説明

マルゴサ抽出物の製造方法

この発明は、インドセンダンの堅果および/または種子から油を生成し、その油から二酸化炭素を含有している抽出剤を使用して抽出を行う、マルゴサ抽出物の製造方法に関する。本発明はさらに、前記の方法によって製造されるマルゴサ抽出物、防虫剤としてのそれの使用方法、ならびにその抽出物を含んだ防虫剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、マルゴサ抽出物の製造方法、その本発明に係る方法によって製造されたマルゴサ抽出物、そのマルゴサ抽出物の適用方法、ならびにそのマルゴサ抽出物を含んだ防虫剤に関する。
【0002】
インドセンダン(インド産ニーム)ならびに特にその種子は、近年防虫の分野で学術的に注目されている。約15mまで成長し100kgまでの果実が収穫できる木であるインドセンダン族を適用するための多様な可能性は、H.シュムッタラー著のインドセンダン、ニームファウンデーション、2002年ボンベイ、第2版において詳細に記述されている。ニーム種子から得られたニーム油は、欧州連合においてCAS番号11141−17−6として、またマルゴサ抽出物として暫定登録番号[N621]として登録されている。
【0003】
インドセンダンおよびその成分はインド式自然療法の重要な要素である。破砕したニーム堅果、ニーム堅果から圧搾したニーム油、および圧搾に際して残留したプレスケーキが、例えば石鹸あるいは歯磨き粉等の高付加価値の製品の製造のための原料として、あるいは直接的に医薬品として使用される。そのノウハウを先進国においても消費者の利益のために利用できるようにするために、製品を消費者の要望に適合させる必要がある。ニーム種子の圧搾に際して得られた生成物、すなわちニーム油およびプレスケーキは、空気との接触に際して大蒜のような臭いを発する化合物を含んでいる。さらに、インドセンダンの成分から得られた生成物は濃い茶の色彩を有しており、特に空気と接触するとさらに濃いものとなる。漂白は、例えば石鹸製造のように、ニーム種子の含有成分の医学的作用が必要でない場合にのみ可能である。しかしながら、アザジラクチン等の敏感なニーム種子の含有成分に起因するニーム種子の好適な作用を利用する必要がある場合は、含有成分の破壊につながらないような極めて緩和な条件下でのみ漂白が可能となる。
【0004】
国際出願公開第97/25867号パンフレットには、インドセンダンの成分、特にその種子および堅果からの含有成分の抽出方法が記載されている。抽出剤として臨界未満あるいは臨界超過状態の二酸化炭素が使用され、その際その抽出剤は循環させて使用される。その際、破砕されたニーム種子、あるいは油性の成分を部分的に除去するためのニーム種子の圧搾によって得られたプレスケーキが使用される。この抽出物は、害虫を防除するための薬剤、特に家ダニに対する駆除剤として好適な特性を有する。
【0005】
比較研究(アラーゴ J、2004年第13版:269−73)においてH.レンボルド氏およびH.エッツェル氏は、CO抽出によって得られたニーム油に基づいた調合物が、圧搾油に基づいて製造された製品に比べて、家ダニ、コナヒョウヒダニに対してのダニ繁殖防止効果が100倍も高くなることを証明した。
【0006】
二酸化炭素によるニーム種子の抽出を直接インド国内の生産者の場所で実施する試みは現在までのところ失敗している。広範な努力にもかかわらず、抽出物の安定した品質を確立することは不可能であった。従って依然として、ニーム種子を生産国からドイツ等の工業国に輸入し破砕したニーム種子をそこで二酸化炭素によって抽出することを強いられている。その方式によってのみ抽出物の安定した品質を達成することができる。しかしながら、ドイツで製造された抽出物においてはしばしば、許容不可能な程高いアフラトキシンを含んでいて従って廃棄しなければならないロットが発生する。
【0007】
天然の材料からの作用物質の生成にはしばしば、集積および乾燥、搬送、続いて最終的な加工までの現場での貯蔵のための準備時間が必要となる。高い温度および高い湿度に際して、また特に有害な抗菌剤を使用しない場合、油分を含んだ材料のカビ(菌類)繁殖の危険性が極めて高くなり、それによって製品のカビ毒(マイコトキシン)による汚染がもたらされる。その際発癌性のアフラトキシンが特に危険である。
【0008】
カビ類、特に発癌性のアフラトキシンを生成する黄色アスペルギルスは、油分を含んだ種子すなわちニーム種子の加工に際して計算し難い危険性をもたらす。インドセンダンはしかも高温多湿の熱帯性の気候でのみ繁殖する。従って、生物的に活性な作用物質の低減を防止するために、収穫後に直ぐ果実から果肉を除去し堅果を陰干ししなければならない。コンテナが空調付でなくて海上輸送に際して大きく変動する温度に曝される場合、約15%の水分含有率になって初めて堅果をコンテナ内で輸送することができる。最初はカビが繁殖していなかった材料でも、湿気によってカビ繁殖に適した場所が形成され、それがその後の専門家による目視検査によっても発見されないという危険性が生じる。その目視検査は、入荷した種子の袋から所定数を取り出し、目視によってカビ繁殖を検査する。しかしながらその際、限られた数の袋のみが取り出され、また選択された袋からも特定の場所のみからしか堅果を取り出すことができない。従って入荷した全ての堅果の検査は不可能である。従って、手持ちの袋に取り分けられた材料が偶然的にアフラトキシンを含んでいるかどうかは、加工処理の後、すなわち完成した抽出物内で初めて確認することができる。
【0009】
二酸化炭素による抽出によって得られた抽出物は、家ダニに対する駆除剤として好適に使用される。家ダニは特にマットレスおよびシーツ内に存在している。その糞が強いアレルギー反応を引き起こす。その症状は埃アレルギーと呼称されている。適宜な調合のニーム抽出物をマットレスおよびシーツに適用することによって、家ダニの生殖数を大幅に削減し、従ってアレルギーの危険を緩和することができる。抽出物がシーツを介して大面積で人間と接触するため、その抽出部がマイコトキシン、特にアフラトキシンで汚染されていないことを確立する必要がある。他方で、消費者は抽出物が純粋に生物原料からなることを高く評価しており、従って輸送中に種子をカビ汚染から保護するために合成保存料を使用することはできない。
【0010】
従って本発明の目的は、従来から知られている方法によってニーム種子あるいはプレスケーキから生成された抽出物と少なくとも同等な活性度を有していて、同時にマイコトキシン、特にアフラトキシンによる抽出物の汚染の危険が殆ど排除される抽出物が得られる、マルゴサ抽出物の製造方法を提供することである。
【0011】
前記の課題は請求項1の特徴からなる方法によって解決される。その方法の好適な追加構成が従属請求項の対象である。
【0012】
本発明に係る方法において、抽出物は二酸化炭素による油の抽出によって生成され、油はニーム種子の圧搾によって得ることができる。このことによって、アフラトキシンによる汚染を検査するために、統合された一つのロットの油から試料を取り出すことができるという利点が得られる。従ってロット全体のアフラトキシン含有率を単一の測定で検査することができ、個々の堅果の無作為抽出による検査ではなくなる。それによって、ニーム堅果あるいはニーム種子のコールドプレスによって得られた油の抽出前に既に、抽出物がマイコトキシンによって汚染されていないことを確認することができる。さらに、油は搬送に際して堅果と比べて大幅に小さな容積を必要とし、従って輸送コストが削減される。また油は、ニーム堅果の場合と比べてカビ被害に対する脆弱性が著しく小さくなる。それによって輸送リスクも低下する。さらに、この圧搾はニーム堅果あるいはニーム種子の原産国において安全に実施することができ、従って一方で抽出物の製造を大幅に低コストにし、他方でニーム堅果の原産国内に付加価値創造連鎖のさらなる要素が滞留し、それによってそこで雇用が創造するか、少なくとも維持することができる。
【0013】
臨界超過二酸化炭素による抽出は、油の精製に際して大きなコスト要因となる。ここで開示された方法によって、マイコトキシンによって汚染されていない油からのマイコトキシンを含んでおらずしかも生物学的に高効率の、いわゆるマルゴサ油の製造を可能にする道が提案されている。
【0014】
意外なことに、ニーム種子あるいはニーム堅果の圧搾によって得られたニーム油からも、直接種子あるいはプレスケーキの抽出によって得られた抽出物と少なくとも同等な活性化を示す抽出物が得られることが判明した。前述したレンボルドとエッツェルの文献に記述されているように、二酸化炭素による抽出によって直接ニーム種子から得られた抽出物は圧搾油よりも顕著に高い活性度を有する。圧搾油を含んだ試料において長期実験中に生存しているダニの数を576あるいは533匹に低下できたのに対して、ニーム種子を二酸化炭素抽出して得られた抽出物を含んだ調合物によればダニの数を126あるいは28匹に低減することができた。抽出物を全く使用しなかった確認実験においてはダニの数が3550匹であった。従来は、抽出が破砕された種子あるいはプレスケーキから直接行われた場合にのみ高い作用物質含有率が得られることを前提としていた。二酸化炭素を使用した圧搾油の抽出に際して家ダニの成長を妨害するのではなくむしろ促進するような物質が残留物中に集積されると推定される。それに対して精製されたニーム油は、原材料に比べてより強力な家ダニの成長に対する妨害効果を有している。すなわち、本発明に係る方法によれば、ダニに対するニーム油の効果を低下させるような物質が除去されると推定される。
【0015】
原材料として使用される圧搾油は一般的な搾油装置によってニーム種子あるいはニーム堅果から製造することができる。このニーム種子あるいはニーム堅果はコールドプレスすることが好適である。
【0016】
後続する二酸化炭素を使用した圧搾油の抽出に際して、高い収量で透き通った黄色の油が得られ、それは実質的に無臭であるとともに長時間の空気中における貯蔵に際しても刺激臭は発生しない。
【0017】
簡便に抽出するために、圧搾油を不活性の担体上に塗付することが好適である。このことは例えば油を担体と混合することによって達成され、その際担体の分量は自由に流動する粉末が得られるように選択することが好適である。担体としては無機質の担体を使用することが好適である。抽出後に残留物が付着した担体は、例えば肥料あるいは飼料添加物として再利用が可能である。従って担体は粉末状のものとすることが好適である。好適な無機材料は例えば珪藻土あるいはシリカゲルである。しかしながら、例えば粘土顆粒あるいは粉砕した軽石等の大粒の材料を使用することもできる。担体と圧搾油の配合比は、前述したように、可能な限り高い油含有率を有していて自由に流動する粉末が得られるように選択される。担体対油分の配合比は、3:1ないし1:2、特に2:1ないし1:1の範囲で選択することが好適である。
【0018】
油の抽出は一般的な抽出装置内で実施される。二酸化炭素抽出が250ないし600バール、特に300ないし400バールの圧力下で実施されるように、抽出条件を選択することが好適である。さらに、抽出は30ないし70℃、特に30ないし45℃の温度で実施することが好適である。この温度においては、二酸化炭素が特にアザジラクチンに対して好適な抽出効果を有する。さらに前記の温度において抽出は、抽出物の活性度の低下を全く考慮する必要がない程柔和に実施することができる。
【0019】
抽出剤を循環させて実施することが極めて好適である。従って比較的少量の二酸化炭素が抽出のために必要となる。本発明に係る方法によれば極めて高い生産効率が達成される。有害物質は、例えば不活性の担体と結合されて抽出容器内に残留する。例えば大きなロットにおける長時間の抽出持続時間であっても、抽出物の活性度の劣化は観察されず、すなわち有害物質が不活性の担体と固定的に結合して滞留し、循環する二酸化炭素によって抽出物内に運搬されることがない。しかしながら、使用されたニーム油の90ないし95%が受け器内で抽出として得られた場合に抽出が停止されるような方式で抽出を実施することが好適である。使用されたインドセンダンの堅果および/または種子からなる油の残りの5%には、例えば色素、酸化性の油脂成分、およびその他の不要な成分等の溶解し難い有害成分が濃縮された状態で含まれるが、実質的に活性成分は含まれていない。そのことによって得られたマルゴサ抽出物の純度ならびに品質をさらに高めることができる。
【0020】
抽出剤は、10ないし80℃、特に25ないし40℃の温度で30ないし80バール、特に50ないし70バールの圧力に減圧することが好適である。この方式によって、破壊ならびに活性度の損失につながる、抽出物中に含まれた物質の熱負担を防止することができる。
【0021】
抽出剤、実質的に二酸化炭素には、添加溶剤を付加することができる。この添加溶剤は二酸化炭素よりも高い極性を有する。好適な添加溶剤は、アルコール、ケトン、エステル、ニトリル、あるいは環状エステルからなる一群の中から選択することが好適である。特に抽出後に添加溶剤の容易な除去を可能にするために、1ないし5の炭素数を有する添加溶剤を使用することが好適である。その場合添加溶剤が充分に低い沸点を有するものとなり、それによって低減した圧力下において容易に抽出物から除去することができる。
【0022】
抽出剤中における添加溶剤の割合は0.5ないし30%、特に2ないし10%とすることが好適である。
【0023】
抽出は純粋な二酸化炭素によって実施することが好適である。
【0024】
圧搾油の抽出は、分留して実施することが好適である。それによって、有害なリモノイドの分離を達成することができる。圧搾油の分留は異なった圧力で抽出を行うことによって達成され、すなわち例えば抽出中に圧力が段階的に高められる。また、分留は付加される添加溶剤の濃度を変化させることによって、例えば段階的に高めることによって達成することもできる。その種の分留は、例えば高いアザジラクチン含有率を有する留分を得るために効果的である。しかしながら本発明に係る方法において、分留は例外的にのみ必要である。圧搾によって有害物質は大部分がプレスケーキ内に残留すると見られ、従って特別な分留方式は必ずしも必要ではない。
【0025】
抽出工程の持続時間は生産規模に従ったものとなり、当業者においては例えば単位時間当たりの抽出物の量を測定することによって容易に判定することができる。このことは、予め計量した受け器を定期的に交換し受け器に内に集積された抽出物の量を差分軽量によって測定することにより、極めて簡便に可能である。通常100kgの抽出物に対して約2ないし9時間、特に3ないし6時間の抽出時間が必要とされる。
【0026】
本発明に係る抽出方法により、明るい黄色の油であって例えば家ダニに対して極めて高い駆除効果を有するマルゴサ抽出物が得られる。従って、本発明の別の対象は前述した方法によって生成することができるマルゴサ抽出物である。本発明に係るマルゴサ抽出物は、紫外線吸収スペクトルならびにガスクロマトグラフィの相対的強度において固有の特徴を示す。
【0027】
本発明に係るマルゴサ抽出物は、防虫剤として極めて好適な効果を示す。従って、本発明の対象はさらに、前述したマルゴサ抽出物の防虫剤としての適用方法である。そのマルゴサ抽出物を家ダニの駆除剤として使用した場合に、極めて良好な効果が観察される。その際このマルゴサ抽出物は、ダニ駆除剤として作用するわけではなく、ダニを直接抹殺することはない。抽出物の効果はむしろ、ダニの食物摂取を拒絶させ、すなわち餓死させることにあると見られる。それによって、排出されるダニの糞の量、すなわち例えばマットレスあるいは掛け布団に含まれるアレルギー物質の量も減少する。従って、家ダニに対するマルゴサ抽出物の効果は、直接その糞排出によって定量化することができる。
【0028】
本発明の別の対象は、前述したマルゴサ抽出物を含んだ防虫剤である。そのため抽出物を例えばアルコールあるいはアルコール/水混合物等の適宜な溶媒内に混合することができる。アルコール/水混合物を使用する場合、その水分含有率は30重量%未満に選択することが好適である。その際比較的低い抽出物濃度が防虫剤内に必要となる。溶媒中における好適なマルゴサ抽出物の濃度は、0.1ないし10重量%、特に0.5ないし5重量%、特に好適には0.6ないし1重量%の範囲で選択される。それによって抽出物を極めて薄く希釈した状態でマットレス上、またはマットレスあるいは掛け布団の中詰材料内に散布することができる。
【0029】
次に、添付図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0030】
図1には、本発明に係る方法を実施するために適した装置が概略的に示されている。
【0031】
予備タンク1からCOが取り出され、コンプレッサ2あるいはポンプによって所要の圧力にされる。注入位置3を介して必要に応じて添加溶剤を付加することができ、それが混合管4を介して二酸化炭素と混合される。熱交換器5内で抽出剤を所要の温度にしてその後抽出室6内に誘導し、その際臨界未満あるいは臨界超過状態を維持する。その抽出室には珪藻土等の無期担体が充填され、その上に抽出すべき圧搾油が塗付される。抽出後に圧力を低下させるために二酸化炭素を含んだ抽出物を加熱可能な減圧バルブ7に誘導し、その後分離室8に誘導してそこで抽出物あるいは場合によって添加溶剤を二酸化炭素から分離する。抽出物は、取り出し位置9において分離室8から取り出すことができる。その後二酸化炭素を冷却器10内で冷却する。液化したガスは再度予備タンク1に帰還させる。
【0032】
例1: マルゴサ抽出物の製造
ニーム堅果から得られた5kgのコールドプレス油を10kgの珪藻土(混合比1:2)と、自由に流動する均質な混合物が得られるまで混錬する。原材料(AGM)として使用された圧搾油は濁った黄金色の油であった。その混合物を二酸化炭素による抽出装置の抽出容器内に充填し、300バールおよび50℃で5時間抽出する(圧力および温度は抽出容器の入り口で測定)。続いて受け器を交換し(留分A)、3%のエタノールを添加溶剤として二酸化炭素に付加し、さらに1時間抽出した。抽出物を受け器内に収集した(留分B)。留分Bの抽出物内に含まれていたアルコールを、回転蒸発器を使用して減圧下で蒸留し排除した。
【0033】
【表1】

【0034】
留分Bは極めて迅速に固化し、長鎖のトリグリセリドを含んでいると推定される。
【0035】
留分AおよびBならびに原材料を高速液体クロマトグラフィによって検査した。留分AおよびBのクロマトグラフィが図2に示されている。高速液体クロマトグラフィによってアザジラクチンA+B、ニンビン、およびサラニンの含有率が判定された。
【0036】
【表2】

【0037】
図2に数値が示されているように、使用された、固形の鉱物担体を使用した抽出方法によって、原材料中に存在している生物的に作用するリモノイドの組成は変化しない(留分A)。残留物(留分B)内にその化合物の痕跡のみが示されている。原材料のうちの5.3%のみが、強度に紫外線を吸収する成分を含んでいる残留物内に滞留する(図3参照)。
【0038】
異なった抽出物を差別化するために、ニーム種子から生成された圧搾油、COマルゴサ抽出物(留分A)あるいは添加溶剤を使用して得られたマルゴサ余抽出物(留分B)の物理パラメータが示される。まず第1に、抽出のHPLCクロマトグラフィによって多様な物質の強度の差の比較が可能になる。例えば、10.02/12.67の滞留時間の係数は3つの抽出物についてそれぞれ大きく異なっている。滞留時間をチェックするための内部指標として、市販のサラニンが使用された。同様に、波長に従って異なった紫外線吸収スペクトルの強度も、大きな差異を示している(例えば、表3、図2および図3参照)。
【0039】
【表3】

【0040】
例2: 生物学的効果
a) ダニ培養:
検査のために3回の培養作業からのコナヒョウヒダニからなる混合培養物を使用した。ダニは、乾燥器中における特殊容器内でタンパク質と澱粉を含んだ飼料上で室温かつ80%の相対湿度で30日間培養した。この作業からのダニおよびダニの卵を試料に適用した。
b) 試験システム:
試験方法は、ISO規準AFNOR NF G39−011に従って実施するものとした。独自に開発した容量0.055mの透明な外郭を有する空調庫内で連続的に上昇および低下する65から80rFの湿度を水性の食塩溶液によって設定した。温度は金属板加熱装置によって24℃に維持した。この条件の安定性は、空気循環とセンサによって管理し、それがコンピュータ制御によって余剰な湿度と温度数値を新鮮な空気の供給によって調節する。温度および湿度の安定性は、前実験時間にわたって記録された。
【0041】
7cmの直径を有するガラス製のペトリ皿と、ゴムパッキングを備えていてガラス皿を気密に密封する軽金属製の蓋を使用した。試料に通気するために、蓋は中央部に3cmの直径の丸い開口部を備えており、それが四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製の通気膜を備えている。ダニのための基礎材としてダニを含んでいない家埃と1皿当たり約0.25gの飼料の混合物を付加した。皿の中には、いずれも約200匹のダニと50個の卵が注入される。空調庫ごとに最大18個の実験セットを設置することができる。
【0042】
異なった試験物質を、飼料とダニから12時間予め培養して準備した容器内に、いずれも20ml/mの分量で均等に噴霧した。各試料につき4ないし6皿、イソプロピルアルコールのチェック用試料からも6皿を採用した。その後糞およびアレルギー生成を確認するために、各皿の蓋内に粘着テープを使用した合成樹脂製の粘着盤(厚さ0.01mm、直径3cm)を、それが底部に接触してダニがその上を走行し得るように接着した。アルコールが蒸発した後実験容器を空調庫内に設置し、週ごとにダニの死亡率ならびに生態の変化を検査した。
【0043】
14週後に実験を終了した。その実験継続期間の長さによって、卵の繁殖性に対する試験物質の効果についての判断を行うことが可能になる。週ごとのチェックにおいて全ての被検生物が死滅したことは決して確認されなかった。
【0044】
試験物質して以下の試料を使用した:
【0045】
【表4】

【0046】
図4には、上述した検査工程において検査容器内に設置した樹脂製の丸い粘着テープが示されている。粘着テープは元々透明なものであり、確認用に黒い下敷の上に載置されている。ダニの糞は白い領域に該当し、一方ダニの糞が付着していないか、あるいは極僅かである部分は黒い下敷が透けて見えるため黒色となっている。ダニの繁殖数が大きい程糞の排出する量も増えるため、白色の面積の大きさがダニの繁殖数を示すものとなる。すなわち黒い面積が大きい程ダニの繁殖数が小さくなる。
【0047】
チェック用試料(1)において、ダニの糞からなる大きな白色層が付着している。黒い下敷はダニの糞によって高い密度で覆われている。すなわちダニの繁殖は防止されていない。
【0048】
本発明に係るマルゴサ抽出物(2)においては、粘着テープの縁部のみにダニの糞の付着を示す白い面が確認され、一方粘着テープの内側部分は殆どダニの糞が付着しておらず、従って黒色である。
【0049】
破砕したニーム堅果から二酸化炭素を使用して直接抽出を行って得られた、ニーム種子からの抽出物(3)においては、より幅が広い白色の縁部が確認される。しかしながら、粘着テープの中央部では黒色の下地が見えており、従ってこの抽出物においても、前記のマルゴサ抽出物程のレベルには達しないにしても、顕著なダニ繁殖の防止が観察された。糞の量はチェック用試料(1)に比べると大幅に小さいものとなっている。
【0050】
マルゴサ抽出物(2)によって、ニーム種子からの抽出物と同様に、ダニが食物摂取を殆ど拒否し、生殖することなく餓死することが達成される。従って、ダニ繁殖数および糞に含まれたダニアレルギー物質が時間と共に減少する。しかしながら、本発明に係るマルゴサ抽出物の効果は、ニーム種子からの抽出物に比べてさらに顕著に高くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る方法を実施するための装置を示した概略図である。
【図2】留分AおよびBの高速液体クロマトグラフィである。
【図3】原材料として使用される圧搾油ならびに抽出された留分Aおよび留分Bの紫外線吸収スペクトルである。
【図4】ダニの糞が付着している試験紙を示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インドセンダンの堅果および/または種子から油を生成し、その油から二酸化炭素を含有している抽出剤を使用して抽出を行う、マルゴサ抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記油はインドセンダンの堅果および/または種子を圧搾することによって生成してなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記油を不活性の担体上に付着させてなる請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記担体として粉末状の無機質材料を使用してなる請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記無機質の担体は珪藻土あるいはシリカゲルから選択してなる請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
抽出は250ないし600バール、特に300ないし400バールの圧力下で実施してなる請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
抽出は10ないし70℃の温度範囲で実施してなる請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記抽出剤を循環させてなる請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
抽出剤を、10ないし80℃、特に25ないし40℃の温度で30ないし80バール、特に50ないし70バールの圧力に減圧してなる請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
抽出剤が所定の割合で添加溶剤を含んでなる請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
分留して抽出を実施してなる請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法によって生成されるマルゴサ抽出物。
【請求項13】
害虫駆除のための請求項12記載のマルゴサ抽出物の適用方法。
【請求項14】
家ダニに対する駆除剤とする、請求項13記載の適用方法。
【請求項15】
請求項12記載のマルゴサ抽出物を含んだ防虫剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−545769(P2008−545769A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515143(P2008−515143)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005505
【国際公開番号】WO2006/131378
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507403931)テラ ノストラ プロデュクテ ミット ナチュレックストラクテン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】