説明

ミクロトームクリオスタットを殺菌するための方法及び装置

【課題】作業を長時間にわたって中断させることなく一日に数回ミクロトームクリオスタットを殺菌することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】a)0℃未満で有効な殺菌剤が霧としてクリオスタットチャンバ(2)に0℃未満で導入され、b)殺菌剤(3)がクリオスタットチャンバにおける霜状堆積物として有効であり、c)霜状堆積物が昇華によってより低温の領域(6)に配置され、この領域(6)の散発的な解凍相によって液体に変換され、これにより除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)クリオスタットチャンバ内への殺菌剤の導入
b)クリオスタットチャンバにおける殺菌剤の作用
c)より低温の領域における沈降及びより低温の領域からの排出による殺菌剤の除去によって、ミクロトームクリオスタットを殺菌する方法に関する。
【0002】
本発明は、ミクロトームと、低温発生器と、クリオスタットチャンバ内への殺菌剤の提供及び導入のための設備と、制御装置とを備えた、前記方法によってミクロトームクリオスタットを殺菌するための装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
ミクロトームはしばしば、細菌が感染した組織試料を切断するために使用されるので、作業員の保護のために殺菌が必要である。以下の提案はこのような殺菌のために提案されている。
【0004】
米国特許出願公開第2002/0139124号明細書における、問題を解決するための1つの提案は、オゾンによって殺菌を行うものである。しかしながら、これは、オゾンが極めて腐食性であり、酸化によって表面を損傷するという欠点を有している。別の欠点は、オゾン残留物は、除去するのが困難であり、毒性があり、極めて燃えやすく、又は殺菌段階の間に装置から部分的に逃げ出す恐れがあり、これにより作業員に危険を与えるということである。
【0005】
ANGLIA SCIENTIFIC社のパンフレット"AS 600 Cryotome"は、紫外放射を用いて汚染除去するための別の解決手段を提案している。しかしながら、これは、紫外放射が、影になった領域に浸透しないという欠点を有している。さらに、切断廃棄物又は残余試料内への、又は金属表面における顕微鏡的に小さな凹所内への、紫外線の浸透深さがない。したがって、この汚染除去方法は満足できるものではない。
【0006】
冒頭に記載されたタイプの方法及び装置は、独国特許出願広告第10303989号明細書によって提案されており、この場合、予熱されたクリオスタットチャンバに揮発性殺菌剤が導入される。殺菌時間の後、クリオスタットチャンバと低温発生器との温度差の発生により殺菌剤は除去され、これにより、好適には加熱され続けるミクロトームは乾燥され、殺菌剤全体は、再始動された低温発生器上に沈降する。殺菌剤は、低温発生器を再加熱することによって解凍され、低温発生器から除去される。次いで、低温発生器は再始動され、クリオスタットチャンバは作動温度を回復させる。この手順は既に、ミクロトームを備えたクリオスタットチャンバが乾燥するまで殺菌後にクリオスタットを開放させておくことだけによって乾燥させるよりも著しく速かった。しかしながら、この手順は依然としてミクロトームを再始動させるのに少なくとも2時間かかり、この時間は、除霜及び加熱時間と、殺菌剤の提供及び殺菌時間と、殺菌剤を除去するために必要な時間と、再冷却のための時間とから成る。したがって、殺菌は、作業日の最後にのみ行うことができるか、又は高い感染リスクがより頻繁な殺菌を必要とするならば、ミクロトームクリオスタットの配備の著しい制約が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0139124号明細書
【特許文献2】独国特許出願広告第10303989号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、作業を長時間にわたって中断させることなく一日に数回ミクロトームクリオスタットを殺菌することができるように、導入部に述べた形式の方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明により、冒頭に記載された方法ステップの以下の実施形態によって解決された。
a)0℃未満で有効な殺菌剤が霧として0℃未満でクリオスタットチャンバに導入される
b)殺菌剤がクリオスタットチャンバにおいて霜状堆積物として有効である
c)霜状堆積物が、昇華によってクリオスタットのチャンバの温度より低温の領域へ移動させられ、次いで、この領域の散発的な除霜相によって凝縮させられ、これにより排出される。
【0010】
前記目的は、前記形式の装置によって解決される。この装置は、殺菌剤の提供及び導入のための装置が霧化装置である。この霧化装置は、殺菌剤の霜状堆積物が、その微細さによりクリオスタットチャンバにおいて得られることができ、かつ霧化された殺菌剤が0℃未満の温度でクリオスタットチャンバに導入されるように構成されている。制御装置が、昇華によって低温発生器において沈降及び収集された殺菌剤の解凍を、この層が厚くなって低温発生器の作動を妨害する前に生ぜしめるように構成されている。排出設備が、クリオスタットチャンバから排出されるように、解凍された殺菌剤を案内する。
【0011】
本発明は、公知の殺菌剤の幾つかが、霧化された状態で0℃未満でクリオスタットチャンバに導入されることによって霜状堆積物を形成する場合にも殺菌特性を有するという知識にも基づく。本発明は、殺菌を行うためにこの事実を利用する。
【0012】
本発明は、より一層低温の領域が存在するならば0℃よりも低い温度においてさえこのような霜状堆積物が昇華によって再び除去されるという事実をも利用する。より一層低温の領域における殺菌剤の沈降は、クリオスタットチャンバにおける飽和昇華圧力が到達されず、したがって、霜状の堆積された殺菌剤の昇華は、殺菌剤全体がより低温の領域に沈降するまで継続することを保証する。このより低温の領域は、有利には、ミクロトームクリオスタットのクーラーである。なぜならば、クーラーは、作動中には、常にクリオスタットチャンバの最も低温の領域であるからである。
【0013】
最後に、霜状堆積層の殺菌効果は、0℃より高い温度で滴として沈降させられた殺菌剤の凝縮物よりも、著しく有効であることも認識された。つまり、殺菌剤の需要は、ほぼ10のファクタだけ減じられることができることが発見された。提供される殺菌剤の量のこの減少は、クーラー等のより低温の領域において沈降させられる殺菌剤が、各殺菌の後に除去及び排出される必要がないことも意味する。なぜならば、そこで形成する殺菌剤の層は、1回の殺菌作業の際に提供される著しくより小さな殺菌剤量により、従来技術による上述の方法において必要とされる量のほぼ10分の1にしか相当しないからである。このことは、より低温の領域、すなわちクーラーにおいて散発的に解凍を行うことを可能にする。なぜならば、低温発生器が作動するための能力を損なう前に除去されなければならない層が、複数の殺菌作業の後に初めて形成されるからである。
【0014】
その結果、本発明は、殺菌剤が導入される前に、殺菌を行うためにクリオスタットチャンバを加熱する必要性、及び各殺菌の後のクリオスタットチャンバからの殺菌剤の時間のかかる除去、を排除する。前記従来技術においては、殺菌剤がクーラーに沈降するようにクーラーを0℃未満に冷却し、その後、殺菌剤が流れ去ることができるようにクーラーを解凍し、最後に、クリオスタットチャンバが作動温度に戻るように再び低温を生ぜしめる。
【0015】
これに対して、本発明では、殺菌剤が導入される時、クリオスタットチャンバは通常の作動温度であることができる。処理される試料のタイプに応じて、この温度は−10℃〜−35℃、通常は約−20℃であってよい。通常作動温度ではクーラーが通常はとにかくより低温であるので、霜状の殺菌沈降物がクーラー内に昇華する。クーラーはミクロトーム及びクリオスタットチャンバよりも数℃だけ低温であれば十分である。次いで、ミクロトーム刃上の層がほとんど除去されると、ミクロトームは再始動されることができる。クリオスタットチャンバの他の部分に沈降した殺菌剤の昇華は、不完全なままであることができる。なぜならば、ミクロトームクリオスタットが再び作動した時にプロセスは完了するからであり、低温発生器に沈降した殺菌剤は、低温発生器の散発的な除霜相によって後で排出されることができるからである。
【0016】
より低温の領域(クーラー)に沈降した殺菌剤の散発的な解凍及び排出は、約6〜10回の殺菌作業の後に行われれば十分であり、この作業は、有利には、ミクロトームクリオスタットの作動時間の損失を回避するために作業日の最後に実施されることができる。
【0017】
本発明による方法の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0018】
ミクロトームクリオスタットの殺菌を迅速に行うために、通常の作動温度で殺菌剤がクリオスタットチャンバに導入されるための条件が提供される。これは、上述の従来技術の解凍及び加熱時間の必要性を排除する。殺菌が行われる時にクリオスタットチャンバの通常の冷却が中断されるのではなく、昇華効果のために利用される。なぜならば、作動温度に冷却されたクリオスタットチャンバと、クリオスタットチャンバを冷却する低温発生器との温度差は、上述の昇華効果が達成されるほど大きいからである。
【0019】
霧化された殺菌剤の導入は有利には約3分かかる。この時間は、存在する全ての細菌を殺すのに十分であることが分かっている。この時間は、霜状堆積物の被覆の所要の厚さ及び完全性が達成されるので十分であり、この堆積物は、所要の時間にわたって、殺菌される表面に滞留する。殺菌剤を導入するために必要な時間に加え、昇華の結果としてミクロトーム刃が実質的に浄化されるまである程度の時間が必要とされる。しかしながら、昇華時間は殺菌作業のために部分的にのみ必要とされるので、本発明の別の実施形態ではこの時間は短縮されることができる。
【0020】
本発明の方法においてクリオスタットチャンバに15〜25mlの殺菌剤が導入されると十分であることが分かっている。上述のように、この量は、約200mlの殺菌剤が必要とされる従来技術よりも著しく少ない。正確には、この減じられた量は、昇華効果を高め、蒸発を行うためのより多くの加熱を排除し、それにもかかわらず時間を節約することを可能にする。
【0021】
霧として導入される殺菌剤の粒子の大きさが小さいほど、殺菌剤の霜状堆積物は有効になる。この可能な限り小さな粒子の大きさを得るために、クリオスタットチャンバに導入される前に殺菌剤が超音波によって霧化されると有利である。
【0022】
既に述べたように、ミクロトームクリオスタットの低温発生器は、有利にはより低温の領域として利用される。低温発生器に堆積した殺菌剤を解凍して排出するために、低温発生器は、低温発生器が機能する能力を損なう恐れがある凍結した殺菌剤の層の形成を回避するのに十分な頻度の散発的な周期で加熱され、殺菌剤が臨界深さに達する前に殺菌剤を除去する。概して、6〜10回の殺菌作業の後に達成される解凍の程度で十分である。つまり、殺菌剤の解凍及び排出は一日に一回行われることができる。
【0023】
機器に殺菌剤が導入される回数は、処理される試料の数と、試料からの感染のリスクの程度とに依存する。したがって、殺菌が必要とされた時にいつでも殺菌剤の導入が開始されると有利であり、この導入は、この必要性を判断することができる作業員によって行われる。しかしながら、最小限の殺菌を保証するために、少なくとも一日に一回殺菌剤が自動的に導入されると有利である。
【0024】
各殺菌作業の後、ミクロトーム刃上の霜状殺菌剤層がほとんど除去された時にミクロトームは再始動させられることができる。完全な除去が常に必要であるというわけではない。クリオスタットチャンバのその他の面における殺菌剤の残留層はかなり無害である。なぜならば、この残留層は、その後の切断作業の間に低温発生器へ昇華することができるからである。
【0025】
有利な実施形態においては、殺菌後にミクロトームをより迅速に再始動させるために、霜状殺菌剤堆積物を、所要の殺菌時間の後にミクロトーム刃から機械的に除去することができる。これは、ブラシを用いて手作業で又は適切な機械的装置を使用して行うことができる。別の可能性は、所要の殺菌時間後にミクロトーム刃を加熱することによってこのミクロトーム刃から殺菌剤層の除去を加速させることである。温度は、0℃よりも高く上昇させられなくてもよい。数℃温度を上昇させるだけで、昇華効果を著しく加速させる。ミクロトーム刃は、機能するために十分に低い温度を有さなければならないミクロトームクリオスタットの部分であるので、このような加熱後、ミクロトーム刃の低い作動温度への戻りが冷却によって加速させられると有利である。このように、殺菌による作業の中断がやはり著しく減じられる。
【0026】
低い作業温度における殺菌のために、過酸化水素水の使用が有効な殺菌剤であることが証明された。また、このような低い温度における殺菌の効果は、この過酸化水素水が僅かな比率の銀を含むと特に有効である。
【0027】
本発明による方法の前記実施形態によれば、本発明の装置の別の実施形態において、特に有効な超音波で霧状の細かさを生ぜしめるために霧化装置に超音波発生器が具備されている。クリオスタットチャンバの全ての部分、特に有効にはミクロトームに殺菌剤を到達させるために、殺菌剤の提供及び導入ための装置が、霧化された殺菌剤を上方からクリオスタットチャンバに提供する送風機を有すると有利である。
【0028】
低温発生器の散発的な解凍は長く継続しすぎるべきではないので、低温発生器が、迅速な解凍を保証するために加熱設備を有していると有利である。したがって、低温発生器は、殺菌剤をクリオスタットチャンバから排出設備を介して排出するために、解凍された殺菌剤を収集するための収集設備を有していると有利である。
【0029】
殺菌剤の導入を手動で開始するための入力ユニットが好適には設けられており、これにより、操作員は、特に感染のリスクが特に高い場合により頻繁に、必要に応じて入力ユニットを作動させることができる。いかなる場合にも、殺菌剤が少なくとも一日に一回は導入されるように制御装置は構成されているべきである。これは、通常の最小限の殺菌として考えられることができ、ほとんど感染のリスクがない試料が処理されたとしても行われるべきである。
【0030】
さらに、制御装置は、一日に一回低温発生器の解凍を行うように構成されているべきである。もちろん、これは、解凍がより頻繁に行われる可能性を排除しないが、通常の作動条件において、これは、低温発生器における凍結した殺菌剤の層が深くなりすぎることはないことを保証する。さらに、解凍作業が日中の作業を中断しないように、作業日の最後がそのために利用されることができる。明らかに、低温発生器における凍結した殺菌剤の層の厚さを検出及び表示しかつ/又は解凍を開始するセンサが設けられることができる。
【0031】
殺菌作業による作業の中断を、数分間かかる所要の殺菌時間の後にミクロトーム刃上の殺菌剤の霜状堆積物の除去を加速するための機器によって減じることができる。これは、霜状堆積物の機械的除去のための装置であることができるか、又は装置はミクロトーム刃のためのヒータの形式であることができる。このようなヒータは、霜状堆積物が除去された後にできるだけ迅速にミクロトーム刃を作動温度に冷却するために、ミクロトーム刃のための冷却装置に連結されていることもできる。ペルティエデバイスが、1つのエレメントを用いて加熱及び冷却を行うのに適している。
【0032】
装置は、有利には、殺菌剤として使用される過酸化水素水、特に僅かな比率の銀を含んだ過酸化水素水を取り扱うために最適化されている。この最適化は、信頼できる殺菌のための殺菌時間と、このような過酸化水素水の昇華のために必要な時間とを含む。したがって、時間及び温度は、このような過酸化水素水に適応されていなければならない。
【0033】
もちろん、方法のために開示された実施形態は、適切な形式で装置のために実施されることもでき、その逆も可能である。別の実施形態、例えば、例えば試料と、特定の試料を切断するための刃との温度をさらに低下させるために多数の低温発生器を有する実施形態が可能であり、その場合、昇華はより一層低温の領域(低温発生器)に生じることが保証されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による方法を用いてミクロトームクリオスタットの殺菌を行うための装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、図示された装置の実施形態の例に基づいて発明を説明する。図は、ミクロトームクリオスタット1とクリオスタットチャンバ2とを示しており、このクリオスタットチャンバ2は、ミクロトーム刃5を用いて凍結した試料19を切断するミクロトーム4を有している。クリオスタットチャンバ2は、低温発生器7を有しており、この低温発生器7は、本発明による方法のためのより低温の領域6として働く。低温発生器7は、クリオスタットチャンバ2の外部に配置された冷媒供給部16と共に作動させられる。
【0036】
矢印3′によって示されているように、ミクロトームクリオスタット1を殺菌するために、殺菌剤3の提供及び導入のための装置8が使用される。送風機14は、クリオスタットチャンバ2における殺菌剤3の均一な提供を保証する。できるだけ均一でかつ微細な、クリオスタットチャンバ2における殺菌剤3の霜状の層(hair-frost-like layer)を得るために、装置8には霧化装置8′が設けられており、この霧化装置8′は、好適には超音波を用いて作動する。
【0037】
低温発生器7の下方には収集設備13が配置されており、低温発生器7が除霜された時に、解凍された殺菌剤3がこの収集設備13に流入する。殺菌剤3はこの収集設備13から排出設備10へ移送され、この排出設備10は、殺菌剤3をクリオスタットチャンバ2から、例えば解凍された流体のための収集容器18内へ排出する。
【0038】
装置の作動及び方法の実施のために、制御装置9及び入力ユニット12が設けられている。制御装置9は、殺菌剤3の提供及び導入ための装置8に接続された接続ケーブル17を有しており、これらの接続ケーブルは、例えば霧化装置8′と送風機14とを接続している。さらに、接続ケーブル17は、低温発生器7の冷媒供給部16と、付加的に低温発生器7のための加熱設備11にも接続されている。別の接続ケーブル17は、ミクロトーム刃5に配置されたペルティエデバイス15に接続されている。
【0039】
装置は以下のように働く:
試料19の切断後、細菌を殺すために殺菌が必要とされる場合、殺菌剤3を低温のクリオスタットチャンバ2内へ矢印3′の方向に導入するために、装置8が霧化装置8′及び送風機14と共に始動させられる。クリオスタットチャンバ2は、−10〜−35℃の通常作動温度であるが、通常、通常作動温度は約−20℃である。次いで、霧化された微細に分散された殺菌剤3は、クリオスタットチャンバ2全体に沈降する。霧化された殺菌剤3の導入が約3分間かかり、この間に15〜25mlの殺菌剤3がクリオスタットチャンバ2に導入されれば十分である。低温発生器7は作動し続けるので、低温発生器はより低温の領域6を形成し、これは、クリオスタットチャンバ2において沈降した殺菌剤3の昇華を引き起こす。その結果、クリオスタットチャンバ2における殺菌剤3の霜状堆積物(hair-frost-like deposit)が昇華し、低温発生器7に堆積させられ、低温発生器はこれを生じさせるために数度だけより低温であればよい。このプロセスの後、ミクロトーム刃5から、殺菌剤3の霜状堆積物が無くなり又は実質的に無くなり、次の試料19を切断することができる。
【0040】
ミクロトーム刃5から霜状堆積物を除去するのにかかる時間を、霜状堆積物を除去するための適切な装置又は単にブラシを使用することによって短縮することができる。これにより、殺菌剤の僅か数分の殺菌時間の後に次の切断を行うことができる。しかしながら、ミクロトーム刃5には、この位置における昇華を加速するための加熱設備を具備することもできる。示された実施形態において、これはペルティエデバイス15であり、このペルティエデバイス15によって、昇華を加速させるために、又はミクロトーム刃5だけにおいて局所的に解凍及び気化を行うために、ミクロトーム刃5が加熱され、次いで、次の切断のために極めて迅速に作動温度に回復させるために、再び短時間冷却されることができる。
【0041】
本発明による方法は殺菌のために比較的少ない殺菌剤3を必要とするので、各殺菌作業の後に低温発生器7を解凍する必要はない。切断を続ける前に、クリオスタットチャンバの霜状堆積物全てが低温発生器7に昇華させられる必要もない。好適には、クリオスタットチャンバ2の残りの表面から低温発生器7への昇華は継続し、切断が進行しながら昇華が完了させられるので、ミクロトーム刃5は実質的に霜状堆積物を有さなければ十分である。低温発生器に形成された凍結した殺菌剤3の層が低温の発生を妨げないように、複数回の、例えば6〜10回の殺菌作業の後にだけ低温発生器7が解凍されるべきである。約6〜10回の殺菌作業は、一日の平均的な試料19のために行われるので、低温発生器7の解凍は、通常、作業日の最後に行うことができる。このために、スイッチオフされた低温発生器7の温度を0℃よりも高く上昇させる加熱設備11が使用され、この加熱設備11は、低温発生器7に集まった殺菌剤3を解凍する。次いで、殺菌剤3は、収集設備13に流入し、排出設備10によって、クリオスタットチャンバ2の外部に配置された、解凍された液体のための収集容器18に排出される。引き続き、ミクロトームクリオスタット1は再び冷却され、再始動されることができる。
【0042】
図面は、単に、本発明に従って機能するミクロトームクリオスタットの1つの可能な実施形態を示している。特に、構成の変更が可能であり、図面は単なる象徴的な図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ミクロトームクリオスタット、 2 クリオスタットチャンバ、 3 殺菌剤、 4 ミクロトーム、 5 ミクロトーム刃、 6 より低温の領域、 7 低温発生器、 8 殺菌剤を提供及び導入するための装置、 8′ 霧化装置、 9 制御装置、 10 排出設備、 11 加熱設備、 12 入力ユニット、 13 収集設備、 14 送風機、 15 ペルティエデバイス、 16 低温発生器のための冷媒供給部、 17 制御装置の接続ケーブル、 18 解凍された液体のための収集容器、 19 標本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)クリオスタットチャンバ(2)への殺菌剤の導入、
b)クリオスタットチャンバ(2)における殺菌剤(3)の作用、
c)より低温の領域(6)における沈降及び該より低温の領域(6)からの排出による殺菌剤(3)の除去、
を行う、ミクロトームクリオスタット(1)を殺菌する方法において、
a)0℃未満で有効な殺菌剤が霧としてクリオスタットチャンバ(2)に0℃未満で導入され、
b)殺菌剤(3)が、クリオスタットチャンバにおける霜状堆積物として有効であり、
c)霜状堆積物が、昇華によってより低温の領域(6)に移動させられ、この領域(6)の散発的な除霜段階によって液体に変換され、これにより除去されることを特徴とする、ミクロトームクリオスタット(1)を殺菌する方法。
【請求項2】
殺菌剤(3)が、クリオスタットチャンバ(2)の通常作動温度でクリオスタットチャンバに導入される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
霧化された殺菌剤(3)の導入が約3分かかる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
15〜25mlの殺菌剤(3)がクリオスタットチャンバ(2)に導入される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
殺菌剤(3)の霧化は、クリオスタットチャンバ(2)に導入される前に超音波によって達成される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
より低温の領域(6)として低温発生器(7)が使用され、該低温発生器(7)が、該低温発生器(7)に沈降した殺菌剤(3)の解凍及び排出のために、凍結した殺菌剤層が低温発生器(7)の機能の能力を損なうような深さになることができないような散発的な周期で加熱される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
解凍及び排出が一日に一回行われる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
殺菌剤(3′)の導入が、殺菌剤が必要な場合に行われる、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
殺菌剤(3′)の導入が、少なくとも一日に一回、自動的に行われる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ミクロトーム刃(5)における殺菌剤の霜状堆積物が実質的に除去された時にミクロトーム(4)が再始動される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
所要の殺菌時間の後のミクロトーム刃(5)における殺菌剤(3)の霜状堆積物の除去が、殺菌後にミクロトームをより迅速に再始動するために機械的に行われる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
所要の殺菌時間の後のミクロトーム刃(5)からの殺菌剤層の除去が、ミクロトーム刃を加熱することによって加速される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
ミクロトーム刃(5)の作動温度への戻りが、ミクロトーム刃(5)を冷却することによって加速される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
殺菌剤(3)として過酸化水素水が使用される、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
過酸化水素水が、僅かな比率の銀を含んでいる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ミクロトーム(4)と、低温発生器(7)と、クリオスタットチャンバ(2)内への殺菌剤(3)の提供及び導入のための装置(8)と、制御装置(9)とを備える、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法によるミクロトームクリオスタット(1)の殺菌のための装置において、
殺菌剤(3)の提供及び導入のための装置(8)が、0℃より低い温度におけるクリオスタットチャンバ(2)内への霧化された殺菌剤(3)の導入の細かさ及びモードにより、クリオスタットチャンバ(2)における殺菌剤(3)の霜状堆積物を得ることが可能であるように構成された霧化装置(8′)であり、制御装置(9)は、該制御装置(9)が、低温発生器(7)に沈降させられかつ昇華によって該低温発生器(7)に収集された殺菌剤(3)の解凍を、この層が低温発生器(7)の機能の能力を損なうことができる厚さに達する前に行うように構成されており、排出設備(10)が、解凍された殺菌剤(3)をクリオスタットチャンバ(2)から除去することを特徴とする、ミクロトームクリオスタット(1)の殺菌のための装置。
【請求項17】
霧化装置(8′)が、超音波によって霧の細かさを生ぜしめる、請求項16記載の装置。
【請求項18】
殺菌剤(3)の提供及び導入のための装置(8)が、霧化された殺菌剤(3)をクリオスタットチャンバ(2)に上方から提供する送風機(14)を有する、請求項16又は17記載の装置。
【請求項19】
前記低温発生器(7)が、解凍を加速させるための加熱設備(11)を有している、請求項16から18までのいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記低温発生器(7)が、解凍された殺菌剤(3)を排出設備(10)へ案内するための収集設備(13)を有している、請求項16から19までのいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
殺菌剤(3′)の導入を手動で開始するための入力ユニット(12)を有している、請求項16から20までのいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
前記制御装置(9)が、殺菌剤(3′)の導入が少なくとも一日に一回行われるように構成されている、請求項16から21までのいずれか1項記載の装置。
【請求項23】
前記制御装置(9)は、該制御装置(9)が低温発生器(7)の解凍を一日に一回行うように構成されている、請求項16から22までのいずれか1項記載の装置。
【請求項24】
所要の殺菌時間の後にミクロトーム刃(5)における殺菌剤(3)の霜状堆積物の除去を加速させるための装置が設けられている、請求項16から23までのいずれか1項記載の装置。
【請求項25】
霜状堆積物の機械的な除去のための装置が設けられている、請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記装置が、ミクロトーム刃(5)のための加熱装置である、請求項24記載の装置。
【請求項27】
霜状堆積物の除去の後に再びミクロトーム刃(5)を冷却する冷却装置をも有している、請求項26記載の装置。
【請求項28】
前記装置が、ペルティエデバイス(15)である、請求項26又は27記載の装置。
【請求項29】
殺菌剤(3)としての過酸化水素水の取扱いのために最適化されている、請求項16から28までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−7791(P2011−7791A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−142497(P2010−142497)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(504178269)ミクロム インテルナチオナール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】Microm International GmbH
【住所又は居所原語表記】Robert−Bosch−Strasse 49, D−69190 Walldorf, Germany
【Fターム(参考)】