説明

マルチビームアンテナシステム

【課題】サイズに関する従来の制約を少なくとも軽減するコンパクトなマルチビームアンテナシステムを提供する。
【解決手段】マルチビームアンテナシステムは、M個の放射ソースとP個のネットワークとを含み、ネットワークの各々はN個の放射素子を含み、Pは1より大きく、Nは偶数であり、ネットワークの放射素子は、電気長が同一である伝送線によって2つずつ接続されており、P個のネットワークは各ネットワークの中心を共通にして設けられ、M個の放射ソースは中心から距離Liだけ離れた場所にそれぞれ設けられ、距離Liは遠視野であるフィールドの距離よりも厳密に小さく、iは1ないしMの範囲内の値を有する。本システムはMIMO形式の装置に使用することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンパクトなマルチビームアンテナシステムに関連し、特に無線通信に使用可能なマルチビームアンテナシステムに関連し、具体的には電磁波の伝搬状況がマルチパスの影響を大きく被ってしまう無線ドメスティックネットワークに使用可能なマルチビームアンテナシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
無線ドメスティックネットワーク(wireless domestic network)、インテリジェントネットワーク又は同様な種類のネットワーク等のようなアプリケーションの登場と共に、空間内の特定の方向に放射電力を集中させることが可能なアンテナである指向性アンテナを利用することは、非常に有用である。しかしながらアンテナの最小サイズは物理法則によって制限され、アンテナが指向性を更に強めるにつれて又はアンテナの動作周波数が低くなるにつれて、サイズはなおさら重要になる。
【0003】
現在、指向性アンテナの用途は非常に高異周波数で動作する(しばしば固定ビームを使用する)アプリケーションに制限されたままであり、例えばレーダーの用途や衛星の用途等のようなサイズに制約がない用途に限られている。これに対して、レトロディレクティブアンテナ(retro-directive antenna)と呼ばれるアンテナ装置は、空間内の特定の方向に非常に簡易に指向性ビームを形成することができる。レトロディレクティブアンテナネットワークは、ネットワーク受信機のアンテナ各々が特徴的な経路長差(すなわち、位相差)と共に信号源からの入射信号を受信するという規則又は事実に基づくものである。この位相差は放射するソース(信号源)の方向に特徴的又は固有である。すなわち、送信される信号が信号源の方向に放射されるように、送信機の各アンテナ同士の間の位相差は、リターンパスにおける経路長差予測して受信時のものと反対になっている。
【0004】
レトロディレクティブアンテナについては1959年10月6日付けの特許文献1に開示されており、その文献には、「ヴァンアッタ(Van-atta)」ネットワークと呼ばれるネットワークが説明されている。図1に示されているように、ヴァンアッタ型のレトロディレクティブネットワークは、多数の放射素子1a,1b,2a,2b,3a,3bにより形成されており、それらの放射素子はネットワークの中心軸Oyに関して対称的である。放射素子はペア又は組の形式で接続されており、放射素子1aは放射素子1bに接続され、放射素子2aは放射素子2bに接続され、放射素子3aは放射素子3bに接続され、これらの放射素子は電気的な長さが等しい伝送線1,2,3を介して接続されており、アンテナはネットワークの中心軸に関して対称的に対向している。この場合、各伝送線によって導入される位相シフトは全ての放射素子で同一となり、2つの隣り合う放射素子同士の間の位相差は信号の受信及び最も近いサイン(closet sign)に対して逆行させた信号の送信において同一となる。送信するネットワークの放射素子の信号同士の間の位相差は、受信するネットワークの放射素子の信号同士の間の位相差と逆である。このようにして送信信号の逆行特性(retro-directivity)が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2908002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこの方法はいくつかの重大な欠点を有する。すなわち、信号の逆行特性を得るために、入射波の正面は平坦でなければならない。アンテナネットワークは平坦でなければならない或いは多少なりともネットワークの中心に関して対称的でなければならない。入射波の正面が平坦でなければならない場合、放射素子のネットワークは送信源から離れたフィールド領域に設けられる必要がある。その結果、ヴァンアッタ型のネットワークの用途は、現在のところ、衛星又はレーダーのような用途に限定されている。
【0007】
レトロディレクティブアンテナネットワークに関するこの種の技術に続いて、「System of multi-beam antenna」と題する同日に出願されたフランス国特許出願がなされており、この出願に係る発明はヴァンアッタ型放射素子のネットワークに関する原理を使用し、ネットワークに近いフィールドのゾーンに位置するソースに関連付けられ、無線通信アプリケーションに使用可能なマルチビームアンテナのシステム(特に、無線リンクを介して通信するワイヤレスドメスティックネットワーク又はピアトゥピア型ネットワーク)を形成し、より具体的には、指向性アンテナと共に動作する処理システムに関連する単独アンテナのアンテナシステムだけでなく、MIMO(Multiple Input Multiple Output)システムと呼ばれるシステムをも形成する。
【0008】
本発明の課題は、サイズに関する従来の制約を少なくとも軽減するコンパクトなマルチビームアンテナシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によるマルチビームアンテナシステムは、
M個の放射ソースとP個のネットワークとを含むマルチビームアンテナシステムであって、該ネットワークの各々はN個の放射素子を含み、Pは1より大きく、Nは偶数であり、前記ネットワークの放射素子は、電気長が同一である伝送線によって2つずつ接続されており、前記P個のネットワークは各ネットワークの中心を共通にして設けられ、前記M個の放射ソースは該中心から距離Liだけ離れた場所にそれぞれ設けられ、該距離Liは遠視野であるフィールドの距離よりも厳密に小さく、iは1ないしMの範囲内の値を有する、マルチビームアンテナシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ヴァンアッタ型のレトロディレクティブネットワークを示す図。
【図2】本発明の第1形態によるマルチビームアンテナシステムを示す図。
【図3】図2のマルチビームアンテナシステムにおいてビームがソースS1から供給される場合の放射パターンを示す図。
【図4】本発明の第2形態を示す図。
【図5】図4に示す形態においてネットワークが様々なシステムソースから供給を受ける場合における放射パターンを示す図。
【図6】本発明の第3形態を示す図。
【図7】図6のシステムの正面図を示し、ソース及び放射素子に使用される素子の形態を示す。
【図8】ネットワークがソースS1から供給される場合において様々な動作周波数に関する図6のマルチビームアンテナシステムによる放射パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるマルチビームアンテナシステムは、N個の放射素子のネットワーク(回路)を有し、Nは偶数であり、該ネットワークの放射素子は伝送線を介して2つずつ接続されている。本システムは更にM個の放射源を有し、Mは1以上の整数であり、放射源の各々は該ネットワークの中心から距離Liの場所に位置し、該距離Liは遠視野(far field)と言及されるフィールドの距離よりも厳密に小さい。
【0012】
本願はこの種のネットワークの改善に関連し、放射素子のより良い指向性が得られるようにし、その結果、非常に優れた指向性マルチビームアンテナシステムを提供する。
【0013】
本発明の一形態によるマルチビームアンテナシステムは、M個の放射ソースとP個のネットワークとを含み、該ネットワークはN個の放射素子を含み、Pは1より大きく、Nは偶数であり、前記ネットワークの放射素子は、電気長が同一である伝送線によって2つずつ接続されており、前記P個のネットワークは各ネットワークの中心を共通にして設けられ、前記M個の放射ソースは該中心から距離Liだけ離れた場所にそれぞれ設けられ、該距離Liは遠視野と呼ばれるフィールドの距離よりも厳密に小さく、iは1ないしMの範囲内の値を有する。
【0014】
遠視野(far field)及び近視野(close field)の概念については、“On radiating zone band erase of short, λ/2 and λdipole”と題するS.Laybros and P.F.Cmbesによる文献(IEEE Antennas and Propagation magazine, Vol.46, No.5, October 2004)に説明されている。
【0015】
ソースが波長に関して小さな寸法を有する場合、ソースとネットワークの共通の中心との間の距離Liは1.6λより短く、λは動作周波数における波長である。
【0016】
好ましい実施形態において、ソースとネットワーク共通の中心との間の距離Liは、M個のソースの中で同一であり、0.3λ及び0.5λの間にある。
【0017】
本発明の別の実施形態において、M個のソースはP個のネットワークの共通に位置しているソースに関して対称的に設けられる。
【0018】
好ましくは、N個の放射素子の各ネットワークは、伝送線内に位相シフト手段を有し、該位相シフト手段は該ネットワークの放射パターンを制御できるようにする。
【0019】
好ましい実施形態によれば、位相シフト手段は伝送線の複数のセクションにより形成されている。
【0020】
更に、本発明の他の実施形態によれば、ネットワークの2つの放射素子同士の間の距離がλ/4の倍数であり、λは動作周波数における波長である。
【0021】
超指向性アンテナシステムを提供する別の形態によれば、2つの放射素子同士の間の距離がλ/4未満であり、λは動作周波数における波長である。
【0022】
様々な実施形態において、放射素子は、モノポール、パッチ、スロット、ホーンアンテナ又は同様な素子の中から選択されてもよい。同様に、ソースは、モノポール、パッチ、スロット、ホーンアンテナ又は同様な素子の中から選択されてもよい。
【0023】
本発明に関する更なる特徴及び利点は、以下の説明及び実施形態を理解することで更に明らかになり、本説明は添付図面を参照しながら行われる。
【0024】
先ず、図2及び3を参照しながら、本発明の第1形態によるコンパクトマルチビームアンテナシステムを説明する。
【0025】
接地面を提供する大きな寸法の基板10においてアンテナシステムが形成されており、アンテナシステムは、2つのヴァンアッタ型のモノポールネットワークと、該ネットワークの周りに対称的に設けられた複数のソースとを有する。モノポールは後述するようにソースに近いフィールドに設けられる。図2の例において、基板10は正方形の基板であり、250×250mmの寸法を有する接地平面を形成する。基板はFR4タイプ(εr=4.4及びtanδ=0.02)の多層の標準的な基板を用いて生成されることが好ましい。基板は1.4mmの厚みを有する。図2に示されているように、基板10において、2つのレトロディレクティブ型のネットワークが形成され、それら各々は距離dだけ離れた4つの4分の1波長モノポールで形成され、図示の例の場合、dは0.2λ0に等しく選択されており、λ0は動作周波数における波長である(空気中では、λ=λ0)。
【0026】
本発明では、レトロディレクティブにより、素子が平面に不要なエネルギを電波の到来方向に返すネットワークを使用することが理解されるべきである。
【0027】
より具体的には、第1のネットワーク11は4つの4分の1波長モノポール11a,11b,11c,11dを有し、これらのモノポールはマイクロストリップ技術で形成される電源供給線11’及び11”による中継ライン介して2つずつ接続されている。すなわち、モノポール11a及び11dはライン11”により接続され、モノポール11b及び11cはライン11’により接続されている。更に、電源供給線11’及び11”は同じ電気長を有し、その結果、上述したようなレトロディレクティブネットワークを形成する。
【0028】
更に、図2に示されているように、4つのモノポールのネットワーク11は位相シフト手段を有し、後述するように位相シフト手段は放射パターンを調整できるようにする。これらの位相シフト手段は、電源供給線11’及び11”において「I」として示されているラインセクションにより形成される。
【0029】
基板10において、第2のレトロディレクティブネットワーク12も示されており、互いに同じ距離だけ隔たっている4つの4分の1波長モノポール12a,12b,12c,12dにより形成され、その距離dは図示の例の場合d=0.2λ0である。第1のネットワークと同様に、モノポールは電気的長さが等しい伝送線12’及び12”を介して2つずつ(すなわち、モノポール12a及び12d、モノポール12b及び12c)接続される。ネットワーク12もマイクロストリップライン「I’」の部分により形成された位相シフト手段を有する。
【0030】
図2に示されているように、2つのネットワークは、対称的になっており、点Oに関して同様に配置されている。当業者に明らかであるように、モノポール間の距離が異なるネットワークが使用されてもよく、例えばネットワークのそれぞれが異なる数の放射素子を有してもよく、必要な条件は、放射素子数が偶数であること及びネットワークがレトロディレクティブネットワークとして機能することである。
【0031】
図2に示されているように、ネットワーク11、12には、4分の1波長モノポールを形成する4つのソースS1、S2、S3及びS4により信号が供給される。それらのソースは、2つのネットワーク11及び12に関して対称的に配置され、中心Oに関して同じ距離Lだけ隔たっている。1つのソースと2つのネットワークに共通の中心Oとの間の距離Lは、ネットワークのモノポールがソースに接近したフィールドに位置するように選択され、ソースが小さな寸法を有する場合、それは1.6λ未満に選択される。
【0032】
図2に示される形態に関し、有限要素法(finished elements method)に基づくアンシス社(Ansys company)の3DHFSS電磁ソフトウェアを用いてシミュレーションが行われた。上述したようにソースはλ/4の寸法のモノポールを形成する。2つのネットワークは放射素子により形成され、放射素子は高さがλ/4のモノポールにより形成される。電源供給ラインは幅が3.57μmのマイクロストリップ線路であり、厚さ0.2mmで50オームの特性インピーダンスを与えるようになっており、基板はFR4である。値Lに選択された寸法は例えばL=0.5λ0のように設定される。
【0033】
シミュレーションは、図2に示すようなシステムに関し、電源ライン上の「I」(位相シフト手段)を最適化することで、放射パターンは図3に示すようにソースS1の方に得られる。ソースS1及び2つのレトロディレクティブネットワークの寄与から生じるこの放射パターンは、ソースS1の方向に強い指向性を有する。対称的である図2に示すネットワークは、ソースS2、S3及びS4の方向に向いた放射パターンを同様にもたらすことができる。得られる放射パターンの各々はターゲットの方向(意図する目的方向)に関して対称的であり、これは、アンテナアクセスの段階における信号の良好な分離を可能にする。更に、図2及び図3に示されるソース/ネットワークトポロジの形状的な対称性を活用して、4つの異なる方向に、同様な対称的なパターンが同時に放射され、これはMIMOシステムのようなシステムの用途に適している。
【0034】
図4、図5を参照しながら本発明の第2実施形態を説明する。図4には、3つのレトロディレクティブネットワーク21、22、23を含むアンテナシステムが示されている。個の例の場合、3つのネットワーク21、22、23は中心Oを共通に有する同一構造のネットワークである。より具体的には、各ネットワーク21、22又は23は4つの放射素子を含み、その4つの放射素子は4つの4分の1波長モノポール21a、21b、21c、21d、22a、22b、22c、22d、23a、23b、23c及び23dである。この場合、寸法がλ/4のモノポールで形成される放射素子は、同一の電気長の電線をなす電源供給ライン21’、21”、22’、22”、23’、23”を介して2つずつ接続されている。各ネットワークにおいて、モノポール同士の間の接続は第1の実施形態の場合と同様に行われ、電源供給ライン21’、21”、22’、22”、23’、23”は或るネットワークから別のネットワークまで同じ長さを有する。更に、図4に示されているように、共通の原点を有する3つのディレクティブネットワークには、6つの電源供給ソースS’1、S’2、S’3、S’4、S’5、S’6から信号が供給され、電源供給ソースは3つのネットワークの周囲に対称的に分散した4分の1波長モノポールにより形成されている。より具体的には、レトロディレクティブネットワークの2つのモノポール同士の間の距離は0.2λ0であるが、ソースS’1、S’2、S’3、S’4、S’5、S’6は中心Oから距離L=0.4λ0の位置にある。2つのソースの間の角度変位は60度であり、2つのネットワークの間の角度変位も60度である。3つのネットワークは低コストなFR4構造により標準的な方法で形成されており、図4に示されているように、電源供給ラインを形成するのに使用されている多層構造の外側の2層は、それぞれが異なる金属面の2つに形成された2つのセクションを形成し、金属セクションによって接続され、クロスオーバを回避する。
【0035】
図4のアンテナシステムは、図2のアンテナシステムの場合と同じシフトウェアを用いてシミュレーションされ、様々なソースに関して得られた放射パターンが図5に示されている。各ソースに関する放射パターンは、ソース自身による寄与と、3つのレトロディレクティブネットワークの応答特性との双方からの影響に起因する。図5に示されている得られた結果は、得られた個々のパターンがソースの方向に主要な指向性(メインローブ又は1次ローブ)を有することを示している。位相シフト手段(すなわち、電源供給ライン上で最適化された付加的な線路部分)を用いることで、2次的なローブが生じてしまうことを軽減できる又は消滅させることさえ可能である(この点については図6の実施形態に関して説明する)。
【0036】
図4に示すマルチビームアンテナシステムは5.5GHzで0.8λ0の直径を有する程度に非常に小さなシステムになる。これは同時にいくつもの方向にビームを生じさせることを可能にする。
【0037】
図6-8を参照しながら本発明の第3実施形態が説明され、これは、より小型のマルチビームアンテナシステムを実現可能にし、改善された指向性をもたらすことを可能にする。図6の実施形態の場合、共通の原点を有する2つのレトロディレクティブネットワーク40、50が使用される。第1のネットワークは、上記の実施形態と同様に、マイクロストリップ技術により形成され且つ同一の電気長を有する電源供給ライン40’又は40”を介して2つずつ接続された4分の1波長モノポール40a,40b,40c及び40dを有する。同様に、第2のネットワーク50は、マイクロストリップ技術により形成され且つ同一の電気長を有する電源供給ライン50’又は50”を介して2つずつ接続された4分の1波長モノポール50a,50b,50c及び50dにより形成されている。図示の例の場合、2つのネットワークは互いに直交している。これらは2つのネットワークに関して対称的に配置された4つのソースSO1、SO2、SO3及びSO4により信号の供給を受ける。
【0038】
図6に示す実施形態の場合、ネットワークモノポールは互いに距離d=0.11λ0だけ隔たっており、ソースSO1、SO2、SO3、SO4は2つのネットワークに共通の中心Oから距離L=0.36λ0だけ隔たって位置する。
【0039】
図7に示されているように、ソースモノポール(例えば、SO3、SO4)とネットワークモノポール(例えば、モノポール50b、40d、50c)との間の結合(カップリング)を最適化するために、モノポールは多角形断面(図示の例の場合、6角形断面)を有する。モノポールは高さh1=0.208λ0及び直径Φ=0.0055λ0を有する。様々な要素同士のあいだのカップリングを最適化するために他の形状特性が使用可能であることは、当業者にとって明らかである。
【0040】
図6に示すマルチビームアンテナシステムは既に言及したソフトウェアを用いてシミュレーションされた。ソースSO1から様々な動作周波数で信号を供給した場合のシミュレーション結果が図8に示されている。
【0041】
図8を参照するに、5.4ないし5.8GHzの範囲内における放射パターンは、選択されたソース(すなわち、目下の例の場合はSO1)の方向に指向性を有し、超指向性(super directivity)のマルチビームアンテナシステムが実現されている。
【0042】
本発明の精神から逸脱することなく、上記の実施形態は修正可能であることは当業者にとって自明である。特に、ネットワークを構成する放射素子は、モノポール、パッチ、スロット又はホーンアンテナの中から選択することが可能である。同様に、ソースもモノポール、パッチ、スロット又はホーンアンテナの中から選択することが可能である。これらの要素は水平方向(方位角方向)において無指向性の放射パターンを有する必要がある。更に、ネットワークは4つの放射要素と共に表現されていた。しかしながら要素数は異なっていてもよい(ただし、偶数であることを要する)。個々のソースは共通の中心から同じ距離又は異なる距離だけ隔たっていてもよい。使用される位相シフト手段は能動素子又は受動素子でもよい。すなわち、放射パターンを最適化するように選択される線状のセクション、フィルタ又はその他の要素は、一体化されてもよいことに留意を要する。
【符号の説明】
【0043】
10 基板
11、12 ネットワーク
S1-S4 信号ソース
O 原点
I 位相シフト手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
M個の放射ソースとP個のネットワークとを含むマルチビームアンテナシステムであって、該ネットワークの各々はN個の放射素子を含み、Pは1より大きく、Nは偶数であり、前記ネットワークの放射素子は、電気長が同一である伝送線によって2つずつ接続されており、前記P個のネットワークは各ネットワークの中心を共通にして設けられ、前記M個の放射ソースは該中心から距離Liだけ離れた場所にそれぞれ設けられ、該距離Liは遠視野であるフィールドの距離よりも厳密に小さく、iは1ないしMの範囲内の値を有する、マルチビームアンテナシステム。
【請求項2】
前記M個のソースはP個のネットワークに共通する中心に関して対称的に設けられている、請求項1記載のマルチビームアンテナシステム。
【請求項3】
N個の放射素子によるネットワークの各々は、伝送線内に位相シフト手段を有し、該位相シフト手段は該ネットワークの放射パターンを制御できるようにする、請求項1記載のマルチビームアンテナシステム。
【請求項4】
前記位相シフト手段は伝送線をなす複数のセクションにより形成されている、請求項3記載のマルチビームアンテナシステム。
【請求項5】
ソースと各ネットワークに共通する中心との間の距離Liは1.6λ未満であり、λは動作周波数における波長である、請求項1-4の何れか1項に記載のマルチビームアンテナシステム。
【請求項6】
前記ソースと各ネットワークに共通する前記中心との間の距離LiはM個のソースに対して同一であり、0.3λないし0.5λの範囲内の波長である、請求項5記載のマルチビームアンテナシステム。
【請求項7】
ネットワークの2つの放射素子同士の間の距離がλ/4の倍数であり、λは前記動作周波数における波長である、請求項1記載のマルチビームアンテナシステム。
【請求項8】
2つの放射素子同士の間の前記距離がλ/4未満であり、λは前記動作周波数における波長である、請求項1記載のマルチビームアンテナシステム。
【請求項9】
前記ソースは、モノポール、パッチ、スロット及びホーンアンテナの中から選択されたものである、請求項1-8の何れか1項に記載のマルチビームアンテナシステム。
【請求項10】
前記放射素子は、モノポール、パッチ、スロット及びホーンアンテナの中から選択されたものである、請求項1-9の何れか1項に記載のマルチビームアンテナシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−124902(P2012−124902A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−269191(P2011−269191)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】