説明

マフラ、作業機械

【課題】排ガスの温度を十分に低温化でき、かつ余分なスペースを不要にして作業機械を小型化できるマフラ、およびこのマフラを備えた作業機械を提供すること。
【解決手段】作業機械であるエンジンブロワのマフラ10は、マフラ本体11と、このマフラ本体11に設けられた排気ガスの排気口13を覆うディフューザ15とを備え、このディフューザ15は、排気ガスを拡散させる拡散空間と、拡散した排気ガスを外部に排出する複数の排気孔33が穿設された排出面31とを備え、排出面31の前記排気孔33による開口率は、排気口13に対応した部分から外周側に向かうに従って大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン用の排気マフラおよびこれを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン駆動による携帯用の作業機械としては、刈払機、エンジンブロワ、チェーンソーなどが知られている。このような作業機械のエンジンは、比較的作業者に近い位置で駆動されるうえ、周囲の環境に配慮する必要から、マフラからの排気ガス温度が規制される場合があり、より低い温度での排出が望まれている。具体的には、エンジンやマフラを覆うエンジンカバーからの排気ガス温度が規制されるのである。
【0003】
エンジンカバーの排気開口から出る排気ガスの温度を下げる方法としては、例えば、マフラ自身の排気口部分で排気ガスを拡散させて排出するとともに、エンジンカバーの排気開口までの距離を長くし、排気開口から排出されるまでの間に低温下することが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−50047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、マフラの排気口とエンジンカバーの排気開口との距離を稼ぐために、マフラの排気口をエンジンカバーの内面に向けて開口させ、排気口に排気キャップを設けて排気ガスの流れ方向を強制的に変えており、排気ガスをエンジンカバーの内面に沿って流すことで排気開口から排出している。このため、マフラの排気口とエンジンカバー内面との間には排気キャップを収容する分の大きな隙間が必要となり、作業機の大型化を招くという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、排ガスの温度を十分に低温化でき、かつ余分なスペースを不要にして作業機械を小型化できるマフラ、およびこのマフラを備えた作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るマフラは、マフラ本体と、このマフラ本体に設けられた排気ガスの排気口を覆うディフューザとを備え、このディフューザは、前記排気ガスを拡散させる拡散空間と、拡散した排気ガスを外部に排出する複数の排気孔が穿設され、かつ前記排気口と対向した排出面とを備え、前記排出面の前記排気孔による開口率は、前記排気口に対応した部分から外周側に向かうに従って大きくなることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係るマフラは、請求項1に記載のマフラにおいて、前記排気孔の総開口面積は、前記排気口の開口面積よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係るマフラは、請求項1または請求項2に記載のマフラにおいて、前記排気孔は、開口面積が異なる複数種類のものが穿設されており、開口面積の小さい排気孔が前記排気口に対応した部分寄りに配置され、開口面積の大きな排気孔が外周側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係るマフラは、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のマフラにおいて、前記ディフューザには、前記マフラ本体に接触して取り付けられるフランジ部が設けられており、当該ディフューザが取り付けられる以前の状態では、前記フランジ部は、取付方向の前方側に傾斜していることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る作業機械は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマフラと、このマフラが取り付けられるエンジンと、エンジンおよびマフラを覆うエンジンカバーとを備え、このエンジンカバーには、前記マフラの排気口と対応した位置に当該排気口からの排気ガスを外部に排出する排気開口が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上において、請求項1および請求項5の発明によれば、ディフューザの拡散空間内では、排出面に設けられた排気孔による開口率の設定によって外周側での排気抵抗、すなわち内部圧力が低下するため、排気ガスを外周側へと満遍なく拡げることができ、排気ガスを各排気孔から均等に排出して排気ガス温度を効率的に低温下できる。また、低温下が効率的に行われることで、マフラ本体の排気口をエンジンカバーの排気開口に対応させた直線的な位置に設けることができ、作業機械での余分なスペースも生じない。
【0013】
請求項2の発明によれば、拡散空間内での排気抵抗を確実に確保でき、拡散空間内での排気ガスの外周側への拡散を一層良好に行うことができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、外周側での排気孔の開口面積がより大きいので、外周側での内部圧力を確実に低くして抜けをよくでき、外気ガスの外周側への拡散をより良好に行える。
【0015】
請求項4の発明によれば、例えば、ディフューザをスクリュー等により取り付ける場合、フランジ部が取付方向の基端側に押し返されて、その際の弾性力(反力)によりマフラ本体側と良好に接触するようになり、拡散空間内の排気ガスがその接触部分から漏れ出るのを有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機械としてのエンジンブロワ1を示す外観図である。
エンジンブロワ1は、エンジンで駆動されるブロワで風力を生じさせるとともに、吹き出した送風空気で落ち葉や剪定後の枝葉を掃き払う作業機械であって、エンジンおよびブロワが収容される作業機本体2と、エンジンに送られる燃料を貯留しておく燃料タンク3と、ブロワで生じた送風空気を吹き出させるホース4と、エンジンの出力を調整するスロットルレバー5と、作業者が背負うためのショルダ部6とを備えている。
【0017】
そのうち作業機本体2には、エンジンおよびマフラ10を覆うエンジンカバー21が設けられている。また、ファン(不図示)が収容される部分とホース4の基端側とがブロワハウジング22で覆われており、ブロワからの送風空気は、このブロワハウジング22からホース4を通り、ホース4先端(不図示)から吹き出される。ここで、エンジンカバー21には、マフラ10からのエンジン排気ガスを排出する排気開口23が設けられている。排気ガスとしては、この排気開口23から所定の距離だけ離れた位置での温度が所定値以下に規制されることになる。
【0018】
図2には、本実施形態のマフラ10の分解斜視図が示されている。
図1、図2において、マフラ10は、中空箱状のマフラ本体11を備え、マフラ本体11には、エンジンにボルト止めによって取り付けられる取付部12が設けられ、この取付部12に図示しない排気ガスの流入口が設けられている。また、マフラ本体11には、四角形に開口した排気口13が設けられている。排気口13は、その周囲にスクリュー14で取り付けられるディフューザ15で覆われている。ディフューザ15の位置は、マフラ10がエンジンカバー21で覆われた状態において、丁度排気開口23に対応しており、マフラ10の排気口13から出た排気ガスは、ディフューザ15を通って最短距離で排気開口23から排出される。
【0019】
ディフューザ15と排気口13が設けられた取付面16との間には、図3にも示すように、網状のアレスタ17が介装されている。アレスタ17は、排気口13から火の粉となって排出されるカーボンを捕集する役目を有している。具体的にアレスタ17は、周囲に沿った被挟持部18を有した凹凸状に形成されており、この被挟持部18がディフューザ15に設けられた外周のフランジ部19によって取付面16との間で挟持され、カーボンの捕集部分がディフューザ15内に収容される。なお、捕集部分が排気口13内に向けて収容されるタイプのアレスタを用いることもできる。
【0020】
以下には、本実施形態の最も特徴的なディフューザ15について詳説する。
本実施形態のディフューザ15は、排気口13からの排気ガスを複数箇所から略均等に排気開口23側に排出することで効率的に低温下するとともに、背圧の上昇を最小限に抑えてエンジンの出力低下を防止する構造を有している。すなわち、ディフューザ15には、前記アレスタ17の捕集部分を収容可能とされ、かつ排気ガスを中央側から外周側へと拡散させる拡散空間30が設けられている。拡散空間30は、排気口13と対向した長円形状の排出面31と、その外周を覆う外周面32とで構成され、フランジ部19から排気開口23側に突出して形成されている。
【0021】
この際、フランジ部19は、図4に誇張して示すように、ディフューザ15がマフラ本体11に取り付けられていない単体の状態では、取付方向の前方側である取付面16(図1)側に傾斜した初期位置にあるように設けられている。この状態からディフューザ15を取付面16に取り付けると、スクリュー14の締付力により初期位置から2点鎖線で示す取付位置まで変形し、その際の反力によってフランジ部19の先端の折曲部19Aと取付面16とが隙間なく良好に接触するようになり、拡散空間30からその接触部分を通しての排気ガスの漏れを確実に防止できるようになっている。なお、フランジ部19においては、折曲部19Aによって形成される僅かな段差部分により、アレスタ17の被挟持部18が取付面16との間で挟持され、収容されることになる。
【0022】
拡散空間30の排出面31には、複数の排気孔としての排気丸孔33が穿設されている。排気丸孔33としては、図5に示すように、径寸法の異なる3種類の排気丸孔33A,33B,33Cが穿設されており、最も大きい径寸法の排気丸孔33Aの数が6個、次に大きい径寸法の排気丸孔33Bの数が6個、最も小さい径寸法の排気丸孔33Cの数は4個である。本実施形態では、排気丸孔33Aの径寸法が3.5mm、排気丸孔33Bの径寸法が3.0mm、排気丸孔33Cの径寸法が2.0mmとなっている。そして、隣接する排気丸孔33同士の縦方向(図5の上下方向)のピッチPhが全て同じで、幅方向(図5の左右方向)のピッチPwも全て同じである。
【0023】
さらに、本実施形態では、径寸法の最も小さい4個の排気丸孔33Cが排出面31の中央に寄せて配置され、そのさらに中心および周囲に排気丸孔33Bが配置され、長円形状とされた排出面31の長手方向両側に最も大きい径寸法の排気丸孔33Aが配置されている。つまり、総じて、中央から周囲に向かうに従って開口面積の大きい排気丸孔33が配置されており、中央よりも外周側の方で開口率が大きく、排気抵抗が小さいのである。
【0024】
このことにより、排出面31の略中央に対応して位置したマフラ本体11側の排気口13から排気ガスが排出されると、排気ガスは排出面31の中でも排気抵抗の小さい外周側に流れ、良好に拡がって略均等な割合で各排気丸孔33から排出され、排出後の排気ガスを効率的に低温下できる。しかも、全排気丸孔33の総開口面積は、排気口13の開口面積よりも小さくなっており、拡散空間30で排気抵抗が確実に生じ、排気ガスがより確実に拡がる。また、排気丸孔33の数が適正化されていることで、排気抵抗による背圧上昇が小さく抑えられており、エンジンの出力が著しく低下するのを防止している。
【0025】
図6には、本発明の第1の変形例として、2種類の排気丸孔33B,33Cが用いられたディフューザ15が示されている。本変形例では、小さい径寸法の排気丸孔33Cが中央に5個、この5個の上下の外周側に径寸法の大きな12個の排気丸孔33が配置され、中央から外周に向かって排気抵抗が小さくなっている。各排気丸孔33B,33Cの径寸法や、排気丸孔33の総数、その他の構成などは、前記実施形態と同じである。
【0026】
本変形例によれば、前記実施形態とは異なってより大きな径寸法の排気丸孔33Aが用いられておらず、排気丸孔33の総開口面積は前記実施形態よりも小さい。このため、排気抵抗が大きくなって拡散空間30での拡散が一層良好に行われ、エンジンカバー21の排気開口23から出た排気ガスの温度もより低くなる。一方で、拡散空間30内での排気抵抗が大きく、背圧も大きくなるため、エンジンの出力が若干落ちることになる。ただし、多少の差はあるものの、本変形例も前記実施形態と略同様な作用効果があるといえ、十分に実用に供されるレベルにある。
【0027】
図7には、本発明の第2の変形例として、5種類の排気丸孔33A,33B,33C,33D,33Eが用いられた例が示されている。排気丸孔33Dは、排気丸孔33Aよりも径寸法がさらに大きく、本変形例では4mmである。この排気丸孔33Dは、排出面31の長手方向の最外周側の両端にそれぞれ設けられている。また、排気丸孔33Eは、径寸法が排気丸孔33Bと排気丸孔33Cとの間とされ、本変形例では2.5mmである。この排気丸孔33Aは、前記実施形態での排気丸孔33Cの代わりに2個設けられている。従って、本変形例では、前記実施形態と比較して排気丸孔33Aの数が2つ少なく、排気丸孔33Cの数も2つ少ない。他の構成は前記実施形態と同じである。
【0028】
本変形例によれば、前記実施形態に比して大きな径寸法の排気丸孔33D,33Eが用いられており、排気丸孔33の総開口面積も前記実施形態より大きい。このため、排気抵抗が小さくなって拡散空間30での拡散性能がわずかに低下し、排気開口23から出た排気ガスの温度も若干高くなる。一方で、拡散空間30内での排気抵抗が小さいことで、背圧も小さくなるため、エンジンの出力が向上する。すなわち、多少の差はあるもののやはり、本変形例も前記実施形態と略同様な作用効果があるといえ、十分に実用に供されるレベルにある。
【0029】
なお、本発明は、前記実施形態および第1、第2の変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、本発明に係る排気孔は丸孔に限定されず、長孔や角孔等、任意の形状であってよい。
また、本発明では、マフラ本体の排気口に対応した部位から外周に向かって開口率が大きくなるように排気孔が穿設されていればよく、例えば、径寸法の同じ複数の排気孔が中央側では少ない数で粗に、外周側では多くの数で密に穿設されている場合でも、本発明に含まれる。つまり、各ピッチPh,Pwを中央側と外周側とで異ならせるのである。
【0030】
本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、エンジンブロワ、刈払機、チェーンソー、カットオフソーなどの携帯用作業機械に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業機械を示す全体図。
【図2】前記本実施形態のマフラを示す分解斜視図。
【図3】前記マフラの要部を示す断面図であり、図2のIII−III線断面図。
【図4】前記実施形態で用いられるディフューザの断面図であり、図2のIV−IV線断面図。
【図5】前記ディフューザの凹部を示す正面図。
【図6】本発明の第1の変形例を示す正面図。
【図7】本発明の第2の変形例を示す正面図。
【符号の説明】
【0033】
1…作業機械、10…マフラ、11…マフラ本体、13…排気口、15…ディフューザ、19…フランジ部、21…エンジンカバー、23…排気開口、31…排出面、30…拡散空間、33,33A,33B,33C,33D,33E…排気孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マフラ本体と、
このマフラ本体に設けられた排気ガスの排気口を覆うディフューザとを備え、
このディフューザは、前記排気ガスを拡散させる拡散空間と、
拡散した排気ガスを外部に排出する複数の排気孔が穿設され、かつ前記排気口と対向した排出面とを備え、
前記排出面の前記排気孔による開口率は、前記排気口に対応した部分から外周側に向かうに従って大きくなる
ことを特徴とするマフラ。
【請求項2】
請求項1に記載のマフラにおいて、
前記排気孔の総開口面積は、前記排気口の開口面積よりも小さい
ことを特徴とするマフラ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のマフラにおいて、
前記排気孔は、開口面積が異なる複数種類のものが穿設されており、
開口面積の小さい排気孔が前記排気口に対応した部分寄りに配置され、
開口面積の大きな排気孔が外周側に配置されている
ことを特徴とするマフラ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のマフラにおいて、
前記ディフューザには、前記マフラ本体に接触して取り付けられるフランジ部が設けられており、
当該ディフューザが取り付けられる以前の状態では、前記フランジ部は、取付方向の前方側に傾斜している
ことを特徴とするマフラ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマフラと、
このマフラが取り付けられるエンジンと、
エンジンおよびマフラを覆うエンジンカバーとを備え、
このエンジンカバーには、前記マフラの排気口と対応した位置に当該排気口からの排気ガスを外部に排出する排気開口が設けられている
ことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−218149(P2007−218149A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38607(P2006−38607)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】