説明

ミエロペルオキシダーゼに対するアッセイにおける使用のための抗体及び改良された試験試料操作方法

本開示は、試験試料中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の濃度レベルを決定するためのアッセイにおいて使用することができる単離抗体に関する。さらに、本開示はまた、試験試料中の元のMPOレベルを維持するための、アッセイでの改良された試験試料操作法の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本願は、2007年5月18日提出の米国特許出願11/750,507の一部継続出願である、2008年3月17日提出の米国出願12/050,061の一部継続出願である(これらの内容は参照により本明細書中に組み込まれる。)。
【0002】
技術分野
本開示は、試験試料中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の濃度レベルを決定するためのアッセイで使用され得る単離抗体に関する。本開示はさらに、本開示の単離抗体の1つ又はそれ以上を用いて試験試料中のMPOの濃度レベルを決定するためのアッセイに関する。さらに、本開示はまた、試験試料中の元のMPOレベルを維持するための、アッセイにおける改良された試験試料操作法の使用にも関する。最終的に、本開示は、前記アッセイでのMPOレベルの正確な検出を可能にするために試験試料中の元のMPOレベルが維持されている試験試料を使用する改良アッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
診断の分野において、生体試料中の検体を検出するためにアッセイが使用される。検出することができる検体の例には、薬物、ホルモン、感染因子、微生物、抗体などが含まれる。癌、心疾患などを診断するために、生体試料中の1つ又はそれ以上の検体の同定を使用することができる。
【0004】
アッセイの具体的なタイプ、即ち免疫アッセイは、検出されるべき検体と少なくとも1つの特異的結合パートナーとの間の特異的結合反応を含む。(抗体、抗原などであり得る)特異的結合パートナーは、特異的に検体に結合するか又はそれと反応する。検体及び特異的結合パートナーは特異的結合ペア複合体を形成する。このような特異的結合ペア複合体の例は、抗体(又は抗体断片)及び抗原である。しかし、複数の検体又は複数の特異的結合パートナーは、各反応中に互いに反応し得る。
【0005】
次に、特異的結合ペア複合体を検出することができる。通常、色原体、フルオロフォア、化学又は電気化学発光が可能な物質、ラジオアイソトープ、ハプテン、酵素標識又はビオチン及びストレプトアビジンなどの別の特異的結合ペアを形成することができる物質などの検出可能な標識で、少なくとも1つの特異的結合パートナーが標識される。
【0006】
免疫アッセイは有用であるとはいえ、これらに問題がないわけではない。例えば、このような免疫アッセイにおいて使用される抗体の特異性及び感度は非常に重要である。免疫アッセイにおいて使用される1つ又はそれ以上の抗体の特異性又は感度が低い場合、これにより、偽陽性又は偽陰性の結果が導かれ得る。1つ又はそれ以上の抗体の特異性及び感度を改善又は向上させるためのある方法は、前記抗体の目的とする標的(即ち抗原)に対する前記抗体の結合親和性を向上させることである。それらの目的とする標的に対して結合親和性が改善された抗体は、特異性及び感度が向上するはずである。
【0007】
アッセイにおいて検出され得る検体の例は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)である。MPOは、急性心臓症候群(ACS)の診断において使用されるマーカータンパク質である。MPO(ドナー:過酸化水素、酸化還元酵素、EC1.11.1.7)は、およそ150kDaの、四量体の、大きくグリコシル化された、塩基性(pI 10)ヘムタンパク質である。これは、2つの同一のジスルフィド結合で連結されたプロモーターからなり、このプロモーターのそれぞれは、プロトポルフィリン含有59−64kDa重鎖サブユニット及び14kDa軽鎖サブユニットを有する(Nauseef、W.M.ら、Blood、67:1504−1507(1986)参照)。MPOは好中球及び単球において豊富であり、これらの細胞の乾燥重量のそれぞれ5%及び1から2%を占める(Nauseef、W.M.、ら、Blood 67:1504−1507(1986)参照)。ヘムタンパク質は、白血球の一次アズール顆粒中に貯蔵され、様々なアゴニストによる食細胞の活性化後、細胞外環境及び食胞リソソームコンパートメントの両方に分泌される(Klebanoff、S.J.ら、The Neutrophil:Function and Clinical Disorders.Amsterdam:Elsevier Scientific Publishing Co.(1978)参照)。
【0008】
患者血液試料中で決定される高濃度の血漿MPOレベルは、冠状動脈性の心臓病と関連することが示されている。また、高濃度の血液MPOレベルは、以下に限定されないが心不全を含む急性冠動脈症候群の患者におけるリスクを予測するために使用することもできる(Tang、W.H.ら、J.Am.College Card.、49(24):2364−2370(2007);Tang、W.H.ら、Am.J.Card.、98:796−799(2006);Zhang、R.ら、JAMA、286(17):2136−2142(2001);Meuwese、M.C.ら、J.Am.College Card.、50(2):159−165(2007);G.Ndrepepaら、Eur.J.Clin.Invest.、38:90−96(2007)参照)。このように、患者血液試料中のMPOレベルの決定は、このような患者を管理するために、臨床的に関心が持たれている。
【0009】
サンドイッチ及び競合免疫アッセイ、臨床化学アッセイ及び酵素アッセイを含む、血液試料をアッセイするために臨床検査室で一般に使用されるアッセイの多くのタイプにおいて、試料回収チューブタイプ及び試料操作は検体の測定量に影響を及ぼし得る。特に、MPOは、白血球に存在し、血漿中で遊離していることが知られている。
【0010】
しかし、最新の分析前患者血液試料操作は、元のMPOレベルの維持を目的とした具体的段階を何ら含んでいない。むしろ、最新のMPOアッセイは、トロポニン測定とともに使用される血液保存手順に従い、即ち、ヘパリンリチウム血漿又は血清として試料を回収する。例えば、米国食品医薬品局は、臨床用途のためのあるMPOアッセイ、PrognostiXにより市販されるCardioMPOTM(PrognostiX、Inc.(Cleaveland、Ohio)の商標)酵素結合免疫吸着アッセイ試薬キットを審査通過させている。
【0011】
CardioMPOTMアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)である。CardioMPOTMの包装物には、患者血液試料は「ヘパリンリチウム回収チューブ中で保存すべきであり」、チューブはすぐに氷上又は2から8℃に置くべきであり、処理するまで2から8℃で保存すべきであると記載されている(CardioMPOTM包装の挿入物の7頁)。このような血液試料操作に伴う問題は、抗凝血剤回収チューブ(ヘパリンリチウムチューブなど)が試料操作プロセスの一部として使用される場合、MPOレベルもまた上昇し得るということである。さらに、採血前に抗凝血剤(ヘパリン又はビバリルジンなど)で患者が処置される場合、元のMPOレベルが向上し得る。
【0012】
さらに、MPOのための現在の血液試料操作手順は、殆どの血液試料が少なくともある時間、室温保存に曝されるという現実を考慮していない。室温保存はまた長時間にわたり得る。室温状態への曝露は、分析前のあらゆる時点で起こり得る。血液採取場所(救急科又は集中治療室など)から実験室への試料の移動は通常室温で行われ、実験室に入った後は、遠心のための待ち時間があり得る。臨床検査室の自動化血液分析装置は通常、試料に対して冷却保存状態を用いないので、処理中、血液試料は室温状態に曝される。さらに、米国の臨床試験室は、自動搬送システムと連結された複数の分析装置ステーションを用いた自動化システムを施行し始めた。これらの自動化システムもまた、血液試料が長時間室温で保存される可能性を向上させる。最後に、室温状態への曝露があり得るという現実に加えて、現行方式は、MPOレベルについて試験しようとする試料の室温への実際の曝露の追跡又は監視を何ら含まない。
【0013】
白血球MPOは、試料がどのように操作されるかということ及び試料を回収するために使用される検体チューブに依存して、血漿に放出され得る。この点において、発明者らは、MPOアッセイ前に現在使用されている分析前試料操作法により、血清の凝固及びヘパリンリチウム血漿の調製の間、白血球からMPOが漏出し、それにより、MPOレベルの上昇が起こってACS患者の層別化が不正確になり得、結果として、間違った治療選択が起こる。
【0014】
従って、本開示のある目的は、アッセイにおいてMPOの相補的エピトープに結合することができる抗体を提供することである。これらの抗体は、良好な結合親和性を示し、例えば免疫アッセイなどのアッセイにおいて使用され得る。本開示の別の目的は、正確なアッセイのために元の患者MPOレベルを維持することを具体的に目的とする、患者試験試料操作に対するMPOアッセイ法との使用を提供することである。本発明のこれらの及びその他の目的及び長所は、本明細書中で提供される記述から明らかとなろう。本開示の方法は、元のMPOレベルを維持すること及び/又は試料操作及び保存により起こるMPOレベルの変化を防ぐことにより、あらゆる臨床アッセイにおいて、有利に、MPO測定を改良する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Nauseef、W.M.他、Blood、67、1986年、p.1504−1507
【非特許文献2】Klebanoff、S.J.他、「The Neutrophil:Function and Clinical Disorders」アムステルダム、エルゼビア・サイエンティフィック・パブリッシング(Elsevier Scientific Publishing Co.)1978年
【非特許文献3】Tang、W.H.他、J.Am.College Card.、49(24)、2007年、p.2364−2370
【非特許文献4】Tang、W.H.他、Am.J.Card.、98、2006年、p.796−799
【非特許文献5】Zhang、R.他、JAMA、286(17)、2001年、p.2136−2142
【非特許文献6】Meuwese、M.C.他、J.Am.College Card.、50(2)、2007年、p.159−165
【非特許文献7】G.Ndrepepa他、Eur.J.Clin.Invest.、38、2007年、p.90−96
【発明の概要】
【0016】
ある実施形態において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509に関する。
【0017】
別の実施形態において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509から抽出されるDNAから生成される抗体に関する。
【0018】
さらに別の実施形態において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生されるモノクローナル抗体に関する。
【0019】
さらに別の実施形態において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715に関する。
【0020】
さらに別の実施形態において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715から抽出されるDNAから生成される抗体に関する。
【0021】
さらに別の実施形態において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生されるモノクローナル抗体に関する。
【0022】
またさらに別の実施形態において、本開示は、試験試料中のMPOの濃度を決定するための免疫アッセイを関する。免疫アッセイは、次の段階:
(a)第一の捕捉抗体−MPO複合体を形成させるために、MPOを含有する疑いのある試験試料とMPOに結合する第一の捕捉抗体を接触させ;
(b)第二の捕捉抗体−MPO検出複合体を形成させるために、MPOに結合し、検出可能な標識に結合させられている第二の抗体と、第一の捕捉抗体−MPO複合体を含有する該試験試料を接触させ;
(c)検出可能な標識を検出することにより、段階(b)で形成される捕捉抗体−MPO−検出複合体の量を決定する(この場合、形成される第二の複合体の量は、試験試料中に含有されるMPOの量である。)、段階を含み、
第一の捕捉抗体又は第二の抗体の何れかは、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体である。この免疫アッセイにおいて、第一の捕捉抗体は、固定化された抗体を生成させるために、場合によっては、固相上に固定化され得る。
【0023】
またさらに別の実施形態において、本開示は、試験試料中のMPOの濃度を決定するための免疫アッセイに関する。本免疫アッセイは、次の段階:
(a)第一の捕捉抗体−MPO複合体を形成させるために、MPOを含有する疑いのある試験試料とMPOに結合する第一の捕捉抗体を接触させ;
(b)第二の捕捉抗体−MPO−検出複合体を形成させるために、MPOに結合し、検出可能な標識に結合させられている第二の抗体と、第一の捕捉抗体−MPO複合体を含有する該試験試料を接触させ;
(c)検出可能な標識を検出することにより、段階(b)で形成される捕捉抗体−MPO検出複合体の量を決定する(この場合、形成される第二の複合体の量は、試験試料中に含有されるMPOの量である。)、段階を含み、
第一の捕捉抗体又は第二の抗体の何れかは、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体である。この免疫アッセイにおいて、第一の捕捉抗体は、場合によっては、固定化された抗体を作製するために、固相上に固定化され得る。
【0024】
またさらに別の実施形態において、本開示は、試験試料中のMPOの濃度を決定するための免疫アッセイに関する。本免疫アッセイは、
(a)第一の捕捉抗体−MPO複合体を形成させるために、MPOを含有する疑いのある試験試料と、MPOに結合する第一の捕捉抗体を接触させ(この場合、第一の捕捉抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体である。);
(b)第二の捕捉抗体−MPO−検出複合体を形成させるために、MPOに結合し、検出可能な標識に結合させられている第二の抗体と、第一の捕捉抗体−MPO複合体を含有する該試験試料を接触させ(この場合、第二の抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体であり、ただし、第一の捕捉抗体及び第二の抗体は同一ではない。);
(c)検出可能な標識を検出することにより、段階(b)で形成される捕捉抗体−MPO−検出複合体の量を決定する(この場合、形成される第二の複合体の量は、試験試料中に含有されるMPOの量である。)、段階を含む。この免疫アッセイにおいて、第一の捕捉抗体は、場合によっては、固定化された抗体を作製するために、固相上に固定化され得る。好ましくは、この免疫アッセイにおいて、第一の捕捉抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体であり、第二の抗体はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体である。
【0025】
またさらに別の実施形態において、本開示は、免疫アッセイにおける使用のためのキットに関する。本免疫アッセイでの使用のためのキットは、マウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体と、該キットを使用するための説明書と、を含有する。
【0026】
またさらに別の実施形態において、本開示は、免疫アッセイでの使用のためのキットに関する。本免疫アッセイでの使用のためのキットは、マウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体と、該キットを使用するための説明書と、を含有する。
【0027】
またさらに別の実施形態において、本開示は、免疫アッセイでの使用のためのキットに関する。本免疫アッセイでの使用のためのキットは、マウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体と、マウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体と、該キットを使用するための説明書と、を含有する。
【0028】
またさらに別の実施形態において、本開示は、試験試料中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の濃度を決定するための方法に関する。本方法は、
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定する、段階を含む
上記の方法において、MPO分泌阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸の塩であり得る。さらに、上記の方法において使用される試験試料は、全血又は血漿試料であり得る。
【0029】
上記の方法の段階(b)は、競合免疫アッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、酵素アッセイ及び臨床化学アッセイからなる群から選択される方法を用いて行われ得る。
【0030】
上記の方法において、試験試料は、最長で約8時間、室温で保存され得る。室温での保存後、次に、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度で試験試料をさらに保存され得る。
【0031】
場合によっては、上記の方法において、MPO分泌阻害剤はクエン酸の塩を含み得、試験試料は、処理前に最長で約8時間、約2℃から約8℃の温度で保存され得る。場合によっては、前記試験試料は、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存され得る。
【0032】
またさらに別の実施形態において、本開示は、ヒト血液試料中のMPOの濃度を決定するための改良法に関する。具体的に、この方法における改良には、最長で約8時間、室温でMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で前記試料を保存することが含まれる。この方法において、MPO分泌阻害剤はエチレンジアミン四酢酸の塩であり得る。さらに、上記の方法において使用されるヒト血液試料は全血又は血漿試料であり得る。さらに、ヒト血液試料中のMPOの濃度は、競合免疫アッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、酵素アッセイ及び臨床化学アッセイからなる群から選択される方法を行うことにより決定され得る。さらに、室温でのヒト血液試料の保存後、次いで、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度で試料をさらに保存し得る。
【0033】
またさらに別の実施形態において、本開示は、ヒト血液試料中のMPOの濃度を決定するための改良法に関する。具体的に、この方法における改良は、処理前に最長で約8時間、約2℃から約8℃の温度で、クエン酸の塩を含有する試料回収チューブ中で前記試料を保存することを含む。場合によっては、前記試験試料は、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存され得る。
【0034】
またさらに別の実施形態において、本開示はキットに関する。本キットは、
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブと、
(b)上記抗体の少なくとも1つ(例えば、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体)と、
(c)該キットを使用するための説明書と、を含み得る。
【0035】
またさらに別の実施形態において、本開示は、ヒト末梢血液試料中のMPOの濃度を決定するための免疫アッセイに関する。本免疫アッセイは、
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存されるMPOを含有する疑いのあるヒト末梢血液試料を提供し;
(b)第一の捕捉抗体−MPO複合体を形成させるために、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存されるヒト末梢血液試料と、MPOに結合する第一の捕捉抗体を接触させ(この場合、第一の捕捉抗体はA.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体である。);
(c)第二の捕捉抗体−MPO−検出複合体を形成させるために、MPOに結合し、検出可能な標識に結合させられている第二の抗体と、第一の捕捉抗体−MPO複合体を含有する前記ヒト末梢血液試料を接触させ(この場合、第二の抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体であり、ただし、第一の捕捉抗体及び第二の抗体は同一ではない。);
(d)検出可能な標識を検出することにより、段階(b)で形成される捕捉抗体−MPO−検出複合体の量を決定する(この場合、形成される第二の複合体の量は、ヒト末梢血液試料中に含有されるMPOの量である。)、段階を含む。
【0036】
上記免疫アッセイにおいて、第一の捕捉抗体は、固定化された抗体を作製するために固相上に固定化され得る。また、上記免疫アッセイにおいて、第一の捕捉抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体であり得、第二の抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体であり得る。上記免疫アッセイにおいて、MPO分泌阻害剤はエチレンジアミン四酢酸の塩であり得る。
【0037】
さらに、上記免疫アッセイにおいて、試験試料は全血又は血漿試料であり得る。上記免疫アッセイにおいて、試験試料は、最長で約8時間、室温で保存され得る。室温での保存後、試験試料は、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存され得る。場合によっては、上記の方法において、MPO分泌阻害剤は、クエン酸の塩を含み得、試験試料は、処理前に最長で約8時間、約2℃から約8℃の温度で保存され得る。場合によっては、前記試験試料は、またさらに、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度で保存され得る。
【0038】
さらにまた別の態様において、本開示は、対象が循環器疾患を発現するリスクを有するか否かを判定する方法に関する。具体的に、このような方法は、
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する、段階を含み、
この場合、段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低い場合、対象は循環器疾患を発現するリスクがないものと判定され、さらに、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルよりも高い場合、対象は、循環器疾患を発現するリスクがあるとみなされる。
【0039】
上記の方法において、段階(b)での試験試料中のMPOの濃度は、既に述べた方法の何れか(例えば、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法)を用いて決定され得る。
【0040】
さらにまた別の態様において、本開示は、対象において循環器疾患を診断する方法に関する。本方法は、
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する(この場合、段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低い場合、対象は循環器疾患に罹患していないものとみなされ、さらに、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルよりも高い場合、対象は、循環器疾患に罹患しているものとみなされる。)段階を含み得る。
【0041】
上記の方法において、段階(b)での試験試料中のMPOの濃度は、既に述べられた方法の何れか(例えば、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法)を用いて決定され得る。
【0042】
さらにまた別の態様において、本開示は、対象において循環器疾患の重症度を監視する方法に関する。本方法は、
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する(ここで、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより低い場合、、対象は循環器疾患の重症度が低いと判定され、さらに、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより高い場合、対象は循環器疾患の重症度が高いと判定される。)段階を含む。
【0043】
上記の方法において、循環器疾患は、冠動脈疾患、末梢血管疾患、高血圧、心筋梗塞又は心不全である。さらに、上記の方法において、段階(b)での試験試料中のMPOの濃度は、既に述べられた方法の何れか(例えば、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法)を用いて決定され得る。
【0044】
またさらに別の実施形態において、本開示は、対象において循環器疾患の進行を監視する方法に関する。この方法は、:
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する(この場合、段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低い場合、対象は循環器疾患が進行していないか又は好転していると判定され、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより高い場合、対象は循環器疾患が進行していると判定される。)段階を含む。
【0045】
上記の方法において、段階(b)での試験試料中のMPOの濃度は既に述べられた方法の何れか(例えば、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法)を用いて決定され得る。
【0046】
またさらに別の実施形態において、本開示は、1つ又はそれ以上の医薬組成物の対象への投与の結果として対象が循環器系の合併症に罹患しているか否かを決定する方法に関する。本方法は、
(a)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与される前に対象からの第一の試験試料を得て、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で該第一の試験試料を保存し;
(b)該試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与された後、対象から第二の試験試料を得て、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で該第二の試験試料を保存し;
(d)該第二の試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(e)段階(d)でのMPOの濃度と段階(b)でのMPOの濃度を比較する(この場合、段階(d)で決定されるMPOの濃度と比較した場合に段階(b)で決定されるMPOの濃度が変化しないとき、対象は、1つ又はそれ以上の医薬組成物の投与の結果として循環器系の合併症に罹患していないと判定され、さらに、段階(d)でのMPOの濃度と比較した場合に段階(b)で決定されるMPOの濃度が変化するとき、対象は1つ又はそれ以上の医薬組成物の投与の結果として循環器系の合併症に罹患していると判定される。)、段階を含む。
【0047】
上記の方法において、段階(b)、段階(d)又は段階(b)及び(d)の両段階での試験試料中のMPOの濃度は既に述べられた方法の何れか(例えば、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法)を用いて決定され得る。
【0048】
またさらに別の実施形態において、本開示は、1つ又はそれ以上の医薬組成物での治療を受けている対象においてMPOレベルを監視する方法に関する。本方法は、
(a)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与される前に対象からの第一の試験試料を提供し(ここで、該試験試料は、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される。);
(b)第一の試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定されるMPOの濃度を所定レベルと比較し;
(d)段階(c)で行われるMPOの濃度の比較が、第一の試験試料中のMPOの濃度が所定レベルよりも高いというものである場合、ある期間1つ又はそれ以上の医薬組成物で対象を治療し;
(e)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与された後、対象からの第二及びその後の試験試料を提供し(該試験試料はMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される。);
(f)第二及びその後の試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(g)段階(b)で決定されるMPOの濃度と段階(f)で決定されるMPOの濃度を比較する(ここで、段階(b)で決定されるMPOの濃度と比較した場合に段階(f)で決定されるMPOの濃度が低下しているとき、対象は段階(d)の1つ又はそれ以上の医薬組成物の投与を続けるべきであるか、又は、さらに、段階(b)で決定されるMPOの濃度と比較した場合に段階(f)で決定されるMPOの濃度が同じであるか又は上昇しているとき、対象は、段階(d)で対象に投与される1つ又はそれ以上の医薬組成物のより高い濃度で治療されるべきであるか又は対象は段階(d)で対象に投与された1つ又はそれ以上の医薬組成物とは異なる1つ又はそれ以上の医薬組成物で治療されるべきである。)、段階を含む。
【0049】
上記の方法において、段階(b)、段階(f)又は段階(b)及び(f)の両方での試験試料中のMPOの濃度は既に述べられた方法の何れか(例えば、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法)を用いて決定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例9に記載のように生成される0.3125μg/mLで保持される抗体濃度との抗原滴定曲線を示す。この図1において、−●−は、モノクローナル抗体1−1175−154を表し、−┃−はモノクローナル抗体1−1519−450を表し、−◆−はモノクローナル抗体1−2169−143を表し、−■−はモノクローナル抗体1−2244−166を表す。
【図2】実施例9に記載のような免疫アッセイにおける様々なMPO結合対の結合の抗原滴定曲線を示す。この図2において、−x−は、捕捉抗体としてのモノクローナル抗体1−1175−154及び結合抗体としてのモノクローナル抗体1−1519−450の使用を表し、−●−は、捕捉抗体としてのモノクローナル抗体1−1519−450及び結合抗体としてのモノクローナル抗体1−1175−154の使用を表し、−*−は、捕捉抗体としてのモノクローナル抗体1−1175−154及び結合抗体としてのモノクローナル抗体1−2244−166の使用を表し、− − −は、捕捉抗体としてのモノクローナル抗体1−2169−143及び結合抗体としてのモノクローナル抗体1−1175−154の使用を表す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本開示は、試験試料中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の量又は濃度を決定するための、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)アッセイ、例えば免疫アッセイなど、で使用することができる抗体に関する。本開示はまた、本開示の抗体の1つ又はそれ以上を用いた、試験試料中のMPOの量又は濃度を決定するためのアッセイにも関する。さらに、本開示はまた、試験試料中の元のMPOレベルを維持するために使用することができる、改良された試験試料操作法も提供し、従ってMPOレベルのより正確な評価が可能となり、従って、結果的に、より正確な患者の層別化及び治療選択が可能となる。最後に、本開示は、前記アッセイでのMPOレベルの正確な検出を可能にするための、試験試料中での元のMPOレベルが維持されている試験試料を使用する改良アッセイに関する。
【0052】
A.定義
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容において明確な別段の指示がない限り、複数形の意味を含む。本明細書中の数字の範囲の引用の場合、同じ精度でその間にある途中の各数字が明確に目論まれる。例えば、6から9という範囲に対して、6及び9に加えて7及び8という数字が目論まれ、6.0から7.0という範囲に対して、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0という数字が明確に目論まれる。
【0053】
a)抗体
本明細書中で使用される場合、「抗体(「antibody」及び「antibodies」)」という用語は、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体(完全又は部分的ヒト化)、動物抗体、例えば、以下に限定されないが、鳥類(例えば、アヒル又はガチョウ)、サメ又はクジラ、非霊長類を含む哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウスなど)又は非ヒト霊長類(例えば、サル、例えばカニクイザル、チンパンジーなど)、組み換え抗体、キメラ抗体、1本鎖Fv(「scFv」)、1本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(「sdFv」)及び抗イディオタイプ(「抗−Id」)抗体(例えば、本開示の抗体に対する抗−Id抗体を含む。)及び上記の何れかの機能的に活性のあるエピトープ結合断片を指す。特に、抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性を有する断片、即ち、抗原結合部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、何らかのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgA)又はサブクラスのものであり得る。バイオディスプレイを用いて調製されたコンビナトリー抗体ライブラリのスクリーニングを介して親和性(即ちK、k又はk)が向上するか又は改善された抗体は、本明細書中で「親和性成熟抗体」と呼ばれる。簡素化するために、検体に対する抗体は、本明細書中で「抗検体抗体」と呼ばれることが多く、又は稀に「検体抗体」と呼ばれる(例えばMPO抗体又は抗MPO抗体)。
【0054】
b)結合定数
「会合速度定数」、「kon」又は「k」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される場合、下記の式により示されるような、抗体のその標的抗原への結合速度又は抗体と抗原との間の複合体形成の速度を示す値を指す:
抗体(「Ab」)+抗原(「Ag」)→Ab−Ag。
【0055】
「解離速度定数」、「koff」又は「k」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される場合、下記の式により示されるような、その標的抗原からの抗体の解離速度又は時間経過に伴う遊離抗体及び抗原へのAb−Ag複合体の分離を示す値を指す:
Ab+Ag←Ab−Ag。
【0056】
会合及び解離速度定数を決定するための方法は当技術分野で周知である。蛍光を利用した技術を用いることにより、高感度となり、平衡状態で生理的緩衝液中の試料を調べることが可能になる。その他の実験アプローチ及び、BIAcore(R)(生体分子相互作用分析)アッセイなどの機器を使用することができる(例えば、BIAcore International AB、GE Heathcare社、Uppsala、Swedenから入手可能な機器)。さらに、Sapidyne Instruments(Boise、Idaho)から入手可能なKinExA(R)(結合平衡除外アッセイ)アッセイも使用することができる。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「平衡解離定数」又は「K」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される場合、解離速度(koff)を会合速度(kon)で除算して得られる値を指す。会合速度、解離速度及び平衡解離定数は、抗原に対する抗体の結合親和性を表すのに用いられる。
【0058】
c)血液又は血液試料
本明細書中で使用される場合、「血液」又は「血液試料」という用語は、交換可能に使用される。「血液」又は「血液試料」という用語は、全血試料、血清又はそれら由来の血漿画分を指す。好ましくは、血液又は血液試料は、末梢血液又はそれ由来の血漿画分である。最も好ましくは、血液又は血液試料は、ヒト末梢血液又はそれ由来の血漿画分である。
【0059】
d)循環器疾患
本明細書中で使用される場合、「循環器疾患」という用語は、心臓、血管又は循環を含む、様々な臨床的疾病、疾患又は状態を指す。この疾病、疾患又は状態は、冠動脈、大脳又は末梢動脈の動脈硬化性障害によるものであり得る。循環器疾患には、以下に限定されないが、冠動脈疾患、末梢血管疾患、高血圧、心筋梗塞、心不全などが含まれる。心不全に関して、例えば、循環器疾患の「重症化」は、NYHA分類の上昇により示されるような疾患の悪化、例えばクラスIII又はクラスIVを指し、循環器疾患の「重症度の低下」は、NYHA分類の低下により示されるような疾患の改善を指す(例えば、クラスIII又はIVからクラスII又はI)。
【0060】
e)エピトープ
本明細書中で使用される場合、「エピトープ(epitope又はepitopes)」という用語は、対象において抗原性又は免疫原性活性を有するポリペプチド又はタンパク質の部位又は断片を指す。免疫原性活性を有するエピトープは、動物において抗体反応を誘発するポリペプチド又はタンパク質の部位又は断片である。抗原性活性を有するエピトープは、当業者にとって周知の何らかの方法により調べた場合(例えば免疫アッセイによって)、抗体が免疫特異的に結合するポリペプチド又はタンパク質の部位又は断片である。
【0061】
f)心不全
本明細書中で使用される場合、「心不全」という用語は、心臓が血液を効率的に身体の残りの部分へ送り出すことができない状態を指す。心不全は、梗塞、心筋ミオパチー(原発性又は二次性)、高血圧、冠動脈疾患、弁疾患、出生異常又は感染による、心臓への損傷又は動脈の狭窄によるものであり得る。心不全は、さらに、慢性、鬱血性、急性、非代償性、収縮期又は拡張期として表現され得る。New York Heart Association(NYHA)分類は、患者の機能的能力に基づく疾患の重症度を表し;NYHAクラスは、治療又は治療に対する反応の欠如に基づき、進行及び/又は逆行し得る。
【0062】
g)ヒト化抗体
本明細書中で使用される場合、「ヒト化」抗体という用語は、所定の抗原に結合することができ、実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するフレームワーク領域及び実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するCDRを含む、免疫グロブリン変異体又はその断片を指す。通常、ヒト化抗体は、非ヒトである源からそれに導入される1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含む。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものと対応する少なくとも1及び通常は2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)、Fabc、Fvなど)の実質的に全てを含み、フレームワーク(「FR」)領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(「Fc」)の少なくとも一部(通常はヒト免疫グロブリンのもの)を含む。一般に、抗体は、軽鎖ならびに少なくとも重鎖の可変ドメインの両方を含有する。ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgE及び何らかのアイソタイプ(IgG、IgG、IgG及びIgGを含む。)を含む免疫グロブリンの何らかのクラスから選択され得る。ヒト化抗体は、複数のクラス又はアイソタイプからの配列を含み得、所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを選択することは、当業者の範囲内である。
【0063】
h)MPOハイブリドーマ
本明細書中で使用される場合、「MPOハイブリドーマ」(又は稀に「ハイブリドーマ」)という用語は、関心のある抗MPO抗体を産生する特定の(指定のような)ハイブリドーマクローン又はサブクローンを指す。一般に、同じタイプのサブクローン由来のものと比較した場合、ハイブリドーマクローンにより産生される抗体の親和性において、いくつかの小さな変異があり得、例えばクローンの純度を反映する。比較して、同じクローン由来であり、さらに関心のある抗MPO抗体を産生する全てのハイブリドーマサブクローンが、同一配列及び/又は同一構造の抗体を産生することは十分に実証されている。
【0064】
i)医薬組成物
本明細書中で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、治療を必要とする疾患又は状態に罹患している対象を治療するために使用することができる低分子であるか(例えば、活性物質を含有する薬物、通常は非ペプチド性)又は生物学的であるか(例えば、ペプチド又はタンパク質に基づく薬物、以下に限定されないが、PEG付加などの修飾のある何れかを含む。)の如何にかかわらず、何らかの物質又は薬物を指す。医薬組成物の例には、以下に限定されないが、抗新生物薬(化学療法剤)、抗鬱剤(例えば、三環系抗鬱剤)、多発性硬化症薬、麻酔剤、インターフェロン、ホルモン、HIV抗ウイルス薬、高脂血症薬(以下に限定されないが、ナイアシン、フィブレート(例えば、クロフィブレート、フェノフィブレート、フェノフィブリン酸、シムフレート(simfrate)、フェノフィブリン酸の塩及びそれらの何らかの組み合わせ)、エゼチミブ、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、スタチン、例えば、以下に限定されないが、ロスバスタチン、シンバスタチン及びそれらの組み合わせ(その他の高脂血症薬との組み合わせ(例えば、シンバスタチン及びエゼチミブ)を含む。)、抗炎症剤など、ならびに、それらの何らかの組み合わせが含まれる。
【0065】
j)所定レベル
本明細書中で使用される場合、「所定レベル」という用語は、一般に、アッセイ結果を所定レベルに対して比較することにより診断結果を評価するために使用されるアッセイカットオフ値を指すが、この場合、所定レベルは、既に、様々な臨床パラメーターに関係又は関連させられている(例えば、疾患の重症度、進行/非進行/改善など)。本開示は、例示的な所定レベルを提供し、本明細書中に記載のような例示的免疫アッセイに対する臨床パラメーターとのこのようなレベルの最初のつながり又は関連を表す。しかし、カットオフ値が免疫アッセイの性質に依存して変化し得ることは周知である(例えば使用される抗体など)。この記述に基づくその他の免疫アッセイに対して免疫アッセイ特異的カットオフ値を得るために、その他の免疫アッセイに対する本明細書中での開示を適応させることは、さらに十分に当業者の技術範囲内である。所定レベル(カットオフ)の正確な値がアッセイ間で変化し得る一方で、本明細書中に記載のような相関は、一般に適用可能であるはずである。
【0066】
k)試料回収チューブ
本明細書中で使用される場合、「試料回収チューブ」又は「試料チューブ」という用語は交換可能に使用される。本明細書中で使用される場合、「試料回収チューブ」又は「試料チューブ」という用語は、分析を行う場所への輸送のための、血液試料などの試験試料を回収し、保存するために使用される容器の何らかのタイプを指す。当技術分野で公知の何らかの適切な材料(例えば、プラスチック又はガラス)を用いて試料回収チューブを作製することができる。例えば、安定化剤と非反応性であり、試験試料に干渉しない適切なプラスチック材料で試料回収チューブを作製することができる。好ましいプラスチック材料には、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレンの何らかのタイプが含まれる。プラスチック試料回収チューブの例は、Greiner Bio−One GmbH(Kremsmunster、Austria)から入手可能なVACUETTE(R)及びBD(Becton Dickinson and Company、Franklin Lakes、NJ)から入手可能なBD VACUTAINER(R)として知られる試料回収チューブである。特に好ましいものは、プラスチック製EDTA−含有VACUTAINER(R)チューブ(BD、Franklin Lakes、NJ)、特にEDTAで噴霧コーティングされたラベンダートップチューブ(即ち、VACUTAINER(R)EDTA又はKEDTAチューブ)及びEDTA入りの血漿調製チューブ(PPT)である。試料回収チューブはまた、以下に限定されないが、エチレングリコール四酢酸(EGTA)又はグリコールエーテルジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)又はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などの、EDTAと同様に機能するその他のキレート剤も含有し得る。あるいは、試料回収チューブは、ガラス又はシリコン処理ガラスで作製され得る。
【0067】
試料回収チューブは、例えば射出成形など、当技術分野で公知の何らかのプロセスにより作製され得る。さらに、試料チューブは、米国特許第6,910,597号、M.Iskra、「Collection Container Assembly」に記載のものなど、入れ子設計を含む、何らかのデザインのものであり得る。さらに、試料回収チューブは、凝固活性化剤(例えば、シリコン及び/又は微小化シリカ粒子など)で被覆され得る。凝固活性化剤に加えて、これらのチューブは、ゲルも含有し得る。あるいは、試験試料の処理を促進するために、試料回収チューブは、ゲル及びその他の物質(ヘパリンリチウムなど)を含有し得る。このような試料回収チューブの例は、BD VACUTAINER(R)血清チューブ、BD VACUTAINER(R)SSTTMチューブ(ゲル及び凝血活性化剤を含有するプラスチックチューブである。)及びBD VACUTAINER(R)PSTTMチューブ(ゲル及びヘパリンリチウムを含有するプラスチックチューブである。)である。
【0068】
l)対象又は患者
本明細書中で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、交換可能に使用される。本明細書中で使用される場合、「対象(subject及びsubjects)」という用語は、動物を、ある態様において、鳥類(例えば、アヒル又はガチョウ)、別の態様において、サメもしくはクジラ、又はさらなる態様において、非霊長類を含む哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス)及び霊長類(例えば、サル、例えばカニクイザル、チンパンジー及びヒトなど)を指す。
【0069】
m)試験試料
本明細書中で使用される場合、「試験試料」という用語は、一般に、関心のある検体を含有する及び/又はその疑いがあることについて試験されている生体物質を指す。試験試料は、以下に限定されないが、全血(溶血又は非溶血)、血清、血漿、赤血球細胞(赤血球)、白血球細胞(好中球、好酸球及び好塩基球などの顆粒球を含む、及びリンパ球などのリンパ細胞及び単球を含む、白血球)及びその他の血液細胞又は血液の形態(例えば、血小板、リンパ)、間質液、唾液、眼球レンズ液(ocular lens fluid)、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、鼻水、痰、滑液、腹水、膣液、月経、羊水、精液などを含む生理液などの何らかの生物学的ソース由来であり得る。その回収後すぐに(即ち新鮮)又は適切な保存条件下でしばらく保存した後、試験試料を試験し得る。生物学的ソースから得られたまま直接、又は試料の特徴を修飾するための前処理後、試験試料を使用し得る。例えば、このような前処理には、血液からの血漿の調製、粘性のある液体の希釈などが含まれ得る。前処理の方法はまた、ろ過、沈殿、希釈、蒸留、混合、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加、溶解なども含み得る。さらに、液体媒質を形成させるために又は検体を放出するために、固形の試験試料を修飾することも有益であり得る。
【0070】
本明細書中で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のものであり、限定していることを意図するものではない。
【0071】
B.MPO抗体
本開示は、MPOに特異的に結合する抗体を提供する。より具体的に、発明者らは、MPO上の別個のエピトープ系列に結合する抗体を発見した。実際に、本開示の発明者らは、ヒトMPOが少なくとも8個の別個のエピトープ群を含有することを発見した。
【0072】
特に、ある態様において、本開示は、本明細書中でエピトープ群3と呼ばれる、MPO上のある別個のエピトープ群に結合する単離抗体を提供する。
【0073】
別の態様において、本開示は、2007年5月16日に寄託されたA.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509(「MPO1−1175−509」とも呼ばれる。)に関する。
【0074】
さらに別の態様において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509から抽出されるDNAから作製される抗体に関する。
【0075】
さらにまた別の態様において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509(5月に寄託)により産生される抗体に関する。マウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体は、MPO上のエピトープ群3に結合し得る。
【0076】
特に、ある態様において、本開示は、本明細書中でエピトープ群5と呼ばれる、MPO上のある別個のエピトープ群に結合する単離抗体を提供する。
【0077】
さらに別の態様において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715(「MPO1−2169−715とも呼ばれる。)(2007年5月16日に寄託)に関する。
【0078】
さらに別の態様において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715から抽出されるDNAから作製される抗体に関する。
【0079】
さらにまた別の態様において、本開示は、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715(5月に寄託)により産生される抗体に関する。マウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体は、MPO上のエピトープ群5に結合し得る。
【0080】
C.MPO抗体を作製し使用する方法
本開示の抗体は、当技術分野で公知の様々な異なる技術を用いて作製され得る。例えば、MPOに対するポリクローナル及びモノクローナル抗体は、精製MPO抗原など適切な免疫原を含有する免疫原性調製物で適切な対象(以下に限定されないが、ウサギ、ヤギ、マウス又はその他の哺乳動物など)に免疫付与することにより作製することができる。例えば、適切な免疫原はヒト好中球から精製されたMPOであり得、これはAthens Research & Technology(Athens、GA)から市販されている。
【0081】
次に、抗体がMPOに結合するか否かを決定するために、対象において生成される抗体をスクリーニングすることができる。本明細書中に記載の方法を用いて、このような抗体をさらにスクリーニングすることができる(実施例9参照)。例えば、それらがエピトープ群3又はエピトープ群5に結合するか否かを判定するために、これらの抗体をアッセイすることができる。所望の特徴を有する抗体を同定するための適切な方法は本明細書中に記載されている(実施例10参照)。
【0082】
免疫原の単位用量(即ち、精製タンパク質又は組み換え産生ヒトMPOタンパク質)及び免疫付与法は、免疫付与される対象、その免疫状態及び対象の体重に依存する。対象における免疫反応を促進するために、フロイントの完全又は不完全アジュバント、リビのアジュバント又はそれらの何らかの組み合わせなどのアジュバントとともに免疫原を投与することができる。
【0083】
上述のような免疫原での対象の免疫付与により、ポリクローナル抗体反応が誘発される。固定化された抗原、即ちMPOを用いて、ELISAなどの標準的技術により、免疫付与した対象における抗体力価を長期間にわたり監視することができる。
【0084】
ヒト抗体産生細胞又は組織(例えば、ヒト骨髄細胞、末梢血液リンパ球(PBL)、ヒト胎児リンパ節組織又は造血幹細胞)を移植された免疫欠損マウスに抗原を導入することによって、ヒトモノクローナル抗体を産生させることができる。このような方法には、SCID−huマウス(例えば、WO93/05796、米国特許第5,411,749号;又はMcCuneら、Science、241:1632−1639(1988)参照)又はRag−1/Rag−2欠損マウスにおける抗体の生成が含まれる。ヒト抗体−免疫不全マウスもまた市販されている。例えば、Rag−2欠損マウスは、Taconic Farms(Germantown、NY)から入手可能である。
【0085】
免疫原で対象に免疫付与することによって、モノクローナル抗体を生成させることができる。免疫付与から適切な時間が経過した後、例えば、抗体力価が十分に高レベルとなる場合、免疫付与した動物から抗体産生細胞を回収し、標準的技術を用いてモノクローナル抗体を調製するために使用することができる。例えば、標準的体細胞融合手段によって、ハイブリドーマ細胞を得るために、骨髄腫細胞などの不死化細胞と、抗体産生細胞を融合させることができる。このような技術は当技術分野で周知であり、これには、例えば、Kohler及びMilstein、Nature、256:495−497(1975))により元来開発されたようなハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら、Immunology Today、4:72(1983))及びヒトモノクローナル抗体を産生させるためのEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibody and Cancer Therapy、Alan R.Liss、Inc.pp.77−96(1985))が含まれる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを作製するための技術は当業者にとって周知である。
【0086】
抗体産生細胞(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現し、MPOで免疫付与されたトランスジェニックマウス由来の脾臓細胞)を回収することによって、モノクローナル抗体を作製することもできる。ヒト骨髄腫との融合を通じて、又はエプスタインバーウイルス(EBV)での形質転換を通じて、脾臓細胞を不死化することができる。当技術分野に記載のヒトB細胞又はEBV−ハイブリドーマ技術(例えば、Boyleら、欧州特許公開0 614 984参照)を用いてこれらのハイブリドーマを作製することができる。
【0087】
MPOに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、ハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより、例えば、固定化されたMPOに特異的に結合する抗体を選択するためにスクリーニングすることにより、又は抗体が所望の特性、即ち本明細書中に記載のユニークなエピトープ群(即ちMPOエピトープ群3又は5)でMPOに結合する能力を判定するために本明細書中に記載のような抗体を試験することにより、検出される。所望の特異性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、例えば、限界希釈手順(例えばWandsら(Gastroenterology 80:225−232(1981)により記載される手順)により、クローンをサブクローニングし、標準的方法によって増殖させることができる。
【0088】
ハイブリドーマ細胞がモノクローナル抗体を分泌し、それにより全抗体を産生することを可能にするのに十分な条件下及びそのような時間にわたり、栄養培地中で、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイにおける試験で陽性となるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を培養することができる。ハイブリドーマ細胞に適切な組織培養技術及び培養液は全般的に、当技術分野で記載されている(例えば、R.H.Kenneth、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、N.Y.(1980)参照)。次に、抗体を含有する調整済みハイブリドーマ培養上清を回収し得る。サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、場合によっては、例えばプロテインAクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製法によって、培養液から単離することができる。
【0089】
組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリを構築し、MPOを用いてライブラリをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体を改変することができる。ファージディスプレイライブラリを作製しスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody Systems、カタログ番号27−9400−01;及びStratagene SurfZAP Phage Display Kit、カタログ番号240612参照)。同様に、酵母ディスプレイベクターは当技術分野で公知であり、市販されている(例えば、Invitrogen Corp.、Carlsbad、CAから入手可能なpYD1である。)。簡潔に述べると、MPOに特異的に結合する抗体を発現するファージ又は酵母細胞を同定し、単離するために、抗体ライブラリをスクリーニングする。好ましくは、ライブラリの一次スクリーニングは、固定化されたMPOによるスクリーニングを含む。
【0090】
スクリーニング後、ディスプレイファージ又は酵母を単離し、選択された抗体をコードするポリヌクレオチドをディスプレイファージ又は酵母から(例えば、ファージ又は酵母ゲノムから)回収し、周知の組み換えDNA技術により、その他の発現ベクター(例えば、Saccharomyces cerevesiae(サッカロミセス・セレビシエ)細胞、例えばEBY100細胞(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA))にサブクローニングすることができる。このポリヌクレオチドをさらに操作し(例えば、さらなる定常領域などのさらなる免疫グロブリンドメインをコードする核酸に連結)及び/又は宿主細胞で発現させることができる。
【0091】
あるいは、抗体に対するヒト患者による反応を最小化するために、キメラ及びヒト化抗体などの抗体の組み換え形態を調製することもできる。非ヒト対象で産生されるか又は、非ヒト抗体遺伝子の発現由来である抗体がヒトにおいて治療用として使用される場合、これらは、外来物として様々な程度認識され、免疫反応が患者において生じ得る。この免疫反応を最小化するか又は排除するためのあるアプローチは、キメラ抗体誘導体、即ち非ヒト動物可変領域及びヒト定常領域を組み合わせる抗体分子を作製することである。このような抗体は、元のモノクローナル抗体のエピトープ結合特異性を保持するが、ヒトに投与される場合、免疫原性が低くなり得、従って、患者にとって忍容性である可能性がより高い。
【0092】
当技術分野で公知の組み換えDNA技術によって、キメラモノクローナル抗体を生成させることができる。例えば、ヒト定常領域をコードする遺伝子で非ヒト抗体分子の定常領域をコードする遺伝子が置換される(例えば、PCT特許公開PCT/US86/02269、欧州特許出願第184,187号又は欧州特許出願第171,496号参照)。
【0093】
キメラ抗体は、抗原結合に関与しない可変領域の一部を、ヒト可変領域由来の同等部分で置き換えることにより、さらにヒト化され得る。「ヒト化」キメラ抗体の一般的な概説はMorrison、S.L.、Science、229:1202−1207(1985)及びOiら、BioTechniques、4−214(1986)で見出すことができる。このような方法には、重又は軽鎖の少なくとも1つからの免疫グロブリン可変領域の全て又は一部をコードする核酸配列を、単離し、操作し、発現させることが含まれる。次に、ヒト化キメラ抗体をコードするcDNA又はその断片を適切な発現ベクターにクローニングすることができる。適切な「ヒト化」抗体は、あるいは、相補性決定領域(CDR)置換により生成させることができる(例えば、米国特許第5,225,539号;Jonesら、Nature、321:552−525(1986);Verhoeyanら、Science 239:1.534(1988);及びBeidlerら、J.Immunol.、141:4053−4060(1988)参照)。
【0094】
MPOに特異的な抗体(例えばハムスター抗体)の結合特異性を保持する「ヒト」抗体ポリペプチド二量体を作製するために、エピトープインプリンティングを使用することもできる。簡潔に述べると、抗原に対する特異的結合がある非ヒト可変領域(VH)及びヒト定常領域(CH1)をコードする遺伝子をE.コリで発現させ、ヒトVλ.Cλ遺伝子のファージライブラリを感染させる。次に、MPOへの結合に対して、抗体断片を提示するファージをスクリーニングする。選択されたヒトVλ遺伝子をVλ.Cλ.鎖の発現のために再クローニングし、これらの鎖を有するE.コリにヒトVHCH1遺伝子のファージライブラリを感染させ、抗原で被覆したチューブを用いた一連のスクリーニングにこのライブラリを供する(WO93/06213参照)。
【0095】
別の態様において、本開示は、抗体が抗体断片であることを目論む。例えば、この抗体断片には、以下に限定されないが、Fab、Fab’、Fab’−SH断片、ジスルフィド結合Fv、1本鎖Fv(scFv)及びF(ab’)断片が含まれ得る。抗体断片の作製のための様々な技術が当業者にとって公知である。例えば、このような断片は、無傷の抗体のタンパク質分解性消化を介して得られ得るか(例えば、Morimotoら、J.Biochem.Biophys.Methods、24:107−117(1992)及びBrennanら、Science、229:81(1985)参照)又は組み換え宿主細胞により直接産生され得る。例えば、E.コリからFab’−SH断片を直接回収し、F(ab’)断片を形成させるために化学的にカップリングすることができる(Carterら、Bio/Technology、10:163−167(1992)参照)。別の実施形態において、F(ab’)は、F(ab’)分子のアセンブリを促進するために、ロイシンジッパーGCN4を用いて形成される。あるいは、組み換え宿主細胞培養からFv、Fab又はF(ab’)断片を直接単離することができる。短い連結ペプチドを用いることによって軽及び/又は重鎖可変領域を連結することにより、1本鎖可変領域断片(scFv)が作製される(Birdら、Science、242:423−426(1998)参照)。連結ペプチドの例は、GPAKELTPLKEAKVS(配列番号1)である。順に、薬物の結合又は固体支持体への結合などのさらなる機能のために、リンカーを修飾することができる。本開示において使用することができるその他のリンカー配列の例は、Birdら、Science、242:423−426(1988)、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879−5883(1988)及びMcCaffertyら、Nature、348:552−554(1990)で見出すことができる。
【0096】
組み換え又は合成の何れかにより1本鎖変異体を作製することができる。scFvの合成的生成の場合、自動合成装置を使用することができる。scFvの組み換え産生の場合、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適切なプラスミドを適切な宿主細胞、真核(酵母、植物昆虫又は哺乳動物細胞など)又は原核細胞(E.コリなど)の何れかに導入することができる。ポリヌクレオチドのライゲーションなどの通常の操作によって、関心のあるscFvをコードするポリヌクレオチドを作製することができる。当技術分野で公知の標準的タンパク質精製技術を用いて、得られたscFvを単離することができる。さらに、ダイアボディなどの1本鎖抗体のその他の形態も本開示により目論まれる。ダイアボディは、VH及びVLドメインが1つのポリペプチド鎖で発現される2価の2特異性抗体であるが、短すぎて同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成することができないリンカーを用いており、それによりドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成させられ、2つの抗原結合部位が生じる。(例えば、Holliger、P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444−6448(1993);Poljak、R.J.ら、Structure、2:1121−1123(1994)参照)。
【0097】
本開示の抗体は、様々な用途がある。より具体的には、試験試料中のMPOの存在を検出するための免疫アッセイにおいて、1つ又はそれ以上の捕捉抗体、1つ又はそれ以上の結合抗体又は1つ又はそれ以上の捕捉抗体及び1つ又はそれ以上の結合抗体の両方として、本開示の抗体を使用することができる。
【0098】
D.MPO試験試料回収及び改良された試験試料操作法
本開示はまた、回収された試験試料から得られた元のMPOレベルを維持するために使用することができる改良された試験試料操作法も提供する。具体的に、これらの改良された試験試料採取法は、白血球MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で対象から得られた試験試料を保存することを含む。好ましくは、本方法は、白血球MPO分泌阻害剤を含有する試料チューブ中で対象から得られた血液試料(例えば末梢血液試料)を保存することを含む。これらの方法は、MPOの血液濃度レベルの測定を改善し、従ってMPOレベルをより的確に維持及び測定することが可能となり、結果として患者の層別化及び治療選択をより的確にするための重要な能力を有する。さらに、試験試料中のMPOの濃度を決定するためのアッセイにおいて、本明細書中に記載の方法に従いその元のMPOレベルが維持される試験試料を使用することができる。本明細書中で詳細に考察されるように、試験試料中のMPOの濃度を決定することは、(a)対象から得られ(好ましくは末梢血液試料)、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;(b)試験試料中のMPOの濃度を決定することを含む。本開示の方法の実施において使用することができる試験試料(全血、血清及び血漿及びその他の体液など)を回収し、操作し、処理するための方法は当技術分野で周知である。
【0099】
上述のように、回収時間から測定までの原試験試料(例えば血液又は血漿)MPOレベルの維持は、白血球MPO分泌阻害剤の使用により達成することができる。白血球MPO分泌阻害剤は、試験試料(例えば、血清又は血漿)中に存在する白血球からのMPOの放出、特に室温での放出を阻害する、試料回収チューブ(例えば血漿回収チューブ)への回収時又はその少し後に試験試料に添加される何らかの試薬であり得る。様々な画分(例えば、血漿画分、血漿画分の次のバフィーコート界面(又は画分)(白血球がある。)及び赤血球細胞画分)への試験試料の(例えば遠心法による)処理の前に、白血球によるMPO放出の(阻害剤による)阻害が起こる。使用することができる白血球MPO分泌阻害剤の例には、以下に限定されないが、EDTAの塩(以下に限定されないが、ナトリウム又はカリウム塩を含む。)又はクエン酸の塩(以下に限定されないが、クエン酸ナトリウムを含む。)が含まれる。好ましいEDTA塩には、以下に限定されないが、二カリウム及び三カリウム塩が含まれる。好ましいクエン酸塩は、クエン酸ナトリウムである。添加されるべき白血球MPO分泌阻害剤の量は、当業者により決定され得る。具体的に、全血に対して市販の試料回収チューブ中で使用される量は許容可能である。使用され得るこのような試料回収チューブの例には、以下に限定されないが、EDTA−含有チューブ、例えば、プラスチックEDTA−含有VACUTAINER(R)チューブ(BD、Franklin Lakes、NJにより販売されるものなど)、特にラベンダートップチューブ、EDTAで噴霧コーティングされたチューブ(即ち、VACUTAINER(R)EDTA又はKEDTAチューブ)及びEDTA入りの血漿調製チューブ(PPT)が含まれる。
【0100】
白血球MPO分泌阻害剤入りの試料回収チューブへの試験試料(本明細書中で「回収試験試料」と呼ばれる。)の回収後、最長で約8時間、室温で試料回収チューブを保存し得る。本開示の発明者らは、回収試験試料中のMPOレベルが、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で、処理前に最長で約8時間、室温で保存(例えば維持)され得ることを見出した。EDTAの塩を含有する試料回収チューブを用いて、特に良好な結果が得られた。具体的に、発明者らは、EDTAの塩の使用により、試験試料中の白血球が無傷状態で維持され、それによりこれらの細胞からのMPO漏出が阻止され、従って試験試料中のMPOのレベルが維持されることを見出した。あるいは、室温以外、即ち約2℃から約8℃の温度で、処理前に最長で約8時間、クエン酸の塩を含有する試料回収チューブ中で試験試料を保存することができる。
【0101】
室温又は約2℃から約8℃の温度での保存時間後、MPO測定のために回収試験試料が処理されるまで、回収試験試料を遠心し、次いで氷上に置くか又は約2℃から約8℃の範囲の温度で保存することができる。約2℃から約8℃より低い範囲の温度を使用することができるが、これは好ましくなく、試料が凍結する可能性を小さくするために回避されるべきである。さらに、約2℃から約8℃の範囲の温度で、処理後に最長で約7日間、試料回収チューブをさらに保存することができる(例えば遠心及び/又は血漿分離後など)。
これは、試料回収チューブがEDTAの塩又はクエン酸の塩を含有する場合、特に好ましい。
【0102】
処理前に、試験試料の保存状況を確認するか、検討するか又は検証することができる。多くの様々な方法において、試験試料の保存状況(即ちMPO保存条件)を確認するか、検討するか又は検証することができる。例えば、保存条件が、アッセイでの試験試料のさらなる処理及び使用に容認できないか否かを決定するために、試験試料が保存されている温度及び時間を評価することができる。例えば、容認できない保存条件は、MPO分泌阻害剤を含有しない試料回収チューブ中での試験試料の保存、又は、処理前の約8時間を超える室温での白血球MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中での試験試料の保存である。あるいは、試験試料中での白血球の溶解の有無について試験試料を分析することができる。このような溶解があることにより、保存条件が容認できないこと及びさらにアッセイにおいての使用に対して試験試料が容認できないことが示される。試験試料のMPO保存状況の確認は、自動免疫アッセイ分析装置などの分析機器において自動化することができる。本明細書中でより詳細に考察されるように、試験試料に対して使用されるMPO保存状態について確認するために、自動免疫アッセイ分析装置をプログラムすることができ、容認できない可能性がある保存状態が存在するものと判定される場合、結果が誤って高くなる可能性があるので、MPOアッセイを行うことができないというエラーメッセージを送信するように分析装置をプログラムすることができる。
【0103】
試験試料から血漿画分を得るために、当技術分野で公知の何らかの処理段階を使用することができる。例えば、遠心を使用することができる。
【0104】
E.MPOアッセイ
本開示はまた、対象から得られた試験試料中のMPO濃度を決定するためのアッセイにも関する。目論まれるアッセイには、免疫アッセイ(サンドイッチ及び競合免疫アッセイなど)、臨床化学アッセイ及び酵素アッセイが含まれる。好ましくは、免疫アッセイを用いて、より好ましくはサンドイッチ免疫アッセイ(本明細書でより詳細に考察される。)を用いて、MPO測定が行われる。
【0105】
対象から得られる試験試料中のMPO濃度を決定するためのアッセイには、(a)対象から得られる試験試料を提供し;(b)試験試料中のMPOの濃度を決定する、段階が含まれ得る。好ましくは、対象から得られる試験試料は末梢血液試料である。本開示のアッセイにおいて、末梢血液試料は、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存されている。場合によっては、対象から得られる試験試料がMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存されている場合、本アッセイにはまた中間段階又はさらなる段階も含まれ得る。この中間段階又はさらなる段階は、試験試料における保存状態を確認することを含む。試験試料において保存状態を確認するか、検討するか又は検証するこの中間段階又はさらなる段階は、試験試料中のMPOの濃度が決定される前に行われなければならない。本明細書中で既に考察したように、この中間段階又はさらなる段階は、自動免疫アッセイ分析装置などの自動分析機器での使用に対して特に有利である。試験試料において保存状態を確認するか、検討するか又は検証し、ならびに、約8時間を超える室温での回収試験試料の保存又は試験試料遠心及び血漿分離前の2℃から8℃の温度での約7日間を超える回収試験試料のさらなる保存など、容認できないMPO保存状態を鑑定するために、分析装置をプログラムすることができる。容認できないMPOレベル又はMPO保存状態が存在するものとして判定される場合、結果が誤って高くなる可能性があるので、MPOアッセイを行うことができないというエラーメッセージを送信するように分析装置をプログラムすることができる。この態様において、分析装置は、MPO分泌阻害剤を含有する回収チューブ中で保存され、室温で約8時間を超えずに保存される試験試料の処理を進める。
【0106】
MPO濃度を決定するために行われ得るアッセイの具体的なタイプは免疫アッセイである。以下に限定されないが、サンドイッチ方式、競合阻害方式(フォワード又はリバース競合阻害アッセイの両方を含む。)又は蛍光偏光方式など、当技術分野で公知の何らかの方式で、免疫アッセイを行うことができる。上述のように、好ましくは免疫アッセイはサンドイッチ方式におけるものである。具体的に、本開示のある態様において、試験試料中のヒトMPOを分離し、定量するために、少なくとも2種類の抗体が使用される。さらに具体的に、少なくとも2種類の抗体は、「サンドイッチ」と呼ばれる免疫複合体を形成するMPOのある一定のエピトープと結合する。一般に、免疫アッセイにおいて、試験試料中のMPOを捕捉するために、1つ又はそれ以上の抗体(これらの抗体は「捕捉」抗体と呼ばれることが多い。)を使用することができ、検出可能な(即ち定量可能な)標識をサンドイッチに結合させる1つ又はそれ以上の抗体を使用することができる(これらの抗体は、「検出抗体」又は「結合物」)」と呼ばれることが多い。)。サンドイッチアッセイにおいて、MPOに結合する両方の抗体が、その個々の結合部位へのアッセイ中の何らかのその他の抗体の結合により、減少しないことが好ましい。言い換えると、抗体は、MPOを含有する疑いのある試験試料又は試験試料抽出物と接触させられる1つ又はそれ以上の第一の抗体が、第二の又はそれに続く抗体により認識される結合部位の全て又は一部に結合(それにより、1つ又はそれ以上の第二の検出抗体のMPOへの結合能を妨害する。)しないように、選択されるべきである。
【0107】
優れた免疫アッセイ、特にサンドイッチアッセイは、捕捉抗体、検出抗体として又は捕捉及び検出抗体として、本開示の抗体を使用して行うことができる。例えば、本開示の抗体(マウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体及びマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体の組み合わせなど)の少なくとも1つを第一の捕捉抗体として使用し、その他の市販の抗体を検出抗体として使用することができる。
【0108】
あるいは、複数の捕捉抗体が使用されている場合、本開示の抗体は、第二又はそれに続く捕捉抗体として使用することができる。あるいは、本開示の抗体の1つが捕捉抗体として使用されている場合、異なる抗体(本開示の抗体以外、即ち、その他の市販の抗体)を第二の捕捉抗体として使用することができる。あるいは、本開示の抗体は、捕捉抗体として使用される市販の抗体とともに、捕捉抗体としてではなく検出抗体としてのみ使用することができる。さらに別の代替法において、捕捉及び検出抗体の両方として本開示の抗体を使用することができる。例えば、マウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体(又はその抗体断片)を捕捉抗体として使用することができ、マウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体(又はその抗体断片)を検出抗体として使用することができる。あるいは、マウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体(又はその抗体断片)を捕捉抗体として使用することができ、ハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体(又はその抗体断片)を検出抗体として使用することができる。
【0109】
少なくとも1つの捕捉抗体(又は抗体(複数))及び(第二の検出抗体又は第三の検出抗体の何れかである)少なくとも1つの検出抗体と、同時に、又は連続して、あらゆる順番で、MPO(例えば含有する疑い)について試験されている試験試料を接触させることができる。例えば、試験試料は、少なくとも1つの捕捉抗体と最初に接触させ、次いで(連続して)少なくとも1つの検出抗体と接触させ得る。あるいは、試験試料は、最初に、少なくとも1つの検出抗体と接触させ、次いで(連続して)少なくとも1つの捕捉抗体と接触させ得る。さらに別の代替物において、捕捉抗体及び検出抗体を同時に試験試料と接触させ得る。試験されている試験試料は、本明細書中で既に記載されるような白血球MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存され得る。あるいは、試験試料は、白血球MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存されている必要はない。
【0110】
サンドイッチアッセイ方式において、MPOを含有する疑いのある試験試料は、最初に、第一の抗体−MPO複合体の形成を可能にする条件下で、少なくとも1つの第一の捕捉抗体と接触させる。複数の捕捉抗体が使用される場合、第一の複数の捕捉抗体−MPO複合体が形成される。サンドイッチアッセイにおいて、抗体、好ましくは少なくとも1つの捕捉抗体は、試験試料中で予想されるMPOの最大量のモル過剰量で使用される。例えば、緩衝液(例えば微小粒子コーティング緩衝液)1mLあたり抗体約5μg/mLから約1mg/mLを使用することができる。
【0111】
場合によっては、少なくとも1つの捕捉抗体(例えば第一の捕捉抗体)と試験試料を接触させる前に、試験試料からの第一の抗体−MPO複合体の分離を促進する固体の支持体又は固相に、少なくとも1つの捕捉抗体を結合させ得る。以下に限定されないが、反応トレイのウェル、試験チューブ又はビーズ(例えばポリスチレンビーズ、磁性ビーズ)、ニトロセルロースストリップ、膜、微小粒子(例えば、ラテックス粒子、ヒツジ及びDURACYTES(R)(Abbott Laboratories、Abbot Park、IL;DURACYTES(R)は、ピルビンアルデヒド及びホルムアルデヒドにより固定されている赤血球細胞である。))の形態のポリマー材料製の固体の支持体を含む、当技術分野で公知の何らかの固体の支持体を使用することができる。
【0112】
固相にはまた、検出抗体の接近を可能にするのに十分な間隙率及び抗原を結合させるのに適切な表面親和性を有する何らかの適切な多孔質材が含まれ得る。微小孔性の構造が一般に好ましいが、水和状態でゲル構造を有する材料も同様に使用され得る。このような有用な固体の支持体には、以下に限定されないが、ニトロセルロース及びナイロンが含まれる。このような多孔性固体の支持体は、好ましくは、約0.01から0.5mm、好ましくは約0.1mmの厚さのシートの形態である。細孔径は、幅広い区間内で変化し得、好ましくは約0.025から約15ミクロン、特に約0.15から約15ミクロンである。支持体への抗原又は抗体の共有結合を引き起こす化学的プロセスにより、このような支持体の表面を活性化し得る。しかし、一般に、十分に解明されていない疎水性の力による多孔質材における吸着によって、抗原又は抗体の不可逆的結合が得られる。
【0113】
化学カップリング剤を用いた共有結合による吸着によって、又は当技術分野で公知のその他の手段によって、固体の支持体又は固相に、抗体(antibody又はantibodies)を結合させることができる(ただし、このような結合は、MPOを結合する抗体の能力を妨害しない。)。あるいは、ストレプトアビジン又はビオチンで既に被覆した微粒子と、抗体(antibody又はantibodies)を結合させることができる(例えば、Seradyn、Indianapolis、Indianaより入手可能な、Power−BindTMSA−MPストレプトアビジン被覆微粒子を用いて)。あるいは、抗種特異的モノクローナル抗体で既に被覆されている微粒子を用いて、抗体(antibody又はantibodies)を結合させることができる。さらに、必要に応じて、抗体上で様々な官能基との反応を可能にするために、固体の支持体を誘導化することができる。このような誘導化は、以下に限定されないが、無水マレイン酸、N−ヒドロキシスクシンイミド及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどのある種のカップリング剤の使用を必要とする。
【0114】
試験試料を少なくとも1つの捕捉抗体(例えば第一の捕捉抗体)と接触させて、MPOについて及び/又は含有する疑いがあることについて試験した後、第一の抗体(antibody又はantibodies)−MPO複合体の形成を可能にするために、混合物を温置する。約4.5から約10.0のpHで、約2℃から約45℃の温度で、少なくとも1分間から約18時間、好ましくは約1分間から20分間、最も好ましくは約分2分間から6分間、温置することができる。1つの段階で(試験試料と、少なくとも1つの捕捉抗体と、少なくとも1つの検出抗体と、を全て連続的に又は同時に反応容器に添加することを意味する。)又は複数の段階(2段階、3段階など)で、本明細書中に記載の免疫アッセイを行うことができる。
【0115】
(第一の又は複数の)捕捉抗体−MPO複合体の形成後、次に、((第一の又は複数の)捕捉抗体−MPO−第二の抗体検出複合体の形成を可能にする条件下で)この複合体を少なくとも1つの検出抗体と接触させる。少なくとも1つの検出抗体は、第二、第三、第四など、免疫アッセイで使用される抗体であり得る。捕捉抗体−MPO複合体が複数の検出抗体と接触させられる場合、(第一の又は複数の)捕捉抗体−MPO−(複数の)検出抗体複合体が形成される。捕捉抗体(例えば第一の捕捉抗体)と同様に、少なくとも第二の(及び続く)検出抗体が捕捉抗体−MPO複合体と接触させられる場合、上述の条件と同様の条件下での温置時間が、(第一の又は複数の)捕捉抗体−MPO−(第二又は複数の)検出抗体複合体の形成に必要とされる。好ましくは、少なくとも1つの検出抗体は検出可能な標識を含有する。(第一の又は複数の)捕捉抗体−MPO−(第二又は複数の)検出抗体複合体の形成前、それと同時又はその後に、少なくとも1つの検出抗体(例えば第二の検出抗体)に、検出可能な標識を結合させることができる。当技術分野で公知の何らかの検出可能な標識を使用することができる。例えば、検出可能な標識は、放射性標識、例えばH、125I、35S、14C、32P、33Pなど、酵素標識、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース6−ホスフェートデヒドロゲナーゼなど、化学発光標識、例えばアクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール、チオエステル、スルホンアミド、フェナントリジニウムエステルなど、蛍光標識、例えばフルオレセイン(5−フルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、3’6−カルボキシフルオレセイン、5(6)−カルボキシフルオレセイン、6−ヘキサクロロ−フルオレセイン、6−テトラクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネートなど)、ローダミン、フィコビリタンパク質、R−フィコエリトリン、量子ドット(硫化亜鉛被覆セレン化カドミウム)、温度標識又は免疫ポリメラーゼ連鎖反応標識などであり得る。標識への導入、標識手順及び標識の検出は、Polak及びVan Noorden、Introduction to Immunocytochemistry、第2版、Springer Verlag、N.Y.(1997)及びHaugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(1996)(これは、Molecular Probes、Inc.、Eugene、Oregonにより刊行されている併合ハンドブック及びカタログである。)で見出される。
【0116】
直接又はカップリング剤を通じての何れかで、検出可能な標識を抗体に結合させることができる。使用することができるカップリング剤の例は、Sigma−Aldrich、St.Louis、MOから市販されているEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、塩酸塩)である。使用することができるその他のカップリング剤は当技術分野で公知である。検出可能な標識を抗体に結合させるための方法は当技術分野で公知である。さらに、N10−(3−スルホプロピル)−N−(3−カルボキシプロピル)−アクリジニウム−9−カルボキサミド、あるいはCPSP−アクリジニウムエステル又はN10−(3−スルホプロピル)−N−(3−スルホプロピル)−アクリジニウム−9−カルボキサミドとして知られる、あるいはSPSP−アクリジニウムエステルとして知られるものなど、多くの検出可能な標識を購入するか又は、抗体への検出可能な標識のカップリングを促進する末端基を既に含有するものを合成することができる。
【0117】
(第一の又は複数の)捕捉抗体−MPO−(第二又は複数の)検出抗体複合体は、そうしなければならないものではないが、標識の定量前に、試験試料の残りから分離することができる。例えば、少なくとも1つの捕捉抗体(例えば第一の捕捉抗体)は、以下に限定されないが、反応トレイのウェル、ビーズ又は微粒子などの固体の支持体又は固相に結合される場合、固体の支持体と接触しないように(試験試料の)液体を除去することによって分離を行うことができる。あるいは、少なくとも第一の捕捉抗体が固体の支持体に結合される場合、第一の(複数の)抗体−MPO−第二(複数の)抗体複合体を形成させるためにMPO−含有試料及び少なくとも1つの第二の検出抗体にこれを同時に接触させ、次いで液体(試験試料)を固体の支持体に接触しないように除去することができる。少なくとも1つの第一の捕捉抗体が固体の支持体に結合されない場合、(第一の又は複数の)捕捉抗体−MPO−(第二又は複数の)検出抗体複合体は、標識量の定量のために試験試料から除去される必要はない。
【0118】
標識された捕捉抗体−MPO−検出抗体複合体(例えば第一の捕捉抗体−MPO−第二の検出抗体複合体)の形成後、当技術分野で公知の技術を用いて複合体における標識量を定量する。例えば、酵素標識が使用される場合、発色など、定量可能な反応をもたらす標識に対する基質と標識された複合体を反応させる。標識が放射性標識である場合、シンチレーションカウンターを用いて標識を定量する。標識が蛍光標識である場合、ある色の光(「励起波長」として知られる。)で標識を刺激し、刺激に反応して標識により発光される別の色(「発光波長」として知られる。)を検出することにより、標識を定量する。標識が化学発光標識である場合、視覚的に、又は、照度計、X線フィルム、高速度撮影フィルム、CCDカメラなどを用いることによるかの何れかで、発光される光を検出し、標識を定量する。複合体における標識の量が定量されたら、既知の濃度のMPOの連続希釈物を用いて作成された標準曲線の使用により試験試料中のMPOの濃度を決定する。MPOの連続希釈物を使用すること以外に、重量測定法で、質量分析により及び当技術分野で公知のその他の技術により、標準曲線を作成することができる。
【0119】
MPO免疫アッセイにおいて、何らかの適切な対照組成物を使用することができる。対照組成物は、一般に、何らかの所望の添加物とともに、アッセイされるべきMPO抗原を含む。好ましい対照MPO抗原は、Athens Research and Technology Inc.(Athens、Georgia)から市販されている。
【0120】
対象における循環器疾患を診断するために、本明細書中に記載のMPOアッセイを使用することができる。具体的に、このようなアッセイは、対象から得られた試験試料(本明細書中のセクションDで既に記載のようにMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存されていてもよいし又は保存されていなくてもよい。)を提供することを含む。次に、本明細書中に記載のMPOアッセイの何れかを用いて(例えば、このセクションEに記載の方法、即ちA.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法を用いて)、試験試料中のMPOの濃度を測定することができる。試験試料中のMPOの濃度が決定されたら、対象が循環器疾患に罹患しているか否かを判定するために、決定された濃度を所定レベルと比較し得る。具体的に、試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより低いか又は同じである場合、対象は循環器疾患ではないとみなされる。しかし、試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより高い場合、対象は循環器疾患であるとみなされる。
【0121】
本明細書中に記載の方法を用いて決定される試験試料中のMPOの濃度はまた、対象が循環器疾患を発現するリスクを有するか否かを決定するためにも使用することができる。具体的に、このような方法は、
(a)(セクションDに記載のものなどのMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で場合によっては保存され得る)試験試料を提供し;
(b)(例えば、このセクションEに記載の方法、即ちA.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法を用いて)本明細書中に記載のアッセイの何れかに従い試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する、段階を含み得る。具体的に、このような比較が行われる場合、段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低いとき、対象は循環器疾患を発現するリスクがないとみなされる。しかし、このような比較を行う場合、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルよりも高いとき、対象は、循環器疾患を発現するリスクがあるとみなされる。
【0122】
本明細書中に記載の方法を用いて決定される試験試料中のMPOの濃度はまた、対象の臨床状態(即ち重症度又は疾患の進行)の指標を提供するためにも有用である。例えば、対象が心不全などの疾患に罹患しているか否かを判定するために、本開示の方法を用いて決定されるMPOの濃度を使用することができる。あるいは、心不全に罹患している対象がNew York Heart Association(NYHA)Classifications I、II、IIIもしくはIVの何れかに分類されるべきであるか否か又はある一定のNew York Heart Association Classificationとして分類される対象が、異なるNew York Heart Association Classificationに進行しているか否か(例えば、対象が最初はNew York Heart Association Classification IIとして分類され、その後対象がNew York Heart Association Classification IIIに進行する。)を判定するために、本明細書中に記載のように決定されるMPOの濃度を使用することができる。具体的に、対象における循環器疾患などの疾患の重症度又は進行は、
(a)(場合によってはセクションDに記載のものなどのMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存することができる)対象からの試験試料を提供し;
(b)本明細書中に記載のアッセイの何れかに従い(例えば、このセクションEに記載の方法、即ちA.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法を用いて)、試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する、段階を含む方法を用いて判定することができる。具体的に、対象における循環器疾患の重症度に関してこのような比較を行う場合、段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低いとき、対象は循環器疾患の重症度が低いと判定される。段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより高いとき、対象は循環器疾患の重症度が高いと判定される。循環器疾患の進行に関して段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を比較する場合、段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低いか変化しないとき、対象は、循環器疾患が進行していないか又は改善しているいと判定される。所定レベルと比較した場合に、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が高いとき、対象は、循環器疾患が進行していると判定される。対象での治療開始前又は対象での治療開始後の何れかで、循環器疾患などの疾患の進行を監視することができる。
【0123】
さらに、対象が、1つ又はそれ以上の医薬組成物の前記対象の投与の結果として循環器系の合併症に罹患しているか否かを判定するために、本明細書中に記載の方法を用いて決定されたMPOの濃度を使用することができる。例えば、このような方法は、次の段階:
(a)対象が1つ又はそれ以上の医薬組成物を投与される前に、対象からの第一の試験試料を得て(場合によってはセクションDに記載のものなどのMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中に保存することができる。);
(b)本明細書中に記載のアッセイの何れかに従い(例えば、このセクションEに記載の方法、即ち、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法を用いて)、試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与された後、対象から第二の試験試料を得て(場合によってはセクションDに記載のものなどのMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存され得る。);
(d)本明細書中に記載のアッセイの何れかに従い(例えば、このセクションEに記載の方法、即ち、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法を用いて)、第二の試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(e)段階(d)でのMPOの濃度と段階(b)でのMPOの濃度を比較する、段階を含み得る。具体的に、段階(d)で決定されるMPOの濃度と比較した場合、段階(b)で決定されるMPOの濃度が不変であるとき、対象は、1つ又はそれ以上の医薬組成物の投与の結果として、循環器系の合併症に罹患していないものと判定される。さらに、段階(d)でのMPOの濃度と比較した場合、段階(b)で決定されるMPOの濃度が変化している場合、対象は、1つ又はそれ以上の医薬組成物の投与の結果として、循環器系の合併症に罹患しているものと判定される。
【0124】
またさらに、1つ又はそれ以上の医薬組成物での治療を受けている対象におけるMPOレベルを監視するための方法において、本明細書中に記載の方法を用いて決定されるMPOの濃度を使用することができる。具体的に、このような方法は、対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与される前に、対象からの第一の試験試料を提供することを含む(場合によっては、セクションDに記載のものなどのMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存され得る。)。次に、本明細書中に記載のアッセイの何れかに従い(例えば、このセクションEに記載の方法、即ちA.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法を用いて)、試験試料中のMPOの濃度(例えばMPOレベル)を決定する。試験試料中のMPOの濃度を決定した後、MPOの濃度を所定レベルと比較する。第一の試験試料中で決定されるMPOの濃度が所定レベルよりも低い場合、対象を1つ又はそれ以上の医薬組成物で治療しない。しかし、第一の試験試料中で決定されるMPOの濃度が所定レベルよりも高い場合、1つ又はそれ以上の医薬組成物でしばらくの間対象を治療する。1つ又はそれ以上の医薬組成物で対象を治療する期間は、当業者により決定され得る(例えば、期間は、約7日から約2年、好ましくは約14日から約1年であり得る。)。1つ又はそれ以上の医薬組成物での一連の治療中、対象から第二及びそれに続く試験試料を得る(これらの試験試料の何れか又は全ては、場合によっては、セクションDに記載のものなどのMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存され得る。)。試験試料の数及び該試験試料が対象から得られる時間は重要ではない。例えば、対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が最初に投与されてから7日後に第二の試験試料を得ることができ、対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が最初に投与されてから2週間後に第三の試験試料を得ることができ、対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が最初に投与されてから3週間後に第四の試験試料を得ることができ、対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が最初に投与されてから4週間後に第五の試験試料を得ることができる。
【0125】
本明細書中に記載のアッセイの何れかに従い(例えば、このセクションEに記載の方法、即ち、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体、A.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体又はこれらの抗体の両方を使用する方法を用いて)、第二及びそれに続く各試験試料が対象から得られた後、第二及びその後の試験試料中のMPOの濃度が決定される。次に、これらの第二及びそれに続く各試験試料中で決定されたMPOの濃度を第一の試験試料(例えば、所定レベルと最初に比較した試験試料)中で決定されるMPOの濃度と比較する。第一の試験試料中で決定されるMPOの濃度と比較した場合、第二及びそれに続く試験試料中で決定されるMPOの濃度がそれより低いか低下しているとき、1つ又はそれ以上の医薬組成物を用いた治療を継続させ得る。しかし、第一の試験試料中で決定されるMPOの濃度と比較した場合、第二及びそれに続く試験試料中で決定されるMPOの濃度が同じであるか又は上昇しているとき、1つ又はそれ以上の医薬組成物が対象におけるMPOレベルを低下させるのに有効ではないと判定される。次に、対象は、(a)対象に既に与えられている1つ又はそれ以上の医薬組成物の用量と比較してその1つ又はそれ以上の医薬組成物のより高い用量で治療され得るか又は(b)1つ又はそれ以上の別の又は異なる医薬組成物に変更される得る。具体的に、対象のMPOレベルを低下させるか又は減少させるために既に対象が受容してきた1つ又はそれ以上の医薬組成物とは異なる1つ又はそれ以上の医薬組成物で対象を治療することができる。
【0126】
F.MPOキット
本開示はまた、試験試料中のMPOの存在を検出するためのキットも目論む。このようなキットは、本明細書中に記載の抗体の1つ又はそれ以上を含み得る。より具体的に、本キットが免疫アッセイを行うためのキットである場合、本キットは、場合によっては、(1)MPOに特異的に結合する少なくとも1つの捕捉抗体と、(2)少なくとも1つの結合物と、(3)免疫アッセイを行うための1つ又はそれ以上の説明書と、を含有し得る。本開示の抗体は、捕捉抗体として、検出抗体として又は捕捉抗体及び検出抗体の両方として、このような試験キットに含まれ得る。例えば、マウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体が捕捉抗体として本キットに含まれ得、マウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体が検出抗体として本キット中に含まれ得る。あるいは、マウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体が捕捉抗体としてキット中に含まれ得、ハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体が検出抗体としてキット中に含まれ得る。さらにまた別の代替物において、マウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体が捕捉抗体として本キット中に含まれ得、検出抗体として異なる抗体が本キット中に含まれる。さらにまた別の代替法において、マウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体が検出抗体として本キット中に含まれ得、捕捉抗体として異なる抗体がキット中に含まれる。場合によっては、本キットはまた、少なくとも1つの較正物質又は対照も含有し得る。何らかの較正物質又は対照が本キット中に含まれ得る。しかし、好ましくは、較正物質又は対照は精製MPOである。場合によっては、本キットは少なくとも1つの試料回収チューブも含有し得る。場合によっては、本キットはまた、少なくとも1つの白血球MPO分泌阻害剤も含有し得る。本キット中に含まれ得る少なくとも1つの白血球MPO分泌阻害剤の例は、EDTAの何らかの塩又はクエン酸ナトリウムの塩である。あるいは、本キットはまた、少なくとも1つの白血球MPO分泌阻害剤を含有する少なくとも1つの試料回収チューブも含有し得る。
【0127】
このようにして、本開示は、さらに、1つ又はそれ以上の本開示の抗体を含む、診断用及びクオリティーコントロールキットを提供する。場合によっては、市販のプラットフォームでの使用に対して、本発明の、アッセイ、キット及びキット成分が最適化される(例えば、Abbott Laboratories、Abbott Park、ILの、PRISM(R)、AxSYM(R)、ARCHITECT(R)及びEIA(Bead)プラットフォームならびにその他の市販及び/又はインビトロ診断用アッセイでの免疫アッセイ)。さらに、アッセイ、キット及びキット成分は、その他の方式、例えば、電気化学的又はその他の携帯用又はポイントオブケアアッセイシステムにおいて使用され得る。本開示は、例えば、TnI、CKMB及びBNPを含むいくつかの心臓マーカーに対するサンドイッチ免疫アッセイを行う市販のAbbottポイントオブケア(i−STAT(R)、Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)電気化学的免疫アッセイシステムに対して適用可能である。免疫センサー及び使い捨て試験装置においてそれらを操作する方法は、例えば、米国特許出願第2003/0170881号、同第2004/0018577号、同第2005/0054078号及び同第2006/0160164号に記載されている。電気化学的及び免疫センサーのその他のタイプの製造のさらなる背景は、米国特許第5,063,081号で見られる。
【0128】
場合によっては、キットは、クオリティーコントロール試薬(例えば、感度パネル、較正物質及び陽性対照)を含む。クオリティーコントロール試薬の調製は、当技術分野で周知であり、例えば、様々な免疫診断用生成物の挿入シートに記載されている。別の実施形態において、本開示は、アッセイ性能特性を評価するための及び/又はアッセイで使用される抗原の完全性を定量及び監視するための感度パネルとしての使用のための本開示の1つ又はそれ以上の抗体を含むクオリティーコントロールキットを提供する。
【0129】
キットは、場合によっては、緩衝液、塩、酵素、酵素補因子、基質、検出試薬など、診断用アッセイを行うか又はクオリティーコントロール評価を促進するのに必要とされるその他の試薬を含み得る。試験試料の単離及び/又は処理のための緩衝液及び溶液などのその他の成分(例えば前処理試薬)もまたキット中に含まれ得る。キットは、さらに、1つ又はそれ以上のその他の対照を含み得る。キットの成分の1つ又はそれ以上は凍結乾燥され得、キットは、凍結乾燥成分の再構成に適切な試薬をさらに含み得る。
【0130】
本キットの様々な成分は、場合によっては、適切な容器で提供される。上記で示されるように、容器の1つ又はそれ以上はマイクロタイタープレートであり得る。本キットはさらに、試料を維持するか又は保存するための容器を含み得る(例えば、血液又は尿試料用の容器又はカートリッジ)。必要に応じて、本キットはまた、場合によっては、反応槽、混合槽及び、試薬もしくは試験試料の調製を促進するその他の成分も含有し得る。本キットはまた、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーンなど、試験試料の採取を促進するための1つ又はそれ以上の器具も含み得る。
【0131】
本キットは、さらに、場合によっては、使用説明書を含み得、これは、紙の形態又はディスク、CD、DVDなどのコンピュータ読み取り可能な形態で提供され得る。
【0132】
G.方法の適応
本明細書中の開示は、例えば米国特許第5,089,424号及び同第5,006,309号に記載のような、及び例えば、以下に限定されないが、AbbottのARCHITECT(R)、AxSYM(R)、IMx(R)、PRISM(R)及びQuantumTMII機器ならびにその他のプラットフォームを含め、Abbott Laboratories(Abbott Park、IL)により市販されているような、様々な自動化及び半自動化システムでの使用に適応させることができる(固相が微粒子を含むものを含む。)。さらに、本開示は、場合によっては、サンドイッチ免疫アッセイを行うための、Abbott Laboratoriesから市販されているポイントオブケア(i−STAT(R))電気化学免疫アッセイシステムに対して適応可能である。免疫センサー及びそれらの製造方法及び使い捨て試験装置での操作は、例えば、米国特許第5,063,081号、米国特許出願第2003/0170881号、米国特許出願第2004/0018577号、米国特許出願第2005/0054078号及び米国特許出願第2006/0160164号に記載されている。
【0133】
ここで、限定ではなく例として、本開示の実施例を与える。
【実施例1】
【0134】
A.T.C.C.寄託情報
モノクローナル抗体1−1175−509に対するマウスハイブリドーマ細胞株は、American Type Culture Collection(本明細書中で以後、「A.T.C.C.」と呼ぶ。)、10801 University Blvd.、Manassas、VA 20110−2209に、2007年5月16日に寄託され、A.T.C.C.受入番号PTA−8437が割り当てられた。
【0135】
モノクローナル抗体1−2169−715に対するマウスハイブリドーマ細胞株は、A.T.C.C.、10801 University Blvd.、Manassas、VA 20110−2209に、2007年5月16日に寄託され、A.T.C.C.受入番号PTA−8438が割り当てられた。
【実施例2】
【0136】
被検査物回収チューブの評価
被検査物回収チューブ抗凝血剤又は凝血剤欠如及び、プラスチックチューブに対するガラスチューブの影響を試験した。9種類の異なる試料チューブタイプ中で回収した15名の正常ドナーからの血液試料を市販業者から購入した。試料を遠心し、血漿/血清を分離し、2−8℃で保存し、処理する場所に出荷された。ARCHITECT(R)自動免疫アッセイ機器(Abbott Laboratories、Abbot Park、Illinoisより発売)で行われる実験的サンドイッチ免疫アッセイを用いてMPO値を測定した。実験的ARCHITECT(R)アッセイは、S.Datwylerら、「Development of an Automated Myeloperoxidase(MPO) Immunoassay」、Clinical Chemistry.52.No.6.Supplement;D−11、2006に記載されている。このアッセイの分析範囲は、5から10,000pmol/L(250から5000pmol/Lの範囲に対して、精度範囲は2.4から6.0%CV)である。実験用ARCHITECT(R)アッセイで使用される2種類のモノクローナル抗体は1−1175−509及び1−2169−715である。
【0137】
試料チューブのタイプ及び平均MPO測定値は次の表1である。
【0138】
【表1】

【0139】
EDTA及びクエン酸血漿試料によりPOの最低濃度が見出された。ヘパリン保存チューブ中で回収された試料は、好ましいEDTAチューブよりもおよそ10%高い平均MPOレベルを示した。血清試料は、平均MPOレベルが顕著により高かった。このデータにより、MPO測定に対するヘパリンリチウム血漿保存状態及び血清の従来の使用によりMPOレベルが過大評価されることが立証される。
【実施例3】
【0140】
遠心実験
MPO値における試料操作の影響を評価するために、6名の健康なドナーから試料を回収した。遠心速度、凝固時間及び保存温度の影響について、BDから購入したプラスチックヘパリンリチウム血漿(4mL、BD367884)チューブ及びヘパリンリチウム血漿分離器チューブ(PST)(4.5mL、BD367962)の両方を評価した。
【0141】
第一の実験では遠心速度及び時間の影響を評価した。各ドナーからの回収完了後、試料をすぐに2−8℃に置き、次いで表2で示されるように遠心した。
【0142】
【表2】

【0143】
次いで、実施例2で使用したARCHITECT(R)アッセイを用いて試料をすぐに試験した。試料を2−8℃に置き、遠心し、MPOについてすぐにアッセイした場合、MPO濃度に対して遠心時間又は速度による影響はなかった。ヘパリンリチウム血漿チューブ及びPSTチューブによって同等の結果が得られた。
【0144】
次の実験では、遠心前の試料の保存における温度の影響を評価した。全てのドナーから試料を回収するまで、試料回収チューブを2−8℃に置いた。次に、遠心前にチューブを室温又は2−8℃の何れかに置いた。次いで、30分、2時間又は6時間後、試料を遠心した。遠心は、1250gで10分間であった。次に、実施例2で使用したARCHITECT(R)アッセイにより試料をすぐに試験した。各時点及び保存状態での6名のドナーの平均MPO値を含め、その結果を表3で示す。ヘパリンリチウム血漿及びPSTチューブ中の試料は2−8℃で6時間、安定であったが、室温で保存されたチューブ中の試料は不安定であり、時間とともにミエロペルオキシダーゼが顕著に増加することが示された。これらのデータから、白血球MPO分泌阻害剤が使用されない場合、室温保存によってMPOレベルが顕著に変化する可能性が示される。
【0145】
【表3】

【実施例4】
【0146】
試料安定性に対するさらなるチューブタイプの検討
MPO測定における回収チューブのタイプ及び操作の影響をさらに調べるために、5名の健康なドナーから試料を回収した。Becton Dickinson and Company(Franklin Lakes、NJ)から、ヘパリンリチウム(4mL、BD367884)、KEDTA(4mL、BD367862)、KEDTA血漿分離器チューブ(PPT)(5mL、BD362788)及びクエン酸ナトリウム(2.7mL、BD363083)回収チューブを購入した。回収後、室温(15−30℃)又は(2−8℃)の何れかで試料を保存し、0、2及び8時間の時点で遠心(10分間、1250g)し、細胞から血漿を取り出し、MPOについて実施例のARCHITECT(R)アッセイを用いて試験した。EDTA血漿は、通常のEDTA又はPPTチューブの何れかにおいて、室温及び2−8℃の両方で最も安定であった。表4で示される結果は、各時点及び保存状態での5名のドナーの平均MPO値である。クエン酸及びヘパリンリチウム保存チューブは、2−8℃での2時間の保存により比較的安定にMPOレベルを維持することができたが、クエン酸でのMPO濃度はEDTAにおいて測定された濃度と同様であり、一方でヘパリンリチウムでの濃度は、ベースラインでEDTA又はクエン酸における濃度を上回って上昇したことに注意されたい。クエン酸及びヘパリンリチウムの両方に関して室温での保存により、時間とともにMPOレベルが顕著に上昇した。一方、白血球MPO分泌阻害剤EDTA入りの保存チューブの使用によって、室温及び2−8℃の両方で、MPOレベルを基本的に一定に維持することができた。
【0147】
【表4】

【実施例5】
【0148】
分離した血漿試料の安定性
10名の正常ドナーからの試料をヘパリンリチウムPST(8mL、BD367964)、SST(8.5mL、BD367988)及びEDTA PPT(5mL、BD362788)チューブタイプ中で回収した。PST及びPPTチューブをすぐに遠心し;遠心前に室温で30分間、SSTチューブを凝固させた。そのまま、又はMPOを添加して、単離した血漿又は血清を試験した。次いで、試料を室温に置き、0、3.5時間、24時間及び48時間で試験した。試料を2−8℃にも置き、0、24時間、48時間、5日間及び8日間の時間で、実施例2のARCHITECT(R)アッセイを用いて試験した。表5及び6で見られるように、単離された血漿又は血清は、試験した全ての条件下で安定であった。
【0149】
【表5】

【0150】
【表6】

【実施例6】
【0151】
添加回収試験
MPO検出における抗凝血剤の影響をさらに調べるために、添加回収実験を行い、血漿中の抗凝血剤の存在がMPOの測定に影響を及ぼすか否かを調べた。Bio Collections Worldwide、Inc.(Miami、FL)から25の対応セットを購入した。試料は、ヘパリンリチウム、KEDTA及びクエン酸ナトリウムチューブ中で回収され、遠心され、2−8℃で出荷された。各試料は>5mLであった。各試料を3つのアリコートに分割した。1つのセットに300pmol/LネイティブMPO抗原(Athens Research and Technology、Athens、Georgia)を添加し、第二のセットに3000pmol/L MPO抗原を添加した。非添加試料及び添加した試料を実施例2のARCHITECT(R)アッセイにかけ、各チューブタイプに対して総平均%差を計算した。表7で見られるように、MPO回収においてEDTA又はクエン酸保存チューブの何れによっても影響はなく、ヘパリンリチウムでは僅かな影響が示された。
【0152】
【表7】

【実施例7】
【0153】
様々なチューブタイプにおける自然に上昇した試料の試験
臨床的に採血が必要となる胸痛及び/又はその他の合併症で救急科に来院した患者から50検体の対応検体を回収した。評価した回収チューブは、プラスチック血清(SST)、KEDTA血漿、ヘパリンリチウム血漿(PST)及びクエン酸チューブであった。全血試料として遠心前に24時間2−8℃で保存されたEDTA試料を除き、遠心前に最長で60分間、室温で全試料を保存した。実施例2のARCHITECT(R)MPOアッセイにより試験するまで、分離した血清及び血漿を2−8℃で保存した。各チューブタイプに対する、平均、中央値、最小及び最大濃度を表8でまとめる。
【0154】
【表8】

【0155】
これらの結果は、実施例2からの結果と遜色がない。最低値はEDTA及びクエン酸試料で見られる。試料の殆どに対して、血清試料により最大MPO値が得られた。
【実施例8】
【0156】
動物免疫付与
フロイントのアジュバント(Difco、Detroit、Michigan)又はRibi MPL+TDM(Corixa、Hamilton、MT)アジュバントシステムの何れかを用いて、精製MPO抗原(Advanced Immunochemical、Long Beach、CA)を3回、RBF/DnJ雌マウス(The Jackson Laboratory、Bar Harbor、Maine)に免疫付与した。マウス番号1926及び1930にはフロイントの系を投与し、マウス番号1932、1933及び1935には、Ribiの系を投与した。0.9%塩化ナトリウム(Abbott Laboratories、Abbot Park、IL)中でMPO抗原を希釈し、2種類のアジュバントの一方で乳化することにより、接種材料を調製した。第0、13及び21週に、MPO10μgの追加免疫をマウスに投与した。初回追加免疫に対してフロイントの完全アジュバントを使用し、皮下投与した。次の2回の追加免疫に対してフロイントの不完全アジュバントを使用し、皮内注射により投与した。Ribiマウスにおける全3回の免疫付与に対してRibiアジュバントを使用し、それぞれ皮内注射により投与した。融合の3日前に、MPO20μgの融合前追加免疫をマウスに投与した。
【実施例9】
【0157】
マウスMPO mAbの発現
融合を行う日に、マウスを安楽死させ、抗MPO脾臓細胞を含有するその脾臓を摘出し、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Invitrogen Corporation、Grand Island NY)中に入れた。Kohler及びMilstein(Nature、256:495−7(1975))により記載のように細胞融合を行った。IMDMを含有する個別のペトリ皿に各マウス脾臓を入れた。IMDMを含有するシリンジ及び細胞スクレーパーを用い、脾臓細胞を各脾臓からかん流し、次いで血球計算盤を用いて計数した。各マウスからおよそ5.0x10個の脾臓細胞をプールし、遠心により洗浄して細胞ペレットを得て、IMDM中で再懸濁した。これらの脾臓細胞をSP2/0骨髄腫細胞の同数と混合し、遠心してペレットを得た。IMDM中で、脾臓細胞及びSP2/0細胞を50%ポリエチレングリコール(PEG)(A.T.C.C.分子量1300−1600、Manassas VA)に曝露することにより、融合を完遂した。細胞ペレットにPEG溶液2mLを添加し、次いで1分間温置した。30秒間にわたりIMDM30mLをゆっくりと添加することにより、PEG及び細胞ペレットを希釈した。次に、遠心を行い、上清を傾瀉除去することにより、融合細胞を懸濁液から取り出した。ハイブリドーマについて選択するために、SP2/0骨髄腫細胞培養物からの使用済み培地と、FBS(Hyclone Laboratories、Logan UT)、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)(Sigma Laboratories、St.Louis、MO)、Hybridoma Cloning Factor(Bioveris Corporation、Gaithersburg MD)及びL−グルタミン(Invitrogen Corporation、Grand Island NY)を添加した新鮮なIMDMとのおよそ50%の混合液を含有する502mL中で細胞ペレットを再懸濁した。25枚の96ウェル細胞培養プレートに0.2mL/ウェルになるように細胞を入れた。3−5日間温置した後、吸引により各ウェル中の培地の半分を除去し、10%FBS、HT添加物及びL−グルタミンを添加したIMDMに交換した。この手順を2回行い、抗体産生に対する上清スクリーニングの前に7−10日間、ハイブリドーマを増殖させた。
【0158】
EIAにより抗MPO抗体に対して細胞上清試料を分析した。5μg/mLのヤギ抗マウスIgG Fc(Jackson Immunoresearch、West Grove PA)で96ウェルマイクロタイターEIAプレートを被覆した。捕捉試薬で固相を被覆した後、捕捉試薬を除去し、BSA又は魚ゼラチンブロッキング溶液を用いてプレート上の開放結合部位をブロッキング処理した。次いで、ブロッキング処理したプレートに細胞上清を添加し、少なくとも1時間、室温で温置した。抗マウスIgG Fcは、上清から抗MPOマウス抗体を捕捉する。温置後、蒸留水を用いて上清を洗浄除去した。MPO抗原を500ng/mLでプレートに添加し、およそ30分間温置した。この温置後、蒸留水を用いてプレートから抗原を洗浄除去した。ウサギ抗MPO抗体を250ng/mLでプレートに添加し、およそ30分間温置した。この温置後、蒸留水を用いてプレートから抗体を洗浄除去した。ブロッキング溶液中でおよそ250ng/mLに希釈したヤギ抗ウサギHRPO(Kirkegaard&Perry)をプレートし添加し、30分間温置した。ヤギ抗ウサギHRPOを除去するために蒸留水でプレートを洗浄し、シグナルを生成させるための色原体として、o−フェニレンジアミン基質(OPD;Abbott Laboratories、Abbot Park、IL)を使用した。492nmでプレートを読み取り、結果を分析した。バックグラウンドよりも少なくとも3倍高いEIAシグナルを有する場合、ハイブリッドを陽性とみなした(表9、下記参照)。
【0159】
【表9】

【0160】
10%FBS及びHT添加物を添加したIMDM中で24ウェルプレートに陽性ハイブリッドを増殖させた。3−7日増殖させた後、用量反応を調べるために抗体上清を滴定したことを除いて、この実施例に記載のようにEIAにより24ウェル培養物を評価した(表10、下記参照)。
【0161】
【表10】

【0162】
各MPOハイブリッドmAbが、市販されており、ビオチン標識され、MPO上で異なる別個の結合エピトープを有すると考えられている5種類の既存の社外販売業者のモノクローナル抗体とのmAb−抗原−mAbサンドイッチを完成させる能力を測定することにより、ハイブリッドMPO結合エピトープ群を調べた(表11、下記参照)。簡潔に述べると、10μg/mLで、ウサギ抗マウスIgG Fc(Jackson Immunoresearch、West Grove、PA)により96ウェルマイクロタイターEIAプレートを被覆した。捕捉試薬で固相を被覆した後、捕捉試薬を除去し、BSA又は魚ゼラチンブロッキング溶液を用いてプレート上の開放結合部位をブロッキング処理した。次に、細胞上清をブロッキング処理したプレートに添加し、少なくとも1時間、室温で温置した。抗マウスIgG Fcは、上清からの抗MPOマウス抗体を捕捉する。温置後、蒸留水を用いて上清を洗浄除去し、ブロッキング溶液中で希釈した正常マウス血清で非結合ウサギ抗マウスIgG結合部位をブロッキング処理した。それを洗浄除去した後、400ng/mLでMPO抗原をプレートに添加し、およそ60分間温置した。温置後、蒸留水を用いてこの抗原をプレートから洗浄除去した。ビオチン標識した社外販売業者のマウス抗MPO抗体をプレートに添加し、およそ30分間温置した。この温置後、蒸留水を用いて抗体をプレートから洗浄除去した。ブロッキング溶液中でおよそ100ng/mLに希釈したストレプトアビジン−HRPOをプレートに添加し、30分間温置した。このプレートを洗浄し、シグナルを生成させるための色原体として、o−フェニレンジアミン基質を使用した。492nmでプレートを読み取り、結果を分析した。各ハイブリッドに対して最大結合のおよそ50%が生じる上清希釈液を比較した。下記表11は、各ビオチン標識mAbでの各ハイブリッド上清に対する吸収値をまとめる。これらの各抗体とサンドイッチを形成するそれらの能力に基づき、ハイブリッドをグループ分けした。ハイブリッド1−1175及び1−2169は、MPO上の別個のエピトープに結合すると考えられ、従って、細胞株を安定させるためのクローニングについて選択され、混合細胞集団がなかったことが確実になる。
【0163】
【表11】

【0164】
蛍光活性化細胞分別装置(FACS)を用いてハイブリッド1−1175及び1−2169をクローニングした。死んだ細胞を染色するために、ハイブリッド培養物をヨウ化プロピジウムで染色したので、集団からそれらを除外することができた。FACSAria(BD Bio Sciences)上で、染色された培養物を分析した。L−グルタミン及び10%FBSを添加したハイブリドーマ血清不含培地(HSFM)を含有する96ウェル培養皿の各ウェルに1個の細胞を沈降させた。およそ7日間培養物を温置し、この実施例で既に記載したようにEIAによりスクリーニングした。クローン1−1175−154及び1−2169−143を単離し、精製抗体を各細胞株から生成させた。
【0165】
生成されるその他の抗体と同格であるその相対的親和性について精製抗体を試験した(表11参照)。5μg/mLで96ウェルマイクロタイターEIAプレートをウサギ抗マウスIgG Fc(Jackson Immunoresearch)で被覆した。捕捉試薬で固相を被覆した後、捕捉試薬を除去し、BSA又は魚ゼラチンブロッキング溶液を用いてプレート上の開放結合部位をブロッキング処理した。6種類の異なる希釈で精製抗体をプレートに添加し、およそ60分間温置した。抗体を洗浄除去し、0から100ng/mLの濃度でビオチン標識MPO抗原を添加し、60分間温置した。抗原を洗浄除去し、ブロッキング溶液中でおよそ100ng/mLに希釈したストレプトアビジン−HRPOをプレートに添加し、30分間温置した。このプレートを洗浄し、シグナルを生成させるための色原体として、o−フェニレンジアミン基質を使用した。492nmでプレートを読み取り、結果を分析した。図1で示される抗原滴定曲線を作成するために、最大結合シグナルのおよそ半分を生じさせる抗体濃度を使用した。
【0166】
これらの各クローンからの精製抗体をビオチンで標識した。多くの異なる所有者及び市販のモノクローナル抗体を用い、競合阻害マイクロタイターアッセイを用いて、エピトープ群確認を行った。0.5μg/mLでMPO抗原により96ウェルマイクロタイターEIAプレートを被覆した。捕捉試薬で固相を被覆した後、捕捉試薬を除去し、BSA又は魚ゼラチンブロッキング溶液を用いてプレート上の開放結合部位をブロッキング処理した。次に、ブロッキング処理したプレートに、50μg/mLで各クローンからの精製抗体(100μL/ウェル)を添加し、室温で1時間温置した。次にビオチン標識抗体(50μL/ウェル)をウェルに添加し、非標識抗体を洗浄除去せずにおよそ10−15分間温置した。その温置後、蒸留水を用いて抗体溶液をプレート洗浄除去した。ブロッキング溶液中でおよそ200ng/mLに希釈したストレプトアビジン−HRPOをプレートに添加し、30分間温置した。このプレートを洗浄し、シグナルを生成させるための色原体として、o−フェニレンジアミン基質を使用した。492nmでプレートを読み取り、結果を分析した。この結果から、1−1175−154からの非標識抗体がMPO抗原への結合に対して、それ自身の標識物とは競合するが、1−2169−143の標識物の場合は競合しないことが示された(データは示さない。)。この結果からまた、1−2169−143からの非標識抗体がMPO抗原への結合に対してそれ自身の標識物と競合するが、1−1175−154の標識物とは競合しないことも示される(データは示さない。)。これらの結果から、これらの抗体が明らかに異なるMPOエピトープに結合し、mAb−Ag−mAbサンドイッチを形成し得ることが分かった。
【0167】
抗体対形成実験から、上記のデータが確認された。簡潔に述べると、1μg/mLで非標識mAbにより96ウェルマイクロタイタープレートを被覆した。捕捉試薬で固相を被覆した後、捕捉試薬を除去し、BSA又は魚ゼラチンブロッキング溶液を用いてプレート上の開放結合部位をブロッキング処理した。次に、0から50ng/mLのMPO抗原をブロッキング処理したプレートに添加し、室温で30分間温置した。この温置後、蒸留水を用いて抗原をプレートから洗浄除去した。ビオチン標識抗MPO抗体をプレートに添加し、室温でおよそ30分間温置した。この温置後、蒸留水を用いて抗体をプレートから洗浄除去した。ブロッキング溶液中でおよそ200ng/mLに希釈したストレプトアビジン−HRPOをプレートに添加し、30分間温置した。このプレートを洗浄し、シグナルを生成させるための色原体として、o−フェニレンジアミン基質を使用した。492nmでプレートを読み取り、結果を分析した。図2で示されるように、これらの結果から、クローン1−1175−154及び1−2169−143が良好なMPO結合パートナーであることが確認された。
【0168】
クローン1−1175−154をFBSなしのHSFMに移し、既に記載のFACS細胞分類法を用いてサブクローン化した。スケールアップ及び細胞バンキングの目的のために細胞株1−1175−509を選択した。細胞バンクの長期保存のために液体窒素凍結保存装置を使用する。抗MPOmAb 1−1175−154は、サブクローン1−1175−509が由来する親クローンである。
【0169】
クローン1−2169−143をFBSなしのHSFMに移し、培養物中の生存細胞を数え、96ウェル組織培養プレートのウェルあたり1個の細胞を播種することにより、サブクローン化した。7−10日間、プレートを温置し、マイクロタイターEIAを用いて抗MPO抗体についてサブクローン上清を試験した。スケールアップ及び細胞バンキングの目的のために細胞株1−2169−715を選択した。細胞バンクの長期保存のために液体窒素凍結保存装置を使用する。抗MPOmAb 1−2169−143は、サブクローン1−2169−715が由来する親クローンである。
【0170】
1−1175−509及び1−2169−715細胞株をHSFM中で増殖させ、およそ0.5x10"5個の細胞/mLになるようにローラーボトルに播種した。10−14日間、又は最終的な目的培養物が得られるまで、1分あたりおよそ1回転の速度で回転させながら培養物を37℃で温置した。最終的なローラーボトル上清を回収し、0.45μMフィルターで清澄化した。Pelliconシステムを用いて透明化上清を濃縮し、0.45μMフィルターでろ過した。mAb濃縮物をpH8.9の1.5Mグリシン/3N NaCl緩衝液の等体積で希釈し、次いでAKTA自動精製システム(Amersham/Pharmacia)を用いて、予め平衡化された5mLプロテインAカラムに添加した。次いで、このカラムを結合緩衝液5カラム体積で洗浄し、安定なベースラインが得られたら、pH3.0クエン酸緩衝液でmAbを溶出した。次いで、PBSへの交換のために、70mL G25カラムにmAbを移した。抗体を分注し、−70℃で保存した。
【0171】
Isostripマウスモノクローナル抗体Isostripキット(Roche Diagnostics、Basel、Switzerland)により、1−1175−509及び1−2169−715細胞株のそれぞれからの精製抗体を試験した。各試料について0.5μg/mLから3.0μg/mLの150μLの分注液を顕色チューブに添加し、混合した。Isostripを各チューブに添加し、ストリップのバンド上で発色が起こるまで、5−10分間温置した。この結果から、1−1175−509がκ軽鎖を有するマウスIgG2bサブタイプであり、1−2169−715がκ軽鎖を有するIgG1サブタイプであることが示された。
【実施例10】
【0172】
MPOに対する抗MPO抗体の親和性/反応速度特性
BIAcore2000機器(BIAcore International AB、Uppsala、Sweden)を用いて、MPOに対するMPOモノクローナル抗体1−1175−509及び1−2169−143の親和性を調べた。最初に、Amine Coupling Kit(BIAcore)において提供されるEDC/NHS/エタノールアミン化学を介したCM4バイオセンサーチップ(BIAcore)に対するアミンカップリングポリクローナルヤギ抗マウスIgG Fc抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories)により、〜5,000RUヤギ抗マウスIgG Fc捕捉バイオセンサーを作製した。0.1%BSA、0.1%CM−デキストラン及び10mM CaClを添加したHBS−EP緩衝液から構成されるランニング緩衝液(本明細書中で以後、「ランニング緩衝液」と呼ぶ。)中でMPO抗体及びMPO抗原を希釈した。各MPO抗体を0.6μg/mLに希釈し、3倍希釈系列を用いて、MPO抗原(Athens Research & Technology、Athens、GA)を0.0105から207nMの範囲の濃度に希釈した。
【0173】
ランニング緩衝液を用いて10μL/分で5分間ヤギ抗マウスIgG Fc捕捉バイオセンサーを平衡化した後、MPO抗体18μLを個々のフローセルに注入し、参照フローセルとして1個のフローセルを空のままにした。ランニング緩衝液を用いて75μL/分で5分間フローセルを洗浄た後、バイオセンサー全域に無作為濃度のMPO抗原150μLを注入し、この後すぐにランニング緩衝液を6分間流した。100μL/分の流速で100mM HPO33μLを3回注入してバイオセンサーを再生した。MPO抗原の全ての濃度について2回ずつ試験した。結合反応速度、会合及び解離をセンソグラムを介して監視した。センソグラムを二重参照し、Scrubber2.0ソフトウェア(BioLogic Software Pty Ltd.、Australia)を用いてマストランスポートとの1:1結合モデルにフィットさせ、会合及び解離速度ならびに全体的Kを決定した。下記表12で結果を示す。
【0174】
【表12】

【0175】
決定された値の標準誤差を最小桁数に関して括弧内で報告する。
【0176】
当業者にとって当然のことながら、本開示は、目的を遂行するため及び結果及び言及される長所ならびにそれらにおける特徴となるものを得るために、十分に適合している。本明細書中に記載の、分子複合体及び方法、手順、処置、分子、具体的化合物組成は、現在、好ましい実施形態の代表であり、典型であり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者にとって当然のことながら、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書中で開示される本発明に対して様々な置換及び修飾が為され得る。
【0177】
明細書中で言及される全ての特許及び刊行物は本発明が属する技術分野の熟練者のレベルの指標となる。全ての特許及び刊行物は、各個別の刊行物が具体的かつ個々に参照により組み込まれることが示されるされるように、同じ程度まで、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0178】
適切に本明細書中に実例になるように記載される本発明は、本明細書中で具体的に開示されない何らかの要素、制限なく、実施され得る。従って、例えば、本明細書中の各例において「含む(comprising)」「基本的にからなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という用語の何れも、その他の2つの用語の何れかと置き換え得る。使用されてきた用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定の用語ではなく、かかる用語及び表現の使用は示され記載されている特性又はその一部の何らかの同等物を排除するものではなく、主張される本発明の範囲内で様々な変更が可能であることを認識されたい。このようにして、好ましい実施形態及び任意の特性により本発明を具体的に開示してきたが、本明細書中で開示される概念の変更及び変化が当業者によりなされ得、かかる変更及び変化が、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲内であるとみなされることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509及びA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715からなる群から選択される、マウスハイブリドーマ細胞株。
【請求項2】
A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509及びA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715からなる群から選択されるマウスハイブリドーマ細胞株から抽出されるDNAから生成される抗体。
【請求項3】
A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509及びA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715からなる群から選択されるマウスハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体。
【請求項4】
(a)第一の捕捉抗体−MPO複合体を形成させるために、MPOを含有する疑いのある試験試料とMPOに結合する第一の捕捉抗体を接触させ;
(b)第二の捕捉抗体−MPO検出複合体を形成させるために、MPOに結合し、検出可能な標識に結合させられている第二の抗体と、第一の捕捉抗体−MPO複合体を含有する該試験試料を接触させ;
(c)検出可能な標識を検出することにより、段階(b)で形成される捕捉抗体−MPO検出複合体の量を決定する(この場合、形成される第二の複合体の量は、試験試料中に含有されるMPOの量である。)、
段階を含み、
第一の捕捉抗体又は第二の抗体の何れかが、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生されるモノクローナル抗体及びA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生されるモノクローナル抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、
試験試料中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の濃度を決定するための免疫アッセイ。
【請求項5】
(a)第一の捕捉抗体−MPO複合体を形成させるために、MPOを含有する疑いのある試験試料と、MPOに結合する第一の捕捉抗体を接触させ(ここで、第一の捕捉抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体である。);
(b)第二の捕捉抗体−MPO−検出複合体を形成させるために、MPOに結合し、検出可能な標識に結合させられている第二の抗体と、第一の捕捉抗体−MPO複合体を含有する該試験試料を接触させ(この場合、第二の抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体であり、ただし、第一の捕捉抗体及び第二の抗体は同一ではない。);
(c)検出可能な標識を検出することにより、段階(b)で形成される捕捉抗体−MPO−検出複合体の量を決定する(この場合、形成される第二の複合体の量は、試験試料中に含有されるMPOの量である。)、
段階を含む、試験試料中のMPOの濃度を決定するための免疫アッセイ。
【請求項6】
請求項3に記載の少なくとも1つの抗体と、キットを使用するための説明書と、を含む、前記キット。
【請求項7】
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定する、
段階を含む、試験試料中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の濃度を決定するための方法。
【請求項8】
MPO分泌阻害剤がエチレンジアミン四酢酸の塩を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
試験試料が全血又は血漿試料である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
競合免疫アッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、酵素アッセイ及び臨床化学アッセイからなる群から選択される方法により、段階(b)が行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
試験試料が最長で約8時間、室温で保存される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
試験試料が、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
MPO分泌阻害剤がクエン酸の塩を含み、試験試料が、処理前に最長で約8時間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
試験試料が、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
改良が、最長で約8時間、室温にて、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で試料を保存することを含む、ヒト血液試料中のMPOの濃度を決定するための前記改良法。
【請求項16】
MPO分泌阻害剤がエチレンジアミン四酢酸の塩を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
血液試料が全血である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
競合免疫アッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、酵素アッセイ及び臨床化学アッセイからなる群から選択される方法により、試料中のMPOの濃度決定が行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
試料が、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
改良が、処理前に最長で約8日間、約2℃から約8℃の温度でクエン酸の塩を含有する試料回収チューブ中で試料を保存することを含む、ヒト血液試料中のMPOの濃度を決定するための前記改良法。
【請求項21】
試験試料が、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブと、
(b)請求項3に記載の少なくとも1つの抗体と、
(c)キットを使用するための説明書と、
を含む前記キット。
【請求項23】
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存されるMPOを含有する疑いのあるヒト末梢血液試料を提供し;
(b)第一の捕捉抗体−MPO複合体を形成させるために、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存されるヒト末梢血液試料と、MPOに結合する第一の捕捉抗体を接触させ(この場合、第一の捕捉抗体は、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体である。);
(c)第二の捕捉抗体−MPO−検出複合体を形成させるために、MPOに結合し、検出可能な標識に結合させられている第二の抗体と、第一の捕捉抗体−MPO複合体を含有する該ヒト末梢血液試料を接触させ(この場合、第二の抗体はA.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体又はA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体であり、ただし、第一の捕捉抗体及び第二の抗体は同一ではない。);
(d)検出可能な標識を検出することにより、段階(b)で形成される捕捉抗体−MPO検出複合体の量を決定する(この場合、形成される第二の複合体の量はヒト末梢血液試料中に含有されるMPOの量である。)、
段階を含む、ヒト末梢血液試料中のMPOの濃度を決定するための免疫アッセイ。
【請求項24】
固定化された抗体を作製するために、第一の捕捉抗体が固相上に固定化される、請求項4、請求項5又は請求項23に記載の免疫アッセイ。
【請求項25】
第一の捕捉抗体が、A.T.C.C.受入番号PTA−8437を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−1175−509により産生される抗体であり、第二の抗体がA.T.C.C.受入番号PTA−8438を有するマウスハイブリドーマ細胞株1−2169−715により産生される抗体である、請求項5又は請求項23に記載の免疫アッセイ。
【請求項26】
MPO分泌阻害剤がエチレンジアミン四酢酸の塩を含む、請求項23に記載の免疫アッセイ。
【請求項27】
試験試料が全血である、請求項23に記載の免疫アッセイ。
【請求項28】
試験試料が、最長で約8時間、室温で保存される、請求項23に記載の免疫アッセイ。
【請求項29】
試験試料が、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存される、請求項28に記載の免疫アッセイ。
【請求項30】
MPO分泌阻害剤がクエン酸の塩を含み、試験試料が、処理前に最長で約8時間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
試験試料が、処理後に最長で約7日間、約2℃から約8℃の温度でさらに保存される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較し(段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低い場合、対象が循環器疾患を発現するリスクがないとみなされ、さらに、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより高い場合、対象が循環器疾患を発現するリスクがあるとみなされる。)
、段階を含む、対象が循環器疾患を発現するリスクがあるか否かを決定する方法。
【請求項33】
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する(段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより低い場合、対象が循環器疾患に罹患していないとみなされ、さらに、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより高い場合、対象が循環器疾患に罹患しているとみなされる。)、
段階を含む、対象において循環器疾患を診断する方法。
【請求項34】
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する(段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低い場合、対象は循環器疾患の重症度が低いと判定され、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより高い場合、対象は循環器疾患の重症度が高いと判定される。)、
段階を含む、対象において循環器疾患の重症度を監視する方法。
【請求項35】
循環器疾患が、冠動脈疾患、末梢血管疾患、高血圧、心筋梗塞又は心不全である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
(a)MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される試験試料を提供し;
(b)試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度を所定レベルと比較する(段階(b)で決定されるMPOの濃度が所定レベルより低い場合、対象における循環器疾患が進行していないか又は改善していると判定され、段階(b)で決定される試験試料中のMPOの濃度が所定レベルより高い場合、対象における循環器疾患が進行していると判定される。)、
段階を含む、対象における循環器疾患の進行を監視する方法。
【請求項37】
段階(b)の試験試料中のMPOの濃度が、請求項4又は請求項6に記載の方法に従って決定される、請求項32、請求項33、請求項34又は請求項36に記載の方法。
【請求項38】
(a)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与される前に、対象から第一の試験試料を得て、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で該第一の試験試料を保存し;
(b)該試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与された後に対象から第二の試験試料を得て、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中の該第一の試験試料を保存し;
(d)該第二の試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(e)段階(d)でのMPOの濃度と、段階(b)でのMPOの濃度を比較する(この場合、段階(d)で決定されるMPOの濃度と比較した場合に段階(b)で決定されるMPOの濃度が変化しないとき、1つ又はそれ以上の医薬組成物の投与の結果として、対象が循環器系の合併症に罹患していないと判定され、さらに、段階(d)でのMPOの濃度と比較した場合に段階(b)で決定されるMPOの濃度が変化しているとき、1つ又はそれ以上の医薬組成物の投与の結果として、対象が循環器系の合併症に罹患していると判定される。)、
段階を含む、1つ又はそれ以上の医薬組成物の前記対象への投与の結果として、対象が循環器系の合併症に罹患しているか否かを決定する方法。
【請求項39】
段階(b)又は段階(d)又は段階(b)及び(d)の両段階での試験試料中のMPOの濃度が、請求項4又は請求項6に記載の方法に従い決定される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(a)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与される前に対象からの第一の試験試料を提供し(ここで、該試験試料は、MPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される。);
(b)第一の試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(c)段階(b)で決定されるMPOの濃度を所定レベルと比較し;
(d)段階(c)で行われるMPOの濃度の比較において、第一の試験試料中のMPOの濃度が所定レベルよりも高いものである場合、ある一定期間1つ又はそれ以上の医薬組成物で対象を治療し;
(e)対象に1つ又はそれ以上の医薬組成物が投与された後、対象からの第二及びその後の試験試料を提供し(該試験試料はMPO分泌阻害剤を含有する試料回収チューブ中で保存される。);
(f)第二及びその後の試験試料中のMPOの濃度を決定し;
(g)段階(b)で決定されるMPOの濃度と、段階(f)で決定されるMPOの濃度を比較し(段階(b)で決定されるMPOの濃度と比較した場合に段階(f)で決定されるMPOの濃度が低下しているとき、対象は、段階(d)の1つ又はそれ以上の医薬組成物を投与し続けるべきであり、さらに、段階(b)で決定されるMPOの濃度と比較した場合に段階(f)で決定されるMPOの濃度が同じであるか又は上昇しているとき、対象は、段階(d)で対象に投与される1つ又はそれ以上の医薬組成物のより高い濃度で治療されるべきであるか又は対象は段階(d)で対象に投与される1つ又はそれ以上の医薬組成物とは異なる1つ又はそれ以上の医薬組成物で治療されるべきである。)、
段階を含む、1つ又はそれ以上の医薬組成物での治療を受けている対象においてMPOレベルを監視する方法。
【請求項41】
段階(b)又は段階(f)又は段階(b)及び(f)の両方の試験試料中のMPOの濃度が、請求項4又は請求項6に記載の方法に従い決定される、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−527592(P2010−527592A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508608(P2010−508608)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/063930
【国際公開番号】WO2009/023331
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】