を行っている間に、エアセル6に若干給気し、膨張させ、瞬時に給気しエアセル6を膨張させると共に、エアセル支持アーム6dを伸張させることで、もみ玉51によるマッサージからエアセル6によるマッサージに迅速に切り替えることができ、逆も然りである。ここで、メカユニット5のベース53を昇降させる場合には、エアセル6を膨張させないようにしてから、または、もみ玉機構の駆動による揺動運動を止めてから、または、エアセル支持アーム6dを伸縮可能な構成としている場合はエアセル支持アーム6dを収縮させてから、最も好ましいのは全てを行った後で昇降させることで、介在させるものとの摩擦力が軽減することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るマッサージ機において、もみ玉支持アーム51a及びエアセル支持アーム6dを同枢軸で軸支している場合に、もみ玉51を使用するときには枢軸を回転させ、もみ玉51をエアセル6より突出させ、逆に、エアセル6を使用するときには枢軸を回転させ、エアセル6をもみ玉51より突出させる構成とすることもでき、もみ玉支持アーム51a及びエアセル支持アーム6d相互の移動範囲によりそれぞれの移動範囲を狭まらせることなく、一方を使用する場合に他方を離隔させることで、自由な移動を可能とすることができる。
【0051】
(その他の実施例)本発明のその他の実施形態に係るマッサージ機は、前記各実施形態に係るマッサージ機におけるメカユニット5中のベース53、ローラ55a、55b、55c、55d、昇降軸54、昇降モータ53c、ウォーム53d及びウォームホイール53eのみからなる移動体とし、この移動体のベース53に保持板6aを取り付け、保持板6aにエアセル6を固着した構成とし、前記第1の実施形態に係る動作のうち、もみ玉51によるマッサージ動作をのぞき、同様な動作をするものである。ここで、エアセル6は気体の給排により膨縮するものであり、可撓性及び弾力性に優れた樹脂により外周面成形されているが、同様な形状で樹脂により外周面成形し、液体若しくは固体を給排するそれぞれリキッドセル、ソリッドセルをエアセル6の代替として用いることもできる。任意のタイミングで任意の硬度に変化可能な流体セルに、これらエアセル6、リキッドセル及びソリッドセルが含まれる。リキッドセルを用いる場合は、液体が給排されるので、それに応じたエアポンプに代えて液体を給排するリキッドポンプを用いる。同様に、ソリッドセルを用いる場合は、固体を給排するソリッドポンプを用いる。
【0052】
本発明のその他の実施形態に係るマッサージ機は、前記各実施形態に係るマッサージ機において、エアポンプ6bが座部2の下に形成された空間に載置されているのを、メカユニット5内に配設する構成であり、この構成によれば、通常座部2からホースを介してエアセル6に給気するのに比べて、ホースの取り回しがよく、ホースがネックとなってメカユニット5の移動範囲、傾動部52の傾動が制限されることなく十分な移動及び傾動範囲を担保できるので、十分なエアセル6によるマッサージを行うことができ、さらに、ホースの絡みによる故障を考慮する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機の全体斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機の正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るメカユニットの正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るメカユニットの右側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るメカユニットの正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るメカユニットの右側面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るマッサージ機の正面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るマッサージ機の右側面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るマッサージ機の正面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るマッサージ機の右側面図である。
【図11】従来のマッサージ機の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 背もたれ部
2 座部
3 肘置き
4 フットレスト
5 メカユニット
51 もみ玉
51a もみ玉支持アーム
52 傾動部
52a 傾動ラックギア
53 ベース
53a 傾動ギア
53b 傾動モータ
53c 昇降モータ
53d ウォーム
53e ウォームホイール
54 昇降軸
55a、55b、55c、55d ローラ
56 傾動軸
6 エアセル
6a 保持板
6b エアポンプ
6c 介在材
6d エアセル支持アーム
7 ガイドレール
8 リモコン
100 マッサージ機本体
105 機械式マッサージ部
106 空気袋
151 施療子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
もみ玉及びもみ玉を動作させる機構を有し、前後に移動可能な移動部及び該移動部を前後に移動可能な状態で支持するベースからなり、該ベースが所定若しくは任意方向に移動可能なメカユニットを備えるマッサージ機において、前記メカユニットの前側に流体セルを配設し、該流体セルの膨張によりマッサージ動作をすることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記請求項1に記載のマッサージ機において、前記流体セルがエアセルであることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載のマッサージ機において、前記メカユニットのベースの前側にエアセルを配設することを特徴とするマッサージ機。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のマッサージ機において、前記メカユニットの移動部の前側にエアセルを配設することを特徴とするマッサージ機。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載のマッサージ機において、前記移動部のもみ玉若しくはもみ玉を支持するもみ玉支持アームにエアセルを配設することを特徴とするマッサージ機。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のマッサージ機において、前記移動部にエアセルを支持するエアセル支持アームを介してエアセルを配設することを特徴とするマッサージ機。
【請求項7】
前記請求項1ないし6のいずれかに記載のマッサージ機において、前記メカユニットにエアセルに給気するエアポンプを配設することを特徴とするマッサージ機。
【請求項8】
前記請求項1ないし7いずれかに記載のマッサージ機において、前記ベースの移動中にはエアセルを膨張させないように制御したことを特徴とするマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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