説明

マルチディスプレイシステム

【課題】複数の小型液晶パネルを使用して、大画面サイズの表示が可能なマルチディスプレイ装置を作成する。
【解決手段】液晶マルチディスプレイ装置1は、表示装置群のそれぞれの小型液晶パネル2a〜2dに表示する為の表示データをフレームメモリに保存し、フレームメモリに書き込まれた表示データを、フレームメモリ読み出し回路が読み出し、読み出し時に読み出し開始アドレス設定回路にて、表示装置群を構成する複数の小型液晶パネル2a〜2dに表示するために、どの表示装置に表示するかのアドレスを設定し、このアドレスに従って1水平同期期間に表示装置群に対応したラインメモリに映像信号が送信され、表示装置に映像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の小型液晶パネルを用いて、大画面サイズ表示を実現する液晶マルチディスプレイ装置において、マルチ画面表示を行う表示装置とその表示駆動方式に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の小型液晶パネルを組み合わせて大画面を構成し、その大画面に画像の表示を行うマルチディスプレイシステムに関して、特開2001−242435号に記載されている構成をとるのが一般的である。
この従来のマルチディスプレイの構成について図5を用いて説明する。なお、液晶パネル数は4枚構成にした装置で説明する。
【0003】
図5において、マルチ表示の表示データやマルチ表示のコンテンツのコントロール制御を行う制御処理装置として、クライアントPC4が用いられる。クライアントPC4で加工された画像データは映像信号を出力する。映像信号は、デジタルやアナログなどの画面表示用の同期信号を含んだ信号であり、アナログRGB,DVI,コンポジットビデオ,コンポーネントビデオ信号がマルチディスプレイシステム1に入力される。マルチディスプレイシステム1は、液晶パネル2a,2b,2c,2dと前記液晶パネルそれぞれを表示制御する液晶表示回路3a,3b,3c,3dが接続されている。液晶表示回路3a,3b,3c,3dは、クライアントPC4から送信された前記映像信号から、液晶パネル2a,2b,2c,2dに表示すべき表示データを加工して、液晶パネル2a,2b,2c,2dに表示する。また、この液晶表示回路3a,3b,3c,3dは、通信機能を持ちクライアントPC4との間で制御信号線を設けている。制御信号線は例えば、シリアルポート信号のRS−232C,RS−485などで接続して、制御コマンドを送受信し、マルチ表示のコンテンツに合わせた表示制御などを可能にしている。また、前記した液晶表示回路3a,3b,3c,3dは、該当するID番号の設定値を取り込み、設定値で指定した領域を表示する。
【0004】
続いて液晶表示回路3a,3b,3c,3dの動作を詳細に説明する。図6は、液晶表示回路3a,3b,3c,3dの内部構成ブロック図を示す。クライアントPC4から送信された映像信号は、入力データ処理回路9にてデジタルの表示データと表示用同期信号が生成され、フレームメモリ書き込み回路10にて、書き込み開始位置情報およびデータ量を設定するレジスタ値により、フレームメモリ選択切り換え回路11を介してフレームメモリに書き込まれる。フレームメモリ選択切り換え回路11は、フレームメモリ12,13の2画面分のフレームメモリをそれぞれ、書き込み用、読み出し用に切り換える制御を行う。一方読み出し側も各レジスタが存在し、設定された開始位置情報、拡大率情報を基に各液晶パネルに表示するデータを読み出し、液晶パネル2a,2b,2c,2dに表示データ、液晶表示タイミング信号を出力し、液晶パネル表示を行う。
【0005】
マイクロコントローラ7は、システムメモリ8に格納されたファームウェアプログラムにより液晶表示回路3a,3b,3c,3d内の前述した各レジスタへのデータ設定を行う。制御データ処理回路5は、クライアントPC4との通信制御信号のデータ変換を行っている。ID番号設定回路6は、複数の液晶表示回路3a,3b,3c,3dを個別通信制御するための通信制御コマンド識別用に個別ID番号を設定される。
【0006】
上述のように、大画面を構成するマルチディスプレイ装置においては、複数枚の液晶パネルにそれぞれ液晶表示回路基板が取り付いた状態を1ユニットとし、現地で組み立てるようにしていた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−242435号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のマルチディスプレイ装置は、ユニット化された同一品を任意の枚数で構成するため、ID番号の設定以外は同一品になるため製造上の取り扱いが楽になるが、表示を拡大して大画面表示を実現する手段を提供するためには、複数枚の液晶パネルにそれぞれ設けられている液晶表示回路基板を使用することになり、コストアップとなる。
また、上記したように複数枚の液晶パネルにそれぞれ設けられている液晶表示回路基板があるために、クライアントPCからそれぞれの液晶表示回路基板に、ID番号情報を付加した制御コマンドと共に表示する領域の設定値を送信しなければならず通信制御が複雑になり、クライアントPCの負担が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は従来の問題に鑑みなされたもので、複数の小型液晶パネルを組み合わせて作成された表示装置群と、該表示装置群に引き出し線を介して接続された液晶表示回路とから成る液晶マルチディスプレイ装置及び、映像信号を生成するクライアントPCからなるマルチディスプレイシステムであって、前記液晶表示回路には前記クライアントPCにより送信される映像信号を変換処理する入力データ処理回路と、該入力データ処理回路で処理された表示データを、前記液晶マルチディスプレイ装置に設けられている表示装置群のそれぞれの小型液晶パネルに表示する為に保存するフレームメモリと、該フレームメモリに表示データを書き込む為のフレームメモリ書き込み回路と、前記フレームメモリ書き込み回路に前記表示データが送信され、前記映像信号に含まれている同期信号により前記フレームメモリに書き込まれた表示データを読み出す為のフレームメモリ読み出し回路と、前記表示装置群を構成する複数の小型液晶パネルのうち、どの液晶パネルに映像を表示するかのアドレスを設定する為の読み出し開始アドレス設定回路と、前記設定されたアドレスに従って1水平同期期間に、前記表示装置群に対応したラインメモリが設けられているマルチディスプレイシステムを提案するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の液晶パネルを1枚の液晶表示回路基板で制御できるため、クライアントPCからの通信制御が単純化され、クライアントPCの負担は軽減され、部品点数を大幅に削減できたため、ロウコストで大画面表示のマルチディスプレイシステムを提供することができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明のマルチディスプレイシステムの基本構成ブロック図を示す。なお液晶パネル数は4枚構成にした例で説明する。
【0012】
クライアントPC4で加工された画像データは映像信号に変換され、デジタルやアナログなどの画面表示用の同期信号を含んだ信号であるアナログRGB,DVI,コンポジットビデオ,コンポーネントビデオ信号が液晶表示回路3に入力される。液晶表示回路3とクライアントPC4は通信制御信号で接続され、クライアントPC4から接続される液晶マルチディスプレイ装置1の液晶パネル枚数、液晶パネルの解像度、液晶パネルの周囲の額縁部の幅を液晶のドット数に換算したデータなどの表示制御をするための情報が送られてくる。液晶表示回路3は1枚の基板で構成されており、マルチディスプレイ化する前の個々の液晶パネルを表示制御した場合の基板面積とあまり差はなく実現しており、本実施例では、マルチディスプレイ化した4枚の液晶パネルを同時に表示制御している。
【0013】
図1,2により、1枚の基板でマルチディスプレイ化した4枚の液晶パネルの表示制御処理について詳細に説明する。クライアントPC4で加工された映像信号は、液晶表示回路3に送信され、入力データ処理回路9で映像信号の波形を計測し、映像信号の解像度、周波数、タイミングを算出する。また、同期信号の抽出と信号変換処理によりデジタルデータ化し、フレームメモリ書き込み回路10に送られる。フレームメモリ書き込み回路10は、フレームメモリ12または13に1画面分のデータを書き込む。この時フレームメモリ書き込み回路10は、フレームメモリ選択切り換え回路11を選択し、交互に2つのフレームメモリ12または13に書き込んで行く。書き込み方法は入力される1画面分のデータを順次書き込むだけであり単純な処理となる。
【0014】
一方書き込み処理と並行して、フレームメモリ12または13に書き込まれた画像データを読み出し、データ加工して液晶パネル2a〜2dに表示するまでの処理の流れを説明する。
出力表示タイミング信号生成回路14では、入力データ処理回路9で生成した映像信号の同期信号に同期した液晶パネル用の表示タイミング信号が生成される。生成されたタイミング信号は、液晶パネル2a〜2dのタイミング信号として液晶出力信号生成回路23a〜23dに送られると共にフレームメモリ読み出し回路15に入力され読み出しタイミングを生成する。フレームメモリ読み出し回路15は、読み出し開始アドレス設定回路16に開始アドレスをセットし、液晶パネル2a〜2dの1水平同期期間の画像データをフレームメモリ12または13から読み出すにあたりアドレス指定できるようにしている。また、フレームメモリ選択切り換え回路11は、2つのフレームメモリ12,13への書き込みと読み出し切り換えを制御している。選択指令は、フレームメモリ書き込み回路10が指示するようにしており、フレームメモリ読み出し回路15は選択されたフレームメモリ12または13のデータを読み出し、次段に配置されているラインメモリ18〜21に転送する。
出力表示タイミング信号生成回路14から出力される1水平同期期間に読み出すデータ量は、各液晶パネルの1ライン分×液晶パネル数となり、液晶パネル4枚で1画面を構成する場合は、1水平同期期間に4回フレームメモリをアクセスし任意のアドレスから任意のデータ量を読み出すことができる。液晶パネル4枚(2×2)で構成されている場合は、指定した開始アドレスから1/2ライン分のデータを読み出し、フレームメモリを4回アクセスして4枚の液晶パネル2a〜2dの1ライン分がラインメモリ18〜21に書き込まれる。この時フレームメモリ読み出し回路15は、読み出した表示データを2倍に拡大しラインメモリ18〜21に転送する。
【0015】
続いて次ラインのデータをフレームメモリ12または13から読み出し加工してラインメモリ18〜21に転送する場合は、フレームメモリ読み出し回路15よりラインメモリ書き込み選択切り換え回路17a〜17dを選択し、2つのラインメモリを交互に選択する。ラインメモリ書き込み選択切り換え回路17a〜17dが1番目のラインメモリ18a,19a,20a,21aを選択した場合は、ラインメモリ読み出し選択切り換え回路22a〜22dは、2番目のラインメモリ18b,19b,20b,21bを選択するようになる。選択されたラインメモリは、出力表示タイミング信号生成回路14で作られた表示制御タイミングで読み出し、ラインメモリ読み出し選択切り換え回路22a〜22dを介して液晶出力信号生成回路23a〜23dで液晶パネルのインターフェース信号であるLVDS方式のデータに変換され液晶パネルに送られる。液晶出力信号生成回路23a〜23dから各液晶パネル2a〜2dに接続されるLVDSインターフェースはケーブルで接続される。ケーブルの長さは、LVDS信号規格では10mまで可能なため、大画面を構成した場合でも、液晶表示回路基板1枚から各液晶パネルへ配線することが可能となる。そのため、液晶パネル背面に制御基板を取り付けることはなくなり軽量化が図れるため取り付けが楽になる。
液晶パネル4面を1ユニットとして実施例を説明したが、1水平同期期間にフレームメモリから読み出しラインメモリに転送可能な回数分液晶パネル数を1枚の液晶表示回路基板で駆動することができる。
本発明は、フレームメモリから読み出すデータの開始アドレスを指定するため、クライアントPC4からの指令により、図3のような表示パターンを表示することが可能となる。
また、液晶パネル数をさらに増やした場合は、図4のように映像信号分配器を使用して、各液晶表示回路基板にID番号を設定することで、多画面の液晶マルチディスプレイ装置を実現できる。
本発明の表示パネルは、直視型液晶パネルを実施例として説明したが、背面から光を当てた透過光により液晶パネル画面上の表示をスクリーンに投射する装置にも適用できる。また、プラズマディスプレイ等の表示パネルにも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の液晶マルチディスプレイ装置の基本構成ブロック図
【図2】本発明の液晶表示回路の構成図
【図3】本発明の表示例
【図4】液晶パネル数を増やした時の構成ブロック図
【図5】従来の液晶マルチディスプレイ装置の基本構成ブロック図
【図6】従来の液晶表示回路の構成図
【符号の説明】
【0017】
1 液晶マルチディスプレイ装置
2 液晶パネル
2a〜2d 各液晶パネル
3 液晶表示回路
3a〜3d 各液晶表示回路
4 クライアントPC
5 制御データ処理回路
6 ID番号設定回路
7 マイクロコントローラ
8 システムメモリ
9 入力データ処理回路
10 フレームメモリ書き込み回路
11 フレームメモリ選択切換回路
12 フレームメモリA
13 フレームメモリB
14 出力表示タイミング信号生成回路
15 フレームメモリ読み出し回路
16 読み出し開始アドレス設定回路
17a〜17d ラインメモリ書き込み選択回路
18a,18b 第1のラインメモリ
19a,19b 第2のラインメモリ
20a,20b 第3のラインメモリ
21a,20b 第4のラインメモリ
22a〜22d ラインメモリ読み出し選択回路
23a〜23d 液晶出力信号生成回路
24 映像信号分配器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の小型液晶パネルを組み合わせて作成された表示装置群と、該表示装置群に引き出し線を介して接続された液晶表示回路とから成る液晶マルチディスプレイ装置及び、映像信号を生成するクライアントPCからなるマルチディスプレイシステムであって、前記液晶表示回路には前記クライアントPCにより送信される映像信号を変換処理する入力データ処理回路と、該入力データ処理回路で処理された表示データを、前記液晶マルチディスプレイ装置に設けられている表示装置群のそれぞれの小型液晶パネルに表示する為に保存するフレームメモリと、該フレームメモリに表示データを書き込む為のフレームメモリ書き込み回路と、前記フレームメモリ書き込み回路に前記表示データが送信され、前記映像信号に含まれている同期信号により前記フレームメモリに書き込まれた表示データを読み出す為のフレームメモリ読み出し回路と、前記表示装置群を構成する複数の小型液晶パネルのうち、どの液晶パネルに映像を表示するかのアドレスを設定する為の読み出し開始アドレス設定回路と、前記設定されたアドレスに従って1水平同期期間に、前記表示装置群に対応したラインメモリが設けられていることを特徴とするマルチディスプレイシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−156846(P2010−156846A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335113(P2008−335113)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】