説明

マルチチャンバ型ポンプ−バルブ装置

【課題】液体試料を多様な化学処理の1つ以上にかけるために利用可能な装置が必要とされる。さらに自動化可能なあるいは高スループット解析での使用に適した装置が必要とされる。
【解決手段】本明細書には化学プロセス、検出あるいは解析を行うマルチチャンバ型ポンプ−バルブ装置(300)が記載されている。この装置は1つ以上の通路を介して互いに流体連通する可変容量を有する複数のチャンバを含む。2つ以上のチャンバの容量を変化させるだけでこの装置を介して液体を方向付けることができる。この装置内で液体を移動させる方式が単純であるにもかかわらず、この装置を用いて複雑な化学処理シーケンスを行うことができる。複数の装置をより大型の装置に組み込むことができるため、複数の化学処理動作を並行してほぼ同時に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現代化学(生化学を含む)の実践には液体試料の処理のための数々の技術、すなわち混合、反応、濾過、透析、合成、分画、検出、触媒作用(酵素による触媒作用を含む)反応、様々な分離の実施等が伴う。
【0002】
例えば、1つ以上の溶質を濃縮して解析、検出さらに処理等を行うために液体試料から溶剤を除去することが望ましい場合がある。また各々が1つ以上の対象となる溶質の解析、検出さらなる処理を妨害する恐れのある高分子溶質を始めとする溶質あるいは低分子量イオンを除去することが望ましい場合がある。これは生体から生体分子の複合混合物を得ることができる生化学実践において、特に特定の化学種の存在が混合物内の他の溶質の検出、解析あるいはさらなる処理を妨害する恐れがある場合に特に当てはまる。
【0003】
様々な化学的分離を行うために標準的なクロマトグラフィ法が有用である場合がある。さらに、吸着あるいは反応媒質をピペットチップなどの構造体内に現場成形した改良クロマトグラフィ法を用いてマイクロリットル量の試料に対して化学的分離を行ってもよい。標準的なクロマトグラフィ法とは対照的に、このような改良マイクロリットル量クロマトグラフィ方法は試料を吸着あるいは反応媒質を介する多数パスにかける装置を含むことが可能なため、試料が媒質の吸着あるいは反応容量を飽和させない限り化学的分離が進行する機会を多くすることができる。しかしこのような装置は、より大量の例えばミリリットルあるいは数ミリリットル量の試料における化学的分離には便利ではない場合もある。
【0004】
あるクロマトグラフィシステムは溶剤を複数のクロマトグラフィ・カラムへ供給するために複数のポンプを含んでいる。各ポンプは可動ピストン、流入バルブおよび流出バルブを備えたチャンバ含んでいる。チャンバからピストンを引き抜くと各チャンバ内に真空が生じ、流入バルブを介してチャンバ内へ溶剤を引き込む。所望送達量の溶剤が各チャンバ内に引き込まれた時、ピストンをチャンバ内へ押し戻すことにより、流出バルブを介してクロマトグラフィ・カラム内へ溶剤を押し込むことができる。ピストンは空気圧あるいは油圧システムを用いて一斉に駆動することができる。
【0005】
連続クロマトグラフィ用に設計された装置には、1つ以上の不要な化学種を枯渇させることにより液体試料を処理する目的に有用であるように改造されたものもある。このような改造では、クロマトグラフィ・カラムを所望の枯渇処理を行うために選択された物質、例えば機能的固体支持体を含む要素と交換する。処理が必要な試料を緩衝液流内へ導入することにより、試料から枯渇させるべき化学種を枯渇要素と相互作用させることができる。このような装置は一方が液体試料を収容し、もう一方がカラムをなす少なくとも2つの貯槽を含む場合がある。このような装置では第2の緩衝液を用いて分離種を枯渇要素から溶出することができるため、枯渇要素を1つ以上の後続試料を処理するために用いてもよい。
【0006】
代替的には不要な化学種を液体試料から枯渇させるためにはある種のバッチ処理が周知である。このような処理では小型のチャンバが、液体試料から不要な化学種の少なくとも一部分を好適に枯渇すなわち除去するために選択された枯渇物質を含む物品を含んでもよい。試料が例えば低速度遠心分離あるいはシリンジ・プランジャ圧力を利用してチャンバを介して流されることにより、枯渇物質が不要な化学種を試料から除去することができる。完全な枯渇のためには、試料を2回以上枯渇物質に通す必要があるため、オペレータは部分的に枯渇された試料を回収して再度このプロセスにかけなければならない。
【0007】
他のある種の装置はピペットで移すことなく核酸を試料から抽出するように設計されている。この試料および溶解緩衝液を、狭い通路を介して相互連結されたシリンジなどの容器に事前分配する。この試料および溶解緩衝液は、試料および緩衝液混合物を1つの容器から他の容器へ往復移動させることにより混合することができる。容器のうちの1つは例えば核酸を試料および緩衝液混合物から抽出するための抽出マトリックスを含むことができる。混合物を繰返し移動させることが、完全な混合を確実なものにするとともにマトリックスによって核酸が混合物から抽出される機会を多く提供する。
【0008】
数多くのクロマトグラフィによる装置および手順の有用性は限定的な場合があり、すなわちこのような装置は自動的に多数の緩衝液、溶液および/または試薬を含む化学合成、高スループット解析、あるいは処理シーケンスを行うのには適していない場合があるとともに、分離化学種が比較的大量の溶出緩衝液に溶出される場合があり、その溶出化学種を後続の解析あるいはさらなる処理に用いる前に濃縮工程が必要になる。
【0009】
液体試料内の1つ以上の特定の化学種の検出および解析には数多くの標準的な手順がある。多くの場合このような手順は、実際の検出あるいは解析工程に先立って試料をある種の準備工程にかけることが必要である。ある場合には試料準備に手間がかかることがある。またある場合には試料準備が検出あるいは解析方法と適合しない、例えば試料準備および解析方法に用いられる緩衝液のpHが異なり適合しないことがある。このような場合には、所望の検出あるいは解析試験を行う前に、調製試料の1つ以上の化学的性質(例えば、pH、濃度等)を手作業で調節しなければならないことがある。その結果プロセス全体の効率が低下して、使用されている装置およびプロセスが試料の高スループット解析に適さなくなってしまう恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、液体試料を多様な化学処理の1つ以上にかけるために利用可能な装置が必要とされる。さらに自動化可能なあるいは高スループット解析での使用に適した装置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は汎用性が高く、液体試料を1つ以上の多様な化学処理操作にかけるのに用いることができる装置を提供する。本発明による装置の様々な実施形態は、高スループット化学処理、多工程化学処理、被分析物検出、試料調製、化学分離等、さらに上記の任意の2つ以上の組み合わせを行う能力を提供することができる。
【0012】
このため本発明は、可変容量を有する第1のチャンバと、可変容量を有する第2のチャンバと、可変容量を有する第3のチャンバと、各々1つ以上のチャンバと係合した1つ以上の通路を含み、上記第1のチャンバ、上記第2のチャンバ、上記第3のチャンバ間に流体連通を提供する相互連結部と、上記第1のチャンバ、上記第2のチャンバ、上記第3のチャンバ、あるいは上記相互連結部の少なくとも1つの通路のうちの少なくとも1つに含まれた処理物質とを含み、2つ以上のチャンバの可変容量を変化させることにより上記装置を介する上記液体試料の移動を制御するように構成されている液体試料を処理する装置を提供する。
【0013】
ある実施形態ではシリンジまたはブラダが可変容量チャンバを提供してもよい。この装置は、1つ以上の検出要素、温度調節要素あるいは1つ以上のチャンバの容量を調節する作動装置などの追加要素を含んでもよい。プログラム可能なマイクロプロセッサなどの制御要素によりこのような追加要素を制御してもよい。
【0014】
他の態様において本発明は、複数のユニットであって、各ユニットが、可変容量を有する第1のチャンバと、可変容量を有する第2のチャンバと、可変容量を有する第3のチャンバと、各々1つ以上のチャンバと係合した1つ以上の通路を含み、上記チャンバ間に流体連通を提供する相互連結部と、上記第1のチャンバ、上記第2のチャンバ、上記第3のチャンバあるいは上記相互連結部の一部分のうちの少なくとも1つに含まれた処理物質とを含むユニットと、2つ以上の第1のチャンバに接続された、上記複数の第1のチャンバ容量を調節する作動装置と、2つ以上の第2のチャンバに接続された、上記複数の第2のチャンバ容量を調節する作動装置と、2つ以上の第3のチャンバに接続された、上記複数の第3のチャンバ容量を調節する作動装置とを含む複数の液体試料をほぼ同時に処理する装置を提供する。
【0015】
本発明の様々な他の特徴と利点とは、以下の詳細な説明、実施例、請求の範囲および添付の図面を参照することにより容易に明らかになるであろう。明細書全体の各所において、実施例の一覧により指針が提供されている。各例において列挙した一覧は単に代表する群としての目的を果たすのみであり、限定的一覧として解釈されるべきものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ゲノミクスおよびプロテオミクスの分野は、現代化学および生化学処理システムに難題を投げかけている。ゲノミクスの場合はヌクレオチド、またプロテオミクスの場合はタンパク質の検出および/または解析には高スループットの多工程処理が望ましい。一態様において、本発明は液体試料に多様な化学プロセスを行うのに適した装置を提供する。本明細書で使用するように、液体試料とは未処理液体試料、例えば装置内に最初に装填される液体試料を指す。代替的には、液体試料という用語は任意の部分的に処理された試料、a)多工程処理シーケンス中の予定した複数の処理工程より少ないものを施した試料、あるいはb)例えば試料の残りの部分を一時的にあるいは永久的に残しつつ合計試料量の一部のみに特定の処理を施した場合には処理した試料のその部分、のいずれかを含む場合がある。
【0017】
他の態様において、本発明は液体試料に多数の化学プロセス、例えば多数試料調製プロセス、検出プロセス、解析プロセス、あるいはそのようなプロセスの2つ以上の任意の組み合わせを行うシステムを提供する。さらに他の態様において、本発明は複数の液体試料を1つ以上の化学プロセスにかけることにより高スループット有用性を達成できるシステムを提供する。試料を並行して、ほぼ同時に、あるいはその両方で処理してもよい。
【0018】
本発明による装置は、1つ以上の液体試料に1つ以上の化学プロセスを行うことにより1つ以上の液体試料を処理するのに適している。適当な化学プロセスには混合、反応、濾過、透析、合成、分画、検出、触媒作用(酵素による触媒作用を含む)反応、様々な分離の実施、およびこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。
【0019】
この装置は概して可変容量を有する複数のチャンバを含む。本明細書で使用するように、チャンバという用語は内容量を少なくとも部分的に規定する任意の構造形状を指すことがある。このように使用する場合、チャンバという用語はシリンジあるいはブラダなどの内容量を少なくとも部分的に規定する構造を含む。このため装置の他の要素をチャンバの一部分に取り付けてもよい。またチャンバを用いて例えばシリンジ、ブラダ、カートリッジ等の可変内容量を指すこともある。
【0020】
本発明の装置のある実施形態ではチャンバを逆に装置から取り外してもよい。このため任意の所望程度まで空になった使用済み試料チャンバを、オフライン状態で所望程度充填された交換試料チャンバと交換することにより、試料を程度の差こそあれ連続的に供給することができる。
【0021】
本発明のある実施形態は可変容量チャンバとして使い捨てシリンジなどの使い捨て要素を含む場合もある。このような使い捨て可変容量チャンバを有する装置は、このような安価な使い捨て要素を使用可能な化学処理シーケンスの実施コストを削減することができる。
【0022】
これらのチャンバは、チャンバと1つ以上の通路との間に流体連通を提供する相互連結部を介して互いに流体連通している。この相互連結部をチャンバ間に1つ以上の管路あるいは通路を提供することができる任意の適当な材料で構成することができる。相互連結部を使い捨てにできる安価な材料で構成してもよい。このように使い捨ての可変容量要素との組み合わせにより、本発明の装置は一連のモジュール式の使い捨て要素を含んでもよく、これにより装置を迅速に再構成して異なる化学プロセス処理を行うことができる。
【0023】
相互連結部は通路としてその中心を通る1つの中心ボアを含む場合がある。代替的には相互連結部は複数の通路を含む場合がある。例えば2つの端部を有する相互連結部は、第1の端部では流体連通しているが、それらの長さに沿って互いに流体絶縁するとともに、各通路が第2の端部で異なるチャンバと流体連通している、2つの別個の終端間通路を含む場合がある。複数のチャンバがある場合には、複数のチャンバ間に任意の所望レベルの流体連通を提供するために、相互連結部を分岐させても分岐させなくてもよい。
【0024】
本発明の汎用性は一部には処理物質を選択することにより提供される。本明細書で使用するように、処理物質は液体試料の化学処理を例えば上記に列挙した化学プロセスの1つ以上により促進する任意の物質である。適当な処理物質には反応物、緩衝液、フィルタ、膜、ビーズ、サイズ排除媒質、機能的固体支持体、触媒(酵素を含む)、マーカー、親和性試薬、およびこれらの組み合わせがあるが、これに限定されない。処理物質を任意の適当な形状で提供してもよい。例えば、処理物質を通路あるいはチャンバ内の内腔の少なくとも一部分を占める充填材として提供してもよい。代替的にはある種の処理物質を通路あるいはチャンバの表面の被膜として提供してもよい。
【0025】
処理物質を液体試料の少なくとも一部分と接触することができる装置の任意の部分に配置することにより、処理物質が所望の処理を行う機会を提供してもよい。処理物質の適当な位置は任意のチャンバ、1つ以上の通路を含む相互連結部の任意の部分、およびこれらの任意の組み合わせを含むが、これに限定されない。
【0026】
装置は処理物質を配置するための複数の可能な位置を有するため、2つ以上の処理物質を提供する装置を設計することができる。2つ以上の処理物質を提供する場合、それらを装置内に共に配置してもよく、代替的には装置内で2つ以上の位置に提供してもよい。一実施形態では、例えば機能的支持体を相互連結部に提供するとともに、溶出緩衝液をチャンバのうちの1つに提供する。このように本発明の装置を1つの液体試料に対して複数の化学処理を行うように設計してもよい。
【0027】
他の実施形態では、1つの処理物質を通路の内腔表面の被膜として提供するとともに、第2の処理物質を通路の容量の一部分を占める充填材として提供してもよい。代替的には通路を2つの処理物質の混合物で充填あるいは被覆してもよい。このように1つの試料を2つの処理物質の各々によりほぼ同時に処理してもよい。さらに他の実施形態では、2本の通路を備えた相互連結部を有する装置が各通路に異なる処理物質を含んでもよい。このようにして1つの試料に対して2つの異なる化学処理を行うことができる。この2つの処理を並行して、ほぼ同時に、あるいはその両方で行ってもよい。
【0028】
上述のように相互連結部が複数の通路を含む本発明の一実施形態では、各通路が複数の通路のうちの他のものとは異なる処理物質を含んでもよい。例えば第1の端部では流体連通しているが、それ以外は互いに流体絶縁するとともに、第2の端部で異なるチャンバと流体連通している2つの別個の終端間通路を有する相互連結部は、その2つの通路内に異なる処理物質を含んでもよい。このような相互連結部は、第1の端部から第2の端部へ液体を移動することにより用いられる場合、試料を分割して2つの異なる化学処理をその分割試料に提供することができる。このような相互連結部は、第2の端部から第1の端部へ液体を移動することにより用いられる場合、試薬などの異なる化学処理を別々に受けた2つの溶液を化合することを可能にする。代替的には同じ処理物質を各通路に提供して、類似の化学処理を別々に受けた2つの溶液を化合することができるようにしてもよい。他の実施形態では相互連結部が3つ以上の通路を含んでもよい。
【0029】
本発明の他の特徴は、以下にさらに詳細に説明するように、液体、例えば試料、緩衝液、反応物、あるいは洗浄溶液を、1つ以上のチャンバの容量の協調制御いわゆる「受動的弁調節」により、装置を介して方向付けることである。このため選択チャンバの容量を制御するだけで、個別シーケンスで装置を介して液体の流れを方向付けることができる。複数の処理物質を設けた装置では、所望のシーケンスで装置を介して液体を選択的に方向付けることにより試料に多数の連続処理を施すことができる。本発明による装置は1つ以上の逆止弁あるいは他の機械的あるいは電子的制御弁を含んでもよい。しかし受動的弁調節は安価であるとともに故障が少なくなる。
【0030】
試料あるいは処理物質のいずれかは、液体であることが好ましい場合には、多数の化学処理を行うために装置を介して方向付けられた液体でもよい。すなわち処理物質が液体である場合には、処理プロセス中の適当な時に試料に接触するように方向付けることができる。代替的には処理プロセス中の適当な時に所望の処理物質に接触するように試料を方向付けてもよい。多工程の処理シーケンスは、液体試料、処理物質、それらの混合物、あるいは上記の任意の好適な組み合わせの方向付けを任意に適当に組み合わせて用いることにより所望の化学処理を行うことができる。一般には、装置を介して液体の流れを制御する能力により提供される汎用性のため、任意の所望の処理シーケンスを設計および/または選択することができる。
【0031】
本発明の他の特徴は、装置が相互連結部に同時に接続された任意の数のチャンバを含むことができることである。このため装置を複合処理シーケンス用に所望の材料を事前装填した追加チャンバを提供するように設計するだけで、本発明を用いて多数の反応物、緩衝液、洗浄液等を含む複合処理を行うことができる。このようにして、多工程の処理シーケンスの後続工程用の処理物質を提供するためにチャンバを取り外して交換する必要なく、多工程の化学処理シーケンスを行うことができる。本発明の装置のこの実施形態は、ゲノミクスあるいはプロテオミクス解析用の試料調製に望ましいもののような自動化、高スループット化学プロセス・シーケンスを行うのに特に適している。
【0032】
しかしある実施形態では、装置内でチャンバは可逆的に交換可能でもよい。すなわち装置は可逆的密封可能孔を含んでもよく、これを介して1つのチャンバと装置の残りの部分との間の流体連通が確立できる。このためチャンバの内容物、例えば洗浄緩衝液をそのチャンバから装置の残りの部分に所望程度分配することができる。この使用済みチャンバを取り外してプロセス・シーケンス内の後続工程に望ましい内容物、例えば反応物や他の洗浄緩衝液を含む他のチャンバと交換することができる。
【0033】
また本発明による装置は、化学処理プロセスの特定の工程を容易にするために選択された1つ以上の追加要素を含んでもよい。例えば、装置は処理済みあるいは未処理試料の少なくとも一部分を検出するように設計された1つ以上の検出要素を含んでもよい。適当な検出要素には分光光度検出器、蛍光検出器、pH検出器、導電率検出器、あるいは屈折率検出器があるが、これに限定されない。このような検出要素は装置に一体に組み込まれていてもよく、あるいは装置自体の外部であるが、装置と共に用いるのに適合した要素でもよい。検出要素は相互連結部あるいは1つ以上のチャンバ内の1つ以上の化学種の検出に適合していてもよい。
【0034】
本発明の装置と共に用いることができる追加要素の他の例は温度調節要素である。このような要素は相互連結部あるいは1つ以上のチャンバ内の温度を調節して、化学処理シーケンスの特定の工程の進行を少なくとも部分的に制御することができる。例えば、あるタイプの反応や他の化学相互作用の速度を、このような工程が行われる温度を制御することにより少なくとも部分的に制御することができる。
【0035】
加えて、以下にさらに詳細に説明するように、チャンバの可変容量を制御するためにチャンバに作動装置を取り付けてもよい。
【0036】
検出要素、温度調節要素および作動装置を、制御要素例えばプログラム可能なマイクロプロセッサにより制御してもよい。このような要素をプログラム可能なマイクロプロセッサなどの制御要素で制御することにより、化学処理工程の複雑なシーケンスを設計し、所望の試料、緩衝液、反応物等を装填し、制御要素を活性化させ、さらにシーケンスを自動的に行わせることができるため、化学処理シーケンスを行う人的コストを削減することができる。
【0037】
本発明による装置は可変容量を有するチャンバを含む。可変容量チャンバは、シリンジなどのピストン状装置、ブラダなどの可撓壁を備えた容器、ベローなどの弾性要素を有する筐体、およびローリング・ダイアフラム装置を始めとする任意の適当な機械的形状で提供することができるが、これに限定されない。本発明の実施形態には、市販の使い捨てシリンジにより可変容量チャンバを提供するように構成することができるものもある。代替的には開口端を有するカートリッジやチャンバ壁により部分的に規定されたチャンバにより可変容量チャンバを提供してもよい。その開口端を介してカートリッジ内に挿入した時にチャンバ壁と共に摺動可能な流体密閉を形成するように嵌合された可動プラグを装備する場合、カートリッジはシリンジとして機能することができる。
【0038】
図1は本発明と共に可変容量チャンバを提供するのに適したカートリッジ20の平面図を示す。カートリッジ20は開放端26と、ほぼ開放端26と対向するカートリッジ本体24の端部に隔壁22とを含むカートリッジ本体24を含んでもよい。可動プラグ28をカートリッジ20内に配置することにより、可変容量チャンバ30を少なくとも部分的に規定することができる。ある実施形態では装置を使用している間、カートリッジ本体24の壁および隔壁22はほぼ静止状態を保つ。このような実施形態では可変容量チャンバ30の可変性はほぼカートリッジ20内の可動プラグ28位置による。
【0039】
可動プラグ28は、可動プラグ28の位置を制御する手段、さらに可変容量チャンバ30の容量への接続を便利にするためにねじスタッドなどの解除可能接続部32を含んでもよい。単に一例として、プラグロッドを可動プラグ28に接続することにより、カートリッジを可動プラグ28の位置の手動あるいは自動制御に適合させることができる。しかし可動プラグ28の位置を制御するいかなる方法も本発明で用いるのに適している。
【0040】
またカートリッジ20は、可変容量チャンバを提供するように用いられる場合、カートリッジ本体24の内壁に対して可動プラグ28の移動を容易にするために潤滑剤を含んでもよい。この潤滑剤は可動プラグ28の少なくとも一部分、カートリッジ本体24の少なくとも一部分、あるいはその両方と一体の構成要素であっても、あるいはその上に塗布してもよい。カートリッジ20の可変容量チャンバ30内に含まれるようにした材料に対して不活性であるように適当な潤滑剤を選択してもよい。適当な潤滑剤にはシリコーン類、シラン類および炭化水素類があるが、これに限定されない。ある実施形態では隔壁22を、アルミニウムキャップ34などのキャップによりカートリッジ本体24に固定してもよい。
【0041】
以下、図1に図示するとともに上述したカートリッジなどによるカートリッジによって提供される可変容量チャンバを有する装置に関して本発明を説明する。しかし可変容量チャンバを提供する他の機械的形状(ブラダ、ベロー、シリンジの代替形状等など)も、特に明記しない限り本発明での使用に同様に適している。
【0042】
また、試料、試薬、緩衝液等の装填用あるいは回収チャンバとして使用する目的の特定のチャンバの識別表示は便宜上且つ例示のみを目的としたものである。本発明の装置の特徴は、任意の1つのチャンバの特定の機能が、オペレータが監視している処理動作シーケンスにより部分的に判断することができることである。
【0043】
図2は、各々が可変容量を有するチャンバとして機能する4つのカートリッジ101、102、103および104を含む装置100を用いた処理動作シーケンスの一例の概略図を提供する。このような処理動作シーケンスは、液体試料を処理物質と1度だけすなわち1パスで接触させるため、1パスシーケンス・プロトコルとして特徴付けることもできる。相互連結部105は内部通路(図示せず)を介してカートリッジ間の流体連通を提供する。各カートリッジは相互連結部105と係合してチャンバ間の流体連通を維持するようにしてもよい。
【0044】
1パスシーケンス・プロトコルの一例(図2(A))として、カートリッジ101の可変容量チャンバ131に液体試料を満たして、従って試料チャンバとしてもよい。カートリッジ104の可変容量チャンバ134には第2の溶液、例えば洗浄緩衝液を満たしてもよい。カートリッジ102およびカートリッジ103は、図示のようにそれぞれ前方に位置するそれらの可動プラグ117および118でプロトコルを開始することにより、チャンバ132および133の容量を最小限にすることができる。相互連結部105は所定の方法で液体試料と相互作用するように選択された固定化分子などの処理物質160を含むことにより、液体試料の化学処理を提供することができる。
【0045】
図2(B)は1パスプロトコル中の液体試料の移動を図示している。選択カートリッジのプランジャロッドを固定して選択カートリッジのチャンバ内への液体の移動を防止してもよい(例えば図2(B)においてプランジャロッド114および113が固定されている)。プランジャロッド111は、カートリッジ101内の可動プラグ116に接続して示されているが、前進させることにより、チャンバ131の容量を減少させることができる。図2(B)に図示したようにプランジャロッド111を完全に前進させても、あるいは必要に応じて部分的に前進させてもよい。プランジャロッド前進の速度および程度は手動あるいは自動で制御することができる。
【0046】
プランジャロッド111を前進させると、チャンバ131の容量が減少することにより、液体試料をチャンバ131から相互連結部105内へ押し出すとともに処理物質160と接触させる。同時にプランジャロッド112および可動プラグ117をカートリッジ102に対して外側に移動させることにより、チャンバ132の容量を増加させる。このため相互連結部105を通過してそのため処理物質160によって化学的に処理された液体試料の一部分は、チャンバ132に向けられる。処理物質160を介して向けられる液体試料が所望量になるまでプランジャロッド111を前進させてもよい。
【0047】
プランジャロッド112の外側への移動は受動的でもよく、すなわちプランジャロッド113および114が固定されたままの状態でチャンバ131の容量の減少の結果としてチャンバ132に向けられた処理済み試料により外側に押し出されてもよい。代替的にはプランジャロッド112の外側への移動は能動的でもよく、すなわちプランジャロッド112を外側に引っ張ってもよい。プランジャロッド112のこのような能動的な外側への移動を手動あるいは自動で制御することができる。
【0048】
必要な場合には、可動プラグを完全に前進させた時に存在しうる任意の残留容量135を最小限にするように1つ以上の可変容量チャンバを設計してもよい。このように残留容量を最小限にすることで液体試料の使用効率を上昇させることができる。
【0049】
図2(C)は液体試料をチャンバ131から所望の程度分配した後行われる後続処理工程を図示する。以下の説明は洗浄工程である後続の化学処理工程という状況で行う。しかし化学処理動作シーケンスの任意の適当な工程、例えば溶出工程を行ってもよい。従って所望の化学処理工程に適した任意の溶液をチャンバ134に提供してもよい。
【0050】
洗浄工程の場合、洗浄溶液をカートリッジ104の可変容量チャンバ134に供給してもよい。カートリッジ101のプランジャロッド111を固定してチャンバ131への液体の逆流を防止してもよい。プランジャロッド114および可動プラグ119を前進させることにより、洗浄溶液を相互連結部105内に向ける。プランジャロッド111について上述したように、プランジャロッド114の前進を手動あるいは自動で制御することができる。プランジャロッド114が前進している間プランジャロッド113が固定され且つプランジャロッド112が可動のままの場合には、チャンバ134から相互連結部105に進入する洗浄溶液がさらに処理済み試料をチャンバ132に向けることになる。
【0051】
所望量の処理済み試料がチャンバ132内に回収されると、プランジャロッド112が固定されるとともにプランジャロッド113が解放されることにより、プランジャロッド113をカートリッジ103に対して外側に移動させるとともにチャンバ133の容量を増加させることができる。プランジャロッド114を続けて前進させると処理済み試料、洗浄溶液、あるいは両方の混合物をチャンバ133内に向けることができる。プランジャロッド113の外側移動は、プランジャロッド112の外側移動の制御について上述したように受動でも能動でもよい。
【0052】
前述のとおりチャンバ134内に装填された溶液は、洗浄液を提供することに加えてあるいは代わりに1つ以上の機能を提供することができる。例えばチャンバ134内に装填された溶液は、例えば後続試料の処理用の処理物質160を再生、あるいは例えば処理物質160への吸着により液体試料から除去された成分を解放することができる。後者の場合、処理物質160から解放された液体試料の成分をチャンバ133を満たす溶液に回収してもよい。図2に図示した処理動作シーケンスでは、チャンバ132およびチャンバ133は相互連結部105を通過した処理済み溶液を含み、そのうちの一方あるいは両方とも後続の解析、検出あるいはさらなる処理に有用である。
【0053】
図3は図2に図示したような処理動作シーケンスの随意の特徴の概略図を提供する。この随意の特徴により装置は液体試料がマルチパス内で処理物質に接触するマルチパスシーケンス・プロトコルを行うことができる。図3は任意の2つのチャンバ間の液体の移動が可逆であることを図示している。この装置は図2(A)および図2(B)と同様に図3において概略的に図示されている。チャンバ131からチャンバ132への液体試料の移動は、1パスシーケンス・プロトコルで上述したように達成可能である。液体試料が所望程度チャンバ132ヘ向けられた後、流れをチャンバ132から相互連結部105を介してチャンバ131へ戻すように向けることによりこの溶液流を反転することができる。この逆流は、カートリッジ103および104のプランジャロッド113および114をそれぞれ固定した状態で、可動プラグ117に接続されたプランジャロッド112をカートリッジ102内へ前進させることにより達成することができる。またプランジャロッド112の前進は手動でも自動でも制御することができる。さらにまた可動プラグ116の外側への移動は上述したように受動的あるいは能動的に、手動でも自動でも制御することができる。
【0054】
チャンバ131および132の間の流れを往復させることで、相互連結部105および処理物質160を介する1パスを超えるある利点をもたらすことができる。例えば1パスは時には液体試料を所望程度処理するのに十分でない場合がある。図3に図示した循環は液体試料が所望程度処理されるまで多数回行うことができる。
【0055】
チャンバ131および132に関して図示および説明したが、特定の処理動作シーケンスのために必要に応じて任意の2つのチャンバ間の流れを逆流させてもよい。また必要に応じて複数のこのような逆流工程を組み込んだ処理シーケンスを設計してもよい。
【0056】
処理済み試料を任意の適当な可変容量チャンバ、例えばチャンバ132に回収してもよい。ある実施形態では処理済み試料が所望の試料である場合がある。他の実施形態では所望の処理物質を得るために1つ以上の追加処理工程が要求される場合がある。例えば、図2(A)〜2(C)に図示した1パスシーケンス・プロトコルに関して上述したように、所望の物質を得るために洗浄工程あるいは溶出工程などの後続処理工程を行ってもよい。1つのこのようなプロトコルにおいて、チャンバ134内に装填された溶液は処理物質160から1つ以上の所望分子を解放するとともに、適当な可変容量チャンバ、例えばチャンバ133内に回収してもよい。
【0057】
また本発明による装置を用いてさらに複雑な処理動作シーケンスを行ってもよい。例えば試料を相互連結部内の処理物質として選択的濾過膜を一方向へ通過させる(単一あるいはマルチパス)ことにより例えば試料を濾過してもよい。洗浄液を反対方向に向けることにより濾過された材料を回収してもよい。さらなる処理、解析あるいは検出用に濾過液、濾過された材料、あるいはその両方を回収してもよい。
【0058】
また本発明による装置を用いて合成反応を行ってもよい。反応物を気体、固体あるいは液体として1つ以上のチャンバに供給してもよい。反応物を個別に、あるいは少なくとも1つの他の反応物と組み合わせて例えば溶液状、乳液状等で供給してもよい。さらに単に必要な反応物すべてを供給するのに十分な数のチャンバを設けること、あるいは使用済みチャンバを合成の後続工程で使用するために装填されたチャンバと交換することにより、多工程合成を用いて分子を合成してもよい。このような複雑な合成経路は、反応生成物を分離するために濾過あるいは分離などの1つ以上のクリーンアップ工程を含んでもよい。1つ以上の温度調節要素を採用して合成経路の1つ以上の工程で温度を制御してもよい。
【0059】
他の例として、本発明による装置を用いて試料を分画してもよい。多くの画分が必要な場合には、画分を回収する複数の可逆脱着可能チャンバを用いて連続分画を達成することができる。例えば各回収点において処理ユニットに接続された回収チャンバを連続的に満たし、取り外し、そして交換しながら2つの回収点間の試料の流れを交互に変えることにより試料を連続的に分画してもよい。このようにして、特定の回収チャンバが所望程度満たされた時に流れを変えることができるように試料の流れを制御することにより、充満回収チャンバを取り外して新しい回収チャンバと交換しながら画分回収を続けることができる。
【0060】
上述したような1つ以上の異なる種類のプロセスを組み込んだ複雑な化学シーケンスを本発明による装置を用いて行うことができる。さらにまたプログラム可能なマイクロプロセッサなどの制御要素によりこのような装置を制御できるため、このような複雑なシーケンスを必要に応じて自動制御により行うことができる。
【0061】
図4は説明したばかりのプロセスを行うのに適した装置100の一実施形態の拡大斜視図を提供する。装置100の図示の実施形態は、4つのカートリッジ101、102、103および104ならびに4つのプランジャロッド111、112、113および114により提供される複数の可変容量チャンバを含んでいる。相互連結部105は可変容量チャンバ間の流体連通を提供する。この実施形態では、プランジャロッドをすべて装置の一方側から制御できるように相互連結部105は「U」字形状である。対向するチャンバの容量を制御するプランジャロッドの端部を並べて配置できるために、「U」字形状相互連結部105によりプランジャロッドの位置、そのため相互連結部の反対側のチャンバの容量を容易に制御できる。これは、オペレータが装置の長さ越しに手を伸ばすことなく対向チャンバの容量を制御することができるため、プランジャロッドを手動制御している場合には特に有利である。
【0062】
カートリッジ101および104を筐体200に内嵌するように設計する一方、カートリッジ102および103を第2の筐体202に内嵌するように設計することができる。プランジャロッド111、112、113および114をそれぞれカートリッジ101、102、103および104の開放端126に収まるような大きさおよび構成にすることができる。各プランジャロッドは一端に、図5に図示するように可動プラグ128に固定したねじスタッド136を収容するように適合させたねじ204を装備してもよい。また各プランジャロッドは以下にさらに詳細に説明する自動制御装置を係合するようになっている端部206を有してもよい。代替的には装置を手動制御で操作されるように設計する場合には、各プランジャロッドの端部にサムプレートを設けてもよい。
【0063】
装置100は図4に図示したように、特にガラスで構成されている場合などカートリッジが損傷を受けやすい場合、あるいはカートリッジが筐体200および202より長いために追加的な支持が望ましい場合、カートリッジを保護且つ支持する役目を果たす保持器208および210を含んでもよい。保持器208および210がある場合、1つ以上のカートリッジを収容するような大きさおよび形状にしてもよい。保持器208および210はそれぞれ筐体200および202を脱着可能に係合する取り付け手段を含んでもよい。一実施形態では、取り付け手段は手動で取り外し可能であるとともに、保持器を筐体に再度取り付けることができる。保持器は例えば圧入により筐体に接続してもよく、代替的に筐体200の近接端部付近のリップ214上に留まる延出アーム212を有していてもよい。
【0064】
筐体200および202の各々はノズル220を含んでもよい。筐体が複数のカートリッジを収容できる実施形態では、ノズル220は複数の開口を含んでもよい。例えば、図4に図示した実施形態は2つのカートリッジおよび2つの開口222および224を有するノズル220を収容できる筐体を含んでいる。これは図5に図示した実施形態と関連してより詳細に見られ、開口222がチャンバ131に通じるとともに開口224がチャンバ134に通じている。
【0065】
相互連結部105は、各々が筐体のノズル端部を係合するように構成された第1の端部アダプタ230と第2の端部アダプタ232とを含んでもよい。一実施形態では端部アダプタ230および232の各々がノズル220に隣接した捕捉把持部236および238を係合するようになっている基部フランジ234を含んでいる。しかし相互連結部105とチャンバ間の流体密封シールを提供する手段であればよい。
【0066】
図5は本発明による装置100の一実施形態の一部分の断面平面図を提供する。この実施形態では筐体200は一対の穿孔器240を含んでおり、各穿孔器がカートリッジの隔壁22を貫通するように構成されていることにより、各カートリッジ内のチャンバとノズルの対応する開口(222または224)との間の流体連通を提供する。穿孔器240の各々は穿孔器本体242に固定された中空針246を含んでいる。中空針246はカートリッジのチャンバとプレナム248との間の流体連通を提供する。そのため例えばチャンバ131は針246、プレナム248および開口222を介して相互連結部105と流体連通している。O−リング256を穿孔器本体242の周囲に取り付けてプレナム248に対して流体密封シールを提供してもよい。フィンガー・フランジ260を設けて装置の手動操作を容易にしてもよい。
【0067】
本発明による装置を独立した設計にしてもよい。代替的には図6に図示するように、多数の装置をより大型の装置300内の処理ユニット400として組み込んでもよい。装置300を多数の処理ユニット400を支持且つ作動させるように設計することにより、1つの装置300内で多数の液体試料の化学処理を並行して行うことができる。さらに装置300は多数試料の化学処理をほぼ同時に行うように設計してもよい。図6に示した装置は6つの支持且つ作動対象処理ユニット400用であるが、装置300を任意の所望数の処理ユニット400を収容するように設計してもよい。
【0068】
筐体支持ブロック304を基台302に積み重ねてもよい。筐体支持ブロック304は、各ブロックが1つ以上の処理ユニット400を確実に収容且つ支持できるような形状の凹部を内部に形成してもよい。支持ブロック304は、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等を始めとする任意の適当な支持媒体で構成してもよいが、これに限定されない。凹部は支持ブロック304を形成するために使用した特定の材料に適した任意のプロセスにより形成してもよい。例えば、凹部を支持ブロック304内へ型成形あるいは機械成形してもよい。
【0069】
検出要素あるいは温度調節要素がある場合には、支持ブロック304内に組み込んでもあるいは取り付けてもよい。
【0070】
装置300の動作中、図6に示したように任意の適当な手段、例えばボルト308で1つ以上の構造部材310にボルト締めされた捕捉板306によって支持ブロック304を固定してもよい。
【0071】
ある実施形態では、多数の処理ユニット400を支持ブロック304の棚内に支持して、処理ユニット400を容易且つ迅速に棚に係合あるいは解放するようにしてもよい。また可変容量チャンバを有する要素、例えばシリンジあるいはブラダを容易且つ迅速に処理ユニット400に係合あるいは解放するように処理ユニット400を設計してもよい。代替的には支持ブロックの棚を容易且つ迅速に基台302に係合あるいは解放してもよい。
【0072】
装置300の少なくとも一部分が容易且つ迅速に係合あるいは解放される実施形態がある用途に特に有用な場合がある。例えばこのような設計により、別々のチャンバ、例えばシリンジ内の処理試料の画分を回収するとともに、交換回収チャンバを装置300内に挿入して処理試料の連続する中断のない回収を行うことができる。
【0073】
本発明の装置のある実施形態では複数の作動装置があってもよい。これらの作動装置がある場合、処理ユニットに付随するプランジャロッドの制御用に設計してもよい。作動装置を1つ以上の処理ユニットのプランジャロッドの任意の所望レベルの協調制御を提供するように構成してもよい。多数処理ユニットによるプランジャロッドのこのような協調制御により、多数の処理ユニット内の液体の移動を1つの作動装置を制御することによって制御することができる。このため多数の化学処理シーケンスの進行をほぼ同時に制御することができる。
【0074】
図6に示した実施形態は4つの作動装置321、322、323および324を含み、各作動装置は装置内に収容された各処理ユニット内の類似のチャンバの容量を制御するように設計されている。各処理ユニットが任意の数の可変容量チャンバを含み、各可変容量チャンバが作動装置に接続されていてもされていなくてもよいため、本発明による装置300は任意の数の作動装置を含むことができる。
【0075】
多数の試料の化学処理の協調制御が望ましい場合には、各作動装置を各処理ユニットの類似のプランジャロッドを係合するようにしてもよい。例えば、作動装置321を各処理ユニットの試料チャンバのプランジャロッド111と係合させてもよく、作動装置322を各装置の第1の回収チャンバのプランジャロッドに係合させる等してもよい。図6に図示したように、各作動装置はプランジャロッドに脱着可能に接続するための多数の受口326を含んでもよい。受口326はプランジャロッド上の締結構造を補う簡易脱着留め具、例えばボタン端部206を含んでもよい。
【0076】
各作動装置は可逆摺動可能であるため、作動装置に取り付けられた各プランジャロッドの移動および配置を制御することができる。プランジャロッドに取り付けられた可動プラグの配置は、処理ユニット内の液体の流れを少なくとも部分的に方向付ける可変容量チャンバの容量を少なくとも部分的に決定するため、複数の処理ユニットの各々の中での液体の移動の並行制御に作動装置を用いることができる。
【0077】
可逆摺動動作中、作動装置を摺動ロッド328により支持するとともに例えば送りねじ330により駆動してもよい。制御直線動作を発生させる他の方法も可能である。駆動ユニット340内のモータによる回転歯車により送りねじ330を駆動してもよい。また駆動ユニット340は、異なる手順に必要な様々な動作のタイミングのための制御機構を含むことにより、装置300の各処理ユニット400内で行われている化学処理シーケンスの自動制御を提供することができる。このような自動制御は、ゲノムあるいはプロテオミクス解析用の試料調製などの高スループット処理シーケンスを行うために特に有用である。この制御機構はマイクロプロセッサを含んでもよいが、カムフォロワあるいはリレーコントローラなどの代替制御機構も好適である場合がある。
【0078】
各作動装置を制御機構に接続して制御機構が各作動装置を制御できるようにしてもよい。このようにして、装置300内の各処理ユニット400の様々なチャンバの容量を制御機構によって制御することにより、処理ユニット内の1つのチャンバから同じ処理ユニット内の他のチャンバへの液体の移動を制御する。また各作動装置を多数の類似のプランジャロッドに接続して、多数の類似の可動プラグ、従って多数の類似のチャンバの容量を制御することができるため、制御機構は多数の試料の並行処理を同時に制御することができる。
【0079】
簡単にするため、本発明の様々な特徴を別個に説明した。このような説明は本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本発明の特徴の1つは、装置および本発明により行うことができる多様な化学処理により提供される設計の汎用性である。従って、ある特定の実施形態の特徴を他の実施形態の特徴と組み合わせて本発明のさらなる実施形態を得ることができる。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は本発明の特徴、利点および他の詳細をさらに説明するためにのみ選択したものである。しかしこれらの実施例はこの目的を果たすが、特定の使用材料および量も他の条件や詳細も本発明の範囲を必要以上に限定するものではないことを明確に理解されるべきものである。
【0081】
各実施例において、ガラスカートリッジ(ニュージャージー州ヴァインランドのキンブル(Kimble(Vineland,N.J.))から入手可能な長さ80mmおよび内径7mm)を使用して必要に応じて溶液あるいは固体を収容した。ガラスカートリッジは各々開口端部と、その開口端部とほぼ対向する小塊状端部を含んでいた。これらのカートリッジを製造業者の提言に従ってシリコーン処理して(ミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング(Dow Corning(Midland,MI))から入手可能な560メディカル・フルーイド(Medical Fluid))平滑面を提供し、カートリッジ内のプランジャ移動を容易にした。
【0082】
ねじ付き金属ポストを有する可動ゴムプラグ(直径7mm)(イリノイ州アボットパークのアボット(Abbott(Abbott Park,IL))から入手可能)を各ガラスカートリッジの開口端部に挿入した。各ねじ付きポストをプランジャに取り付けて、プラグの位置を外部からに制御できるようにした。
【0083】
あるカートリッジに必要に応じて溶液あるいは固体を装填した。溶液あるいは固体をカートリッジの小塊状端部における開口内に導いた。溶液あるいは固体がカートリッジの小塊状端部の開口と同じ高さになるまでゴムプラグを前進させた。カートリッジの小塊状端部をゴム張りのアルミニウム隔壁キャップ(メリーランド州ソールズベリのウィートン・ファーマテック(Wheaton Pharmatech(Salisbury,MD))から入手可能)を用いて圧着密封した。
【0084】
他のカートリッジを処理済み試料の回収用に充てた。カートリッジ内でプラグをその最先端位置に前進させることにより回収カートリッジを組立てた。上述したようにカートリッジの小塊状端部をゴム張りアルミニウム隔壁キャップを用いて密封した。
【0085】
以下の実施例の各々では、二重筒状シリンジ筐体(2000年3月10日に出願された本発明出願人の同時係属の国際公開第01/67961号パンフレットに記載されている)に上述したように組立てた2つのガラスカートリッジを嵌合させるとともに、ガラスカラムの各々に取り付けることにより、4つのシリンジチャンバ(ガラスカラムの各側に2つ)を有する密閉系を形成した。ガラスカラム(イギリス、ケンブリッジのオムニフィット(Omnifit(Cambridge,England))から入手可能な長さ100mmおよび内径3mm)に充填材を詰めるか流体管路として空で使用した。充填材で充填する場合、カラムを25μmフリット(これもオムニフィット(Omnifit)から入手可能)を含む端部取付具で密封した。カラムの各端部をルアーロック取付具を備えた二重筒状シリンジ筐体に取り付けた。
【0086】
各実施例ではカートリッジ(特定の実施例に対して必要に応じて試薬、洗浄液、緩衝液を含みあるいは空で)を二重筒状シリンジ筐体内に装填した。各シリンジ筐体は、その筐体に内嵌されるガラスカートリッジのゴム張り隔壁キャップを貫通可能な2本の16ゲージ針を有する挿入部を含んでいた。各針がカートリッジとシリンジ筐体のノズル内の開口との間に管路を提供した。各針およびそれに付随するノズル開口が筐体に装填されたカートリッジとカラムとの間に流体連通を提供した。
【0087】
特定の工程で移動される液体の供給元でもなく供給先でもないカートリッジに関連するプランジャロッドを固定することにより、システムを介する流体の移動を制御した。特定の時に移動されるべき液体を含むカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけた。回収カートリッジ、すなわち特定の工程中に移動される液体の供給先のプランジャロッドをそのカートリッジ内で受動的に摺動可能にすることにより、カートリッジ内のチャンバの容量を供給源カートリッジプランジャロッドにかけた正圧に応じて増加することができる。明示しない限り約0.5mL/分の速度でシステムを介して液体を方向付けた。
【0088】
実施例1−イオン固定化
上記のシステムを用いて2行程、すなわち1パス行程およびマルチパス行程の各々に用いるイオン固定化システムを構成した。各行程に対して、ガラスカラムに固定化イミノジ酢酸を有する4%ビーズ・アガロース(イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce(Rockford,IL))から入手可能で、銅イオン結合能力>0.9mg)を充填した。このカラムを蒸留脱イオン水と平衡状態に置いてアジ化ナトリウム防腐剤を除去した。硫酸銅を蒸留脱イオン水に溶解させて165mM溶液を作製した。その溶液の1.5mLを第1のガラスカートリッジに装填した。2.5mLの蒸留脱イオン水を第2のガラスカートリッジに装填した。
【0089】
第1および第2のカートリッジを1つの二重筒状シリンジ筐体に挿入した。第3のカートリッジおよび第4のカートリッジを、ガラスカラムの他端部に取り付けられた他の二重筒状シリンジ筐体に挿入した。第3および第4のカートリッジは筐体に挿入したとき空であった。
【0090】
1パス行程では、第1のカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけることにより、硫酸銅溶液をガラスカラムに導入するとともに、その硫酸銅をそこに充填されたビーズ・アガロースと接触させた。第2および第4のカートリッジのプランジャロッドを固定したが、第3のカートリッジのプランジャロッドは固定しなかった。このためビーズ・アガロースに接触させた後、処理済み試料を第3のカートリッジのチャンバに方向付けて回収した。第1のカートリッジのプランジャロッドを完全に前進させると、硫酸銅がすべてカラム内に導入された。
【0091】
第1のカートリッジのプランジャロッドを固定するとともに第2のカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけて第2のカートリッジに装填された蒸留水をカラムに導入することによりカラムを洗浄して、非結合銅イオンをカラムから洗い流した。第3のカートリッジのプランジャロッドは固定されていないため、カラムから洗い流された非結合銅イオンは第3のカートリッジに向けられて回収された。このように非結晶銅イオンをすべて第3のカートリッジに回収した。
【0092】
マルチパス行程では、上述の1パス行程の始めのように第2および第4のカートリッジのプランジャロッドを固定した。第1および第3のカートリッジのプランジャロッドに正圧を交互にかけて、硫酸銅溶液をアガロース充填カラムを往復させて9回通過させた。第1あるいは第3のカートリッジのうちの1つのプランジャロッドに正圧をかけるたびに他方のカートリッジ(「受動カートリッジ」)のプランジャロッドをそのカートリッジに対して外側にずれるようにさせることにより、溶液が一時的に受動カートリッジ内に集まった。
【0093】
カラムを9回通過した後、溶液を第3のカートリッジに回収した。その後1パス行程で説明したようにカラムを洗浄した。このように非結合銅イオンをすべて第3のカートリッジに回収した。
【0094】
各行程で約3.8mLの処理済み溶液を第3のカートリッジに回収した。1パス行程で回収およびマルチパス行程で回収した出発溶液内の銅イオンの量を650nmで分光比色解析した。各行程の出発溶液は、カラムの結合能力をはるかに超えた約15.73mgの銅イオンを含んでいた。
【0095】
1パス行程から回収された溶液は15.70mgの銅イオンを含んでおり、1パス行程でカラムが0.03mgの銅イオンを固定したことを示している。マルチパス行程から回収された溶液は15.43mgの銅イオンを含んでおり、マルチパス行程でカラムが1.3mgの銅イオンを固定したことを示している。このようにカラムは1パスプロトコルを用いて能力の3%未満までしか銅イオンを結合しないが、カラムはマルチパスプロトコルを用いてほぼ飽和状態まで銅イオンを結合した。
【0096】
実施例2−親和性固定
親和性固定化システムを構成して、1パス行程およびマルチパス行程の2つの行程の各々に使用した。以下を除いては実施例1で説明したようにシステムを構成した。ガラスカラムにミメティック・ブルー(Mimetic Blue)SA P6XLビーズ(ブリテン諸島のマン島のプロメトリック・バイオサイエンス・リミテッド(ProMetric BioSciences Ltd.(Isles of Man,British Isles))から入手可能)を充填するとともに、pH5.5の25mMリン酸ナトリウム緩衝液と平衡状態に置き、ヒト血清アルブミン2.0mLを第1のガラスカートリッジ内に装填し、さらにpH5.5の25mMリン酸ナトリウムを2.5mL含む洗浄緩衝液を第2のガラスカートリッジ内に装填した。
【0097】
ヒト血清アルブミン(ミズーリ州セントルイスのシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO))から入手可能なHSA)をpH5.5の25mMリン酸ナトリウム緩衝液に溶解させて8.45mg/mLの濃度にすることによりヒト血清アルブミン溶液を調製した。
【0098】
第1および第2のカートリッジを1つの二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3のカートリッジおよび第4のカートリッジをガラスカラムの他端部に取り付けられた他の二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3および第4のカートリッジは筐体に挿入したとき空であった。
【0099】
実施例1の1パス行程と同様に1パス行程を行った。こうして非結合HSAをすべて第3のカートリッジに回収した。
【0100】
実施例1のマルチパス行程と同様にマルチパス行程を行った。こうして非結合HSAをすべて第3のカートリッジに回収した。
【0101】
各行程で約4.3mLの処理済み溶液を回収した。各第1のカートリッジ内に装填されたHSAの量と各第3のカートリッジに回収されたHSAの量を、ビシンコニン酸(biocinchoninic)(BCA)タンパク質定量(イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce(Rockford,IL))から入手可能)を用いて判定した。各第1カートリッジ内に約16.9mgのHSAを装填した。1パス行程で回収した溶液で3.6mgの非結合HSAが測定され、1パス行程で約13.3mgのHSAがカラムに結合されたことを示している。マルチパス行程で3.3mgのHSAが非結合のまま残っており、マルチパス行程で約13.6mgのHSAがカラムに結合されたことを示している。
【0102】
実施例3−疎水化固定および溶出
疎水化固定システムを構成して、1パス行程およびマルチパス行程の2つの行程の各々に使用した。以下を除いては実施例1で説明したようにこのシステムを構成した。ガラスカラムにドデシル・アガロース(ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(St.Louis,MO))から入手可能)を充填するとともに、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と平衡状態に置き、ペプチド溶液を第1のカートリッジ内に装填し、さらにpH7.2のPBSを2.5mL含む洗浄緩衝液を第2のカートリッジ内に装填した。
【0103】
pH7.2の、PBSに溶解させたウシ血清アルブミン(ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(St.Louis,MO))から入手可能なBSA)をタンパク質分解することによりペプチド溶液を調製した。水に溶解したばかりのTCPKトリプシン(イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce(Rockford,IL)から入手可能)を1.6mg加えることによりタンパク質分解を行った。タンパク質分解溶液は37℃で72時間温置した。得られたペプチド溶液は、214nmでの分光比色解析によると304mg/mLの濃度でペプチドを含んでいた。
【0104】
第1および第2のカートリッジを1つの二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3のカートリッジおよび第4のカートリッジをガラスカラムの他端部に取り付けられた他の二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3および第4のカートリッジは筐体に挿入したとき空であった。
【0105】
実施例1の1パス行程と同様に1パス行程を行った。こうして非結合ペプチドをすべて第3のカートリッジに回収した。
【0106】
実施例1のマルチパス行程と同様にマルチパス行程を行った。こうして非結合ペプチドをすべて第3のカートリッジに回収した。
【0107】
各行程で約3.5mLの溶液を回収した。原試料溶液と各々回収溶液内のBSAペプチドの量を、214nmでの分光比色解析により判定した。各行程の出発溶液は約456mg(1.5mL)のBSAペプチドを含んでいた。1パス行程の通液で240mgの非結合ペプチドが回収され、216mgのBSAペプチドがカラムによって固定されたことを示している。マルチパス行程の通液で247mgの非結合ペプチドが回収され、マルチパス実験で209mgのBSAペプチドが固定されたことを示している。このようにドデシル・アロガースカラムを通過する回数を増やすことによるBSAペプチドの疎水化固定の明確な増加はなかった。
【0108】
次に固定されたペプチドを1パス行程カラムおよびマルチパス行程カラムの各々から溶出させた。各溶出に対して、一方のシリンジ筐体において第1および第2のカートリッジを、溶出緩衝液として0.1%トリフルオロ酢酸を含む70/30アセトニトリル/水(v/v)を2.5mL含むカートリッジと交換した。また他方の二重筒状シリンジ筐体において第3および第4のカートリッジを空の回収カートリッジと交換した。
【0109】
実施例1の1パス行程と同様に各溶出を行った。こうして各溶出においてカラムから溶出したタンパク質を第3のカートリッジに回収した。
【0110】
各溶出に対して回収溶出量は4.7mLであった。各溶出の第3のカートリッジで回収された溶出BSAペプチドの量を、214nmでの吸光率を測定することにより判定した。1パス行程から溶出されたBSAペプチドの質量は110mgであった(1パスでカラムに疎水結合された216mgのうち)。マルチパス行程から溶出されたBSAペプチドの質量は128mgであった(マルチパス行程でカラムに固定された209mgのBSAペプチドのうち)。
【0111】
実施例4−サイズ排除分離
以下を除いては実施例1で説明したようにサイズ排除分離システムを構成した。ガラスカラムにセファデックス(Sephadex)G−25(スウェーデン、ウプサラのアマシャム・ファルマシア・バイオテクAB(Amersham Pharmacia Biotech AB(uppsala,Sweden))から入手可能)を充填するとともに、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と平衡状態に置き、さらにpH7.2のPBS緩衝液を2.5mL含む洗浄緩衝液を第2のガラスカートリッジ内に装填した。
【0112】
4mgのローダミン標識BSA(ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(St.Louis,MO))から入手可能なアルブミン、ウシ−スルホローダミン101酸塩化物)をpH7.2の200μLPBSに溶解させることにより色素標識されたタンパク溶液を調製した。
【0113】
第1および第2のカートリッジを1つの二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3のカートリッジおよび第4のカートリッジをガラスカラムの他端部に取り付けられた他の二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3および第4のカートリッジは筐体に挿入したとき空であった。
【0114】
第2および第4のカートリッジのプランジャロッドは固定したが、第3のカートリッジのプランジャロッドは固定しなかった。第1のカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけることにより、色素標識タンパク溶液を0.5mL/分の速度でビーズ充填カラムに流入させた。標識BSA溶液はビーズ床上に紫色の層を形成した。
【0115】
第1のカートリッジのプランジャロッドを固定するとともに第2のカートリッジのプランジャロッドの固定を解除した。第2のカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけることにより、洗浄液を0.1mL/分の速度でそのカラムに流入させた。
【0116】
通液中にカラムにおいて未反応ローダミンからローダミン標識BSAの分離が観察できた。色素タンパク質画分は第1の明確画成バンドに含まれた。未反応色素分子は後尾の明確画成バンドに含まれた。このように色素タンパクバンドを第3のカートリッジに回収した。色素タンパクバンド全体を回収する際、第3のカートリッジのプランジャロッドを固定するとともに、および第4のカートリッジのプランジャロッドの固定を解除した。第2のカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけると、第4のカートリッジ内に未反応色素帯が回収された。
【0117】
実施例5−カートリッジ化学反応
この実施例は化学反応を行うための複数カートリッジ設計の有用性を実証する。以下を除いては実施例1で説明したものと類似のシステムを採用した。ガラスカラムをpH9.97の0.2M炭酸ナトリウム緩衝液を充填したプラスチック管と交換し、第1のカートリッジにBSA固体を3.2mg装填し、第2のカートリッジにフローラリンク(FLORORLINK)(アマシャム・ファラムシア・バイオテク(Amersham Pharamcia Biotech)Cy5非機能色素固体を装填し、さらに第3のカートリッジにpH9.97の0.2M炭酸ナトリウム緩衝液を1.5mL装填した。
【0118】
Cy5はBSAなどのタンパク質に色素を共有結合させることができる機能群を含む蛍光色素である。
【0119】
第1および第2のカートリッジを一方の二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3のカートリッジおよび第4のカートリッジを他方の二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3および第4のカートリッジは筐体に挿入したとき空であった。
【0120】
第2および第4のカートリッジのプランジャを固定した。第1のカートリッジのプランジャは固定しなかった。第3のカートリッジのプランジャに正圧をかけることにより、プラスチック管に装填された炭酸ナトリウム緩衝液をBSA固体を含む第1のカートリッジに押し込んだ。BSAが第1のカートリッジに進入する炭酸ナトリウム緩衝溶液に溶解することにより、BSA溶液ができた。
【0121】
第3および第4のカートリッジのプランジャを固定するとともに、第2のカートリッジのプランジャの固定を解除した。第1のカートリッジのプランジャに正圧をかけることにより、BSA溶液を第2のカートリッジに移動させた。BSA溶液によりフローラリンク(FLORORLINK)Cy5色素がすぐに可溶化して、溶液が濃い青色に変化した。流れを反転させてさらに反応溶液と混合させた。溶液を20分間反応させることにより、色素標識BSAを作製した。
【0122】
色素標識BSAをセファデックス(Sephadex)G−25(スウェーデン、ウプサラのアマシャム・ファルマシア・バイオテクAB(Amersham Pharmacia Biotech AB(uppsala,Sweden))から入手可能なPD−10カラム)を用いて精製した。水で溶出しながらカラム上で色素標識BSAと未反応色素との間の明確な分離が観察された。
【0123】
実施例6−固定化学反応
この実施例は被分析物を固定マトリックスに複数回通過させた時の固定マトリックス上の化学反応の向上を実証する。この実施例ではタンパク溶液を固定トリプシンを含むマトリックスに通過させた。トリプシンは溶液中のタンパク質を分解することにより、ペプチド部分を作製する。
【0124】
固定化学反応システムを構成して、1パス行程およびマルチパス行程の2行程の各々に用いた。このシステムは以下を除いては実施例1で説明したものと類似していた。ガラスカラムにビーズ・アガロース(ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(St.Louis,MO))から入手可能)上に固定されたトリプシン(TPCK処理済み)を充填するとともにpH8.2の100mMトリスと平衡状態に置き、第1のガラスカートリッジ内にBSA溶液を1mL装填し、さらに第2のガラスカートリッジ内にpH8.2の100mMトリスを2.5mL装填した。
【0125】
ウシ血清アルブミン(ミズーリ州セントルイスのシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO))から入手可能なBSA)をpH8.2の100mMトリスに溶解させて約5mg/mLの濃度にすることによりBSA溶液を調製した。
【0126】
第1および第2のカートリッジを1つの二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3のカートリッジおよび第4のカートリッジをガラスカラムの他端部に取り付けられた他の二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3および第4のカートリッジは筐体に挿入したとき空であった。
【0127】
1パス行程では、上述したようにプランジャロッドの操作によりBSA溶液を第1のカートリッジからビーズ充填カラムに導入した。しかしそのBSAタンパク溶液を23℃で65分間固定トリプシンビーズと反応させた。65分後、BSAタンパク質/ペプチド溶液を含むカラムを第2のカートリッジからの緩衝溶液で洗浄した。洗浄は上述のように行った。こうしてトリプシン消化BSA溶液をすべて第3のカートリッジに回収した。
【0128】
マルチパス行程では、BSA溶液を約0.5mL/分の速度でビーズ充填カラムを往復させて31回通過させた。カラムはその31回の通過中23℃の温度に維持した。31回の通過後、トリプシン消化BSA溶液をすべて第3のカートリッジに回収した。
【0129】
各行程で約3.5mLのトリプシン消化BSA溶液を回収した。サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いてタンパク質分解の程度の解析を行った。試料中に発色団がないため、SECを利用したタンパク質および未反応色素画分の分画を以下の基準への類似により達成した。
【0130】
上記であるが発色団がある1パス行程およびマルチパス行程で回収されたBSA溶液を概算するために、色素標識BSAの溶液を調製した。各行程の回収溶液(3.5mL)に原試料溶液からのBSA(5mg)をすべて回収したということを前提とした。このため5mgの色素標識BSA(アルブミン、ウシ−スルホローダミン101酸塩化物、ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(St.Louis,MO)))をpH8.2の100mMトリス3.5mLに溶解させた。得られた色素標識BSA標準溶液は、1パス行程およびマルチパス行程で回収された溶液のSEC特性に似ていた。
【0131】
ローダミン標識BSA溶液をセファデックス(Sephadex)G−25カラム(PD−10カラム、スウェーデン、ウプサラのアマシャム・ファルマシア・バイオテクAB(Amersham Pharmacia Biotech AB(Uppsala,Sweden)))に適用した。pH8.2の100mMトリスで溶出しながらカラム上でローダミン標識BSAと未反応色素との明確な分離が観察された。先行バンドはローダミン標識BSAを含み、7mLの量が回収された。未反応色素の溶出は20mLの回収量を必要とした。
【0132】
この基準に基づいてSECを利用して1パス行程およびマルチパス行程で回収された溶液を個別に分離した。各分離に対して7mLの画分(非タンパク質分解タンパク質画分)と20mLの画分(タンパク質分解ペプチド画分)とを回収した。
【0133】
4つの画分(1パスタンパク質画分およびペプチド分画物、ならびにマルチパスタンパク質画分およびペプチド画分)に一次元ゲル電気泳動を施してクマシー(Coomasie)ブルーで染色した。染色バンドは、タンパク質画分に対して非タンパク質分解BSAに相当する約68kDaに現われるとともにペプチド画分にはなく、非タンパク質分解BSAはどれもタンパク質画分に限定されていることが確認された。
【0134】
溶液各々に対してマトリックス支援レーザ脱離イオン化法−飛行時間型質量分析(MALDI−TOFMS)を行って(ボイジャ(Voyager)、カリフォルニア州フォスター・シティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA)))、4つの試料のトリプシンタンパク質分解の程度を判定した。各画分を2μL滴下し、続けてマトリックス溶液(1%トリフルオロ酢酸を含む、アセトニトリルに溶かしたアルファ−シアノ4−ヒドロキシケイ皮酸:水を1:1)を1μLを滴下して、製造業者の指示に従って試料を分析することにより試料を金マトリックス上で解析した。
【0135】
解析によりマルチパス行程で1パス行程より完全なBSAのタンパク質分解が生じたことが分かった。1パス実験から得られたBSA分子イオンピーク(〜67kDa)はマルチパス実験から得られた分子イオンピークの強度のほぼ2倍であり、後者の実験でより多くのBSAがタンパク質分解されたことを示した。
【0136】
実施例7−1試料からの2成分の親和性固定
この実施例は、固定親和性試薬の混合物を含む単一カラムを用いたヒト血清からの2つのヒトタンパク質、アルブミンとIgGの同時除去を実証する。以下を除いては実施例2で説明したようにシステムを構成した。ガラスカラムに600μLのミメティック・ブルー(Mimetic Blue)SA P6XLビーズおよび400μLのマブソベント(Mabsorbent)A2Pビーズ(共にブリテン諸島のマン島のプロメティック・バイオサイエンス・リミテッド(ProMetic BioSciences Ltd.(Isles of Man,British Isles))から入手可能)の混合物を充填するとともに、0.9%NaClを含有するpH6.0の50mMリン酸ナトリウム緩衝液と平衡状態に置き、ヒト血清試料1.0mLを第1のガラスカートリッジ内に装填し、pH6.0の50mMリン酸ナトリウム緩衝液2.5mLおよび1.5mLをそれぞれ第2および第3のガラスカートリッジ内に装填した。
【0137】
微量遠心管内の1.0mLのヒト血清(マサチューセッツ州フランクリンのインパス・プレディクティブ・オンコロジー(Impath Predictive Oncology(Franklin,MA)))を卓上遠心分離機(ペンシルバニア州ウエストチェスターのVWRサイエンティフィック(VWR Scientific(West Chester,PA)))内で毎分6000回転で10分間遠心分離することによりヒト血清試料を調製した。上澄み液200μLを、0.9%NaClを含有するpH6.0の50mMリン酸ナトリウム緩衝液1.8mLで希釈して、第1のカートリッジに装填するヒト血清試料を作製した。
【0138】
第1および第2のカートリッジを1つの二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第3および第4のカートリッジをガラスカラムの他端部に取り付けられた他の二重筒状シリンジ筐体内に挿入した。第4のカートリッジは筐体に挿入したとき空であった。
【0139】
第1のカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけることにより、出発ヒト血清をガラスカラムに導入して、その血清をアルブミンおよびIgG用の混合固定親和剤を含むビーズの混合物と接触させた。第2および第3のカートリッジのプランジャロッドは固定したが、第4のカートリッジのプランジャロッドは固定しなかった。このため第1のカートリッジのプランジャを前進させると、第4のカートリッジ内に液体が集まった。第1のカートリッジのプランジャロッドを完全に前進させると、出発ヒト血清がすべてカラム内に導入された。
【0140】
次に、第1および第3のカートリッジのプランジャロッドを固定するとともに、第2のカートリッジのプランジャロッドの固定を解除した。第2のカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけて、第2のカートリッジ内に装填された緩衝溶液をカラムに導入することにより、カラムから処理済み血清を洗い流した。第4のカートリッジのプランジャロッドは固定されていないため、カラムから洗い流された処理済み血清は第4のカートリッジに向かい回収された。
【0141】
次に、第2および第3のカートリッジのプランジャロッドを固定するとともに、第1のカートリッジのプランジャロッドの固定を解除した。第4のカートリッジおよび第1のカートリッジのプランジャロッドに交互に正圧をかけて、処理済み血清をビーズ充填カラムを往復させてさらに8回通過させた。第1あるいは第4のカートリッジのうちの1つのプランジャロッドに正圧をかけている時はいつでも他のカートリッジ(「受動カートリッジ」)のプランジャロッドがそのカートリッジに対して外側に移動できるため、処理済み血清を一時的に受動カートリッジ内に回収することができる。
【0142】
合計9回のカラム通過後、ほとんどの処理済み血清は第4のカートリッジ内に回収された。第1および第4のカートリッジのプランジャロッドを固定するとともに、第2および第3のカートリッジのプランジャロッドの固定を解除した。第3のカートリッジのプランジャロッドに正圧をかけて、第3のカートリッジ内に装填された緩衝溶液をカラムに導入することにより、カラムから残留処理済み血清を洗い流した。残留処理済み血清および洗浄緩衝液は第2のカートリッジに回収された。
【0143】
こうして処理済み血清のすべてを第4のカートリッジおよび第2のカートリッジに回収した。第2のカートリッジおよび第4のカートリッジの内容物を合わせると、得られた総処理済み血清量は4.5mLであった。
【0144】
出発ヒト血清試料および処理済み血清、すなわち第3および第4のカートリッジの合計内容物の両方にBCAタンパク質定量(イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce(Rockford,IL))を行った。出発ヒト血清試料は7.51mgの総タンパク質を含んでいた。処理済み血清は1.26mgの総タンパク質を含んでいた。そのため6.25mgのタンパク質がカラムに保持された。
【0145】
カラムに保持されたタンパク質を、pH11.5の0.1MCAPS(3−シクロヘキシルアミノ−1−プロパンスルホン酸)緩衝液を用いて液体クロマトグラフィ(UPC−900、スウェーデン、ウプサラのアマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech AB(uppsala,Sweden))により溶出した。得られた溶離剤はBCAタンパク質定量によると6.23mgの総タンパク質を含んでいた。
【0146】
グリシンおよびドデシル硫酸ナトリウムを含むトリス緩衝液のランニング緩衝液内で4〜15%トリス−HClレディゲル(Tris−HCl Ready Gel)(カリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(BioRad(Hercules,CA))から入手可能)を用いて、出発ヒト血清、処理済み血清およびカラム溶離剤の試料を一次元ゲル電気泳動により解析した。このゲルにもHSAスタンダード(HSA standard)(ミズーリ州セントルイスのシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO))およびタンパク質スタンダード(カリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(BioRad(Hercules,CA))から入手可能なブロードバンド スタンダード(Broadband Standard))を入れた。試料20μLと分解緩衝液40μL(50μLの2−メルカプトエタノールおよび950μLのレムリー(Laemmli)試料緩衝液(バイオラッド(BioRad)))を混合することによって各試料を変性させた。各変性試料40μLをレディゲル(Ready Gel)の別々のレーンのウエルに装填した。このゲルを約1時間120Vで流動させた。
【0147】
得られたゲルをバイオセーフ クマシー(Biosafe Coumassie)(バイオラッド(BioRad))を用いて1時間染色するとともに、1晩脱イオン水中で脱色した。出発ヒト血清試料およびカラム溶離剤中で最も強く染色されていたタンパク質は、HSA、IgG重鎖、およびIgG軽鎖に対する分子量と一致していた。カラム溶離剤を含むレーンはまた他のタンパク質も含んでいた。しかし他のタンパク質の染色強度はHSA、IgG重鎖およびIgG軽鎖の染色強度よりはるかに低かった。処理済み血清を含むレーンでIgG重鎖あるいはIgG軽鎖は検出されず、HSAの比較的軽強度バンドを検出した。
【0148】
本明細書に引用された特許、特許文献および公報の全開示を、各々が個々に引用されたように本明細書に引用して援用する。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が調整するものとする。
【0149】
当業者には本発明の範囲から逸脱することなく本発明の様々な変形および変更が明らかになるであろう。本発明は本明細書に記載された例示的実施形態および実施例に必要以上に限定されるものではなく、このような実施例および実施形態は単に例として示し、本発明の範囲は記載した請求の範囲によってのみ限定するものとすることは理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明による可変容量チャンバを有するカートリッジの平面図である。
【図2】4つのチャンバを有する装置を利用した単一処理動作シーケンスを図示する概略図である。
【図3】可逆流を採用した動作工程を図示する概略図である。
【図4】本発明による装置の一実施形態の斜視図である。
【図5】図4に図示した装置の一部分の平面断面図である。
【図6】複数処理ユニットを支持且つ作動させる装置の一実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0151】
105 相互連結部
300 マルチチャンバ型ポンプ−バルブ装置
321,322,323 作動装置
400,402 処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を処理する装置であって、
可変容量を有する第1のチャンバと、
可変容量を有する第2のチャンバと、
可変容量を有する第3のチャンバと、
各々が1つ以上のチャンバと係合した1つ以上の通路を備え、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバおよび前記第3のチャンバの間に流体連通を提供する相互連結部と、
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバおよび前記相互連結部の少なくとも1つの通路のうちの、少なくとも1つに含まれた処理物質とを具備し、
2つ以上のチャンバの前記可変容量を変化させることにより、該装置を介する前記液体試料の移動を制御するように構成されている、
装置。
【請求項2】
前記処理物質が、フィルタ、膜、サイズ排除媒質、変性固体支持体、反応物、親和性試薬または緩衝液を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバまたは前記相互連結部の少なくとも一部分に用意された第2の処理物質をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記相互連結部が2つ以上の通路を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記相互連結部が2つ以上の処理物質をさらに有し、第2の通路に用意された第2の処理物質とは異なる第1の処理物質が、第1の通路に用意されるようになっている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つのチャンバがシリンジまたはブラダを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つのチャンバに接続された、少なくとも1つのチャンバの前記容量を調節する少なくとも1つの作動装置をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1のチャンバに接続された、前記第1のチャンバの前記可変容量を調節する第1の作動装置と、
前記第2のチャンバに接続された、前記第2のチャンバの前記可変容量を調節する第2の作動装置と、
前記第3のチャンバに接続された、前記第3のチャンバの前記可変容量を調節する第3の作動装置とを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
1つの作動装置が少なくとも2つのチャンバの前記可変容量を調節する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つのチャンバが前記装置から可逆的に脱離可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記液体試料の少なくとも一部分を検出する少なくとも1つの検出要素をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記検出要素が、pH検出器、分光光度検出器、蛍光検出器、導電率検出器または屈折率検出器を備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記相互連結部の少なくとも一部分または少なくとも1つのチャンバの少なくとも一部分の温度を調節する少なくとも1つの温度調節要素をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの制御器要素に接続された少なくとも1つの制御可能要素をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記制御可能要素が、少なくとも1つのチャンバの前記可変容量、検出要素または温度調節要素を調節する作動装置を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記制御器要素がプログラム可能なマイクロプロセッサを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記相互連結部の少なくとも一部分と流体連通している可変容量を有する少なくとも1つの追加チャンバをさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの追加チャンバの前記容量を調節する作動装置をさらに具備する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記作動装置が2つ以上のチャンバの前記容量を調節する、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも1つの相互連結部がU字管を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
液体試料を処理する方法であって、
a)i)可変容量を有する第1のチャンバと、
ii)可変容量を有する第2のチャンバと、
iii)可変容量を有する第3のチャンバと、
iv)各々が1つ以上のチャンバと係合した1つ以上の通路を備え、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバおよび前記第3のチャンバの間に流体連通を提供する相互連結部と、
v)前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバおよび前記相互連結部の一部分のうちの、少なくとも1つに含まれた処理物質とを具備する装置であって、
2つ以上のチャンバの前記可変容量を変化させることにより、該装置を介する前記液体試料の移動を制御するように構成されている装置を用意することと、
b)前記第1のチャンバに液体試料を用意することと、
c)前記第1のチャンバの前記容量を減少させるとともに少なくとも1つの他のチャンバの前記容量を増加させ、それにより、前記試料の少なくとも一部分を前記処理物質の少なくとも一部分に接触させて、該試料を該処理物質によって少なくとも部分的に処理し、以って、前記試料の少なくとも一部分を前記少なくとも1つの他のチャンバに導くことと、
を有する方法。
【請求項22】
前記処理物質が、フィルタ、膜、サイズ排除媒質、変性固体支持体、反応物または緩衝液を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記装置が、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバまたは前記相互連結部の少なくとも一部分に用意された第2の処理物質をさらに具備する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記相互連結部が2つ以上の通路を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記相互連結部が2つ以上の処理物質をさらに有し、第2の通路に用意された第2の処理物質とは異なる第1の処理物質が、第1の通路に用意されるようになっている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記装置が、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバおよび前記相互連結部の少なくとも一部分のうちの、少なくとも1つに含まれた検出要素であって、前記試料の少なくとも一部分を検出する検出要素をさらに備え、前記方法が、前記試料の少なくとも一部分を検出するステップをさらに有する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記検出要素が、pH検出器、分光光度検出器、蛍光検出器、導電率検出器または屈折率検出器を備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のチャンバの容量を減少させる前記ステップが、前記第2のチャンバの容量を減少させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記試料の処理済み部分が回収チャンバに導入される、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記試料の前記処理済み部分の少なくとも一部分を前記装置から除去することをさらに有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記試料を除去することが、前記回収チャンバを前記装置から取り外すことを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの他のチャンバの前記容量を増加させることは、前記第2のチャンバの前記容量を増加させることを含み、それにより、前記試料の少なくとも一部分を前記第2のチャンバに導く、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記第2のチャンバに導かれた前記試料の少なくとも一部分が、前記処理物質によって処理された試料を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2のチャンバの前記容量を減少させるとともに前記第1のチャンバの前記容量を増加させ、それにより、前記処理済み試料の少なくとも一部分を前記第2のチャンバから離して前記第1のチャンバへ導き、該処理済み試料の少なくとも一部分を前記処理物質の少なくとも一部分に2回目の接触をさせて、該試料の少なくとも一部分を該処理物質によって2度処理し、それにより処理サイクルを完了するステップをさらに有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
複数の処理サイクルを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記処理済み試料の少なくとも一部分を前記装置から除去するステップをさらに有する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記処理済み試料の少なくとも一部分を除去する前記ステップが、
a)前記処理済み試料の少なくとも一部分を回収チャンバに導くことと、
b)前記回収チャンバを前記装置から取り外すこととを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記装置が、少なくとも1つの制御器要素に接続された少なくとも1つの制御可能要素をさらに備える、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記制御可能要素が、少なくとも1つのチャンバの前記可変容量、検出要素または温度調節要素を調節する機構を備える、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記制御器要素がプログラム可能なマイクロプロセッサを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記方法の少なくとも一部分が、前記プログラム可能なマイクロプロセッサにより自動化され、制御される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第3のチャンバが液体を収容し、前記方法が、
前記第3のチャンバの前記容量を減少させるとともに前記第1のチャンバの前記容量を増加させ、それにより、前記液体の少なくとも一部分を前記第3のチャンバから前記第1のチャンバへ導くステップをさらに有する、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記処理物質がフィルタまたは膜を備え、
前記試料が、前記フィルタ又は膜に保持された少なくとも1つの保持反応物を備え、
前記第3のチャンバの前記容量を減少させるとともに前記第1のチャンバの前記容量を増加させるステップが、前記少なくとも1つの保持反応物の少なくとも一部分を前記第3のチャンバから前記液体内に解放する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの保持反応物が、溶解、懸濁または乳化により、前記第3のチャンバから前記液体内に解放される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記処理済み試料の少なくとも一部分を前記装置から除去するステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記処理済み試料の少なくとも一部分を除去する前記ステップが、
a)前記処理済み試料の少なくとも一部分を回収チャンバに導くことと、
b)前記回収チャンバを前記装置から取り外すこととを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記装置が、少なくとも1つの制御器要素に接続された少なくとも1つの制御可能要素をさらに備える、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記制御可能要素が、少なくとも1つのチャンバの前記可変容量、検出要素または温度調節要素を調節する機構を備える、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記制御器要素がプログラム可能なマイクロプロセッサを備える、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記方法の少なくとも一部分が、前記プログラム可能なマイクロプロセッサにより自動化され、制御される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第2のチャンバの前記容量を減少させるとともに前記第3のチャンバの前記容量を増加させ、それにより、前記少なくとも部分的処理済み試料の少なくとも一部分を前記第3のチャンバに導くことをさらに有する、請求項32に記載の方法。
【請求項52】
前記装置が、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバおよび前記相互連結部の一部分のうちの、少なくとも1つに含まれた第2の処理物質をさらに備える、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第2のチャンバの前記容量を減少させるとともに前記第3のチャンバの前記容量を増加させる前記ステップが、前記少なくとも部分的処理済み試料を前記第2の処理物質によりさらに少なくとも部分的に処理させる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記処理済み試料の少なくとも一部分を前記装置から除去するステップをさらに有する、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記処理済み試料の少なくとも一部分を除去する前記ステップが、
a)前記処理済み試料の少なくとも一部分を回収チャンバに導くことと、
b)前記回収チャンバを前記装置から取り外すこととを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記装置が、少なくとも1つの制御器要素に接続された少なくとも1つの制御可能要素をさらに備える、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記制御可能要素が、少なくとも1つのチャンバの前記可変容量、検出要素または温度調節要素を調節する機構を備える、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記制御器要素がプログラム可能なマイクロプロセッサを備える、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記方法の少なくとも一部分が、前記プログラム可能なマイクロプロセッサにより自動化され、制御される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
複数の液体試料を実質的同時に処理する装置であって、
i)可変容量を有する第1のチャンバと、
ii)可変容量を有する第2のチャンバと、
iii)可変容量を有する第3のチャンバと、
iv)各々が1つ以上のチャンバと係合した1つ以上の通路を備え、それらチャンバの間に流体連通を提供する相互連結部と、
v)前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバおよび前記相互連結部の一部分のうちの、少なくとも1つに含まれた処理物質とを、各々が備える複数のユニットと、
2つ以上の第1のチャンバに接続された、前記複数の第1のチャンバ容量を調節する作動装置と、
2つ以上の第2のチャンバに接続された、前記複数の第2のチャンバ容量を調節する作動装置と、
2つ以上の第3のチャンバに接続された、前記複数の第3のチャンバ容量を調節する作動装置と、
を具備する装置。
【請求項61】
少なくとも1つの相互連結部がU字管を備える、請求項60に記載の装置。
【請求項62】
複数の液体試料を実質的同時に処理する方法であって、
a)i)A)可変容量を有する第1のチャンバと、
B)可変容量を有する第2のチャンバと、
C)可変容量を有する第3のチャンバと、
D)各々が1つ以上のチャンバと係合した1つ以上の通路を備え、それらチャンバの間に流体連通を提供する相互連結部と、
E)前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバおよび前記相互連結部の一部分のうちの、少なくとも1つに含まれた処理物質とを、各々が備える複数のユニットと、
ii)2つ以上の第1のチャンバに接続された、前記複数の第1のチャンバ容量を調節する作動装置と、
iii)2つ以上の第2のチャンバに接続された、前記複数の第2のチャンバ容量を調節する作動装置と、
iv)2つ以上の第3のチャンバに接続された、前記複数の第3のチャンバ容量を調節する作動装置と、を備える装置を用意することと、
b)前記複数の第1のチャンバの各々に少なくとも1つずつ、複数の液体試料を用意することと、
c)前記複数の第1のチャンバ容量を調節する前記作動装置を制御するとともに、少なくとも1つの他の複数のチャンバ容量を調節する前記作動装置を制御し、それにより、前記複数の第1のチャンバの前記容量を実質的同時に減少させるとともに、少なくとも1つの他の複数のチャンバの前記容量を実質的同時に増加させ、それにより、各ユニット内で、
i)前記試料の少なくとも一部分を前記処理物質の少なくとも一部分と接触させて、該試料が該処理物質によって少なくとも部分的に処理されるようにするとともに、
ii)前記試料の少なくとも一部分を前記少なくとも1つの他のチャンバに導くように制御することとを有し、
前記複数の第1のチャンバの前記容量を実質的同時に減少させるとともに、少なくとも1つの他の複数のチャンバの前記容量を実質的同時に増加させることが、前記複数の試料の実質的同時処理をもたらすように構成される、方法。
【請求項63】
前記少なくとも部分的処理済み試料の少なくとも一部分を、前記装置から除去することをさらに有する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記装置が、複数のチャンバの前記容量を調節する1つ以上の作動装置に接続されたプログラム可能なマイクロプロセッサをさらに備える、請求項62に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−275649(P2008−275649A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211033(P2008−211033)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【分割の表示】特願2003−580834(P2003−580834)の分割
【原出願日】平成15年2月11日(2003.2.11)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】