説明

マルチディスプレイシステム

【課題】
各ディスプレイ間の位置関係に応じた制御を行って各ディスプレイに画像を表示させることで、マルチディスプレイシステム全体における画像の統一感を失うことなく、各ディスプレイに見易い画像を表示させることができるマルチディスプレイシステムを提供する。
【解決手段】
複数のディスプレイ10を備えるマルチディスプレイシステム1において、調整後輝度補正割合候補算出部143および調整後輝度補正割合決定部144に、ディスプレイ10ごとに、他のディスプレイ10との位置関係に対応して予め設定される各距離影響値に基づいて、各入力画像に対する各補正割合を調整させ、輝度補正処理部18に、調整後の各補正割合に基づいて各入力画像を補正させて各補正後入力画像を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のディスプレイから構成されるマルチディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの分野では、入力画像をそのまま表示するのではなく、入力画像に基づいて様々な制御を行って、画質を最適にする工夫がなされている。たとえば、特許文献1に記載のディスプレイは、比較的明るい階調の画像を表示するときには画像の輝度を下げるように制御し、比較的暗い階調の画像を表示するときには画像の輝度を上げるように制御する輝度補正処理を行って、画像を見易くしている。
【0003】
これとは別に、ディスプレイの分野では、複数のディスプレイを隣接させて接続するマルチディスプレイシステムが知られている。マルチディスプレイシステムは、各ディスプレイの画面に、それぞれ異なる画像を表示させることもできるし、各ディスプレイの画面に、1つの画像の一部分をそれぞれ表示することで、複数の画面全体に亘って、この1つの画像を表示することもできる。たとえば、特許文献2〜4は、このようなマルチディスプレイシステムを開示している。
【0004】
特許文献2に記載のマルチディスプレイシステムは、複数の液晶ディスプレイ間において、画面の明るさを統一する制御を行っている。たとえば、一の液晶ディスプレイと他の液晶ディスプレイとにおいて、同一の画像データを用いて画像を表示させた場合に、一の液晶ディスプレイの画面よりも他の液晶ディスプレイの画面が暗いときには、他の液晶ディスプレイのバックライトユニットの発光量が多くなるように制御して、2つの液晶ディスプレイ間における画面の明るさを統一している。
【0005】
特許文献3に記載のマルチディスプレイシステムは、基準となるディスプレイの周囲の環境の明るさに応じて、基準となるディスプレイの画像の輝度を制御するとともに、他のディスプレイの画像の輝度を、基準となるディスプレイの画像の輝度に統一する制御を行っている。
【0006】
特許文献4に記載のマルチディスプレイシステムは、1つの画像を拡大して、複数のディスプレイの画面に亘って表示するときにおいて、拡大前の画像の平均輝度値に基づいて、各ディスプレイの画像の輝度を統一する制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−34946号公報
【特許文献2】特開2009−169196号公報
【特許文献3】特開2009−216808号公報
【特許文献4】特開2003−15623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マルチディスプレイシステムを構成する場合においても、特許文献1に記載のように、画像の階調値に応じて画像の輝度を制御し、画像を見易くすることが求められる。しかしながら、マルチディスプレイシステムの各ディスプレイが、それぞれ個別に画像の輝度を制御すると、各画像の輝度の補正割合がばらばらになり、マルチディスプレイシステム全体における画像の統一感が失われてしまう。
【0009】
たとえば、1つの画像を複数のディスプレイの画面に亘って拡大して表示する場合に、隣接するディスプレイの画面に表示される画像の繋ぎ目部分において、輝度が大きく異なっていると、違和感を生じてしまう。また、たとえば、隣接するディスプレイの画面に同一の画像を表示させる場合に、2つの画像において輝度が大きく異なっていると、違和感を生じてしまう。
【0010】
特許文献2〜4に記載のマルチディスプレイシステムは、上述したように、複数のディスプレイの画面の明るさを統一する制御を行っている。よって、特許文献1に記載の技術と特許文献2〜4に記載の技術とを組み合わせれば、統一感の問題は解決される。
【0011】
たとえば、一のディスプレイの画面に明るい階調の画像を表示し、そのディスプレイに隣接される他のディスプレイの画面に暗い階調の画像を表示しようとする場合に、一のディスプレイの画面が眩しくならないように一のディスプレイに表示させる画像の階調を下げるとともに、同じ下げ幅で、他のディスプレイに表示させる画像の階調を下げれば、この2つのディスプレイ間において、画像の統一感は失われない。しかしながら、統一感が失われない代わりに、暗い階調の画像はより暗くなってしまい、画像を見易くするという輝度補正処理の目的とは逆の結果になってしまう。
【0012】
このような問題が生じるのは、マルチディスプレイシステムにおける各ディスプレイの位置関係を考慮せずに、1つの明るさに統一しようとするからである。たとえば、隣接するディスプレイ間で明るさや色合いが異なっていれば違和感を生じ易いが、遠く離れたディスプレイ間で明るさや色合いが多少異なっていても違和感を生じ難い。
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、各ディスプレイ間の位置関係に応じた制御を行って各ディスプレイに画像を表示させることで、マルチディスプレイシステム全体における画像の統一感を失うことなく、各ディスプレイに見易い画像を表示させることができるマルチディスプレイシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、並べて配置される複数のディスプレイと、
各ディスプレイに表示すべき入力画像の階調値から入力画像ごとに代表階調値を算出する代表階調値算出部、各代表階調値と各ディスプレイにおいて共通して予め設定される基準階調値とに基づいて各入力画像に対応する補正割合をそれぞれ算出する補正割合算出部、および、算出された補正割合に基づいて入力画像を補正して補正後入力画像をそれぞれ生成する補正後入力画像生成部を含み、各ディスプレイに各補正後入力画像を表示させる制御部とを備えるマルチディスプレイシステムにおいて、
前記補正後入力画像生成部は、ディスプレイごとに、
他のディスプレイとの位置関係に対応して予め設定される各影響値に基づいて前記各補正割合を調整し、
調整後の前記各補正割合に基づいて前記入力画像を補正して前記補正後入力画像を生成することを特徴とするマルチディスプレイシステムである。
【0015】
また本発明は、前記補正後入力画像生成部は、ディスプレイごとに、
前記各影響値によって、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように、前記各補正割合を調整し、
調整後の前記各補正割合のうち、補正後入力画像の明るさを最も小さくする補正割合で、前記入力画像を補正して前記補正後入力画像を生成することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記補正後入力画像生成部は、
画面同士が互いに非平行となるように配置される2つのディスプレイが存在する場合には、その2つのディスプレイ間の距離については、実際の距離よりも遠い距離とみなした上で、前記各影響値によって、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように、前記各補正割合を調整することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記補正後入力画像生成部は、
画面同士が互いに非平行となるように配置される2つのディスプレイが存在する場合には、その2つのディスプレイ間の距離については、画面同士の相対的な角度が大きいほど、実際の距離よりも遠い距離とみなした上で、前記各影響値によって、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように、前記各補正割合を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、補正後入力画像生成部は、補正割合算出部によって算出された各補正割合を、他のディスプレイとの位置関係に対応して予め設定される各影響値に基づいて調整し、調整後の各補正割合に基づいて補正後入力画像を生成する。したがって、入力画像だけではなく、各ディスプレイの位置関係も考慮して、補正後入力画像を生成することができるので、マルチディスプレイシステム全体における画像の統一感を失うことなく、各ディスプレイに見易い画像を表示させることができる。
【0019】
また本発明によれば、補正後入力画像生成部は、補正割合算出部によって算出された各補正割合を、各影響値を用いて、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように調整し、調整後の各補正割合のうち、補正後入力画像の明るさを最も小さくする補正割合で補正後入力画像を生成する。したがって、補正後入力画像の明るさを抑える輝度補正処理を行う場合において、入力画像だけではなく、各ディスプレイ間の距離も考慮して、補正後入力画像を生成することができるので、マルチディスプレイシステム全体における画像の輝度の統一感を失うことなく、各ディスプレイに見易い画像を表示させることができる。
【0020】
また本発明によれば、補正後入力画像生成部は、画面同士が互いに非平行となるように配置される2つのディスプレイ間の距離については、実際の距離よりも遠い距離とみなした上で、各影響値を用いて、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように、各補正割合を調整する。したがって、補正後入力画像の明るさを抑える輝度補正処理を行う場合において、入力画像だけではなく、各ディスプレイ間の距離、さらには各ディスプレイの画面の角度も考慮して、補正後入力画像を生成することができるので、マルチディスプレイシステム全体における画像の輝度の統一感を失うことなく、各ディスプレイに見易い画像を表示させることができる。
【0021】
また本発明によれば、補正後入力画像生成部は、画面同士が互いに非平行となるように配置される2つのディスプレイ間の距離については、画面同士の相対的な角度が大きいほど、実際の距離よりも遠い距離とみなした上で、各影響値を用いて、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように、各補正割合を調整する。したがって、補正後入力画像の明るさを抑える輝度補正処理を行う場合において、各ディスプレイが様々な角度で配置されているときに、入力画像だけではなく、各ディスプレイ間の距離、さらには各ディスプレイの画面の角度も考慮して、補正後入力画像を生成することができるので、マルチディスプレイシステム全体における画像の輝度の統一感を失うことなく、各ディスプレイに見易い画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】マルチディスプレイシステム1の外観を模式的に示す図である。
【図2】ディスプレイ10の電気的構成を模式的に示す図である。
【図3】基準階調値および距離影響テーブルの設定の手順を示すフローチャートである。
【図4】距離影響テーブルの設定手順を示すフローチャートである。
【図5】輝度補正処理を示すフローチャートである。
【図6】マルチディスプレイシステム1が、部屋のコーナーに配置された様子を示す図である。
【図7】ディスプレイ10A〜10Cを上から見たときの図である。
【図8】制御デバイス3を含むマルチディスプレイシステム1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態であるマルチディスプレイシステム1について説明する。図1は、マルチディスプレイシステム1の外観を模式的に示す図である。マルチディスプレイシステム1は、複数のディスプレイ10A〜10Lと、制御部とを含む。ディスプレイ10A〜10Lは、画面111A〜111Lに画像をそれぞれ表示するデバイスであり、図1は、ディスプレイ10A〜10Lが3行4列で隣接して配置される例を示している。ディスプレイ10A〜10Lは、液晶ディスプレイであっても、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイであっても、プラズマディスプレイであってもよい。ディスプレイ10A〜10Lは同一に構成され、特に区別する必要が無い場合には、ディスプレイ10と総称する。
【0024】
制御部は、各ディスプレイ10に対応する入力画像を、各入力画像および各ディスプレイ10の位置関係に応じて補正し、補正後入力画像として画面111に表示させるデバイスである。制御部は、ディスプレイ10の一部であってもよく、ディスプレイ10とは別のデバイスであってもよい。本実施形態では、各ディスプレイ10の中央処理部14および輝度補正処理部18が、制御部として機能する。
【0025】
図2に、ディスプレイ10の電気的構成を模式的に示す。ディスプレイ10は、画面111を含む表示部11と、表示処理部12と、表示メモリ13と、中央処理部14と、内部記憶部15と、映像入力端子161および映像出力端子162を備える映像通信処理部16と、上流側端子171および下流側端子172を備えるシリアル通信処理部17と、輝度補正処理部18とから構成される。なお、各ディスプレイ10A〜10Lの各部には、対応する添え字A〜Lを付すこととする。
【0026】
ディスプレイ10Aの下流側端子172Aとディスプレイ10Bの上流側端子171Bとが通信ケーブル2で接続され、ディスプレイ10Bの下流側端子172Bとディスプレイ10Cの上流側端子171Cとが通信ケーブル2で接続され、以下同様にして、ディスプレイ10Aからディスプレイ10Lまでがデイジーチェイン接続される。1つの通信ケーブル2に接続される2つのディスプレイ10のうち、この通信ケーブル2が下流側端子172に接続されるディスプレイ10を、上流側のディスプレイ10と称し、この通信ケーブル2が上流側端子171に接続されるディスプレイ10を、下流側のディスプレイ10と称する。したがって、ディスプレイ10Aは最も上流側のディスプレイ10であり、ディスプレイ10Lは最も下流側のディスプレイ10となる。
【0027】
各ディスプレイ10には、上流側から順に、「1」〜「12」のディスプレイIDが割り振られる。上流側のディスプレイ10と下流側のディスプレイ10とは、通信ケーブル2を介して、後述する代表階調値の送受信を行う。
【0028】
あるディスプレイ10の映像出力端子162に対して、そのディスプレイ10よりも1つ下流側のディスプレイ10の映像入力端子161が、図示しない映像通信ケーブルで接続される。最上流のディスプレイ10Aの映像入力端子161Aは、PC(Personal Computer)などの図示しない画像出力装置に接続される。たとえば、各ディスプレイ10に対応する入力画像は、ディスプレイIDとセットになったデータとして、画像出力装置からディスプレイ10Aに入力され、このデータのうち、ディスプレイ10Aは、自身のディスプレイID「1」とセットになっている入力画像のみ表示メモリ13Aに記憶し、それ以外のデータを、映像通信ケーブルを介して下流側のディスプレイ10Bへ送信する。下流側のディスプレイ10Bは、自身のディスプレイID「2」とセットになっている入力画像のみ表示メモリ13Bに記憶し、それ以外のデータを、映像通信ケーブルを介して下流側のディスプレイ10Cへ送信する。以下同様にして、各ディスプレイ10は、対応する入力画像を表示メモリ13に記憶する。
【0029】
本実施形態では、入力画像は、画像出力装置から1フレームごとに、60fpsの速度で入力される動画像であるとする。そして、通信ケーブル2を介した通信の速度は、入力画像のフレーム周期よりも充分に早いとする。充分に早い通信規格としては、RS232Cや、I2C、SPIなどが挙げられる。映像通信ケーブルを介した通信や通信ケーブル2を介した通信の制御は、中央処理部14が行ってもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの通信専用の集積回路が行ってもよい。
【0030】
上記のようにして表示メモリ13に記憶された入力画像は、本発明に係る制御部として機能する中央処理部14および輝度補正処理部18によって輝度補正処理が行われ、補正後入力画像に補正される。そして、表示処理部12は、表示部11の画面111に補正後入力画像を表示させる。
【0031】
中央処理部14は、より詳細には、後述する平均輝度値算出部141、調整前輝度補正割合算出部142、調整後輝度補正割合候補算出部143、および調整後輝度補正割合決定部144として機能する。このうち、平均輝度値算出部141は、本発明に係る代表階調値算出部として機能し、調整前輝度補正割合算出部142は、本発明に係る補正割合算出部として機能し、調整後輝度補正割合候補算出部143、調整後輝度補正割合決定部144、および輝度補正処理部18は、本発明に係る補正後入力画像生成部として機能する。
【0032】
中央処理部14および輝度補正処理部18を制御部として機能させるために、内部記憶部15には、基準階調値と、距離影響テーブルとが設定される。図3は、基準階調値および距離影響テーブルの設定の手順を示すフローチャートである。図3に示すように、各ディスプレイ10は、基準階調値が設定された後(ステップA1)、距離影響テーブルが設定される(ステップA2)。
【0033】
基準階調値は、輝度補正処理の基準となる値であり、本実施形態では、0以上100以下の基準輝度値である。この基準輝度値は、各ディスプレイ10に共通する値であるので、マルチディスプレイシステム1としてディスプレイ10を組み立てる前に、各ディスプレイ10に設定される。ただし、マルチディスプレイシステム1の組立後に設定することも可能である。
【0034】
距離影響テーブルは、ディスプレイ10ごとに、他のディスプレイとの位置関係に対応して設定される。本実施形態では、距離影響テーブルは、他のディスプレイ10に対する距離比率と距離調整係数Kとの積である距離影響値を、1つにまとめたテーブルである。距離比率は、各ディスプレイ間の相対的な距離であり、たとえば、図1において、ディスプレイ10の縦の長さを1としたときの、2つのディスプレイ10間における画面111同士の距離である。たとえば、ディスプレイ10の縦の長さを1とするとき、ディスプレイ10の横の長さは2であり、ディスプレイ10Aとディスプレイ10Gとの間の距離比率は、√(1+4)=√17≒4.1である。距離調整係数Kは、ディスプレイ10の大きさ、配置数、配置の仕方によって定められる値であり、距離調整係数Kが大きくなるほどディスプレイ10同士は遠く離れているとみなすことができる。本実施形態では、初期設定での距離調整係数Kは1であるとし、1〜20の間で適宜変更できるとする。
【0035】
図4は、距離影響テーブルの設定手順を示すフローチャートである。図4に示すように、距離比率が設定された後(ステップB1)、距離調整係数Kが設定され(ステップB2)、これによって、距離影響テーブルが設定される。表1に、ディスプレイ10Aに設定される距離影響テーブルを示す。なお、本実施形態では、表1に示すように、ディスプレイ10Aには、ディスプレイ10A自身との距離である「0」も記憶されている。
【0036】
【表1】

【0037】
このような距離影響テーブルは、ディスプレイ10の大きさだけではなく、配置数や配置の仕方にもよるので、マルチディスプレイシステム1の組立後に設定される。ただし、距離影響値をすべて手動で設定する必要は無く、たとえば、3行4列のマルチディスプレイシステムのディスプレイID「1」〜「12」用のテーブルや、3行3列のマルチディスプレイシステムのディスプレイID「1」〜「9」用のテーブルなど、予想されるマルチディスプレイの組立態様に合わせて、様々な距離影響テーブルを予め記憶させておき、「3行4列」や「3行3列」などのマルチディスプレイシステムの構成をディスプレイ10自体が判断し、自身のディスプレイIDに対応する距離影響テーブルを選択して設定するようにしてもよい。また、マルチディスプレイシステムを組み立てる者が、「3行4列」や「3行3列」などを選択することで、ディスプレイ10自体が自身のディスプレイIDに対応する距離影響テーブルを選択して設定するようにしてもよい。
【0038】
以上のようにして、基準輝度値および距離影響テーブルが設定された後、各ディスプレイ10に各入力画像が記憶されると、各入力画像に対して輝度補正処理が行われる。以下では、ディスプレイ10Aに入力画像DAが記憶され、ディスプレイ10Bに入力画像DBが記憶され、以下同様にして、ディスプレイ10A〜10Lに入力画像DA〜DLが記憶されたものとする。このときの輝度補正処理を、図5のフローチャートで示す。
【0039】
ステップC1では、ディスプレイ10Aは、入力画像DAから代表階調値を算出する。ここで、ある画像の代表階調値とは、その画像の各画素の階調値から所定の規則に従って算出される、その画像を代表する値であり、平均輝度値や、最大平均階調値、最小平均階調値などである。
【0040】
たとえば、ある画像における、ある画素の階調値が255階調で表され、(R,G,B)=(r,g,b)であるとき、その画素の輝度値は、輝度値Y=(0.2126r+0.7152g+0.0722b)×100/255(輝度値Yの最小値は0、最大値は100)として算出することができ、ある画像について、すべての画素の輝度値Yの算術平均値を、平均輝度値として算出することができる。
【0041】
また、たとえば、ある画像における、ある画素の階調値が255階調で表され、(R,G,B)=(r,g,b)であるとき、その画素の平均階調値は、平均階調値M=0.333r+0.333g+0.333b(平均階調値Mの最小値は0、最大値は255)として算出することができ、ある画像について、すべての画素の平均階調値Mのうちの最大値を、最大平均階調値として算出することができ、また、ある画像について、すべての画素の平均階調値Mのうちの最小値を、最小平均階調値として算出することができる。
【0042】
このようにして算出される代表階調値は、画像が明るいほど大きく、暗いほど小さくなる値である。以下では、各ディスプレイ10が算出する代表階調値は、上記平均輝度値であるとする。
【0043】
すなわち、ステップC1では、ディスプレイ10Aの中央処理部14Aは、平均輝度値算出部141Aとして機能し、入力画像DAの平均輝度値を算出する。同様に、ディスプレイ10B〜10Lの中央処理部14B〜14Lは、平均輝度値算出部141B〜141Lとして機能し、入力画像DB〜DLの平均輝度値を算出する。
【0044】
次に、ステップC2において、ディスプレイ10Aは、算出した平均輝度値を、通信ケーブル2を介して、ディスプレイID「1」とともに、他のすべてのディスプレイ10に対して送信する。同様に、ディスプレイ10B〜10Lは、算出した平均輝度値を、通信ケーブル2を介して、自身のディスプレイIDとともに、他のすべてのディスプレイ10に対して送信する。
【0045】
次に、ステップC3において、ディスプレイ10Aは、他のすべてのディスプレイ10から平均輝度値およびディスプレイIDを受信する。同様に、ディスプレイ10B〜10Lは、他のすべてのディスプレイ10から平均輝度値およびディスプレイIDを受信する。
【0046】
次に、ステップC4において、ディスプレイ10Aの中央処理部14Aは、調整前輝度補正割合算出部142Aとして機能し、各ディスプレイ10に対応する平均輝度値と予め設定されている基準輝度値とから、各入力画像DA〜DLに対応する調整前輝度補正割合を算出する。同様に、ディスプレイ10B〜10Lの中央処理部14B〜14Lは、調整前輝度補正割合算出部142B〜142Lとして機能し、各入力画像DA〜DLに対応する調整前輝度補正割合を算出する。
【0047】
ここで、調整前輝度補正割合とは、各ディスプレイ10が、マルチディスプレイシステム1としてではなく、それぞれ独立して輝度補正処理を行う場合において、入力画像の各画素の階調値に掛ける係数であり、たとえば、基準輝度値/平均輝度値×100[%]で計算される値である。ただし、平均輝度値が基準輝度値以下である場合には、調整前輝度補正割合を100[%]として計算してもよい。すなわち、従来では、各ディスプレイ10が独立して輝度補正処理を行う場合において、少なくとも入力画像の平均輝度値が基準輝度値よりも大きいときには、入力画像の各画素の階調値に調整前輝度補正割合を乗算することで入力画像の輝度を落として、画面111が眩しくならないようにしていた。しかしながら、各ディスプレイ10がマルチディスプレイシステム1の一部である場合には、入力画像ごとに算出される調整前輝度補正割合によって入力画像の輝度を落とすと、マルチディスプレイシステム1全体における画像の統一感が失われてしまう。この問題に対して、各ディスプレイ10によって算出された調整前輝度補正割合のうちで最も低い調整前輝度補正割合に統一して各入力画像の輝度を落とすことも考えられるが、そのようにすると、平均輝度値が基準輝度値よりも小さい、比較的暗い入力画像がより暗くなり、見え難くなってしまう。そこで、本発明では、ディスプレイ10間の位置関係に応じて調整前輝度補正割合を調整する。
【0048】
具体的には、ステップC4の後、ステップC5において、ディスプレイ10Aは、各調整前輝度補正割合に、対応する距離影響値を加算し、調整後輝度補正割合候補とする。たとえば、ディスプレイ10Aは、ディスプレイ10Aの調整前輝度補正割合にディスプレイ10A自身との間の距離影響値「0」を加算して、調整後輝度補正割合候補とする。また、たとえば、ディスプレイ10Aは、ディスプレイ10Bの調整前輝度補正割合にディスプレイ10Aとディスプレイ10Bとの間の距離影響値「2K」を加算して、調整後輝度補正割合候補とする。
【0049】
このように、ディスプレイ10Aの中央処理部14Aは、調整後輝度補正割合候補算出部143Aとして機能し、ディスプレイ10A〜10Lに対応する12個の調整後輝度補正割合候補を算出する。同様に、ディスプレイ10B〜10Lの中央処理部14B〜14Lは、調整後輝度補正割合候補算出部143B〜143Lとして機能し、ディスプレイ10A〜10Lに対応する12個の調整後輝度補正割合候補を算出する。各ディスプレイ10が算出した12個の調整後輝度補正割合候補は、各ディスプレイ10からの距離に応じて算出された値の組であるので、それぞれ異なる組となる。
【0050】
なお、調整後輝度補正割合候補のうち、100を超える値のものは、100としてもよい。また、本実施形態では、ディスプレイ10Aは、ディスプレイ10Aの調整前輝度補正割合に、ディスプレイ10A自身との間の距離影響値「0」を加えているが、この処理は他の調整前輝度補正割合に対する処理と統一するために行っているだけであり、「0」を加算する必要は無いので、ディスプレイ10Aは、ディスプレイ10Aの調整前輝度補正割合そのものを、ディスプレイ10Aに対応する調整後輝度補正割合候補としてもよい。
【0051】
次に、ステップC6では、ディスプレイ10Aの中央処理部14Aは、調整後輝度補正割合決定部144Aとして機能し、ディスプレイ10A〜10Lに対応する12個の調整後輝度補正割合候補のうちの最小値を、調整後輝度補正割合に決定する。同様に、ディスプレイ10B〜10Lの中央処理部14B〜14Lは、調整後輝度補正割合決定部144B〜144Lとして機能し、ディスプレイ10A〜10Lに対応する12個の調整後輝度補正割合候補のうちの最小値を、調整後輝度補正割合に決定する。
【0052】
次に、ステップC7では、ディスプレイ10Aの輝度補正処理部18Aは、決定された調整後輝度補正割合を入力画像DAの各画素の階調値に乗算して、補正後入力画像を生成し、表示処理部12Aは、補正後入力画像を表示部11Aの画面111Aに表示させる。同様に、ディスプレイ10B〜10Lの輝度補正処理部18B〜18Lは、決定された調整後輝度補正割合を入力画像DB〜DLの各画素の階調値に乗算して、補正後入力画像を生成し、表示処理部12B〜12Lは、補正後入力画像を表示部11B〜11Lの画面111Lに表示させる。
【0053】
以下に、ステップC4〜ステップC7の処理の具体例を挙げる。具体例では、入力画像DA〜DLの平均輝度値は、以下の表2のとおりであるとする。
【0054】
【表2】

【0055】
また、基準輝度値は80であり、距離調整係数K=1とする。さらに、図1に示すディスプレイ10の配置に対応して、表3〜表14のように、各ディスプレイ10に、距離影響テーブルが設定されているものとする。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
【表7】

【0061】
【表8】

【0062】
【表9】

【0063】
【表10】

【0064】
【表11】

【0065】
【表12】

【0066】
【表13】

【0067】
【表14】

【0068】
このように設定されるとき、ステップC4において、ディスプレイ10Aは、基準輝度値(80)/平均輝度値×100[%]を計算して、調整前輝度補正割合を算出する。算出される調整前輝度補正割合は、表15のとおりであり、ディスプレイ10B〜10Lも、表15と同じ調整前輝度補正割合を算出する。
【0069】
【表15】

【0070】
ステップC5では、ディスプレイ10Aは、各調整前輝度補正割合に、対応する距離影響値を加算し、12個の調整後輝度補正割合候補を算出する。ディスプレイ10B〜10Lも、同様に、12個の調整後輝度補正割合候補を算出する。各ディスプレイ10は、表16〜表27のように、各ディスプレイ10に対応する12個の調整後輝度補正割合候補を算出する。
【0071】
【表16】

【0072】
【表17】

【0073】
【表18】

【0074】
【表19】

【0075】
【表20】

【0076】
【表21】

【0077】
【表22】

【0078】
【表23】

【0079】
【表24】

【0080】
【表25】

【0081】
【表26】

【0082】
【表27】

【0083】
ステップC6では、ディスプレイ10A〜10Lは、表16〜表27の調整後輝度補正割合候補のうちの最小値をそれぞれ選択し、調整後輝度補正割合に決定する。そして、ステップC7では、ディスプレイ10A〜10Lは、決定した調整後輝度補正割合で入力画像DA〜DLを補正して補正後入力画像とする。表28に、ディスプレイ10A〜10Lが決定した調整後輝度補正割合を示す。
【0084】
【表28】

【0085】
表28に示すように、調整後輝度補正割合は、最大値がディスプレイ10Aの84.5であり、最小値がディスプレイ10Kの80であるので、最大で4.5の差が生じている。これは、各ディスプレイ10が、対応する入力画像の平均輝度値に応じて調整後輝度補正割合を決定したからである。しかしながら、隣接するディスプレイ10間での調整後輝度補正割合の差は、すべて2.0以下であり、隣接するディスプレイ10間において、調整後輝度補正割合の差は小さく抑えられている。これは、各ディスプレイ10が、ディスプレイ10間の位置関係に応じて調整後輝度補正割合を決定したからである。すなわち、本発明に係るマルチディスプレイシステム1は、入力画像の平均輝度値だけではなく、ディスプレイ10間の位置関係に応じて、輝度の補正の割合を決定することで、マルチディスプレイシステム1全体における画像の統一感を失うことなく、各ディスプレイ10の画質を向上させ、各ディスプレイ10に見易い画像を表示させることができる。
【0086】
たとえば、表2に示すように、ディスプレイ10Bに対応する入力画像DBは、平均輝度値が10の比較的暗い画像であり、ディスプレイ10Gに対応する入力画像DGは、平均輝度値が60の比較的明るい画像であり、ディスプレイ10Kに対応する入力画像DKは、平均輝度値が100の最も明るい画像である。このとき、従来のように、各ディスプレイ10が独立して輝度補正処理を行うと、表15に示したように、ディスプレイ10B,10Gの輝度の補正の割合は、ともに100となり、ディスプレイ10Kの輝度の補正の割合は80となる。そうすると、ディスプレイ10B,10Gでは100%の輝度で画像が表示され、ディスプレイ10Kでは80%の輝度に落として画像が表示されるので、各画像は見易いかもしれないが、隣接しているディスプレイ10Gとディスプレイ10Kとの間で輝度の補正の割合が大きく異なってしまい、画像の統一感が失われてしまう。また、ディスプレイ10Kに合わせて、ディスプレイ10B,10Gの輝度を80%に落とすと、ディスプレイ10Bの画像が暗くなり過ぎて見え辛くなってしまう。これに対して、本発明に係るマルチディスプレイシステム1によれば、ディスプレイ10Bでは82.8%の輝度で画像が表示され、ディスプレイ10Gでは81%の輝度で画像が表示され、ディスプレイ10Kでは80%の輝度で画像が表示されるので、隣接しているディスプレイ10Gとディスプレイ10Kとの間で輝度の補正の割合が大きく異ならないように制御しながら、ディスプレイ10Kから遠くに離れたディスプレイ10Bの輝度を向上することができる。よって、本発明では、画像の統一感を失わずに、各画像を見易く表示することができる。
【0087】
なお、マルチディスプレイシステム1は、上記のように輝度を落とす補正を行うことで、各ディスプレイ10の消費電力を抑え、発熱量を少なくすることもできる。
【0088】
本実施形態では、上述したように、通信ケーブル2を介した平均輝度値の送受信に掛かる時間は、入力画像のフレーム周期よりも充分に早いので、1フレームごとに、調整後輝度補正割合による輝度の補正を行うことができる。ただし、1フレームごとに輝度補正処理を行うのではなく、フレームを数回間引いた上で、間引いた分の時間を利用して、平均輝度値の送受信および調整後輝度補正割合による輝度の補正を行ってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、平均輝度値がどのような値であるかにかかわらず、他のディスプレイ10へ平均輝度値を送信しているが、平均輝度値が基準輝度値よりも高い場合にのみ、他のディスプレイ10へ平均輝度値を送信するようにしてもよい。そして、他のディスプレイ10は、所定時間待っても平均輝度値が送信されてこないディスプレイ10に対しては、そのディスプレイ10に対応する調整前輝度補正割合を100とみなすようにしてもよい。
【0090】
本実施形態では、各ディスプレイ10に補正後入力画像を表示した状態で、1〜20の間で距離調整係数Kを適宜変更することができ、変更に伴って補正後入力画像が変更される。したがって、マルチディスプレイシステム1の組立後に、各ディスプレイ10に補正後入力画像を表示させて、距離調整係数Kを適切な値に設定することができる。また、距離調整係数Kは、距離比率に掛ける共通の係数としたが、共通の係数でなくてもよい。たとえば、2つのディスプレイ10の画面111同士が非平行である場合には、距離調整係数Kを異なる係数とする。
【0091】
図6に、ディスプレイ10の画面111同士が非平行な場合を示す。図6は、マルチディスプレイシステム1が、部屋のコーナーに配置された様子を示している。図6に示すように、ディスプレイ10Aの画面111Aとディスプレイ10Bの画面111Bとは、互いに平行となっているが、ディスプレイ10Bの画面111Bとディスプレイ10Cの画面111Cとは、互いに非平行となっている。このような場合、ディスプレイ10Bとディスプレイ10Cとの間の距離は、実際の距離よりも遠い距離とみなして、距離調整係数Kが設定される。
【0092】
たとえば、ディスプレイ10Bとディスプレイ10Cとの間の相対的な角度θは30°であるとし、ディスプレイ10Bに設定される、ディスプレイ10Aに対する距離比率(ディスプレイ10Bとディスプレイ10Aとの中心間距離)は2であり、距離調整係数Kは1であるとする。このとき、角度θは30°であるので、ディスプレイ10Cに対する距離比率(ディスプレイ10Bとディスプレイ10Cとの中心間距離)は1.93と算出され、ディスプレイ10Aに対する距離比率よりも実際には小さい。しかしながら、ディスプレイ10Bとディスプレイ10Cとの間の距離は、実際の距離よりも遠い距離であるとみなして、ディスプレイ10Aに対する距離影響値(距離比率×距離調整係数K)よりも、ディスプレイ10Cに対する距離影響値(距離比率×距離調整係数K)が大きくなるように、ディスプレイ10Cに対する距離調整係数Kが設定される。たとえば、ディスプレイ10Bには、ディスプレイ10Cに対する距離調整係数K=3.11が設定される。これにより、ディスプレイ10Bに設定される、ディスプレイ10Aに対する距離影響値(距離比率×距離調整係数K)は2となり、ディスプレイ10Cに対する距離影響値(距離比率×距離調整係数K)は6となる。したがって、ディスプレイ10Bは、ディスプレイ10Aに対する距離影響値を2とし、ディスプレイ10Cに対する距離影響値を6として、調整後輝度補正割合候補を算出し、調整後輝度補正割合を決定することになる。
【0093】
このように、画面111同士が非平行な場合に、ディスプレイ10間の距離を実際の距離よりも遠い距離とみなすのは、画面111同士が非平行な場合、そのディスプレイ10間において輝度の補正の割合が多少異なっていても違和感を生じ難いからである。各ディスプレイ10は、各ディスプレイ10の画面111の正面から見たときに最も画像が見易いように視野角が設定されているので、2つのディスプレイ10において画面111同士が非平行な場合、いずれかのディスプレイ10の視野角の中心から外れることになる。視野角の中心から外れると目に入る光量が低下するので、その2つのディスプレイ10において輝度の補正の割合が多少異なっていても違和感を生じ難くなり、画像の統一感は失われない。したがって、画面111同士が非平行な場合には、画面111同士が遠く離れているとみなして、輝度を向上させることができる。
【0094】
さらに、画面111同士の相対的な角度が大きいほど、実際の距離よりも遠い距離とみなして、距離調整係数Kを設定することが好ましい。図7は、ディスプレイ10A〜10Cを上から見たときの図であり、ディスプレイ10Bとディスプレイ10Aとの間の相対的な角度θ1は40°であるとし、ディスプレイ10Bとディスプレイ10Cとの間の相対的な角度θ2は20°であるとし、各ディスプレイ10A〜10Cの長さの距離比率は2であるとする。このとき、ディスプレイ10Bに設定される、ディスプレイ10Aに対する距離比率(ディスプレイ10Bとディスプレイ10Aとの中心間距離)は1.88と算出され、ディスプレイ10Bに設定される、ディスプレイ10Cに対する距離比率(ディスプレイ10Bとディスプレイ10Cとの中心間距離)は1.97と算出される。したがって、実際には、ディスプレイ10Bに対しては、ディスプレイ10Cよりもディスプレイ10Aの方が近いのであるが、ディスプレイ10Aの方が画面111同士の相対的な角度が大きく、その結果、視野角の重なる範囲が小さくなるので、実際の距離よりも遠い距離とみなして、距離調整係数Kを設定することが好ましい。
【0095】
たとえば、ディスプレイ10Bには、ディスプレイ10Aに対する距離調整係数K=3.3が設定され、ディスプレイ10Cに対する距離調整係数K=2.9が設定される。これにより、ディスプレイ10Bに設定される、ディスプレイ10Aに対する距離影響値(距離比率×距離調整係数K)は6.2となり、ディスプレイ10Cに対する距離影響値(距離比率×距離調整係数K)は5.7となる。したがって、ディスプレイ10Bは、ディスプレイ10Aに対する距離影響値を6.2とし、ディスプレイ10Cに対する距離影響値を5.7として、調整後輝度補正割合候補を算出し、調整後輝度補正割合を決定することになる。これにより、画像の統一感を失うことなく、各画像の輝度をより向上させることができる。
【0096】
なお、上記のように、画面111同士の相対的な角度θに応じた距離調整係数Kは、マルチディスプレイシステム1を組み立てる者が手動で設定してもよいし、相対的な角度θの値ごとに所定の係数α(θ)を記憶させておき、角度θが入力されることで、ディスプレイ10自身が、画面111同士が平行な場合の距離調整係数Kに係数α(θ)を乗算して、角度θに応じた距離調整係数Kを設定するようにしてもよい。たとえば、画面111同士が平行な場合の距離調整係数K=1の場合において、係数α(30°)=3.11をディスプレイ10に記憶させておけば、このディスプレイ10は、角度θ=30°で傾斜した他のディスプレイ10に対する距離調整係数Kを、K=1×3.11=3.11に設定する。
【0097】
上述した実施形態では、各ディスプレイ10の中央処理部14および輝度補正処理部18が全体として、本発明に係る制御部として機能していたが、本発明に係る制御部として機能するデバイスを、ディスプレイ10とは別に用意し、ディスプレイ10に接続してマルチディスプレイシステムを構成してもよい。
【0098】
図8に、本発明に係る制御部として機能する制御デバイス3を含むマルチディスプレイシステム1を示す。制御デバイス3は、PCなどから実現され、基準輝度値および各ディスプレイ10に対応する距離影響テーブルが記憶されている。
【0099】
制御デバイス3は、各ディスプレイ10に対応から平均輝度値が送信されると、各平均輝度値および基準輝度値から、各調整前輝度補正割合を算出する。次に、各調整前輝度補正割合および各距離影響テーブルから、各調整後輝度補正割合候補の組を算出し、算出した各組の中から、それぞれ最小値を選択して、各ディスプレイ10に対応する調整後輝度補正割合に決定する。最後に、決定した各調整後輝度補正割合を、対応する各ディスプレイ10に送信し、各ディスプレイ10の輝度補正処理部18は、受信した調整後輝度補正割合で入力画像を補正して補正後入力画像を表示する。
【0100】
このように、各ディスプレイ10とは別のデバイスとして制御部を設けることで、各ディスプレイ10の構成を簡単にすることができる。なお、図8では、ディスプレイ10Lの下流側に制御デバイス3を設けているが、ディスプレイ10Aの上流側に制御デバイス3を設けてもよい。また、制御デバイス3と各ディスプレイ10との間で、平均輝度値や調整後輝度補正割合の送受信を行っているが、制御デバイス3が、入力画像から平均輝度値を算出するとともに、調整後輝度補正割合から補正後入力画像の生成を行うようにしてもよい。この場合、各ディスプレイ10としては、従来公知のディスプレイを用いることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 マルチディスプレイシステム
2 通信ケーブル
3 制御デバイス
10,10A〜10L ディスプレイ
14,14A〜14L 中央処理部
18,18A〜18L 輝度補正処理部
141,141A〜141L 平均輝度値算出部
142,142A〜142L 調整前輝度補正割合算出部
143,143A〜143L 調整後輝度補正割合候補算出部
144,144A〜144L 調整後輝度補正割合決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並べて配置される複数のディスプレイと、
各ディスプレイに表示すべき入力画像の階調値から入力画像ごとに代表階調値を算出する代表階調値算出部、各代表階調値と各ディスプレイにおいて共通して予め設定される基準階調値とに基づいて各入力画像に対応する補正割合をそれぞれ算出する補正割合算出部、および、算出された補正割合に基づいて入力画像を補正して補正後入力画像をそれぞれ生成する補正後入力画像生成部を含み、各ディスプレイに各補正後入力画像を表示させる制御部とを備えるマルチディスプレイシステムにおいて、
前記補正後入力画像生成部は、ディスプレイごとに、
他のディスプレイとの位置関係に対応して予め設定される各影響値に基づいて前記各補正割合を調整し、
調整後の前記各補正割合に基づいて前記入力画像を補正して前記補正後入力画像を生成することを特徴とするマルチディスプレイシステム。
【請求項2】
前記補正後入力画像生成部は、ディスプレイごとに、
前記各影響値によって、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように、前記各補正割合を調整し、
調整後の前記各補正割合のうち、補正後入力画像の明るさを最も小さくする補正割合で、前記入力画像を補正して前記補正後入力画像を生成することを特徴とする請求項1に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項3】
前記補正後入力画像生成部は、
画面同士が互いに非平行となるように配置される2つのディスプレイが存在する場合には、その2つのディスプレイ間の距離については、実際の距離よりも遠い距離とみなした上で、前記各影響値によって、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように、前記各補正割合を調整することを特徴とする請求項2に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項4】
前記補正後入力画像生成部は、
画面同士が互いに非平行となるように配置される2つのディスプレイが存在する場合には、その2つのディスプレイ間の距離については、画面同士の相対的な角度が大きいほど、実際の距離よりも遠い距離とみなした上で、前記各影響値によって、ディスプレイ間の距離が遠いほど調整の度合いが大きく、近いほど調整の度合いが小さくなるように、前記各補正割合を調整することを特徴とする請求項3に記載のマルチディスプレイシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97205(P2013−97205A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240658(P2011−240658)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】