説明

マットの製造方法

【課題】マットの移動を防止するための滑り止めが、マットの裏面側に簡単な装置により作業効率よく設けられ、廉価に製作でき、しかもマットの形状、種類、寸法等が異なるマットに対しても、滑り止めの形成パターンを変更できるようにし、各マットに適合した適切な滑り止め効果を与えることができるマットの製造方法を提供する。
【解決手段】マット1の製造方法は、マット1の基布2の裏面側3に複数の滑り止め突部7を付着させるマット1の製造方法であって、基布2の裏面側3が上になるように設置したマット1上に、マット1の基布2に滑り止め突部7を形成するための複数の貫通穴8を有する形成板9を設けた突部形成型を設置した後、突部形成型の形成板9上に滑り止め材16を供給し、滑り止め材16を押し出し部材17により各貫通穴8の外に押し出し、基布2の裏面側3に滑り止め突部7を付着させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマットの製造方法に関し、詳しくはマットの移動を防止するための滑り止め
が、マットの裏面側に作業効率よく設けられ、製造できるようにしたマットの製造方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玄関マット、台所マット等のマットの移動を防止する手段としては、マットの
裏面にゴム製シートを積層一体化し、ゴムのもつ滑り止め性により、マット等の移動を防
止するものがある。
【0003】
しかしながら、このようなマットにあっては、マットの製造に際し、マットの基布と
ゴム製シートとを接合した後、プレス機でプレスした状態で加熱装置により加熱し、基布
とゴム製シートとを一体化している。そのためマットを製造するためにプレス機や加熱装
置を必要とするため、コスト高となる欠点がある。また、このように基布とゴム製シート
とをプレスした状態で加熱するため、マットの表面側のパイル部あるいは植毛部等が圧縮
変形されてしまう欠点がある。このため、この圧縮変形した基布の表面側を再度起毛させ
る工程を必要とするため、生産性が低下する欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記した問題点を解決するためになされたもので、マットの移動を防止す
るための滑り止めが、マットの裏面側に簡単な装置により作業効率よく設けられ、廉価に
製作でき、しかもマットの形状、種類、寸法等が異なるマットに対しても、滑り止めの形
成パターンを変更できるようにし、各マットに適合した適切な滑り止め効果を与えること
ができるマットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した問題点を解決するための本発明の手段は、マットの基布の裏面側に複数の滑
り止め突部を付着させるマットの製造方法であって、前記基布の裏面側が上になるように
設置した前記マット上に、このマットの基布に前記滑り止め突部を形成するための複数の
貫通穴を有する形成板を設けた突部形成型を設置した後、前記突部形成型の前記形成板上
に滑り止め材を供給し、この滑り止め材を押し出し部材により前記各貫通穴の外に押し出
し、前記基布の裏面側に前記滑り止め突部を付着させるようにしたものである。
【0006】
また、請求項2記載のマットの製造方法は、請求項1記載のマットの製造方法におい
て、形成板の周縁部に堰を設け、液体または糊状の前記滑り止め材が外方にもれ出ないよ
うにしたものである。
【0007】
また、請求項3記載のマットの製造方法は、請求項1記載のマットの製造方法におい
て、複数の貫通穴は、同形且つ同間隔で形成板の略全体にわたって設けられ、前記貫通穴
を遮蔽部材で遮蔽させることにより、マットの基布の裏面側への滑り止め突部のパターン
を変更するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のマットの製造方法によれば、マットの基布の裏面側に滑り止め突部を
付着させるマットの製造方法であって、基布の裏面側が上になるように設置したマット上
に、滑り止め突部を形成するための貫通穴を有する形成板を設けた突部形成型を設置した
後、形成板上に滑り止め材を供給し、この滑り止め材を押し出し部材により各貫通穴に押
し出し、基布の裏面側に滑り止め突部を付着させるようにしたため、滑り止め機能を備え
たマットを、プレス機や加熱装置等の特別の製造設備を必要とすることなく製作できる。
そのためマットを簡単に作業効率よく製作することができる。さらにマットの表面側のパ
イル部あるいは植毛部等がプレス機の圧縮力や加熱装置による加熱の影響を受け変形した
りすることがないため、マットを外観美麗に製作できる。
【0009】
また請求項2記載のマットの製造方法によれば、形成板の周縁部に堰を設け、液体ま
たは糊状の滑り止め材が外方にもれ出ないようにしたため、マットを滑り止め材で汚した
りすることなく、外観美麗に製作できる。また押し出し部材による滑り止め材の貫通穴へ
の押し出し操作を作業性よく行なえると共に、滑り止め材をより有効に経済的に使用でき
る。
【0010】
さらに請求項3記載のマットの製造方法によれば、複数の貫通穴は、同形且つ同間隔
で形成板の略全体にわたって設けられ、貫通穴を遮蔽部材で遮蔽させることにより、マッ
トの滑り止め突部のパターンを変更するようにしたため、マットの形状、種類、寸法等の
異なったマットを製造する場合でも、これら異なった仕様のマットに対応した適切な滑り
止め効果をもつ滑り止めパターンに容易に変更することができる。しかも、これらの変更
が何等、滑り止め突部の突部形成型を新規に製作することなく、既存の突部形成型の貫通
穴の適宜の箇所を、遮蔽部材で遮蔽させるだけの簡単な操作によりできるため、マットの
製造コストを廉価にできる。またパターン変更は遮蔽部材の着脱操作により短時間で行な
え作業効率もよい。さらにパターン変更によりマットの意匠効果をも向上できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の、マットの基布の裏面側に複数の滑り止め突部を付着させる、マット
の製造方法の一実施例について図面に従って説明する。図1乃至図5はマットの製造方法
を説明する図である。1は基布2の裏面側3が上になるように設置面4に設置した、滑り
止め突部を付着してない状態のマットである。このマット1は玄関マットに適用した場合
を示し、基布2の表面側5にパイル6を植設している。
【0012】
そして設置面4に設置したマット1上に、マット1の基布2の裏面側3に、滑り止め
突部7を形成するための複数の貫通穴8を有する形成板9を設けた突部形成型10を設置
する。この突部形成型10の形成板9はマット1の少なくとも、基布2の外形寸法と略等
しいか、大きめの大きさに形成されていると共に、複数の貫通穴8は、同形且つ同間隔で
形成板9の略全体にわたって設けられている。この貫通穴8は図示しないが、円形でなく
、長円形、四角形等の形状であってもよい。この複数の貫通穴8のうち任意の貫通穴8を
遮蔽部材11で遮蔽させることにより、マット1の基布2の裏面側3への滑り止め突部7
のパターン12を変更できるようにしてある。この遮蔽部材11は、片面に粘着部をもつ
テープ状あるいは板状の部材等を形成板9に貼付するようにすれば作業性がよい。
【0013】
図3はパターン12を明示するため、遮蔽部材11で遮蔽された部分の貫通穴8を、
図の下方部の一部のみ鎖線で示し、残余の部分は鎖線で表示するのを省略してある。なお
、この貫通穴8は遮蔽部材11で遮蔽することなく、貫通穴8の全てに滑り止め突部7を
設けるパターン12にしても勿論よい。このパターン12はマット1の形状、種類、寸法
等に対応した適切な滑り止め効果をもつパターン12に設定するが、これに意匠効果を加
味して設定してもよい。また形成板9の周縁部13には堰14を設けてある。
【0014】
そして、このようにマット1上に突部形成型10を設置した後、図4のように容器1
5を介して突部形成型10の形成板9上に適量の滑り止め材16を供給する。この滑り止
め材16は、例えば、変性メタクリル酸メチル・ブタジエン共重合体と水等を成分とした組成物からなる。この滑り止め材16はマット1に適合したものであれば、他の滑り止め材16であってもよい。
【0015】
次いで図5のように、この滑り止め材16を押し出し部材17に設けたへら18によ
り、遮蔽部材11で遮蔽しない部分の各貫通穴8の外に押し出すことにより、マット1の
基布2の裏面側3に遮蔽部材11で遮蔽しない部分の貫通穴8に相当するパターン12の
滑り止め突部7を付着させることができる。そして、この場合、形成板9の周縁部13に
は堰14を設けてあるので、液体または糊状の滑り止め材16が外方にもれ出ない。
【0016】
そしてマット1から突部形成型10を上方に移動させ取り外すことにより、図6のよ
うに、このマットの製造方法による滑り止め突部7を付着したマット1を作業効率よく廉
価に製造することができる。図8は、この付着状態を拡大して示すものであり、図9は、
このマット1を床19に置き、足20にスリッパ21を付けた状態で使用した場合を示す
もので、マット1は滑り止め突部7により滑りを防止できる。
【0017】
なお図示しないが、滑り止め材16の供給は容器15に供給用パイプ、弁等を配設し
、定量的に滑り止め材16を供給するようにしてもよい。また押し出し部材17は、へら
18でなく、ローラを設け、ローラの回転摺動作用により押し出すようにしてもよい。さ
らにマット1は玄関マット1に限定するものでなく、他の台所マット、バスマット、カー
ペット等にも適用できることは勿論である。またマット1の設置面4にマット1の位置決
めを設けると共に、このマット1上に設置する突部形成型10にも位置決めを設けるよう
にすれば、製造作業性をより向上させることができる。なお突部形成型10は形成板9の
大きさを、製造する多種類のマット1のうちの外形寸法の大きなマット1に合わせて製作
しておけば、1つの突部形成型10により、多種類のマット1に対応して使用することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例の、マットの製造方法を実施するための製造装置を示す、マットと 突部形成型の設置状態を説明する概略的斜視図である。
【図2】図1を分解して示す概略的分解斜視図である。
【図3】図1のA方向から見た概略的平面図である。
【図4】図1の設置状態の製造装置に、滑り止め材を供給する工程を説明する概略的説明図で ある。
【図5】図4の工程の滑り止め材を、押し出し部材により突部形成型の貫通穴に押し出す工程 を説明する、図4の要部を拡大して示す概略的説明図である。
【図6】図5の工程を経て製造された、滑り止め突部を付着されたマットの概略的平面図であ る。
【図7】図6のB方向から見て拡大して示す要部の概略的説明図である。
【図8】図6のC−C線に沿って切断し、拡大して示す概略的断面図である。
【図9】図6のマットの使用状態を説明する概略的説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 マット
2 基布
3 裏面側
7 滑り止め突部
8 貫通穴
9 形成板
10 突部形成型
11 遮蔽部材
14 堰
16 滑り止め材
17 押し出し部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マットの基布の裏面側に複数の滑り止め突部を付着させるマットの製造方法であって

前記基布の裏面側が上になるように設置した前記マット上に、
このマットの基布に前記滑り止め突部を形成するための複数の貫通穴を有する形成板
を設けた突部形成型を設置した後、
前記突部形成型の前記形成板上に滑り止め材を供給し、
この滑り止め材を押し出し部材により前記各貫通穴の外に押し出し、
前記基布の裏面側に前記滑り止め突部を付着させるようにしたことを特徴とするマッ
トの製造方法。
【請求項2】
形成板の周縁部に堰を設け、液体または糊状の前記滑り止め材が外方にもれ出ないよ
うにしたことを特徴とする請求項1記載のマットの製造方法。
【請求項3】
複数の貫通穴は、同形且つ同間隔で形成板の略全体にわたって設けられ、前記貫通穴
を遮蔽部材で遮蔽させることにより、マットの基布の裏面側への滑り止め突部のパターン
を変更するようにしたことを特徴とする請求項1記載のマットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−6916(P2007−6916A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187566(P2005−187566)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(392013796)伏見縫製株式会社 (4)
【Fターム(参考)】