説明

マルチコアインターフェイス

【課題】細径光ファイバのコアのクラッドに対する比屈折率差を高くしても、マルチコアファイバとの接続部での接続損失を低減することが可能なマルチコアインターフェイスを提供する。
【解決手段】クラッド2bの外径がマルチコアファイバ10のコア間隔と等しく、コア径がマルチコアファイバ10のコア径よりも小さく形成された複数の細径光ファイバ2を有し、細径光ファイバ2の先端部の被覆層2cを除去すると共に、被覆層2cを除去した細径光ファイバ2の先端部を束ねてフェルール3の貫通孔4に挿入し、束ねた細径光ファイバ2の端面と、フェルール3の端面とを一致させ、細径光ファイバ2をフェルール3に固定して構成され、かつ、フェルール3に挿入される細径光ファイバ2の先端部に、コア径を拡大したコア径拡大部13を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバの端部に接続され、複数のコアに個別に光を入射する、あるいは複数のコアを伝搬する光を個別に取り出すためのマルチコアインターフェイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の伝送容量の増大に伴い、空間分割多重方式(Space Division Multiplexing;SDM)やモード分割多重方式(Mode Division Multiplexing;MDM)を用いた光通信の研究開発が進められており、従来用いられている波長分割多重方式(Wavelength Division Multiplexing;WDM)等と組み合わせることにより、光通信の伝送容量を飛躍的に向上させる試みがなされてきている。
【0003】
空間分割多重方式では、光の伝送経路を複数用意する必要がある。この空間分割多重方式に用いる光ケーブルとしては、例えば、多数の光ファイバを束ねて一本の光ケーブルとしたものが考えられる。しかし、このような光ケーブルはコストが高く、また光ケーブル全体の外径が大きいために、静圧の高い海底に敷設される海底光ケーブルとしては利用できないという問題がある。
【0004】
そこで、共通のクラッドに複数のコアを形成したマルチコアファイバ(Multi-Core Fiber;MCF)が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
マルチコアファイバでは、共通のクラッドに複数のコアを形成するため、複数の光ファイバを束ねて1本の光ケーブルとする場合と比較して低コストであり、また、光ケーブル全体の外径を小さくできるため、静圧の高い海底においても利用可能となる。
【0006】
このようなマルチコアファイバを用いて空間分割多重方式を実現し、さらに、各コアを伝搬する光信号に波長分割多重方式等を適用することで、伝送容量のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0007】
ところで、マルチコアファイバを用いたマルチコア伝送システムでは、送信器からマルチコアファイバへ、またマルチコアファイバから受信器へのファンアウト機能を有する光機能部品が必要になってくる。
【0008】
つまり、マルチコアファイバを用いて空間分割多重方式を実現しようとすると、マルチコアファイバの複数のコアに個別に光を入射する、あるいは複数のコアを伝搬する光を個別に取り出すための光機能部品が必要になってくる。このような光機能部品をマルチコアインターフェイス(Multi-Core Interface;MCI)と呼称する。
【0009】
特に、長距離伝送用の光ケーブルにマルチコアファイバを用いる場合、伝送路の途中に光増幅器(中継器)を挿入する必要があるが、複数のコアを伝搬する光を一括して増幅する光増幅器を実現することは困難であり、実現したとしても非常に高価なものとなってしまう。よって、マルチコアファイバの複数のコアを伝搬する光を取り出して個別にEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)などの光増幅器に入力し、各光増幅器で増幅された光を再び複数のコアに個別に入射するマルチコアインターフェイスが必要になる。しかし、現在の光ファイバカプラなどでは、マルチコアファイバに対応することはできず、マルチコアインターフェイスとして用いることができない。
【0010】
さらに、海底光ケーブルにマルチコアファイバを用いる場合、海底における高い静圧に耐えるため、マルチコアファイバの径をなるべく小さくすることが要求される。マルチコアファイバの径は、径を小さくするほど曲げによる破断を抑制できることからも、なるべく小さくすることが望ましい。よって、このような径の小さいマルチコアファイバに対応可能なマルチコアインターフェイスが望まれる。
【0011】
そこで、本発明者らは、クラッドの外径がマルチコアファイバのコア間隔と等しく形成された複数の細径光ファイバを使用し、複数の細径光ファイバの先端部を束ねてフェルールに挿入した構造のマルチコアインターフェイスを提案中である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−341147号公報
【特許文献2】特開2010−55028号公報
【特許文献3】特開2005−134622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の提案したマルチコアインターフェイスでは、外径が非常に細い細径光ファイバを用いるため、側圧などの影響によるマイクロベンドに起因した伝送損失が大きくなってしまうという問題がある。
【0014】
この問題の対策として、マルチコアインターフェイスに用いる細径光ファイバのコアのクラッドに対する比屈折率差Δnを高くして光の閉じ込め効果を高くすることが有効である。
【0015】
しかし、比屈折率差Δnを高くする場合、シングルモード条件を満足させるためにはコア径を小さくする必要があり、その結果、細径光ファイバのMFD(モードフィールド径)が小さくなってしまう。細径光ファイバのMFDが小さくなると、マルチコアインターフェイス用の細径光ファイバと接続先のマルチコアファイバとの間でMFDの差が大きくなり、マルチコアファイバとマルチコアインターフェイスの接続部における接続損失が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、細径光ファイバを用いたマルチコアインターフェイスにおいて、細径光ファイバのコアのクラッドに対する比屈折率差を高くしても、マルチコアファイバとの接続部での接続損失を低減することが可能なマルチコアインターフェイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数のコアと該複数のコアの周囲を覆う共通のクラッドとを有し、前記複数のコアが三角格子を形成するよう等間隔に形成されたマルチコアファイバの端部に接続され、前記複数のコアに個別に光を入射する、あるいは前記複数のコアを伝搬する光を個別に取り出すためのマルチコアインターフェイスであって、1つのコアと、該コアの周囲を覆うクラッドと、該クラッドを覆う被覆層と、を有し、前記クラッドの外径が、前記マルチコアファイバのコア間隔と等しく形成され、コア径が前記マルチコアファイバのコア径よりも小さく形成された複数の細径光ファイバと、該複数の細径光ファイバを挿入する貫通孔が形成されたフェルールと、を有し、前記複数の細径光ファイバの先端部の前記被覆層を除去すると共に、当該被覆層を除去した前記複数の細径光ファイバの先端部を束ねて前記フェルールの前記貫通孔に挿入し、束ねた前記複数の細径光ファイバの端面と、前記フェルールの端面とを一致させ、前記複数の細径光ファイバを前記フェルールに固定して構成され、かつ、前記フェルールに挿入される前記細径光ファイバの先端部に、コア径を拡大したコア径拡大部を形成したマルチコアインターフェイスである。
【0018】
前記コア径拡大部は、前記細径光ファイバの先端部を加熱処理することにより形成され、先端に向かって拡径するテーパ状に形成されてもよい。
【0019】
前記コア径拡大部は、前記細径光ファイバの先端に、前記マルチコアファイバのコア径と前記細径光ファイバの先端のコア径との中間のコア径に形成された中間光ファイバを融着接続して形成されてもよい。
【0020】
前記細径光ファイバは、コアのクラッドに対する比屈折率差が0.4%より大きいとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、細径光ファイバのコアのクラッドに対する比屈折率差を高くしても、マルチコアファイバとの接続部での接続損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態に係るマルチコアインターフェイスの側断面図であり、(b)はその1B−1B線断面図、(c)は接続対象となるマルチコアファイバの横断面図、(d)は細径光ファイバの横断面図、(e)はマルチコアファイバにマルチコアインターフェイスを接続したときの側面図、(f)はその接続部の拡大断面図、(g)は(f)の1G部の拡大図である。
【図2】図1のマルチコアインターフェイスを用いたマルチコア伝送システムの概略構成図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係るマルチコアインターフェイスを示す図であり、(a)はマルチコアファイバにマルチコアインターフェイスを接続したときの接続部の拡大断面図、(b)はその3B部の拡大図である。
【図4】本発明の一変形例に係るマルチコアインターフェイスの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0024】
図1(a)は本実施の形態に係るマルチコアインターフェイスの側断面図、図1(b)はその1B−1B線断面図、図1(c)は接続対象となるマルチコアファイバの横断面図、図1(d)は細径光ファイバの横断面図、図1(e)はマルチコアファイバにマルチコアインターフェイスを接続したときの側面図、図1(f)はその接続部の拡大断面図、図1(g)は図1(f)の1G部の拡大図である。
【0025】
図1(a)〜(g)に示すように、マルチコアインターフェイス1は、マルチコアファイバ10の端部に接続され、マルチコアファイバ10の複数のコア11に個別に光を入射する、あるいは複数のコア11を伝搬する光を個別に取り出すためのものである。
【0026】
マルチコアファイバ10は、複数のコア11と、複数のコア11の周囲を覆う共通のクラッド12とを有し、複数のコア11の中心が三角格子を形成するよう等間隔に形成されたものである。ここでは、クラッド12の中心に1つのコア11を形成し、かつ、そのコア11の中心を軸とした同軸円上に中心が位置するように6つのコア11を等間隔で形成したマルチコアファイバ10を用いる場合を説明する。これら7つのコア11は、隣り合うコア11の中心同士の間隔(コア間隔)d1が全て等しくなるように形成されている。マルチコアファイバ10のクラッド径D1は、例えば約125μmであり、コア間隔d1は、例えば約42μmである。
【0027】
マルチコアインターフェイス1は、マルチコアファイバ10の7つのコア11に対応した7本の細径光ファイバ2と、細径光ファイバ2を挿入する貫通孔4が形成されたフェルール3と、を有している。なお、ここでは、マルチコアファイバ10の7つのコア11に対応して7本の細径光ファイバ2を用いる場合を説明するが、細径光ファイバ2の本数は、マルチコアファイバ10のコア11の数と同じ本数とする。
【0028】
細径光ファイバ2は、1つのコア2aと、コア2aの周囲を覆うクラッド2bと、クラッド2bを覆う被覆層2cと、を有している。
【0029】
細径光ファイバ2のクラッド2bの外径(クラッド径)d2は、マルチコアファイバ10のコア間隔d1と略等しく形成される。細径光ファイバ2のクラッド径d2は、例えば約42μmである。
【0030】
細径光ファイバ2は、マイクロベンドに起因した伝送損失を抑制し、側圧などの影響を小さくするために、そのコア2aのクラッド2bに対する比屈折率差Δn2が高く設定されている。この比屈折率差Δn2は、細径光ファイバ2の細さ(クラッド径d2)や、要求される伝送損失の特性などに応じて適宜設定すればよく、通常は、φ20mmの曲げを加えた際の伝送損失が1dB/ターン以下となるように設定すれば十分である。
【0031】
より具体的には、本実施の形態のように細径光ファイバ2のクラッド径d2が50μm以下である場合、上述の特性を満足するためには、少なくとも、比屈折率差Δn2を0.4%より大きくする必要がある。マルチコアファイバ10のコア11のクラッド12に対する比屈折率差Δn1は、一般的な値である0.3〜0.4%程度に設定されるので、Δn2>Δn1となる。
【0032】
細径光ファイバ2のコア径は、設定する比屈折率差Δn2に応じて、シングルモード条件を満足するコア径に設定される。比屈折率差Δn2を高くするほど、シングルモード条件を満足するコア径は小さくなるので、細径光ファイバ2のコア径は、マルチコアファイバ10のコア径よりも小さくなる。
【0033】
なお、細径光ファイバ2は、センサなどに応用例が多数報告されており、例えば、クラッド径40μm、被覆層2cとして厚さ6μmのポリイミド樹脂を用いた細径光ファイバ2では、破断強度が約7N、動疲労試験から得られた疲労係数(N値)が約21と、クラッド径125μmの通常の光ファイバと同等の機械的信頼性を有している。
【0034】
マルチコアインターフェイス1は、各細径光ファイバ2の先端部の被覆層2cを除去すると共に、当該被覆層2cを除去した各細径光ファイバ2の先端部を束ねてフェルール3の貫通孔4に挿入し、束ねた各細径光ファイバ2の端面と、フェルール3の端面とを一致させ、各細径光ファイバ2をフェルール3に固定してなる。
【0035】
被覆層2cを除去した7本の細径光ファイバ2の先端部を束ねたときの、その束ねた細径光ファイバ2の外径(最大外径)D2は、マルチコアファイバ10のクラッド径D1と略同じとなるようにされる。細径光ファイバ2のクラッド径d2を約42μmとした場合、束ねた細径光ファイバ2の外径D2は、約126μm(≒125μm)となる。
【0036】
また、細径光ファイバ2の被覆層2cは、10μm以下の厚さに形成されることが望ましい。これは、細径光ファイバ2の先端部を束ねる際に、各細径光ファイバ2の被覆層2cが干渉して、細径光ファイバ2の先端部を束ね難くなることを抑制し、かつ、束ねた細径光ファイバ2の先端部をフェルール3の貫通孔4に挿入した際に、被覆層2cが干渉して細径光ファイバ2に不要な応力がかかり、細径光ファイバ2が破損したり光損失が増加してしまうことを抑制するためである。なお、従来用いられている通常の細径光ファイバは、被覆層が125μm程度と厚く、この細径光ファイバをそのまま本発明に適用すると、細径光ファイバの先端部が束ね難くなり作業性が低下し、貫通孔4に挿入した際に細径光ファイバ2が破損したり光損失の増加を招くおそれがある。
【0037】
本実施の形態では、フェルール3の貫通孔4は、断面視で円形状に形成される。貫通孔4の径は、束ねた細径光ファイバ2の外径D2と略同じに形成される。フェルール3としては、どのような材質のものを用いてもよく、例えば、金属やガラス、あるいは樹脂からなるものを用いてもよい。
【0038】
貫通孔4の細径光ファイバ2の挿入側には、各細径光ファイバ2の先端部後方の被覆層2cを有する部分を収容するための凹溝5が形成され、フェルール3は、各細径光ファイバ2の先端から、被覆層2cを有する部分までを覆うように形成される。
【0039】
本実施の形態では、一定の径の凹溝5を形成したが、細径光ファイバ2を貫通孔4に挿入しやすくするために、凹溝5を貫通孔4側に向かって徐々に縮径するテーパ状に形成してもよい。
【0040】
貫通孔4および凹溝5には、接着剤6が充填され、各細径光ファイバ2とフェルール3とを接着固定するようにされる。接着剤6としては、例えば、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを用いることができる。
【0041】
また、細径光ファイバ2を貫通孔4に挿入しやすくするため、細径光ファイバ2を貫通孔4に挿入するに先立ち、束ねた細径光ファイバ2の先端部に超音波振動を加えて一体化し、一体化した細径光ファイバ2を貫通孔4に挿入するようにしてもよい。
【0042】
束ねた各細径光ファイバ2の端面と、フェルール3の端面とを一致させる際には、束ねた各細径光ファイバ2の先端部をフェルール3の端面から若干突出させた状態で各細径光ファイバ2とフェルール3とを接着固定した後、突出部に研磨加工を施して、各細径光ファイバ2の端面をフェルール3の端面と一致させるとよい。
【0043】
マルチコアファイバ10の端部にマルチコアインターフェイス1を接続する際には、図1(e)に示すように、マルチコアファイバ10の端部にマルチコアファイバ用フェルール14を設け、そのマルチコアファイバ用フェルール14の端面とマルチコアインターフェイス1のフェルール3の端面とを突き合わせて、マルチコアファイバ10の各コア11と各細径光ファイバ2のコア2aとを光結合させるようにすればよい。このとき、両フェルール14,3間には、コア11,2aと同等の屈折率を有する屈折率整合剤を介在させ、接続部における光損失を低減させることが望ましい。
【0044】
さて、上述のように、本実施の形態に係るマルチコアインターフェイス1では、細径光ファイバ2の比屈折率差Δn2を高く設定しており、シングルモード条件を満足するためにコア径が小さく形成されている。そのため、細径光ファイバ2のMFDがマルチコアファイバ10のMFDよりも小さくなり、このまま両者を接続すると、MFDの差に起因して接続部での接続損失が大きくなってしまう。
【0045】
そこで、本実施の形態に係るマルチコアインターフェイス1では、図1(f),(g)に示すように、フェルール3に挿入される細径光ファイバ2の先端部に、コア径を拡大したコア径拡大部13を形成している。コア径拡大部13を形成することで、細径光ファイバ2の先端部におけるMFDを拡大して、接続部でのMFDの差を小さくして(あるいは両者のMFDを略一致させて)、MFDの差に起因する接続損失を低減することが可能になる。
【0046】
本実施の形態では、細径光ファイバ2の先端部を加熱処理することで、コア2aに添加されているドーパントをクラッド2b側に拡散させるTEC(Thermal Expanded Core、コア径拡大法)により、先端に向かって拡径するテーパ状にコア径拡大部13を形成している。TECでは、加熱条件(温度や時間)によりコア径をどの程度拡大するか調整することができるので、細径光ファイバ2の先端部におけるMFDがマルチコアファイバ10のMFDと同等の値となるようにコア径拡大部13を形成することができる。
【0047】
なお、マルチコアファイバ10の7つのコア11は、通常同じコア径に形成されているため、細径光ファイバ2として同じコア径のものを用い、その先端部に同じ加工条件でTECを行い、同じコア形状のコア径拡大部13を形成すればよい。ただし、例えば、マルチコアファイバ10のコア11が異なるコア径に形成されている場合は、光結合されるマルチコアファイバ10のコア11のMFDと略等しくなるように、各細径光ファイバ2の先端部のコア径(TECによる拡径後のコア径)を設定するとよい。
【0048】
次に、本発明のマルチコアインターフェイス1を用いたマルチコア伝送システムについて説明する。ここでは、空間分割多重方式と波長分割多重方式を併用したマルチコア伝送システムについて説明する。
【0049】
図2に示すように、マルチコア伝送システム21は、送信器22と、光増幅器としてのEDFA23a,23bと、受信器24と、を備えており、送信器22とEDFA23aとを、マルチコアファイバ10aとマルチコア分散補償ファイバ(MC−DCF(Multi Core Dispersion Compensating Fiber))25とを介して接続し、かつ、EDFA23aと受信器24の前段に設置されたEDFA23bとを、マルチコアファイバ10bを介して接続したものである。マルチコアファイバ10aとマルチコア分散補償ファイバ25とは、融着接続またはコネクタ接続により接続されている。
【0050】
送信器22とマルチコアファイバ10aとは、マルチコアインターフェイス1aを介して接続されており、マルチコア分散補償ファイバ25とEDFA23aとは、マルチコアインターフェイス1bを介して接続されている。また、EDFA23aとマルチコアファイバ10bとは、マルチコアインターフェイス1cを介して接続されており、マルチコアファイバ10bと受信器24の前段に設置されたEDFA23bとは、マルチコアインターフェイス1dを介して接続されている。これらマルチコアインターフェイス1a〜1dは、全て本発明のマルチコアインターフェイスである。
【0051】
送信器22は、異なる波長の光を発光するn個のLD(Laser Diode)22aと、その各LD22aからの光を合波するAWG(Arrayed Waveguide Grating、アレイ導波路回折格子)22bとを有する送信部22cを複数備えている。なお、図2では、図の簡略化のため、送信部22cの数を3つのみ記載しているが、送信部22cの数は、マルチコアファイバ10a、10bのコア11と同数とされる。
【0052】
各送信部22cのAWG22bから伸びる光ファイバは、マルチコアインターフェイス1aの細径光ファイバ2と融着接続またはコネクタ接続により接続される。これにより、送信器22の各送信部22cは、マルチコアインターフェイス1aを介して、マルチコアファイバ10aの各コア11とそれぞれ光結合される。
【0053】
マルチコアインターフェイス1bの各細径光ファイバ2は、EDFA23aの入力側から伸びる光ファイバと融着接続またはコネクタ接続により接続される。これにより、マルチコア分散補償ファイバ25の各コアは、マルチコアインターフェイス1bを介して、各EDFA23aと光結合される。なお、マルチコア分散補償ファイバ25のコア径は、一般に、通常のマルチコアファイバ10a,10bのコア径よりも小さくされるため、マルチコアインターフェイス1bの各細径光ファイバ2のコア径(コア径拡大部13の拡径後のコア径)も、これに対応して小さくされる。
【0054】
EDFA23aの出力側から伸びる光ファイバは、マルチコアインターフェイス1cの細径光ファイバ2と融着接続またはコネクタ接続により接続される。これにより、各EDFA23aは、マルチコアインターフェイス1cを介して、マルチコアファイバ10bの各コア11と光結合される。
【0055】
マルチコアインターフェイス1dの各細径光ファイバ2は、EDFA23bの入力側から伸びる光ファイバと融着接続またはコネクタ接続により接続される。これにより、マルチコアファイバ10bの各コア11は、マルチコアインターフェイス1dを介して、各EDFA23bと光結合される。
【0056】
受信器24は、EDFA23bから出力された光を波長ごとに分波するAWG24bと、AWG24bで分波された光を受光するn個のPD(Photo Diode)24aとを有する受信部24cを複数備えている。各受信部24cは、光ファイバ等を介してEDFA23bと光学的に接続されている。なお、図2では、図の簡略化のため、受信部24cの数を3つとしているが、受信部24cの数は、マルチコアファイバ10a、10bのコア11と同数とされる。
【0057】
マルチコア伝送システム21では、各LD22aで発光した光は、AWG22bで合波され、マルチコアインターフェイス1aを介してマルチコアファイバ10aのコア11に入射する。マルチコアファイバ10aのコアに入射した光は、マルチコアファイバ10a、マルチコア分散補償ファイバ25を通過し、マルチコアインターフェイス1bを介してEDFA23aに入射し、EDFA23aにて増幅される。
【0058】
EDFA23aで増幅された光は、マルチコアインターフェイス1cを介してマルチコアファイバ10bのコア11に入射し、マルチコアファイバ10bを通過し、マルチコアインターフェイス1dを介してEDFA23bに入射する。EDFA23bに入射した光は、EDFA23bにて増幅され、その増幅された光が、受信器24の受信部24cに入射する。受信部24cに入射した光は、AWG24bにて分波され、各PD24aで受光される。
【0059】
このマルチコア伝送システム21では、LD22aとPD24aの数をn個とし、マルチコアファイバ10a、10bのコア数(つまり送信部22cや受信部24c、EDFA23a,23bの数)をm個とすると、n×mチャンネルの光信号を送受信できることとなり、伝送容量を飛躍的に向上させることが可能である。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係るマルチコアインターフェイス1では、フェルール3に挿入される細径光ファイバ2の先端部に、コア径を拡大したコア径拡大部13を形成している。
【0061】
これにより、細径光ファイバ2のコア2aのクラッド2bに対する比屈折率差Δn2を高く設定し、シングルモード条件を満足させるために細径光ファイバ2のコア径を小さくした場合であっても、コア径拡大部13にてコア径を拡大して、マルチコアファイバ10との接続部でのMFDの差を小さくし、MFDの差に起因する接続損失を低減することが可能となる。
【0062】
なお、コア径拡大部13では、コア径が大きくなるために光の閉じ込め効果が小さくなり、曲げ特性(耐マイクロベンド特性)等が劣化してしまうが、本発明においては、このコア径拡大部13はフェルール3に覆われているため、コア径拡大部13に曲げが加わったり外部から大きな負荷が加わったりすることはなく、問題にはならない。
【0063】
また、本実施の形態では、TECによりコア径拡大部13を形成しているため、コア13を先端に向かって拡径するテーパ状に形成して、細径光ファイバ2の先端部のコア径をマルチコアファイバ10のコア径と同等の値とし、接続損失をより低減することが可能となる。
【0064】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0065】
図3に示すマルチコアインターフェイス31は、基本的に図1のマルチコアインターフェイス1と同じ構成であるが、コア径拡大部13の構成が異なる。
【0066】
マルチコアインターフェイス31では、細径光ファイバ2の先端に、マルチコアファイバ10のコア径と細径光ファイバ2のコア径との中間のコア径に形成された(つまりマルチコアファイバ10と細径光ファイバ2の中間のMFDの)中間光ファイバ32を融着接続してコア径拡大部13を形成している。なお、ここでは、便宜上細径光ファイバ2と中間光ファイバ32を別部材のように記載しているが、本発明においては、中間光ファイバ32を細径光ファイバ2の一部として扱う。
【0067】
マルチコアインターフェイス31では、中間光ファイバ32が、細径光ファイバ2とマルチコアファイバ10のMFDの差を緩和する役割を果たすので、細径光ファイバ2とマルチコアファイバ10とを直接接続した場合と比較して、接続損失を低減することが可能である。
【0068】
さらに、中間光ファイバ32を細径光ファイバ2に融着接続することにより、細径光ファイバ2のコア2aに融着接続時の熱が加わって自然にTECが行われ、細径光ファイバ2の先端部にコア2aをテーパ状に拡径したテーパ部33が形成されるので、このテーパ部33が中間光ファイバ32と細径光ファイバ2間のMFDの差を緩和して伝送損失をより低減することが可能になる。
【0069】
なお、マルチコアインターフェイス31では、中間光ファイバ32と細径光ファイバ2との接続箇所、中間光ファイバ32とマルチコアファイバ10との接続箇所の2箇所で接続損失が発生するため、上述のマルチコアインターフェイス1と比較して接続損失は大きくなる。
【0070】
よって、上述のTECによるコア径拡大で十分にMFDの差を小さくできない場合に、補助的に中間光ファイバ32を併用することが望ましい。この場合、細径光ファイバ2の先端に、マルチコアファイバ10のコア径と細径光ファイバ2の先端のコア径(つまりTECによる拡径後のコア径)との中間のコア径に形成された中間光ファイバ32を融着接続してコア径拡大部13を形成すればよい。
【0071】
なお、細径光ファイバ2の先端部のコア径をTECにより拡径することに加えて、さらに、中間光ファイバ32の先端部のコア径をTECにより拡径して、2段階のテーパ形状とすることも可能である。また、細径光ファイバ2の先端部にTECを行わず、中間光ファイバ32の先端部のみにTECを行うことも当然に可能である。
【0072】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0073】
例えば、上記実施の形態では、フェルール3の貫通孔4を断面視で円形状に形成したが、これに限らず、図4に示すように、フェルール3の貫通孔4を、断面視で六角形状に形成してもよい。フェルール3の貫通孔4を断面視で六角形状に形成することにより、細径光ファイバ2を整列させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 マルチコアインターフェイス
2 細径光ファイバ
2a コア
2b クラッド
2c 被覆層
3 フェルール
4 貫通孔
5 凹溝
6 接着剤
10 マルチコアファイバ
11 コア
12 クラッド
13 コア径拡大部
14 マルチコアファイバ用フェルール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアと該複数のコアの周囲を覆う共通のクラッドとを有し、前記複数のコアが三角格子を形成するよう等間隔に形成されたマルチコアファイバの端部に接続され、前記複数のコアに個別に光を入射する、あるいは前記複数のコアを伝搬する光を個別に取り出すためのマルチコアインターフェイスであって、
1つのコアと、該コアの周囲を覆うクラッドと、該クラッドを覆う被覆層と、を有し、前記クラッドの外径が、前記マルチコアファイバのコア間隔と等しく形成され、コア径が前記マルチコアファイバのコア径よりも小さく形成された複数の細径光ファイバと、
該複数の細径光ファイバを挿入する貫通孔が形成されたフェルールと、
を有し、
前記複数の細径光ファイバの先端部の前記被覆層を除去すると共に、当該被覆層を除去した前記複数の細径光ファイバの先端部を束ねて前記フェルールの前記貫通孔に挿入し、束ねた前記複数の細径光ファイバの端面と、前記フェルールの端面とを一致させ、前記複数の細径光ファイバを前記フェルールに固定して構成され、
かつ、前記フェルールに挿入される前記細径光ファイバの先端部に、コア径を拡大したコア径拡大部を形成した
ことを特徴とするマルチコアインターフェイス。
【請求項2】
前記コア径拡大部は、前記細径光ファイバの先端部を加熱処理することにより形成され、先端に向かって拡径するテーパ状に形成される
請求項1記載のマルチコアインターフェイス。
【請求項3】
前記コア径拡大部は、前記細径光ファイバの先端に、前記マルチコアファイバのコア径と前記細径光ファイバの先端のコア径との中間のコア径に形成された中間光ファイバを融着接続して形成される
請求項1または2記載のマルチコアインターフェイス。
【請求項4】
前記細径光ファイバは、コアのクラッドに対する比屈折率差が0.4%より大きい
請求項1〜3いずれかに記載のマルチコアインターフェイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−97241(P2013−97241A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241095(P2011−241095)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバ技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】