説明

マルチガスセンサの制御方法及びマルチガスセンサの制御装置

【課題】1つのガスセンサでNO濃度とアンモニア濃度を測定可能で、アンモニア濃度の測定精度が向上したマルチガスセンサの制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】第1測定室S1の内部と外部に位置し、第1測定室に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れを行う第1ポンピングセル2と、第1測定室に連通するNO測定室S2の内部と外部に位置し、被測定ガス中のNO濃度に応じた第2ポンピング電流Ip2が一対の第2電極間に流れる第2ポンピングセル4とを備えたNOセンサ部30Aと、少なくとも一対の電極42aを有しNOセンサ部の外表面に形成されたアンモニアセンサ部42とを共に設けたマルチガスセンサ200の制御方法であって、第1ポンピングセルに流れる第1ポンピング電流に基づいて酸素濃度を算出し、該酸素濃度とアンモニアセンサ部のアンモニア濃度出力とに基づき、修正アンモニア濃度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中の窒素酸化物濃度及びアンモニア濃度を検出するに適したマルチガスセンサの制御方法及びマルチガスセンサの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排気ガス中の特定ガスの濃度を測定するガスセンサとして、固体電解質体を用いつつ被測定ガス中のNO濃度を検出するNOセンサや、一対の電極間のインピーダンス変化又は起電力変化を利用して被測定ガス中のアンモニア濃度を検出するアンモニアセンサが知られている。
又、被測定ガス中のNO濃度とアンモニア濃度を同時に測定する技術として、被測定ガスをNH強酸化触媒に接触させてアンモニアをNOに変換して全NO濃度を測定する工程と、被測定ガスをNH弱酸化触媒に接触させてアンモニアの一部をNOに変換してNO濃度を測定する工程とを有し、これらの工程の2つの検出値からNO濃度とアンモニア濃度を演算する技術が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、1つのセンサ内にNO極、参照極、選択極、アンモニア極を設けて複数セル(multicell)を構成し、ガス導入により生じたNO極と参照極の間の起電力に応じて(NOの存在状態に応じて)、アンモニア濃度算出方法を変更することで、正確なアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサが提案されている(特許文献2参照)。具体的には、NOの存在状態に応じ、アンモニア極-参照極間の起電力と、NO極-アンモニア極間の起電力とのいずれかを検出に用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−133447号公報(要約)
【特許文献2】特表2009−511859号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、触媒能の違いにより測定を行うため、測定環境(温度、流速、圧力等)の変化によって触媒能が変化し、正確な測定ができないことがある。また、自動車の排ガス中のような苛酷な環境にこの装置を設置した場合、触媒能を長期にわたって安定的に維持することは困難である。
また、特許文献2記載の技術は、アンモニアを検知する電極を切り替えて測定を行うものであるが、測定環境が変動すると、当初設定した検知電極の切り替え条件(切り替えタイミングや、基準出力ポイントの設定等)を変更する必要があり、アンモニアの正確な測定がかえって困難になる可能性がある。さらに、検知電極の切り替えという複雑な制御が必要である。
【0005】
さらに、複数種のガス濃度を別個のセンサで測定すると、各センサの位置が同一場所でないため、ガス濃度や温度分布等が各センサ毎に異なり、又、各センサでの計測に遅れが生じる。そして、これらに起因して測定に影響を与えることがある。
又、アンモニアセンサによるアンモニア濃度の測定において、酸素濃度の影響を受けることが懸念されるが、従来のアンモニアセンサは酸素濃度の影響を考慮した測定を行うことが困難である。
従って本発明は、1つのガスセンサでNO濃度とアンモニア濃度を測定可能で、アンモニア濃度の測定精度が向上したマルチガスセンサの制御方法及びマルチガスセンサの制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のマルチガスセンサの制御方法は、第1測定室の内部と外部に位置すると共に、第1固体電解質体と該第1固体電解質体上に設けられた一対の第1電極とを有し、前記第1測定室に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れを行う第1ポンピングセルと、前記第1測定室に連通するNO測定室の内部と外部に位置すると共に、第2固体電解質体と該第2固体電解質体上に設けられた一対の第2電極とを有し、前記第1測定室にて酸素濃度が調整されて前記NO測定室に流入した被測定ガス中のNO濃度に応じた第2ポンピング電流が前記一対の第2電極間に流れる第2ポンピングセルとを備えたNOセンサ部と、前記NOセンサ部の外表面に形成され、少なくとも一対の電極が固体電解質体上に配置された、アンモニア濃度出力を出力するアンモニアセンサ部とを共に設けたマルチガスセンサの制御方法であって、前記第1ポンピングセルに流れる第1ポンピング電流に基づいて酸素濃度を算出し、該酸素濃度と前記アンモニアセンサ部の前記アンモニア濃度出力とに基づき、修正アンモニア濃度を算出する。
この方法によれば、被測定ガス中の酸素濃度の影響を受けない正確なアンモニア濃度を算出することができる。
また、自動車の排ガス中のような苛酷な環境であったとしても、長期にわたって安定的にアンモニア濃度を算出することができる。
さらに、NOセンサ部とアンモニアセンサ部との位置が同一場所にあるため、ガス濃度や温度分布等が各センサ部共に一致し、各センサでの計測の遅れを抑制できる。
【0007】
本発明のマルチガスセンサの制御方法において、前記被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたときに前記アンモニアセンサ部が示す前記アンモニア濃度出力が0となる場合に用いられ、前記修正アンモニア濃度と前記第2ポンピング電流とに基づき、第1修正NO濃度を算出してもよい。
被測定ガス中にアンモニアガスとNOガス(NO、NO)が含まれる場合、NO濃度に応じた第2ポンピング電流はアンモニア濃度の影響を受けることになるが、この方法により、アンモニアガスの濃度の影響を受けない正確なNOx濃度を検出することができる。
なお、この方法は、被測定ガス中にNOを含まない場合に用いられ、被測定ガス中のアンモニア濃度の影響を受けずに正確なNO濃度を算出することができる。
また、「被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたとき」とは、被測定ガス中に尿素水の噴射が停止されて一定時間後が例示できる。このタイミングにおいてアンモニア濃度が0になることを利用し、被測定ガス中にアンモニアセンサ部を晒してアンモニア濃度を計測すると、このタイミングでアンモニア濃度出力が0となる場合に上記方法を用いる。
【0008】
本発明のマルチガスセンサの制御方法において、前記被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたときに前記アンモニアセンサ部が負の前記アンモニア濃度出力を示す場合に用いられ、前記負のアンモニア濃度出力に基づいて予め見込みNO濃度を算出しておき、前記第2ポンピング電流と当該見込みNO濃度とに基づき、第2修正NO濃度を算出してもよい。
被測定ガス中にアンモニアガスとNOガス(NO、NO)が含まれる場合、NO濃度に応じた第2ポンピング電流はアンモニア濃度の影響を受けることになるが、この方法により、アンモニアガスの濃度の影響を受けない精確なNOx濃度を検出することができる。
なお、この方法は、被測定ガス中にNOを含む場合に用いられ、被測定ガス中にNO及びNOが共存していても、NO濃度とNO濃度を別個に正確に算出することができる。これに対し、従来のNOセンサでは、NOとNOの分離が困難であると共に、NOとNOの分子サイズが異なるため、NOセンサの前記第2ポンピング電流が同一であっても、被測定ガス中のNOとNOの割合に応じて、算出されるNO濃度が異なることがある。
また、「被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたとき」とは、被測定ガス中に尿素水の噴射が停止されて一定時間後が例示できる。このタイミングにおいてアンモニア濃度が0になることを利用し、被測定ガス中にアンモニアセンサ部を晒してアンモニア濃度を計測すると、このタイミングでアンモニア濃度出力が負となる場合に上記方法を用いる
【0009】
本発明のマルチガスセンサの制御方法において、前記酸素濃度に加えて前記見込みNO濃度に基づき、前記修正アンモニア濃度を算出してもよい。
この方法によれば、酸素濃度のみならず、NO濃度を考慮してアンモニア濃度を算出するので、酸素濃度のみを考慮して算出したアンモニア濃度よりさらに精度が向上する。
【0010】
本発明のマルチガスセンサの制御装置は、第1測定室の内部と外部に位置すると共に、第1固体電解質体と該第1固体電解質体上に設けられた一対の第1電極とを有し、前記第1測定室に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れを行う第1ポンピングセルと、前記第1測定室に連通するNO測定室の内部と外部に位置すると共に、第2固体電解質体と該第2固体電解質体上に設けられた一対の第2電極とを有し、前記第1測定室にて酸素濃度が調整されて前記NO測定室に流入した被測定ガス中のNO濃度に応じた第2ポンピング電流が前記一対の第2電極間に流れる第2ポンピングセルとを備えたNOセンサ部と、前記NOセンサ部の外表面に形成され、少なくとも一対の電極が固体電解質体上に配置された、アンモニア濃度出力を出力するアンモニアセンサ部とを共に設け、前記第1ポンピングセルに流れる第1ポンピング電流に基づいて酸素濃度を算出し、該酸素濃度と前記アンモニアセンサ部の前記アンモニア濃度出力とに基づき、修正アンモニア濃度を算出する制御手段を備えている。
この装置によれば、被測定ガス中の酸素濃度の影響を受けない正確なアンモニア濃度を算出することができる。
また、自動車の排ガス中のような苛酷な環境であったとしても、長期にわたって安定的にアンモニア濃度を算出することができる。
さらに、NOセンサ部とアンモニアセンサ部との位置が同一場所にあるため、ガス濃度や温度分布等が各センサ部共に一致し、各センサでの計測の遅れを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、1つのガスセンサでNO濃度とアンモニア濃度を測定可能で、アンモニア濃度の測定精度が向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るマルチガスセンサの長手方向に沿う断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るマルチガスセンサ及びガスセンサ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】アンモニアセンサ部の構成を示す展開図である。
【図4】ガスセンサ制御装置(のマイクロコンピュータ)に格納された各種データの構成を示すブロック図である。
【図5】アンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式の一例を示す図である。
【図6】第2ポンピング電流−NO濃度関係式の一例を示す図である。
【図7】種々のNO濃度における、アンモニア濃度出力とアンモニア濃度との関係を示す図である。
【図8】負のアンモニア濃度出力−NO濃度関係式の一例を示す図である。
【図9】寄与第2ポンピング電流−NO濃度,NO濃度関係式の一例を示図である。
【図10】所定の酸素濃度における、種々のNO濃度でのアンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式の一例を示す図である。
【図11】ガスセンサ制御装置(のマイクロコンピュータ)によるアンモニア濃度及び他のガス成分の濃度を算出する処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る制御方法の制御対象の一例となるマルチガスセンサ200Aの長手方向に沿う断面図を示す。マルチガスセンサ200Aは、アンモニア濃度及びNO濃度を検出するマルチガスセンサ素子部100Aを組み付けたアッセンブリである。マルチガスセンサ200Aは、軸線方向に延びる板状のマルチガスセンサ素子部100Aと、排気管に固定されるためのねじ部139が外表面に形成された筒状の主体金具138と、マルチガスセンサ素子部100Aの径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ106と、軸線方向に貫通するコンタクト挿通孔168の内壁面がマルチガスセンサ素子部100Aの後端部の周囲を取り囲む状態で配置される絶縁コンタクト部材166と、マルチガスセンサ素子部100Aと絶縁コンタクト部166との間に配置される複数個(図1では2つのみ図示)の接続端子110とを備えている。
【0014】
主体金具138は、軸線方向に貫通する貫通孔154を有し、貫通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。また、主体金具138は、マルチガスセンサ素子部100Aの先端側を貫通孔154の先端側外部に配置し、電極端子部80A、82Aを貫通孔154の後端側外部に配置する状態で、マルチガスセンサ素子部100Aを貫通孔154に保持している。さらに、棚部152は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。
【0015】
なお、主体金具138の貫通孔154の内部には、マルチガスセンサ素子部100Aの径方向周囲を取り囲む状態で環状形状のセラミックホルダ151、粉末充填層153、156(以下、滑石リング153、156ともいう)、および上述のセラミックスリーブ106がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。また、セラミックスリーブ106と主体金具138の後端部140との間には、加締めパッキン157が配置されており、セラミックホルダ151と主体金具138の棚部152との間には、滑石リング153やセラミックホルダ151を保持し、気密性を維持するための金属ホルダ158が配置されている。なお、主体金具138の後端部140は、加締めパッキン157を介してセラミックスリーブ106を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0016】
一方、図1に示すように、主体金具138の先端側(図1における下方)外周には、マルチガスセンサ素子部100Aの突出部分を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)二重の外部プロテクタ142および内部プロテクタ143が、溶接等によって取り付けられている。
【0017】
そして、主体金具138の後端側外周には、外筒144が固定されている。また、外筒144の後端側(図1における上方)の開口部には、マルチガスセンサ素子部100Aの電極端子部80A,82Aとそれぞれ電気的に接続される複数本のリード線146(図1では3本のみ)が挿通されるリード線挿通孔161が形成されたグロメット150が配置されている。なお、簡略化のため、図1ではマルチガスセンサ素子部100Aの表面と裏面の電極端子部をそれぞれ符号80A,82Aで代表させたが、実際には、後述するNOセンサ部30Aやアンモニアセンサ部42が有する電極等の数に応じて、複数の電極端子部が形成されている。
【0018】
また、主体金具138の後端部140より突出されたマルチガスセンサ素子部100Aの後端側(図1における上方)には、絶縁コンタクト部材166が配置される。なお、この絶縁コンタクト部材166は、マルチガスセンサ素子部100Aの後端側の表裏面に形成される電極端子部80A,82Aの周囲に配置される。この絶縁コンタクト部材166は、軸線方向に貫通するコンタクト挿通孔168を有する筒状形状に形成されると共に、外表面から径方向外側に突出する鍔部167が備えられている。絶縁コンタクト部材166は、鍔部167が保持部材169を介して外筒144に当接することで、外筒144の内部に配置される。そして、絶縁コンタクト部材166側の接続端子110と、マルチガスセンサ素子部100Aの電極端子部80A,82Aとが電気的に接続され、リード線146により外部と導通するようになっている。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係るマルチガスセンサの制御装置(コントロ−ラ)300、及びこれに接続されるマルチガスセンサ素子部100Aの構成を示すブロック図である。なお、図2では説明の便宜のため、マルチガスセンサ200A内に収容されたマルチガスセンサ素子部100Aの長手方向に沿う断面のみを表示している。
マルチガスセンサ200A(マルチガスセンサ素子部100A)、及びマルチガスセンサの制御装置300は図示しない内燃機関(以下、エンジンともいう)を備える車両に搭載され、マルチガスセンサの制御装置300は車両側制御装置(以下、適宜「ECU」という)400に電気的に接続されている。なお、マルチガスセンサ200Aから伸びるリード線146の端はコネクタに接続され、このコネクタをマルチガスセンサの制御装置300側のコネクタに電気的に接続するようになっている。
ECU400は、マルチガスセンサの制御装置300で算出された排気ガス中のアンモニア濃度及びNO濃度のデータを受信し、それに基づいてエンジンの運転状態の制御や触媒に蓄積されたNOの浄化などの処理を実行する。
【0020】
次に、マルチガスセンサ素子部100Aの構成について説明する。マルチガスセンサ素子部100Aは、公知のNOセンサと同様な構成を有するNOセンサ部30Aと、公知のアンモニアセンサと同様な構成を有するアンモニアセンサ部42とを備え、詳しくは後述するようにアンモニアセンサ部42はNOセンサ部30Aの外表面に形成されている。
【0021】
まず、NOセンサ部30Aは、絶縁層23f、アンモニアセンサ部用固体電解質体25、絶縁層23e、第1固体電解質体2a、絶縁層23d、第3固体電解質体6a、絶縁層23c、第2固体電解質体4a、及び絶縁層23b、23aをこの順に積層した構造を有する。第1固体電解質体2aと第3固体電解質体6aとの層間に第1測定室S1が画成され、第1測定室S1の左端(入口)に配置された第1拡散抵抗体8aを介して外部から被測定ガスが導入される。なお、第1拡散抵抗体8aの外側には多孔質からなる保護層9が配置されている。
第1測定室S1のうち入口と反対端には第2拡散抵抗体8bが配置され、第2拡散抵抗体8bを介して第1測定室S1の右側には、第1測定室S1と連通する第2測定室(本発明の「NO測定室」に相当)S2が画成されている。第2測定室S2は、第3固体電解質体6aを貫通して第1固体電解質体2aと第2固体電解質体4aとの層間に形成されている。
【0022】
絶縁層23b、23aの間にはマルチガスセンサ素子部100Aの長手方向に沿って延びる長尺板状のヒータ21が埋設されている。ヒータ21はガスセンサを活性温度に昇温し、固体電解質体の酸素イオンの伝導性を高めて動作を安定化させるために用いられる。
各絶縁層23a、23b、23c、23d、23e、23fはアルミナを主体とし、第1拡散抵抗体8a及び第2拡散抵抗体8bはアルミナ等の多孔質物質からなる。又、ヒータ21は白金等からなる。
【0023】
第1ポンピングセル2は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主体とする第1固体電解質体2aと、これを挟持するように配置された内側第1ポンピング電極2b及び対極となる外側第1ポンピング電極2c(各電極が特許請求の範囲の「第1電極」に相当)とを備え、内側第1ポンピング電極2bは第1測定室S1に面している。内側第1ポンピング電極2b及び外側第1ポンピング電極2cはいずれも白金を主体とし、内側第1ポンピング電極2bの表面は多孔質体からなる保護層11で覆われている。
又、外側第1ポンピング電極2cの上面に相当する絶縁層23eはくり抜かれて多孔質体13が充填され、外側第1ポンピング電極2cと外部とを連通させてガス(酸素)の出入を可能としている。
【0024】
酸素濃度検出セル6は、ジルコニアを主体とする第3固体電解質体6aと、これを挟持するように配置された検知電極6b及び基準電極6cとを備え、検知電極6bは内側第1ポンピング電極2bより下流側で第1測定室S1に面している。検知電極6b及び基準電極6cはいずれも白金を主体としている。
なお、絶縁層23cは、第3固体電解質体6aに接する基準電極6cが内部に配置されるように切り抜かれ、その切り抜き部には多孔質体が充填されて基準酸素室15を形成している。そして、酸素濃度検出セル6にIcp供給回路54を用いて予め微弱な一定値の電流を流すことにより、酸素を第1測定室S1から基準酸素室15内に送り込み、酸素基準とする。
【0025】
第2ポンピングセル4は、ジルコニアを主体とする第2固体電解質体4aと、第2固体電解質体4aのうち第2測定室S2に面した表面に配置された内側第2ポンピング電極4b及び対極となる第2ポンピング対電極4c(各電極が特許請求の範囲の「第2電極」に相当)とを備えている。内側第2ポンピング電極4b及び第2ポンピング対電極4cはいずれも白金を主体としている。
なお、第2ポンピング対電極4cは、第2固体電解質体4a上における絶縁層23cの切り抜き部に配置され、基準電極6cに対向して基準酸素室15に面している。
【0026】
そして、内側第1ポンピング電極2b、検知電極6b、内側第2ポンピング電極4bはそれぞれ基準電位に接続されている。
【0027】
次にアンモニアセンサ部42は、NOセンサ部30Aの外表面をなす絶縁層23f上に形成されている。但し、絶縁層23fの一部は矩形状に切り抜かれてアンモニアセンサ部用固体電解質体25が表出し、この表出部分の上にアンモニアセンサ部42の一対の電極42aが形成されている。より詳しくは、アンモニアセンサ部42は、アンモニアセンサ部用固体電解質体25上に形成された一対の電極42aと、一対の電極42aを覆う選択反応層42bとを含み、一対の電極42a間の起電力変化によって被測定ガス中のアンモニア濃度を検出するようになっている。
又、多孔質からなる拡散層44Bが選択反応層42bを完全に覆うように形成され、外部からアンモニアセンサ部42に流入する被測定ガスの拡散速度を調整可能になっている。
【0028】
図3は、アンモニアセンサ部42の構成を示す展開図である。アンモニアセンサ部用固体電解質体25上に一対の電極42a1、42a2(これらをまとめて一対の電極42aとする)が配置され、各電極42a1、42a2からアンモニアセンサ部用固体電解質体25の長手方向に沿ってそれぞれリード42ax、42ayが延び、リード42ax、42ay上下に絶縁層23fが被覆されている。但し、リード42ax、42ayの右端はこの絶縁層23fで被覆されずに露出し、それぞれ所定の電極端子部を形成している。
電極42a1、42a2はアンモニアセンサ部用固体電解質体25の短手方向に沿って離間して並び、電極42a1は金を主成分とする材料で構成されて検知電極として作用し、電極42a2は白金を主成分とする材料で構成されて基準電極として作用する。基準電極42a2に比べ、検知電極42a1の方がアンモニアとの反応性が高いため、検知電極42a1と基準電極42a2との間で起電力が生じる。
また、アンモニアセンサ部用固体電解質体25は例えばZrO等の酸素イオン伝導性材料で構成され、リード42ax、42ayは、例えば白金を主成分とする材料で構成されている。
【0029】
選択反応層42bは、被測定ガス中のアンモニア以外の可燃性ガス成分を燃焼させる役割を持ち、選択反応層42bが存在すると、可燃性ガス成分の影響を受けずに被測定ガス中のアンモニアを検出することができる。選択反応層42bは通常、金属酸化物を主成分とするが、特に酸化バナジウム(V)及び酸化ビスマス(Bi)を所定比で含む材料(例えば、酸化ビスマスバナジウム:BiVO)から形成することが好ましい。
なお、選択反応層42bが検知電極42a1のみを覆っていても、上記した効果を発揮することができる。また、本実施形態では、検知電極42a1と選択反応層42bとを分けて設けているが、選択反応層42bを設けず、検知電極42a1に選択反応層42bを形成する材料(例えば、金属酸化物)を含有させてもよい。
拡散層44Bとしては、例えばアルミナ、スピネル(MgAl2O4)、シリカアルミナ、及びムライトの群から選ばれる少なくとも1種が例示される。そして、拡散層44Bの厚み、粒径、粒度分布、気孔率、配合比等を適宜調整することで、選択反応層42b、及び電極42a1、42a2に到達するガス拡散時間が任意に調整可能である。
【0030】
なお、この実施形態において、NOセンサ部30Aの第2固体電解質体4aの制御温度を600℃としたとき、アンモニアセンサ部42の温度が650℃となるよう、NOセンサ部30A上でアンモニアセンサ部42の位置が決められている。
【0031】
次に、図2に戻り、マルチガスセンサの制御装置300の構成の一例について説明する。マルチガスセンサの制御装置300は、回路基板上に(アナログ)制御回路59とマイクロコンピュータ(マイコン)60とを備えている。マイクロコンピュータ60はマルチガスセンサの制御装置300全体を制御し、CPU(中央演算処理装置)61、RAM62、ROM63、信号入出力部64、A/Dコンバータ65、及び図示しないクロックを備え、ROM等に予め格納されたプログラムがCPUにより実行される。
制御回路59は、詳しくは後述する基準電圧比較回路51、Ip1ドライブ回路52、Vs検出回路53、Icp供給回路54、Ip2検出回路55、Vp2印加回路56、ヒータ駆動回路57、アンモニアセンサ部起電力検出回路58を備える。
制御回路59は、NOセンサ部30Aを制御し、NOセンサ部30Aに流れる第1ポンピング電流Ip1、第2ポンピング電流Ip2を検出してマイクロコンピュータ60に出力する。
アンモニアセンサ部起電力検出回路58は、一対の電極42a1、42a2間のアンモニア濃度出力(起電力)を検出してマイクロコンピュータ60に出力する。
【0032】
詳細には、NOセンサ部30Aの外側第1ポンピング電極2cはIp1ドライブ回路52に接続され、基準電極6cはVs検出回路53及びIcp供給回路54に並列に接続されている。又、第2ポンピング対電極4cはIp2検出回路55及びVp2印加回路56に並列に接続されている。ヒータ回路57はヒータ21に接続されている。
又、アンモニアセンサ部42の一対の電極42a1、42a2がそれぞれアンモニアセンサ部起電力検出回路58に接続されている。
【0033】
各回路51〜57は、以下のような機能を有する。
Ip1ドライブ回路52は、内側第1ポンピング電極2b及び外側第1ポンピング電極2cの間に第1ポンピング電流Ip1を供給しつつ、その際の第1ポンピング電流Ip1を検出する。
Vs検出回路53は、検知電極6b及び基準電極6cの間の電圧Vsを検出し、検出結果を基準電圧比較回路51に出力する。
基準電圧比較回路51は、基準電圧(例えば、425mV)とVs検出回路53の出力(電圧Vs)とを比較し、比較結果をIp1ドライブ回路52に出力する。そして、Ip1ドライブ回路52は、電圧Vsが上記基準電圧に等しくなるようにIp1電流の流れる向き及び大きさを制御し、第1測定室S1内の酸素濃度をNOが分解しない程度の所定値に調整する。
Icp供給回路54は、検知電極6b及び基準電極6cの間に微弱な電流Icpを流し、酸素を第1測定室S1から基準酸素室15内に送り込み、基準電極6cを基準となる所定の酸素濃度に晒させる。
Vp2印加回路56は、内側第2ポンピング電極4b及び第2ポンピング対電極4cの間に、被測定ガス中のNOガスが酸素とNガスに分解する程度の一定電圧Vp2(例えば、450mV)を印加し、NOを窒素と酸素に分解する。
Ip2検出回路55は、NOの分解により生じた酸素が第2測定室S2から第2固体電解質体4aを介して第2ポンピング対電極4c側に汲み出される際に、第2ポンピングセル4に流れる第2ポンピング電流Ip2を検出する。
【0034】
Ip1ドライブ回路52は、検出した第1ポンピング電流Ip1の値をA/Dコンバータ65に出力する。又、Ip2検出回路55は、検出した第2ポンピング電流Ip2の値をA/Dコンバータ65に出力する。
A/Dコンバータ65はこれらの値をデジタル変換し、信号入出力部64を介してCPU61に出力する。
【0035】
次に、制御回路59を用いた制御の一例について説明する。まず、エンジンが始動されて外部電源から電力の供給を受けると、ヒータ回路57を介してヒータ21が作動し、第1ポンピングセル2、酸素濃度検出セル6、第2ポンピングセル4を活性化温度まで加熱する。又、Icp供給回路54は、検知電極6b及び基準電極6cの間に微弱な電流Icpを流し、酸素を第1測定室S1から基準酸素室15内に送り込み、酸素基準とする。
又、ヒータ21によってNOセンサ部30Aが適温まで加熱されると、それに伴ってNOセンサ部30A上のアンモニアセンサ部42も所望の温度に昇温される。
【0036】
そして、各セルが活性化温度まで加熱されると、第1ポンピングセル2は、第1測定室S1に流入した被測定ガス(排ガス)中の酸素を内側第1ポンピング電極2bから外側第1ポンピング電極2cへ向かって汲み出す。
このとき、第1測定室S1内の酸素濃度は、酸素濃度検出セル6の電極間電圧(端子間電圧)Vsに対応したものとなるため、この電極間電圧Vsが上記基準電圧になるように、Ip1ドライブ回路52が第1ポンピングセル2に流れる第1ポンピング電流Ip1を制御し、第1測定室S1内の酸素濃度をNOが分解しない程度に調整する。
【0037】
酸素濃度が調整された被測定ガスは第2測定室S2に向かってさらに流れる。そして、Vp2印加回路56は、第2ポンピングセル4の電極間電圧(端子間電圧)として、被測定ガス中のNOガスが酸素とNガスに分解する程度の一定電圧Vp2(酸素濃度検出セル6の制御電圧の値より高い電圧、例えば450mV)を印加し、NOを窒素と酸素に分解する。そして、NOの分解により生じた酸素が第2測定室S2から汲み出されるよう、第2ポンピングセル4に第2ポンピング電流Ip2が流れる。この際、第2ポンピング電流Ip2とNO濃度の間には直線関係があるため、Ip2検出回路55が第2ポンピング電流Ip2を検出することにより、被測定ガス中のNO濃度を検出することができる。但し、本発明においては、必要に応じてNOがNOを含む場合と含まない場合とを判別し、NOに含まれるNOとNOの各濃度とを区別して正確に算出することができる。この算出処理については後述する。
【0038】
又、アンモニアセンサ部起電力検出回路58が一対の電極42a1、42a2間のアンモニア濃度出力(起電力)を検出することにより、被測定ガス中のアンモニア濃度を検出することができる。なお、電極42a1、42a2間の起電力(アンモニア濃度が0のときのベース起電力値と、アンモニア存在時の起電力値との変化率(感度)を用いることも可能)に基づくアンモニア濃度換算値をマイコン60に記憶させておくことで、NH濃度を算出するが、この算出処理については後述する。
【0039】
次に、図4を参照して、マルチガスセンサの制御装置300のマイクロコンピュータ60(ROM63)に格納された各種データ63a〜63fの構成について説明する。なお、CPU(特許請求の範囲の「制御手段」に相当)61は、各種データ63a〜63fを読み込み、以下のようにアンモニア濃度等の各種ガス濃度を算出する処理フローを実行する。
図4において、ROM63には、「第1ポンピング電流(Ip1)−酸素濃度関係式」63a、酸素濃度別に複数設定された「アンモニア濃度出力(起電力EMF)−アンモニア濃度関係式」63b、アンモニア濃度別に複数設定された「第2ポンピング電流(Ip2)−NO濃度関係式」63c、「負のアンモニア濃度出力−NO濃度関係式」63d、「寄与第2ポンピング電流−NO濃度,NO濃度関係式」63e、並びに、酸素濃度及びNO濃度別に複数設定された「アンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式」63fが格納されている。
なお、図4の例では、各種データ63a〜63fは所定の関係式として設定されているが、センサの出力から各種ガス濃度を算出するものであれば、例えばテーブル等であってもよい。又、各種データ63a〜63fは、例えば予めガス濃度が既知のモデルガスを用いて得られた値(関係式やテーブル等)とすることができる。
【0040】
「第1ポンピング電流−酸素濃度関係式」63aは、第1測定室に導入された被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れに伴って第1ポンピングセル2に流れる第1ポンピング電流(Ip1)と、この被測定ガス中の酸素濃度との関係式である。図示はしないが、通常、Ip1と酸素濃度とはほぼ直線関係にある。「第1ポンピング電流−酸素濃度関係式」63aに基づき、被測定ガス中の酸素濃度を算出することができる。
【0041】
「アンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式」63bは酸素濃度別に設定されており、アンモニアセンサ部のアンモニア濃度出力と、被測定ガス中のアンモニア濃度との関係式である。
図5は、アンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式の一例を示す。本実施形態において、異なる酸素濃度毎にアンモニア濃度がEMFの3次式で表されている。EMFは酸素濃度によって変化するが、酸素濃度毎の「アンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式」63bに基づくことで、被測定ガス中の酸素濃度の影響を受けない正確なアンモニア濃度(特許請求の範囲の「修正アンモニア濃度」)を算出することができる。
なお、設定されていない酸素濃度におけるアンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式は、例えばその酸素濃度を挟む2つの酸素濃度でのアンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式から、外挿法によって計算することができる。
【0042】
「第2ポンピング電流−NO濃度関係式」63cはアンモニア濃度別に設定されている。この関係式は、被測定ガス中にNOを含まない場合に用いられる。この場合、被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたときにアンモニアセンサ部が示すアンモニア濃度出力が0となる。ここで、「被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたとき」とは、例えば尿素SCR(選択触媒還元)システムにマルチガスセンサ200Aを使用したときに、尿素水の噴射を停止して一定時間後のときが例示される。このようなタイミングでアンモニア濃度出力が0であれば、CPU61は、被測定ガス中にNOを含まないとみなして関係式63cを用いた処理を行う。なお、このタイミングは、後述するように、アンモニアガス濃度出力が下限値になった時と仮定できる。具体的には、アンモニアガス濃度出力の各値についてRAM62で記憶しておき、1つ前に取得した値と今回取得した値が所定値(ばらつきを考慮し)以上上昇したときに、尿素水の噴射を停止して一定時間が経過したとみなすことができ、それまでに取得した値の下限値が取得されたタイミングを「被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたとき」とみなし、この下限値が0か負かで判別する。
【0043】
図6は、第2ポンピング電流−NO濃度関係式の一例を示す。本実施形態において、異なるアンモニア濃度毎にNO濃度がIp2の1次式で表されている。Ip2自体はアンモニア濃度の影響によって変化するが、アンモニア濃度毎の「第2ポンピング電流−NO濃度関係式」63cに基づくことで、被測定ガス中のアンモニア濃度の影響を受けずに正確なNO濃度(特許請求の範囲の「第1修正NO濃度」)を算出することができる。
ここで、図7に示すように、EMFから算出されるアンモニア濃度は、被測定ガス中のNO濃度の影響を受けないことが判明しているため、上記した修正アンモニア濃度をそのまま関係式63cに適用してよいことになる。
なお、設定されていないアンモニア濃度における第2ポンピング電流−NO濃度関係式は、例えばそのアンモニア濃度を挟む2つのアンモニア濃度での第2ポンピング電流−NO濃度関係式から、外挿法によって計算することができる。
【0044】
「負のアンモニア濃度出力−NO濃度関係式」63dは、被測定ガス中にNOを含む場合に、被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたとき、アンモニアセンサ部のアンモニア濃度出力がNO濃度に応じた負の値を示すことを利用したものである。被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたときのアンモニア濃度出力が0の場合は、NOを含まないので本関係式63dを用いた処理を行わず、関係式63cを用いた処理を行うことは既に述べたとおりである。
図8は、負のアンモニア濃度出力−NO濃度関係式の一例を示す。本実施形態において、NO濃度は、負のアンモニア濃度出力(EMF)の3次式で表されている。そして、被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたときに(例えば尿素SCR(選択触媒還元)システムにおいて尿素水の噴射を停止して一定時間後)、CPUはアンモニア濃度出力を検出し、関係式63dを用いて被測定ガス中のNO濃度(特許請求の範囲の「見込みNO濃度」)を算出する。
【0045】
「寄与第2ポンピング電流−NO濃度,NO濃度関係式」63eは、Ip2とそれぞれNO濃度及びNO濃度との関係式である。この関係式63eは被測定ガス中にNOを含む場合に用いられ、関係式63dと共に用いられる。ここで、寄与第2ポンピング電流(寄与Ip2)とは、NOとNOとが混在する被測定ガス中で、第2ポンピングセル4に生じるIp2のうち、それぞれNOに起因するIp2の値(NO寄与分)及びNOに起因するIp2の値(NO寄与分)とを区別したものをいう。これらNO寄与分及びNO寄与分は、予めNO単独のガス、及びNO単独のガス中でのIp2を測定して定めることができる。
図9は、寄与第2ポンピング電流−NO濃度,NO濃度関係式の一例を示す。本実施形態において、NO濃度及びNO濃度はそれぞれの寄与Ip2の1次式で表されている。そして、上記関係式63dから算出した見込みNO濃度と、本関係式63eとから、NO寄与分を見積もることができる。一方、Ip2の原出力(NOとNOの混合ガス中での合計出力)は既知であるので、Ip2の原出力からNO寄与分を差し引くことで、NO寄与分を算出することができる。そして、NO寄与分と、本関係式63eとから、NO濃度(特許請求の範囲の「第2修正NO濃度」)が得られる。
例えば、見込みNO濃度が40ppmである場合、関係式63eからNO寄与分が約0.084μAと見積もられる。ここで、例えば、Ip2の原出力が0.15μAであれば、NO寄与分は0.066μAと見積もられる(0.15−0.084)。そして、再び関係式63eからNO濃度が約22.9ppmと算出される。
【0046】
「アンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式」63fは酸素濃度及びNO濃度別に設定されており、アンモニアセンサ部のアンモニア濃度出力と、被測定ガス中のアンモニア濃度との関係式である。
図10は、一定の酸素濃度(10%)における、種々のNO濃度でのアンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式の一例を示す。本実施形態において、異なるNO濃度毎にアンモニア濃度がEMFの3次式で表されている。EMFは酸素濃度及びNO濃度によって変化するが、酸素濃度及びNO濃度毎の「アンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式」63fに基づくことで、被測定ガス中の酸素濃度及びNO濃度の影響を受けない正確なアンモニア濃度(特許請求の範囲の「修正アンモニア濃度」)を算出することができる。
但し、関係式63bに基づいて算出した「修正アンモニア濃度」と区別するため、本関係式に63fに基づいて算出した「修正アンモニア濃度」を、必要に応じて「再修正アンモニア濃度」と称する。再修正アンモニア濃度は、NO濃度の影響を考慮している分、関係式63aに基づくアンモニア濃度より精度が高い。
なお、設定されていない酸素濃度やNO濃度におけるアンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式は、例えばその酸素濃度やNO濃度を挟む2つの酸素濃度やNO濃度でのアンモニア濃度出力−アンモニア濃度関係式から、外挿法によって計算することができる。
【0047】
次に、図11を参照して、マルチガスセンサの制御装置300のマイクロコンピュータ60(CPU61)による、被測定ガス中の各種ガス成分の濃度を算出する処理フローを説明する。なお、マルチガスセンサ200Aが尿素SCR(選択触媒還元)システムに設置された場合を想定する。尿素SCRシステムにおいては、NOを浄化するため、マルチガスセンサ200Aの検出結果に応じて尿素水を噴射しているが、NOが浄化されたと判断された場合には尿素水の噴射を停止している。従って、尿素水の噴射を停止してから一定時間経過した場合、CPU61は「被測定ガス中のアンモニア濃度が0である」とみなすものとする。
【0048】
まず、CPU61は、ヒータ回路57を動作させ、ヒータ21を発熱させる。(ステップS1)その後、初期化処理が行われ、RAM62にて記憶されたアンモニア濃度出力の各値、アンモニア濃度出力の下限値や読取フラグがリセットされる。(ステップS2)アンモニア濃度出力の下限値の読み取り実施の有無を記す読取フラグも、非成立の状態に設定される。その後、ヒータ21によりセンサが活性化温度になったか否かを判定する(ステップS3)。通常、第2ポンピングセル4の第2固体電解質体4aの電気抵抗をモニタすることで、この判定を行う。ヒータ21が活性化温度になるまでステップS3を繰り返し、ヒータ21が活性化温度になる(ステップS3のYes)と、次に、CPU61は、上記した一対の電極42a間の電圧に基づき、アンモニア濃度出力を検出する(ステップS4)。なお、本実施形態ではアンモニアセンサ部42は起電力式のセンサであるため、アンモニア濃度出力は起電力(EMF)である。
【0049】
次に、読取フラグが0か否かを判定する。(ステップS5)ステップS5で「YES」の場合、アンモニア濃度出力の値をRAM62にて記憶させる。(ステップS6)その後、アンモニア濃度出力が所定値以上上昇したか否かを判定する(ステップS7)。なお、アンモニア濃度出力が所定値以上上昇したか否かは、今回取得したアンモニア濃度出力から1サンプル前のアンモニア濃度出力の値を差し引き、その値が、所定値(ばらつきを考慮し、アンモニア濃度が確実に増加した際に算出される値)以上になったか否かで判定する。ステップS7にて「NO」の場合、ステップS4に戻り、ステップS4〜S7を繰り返す。
ステップS7にて「YES」の場合、尿素水の噴射を停止してから一定時間を経過したと判断し、被測定ガス中のアンモニア濃度が0であるときのアンモニア濃度出力、つまりRAN62にて記憶した値のうち、アンモニアガス濃度出力の下限値が抽出される。(ステップS8)そして、読取フラグを1とし(ステップS9)、ステップS4に戻る。
【0050】
他方、ステップS5で「NO」と判定された場合、CPU61は、第1ポンピングセル2に流れる第1ポンピング電流Ip1と、第2ポンピングセル4に流れる第2ポンピング電流Ip2とを検出する(ステップS10)。
【0051】
次に、CPU61は、上記した第1ポンピング電流Ip1と関係式63aに基づき、酸素濃度を算出する(ステップS11)。さらに、CPU61は、ステップS8で算出した酸素濃度と関係式63bに基づき、修正アンモニア濃度を算出する(ステップS12)。
【0052】
次に、CPU61は、「被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたとき」にアンモニアセンサ部42が示すアンモニア濃度出力が0か否かを判定する(ステップS13)。具体的には、ステップS8にて抽出されたアンモニアガス濃度出力の下限値が0か否かを判定する。ステップS13で「Yes」の場合、CPU61は、ステップS10で算出した修正アンモニア濃度に対応した関係式63cを参照し、参照した関係式63cとステップS6で検出したIp2とに基づき、第1修正NO濃度を算出する(ステップS15)。
なお、ステップS13で「Yes」の場合、被測定ガス中にNOを含まないとみなされる。従って、ステップS12で算出した修正アンモニア濃度と上記第1修正NO濃度が、被測定ガス中の最終的なガス成分の値として採用される。
【0053】
一方、ステップS13で「No」の場合、CPU61は、アンモニアセンサ部42が示す負のアンモニア濃度出力と、関係式63dに基づき、見込みNO濃度を算出する(ステップS14)。つまり、この場合には、被測定ガス中にNOとNOがそれぞれ含まれているので、NO濃度とNO濃度をそれぞれ求める必要がある。
次に、CPU61は、第2修正NO濃度を算出するステップS16の処理を行う。ステップS16では、まずステップS14で算出した見込みNO濃度と関係式63eとから、NO寄与分を見積もる。次いで、ステップS10で検出したIp2(原出力)からNO寄与分を差し引き、NO寄与分を算出する。さらに、得られたNO寄与分と関係式63eとから、第2修正NO濃度を算出する。
【0054】
なお、ステップS13で「No」の場合、被測定ガス中にNOとNOを含むため、ステップS12で算出した修正アンモニア濃度と、上記見込みNO濃度と、上記第2修正NO濃度とを、被測定ガス中の最終的なガス成分の値として採用することができる。但し、CPU61は、ステップS11で算出した酸素濃度に対応した関係式63fを参照し、参照した関係式63fと、ステップS14で算出した見込みNO濃度とに基づき、再修正アンモニア濃度を算出してもよい(ステップS17)。
この場合、ステップS12で算出した修正アンモニア濃度に代えて、ステップS17で算出した再修正アンモニア濃度を採用する。
【0055】
以上のようにして、CPU61は、各ステップで算出したガス濃度をECU400に出力する。その後、読取フラグをリセットするか否かについて判定する。(ステップS18)つまり、尿素水の噴射を停止してから2度目の一定時間経過する直前に、ステップS8にて抽出したアンモニア濃度出力の下限値を、2度目のアンモニア濃度出力の下限値に持ち替えるか否かを判定する。ステップS18にて「NO」の場合には、ステップS4、S5、S10〜S18を繰り返す。ステップS18で「Yes」の場合にはステップS1〜S18を繰り返す。
なお、このフローチャートは、内燃機関の駆動を停止したと同時に終了する。
なお、CPU61はステップS4〜S18の処理を行う点で、請求項の「制御手段」に相当する。また、本実施例では、マイコン60における制御方法について説明したが、本制御の一部、或いはすべての制御をECU400にて行うことも可能である。
【0056】
以上のように、本発明においては、NOセンサ部30Aとアンモニアセンサ部42とが1つのマルチガスセンサ200A内に設けられ、各センサ部がほぼ同一の測定環境(被測定ガスの組成、濃度、温度、流速、圧力等)下にあるため、測定環境が異なることによるガス検出精度の低下が抑制される。
つまり、NOセンサ部30Aとアンモニアセンサ部42とを1つのマルチガスセンサ200Aに設けることにより、測定環境の影響を受けずにNO(NO及びNO)濃度とアンモニア濃度を同時に測定することができ、NO濃度とアンモニア濃度の検出精度が向上する。又、1つのマルチガスセンサ200Aに被測定ガスが接触するため、NOとアンモニアをほぼ同時に検出でき、両者の検出のタイムラグによる検出精度の低下が抑制される。
さらに、NOセンサ部30Aとアンモニアセンサ部42を別個のセンサとした場合に比べ、本発明においてはセンサのコストダウンやコンパクト化が図られる。
【0057】
本発明のマルチガスセンサ200Aは、例えば、エンジン装置本体の付帯装置として設けられている触媒の劣化検知、尿素SCRシステムでの尿素噴射量の最適化、触媒後流から排出されたガス成分(NO、アンモニア)の正確な測定、に応用することができる。例えば、NOセンサのみを装置のセンシングに用いた場合、触媒後流からアンモニアが排出された際に、(i)尿素過剰添加によるアンモニア排出、(ii)尿素過少添加によるNO排出、(iii)SCR触媒劣化に伴うアンモニア排出のいずれかであるかを明確に区別することができなかったが、本発明のマルチガスセンサを用いれば、これらの判別が可能である。
【0058】
本発明のマルチガスセンサ200Aは、公知のNOセンサやアンモニアセンサと同様にして製造することができる。例えば、公知のNOセンサと同様にして、NOセンサ部の固体電解質体をグリーンシートから形成し、各電極、リードや絶縁層をペースト印刷することにより、NOセンサ部の未焼結体を形成する。次に、NOセンサ部の未焼結体表面の所定位置に、アンモニアセンサ部の未焼結体を形成する。アンモニアセンサ部の未焼結体は、このセンサ部を構成する電極、リード、感応部、固体電解質体、拡散層等をペースト印刷することにより形成することができる。
そして、アンモニアセンサ部の未焼結体が表面に形成されたNOセンサ部の未焼結体を、全体として所定温度で焼成することにより、マルチガスセンサのセンサ素子部を製造し、これをハウジングに組み付けてマルチガスセンサが得られる。
【0059】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、上記実施形態では、NOセンサ部30Aを構成する固体電解質体を3層としたが、固体電解質体を2層としてもよい。固体電解質体が2層であるNOセンサ部の素子構造は、例えば特開2004−354400号公報(図3)に記載されている。
この場合、第2測定室S2は、図2における固体電解質体2a、6aの間に画成され、第1測定室S1及び第2測定室S2は第2拡散抵抗体8bで区画される。そして、内側第2ポンピング電極4bは固体電解質体6の上面に配置される。又、固体電解質体6の下面は外部に露出し、この露出面に第2ポンピング対電極4cが配置される。
【0060】
又、上記実施形態では、関係式63bより修正アンモニア濃度を算出した後(ステップS12)、ステップS13の判定を行うが、ステップS12より前にステップS13を行ってもよい。
後者の場合、ステップS13で「No」であれば、ステップS12を行わずにステップS17でアンモニア濃度を算出することで、ステップS12を無駄に行う必要がなくなる。勿論、ステップS13で「Yes」であればステップS12を行えばよい。
【実施例】
【0061】
(1)センサの作製
上記実施形態に係るマルチガスセンサ200Aを作製した。起電力式のアンモニアセンサ部42の一対の電極42aは、それぞれ金を含む検知電極42a1、白金を主成分とする基準電極42a2を用い、選択反応層42bは、BiVOとした。又、一対の電極42a及び選択反応層42bを覆う拡散層44Bとしてスピネル(MgAl)の多孔質層を形成した。
【0062】
実施例1
(2)NO及びNOが共存する場合のセンサの特性評価
2−1 アンモニア濃度の算出
まず、既知の種々のO2濃度のガス中で、予めIp1の値を測定しておき、一次式の関係式63aを用意した。同様に、既知の種々のO2濃度のガス中で、既知のアンモニア濃度に対するEMFの値を求めておき、図5に示す関係式63bを用意した。
【0063】
次に、モデルガス発生装置を使用し、センサ特性の評価を行った。モデルガス発生装置のガス組成は、NH3=50ppm O2=それぞれ1,5,10% CO2=5% H2O=5% N2=balとした。ガス温度280℃、ガス流速5m/s、アンモニアセンサ部42の一対の電極の中心部の制御温度650℃とした。
上記モデルガス発生装置のガス流中にマルチガスセンサを配置し、ガス流中のO2濃度をそれぞれ1,5,10%に変え、第1ポンピングセル2の第1ポンピング電流(Ip1)及びアンモニアセンサ部42のアンモニア濃度出力(EMF)を検出した。
【0064】
そして、関係式63aとIp1とに基づき、モデルガス中のO2濃度を算出したところ、それぞれO2濃度が1,5,10%とベースガスに導入したO濃度と同一になった。このO2濃度を用い、関係式63bとEMFとに基づき、アンモニア濃度を算出した。算出結果を実施例1として表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1より、モデルガス中のO2濃度を考慮してアンモニア濃度を算出した実施例1の場合は、O2濃度の影響を受けずにアンモニア濃度を精度よく算出することができた。
【0067】
2−2 NO濃度及びNO濃度の算出
まず、アンモニア濃度を0とし、既知の種々のNO濃度のガス中で、予め負のEMFの値を測定しておき、図8に示す関係式63dを用意した。又、既知の種々のNO単独ガス中で、Ip2の値(NO寄与分)を求めた。同様に、既知の種々のNO単独ガス中で、Ip2の値(NO寄与分)を求めた。これらにより図9に示す関係式63eを用意した。
さらに、既知の一定のO2濃度のガス中で、NO濃度を所定の値に設定し、既知のアンモニア濃度に対するEMFの値を求めた。これを種々のNO濃度に対して行い、図10に示す関係式63fを用意した。又、O2濃度を変化させて同様に関係式63fを用意し、最終的にO2濃度及びNO濃度が変化したときの、アンモニア濃度に対するEMFの値の関係式63fを得た。
【0068】
次に、ガス組成以外は2−1と同一の条件で、モデルガス発生装置のガス流中にセンサを配置した。なお、ガス組成としては、O2=10% CO2=5% H2O=5% N2=balとし、NH3 NO NO2とが所定量含まれたガスを用いた。
そして、上記ベースガス中にてNH3=0ppmとしたEMFを検出したところ、−19mVと算出された。このEMFの値を基に図8の関係式63dを用いて見込みNO濃度を算出したところ、40ppmとなった。この見込みNO濃度と図9の関係式63eを用い、NO寄与分が0.084μAと見積もられた。
一方、このベースガス中で第2ポンピングセル4の第2ポンピング電流(Ip2)を検出したところ、0.15μAとなった。
従って、NO寄与分は0.066μAと見積もられた(0.15−0.084)。このNO寄与分と関係式63eから、NO濃度が22.9ppmと算出された。
【0069】
2−3 NO及びNO共存下のアンモニア濃度の算出
上記2−2のモデルガス発生装置にセンサを取り付け、上記ガス中でのEMFを検出したところ、64.7mVとなった。そこで、O2=10%における図10の関係式63fを用いてNO=40ppmでのアンモニア濃度を算出したところ、50.1ppmと算出された。
【0070】
モデルガス中にNO及びNOが共存していても、NO濃度とNO濃度を別個に算出することができた。一般的に従来技術のNOセンサでは、NOとNOの分離が困難であると共に、NOとNOの分子サイズが異なる。このため、NOセンサのIp2出力が同一であっても、被測定ガス中のNOとNOの割合に応じて、算出されるNO濃度が異なることがあるが、実施例1では、NO濃度とNO濃度を別個に正確に算出することができた。
又、O2濃度のみならず、NO濃度を考慮してアンモニア濃度を算出した場合は、O2濃度のみを考慮したアンモニア濃度(表1)よりさらに精度が向上した。
【0071】
実施例2
(3)NOを含みNOを含まない場合のセンサの特性評価
3−1 アンモニア濃度の算出
2−1と同様にして行い、表1の結果を得た。
【0072】
3−2 NO濃度の算出
まず、既知の種々のNH3濃度のガス中で、既知のNO濃度に対するIp2の値を求めておき、図6に示す関係式63cを用意した。
【0073】
次に、ガス組成を、NH3=それぞれ0,20,60,100ppm NO=50ppm O2=10% CO2=5% H2O=5% N2=balとしたこと以外は、2−1と同一の条件で、モデルガス発生装置のガス流中にセンサを配置した。
上記ガス中でのIp2を検出し、図6に示す関係式63cを用いてNO濃度を算出した。結果を表2に示す。なお、ベースガス中のNH3濃度をそれぞれ0,20,60,100ppmに変化させ、図6に示す関係式63cのうちアンモニア濃度に応じた1次式を用いた。
【0074】
【表2】

【0075】
表2より、モデルガス中のアンモニア濃度を考慮してNO濃度を算出した実施例2の場合は、アンモニア濃度の影響を受けずにNO濃度を精度よく算出することができた。
【符号の説明】
【0076】
2a 第1固体電解質体
2b、2c 第1電極(内側第1ポンピング電極、外側第1ポンピング電極)
2 第1ポンピングセル
4a 第2固体電解質体
4b、4c 第2電極(内側第2ポンピング電極、第2ポンピング対電極)
4 第2ポンピングセル
25 アンモニアセンサ部用固体電解質体
30A NOセンサ部
42 アンモニアセンサ部
42a 一対の電極
42b 選択反応層
44A、44B 拡散層
60、61 制御手段(マイクロコンピュータのCPU)
100A マルチガスセンサ素子部
200A マルチガスセンサ
300 マルチガスセンサの制御装置
S1 第1測定室
S2 NO測定室
Ip1 第1ポンピング電流
Ip2 第2ポンピング電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1測定室の内部と外部に位置すると共に、第1固体電解質体と該第1固体電解質体上に設けられた一対の第1電極とを有し、前記第1測定室に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れを行う第1ポンピングセルと、前記第1測定室に連通するNO測定室の内部と外部に位置すると共に、第2固体電解質体と該第2固体電解質体上に設けられた一対の第2電極とを有し、前記第1測定室にて酸素濃度が調整されて前記NO測定室に流入した被測定ガス中のNO濃度に応じた第2ポンピング電流が前記一対の第2電極間に流れる第2ポンピングセルと、を備えたNOセンサ部と、
前記NOセンサ部の外表面に形成され、少なくとも一対の電極が固体電解質体上に配置された、アンモニア濃度出力を出力するアンモニアセンサ部と、
を共に設けたマルチガスセンサの制御方法であって、
前記第1ポンピングセルに流れる第1ポンピング電流に基づいて酸素濃度を算出し、該酸素濃度と前記アンモニアセンサ部の前記アンモニア濃度出力とに基づき、修正アンモニア濃度を算出するマルチガスセンサの制御方法。
【請求項2】
前記被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたときに前記アンモニアセンサ部が示す前記アンモニア濃度出力が0となる場合に用いられ、
前記修正アンモニア濃度と前記第2ポンピング電流とに基づき、第1修正NO濃度を算出する請求項1記載のマルチガスセンサの制御方法。
【請求項3】
前記被測定ガス中のアンモニア濃度を0としたときに前記アンモニアセンサ部が負の前記アンモニア濃度出力を示す場合に用いられ、
前記負のアンモニア濃度出力に基づいて予め見込みNO濃度を算出しておき、前記第2ポンピング電流と当該見込みNO濃度とに基づき、第2修正NO濃度を算出する請求項1記載のマルチガスセンサの制御方法。
【請求項4】
前記酸素濃度に加えて前記見込みNO濃度に基づき、前記修正アンモニア濃度を算出する請求項3記載のマルチガスセンサの制御方法。
【請求項5】
第1測定室の内部と外部に位置すると共に、第1固体電解質体と該第1固体電解質体上に設けられた一対の第1電極とを有し、前記第1測定室に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れを行う第1ポンピングセルと、前記第1測定室に連通するNO測定室の内部と外部に位置すると共に、第2固体電解質体と第2固体電解質体上に設けられた一対の第2電極とを有し、前記第1測定室にて酸素濃度が調整されて前記NO測定室に流入した被測定ガス中のNO濃度に応じた第2ポンピング電流が前記一対の第2電極間に流れる第2ポンピングセルと、を備えたNOセンサ部と、
前記NOセンサ部の外表面に形成され、少なくとも一対の電極が固体電解質体上に配置された、アンモニア濃度出力を出力するアンモニアセンサ部と、
を共に設けたマルチガスセンサの制御装置であって、
前記第1ポンピングセルに流れる第1ポンピング電流に基づいて酸素濃度を算出し、該酸素濃度と前記アンモニアセンサ部の前記アンモニア濃度出力とに基づき、修正アンモニア濃度を算出する制御手段を備えたマルチガスセンサの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−75546(P2011−75546A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160468(P2010−160468)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】