説明

マーキング用尺

【課題】マーキング用尺として、穴を数えたり目盛りを読み取ったりすることなく、複数種の規定ピッチに対応したマーキングを極めて容易に正確に行え、ビス止めや釘打ちによる止着ピッチが異なる複数種のパネル材の取付施工に好適なものを提供する。
【解決手段】測尺帯1の先端側の基準位置Sを始点として、測尺帯1に基準ピッチP0で透孔2が穿設され、ピッチ幅が該基準ピッチP0の整数倍である複数種の規定ピッチP1〜P4の各々に対応する透孔2位置の測尺帯表面10に、各規定ピッチの種類毎に色分けした着色表示C1〜C4が設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石膏ボードの如き建物内装用のパネル材の表面に、取付下地材に対するビス止めや釘打ちを行う位置指標をマーキングする場合等に好適なマーキング用尺に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建物の内装において石膏ボード等のパネル材によって壁面や天井面を形成する際、例えば図5に示すように、一定間隔置きに配置したスタッドやランナーの如き棒軸状の下地材11に、パネル材12をビス止めや釘打ちによって止着する。その止着部13は、パネル材12の幅方向両側部と幅方向中間部に沿って各々一定ピッチに設定される。そして、幅方向中間部の止着部13のピッチは幅方向両側部の該ピッチよりも広く設定されることが多い。なお、図示ではパネル材12の幅方向中間部に1本の取付下地材11が配置しているが、該幅方向中間部に複数本の取付下地材11が等間隔に配置する場合もある。
【0003】
しかるに、例えば一般的な石膏ボードの場合、長尺物から必要長さに切断して使用されるため、同じ幅であっても長さや施工仕様によって幅方向両側部及び幅方向中間部止着部のピッチが異なることになる。従って、幅方向の両側及び中間の止着位置についてはメーカー側でボードを移送しつつ線付けして表示設定されるが、長手方向の止着位置の設定は施工者側で専ら巻尺等の長さ測定具を用いてマーキングするのが通例であった。このため、従来の内装パネル施工では、パネル材の止着位置の設定に多大な手間と時間を費やして施工能率が悪い上、長さ測定具の目盛りの読み間違いや読み取り誤差による施工不良が多発するという問題があった。
【0004】
一方、各種の寸法計測に多用される巻尺として、従来より使い易さの追求や種々の付加機能のために様々な工夫を加えたものが提案されており、それらの中で対象物に対するマーキング等を目的として金属製のテープ(測尺帯)に一定間隔置きにに孔を設けたものもある(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−176901号公報
【特許文献2】特開2006−30148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の測尺帯に一定間隔置きに孔を設けた巻尺では、その孔位置で鉛筆の如き筆記具や墨打ちによるマーキングを施せるが、孔間隔と異なるピッチでのマーキングを行うには先端からの穴の数を数えたり目盛りを読み取ったりする必要がある。従って、このような巻尺を前記のように止着部のピッチが異なる複数種のパネル材に対するマーキングに利用する場合、そのピッチの設定に手間を要して施工能率が悪くなると共に、穴の数え間違いや目盛りの読み間違いによる施工不良を生じる懸念があった。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて、マーキング用尺として、穴を数えたり目盛りを読み取ったりすることなく、複数種の規定ピッチに対応したマーキングを極めて容易に且つ正確に行え、例えばビス止めや釘打ちによる止着部のピッチが異なる複数種のパネル材の取付施工等に好適に利用できるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係るマーキング用尺は、測尺帯1の先端側の基準位置Sを始点として、該測尺帯1に基準ピッチP0で透孔2が穿設されると共に、ピッチ幅が該基準ピッチP0の整数倍である複数種の規定ピッチの各々に対応する透孔2位置の測尺帯表面10に、各規定ピッチの種類毎に色分けした着色表示C1〜C5が設けられてなる構成としている。
【0009】
請求項2の発明は、上記請求項1のマーキング用巻尺において、測尺帯1が捲込みケース5付きの巻尺であり、その先端にフック金具3が取り付けられなるものとしている。
【0010】
請求項3の発明は、上記請求項1のマーキング用巻尺において、測尺帯1が硬質材料からなる帯板である構成としている。
【0011】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3の何れかのマーキング用尺において、測尺帯1の先端から基準位置P0までの距離rがマーキング対象物(パネル材12)の端縁12aから該端縁12aに最も近いマーキング位置mまでの距離dに等しく設定されてなるものとしている。
【0012】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4の何れかのマーキング用尺において、規定ピッチが3〜6種であるものとしている。
【0013】
請求項6の発明は、上記請求項1〜5のいずれかのマーキング用尺において、測尺帯表面10に、各規定ピッチの着色表示C1〜C5と共に、尺度目盛り4が表示されてなるものとしている。
【0014】
請求項7の発明は、上記請求項1〜6の何れかのマーキング用尺において、基準ピッチP0が50mmであり、規定ピッチが50mm×n倍(nは2以上の整数)であるものとしている。
【0015】
請求項8の発明は、測尺帯の表面に、透孔2位置に設ける複数種の規定ピッチの着色表示C1〜C5と共に、これら規定ピッチとは別基準の割り付けピッチの表示マークL1〜L4が透孔2位置とは無関係に設けられてなるものとしている。
【0016】
請求項9の発明は、上記請求項8のマーキング用尺において、規定ピッチが内装用パネル(石膏ボード12)を下地材11にビス止め又は釘止めする止着ピッチであり、別基準の割り付けピッチが該下地材11の取付基体に対する割り付けピッチであるものとしている。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について図面の参照符号を付して示す。まず、請求項1の発明に係るマーキング用尺によれば、その測尺帯1を基準位置Sがマーキング対象物(パネル材12)の最初のマーキング位置に合うようにして該マーキング対象物の表面に沿わせ、該測尺帯1における所要の規定ピッチに対応した着色表示C1〜C5のある透孔2毎に、適当なマーキング具8によって印を付けるだけの簡単な操作により、該マーキング対象物の表面に所定ピッチのマーキングを施すことができる。しかして、着色表示C1〜C5はピッチ幅が異なる規定ピッチ毎に色分けされているから、いずれの規定ピッチでも目盛りを読んだり透孔2の数を数えたりする必要がなく、着色表示C1〜C5の色だけを目安にして極めて容易に能率よく正確なマーキングを行える。なお、透孔2を設ける基準ピッチP0は、複数種の規定ピッチのピッチ幅の最大公約数となるピッチ幅に設定すればよい。
【0018】
請求項2の発明によれば、上記マーキング用尺として、測尺帯1が捲込みケース5付きの巻尺であって、先端にフック金具3を備えるものが提供される。
【0019】
請求項3の発明によれば、上記マーキング用尺として、測尺帯1が硬質材料からなる帯板であるものが提供される。
【0020】
請求項4の発明によれば、測尺帯1の先端から基準位置Sまでの距離rがマーキング対象物の端縁12aから最初のマーキングm位置までの距離dに合致するから、マーキングに際し、測尺帯1の先端をマーキング対象物(パネル材12)の端縁12aに合わせるだけで、該測尺帯1の基準位置Sが自動的に最初のマーキング位置mに合うことになり、もって位置決めの手間が省けると共に、マーキング始端位置のバラツキによるマーキングのずれを防止できるという利点がある。
【0021】
請求項5の発明に係るマーキング用尺では、3種以上の規定ピッチに適用できて汎用性に優れると共に、全部の規定ピッチが重複する透孔2の周囲でも着色表示C1〜C5の各領域を充分に識別容易な広さ及び色相差に設定できるという利点がある。
【0022】
請求項6の発明に係るマーキング用尺では、測尺帯表面10に各規定ピッチの着色表示C1〜C5と共に尺度目盛り4A〜4Eが表示されているから、通常の長さ計測具としても使用できる上、該尺度目盛り4A〜4Eをピッチ幅の確認にも利用できる。
【0023】
請求項7の発明に係るマーキング用尺では、基準ピッチP0が50mmで、規定ピッチが50mm×n倍(nは2以上の整数)であるから、特に建物内装に用いる一般的な石膏ボードのビス止め又は釘打ちによる止着部を表示するマーキングに好適に利用できる。
【0024】
請求項8の発明に係るマーキング用尺では、基準ピッチP0の整数倍となる複数種の規定ピッチのマーキングを行えると共に、別基準の割り付けピッチについても表示マークを利用してマーキングできるという利点がある。
【0025】
請求項9の発明によれば、上記マーキング用尺として、内装用のパネル材12を下地材11にビス止め又は釘止めする止着ピッチの設定と、該下地材11をその取付基体に割り付けるための割り付けピッチの設定の両方に利用できるものが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る第一実施形態のマーキング用尺の斜視図である。
【図2】同マーキング用尺の測尺帯の平面図である。
【図3】同マーキング用尺によるマーキング操作を示す要部の縦断側面図である。
【図4】同マーキング用尺によるマーキング対象の石膏ボードの一例を示す平面図である。
【図5】同マーキング用尺の測尺帯における規定ピッチ及び着色表示を示す模式図である。
【図6】同マーキング用尺の測尺帯における5種の規定ピッチの着色表示例(a)〜(f)を示す要部の平面図である。
【図7】本発明に係る第二実施形態のマーキング用尺を示し、(a)は全体の概略平面図、(b)は先端側の拡大平面図である。
【図8】本発明に係る第三実施形態のマーキング用尺の平面図である。
【図9】内装パネルの施工例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2に示す本発明の第一実施形態に係るマーキング用尺M1は、ばね鋼等よりなる金属製の測尺帯1が捲込みケース5に捲込み収納可能になった巻尺であり、その先端側の基準位置Sを始点として、一定ピッチで透孔2が測尺帯1の全長にわたって各々幅方向中央位置に穿設されている。そして、この測尺帯1の表面10には、透孔2・・・のピッチ幅を基準ピッチP0として、ピッチ幅が該基準ピッチP0の3倍,4倍,5倍,6倍の4種の規定ピッチP1〜P4(図5参照)の各々に対応する透孔2位置の周囲に、各規定ピッチの種類毎に色分けした着色表示C1〜C4が設けられると共に、一側縁1aに沿う1mm刻みの尺度目盛り4Aと、他側縁1bに沿う5mm刻みの尺度目盛り4B及び5cm毎の尺度数値41とが表示されている。なお、図1では尺度目盛り4Aのmm線及び尺度目盛り4Bを省略すると共に、図2では図示最上段の先端側を除いて尺度目盛り4A,4Bの両方を省略している。
【0028】
また、測尺帯1の先端には、側面視L字状のフック金具3がフック部3aを背面側へ直角に突出した状態で鋲3bによって取り付けられており、そのフック部3aが基準位置Sから距離rだけ前方に位置している。なお、測尺帯1は平坦に図示しているが、実際には背面側へ凸となるように幅方向に湾曲している。図1中、6は捲込みケース5の測尺帯導出口、7は測尺帯1を任意の引出し状態で引込み不能に保持するためのスライド式ロックである。
【0029】
このマーキング用尺M1は、図3に示すように、パネル材12の表面上に測尺帯1を沿わせた状態で、透孔2の位置で適当なマーキング具8で印を付けることにより、図4に示すように、該パネル材12の幅方向両側部及び幅方向中間部に沿ってビスや釘による止着位置となるマーキングmを施すのに使用される。しかして、測尺帯1の上記4種の規定ピッチP1〜P4は、マーキングmのピッチPnに対応している。また、測尺帯1におけるフック金具3のフック部3aから基準位置Sまでの距離rは、該パネル材12の端縁12aから該端縁12aに最も近いマーキングmまでの距離dに等しく設定される。
【0030】
図5に示すように、ピッチ幅が基準ピッチP0の3倍の第1規定ピッチP1の着色表示C1は青色の25°楕円、同4倍の第2規定ピッチP2の着色表示C2は緑色の30°楕円、同5倍の第3規定ピッチP3の着色表示C3は赤色の35°楕円、同6倍の第4規定ピッチP4の着色表示C4は黒色の円、として各々表示されている。そして、規定ピッチP1〜P4の2種以上のピッチが重なる透孔2位置では、図2で示すように透孔2を中心として着色表示C1〜C4の楕円及び円を同心状に表示し、着色表示C1〜C4の相互のサイズ差を利用し、サイズが大きい方の着色を楕円同士の境界間もしくは楕円と円の境界間に施す形にしている。
【0031】
なお、この第一実施形態のマーキング用尺M1では、一般的な壁及び天井内装用の石膏ボードにおけるビス止め又は釘打ちによる止着部のマーキング用として、基準ピッチP0を50mm、第1規定ピッチP1を150mm、第2規定ピッチP2を200mm、第3規定ピッチP3を250mm、第4規定ピッチP4を300mm、フック金具3のフック部3aから基準位置Sまでの距離rを基準ピッチP0と等しい50mm、にそれぞれ設定している。この場合、着色表示C1〜C4を施す透孔2の基準位置Sからの距離は次表の通りであり、表中の○印で示すように、規定ピッチP1〜P4の2種以上の最小公倍数に相当する距離毎に着色表示C1〜C4の複数が重なり、全部の着色表示C1〜C4が表示されるのは距離0mmの基準位置Sと以降の距離3000mm毎になる。




【0032】
【表1】

【0033】
上記構成のマーキング用尺M1によれば、その測尺帯1の基準位置Sをパネル材12の最初のマーキング位置に合わせ、該測尺帯1を捲き込みケース5から引き出した状態でパネル材12の表面に沿わせ、該測尺帯1における規定ピッチP1〜P4の着色表示C1〜C4の内の所要ピッチに対応する着色を施した透孔2毎に、マーキング具8によって印を付けるだけの簡単な操作により、該パネル材12の表面に所要ピッチのマーキングmを施すことができる。すなわち、着色表示C1〜C4はピッチ幅が異なる規定ピッチP1〜P4毎に色分けされているから、いずれの規定ピッチP1〜P4でも目盛りを読んだり透孔2の数を数えたりする必要がなく、着色表示C1〜C4の色だけを目安にして極めて容易に能率よく正確なマーキングを行える。
【0034】
また、本実施形態のマーキング用尺M1では、測尺帯1におけるフック金具3のフック部3aから基準位置Sまでの距離rがパネル材12の端縁12aから最初のマーキングm位置までの距離dに合致するから、マーキングに際し、該フック金具3のフック部3aをマーキング対象物であるパネル材12の端縁12aに掛止して測尺帯1をパネル材12の表面に沿わせるだけで、該測尺帯1の基準位置Sが自動的に最初のマーキング位置mに合うことになり、もって位置決めの手間が省けると共に、マーキング始端位置のバラツキによるマーキングのずれを防止できる。更に、測尺帯表面10に各規定ピッチP1〜P4の着色表示C1〜C4と共に尺度目盛り4A,4Bが表示されているから、長さ計測用の通常の巻尺としても使用できる上、該尺度目盛り4A,4Bをピッチ幅の確認にも利用できる。
【0035】
第一実施形態のマーキング用尺M1は、特に建物の内装パネルに用いる一般的な石膏ボードのビス止め又は釘打ちによる止着部のマーキング用として、最小の規定ピッチP1を150mmとしているが、最小の規定ピッチP1を100mmとしてもよい。すなわち、該石膏ボードのマーキング用としての規定ピッチは、50mm×n倍(nは2以上の整数)である。
【0036】
しかして、各規定ピッチの着色表示の表示形態と色合いについては、特に制約はなく、実施形態以外に種々設定できる。図6(a)〜(f)に、5種の規定ピッチに対応する着色表示C1〜C5の表示形態を例示するが、これら以外の様々な表示形態も支障なく採用可能であることは言うまでもない。
【0037】
なお、マーキング具8としては、種々のマーキングペンや鉛筆等の着色マーキングを施すものと、ポンチやピック等の刻印マーキングを施すものとがあり、施工仕様によって適宜すればよい。ただし、化粧板として用いる石膏ボード等の内装用パネルではマーキングmの痕跡が残るのを嫌うため、特に時間経過や加熱によって筆跡が消色するマーカーを用いることが推奨される。このような消色性のマーカーは、近年、消える水性ペン等と銘打ったものが種々市販されている。
【0038】
図6(a)では、サイズ最小の着色表示C1が透孔2を中心とする円の径方向対向位置をカットした形状で表示され、その外側に着色表示C2〜C5が順次径大の円として同心多重円をなすように表示されている。図6(b)では、着色表示C1が透孔2を中心とする円で表示され、この着色表示C1の円の周囲に、同径の円をなす着色表示C2〜C5が角度90°の位相差で取り巻くように表示されている。図6(c)では、着色表示C1が透孔2を中心とする円で表示され、この着色表示C1の円の周囲に、U字形の輪郭をなす着色表示C2〜C5が角度90°の位相差で取り巻くように表示されている。図6(d)では、着色表示C1が透孔2を中心とする円で表示され、この着色表示C1の円の周囲に、正三角形をなす着色表示C2〜C5が角度90°の位相差で取り巻くように表示されている。図6(e)では、着色表示C1が透孔2を中心とする小円で表示され、この小円と同心の大円との間を半径方向分画線で4分割した扇状として着色表示C2〜C5が表示されている。図6(f)では、透孔2を中心とする円を半径方向分画線で5分割した扇状として着色表示C1〜C5が表示されている。
【0039】
図7(a)(b)に示す本発明の第二実施形態に係るマーキング用尺M2は、アルミ、ステンレス鋼、鉄鋼等からなる金属製板尺であり、全体が測尺帯1として長さ1〜3m程度、幅3〜5cm程度の帯板状をなし、その一端(図示の左端)から50mm離れた位置を始点の基準位置Sとして、50mmピッチで透孔2が全長にわたって各々幅方向中央位置に穿設されている。そして、測尺帯1の表面10には、基準位置Sの透孔2と、一つ置いて連なる5つの透孔2毎に、各透孔2を取囲む円形の着色表示域9が設けられると共に、一側縁1aに沿って1mm刻みの尺度目盛り4Cとcm単位の尺度数値42が表示され、また他側縁1bに沿って50mm刻みの尺度目盛り4Dと50mm単位の尺度数値43が表示されている。
【0040】
このマーキング用尺M2では、透孔2・・・のピッチ幅50mmを基準ピッチP0として、ピッチ幅が基準ピッチP0の2倍である100mm、同3倍である150mm、同4倍である200mm、同5倍である250mm,同6倍である300mmの5種の規定ピッチに対応して、着色表示域9が中心側の略太鼓側面形をなす1領域と半径方向の区割線で四分した周辺4領域との5つに区画されている。そして、この着色表示域9の区割された各領域に、5種の規定ピッチの着色表示C1〜C5の各々が割り当てられている。
【0041】
すなわち、100mmの規定ピッチは緑色の着色表示C1として着色表示域9の中央領域に、150mmの規定ピッチは青色の着色表示C2として同周辺の上側領域に、200mmの規定ピッチは橙色の着色表示C3として同周辺の下側領域に、250mmの規定ピッチは赤色の着色表示C4として同周辺の左側領域に、300mmの規定ピッチは黒色の着色表示C5として同周辺お右側領域に、それぞれ表示するように設定している。そして、図7(b)に示すように、基準位置Sの着色表示域9では5種の着色表示C1〜C5の全てが表示され、基準位置Sから100mmの着色表示域9には着色表示C1のみ、同150mmの着色表示域9には着色表示C2のみ、同200mmの着色表示域9には着色表示C1,C3の2種、同250mmの着色表示域9には着色表示C4のみ、同300mmの着色表示域9には着色表示C1,C2,C5の3種、というように順次基準位置Sからの対応する距離毎に着色表示域9の各区画領域に各規定ピッチの着色が施され、各着色表示域9における規定ピッチに対応しない区画領域は非着色になっている。
【0042】
また、尺度目盛り4Cは通常の長さ計測用として測尺帯1の全長にわたって設けてあるが、尺度目盛り4Dは規定ピッチ確認用として基準位置Sを始点(0)とする目盛りになっている。なお、図7(a)では両尺度目盛り4C,4Dを省略し、また図7(b)でも尺度目盛り4Cの25cm以降における1mm刻み線を省略している。
【0043】
この第二実施形態のマーキング用尺M2によれば、前記第一実施形態のマーキング用尺M1と同様に、測尺帯1を基準位置Sがパネル材12の最初のマーキング位置に合うように該パネル12の表面に沿わせ、着色表示C1〜C5の内の所要ピッチに対応する着色を施した透孔2毎に、マーキング具8(図3参照)等によって印を付けるだけで、該パネル材12の表面に所要ピッチのマーキングmを施すことができ、いずれの規定ピッチでも目盛りを読んだり透孔2の数を数えたりする必要がなく、着色表示C1〜C5の色だけを目安にして極めて容易に能率よく正確なマーキングを行える。また、測尺帯1の先端から基準位置Sまでの距離rがパネル材12の端縁12aから最初のマーキングm位置までの距離d(図3参照)に合致しており、マーキングに際し、測尺帯1の先端をマーキング対象物であるパネル材12の端縁12aに合致させるだけで、該測尺帯1の基準位置Sが自動的に最初のマーキング位置mに合うから、位置決めの手間が省ける。更に、一側縁1a側の尺度目盛り4Cを利用して通常の長さ計測を行えると共に、他側縁1b側の尺度目盛り4Dによってピッチ幅を確認できる。
【0044】
本発明のマーキング用尺は、上述した第一及び第二実施形態のマーキング用尺M1,M2のように4種又は5種の規定ピッチに適用するものに限らず、基準ピッチP0の整数倍となる複数種の規定ピッチに適用するもので、その規定ピッチの各々に対応する透孔2位置の測尺帯1表面に、各規定ピッチの種類毎に色分けした着色表示を設けたものであればよい。ただし、規定ピッチの種類は、汎用性の面より3種以上が望ましく、また全部の規定ピッチが重複する透孔2周囲で着色表示の各領域を識別容易な広さ及び色相差に設定する上で6種以下がよく、もって3〜6種の範囲が推奨される。そして、透孔2を設ける基準ピッチP0は、適用する複数種の規定ピッチにおけるピッチ幅の公約数となるピッチ幅に設定すればよいが、小さ過ぎては測尺帯1の強度及び腰の低下に繋がるため、最大公約数となるピッチ幅(第一及び第二実施形態では最大公約数が50mm)が推奨される。また、尺度目盛りを設ける場合の目盛りの刻み単位と表示形態、尺度数値の表示単位及び表示間隔等については、例示以外に種々設定できる。
【0045】
更に、本発明のマーキング用尺では、透孔2による基準ピッチP0の整数倍となる規定ピッチの着色表示と共に、これら規定ピッチとは別基準の割り付けピッチに対応した表示マークを測尺帯1の表面に設けることも可能である。例えば、図8で示す第三実施形態のマーキング用尺M3は、内装用のパネル材12を下地材11にビス止め又は釘止めする止着ピッチの設定と、下地材11をその取付基体に割り付けるための割り付けピッチの設定の両方に利用できるようにしている。
【0046】
この第三実施形態のマーキング用尺M3は、前記第一実施形態と同様の巻尺の測尺帯1に、その一端(図示の左端)から50mm離れた位置を始点の基準位置Sとして、50mmピッチで透孔2が全長にわたって各々幅方向中央位置に穿設されている。そして、測尺帯1の表面10には、透孔2・・・のピッチ幅を基準ピッチとして、該基準ピッチの3倍(150mm),4倍(200mm),5倍(250mm),6倍(300mm)の4種の規定ピッチの種類毎に色分けした円形の着色表示C1〜C4が対応する透孔2位置に設けられると共に、これら規定ピッチの着色表示C1〜C4とは別に、異なる基準の4種の割り付けピッチに対応して形状又は色調の異なる表示マークL1〜L4が透孔2位置とは無関係に設けてある。また、測尺帯1の両側縁1a,1bに沿って、全長にわたる2mm刻みの尺度目盛り4Eと10cm単位及び1cm単位の尺度数値44,45が表示されている。なお、図では尺度目盛り4Eの30cm以降の2mm刻み線を省略している。
【0047】
ここで、着色表示C1〜C4で表される4種の規定ピッチは、ビル等の壁及び天井内装用の石膏ボードの如きパネル材12を下地材11にビス止め又は釘止めする際の一般的な止着ピッチである。そして、着色表示C1〜C4は、その規定ピッチの1種のみが対応する透孔2位置では該透孔2と同心の円で表示されるが、2種以上の規定ピッチが重なる透孔2位置では、その複数の円形が図示のように測尺帯1の長手方向に並ぶように配置している。
【0048】
一方、表示マークL1〜L4で表される4種の割り付けピッチは、上記パネル材12を支持する軽量鉄骨構造の内装下地において、下地材11をコンクリート躯体や他の各種の取付基体に対して割り付ける(一定間隔に配置する)際に多用される、227.5mm、303mm、364mm、455mmの各ピッチになっている。そして、表示マークL1は303mmピッチに対応して小赤丸で、表示マークL2は455mmピッチに対応して小赤三角で、表示マークL3は227.5mmピッチに対応して小黒丸で、表示マークL4は354mmピッチに対応して小黒丸で、それぞれ測尺帯1の先端を始点とした各ピッチに対応する位置に表示されている。また、表示マークL1,L2は測尺帯1の一側縁1aに沿って配置し、表示マークL3,L4は該測尺帯1の他側縁1bに沿って配置しているが、表示マークL1とL2ならびに表示マークL3とL4が重なる位置では三角形の一辺に半円が合わさった形(図8の長さ91mm位置における表示マークL1,L2参照)で表示している。
【0049】
これら4種の割り付けピッチの表示マークL1〜L4に関する詳細を次の表2に示す。なお、表2では、各割り付けピッチに、対応する表示マークと同じ符号を附している。表中の「合体」は、2種の割り付けピッチが重なる位置における表示マークが、上記のように三角形と半円が合わさった形になることを意味している。また、割り付けピッチP1のピッチ幅303mmは公称であって厳密には303+1/3mmであるため、その3n倍は(909×n)mmでなく、(910×n)mmになっている。
【0050】
【表2】

【0051】
このような第三実施形態のマーキング用尺は、複数種の規定ピッチに対応した着色表示C1〜C4と、複数種の割り付けピッチに対応した表示マークL1〜L4とを有するから、ビル等の壁及び天井の内装施工において、下地材11の割り付けと内装用のパネル材12に対する止着位置のマーキングに共用できるという利点がある。
【0052】
なお、表示マークを設ける割り付けピッチの種類は1〜3種及び5種以上でもよく、表示マークの形状及び色調についても様々に設定可能である。また、割り付けピッチの対象は、例示した軽量鉄骨構造の内装下地における下地材に限らず、各種屋根材、外壁材、垂木、壁クロス、フローリング、タイル、煉瓦やコンクリートブロック等の種々の割り付け施工を要するものが対象となるが、透孔2を利用する規定ピッチのマーキング対象と関連していることが望ましい。
【0053】
本発明のマーキング用尺は、例示した第一及び第三実施形態の巻尺や第二実施形態の金属製板尺に限らず、測尺帯1の材質及び形態と付属部品等が種々異なるものを包含する。しかして、測尺帯1の材質としては、金属以外に、硬質及び軟質の合成樹脂、布、樹脂含浸布、合板を含む木材、セラミックス、これらの積層物やラミネート物等の種々のものを採用できる。また、マーキング用尺の形態としては、捲込みケース付きの巻尺や硬質材料からなる板尺の他に、巻回可能な柔軟性材料からなる測尺帯のみで構成されるもの(捲込みケースのない巻尺)が挙げられる。更に、巻尺における捲込みケース5についても、捲込み機構、測尺帯を任意の引出し状態で保持するロック機構の有無と形態、他の付属機構等を様々に設定可能である。なお、フック金具3については、測尺帯1の先端部にスライド及び固定可能に設けることにより、そのフック部3aから基準位置Sまでの距離rを、マーキング対象物の種類や施工条件による端縁から該端縁に最も近いマーキング位置までの距離dの変化に応じて可変調整できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 測尺帯
10 表面
2 透孔
3 フック金具
3a フック部
4A〜4E 尺度目盛り
5 捲込みケース
11 下地材
12 パネル材(マーキング対象物)
12a 端縁
C1〜C5 着色表示
L1〜L4 割り付けピッチの表示マーク
P0 基準ピッチ
P1〜P4 規定ピッチ
S 基準位置
d パネル材の端縁から該端縁に最も近いマーキング位置までの距離
m マーキング
r 測尺帯の先端から基準位置までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測尺帯の先端側の基準位置を始点として、該測尺帯に基準ピッチで透孔が穿設されると共に、ピッチ幅が該基準ピッチの整数倍である複数種の規定ピッチの各々に対応する透孔位置の測尺帯表面に、各規定ピッチの種類毎に色分けした着色表示が設けられてなるマーキング用尺。
【請求項2】
前記測尺帯が捲き込みケース付きの巻尺であり、その先端にフック金具が取り付けられなる請求項1に記載のマーキング用尺。
【請求項3】
前記測尺帯が硬質材料からなる帯板である請求項1に記載のマーキング用尺。
【請求項4】
前記測尺帯の先端から前記基準位置までの距離がマーキング対象物の端縁から該端縁に最も近いマーキング位置までの距離に等しく設定されてなる請求項1〜3の何れかに記載のマーキング用尺。
【請求項5】
前記規定ピッチが3〜6種である請求項1〜4の何れかに記載のマーキング用尺。
【請求項6】
前記測尺帯表面に、各規定ピッチの着色表示と共に、尺度目盛りが表示されてなる請求項1〜5の何れかに記載のマーキング用尺。
【請求項7】
前記基準ピッチが50mmであり、前記規定ピッチが50mm×n倍(nは2以上の整数)である請求項1〜6の何れかに記載のマーキング用尺。
【請求項8】
測尺帯の表面に、前記透孔位置に設ける複数種の規定ピッチの着色表示と共に、これら規定ピッチとは別基準の割り付けピッチの表示マークが前記透孔位置とは無関係に設けられてなる請求項1〜7の何れかに記載のマーキング用尺。
【請求項9】
前記規定ピッチが内装用パネルを下地材にビス止め又は釘止めする止着ピッチであり、前記別基準の割り付けピッチが該下地材の取付基体に対する割り付けピッチである請求項8記載のマーキング用尺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−75535(P2011−75535A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245254(P2009−245254)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000130662)株式会社サワタ建材社 (14)
【Fターム(参考)】