説明

マトリックス型経皮投与剤およびその製造方法

【課題】 カプサイシンまたはカプサイシン誘導体を活性成分として含み、神経障害の治療、鎮痛、または消炎のために使用されるマトリックス型経皮投与剤およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 前記マトリックス型経皮投与剤は、薬物保護層;カプサイシンまたはカプサイシン誘導体0.1〜25重量%、非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤40〜95重量%、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール1〜30重量%、非イオン性界面活性剤0.1〜20重量%、および親水性高分子を含む溶解補助剤0.1〜20重量%を含み、前記薬物保護層上に形成されるマトリックス層;および前記マトリックス層上に形成される剥離層;を含み、神経障害の治療、鎮痛、または消炎のために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カプサイシンまたはカプサイシン誘導体を活性成分として含み、神経障害(neuropathy)の治療、鎮痛、または消炎のために使用されるマトリックス型経皮投与剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体を活性成分として含み、神経障害の治療、鎮痛、または消炎などに使用されるマトリックス型経皮投与剤およびその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、活性成分であるカプサイシンまたはカプサイシン誘導体の皮膚透過力を向上させることができ、このような活性成分の薬効持続時間を延長することができる、マトリックス型経皮投与剤に関する。また、本発明は、前記マトリックス型経皮投与剤の製造をより短時間で容易に行うことができる、マトリックス型経皮投与剤の製造方法に関する。
【0003】
カプサイシンは、唐辛子の辛味成分で、N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−8−メチルノナ−6−エンアミド)の化学式で表示される。このようなカプサイシンは、投与初期に感覚神経の痛覚神経細胞を興奮させて痛みを誘発し、様々な炎症メディエーターを放出させるが、持続的に投与すれば、神経細胞が無力化され、カプサイシンだけでなく他の外部刺激にも無感覚な状態になるという事実がよく知られている。このようなカプサイシンの作用を脱感作ともいう。
【0004】
このような脱感作による鎮痛効果は、他の鎮痛剤の鎮痛効果とはその作用機序が異なっており、その鎮痛効果は、モルヒネと同様に強力であると言われている。また、前記カプサイシンは、神経障害の治療または消炎などにも効果的に使用されると言われている。しかし、カプサイシンは、経口投与初期に興奮効果を示して、低体温症、気管支収縮、消化管運動性の増加、低血圧などの心血管系の副作用、または呼吸器系の副作用を起こすことがある。
【0005】
このようなカプサイシンの経口投与時の副作用を抑制するために、前記カプサイシンを経皮投与剤に製剤化しようとする様々な研究が進められてきた。代表的には、軟膏に製剤化された製品が現在市販されており、現在、パッチなどの経皮投与剤に製剤化しようとする研究が進められている。
【0006】
前記軟膏のような局所作用製剤に関する技術は、下記特許文献1、下記特許文献2、下記特許文献3、および下記特許文献4などに開示されている。より具体的には、これらの特許で開示された技術は、主にゲル、ローション、または軟膏などの医薬組成物に関するものであって、これらの医薬組成物は、活性成分を密封する薬物保護層がなく、皮膚に直接塗って使用する。しかし、前記カプサイシンは、揮発性が比較的高いので、このようなカプサイシンを薬物保護層のない軟膏などに製剤化すると、その匂いが呼吸器系を刺激して、経口投与時と類似した副作用が起こることがある。さらには、前記カプサイシンを軟膏などに製剤化すると、カプサイシンの皮膚透過力が低下し、薬効持続時間が短くなるため、一日に3〜4回以上手で塗らなければならない。このような過程で、手にカプサイシンが残り、不必要に皮膚への刺激または痛みを起こすことがあり、衣服にも軟膏がつくなど、非常に不便である。特に、カプサイシンを利用した痛みなどの治療のためには、軟膏を長期間にわたって塗らなければならないので、非常に不便である。
【0007】
一方、下記特許文献5には、薬物保護層、カプサイシンを含むポリシロキサン系層、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチルセルロース、およびシリコンオイルを含むパッチが開示されている。
【0008】
また、下記特許文献6には、高容量のカプサイシンが含まれているパッチを皮膚に短時間適用した後、パッチの除去後に、クレンジングジェルを利用して皮膚に残っているカプサイシンを除去する方法が開示されている。このような方法では、高容量のカプサイシンを適用することによって皮膚への刺激が激しく起こり、パッチの除去後に、別途クレンジングジェルを利用して皮膚から拭き取らなければならないので不便である。また、前記パッチに製剤化しても、カプサイシンの薬効持続時間を十分に向上させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,178,879号
【特許文献2】米国特許第5,910,512号
【特許文献3】米国特許第6,348,501号
【特許文献4】米国特許第6,593,370号
【特許文献5】米国特許公開第2004/0202707号
【特許文献6】国際特許公開WO04/021990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、活性成分であるカプサイシンまたはカプサイシン誘導体の皮膚透過力を向上させることができ、このような活性成分の薬効持続時間を延長することができるマトリックス型経皮投与剤を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記マトリックス型経皮投与剤をより短時間で容易に製造することができるマトリックス型経皮投与剤の製造方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態によるマトリックス型経皮投与剤の概略断面図である。
【図2】実施例1〜4および比較例1のマトリックス型経皮投与剤を適用した時の、透過した薬物の蓄積量を経時的に示したグラフである。
【図3】実施例5〜8および比較例2のマトリックス型経皮投与剤を適用した時の、透過した薬物の蓄積量を経時的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明が目的とする技術的課題は、前述した技術的課題に限られず、前述した以外の技術的課題は、下記の記載から当業者が明確に理解できる。
【0014】
本発明の一実施形態によって、薬物保護層;カプサイシンまたはカプサイシン誘導体0.1〜25重量%と、非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤40〜95重量%と、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール1〜30重量%と、非イオン性界面活性剤0.1〜20重量%と、親水性高分子を含む溶解補助剤0.1〜20重量%とを含み、前記薬物保護層上に形成されるマトリックス層;および前記マトリックス層上に形成される剥離層;を含み、神経障害の治療、鎮痛、または消炎のために使用されるマトリックス型経皮投与剤が提供される。
【0015】
以下、本発明の実施形態によるマトリックス型経皮投与剤をより具体的に説明する。
【0016】
本発明の一実施形態によるマトリックス型経皮投与剤は、基本的に、順次に積層された薬物保護層、マトリックス層、および剥離層を含む。
【0017】
このようなマトリックス型経皮投与剤の積層構造で、前記薬物保護層は、活性成分(薬物)が含まれているマトリックス層を覆って、薬物が衣服についたり活性成分が揮発して失われるのを防ぐ役割を果たす。このような薬物保護層は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、もしくはレーヨンからなるフィルムまたは不織布を含むのが好ましい。前記マトリックス型経皮投与剤は、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体を活性成分として含み、神経障害の治療、鎮痛、または消炎などのために使用されるものであって、これらの用途で使用される経皮投与剤は、関節、手の指、または足の指などの身体の様々な折れ曲がる部位への適用が容易である。したがって、前記薬物保護層が所定の材料からなるフィルムまたは不織布を含むことによって、前記マトリックス型経皮投与剤が身体の様々な折れ曲がる部位に適切に適用される。
【0018】
また、前記積層構造で、前記剥離層は、マトリックス型経皮投与剤が皮膚に貼付される前には活性成分が含まれているマトリックス層を覆って保護し、皮膚貼付の直前に除去される層である。このような剥離層は、マトリックス型経皮投与剤、例えばパッチの剥離層に通常適用される薬物不透過性フィルムを含む。
【0019】
そして、前記薬物保護層および剥離層の間に形成される前記マトリックス層は、活性成分を含み、次のような多様な成分を含む。まず、前記マトリックス層は、活性成分としてカプサイシンまたはカプサイシン誘導体を含む。前記マトリックス層がこのような活性成分を含むことによって、前記マトリックス型経皮投与剤は、神経障害の治療、鎮痛、または消炎などに使用される。
【0020】
このような活性成分、つまりカプサイシンまたはカプサイシン誘導体は、神経障害の治療、鎮痛、または消炎のために使用される任意のカプサイシン系物質を含む。例えば、前記カプサイシンまたはカプサイシン誘導体は、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、カプサゼピン、N−バニリルノナンアミド、(Z)−カプサイシン、(E)−カプサイシン、および6−ヨードノルジヒドロカプサイシンからなる群より選択される一つの物質または二つ以上の混合物を含む。
【0021】
このようなカプサイシンまたはカプサイシン誘導体は、マトリックス層を構成する成分中に0.1〜25重量%の含有量で含まれ、好ましくは0.5〜10重量%の含有量で含まれる。前記カプサイシンまたはカプサイシン誘導体の含有量が0.1重量%未満である場合には、活性成分の濃度の減少によってその皮膚吸収率が過度に低下して薬効を発揮するのが難しく、その含有量が25重量%を超過する場合には、活性成分が経皮投与剤内でうまく溶解されずに析出されることがある。
【0022】
また、前記マトリックス層は、前記活性成分であるカプサイシンまたはカプサイシン誘導体以外に、次のような成分を含む。
【0023】
前記マトリックス層は、非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を含む。前記非水溶性アクリル系高分子は、通常の硬膏剤(plaster)などに粘着剤として使用されている水溶性高分子に比べて粘着力が優れており、粘着耐久性も優れている。また、前記カプサイシンまたはカプサイシン誘導体は、水にほとんど溶解せず(practically insoluble)、融点(60〜65℃)が低いので、前記非水溶性アクリル系高分子を粘着剤として含むのが望ましい。これは、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体は非水溶性アクリル系高分子が溶解した有機溶媒に対する溶解度が高いので、前記非水溶性アクリル系高分子を粘着剤として使用すると、マトリックス層内の活性成分の濃度を上げることができるためである。これによって、経皮投与剤内の活性成分の濃度を上げて、皮膚吸収率(皮膚透過力)を向上させることができ、粘着力も優れているので、経皮投与剤を1日以上、好ましくは3日以上皮膚に適用しても、優れた薬効や特性を示すことができる。また、粘着耐久性が優れた非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を使用することによって、粘着剤の使用量を減少させて、経皮投与剤の厚さを例えば30〜300μm、好ましくは100〜200μmに減少させることができるので、身体の折れ曲がる部位に長時間適用しても、経皮投与剤の貼付感が優れている。
【0024】
このような非水溶性アクリル系高分子は、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、ビニルアクリレート、およびビニルアクリル酸からなる群より選択される一つ以上の単量体が重合した単一重合体または共重合体を含み、その他にも限定されることなく、多様なアクリル系単量体が重合した単一重合体または共重合体を含む。
【0025】
また、前記粘着剤は、前記非水溶性アクリル系高分子を単独で含んでもよく、マトリックス型経皮投与剤に粘着剤として使用されている他の高分子と共に含んでもよい。例えば、前記非水溶性アクリル系高分子と共にビニルアセテート系高分子、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの天然または合成ゴムや、エチレンビニルアセテート系共重合体、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリウレタンなどを含むことができる。
【0026】
そして、前記非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤は、前記マトリックス層内に40〜95重量%の含有量で含まれ、好ましくは45〜85重量%の含有量で含まれる。前記粘着剤の含有量が40重量%未満である場合には、マトリックス層およびこれを含むマトリックス型経皮投与剤が適切な皮膚粘着性を有するのが難しく、95重量%を超過する場合には、マトリックス層の他の成分の有効含有量を含むのが難しい。
【0027】
また、前記マトリックス層は、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール、非イオン性界面活性剤、またはこれらの混合物を吸収促進剤として含む。前記活性成分であるカプサイシンまたはカプサイシン誘導体は、600ダルトン以下の低い分子量を有するアルコールに対して高い溶解度を示す。したがって、前記活性成分は、マトリックス層内で前記アルコールに対して高い溶解度で溶解していて、活性成分の濃度差によって徐々に皮膚側に移動し、この時、前記非イオン性界面活性剤がこのような活性成分の皮膚側への移動をより促進させる。したがって、前記アルコールおよび非イオン性界面活性剤といった吸収促進剤がマトリックス層に含まれることによって、前記活性成分の皮膚透過力が大きく向上し、マトリックス型経皮投与剤を皮膚に貼付した時の薬効持続時間が1日以上、好ましくは3日以上最大7日まで延長される。
【0028】
前記吸収促進剤のうち、前記アルコールは、600ダルトン以下の分子量を有するC−C12のアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、トリアセチン、トランスキトール、プロピレングリコール、グリセリン、および600ダルトン以下の分子量を有するポリエチレングリコールからなる群より選択される一つの物質または二つ以上の混合物を含み、好ましくはプロピレングリコール、トリアセチン、またはトランスキトールを含む。
【0029】
一方、一般に、界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、両性、および非イオン性に分類され、これらの界面活性剤は、全て前記活性成分の皮膚側への移動を促進させることができる。ただし、非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤は皮膚を損傷させることがあり、非イオン性界面活性剤のみがこのような皮膚の損傷を減少させることができると報告されている(K.A.Water、Penetration enhancers and their use in transdermal therapeutic system、Transdermal Drug Delivery、pp212−224、Dekker、(1989):およびEagle et al.,J.Toxicol.cut and Ocular toxicol、11、77−92(1992))。したがって、前記マトリックス層は、非イオン性界面活性剤を吸収促進剤として含む。
【0030】
このような非イオン性界面活性剤としては、例えばグリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノリノレート、グリセロールトリラウレート、グリセロールトリオレエート、グリセロールトリカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールジラウレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、メチルラウレート、メチルカプレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルオレエート、オレイルオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレン−9−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール−40水添ヒマシ油、ポリエチレングリコール−35水添ヒマシ油、オクトキシノール−11、ツイン(Tween)の脂肪酸エステルおよびスパン(Span)の脂肪酸エステルからなる群より選択される一つの物質または二つ以上の混合物を使用することができ、好ましくはソルビタンモノオレエート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、またはソルビタンモノラウレートを使用することができる。ただし、これらの物質に限定されず、その他にも限定されることなく、多様な非イオン性界面活性剤を使用することができる。
【0031】
前述した吸収促進剤は、一定の含有量まではこれに比例して活性成分の皮膚透過力を向上させるが、それ以上の含有量では前記活性成分の皮膚透過力をあまり向上させず、むしろ皮膚に対する刺激や損傷を増加させる。したがって、前記吸収促進剤のうち、前記アルコールは、マトリックス層内に1〜30重量%の含有量で含まれ、好ましくは5〜25重量%の含有量で含まれる。また、前記非イオン性界面活性剤は、前記マトリックス層内に0.1〜20重量%の含有量で含まれ、好ましくは1〜15重量%の含有量で含まれる。
【0032】
また、前記吸収促進剤、つまり前記非イオン性界面活性剤およびアルコールは、前記マトリックス層内に非イオン性界面活性剤:アルコール=1:1ないし1:4の重量比で含まれる。前記吸収促進剤をこのような重量比で含むことによって、皮膚への刺激や損傷を減少させて、前記活性成分の皮膚透過力および薬効持続時間をより向上させることができる。
【0033】
前記マトリックス層は、また、親水性高分子を含む溶解補助剤を含む。このような溶解補助剤は、マトリックス層内の活性成分の濃度を安定的に維持するか、またはその安定性をより高める役割を果たす。
【0034】
このような溶解補助剤に含まれる前記親水性高分子は、例えばポリビニルピロリドン、コロイド状二酸化ケイ素(colloidal silicone dioxide)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボポール、およびポロキサマーからなる群より選択される一つの物質または二つ以上の混合物を含み、その他にも限定されることなく、多様な親水性高分子を含み、好ましくはポリビニルピロリドン、コロイド状二酸化ケイ素、またはポロキサマーのうちの一つまたは二つ以上の混合物を含む。
【0035】
また、前記溶解補助剤は、マトリックス層内に0.1〜20重量%の含有量で含まれ、好ましくは1〜15重量%の含有量で含まれる。
【0036】
一方、前述したマトリックス層は、単一層として形成されてもよいが、二つ以上の層の積層構造として形成されてもよい。例えば、前記マトリックス層は、一つ以上の粘着層および薬物含有層の積層構造として形成されて、前述した各成分を層別に分けて含むか、または一部の成分を共に含むことができる。
【0037】
以下、本発明の他の実施形態によるマトリックス型経皮投与剤が提供される。このようなマトリックス型経皮投与剤は、薬物保護層;非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を含み、前記薬物保護層上に形成される第1粘着層;カプサイシンまたはカプサイシン誘導体を含み、前記第1粘着層上に形成される薬物含有層;非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を含み、前記薬物含有層上に形成される第2粘着層;および前記第2粘着層上に形成される剥離層;を含む。前記第1粘着層または第2粘着層の少なくとも一つの層は、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール、非イオン性界面活性剤、または親水性高分子を含む溶解補助剤をさらに含み、前記薬物含有層は、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール、非イオン性界面活性剤、または親水性高分子を含む溶解補助剤をさらに含むことができる。前記カプサイシンまたはカプサイシン誘導体を活性成分として含むことによって、本発明のマトリックス型経皮投与剤は、神経障害の治療、鎮痛、または消炎などのために使用される。
【0038】
具体的には、前記マトリックス型経皮投与剤は、薬物保護層;非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を含み、前記薬物保護層上に形成される第1粘着層;カプサイシンまたはカプサイシン誘導体と、600ダルトン以下の分子量を有するアルコールと、親水性高分子を含む溶解補助剤とを含み、前記第1粘着層上に形成される薬物含有層;非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を含み、前記薬物含有層上に形成される第2粘着層;および前記第2粘着層上に形成される剥離層;を含む。
【0039】
図1には本発明の本実施形態によるマトリックス型経皮投与剤の概略断面図が示されている。
【0040】
図1より、このようなマトリックス型経皮投与剤は、本発明の第1の実施形態と同様に、順次に積層された薬物保護層1、マトリックス層2a’、2b、2a’’、および剥離層3を含み、前記薬物保護層1は所定の材料からなるフィルムまたは不織布を、前記剥離層3は薬物不透過性フィルムをそれぞれ含む。
【0041】
また、前記マトリックス層2a’、2b、2a’’は、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体を活性成分として含み、これと共に、非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤と、600ダルトン以下の分子量を有するアルコールおよび非イオン性界面活性剤といった吸収促進剤と、親水性高分子を含む溶解補助剤とを含む。
【0042】
これらの各成分については、本発明の第1の実施形態において詳しく説明しているので、それ以上の具体的な説明は省略する。
【0043】
本発明の本実施形態によるマトリックス型経皮投与剤では、前記マトリックス層2a’、2b、2a’’が、順次に積層された第1粘着層2a’、薬物含有層2b、および第2粘着層2a’’を含む。
【0044】
このような積層構造で、前記第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’は、前記マトリックス層2a’、2b、2a’’の成分中の非揮発性成分を含むことができる。例えば、前記第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’は、前記非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を含み、これら第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’の少なくとも一つの層は、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール、非イオン性界面活性剤、または親水性高分子を含む溶解補助剤をさらに含む。
【0045】
また、前記薬物含有層2bは、揮発性成分、例えばカプサイシンまたはカプサイシン誘導体といった活性成分と、600ダルトン以下の分子量を有するアルコールと、親水性高分子を含む溶解補助剤とを主に含む。また、前記薬物含有層2bは、非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。
【0046】
このように、前記マトリックス層2a’、2b、2a’’の各成分を揮発性成分および非揮発性成分に分けて層別に含むことによって、前記マトリックス層2a’、2b、2a’’を含むマトリックス型経皮投与剤を短時間で容易に製造することができる。具体的には、前記マトリックス型経皮投与剤は、前記粘着剤、その他の非揮発性成分を含む組成物を前記薬物保護層1および剥離層3上に塗布した後に、前記組成物を乾燥して、これに含まれている有機溶媒を蒸発、除去して第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’を形成し、このような第1粘着層2a’または第2粘着層2a’’上に揮発性成分(活性成分)を含む組成物を塗布して製造することができる。このような製造方法では、前記揮発性成分、特にカプサイシンまたはカプサイシン誘導体といった活性成分を含まない非揮発性成分の組成物を塗布、乾燥して、揮発性成分の組成物を別途塗布することになるので、前記揮発性成分、特に前記活性成分が失われる恐れがなく比較的高い温度で短時間の内に乾燥工程を行うことができる。したがって、前記マトリックス層を含むマトリックス型経皮投与剤を短時間で容易に製造することができる。
【0047】
一方、前記第1粘着層2a’または第2粘着層2a’’がそれぞれ、前記粘着剤と共に前記非イオン性界面活性剤、前記アルコール、または前記溶解補助剤のいずれか一つまたは二つ以上の成分を含むか、または各層がこれらすべての成分を共に含むことができる。また、これら第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’のいずれか一つの層だけがこれらの成分のいずれか一つまたは二つ以上を含むか、または前記第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’のいずれもがこれらの成分のいずれか一つまたは二つ以上を含むこともできる。また、前記第1粘着層2a’または第2粘着層2a’’がこれらの成分を含まなくてももちろんよく、前記第1粘着層2a’および第2粘着層2a’は、同一または異なる組成であってもよい。
【0048】
ただし、好ましくは、前記第2粘着層2a’’は、前記粘着剤と共に前記非イオン性界面活性剤、前記アルコール、および前記溶解補助剤を含む。前記マトリックス型経皮投与剤が貼付された時に皮膚に触れる第2粘着層2a’’にこれらの成分が含まれることによって、薬物含有層2b内で前記アルコールに高濃度に溶解している活性成分が濃度差によって徐々に皮膚側の第2粘着層2a’’に移動して、溶解補助剤に助けられてアルコールに溶解することができ、第2粘着層2a’’の非イオン性界面活性剤によって活性成分の移動が促進されて、前記活性成分が皮膚に迅速に浸透することができる。前記非イオン性界面活性剤およびアルコールは、前記粘着層内に非イオン性界面活性剤:アルコール=1:1ないし1:4の重量比で含まれる。前記アルコールおよび非イオン性界面活性剤といった吸収促進剤がマトリックス層に含まれることによって、前述した作用によって、前記活性成分の皮膚透過力が大きく向上され、前記マトリックス型経皮投与剤を皮膚に貼付した時に、薬効持続時間が1日以上、好ましくは3日以上最大7日まで長期化される。
【0049】
一方、前記薬物含有層2bと薬物保護層1との間にある、皮膚と接触しない第1粘着層2a’は、前記粘着剤だけを含むこともできるが、より好ましくは、前記第1粘着層2a’も前記粘着剤と共に前記非イオン性界面活性剤、前記アルコール、および前記溶解補助剤を含むことができる。これにより、前記活性成分の皮膚透過力および薬効持続時間をより向上させることができる。
【0050】
前述したマトリックス層2a’、2b、2a’’の積層構造で、マトリックス層2a’、2b、2a’’の総重量を基準に、前記第1粘着層2a’は、前記粘着剤20〜75重量%、前記非イオン性界面活性剤0〜19.9重量%、前記アルコール0〜29重量%、および前記溶解補助剤0〜19.9重量%を含むことができ、前記薬物含有層2bは、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体0.1〜25重量%、非イオン性界面活性剤0〜15重量%、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール0〜30重量%、および親水性高分子を含む溶解補助剤0〜20重量%を含むことができ、第2粘着層2a’’は、前記粘着剤20〜75重量%、前記非イオン性界面活性剤0〜20重量%、前記アルコール0〜29重量%、および前記溶解補助剤0〜19.9重量%を含むことができる。前記第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’の少なくとも一つの層は、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール、非イオン性界面活性剤、または親水性高分子を含む溶解補助剤を含むことができる。
【0051】
例えば、前記マトリックス層2a’、2b、2a’’の積層構造で、マトリックス層2a’、2b、2a’’の総重量を基準に、前記第1粘着層2a’は、前記粘着剤20〜75重量%、前記非イオン性界面活性剤0〜19.9重量%、前記アルコール0〜29重量%、および前記溶解補助剤0〜19.9重量%を含むことができ、前記薬物含有層2bは、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体0.1〜25重量%、非イオン性界面活性剤0〜15重量%、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール1〜30重量%、および親水性高分子を含む溶解補助剤0.1〜20重量%を含むことができ、第2粘着層2a’’は、前記粘着剤20〜75重量%、前記非イオン性界面活性剤0.1〜20重量%、前記アルコール0〜29重量%、および前記溶解補助剤0〜19.9重量%を含むことができる。
【0052】
好ましくは、前述したマトリックス層2a’、2b、2a’’の積層構造で、マトリックス層2a’、2b、2a’の総重量を基準に、前記第1粘着層2a’は、前記粘着剤20〜75重量%、前記非イオン性界面活性剤0.1〜10重量%、前記アルコール0.1〜15重量%、および前記溶解補助剤0.1〜5重量%を含むことができ、前記薬物含有層2bは、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体0.1〜25重量%、非イオン性界面活性剤0〜5重量%、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール1〜15重量%、および親水性高分子を含む溶解補助剤0.1〜5重量%を含むことができ、第2粘着層2a’’は、前記粘着剤20〜75重量%、前記非イオン性界面活性剤0.1〜10重量%、前記アルコール0.1〜15重量%、および前記溶解補助剤0.1〜5重量%を含むことができる。
【0053】
前記マトリックス層2a’、2b、2a’’が各成分をこのような含有量比で層別に分けて含むことによって、前記活性成分であるカプサイシンまたはカプサイシン誘導体の皮膚透過力をより向上させることができ、前記マトリックス型経皮投与剤が皮膚に貼付された時の薬効持続時間を1日以上、好ましくは3日以上最大7日まで大幅に長期化することができる。
【0054】
好ましくは、前述したマトリックス層2a’、2b、2a’’の積層構造で、前記アルコールは、第1粘着層:薬物含有層:第2粘着層に1:1〜6:0.5〜3の重量比、好ましくは1:3〜4:1の重量比で含まれ、前記非イオン性界面活性剤は、第1粘着層:薬物含有層:第2粘着層に1:0〜1:0.5〜2の重量比、好ましくは1:0:1の重量比で含まれる。また、前記溶解補助剤は、第1粘着層:薬物含有層:第2粘着層に1:0〜1:0.2〜5の重量比、好ましくは3:1:3の重量比で含まれる。
【0055】
これらアルコールおよび非イオン性界面活性剤といった吸収促進剤、および溶解補助剤をこのような重量比で層別に分けて含むことによって、活性成分であるカプサイシンまたはカプサイシン誘導体を薬物含有層2bに高濃度に含むことができ、このような活性成分の濃度差および溶解度を利用して前記活性成分の皮膚透過力を極大化し、前記マトリックス型経皮投与剤が皮膚に貼付された時の薬効持続時間を長期化することができる。
【0056】
そして、前述したマトリックス層2a’、2b、2a’’の積層構造で、前記第1粘着層2a’は、10〜60μmの厚さを有することができ、前記第2粘着層2a’’は、10〜120μmの厚さを有することができる。また、前記第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’を合わせて30〜300μm、好ましくは50〜200μmの厚さを有することができる。
【0057】
さらに、本発明のまた他の実施形態によって、前述したマトリックス型経皮投与剤の製造方法が提供される。
【0058】
単一層のマトリックス型経皮投与剤は、前記薬物および賦形剤を単一混合器で均一に混合した後、薬物保護層1に塗布して乾燥して、単一のマトリックス層を形成した後、剥離層3で覆って完成する。
【0059】
二層以上の積層構造のマトリックス型経皮投与剤の製造方法では、まず、薬物保護層1および剥離層3上にそれぞれ非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を含む粘着溶液を塗布する。このような塗布工程では、前記粘着剤を含む粘着成分をn−ヘキサン、トルエン、または酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解して得られた粘着溶液を使用することができ、前記薬物保護層1および剥離層3の少なくとも一つの層上に塗布される粘着溶液は、非イオン性界面活性剤、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール、または親水性高分子を含む溶解補助剤をさらに含むか、またはこれらのすべての成分を共に含むことができる。つまり、必要に応じてこのような粘着溶液を塗布して、後に乾燥工程を行うことによって、前記粘着剤と共に前記非イオン性界面活性剤、前記アルコール、または前記溶解補助剤のいずれか一つまたは二つ以上の成分を選択的にさらに含む第1粘着層2a’または第2粘着層2a’’を形成することができる。
【0060】
前記塗布工程を行った後には、前記薬物保護層1および剥離層3上にそれぞれ塗布された粘着溶液を乾燥する。この時、塗布された粘着溶液を80〜120℃の高温で1ないし10分の短時間乾燥して、前記粘着溶液に含まれている有機溶媒を蒸発、除去することができる。これによって、前記薬物保護層1および剥離層3上にそれぞれ第1粘着層2a’および第2粘着層2a’’が形成される。
【0061】
ここで、前記薬物保護層1および剥離層3上にそれぞれ塗布された粘着溶液は、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体といった活性成分を含まず、前記乾燥工程で前記活性成分が揮発によって失われる恐れがないので、前記乾燥工程を高温で短時間の内に行うことができる。
【0062】
前記乾燥工程後には、前記第1粘着層2a’または第2粘着層2a’’上に揮発性成分、つまりカプサイシンまたはカプサイシン誘導体、親水性高分子を含む溶解補助剤、および600ダルトン以下の分子量を有するアルコールを塗布して、薬物含有層2bを形成する。この時、非イオン性界面活性剤と共に塗布することもできる。前記薬物含有層2bの製造工程では、乾燥工程を経ないので、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体を活性成分として含むマトリックス型経皮投与剤を活性成分の損失なく短時間で容易に量産することができる。
【0063】
このような塗布工程は、この揮発性成分が含まれている溶液をスプレー方式で噴射したり、ノズルによって一定量塗布することによって行うことができる。この時、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体といった活性成分と600ダルトン以下の分子量を有するアルコール(または非イオン性界面活性剤)との混合液に、親水性高分子を含む溶解補助剤を適切に添加することによって、前記塗布工程を行うのに適した粘性を有する溶液を得ることができる。また、前記塗布工程での溶液の噴射時間、メタリングポンプの速度、ノズルの大きさなどを適切に調節して、前記活性成分およびこれを含む薬物含有層2bの含有量を調節することができる。
【0064】
前記塗布工程後には、前記第1粘着層2a’と第2粘着層2a’’を互いが向き合うように接着して、順次に積層された第1粘着層2a’、薬物含有層2b、および第2粘着層2a’’を含むマトリックス層を形成することにより、最終的にマトリックス型経皮投与剤を製造することができる。
【0065】
前述のように、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体といった活性成分を本発明のマトリックス型経皮投与剤に製剤化することによって、前記活性成分の皮膚透過力を大きく向上させることができ、その薬効持続時間を1日以上、最大7日まで長期化することができる。
【0066】
したがって、前記本発明のマトリックス型経皮投与剤は、長期間の薬物投与が必要な神経障害の治療または痛みの治療などに適用されて、このような長期間の治療を容易に行うことができる。
【0067】
また、本発明の製造方法を利用して、前記活性成分を含むマトリックス型経皮投与剤の製造を短時間で容易に行うことができるので、前記マトリックス型経皮投与剤の経済的な量産が可能になる。
【0068】
以下、実施例により、本発明をより詳しく説明する。しかし、このような実施例は、例として提示されたものであり、本発明の権利範囲がこれによって決められるのではない。
<実施例1〜11>
【0069】
以下のような方法で、二つの粘着層2a’、2a’’の間に薬物含有層2bを介在させて積層し、マトリックス型経皮投与剤(パッチ)を製造した。マトリックス層2a’、2b、2a’’の組成成分は表1乃至3の通りである。
【0070】
50ml容量のサンプルボトルにアクリレート粘着剤(National Starch & Duro−Tak、87−2196、87−4098、87−4350、87−2852、87−2100)を投入した後、表1乃至3の吸収促進剤および溶解補助剤を添加して、粘着溶液が完全に均一な状態になるまで200rpmで攪拌した。前記粘着溶液の気泡を除去するために10分以上放置した。
【0071】
その後、薬物保護層フィルム(Vilene nonwoven polyester、3M nonwoven polyurethane 9905、3M spunlaced nonwoven polyester 1538、3M rayon nonwoven 1533、3M rayon acetate)上にこの粘着溶液を塗布して、ラボコーター/ドライヤー(Lab coater and Dryer、スイス Mathis社)を利用して80ないし120℃で8ないし12分間高温乾燥して、薬物保護層1および第1粘着層2a’を形成した。
【0072】
同様の方法で、剥離用フィルム3(3M Scotchpak 9744、1022、3M paper release liner 1361、9743)上に前記粘着溶液を塗布して、80ないし120℃で8ないし12分間高温乾燥して、剥離層3および第2粘着層2a’’を形成した。
【0073】
次に、50ml容量のサンプルボトルに表1乃至3の吸収促進剤、溶解補助剤、およびカプサイシン(Formosa Laboratory、台湾)を共に入れて、完全に均一な状態になるまで200rpmで攪拌した。その後、溶液の気泡を除去するために10分以上放置した。前記溶液を、乾燥した第2粘着層2a’’上にノズルを利用して塗布して、薬物含有層2bを形成した。
【0074】
前記第1粘着層2a’と第2粘着層2a’’を互いが向き合うように接着して、順次に積層された第1粘着層2a’、薬物含有層2b、および第2粘着層2a’’を含むマトリックス層を形成することにより、最終的に実施例1ないし11のマトリックス型経皮投与剤(パッチ)を製造した。
【0075】
実施例1ないし11のパッチは、活性成分の放出調節のために別途膜を含まない。したがって、皮膚組織への活性成分の放出を調節する唯一の障壁は、皮膚そのものまたは皮膚組織で最上部に位置した角質層になる。したがって、このような理論に基づいて、当業者に周知のフランツ拡散セル(Frantz Diffusion Cell)自動溶出試験機(米国 Hanson Research社)を用い、実施例1ないし11のパッチに対して人間の死体の皮膚(52才、男性、Caucasian、大腿部)での薬物(つまり、活性成分であるカプサイシン)透過実験を行なった。この実験結果を表1乃至3に示した。また、この実験結果のうち、皮膚に透過した薬物の経時的な蓄積量を図2および3に示した。参考のために、表1および図2には、実施例1ないし4のパッチに対する実験の結果を比較例1(市販のカプサイシン軟膏)と比較して示し、表2および図3には、実施例5ないし8のパッチに対する実験の結果を比較例2と比較して示し、表3には、実施例9ないし11のパッチに対する実験の結果を比較例3と比較して示した。
【0076】
参考のために、比較例1ないし3の市販のカプサイシン軟膏を、使用説明書に従って一日4回、6時間ごとに追加適用した。カプサイシン誘導体の使用濃度は、ドイツモノグラフ(German monograph、‘Capsicum’、1990)が推奨する濃度である10〜40μg/cmを採用した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1で、その他の成分は、第1粘着層、薬物含有層、および第2粘着層に、粘着剤を1:0:1、プロピレングリコールを1:3:1、スパン20を1:0:1、ポリビニルピロリドンを2:1:2、コロイド状二酸化ケイ素を3:1:3の重量比で含むように分配される。
【0079】
【表2】

【0080】
表2で、その他の成分は、第1粘着層、薬物含有層、および第2粘着層に、粘着剤を1:0:1、プロピレングリコールを1:4:1、ソルビタンモノオレエートを1:0:1、ポリビニルピロリドンを3:1:3、コロイド状二酸化ケイ素を2:1:2の重量比で含むように分配される。
【0081】
【表3】

【0082】
表3で、実施例9のその他の成分は、第1粘着層、薬物含有層、および第2粘着層に、粘着剤を1:0:1、プロピレングリコールを0:1:0、ソルビタンモノオレエートを1:0:0、ポリビニルピロリドンを2:1:2、コロイド状二酸化ケイ素を3:1:3の重量比で含むように分配される。また、実施例10のその他の成分は、第1粘着層、薬物含有層、および第2粘着層に、粘着剤を1:0:1、プロピレングリコールを1:4:1、ソルビタンモノオレエートを0:0:0、ポリビニルピロリドンを3:1:3、コロイド状二酸化ケイ素を2:1:2の重量比で含むように分配される。そして、実施例11のその他の成分は、マトリックス層が積層された構造でない単一層にすべての構成成分が含まれる。比較例4は、通常のマトリックス型経皮投与剤に利用される成分の組成で製造した。
【0083】
表1乃至3より、実施例1ないし11のパッチでは、比較例1ないし4に比べて、活性成分の皮膚透過力、つまり薬物透過量が大きく向上していることが確認された。その他の成分が各層別に分けられて含まれる場合、薬物透過量がより向上することがわかる。また、図2および3より、実施例1ないし8のパッチを皮膚に貼付することによって、比較例1ないし4の場合に比べて、時間の経過によって透過した薬物の体内蓄積量が大幅に増加し、薬効持続時間が大幅に延長されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物保護層;
カプサイシンまたはカプサイシン誘導体0.1〜25重量%、非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤40〜95重量%、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール1〜30重量%、非イオン性界面活性剤0.1〜20重量%、および親水性高分子を含む溶解補助剤0.1〜20重量%を含み、前記薬物保護層上に形成されるマトリックス層;および
前記マトリックス層上に形成される剥離層;を含むことを特徴とする、マトリックス型経皮投与剤。
【請求項2】
薬物保護層;
第1粘着層、薬物含有層、および第2粘着層を合わせた総重量を基準に、非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤20〜75重量%、非イオン性界面活性剤0〜19.9重量%、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール0〜29重量%、および親水性高分子を含む溶解補助剤0〜19.9重量%を含み、前記薬物保護層上に形成される第1粘着層;
カプサイシンまたはカプサイシン誘導体0.1〜25重量%、非イオン性界面活性剤0〜15重量%、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール0〜30重量%、および親水性高分子を含む溶解補助剤0〜20重量%を含み、前記第1粘着層上に形成される薬物含有層;
非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤20〜75重量%、非イオン性界面活性剤0〜20重量%、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール0〜29重量%、および親水性高分子を含む溶解補助剤0〜19.9重量%を含み、前記薬物含有層上に形成される第2粘着層;および
前記第2粘着層上に形成される剥離層;を含むことを特徴とする、マトリックス型経皮投与剤。
【請求項3】
前記カプサイシンまたはカプサイシン誘導体は、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、カプサゼピン、N−バニリルノナンアミド、(Z)−カプサイシン、(E)−カプサイシン、および6−ヨードノルジヒドロカプサイシンからなる群より選択される一つの物質または二つ以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項4】
前記非水溶性アクリル系高分子は、2−エチルヘキシルアクリレート、ビニルアクリレート、およびビニルアクリル酸からなる群より選択される一つ以上の単量体が重合した単一重合体または共重合体を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項5】
前記アルコールは、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、トリアセチン、トランスキトール、プロピレングリコール、グリセリン、および600ダルトン以下の分子量を有するポリエチレングリコールからなる群より選択される一つの物質または二つ以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤は、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノリノレート、グリセロールトリラウレート、グリセロールトリオレエート、グリセロールトリカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールジラウレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、メチルラウレート、メチルカプレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルオレエート、オレイルオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレン−9−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール−40水添ヒマシ油、ポリエチレングリコール−35水添ヒマシ油、オクトキシノール−11、ツイン(Tween)の脂肪酸エステル、およびスパン(Span)の脂肪酸エステルからなる群より選択される一つの物質または二つ以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項7】
前記親水性高分子は、ポリビニルピロリドン、コロイド状二酸化ケイ素、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボポール、およびポロキサマーからなる群より選択される一つの物質または二つ以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項8】
前記薬物保護層は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、もしくはレーヨンからなるフィルムまたは不織布を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項9】
前記マトリックス層は、前記非イオン性界面活性剤:前記アルコールを1:1ないし1:4の重量比で含むことを特徴とする、請求項1に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項10】
前記アルコールは、第1粘着層:薬物含有層:第2粘着層に1:1〜6:0.5〜3の重量比で含まれることを特徴とする、請求項2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤は、第1粘着層:薬物含有層:第2粘着層に1:0〜1:0.5〜2の重量比で含まれることを特徴とする、請求項2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項12】
前記溶解補助剤は、第1粘着層:薬物含有層:第2粘着層に1:0〜1:0.2〜5の重量比で含まれることを特徴とする、請求項2に記載のマトリックス型経皮投与剤。
【請求項13】
薬物保護層および剥離層上にそれぞれ非水溶性アクリル系高分子を含む粘着剤を含む粘着溶液を塗布する工程;
塗布された粘着溶液を乾燥する工程;
前記薬物保護層または剥離層上に塗布された粘着溶液上に、カプサイシンまたはカプサイシン誘導体、親水性高分子を含む溶解補助剤、および600ダルトン以下の分子量を有するアルコールを塗布する工程;および
前記粘着溶液が塗布された面が互いに向き合うように前記薬物保護層と剥離層を接着する工程;を含むことを特徴とする、マトリックス型経皮投与剤の製造方法。
【請求項14】
前記薬物保護層または剥離層の少なくとも一つの層上に、非イオン性界面活性剤、600ダルトン以下の分子量を有するアルコール、またはこれらの混合物をさらに含む請求項13に記載の粘着溶液を塗布することを特徴とする、マトリックス型経皮投与剤の製造方法。
【請求項15】
前記薬物保護層または剥離層の少なくとも一つの層上に、親水性高分子を含む溶解補助剤をさらに含む粘着溶液を塗布することを特徴とする、請求項13または14に記載のマトリックス型経皮投与剤の製造方法。
【請求項16】
前記剥離層上に、前記粘着剤、前記非イオン性界面活性剤、前記アルコール、および前記溶解補助剤を含む粘着溶液を塗布することを特徴とする、請求項15に記載のマトリックス型経皮投与剤の製造方法。
【請求項17】
前記薬物保護層上に、前記粘着剤、前記非イオン性界面活性剤、前記アルコール、および前記溶解補助剤を含む粘着溶液を塗布することを特徴とする、請求項16に記載のマトリックス型経皮投与剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−529116(P2010−529116A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511118(P2010−511118)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003166
【国際公開番号】WO2008/150120
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(500578515)サムヤン コーポレイション (20)
【Fターム(参考)】