説明

マットレス

【課題】リクライニングベッドの背ボトムの起立時に腹部を圧迫して不快感を与えてしまうのを防止できるマットレスを提供する。
【解決手段】背ボトムを起倒可能としたリクライニングベッド2で用いるマットレス1において、上層側マットレス構成体16と下層側マットレス構成体17とを上下に層状に積層するとともに、上層側マットレス構成体16の左右側部と下層側マットレス構成体17の左右側部とを頭頂部から所定距離離れた位置と足先部から所定距離離れた位置との間で連結することにした。特に、上層側マットレス構成体16と下層側マットレス構成体17とを切離可能に連結することにした。また、頭頂部から所定距離離れた位置は、背ボトムの10基端部よりも頭頂部側とすることにした。また、足先部から所定距離離れた位置は、起倒可能な上腿ボトムの先端部に回動可能に接続した下腿ボトムの基端部よりも反足先部側とすることにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスに関するものであり、特に、背ボトムを起倒可能としたリクライニングベッドで用いるマットレスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、介護用等に多用されるベッドにおいては、ベッドに仰臥位で横臥している人の背部を支持するための背ボトムを基台に起倒可能に取付けるとともに、基台と背ボトムとの間に駆動機構を介設したリクライニングベッドが広く利用されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
このリクライニングベッドでは、駆動機構を駆動させて背ボトムを基台に対して起立させることによって背ボトムがマットレスを介して仰臥位で横臥している人の背部を傾斜状に支持し、ベッド上で上半身を起こした姿勢に保持できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図6(a)に示すように、上記従来のリクライニングベッド101では、基台102に対して背ボトム103を徐々に起立させていくと、それに伴って仰臥位で横臥している人の上半身も徐々に起こされていくが、背ボトム103の回転中心(基端部)とマットレス104の回転中心とが一致しておらず、背ボトム103の回転中心よりもマットレス104の回転中心の方が内側に位置することから、マットレス104の回転中心付近においてマットレス104が歪んでしまい、横臥している人の背部を圧迫して不快感を与えてしまっていた。
【0006】
これは、寝心地を良好にするためにマットレス104の厚みを厚くするほど背ボトム103の回転中心とマットレス104の回転中心との距離が長くなって歪みが増大していた。
【0007】
そのため、図6(b)に示すように、マットレス104を単に厚くするのではなく、複数層に積層したマットレス105,106を使用することも考えられるが、複数層に積層したマットレス105,106では、図6(b)に示すように、背ボトム103の起立時には上層のマットレス105と下層のマットレス106とがずれることで歪みの発生を抑えることができるものの、図6(c)に示すように、背ボトム103の起倒を繰返し行うと背ボトム103を倒伏させても上下層のマットレス105,106のずれが元に戻らず、横臥している人の背部を圧迫して不快感を与えてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、背ボトムを起倒可能としたリクライニングベッドで用いるマットレスにおいて、上層側マットレス構成体と下層側マットレス構成体とを上下に層状に積層するとともに、上層側マットレス構成体の左右側部と下層側マットレス構成体の左右側部とを頭頂部から所定距離離れた位置と足先部から所定距離離れた位置との間で連結することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記上層側マットレス構成体と下層側マットレス構成体とを切離可能に連結することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記頭頂部から所定距離離れた位置は、背ボトムの基端部よりも頭頂部側とすることにした。
【0011】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項1〜請求項3のいずれかに係る本発明において、前記足先部から所定距離離れた位置は、起倒可能な上腿ボトムの先端部に回動可能に接続した下腿ボトムの基端部よりも反足先部側とすることにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、背ボトムを起倒可能としたリクライニングベッドで用いるマットレスにおいて、上層側マットレス構成体と下層側マットレス構成体とを上下に層状に積層するとともに、上層側マットレス構成体の左右側部と下層側マットレス構成体の左右側部とを頭頂部から所定距離離れた位置と足先部から所定距離離れた位置との間で連結しているために、背ボトムの起立時に上下層側マットレス構成体がずれることで歪みの発生を抑制することができるとともに、背ボトムの倒伏時に上下層側マットレス構成体のずれを元通りに復元させることができるので、横臥している人の背部を圧迫することなくリクライニングベッドの使用感を向上させることができる。
【0014】
特に、上層側マットレス構成体と下層側マットレス構成体とを切離可能に連結した場合には、上下層側マットレス構成体を分離してそれぞれ交換や清掃などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0015】
また、頭頂部から所定距離離れた位置を背ボトムの基端部よりも頭頂部側とした場合には、背ボトムの基端部よりも頭頂部側での歪みの発生を確実に防止することができる。
【0016】
また、足先部から所定距離離れた位置を起倒可能な上腿ボトムの先端部に回動可能に接続した下腿ボトムの基端部よりも反足先部側とした場合には、上下腿ボトムを起倒可能としたリクライニングベッドにおいても下腿ボトムの基端部よりも足先部側での歪みの発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るマットレスを示す平面図。
【図2】同側面図。
【図3】上下層側マットレス構成体を示す側面図。
【図4】同一部切欠拡大側面図。
【図5】同動作説明図。
【図6】従来のマットレスを示す動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るマットレスの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明に係るマットレス1は、リクライニングベッド2の上部に載置して使用される。
まず、リクライニングベッド2の構成について説明すると、リクライニングベッド2は、床に設置するための基台3と、横臥している人の身体を支持するための受台4とで構成している。
【0020】
基台3は、矩形枠状のメインフレーム5の前後端下部(図1及び図2において左右端下部)に脚体6,7を取付けるとともに、メインフレーム5の前端部に矩形板状のヘッドボード8を取付け、メインフレーム5の後端部に矩形板状のフットボード9を取付けている。
【0021】
受台4は、メインフレーム5の前側中途部に、仰臥位で横臥している人の背部を支持するための背ボトム10の基端部を回転軸11を介して回動自在に取付け、メインフレーム5の中央部前側に、横臥している人の尻部を支持するための尻ボトム12を固定し、メインフレーム5の中央部後側に、横臥している人の上腿部を支持するための上腿ボトム13の基端部を回動自在に取付け、上腿ボトム13の先端部に横臥している人の下腿部を支持するための下腿ボトム14の基端部を回動自在に取付けている。
【0022】
そして、背ボトム10には、駆動機構(図示省略)を接続し、背ボトム10と上腿ボトム13との間には、連動機構(図示省略)を接続しており、駆動機構によって背ボトム10を所定の角度に起倒させることができるとともに、背ボトム10の起倒に連動して上腿ボトム13及び下腿ボトム14が起倒するようにしている。
【0023】
次に、マットレス1の構成について説明すると、マットレス1は、図3及び図4に示すように、伸縮性を有する矩形袋状の外カバー15の内部に矩形板状の上層側マットレス構成体16と下層側マットレス構成体17とを上下に層状に積層した状態で収容している。上層側マットレス構成体16と下層側マットレス構成体17とは、左右側部において連結体18で切離可能に連結されている。
【0024】
上層側マットレス構成体16は、伸縮性を有する矩形袋状の上層側内カバー19の内部に矩形板状の上層側上マット20と上層側下マット21とを上下に層状に積層した状態で収容している。
【0025】
ここで、上層側上マット20は、体圧分散効果が得られるプロファイル加工を施した通気性や洗浄性などに優れるウレタン製のものを使用し、上層側下マット21は、体圧分散性や通気性や洗浄性などに優れるポリエチレン製のものを使用し、屈曲部(背ボトム10の基端部、上腿ボトム13の基端部、下腿ボトム14の基端部)に左右幅方向に伸延する凹状のスリット22を形成して屈曲性を向上させている。
【0026】
下層側マットレス構成体17は、伸縮性を有する矩形袋状の下層側内カバー23の内部に矩形板状の下層側マット24を収容している。
【0027】
ここで、下層側マット24は、耐久性や洗浄性などに優れる硬綿製のものを使用し、左右幅方向に伸延する凹状のスリット25を所定の間隔をあけて形成して屈曲性を向上させている。なお、下層側マット24よりも上層側上下マット20,21の圧縮時の残留歪みが小さくなるようにして、横臥している人の背中を直接的に押圧する上層側マットレス構成体16に生じる歪みを下層側マットレス構成体17よりも小さくなるようにしている。
【0028】
連結体18は、上層側マットレス構成体16の上層側内カバー19の左右側部に前後に伸延する帯状の連結片26の上辺を取付ける一方、下層側マットレス構成体17の下層側内カバー23の左右側部に前後に伸延する帯状の連結片27の下辺を取付け、連結片26の下辺と連結片27の上辺とをファスナー28で切離可能に連結している。
【0029】
この連結体18は、図3に示すように、リクライニングベッド2の受台4の上部にマットレス1を載置した状態において、頭頂部から所定距離(L1)だけ離れた位置と足先部から所定距離(L2)だけ離れた位置との間で上層側マットレス構成体16の左右側部と下層側マットレス構成体17の左右側部とを接続している。
【0030】
特に、ここでは、頭頂部からの所定距離(L1)を背ボトム10の長さ(先端部から基端部の距離)(L3)よりも短くして、頭頂部から所定距離(L1)だけ離れた位置が、背ボトム10の基端部よりも頭頂部側となるようにしている。
【0031】
また、足先部からの所定距離(L2)を下腿ボトム14の長さ(先端部から基端部の距離)(L4)よりも長くして、足先部から所定距離(L2)だけ離れた位置が、下腿ボトム14の基端部よりも反足先部側(足先部側の反対側であって上腿ボトム13の基端部と先端部との間)となるようにしている。
【0032】
マットレス1は、以上に説明したように構成しており、図5(a)に示すように、リクライニングベッド2の背ボトム10を起立させると、背ボトム10の基端部においてマットレス1が屈曲し、その際に、下層側マットレス構成体17に対して上層側マットレス構成体16がずれる。そのため、マットレス1の屈曲部において歪みの発生が抑制される。
【0033】
その後、図5(b)に示すように、リクライニングベッド2の背ボトム10を倒伏させると、上層側マットレス構成体16と下層側マットレス構成体17とが連結体18で連結されているために、下層側マットレス構成体17に対して上層側マットレス構成体16が逆方向にずらす力が作用して上下層側マットレス構成体16,17のずれを元通りに復元させる。
【0034】
なお、上腿ボトム13及び下腿ボトム14を起倒させた場合にも同様に、起立時にずれが生じて屈曲部での歪みの発生が抑制されるとともに、倒伏時にずれが復元される。
【0035】
その際に、背ボトム10が起倒する部分では、背ボトム10の基端部(回転中心)よりも内側でマットレス1が谷折状に折曲されるために、背ボトム10の基端部よりも頭頂部側まで連結体18で上下層マットレス構成体16,17を連結していないと、マットレス1が内側に撓んで横臥している人の背部を圧迫してしまう。そのため、頭頂部から所定距離(L1)だけ離れた位置を、背ボトム10の基端部よりも頭頂部側にしている。
【0036】
一方、上腿ボトム13に対して下腿ボトム14が起倒する部分では、下腿ボトム14の基端部(回転中心)よりも外側でマットレス1が山折状に折曲されるために、下腿ボトム14の基端部よりも足先部側まで連結体18で上下層マットレス構成体16,17を連結していると、マットレス1が上腿ボトム13及び下腿ボトム14に沿って円滑に折曲できずに突っ張った状態となってしまう。そのため、足先部から所定距離(L2)だけ離れた位置を、下腿ボトム14の基端部よりも反足先部側にしている。
【0037】
以上に説明したように、上記マットレス1は、上層側マットレス構成体16と下層側マットレス構成体17とを上下に層状に積層するとともに、上層側マットレス構成体16の左右側部と下層側マットレス構成体17の左右側部とを頭頂部から所定距離(L1)離れた位置と足先部から所定距離(L2)離れた位置との間で連結した構成としている。
【0038】
そのため、上記構成のマットレス1では、背ボトム10の起立時に上下層側マットレス構成体16,17がずれることで歪みの発生を抑制することができるとともに、背ボトム10の倒伏時に上下層側マットレス構成体16,17のずれを元通りに復元させることができ、これにより、横臥している人の背部を圧迫することなくリクライニングベッド2(マットレス1)の使用感を向上させることができる。
【0039】
また、上記マットレス1は、上層側マットレス構成体16と下層側マットレス構成体17とを切離可能に連結した構成としている。
【0040】
そのため、上記構成のマットレス1では、上下層側マットレス構成体16,17を分離してそれぞれ交換や清掃などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0041】
また、上記マットレス1は、頭頂部から所定距離(L1)離れた位置を背ボトム10の基端部よりも頭頂部側としている。
【0042】
そのため、上記構成のマットレス1では、背ボトム10の基端部よりも頭頂部側での歪みの発生を確実に防止することができる。
【0043】
さらに、上記マットレス1は、足先部から所定距離(L2)離れた位置を起倒可能な上腿ボトム13の先端部に回動可能に接続した下腿ボトム14の基端部よりも反足先部側としている。
【0044】
そのため、上記マットレス1では、上下腿ボトム13,14を起倒可能としたリクライニングベッド2においても下腿ボトム14の基端部よりも足先部側での歪みの発生を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 マットレス 2 リクライニングベッド
3 基台 4 受台
5 メインフレーム 6,7 脚体
8 ヘッドボード 9 フットボード
10 背ボトム 11 回転軸
12 尻ボトム 13 上腿ボトム
14 下腿ボトム 15 外カバー
16 上層側マットレス構成体 17 下層側マットレス構成体
18 連結体 19 上層側内カバー
20 上層側上マット 21 上層側下マット
22 スリット 23 下層側内カバー
24 下層側マット 25 スリット
26 連結片 27 連結片
28 ファスナー
101 リクライニングベッド 102 基台
103 背ボトム 104,105,106 マットレス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背ボトムを起倒可能としたリクライニングベッドで用いるマットレスにおいて、
上層側マットレス構成体と下層側マットレス構成体とを上下に層状に積層するとともに、上層側マットレス構成体の左右側部と下層側マットレス構成体の左右側部とを頭頂部から所定距離離れた位置と足先部から所定距離離れた位置との間で連結したことを特徴とするマットレス。
【請求項2】
前記上層側マットレス構成体と下層側マットレス構成体とを切離可能に連結したことを特徴とする請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記頭頂部から所定距離離れた位置は、背ボトムの基端部よりも頭頂部側としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記足先部から所定距離離れた位置は、起倒可能な上腿ボトムの先端部に回動可能に接続した下腿ボトムの基端部よりも反足先部側としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のマットレス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−59497(P2013−59497A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199751(P2011−199751)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【特許番号】特許第5138081号(P5138081)
【特許公報発行日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【出願人】(599139442)株式会社プラッツ (9)
【Fターム(参考)】