説明

マットレス等の乾燥機

【課題】マットレス等の高速乾燥と消毒処理によって効率よく清潔さと衛生的効果を得ることができる乾燥機を提供する。
【解決手段】乾燥室を形成するキャビネット1内にマットレス等の載置用の通気性棚台2を設け、棚台2の上部がプラス圧、下部がマイナス圧となるよう強力な送風機7と熱風発生装置9により乾燥用の熱風を被乾燥物の内部を貫通して循環する構成とし、且つ多目的用途に応じるべく棚台2を跳ね上げることによって大容積の乾燥用空間が得られるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はベッド用マットレス等の福祉介護器材等の洗浄後に乾燥を行うための機器を提供する技術に関し、特にマットレスについては急速乾燥と消毒を同時に実施できると共にマットレス以外の洗浄物の乾燥や消毒効果も期待出来る乾燥機の構成手段に係るものである。
【背景技術】
【0002】
老齢化社会の進行に伴い発生した療養・介護環境の改善に関するニーズによって、ベッド用のマットレス等の福祉介護器材等を清潔に保つことの必要性は益々拡大する傾向にあり、近年マットレスや車いす等の介護機器を療養環境の改善と感染防止のために洗浄する作業工程が多く見られるようになった。また、洗浄作業について省力化と効果向上の目的による機械化や自動化の傾向も顕著になりつつある。ところが洗浄作業の後処理としての乾燥工程では通常洗浄工程の数倍以上も時間がかかり、且つその効果にも疑問点が多く存在するため、市場からはそれらの課題の解決を迫られる状況にあった。
【0003】
ベッド用のマットレスは通常100mm程度の厚さのポリエステルその他の繊維質材料で製作されているが、従来型の乾燥機では表面に温風を当てるか、乾燥空気の自然対流で乾かす手法が一般的であるためマットレスの内部まで乾燥させるには長時間の処理時間を要していた。これに対して、マットレスの洗浄後遠心力を用いて脱水させ、その後温熱風をマットレス表面に強く当てて乾燥させる装置の利用や、脱水後の寝具に温熱風を寝具を貫通するように当てて乾燥を促進する方式の「ふとんの強制乾燥機」の応用が前記の課題解決の手段として採られるようになってきた。
【0004】
これらのやや進歩した方式では、従来方式よりも乾燥時間の短縮目的がある程度の効果は得られるが、例えば遠心力を利用した方式ではマットレスの変形があり、「ふとんの強制乾燥機」の応用では、マットレスのように繊維密度の大きい被乾燥物に対しては、十分に機能せず、装置も大型高価になる等いぜんとして多くの課題を残したままとなっており、市場でこの種機械の普及が進展しない原因となっていた。
【0005】
それら各種の機械的なマットレス等の乾燥機についての先行技術の例は下記のとおりであるが、前述の公知の構造を含めて何れもニーズに十分応えきれない構成であり、マットレス等の高速乾燥と消毒処理によって効率よく清潔さと衛生的効果を得る目的に対しても不十分な技術内容であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−218977号公報
【特許文献2】特開2005−237876号公報
【特許文献3】特開昭63−43699号公報
【特許文献4】特開平1−32897号公報
【特許文献5】特開平7−136391号公報
【特許文献6】特開平7−80051号公報
【特許文献7】特開2000−157795号公報
【特許文献8】特開2000−225298号公報
【特許文献9】実開平3−58300号公報
【特許文献10】実開平1−82896号公報
【特許文献11】実開昭63−68995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、従来の技術及びそれを前提としたマットレス等の洗浄後の乾燥手段に対して、比較的簡単な作業上の操作にて急速な乾燥機能が得られ、且つマットレスの変質、変形、歪み等有害な副作用の無い自動乾燥機の具体的構成を提供することを第一の目的とし、併せてマットレス以外の被洗浄物の乾燥にも効果の高い汎用性を得ることを第二の目的として実施するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために請求項1の発明は、乾燥室を形成するキャビネット内にマットレス等の寝具を水平に伸ばしたまま載置できる棚台を設け、前記の棚台は寝具の載置部がパンチングメタルないし網板等の通気可能材にて構成され、前記キャビネットにおいて天井部には熱風を吹き込むための吹出し口と、前記棚台の下方空間の一部には前記寝具を通過した熱風を吸い込むための吸気口を設け、吸気口からの熱風が強力な送風機を介して前記吹出し口に至る風洞によって循環が行われるようにし、熱風の通路には乾燥用熱風を供給するための導入管と、湿度調節のために熱風の一部を外部に排出し得るダンパーを設け、マットレス等の寝具が前記キャビネットの棚台で仕切られたプラス風圧部とマイナス風圧部の間に載置されることによって熱風がマットレス等の被乾燥物の内部を貫通して乾燥作用を促進する構成にすると共に、前記棚台は跳ね上げ可能な構成としてキャビネット内の収納空間を拡張し、マットレス以外の被乾燥物を収納できるようにしたことを特徴とするマットレス等の乾燥機についてのものである。
【0009】
請求項2の発明は、乾燥室を形成するキャビネットの前面には、棚台上方部が開口できる扉を設け、且つ棚台下方部には同じく前面に一部が開口してキャビネット以外の被乾燥物の出し入れを可能にする下部扉を設け、前記棚台を跳ね上げた状態で前記のそれぞれの扉を開口させた際は、車いす等のマットレス以外の被乾燥物を収納し乾燥処理ができるようにしたことを特徴とする請求項1に示すマットレス等の乾燥機についてのものである。
【0010】
請求項3の発明は、乾燥室を形成するキャビネットの内部または乾燥室に隣接して、ガス、石油等からの燃料熱または電熱ヒーターからの発生熱を利用した熱風発生装置を設けて、乾燥に用いる熱が効果的に利用できるように、前記キャビネットを含めて単一の箱体になるように構成したことを特徴とする請求項1及び請求項2に示すマットレス等の乾燥機についてのものである。
【0011】
請求項4の発明は、被乾燥物の容量、材質及び形態に応じて、熱風温度、時間及びダンパーを介しての熱風の外気への放出量を任意の数値に設定できる電子制御装置を設けて、運転が所定のプログラムによって自動的に進行するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれにも示すマットレス等の乾燥機についてのものである。
【0012】
請求項5の発明は、被乾燥物の表面温度又は表面湿度を検知するセンサーを乾燥室を形成するキャビネット内に複数設け、そでぞれのセンサーからの信号によって、被乾燥物の部位別の乾燥度合いを判断する電子制御装置が作動して、乾燥が不十分な部位にに対して熱風の当たりを強くするための可動式ガイドを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれにも示すマットレス等の乾燥機についてのものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上説明したような手段で実施され、以下に示すような効果を奏する。
(1)通常マットレス等を洗浄した後の乾燥には長時間の作業を必要としていたが、本発明の装置を用いることによって、熱風が被乾燥物の内部まで貫通して水分の蒸発を促進する作用によって、極めて短時間にて乾燥工程が完結する。従って、作業の生産性が向上し経済的であるほか、被乾燥物の劣化や変形も少ない。
(2)同一の乾燥室はマットレス以外の物品の乾燥にも使用できるように、マットレスの棚台が跳ね上げ構成となっているため、車いす、カーペット、歩行器、ベッドのフレーム等、洗浄後の乾燥を必要とする物品の乾燥にも使用できるので、利便性が高い。
【0014】
(3)熱風が物品の中心部まで到達するので、表面と内部との温度差が少なくてすむため、物品の素材表面の耐熱性を下回る程度の温湿度で処理しても、内部までの十分な消毒効果が得られる。 (4)熱風発生装置を乾燥室に接近した外殻ケース内に設けることができるので、外部から熱源供給の必要が無く、装置を比較的自由に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施例において断面を示す測面図である。
【図2】この発明の実施例を示す正面図である。
【図3】この発明の他の実施例の断面を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず請求項1の発明を図1,図2において説明すれば、マットレス等の被乾燥物を挿入して処理を行うための乾燥室を形成するキャビネット1内に設けた棚台2は、パンチングメタルないし網板等の通気可能材にて構成され、マットレス等の寝具3は水平に伸ばしたまま棚台2に載置し得るものとする。前記キャビネット1の天井部には熱風を吹き込むための吹出し口4、4’を開口するが、棚台2にて仕切られたキャビネット1の下方空間部5には吸気口6を設け、乾燥に用いる熱風が吹出し口4、4’からマットレス等の寝具3を通過して吸気口6に至り、強力な送風機7を介して再び吹出し口に至る風洞8によって熱風の循環が行われる構成とし、熱風の通路には乾燥用熱風を供給するための熱風発生装置9からの導入管10と、過度の湿度上昇を防止するために外気を導入し熱風の一部を外部に排出し得るダンパー11を設けて、マットレス等の被乾燥物が棚台で仕切られたキャビネット上部空間のプラス圧力と下部空間のマイナス圧力に挟まれた状態で置かれることにより、熱風がマットレス等の被乾燥物の内部を強制的に貫通するため、乾燥作用を促進する作用が得られ、従来方式より大幅に乾燥時間を短縮する効果をもたらしたものである。なお、送風機7の締め切り風圧としては1500パスカル以上が必要であり、風量については装置の容量に応じて必要十分な設定を行うべきである。さらに本発明では前記棚台を簡単に跳ね上げ可能な構成として、キャビネット内の被乾燥物を収納できる空間を拡張し、マットレス以外の例えば車いすやベッドのフレーム等異形の大型物品の乾燥にも使用できる構成としたことに特徴があり、洗浄物の種類が多岐に亘る場合にも汎用的に使用できるように工夫されている。
【0017】
請求項2の発明では、請求項1の構成において、キャビネット1の前面には、棚台3上方部が開口できる扉12,12’を設け、ハンドル13、13’を手前に引くことによってマットレスの挿入に十分な開口幅となるように構成するが、棚台下方部には一部を開口できる下部扉14を設けて、棚台2を跳ね上げた状態で、各扉を開いた場合キャビネット1の収納空間に障害物のない空間をもたらし、各種の被乾燥物の処理に便利な構成となっている。図3は、棚台2を跳ね上げてキャビネットの収納空間を拡げ、車いすを収納した場合の形態の例を示したものである。
【0018】
請求項3の発明では、請求項1及び請求項2に示す発明において、キャビネット1の内部又は図1に示すようにキャビネット1に隣接してガス・石油等の燃料からの燃焼熱又は電熱ヒーター(図示せず)からの発生熱を利用した熱風発生装置9を設け、乾燥に用いる熱を効果的に利用できるように前記キャビネット1を含めて単一の箱体15となるようユニット化したことを特徴としたものである。
【0019】
請求項4の発明では、請求項1〜請求項3のいずれにも示す発明において、被乾燥物の容量、材質及び形態に応じて、熱風温度、時間及びダンパーを介しての熱風の外部への放出量を任意の数値に設定できる電子制御装置16を設けて、運転が所定の仕様に従って自動的に進行するように構成したことを特徴としている。
【0020】
請求項5の発明では、マットレス等の被乾燥物の乾燥時に部位による乾燥程度の差を少なくし、全体としてムラ無く短時間で乾燥動作を完結する目的で、キャビネット内に複数のセンサー(図示せず)を設け、例えばマットレスの表面温度については赤外線による遠隔測定等により部位別の温度を測定し、乾燥動作が遅れている部位に対して熱風が多く当たるよう、電子制御装置16が働いて可変式の熱風吹き出しガイド(図示せず)を変化させるようにしたことを特徴としている。
【0021】
なお、この発明は上記の実施例に限定されず、キャビネット1内において乾燥に用いる熱風を強制的に循環させ、且つマットレス以外の被乾燥物をキャビネットに収納できるように構成した本発明の基本的構成概念を前提として、他の幾多の実施例が存在する。 例えば,操作性向上の目的で箱体に操作部17や回転灯18を図2に示すように付加したり、被乾燥物の形態に合わせて熱風のキャビネット1内の流れ方向を変化させるための、制御板(図示せず)を設けることも考えられる。なお、図において19は排水口、20は外気導入口、21は熱風を発生させるための熱交換器である。
【符号の説明】
【0022】
1 キャビネット
2 棚台
3 マットレス等の寝具
4,4’ 吹出し口
5 下方空間部
6 吸気口
7 送風機
8 風洞
9 熱風発生装置
10 導入管
11 ダンパー
12,12’ 扉
13,13’ ハンドル
14 下部扉
15 箱体
16 電子制御装置
17 操作部
18 回転灯
19 排水口
20 外気導入口
21 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室を形成するキャビネット内にマットレス等の寝具を水平に伸ばしたまま載置できる棚台を設け、前記の棚台は寝具の載置部がパンチングメタルないし網板等の通気可能材にて構成され、前記キャビネットにおいて天井部には熱風を吹き込むための吹出口と、前記棚台の下方空間の一部には前記寝具を通過した熱風を吸い込むための吸気口を設け、吸気口からの熱風が強力な送風機を介して前記吹出口に至る風洞によって循環が行われるようにし、熱風の通路には乾燥用熱風を供給するための導入管と、湿度調節のために熱風の一部を外部に排出し得るダンパーを設け、マットレス等の寝具が前記キャビネットの棚台で仕切られたプラス風圧部とマイナス風圧部の間に載置されることによって熱風がマットレス等の被乾燥物の内部を貫通して乾燥作用を促進する構成にすると共に、前記棚台は跳ね上げ可能な構成としてキャビネット内の収納空間を拡張し、マットレス以外の被乾燥物を収納できるようにしたことを特徴とするマットレス等の乾燥機。
【請求項2】
乾燥室を形成するキャビネットの前面には、棚台上方部が開口できる扉を設け、且つ棚台下方部には同じく前面に一部が開口してキャビネット以外の被乾燥物の出し入れを可能にする下部扉を設け、前記棚台を跳ね上げた状態で前記のそれぞれの扉を開口させた際は、車いす等のマットレス以外の被乾燥物を収納し乾燥処理ができるようにしたことを特徴とする請求項1に示すマットレス等の乾燥機。
【請求項3】
乾燥室を形成するキャビネットの内部又は乾燥室に隣接して、ガス・石油等の燃料からの燃焼熱又は電熱ヒーターからの発生熱を利用した熱風発生装置を設け、乾燥に用いる熱が効果的に利用できるように、前記キャビネットを含めて単一の箱体になるように構成したことを特徴とする請求項1及び請求項2に示すマットレス等の乾燥機。
【請求項4】
被乾燥物の容量、材質及び形態に応じて、熱風温度、時間及びダンパーを介しての熱風の外気への放出量を任意の数値に設定できる電子制御装置を設けて、運転が所定のプログラムによって自動的に進行するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれにも示すマットレス等の乾燥機。
【請求項5】
被乾燥物の表面温度又は表面湿度を検知するセンサーを乾燥室を形成するキャビネット内に複数設け、それぞれのセンサーからの信号によって、部位別の乾燥度合いを判断する電子制御装置が作動して、乾燥が不十分な箇所に対して熱風の当たりを強くするための可動式ガイドを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれにも示すマットレス等の乾燥機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−220614(P2011−220614A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90661(P2010−90661)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(591043695)アタム技研株式会社 (7)
【Fターム(参考)】