説明

マルチアームポリエチレングリコール誘導体、マルチアームポリエチレングリコール誘導体と薬物との接合体およびゲル

異なる種類の反応性基を有するマルチアームポリエチレングリコール(I)およびその使用が開示され、この有するマルチアームポリエチレングリコール(I)は、オリゴペンタエリスリトールを開始剤として用いてエチレンオキシドを重合することにより形成され、PEGは同じかまたは異なり、−(CHCHO)−であり、mの平均値は2〜250の整数であり、lは1以上の整数である。この異なる種類の反応性基を有するマルチアームポリエチレングリコールを製造するための方法、PEGに結合された連結基XおよびXに結合された末端反応性基Fを含むマルチアームポリエチレングリコール活性誘導体、このマルチアームポリエチレングリコール活性誘導体によって形成されるゲル、このマルチアームポリエチレングリコール活性誘導体および薬物分子によって形成される薬物接合体、ならびに薬物調製におけるこれらの使用も開示される。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる種類の活性基を有するマルチアームポリエチレングリコール誘導体およびそれらの調製方法、薬物分子接合体およびゲル物質に関する。また、本発明は、医薬調剤および医療装置材料の調製における上記の、異なるタイプの活性基を有する新しいマルチアームポリエチレングリコール誘導体およびそのゲルの役割に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリエチレングリコール誘導体は、タンパク質、ペプチド、および他の治療薬の生理的半減期を延長し、免疫原性および毒性を低減するために、このような薬物と組み合わせて広く使用されている。臨床使用においては、医薬調剤の製造において担体として作用するPEGおよびその誘導体は、数々の医薬品で広く使用されてきた。PEGを薬物分子に結合しようという試みは、過去10年間のうちに著しい発展も見せてきており、PEGasys(登録商標)(これは、α−インターフェロンおよびポリエチレングリコールの組み合わせであり、より循環半減期およびより良好な治療効果を有する)などの多くの承認された医薬で広く使用されてきている。人体の中でのポリエチレングリコールの代謝プロセスは、十分に明らかになっており、ポリエチレングリコールは、副作用のない安全な合成ポリマー物質である。
【0003】
薬物修飾に関して、最近の研究の方向は、最良の治療効果を成し遂げるように、標的とされた分子をポリエチレングリコールを介して薬物分子に連結して、薬物分子を病巣の近くに濃縮することである。例えば、抗癌薬はモノクローナル抗体に連結される。出願人の最近の研究によれば、ポリエチレングリコールを介した2つの異なる医薬分子の組み合わせは、2つの分子の相乗効果を十分に発揮しながら、上述の、生理的半減期の増加を維持し、かつ免疫原性および毒性を低減することができる。分子間の相乗効果は、漢方薬の理論では非常に重要である。2以上の異なる分子がポリエチレングリコールによって連結されているとき、異時性の二種の官能基を有するPEG誘導体が必要とされる。現在、出願人は、異時性の二種の官能基を有する様々なPEG誘導体、例えばMAL−PEG−NHS、アクリル酸−PEG−NHS、およびHO−PEG−COOHを製造することができる。しかしながら、それらの、異時性の二種の官能基を有するPEG誘導体は、直鎖ポリエチレングリコール誘導体である。
【0004】
異時性の二種の官能基を有する直鎖ポリエチレングリコール誘導体は、応用例がある程度は限定される。異時性の二種の官能基を有する直鎖エチレングリコール誘導体によって連結された2つの分子の比は、基本的に1:1である。1つの分子が別の分子よりも多く必要とされる場合、例えば1つの分子が低いインビボ活性を有する場合、その低活性分子のために、高活性分子よりも多くの連結部が必要とされるであろうが、これは、異時性の二種の官能基を有する直鎖ポリエチレングリコール誘導体にとっては課題である。同時に、薬物運搬に関しては、マルチアームポリエチレングリコールは直鎖ポリエチレングリコールよりも有利である。異時性の二種の官能基を有する直鎖ポリエチレングリコール誘導体は2つの分子しか運べないのに対し、マルチアームポリエチレングリコールはいくつかの末端基を有し、従って複数の薬物連結点を有し、そのためいくつかの薬物分子を運ぶことができる。現在、マルチアームポリエチレングリコールは、ペプチドおよび小分子薬物のPEG修飾において広く使用されている。しかしながら、市場のマルチアームPEG誘導体は、例えば4アームのポリエチレングリコールコハク酸−NHSエステル、(4アーム−SS)など、同じ活性基しか有しない。特許文献1は、ただ1つの活性基を有する、重合反応を通して形成される星型ポリエチレングリコール誘導体を示す。同時に、この星型ポリエチレングリコール誘導体の1つのアームは、非エーテル結合、例えばアミド結合またはエステル結合を通して他のアームと連結されている。この連結は、状態が異なり、この誘導体の安定性を低下させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6046305号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、異なるタイプの活性基を有する新しい、単純な構造の安定なマルチアームポリエチレングリコール誘導体を提供することにより、既存の技術におけるマルチアームポリエチレングリコールの活性基の種類を増加させることである。この異なるタイプの活性基を有する新しいマルチアームPEG誘導体としては、異時性の二種の官能基ポリエチレングリコール誘導体および異時性の3官能基ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。同時に、本発明は、異なるタイプの活性基を有するマルチアームPEG誘導体についての新しい調製方法、ならびにマルチアームポリエチレングリコール、活性ポリエチレングリコール誘導体と医薬分子との接合体およびゲルならびにそれらの応用例を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般式Iの構造:
【化1】

を有する新規なマルチアームポリエチレングリコール誘導体を提供し、式中:
、F、FおよびFは、各々、−X−Yの構造を有し、かつF、F、FおよびFのうちの少なくとも2つは異なり;
Xは、(CH、(CHNH、(CHOCOO−、(CHOCONH−、(CHNHCOO−、(CHNHCONH−、OC(CHCOO−、および(CHCONH−からなる群から選択される連結部であり;iは0〜10の整数であり;
Yは、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、カルボキシル、エステル基、アルデヒド基、アクリル基およびマレイミド基からなる群から選択される官能性末端基であり;
PEGは同じまたは異なる−(CHCHO)−であり、平均値mは2〜250の整数であり;
lは1以上の整数である。
【0008】
好ましい実施形態では、本発明のマルチアームポリエチレングリコール誘導体の中のFは−X−COOHであり、F、FおよびFは、各々、−X−Yの構造を有し、F、FおよびFのうちの少なくとも1つは−X−COOHではない。上記のマルチアームポリエチレングリコールの活性誘導体は式IIの構造:
【化2】

を有する。
【0009】
好ましい実施形態では、本発明のマルチアームポリエチレングリコール誘導体の中のFおよびFはともに−X−COOHであり、FおよびFは、各々、−X−Yの構造を有し、FおよびFのうちの少なくとも1つは−X−COOHではない。上記のマルチアームポリエチレングリコールの活性誘導体は式IIAの構造:
【化3】

を有する。
【0010】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、式IIIの構造のマルチアームポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ−酢酸:
【化4】

を有する。
【0011】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式IIIAのマルチアームポリエチレングリコールヒドロキシ−ポリ−酢酸:
【化5】

を有する。
【0012】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式IVのマルチアームポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ−NHSエステル:
【化6】

を有する。
【0013】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式IVAの構造のマルチアームポリエチレングリコールヒドロキシ−ポリ−NHSエステル:
【化7】

を有する。
【0014】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式Vの構造のマルチアームポリエチレングリコールアミノ−モノ−酢酸:
【化8】

を有する。
【0015】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式VAの構造のマルチアームポリエチレングリコールアミノ−ポリ−酢酸:
【化9】

を有する。
【0016】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式VIの構造のマルチアームポリエチレングリコールマレイミド−モノ−NHSエステル:
【化10】

を有する。
【0017】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式VIAの構造マルチアームポリエチレングリコールマレイミド−ポリ−NHSエステル:
【化11】

を有する。
【0018】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式VIIの構造のマルチアームポリエチレングリコールアクリレート−モノ−NHSエステル:
【化12】

を有する。
【0019】
詳細な実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体は、以下のとおりの式VIIAの構造のマルチアームポリエチレングリコールアクリレート−ポリ−NHSエステル:
【化13】

を有する。
【0020】
好ましい実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコール誘導体の中のlは、1〜10(1および10を含む)の整数であり、さらに好ましいlは1〜3(1および3を含む)の整数である。
【0021】
好ましい実施形態では、上記のマルチアームポリエチレングリコールの分子量は、400〜80000ダルトン、好ましくは1000〜20000ダルトンである。
【0022】
また、本発明は、上記のマルチポリエチレングリコールの活性誘導体の末端基Fを通した、その活性誘導体および医薬分子から形成される接合体を提供する。いくつかの実施形態では、特定の医薬分子は、アミノ酸、タンパク質、酵素、ヌクレオシド、糖類、有機酸、フラボノイド、キノン類、テルペノイド、ベンゼン フェノール、ステロイドおよびその配糖体、アルカロイド、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、本発明は、8アームのポリエチレングリコール酸と、イリノテカンまたはドセタキセルとから形成される接合体を提供する。
【0023】
また、本発明は、上記の活性マルチアームポリエチレングリコールの活性誘導体から形成されるゲルを提供する。
【0024】
本発明は、医薬調剤における上記の接合体の応用をさらに提供する。
【0025】
本発明は、異なるタイプの活性基を有する、新しい、単純で安定なマルチアームPEG誘導体を調製する方法をさらに提供する。上記の方法は、ペンタエリスリトールまたはオリゴマーペンタエリスリトールを開始剤として使用して、エチレンオキシドを重合し、マルチアームポリエチレングリコールを生成すること、このマルチアームポリエチレングリコールの1以上の末端ヒドロキシ基を、化学反応を介してカルボン酸またはアミンへと転化すること、次いでイオン交換カラムを用いて、このモノ−カルボキシルまたはポリ−カルボキシル、モノ−アミノまたはポリ−アミノ生成物を単離し精製すること、次いで化学反応を介して対応するヒドロキシル、カルボキシルおよびアミノ基を所望の反応性基へと変換すること、ならびに最後に、本発明で記載される異なるタイプの活性基を有するマルチアームポリエチレングリコール誘導体を生成すること、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
異なるタイプの活性基を有するマルチアームポリエチレングリコール誘導体を調製する方法が、以下の例を用いて説明される。マルチアームPEG鎖の構造式は以下のとおりである:
【化14】

式中、
Rは、開始剤分子の中心分子、または非分子のヒドロキシル部分であり、典型的にはアルキル、シクロアルキルまたはアラルキルであり、
nは分枝の数またはアームの数であり、
PEGは、同じまたは異なる−(CHCHO)−であり、mは、ポリエチレングリコールの1本のアームの重合度を特徴づけるいずれかの整数である。
【0027】
Rがペンタエリスリトールの非ヒドロキシル部分であるとき、開始剤分子はペンタエリスリトールであり、その化学構造は以下のとおりである:
【化15】

このとき、nは4であり、形成されるものは4アームのポリエチレングリコールである。
【0028】
Rがペンタエリスリトールの二量化の非ヒドロキシル部分であるとき、開始剤分子は、以下の化学構造を有する、ペンタエリスリトールの二量化である:
【化16】

このとき、nは6であり、形成されるものは6アームのポリエチレングリコールである。
【0029】
Rが三量体ペンタエリスリトールの非ヒドロキシル部分であるとき、開始剤分子は、以下の化学構造を有する、三量体ペンタエリスリトールである:
【化17】

このとき、nは8であり、形成されるものは8アームのポリエチレングリコールである。
【0030】
本発明で使用されるマルチアームポリエチレングリコールは、開始剤としての上記のペンタエリスリトールまたはオリゴマーペンタエリスリトールを用いてエチレンオキシドを重合することにより生成される。
【0031】
ポリエチレングリコールの1本のアームの分子量が300〜60,000ダルトンである(これは、mが約6〜1300であることと等価である)限りは、ポリエチレングリコールは、一般に、分子量を用いて表すことができる。より好ましくは、mは、28、112および450であり、これらは、それぞれ1,325、5,000および20,000の分子量に対応する。その繰り返し単位ではなく平均分子量によって通常は限定される最初のPEG化合物の潜在的な不均一性があるため、整数mを使用して当該PEGポリマーの中の自己繰り返し単位を表す代わりに、分子量でポリエチレングリコールポリマーを特徴づけることが好ましい。
【0032】
活性基:
本発明のマルチアームポリエチレングリコールの活性誘導体を使用するとき、その誘導体の異なる目的は、異なる末端官能基Fによって決定される。これらの官能基の導入は、当該誘導体の応用分野および適用できる構造を決定することになろう。最も一般的な官能基は、式IVで見ることができるように、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)である。NHSエステル構造を有する活性誘導体は、アミンを有する基と連結することができる。
【0033】
同様に、本願明細書によれば、当業者は、式IIIで見ることができるような、アミノ官能基を有するマルチアームの活性ポリエチレングリコール誘導体を得ることができる。
【0034】
同様に、当業者は、式IVで見ることができるような、カルボキシル官能基を有するマルチアームの活性ポリエチレングリコール誘導体を得ることができる。
【0035】
同様に、当業者は、式VIで見ることができるような、マレイミド官能基(MAL)を有するマルチアームの活性ポリエチレングリコール誘導体を得ることができる。MAL構造を有する活性誘導体は、チオール基と連結することができる。
【0036】
多くの医薬は、活性なアミノ、カルボキシルおよびヒドロキシルなどの官能基を含有し、これらは、単糖、多糖、ヌクレオシド、ポリヌクレオシドホスホリルおよびインビボの他の成分と組み合わせて、生物における活性な薬理学構造を形成することができる。
【0037】
それゆえ、インビボでの生物有機分子の短い半減期および短時間の生理的有効性といった短所を克服するように、修飾された官能基を有するPEG誘導体は、生物有機分子に代わって、同様にこれらの医薬分子と組み合わせることができる。
【0038】
本発明のマルチアームポリエチレングリコールの活性誘導体は、適切な末端官能基(F)を通して薬物分子と組み合わせることができる。上記の末端官能基は、タンパク質、ペプチドまたは他の天然の医薬の中の遊離のアミノ基、ヒドロキシル、硫黄ヒドロキシルをPEG誘導体に連結することができる。小分子の医薬については、各マルチアームPEG分子は、いくつかの医薬分子を結合することができる。このようなPEG誘導体は、体内中での薬物分子の生理的役割を改善するように、比較的高い薬物量を有して、薬物の適切な濃度を確保し、放出機能を高める。
【0039】
すべてのこれらの応用例の目的は、PEG誘導体の医学的応用についての起こりうる参照モデルを提供することにすぎず、実際の応用例および選択は、薬理学的、毒物学的および臨床の試験に基づいて確認されることになる。
【0040】
本発明の組み合わせにおいて、アミノ酸、タンパク質、酵素、ヌクレオシド、糖類、有機酸、フラボノイド、キノン類、テルペン、フェノール系のフェニルプロパノイド、ステロイドおよびその配糖体、アルカロイドなどの医薬分子のうちのいくつかが好ましい。インターフェロン薬物、EPO薬物、成長ホルモン薬物、抗体薬物などのタンパク質医薬分子は好ましい。
【0041】
本発明の組み合わせは、いずれかの許容できる投与方法で、または同様の目的をもつ試薬とともに、純粋な化合物または好適な医薬組成物の形態で投与することができる。それゆえ、当該医薬は、経口投与、鼻内投与、経直腸投与、経皮投与または注射投与の方法を通して、固体、半固体、凍結乾燥された粉末または液体の形態で、例えば、錠剤、座薬、丸剤、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル、粉末、溶液、懸濁液、またはエアロゾルなどの形態で摂取することができ、正確な用量の単位剤形および簡単な投与方法が好ましいことになろう。当該組み合わせは、従来の医薬担体または賦形剤、および有効成分(1以上)として使用される本発明の組み合わせを含むことができる。加えて、他の薬物、担体および助剤も含めることができる。
【0042】
典型的には、所望の投与方法によれば、薬学的に許容できる組み合わせは、1〜約99重量%の本発明の組み合わせ、および99〜1重量%の好適な医薬賦形剤を含むことになろう。当該好ましい組み合わせは、約5〜75%の本発明の組み合わせを含有し、残りの組成は好適な医薬賦形剤である。
【0043】
好ましい投与方法は、従来の1日投与計画による注射であるが、この計画は、疾患の重症度に応じて調整することができる。本発明の組み合わせまたはそれらの薬学的に許容できる塩は、溶液または懸濁液を形成するように、約0.5〜約50%の有効成分を、液体として投与することができる医薬助剤、例えば水、食塩水、グルコース水溶液、グリセロール、エタノールなどに分散させるなどして注射剤へと構成することもできる。
【0044】
液体として投与することができる医薬的組み合わせについては、本発明の組み合わせ(約0.5〜約20%)および選択的に存在する医薬アジュバントは、水、生理食塩水、グルコース水溶液、グリセロール、エタノールなどの担体へと分散させて、溶液または懸濁液を形成することができる。
【0045】
必要に応じて、本発明の医薬的組み合わせは、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤および酸化防止剤、例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、オレイン酸エステル、ブチル化ヒドロキシトルエンなどの少量の助剤物質を含有してもよい。
【0046】
このような製剤の実際の調製方法は、当業者には公知であり、例えば、調製方法は、Remington’s Pharmacuetical Sciences,18th Edition(Mack Publishing Company、ペンシルベニア州、イーストン(Easton)、1990年)に見出すことができる。いずれの場合も、本発明の技術を用いて、使用される組み合わせは、対応する疾患の処置のための治療上有効な組み合わせを含有してもよい。
【実施例】
【0047】
以下の実施例は、説明のために提供され、本発明を限定するために提供されるのではない。
【0048】
以下の実施例で言及するすべての試薬は、特段の記載がない限り、市販されている。
【0049】
実施例1:
4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−モノ−酢酸(III−1)および4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−ジ−酢酸(IIIA−1)の合成
【化18】

手順:
800mlのTHF中の4アームのPEG(10kDa、100g)を、窒素下でTHF(20%)を留去することにより共沸乾燥し、この溶液を室温まで冷却した。この溶液にカリウム tert−ブトキシド(4.48g)を加え、室温で2時間撹拌した。ブロモ酢酸tert−ブチル(5.17ml)を滴下し、この混合物を室温で一晩撹拌した。この混合物を濾過し、真空下でエバポレーションして、溶媒を除去した。残渣を水溶液(HO 500mL+水酸化ナトリウム 8.16g+リン酸ナトリウム)に溶解させ、80℃で2時間撹拌した。この水溶液のPHを約2〜3に調整した。塩化ナトリウム(15%)を加え、生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下、50℃で濃縮し、次いでジエチルエーテルの中へ沈殿させた。濾液を真空下で乾燥し、DEAEイオン交換クロマトグラフィカラムを用いて分離し、4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−モノ−酢酸(III−1)および4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−ジ−酢酸(IIIA−1)を得た。
NMR(DMSO)δ: 4.01(s,CHCOOH),4.54(t,CHOH)。
【0050】
実施例2:
4アームのポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(IV−1)の合成
【化19】

手順:
4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−モノ−酢酸(III−1)(10kDa、0.5g)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(0.01439g)をジクロロメタンに溶解させた。DCC(0.01290g)を加え、この溶液を室温で一晩撹拌し、濾過し、真空下、40℃で濃縮した。残渣を熱イソプロパノールに溶解させ、次いでこの溶液を0℃に冷却することにより、結晶化させた。得られた沈殿物を集め、イソプロパノールで洗浄し、乾燥し、4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−モノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(IV−1)を得た。
【化20】

【0051】
実施例3:
4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−モノ−酢酸メチル(IVA−1)
【化21】

手順:
4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシル−モノ−酢酸(III−1)(10kDa、3.2g)をメタノール(16ml)に溶解させた。この溶液を0℃に冷却し、濃硫酸を滴下した。この溶液を室温で3時間撹拌した。この溶液のPHを、8% NaHCO3水溶液を用いて約7.0に調整した。生成物をジクロロメタンで抽出した。有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、40℃で濃縮し、次いでジエチルエーテルの中へ沈殿させた。濾液を真空下で乾燥し、4アームのポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−モノ酢酸メチル(IVA−1)を得た。
NMR(DMSO)δ: 3.32(s,CHCOOCH),4.13(s,CHCOOCH),4.57(t,CHOH)。
【0052】
実施例4:
4アームのポリ(エチレングリコール)スルホン酸エステル−モノ−酢酸メチル(IVB−1)
【化22】

手順:
50mlのトルエン中の4アームのポリ(エチレングリコール)スルホン酸エステル−モノ酢酸メチル(IVB−1)(10000、3.0g)を、38mlのトルエンを留去することにより共沸乾燥し、この溶液を室温まで冷却した。この溶液に5mlのジクロロメタンを加え、188μlのトリエチルアミン、94μlのMsClを滴下した。この溶液を室温で一晩撹拌し、720μlの無水エタノールを加えることにより反応をクエンチした。この混合物を濾過し、60℃でエバポレーションし、熱イソプロパノールに溶解させ、次いでこの溶液を0℃に冷却することにより、結晶化させた。得られた沈殿物を集め、イソプロパノールで洗浄し、乾燥し、4アームのポリ(エチレングリコール)スルホン酸エステル−モノ酢酸メチル(IVB−1)を得た。
NMR(DMSO)δ: 3.17(s,CHOSOCH),4.13(s,CHCOOCH),4.30(t,CHOSOCH)。
【0053】
実施例5:
4アームの(ポリエチレングリコール)アミノ−モノ−酢酸(V−1)
【化23】

手順:
10000の分子量を有する4アームのポリ(エチレングリコール)スルホン酸エステル−モノ酢酸(V−1)(2.6g)を7.8mlの水に溶解させた。この水溶液のPHを、2M水酸化ナトリウムを用いて12に調整し、この溶液を2〜2.5時間撹拌した。アンモニア水(26ml)および塩化アンモニウム(1.3g)を、上記の水溶液に加えた。この混合物を室温で72時間撹拌した。塩化ナトリウム(7g)を加え、反応混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層を集め、40℃で濃縮して溶媒を除去した。次いで水(30ml)および塩化ナトリウムを加え、この水溶液のPHを、2M 塩酸を用いて2〜3に調整した。生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、エチルエーテルに加えた。沈殿した生成物を濾別し、真空下で乾燥し、4アームのポリ(エチレングリコール)スルホン酸エステル−モノ酢酸(V−1)を得た。
NMR(DMSO)δ: 2.96(t,CHCHNH),4.00(s,CHCOOH)。
【0054】
実施例6:
4アームの(ポリエチレングリコール)ヒドロキシ−ジエチルメチルエステル(IVC−1)
【化24】

出発物質は分子量10,000の4アームの(ポリエチレングリコール)ヒドロキシ−酢酸(IIIA−1)であり、その合成工程は実施例3の合成工程と同じである。
NMR(DMSO)δ: 3.32(s,CHCOOCH),4.13(s,CHCOOCH),4.57(t,CHOH)。
【0055】
実施例7:
4アームの(ポリエチレングリコール)スルホン酸エステル−ジエチルメチルエステル(IVD−1)
【化25】

出発物質は分子量10,000の4アームの(ポリエチレングリコール)ヒドロキシ−ジエチルメチルエステル(IVC−1)であり、その合成工程は実施例4の合成工程と同じである。
NMR(DMSO)δ: 3.17(s,CHOSOCH),3.32(s,CHCOOCH),4.13(s,CHCOOCH),4.30(t,CHOSOCH)。
【0056】
実施例8:
4アームのポリエチレングリコールアミノ−ジ酢酸(VA−1)
【化26】

出発物質は分子量10,000の4アームの(ポリエチレングリコール)スルホン酸エステル−ジエチルメチルエステル(IVD−1)であり、その合成工程は実施例5の合成工程と同じである。NMR(DMSO)δ: 2.96(t,CHCHNH),4.00(s,CHCOOH)。
【0057】
実施例9:
4アームの(ポリエチレングリコール)−トリマレイミド−モノ−酢酸(VB−1)
【化27】

手順:
10000の分子量を有する4アームのポリ(エチレングリコール)アミノ−モノ酢酸(V−1)(1.0g)を10mlのジクロロメタンに溶解させた。42μlのトリエチルアミンを加え、次いで5分後にMAL−NHSを加えた。この混合物を、光を避けて室温で一晩撹拌した。この反応溶液を40で濃縮した。残渣を熱イソプロパノールに溶解させ、次いで氷浴の中で冷却することにより沈殿させた。沈殿物を濾過し、イソプロパノールによって洗浄し、真空下で乾燥し、4アームのポリ(エチレングリコール) トリマレイミド−モノ酢酸(V−1)を得た。
【化28】

【0058】
実施例10:
4アームの(ポリエチレングリコール)−トリマレイミド−モノ−NHSエステル(VI−1)
【化29】

手順:
4アームのポリ(エチレングリコール)−トリマレイミド−モノ−酢酸(VB−1)(10000、1.0g)およびN−ヒドロキシルスクシンイミド(0.01496g)を10mlのジクロロメタンに溶解させ、DCC(0.02889g)を加え、この溶液を、光を避けて室温で一晩撹拌した。この反応混合物を濾過し、濃縮して溶媒を除去した。残渣を熱イソプロパノールに溶解させ、次いで氷浴の中で冷却することにより沈殿させた。沈殿物を濾過し、イソプロパノールによって洗浄し、真空下で乾燥し、4アームのポリ(エチレングリコール)−トリマレイミド−モノ−スクシンイミドエステル(VI−1)を得た。
【化30】

【0059】
実施例11:
4アームの(ポリエチレングリコール)−ジマレイミド−酢酸(VC−1)
【化31】

出発物質は分子量10,000の4アームの(ポリエチレングリコール)アミノ−ジ酢酸(VA−1)であり、その合成工程は実施例9の合成工程と同じである。
【化32】

【0060】
実施例12:
4アームの(ポリエチレングリコール)−ジマレイミド−ジNHSエステル(VIA−1)
【化33】

出発物質は分子量10,000の4アームの(ポリエチレングリコール)−ジマレイミド−酢酸(VC−1)であり、その合成工程は実施例10の合成工程と同じである。
【化34】

【0061】
実施例13:
4アームの(ポリエチレングリコール)アクリレート−モノ−酢酸(VD−1)
【化35】

手順:
3つ口丸底フラスコに、窒素を導入し、1.0gの、分子量10,000の4アームのポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ酢酸(III−1)および0.0005gのBHTを取り、12mlのジクロロメタンに溶解させ、加熱して10%溶媒を蒸発させ、室温まで冷却し、49μlのトリエチルアミンを加え、5〜10分間撹拌し、250μlのアクリロイル塩化物を加え、窒素を充填し、光から保護し、この系を密閉して撹拌し、一晩反応し、翌日、濃厚になるように30℃で濃縮し、20mlの水を加え、透明になるように溶解し、30分間放置し、15%塩化ナトリウムを加え、希塩酸を用いてpH=2〜3に調整し、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせ、この有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、透明になるようにし、濾過し、濃厚になるように30℃で濾液を濃縮し、氷浴、20mlのイソプロパノールを加え、熱的に溶解し、沈殿させ、濾過し、イソプロパノールで洗浄し、真空乾燥し、4アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−酢酸(VD−1)を得た。
NMR(DMSO)δ: 4.00(s,CHCOOH),4.21(t,CHOCOCH=CH),5.93(d,CHOCOCH=CH),6.20(q,CHOCOCH=CH),6.36(d,CHOCOCH=CH)。
【0062】
実施例14:
4アームの(ポリエチレングリコール)アクリレート−モノ−NHSエステル(VII−1)
【化36】

手順:
3つ口丸底フラスコに、窒素を導入し、暗所に置き、0.8gの、分子量10,000の4アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−酢酸(VD−1)および0.011gのNHSを秤量し、8mlのジクロロメタンを用いて溶解し、0.0206gのDCCを系に加え、暗所で気密で撹拌して一晩反応させ、翌日、濾過し、濃厚になるように30℃で濾液を濃縮し、16mlのイソプロパノールを用いて熱的に溶解した後で氷浴中で30分間撹拌し、沈殿させ、濾過し、イソプロパノールで洗浄し、真空乾燥し、4アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−NHSエステル(VII−1)を得た。
【化37】

【0063】
実施例15:
4アームのポリエチレングリコールアクリル酸−酢酸(VE−1)
【化38】

出発物質は分子量10,000の4アームの(ポリエチレングリコール)ヒドロキシ−ジ酢酸(IIIA−1)であり、その合成工程は実施例13の合成工程と同じである。
NMR(DMSO)δ: 4.00(s,CHCOOH),4.21(t,CHOCOCH=CH),5.93(b,CHOCOCH=CH),6.20(4,CHOCOCH=CH),6.36(b,CHOCOCH=CH)。
【0064】
実施例16:
4アームのポリエチレングリコールアクリル酸−ジNHSエステル(VIIA−1)
【化39】

出発物質は分子量10,000の4アームの(ポリエチレングリコール)アクリル酸−ジ酢酸(VE−1)であり、その合成工程は実施例14の合成工程と同じである。
【化40】

【0065】
実施例17:
8アームの(ポリエチレングリコール)ヒドロキシ−モノ酢酸(III−2)および8アームの(ポリエチレングリコール)ヒドロキシ−ジ酢酸(IIIA−2)の合成
【化41】

手順:
3つ口丸底フラスコに、窒素を導入し、100gの8アームのPEG−10Kおよび800mlのTHFを加え、加熱して溶解し、約20%溶媒を蒸発させ、冷却し、8.96gのカリウム tert−ブチルアルコールを加え、室温で2時間、10.34mlの臭素酢酸tert−ブチルを滴下し、室温で一晩反応させ、翌日濾過し、反応溶液を濃厚になるように濃縮し、1000mlのアルカリ加水分解物(1000mlの水。16.32gの水酸化ナトリウムおよび155.04gのナトリウムを加える)を加え、80℃で2時間アルカリ加水分解し、2N 塩酸溶液でpHを2〜3に調整し、15%塩化ナトリウム溶液を加え、ジクロロメタンで3回抽出し、有機抽出液を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、50℃、粘性が高くなるまで濃縮し、エーテルで沈殿させ、真空乾燥した。40gの粗生成物を水溶液にし、DEAEアニオンカラムで分離し、それぞれ塩化ナトリウム水溶液溶離液を用いて集め、2N 塩酸を用いて水相をpH 2〜3に調整し、ジクロロメタンで抽出し、有機抽出液を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、ジエチルエーテルで沈殿させ、それぞれ、分子量10,000の8アームのポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ−酢酸(III−2)および8アームのポリエチレングリコールヒドロキシル基−酢酸(IIIA−2)を得た。
NMR(DMSO)δ: 4.01(s,CHCOOH),4.54(t,CHOH)。
【0066】
実施例18:
8アームのポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ酢酸メチル(IIIB−2)
【化42】

手順:
1口丸底フラスコに、4.0gの、分子量10,000の8アームのポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ酸(III−2)を加え、20mlの無水メタノールに溶解させ、氷水浴、0.8ml濃硫酸を加え、室温で3時間、8%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpH値を7.0に調整し、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせ、この有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、40℃、粘性が高くなるまで濃縮し、エーテルを用いて沈殿させ、真空乾燥して、8アームのポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ酢酸メチル(IIIB−2)を得た。
NMR(DMSO)δ: 3.32(s,CHCOOCH),4.13(s,CHCOOCH),4.57(t,CHOH)。
【0067】
実施例19:
8アームのポリエチレングリコールスルホン酸エステル−モノ酢酸メチル(IIIC−2)
【化43】

手順:
3つ口丸底フラスコに、窒素を導入し、3.0gの、分子量10,000の8アームのポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ酢酸メチルを加え、50mlのトルエンに溶解させ、これを加熱して38mlのトルエンを蒸発させ、留出分が透明であるようにし、室温まで冷却し、5mlのジクロロメタンを加え、10分間撹拌し、439μlのトリエチルアミンを加え、5分間撹拌し、220μlの塩化メチルを滴下し、密閉して一晩反応させ、翌日、1.44mlのエタノールを加え、15分間撹拌し、濾過し、粘性が高くなるまで濃縮し、60mlのイソプロパノールを用いて加熱溶解し、氷水浴、沈降させ、濾過し、ケーキをイソプロパノールで1回洗浄し、真空乾燥し、8アームのポリエチレングリコールスルホン酸エステル−モノ酢酸メチル(IIIC−2)を得た。
NMR(DMSO)δ: 3.17(s,CHOSOCH),4.13(s,CHCOOCH),4.30(t,CHOSOCH)。
【0068】
実施例20:
8アームのポリエチレングリコールアミノ−モノ−酢酸(V−2)の合成
【化44】

手順:
1口丸底フラスコに、2.6gの、分子量10,000の8アームのポリエチレングリコールスルホン酸エステル−モノ酢酸メチルを加え、7.8mlの脱気した水に溶解させ、2N 水酸化ナトリウム水溶液を使用してこの溶液をpH 12.0に調整し、室温で2〜2.5時間、26mlの、1.3gの塩化アンモニウムを溶解したアンモニア溶液をこの系に加え、室温で72時間撹拌し、反応後、7gの塩化ナトリウムを加え、溶解させ、反応混合物を塩化メチレンで3回抽出し、有機相を合わせ、40℃で乾固するまで濃縮し、30mlの水を加え、撹拌して透明になるまで溶解し、2N 塩酸を用いてpHを2〜3に調整し、5gの塩化ナトリウムを加え、再度ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせ、この有機相を、清澄になるまで無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、40℃で粘性が高くなるまで濃縮し、50mlのエーテルを用いて沈降させ、濾過し、真空乾燥し、8アームのポリエチレングリコールアミノ−モノ−酢酸(V−2)を得た。
NMR(DMSO)δ: 2.96(t,CHCHNH),4.00(s,CHCOOH)。
【0069】
実施例21:
8アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−酢酸(VI−2)の合成
【化45】

手順:
3つ口丸底フラスコに、窒素を導入し、1.0gの、分子量10,000の8アームのポリエチレングリコールヒドロキシ−モノ酢酸(III−2)および0.0005gのBHTを取り、12mlのジクロロメタンに溶解させ、加熱して10%溶媒を蒸発させ、室温まで冷却し、115μlのトリエチルアミンを加え、5〜10分間撹拌し、59μlのアクリロイル塩化物を加え、窒素を充填し、光から保護し、この系を密閉し、撹拌しながら一晩反応させ、翌日、濃厚になるように30℃で濃縮し、20mlを加え、透明になるように溶解し、30分間放置し、15%塩化ナトリウムを加え、希塩酸を用いてpH=2〜3に調整し、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせ、この有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、透明になるようにし、濾過し、濃厚になるように30℃で濾液を濃縮し、氷浴、20mlのイソプロパノールを加え、熱的に溶解し、沈殿させ、濾過し、イソプロパノールで洗浄し、真空乾燥し、8アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−酢酸(VI−2)を得た。
NMR(DMSO)δ: 4.00(s,CHCOOH),4.21(t,CHOCOCH=CH),5.93(d,CHOCOCH=CH),6.20(q,CHOCOCH=CH),6.36(d,CHOCOCH=CH)。
【0070】
実施例22:
8アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−NHSエステル(VII−2)の合成
【化46】

手順:
8アームのポリ(エチレングリコール)アクリレート−モノ−酢酸(VI−2)(10kDa、0.8g)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(0.011g)を8mlのジクロロメタンに溶解させた。DCC(0.0206g)を加え、この溶液を室温で一晩撹拌し、濾過し、真空下、40℃で濃縮した。残渣を熱イソプロパノールに溶解させ、次いでこの溶液を0℃に冷却することにより、結晶化させた。得られた沈殿物を集め、イソプロパノールで洗浄し、乾燥し、4アームのポリ(エチレングリコール)アクリレート−モノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(VII−2)を得た。
【化47】

【0071】
実施例23:
8アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−酢酸(VI−2)およびエノキサパリン誘導体によって組み合わされた接合体
1グラムの、分子量10,000の8アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−酢酸(VI−2)(実施例21で生成した)を10mlのジクロロメタンに溶解させ、次いで0.12gのエノキサパリン トポテカン グリシン クール(グリシン−イリノテカン)(イリノテカンは、Chengdu Furunde Industrial Co.,Ltd.から購入した)、および50mgのジメチル−アミノピリジン、および95mgのジシクロヘキシルカルボジイミド 2サブ15 アミンを加えた。この溶液を室温で6時間撹拌し、真空にして溶媒を回収し、20mlの1,4−ジオキサンを残渣に加えて、溶解させた。濾過して沈殿物を除去し、この溶液を濃縮し、残渣に20mlのエーテルを加え、濾過して沈殿を集め、次いでエーテルとともに真空乾燥した。収量:0.8g(80%)、融点:46〜50℃。
【0072】
実施例24:
薬物ゲルを有する安定な8アームのポリエチレングリコールアクリレートの合成
8アームのポリエチレングリコールアクリレート−モノ−酢酸(VI−2)(10kDa、0.5g)および(実施例23で調製した)エノキサパリン誘導体を10mlのリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させた。4アームのポリエチレングリコールSH(5kDa、0.4g)を10mlのリン酸緩衝液(pH 7.4)に溶解させた。これら2つの溶液を素早く混合すると、2分間のうちに8アームのポリエチレングリコールゲルが生成した。生成したゲルを100mlのリン酸緩衝液(pH 7.4)の中に入れ、37℃で保存した。このゲルは360日間安定であろうし、変性も融解も示さないであろうが、エノキサパリンはゆっくりと放出されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体:
【化1】

(式中、
、F、FおよびFは、各々、−X−Yの構造を有し、かつF、F、FおよびFのうちの少なくとも2つは異なり;
Xは、(CH、(CHNH、(CHOCOO−、(CHOCONH−、(CHNHCOO−、(CHNHCONH−、OC(CHCOO−、(CHCOO−および(CHCONH−からなる群から選択される連結部であり、iは0〜10の整数であり;
Yは、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、カルボキシル、エステル基、アルデヒド基、アクリル基およびマレイミド基からなる群から選択される官能性末端基であり;
PEGは、互いに同じまたは異なる−(CHCHO)−であり、mの平均は2〜250の整数であり;
lは1以上の整数である)。
【請求項2】
前記lは1以上10以下の整数である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項3】
は−X−COOHであり、F、FおよびFは、各々、−X−Yの構造を有し、F、FおよびFのうちの少なくとも1つは−X−COOHではない、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項4】
およびFはともに−X−COOHであり、FおよびFは、各々、−X−Yの構造を有し、FおよびFのうちの少なくとも1つは−X−COOHではない、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項5】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式IIIのマルチアームポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−モノ−酢酸:
【化2】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項6】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式IIIAのマルチアームポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−ポリ−酢酸:
【化3】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項7】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式IVのマルチアームポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−モノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル:
【化4】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項8】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式IVAのマルチアームポリ(エチレングリコール)ヒドロキシ−ポリ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル:
【化5】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項9】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式Vのマルチアームポリ(エチレングリコール)アミノ−モノ−酢酸:
【化6】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項10】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式VAのマルチアームポリ(エチレングリコール)アミノ−ポリ−酢酸:
【化7】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項11】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式VIのマルチアームポリ(エチレングリコール)マレイミド−モノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル:
【化8】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項12】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式VIAのマルチアームポリ(エチレングリコール)マレイミド−ポリ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル:
【化9】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項13】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式VIIのマルチアームポリ(エチレングリコール)アクリレート−モノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル:
【化10】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項14】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体は、式VIIAのマルチアームポリ(エチレングリコール)アクリレートポリ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル:
【化11】

である、請求項1に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項15】
前記lは1、2または3である、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項16】
前記マルチアームポリ(エチレングリコール)は、約400ダルトン〜約80,000ダルトン、好ましくは1,000〜20,000ダルトンの分子量を有する、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)誘導体。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)の活性誘導体および医薬分子から形成される接合体。
【請求項18】
前記医薬分子は、アミノ酸、タンパク質、酵素、ヌクレオシド、糖類、有機酸、フラボノイド、キノン類、テルペノイド、ベンゼン フェノール、ステロイド、配糖体、アルカロイド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の接合体。
【請求項19】
前記医薬分子はイリノテカンである、請求項18に記載の接合体。
【請求項20】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のマルチアームポリ(エチレングリコール)の活性誘導体から形成されるゲル。

【公表番号】特表2013−515791(P2013−515791A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545056(P2012−545056)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/CN2010/002139
【国際公開番号】WO2011/075953
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512165075)ジェンケム テクノロジー カンパニー リミテッド ティアンジンブランチ (1)
【Fターム(参考)】