説明

マルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステム

【課題】 複数のトランスポートストリームを多重化して処理することで発生する、同一トランスポートストリーム内のパケット間隔のジッタを解消する。
【解決手段】 複数のトランスポートストリームを多重化する際に、トランスポートストリームを構成する各パケットにトランスポートストリームIDとローカルタイムスタンプを付加し、多重化されたマルチストリームを処理後に分離する際に、トランスポートストリームを構成するパケットを一旦バッファに格納し、トランスポートストリームID及びローカルタイムスタンプから計算されるタイミングによって、元のトランスポートストリームのパケット間隔を再現することによって、ジッタを解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のトランスポートストリームを多重化したマルチストリームを処理後に、多重化される前のトランスポートストリームに分離するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシステムは、例えば、CableLabが規定する規格OC−SP−CCIF2.0に規定されるもので、多重化する際に、元のトランスポートストリームの前にヘッダを設けて、そのヘッダ内に、元のトランスポートストリームを再構築するために必要な情報を付加するものである。(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】US2004−0260823 A1
【非特許文献1】http://www.opencable.com/downloads/specs/OC−SP−MC−IF−C01−050331.pdf“OpenCable Specifications Multi−Stream CableCard Interface OC−SP−MC−IF−C01−050331”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシステムにおいて、元のトランスポートストリームを再構築するための情報を付加する仕組みは用意されているが、具体的にどのようにその情報を使って、元のトランスポートストリームを再構築するかが規定されておらず、多重化して、マルチストリームとして処理した後に、元のトランスポートストリームを構成する各パケット間にジッタが発生した場合に、どのようにそのジッタを解消して、元のトランスポートストリームを再構築するかが課題となっていた。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、マルチストリームからジッタを解消して、トランスポートストリームを再構築することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数のトランスポートストリームを多重化するマルチプレクサと、
前記多重化に際して、トランスポートストリームに固有のIDとタイミング情報に対応したローカルタイムスタンプを有するヘッダを、前期トランスポートストリームを構成する各パケットに付加する多重化制御装置と、
前記多重化されたトランスポートストリームをパケットごとに分離し、トランスポートストリームを再構築するデマルチプレクサと、
前期分離されたパケットごとに一時的にデータを格納するバッファと、
前記ヘッダが有する前期IDと前記ローカルタイムスタンプをパケットごとに読み出し、このローカルタイムスタンプにしたがった所定のタイミングで前記バッファからパケットを取り出し、同じ前記IDを有するパケットごとにトランスポートストリームを再構築するための制御を行う再構築制御装置と
を具備したマルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
トランスポートストリームの各パケット間隔が多重化される前と分離される直前で異なる場合でも、分離する際に、多重化される前と同じパケット間隔でトランスポートストリームを再構築することで、デコードする際の障害を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるマルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステムのブロック図である。CableLabが提唱するOpenCableに対応したセキュリティモジュールであるマルチストリーム対応CableCARD1は、1系統のストリーム入力しか持たないことから、複数のトランスポートストリームを同時に処理するために、CableCARD1の前段に、複数のトランスポートストリーム入力を1系統のマルチストリームに多重化するマルチプレクサ2が設けられる。多重化に際して、ヘッダにトランスポートストリームIDとローカルタイムスタンプを付加する多重化制御装置3が設けられる。マルチストリームは、CableCARD1において、システムの使用者がサービスを受けられるようにセキュリティの解除等の処理された後、デマルチプレクサ4に送られる。デマルチプレクサ4において、マルチストリームを分離して、元のトランスポートストリームの各パケットの配列に再構築する際に、パケット間隔にギャップやジッタが発生する場合がある。このジッタを解消するために、デマルチプレクサにバッファ5を設けて、分離したパケットを一時的に保管する。分離および再構築を制御する再構築制御装置6では、マルチストリーム内の各パケットのヘッダから、トランスポートストリームIDとローカルタイムスタンプを取り出す。そして、その情報を基に、マルチプレクサ2で多重化される前の各トランスポートストリームのパケット間の時間間隔と同じ時間間隔でバッファ5からパケットを取り出し、後段へ送る。これによって、再構築されるトランスポートストリームの各パケット間隔は、多重化される前と同じ時間間隔とすることができる。これによって、デコードの際にパケット間隔が開くことによって、各データ間隔がエンコード時に付加されるデコード用のタイプスタンプの間隔以上に開いて、デコードに与える障害を解消することができる。
【0009】
図2、及び図3は、それぞれトランスポートストリームA、Bの構成を示す図である。図2において、トランスポートストリームAは、第1のパケット7、第2のパケット8、第3のパケット9、第4のパケット10、第5のパケット11のように、固定長の複数のパケットから構成される。同様に、図3において、トランスポートストリームBは、第1のパケット12、第2のパケット13、第3のパケット14、第4のパケット15、第5のパケット16のように、固定長の複数のパケットから構成される。
【0010】
図4は、図2と図3のトランスポートストリームAとBが、マルチプレクサ2で多重化された後のマルチストリームの構成を示す図である。各々のパケットが処理される順に多重化されるが、その際に、多重化制御装置3によってヘッダが付加される。付加されるヘッダにはどのトランスポートストリームのパケットかを判別するためのトランスポートストリームIDが含まれる。又、付加されるヘッダには、多重化される前のトランスポートストリームの各パケット間隔の情報、例えば、各パケットがマルチプレクサに入力された時間を示すローカルタイムスタンプが含まれる。
【0011】
同じトランスポートストリームAのパケットであるパケット7、パケット8、パケット9、パケット10、パケット11には、同じトランスポートストリームIDが付加されるため、例えば、ヘッダ17とヘッダ19には0xAAが付加される。又、もうひとつのトランスポートストリームBのパケット12、パケット13、パケット14、パケット15、パケット16には、別のトランスポートストリームIDが付加されるため、例えば、ヘッダ18とヘッダ20には0xBBが付加される。
【0012】
ローカルタイムスタンプは、各々のパケットがマルチプレクサに入力された時間が付加されるので、例えば、ヘッダ17には0x00000001、ヘッダ18には0x00000005、ヘッダ19には0x0000000B、ヘッダ20には0x0000002Dが付加される。
【0013】
デマルチプレクサ4では、前記マルチストリームを分離して、元のトランスポートストリームの配列を再構築する。デマルチプレクサ4に到着するパケットの並びにおいては、多重化前に連続していたパケット間に異なるトランスポートストリームのパケットが挿入されているため、多重化される前のパケット間隔が失われている。又、CableCARD1での各トランスポートストリームのパケット処理時間に差がある場合や、選局動作によって、一部のトンラスポートストリームのパケットが途切れたり、新たなトランスポートストリームのパケットが追加されることを想定すると、デマルチプレクサ4に到着するパケットの間隔にはばらつきが生じ、これがジッタとなる。
【0014】
これを解消するために、分離を制御する装置6では、到着したパケットのヘッダからトランスポートストリームIDとローカルタイムスタンプを取り出し、パケットを一旦バッファに格納する。分離を制御する装置6は、最初に到着したパケットのローカルタイムスタンプを基準として、カウンタを起動する。分離を制御する装置6は、トランスポートストリームIDによって、各パケットをどのトランスポートストリームとして再構築するかを判断し、かつ、分離および再構築を制御する再構築制御装置6が持つオフセット時間を到着したパケットのローカルタイムスタンプに足し、その合計時間が、カウンタの値と同期するタイミングで、パケットを後段に出力する。これにより、トランスポートストリームは、元のパケット間隔で再構築され、後段に出力される。
以上のようにシステムを構成することで、同一プログラムのトランスポートストリームの各パケット間隔が多重化される前と分離される直前で異なる場合でも、分離する際に、多重化される前と同じパケット間隔でトランスポートストリームを再構築するが可能となり、デコードする際の障害を防止、あるいは大幅に低減することができる。
【0015】
実施の形態2
分離および再構築を制御する再構築制御装置6において、オフセット時間を使用者が設定できるようにレジスタ設定を設けてもよい。これにより、使用者はシステムが持つバッファの容量や、システム内のストリーム伝送の遅延時間等から、最適のオフセット時間を計算して設定できる
【0016】
実施の形態3
また、分離および再構築を制御する再構築制御装置6において、オフセット時間を複数のレジスタに設定できるように設け、マルチプレクサ2へのトランスポートストリームの入力ビットレートに応じて、オフセット時間を切り替え可能となるよう構成してもよい。バッファ5の容量は入力ビットレートとオフセット時間と多重化されるトランスポートストリームの数によって決まるため、入力ビットレートに応じてオフセット時間の切り替えができれば、バッファの容量を最小限に設定できる。
【0017】
実施の形態4
また、分離および再構築を制御する再構築制御装置6において、オフセット時間を複数のレジスタに設定できるように設け、マルチプレクサ2からのトランスポートストリームの出力ビットレートに応じて、オフセット時間を切り替え可能となるよう構成してもよい。マルチプレクサ2からのトランスポートストリームの出力ビットレートが可変の場合は、バッファ5の容量は更にマルチプレクサ2からのトランスポート出力のビットレートによっても変わるため、マルチプレクサ2からのトランスポートストリームの出力ビットレートに応じてオフセット時間の切り替えができれば、バッファの容量を最小限に設定できる。
【0018】
実施の形態5
また、分離および再構築を制御する再構築制御装置6において、オフセット時間を複数のレジスタに設定できるように設け、多重化されるトランスポートストリームの数に応じて、オフセット時間のデータを切り替え可能となるよう構成してもよい。バッファ5の容量は入力ビットレートとオフセット時間と多重化されるトランスポートストリームの数によって決まるため、多重化されるトランスポートストリームの数に応じてオフセット時間の切り替えができれば、バッファの容量を最小限に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るマルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステムのブロック図である。
【図2】本発明に係るトランスポートストリームAの構成を示す図である。
【図3】本発明に係るトランスポートストリームBの構成を示す図である。
【図4】本発明に係るマルチプレクサで多重化後のマルチストリームの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
2 マルチプレクサ、3 多重化制御装置、4 デマルチプレクサ、5 バッファ、6 再構築制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランスポートストリームを多重化するマルチプレクサと、
前記多重化に際して、トランスポートストリームに固有のIDとタイミング情報に対応したローカルタイムスタンプを有するヘッダを、前期トランスポートストリームを構成する各パケットに付加する多重化制御装置と、
前記多重化されたトランスポートストリームをパケットごとに分離し、トランスポートストリームを再構築するデマルチプレクサと、
前期分離されたパケットごとに一時的にデータを格納するバッファと、
前記ヘッダが有する前期IDと前記ローカルタイムスタンプをパケットごとに読み出し、このローカルタイムスタンプにしたがった所定のタイミングで前記バッファからパケットを取り出し、同じ前記IDを有するパケットごとにトランスポートストリームを再構築するための制御を行う再構築制御装置と
を具備することを特徴とするマルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステム。
【請求項2】
前記再構築制御装置は、オフセット時間設定機能を有し、最初にデマルチプレクサに到着したパケットのヘッダが有するローカルタイムスタンプが示す時間を基準とし、各パケットのヘッダが有するローカルタイムスタンプが示す時間に前記オフセット時間設定機能により定めたオフセット時間を加えた時間と一致するタイミングで、前記バッファから対応するパケットを取り出すことを特徴とする請求項1に記載のマルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステム。
【請求項3】
前記オフセット時間設定機能は、複数のオフセット時間が設定可能であり、前記マルチプレクサに入力される前記トランスポートストリームのビットレートに応じて、オフセット時間を切り替えることができることを特徴とした請求項2に記載のマルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステム。
【請求項4】
前記オフセット時間設定機能は、複数のオフセット時間が設定可能であり、マルチプレクサから出力されるトランスポートストリームのビットレートに応じて、オフセット時間を切り替えることができることを特徴とした請求項2に記載のマルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステム。
【請求項5】
前記オフセット時間設定機能は、複数のオフセット時間が設定可能であり、多重化されるトランスポートストリームの数に応じて、オフセット時間を切り替えることができることを特徴とした請求項2に記載のマルチストリーム対応マルチプレクサ及びデマルチプレクサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−5374(P2008−5374A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174888(P2006−174888)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】