説明

マーカーワクチンとしてのニューカッスル病ウイルスのエスケープミュータント

ニューカッスル病に対するワクチンには、1つまたはそれ以上のNDW株の変異免疫原が含まれる。この変異免疫原は、モノクローナル抗体mAb54によって認識される、F糖タンパク上の抗原結合部位を欠如している。試薬キットおよび検査方法は、家禽の群れの中のワクチン接種されたメンバーを、野生型ニューカッスル病ウイルスに感染した可能性野あるメンバーから区別するのに役立つ。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明はニューカッスル病から家禽を保護する、新規ワクチン及び方法に関する。より具体的には、本発明はニューカッスル病に対する安全かつ有効なマーカーワクチンに関し、そしてさらに家禽飼育者が群れの中のワクチン接種したメンバーを、野生型ニューカッスル病ウイルスに感染した可能性のあるメンバーから区別できる、家禽試験用の試薬キット及び検査方法に関する。また、本発明はニューカッスル病に対するワクチンに有用な新規変異免疫原にも関する。
【0002】
(発明の背景)
ニューカッスル病(ND)は家禽の重篤な疾患であって、しばしば致命的であり、その結果、甚大な経済的損失をもたらし得る。この病気は、パラミクソウイルス(Paramyxovirdae)科のパラミクソウイルス属に属するウイルスである、ニューカッスル病ウイルス(NDV)によって引き起こされる。鳥類のパラミクソウイルスには、PMV−1〜PMV−9と称される9つの異なる抗原型が認められる;NDVはPMV−1または抗原型1である。米国特許第5,149,530(出典明示により本明細書の一部とする)にあるように、現在、NDVのある株は「ウィルテンベルグ(Wiltenberg)」(また「ウィルテンバーグ(Wiltenburg)」)、あるいはNDW株と称されている。
【0003】
NDVのウイルスエンベロープからは、2種類の表面突起物(スパイク)が突き出している。1つは、ビリオンの血球凝集(H)およびノイラミニダーゼ(N)活性の両方を含むグリコシル化されたタンパク(HN糖タンパク)から構成される。もう1つは、細胞融合、溶血およびウイルス侵入に関与する糖タンパクFから成る。その膜の内側に組み込まれる炭水化物フリーのマトリックスタンパクMは、ヌクレオキャプシドの結合部位として働き、そして形質膜からウイルスが出芽する際に、恐らくHNおよびF糖タンパクの凝集に関与する。
【0004】
免疫を顕著に媒介する抗体が、3つのタンパク質全てに対して産生されている。HNまたはFタンパクに対する、これらの抗体は単独で保護的である。
【0005】
ニューカッスル病は、ニワトリ、七面鳥、キジ、ホロホロ鳥、アヒル、ガチョウおよびハトを含む、多くの商業的な家畜の家禽メンバーに影響を及ぼす。加えて、閉じ込められたトリおよび放し飼いの半家畜のトリ、並びに渡り性水鳥を含む自由に生きるトリなどの広い範囲においても悩みの種となり得る。かごのトリ又は檻のトリにも影響を及ぼし得る。
【0006】
ニューカッスル病ウイルスは、気道および腸管を介して動物の体に侵入する。5ミクロン未満の空気伝達性の粒子は、気嚢を含む気道全体に分散する。5ミクロンより大きな粒子は、分岐点までに結膜、鼻および気管で捕らえられる。気管において、このウイルスは随伴運動(cillary action)によって、および細胞間感染によって広がる。導入部位での初期増殖の後、毒性ウイルスは、その後脾臓、肝臓、腎臓および肺に運ばれる。このウイルスは最終的に脳を侵すため、多くのトリが死に始める。
【0007】
ニューカッスル病の症状は主として呼吸性および神経性である。喘ぎ呼吸が共通する。神経症には、翼および/または脚の片側および両側麻痺、円運動(circular movements)、頭や首の上下/波状運動(waving movements)、ならびに翼、首または脚の筋肉の痙攣が含まれる。全身症状には食欲喪失および産卵減少が含まれ、しばしば40%程度またはそれ以上にまでなる。
【0008】
死亡率は、関与したウイルスの性質および個々の群れの免疫状態に依存して変化し得る。一般に、迅速に殺傷するウイルス株は、よりゆっくり殺傷する株よりも感染したトリの間で蔓延しにくい。加えて、長期無症候性の保菌状態が、ある種の家禽、例えばニワトリで生じると考えられる。この疾病が大発生期間中に蔓延する最も高いリスクは、人および機器の移動に拠る。養鶏業における多くの工程を集中させたため、ある集団から他の集団に移動する人および装置について膨大な行き来がある。
【0009】
現在、多くのワクチンが開発され、トリをニューカッスル病の発症から守っている。生抗原ワクチンおよび弱毒抗原ワクチンを、点眼または点鼻によって、あるいは噴霧または飲水により投与することができる。不活化ワクチンもまた、しばしばワクチン接種後の呼吸反応を伴わず、保護を提供できる。これらワクチンの多くは油乳剤ワクチンであり、油性アジュバントがワクチン抗原の免疫原性の特徴を増強するのに利用される。ワクチンは発生中のニワトリ胚にインオボ(in ovo)投与することもできる。このように、時により良い精度が得られる場合がある。
【0010】
米国特許第5,149,530;5,250,298;6,348,197;5,750,111および5,733,556のいずれもが、ニューカッスル病ウイルスに対するワクチンに関する当分野の現況を扱っている。さらに引用した文献の幾つかは、混合ワクチン、例えばニューカッスル病に加えて、さらなる家禽の病気に対する1つまたはそれ以上の抗原を含有したワクチンを取り扱っている。
【0011】
残念なことに、現在、ある群れの中のワクチン接種したメンバーを、ニューカッスル病ウイルスの毒性の、「野生型」の種類に罹患している非ワクチン接種メンバーから区別する方法は無いようである。いずれの例においても、抗体が動物の体内で産生されている。しかしながら、現行のNDVに対するワクチン接種免疫原は、毒性の、伝染性NDVに感染した後に見られる抗体と区別できないことが非常に多い、抗体を誘発する。
【0012】
従って、当分野で必要とされるものは、ニューカッスル病ウイルスに対する新規ワクチンである。当該ワクチンは、点眼もしくは点鼻によって、または噴霧もしくは飲水により、あるいはインオボで家禽に投与した場合に、安全かつ有効にニューカッスル病を予防すべきである。さらに、家禽業者が、ワクチン接種したメンバーを、ニューカッスル病に罹患している群れの中の非ワクチン接種メンバーから区別できるものであるべきである。新規ワクチンの開発によって、動物が適当にワクチン接種されたか、または毒性のニューカッスル病に感染しているか、あるいは、より従来のNDVワクチンでワクチン接種された可能があるかどうか、を評価する試薬キットの開発も可能となるはずである。
【0013】
(発明の開示)
本発明の一部として、約10〜10EID50のニューカッスル病ウイルスのNDW株由来の変異免疫原を含むニューカッスル病ウイルスに対するワクチンであって、該変異免疫原がmAb54と称されるモノクローナル抗体によって認識されるF糖タンパク上の抗原結合部位を欠如していることを特徴とするワクチンが提供される。
【0014】
また、受入番号#I−2928でCNCMに寄託されている株と同一のニューカッスル病ウイルスの変異免疫原も提供する。この変異免疫原はNDワクチンをさらに開発する際のマスターシードウイルス(master seed virus)として好適である。本発明は、前記寄託株の免疫原性の特徴を有するNDウイルスの免疫原についても提供する。
【0015】
家禽動物をニューカッスル病から保護する方法であって、モノクローナル抗体mAb54により認識されるF糖タンパク上の抗原結合部位を欠如する、ニューカッスル病ウイルスのNDW株由来の変異免疫原を約10〜10EID50含有するワクチンを該動物に投与することを含む方法もまた提供する。
【0016】
また、本発明は、標体のNDV抗原およびイルミネーティング(illuminating)抗体を含む、ニューカッスル病に対する変異免疫原を介した予防接種を検出するための試薬キットにも関するものであり、ここで、前記イルミネーティング抗体は予防接種したトリ由来の血清中では前記抗原と結合するが、予防接種していないトリ由来の血清中では前記抗原とは結合しないことを特徴とする。
【0017】
さらに、ニューカッスル病に対するワクチンに有用なニューカッスル病ウイルス変異免疫原を生産する方法であって、該変異免疫原がmAb54と称されるモノクローナル抗体の存在下で発生かつ成長し、該モノクローナル抗体によって中和されないように、該モノクローナル抗体の存在下でニューカッスル病ウイルスを増殖させることを含む方法を提供する。
【0018】
また説明すると、変異免疫原は 配列番号1で示されるヌクレオチド配列から派生したものである。このヌクレオチド配列の一部は、モノクローナル抗体mAb54の結合部位を欠如している当該免疫原のF糖タンパクをコードしている。その結果、配列番号2に示すアミノ酸配列はニューカッスル病ウイルスのF糖タンパクの対応する部分配列を表す。
【0019】
従って、本発明は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する当該変異免疫原の免疫原性の特徴を持つ、ニューカッスル病ウイルスの免疫原もまた提供する。
【0020】
本発明はニューカッスル病ウイルスの野生型NDW株の157番目に通常見られるアミノ酸のセリンがアルギニンに置換されている、該ウイルスの変異免疫原をさらに提供する。
【0021】
加えて、本発明は家禽動物が本明細書中で後述する本発明に従ってワクチン接種されたか、または他のNDVワクチンを用いて別の方法でワクチン接種されたか、あるいは野生型NDウイルスに感染したかどうか、を評価する試薬キットおよび方法を提供する。
【0022】
本発明のさらなる目的および特性は、以下に記載する詳細な説明および請求項から明らかとなろう。
【0023】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
ニューカッスル病ウイルスのウィルテンベルグ株から派生した変異免疫原が、ニューカッスル病に対するマーカーワクチンを生産するのに有効であることが、現在明らかにされている。この派生した免疫原は、当分野で「mAb54」と称されるモノクローナル抗体の結合部位を欠如しているが、既存のNDウイルス株はmAb54の結合部位を有することが広く知られている。mAb54がNDVのF融合タンパクに結合するという特徴は、M.S. Collinsら著の「ハトにおける現行の汎発性家畜流行病(Current Panzootic)に関与する鳥類のパラミクソウイルスI型の異型の単離体に対して産生されたマウスモノクローナル抗体の評価(Evaluation of Mouse Monoclonal Antibodies Raised Against an Isolate of the Variant Avian Paramyxovirus Type I Responsible for the Current Panzootic in Pigeons)」Arch. Virol. (1989) 104: 53-61にさらに記載されている。
【0024】
mAb54の結合部位を欠如する変異免疫原は、モノクローナル抗体mAb54の存在下でニューカッスル病ウイルスの生株を増殖させることによって生成し得る。より好ましく利用されるものに、ウィルテンベルグまたはNDW株として当分野で利用されるウイルス株がある。好適なNDW株は、米国特許第5,149,530にて詳述されるように、フランス、パリ(25, Rue de Docteur Roux, F-75724 PARIS CEDEX)にあるパストゥール研究所のCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)から受入番号I−781で入手できる。次いで、変異免疫原を増量させ、かつ選択する技術は、Russell, P.H著, J.Gen. Virol. 65, 795-798 (1984)にて開示されている。簡潔に記載すると、抗体mAb54は、該抗体によって認識されるウイルス上の、すなわちF糖タンパク上の結合部位に結合することによって、増殖するニューカッスル病ウイルスを中和するものである。この例外には、該結合部位が欠如して形成された、ある種のエスケープミュータントまたは変異免疫原があるだろう。このように、これらの変異体は中和を回避して、成長し増殖できる。
【0025】
次いで、これらのエスケープミュータントまたは変異免疫原は、さらにワクチン開発する際の基礎となる。この変異免疫原は、さらに好適な媒体、例えばアフリカミドリザル腎臓細胞(VERO)において、さらに増量させることができる。抗体mAb54との反応性について、並びに毒性について免疫選択を行うことで、派生した変異免疫原をさらにスクリーニングすることができる。野生型ウイルスへの復帰変異を、遺伝的方法および抗原的方法によって評価することができる。前述のRussellに記載の技術は、当分野の他の利用できる技術であるため、有益であろう。
【0026】
好適な変異免疫原、すなわちマスターシードウイルス変異免疫原は、2002年8月29日に受入番号I−2928で上記住所にあるCNCMに寄託されている。この特に好ましい変異免疫原または変異原は、現在ではさらにフォートダッジアニマルヘルス(Fort Dodge Animal Health)によってp.13と称されている。このp.13変異免疫原は、以下に記載のように、さらに連続継代することが望ましい。本発明は、本明細書に記載の様式と実質的に同一の様式によって調製され、そして実質的に同一のその免疫原性の特徴を有する、他の変異NDV免疫原もまた包含するものである。
【0027】
本発明のNDウイルスの変異免疫原のさらなる特徴は、野生型NDWウイルスの157番目のアミノ酸セリンが突然変種類ではアルギニンに置換されていることである。
【0028】
当該変異免疫原は、利用可能な技術を用いて、家禽の卵、好ましくは発育家禽卵において、または発育家禽卵由来の胚繊維芽細胞もしくはVERO(アフリカミドリザル)細胞を用いた組織培養中において、連続継代することにより規模を拡大し得る。本発明では約2回の連続継代が考えられ、そして最大約10回までの継代で有用性が証明されるはずである。約4回〜約8回の継代が当業者に好まれるであろう。発育鶏卵が、この変異免疫原の継代に特に望ましい。
【0029】
これまでに記載したように、派生した変異免疫原はニューカッスル病に対して免疫学的保護を提供するのに特に有用である。この変異免疫原は、ニューカッスル病に対するワクチンに製剤化できる。好適なワクチンは、1つまたはそれ以上のNDW免疫原、あるいはその免疫学的活性のある成分を投与当たり約10〜約10EID50(「50%卵感染投与」)を含むものである。より好ましい範囲は、特に噴霧によるワクチン接種については、約10〜約10EID50の範囲内である。前記範囲は点眼または点鼻による、あるいは飲水による投与の場合に、さらに調整されるだろう。インオボワクチン接種については、投与当たり約10〜約10EID50の範囲が有用であろう。
【0030】
投与量は、典型的には、変異免疫原の上記量、並びに後述のアジュバント(群)、賦形剤(群)および担体のいずれかを含むワクチンの約0.01〜約10ml、より好ましくは約0.01ml〜1.0mlである(この範囲は当業者によって調整され得る)。
【0031】
本発明のワクチンには、1つまたはそれ以上の好適なワクチンアジュバントおよび製薬的に許容される担体を含ませることができる。好適なワクチンアジュバントには、当分野で利用される融和性の油剤および油乳剤が含まれ得る。製薬的に許容される担体には、例えば、水または塩水が含まれ得る。また、その他の賦形剤、例えば、製薬分野およびワクチン獣医学分野において利用される安定化剤および防腐剤を、ワクチンに含ませることもできる。変異ND免疫原(群)と併せて用いるこれらの成分を混合して、最終的なワクチンを製造することができる。
【0032】
本発明のワクチンは、ニワトリ、七面鳥、キジ、ホロホロ鳥、アヒル、ガチョウ、バンタム、ハトなどを含む家禽群のメンバーに対して安全かつ有用である。
【0033】
変異ND免疫原を含有する本発明のワクチンは、その他の家禽の病気に対して免疫学的保護を与える、別のワクチン抗原とともに製剤化することもできる。例えば、Bursal病、マレック病および家禽ヘルペスウイルスによって引き起こされる疾病に対する免疫原を利用することもできる。
【0034】
本発明に関するワクチンの投与は噴霧によるのが好ましいが、点眼もしくは点鼻または飲水、当業者が利用する全ての方法で投与でき、並びに好適な卵注入装置(egg-injecting equipment)、例えばノースカロライナ州にあるエンブレック(Embrex) から入手できる機械を用いたインオボ注入によっても投与できる。投与は、インキュベートが1日経過した卵から最長約21日目まで行うことができる。約10日〜18日の期間中に一度予防接種することが特に好ましいであろう。このように、ニューカッスル病から家禽を保護する方法には、発生中の家禽に前述のようにインオボでのワクチン投与が含まれよう。
【0035】
また、本発明の一部として、本発明に関するワクチンで予防接種された家禽メンバーを、予防接種されていないメンバーおよび毒性の、野生型もしくは「フィールド(field)」ニューカッスル病ウイルスに感染したメンバーから、並びにF融合糖タンパクを含有する免疫原を利用した従来のNDVワクチンでワクチン接種されたメンバーから、区別する試薬キットおよび検査方法も含まれる。例としては、ELISA、免疫ペルオキシダーゼ染色アッセイ、ウェスタンブロット、または当業者が利用するその他の好適な方法が挙げられる。
【0036】
限定的な例示ではなく、キットには「標体」NDV抗原(mAb54によって認識される、F融合糖タンパク上の結合部位を有する)、並びに標体抗原上の該部位にも結合するイルミネーティング抗体を含ませ得る。この「イルミネーティング」抗体は当分野で利用される方法に基づいて標識化され、そしてその標体抗原と結合することで「発光(light up)」および呈色するものである。このイルミネーティング抗体は抗マウス抗体であって(mAb54がマウスから得られたものだからである)、例えば、当分野で利用されるように、化学反応を起こして発色を触媒できる酵素で標識化されている抗体であっても良い。この抗マウス抗体は(本キットの一部としての)第2の抗体に結合し、次に、その第2の抗体が(標準的なサンドイッチアッセイのように)標体抗原の結合部位に結合し得る。
【0037】
試験キットおよび検査の更なる実施形態には、イルミネーティング試験キット抗体および第二の試験キット抗体が標体ND試験キット抗原と結合することになる、競合型アッセイもある。双方の抗体はF糖タンパク結合部位について競合し、陽性および陰性と異なる判断を示すであろう。
【0038】
制限するものではないが、家禽を試験する方法を以下に簡潔に記載する:血液試料を調査する家禽メンバーから採取した後に個別に試験する。野生型、フィールドウイルスに感染した家禽、またはF糖タンパク結合部位をなおも有している別のND株で予防接種された可能性のある家禽は、体内抗体によって認識されるウイルス上の結合部位(F融合糖タンパク)に対して、体内抗体が産生されることになる。該試料に試験キット「標体」抗原を添加することで、これらの体内抗体もまた標体抗原上の同じ結合部位に結合することになる。これにより、イルミネーティング抗体は標体抗原上の当該部位への結合を妨げられ、または非常に低下させられることで(競合アッセイのように)、呈色が妨げられ、または極めて減少することになる。一方、本発明に従ってワクチン接種された家禽メンバーは、F糖タンパク上の結合部位を欠如している。従って、この結合部位に対する体内抗体(mAb54)は生成されないだろう。標体抗原を含有する試薬を加えると、イルミネーティング抗体は該標体抗原に結合できるため、呈色して特定の動物が本発明に従ってワクチン接種されたことを示す合図を出す。あるいは、第二の試験キット抗体は標体抗原と結合して、そしてイルミネーティング抗体が該第二の抗体と結合することで(サンドイッチ検査のように)呈色を示し得る。
【0039】
家禽メンバーを従来のNDVワクチンでワクチン接種したような場合には、該F糖タンパク部位に対する抗体も産生した可能性があるが、しばしば別個の方法で野生型ウイルスに感染したトリが一方で存在し得た。このような場合には、呈色に差異が認められ、これらの動物を区別できる。
【0040】
前述した試薬キットおよび検査方法の実施形態における変更もまた本発明の範囲内にある。
【0041】
以下の実施例は、本発明の好ましい種々の態様を記載するものであるが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0042】
(実施例)
(実施例1−プロトコル)
次の4段階のプロトコルは、ニューカッスル病ウイルスに対するマーカーワクチンを作製する有用な手段を簡潔に記述している。
段階1
抗体が、PMV1(パラミクソウイルス抗原型1、NDVと同一)に自然感染した際に抗体mAb54によって認識される抗原性部位に対して、誘導されたかどうかについて決定する。更なる検査のために、mAb54によって認識される融合タンパク上の抗原性部位が欠如したエスケープミュータントを生成する。
段階2
mAb54によって認識される融合タンパク上の抗原性部位を欠如している、エスケープミュータントを遺伝子学的に同定する。
段階3
野生型や毒性への復帰変異を確認するため、エスケープミュータントの安定性試験を実施する。
段階4
野生型およびワクチン株に対する抗体を区別するための、アッセイを開発および検証する。
【0043】
さらなる詳細:
段階1
・競合結合分析アッセイを用いて、PMV1に自然感染したトリ由来の血清を、mAb54によって認識される抗原性部位に対する抗体について検査する。
・mAb54の存在下でニワトリ胚線維芽細胞(CEF)培養にてNDVのNDW株を増殖させる。
・CEF中で生成されたウイルスをプラーク精製し、発育家禽卵において制限して継代して、ウイルスストック(マザーウイルスストックと称する)を調製する。
・免疫ペルオキシダーゼ(IPX)試験を用いて、エスケープミュータントを、mAb54との反応性についてスクリーニングする。
【0044】
段階2
・「野生型」およびエスケープミュータントの融合タンパクのヌクレオチド配列を決定する。
・与えられたプロトコル(段階1の完了時の)に従って、一日齢で特定の病原体フリー(「SPF」)のヒナにおいて、マザーウイルスストックの効力検討を実施する。
・段階3のために、mAb54によって認識される抗原性部位を欠如または修飾された抗原性部位を有する、エスケープミュータント(群)を選択する。
【0045】
段階3
・選択されたエスケープミュータントのマザーウイルスストックを発育家禽卵において2×継代し、マスターシードウイルス(第一代(pass))およびワーキングシードウイルス(第二代)を調製する。
・発育家禽卵において、ワーキングシードウイルスを4×継代することにより安定性試験用のワクチンウイルスを調製する。
・mAb54を用いたIPX試験において、およびヌクレオチド配列決定によって、ワクチンウイルスの特徴を確認する。
・発育家禽卵において「実証された(verified)」ワクチンウイルスを10×継代し、上記特徴を確認する。
・CEFにおいて「実証された」ワクチンウイルスを10×継代し、IPX試験によって特徴を確認する。
・合計10回の継代を行って、一日齢SPFのヒナにおける毒性および野生型への復帰変異について、インビボ検討を実施する。
・mAb54を用いたIPX試験およびヌクレオチド配列決定によって、10回目のインビボ継代から再単離されたウイルス(または10回よりも少ない場合には、最後の継代から再単離されたウイルス)の特徴を確認する。
・一日齢SPFのヒナを用いて、マスターシード、ワクチン、インビトロ継代(10×)されたワクチン、およびインビボ継代(10回、上記参照)されたワクチンウイルスの大脳内病原性指標(ICPI)を決定する。
【0046】
段階4
・NDWの「野生型」およびエスケープミュータントに対する単一特異的な抗血清を、6週齢のニワトリにおいて調製する。後者に対する抗血清は、ワクチンウイルス(上記)を用いて産生されよう。
・NDV抗体を検出するためのELISAを開発して、NDVの「野生型」およびワクチン株に対する抗体について、家禽の血清をスクリーニングするためのキットアッセイとして使用する。
・既存のNDV抗体用のIPX試験を適当な場合には(ELISAの進歩を受けて)改良して、NDVの「野生型」およびワクチン株に対する抗体について、家禽の血清をスクリーニングするためのキットアッセイとして使用する。
・陽性および陰性が既知の血清を用いて、NDVの野生型株に対して選択した試験を検証する。
【0047】
実施例2−エスケープミュータントの選択のための方法論
Russell, P.H., J.Gen. Virol. (1984) 65, 795-798に記載の方法論を利用することができる。その手順の概要を以下に記載する。
・モノクローナル抗体617/54(mAb54)のバッチを調製するために「テクノマウス(Technomouse)」を用いる。
・9日齢の発育家禽卵において、NDW株を培養する。
・mAb54の中和指標を決定する。加熱により不活性化されたmAbを種々希釈してウイルス感染の低下を、微量中和(micro-neutralization)試験により検査する。同量(50μl)のウイルスとmAbを2時間37℃で反応させた後、VERO細胞のマイクロウェルに吸着させる。IIP試験を実施し、感染細胞を計数する。10またはそれ以上にウイルス感染を減少させる。
・種々のプラークを免疫選択する。同量のウイルスと加熱により不活化されたmAbを2時間37℃でインキュベートする。該混合物をPBS/溶媒にて1/10、1/100および1/1000に希釈する。希釈していない溶液を含む各々の溶液を、2ウェルの融合性のニワトリ胚線維芽細胞(CEFs)に吸着させる(100ul/ウェル)。37℃で1時間経過した後、1/100−1/500倍希釈のmAbおよびトリプシン(2−5μg/ml)を含むアガロースオーバーレイを、各ウェルに加える。このプレートを5%CO中37℃でインキュベートする。
・3−4日後、個々のプラークを、ニュートラルレッド色素を用いて視覚化する。
・パスツールピペットを用いて、前記アガロースをかき分け細胞シートに到達したところで、プラークを「選び取る(Picking)」。変異体を含有するアガロース栓を、PBSに移し放置する。それぞれの調製物を過剰量のmAbで再度処理し、CEFsまたは発育家禽卵で再び継代する。
・それぞれプラーク由来の再継代されたウイルスを、mAb617/54の存在および非存在下、VERO細胞において増殖させる。免疫ペルオキシダーゼ(IPX)試験を用いて、エスケープミュータントを、mAb617/54およびポリクローナルニワトリ抗血清との反応性についてスクリーニングする。
【0048】
実施例3
NDWエスケープミュータントおよび「Poulvac」ワクチンの効力検討
方法
・2つのワクチン接種されたグループ(ある変異体および「Poulvac」ワクチン)をそれぞれ5日齢ヒナから構成した。
・非−ワクチン接種コントロールグループのヒナ10羽を用意した。
・プラークから選び取ったウイルスを発育家禽卵にて6回継代し、変異体とともに全てのワクチン接種に用いた。
・それぞれのワクチン接種されたヒナは、0.5mlの脱塩水中の106.5EID50を受けた。
・トリに、1羽あたり0.5ml中105.0 ELD50となるよう計算した投与量で筋肉経路により毒性NDV(Herts/33)を用いてチャレンジした。
【0049】
始めに、変異体の滴定を行ってウイルス力価を決定した。これを表1に示す。変異体p.13を106.5 EID50/0.5mlに希釈し、各断路器に入れられた25羽のヒナに合計12.5mlを粗く噴霧器で投与した。「Poulvac」ワクチンの力価は、バイアルあたり1010.02 EID50 (Fort Dodge Animal Health Holland, The Netherlandsにより提供)であり、各ヒナが0.5ml中106.5 EID50を受けるよう調製した。ヒナのワクチン接種に用いたウイルス調製物の逆滴定を、ワクチン接種直後に、発育家禽卵中で実施した。これらの滴定を用いて、1羽あたりが受ける平均推定ウイルス投与量を計算した(表1)。チャレンジのために、2部屋間でグループを無作為に混合させた。トリはそれぞれ、0.5ml中104.6 ELD50のHerts/33のチャレンジ量を受けた。
【0050】
実験中、病気のため摂食できなくなったトリは死に絶えた。飲食可能で、かつ実験の15日目まで生存した病気のトリの記録を表2および表3に詳細に示す。
【0051】
結果
NDWウイルスを用いた血球凝集阻害(HI)による試験を行うために、チャレンジ前および後(15日)に生存している全てのヒナから血清を採取した。
効力検討の結果を表2および表3にまとめる。
【0052】
ウイルス群
非−ワクチン接種
10羽のワクチン接種していないコントロールヒナは、チャレンジの3日以内に死亡した(死亡率100%)。
これらのトリ由来の血清は、チャレンジ前のHI試験では全て陰性であった。
【0053】
「Poulvac」ワクチン
「Poulvac」ワクチンをワクチン接種したヒナの中で、チャレンジの4日後に一羽死亡した(死亡率4%)。毒性NDウイルスを、ホモジナイズした脳組織を発育家禽卵中に接種することで、そのヒナから回収した。
・2羽の別のヒナに臨床的症状が現われ、一羽は1日間、他方は実験の最後まで現れた。
・HI抗体の力価は、チャレンジ前は2〜16の範囲にあり、そのうちの24羽は8またはそれ未満であった。チャレンジ後、全てのトリにおいて抗体力価が増加した(16−512の範囲)。
【0054】
変異体p.13
・変異体p.13をワクチン接種した25羽のヒナは死亡しなかったが(死亡率0%)、3羽のトリが臨床的サインを出した。
・HI力価は、チャレンジ前は8またはそれ未満であったが、チャレンジ後にはほとんどの場合において32〜1024と、かなりの増加を示した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2−1】

【0057】
【表2−2】

【0058】
【表2−3】

【0059】
【表3】

表2および表3に適用した記号。
1 ウイルスの4つの血球凝集ユニットを完全にブロックする血清希釈の逆数として表されるチャレンジ前のHI力価。
2 生存したトリのチャレンジ後のHI力価。D=死亡。
* トリは運動失調症、体重減少、平穏が乱された場合のみ移動するが、飲食は可能であった。
【0060】
実施例4−NDWエスケープミュータントおよび「Poulvac」ワクチンの融合タンパク(F0)の遺伝子の配列決定。
発育家禽卵中で6回継代された変異体を、自動シーケンサーABI PrismTM 310 Genetic Analyzerを用いてヌクレオチド配列決定することにより、「野生型」への復帰変異について試験した。(F遺伝子の一部の配列を配列番号1に示し、加えて、対応するアミノ酸配列を配列番号2に示す)。157番目のアミノ酸変化をコードする領域にまたがる、融合タンパクF遺伝子の短い配列を、変異体p.13と決定した。そのアミノ酸配列は変化せずにそのままであった‐NDW「野生型」中で観察されるセリンの位置にはアミノ酸のアルギニンがあった。しかしながら、変異体P.13中では、アルギニンのコドンがAGAからCGCに変化していた。
【0061】
この配列決定の結果はIPX試験により支持された。変異体のいずれともmAb54が結合した証拠は見られなかった。しかしながら、NDW「野生型」は、このモノクローナル抗体に明らかに結合した。
【0062】
前駆体Fポリペプチドの読み取り枠を含む全遺伝子配列は、「Poulvac」ワクチン中に存在するウイルスと決定された。その配列は、Fort Dodgeにより提供されたNDW「野生型」ウイルスのマスターシードと同じであった。しかしながら、これらの配列と、発育家禽卵中にてさらに1回継代させたNDWマスターシードの配列から得られた配列との間には1つの相違点があった。それは、この遺伝子の1195番目にサイレント変異体があったことである。
【0063】
実施例5−さらなる効力検討
エスケープミュータントp.13を以下のように用いた:マスターシードウイルス(MSV)、ワーキングシードウイルス(MSV+1回継代)および実験ワクチン(MSV+5回継代)。MSVを、European Pharmacopoeiaに規定のように毒性への復帰変異について試験し、そして卵中およびVERO細胞の組織培養中で継代した後に、遺伝子の安定性を試験した。実験ワクチン(MSV+5回継代)を市販のボイラー中で効力について試験した。すべての試験で、本発明のエスケープミュータント(変異免疫原)およびワクチンとして強い効力を示した。
【0064】
実施例6−NDマーカー試験
概要
この実施例では、NDマーカー株p.13でワクチン接種されたニワトリ由来の血清を、POULVAC(登録商標)NDWワクチン(Fort Dodge Animal Health, Fort Dodge, IowaおよびWeesp, the Netherlands)に対する抗体を有するニワトリ由来の血清、および毒性NDVに対する抗体を有するニワトリ由来の血清から区別できる可能性を調査した。前述のように、NDマーカー株p.13はモノクローナル抗体番号54(Mab#54)の結合部位を欠如している。
【0065】
「MV」コードされた血清はNDマーカー株p.13でワクチン接種されたニワトリから得られ;「FS」コードされた血清は急性NDV感染したニワトリから得られ;9、10、11および12コードされた血清はPOULVAC(登録商標)NDWワクチンでワクチン接種されたニワトリから得られた。コントロールとして、この検定に、SPFニワトリ由来の血清を含め、並びにNDV B1でワクチン接種したニワトリ由来の血清、およびNDV Herts33でチャレンジしたニワトリ由来の血清を含めた。この検定は免疫ペルオキシダーゼ染色アッセイ(IPX)を用いて行った。
【0066】
MVコード血清はMab#54をいくらかブロッキングを示したが、SPF血清は示さなかった。MVコード血清のブロッキング作用を示す理由は明らかではない。特定の理論に拘束されるものではないが、NDV抗体がMab#54の結合部位付近に結合することで、立体障害が生じるためかもしれない。また、非特異的な結合活性が原因である可能性もある。FSコード血清は平均的にMab#54の結合をブロックするが、結果にはばらつきが見られた。FSコード血清はMVコード血清よりも高いブロッキング活性を示した。9−12コード血清のブロッキング活性は非常に明白で、明らかにMVコード血清より強かった。また、MVコード血清とNDV抗血清の間には明らかな相違点があった。
【0067】
結論としては、Mab#54のIPXブロッキング試験を用いることで、NDマーカー株p13でワクチン接種したニワトリ由来の血清を:
−実験的にNDVに感染させた
−生NDWワクチンをワクチン接種させた
ニワトリ由来の血清から区別できる可能がある。
【0068】
材料および方法
材料
−VERO細胞の融合性単層を用いる96ウェル組織培養プレート
−Mab#54
−NDV Ulster株
−10%緩衝ホルマリン
−リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
−SPFニワトリ血清
−POULVAC(登録商標)NDWバッチに対する抗血清
−NDV陽性血清は、ニワトリを生無毒性B1に感染させ、続いて毒性NDV Herts33でチャレンジして産生された。
−急性ニューカッスル病に罹病したニワトリから得られたフィールド血清
−NDマーカー株p13のマスターシードウイルスでニワトリを噴霧ワクチン接種した後、筋肉内追加抗原刺激して得られた血清
−ヤギ抗−マウス免疫グロブリンペルオキダーゼ標識抗体
−基質溶液A:10ml滅菌脱塩水中0.2グラムの尿素 H
−基質溶液B:25mlエタノール中0.1グラムの3−アミノ−9−エチルカルバゾール
【0069】
方法、免疫ペルオキシダーゼ染色アッセイ(IPX)
−NDV Ulster−1/1000をプレートに混入し、一晩放置する
−10%緩衝ホルマリンをウェルごとに50μlを加え、20分間、細胞を固定する
−ホルマリンを捨て、ウェルを200μlの温0.1M PBS pH7.2で2回洗浄する
−200μlのPBSを加えて放置する
−PBS中にある範囲の希釈液(P13、フィールドおよびSPF血清の1/2、1/10、1/25、1/50および1/100)を調製する
−PBSを捨て、軽くたたいてプレートを乾燥させる
−10ウェルのウイルスNDWに各血清希釈液を100μl加え、37℃で45分間インキュベートする
−血清希釈液をさっと捨て、軽くたたいてプレートを乾燥させ、全てのウェルを200μlのPBSで3回洗浄する。軽くたたいてプレートを乾燥させる。
−PBS中のmAb54の1/500から1/10,000の範囲の希釈液を調製し、抗原/抗体を含むウェルの1/2に試験血清の各希釈液100μlを加える
−プレートを37℃で45分間インキュベートする
−mAbsをさっと捨て、軽くたたいてプレートを乾燥させる
−ウェルを200μlのPBSで3回洗浄し、軽くたたいて乾燥させる
−各ウェルに100μlのヤギ抗−マウス免疫グロブリンペルオキダーゼ標識抗体を加える
−37℃で50分間インキュベートする
−標識体をさっと捨て、200μlのPBSでウェルを3回洗浄する
−0.1mlの基質溶液Aと0.1mlの基質溶液Bを9.8mlPBSに加えて混合し、最終基質溶液を調製する
−ウェルごとに100mlの基質を加え、室温で15分間放置する
−PBSでウェルを2回洗浄する
−プレートを顕微鏡で観察する
−褐色の細胞の存在により、Mab#54の結合が示される
【0070】
結果
Mab#54の最適な希釈
SPF血清およびNDV抗血清を種々の希釈液中の抗原と反応させた。次に、Mab#54も種々の希釈液中の抗原と反応させた。この試験を2回実施した。1回目の試験の結果を表4に示す。(2回目試験の結果はほぼ同じであった)。
【0071】
結果によると、SPF抗血清はNDV抗原とMab#54との結合をブロックしていないが、SPF血清の1/2希釈液を用いた場合には低いが幾らか活性がある。NDV陽性抗血清の1/2、1/5および1/25希釈液はMab#54の結合をブロックしている。ブロッキングは血清の1/50希釈液で低く、1/100希釈液でブロッキングはほとんど検出されない。
【0072】
SPF血清およびNDV陽性血清の相違は血清希釈液の1/5および1/25でもっとも明白であると結論付けることができる。
【0073】
NDV陽性血清の1/50希釈液および1/100希釈液において、Mab#54のより薄い希釈液で反応性の低下があった。Mab#54の1/2500希釈液を今後の実験に使用することにした。
【0074】
【表4】

【0075】
種々の抗血清によるMAB#54の結合のブロッキング
表5にブロッキング検討の結果を示す。MVコード血清は、NDマーカー株P.13を用いてワクチン接種したニワトリから得られた。FSコード血清は、急性NDV感染したニワトリから得られたフィールド血清であった。9、10、11および12でコード血清は、POULVAC(登録商標)NDWワクチンを用いてワクチン接種されたニワトリから得られた。
【0076】
結果によると、SPF血清はMab#54の結合をブロックしていないが、陽性NDV血清はMab#54の結合をブロックしている。MVコード血清はいくらかブロッキング活性を示している。1/2希釈液において、8つ中2つの血清がMab#54の結合をブロックし、1/10希釈液において明らかなMab#54の結合が検出された。FSコード血清によるブロッキングはばらつきが大きい;FS1はMab#54の結合を明らかにブロックしているが、FS6はブロッキング活性をほとんど示していない。
【0077】
9−12コード血清は全てMab#54の結合をブロックしているが、11および12は特に著しい。
【0078】
【表5−1】

【表5−2】

【0079】
議論
MV、FSおよび9−12コード血清の結果は次のように評価した。+は評価値1、++は評価値2、および+++は評価値3とし、そして−は評価値0とした。次いで、各血清の平均評価値を算出した。SPF血清およびNDV陽性血清を同様に処理した。
【0080】
その結果を表6に示す。MVコード血清はMab#54を幾らかブロッキングを示すが、SPF血清は示さない。MVコード血清の結合作用の要因は明らかでない。特定の理論に拘束されるものではないが、NDV抗体がMab#54の結合部位付近に結合することで、立体障害が生じるためかもしれない。また、血清成分の非特異的な結合によって生じた可能性もある。
【0081】
FSコード血清のブロッキング活性は、平均してMVコード血清よりも強かった。前述のように、FSコード血清を用いて得られた結果にはばらつきが見られる。FSコード血清は、急性NDV症状を示したニワトリから得られた。これらの血清の幾つかで、NDV抗体が存在しなかったのは、恐らく、感染から血清採取までの期間が短かったためであろう。このことは、個々の血清間のブロッキング活性におけるばらつきに対する説明となるであろう。
【0082】
9−12コード血清のブロッキング活性は強かった。これと比較すると、観察されたMVコード血清によるブロッキングは比較的弱かった。この差異は1/10および1/25の血清希釈液で最も明白であった。MVコード血清とNDV抗血清との間にも明白な差異があった。
【0083】
【表6】

【0084】
結論
Mab#54のIPXブロッキング試験を用いることで、NDマーカー株p.13でワクチン接種したニワトリ由来の血清を:
−実験的にNDVに感染させた
−生NDWワクチンをワクチン接種させた
ニワトリ由来の血清から区別することが可能である。
【0085】
本発明の好ましい実施形態について特定の引例とともに記載したが、それらに対する変更は、当業者であれば本明細書および添付の請求の範囲に記載する発明の意図および範囲から逸脱することなく行ない得ると考える。

【配列表】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10〜10EID50のニューカッスル病ウイルスのNDW株由来の変異免疫原を含むニューカッスル病ウイルスに対するワクチンであって、該変異免疫原がF糖タンパク上にmAb54と称されるモノクローナル抗体によって認識される抗原結合部位を欠くところのワクチン。
【請求項2】
変異免疫原が連続継代される請求項1記載のワクチン。
【請求項3】
連続継代が家禽卵において実施される請求項2記載のワクチン。
【請求項4】
連続継代が少なくとも約2回で約10回までの連続継代を含む、請求項3記載のワクチン。
【請求項5】
連続継代が約4回〜約6回の連続継代を含む、請求項4記載のワクチン。
【請求項6】
変異免疫原がp.13と同定され、受入番号#I-2928でフランス、パリにあるCNCMに寄託されている、請求項1記載のワクチン。
【請求項7】
受入番号#I-2928でCNCMに寄託されているニューカッスル病ウイルス株の免疫原性の特徴を有している、ニューカッスル病ウイルスの免疫原。
【請求項8】
ニューカッスル病から家禽動物を保護する方法であって、モノクローナル抗体mAb54によって認識されるF糖タンパク上の抗原結合部位を欠いている、約10〜10EID50のニューカッスル病ウイルスのNDW株由来の変異免疫原を該動物に投与することを含む方法。
【請求項9】
約10〜10EID50の変異免疫原を投与する請求項8記載の方法。
【請求項10】
ニューカッスル病に対するワクチンに有用なニューカッスル病ウイルス変異免疫原を製造する方法であって、該変異免疫原がmAb54と称されるモノクローナル抗体の存在下で発生かつ成長し、該モノクローナル抗体によって中和されないように、該モノクローナル抗体の存在下でニューカッスル病ウイルスを増殖させることを含む方法。
【請求項11】
ニューカッスル病ウイルスがNDW株である請求項11記載の方法。
【請求項12】
ウイルスを発育家禽卵において増殖させる請求項12に記載の方法。
【請求項13】
ニューカッスル病ウイルス上のF糖タンパクが配列番号1に記載の部分ヌクレオチド配列から派生したものであり、さらに該糖タンパクがmAb54と称されるモノクローナル抗体の結合部位を欠く、ニューカッスル病ウイルスの変異免疫原。
【請求項14】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する変異免疫原。
【請求項15】
変異免疫原の免疫原性特徴を配列番号2に記載のアミノ酸配列と共に有するニューカッスル病ウイルスの免疫原。
【請求項16】
157番目のアミノ酸セリンがアルギニンに置換されている、ニューカッスル病ウイルスの変異免疫原。
【請求項17】
標体NDV抗原およびイルミネーティング抗体を含む、ニューカッスル病に対する変異免疫原を介した予防接種を検出するための検査キットであって、該イルミネーティング抗体が予防接種された血清中では該抗原と結合するが、予防接種していない血清中では該抗原と結合しないところの、検査キット。
【請求項18】
標体NDV抗原がF糖タンパク結合部位を含み、イルミネーティング抗体がこの部位と結合する、請求項17記載の検査キット。
【請求項19】
F糖タンパク結合部位を含有する標体抗原を添加すると、イルミネーティング抗体が該部位に自由に結合するように、予防接種した血清中では、F糖タンパク結合部位に対する抗体が産生されないであろう、請求項18記載の検査キット。


【公表番号】特表2006−511619(P2006−511619A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508455(P2005−508455)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/038414
【国際公開番号】WO2004/052278
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】