説明

マルチキャスト配信システム、マルチキャスト配信サーバ、クライアント端末およびマルチキャスト配信方法

【課題】マルチキャスト配信システムにおいて、配信サーバやクライアントの自立分散的な動作によって、利用ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現する。
【解決手段】マルチキャスト配信システムであって、マルチキャスト配信サーバ3は、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断し、クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させる一方、クライアント端末3は、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしているかどうかを判断し、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システム、マルチキャスト配信サーバ、クライアント端末およびマルチキャスト配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニュースや映像等の同報性の高いコンテンツを効率的に配信する技術として、IPマルチキャストが知られている。このIPマルチキャストは、トランスポート層のプロトコルとしてUDP(User Datagram Protocol)を用いるのが一般的であり、パケットロス等に非常に弱い。そのため、誤り訂正符号による高信頼化(FEC:Forward Error Correction;非特許文献1)やバックアップパス等を利用した複数マルチキャストによる冗長化(2系統以上の配信)が必要となる。
【0003】
特許文献1に開示されているFEC技術では、サーバはデータを複数の符号化データに分割し、パケットに分けて送信する。クライアントは元のデータサイズよりも冗長に(105%程度)符号化データを受信すれば元のデータが復元可能である。このとき受信する符号化データは、配信されている符号化データ系列のどの部分を受信してもよい。この性質を利用することで、符号化データを複数の配信経路(マルチキャスト)に分けて配信することも可能である。すなわち、どの配信経路からでもよいので105%程度の符号化データを受信できれば元のデータを再生できる。
【0004】
また、従来、非特許文献2、3、4に開示されているように、複数のマルチキャストや経路を用いて配信を効率的に行なう技術が提案されている。非特許文献2に開示されている技術は、冗長配信しているマルチキャストを全て(2つとも)受信するシステムであるが、複数のマルチキャスト(経路)を用いて配信する場合、クライアントが全てのマルチキャストを(経路から)受信するとネットワーク帯域を効率的に使用することができなくなるため、いくつかのマルチキャスト(経路)を選んで受信する必要がある。このとき、スループット、遅延、帯域、パケットロス等を考慮して選択することが望ましい。また、マルチキャストツリーまで最も近いマルチキャストを選択すれば、ネットワークの全体的な使用帯域を減らすことができる。
【0005】
非特許文献3では、クライアントが複数の受信候補に対して定期的に品質計測(遅延とアクセスの帯域)を行ない、現在の受信先よりもよい候補が見つかれば、受信先を変更する。非特許文献3では、配信経路は複数あるものの接続先は一つであるため、特にストリーミング系の配信においてパスダイバーシティによる高信頼化は実現することができない。単一の受信パス上に障害が発生すると、次の接続先を探す間は受信(映像や音の再生)が途切れてしまうため、複数の経路から受信することが望ましい。
【0006】
非特許文献4では、クライアントは、複数の冗長パスの中から出来る限りデフォルトルートと同じ経路を通らず、かつ遅延の小さいものを選択する。
【0007】
非特許文献5では、マルチエージェント(クライアント)から担当範囲のネットワーク情報を収集し、サーバ同士が協調して各々のマルチキャストツリーを決定している。各クライアントは、当該マルチキャストツリーに沿ってデータを受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−189665号公報
【特許文献2】特開2007−180743号公報
【特許文献3】特願2007−254668号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Forward Error Correction (FEC) Building Block;RFC 5052
【非特許文献2】NEC、“放送・通信融合を加速する高品位マルチキャスト通信方式を開発”プレリリース記事2006年http://www.nec.co.jp/press/ja/0606/0502.html
【非特許文献3】冨井他、“複数経路を用いるマルチキャストストリーミングに関する検討 : 複数経路通信プロトコルM/RTP”、電子情報通信学会技術研究報告, Vol.103, No.691, IN2003-209, 2003.
【非特許文献4】T. Nguyen and A. Zakhor, “Path diversity with forward error correction (pdf) system for packet switched networks,” in INFOCOM, San Francisco, CA, April 2003.
【非特許文献5】尾崎他、“マルチエージェントに基づく複数マルチキャストツリー予約法のシミュレーション実験による適応性評価”、電子情報通信学会技術研究報告. TM、Vol.102, No.563(20030110) pp. 13-18 、TM2002-66
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献3および4に開示されている技術は、クライアントの通信品質を考慮した配信システムについてのものであり、ネットワークの使用帯域等は考慮されていない。そのため、ネットワーク使用帯域の観点から、複数のマルチキャストツリーを適切に構築する配信システムを考える必要がある。一方、ネットワークの帯域を有効活用するためには、各マルチキャストの送信帯域を適切に設定する必要がある。ここで、非特許文献1、2、4、5のように同一の送信帯域を用いると非効率的である。一般的には、視聴者数が増加すればするほどマルチキャストの効率化が見込めるため、視聴者の少ないマルチキャストの配信は抑制した方がよい。
【0011】
また、非特許文献5に開示されているような方法では、サーバやクライアント間に余計な通信が発生し、また手順が複雑になることが問題である。各クライアントが受信すべきマルチキャストを、中央配置した専用の計算サーバに問い合わせて決める方法も考えられるが、問い合わせ爆発が問題となる。そのため、サーバやクライアント間での通信は(極力)行なわず、受信マルチキャストをクライアントが自立的に選択することが望ましい。
【0012】
しかしながら、各クライアントが受信すべき適切なマルチキャストの組や各マルチキャストの最適な送信帯域は、クライアントのお互いの位置関係や、各々のサーバとクライアント間の帯域、受信完了の度合い、要求されるスループットや信頼性(いくつのマルチキャストを受信するか)、マルチキャストの配信経路などの複数の要因で定まるため、解析は容易でない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マルチキャスト配信システムにおいて、配信サーバやクライアントの自立分散的な動作によって、利用ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することができるマルチキャスト配信システム、マルチキャスト配信サーバ、クライアント端末およびマルチキャスト配信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のマルチキャスト配信システムは、複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システムであって、前記各マルチキャスト配信サーバは、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断し、前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させる一方、前記クライアント端末は、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしているかどうかを判断し、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更することを特徴としている。
【0015】
このように、各マルチキャスト配信サーバは、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させる一方、クライアント端末は、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更するので、ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することが可能となる。また、ネットワークの性質に依存することなく、効率的なマルチキャストツリーを構築することができる。
【0016】
(2)また、本発明のマルチキャスト配信システムは、複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システムであって、前記各マルチキャスト配信サーバは、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断し、前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、パケットロスまたはパケットロスに相当する状態を発生させる一方、前記クライアント端末は、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生したかどうかを判断し、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更することを特徴としている。
【0017】
このように、各マルチキャスト配信サーバは予め定められた基準値に到達していない場合、パケットロスまたはパケットロスに相当する状態を発生させる一方、クライアント端末は、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更するので、ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することが可能となる。また、ネットワークの性質に依存することなく、効率的なマルチキャストツリーを構築することができる。
【0018】
(3)また、本発明のマルチキャスト配信サーバは、複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システムに適用されるマルチキャスト配信サーバであって、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断し、前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させ、または、パケットロス若しくはパケットロスに相当する状態を発生させることを特徴としている。
【0019】
このように、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させ、または、パケットロス若しくはパケットロスに相当する状態を発生させるので、サーバ側からクライアント端末を離脱させることができる。これにより、ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することが可能となる。また、ネットワークの性質に依存することなく、効率的なマルチキャストツリーを構築することができる。
【0020】
(4)また、本発明のクライアント端末は、複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システムに適用されるクライアント端末であって、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしているかどうかを判断し、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更する一方、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生したかどうかを判断し、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更することを特徴としている。
【0021】
このように、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更する一方、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更するので、サーバ側からクライアント端末を離脱させることができる。これにより、ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することが可能となる。また、ネットワークの性質に依存することなく、効率的なマルチキャストツリーを構築することができる。
【0022】
(5)また、本発明のマルチキャスト配信方法は、複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信方法であって、前記各マルチキャスト配信サーバにおいて、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断するステップと、前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させるステップと、前記クライアント端末において、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしているかどうかを判断するステップと、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更するステップと、を少なくとも含むことを特徴としている。
【0023】
このように、各マルチキャスト配信サーバは、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させる一方、クライアント端末は、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更するので、ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することが可能となる。また、ネットワークの性質に依存することなく、効率的なマルチキャストツリーを構築することができる。
【0024】
(6)また、本発明のマルチキャスト配信方法は、複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信方法であって、前記各マルチキャスト配信サーバにおいて、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断するステップと、前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、パケットロスまたはパケットロスに相当する状態を発生させるステップと、前記クライアント端末において、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生したかどうかを判断するステップと、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更するステップと、を少なくとも含むことを特徴としている。
【0025】
このように、各マルチキャスト配信サーバは予め定められた基準値に到達していない場合、パケットロスまたはパケットロスに相当する状態を発生させる一方、クライアント端末は、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更するので、ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することが可能となる。また、ネットワークの性質に依存することなく、効率的なマルチキャストツリーを構築することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することが可能となる。また、ネットワークの性質に依存することなく、効率的なマルチキャストツリーを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】初期状態でのマルチキャスト配信状態を示す図である。
【図2】クライアント3がマルチキャスト2の輻輳を検知し、マルチキャスト4に受信を切替えた状態を示す図である。
【図3】サーバ3がマルチキャスト3の視聴者数が1名であることを計測し、送信帯域を80Mbpsに変更した状態を示す図である。
【図4】クライアント3がマルチキャスト3の受信帯域が減ったことを検知し、マルチキャスト1に受信を切替えた状態を示す図である。
【図5】全クライアントが全マルチキャストを受信した状態を示す図である。
【図6】サーバ3がマルチキャスト3の視聴者数が1名であることを計測し、故意にパケットロスを挿入した状態を示す図である。
【図7】マルチキャスト配信サーバの動作を示すフローチャートである。
【図8】クライアント端末の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、初期状態でのマルチキャスト配信状態を示す図である。このマルチキャスト配信システムは、サーバ1〜4(マルチキャスト配信サーバ)が、ルータ10〜18を介して、それぞれマルチキャスト1〜4を配信する。ここでは、マルチキャスト配信サーバ1〜4のアドレスとマルチキャストのアドレスは、コンテンツの受信ページ等から予め入手していることを前提とする。
【0029】
図1において、マルチキャスト配信サーバ1〜4は、各々異なるマルチキャスト1〜4(マルチキャストアドレス)を用いて、配信コンテンツの符号化データを送信している。最初に選択するマルチキャストとしては、例えばランダムに選択する。または、tracerouteやpingなどによりサーバまでの距離が近いものや遅延の少ないものから選ぶ方法が考えられる。
【0030】
クライアント1〜3(クライアント端末)は、マルチキャスト1〜4のうち2つのマルチキャストを受信しており、受信した符号化データに復号処理を行ないコンテンツを再生することができる。クライアント3は、マルチキャスト2と3を受信しているが、マルチキャスト2の配信経路上に輻輳箇所があり、十分に符号化データを受信することができない。
【0031】
図2は、クライアント3がマルチキャスト2の輻輳を検知し、マルチキャスト4に受信を切替えた状態を示す図である。図2に示すように、クライアント3は、新たにマルチキャスト4の受信を開始すると共に、マルチキャスト2から離脱する。新たに受信するマルチキャストとしては、例えば、ランダムに選択する、もしくはtracerouteやpingなどによりサーバまでの距離が近いものや遅延の少ないものから選ぶ方法が考えられる。
【0032】
図3は、サーバ3がマルチキャスト3の視聴者数が1名であることを計測し、送信帯域を80Mbpsに変更した状態を示す図である。図3に示すように、マルチキャスト配信サーバは、定期的に視聴者数を計測しており(特許文献3などに開示されている技術を利用して)、視聴者数に応じて送信帯域を抑制する。例えば、マルチキャスト配信サーバ3は現在の視聴者が1名であるため、送信帯域を100Mbpsから80Mbpsに抑制する。
【0033】
図4は、クライアント3がマルチキャスト3の受信帯域が減ったことを検知し、マルチキャスト1に受信を切替えた状態を示す図である。図4に示すように、マルチキャスト配信サーバ3からのマルチキャスト3を受信しているクライアント3は、マルチキャスト3から80Mbpsのスループットしか得られないため、新たにマルチキャスト1の受信を開始すると共に、マルチキャスト3から離脱する。視聴者が0になったマルチキャストの配信帯域は100Mbpsに戻す。または、もしくは0Mbpsにする(配信を止める)。
【0034】
このように、視聴者の少ないマルチキャストを受信しているクライアントを別のマルチキャストに誘導することで、全体のネットワーク帯域利用を効率化することができる。
【0035】
例えば、図1では、100Mbpsのトラフィックが12リンクを通過している(ルータ間のみを対象。ルータとサーバ、ルータとクライアント間除く)。図2では、100Mbpsのトラフィックが11リンクを通過している。図4では、100Mbpsのトラフィックが9リンクを通過している。
【0036】
図5は、全クライアントが全マルチキャストを受信した状態を示す図である。図5では、各クライアントの受信帯域は2倍になるものの、100Mbpsのトラフィックが23リンク通過している。さらに輻輳箇所を通過するマルチキャストも存在している。従って、図4に示す例が最も効率的にネットワーク帯域を利用している。
【0037】
図6は、サーバ3がマルチキャスト3の視聴者数が1名であることを計測し、故意にパケットロスを挿入した状態を示す図である。図3に示した例では、クライアントを他のマルチキャストに誘導するために、マルチキャスト3の送信帯域を一時的に80Mbpsに変更したが、他の方法として、例えば、図6に示すように、マルチキャスト配信サーバ3から送信する際にマルチキャスト3に故意にパケットロスを挿入する方法も考えられる。
【0038】
これにより、マルチキャスト3を受信したクライアントは、図2の場合と同様に他のマルチキャストの受信を開始すると共に、マルチキャスト3から離脱する。実際には、本当にパケットロスを挿入する必要はなく、FEC等についているシーケンス番号を故意に飛ばして送ればよい。そのときの帯域は100Mbpsのままでも可能である。
【0039】
上記の例では、視聴者が少ない場合のみサーバ側からの送信帯域を削減したが、視聴者が多い場合には送信帯域を増やす方法も考えられる。これにより、受信対象を特定のマルチキャストに集中させることができ、ネットワーク帯域の効率化が見込まれる。また、マルチキャスト配信サーバは、視聴数に応じて送信帯域等を変更しているが、視聴数の他にもマルチキャストツリー(マルチキャスト配信経路)に基づいて送信帯域を変更することも考えられる。非常に大きなマルチキャストツリーに対して視聴者が少ない場合には、離脱を促すことでネットワーク帯域の効率化が見込まれる。マルチキャストツリーの監視は、例えば、特許文献3を利用すれば容易に実現できる。
【0040】
図7は、マルチキャスト配信サーバの動作を示すフローチャートである。ここでは、送信帯域を減少させる場合について説明する。まず、配信するコンテンツを符号化する(ステップS1)。次に、初期値の送信帯域で、マルチキャストの配信を開始する(ステップS2)。規定時間が経過したかどうかを判断し(ステップS3)、規定時間が経過していない場合は、ステップS3の判断を繰り返す。ステップS3において、規定時間が経過した場合は、視聴数の問合せを行なう(ステップS4)。この視聴数は、他のサーバから取得しても良いし、自身でカウントしても良い。
【0041】
視聴数が、予め定められた基準値以下であるかどうかを判断する(ステップS5)。視聴数が、基準値以下でない場合は、ステップS3へ遷移する。一方、視聴数が、基準値以下である場合は、送信帯域を一定時間減らす処理を行なう(ステップS6)。例えば、図4に示したように、100Mbpsから80Mbpsへ減少させる。一定時間経過後、送信帯域を初期値に戻して(ステップS7)、ステップS3へ遷移する。
【0042】
図8は、クライアント端末の動作を示すフローチャートである。ここでは、送信帯域が減少した場合について説明する。まず、マルチキャスト配信サーバとマルチキャストリストを入手する(ステップT1)。次に、受信するマルチキャストを規定数選択する(ステップT2)。上記の実施形態では、2つのマルチキャストを選択する例を示した。次に、マルチキャストの受信を開始する(ステップT3)。
【0043】
次に、マルチキャストの送信帯域が基準値以下であるかどうかを判断する(ステップT4)。マルチキャストの送信帯域が基準値以下である場合は、受信するマルチキャストを変更して(ステップT5)、ステップT5へ遷移する。一方、ステップT4において、マルチキャストの送信帯域が基準値以下でない場合は、規定数のマルチキャストの受信が完了したかどうかを判断する(ステップT6)。規定数のマルチキャストの受信が完了していない場合は、ステップT4へ遷移する一方、規定数のマルチキャストの受信が完了した場合は、コンテンツを復号する(ステップT7)。
【0044】
なお、クライアント端末は、受信している複数のマルチキャストの中にパケットロスを含むマルチキャストがある場合は、新たにマルチキャストの受信を開始してから、すなわち、受信マルチキャストを追加してから、元のマルチキャストから離脱する。これは、先に離脱すると一時的にスループットが低下するためである。また、現状で受信しているマルチキャストの総受信帯域が一定以下になった場合は、新たにマルチキャストの受信を開始してから受信帯域の小さいマルチキャストから離脱する。実際には、本当にパケットロスを挿入する必要はなく、FEC等についているシーケンス番号を故意に飛ばして送ればよい。
【0045】
以上、IPマルチキャストを用いた例で説明を行なったが、アプリケーションマルチキャストでの実施も可能である。
【0046】
本実施形態によれば、各マルチキャスト配信サーバは、配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させる一方、クライアント端末は、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更するので、ネットワーク帯域を抑えて高品質・高信頼なマルチキャスト配信を実現することが可能となる。また、ネットワークの性質に依存することなく、効率的なマルチキャストツリーを構築することができる。
【符号の説明】
【0047】
10〜18 ルータ
サーバ1〜4 マルチキャスト配信サーバ
クライアント1〜4 クライアント端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システムであって、
前記各マルチキャスト配信サーバは、
配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断し、前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させる一方、
前記クライアント端末は、
受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしているかどうかを判断し、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更することを特徴とするマルチキャスト配信システム。
【請求項2】
複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システムであって、
前記各マルチキャスト配信サーバは、
配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断し、前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、パケットロスまたはパケットロスに相当する状態を発生させる一方、
前記クライアント端末は、
受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生したかどうかを判断し、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更することを特徴とするマルチキャスト配信システム。
【請求項3】
複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システムに適用されるマルチキャスト配信サーバであって、
配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断し、前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させ、または、パケットロス若しくはパケットロスに相当する状態を発生させることを特徴とするマルチキャスト配信サーバ。
【請求項4】
複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信システムに適用されるクライアント端末であって、
受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしているかどうかを判断し、受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更する一方、
受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生したかどうかを判断し、受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更することを特徴とするクライアント端末。
【請求項5】
複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信方法であって、
前記各マルチキャスト配信サーバにおいて、
配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断するステップと、
前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、送信帯域を減少させるステップと、
前記クライアント端末において、
受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしているかどうかを判断するステップと、
受信しているマルチキャストの送信帯域が予め定められた基準値を満たしていない場合、受信するマルチキャストを変更するステップと、を少なくとも含むことを特徴とするマルチキャスト配信方法。
【請求項6】
複数のマルチキャスト配信サーバからクライアント端末へそれぞれ異なるマルチキャストでコンテンツを配信するマルチキャスト配信方法であって、
前記各マルチキャスト配信サーバにおいて、
配信するマルチキャストを受信するクライアント端末数が、予め定められた基準値に到達しているかどうかを判断するステップと、
前記クライアント端末数が、予め定められた基準値に到達していない場合、パケットロスまたはパケットロスに相当する状態を発生させるステップと、
前記クライアント端末において、
受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生したかどうかを判断するステップと、
受信しているマルチキャストでパケットロスまたはパケットロスに相当する状態が発生した場合、受信するマルチキャストを変更するステップと、を少なくとも含むことを特徴とするマルチキャスト配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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