説明

マンコンベアの欄干

【課題】内側デッキを取外すことなくステップの脱着を行えるようにしたエスカレーターを提供する。
【解決手段】無端状に走行するステップ1の側方に立設され上端をデッキベース20に第一のビス22により固定されたスカートガード2と、このスカートガード2の前記ステップ1の反対側の位置においてその上方に立設された欄干パネル9と、この欄干パネル9と前記スカートガード2との間に設けられ、このスカートガード2側が前記デッキベース20に固定された内側デッキ10とからなるマンコンベアの欄干において、前記内側デッキ10のスカートガード2側折り曲げ端部を前記スカートガードと面一或いは内側となるように前記デッキベース20に第二のビス23により固定し、この第二のビス23及び前記第一のビス22部分をステップ1側に12mm〜17mm突出するよう設けられたモール24により覆い、かつ、このモール24をこのモール24内に収納されるボルト25により前記デッキベース20に固定した構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客を階床間に亘って搬送するマンコンベアの欄干に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客搬送用のマンコンベア例えばエスカレーターは、建屋にトラスが据え付けられ、このトラスに乗客搬送用のステップ列が組み込まれ、このステップ列の両側に欄干が設けられている。
【0003】
ステップ列は多数のステップを無端状に連結してなり、このステップ列が建屋の下階から上階あるいは上階から下階に向って順次無端走行し、この走行するステップ列を介して乗客を下階から上階あるいは上階から下階に搬送するようになっている。
【0004】
そして、ステップの側方には僅かな隙間をあけてスカートガードがほぼ垂直に設けられている。このスカートガードはトラスに固定された欄干固定部材から延出するように設けられたブラケットを介してその上下部が支持されている。また、前記欄干固定部材の上には欄干パネルが立設され、この欄干パネルの内面と前記スカートガードの上部側の縁部との間に内側デッキがステップに向かって傾斜するように設けられている。この内側デッキの上部側の縁部は欄干パネルの内面に目地部材を介して固定され、下部側にはステップ側に突出する折り曲げ部が構成され下部側の縁部は、前記スカートガードの上に重ね合わされ、ねじにてブラケットに固定されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1では、保守作業時、ステップを取外して作業を行う場合、内側デッキも取外す必要があった。このため、繰り返しの取外しにより内側デッキが変形し意匠上の問題を生じるばかりか、内側デッキを固定するねじが緩みステップ側にはみ出し衣服等を損傷させるという問題があった。
【0006】
この問題を解決するため、内側デッキとスカートガードを固定する位置をずらして別々のボルトで固定し、かつ、これらのボルトを薄い覆い部材で覆うものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平3−13494号公報
【特許文献2】特開2000−44152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2では、ボルトを覆う覆い部材が薄く、ステップ側の突出量が極めて少なく乗客がスカートガード側に寄り過ぎ、このスカートガードとステップ間に挟まれるという危険があった。また、覆い部分の固定が単に嵌合溝に嵌合するだけであるため、悪戯等により簡単にはがされるという問題があった。
【0008】
本発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、内側デッキを取外すことなくステップの脱着を行え、かつ、スカートガードとステップ間に挟まれるという危険性の回避と衣服等の損傷を生じさせないと共に悪戯などにより剥がされることのないようにした乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、無端状に走行するステップの側方に立設され上端をデッキベースに第一のビスにより固定されたスカートガードと、このスカートガードの前記ステップの反対側の位置においてその上方に立設された欄干パネルと、この欄干パネルと前記スカートガードとの間に設けられ、このスカートガード側が前記デッキベースに固定された内側デッキとからなるマンコンベアの欄干において、前記内側デッキのスカートガード側折り曲げ端部を前記スカートガードと面一或いは内側となるように前記デッキベースに第二のビスにより固定し、この第二のビス及び前記第一のビス部分をステップ側に12mm〜17mm突出するよう設けられたモールにより覆い、かつ、このモールをこのモール内に収納されるボルトにより前記デッキベースに固定したことを特徴とする。
【0010】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、マンコンベアの保守作業において、内デッキを取外さずにモールを取外すことによりステップの脱着ができ、次に、その部分のスカートガードを取外すことができる。また、スカートガード上端固定部と前記デッキベース固定部とを、ステップ側に12mm〜17mm突出するよう設けられたモールにより覆い、かつ、このモールを、このモール内に収納されるボルトにより前記デッキベースに固定したため、スカートガードとステップ間に挟まれるという危険性の回避を図ることができるばかりか衣服等の損傷を生じさせることがなく、かつ、悪戯などにより剥がされることがないという顕著な効果を達成することができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記欄干の中間部最上段或いは最下段の少なくとも一方の60ないし100cm間のみの前記内側デッキのスカートガード側折り曲げ端部を、前記スカートガードとほぼ面一或いは内側となるように前記デッキベースに固定し、前記スカートガード上端固定部と前記デッキベース固定部とを、ステップ側に12mm〜17mm突出するよう設けられたモールにより覆い、かつ、このモールを、このモール内に収納されるボルトにより前記デッキベースに固定し、前記モールのみを取外して前記ステップの脱着が行え、かつ、内デッキを外さずに前記スカートガードを取外して保守作業を行うようにしたことを特徴とする。
【0012】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明では、欄干の中間部最上段或いは最下段の少なくとも一方の60ないし100cm間のみでステップの脱着作業を行うため、他の部分の構成に関して特別の考慮を払うことがないという顕著な効果を達成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ステップを取り外す作業の場合、内側デッキの取り外しを不要とすることができるばかりか、スカートガードとステップ間に挟まれるという危険性の回避を図ることができる。また、衣服等の損傷を生じさせることがなく、かつ、悪戯などにより剥がされることがないという顕著な効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るエスカレーターの欄干の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施例になるエスカレーターの全体構成を示す側面図、図2は図1のX−X断面図、図3は欄干構成部分の関連を説明する斜視図、図4は本発明の他の実施例を示す図2に相当の側面図、図5は図4に示されたモールの部分図である。
【0016】
図1〜図3において、エスカレーター1は、建屋にトラス(いずれも図示せず)が据付けられ、このトラスにステップ2が組み込まれ、このステップ2の両側に欄干3が立設して設けられている。この欄干3の上下部A、Cは水平に、中間部Bは傾斜して設けられている。そして、前記欄干3の中間部最上段或いは最下段の少なくとも一方の60ないし100cmの区間B1及びB2は次のように構成されている。
【0017】
ステップ2の側方には僅かな隙間をあけてスカートガード4がほぼ垂直に設けられている。このスカートガード4はトラス(図示せず)に固定された欄干固定部材5から延出するように設けられたデッキベース6を介してその上部が皿ねじ7により固定されている。一方、スカートガード4の内面の下部には図示しないフックが取り付けられ、このフックの内側の隙間が下部のブラケット(図示せず)に脱着可能に差し込まれ固定されている。
【0018】
前記欄干固定部材5の上には欄干パネル8がパッキン9を介して立設され、この欄干パネル9の内面と前記スカートガード4の上部側の縁部との間に内側デッキ10がステップ2に向かって傾斜するように設けられている。
【0019】
この内側デッキ10の上部側の縁部10Aは、欄干パネル8の内面にパッキン9を介して固定され、下部側の縁部10Bは、前記デッキベース6の上端に重ね合わされ、ステップ2の上方の空間部分から内側デッキ10の縁部10Bを貫通してデッキベース6に螺挿された皿ねじ11により固定されている。12は前記皿ねじ7,11を覆うように設けられたモールで、このモール12はステップ2側に少なくとも12〜17mm(この実施例では15mm)突出するよう構成され、かつ、モール12内に収納される隠しボルト13によりスカートガード4、デッキベース6を介して固定される。ここで、モール12のステップ2側への突出を12〜17mmとしたのは、12mmでは挟まれ予防の効果が少なく、また、17mm以上の場合は意匠性が悪くなるばかりか、乗場領域を狭めてしまうという問題があるためである。
【0020】
前記スカートガード4には、予め皿ねじ7用及び隠しボルト13用の通し孔14が設けられ、内側デッキ10には、皿ねじ11用のノッチ孔15がそれぞれ形成されている。また、デッキベース6には、前記通し穴14およびノッチ穴15に対応するように長穴16が設けられている。
【0021】
したがって、欄干部分の組立て時は、まず、スカートガード4の上端をデッキベース6に重ね合わせ、皿ねじ7にて固定する。次に、内側デッキ10の下端部の縁部10Bをデッキベース6の折り曲げ部6Aに重ね合わせて皿ねじ11にて固定する。その後、モール12を前記皿ねじ7,11を覆うように取付け、隠しボルト13によってデッキベース6に固定する。
【0022】
また、ステップ1を取り外す作業の場合、モール12を固定している隠しボルト13を緩めてモール12を取り外し、次に、その部分のスカートガード4を固定している皿ねじ7を緩めて取り外す。
【0023】
これにより、内側デッキ10を取り外すことなく、ステップ2の脱着を行うことができる。また、モール12により前記皿ねじ7,11を覆うように取付け、隠しボルト13によってデッキベース6に固定するため、皿ねじやボルトの頭部が緩みによって露出ことはなく衣服などの損傷を生じることはない。
【0024】
なお、この実施形態では、区間B1、B2のみスカートガード4を外す構成としたが、他の部分も同様の構成とすることができる。しかし、区間B1、B2とした場合は、それ以外の内側デッキの構成を従来構成とすることができ、部品数などを少なくできる。
【0025】
次に、他の実施例の図4において、U字形に構成されたデッキベース6の外側片6Bの先端は、内側に折り曲げられることなくまっすぐに立設してある。このデッキベース6の外側片6Bの先端部上に内側デッキ10の下端部の縁部10Bが重ね合わされ、皿ねじ11、できれば低頭ビスにより、先の実施例同様ノッチ穴、長穴を介して固定される。
【0026】
他方、スカートガード4の上端は、前記内側デッキ10の下端部の縁部10Bより下方に位置して(即ち、内側デッキ10とスカートガード4とは面一となる)、前記デッキベース6の外側片6Bの上に重ね合わされ、先の実施例同様皿ねじ7によりスカートガード4の上端に設けられた穴、デッキベース6に設けられた長穴を介して固定される。ステップ2側に突出するように設けられたモール12は、前記皿ねじ7、皿ねじ11の頭部を覆うように設けられ、先の実施例同様スカートガード4の上端に設けられた穴、デッキベース6に設けられた長穴を介して隠しボルト13により固定されている。なお、この時の隠しボルト13の頭部13Aは、図5に示すようにモール12に設けられた溝12Aに収納され仮に緩みが生じても外側には突出しないようになっている。
【0027】
この他の実施例でも先の実施例同様、スカートガード4上端固定部(この例では皿ビス7)と前記内側デッキ10固定部(この例では皿ビス11)とを、ステップ2側に突出するよう設けられたモール12により覆い、かつ、このモール12を、このモール12内に収納されるボルト13により前記デッキベース6に固定したため、皿ビスやボルトの頭部が緩みにより露出することはなく衣服等の損傷を生じさせることはないという顕著な効果を得ることが出来る。
【0028】
また、ステップ2を取り外す作業の場合、モール12を固定している隠しボルト13を緩めてモール12を取り外し、次に、その部分のスカートガード4を固定している皿ねじ7を緩めて取り外すこともできる。
【0029】
これにより、内側デッキ10を取り外すことなく、ステップ2の脱着を行うことができる。
【0030】
なお、この実施形態でも、区間B1、B2のみスカートガード4を外す構成としたが、他の部分も同様の構成とすることができる。しかし、区間B1、B2とした場合は、それ以外の内側デッキの構成を従来構成とすることができ、部品数などを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例になるエスカレーターの全体構成を示す側面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】欄干構成部分の関連を説明する斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す図2に相当の側面図である。
【図5】図4に示すモールの部分図である。
【符号の説明】
【0032】
1 エスカレーター
2 ステップ
3 欄干
4 スカートガード
5 欄干固定部材
6 デッキベース
7 皿ねじ
8 欄干パネル
9 パッキン
10 内側デッキ
11 皿ねじ
12 モール
13 隠しボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に走行するステップの側方に立設され上端をデッキベースに第一のビスにより固定されたスカートガードと、このスカートガードの前記ステップの反対側の位置においてその上方に立設された欄干パネルと、この欄干パネルと前記スカートガードとの間に設けられ、このスカートガード側が前記デッキベースに固定された内側デッキとからなるマンコンベアの欄干において、
前記内側デッキのスカートガード側折り曲げ端部を前記スカートガードと面一或いは内側となるように前記デッキベースに第二のビスにより固定し、この第二のビス及び前記第一のビス部分をステップ側に12mm〜17mm突出するよう設けられたモールにより覆い、かつ、このモールをこのモール内に収納されるボルトにより前記デッキベースに固定したことを特徴とするマンコンベアの欄干。
【請求項2】
前記欄干の中間部最上段或いは最下段の少なくとも一方の60ないし100cm間のみの前記内側デッキのスカートガード側折り曲げ端部を、前記スカートガードとほぼ面一或いは内側となるように前記デッキベースに固定し、前記スカートガード上端固定部と前記デッキベース固定部とを、ステップ側に12mm〜17mm突出するよう設けられたモールにより覆い、かつ、このモールを、このモール内に収納されるボルトにより前記デッキベースに固定し、前記モールのみを取外して前記ステップの脱着が行え、かつ、内デッキを外さずに前記スカートガードを取外して保守作業を行うようにしたことを特徴とするマンコンベアの欄干。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−234692(P2009−234692A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80886(P2008−80886)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】