説明

マルチキャストシステム

【課題】本発明は、アクセスネットワークを構成する各集線装置において、適切な機能配備を実施することで各集線装置における回路実装規模を削減または処理負荷を低減したうえで、アクセスネットワークにおいて最適なマルチキャストツリーを構築可能なマルチキャストシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明におけるマルチキャストシステムでは、マルチキャストツリーの最上位に位置するエッジ装置12が、ビット長が宛先IPアドレス又は送信元IPアドレス及び宛先IPアドレスの組み合わせより短いネットワークIDをIPパケットに設定することとした。ネットワークIDは、ネットワークID情報テーブル123において、IPマルチキャストアドレス又はIPソースアドレス及びIPマルチキャストアドレスの組み合わせにより一意に識別されるマルチキャストチャネルと1対1に対応している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に属し、特に、アクセスネットワークにおいて、マルチキャスト通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標)−Passive Optical Network)システムなど、FTTH(Fiber To The Home)をはじめとした高速サービスが普及してきている。高速なネットワークサービスにおいては、IPTVなどの広帯域放送型サービスが広く提供され、それらを効率的に提供するためにIPマルチキャストが利用されている。IPマルチキャストは、端末からの視聴要求に応じ、動的に最適なマルチキャストツリーを構築する目的で用いられる。
【0003】
従来のアクセス転送方式では、IPv4やIPv6などの様々なプロトコルを利用するために、レイヤ3プロトコルに依存しないレイヤ2の転送機能を基本とする構成をとっている。また、通常、アクセスネットワークにおいては、複数の加入者回線が集線装置を用いて多重されIPコアネットワークに接続される。また、以下、アクセスネットワークとIPコアネットワークとの接続箇所に設置される装置をエッジ装置とする。このとき、面的に散在した需要を収容したり、各装置間のリンク帯域の制限から集線装置同士が接続される場合があるため、多くの場合、エッジ装置の数より集線装置の数の方が多い。
【0004】
レイヤ2の転送装置で構成されたネットワークにおいては、マルチキャスト通信のIPパケットは、ブロードキャストのパケットと同様に同一のセグメントに所属する転送装置全体に転送される。アクセスネットワークにおいて最適なマルチキャストツリーを構築するために、エッジ装置にPIM(Protocol Independent Multicast)などを用いたマルチキャストルータ部が配備される。また、アクセスネットワーク内の各集線装置に、非特許文献1に示される従来技術では、IPv4においてIGMP(Internet Group Management Protocol)Proxyが配備され、IPv6においてMLD(Multicast Listener Discovery)Proxyが配備される。
【0005】
ここで、以下、IPパケットの宛先IPアドレスをDAと表し、IPパケットの送信元IPアドレスをSAと表す。また、特定のIPマルチキャストアドレスをGと表し、任意のIPソースアドレスを*で表し、特定のIPソースアドレスをSで表す。また、*とGの組<*,G>、SとGの組<S,G>により、特定のマルチキャストチャネルを表す。すなわち、例えばIPソースアドレスがS1である放送局がIPマルチキャストアドレスがG1である放送を提供している場合、<S1,G1>によって一意に特定される当該放送による一連のデータフロー、つまりIPパケットのうちSAがS1でありDAがG1であるIPパケットの集合をマルチキャストチャネル<S1,G1>と呼ぶ。
【0006】
IGMP/MLD Proxyにおいては、各集線装置において配下装置からのマルチキャスト視聴要求信号を監視し、配下装置のマルチキャストチャネルへの参加状態を保持する。ここで、マルチキャスト視聴要求信号は、視聴開始要求(以下Allowとする)、視聴離脱要求(以下Blockとする)や、視聴状態報告などである。各集線装置は、上記マルチキャストチャネルへの参加状態をもとに自装置に到着したIPパケットに対し、ルックアップ・コピー・フィルタなどの処理によりマルチキャスト転送制御を行うことで、視聴中であるマルチキャストチャネルのみを配下装置へ転送することにより、最適なマルチキャストツリーを構築する。
【0007】
上記のIPマルチキャスト転送制御は、SSM(Source Specific Multicast)をサポートしないIGMPv2(IGMP Version 2)/MLDv1(MLD Version 1)では<*,G>単位に行われ、SSMをサポートするIGMPv3(IGMP Version 3)/MLDv2(MLD Version 2)では<S,G>単位に行われる。従って、各集線装置は、IGMPv2/MLDv1ではDAを制御キーとし、IGMPv3/MLDv2ではDAとSAの組を制御キーとして、IPマルチキャスト転送制御を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】RFC4605 Internet Group Management Protocol(IGMP)/Multicast Listener Discovery(MLD)−Based Multicast Forwarding (“IGMP/MLD Proxying”).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マルチキャスト転送制御のためのルックアップ・コピー・フィルタなどの処理は、制御キー長が長いほど処理負荷が大きく、高速なメモリや並列処理が必要となってくる。ここで、最適なマルチキャストツリー構築による帯域集約効果が高いIPTVなどの広帯域放送型サービスで提供されるマルチキャストチャネル数は、典型的には高々数百チャネル程度である。しかし、例えばMLDv2においては、各々128bitであるIPv6 SA,DAの計256bitを制御キーとして転送制御を行う。つまり、従来技術では現実的に想定され、制御を要するマルチキャストチャネル数より広大なアドレス空間を持つ制御キーに対し、転送制御を行わなければならない。そこで、制御対象とするマルチキャストチャネルを一意に識別し転送制御を行うためには、過剰な性能を持つ電子回路の実装やその回路上での不要な処理負荷が生じるという課題がある。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、アクセスネットワークを構成する各集線装置において、適切な機能配備を実施することで各集線装置における回路実装規模を削減または処理負荷を低減したうえで、アクセスネットワークにおいて最適なマルチキャストツリーを構築可能なマルチキャストシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、ビット長が宛先IPアドレス又は送信元IPアドレス及び宛先IPアドレスの組み合わせより短く、マルチキャストチャネルと1対1に対応する識別子を、IPパケットに設定することとした。
【0012】
具体的には、本発明は、IPマルチキャストアドレス又はIPソースアドレス及びIPマルチキャストアドレスの組み合わせにより一意に識別されるマルチキャストチャネル、並びにビット長が宛先IPアドレス又は送信元IPアドレス及び宛先IPアドレスの組み合わせより短い識別子の対応関係を記憶しており、前記マルチキャストチャネルを受信したときに、前記マルチキャストチャネルと対応付けられた前記識別子をIPパケットに設定する識別子設定装置と、前記識別子、前記マルチキャストアドレス及び転送ポートの対応関係を記憶しており、前記識別子が設定されたIPパケットを前記識別子設定装置から受信したときに、前記識別子と対応付けられた前記転送ポートに、前記識別子が設定されたIPパケットを出力するデータ転送装置と、を備えることを特徴とするマルチキャストシステムである。
【0013】
この構成によれば、データ転送装置において回路実装規模を削減または処理負荷を低減するマルチキャストシステムを提供することができる。
【0014】
また、本発明は、前記識別子のビット長は、宛先IPアドレス又は送信元IPアドレス及び宛先IPアドレスの組み合わせのビット長より短く、前記識別子及び前記マルチキャストチャネルを1対1に対応させるために必要な最小のビット長より長いことを特徴とするマルチキャストシステムである。
【0015】
この構成によれば、識別子及びマルチキャストチャネルを確実に1対1に対応させるマルチキャストシステムを提供することができる。
【0016】
また、本発明は、前記識別子設定装置は、マルチキャストツリーの最上位に位置するエッジ装置であることを特徴とするマルチキャストシステムである。
【0017】
この構成によれば、マルチキャストツリーの最上位に位置するエッジ装置のみが、マルチキャストチャネルと識別子を対応付ける処理を行い、マルチキャストツリーを構成するアクセスネットワークに位置する装置は、識別子を設定されたIPパケットを処理する。そのため、マルチキャストツリーを構成するアクセスネットワーク全体において回路実装規模を削減または処理負荷を低減することができる。
【0018】
また、本発明は、前記識別子設定装置は、マルチキャストツリーの最上位に位置する集線装置であることを特徴とするマルチキャストシステムである。
【0019】
この構成によれば、マルチキャストツリーの最上位に位置する集線装置は、IPパケットに識別子を設定し、当該集線装置より下位に位置する装置は、識別子を設定されたIPパケットを処理する。そのため、アクセスネットワークを構成する任意の集線装置を最上位としてマルチキャストツリーを構築することができ、動的なマルチキャストツリー更新に要する時間を短縮することができる。
【0020】
また、本発明は、前記データ転送装置は、前記マルチキャストチャネルを制御対象とするマルチキャスト視聴要求信号を前記マルチキャストツリーを構成するより下位の各装置から受信し、前記各マルチキャストチャネルをすべて制御対象とするマルチキャスト視聴要求信号を、自己のマルチキャスト視聴要求信号として構成し前記マルチキャストツリーを構成するより上位の装置に送信することを特徴とするマルチキャストシステムである。
【0021】
この構成によれば、データ転送装置より上位の装置は、データ転送装置より下位のすべての装置のマルチキャスト視聴要求を、データ転送装置より下位のすべての装置から個別になされるのではなく、データ転送装置から一括してなされる。そのため、データ転送装置より上位の装置は、データ転送装置より下位のすべての装置のマルチキャスト視聴要求を受け付けマルチキャスト通信を更新するのに要する負担を低減することができる。
【0022】
また、本発明は、前記マルチキャストチャネル及び前記識別子の対応関係を示す対応テーブルを作成し、前記対応テーブルを前記識別子設定装置及び前記データ転送装置に配信する対応テーブル作成装置、をさらに備えることを特徴とするマルチキャストシステムである。
【0023】
この構成によれば、対応テーブルの作成を、識別子設定装置及びデータ転送装置が個別に行うのではなく、対応テーブル作成装置が一括して行うことができる。
【0024】
また、本発明は、前記対応テーブル作成装置は、前記対応テーブルを前記識別子設定装置及び前記データ転送装置に同報配信することを特徴とするマルチキャストシステムである。
【0025】
この構成によれば、対応テーブル作成装置は、対応テーブルを配信する負担を低減することができるとともに、識別子設定装置及びデータ転送装置は、対応テーブルを相互に同期させることを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、アクセスネットワークを構成する各集線装置において、適切な機能配備を実施することで各集線装置における回路実装規模を削減または処理負荷を低減したうえで、アクセスネットワークにおいて最適なマルチキャストツリーを構築可能なマルチキャストシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1におけるマルチキャストシステムを示す図である。
【図2】実施形態1におけるエッジ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態1におけるネットワークID情報テーブルの例を示す図である。
【図4】実施形態1における集線装置の構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態1におけるマルチキャスト転送制御情報テーブルの例を示す図である。
【図6】実施形態2における集線装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態3における集線装置の構成を示すブロック図である。
【図8】実施形態4におけるマルチキャストシステムを示す図である。
【図9】実施形態5におけるマルチキャストシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0029】
(実施形態1)
本実施形態におけるマルチキャストシステムを図1に示す。マルチキャストシステムは、IPコアネットワーク1及びアクセスネットワーク2から構成される。IPコアネットワーク1は、マルチキャストルータ部11及びエッジ装置12から構成される。アクセスネットワーク2は、集線装置21−1、21−2、・・・、21−Nから構成される。エッジ装置12は、識別子設定装置に対応し、集線装置21−1、21−2、・・・、21−Nは、データ転送装置に対応する。IPコアネットワーク1の内部に、あるいは、IPコアネットワーク1の外部でかつアクセスネットワーク2の外部に、IPパケットの配信元であるIPソースアドレスを有する装置が配備される。
【0030】
エッジ装置12は、制御対象とするマルチキャストチャネルに対して、マルチキャストツリーを構築するアクセスネットワーク2の最上位のマルチキャストパケット流入箇所として、IPコアネットワーク1とアクセスネットワーク2との接続点に配備され、アクセスネットワーク2においては、一台もしくは複数台の集線装置21に接続される。図1では、エッジ装置12と集線装置21−1が接続され、集線装置21−1を上位側として集線装置21−2、・・・、21−Nが接続されている。
【0031】
マルチキャストルータ部11は、アクセスネットワーク2側からのマルチキャスト視聴要求信号を受けて、IPコアネットワーク1側からアクセスネットワーク2側へのマルチキャスト転送制御、およびIPコアネットワーク1におけるマルチキャストルーティングを行う。
【0032】
本実施形態におけるエッジ装置12の構成を図2に示す。エッジ装置12は、アクセス側ポート121、ネットワークID設定部122及びネットワークID情報テーブル123から構成される。ネットワークIDは識別子に対応し、ネットワークID情報テーブル123は、対応テーブルに対応する。
【0033】
アクセス側ポート121は、集線装置21−1と接続するために、アクセスネットワーク2側へ接続される。ネットワークID情報テーブル123は、マルチキャストチャネルとネットワークIDを関連付けて記憶管理する。ネットワークID設定部122は、ネットワークID情報テーブル123をもとに、IPパケットにネットワークIDを設定する。ここで言うネットワークIDの設定とは、ネットワークIDの付加、またはMACアドレス等の既存のIDの一部書き換えを表す。
【0034】
本実施形態におけるネットワークID情報テーブル123の例を図3に示す。本例では<S,G>に対しネットワークIDを対応付けて記憶管理する。ネットワークID情報テーブル123で記憶管理される<S,G>の数は、IGMPv2/MLDv1ではDAの数となり、IGMPv3/MLDv2ではDAとそのDAに対して送信可能なSAの組み合わせになる。例えば、放送局S1が放送G1、G2をともに提供しており、放送局S2が放送G1のみを提供している場合、制御すべきチャネルは<S1,G1>、<S1,G2>、<S2,G1>となる。
【0035】
ネットワークID設定部122は、IPコアネットワーク1側から入力されたIPパケットのSA、DAを読み取り、ネットワークID情報テーブル123に記載の<S,G>に対応するSA、DAであるIPパケットであれば、対応するネットワークIDを設定してアクセスネットワーク2側へ転送する。
【0036】
本実施形態のマルチキャストシステムにおいては、制御対象とするマルチキャストチャネル数を一意に識別可能な制御キー長を有する任意の識別子をネットワークIDとして選べばよい。例えば、制御対象とするマルチキャストチャネル数が200であった場合、8bit以上の識別子(このとき、識別可能なマルチキャストチャネル数は256以上)であればよい。ネットワークIDの制御キー長が8bitであれば、MLDv2におけるSA、DAの計256bitに対して1/32の十分小さな制御キー長である。ここで、ネットワークIDとしては、通常のアクセス転送方式で通常用いられるVLAN ID(Virtual Local Area Network IDentifier)や、IPv6 Flow Label、MPLS(Multi Protocol Label Switching)Shimヘッダや、これら識別子の一部のビットあるいはそれらの組み合わせなど、任意の識別子を用いてもよい。
【0037】
本実施形態における集線装置21の構成を図4に示す。集線装置21は、上位側ポート211、下位側ポート212−1、・・・、212−N、ネットワークID転送制御部213、マルチキャスト転送制御情報テーブル214及びマルチキャスト視聴要求信号読取部215−1、・・・、215−Nから構成される。下位側ポート212−1、・・・、212−Nは、転送ポートに対応し、マルチキャスト転送制御情報テーブル214は、対応テーブルに対応する。
【0038】
上位側ポート211は、IPコアネットワーク1側もしくは上位側の集線装置21へ接続される。下位側ポート212−1、・・・、212−Nは、下位側の集線装置21もしくは下位側の他の装置に接続される。マルチキャスト視聴要求信号読取部215−1、・・・、215−Nは、複数の下位側の装置からのマルチキャスト視聴要求信号を、下位側ポート212−1、・・・、212−Nの単位で読み取る。
【0039】
マルチキャスト転送制御情報テーブル214は、マルチキャストチャネル、ネットワークID、及びマルチキャスト視聴要求信号を受信した下位側ポート212を表すポートIDのうち当該マルチキャストチャネルを視聴中であるポートIDを関連付けて記憶管理する。ネットワークID転送制御部213は、上位側ポート211から入力されたIPパケットのネットワークIDがマルチキャスト転送制御情報テーブル214に登録されているならば、当該マルチキャストチャネルを視聴中である下位側ポート212へのみ転送する。ネットワークID転送制御部213は、上位側ポート211から入力されたIPパケットのネットワークIDがマルチキャスト転送制御情報テーブル214に登録されているとしても、当該ポートIDがnullであり当該マルチキャストチャネルが視聴されていないならば、IPパケットをいずれの下位側ポート212へも転送しない。
【0040】
本実施形態におけるマルチキャスト転送制御情報テーブル214の例を図5に示す。本例では<S,G>、ネットワークID、ポートIDを関連付けて記憶管理する。
【0041】
本実施形態におけるマルチキャストシステムにおいては、ネットワークID情報テーブル123におけるマルチキャストチャネルとネットワークIDの対応関係、及びマルチキャスト転送制御情報テーブル214におけるマルチキャストチャネルとネットワークIDの対応関係は同一である。これらの対応関係は、あらかじめエッジ装置12のネットワークID情報テーブル123及び各集線装置21の各マルチキャスト転送制御情報テーブル214に登録しておいてもよいし、実施形態4及び実施形態5のように、ネットワークID制御部13から設定してもよい。
【0042】
マルチキャスト視聴要求信号読取部215−1、・・・、215−Nは、それぞれ下位側ポート212−1、・・・、212−Nから入力されたマルチキャスト視聴要求信号を読み取り、マルチキャスト転送制御情報テーブル214を更新する。これにより、マルチキャスト転送制御情報テーブル214におけるマルチキャストチャネルとポートIDとの対応関係において、常に当該マルチキャストチャネルを視聴中であるポートIDに対応させる。このとき、マルチキャスト視聴要求信号はマルチキャスト視聴要求信号読取部215−1、・・・、215−Nを透過し上位側へ転送される。
【0043】
また、図4に示されているように、下位側ポート212−1、・・・、212−Nの単位で、視聴要求対象の<S,G>およびAllowまたはBlockを出力することにより、マルチキャスト転送制御情報テーブル214を更新する様子が示されている。例えば、ポートmから現在視聴中でない<Sm,Gm>に関する視聴開始要求であるAllowが読み取られた場合、当該<Sm,Gm>とネットワークIDに対応付けられたポートIDとしてmを登録する。また、ポートmから現在視聴中である<Sm,Gm>に関する視聴離脱要求であるBlockが読み取られた場合、当該<Sm,Gm>とネットワークIDに対応付けられたポートIDを削除しnullに更新する。
【0044】
ネットワークID転送制御部213は、上位側ポート211から入力されたIPパケットのネットワークIDを読み取り、マルチキャスト転送制御情報テーブル214で記憶管理されている通りに転送制御を行う。すわなち、図5に示されているように、IPパケットのネットワークIDが<S1,G1>に対応するネットワークIDであったならば、ポートIDが1である下位側ポート212にのみ当該IPパケットを転送する。
【0045】
本実施形態における動作を説明する。各集線装置21は、下位側の装置からのマルチキャスト視聴要求信号を監視しており、下位側の装置がどのマルチキャストチャネルを視聴中であるかをマルチキャスト転送制御情報テーブル214で記憶管理している。IPコアネットワーク1側からエッジ装置12に入力されたIPパケットのSA、DAが、ネットワークID情報テーブル123に記載のマルチキャストチャネルに対応するものであれば、ネットワークID設定部122は当該IPパケットに当該ネットワークIDを設定してアクセスネットワーク2へ送出する。
【0046】
エッジ装置12におけるネットワークID情報テーブル123と集線装置21のマルチキャスト転送制御情報テーブル214において、マルチキャストチャネルとネットワークIDは1対1に対応している。そのため、各集線装置21は、上位側ポート211から入力されたIPパケットのネットワークIDを読み取りマルチキャスト転送制御情報テーブル214を参照して、当該ネットワークIDに対応するマルチキャストチャネルを視聴中の配下装置が存在する下位側ポート212にのみ転送制御を行うことで、最適なマルチキャストツリーを構築することができる。
【0047】
以上の動作において、<S,G>を制御キーとするラインレートでの処理は、エッジ装置12で行うのみとなり、各集線装置21で行う必要がなくなる。また、用いているネットワークIDは<S,G>より十分負荷が小さな制御キーであるため、各集線装置21の回路実装規模や装置負荷を低減した上で最適なマルチキャストツリーを構築することができる。また、各集線装置21はそれぞれ視聴状態に変化があった場合、その変化内容に応じてマルチキャスト転送制御情報テーブル214を更新するため、視聴状況が変化したとしても動的に最適なマルチキャストツリーを再構築することができる。
【0048】
(実施形態2)
実施形態2における集線装置21の構成を図6に示す。集線装置21は、上位側ポート211、下位側ポート212−1、・・・、212−N、ネットワークID転送制御部213、マルチキャスト転送制御情報テーブル214、マルチキャスト視聴要求信号読取部215−1、・・・、215−N及びネットワークID設定部216から構成される。図6に示した集線装置21は、アクセスネットワーク2内のマルチキャストツリーの最上位に位置する集線装置21であり、識別子設定装置に対応する。図4に示した集線装置21は、図6に示した集線装置21より下位に位置する集線装置21であり、データ転送装置に対応する。
【0049】
本実施形態は、ネットワークID設定部216を集線装置21内に配備することを特徴とするものである。このとき、ネットワークID情報テーブル123として、マルチキャスト転送制御情報テーブル214におけるマルチキャストチャネルとネットワークIDの対応関係を用いるなど、エッジ機能と集線装置21で重複する機能がある場合は共用してもよい。図6では、上位側ポート211とネットワークID転送制御部213の間にネットワークID設定部216を配備し、ネットワークID情報テーブル123としてマルチキャスト転送制御情報テーブル214におけるマルチキャストチャネルとネットワークIDの対応関係を用いた場合の例を示している。
【0050】
これにより、アクセスネットワーク2のネットワークID設定部216を有する集線装置21より下位に位置する装置は、実施形態1と同様に、ネットワークIDを設定されたIPパケットを処理する。そのため、エッジ装置12がネットワークID設定部122を有する場合と比較して、マルチキャストツリーの規模を小さくすることができ、アクセスネットワーク2のネットワークID設定部216を有する集線装置21より下位に位置する装置は、動的なマルチキャストツリーの更新に要する時間を短縮することができる。
【0051】
(実施形態3)
実施形態3における集線装置21の構成を図7に示す。集線装置21は、上位側ポート211、下位側ポート212−1、・・・、212−N、ネットワークID転送制御部213、マルチキャスト転送制御情報テーブル214、マルチキャスト視聴要求信号終端部217−1、・・・、217−N及びマルチキャスト視聴要求信号構成部218から構成される。実施形態3における集線装置21が実施形態1における集線装置21と異なる点は、マルチキャスト視聴要求信号読取部215−1、・・・、215−Nに代えてマルチキャスト視聴要求信号終端部217−1、・・・、217−Nが構成要素である点、及びマルチキャスト視聴要求信号構成部218が新たな構成要素である点である。
【0052】
マルチキャスト視聴要求信号終端部217−1、・・・、217−Nは、マルチキャスト視聴要求信号を上位側の装置へ転送しない点を除いて、マルチキャスト視聴要求信号読取部215−1、・・・、215−Nと同じ動作を行う。マルチキャスト視聴要求信号構成部218は、マルチキャスト転送制御情報テーブル214で記憶管理されている自装置のマルチキャスト視聴状態を、自装置のマルチキャスト視聴要求信号として上位側の装置に通知する。もし自装置のマルチキャスト視聴状態に更新があれば、その都度自装置のマルチキャスト視聴要求信号を上位側の装置に通知する。
【0053】
本実施形態においては、各集線装置21において自装置に到着したマルチキャスト視聴要求信号を終端し、自装置の視聴状態のみをそれぞれ上位側の装置に通知するため、多数の集線装置21により構成されるアクセスネットワーク2において、上位側に位置する集線装置21に到達するマルチキャスト視聴要求信号が減少する。したがって、エッジ装置12におけるネットワークID情報テーブル123や各集線装置21におけるマルチキャスト転送制御情報テーブル214の更新に関わる負荷が軽減する利点がある。
【0054】
(実施形態4)
実施形態4におけるマルチキャストシステムを図8に示す。本実施形態では、実施形態1−3に加えて、ネットワークID制御部13をIPコアネットワーク1に備え、ネットワークID制御信号読取部124をエッジ装置12に備え、ネットワークID制御信号読取部219を集線装置21に備える。ネットワークID制御部13は、対応テーブル作成装置に対応する。
【0055】
ネットワークID制御部13は、マルチキャストチャネルとネットワークIDの対応関係を示すネットワークID制御信号を、エッジ装置12及び各集線装置21に通知する機能を持つ。ネットワークID制御信号読取部124、219は、ネットワークID制御信号を読み取り、ネットワークID情報テーブル123またはマルチキャスト転送制御情報テーブル214を更新する機能を持つ。
【0056】
これにより、制御対象とするマルチキャストチャネルをネットワークID制御部13において一括で管理することができるとともに、制御対象とするマルチキャストチャネルの変更があった場合にも、エッジ装置12及び各集線装置21で個別に変更に関わる設定を行うことなく、一括で変更に関わる設定を行うことが可能となる利点がある。
【0057】
(実施形態5)
実施形態5におけるマルチキャストシステムを図9に示す。本実施形態では、実施形態4に加えて、ネットワークID制御信号同報配信部131をネットワークID制御部13に備える。ネットワークID制御信号同報配信部131は、エッジ装置12および各集線装置21にネットワークID制御信号を同報配信する。
【0058】
これにより、ネットワークID制御部13がエッジ装置12及び各集線装置21を識別して管理する手間なく、エッジ装置12及び各集線装置21でマルチキャストチャネルとネットワークIDの対応関係を同期させることができる。
【0059】
(実施形態6)
実施形態1−5におけるエッジ装置12及び集線装置21、並びに実施形態4、5におけるネットワークID制御部13は、コンピュータ及びプログラムによっても実現することができる。当該プログラムを記録媒体に記録することも可能であり、当該プログラムをネットワークを通して提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るマルチキャストシステムは、FTTHをはじめとした高速サービスやIPTVなどの広帯域放送型サービスなどに有用である。
【符号の説明】
【0061】
1:IPコアネットワーク
2:アクセスネットワーク
11:マルチキャストルータ部
12:エッジ装置
13:ネットワークID制御部
21:集線装置
121:アクセス側ポート
122:ネットワークID設定部
123:ネットワークID情報テーブル
124:ネットワークID制御信号読取部
131:ネットワークID制御信号同報配信部
211:上位側ポート
212:下位側ポート
213:ネットワークID転送制御部
214:マルチキャスト転送制御情報テーブル
215:マルチキャスト視聴要求信号読取部
216:ネットワークID設定部
217:マルチキャスト視聴要求信号終端部
218:マルチキャスト視聴要求信号構成部
219:ネットワークID制御信号読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPマルチキャストアドレス又はIPソースアドレス及びIPマルチキャストアドレスの組み合わせにより一意に識別されるマルチキャストチャネル、並びにビット長が宛先IPアドレス又は送信元IPアドレス及び宛先IPアドレスの組み合わせより短い識別子の対応関係を記憶しており、前記マルチキャストチャネルを受信したときに、前記マルチキャストチャネルと対応付けられた前記識別子をIPパケットに設定する識別子設定装置と、
前記識別子、前記マルチキャストアドレス及び転送ポートの対応関係を記憶しており、前記識別子が設定されたIPパケットを前記識別子設定装置から受信したときに、前記識別子と対応付けられた前記転送ポートに、前記識別子が設定されたIPパケットを出力するデータ転送装置と、
を備えることを特徴とするマルチキャストシステム。
【請求項2】
前記識別子のビット長は、宛先IPアドレス又は送信元IPアドレス及び宛先IPアドレスの組み合わせのビット長より短く、前記識別子及び前記マルチキャストチャネルを1対1に対応させるために必要な最小のビット長より長いことを特徴とする、請求項1に記載のマルチキャストシステム。
【請求項3】
前記識別子設定装置は、マルチキャストツリーの最上位に位置するエッジ装置であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のマルチキャストシステム。
【請求項4】
前記識別子設定装置は、マルチキャストツリーの最上位に位置する集線装置であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のマルチキャストシステム。
【請求項5】
前記データ転送装置は、前記マルチキャストチャネルを制御対象とするマルチキャスト視聴要求信号を前記マルチキャストツリーを構成するより下位の各装置から受信し、前記各マルチキャストチャネルをすべて制御対象とするマルチキャスト視聴要求信号を、自己のマルチキャスト視聴要求信号として構成し前記マルチキャストツリーを構成するより上位の装置に送信することを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載のマルチキャストシステム。
【請求項6】
前記マルチキャストチャネル及び前記識別子の対応関係を示す対応テーブルを作成し、前記対応テーブルを前記識別子設定装置及び前記データ転送装置に配信する対応テーブル作成装置、をさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項5に記載のいずれかのマルチキャストシステム。
【請求項7】
前記対応テーブル作成装置は、前記対応テーブルを前記識別子設定装置及び前記データ転送装置に同報配信することを特徴とする、請求項6に記載のマルチキャストシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−49644(P2012−49644A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187638(P2010−187638)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】