説明

マネキンの製造方法

【課題】
誰でも簡単にバイオマス樹脂からなるマネキンを製造することができるマネキンの製造方法を提供する。
【解決手段】
ブロー成形によって製造するマネキンの製造方法である。5〜95重量%のバイオマス材料を含むバイオマス樹脂のペレットをホッパー2からスクリュー内蔵管6に送る。スクリュー内蔵管6内においてバイオマス樹脂のペレットを加熱融解してスクリュー7にて攪拌しつつ射出室11内へ移送する。射出室11内においてバイオマス樹脂をバイオマス材料の適正融解温度まで加熱した後にマネキン金型16内に射出して熔融中空体17を形成する。当該熔融中空体17に圧縮空気を吹き込み、熔融中空体17を膨張させてマネキン金型16の内面に接触させてマネキンMを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形によりマネキンを製造するマネキンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マネキンの製造方法は、ポリエチレン樹脂をホッパーに入れ、ホッパーからポリエチレン樹脂をスクリュー内蔵管内に供給する。スクリュー内蔵管内でポリエチレン樹脂を融解・攪拌して射出室へ送る。射出室内のポリエチレン樹脂は、ダイスの隙間から金型内へ射出されて熔融中空体を形成する。金型を閉じてから、ノズルにより熔融中空体内に圧縮空気を送ると、熔融中空体が膨脹して金型内面に接触する。この状態で冷却させるとポリエチレン樹脂が硬化してマネキンが成形され、金型を分割してこのマネキンを取り出し、バリをとって完成する。
【0003】
従来の製造方法によって製造されたマネキンは、石油由来の熱可塑性樹脂によって成形されているので、産業廃棄物として処理され、簡単に廃棄できるものではなく、しかも廃棄の際に発生する二酸化炭素などの地球温暖化ガスが大量に増加するので、自然環境にあまり好ましいものではない。本願出願人は、このような観点から、産業廃棄物ではなく一般廃棄物として廃棄処理でき、しかも廃棄にあたって二酸化炭素の増加が少なく自然環境に優しい、バイオマス樹脂からなるマネキン人形の製造方法を提案した(特許文献1)。
【0004】
上記した本願出願人が提案したマネキン人形の製造方法は、ベース素材前型及び後型の内面にバイオマス熱硬化性樹脂溶液を塗り重ね、次にバイオマスシートを貼り、さらにこのバイオマスシートにバイオマス熱硬化性樹脂溶液を塗って前半身及び後半身を形成し、前型と後型を重ね合わせて前半身と後半身を接合させ、硬化後に前型及び後型を外すと、マネキン人形が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009−92609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した本願出願人が提案した製造方法により製造したマネキン人形は、一般廃棄物として廃棄処理でき、廃棄処理に発生する有害物質、二酸化炭素の発生が少なく、そのため、自然環境に優しいものである。しかし、このマネキン人形の製造方法は、手作業で行うため製作が面倒であり、しかも均一に塗り重ねる技術及び所定の厚みに塗り重ねる技術等の熟練性が必要であり、誰でもが簡単に製造することができないという問題点があった。
【0007】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、誰でも簡単にバイオマス樹脂からなるマネキンを製造することができるマネキンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1記載のマネキンの製造方法は、上記目的を達成するため、ブロー成形によって製造するマネキンの製造方法であって、5〜95重量%のバイオマス材料を含むバイオマス樹脂のペレットをホッパーからスクリュー内蔵管に送り、スクリュー内蔵管内において前記バイオマス樹脂のペレットを加熱融解し、この融解したバイオマス樹脂をスクリューにて攪拌しつつ射出室内へ移送し、射出室内においてバイオマス樹脂をバイオマス材料の適正融解温度まで加熱した後にマネキン金型内に射出して熔融中空体を形成し、当該熔融中空体に圧縮空気を吹き込み、熔融中空体を膨張させてマネキン金型の内面に接触させ、熔融中空体をマネキン金型の内面に接触させた状態で冷却固化させてマネキンを製造することを特徴とする。
【0009】
本願請求項2記載のマネキンの製造方法は、上記目的を達成するため、ブロー成形によって製造するマネキンの製造方法であって、5〜95重量%の米材料を含むバイオマス樹脂のペレットをホッパーからスクリュー内蔵管に送り、スクリュー内蔵管内において前記バイオマス樹脂のペレットを加熱融解し、この融解したバイオマス樹脂をスクリューにて攪拌しつつ射出室内へ移送し、射出室内においてバイオマス樹脂を米材料の適正融解温度である165℃〜170℃まで加熱した後にマネキン金型内に射出して熔融中空体を形成し、当該熔融中空体に圧縮空気を吹き込み、熔融中空体を膨張させてマネキン金型の内面に接触させ、熔融中空体をマネキン金型の内面に接触させた状態で冷却固化させてマネキンを製造することを特徴とする。
【0010】
本願請求項3記載のマネキンの製造方法は、上記目的を達成するため、ブロー成形によって製造するマネキンの製造方法であって、5〜95重量%の貝殻材料を含むバイオマス樹脂のペレットをホッパーからスクリュー内蔵管に送り、スクリュー内蔵管内において前記バイオマス樹脂のペレットを加熱融解し、この融解したバイオマス樹脂をスクリューにて攪拌しつつ射出室内へ移送し、射出室内においてバイオマス樹脂を貝殻材料の適正融解温度である180℃〜190℃まで加熱した後にマネキン金型内に射出して熔融中空体を形成し、当該熔融中空体に圧縮空気を吹き込み、熔融中空体を膨張させてマネキン金型の内面に接触させ、熔融中空体をマネキン金型の内面に接触させた状態で冷却固化させてマネキンを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明に係るマネキンの製造方法によれば、ブロー成形により、誰でも簡単にバイオマス樹脂からなるマネキンを製造することができるという効果がある。本願発明に係るマネキンの製造方法により製造されたマネキンは、一般廃棄物として廃棄処理でき、廃棄処理に発生する有害物質、二酸化炭素の発生が少なく、そのため、自然環境に優しいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係るマネキンの製造方法の第1工程を示す断面図である。
【図2】本願発明に係るマネキンの製造方法の第2工程を示す断面図である。
【図3】本願発明に係るマネキンの製造方法の第3工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
マネキンMをブロー成形によって製造するための製造装置について説明する。図1に示すように、製造装置1は、樹脂材料を蓄積するホッパー2と、樹脂材料を融解しながら射出室11に送るスクリュー内蔵管6と、マネキンMを成形するための金型16と、金型16内に圧縮空気を送り込むノズル23とからなる。ホッパー2は、口部3開口に向かって傾斜する傾斜面5を有し、口部3がスクリュー内蔵管6に接続され、内部の樹脂材料を自重によりスクリュー内蔵管6内に送るようになっている。
【0014】
スクリュー内蔵管6には、スクリュー7が設けられている。スクリュー7は、駆動モータ9とプーリ等の動力伝達手段10によって一方向に回転するように構成されている。また、スクリュー内蔵管6は、図示しない手段によって加熱され、内部の樹脂材料を加熱融解させるようになっている。スクリュー内蔵管6の先端は、射出室11の側面に接続され、スクリュー内蔵管6内で融解された樹脂材料がスクリュー7によって攪拌されて射出室11内に移送される。
【0015】
射出室11は、下部が開放されており、下部に円板状のダイス12が設けられている。射出室11内でも樹脂材料がさらに加熱され、樹脂材料はダイス12と射出室11の隙間13から金型16内に円筒状に射出されて熔融中空体17を形成する。なお、射出室11内にピストンを設け、当該ピストンにより樹脂材料を射出するようにしても良い。金型16は、前半体19と後半体20とからなり、図2に示すように、前半体19と後半体20とが接合して内部にマネキンの雌型21が形成される。金型16は、前半体19と後半体20が離間している状態の時に、前記射出室11から射出された樹脂材料の熔融中空体17が前半体19と後半体20間で形成される。金型16の下部には、金型16内に圧縮空気を送り込むノズル23の先端を金型16内部に突出させる挿通孔25が形成されている。
【0016】
図1に示すように、製造装置1は、ホッパー2内に樹脂材料をいれて蓄積すると、ホッパー2内の樹脂材料がスクリュー内蔵管6に送られる。スクリュー内蔵管6内に送られた樹脂材料は、加熱溶融されて流体状になり、駆動モータ9により回転させられているスクリュー7により攪拌されて射出室11内に送られる。射出室11内に送られた樹脂材料は、さらに加熱されて、ダイス12と射出室11の隙間13から金型16内に円筒状に射出されて熔融中空体17を形成する。この時、金型16は、前半体19と後半体20と分離されている。図2に示すように、前半体19と後半体20とを接合して内部にマネキンの雌型21を形成し、ノズル23により熔融中空体17に圧縮空気を送り込むと、熔融中空体17が膨脹してマネキンの雌型21に圧接する。金型16を冷却すると、樹脂材料が硬化してマネキンMが成形される。図3に示すように、金型16内のマネキンMは、金型16を前半体19と後半体20に分離することによって取り出すことができる。
【0017】
上記したようにマネキンをブロー成形によって製造する場合の樹脂材料は、5〜95重量%のバイオマス材料と5〜95重量%の熱可塑性樹脂からなるバイオマス樹脂であって、粒状化したペレットである。当該ペレットをホッパー2からスクリュー内蔵管6に送り、スクリュー内蔵管6内において前記バイオマス樹脂のペレットを加熱融解し、このバイオマス樹脂をスクリュー7にて攪拌しつつ射出室11内へ移送する。射出室11内においてバイオマス樹脂をバイオマス材料の適正融解温度まで加熱した後にマネキン金型16内に射出して熔融中空体17を形成する。次に、当該熔融中空体17に圧縮空気を吹き込み、熔融中空体17を膨張させてマネキン金型16の内面に接触させ、熔融中空体17をマネキン金型16の内面に接触させた状態で冷却固化させてマネキンMを製造する。
【0018】
適正融解温度とは、熱可塑性樹脂をブロー成形する時の最適な融解温度であって、高すぎると粘性が低くなってドローダウンが大きくなり、低すぎると粘性が高くなって成形不良を起こし易くなる。素材によって適正融解温度が異なり、ポリエチレン樹脂では、170℃〜180℃、バイオマス材料のお米材では、165℃〜170℃、同じくバイオマス材料の貝殻材では、180℃〜190℃が適正融解温度である。また、バイオマス樹脂の重量比は、廃棄処理に伴う二酸化炭素の発生の増加の観点及び一般家庭ゴミとして廃棄処理できる等の観点から、バイオマス材料が51重量%以上、熱可塑性樹脂が49重量%以下であることが望ましい。
【0019】
上記したように樹脂材料がポリエチレン樹脂のみである場合には、適正融解温度が170℃〜180℃であるが、5〜95重量%のバイオマス材料と5〜95重量%の熱可塑性樹脂からなるバイオマス樹脂である場合にはバイオマス材料の適正融解温度で融解することが好ましい。
【0020】
例えば、5〜85重量%の米材料と15〜95重量%のポリエチレン樹脂からなるバイオマス樹脂である場合の融解温度は、米材料の適正融解温度である165℃〜170℃である。ポリエチレン樹脂と同じ融解温度170℃〜180℃だと粘性が低すぎてドローダウンが大きくなり、また165℃未満だと粘性が高すぎて成形不良を起こし完璧なブロー成形を行うことができない。
【0021】
また、5〜85重量%の貝殻材料と15〜95重量%のポリエチレン樹脂からなるバイオマス樹脂である場合の融解温度は、貝殻材料の適正融解温度である180℃〜190℃である。ポリエチレン樹脂と同じ融解温度170℃〜180℃だと粘性が高すぎて成形不良を起こし完璧なブロー成形を行うことができず、また190℃以上だと粘性が低すぎてドローダウンが大きくなると共に、製造装置の負担が大きくなり好ましいものではない。
【0022】
なお、バイオマス樹脂を構成するバイオマス材料は、米材料、貝殻材料に限定されるものではなく、トウモロコシ、サトウキビ等の粉末、杉等の木の大鋸屑であっても構わない。また、熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂に限定されるものではなく、ポリプロピレン樹脂であっても構わない。バイオマス樹脂でブロー成形されたマネキンMは、肉厚が2mm〜10mm程度であり、強度も充分備えており、しかもバイオマス材料特有の臭いや色が表現され、着色する必要がないので、興趣あるマネキンとして展示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願発明は、ブロー成形によってバイオマス樹脂からなるマネキンを製造する製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
M マネキン
1 製造装置
2 ホッパー
3 口部
5 傾斜面
6 スクリュー内蔵管
7 スクリュー
9 駆動モータ
10 動力伝達手段
11 射出室
12 ダイス
13 隙間
16 金型(マネキン金型)
17 熔融中空体
19 前半体
20 後半体
21 マネキンの雌型
23 ノズル
25 挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形によって製造するマネキンの製造方法であって、
5〜95重量%のバイオマス材料を含むバイオマス樹脂のペレットをホッパーからスクリュー内蔵管に送り、
スクリュー内蔵管内において前記バイオマス樹脂のペレットを加熱融解し、この融解したバイオマス樹脂をスクリューにて攪拌しつつ射出室内へ移送し、
射出室内においてバイオマス樹脂をバイオマス材料の適正融解温度まで加熱した後にマネキン金型内に射出して熔融中空体を形成し、
当該熔融中空体に圧縮空気を吹き込み、熔融中空体を膨張させてマネキン金型の内面に接触させ、
熔融中空体をマネキン金型の内面に接触させた状態で冷却固化させてマネキンを製造することを特徴とするマネキンの製造方法。
【請求項2】
ブロー成形によって製造するマネキンの製造方法であって、
5〜95重量%の米材料を含むバイオマス樹脂のペレットをホッパーからスクリュー内蔵管に送り、
スクリュー内蔵管内において前記バイオマス樹脂のペレットを加熱融解し、この融解したバイオマス樹脂をスクリューにて攪拌しつつ射出室内へ移送し、
射出室内においてバイオマス樹脂を米材料の適正融解温度である165℃〜170℃まで加熱した後にマネキン金型内に射出して熔融中空体を形成し、
当該熔融中空体に圧縮空気を吹き込み、熔融中空体を膨張させてマネキン金型の内面に接触させ、
熔融中空体をマネキン金型の内面に接触させた状態で冷却固化させてマネキンを製造することを特徴とするマネキンの製造方法。
【請求項3】
ブロー成形によって製造するマネキンの製造方法であって、
5〜95重量%の貝殻材料を含むバイオマス樹脂のペレットをホッパーからスクリュー内蔵管に送り、
スクリュー内蔵管内において前記バイオマス樹脂のペレットを加熱融解し、この融解したバイオマス樹脂をスクリューにて攪拌しつつ射出室内へ移送し、
射出室内においてバイオマス樹脂を貝殻材料の適正融解温度である180℃〜190℃まで加熱した後にマネキン金型内に射出して熔融中空体を形成し、
当該熔融中空体に圧縮空気を吹き込み、熔融中空体を膨張させてマネキン金型の内面に接触させ、
熔融中空体をマネキン金型の内面に接触させた状態で冷却固化させてマネキンを製造することを特徴とするマネキンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−200366(P2011−200366A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69497(P2010−69497)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(593097155)株式会社ヤマトマネキン (2)
【出願人】(390037693)株式会社玉田製作所 (1)
【Fターム(参考)】