ミクロ電気機械ヒータ
検査用サンプルホルダ及び加熱のアセンブリを含む、サブミクロンスケールの特性検査用装置である。アセンブリは、サブミクロン検査器具と電気機械式トランスデューサとのアセンブリに結合するように構成されたホルダ底部を含む。アセンブリは、ホルダ底部と結合した検査用サンプルステージをさらに含む。検査用サンプルステージは、ホルダ底部から熱的に分離される。検査用サンプルステージは、検査用サンプルを受けるように構成されたステージ検査用サンプル表面と、ステージ検査用サンプル表面を固定するステージプレートを含む。ステージプレートは、ステージ検査用サンプル表面の下にある。検査用サンプルステージは、ステージ検査用サンプル表面に隣接する加熱エレメントをさらに含み、加熱エレメントは、ステージ検査用サンプル表面で熱を発生させるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、2009年11月27日に出願された、米国仮特許出願番号第61/264,753号に対し、優先権の利益を主張する。上記米国仮特許出願番号第61/264,753号の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(中小企業技術革新研究プログラムに関する陳述)
本発明は、エネルギー省により与えられた(受賞番号DE−FG02−07ER84812)政府の支援を得てなされたものである。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
本願は、サブミクロンスケールの検査に関する。
【背景技術】
【0004】
ナノインデンテーション法は、深さを感知するインデンテーション技術を利用して、材料の弾性率や硬度などの機械特性をナノメートル単位のスケールで定量的に測定する方法である。ナノインデンテーション法では、負荷力及び変位を測定可能なナノインデンターが利用されている。典型的に、ナノインデンテーション法において採用される力は、10mN未満である。典型的な変位範囲は10μmより小さく、典型的なノイズレベルは1nm rms以上である。力と変位に関するデータは、サンプルの機械特性を決定するために使用される。サンプルの特性を推定するために、ナノインデンターは既知の幾何学的特性及び既知の機械特性を有する特徴的なインデンターチップと一体化する。
【0005】
新たなナノ機械特徴技術の1つは、定量的な透過型電気顕微鏡検査(TEM)による現場での(in-situ)機械検査である。かかる検査方法により、定量的な機械データを測定しつつ、リアルタイムでのサンプルの変形のモニタリングが可能である。ナノ機械システムとTEMによる画像化とを結合すると、研究者は、構造的性質の相関関係と、既存の欠陥が材料の機械反応に与える影響とを調査することができる。画像化に加え、選択された領域の回折が、サンプルの向き及び機械反応に及ぼす負荷方向の影響を決定するために使用され得る。さらに、現場での機械検査により、変形は「事後的」ではなく、リアルタイムで視認され得る。現場でのTEMナノ機械検査を行うことにより、変位(dislocation)による破裂、相変態、せん断バンドまたは破壊の開始などを含む、力または変位の変化の多くの原因となり得る事象に対する明確な差別化が可能になる。上昇した温度下でナノ機械検査を行うことは、温度が上昇するにつれて位相変化や可変の機械特性を有する材料の材料特性の重要な部分である。高温のナノ機械検査の中には、ポリマー材料及びゴム材料のガラス転移温度の同定や、低温金属及び形状記憶合金の相変態、体温での生体サンプルの研究、仮定され、加速された熱劣化の研究、加速された材料クリープの研究、及びポリマーの時間と温度の重畳曲線プロットなどがある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、ナノ機械検査システムの1つの実施例を示すブロック図である。
【図2A】図2Aは、サンプルステージとMEMSヒータの1つの実施例を示す斜視図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示したMEMSヒータ及びサンプルステージの詳細な図である。
【図3】図3は、図2Aに示したサンプルステージ底面図を示す別の態様の斜視図である。
【図4】図4は、機械検査及び画像化のためのサンプルマウント(スライド)に載置された検査用サンプルも併せたサンプルステージ別の実施例の概略図である。
【図5】図5は、サンプルマウントを含むサンプルステージの別の態様の実施例の斜視図である。
【図6A】図6Aは、MEMSヒータ付きのサンプルステージを含む検査用サンプルホルダの1つの実施例の側面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示した検査用サンプルホルダとサンプルステージの詳細な斜視図である。
【図7】図7は、特定の点がマーク付けされた検査用サンプルホルダの別の実施例の詳細な側面図である。
【図8】図8は、図7の点A、B及びCにおける経時的な温度変化を示すグラフである。
【図9A】図9Aは、顕微鏡スケールにおけるサンプルステージのさらに別の実施例の上面図である。
【図9B】図9Bは、顕微鏡スケールにおける図9Aに示したサンプルステージの底面図である。
【図10】図10は、エミュレートされたインデンテーション器具の構成要素と結合したMEMSヒータを含むサンプルステージ斜視図である。
【図11】図11は、耐熱エレメントに電流を流したMEMSヒータ付きのサンプルステージの一連の顕微鏡写真である。
【図12】図12は、MEMSヒータをアニールしたときの異なる温度における感知エレメントの1つの実施例の抵抗測定を示すグラフである。
【図13】図13は、MEMSヒータを含むサンプルステージ付きの検査用サンプルホルダの1つの実施例の概略図である。
【図14A】図14Aは、検査用サンプル膜を含む検査用サンプルのクレードルの1つの実施例を示す先行技術に関する図である。
【図14B】図14Bは、図14Aに示す検査用サンプルのクレードルの断面図である。
【図15】図15は、サブミクロン加熱と機械検査の1つの実施例を示すブロック図である。
【図16A】図16Aは、加熱した機械検査チップアセンブリの1つの実施例を示す概略図である。
【図16B】図16Bは、図16Aにおいて示す加熱した機械検査チップアセンブリの詳細な概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0007】
以下の発明の詳細な説明において、かかる発明の詳細な説明の一部を形成し、本発明の内容が実施される具体的な実施態様の例示を示す添付の図面を参照する。この点において、「上(top)」、「底(bottom)」、「前(front)」、「後(back)」「誘導する(leading)」「追随する(trailing)」などの方向を示す用語は、記載された図面の方向を参照して使用される。本発明の実施形態の構成要素は、多くの異なる方向に配置されることができるため、方向を示す用語は、例示の目的に使用されるのであって、限定的な目的に使用されるものではない。これらの実施形態は、当業者がこの発明に開示された態様を実施可能に十分詳細に記載されており、また、その他の実施形態が利用可能な点及び本発明の開示の範囲から逸脱することなく構成上の変更がなされ得る点が理解されるべきである。したがって、以下の発明の詳細な説明は、限定的な意味に解釈されるべきではなく、また、本発明の開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるものである。
【0008】
本明細書に記載された実施形態によれば、ナノ構造や薄膜などを含むが、これらに限定されない、小さな検査用サンプルに対してナノスケール及びミクロスケール(すなわち、サブミクロンスケール)で機械検査を行うためのシステムならびに方法が提供される。1つの実施例において、かかる検査は、検査用サンプルを構成する材料の機械特性を決定するために行われる。ナノ機械検査における器具の使用に合わせてTEMホルダを変更すると、ホルダの前端部やTEM電子ビームのポールの隙間によって制限された狭小な空間しか提供されなくなる。したがって、一体化されたヒータ付きのTEM現場用ナノ機械検査器具を開発することは、新たな設計及び器具装備への取り組みを必要とし、非常に困難な課題となる。1つの実施形態によれば、本明細書において後ほど詳細に説明するが、本明細書に記載するシステムは、加熱エレメント及び感知エレメントを含むマイクロマシン加工された、またはマイクロ電気機械(MEMS)を基礎とするヒータを含む。かかるヒータは、インデントやその他の変形(例えば、インデント、スクラッチ、引っ張り、圧縮など)に対応する高精度の作動力や、少なくともナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールの高解像度を有する変位検出を提供するナノインデンターやその他の器具の使用を可能にする。
【0009】
図1は、小さな検査用サンプル31を加熱し、その温度を感知するためのMEMSを基礎とするヒータ100(以後MEMSヒータ100)を採用したナノ機械検査システム30の1つの実施例を示す概略図である。ナノ機械検査システム30(例えばサブミクロン)は、MEMSヒータ100の他に、置換可能なプローブ34を有する電気機械式(EM)トランスデューサ32、プローブ34を変位させるためのアクチュエータ36、変位センサー38、コンピュータ40、粗い位置決め装置(ポジショナー)42、精密な位置決め装置44、及びコントローラー50を含む。EMトランスデューサ32は、インデント、圧縮、張力、疲労、摩擦、破壊のための器具などを含むが、これらに限定されない。
【0010】
ナノ機械検査システム30は、サンプルステージ52を含み、底部54(ホルダ底部)を有する検査用サンプルホルダ55をさらに含む。MEMSヒータ100は、(例えば、検査用サンプルホルダ内または検査用サンプルホルダに沿った)サンプルステージ52に配置され、ホルダは、ナノ機械検査システム30に取り外し可能に取り付けられる。以下でより詳細に説明する1つの実施形態によれば、MEMSヒータ100は、例えば定量的な透過型電子顕微鏡(TEM)における現場ナノ機械検査への応用目的など、狭小な限られた空間に適合するように、マイクロマシン加工されるか、或いはMEMS加工される。
【0011】
1つの実施形態によれば、コントローラー50は、入力/出力モジュール60、トランスデューサ制御回路2、ヒータ制御回路4、例えばマイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサ(DSP)及び/またはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのプロセッサ62、及びメモリシステム64を含む。1つの実施形態によれば、メモリシステム64は、変位モジュール66、フォースモジュール68、温度感知モジュール56、及び加熱モジュール58を含む。他の実施形態によれば、入力/出力モジュール60は、さらにD/A変換器70及びA/D変換器72を含む。
【0012】
1つの実施形態において、コンピュータ40は、プロセッサ82及びアプリケーションモジュール86を格納するメモリシステム84を含む。コンピュータ40は、インターフェース90(例えばUSBインターフェースなど)を介して、コントローラー50にアクセスし、接続している。図1では、コンピュータ40とコントローラー50とを別個の構成要素として示している。その他の実施例においては、コンピュータ40とコントローラー50は、単一の処理制御システムの一部として一体化されている。
【0013】
1つの実施形態において、アプリケーションモジュール86、変位モジュール66及びフォースモジュール68は、それぞれ、メモリ64及び84のそれぞれに格納され、プロセッサ62によってアクセスされ実行され得る命令を含む。メモリ64及び84は、任意数のRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVDドライブなどの揮発性または不揮発性の記憶装置を含むが、これらに限定されない。他の実施形態において、変位モジュール66、フォースモジュール68、温度感知モジュール56、及び加熱モジュール58は、本明細書に記載される機能を果たすために構成されたハードウェア及びソフトウェア構成要素の任意の組み合わせを含む。1つの実施例において、変位モジュール66、フォースモジュール68、温度感知モジュール56、及び加熱モジュール58のソフトウェア構成要素は、メモリシステム64に格納される前に、処理システム62とは別個の媒体にそれぞれ格納される。かかる媒体の例としては、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ装置、コンパクトディスク(例えば、CD−ROM、CD−RまたはCD−RW)、デジタルビデオディスク(DVD、DVD−RまたはDVD−RW)などがある。
【0014】
1つの実施形態によれば、粗い位置決め装置42及び精密な位置決め装置44は、ミリメートル範囲において、サブナノメートル分解を伴い、EMトランスデューサ32及び変位可能プローブ34の三次元(すなわち、図1におけるx、y、z軸)での位置決めを可能にする。1つの実施形態によれば、変位可能プローブ34の最終的な位置決め及び移動は、コンピュータ40上のアプリケーションモジュール86を介して、アクチュエータ36とコントローラー50によって行われる。1つの実施態様によれば、コントローラー50は、変位可能プローブ34の移動を制御し、モニタリングし、かつ、(変位センサー38からの)変位可能プローブ34の変位を示すデータを、インターフェース90を介してコンピュータ40に提供するように構成されている。1つの実施形態によれば、コントローラー50は、変位可能プローブ34によって検査用サンプル31にかかる力を決定し調整するように構成されている。
【0015】
1つの実施形態によれば、コントローラー50は、MEMSヒータ100と検査用サンプル31の温度を制御し、モニタリングし、かつ、MEMSヒータ100と検査用サンプル31の温度を示すデータを、インターフェース90を介してコンピュータ40に提供するように構成されている。1つの実施形態において、コントローラー50は、検査用サンプルの検査と観察に望ましい検査用サンプル温度(及びヒータ温度)を達成するために、MEMSヒータ100及び検査用サンプル31にかかる加熱パワー6を決定し調整するように構成されている。
【0016】
操作時において、ユーザは、アプリケーションモジュール86を通してコンピュータ40によるコントローラー50のプログラミングが可能である。1つの実施形態によれば、コントローラー50は、フォースモジュール68を通して、変位可能プローブ34によって検査用サンプル31に加えるべき所望の力を示す入力またはフォース信号92をアクチュエータ36に提供する。入力されたアクチュエーションフォース信号92への応答として、アクチュエータ36は、(例えば図1のz軸に沿って)変位可能プローブ34をサンプルステージ52に向けて駆動する。変位可能プローブ34は、所望の力と接触してこれを検査用サンプル31に加える。D/A変換器70は、フォースモジュール68によって提供された入力またはフォース信号をデジタル形式からアナログ形式へと変換し、変換された入力またはフォース信号は、トランスデューサ制御回路2によって、アクチュエータ36に提供されるアクチュエーションフォース92を発生させるために増幅される。
【0017】
変位センサー38は、少なくともz軸に沿った変位可能プローブ34の移動を検出するトランスデューサ(例えば、容量型トランスデューサ)を含み、変位信号94を変位可能プローブ34の移動の測定値を示して、コントローラー50に提供する。その他の実施形式において、変位センサー38は、z軸に沿った移動に加えて、x軸及び/またはy軸に沿った変位や、x軸及び/またはy軸の回転移動などの変位可能プローブ34のその他の移動を検出し、表示する。トランスデューサ制御回路2は、変位センサー38から変位信号94を条件付けし、変位信号94をA/D変換器72へ送信する。A/D変換器72は、変位信号94をトランスデューサ制御回路2から受信したアナログ形式から、変位モジュール66によって処理するためのデジタル形式へと変換する。1つの実施形態によれば、変位モジュール66は、変位可能プローブ34の移動の測定値を(例えばフォースの計算のために)フォースモジュール68と(インターフェース90を介して)コンピュータ40へ伝達する。
【0018】
1つの実施形態によれば、さらに、コントローラー50は、例えば、サンプルステージ52に対してEMトランスデューサ32を移動させたり、EMトランスデューサに対して32サンプルステージ52を移動させたりすることによって、サンプルステージ52に対してx軸及びy軸の方向における変位可能プローブ34の移動または変位を制御するように構成される。1つの実施形態によれば、ナノ機械検査システム30は、インデンテーション、圧縮、疲労及び破壊検査などの機械検査前、検査中、検査後の検査用サンプルの画像ならびにそれらの映像を含む、サンプルステージ52に載置された検査用サンプル31の画像を提供するように構成された電子顕微鏡、光学顕微鏡、または走査プローブ顕微鏡(SPM)(例えば、原子間力顕微鏡(AFM)など)などの器具/装置を含む画像装置96をさらに含む。
【0019】
本明細書に開示した実施形態によるMEMSヒータ100を伴った構成に適したナノ機械検査システムの例としては、ともに本発明と同じ譲受人に譲渡され、参照として組み込まれている米国特許番号第5,553,486号及び米国特許番号第5,869,751号に記載がある。例えば、MEMSヒータ100を伴ううえで適した検査システムには、光学顕微鏡、走査プローブ顕微鏡(SPM)、電子顕微鏡などがあるが、これらに制限されない。これらの実施例のそれぞれにおいて、MEMSヒータ100によって現場内外での加熱が行われる。その他のMEMSヒータ100を伴う構成に適した検査システムには、米国ミネソタ州ミネアポリスのHysitron社の商品名PicoIndenterとして市販されている現場ナノ機械検査の電子顕微鏡検査(例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)及び/または走査電子顕微鏡(SEM))の検査装置がある。
【0020】
以下でより詳細に記載するが、温度が制御された機械検査の間、MEMSヒータ100は、検査用サンプル31を所望の温度で加熱し、維持するために制御される。MEMSヒータ100は、少なくともオープンループ制御かクローズドループ制御かのいずれかにより操作される。変化する熱環境において、より正確な温度調整を行うために、フィードバックとして温度信号8を利用するクローズドループ制御を使用する。サンプル温度が所望の温度に達すると、移動可能プローブ34によって検査用サンプル31へ力を加えるために、EMトランスデューサ32が作動する。1つの実施形態によれば、検査用サンプル31の温度は、MEMSヒータ100によって測定され、検査用サンプルに対して加わる力と検査用サンプル31のインデントされた材料の変位は、ナノ機械検査システム30によって測定される。ナノ機械検査システム30は、EMトランスデューサ32のアクチュエータ36及び変位センサー38を通してこれらのパラメータを測定し、一方では、画像装置96を介して同期して画像化される。力及び変位に関するデータならびに対応するインデンテーションの画像は、実質的に同時にリアルタイムで測定され、アクチュエータ36、変位センサー38、及び画像装置96(例えば、電子顕微鏡など)の組み合わせによって観察される。別の言い方をすれば、検査用サンプルの検査は、上記の測定技術及び画像技術によって、測定、画像化または加熱のプロセス間で感知できる休止なしに、特定の検査温度にて行われる。インデンテーションフォースを加えた後、経時的にインデンテーションの形状を変える、弾性/プラスチック変形などの現象は、インデンテーションの測定ならびに画像化に最小限の影響しか及ぼさない。加えて、弾性/プラスチック変形などは、インデンテーション直後から開始する期間にわたって観察可能かつ測定可能である。すなわち、MEMSヒータ100を伴うナノ機械検査システム30は、実質的に同時にインデンテーション検査を行い、インデンテーション周囲の材料を測定し、観察することができるため、材料の経時的変化がインデンテーションのとき及びその直後において同様に観察可能となる。これらのパラメータを観察すること、ならびにインデンテーションのとき及びその直後の現象を観察することは、対応する材料特定を正確に評価し、決定するうえで極めて重要となることがある。
【0021】
図2A及び図2Bは、選択した上昇温度でナノ機械検査用に指定されたMEMSヒータ100を示す。MEMSヒータ100は、上記の通り、また以下でさらに説明するように、例えば、サンプルステージ52において底部54と結合する。図2に示すように、1つの実施例において、サンプルステージ52は、底部54(すなわち、以下でさらに詳細に説明するホルダ底部)と結合して検査用サンプルホルダ55を形成するための底部インターフェース53を含む。サンプルステージ52は、検査用サンプルステージ110をさらに含む。上昇温度でナノ機械検査を行うために、MEMSヒータ100は、変位可能プローブ34と相互に作用し合うため、検査用サンプルステージ110に検査用サンプル31(図1に示す)を載置する。1つの実施例として、ステージ検査用サンプル表面201に沿って、ナノインデンテーション実験用のZ軸に垂直に位置して、薄膜の検査用サンプルがMEMSヒータ100(例えば検査用サンプルステージ110)に取り付けられる。適切にサンプルを載置するために、ステージ検査用サンプル表面201は平坦にして、Z軸に垂直とすべきである。以下でさらに詳細に説明するが、ステージ検査用サンプル表面201は、ステージプレート112と結合する。ステージプレート112は、ステージ検査用サンプル表面201を固定して機械剛性を与え、サンプルの機械検査の間のステージ検査用サンプル表面の偏向を最小限にする。
【0022】
加熱エレメント202及び感知エレメント204は、MEMSヒータ100の基板206内の薄膜レジスタである。図2Bに示すように、加熱エレメント202及び感知エレメント204は、ステージ検査用サンプル表面201と隣接する検査用サンプルステージ110上にある。別の言い方をすれば、検査用サンプルにおいて熱が生成され、温度が測定され、サンプルステージ52の多くの部分を通って検査用サンプル31に伝達されないことを確実にするために、底部54(図6B)及び底部インターフェース53に対して、加熱エレメント202及び感知エレメント204は、ステージ検査用サンプル表面201と直接隣接している。以下で説明するように、熱がサンプルステージ52を通って検査用サンプルへ伝達される距離を最小化すると、これに対応して機械的ドリフトと熱膨張が最小化する。同様に、加熱エレメント202を底部54から離して配置すると、図6Bに示すように、加熱された検査用サンプルステージ110を検査用サンプルホルダ55の残りの部分から熱的に分離し、ドリフトと膨張をさらに最小化する。図2Bを参照して、検査用サンプルステージ110上のステージ検査用サンプル表面201に隣接して、(図6Bに示す底部54と結合した)底部インターフェース53から離して加熱エレメント202を配置すると、加熱エレメントを検査用サンプルホルダ55の残りの部分から離れたところに配置することになる。
【0023】
加熱エレメント202は、電流を利用して加熱パワーを発生させることによって加熱される。感知エレメント204は、温度変化に対応する抵抗変化によって、基板206における温度を感知する。加熱エレメント202及び感知エレメント204の材料として、金属またはセラミックの薄膜が使用される。加熱エレメント202及び感知エレメント204は、薄膜リード線212、214、216及び218を使用してサンプルステージ52の底部54に接続される。薄膜リード線212、214、216及び218は、1つ以上の金属材料、セラミック材料などを含む。加熱エレメント202及び感知エレメント204が主たる抵抗源たるべきであるため、リード線212、214、216及び218は、比較的低い電気抵抗を有する。低い電気抵抗材料(例えば、金)を使用することによって、薄膜リード線212、214、216及び218は、これに対応して低い抵抗を有する。加熱リード線212、214の低い抵抗により、リード線における熱の発生が防止される。同様に、感知リード線216、218の低い抵抗により、ステージ検査用サンプル表面201及び加熱エレメント202から離れたサンプルステージ上の位置に対応した、MEMSヒータ100の測定に望ましくない抵抗値が追加されることが防止される。
【0024】
加熱制御回路4及び感知エレメント204を通る電流を制御するために、D/A変換器70によって制御電圧が提供される。加熱制御回路4は、感知エレメント204の抵抗値測定のため、DCかAC電気回路を使用する。感知エレメント204の温度変化が抵抗値の変化によって検出されるため、抵抗値の検出のため、1つの実施例において感知電気回路として、ホイーストンブリッジが使用される。
【0025】
上昇温度におけるナノ機械検査は、関連する材料(サンプルステージ52ならびに検査用サンプル31)の体積及び長さに比例して熱膨張及びドリフトを起こす。機械検査は測定された力及び変位データに依存するから、熱膨張と機械的ドリフトは、変位測定データ(及び力の計算)に望ましくない変化をもたらし、測定されたデータから計算される機械特性を歪めてしまう。熱膨張と機械的ドリフトを最小化するために、サンプルステージ52の加熱エレメント202から55の底部54にかけて、熱膨張係数が小さく、熱抵抗が大きい材料が要求される。MEMSヒータ100は、構成要素内の熱膨張とドリフトを最小化するために、加熱エレメント202から底部54(図1参照)にかけて大幅な温度低下を創出するように設計されている。加熱エレメント202から底部54にかけての温度低下をより大きくするために、MEMSヒータ100は、図2に示す例示的な形状と、本明細書にて記載する、加熱エレメント202と底部54との間の熱抵抗が大きい材料とを含む。加えて、サンプルステージ52の材料と、少なくとも支持カラム203、205は熱膨張の小さい係数を有し、これによって、サンプルステージ52内における加熱による熱ドリフトと熱膨張が最小化される。
【0026】
加熱エレメント202から底部54にかけてのMEMSヒータ100内の温度低下が大きいと、加熱された体積は、加熱エレメント202(例えば、図2Aに示すステージ検査用サンプル表面201、また、遥かに小さくなって支持カラム203、205)に近いMEMSヒータの部分にまで制限される。加熱された体積は、これによって、最小化され、関連する熱膨張とドリフトが、サンプルステージ52と底部54とを含む検査用サンプルホルダ55全体で最小化される(図1参照)。MEMSヒータ100の加熱体積を最小化すると、熱伝導、熱対流がより小さな加熱体積に制限されるため(すなわち、ステージ検査用サンプル表面201、ステージプレート112、及びさらに小さくなって、支持カラム203、205及び底部インターフェース53)、検査用サンプル31を加熱して所望の温度にするために使用される電力も最小化する。ステージ検査用サンプル表面201を含む検査用サンプルステージ110に熱を集中して適用することは、加熱過程でより少ないエネルギーしか関与しないため、熱膨張とドリフトが少なくなる。すなわち、サンプルステージ52の形状と使用される材料、及び加熱エレメント202の位置が、それぞれ単独或いは複合して、サンプルステージ内の検査用サンプルステージ110の加熱を局部的に集中させる。別の言い方をすれば、サンプルステージ52の材料と形状、及びMEMSヒータ100(例えば、支持カラム203、205)は、サンプルステージ52から検査用サンプルホルダ55のより大きな部分の構成要素への熱伝導をスロットルし(図6A、6B参照)、また、上昇した温度で、サンプルステージ52の検査用サンプルステージ110と比較して、より大きな体積と寸法のためにより大きな熱膨張と熱ドリフトが起こり得る底部インターフェース53であっても、熱伝導をスロットルし得る。
【0027】
熱抵抗を増大させ、これに対応して検査用サンプルホルダ55の熱伝達を減少させるため、サンプルステージ52は、熱伝導率が低く、断面積が最小の(Z軸に垂直で図2A、2Bに示す実施例における熱伝達の方向の)材料を含む。材料の熱抵抗は、材料の熱伝導率及び熱流束方向に垂直な断面積の大きさ(例えば、ヒータ100から底部54にかけて、支持カラム203、205に沿った熱伝達の方向)に反比例する。図2に示すMEMSヒータ100は、Z軸に垂直な断面積を減少させZ軸に沿った熱抵抗値を高めるために、検査用サンプルステージ110の面積に対して最小限の断面積を有する支持カラム203、205を有する空隙部208、210を採用する。増加した熱抵抗値は、MEMSヒータ100が作動すると、加熱エレメント202からサンプルステージ52への温度低下を増加させる。
【0028】
熱伝導率の低い材料をサンプルステージ52に使用すること、ステージ(例えば、カラムや空隙部)の形状、及びステージ検査用サンプル表面201に隣接する加熱エレメント202の位置により、検査用サンプルにおいてその加熱が行われ、最小限の熱エネルギーがサンプルステージ52の残りの部分を通って、ホルダ底部54などの検査用サンプルホルダに送られることを確実にする。熱は、ステージ検査用サンプル表面201上の検査用サンプルと隣接する検査用サンプルステージ110で発生するため、より大きな体積を有し、これに対応して大きな機械的ドリフト及び熱膨張をなし得る検査用サンプルホルダ55の部分に到達するために、熱エネルギーは検査用サンプルステージ110の熱伝導率が最小の材料と支持カラム203、205の最小の断面積を通過しなければならない。さらに、カラム203、205を通る熱伝達に対して、検査用サンプルステージ110からの最小限の放射熱のみが空隙部208、210を横断し得る。これにより、空隙部208、210は、サンプルステージ52のその他の抵抗熱伝達に関する部分と協働して検査用サンプルステージ110から熱伝達をスロットルすることができる。これらの部分は、単独または複合して検査用サンプルステージ110を熱的に分離(例えば、十分にまたは広範囲に熱的に絶縁)し、加熱エレメント202の加熱による機械的ドリフト及び熱膨張を最小化するために、ホルダ底部54及び検査用サンプルホルダ55の残りの部分に対してその中で発生した熱を実質的に収容する。最小量の熱が検査用サンプルホルダ55の部分に(実施例で以下に記載するように)伝達される。1つの実施例において、検査用サンプルステージ110が約400℃まで加熱されるのに対して、ホルダ底部54と底部インターフェース53(図2A、6B)は、約50℃以下(例えば、約20℃)である。完全な熱的分離が達成されない中で、検査用サンプルステージ110から底部インターフェース53、ホルダ底部54、検査用サンプルホルダ55の残りの部分へ伝達される熱は最小であり、これに対応して機械的ドリフト及び熱膨張も最小である。ステージ検査用サンプル表面201上のサンプル(例えばサンプル31)は、これによって、加熱時、機械検査時及び例えば透過型電気顕微鏡による観察時は、静的に保持される。別の言い方をすれば、検査用サンプルステージ110から熱的に分離された構成要素におけるドリフトと膨張は最小化されるため、機械検査される検査用サンプルの個別の部分のミクロンまたはナノメートルサイズの観察は、サンプルの残りの部分とは対照的に、検査前、検査中、検査直後において可能である。
【0029】
MEMSヒータ100は、ナノ機械検査において使用されるため、1つの実施例において、MEMSヒータ100の機械コンプライアンスは重要である。MEMSヒータ100を含むサンプルステージ52の高い剛性は(機械コンプライアンスと対照的に)サンプルステージの偏向を最小化し、これに対応して、検査用サンプル31へのプローブの真の実際の侵入深さに対する、プローブ34により測定される誤った追加的変位を最小化する。ステージプレート112は、ステージ検査用サンプル表面201を補強し、サンプルステージ52の剛性を高める。ステージプレート112を含む基板206の材料は、サンプルの機械データにコンプライアンスを追加しないよう、十分な剛性を有する。例えば、ステージプレート112と基板206は、融解石英、ゼロデュアなどの高いヤング率、曲げ弾性率などを有する材料を含む。ステージプレート112は、例えば、機械検査及び観察の間、ステージ検査用サンプル表面201の偏向を実質的に最小化するために、ステージ検査用サンプル表面201を固定する。その他の実施例においては、支持カラム203、205が、ステージ検査用サンプル表面の剛性を高めるためにステージ検査用サンプル表面201の下に位置して、これを固定する。MEMSヒータ100の剛性(最小の機械コンプライアンス)と対照的に、その他のヒータは、膜の機械偏向を許し、正確な機械検査のためヒータの使用を排除する機械コンプライアンスの高い膜構造を使用する。適宜、ステージプレート112は、サンプルステージ52の不可分一体の部分とすることができる。例えば、ステージプレート112と検査用サンプルステージ110(ステージ検査用サンプル表面201を含む)とは、一体成形の、MEMSヒータ100がその上に配置されたサンプルステージ52として形成される。別の選択肢として、ステージプレート112はサンプルステージ52と結合し、検査用サンプルステージ110とステージ検査用サンプル表面201の剛性を補う。
【0030】
MEMSヒータの重要な応用法の1つが、現場でのナノ機械検査における電子顕微鏡検査である。電子顕微鏡検査は、真空環境を利用するため、MEMSヒータは真空において脱ガスをしない真空に適合した材料から構成されるべきである。
【0031】
融解石英は、低熱膨張率、低熱伝導率、及び高真空において脱ガスしない低機械コンプライアンスを有する材料の1つの例である。融解石英は、熱膨張率4.0μm/m・K、熱伝導率1.38W/m・K、ヤング率69GPaの係数を有する。これらの熱的及び機械特性は、基板206の材料として満足な性能を提供し得る。
【0032】
4つの穴部220、222、224、226は、MEMSヒータ100と検査用サンプルホルダ55のホルダ底部54とを機械的、電気的に一体化するために設計される。穴部220、222、224、226は、MEMSヒータ100を検査用サンプルホルダ55の底部54に機械に固定するために、導電性固定具(導電性スクリュー)を受けるための大きさ、形状にて構成される。また、導電性固定具は、ヒータと感知リード線212、214、216、218とを検査用サンプルホルダ55の底部54上のコネクタに接続することによって電気接続し得る。上記の機械的及び電気的接続は、接続に最小の空間しか使用できない現場ナノ機械検査におけるTEMに有用である。
【0033】
電子顕微鏡検査は、画像化用に電子ビームを使用するため、検査用サンプル31は、電気分離をする場合は、電子を蓄積する。帯電した検査用サンプル31は、プローブ34と検査用サンプル31との間で静電気力を生じ、プローブ34が検査用サンプル31に近づくと、ジャンプ接触する原因となる。この蓄積された電子による静電気の引力は、例えばインデンテーション荷重/非荷重曲線などの測定データを歪めるため、インデンテーションなどの応用に望ましくない。検査用サンプルを電気的にアースすることによって、検査用サンプル31における電子を放電すると、現場の機械検査における電子顕微鏡検査において機械測定に関する定量的な正確さが改善する。
【0034】
図3を参照すると、放電の目的で、MEMSヒータ100の底側は導電性薄膜(例えば、金属またはセラミックの薄膜)パターン302を有する。この導電性薄膜302の層は、サンプル31上に電子を放電する(図1参照)。導電性薄膜302は、検査用サンプル31と導電性薄膜302との間に導電接着剤、エポキシ、またはペーストを使用することにより、検査用サンプル31と電気的に結合する。導電性薄膜302は、電荷蓄積、ならびに、異なる電位のために検査用サンプル31とプローブ34間で静電気の引力が働くことを防止するために、電子顕微鏡アース端子と電気的に結合する。
【0035】
1つの実施例において、検査用サンプル31は、MEMSヒータ100のステージ検査用サンプル表面201上に直接載置される。図4に示すように、TEM現場ナノ機械検査のために、検査用サンプル31は、電子ビームに曝露され、ビームは、検査用サンプル31を通って伝達される。電子ビーム404の方向に沿って薄い検査用サンプル31を作成するために、サンプルは図4に示すような、鋭いウェッジ(くさび)型のサンプルマウント402上に配置され、または取り付けられる。サンプルマウント402は、サンプル31を受けるためのウェッジ形状部分412に沿った鋭角部分410を含む第一側面408を含む。ミクロスケールまたはナノスケールの鋭角部分410を作成するためにMEMS製造工程が使用される。MEMS製造工程は、蒸着工程、集束イオンビームリソグラフィー及びフライス加工、レーザー加工、フォトリソグラフィー及びエッチング(ドライまたはウェットエッチング)などを含むが、これらに限定されない。図4に示す構成では、検査用サンプル31とサンプルマウント402が所望の温度になるまでMEMSヒータ100によって加熱される。検査用サンプルが所望の温度を達成すると、EMトランスデューサ32(図1を参照)が変位可能プローブ34を作動させてサンプル31の検査が行われる。1つの実施例において、プローブ34が検査用サンプル31のインデンテーションを行う間、機械データ及びサンプル画像が、それぞれ変位センサー38及び画像装置96によってリアルタイムで同時に記録される。
【0036】
ステージ検査用サンプル表面201は、電子ビームと平行し、サンプル31をビーム内のサンプルマウント402上に配置するため、サンプル31において電子の透過性が維持される。別の言い方をすれば、ステージ検査用サンプル表面201とサンプルマウント402とは、電子ビームの外側にあり、ビームエミッタの下側にない。これにより、電子ビームは、下側にある材料から偏向を生じさせることなくサンプル内を通過できる。さらに、サンプルステージ52は、ステージプレート112で固定されている(上記の通り、また図2A、2Bで示すように)。ステージプレート112は、ステージ検査用サンプル表面201の下側にあると同時に、電子ビームの外側にある。これにより、固定した検査用サンプルステージ110にステージ検査用サンプル表面110を提供すると同時にサンプル31の透過性が維持される。別の言い方をすれば、透過型電子顕微鏡検査は、サンプル31上で効果的に行われると同時に、機械検査(インデンテーション、破壊検査、張力検査など)も、その下側にあるステージ検査用サンプル表面201が変形をごく僅かに抑えているために、行い得る。
【0037】
図4及び5を参照して、サンプルマウント402の第二側面406は、通常は平面状でZ軸に垂直である。平面状の第二側面406は、MEMSヒータ100のステージ検査用サンプル表面201と結合する。前壁は同様に平坦で、フラッシュ結合用にZ軸に垂直である。サンプルを載置するための鋭角部分410を有する、MEMSの製造工程で製造されたシリコンウェッジ部分412を含むサンプルマウント402の1つの例を図5に示す。サンプルマウント402は、シリコンウエーハの1つの側面408上に製造されたウェッジ構造部分412を有する。平面状の第二側面406は、マウント402の別の側(例えばシリコンウエーハ)にある。サンプルマウント402の製造のため、高濃度にドープされたシリコンウエーハの使用により、サンプルマウント402が導電性になる。シリコンマウント402をTEMアース端子に接続することにより、検査用サンプル31上の電子が放電され、画像化中の静電気による引力を十分に防止する。
【0038】
MEMSヒータ100の性能を評価するために、市販の有限エレメント解析ソフトウェアCOSMOSWorks(登録商標)を用いて有限エレメント解析(FEA)を行った。シミュレーション用には、Hitachi TEM modelH800及びHF2000用のPicoIndenter600を使用した。図6A、6Bは、検査用サンプルホルダ55、シリコンウェッジ402、MEMSヒータ100及び留め具608、610、612及び614(例えば、真鍮のねじ)を使用したその連結器を含むPicoIndenterのモデルを示す。このシミュレーションのために158,989の三角形要素が生成された。図6に示す、検査したMEMSヒータ100、検査用サンプルホルダ55及びその他の構成要素が、本明細書に記載される。シリコンウェッジ402は、熱伝導率124W/m・K、比熱750J/kg・K、質量密度2330kg/m3を有する。融解石英材料は、サンプルステージ52の基板206において使用され、熱伝導率1.38W/m・K、比熱770J/kg・K、質量密度2458kg/m3を有する。留め具608、610、612及び614は、真鍮のねじであり、熱伝導率130W/m・K、比熱420J/kg・K、質量密度8260kg/m3を有する。PicoIndenter600用には、熱伝導率22W/m・K、比熱460J/kg・K、質量密度4600kg/m3を有するチタンの外管620の仕様が特定されている。検査用サンプルホルダ55の前端部606は、熱伝導率46W/m・K、比熱753J/kg・K、質量密度3960kg/m3を有する同時焼成セラミックを含む。ボールチップ604は、サファイアで構成され、熱伝導率23W/m・K、比熱761J/kg・K、質量密度3980kg/m3を有する。材料温度が上昇すると、通常、熱伝導率は、低下し、比熱は上昇する。評価の目的上、これらの性質は一定であると仮定する。温度分布、加熱時間、加熱パワーを調査するために、定常状態解析と非定常状態解析を行った。
【0039】
定常状態解析に関して、境界条件として、加熱エレメント202は、温度420℃を維持するものと仮定し、最大径を有する外管表面602とサファイアボール表面604は温度20℃を維持するものと仮定した。最大径を有する外管表面602は、TEM本体に接触させるPicoIndenterホルダ55の一部であり、熱は、この接点を通ってPicoIndenterからTEM本体へと移動する。図7は、(定常状態解析と非定常状態解析の)双方の解析に用いられる特定の点を示す。定常状態では、点A(ステージ検査用サンプル表面201)での推定温度は、398℃、点B(底部インターフェース53と前壁201との間)での推定温度は、210℃、点C(底部インターフェース53)での推定温度は、21.7℃、点Dでの推定温度は、21.6℃、点Eでの推定温度は、21.5℃であった。加熱エレメント202からホルダ底部54を含むPicoIndenterホルダ55の前端部606にかけて、大幅な温度の低下があった。上記のように、より少ない熱ドリフトで特定のサンプル温度を達成するのに必要な加熱パワーを最小化するために、大幅な温度低下が望ましい。推定温度が示すように、温度低下は、その殆どがサンプルステージ52の融解石英206で起き、検査用サンプルホルダ55のその他の構成要素(例えば、加熱すると、これに対応してより大きな熱ドリフトを伴う底部54などのより大きな構成要素)への熱伝達が最小量であったことを示している。この結果は、MEMSヒータ100を有するサンプルステージ52の同じ校正定数が、異なるPicoIndenterホルダに使用され得ることを示している。言い換えれば、加熱エレメント202(図2A、2Bを参照)のサンプルステージ52内で発生したほぼ全ての熱がサンプルステージ内で保持される(すなわち、PicoIndenterホルダに伝達されない)ため、サンプルステージは個別の校正を別途行うことなく、異なるPicoIndenterと結合するのに適している。
【0040】
非定常状態解析に関して、境界条件として、加熱エレメント202は、53mWで加熱され、図6に示す最大径を有する外管表面602とサファイアボール表面604は対流係数100W/m2・Kを有するものと仮定した。外管とサファイアボール604を通る高速の熱伝達をモデル化するために、大きめの対流係数を用いる。初期段階において、全構成要素は、20℃の温度を有するものと仮定する。非定常状態解析は、点A、B及びCにおいては20秒の増加を伴って200秒間を超えて加熱して行った(図7を参照)。図8は、200秒間における推定温度変化を示す。最初の20秒間で、点A、Bにおいて温度の急上昇があった後、熱伝達は速度を落としている。90秒間の加熱の後、点A、Bにおける温度は安定している。MEMSヒータ100は、一体化型の温度センサ(感知エレメント204)を有するため、サンプルステージ52の加熱は、クローズドループ制御スキームにて、迅速、定量的かつ正確であることが有利である。対照的に、その他の方法は、特定の電圧と光学素子で観察した温度とを関連付けて、その観察された関係を、正確性が劣り、種々の要因(サンプル材料、ステージ質量や体積の相違、校正に用いるために加熱されるサンプルなど)により引き起こされる差異の影響を受けやすい一般化された校正として用いる。
【0041】
加えて、クローズドループスキームと、一体化型センサー204とにより、最初は高めの加熱パワーが使用され、検査用サンプル31の温度が上昇するが、検査用サンプル31の温度が所望温度に近づくと(例えば420℃)、より低い加熱パワーが徐々に使用される。ここで検査データは所望温度420℃を含むが、1つの実施例において、少なくとも1100℃以上に加熱するためのMEMSヒータ100を含むサンプルステージ52が構成される。
【0042】
金属蒸着技術及びレーザー加工によりMEMSヒータ100を含むサンプルステージ52を製造した。基板206の材料として、融解石英を選択する。融解石英は、シリコンの熱伝導率よりも約100倍低い熱伝導率1.38W/m・Kを有する。また、融解石英は、MEMSヒータ100による加熱時の熱膨張とドリフトを減少させるのに役立つ低い熱膨張係数(4.0um/m・K)を有する。融解石英の高いヤング率(剛性)は、機械検査に使用するために加えられる力に対するコンプライアンスの問題を最小化し、これによって、変位測定や力の計算におけるサンプルステージ偏向の余地を軽減する。構造寸法は、MEMS製造能力に基づいて決定される。加熱エレメント202及び感知エレメント204は、プラチナ材料を含む。プラチナは、最大600℃まで劣化することなく使用され、温度と抵抗が線形関係にある。加熱エレメント202として、プラチナ薄膜は、厚さ20nmのチタン粘着層上に蒸着される。加熱エレメント202の寸法は、長さ1.5mm、幅10μm、厚さ0.15μmである。プラチナの抵抗率10.5μΩcmを考慮して、加熱エレメントの抵抗値は100Ωとして構成された。この抵抗値により、加熱エレメントは、接点やリード線などその他の抵抗ソースよりも遥かに大きな抵抗値を有し、これにより、加熱が確実に加熱エレメント202にて行われるようにし、接点やリード線の加熱を最小化する。また、ヒータ抵抗により、電流フロー26mAの電流フローの分解による70mWの生成が可能になるが、この70mWは、検査用サンプル31の温度を400℃まで上昇させるのに必要な加熱パワーである。抵抗値が接点やリード線の抵抗値に近いと、接点やリード線がサンプルステージ52のその他の部分を加熱してしまい、望ましくない。電流フロー分解能に対する幅広い加熱パワーの変化があるために、高めの抵抗値は温度分解能を低下させ得る。比較のため、TriboIndenter用に製造されたHysitron400℃加熱ステージは、750mAの電流フローと85Wの加熱パワーを使用する。
【0043】
感知エレメント204として、プラチナ薄膜は厚さ20nmのチタン粘着層上に蒸着される。感知エレメント204の寸法は長さ7.5mm、幅5μm、厚さ0.15μmである。プラチナの抵抗率を考慮して、本明細書では感知エレメント204の抵抗値は1000Ωとして構成される。センサレジスタの抵抗値は1000Ωに決定される。公称抵抗値が増加すると、温度変化に対する抵抗変化も増加する。したがって、温度センサー204の抵抗値をより高くすると、温度感知分解能が増加する。加熱エレメント及び感知エレメントからサンプルステージへ向かうリード線として、金膜がチタン粘着層上に蒸着される。図6A、6Bは、検査構造と結合した真鍮のねじの接続による製造されたサンプルステージ52と、MEMSヒータ100を示す。加熱エレメント及び感知エレメントは、サンプルステージ52のMEMSヒータ100上に形成された金のリード線と止め具(例えば、4つの真鍮のねじ)によって前端部606に電気的に接続される。また、留め具は、MEMSヒータ100と底部54のサンプルステージ52とを機械的に固定する。
【0044】
図9A、9Bにおける顕微鏡画像は、製造されたMEMSヒータ100の上面(図9A)側と底面(図9B)側とを示す。上面側の画像は、プラチナの加熱エレメント、感知エレメントならびに金のリード線のパターンを示す。金属化が良好になされている。しかしながら、設計値と測定値との間に抵抗値の相違がある。室温で測定された加熱抵抗値及び感知抵抗値は、それぞれ約250Ω、約2.5kΩである。これらの値は、設計値の約2.5倍高い。かかる相違は、駆動電気回路がこれらの抵抗値に対して調整可能なため、性能の低下をもたらさない。製造誤差は、マイクロマシン製造工程で起きる。かかる工程は、金属蒸着工程、集束イオンビームリソグラフィー及びフライス加工、レーザー加工、フォトリソグラフィー及びエッチング(ドライまたはウェットエッチング)などを含むが、これらに限定されない。MEMSヒータの壁の前側は、個別のヒータそれぞれを融解石英基板ウェーハから分離するため、ダイシングソーによって、ダイシングされる。ダイシングすることで平面状の前側壁ができる。平面状の前側壁は、シリコンウェッジをMEMSヒータ100に一貫して。取り付けるうえで不可欠である。TEM内の実験中にサンプル上に電子を放電するために、底面側のプラチナのリード線900が形成される。このリード線900は、TEMアース端子とシリコンウェッジ402とを接続する。検査用サンプル31上に電子を放電することによって、現場ナノ機械検査の電子顕微鏡検査中のプローブ34と検査用サンプル31との間の望ましくない静電気の相互作用が防止される。
【0045】
製造されたMEMSヒータ100は、450℃にて30分間アニールされる。このアニール工程が、ヒータ及びセンサーの特徴を変える金属間拡散をもたらす。作動温度よりも高温でMEMSヒータをアニールすることにより、加熱エレメント202と感知エレメント204は、作動温度範囲内(室温から400℃まで)で同じ特徴を維持し得る。アニール後、感知エレメント204は、反復可能な、線形的な温度耐性的特徴を示した。図12は、異なる温度における感知エレメント204の測定された抵抗値である。感知エレメント204の抵抗値は、20℃おきに100℃から400℃にわたって測定される。抵抗値は、測定された温度範囲内で5.6Ω/℃変化する。測定データから、感知エレメント204の熱係数は0℃における公称抵抗と比較して、1℃の温度変化につき0.217%の抵抗値の変化を示すα=0.00217℃―1と推定される。
【0046】
検査の目的で、MEMSヒータ100を含んで製造されたサンプルステージ52は、図10に示すように、エミュレートされた、PicoIndenterの前端部1000と加熱回路1002とに一体化される。留め具による結合は、ヒータ100及びサンプルステージ52を機械的に損傷せず、良好な電気接続を確実に行う。留め具と形成された金リード線(図2Bに示す)との間の接触抵抗値は、0.5Ω未満と測定される。この低い接触抵抗値は、ヒータやセンサーの抵抗値と比較してごく僅かである。低い接触抵抗値ゆえに前部1000とサンプルステージ52との接触面積は電流フローによって加熱されることなく、それゆえにセンサーの読みを歪ませない。
【0047】
図11は、顕微鏡による加熱実験画像を示す。加熱エレメントの性能を確認するために、電流フローをヒータに流す。ヒータから放たれた光は、ヒータがゆうに600℃を超えて加熱されていることを示し、加熱パワーの変化による放たれた光の強度の変化は、ヒータが適切に応答していることを示す。
【0048】
図13は、検査用サンプルホルダ1300の1つの実施例の概略図を示す。検査用サンプルホルダ1300は、検査用サンプル保持手段1304と結合したホルダ底部1302を含む。本明細書で記載するように、いくつかの実施例において、検査用サンプル保持手段1304は、サンプルステージ及び底部インターフェースを含む検査用サンプルステージを含む(図2A、2B参照)。検査用サンプル保持手段1304は、サンプル1316を透過型電子顕微鏡の電子ビーム1310内に配置するように構成された検査用サンプル表面1312を含む。図13に示すように検査用サンプル表面1312は、例えば、ウェッジ型の突起部など、サンプル1316を受ける表面突起部1314を含む。透過型電子顕微鏡に搭載される際に、保持手段1304と検査用サンプル表面1312は、サンプルを電子ビーム1310内に配置する。
【0049】
検査用サンプルホルダ1300は、加熱手段1318をさらに含む。1つの実施例において、加熱手段1318は、保持手段1304上の抵抗MEMS加熱エレメントを含む。本明細書で前述したように、加熱手段1318は、保持手段1304の一部(例えば、検査用サンプルステージ110)及びサンプル1316を、例えば400℃またはそれ以上の特定の温度に加熱する。加熱手段を有する検査用サンプルホルダ1300は、現場外、現場内での加熱、ならびに、光学、走査プローブ及び電子顕微鏡での観察による使用のために構成される。
【0050】
また、図13は、プローブ1308を有する電気機械式トランスデューサ1306を示す。電気機械式トランスデューサ1306は、検査用サンプル表面1312上でサンプル1316の機械検査と測定を行う。例えば、トランスデューサ1306は、インデンテーション、張力、圧縮、破壊、疲労、摩擦検査などを行う。
【0051】
図13に示すように、加熱手段1318は、検査用サンプル表面1312及び検査用サンプル1316と隣接して配置される。これによってサンプル1316の加熱は、かかる位置にしなかった場合のサンプル及び検査用サンプル表面1312から離れた加熱部分から伝達されるのではなく、サンプル1316において行われる。例えば、耐熱エレメントなどの加熱手段1318は、およそ0.50mmの隣接空間1320によって隔てられ、サンプル1316に隣接して位置する。その他の実施例で記載したように、また、ここで再度記載するが、加熱手段1318は、検査用サンプル保持手段1304の一部分を加熱するように構成されている。例えば、加熱手段1318は、ホルダ底部1302及びかかるホルダ底部と結合した保持手段の残りの部分と比較して、検査用サンプル保持手段1304の最小の体積を加熱するように構成されている。加熱される体積を制限することにより、加熱手段1318は、サンプル1316を載せたまま、保持手段の部分を迅速に加熱でき、より少ない加熱エネルギーの使用で足る。検査用サンプル保持手段1304のその他の部分を通る熱エネルギー伝達が最小であるために、加熱手段1318をサンプル1316と検査用サンプル表面1312双方に隣接させた状態を維持することにより、より少ないエネルギー消費で迅速な加熱が可能である。上記のように、およそ0.50mmの隣接空間1320ごとに、加熱手段1318を配置することは、加熱手段1318をサンプル1316と検査用サンプル表面1312とに隣接(例えば、直接隣接)させることになる。以下でさらに詳細に説明するが、加熱手段1318によって加熱される体積は、いくつかの実施例において、空隙部、カラム、及び検査用サンプル保持手段1304の材料などの部分によって制限される。これらの部分は、加熱手段1318によって加熱される保持手段1304の体積を実質的に制限するために、単独または組み合わせにより、検査用サンプル表面1312と隣接する加熱手段の位置と協働する。
【0052】
本明細書のその他の実施例に記載するように、検査用サンプル保持手段1304は、いくつかの実施例において、空隙部、支持部、及び、保持手段1304の残りの部分及びホルダ底部1302に対して、検査用サンプル保持手段1304の小さな体積内に熱エネルギーを収容するように構成された耐熱材料を含む。これらの部分及び材料は、本明細書に記載され、保持手段1304に適用することができる。図2A、2Bにおけるサンプルステージ52に言及すると、例えば、底部インターフェース53から検査用サンプルステージ110へと延伸する支持カラム203、205は、サンプルステージ52の第一部分(例えば、保持手段1304)から底部インターフェース53への熱伝達をスロットルする。支持カラム203、205は、検査用サンプルステージ110によって定義づけられる平面に対して平行な平面に沿った、より小さな断面積を有する。検査用サンプルステージ110に対して、支持カラム203、205内のより小さな断面積は、検査用サンプルステージ110から底部インターフェース53ならびに図6Bに示すホルダ底部54へ向かう熱伝達をスロットルする。
【0053】
加えて、図2A、2Bに示す1つまたは複数の空隙部208、210は、底部インターフェース53及び底部インターフェース53とホルダ底部54との連結点から間隔をあけて検査用サンプルステージ110を配置する。検査用サンプルホルダ55の材料を通る熱エネルギーの伝導と比較すると、空隙部208、210を横切る熱エネルギー伝達は、困難である。加えて、真空内(電子顕微鏡において一般的)での空隙部208、210を横切る伝達は、最小限の放射熱伝達によってのみ可能であり、対流を通しての比較的大きな熱伝達によってはなし得ない。これにより、空隙部208、210は、検査用サンプルステージ110から底部インターフェース53を含むサンプルステージ52の残りの部分への熱伝達をスロットルする。支持カラム203、205(及びこれらの間にある空隙部208、210)は、検査用サンプルステージ110(例えば、サンプル1316を含む検査用サンプル表面1312)をサンプルステージ52の残りの部分(検査用サンプル保持手段1304)に対して離れたところに配置する。これにより、図2A、2Bに示した空隙部208、210及び支持カラム203、205は、図13に示す保持手段1304の検査用サンプル表面1312(例えば、検査用サンプルステージ)を保持手段の残りの部分と検査用サンプルホルダ1300から熱的に分離する。
【0054】
検査用サンプルステージ110(例えば、検査用サンプル表面1312)は、検査用サンプルホルダ55の残りの部分(例えば、ホルダ1300)からは完全には熱的に分離されないが、検査用サンプルステージ110から検査用サンプルホルダ55及び底部インターフェース53への熱伝達は、ほぼ最小化される。例えば、サンプルと検査用サンプルステージ110(例えば、サンプル1316と検査用サンプル表面1312)が、約400℃またはそれ以上に加熱される1つの実施例において、ホルダ底部54に隣接するサンプルステージ52の残りの部分は約50℃またはそれ未満の温度に維持される。
【0055】
さらに、検査用サンプル保持手段1304は、検査用サンプル表面1312からホルダ底部1302及び保持手段1304の残りの部分(例えば、図2Aに示す底部インターフェース53を含む)への伝導熱の伝達を抑えるように構成された耐熱材料によって構成される。例えば、検査用サンプル保持手段1304は、融解石英によって構成される。融解石英は、熱膨張率約4.0μm/m・K、熱伝導率約1.38W/m・Kの係数を有する。この最小限の熱伝導率により、融解石英は、検査用サンプル表面1312からホルダ底部1302への熱伝達を十分に遅らせる。さらに、融解石英は、その低い熱膨張率の係数ゆえに、加熱された検査用サンプル表面1312の熱膨張を最小化する。
【0056】
直前ならびに本明細書で記載するカラム203、205、空隙部208、210ならびに検査用サンプル保持手段1304の材料を含むこれらの部分は、単体または組み合わせで動作して熱的分離を行い、これによって、検査用サンプル表面1312から検査用サンプル保持手段1304の残りの部分及びホルダ底部1302への熱伝達を遅らせる。これらの部分は、単体及び組み合わせで、比較的少量の熱エネルギーにてサンプル1316の迅速な加熱を提供するために、サンプル1316の加熱手段1318による加熱がサンプル検査用サンプル表面1312に隣接して行われることを確実にする。他の言い方をすれば、検査用サンプル表面1312とサンプル1316の熱的分離のために、加熱手段1318は、検査用サンプル表面から保持手段1304の残りの部分(例えば、図6Bに示す底部インターフェース53及びホルダ底部55を含む)への熱伝達を最小限にしつつ、検査用サンプル表面1312とサンプル1316とを十分に加熱する。
【0057】
検査用サンプル表面1312の加熱は、最小限の熱が保持手段1304の残りの部分に伝達されて検査用サンプル表面とサンプル1316においてほぼ局部的に集中するため、ホルダ底部1302ならびに検査用サンプル保持手段1304の材料の機械的ドリフト及び熱膨張は十分に最小化される。ホルダ底部1302及び検査用サンプル保持手段1304を含む材料の機械的ドリフト及び熱膨張は、加熱手段1318動作中に加熱されたそれらのエレメントの各々の材料の寸法及び体積に比例する。加熱手段1318によって加熱される体積は、検査用サンプル表面1312ならびにサンプル1316にほぼ制限されるため、これによって機械的ドリフトと熱膨張が最小化される。例えば、保持手段の耐熱材料とともに、支持カラム203、205を通り、空隙部208、210にわたる最小限の熱伝達によって保持手段の残りの部分とホルダ底部1302は最小限の加熱ですみ、したがって機械的ドリフトと熱膨張も最小限となる。その他の実施例においては、サンプル表面1312は、融解石英などの熱膨張係数の低い材料で構成される。これによって、サンプル表面1312の加熱の結果、表面の熱膨張が最小化される。
【0058】
これによって、例えば、透過型電子顕微鏡によって観察されるサンプル1316の一部分は、加熱手段1318によって加熱されている間は、実質的に静的に保持される。観察される部分を含むサンプル1316は、電気機械式トランスデューサ1306による機械検査と透過型電子顕微鏡の電子ビーム1310による観察の両方の目的のために、さらに静的に保持される。すなわち、透過型電子顕微鏡によるミクロンスケールまたはそれ未満のスケール(例えば、ナノスケール)のサンプル1316の部分の観察が、加熱時ならびに機械的変形や検査の際に、そしてそれ以後も可能である。これによって、サンプル1316を構成する材料の機械特性について、検査中のサンプルの1つの個別の部分を観察することによって、加熱前、加熱時、機械検査時及びそれらの直後における観察が可能になる。
【0059】
加えて、本明細書に記載のように、その他の実施例における検査用サンプル保持手段1304は、図2Aに示すステージプレート112などの支持部を含む。支持部は、検査用サンプル保持手段1304の検査用サンプル表面1312を固定する。支持部(例えばステージプレート112)は、検査用サンプル表面1312とサンプルとを固定し、電気機械式トランスデューサ1306による機械検査の間の検査用サンプル表面の偏向を最小化する。これによって、検査用サンプル表面の偏向による歪みを伴わずに透過型電子顕微鏡によるサンプル1316の観察と、サンプル特性の正確な評価が可能になる。
【0060】
上記のように、支持部を有する検査用サンプル表面1312は、サンプル1316の配置及び観察のための堅固な表面を提供する。サンプル1316は、検査用サンプル表面1312上にあり、表面は電子ビーム1310の外側に位置するため、サンプル1316において電子透過性が維持され、これによって、歪みを伴わないサンプル1316の観察を提供する。言い換えれば、検査用サンプル表面1312は、電気機械式トランスデューサ1306による機械検査の間、サンプル1316の電子透過性を維持しつつ、サンプル1316を支持し、表面とサンプルの偏向を最小化する。例えば、図13に示すように、サンプル1316を提示し、電子ビーム1310に向かって延伸する、表面突起部1314をもつ検査用サンプル表面1312は、電子ビーム1310と平行に配置される。サンプル1316は、表面突起部1314の縁に沿って提供されるため、検査用サンプル表面1312に対して、サンプルそのものは、電子透過性を維持するために電子ビーム1310内に配置される。
【0061】
対照的に、いくつかの実施例において、サンプルステージは、偏向可能な膜と、サンプルの下にあるワイヤを提供する。ワイヤや膜などの部分は、電子透過性を可能にするが、ナノインデンテーションなどの機械検査からの偏向を固定するには十分に堅固ではない。その他の実施例において、機械検査に対する支持が提供され得る堅固な表面上にサンプルが配置される場合、支持部が電子ビーム軸内に配置されるため、電子透過性が維持されない。本明細書に記載の検査用サンプル保持手段1304は、検査用サンプル表面1312を電子ビーム1310の外側に配置することによって、検査用サンプル表面1312(例えば、ステージプレート112)に堅固な支持部ならびに電子透過性サンプル1316を提供することにより、これらの問題解決手段を提供する。
【0062】
ところで、図14A及び14Bを参照すると、先行技術による検査用サンプルホルダ1400の1つの実施例が示されている。検査用サンプルホルダ1400は、検査用サンプルホルダ内に移動可能に配置された検査用サンプルクレードル1402を含む。検査用サンプルクレードル1402は、透過型電子顕微鏡下で観察するための検査用サンプルを受けるように構成された検査用サンプル領域1406を含む。検査用サンプル領域1406は、検査用サンプル領域1406と検査用サンプルとを加熱するように構成された加熱エレメント1404によって取り囲まれる。図示した実施例において、加熱エレメント1404は、検査用サンプルクレードル1402の周囲に延伸し、検査用サンプル領域1406を実質的に取り囲む加熱エレメントを含む。
【0063】
図14Bを参照すると、検査用サンプルクレードル1402を含む検査用サンプルホルダ1400が、断面図にて示される。加熱エレメント1404は、検査用サンプル領域1406を取り囲むために、ページ内外に、また、検査用サンプルクレードル1402の周囲に延伸する。図14Bに示すように、検査用サンプル領域1406は、離間間隔1408によって、加熱エレメント1404から間隔があけられている。1つの実施例において、加熱エレメント1404は、検査用サンプル領域1406から約1.5mmの間隔をあけて配置される。加熱エレメントは、検査用サンプル領域1406に対する電子透過性を維持するために、検査用サンプル領域1406(例えば、膜)から間隔をあけて配置される。言い換えれば、加熱エレメント1404は、透過型電子顕微鏡で検査用サンプル領域1406上の検査用サンプルを観察可能にするために検査用サンプル領域1406の周囲に間隔をあけて配置される。加熱エレメント1404が検査用サンプル領域1406から離れて配置されるため、検査用サンプル領域1406を特定温度に加熱するためには膨大な量の熱エネルギーが必要となる。さらに、加熱エレメント1404が検査用サンプル領域1406を取り囲む検査用サンプルクレードル1402内に配置されるため、検査用サンプル領域1406を特定温度に加熱するためには、加熱エレメント1404の加熱は、検査用サンプル領域1406のみならず検査用サンプルクレードル1402の残りの部分も加熱しなければならない。
【0064】
1つの実施例において、検査用サンプル領域1406内の検査用サンプルクレードル1402の加熱された体積は、図2A、2Bに示す検査用サンプルステージ110の体積よりも大きい。検査用サンプル領域1406は、検査用サンプルクレードル1402から熱的に分離されていないため、加熱エレメント1404からの熱エネルギーは、検査用サンプルクレードル1402ならびに検査用サンプル領域1406内に伝達される。これによって、いくつかの実施例において、検査用サンプル領域1406を加熱して所定の温度にするために、追加的な熱エネルギーと時間が必要になる。さらに、検査用サンプル領域1406を所望の温度に維持するために追加的な熱エネルギーが必要になる。
【0065】
図14A、14Bに示す検査用サンプルホルダ1400とは対照的に、図13に示す検査用サンプルホルダ1300は、検査用サンプル表面及びサンプル1316に隣接して配置された加熱エレメントなどの加熱手段1318を有する検査用サンプル表面1312を含む。上記のように、例えば、加熱手段1318は、隣接間隔1320によってサンプル1316に隣接して配置される。例えば、隣接間隔1320は、図14Bに示す離間間隔が約1.5mmであるのに対して約0.5mmの間隔を有する。ミクロンスケールやナノスケールでは、検査用サンプルホルダ、1300、1400内の、サンプルと加熱エレメントとの間の間隔の相違は、サンプルの温度を特定の高温へ上昇させるのに必要な熱エネルギーの量において大きな相違となる。別の言い方をすれば、隣接間隔1320は、検査用サンプルクレードル1402の離間間隔1408と比較して、加熱手段1318をサンプル1316に直接隣接させて配置する(上記の加熱の利点によって)。
【0066】
さらに、サンプルに対して加熱エレメントの間隔に相違があるために、加熱エレメント1404によって加熱される検査用サンプルクレードル1402の体積は、加熱エレメント1318によって加熱される検査用サンプル表面1312の体積よりも遥かに大きい。1つの実施例において、検査用サンプルクレードル1402の加熱される体積は、半径、深さ、円周などの寸法の3乗的な関係により指数関数的(例えば3乗)に大きくなる。別の言い方をすれば、サンプル1316に対して検査用サンプルクレードル1402の離間間隔1408が、加熱手段1318の隣接間隔1320よりも大きい場合は、検査用サンプルクレードル1402の加熱された体積は、検査用サンプル保持手段1304よりも指数関数的に大きくなり、これによって、サンプルの特定の温度を達成し、維持するために追加的な熱エネルギーを必要とする。
【0067】
1つの実施例において、検査用サンプル領域1406からの加熱エレメント1404の離間間隔1408と、これに対応する検査用サンプルクレードル1402のより大きな体積のため、検査用サンプルクレードル1402の機械的ドリフト及び熱膨張は、図13ならびに本明細書に示すサンプルステージその他の実施例に示す、対応する検査用サンプル保持手段1304のドリフト及び熱膨張よりも大きい。前述のとおり、体積のより大きな材料を加熱することは、これに対応して、図2Aに示す検査用サンプルステージ110や図13に示す検査用サンプル表面1312と同等の材料の体積など、体積のより小さなものを加熱するよりも、大きな機械的ドリフト及び熱膨張を生ぜしめる。サンプルステージの残りの部分ならびに本明細書に記載される部分(例えば支持カラム、空隙部、耐熱性材料など)を有するホルダ底部1302に対して検査用サンプル表面1312を熱的に分離することにより、対応する機械的ドリフト及び熱膨張が最小化される。別の言い方をすれば、ホルダ底部1302と検査用サンプル保持手段1304の残りの部分(例えば底部インターフェース53)とは熱的に分離されるため、検査用サンプル表面1312(検査用サンプルステージ110)内の熱の僅かな部分のみがこれらの部分に伝達される。
【0068】
前述のとおり、ホルダ底部1302と保持手段1304の残りの部分(例えば底部インターフェース53)は、検査用サンプル表面1312及びサンプル1316と比較して体積が大きい。熱的分離によりこの大きな体積が実質的に加熱されることはないため、これらの部分の機械的ドリフト及び熱膨張は最小化される。対照的に、図14A、14Bに示す検査用サンプルクレードル1402は、検査用サンプル領域1406を取り囲むリング内に加熱エレメント1404を含む。検査用サンプル領域1406を加熱することに対応して、検査用サンプルクレードル1402の全体が加熱され、検査用サンプルクレードル1402全体にわたって機械的ドリフトと熱膨張が起きる。前述のとおり、検査用サンプルホルダ1400などの検査用サンプルホルダの機械的ドリフトと熱膨張は、透過型電子顕微鏡検査で観察されるサンプルの個別部分を含むサンプルを移動させる。いくつかの実施例において、検査用サンプルクレードル1402は、クレードルの機械的ドリフトと熱膨張を最小化できないため、検査用サンプル領域1406の個別部分の一貫した観察は困難である。
【0069】
図14A、14Bを再び参照して、検査用サンプル領域1406は、検査用サンプルクレードル1402にわたって延伸する。検査用サンプル領域1406は、透過型電子顕微鏡検査の間、観察対象のサンプルを含む検査用サンプル領域内を電子が透過することを可能にする電子透過性を有する。検査用サンプル領域1406が透過性を有するため、検査用サンプル領域1406は、疲労、インデンテーション、張力、破壊検査などの機械検査に供されると、偏向し得る。これによって、例えば、電子顕微鏡検査による透過の機械検査時又はそれに近い時間の検査用サンプル領域1406上のサンプルの機械特性の観察は、サンプルの機械特性が検査用サンプル領域1406の望ましくない偏向によって歪むために困難となる。対照的に、図13に示す検査用サンプル表面1312は、電子ビーム1310の外側に位置し、サンプル1316を電子ビーム内に配置する。ステージプレート112(図2A、2Bに示す)などの堅固な支持部が、電気機械式トランスデューサ1306による検査などの機械検査の間、サンプルと検査用サンプル表面1312を固定する。サンプル1316の偏向が最小であり、機械的ドリフトと熱膨張も最小化されているため、電子ビームがサンプル1316に向かい、サンプル1316の機械特性は、加熱、機械検査の間及びその後においても容易に観察される。
【0070】
図15は、検査用サンプルのサブミクロン加熱と機械検査のための方法1500の1つの実施例を示す。方法1500の記載において本明細書で上記した部分及びエレメントについて参照がなされる。適宜、上記の参照番号が、方法1500の記載に含められる。参照は、限定を意図するものではない。例えば、単一の参照番号が付されている場合に、それは全ての同じ部分を有するもののみならず、その均等物にも参照がなされることを意味する。
【0071】
1502において、サンプルなどの検査用サンプルは、検査用サンプルステージ110のステージ検査用サンプル表面201に沿って結合される。検査用サンプルステージ110は、図6Bに示すホルダ底部54などのホルダ底部と結合される。1つの実施例において、ステージ検査用サンプル表面201に沿って検査用サンプルを結合することは、図4、図5に示すように、サンプルをサンプルマウント402上に載置することを含む。検査用サンプルステージ110は、サンプルマウント402の下にあるステージ検査用サンプル表面201を含む。その他の実施例において、ステージ検査用サンプル表面は、ステージマウント402の第一側面408、鋭角部分410及びウェッジ形状部分412を含む。別の言い方をすれば、サンプルマウント402は、検査用サンプルステージ110及びステージ検査用サンプル表面201の一部に含まれる。
【0072】
1504において、ホルダ底部54は、図1に示す電気機械式トランスデュユーサ32などのサブミクロン機械検査器具及び電気機械式トランスデューサのアセンブリ内で結合される。図4に示すように、MEMSヒータ100とサンプルマウント402を含む検査用サンプルステージは、透過型電子顕微鏡搭載時には、電気機械式トランスデューサのアセンブリ32の電子ビーム軸404の外側に位置する。検査用サンプルステージ110は、図4に示すサンプル31などのサンプルを電子ビーム(図4のビーム404を参照)内に配置する。別の言い方をすれば、検査用サンプルステージ110を含むMEMSヒータ100は、検査用サンプルステージ110がサンプル31を通って電子透過性を提供するために電子ビームの外側に配置される一方で、サンプル31を電子ビーム軸内に配置する。
【0073】
1506において、検査用サンプルが、図2Bに示す加熱エレメント202などの加熱エレメントにより、検査用サンプルに隣接する検査用サンプルステージ110で生じた熱によって特定の温度まで加熱される。1つの例において、加熱エレメント202は、検査用サンプルステージ110のステージ検査用サンプル表面201にすぐ隣接して配置される。すなわち、加熱エレメント202は、ステージ検査用サンプル表面に対して離れたところに配置されず、ステージ検査用サンプル表面ならびにステージ検査用サンプル表面に配置されるサンプルへの熱伝達は、ステージ検査用サンプル表面201を含む検査用サンプルステージ110の体積に局部的に集中する。前述のように、熱の発生を検査用サンプル表面201に隣接する領域に局部的に集中させることで、サンプルステージ52及びホルダ底部54の残りの部分材料の機械的ドリフト及び熱膨張が実質的に最小化される。
【0074】
1508において、検査用サンプルは、ミクロンまたはそれより小さなスケールで機械的に検査される。検査用サンプルの機械検査は、電気機械式トランスデューサ32による検査を含むが、これに限定されない。電気機械式トランスデューサ32による機械検査は、インデンテーション、圧縮、張力、疲労、摩擦、破壊検査などを含むが、これに限定されない。サンプルステージ52の検査用サンプルステージ110上のサンプルの検査は、本明細書において前述したように、ステージプレート112が検査用サンプルステージ110に沿って結合しているため、検査用サンプルステージ110の変位による僅かな歪みを伴って、または歪みを伴うことなく行われる。1つの実施例において、ステージプレート112は、検査用サンプルステージ110及びサンプルステージ52と一体的に形成される。ステージプレートは、検査用サンプルステージ110とその上のサンプルを電気機械式トランスデューサ32上の器具から機械検査によって引き起こされる偏向に対して固定する。これにより、検査用サンプルステージ110上の検査用サンプルの観察が、膜及びワイヤを含むその他基板上のサンプルの機械検査による歪みと比較して、検査用サンプルステージ110の偏向からの歪みを最小限に抑えて行われる。上記のように、1508にて記載した機械検査は、機械検査で生じた偏向を吸収し最小化できる堅固な検査用サンプルステージ110を変わらず提供し続けながら、電子スライドである電子ビーム軸内のサンプル上で行われる。
【0075】
1510において、検査用サンプル(例えば図4に示すサンプル31)は、加熱による熱機械的ドリフトや膨張に対して、検査用サンプルステージ110からホルダ底部54ならびに検査用サンプルステージの底部インターフェース53への熱伝達をスロットルすることにより、静的に保持される。1つの実施例において、熱伝達をスロットルすることは、検査用サンプルステージ110から、検査用サンプルステージとサンプルステージ52の残りの部分及びホルダ底部54とを結合する(図2A、2Bを参照)1または複数の支持部203、205への熱伝達をスロットルすることを含む。例えば、1または複数の支持部203、205は、検査用サンプルステージ110からホルダ底部54及び底部インターフェース53への熱伝達の方向に沿って、より小さな断面積を有する。この断面積は、同じ方向の検査用サンプルステージ断面積よりも小さい。言い換えれば、支持部は検査用サンプルステージ110より小さな断面積を有するため、支持部203、205は、サンプルステージ52の残りの部分及びホルダ底部54への熱伝導用の狭い通り道を効果的に提供する。
【0076】
別の実施例において、検査用サンプルステージ110は、ホルダ底部54の第二熱抵抗値より大きい第一熱抵抗値を有する。すなわち、検査用サンプルステージ110とサンプルステージ52の第一熱抵抗値は、ホルダ底部54の第二熱抵抗値より大きいため、検査用サンプルステージ110から支持カラム203、205ならびに底部インターフェース53への熱伝達は、ホルダ底部54に達成する前に材料によって効果的に遅延される。
【0077】
さらに別の実施例において、サンプルステージ52は、図2Aに示すように1つまたは複数の空隙部208、210を含む。空隙部208、210は、支持カラム203、205の間に形成され、検査用サンプルステージ110とサンプルステージ52の底部インターフェース53との間に間隔を提供する。空隙部208、210にわたる放射熱伝達は、伝導熱伝達と比較すると最小である。サンプルステージ52及びホルダ底部54周囲の大気が真空の場合(例えば、加熱中、検査中、及び観察中)、必ず空隙部の放射熱伝達のみが可能である一方、本明細書で記載するように支持カラム203、205の伝導熱伝達が最小化される。空隙部208、210の放射熱伝達は、支持カラム203、205を通ることが可能な既に少量の熱伝達と比較しても最小であり、検査用サンプルステージ110をサンプルステージ52の残りの部分及びホルダ底部54から熱的に分離する。
【0078】
上記のように、検査用サンプルステージ110からホルダ底部54と結合した底部インターフェース53への熱伝達をスロットルすることにより、検査用サンプルステージ110ならびに検査用サンプルステージ110上のサンプル31以外の部分の機械的ドリフト及び熱膨張が最小化される。例えば、加熱エレメントが検査用サンプルの膜に対して離れて配置される場合、加熱エレメントによる加熱は、膜周辺の検査用サンプルクレードルの体積ならびに膜自体も加熱しなければならず、検査用サンプルクレードルと膜の熱膨張及び機械的ドリフトを生ぜしめる。対照的に、サンプルステージ52の加熱エレメント202は、検査用サンプルステージ110ならびにステージ検査用サンプル表面201上のサンプルに隣接した領域(例えば、図14A、14Bに示す先行技術の検査用サンプル膜1406に対する加熱エレメント1404の離間間隔に対して直接隣接する領域)に局部集中されるので、ドリフトや熱膨張が最小化される。検査用サンプルステージ110など、サンプルステージ52の小さい部分の加熱は、対応するサンプルステージ52の残りの部分やホルダ底部54の膨大な加熱を伴うことなく行われる。検査用サンプルステージ110からの熱伝達のスロットルは、その他の構成要素の加熱を実質的に最小化し、これによってその対応する熱機械的ドリフトと膨張とが最小化する。
【0079】
1512において、検査用サンプルのパラメータは、機械検査されながら、及び検査用サンプルを静的に保持しながら、同時に測定される。言い換えれば、サンプルステージ52は、上記のように熱機械的ドリフトや熱膨張がごく僅かか、それらが無い状態で検査用サンプルステージ110上のサンプルを加熱することができるため、機械検査がサンプル上で行われ、透過型電子顕微鏡の電子ビームにより、検査前、検査中、検査直後にわたってサンプルの観察が可能である。検査用サンプルのパラメータの同時測定は、機械検査の検査前、検査中、検査直後に検査用サンプルを観察するのと実質的に同時にまたは同期して観察し、検査することを含む。検査用サンプルステージ110からの熱伝達のスロットルによる熱機械的ドリフト及び膨張が最小化されるため、検査用サンプルの部分、例えば、ミクロンまたはナノスケールの部分が加熱、検査、検査直後を通して観察される。これにより、観察が困難であった部分ならびに検査用サンプル31の特性測定が、方法1500によって観察可能となる。
【0080】
方法1500に関するいくつかの選択肢を以下で説明する。1つの実施例において、ステージ検査用サンプル表面201に沿って検査用サンプルを結合することは、検査用サンプルをサンプルマウント402などのサンプルマウントへ載置することを含む。検査用サンプルを加熱することは、サンプルマウント402全体に熱を均一に分配することを含む。例えば、サンプルマウント402がサンプルステージ52よりも大きな熱伝導率を有する材料を含む場合、サンプルマウント402に伝達される熱は、サンプルマウント全体を均一に加熱するため、直ちにサンプルマウント全体に伝達される。別の実施例において、方法1500は、検査用サンプルステージに配置されている感知エレメント204で検査用サンプルステージ110の温度を感知することを含む。図2Bに示すように、感知エレメント204は、加熱エレメント202ならびにステージ検査用サンプル表面201に隣接して配置される。これらの部分に隣接して感知エレメント204を配置することにより、感知エレメント204は、サンプル31の加熱の間、検査用サンプルステージ110の温度を正確に決定できる。さらに別の実施例において、方法1500は、検査用サンプルステージ110にある加熱エレメント202と感知エレメント204を含むクローズドまたはオープンループ制御システムによって検査用サンプルの加熱を制御することを含む。
【0081】
別の実施例において、検査用サンプルを特定温度まで加熱することは、検査用サンプルステージ110の体積と検査用サンプルのみを加熱することを含む。言い換えれば、熱伝達は、底部インターフェース53などのサンプルステージ52の残りの部分やホルダ底部54に対して効果的にスロットルされる。これにより、サンプルステージ52の残りの部分やホルダ底部54への対応する熱伝達は、サンプルステージ52の加熱が検査用サンプルステージ110の体積と検査用サンプルステージ110上の検査用サンプルに限定されて、最小化される。例えば、検査用サンプルステージ体積と検査用サンプルのみを加熱することは、検査用サンプルステージ110が約400℃以上に加熱される一方で、ホルダ底部54(ならびに底部インターフェース53とホルダ底部54との間の接点)を約50℃以下に維持することを含む。さらに別の実施例において、検査用サンプルのパラメータを同時に測定することは、例えば、透過型電子顕微鏡で、機械検査において、検査用サンプルを静的に保持して、検査用サンプルを同時に画像化することを含む。さらに別の実施例において、機械検査、検査用サンプルの静的保持、及び検査用サンプルのパラメータの同時測定は、画像装置96内に収容された画像検査用サンプルホルダ55内で行われる。検査用サンプルホルダ54の1つの例が図6B及び7に示されている。
【0082】
ここで図16A、16Bを参照すると、チップヒータアセンブリ1618を含む器具アセンブリ1600の1つの実施例が示されている。器具アセンブリ1600は、チップヒータアセンブリ1618、ダイアモンドチップなどのチップ1606、及び延長軸1608を有するチップアセンブリ1602を含む。1つの実施例において、延長軸1608は、最小の熱膨張係数と最小の熱伝導率を有する石英チップ延長軸を含むが、これに限定されない。器具アセンブリ1600は、チップアセンブリ1602(例えば、チップ1606)の動きを測定し、また、サブミクロンスケール(例えばナノスケール)で、インデンテーション、スクラッチなどの機械検査を行うように構成された2以上の蓄電板1605を含むトランスデューサのアセンブリ1604をさらに含む。別の実施例において、器具アセンブリ1600は、張力、圧縮、破壊検査などを測定するための器具を含む。トランスデューサのアセンブリ1604は、チップ1606の動きを測定し、また、機械検査(インデンテーションなど)のためにチップ1606を動かすことができる。チップアセンブリ1602は、チップアセンブリ1602とトランスデューサのアセンブリ1604との間に延伸する相互連結1607によって、トランスデューサのアセンブリ1604と結合する。1つの実施例において、相互連結1607は、MACOR(登録商標)、ZERODUR(登録商標)などの材料によって構成されるが、これらに限定されない。延長軸1608と同様に、相互連結1607は、低い熱膨張係数と最小の熱伝導率を有する材料によって構成される。走査顕微鏡、電子顕微鏡、光学顕微鏡などであるがこれらに限定されない器具と結合する大きさと形状を有するチップ底部1610(例えば、ヒートシンク)を器具アセンブリ1600はさらに含む。
【0083】
再び図16Aを参照すると、熱シールド1612の熱シールド開口部1614を通って延伸する延長軸1608が示されている。図示の如く、延長軸1608ならびに相互接続1607は、器具アセンブリ1600の熱シールド空洞部1616内に配置される。1つの実施例において、熱シールド1612は、冷却水、グリコール、アンモニアなどの冷媒流体を送るための出口及び入口を含む対流熱シールドである。別の実施例において、熱シールド1612は、低い熱膨張係数と最小の熱伝導率を有する材料から構成される。さらに別の実施例において、熱シールド1612は、チップ底部1610を形成するヒートシンクと結合されている。チップ底部は、器具アセンブリ1600から顕微鏡のような結合された器具への熱伝達を実質的に防止するために、上記同様の材料(低い熱伝導率かつ低い熱膨張係数)から構成される。熱シールド1612は、本明細書にて前述したように、チップヒータアセンブリ1618ならびにMEMSヒータ100からの対流熱伝達及び放射熱伝達を最小化する。チップヒータアセンブリ1618ならびにMEMSヒータ100からトランスデューサのアセンブリ1604を含む器具アセンブリ1600への熱伝達をスロットルすることは、トランスデューサのアセンブリ1604及び延長軸1608の熱膨張及びドリフトを実質的に最小化する。
【0084】
図16Bを参照すると、チップヒータアセンブリ1618が詳細に示されている。チップヒータアセンブリ1618は、チップ1606に直接隣接して配置される加熱エレメントとセンサーとを含む。1つの実施例において、加熱エレメントとセンサーとは熱抵抗性の加熱エレメント及び感知エレメントである。加熱エレメントとセンサーとをチップ1606の直接隣接する場所に配置すると、チップ1606の直接隣接するチップアセンブリ1602の体積に対して局部集中的な加熱がなされる。チップ1606ならびにチップヒータアセンブリ1618は、チップヒータアセンブリ1618と軸のその他の部分との間に挟まれた空隙部1620によって延長軸1608のその他の部分から隔てられている。空隙部1620は、図16Bに示すように、延長軸1608に沿ってそこからチップヒータアセンブリ1618に向かって延伸する支持カラム1621によって固定されている。センサーリード線1622と加熱エレメントリード線1624は、1つの実施例において、チップヒータアセンブリ1618と電気的に結合するために支持カラム1621を含む延長軸1608を通って延伸する。
【0085】
MEMSヒータ100と同様にして、チップヒータアセンブリ1618を含む器具アセンブリ1600は、延長軸1608及びトランスデューサのアセンブリ1604の残りの部分にわたる望ましくない大きな熱伝達を伴わずに、チップ1606を局部集中的に加熱する。チップヒータアセンブリ1618は、器具アセンブリ1600の残りの部分から離して配置され、チップ1606と直接隣接する。また、チップヒータアセンブリ1618とチップ1606とは空隙部1620及び支持カラム1621によって延長軸1608の残りの部分から隔てられるため、チップヒータアセンブリ1618からの延長軸1608の残りの部分への熱伝達は、実質的にスロットルされる。支持カラム1621は、最小の断面積を通って相互接続1607及びトランスデューサのアセンブリ1604(図16Aを参照)と結合する延長軸1608の部分への熱伝導率を最小化する。加えて、空隙部1612は、空隙部を通る熱伝導を防止し、対流熱伝達(熱伝導による熱伝達に対して最小の熱伝達の形式)と放射熱伝達のみを許容することによって熱伝達を実質的に遅延させる。器具アセンブリ1600が真空内に保持される1つの実施例において、空隙部1620は、チップヒータアセンブリ1618からの延長軸1608のその他の部分への対流熱伝達を実質的に防止し、空隙部を通る最小限の放射熱のみを伝達させる。加えて、延長軸1608は、熱膨張係数が低く最小限の熱伝導率を有する材料で構成されているため、チップヒータアセンブリ1618からの器具アセンブリの残りの部分への熱伝達は最小化され、これらの構成要素(トランスデューサのアセンブリ1604及び延長軸1608の大部分)の熱膨張と熱ドリフトは、これに対応して同様に最小化される。
【0086】
チップヒータアセンブリ1618におけるチップ1606の加熱を局部集中させることにより、延長軸全体に対して延長軸1608の小さい体積分のみが最小の加熱パワーにて加熱される。別の言い方をすれば、延長軸1608及び器具アセンブリ1600の残りの部分のより大きな体積に対して、チップヒータアセンブリ1618、チップヒータアセンブリ1618に隣接する延長軸1608の部分、及びチップ1606の小さな体積を加熱するためには最小限の力で足る。低体積と最小限の加熱パワーにより迅速な熱安定化が容易になり、機械検査及び観察の間に起きる熱ドリフトが最小化する。さらに、延長軸1608は、チップ1606をトランスデューサのアセンブリ1604ならびに器具アセンブリ1600から離して配置するため、トランスデューサのアセンブリ1604とチップ底部1610の熱ドリフトは、延長軸の材料の使用、チップアセンブリ1602や熱シールド1612の形状によって実質的に最小化される。さらに、支持カラム1621を含む軸の形状や、チップヒータアセンブリ1618を含む延長軸1608の体積は、チップ1606を支え、堅固な支持を提供し、トランスデューサからの力の伝達とチップ1606の動きの測定を正確に行うことを確実にする。
【0087】
例えば、チップヒータアセンブリ1618を含む器具アセンブリ1600が、本明細書に記載のMEMSヒータ100など、サンプル加熱ステージを有するシステムに組み込まれる1つの実施例において、チップ1606は、MEMSヒータを有し、及びサンプルをその上に載せたサンプル台の温度と同一(またはほぼ同一)の温度まで加熱される。これによって加熱されたサンプルから加熱されていないチップへの望ましくない熱伝達が実質的に防止される。言い換えれば、チップ1606の温度を実質的に均一化することで、チップ1606とサンプルとの間のサンプル及びサンプルステージ熱伝達が実質的に防止される。これに対応して、サンプルとサンプルから測定される機械特性の歪みが実質的に防止される。その他の装置において、加熱されていないチップと加熱されたサンプルとの間の接点は、加熱されたサンプルからチップへと熱伝達を行い、その結果、1つまたは複数のサンプルやチップにおける歪み(熱膨張、ドリフトなど)を生ぜしめ、チップによって収集された特性や測定に歪みを生ぜしめる。
【0088】
1つの実施例において、チップヒータアセンブリ1618は、MEMS工程を含む製造工程にて構成される。例えば、器具アセンブリ1600は、集束イオンビームリソグラフィー及びフライス加工、レーザー加工、フォトリソグラフィー及びエッチング(ドライまたはウェットエッチング)などを含むが、これらに限定されない。その他の実施例において、チップヒータアセンブリ1618を含む器具アセンブリ1600は、本明細書で前述したMEMSヒータの実施例とともに提供される。さらにその他の実施例において、器具アセンブリ1600は、本明細書に記載の加熱された検査用サンプルステージとは別個に提供される。
【0089】
(結論)
本明細書に記載し、図面で示した、MEMSヒータを含むサンプルステージは、少量の検査用サンプルを載置し、サンプルやサンプルステージ温度が上昇したときや、サンプルが材料検査用にインデントされたり圧縮されたりしたときにも実質的に静的に検査用サンプルを適切な位置に保持する。サンプルステージは、サンプルステージ加熱を検査用サンプル近傍に集中させ、ステージのその他の部分や、サンプルステージを載置する検査用サンプルホルダの加熱を阻むために、高い耐熱性と低い熱膨張係数を有する材料を含む。望ましくないサンプルステージの熱膨張とドリフトは、こうして最小化される。さらに、検査用サンプルホルダの熱膨張とドリフトは、サンプルステージから検査用サンプルホルダに向かう熱伝達がスロットルされるため、最小化される。検査用サンプルホルダは、サンプルステージよりも実質的に大きく、対応する熱伝達の阻止によって、大量の熱膨張とドリフトが防止される。同様に、検査用サンプルホルダと比較してサンプルステージは小さいため、サンプルステージに加熱が集中する結果、これに対応して熱膨張の低い係数を有する構成要素中のごく僅かなドリフトしか発生しない。
【0090】
さらに、サンプルステージ(例えば別個のステージプレートまたはサンプルステージと一体化して形成されたステージプレートを含む)は、検査に伴うインデンテーションや圧縮による偏向に対する堅固な留め具を提供し、これによって、検査用サンプルのインデンテーションとは対照的に、インデンテーションや圧縮による変位や力の測定がステージ変位による誤差を含まないようにすることができる。膜部分を含むヒータとは異なり、本明細書に記載したサンプルステージは、検査用サンプルに対して確実かつ堅固な支持を提供する。上昇温度下(約1000℃)では、サンプルステージは、検査用サンプルを留め具で留め、同ステージにおける機械コンプライアンスによって生じるナノ機械検査の変位による不正確さは実質的に皆無である。支持カラム、堅固な正面などのサンプルステージ形状は、また剛性(例えば高いヤング率、曲げ弾性率など)を有する材料と組み合わせることで、サンプルステージがMEMSヒータの作動温度範囲にわたる変位に対する抵抗力を確実に有するようにする。
【0091】
本明細書に開示した内容は、好ましい実施形態を参照して記載されたが、当業者であれば、本明細書に開示した発明の精神、範囲から逸脱することなく、その形式や詳細において変更を加え得る点について認識するであろう。上記の記載は、例示を意図したものであり、限定を意図していない点も理解されるべきである。その他の多くの実施形態も、上記の記載を読んで理解した当業者にとっては明らかであろう。本明細書の異なる部分において議論され、または異なる図面において参照された実施形態は、組み合わされて本願の追加的な実施形態を形成することができる。したがって、本明細書の開示内容は、添付の特許請求の範囲と、かかる特許請求の範囲が包含する均等物の全範囲を参照して決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、2009年11月27日に出願された、米国仮特許出願番号第61/264,753号に対し、優先権の利益を主張する。上記米国仮特許出願番号第61/264,753号の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(中小企業技術革新研究プログラムに関する陳述)
本発明は、エネルギー省により与えられた(受賞番号DE−FG02−07ER84812)政府の支援を得てなされたものである。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
本願は、サブミクロンスケールの検査に関する。
【背景技術】
【0004】
ナノインデンテーション法は、深さを感知するインデンテーション技術を利用して、材料の弾性率や硬度などの機械特性をナノメートル単位のスケールで定量的に測定する方法である。ナノインデンテーション法では、負荷力及び変位を測定可能なナノインデンターが利用されている。典型的に、ナノインデンテーション法において採用される力は、10mN未満である。典型的な変位範囲は10μmより小さく、典型的なノイズレベルは1nm rms以上である。力と変位に関するデータは、サンプルの機械特性を決定するために使用される。サンプルの特性を推定するために、ナノインデンターは既知の幾何学的特性及び既知の機械特性を有する特徴的なインデンターチップと一体化する。
【0005】
新たなナノ機械特徴技術の1つは、定量的な透過型電気顕微鏡検査(TEM)による現場での(in-situ)機械検査である。かかる検査方法により、定量的な機械データを測定しつつ、リアルタイムでのサンプルの変形のモニタリングが可能である。ナノ機械システムとTEMによる画像化とを結合すると、研究者は、構造的性質の相関関係と、既存の欠陥が材料の機械反応に与える影響とを調査することができる。画像化に加え、選択された領域の回折が、サンプルの向き及び機械反応に及ぼす負荷方向の影響を決定するために使用され得る。さらに、現場での機械検査により、変形は「事後的」ではなく、リアルタイムで視認され得る。現場でのTEMナノ機械検査を行うことにより、変位(dislocation)による破裂、相変態、せん断バンドまたは破壊の開始などを含む、力または変位の変化の多くの原因となり得る事象に対する明確な差別化が可能になる。上昇した温度下でナノ機械検査を行うことは、温度が上昇するにつれて位相変化や可変の機械特性を有する材料の材料特性の重要な部分である。高温のナノ機械検査の中には、ポリマー材料及びゴム材料のガラス転移温度の同定や、低温金属及び形状記憶合金の相変態、体温での生体サンプルの研究、仮定され、加速された熱劣化の研究、加速された材料クリープの研究、及びポリマーの時間と温度の重畳曲線プロットなどがある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、ナノ機械検査システムの1つの実施例を示すブロック図である。
【図2A】図2Aは、サンプルステージとMEMSヒータの1つの実施例を示す斜視図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示したMEMSヒータ及びサンプルステージの詳細な図である。
【図3】図3は、図2Aに示したサンプルステージ底面図を示す別の態様の斜視図である。
【図4】図4は、機械検査及び画像化のためのサンプルマウント(スライド)に載置された検査用サンプルも併せたサンプルステージ別の実施例の概略図である。
【図5】図5は、サンプルマウントを含むサンプルステージの別の態様の実施例の斜視図である。
【図6A】図6Aは、MEMSヒータ付きのサンプルステージを含む検査用サンプルホルダの1つの実施例の側面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示した検査用サンプルホルダとサンプルステージの詳細な斜視図である。
【図7】図7は、特定の点がマーク付けされた検査用サンプルホルダの別の実施例の詳細な側面図である。
【図8】図8は、図7の点A、B及びCにおける経時的な温度変化を示すグラフである。
【図9A】図9Aは、顕微鏡スケールにおけるサンプルステージのさらに別の実施例の上面図である。
【図9B】図9Bは、顕微鏡スケールにおける図9Aに示したサンプルステージの底面図である。
【図10】図10は、エミュレートされたインデンテーション器具の構成要素と結合したMEMSヒータを含むサンプルステージ斜視図である。
【図11】図11は、耐熱エレメントに電流を流したMEMSヒータ付きのサンプルステージの一連の顕微鏡写真である。
【図12】図12は、MEMSヒータをアニールしたときの異なる温度における感知エレメントの1つの実施例の抵抗測定を示すグラフである。
【図13】図13は、MEMSヒータを含むサンプルステージ付きの検査用サンプルホルダの1つの実施例の概略図である。
【図14A】図14Aは、検査用サンプル膜を含む検査用サンプルのクレードルの1つの実施例を示す先行技術に関する図である。
【図14B】図14Bは、図14Aに示す検査用サンプルのクレードルの断面図である。
【図15】図15は、サブミクロン加熱と機械検査の1つの実施例を示すブロック図である。
【図16A】図16Aは、加熱した機械検査チップアセンブリの1つの実施例を示す概略図である。
【図16B】図16Bは、図16Aにおいて示す加熱した機械検査チップアセンブリの詳細な概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0007】
以下の発明の詳細な説明において、かかる発明の詳細な説明の一部を形成し、本発明の内容が実施される具体的な実施態様の例示を示す添付の図面を参照する。この点において、「上(top)」、「底(bottom)」、「前(front)」、「後(back)」「誘導する(leading)」「追随する(trailing)」などの方向を示す用語は、記載された図面の方向を参照して使用される。本発明の実施形態の構成要素は、多くの異なる方向に配置されることができるため、方向を示す用語は、例示の目的に使用されるのであって、限定的な目的に使用されるものではない。これらの実施形態は、当業者がこの発明に開示された態様を実施可能に十分詳細に記載されており、また、その他の実施形態が利用可能な点及び本発明の開示の範囲から逸脱することなく構成上の変更がなされ得る点が理解されるべきである。したがって、以下の発明の詳細な説明は、限定的な意味に解釈されるべきではなく、また、本発明の開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるものである。
【0008】
本明細書に記載された実施形態によれば、ナノ構造や薄膜などを含むが、これらに限定されない、小さな検査用サンプルに対してナノスケール及びミクロスケール(すなわち、サブミクロンスケール)で機械検査を行うためのシステムならびに方法が提供される。1つの実施例において、かかる検査は、検査用サンプルを構成する材料の機械特性を決定するために行われる。ナノ機械検査における器具の使用に合わせてTEMホルダを変更すると、ホルダの前端部やTEM電子ビームのポールの隙間によって制限された狭小な空間しか提供されなくなる。したがって、一体化されたヒータ付きのTEM現場用ナノ機械検査器具を開発することは、新たな設計及び器具装備への取り組みを必要とし、非常に困難な課題となる。1つの実施形態によれば、本明細書において後ほど詳細に説明するが、本明細書に記載するシステムは、加熱エレメント及び感知エレメントを含むマイクロマシン加工された、またはマイクロ電気機械(MEMS)を基礎とするヒータを含む。かかるヒータは、インデントやその他の変形(例えば、インデント、スクラッチ、引っ張り、圧縮など)に対応する高精度の作動力や、少なくともナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールの高解像度を有する変位検出を提供するナノインデンターやその他の器具の使用を可能にする。
【0009】
図1は、小さな検査用サンプル31を加熱し、その温度を感知するためのMEMSを基礎とするヒータ100(以後MEMSヒータ100)を採用したナノ機械検査システム30の1つの実施例を示す概略図である。ナノ機械検査システム30(例えばサブミクロン)は、MEMSヒータ100の他に、置換可能なプローブ34を有する電気機械式(EM)トランスデューサ32、プローブ34を変位させるためのアクチュエータ36、変位センサー38、コンピュータ40、粗い位置決め装置(ポジショナー)42、精密な位置決め装置44、及びコントローラー50を含む。EMトランスデューサ32は、インデント、圧縮、張力、疲労、摩擦、破壊のための器具などを含むが、これらに限定されない。
【0010】
ナノ機械検査システム30は、サンプルステージ52を含み、底部54(ホルダ底部)を有する検査用サンプルホルダ55をさらに含む。MEMSヒータ100は、(例えば、検査用サンプルホルダ内または検査用サンプルホルダに沿った)サンプルステージ52に配置され、ホルダは、ナノ機械検査システム30に取り外し可能に取り付けられる。以下でより詳細に説明する1つの実施形態によれば、MEMSヒータ100は、例えば定量的な透過型電子顕微鏡(TEM)における現場ナノ機械検査への応用目的など、狭小な限られた空間に適合するように、マイクロマシン加工されるか、或いはMEMS加工される。
【0011】
1つの実施形態によれば、コントローラー50は、入力/出力モジュール60、トランスデューサ制御回路2、ヒータ制御回路4、例えばマイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサ(DSP)及び/またはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのプロセッサ62、及びメモリシステム64を含む。1つの実施形態によれば、メモリシステム64は、変位モジュール66、フォースモジュール68、温度感知モジュール56、及び加熱モジュール58を含む。他の実施形態によれば、入力/出力モジュール60は、さらにD/A変換器70及びA/D変換器72を含む。
【0012】
1つの実施形態において、コンピュータ40は、プロセッサ82及びアプリケーションモジュール86を格納するメモリシステム84を含む。コンピュータ40は、インターフェース90(例えばUSBインターフェースなど)を介して、コントローラー50にアクセスし、接続している。図1では、コンピュータ40とコントローラー50とを別個の構成要素として示している。その他の実施例においては、コンピュータ40とコントローラー50は、単一の処理制御システムの一部として一体化されている。
【0013】
1つの実施形態において、アプリケーションモジュール86、変位モジュール66及びフォースモジュール68は、それぞれ、メモリ64及び84のそれぞれに格納され、プロセッサ62によってアクセスされ実行され得る命令を含む。メモリ64及び84は、任意数のRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVDドライブなどの揮発性または不揮発性の記憶装置を含むが、これらに限定されない。他の実施形態において、変位モジュール66、フォースモジュール68、温度感知モジュール56、及び加熱モジュール58は、本明細書に記載される機能を果たすために構成されたハードウェア及びソフトウェア構成要素の任意の組み合わせを含む。1つの実施例において、変位モジュール66、フォースモジュール68、温度感知モジュール56、及び加熱モジュール58のソフトウェア構成要素は、メモリシステム64に格納される前に、処理システム62とは別個の媒体にそれぞれ格納される。かかる媒体の例としては、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ装置、コンパクトディスク(例えば、CD−ROM、CD−RまたはCD−RW)、デジタルビデオディスク(DVD、DVD−RまたはDVD−RW)などがある。
【0014】
1つの実施形態によれば、粗い位置決め装置42及び精密な位置決め装置44は、ミリメートル範囲において、サブナノメートル分解を伴い、EMトランスデューサ32及び変位可能プローブ34の三次元(すなわち、図1におけるx、y、z軸)での位置決めを可能にする。1つの実施形態によれば、変位可能プローブ34の最終的な位置決め及び移動は、コンピュータ40上のアプリケーションモジュール86を介して、アクチュエータ36とコントローラー50によって行われる。1つの実施態様によれば、コントローラー50は、変位可能プローブ34の移動を制御し、モニタリングし、かつ、(変位センサー38からの)変位可能プローブ34の変位を示すデータを、インターフェース90を介してコンピュータ40に提供するように構成されている。1つの実施形態によれば、コントローラー50は、変位可能プローブ34によって検査用サンプル31にかかる力を決定し調整するように構成されている。
【0015】
1つの実施形態によれば、コントローラー50は、MEMSヒータ100と検査用サンプル31の温度を制御し、モニタリングし、かつ、MEMSヒータ100と検査用サンプル31の温度を示すデータを、インターフェース90を介してコンピュータ40に提供するように構成されている。1つの実施形態において、コントローラー50は、検査用サンプルの検査と観察に望ましい検査用サンプル温度(及びヒータ温度)を達成するために、MEMSヒータ100及び検査用サンプル31にかかる加熱パワー6を決定し調整するように構成されている。
【0016】
操作時において、ユーザは、アプリケーションモジュール86を通してコンピュータ40によるコントローラー50のプログラミングが可能である。1つの実施形態によれば、コントローラー50は、フォースモジュール68を通して、変位可能プローブ34によって検査用サンプル31に加えるべき所望の力を示す入力またはフォース信号92をアクチュエータ36に提供する。入力されたアクチュエーションフォース信号92への応答として、アクチュエータ36は、(例えば図1のz軸に沿って)変位可能プローブ34をサンプルステージ52に向けて駆動する。変位可能プローブ34は、所望の力と接触してこれを検査用サンプル31に加える。D/A変換器70は、フォースモジュール68によって提供された入力またはフォース信号をデジタル形式からアナログ形式へと変換し、変換された入力またはフォース信号は、トランスデューサ制御回路2によって、アクチュエータ36に提供されるアクチュエーションフォース92を発生させるために増幅される。
【0017】
変位センサー38は、少なくともz軸に沿った変位可能プローブ34の移動を検出するトランスデューサ(例えば、容量型トランスデューサ)を含み、変位信号94を変位可能プローブ34の移動の測定値を示して、コントローラー50に提供する。その他の実施形式において、変位センサー38は、z軸に沿った移動に加えて、x軸及び/またはy軸に沿った変位や、x軸及び/またはy軸の回転移動などの変位可能プローブ34のその他の移動を検出し、表示する。トランスデューサ制御回路2は、変位センサー38から変位信号94を条件付けし、変位信号94をA/D変換器72へ送信する。A/D変換器72は、変位信号94をトランスデューサ制御回路2から受信したアナログ形式から、変位モジュール66によって処理するためのデジタル形式へと変換する。1つの実施形態によれば、変位モジュール66は、変位可能プローブ34の移動の測定値を(例えばフォースの計算のために)フォースモジュール68と(インターフェース90を介して)コンピュータ40へ伝達する。
【0018】
1つの実施形態によれば、さらに、コントローラー50は、例えば、サンプルステージ52に対してEMトランスデューサ32を移動させたり、EMトランスデューサに対して32サンプルステージ52を移動させたりすることによって、サンプルステージ52に対してx軸及びy軸の方向における変位可能プローブ34の移動または変位を制御するように構成される。1つの実施形態によれば、ナノ機械検査システム30は、インデンテーション、圧縮、疲労及び破壊検査などの機械検査前、検査中、検査後の検査用サンプルの画像ならびにそれらの映像を含む、サンプルステージ52に載置された検査用サンプル31の画像を提供するように構成された電子顕微鏡、光学顕微鏡、または走査プローブ顕微鏡(SPM)(例えば、原子間力顕微鏡(AFM)など)などの器具/装置を含む画像装置96をさらに含む。
【0019】
本明細書に開示した実施形態によるMEMSヒータ100を伴った構成に適したナノ機械検査システムの例としては、ともに本発明と同じ譲受人に譲渡され、参照として組み込まれている米国特許番号第5,553,486号及び米国特許番号第5,869,751号に記載がある。例えば、MEMSヒータ100を伴ううえで適した検査システムには、光学顕微鏡、走査プローブ顕微鏡(SPM)、電子顕微鏡などがあるが、これらに制限されない。これらの実施例のそれぞれにおいて、MEMSヒータ100によって現場内外での加熱が行われる。その他のMEMSヒータ100を伴う構成に適した検査システムには、米国ミネソタ州ミネアポリスのHysitron社の商品名PicoIndenterとして市販されている現場ナノ機械検査の電子顕微鏡検査(例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)及び/または走査電子顕微鏡(SEM))の検査装置がある。
【0020】
以下でより詳細に記載するが、温度が制御された機械検査の間、MEMSヒータ100は、検査用サンプル31を所望の温度で加熱し、維持するために制御される。MEMSヒータ100は、少なくともオープンループ制御かクローズドループ制御かのいずれかにより操作される。変化する熱環境において、より正確な温度調整を行うために、フィードバックとして温度信号8を利用するクローズドループ制御を使用する。サンプル温度が所望の温度に達すると、移動可能プローブ34によって検査用サンプル31へ力を加えるために、EMトランスデューサ32が作動する。1つの実施形態によれば、検査用サンプル31の温度は、MEMSヒータ100によって測定され、検査用サンプルに対して加わる力と検査用サンプル31のインデントされた材料の変位は、ナノ機械検査システム30によって測定される。ナノ機械検査システム30は、EMトランスデューサ32のアクチュエータ36及び変位センサー38を通してこれらのパラメータを測定し、一方では、画像装置96を介して同期して画像化される。力及び変位に関するデータならびに対応するインデンテーションの画像は、実質的に同時にリアルタイムで測定され、アクチュエータ36、変位センサー38、及び画像装置96(例えば、電子顕微鏡など)の組み合わせによって観察される。別の言い方をすれば、検査用サンプルの検査は、上記の測定技術及び画像技術によって、測定、画像化または加熱のプロセス間で感知できる休止なしに、特定の検査温度にて行われる。インデンテーションフォースを加えた後、経時的にインデンテーションの形状を変える、弾性/プラスチック変形などの現象は、インデンテーションの測定ならびに画像化に最小限の影響しか及ぼさない。加えて、弾性/プラスチック変形などは、インデンテーション直後から開始する期間にわたって観察可能かつ測定可能である。すなわち、MEMSヒータ100を伴うナノ機械検査システム30は、実質的に同時にインデンテーション検査を行い、インデンテーション周囲の材料を測定し、観察することができるため、材料の経時的変化がインデンテーションのとき及びその直後において同様に観察可能となる。これらのパラメータを観察すること、ならびにインデンテーションのとき及びその直後の現象を観察することは、対応する材料特定を正確に評価し、決定するうえで極めて重要となることがある。
【0021】
図2A及び図2Bは、選択した上昇温度でナノ機械検査用に指定されたMEMSヒータ100を示す。MEMSヒータ100は、上記の通り、また以下でさらに説明するように、例えば、サンプルステージ52において底部54と結合する。図2に示すように、1つの実施例において、サンプルステージ52は、底部54(すなわち、以下でさらに詳細に説明するホルダ底部)と結合して検査用サンプルホルダ55を形成するための底部インターフェース53を含む。サンプルステージ52は、検査用サンプルステージ110をさらに含む。上昇温度でナノ機械検査を行うために、MEMSヒータ100は、変位可能プローブ34と相互に作用し合うため、検査用サンプルステージ110に検査用サンプル31(図1に示す)を載置する。1つの実施例として、ステージ検査用サンプル表面201に沿って、ナノインデンテーション実験用のZ軸に垂直に位置して、薄膜の検査用サンプルがMEMSヒータ100(例えば検査用サンプルステージ110)に取り付けられる。適切にサンプルを載置するために、ステージ検査用サンプル表面201は平坦にして、Z軸に垂直とすべきである。以下でさらに詳細に説明するが、ステージ検査用サンプル表面201は、ステージプレート112と結合する。ステージプレート112は、ステージ検査用サンプル表面201を固定して機械剛性を与え、サンプルの機械検査の間のステージ検査用サンプル表面の偏向を最小限にする。
【0022】
加熱エレメント202及び感知エレメント204は、MEMSヒータ100の基板206内の薄膜レジスタである。図2Bに示すように、加熱エレメント202及び感知エレメント204は、ステージ検査用サンプル表面201と隣接する検査用サンプルステージ110上にある。別の言い方をすれば、検査用サンプルにおいて熱が生成され、温度が測定され、サンプルステージ52の多くの部分を通って検査用サンプル31に伝達されないことを確実にするために、底部54(図6B)及び底部インターフェース53に対して、加熱エレメント202及び感知エレメント204は、ステージ検査用サンプル表面201と直接隣接している。以下で説明するように、熱がサンプルステージ52を通って検査用サンプルへ伝達される距離を最小化すると、これに対応して機械的ドリフトと熱膨張が最小化する。同様に、加熱エレメント202を底部54から離して配置すると、図6Bに示すように、加熱された検査用サンプルステージ110を検査用サンプルホルダ55の残りの部分から熱的に分離し、ドリフトと膨張をさらに最小化する。図2Bを参照して、検査用サンプルステージ110上のステージ検査用サンプル表面201に隣接して、(図6Bに示す底部54と結合した)底部インターフェース53から離して加熱エレメント202を配置すると、加熱エレメントを検査用サンプルホルダ55の残りの部分から離れたところに配置することになる。
【0023】
加熱エレメント202は、電流を利用して加熱パワーを発生させることによって加熱される。感知エレメント204は、温度変化に対応する抵抗変化によって、基板206における温度を感知する。加熱エレメント202及び感知エレメント204の材料として、金属またはセラミックの薄膜が使用される。加熱エレメント202及び感知エレメント204は、薄膜リード線212、214、216及び218を使用してサンプルステージ52の底部54に接続される。薄膜リード線212、214、216及び218は、1つ以上の金属材料、セラミック材料などを含む。加熱エレメント202及び感知エレメント204が主たる抵抗源たるべきであるため、リード線212、214、216及び218は、比較的低い電気抵抗を有する。低い電気抵抗材料(例えば、金)を使用することによって、薄膜リード線212、214、216及び218は、これに対応して低い抵抗を有する。加熱リード線212、214の低い抵抗により、リード線における熱の発生が防止される。同様に、感知リード線216、218の低い抵抗により、ステージ検査用サンプル表面201及び加熱エレメント202から離れたサンプルステージ上の位置に対応した、MEMSヒータ100の測定に望ましくない抵抗値が追加されることが防止される。
【0024】
加熱制御回路4及び感知エレメント204を通る電流を制御するために、D/A変換器70によって制御電圧が提供される。加熱制御回路4は、感知エレメント204の抵抗値測定のため、DCかAC電気回路を使用する。感知エレメント204の温度変化が抵抗値の変化によって検出されるため、抵抗値の検出のため、1つの実施例において感知電気回路として、ホイーストンブリッジが使用される。
【0025】
上昇温度におけるナノ機械検査は、関連する材料(サンプルステージ52ならびに検査用サンプル31)の体積及び長さに比例して熱膨張及びドリフトを起こす。機械検査は測定された力及び変位データに依存するから、熱膨張と機械的ドリフトは、変位測定データ(及び力の計算)に望ましくない変化をもたらし、測定されたデータから計算される機械特性を歪めてしまう。熱膨張と機械的ドリフトを最小化するために、サンプルステージ52の加熱エレメント202から55の底部54にかけて、熱膨張係数が小さく、熱抵抗が大きい材料が要求される。MEMSヒータ100は、構成要素内の熱膨張とドリフトを最小化するために、加熱エレメント202から底部54(図1参照)にかけて大幅な温度低下を創出するように設計されている。加熱エレメント202から底部54にかけての温度低下をより大きくするために、MEMSヒータ100は、図2に示す例示的な形状と、本明細書にて記載する、加熱エレメント202と底部54との間の熱抵抗が大きい材料とを含む。加えて、サンプルステージ52の材料と、少なくとも支持カラム203、205は熱膨張の小さい係数を有し、これによって、サンプルステージ52内における加熱による熱ドリフトと熱膨張が最小化される。
【0026】
加熱エレメント202から底部54にかけてのMEMSヒータ100内の温度低下が大きいと、加熱された体積は、加熱エレメント202(例えば、図2Aに示すステージ検査用サンプル表面201、また、遥かに小さくなって支持カラム203、205)に近いMEMSヒータの部分にまで制限される。加熱された体積は、これによって、最小化され、関連する熱膨張とドリフトが、サンプルステージ52と底部54とを含む検査用サンプルホルダ55全体で最小化される(図1参照)。MEMSヒータ100の加熱体積を最小化すると、熱伝導、熱対流がより小さな加熱体積に制限されるため(すなわち、ステージ検査用サンプル表面201、ステージプレート112、及びさらに小さくなって、支持カラム203、205及び底部インターフェース53)、検査用サンプル31を加熱して所望の温度にするために使用される電力も最小化する。ステージ検査用サンプル表面201を含む検査用サンプルステージ110に熱を集中して適用することは、加熱過程でより少ないエネルギーしか関与しないため、熱膨張とドリフトが少なくなる。すなわち、サンプルステージ52の形状と使用される材料、及び加熱エレメント202の位置が、それぞれ単独或いは複合して、サンプルステージ内の検査用サンプルステージ110の加熱を局部的に集中させる。別の言い方をすれば、サンプルステージ52の材料と形状、及びMEMSヒータ100(例えば、支持カラム203、205)は、サンプルステージ52から検査用サンプルホルダ55のより大きな部分の構成要素への熱伝導をスロットルし(図6A、6B参照)、また、上昇した温度で、サンプルステージ52の検査用サンプルステージ110と比較して、より大きな体積と寸法のためにより大きな熱膨張と熱ドリフトが起こり得る底部インターフェース53であっても、熱伝導をスロットルし得る。
【0027】
熱抵抗を増大させ、これに対応して検査用サンプルホルダ55の熱伝達を減少させるため、サンプルステージ52は、熱伝導率が低く、断面積が最小の(Z軸に垂直で図2A、2Bに示す実施例における熱伝達の方向の)材料を含む。材料の熱抵抗は、材料の熱伝導率及び熱流束方向に垂直な断面積の大きさ(例えば、ヒータ100から底部54にかけて、支持カラム203、205に沿った熱伝達の方向)に反比例する。図2に示すMEMSヒータ100は、Z軸に垂直な断面積を減少させZ軸に沿った熱抵抗値を高めるために、検査用サンプルステージ110の面積に対して最小限の断面積を有する支持カラム203、205を有する空隙部208、210を採用する。増加した熱抵抗値は、MEMSヒータ100が作動すると、加熱エレメント202からサンプルステージ52への温度低下を増加させる。
【0028】
熱伝導率の低い材料をサンプルステージ52に使用すること、ステージ(例えば、カラムや空隙部)の形状、及びステージ検査用サンプル表面201に隣接する加熱エレメント202の位置により、検査用サンプルにおいてその加熱が行われ、最小限の熱エネルギーがサンプルステージ52の残りの部分を通って、ホルダ底部54などの検査用サンプルホルダに送られることを確実にする。熱は、ステージ検査用サンプル表面201上の検査用サンプルと隣接する検査用サンプルステージ110で発生するため、より大きな体積を有し、これに対応して大きな機械的ドリフト及び熱膨張をなし得る検査用サンプルホルダ55の部分に到達するために、熱エネルギーは検査用サンプルステージ110の熱伝導率が最小の材料と支持カラム203、205の最小の断面積を通過しなければならない。さらに、カラム203、205を通る熱伝達に対して、検査用サンプルステージ110からの最小限の放射熱のみが空隙部208、210を横断し得る。これにより、空隙部208、210は、サンプルステージ52のその他の抵抗熱伝達に関する部分と協働して検査用サンプルステージ110から熱伝達をスロットルすることができる。これらの部分は、単独または複合して検査用サンプルステージ110を熱的に分離(例えば、十分にまたは広範囲に熱的に絶縁)し、加熱エレメント202の加熱による機械的ドリフト及び熱膨張を最小化するために、ホルダ底部54及び検査用サンプルホルダ55の残りの部分に対してその中で発生した熱を実質的に収容する。最小量の熱が検査用サンプルホルダ55の部分に(実施例で以下に記載するように)伝達される。1つの実施例において、検査用サンプルステージ110が約400℃まで加熱されるのに対して、ホルダ底部54と底部インターフェース53(図2A、6B)は、約50℃以下(例えば、約20℃)である。完全な熱的分離が達成されない中で、検査用サンプルステージ110から底部インターフェース53、ホルダ底部54、検査用サンプルホルダ55の残りの部分へ伝達される熱は最小であり、これに対応して機械的ドリフト及び熱膨張も最小である。ステージ検査用サンプル表面201上のサンプル(例えばサンプル31)は、これによって、加熱時、機械検査時及び例えば透過型電気顕微鏡による観察時は、静的に保持される。別の言い方をすれば、検査用サンプルステージ110から熱的に分離された構成要素におけるドリフトと膨張は最小化されるため、機械検査される検査用サンプルの個別の部分のミクロンまたはナノメートルサイズの観察は、サンプルの残りの部分とは対照的に、検査前、検査中、検査直後において可能である。
【0029】
MEMSヒータ100は、ナノ機械検査において使用されるため、1つの実施例において、MEMSヒータ100の機械コンプライアンスは重要である。MEMSヒータ100を含むサンプルステージ52の高い剛性は(機械コンプライアンスと対照的に)サンプルステージの偏向を最小化し、これに対応して、検査用サンプル31へのプローブの真の実際の侵入深さに対する、プローブ34により測定される誤った追加的変位を最小化する。ステージプレート112は、ステージ検査用サンプル表面201を補強し、サンプルステージ52の剛性を高める。ステージプレート112を含む基板206の材料は、サンプルの機械データにコンプライアンスを追加しないよう、十分な剛性を有する。例えば、ステージプレート112と基板206は、融解石英、ゼロデュアなどの高いヤング率、曲げ弾性率などを有する材料を含む。ステージプレート112は、例えば、機械検査及び観察の間、ステージ検査用サンプル表面201の偏向を実質的に最小化するために、ステージ検査用サンプル表面201を固定する。その他の実施例においては、支持カラム203、205が、ステージ検査用サンプル表面の剛性を高めるためにステージ検査用サンプル表面201の下に位置して、これを固定する。MEMSヒータ100の剛性(最小の機械コンプライアンス)と対照的に、その他のヒータは、膜の機械偏向を許し、正確な機械検査のためヒータの使用を排除する機械コンプライアンスの高い膜構造を使用する。適宜、ステージプレート112は、サンプルステージ52の不可分一体の部分とすることができる。例えば、ステージプレート112と検査用サンプルステージ110(ステージ検査用サンプル表面201を含む)とは、一体成形の、MEMSヒータ100がその上に配置されたサンプルステージ52として形成される。別の選択肢として、ステージプレート112はサンプルステージ52と結合し、検査用サンプルステージ110とステージ検査用サンプル表面201の剛性を補う。
【0030】
MEMSヒータの重要な応用法の1つが、現場でのナノ機械検査における電子顕微鏡検査である。電子顕微鏡検査は、真空環境を利用するため、MEMSヒータは真空において脱ガスをしない真空に適合した材料から構成されるべきである。
【0031】
融解石英は、低熱膨張率、低熱伝導率、及び高真空において脱ガスしない低機械コンプライアンスを有する材料の1つの例である。融解石英は、熱膨張率4.0μm/m・K、熱伝導率1.38W/m・K、ヤング率69GPaの係数を有する。これらの熱的及び機械特性は、基板206の材料として満足な性能を提供し得る。
【0032】
4つの穴部220、222、224、226は、MEMSヒータ100と検査用サンプルホルダ55のホルダ底部54とを機械的、電気的に一体化するために設計される。穴部220、222、224、226は、MEMSヒータ100を検査用サンプルホルダ55の底部54に機械に固定するために、導電性固定具(導電性スクリュー)を受けるための大きさ、形状にて構成される。また、導電性固定具は、ヒータと感知リード線212、214、216、218とを検査用サンプルホルダ55の底部54上のコネクタに接続することによって電気接続し得る。上記の機械的及び電気的接続は、接続に最小の空間しか使用できない現場ナノ機械検査におけるTEMに有用である。
【0033】
電子顕微鏡検査は、画像化用に電子ビームを使用するため、検査用サンプル31は、電気分離をする場合は、電子を蓄積する。帯電した検査用サンプル31は、プローブ34と検査用サンプル31との間で静電気力を生じ、プローブ34が検査用サンプル31に近づくと、ジャンプ接触する原因となる。この蓄積された電子による静電気の引力は、例えばインデンテーション荷重/非荷重曲線などの測定データを歪めるため、インデンテーションなどの応用に望ましくない。検査用サンプルを電気的にアースすることによって、検査用サンプル31における電子を放電すると、現場の機械検査における電子顕微鏡検査において機械測定に関する定量的な正確さが改善する。
【0034】
図3を参照すると、放電の目的で、MEMSヒータ100の底側は導電性薄膜(例えば、金属またはセラミックの薄膜)パターン302を有する。この導電性薄膜302の層は、サンプル31上に電子を放電する(図1参照)。導電性薄膜302は、検査用サンプル31と導電性薄膜302との間に導電接着剤、エポキシ、またはペーストを使用することにより、検査用サンプル31と電気的に結合する。導電性薄膜302は、電荷蓄積、ならびに、異なる電位のために検査用サンプル31とプローブ34間で静電気の引力が働くことを防止するために、電子顕微鏡アース端子と電気的に結合する。
【0035】
1つの実施例において、検査用サンプル31は、MEMSヒータ100のステージ検査用サンプル表面201上に直接載置される。図4に示すように、TEM現場ナノ機械検査のために、検査用サンプル31は、電子ビームに曝露され、ビームは、検査用サンプル31を通って伝達される。電子ビーム404の方向に沿って薄い検査用サンプル31を作成するために、サンプルは図4に示すような、鋭いウェッジ(くさび)型のサンプルマウント402上に配置され、または取り付けられる。サンプルマウント402は、サンプル31を受けるためのウェッジ形状部分412に沿った鋭角部分410を含む第一側面408を含む。ミクロスケールまたはナノスケールの鋭角部分410を作成するためにMEMS製造工程が使用される。MEMS製造工程は、蒸着工程、集束イオンビームリソグラフィー及びフライス加工、レーザー加工、フォトリソグラフィー及びエッチング(ドライまたはウェットエッチング)などを含むが、これらに限定されない。図4に示す構成では、検査用サンプル31とサンプルマウント402が所望の温度になるまでMEMSヒータ100によって加熱される。検査用サンプルが所望の温度を達成すると、EMトランスデューサ32(図1を参照)が変位可能プローブ34を作動させてサンプル31の検査が行われる。1つの実施例において、プローブ34が検査用サンプル31のインデンテーションを行う間、機械データ及びサンプル画像が、それぞれ変位センサー38及び画像装置96によってリアルタイムで同時に記録される。
【0036】
ステージ検査用サンプル表面201は、電子ビームと平行し、サンプル31をビーム内のサンプルマウント402上に配置するため、サンプル31において電子の透過性が維持される。別の言い方をすれば、ステージ検査用サンプル表面201とサンプルマウント402とは、電子ビームの外側にあり、ビームエミッタの下側にない。これにより、電子ビームは、下側にある材料から偏向を生じさせることなくサンプル内を通過できる。さらに、サンプルステージ52は、ステージプレート112で固定されている(上記の通り、また図2A、2Bで示すように)。ステージプレート112は、ステージ検査用サンプル表面201の下側にあると同時に、電子ビームの外側にある。これにより、固定した検査用サンプルステージ110にステージ検査用サンプル表面110を提供すると同時にサンプル31の透過性が維持される。別の言い方をすれば、透過型電子顕微鏡検査は、サンプル31上で効果的に行われると同時に、機械検査(インデンテーション、破壊検査、張力検査など)も、その下側にあるステージ検査用サンプル表面201が変形をごく僅かに抑えているために、行い得る。
【0037】
図4及び5を参照して、サンプルマウント402の第二側面406は、通常は平面状でZ軸に垂直である。平面状の第二側面406は、MEMSヒータ100のステージ検査用サンプル表面201と結合する。前壁は同様に平坦で、フラッシュ結合用にZ軸に垂直である。サンプルを載置するための鋭角部分410を有する、MEMSの製造工程で製造されたシリコンウェッジ部分412を含むサンプルマウント402の1つの例を図5に示す。サンプルマウント402は、シリコンウエーハの1つの側面408上に製造されたウェッジ構造部分412を有する。平面状の第二側面406は、マウント402の別の側(例えばシリコンウエーハ)にある。サンプルマウント402の製造のため、高濃度にドープされたシリコンウエーハの使用により、サンプルマウント402が導電性になる。シリコンマウント402をTEMアース端子に接続することにより、検査用サンプル31上の電子が放電され、画像化中の静電気による引力を十分に防止する。
【0038】
MEMSヒータ100の性能を評価するために、市販の有限エレメント解析ソフトウェアCOSMOSWorks(登録商標)を用いて有限エレメント解析(FEA)を行った。シミュレーション用には、Hitachi TEM modelH800及びHF2000用のPicoIndenter600を使用した。図6A、6Bは、検査用サンプルホルダ55、シリコンウェッジ402、MEMSヒータ100及び留め具608、610、612及び614(例えば、真鍮のねじ)を使用したその連結器を含むPicoIndenterのモデルを示す。このシミュレーションのために158,989の三角形要素が生成された。図6に示す、検査したMEMSヒータ100、検査用サンプルホルダ55及びその他の構成要素が、本明細書に記載される。シリコンウェッジ402は、熱伝導率124W/m・K、比熱750J/kg・K、質量密度2330kg/m3を有する。融解石英材料は、サンプルステージ52の基板206において使用され、熱伝導率1.38W/m・K、比熱770J/kg・K、質量密度2458kg/m3を有する。留め具608、610、612及び614は、真鍮のねじであり、熱伝導率130W/m・K、比熱420J/kg・K、質量密度8260kg/m3を有する。PicoIndenter600用には、熱伝導率22W/m・K、比熱460J/kg・K、質量密度4600kg/m3を有するチタンの外管620の仕様が特定されている。検査用サンプルホルダ55の前端部606は、熱伝導率46W/m・K、比熱753J/kg・K、質量密度3960kg/m3を有する同時焼成セラミックを含む。ボールチップ604は、サファイアで構成され、熱伝導率23W/m・K、比熱761J/kg・K、質量密度3980kg/m3を有する。材料温度が上昇すると、通常、熱伝導率は、低下し、比熱は上昇する。評価の目的上、これらの性質は一定であると仮定する。温度分布、加熱時間、加熱パワーを調査するために、定常状態解析と非定常状態解析を行った。
【0039】
定常状態解析に関して、境界条件として、加熱エレメント202は、温度420℃を維持するものと仮定し、最大径を有する外管表面602とサファイアボール表面604は温度20℃を維持するものと仮定した。最大径を有する外管表面602は、TEM本体に接触させるPicoIndenterホルダ55の一部であり、熱は、この接点を通ってPicoIndenterからTEM本体へと移動する。図7は、(定常状態解析と非定常状態解析の)双方の解析に用いられる特定の点を示す。定常状態では、点A(ステージ検査用サンプル表面201)での推定温度は、398℃、点B(底部インターフェース53と前壁201との間)での推定温度は、210℃、点C(底部インターフェース53)での推定温度は、21.7℃、点Dでの推定温度は、21.6℃、点Eでの推定温度は、21.5℃であった。加熱エレメント202からホルダ底部54を含むPicoIndenterホルダ55の前端部606にかけて、大幅な温度の低下があった。上記のように、より少ない熱ドリフトで特定のサンプル温度を達成するのに必要な加熱パワーを最小化するために、大幅な温度低下が望ましい。推定温度が示すように、温度低下は、その殆どがサンプルステージ52の融解石英206で起き、検査用サンプルホルダ55のその他の構成要素(例えば、加熱すると、これに対応してより大きな熱ドリフトを伴う底部54などのより大きな構成要素)への熱伝達が最小量であったことを示している。この結果は、MEMSヒータ100を有するサンプルステージ52の同じ校正定数が、異なるPicoIndenterホルダに使用され得ることを示している。言い換えれば、加熱エレメント202(図2A、2Bを参照)のサンプルステージ52内で発生したほぼ全ての熱がサンプルステージ内で保持される(すなわち、PicoIndenterホルダに伝達されない)ため、サンプルステージは個別の校正を別途行うことなく、異なるPicoIndenterと結合するのに適している。
【0040】
非定常状態解析に関して、境界条件として、加熱エレメント202は、53mWで加熱され、図6に示す最大径を有する外管表面602とサファイアボール表面604は対流係数100W/m2・Kを有するものと仮定した。外管とサファイアボール604を通る高速の熱伝達をモデル化するために、大きめの対流係数を用いる。初期段階において、全構成要素は、20℃の温度を有するものと仮定する。非定常状態解析は、点A、B及びCにおいては20秒の増加を伴って200秒間を超えて加熱して行った(図7を参照)。図8は、200秒間における推定温度変化を示す。最初の20秒間で、点A、Bにおいて温度の急上昇があった後、熱伝達は速度を落としている。90秒間の加熱の後、点A、Bにおける温度は安定している。MEMSヒータ100は、一体化型の温度センサ(感知エレメント204)を有するため、サンプルステージ52の加熱は、クローズドループ制御スキームにて、迅速、定量的かつ正確であることが有利である。対照的に、その他の方法は、特定の電圧と光学素子で観察した温度とを関連付けて、その観察された関係を、正確性が劣り、種々の要因(サンプル材料、ステージ質量や体積の相違、校正に用いるために加熱されるサンプルなど)により引き起こされる差異の影響を受けやすい一般化された校正として用いる。
【0041】
加えて、クローズドループスキームと、一体化型センサー204とにより、最初は高めの加熱パワーが使用され、検査用サンプル31の温度が上昇するが、検査用サンプル31の温度が所望温度に近づくと(例えば420℃)、より低い加熱パワーが徐々に使用される。ここで検査データは所望温度420℃を含むが、1つの実施例において、少なくとも1100℃以上に加熱するためのMEMSヒータ100を含むサンプルステージ52が構成される。
【0042】
金属蒸着技術及びレーザー加工によりMEMSヒータ100を含むサンプルステージ52を製造した。基板206の材料として、融解石英を選択する。融解石英は、シリコンの熱伝導率よりも約100倍低い熱伝導率1.38W/m・Kを有する。また、融解石英は、MEMSヒータ100による加熱時の熱膨張とドリフトを減少させるのに役立つ低い熱膨張係数(4.0um/m・K)を有する。融解石英の高いヤング率(剛性)は、機械検査に使用するために加えられる力に対するコンプライアンスの問題を最小化し、これによって、変位測定や力の計算におけるサンプルステージ偏向の余地を軽減する。構造寸法は、MEMS製造能力に基づいて決定される。加熱エレメント202及び感知エレメント204は、プラチナ材料を含む。プラチナは、最大600℃まで劣化することなく使用され、温度と抵抗が線形関係にある。加熱エレメント202として、プラチナ薄膜は、厚さ20nmのチタン粘着層上に蒸着される。加熱エレメント202の寸法は、長さ1.5mm、幅10μm、厚さ0.15μmである。プラチナの抵抗率10.5μΩcmを考慮して、加熱エレメントの抵抗値は100Ωとして構成された。この抵抗値により、加熱エレメントは、接点やリード線などその他の抵抗ソースよりも遥かに大きな抵抗値を有し、これにより、加熱が確実に加熱エレメント202にて行われるようにし、接点やリード線の加熱を最小化する。また、ヒータ抵抗により、電流フロー26mAの電流フローの分解による70mWの生成が可能になるが、この70mWは、検査用サンプル31の温度を400℃まで上昇させるのに必要な加熱パワーである。抵抗値が接点やリード線の抵抗値に近いと、接点やリード線がサンプルステージ52のその他の部分を加熱してしまい、望ましくない。電流フロー分解能に対する幅広い加熱パワーの変化があるために、高めの抵抗値は温度分解能を低下させ得る。比較のため、TriboIndenter用に製造されたHysitron400℃加熱ステージは、750mAの電流フローと85Wの加熱パワーを使用する。
【0043】
感知エレメント204として、プラチナ薄膜は厚さ20nmのチタン粘着層上に蒸着される。感知エレメント204の寸法は長さ7.5mm、幅5μm、厚さ0.15μmである。プラチナの抵抗率を考慮して、本明細書では感知エレメント204の抵抗値は1000Ωとして構成される。センサレジスタの抵抗値は1000Ωに決定される。公称抵抗値が増加すると、温度変化に対する抵抗変化も増加する。したがって、温度センサー204の抵抗値をより高くすると、温度感知分解能が増加する。加熱エレメント及び感知エレメントからサンプルステージへ向かうリード線として、金膜がチタン粘着層上に蒸着される。図6A、6Bは、検査構造と結合した真鍮のねじの接続による製造されたサンプルステージ52と、MEMSヒータ100を示す。加熱エレメント及び感知エレメントは、サンプルステージ52のMEMSヒータ100上に形成された金のリード線と止め具(例えば、4つの真鍮のねじ)によって前端部606に電気的に接続される。また、留め具は、MEMSヒータ100と底部54のサンプルステージ52とを機械的に固定する。
【0044】
図9A、9Bにおける顕微鏡画像は、製造されたMEMSヒータ100の上面(図9A)側と底面(図9B)側とを示す。上面側の画像は、プラチナの加熱エレメント、感知エレメントならびに金のリード線のパターンを示す。金属化が良好になされている。しかしながら、設計値と測定値との間に抵抗値の相違がある。室温で測定された加熱抵抗値及び感知抵抗値は、それぞれ約250Ω、約2.5kΩである。これらの値は、設計値の約2.5倍高い。かかる相違は、駆動電気回路がこれらの抵抗値に対して調整可能なため、性能の低下をもたらさない。製造誤差は、マイクロマシン製造工程で起きる。かかる工程は、金属蒸着工程、集束イオンビームリソグラフィー及びフライス加工、レーザー加工、フォトリソグラフィー及びエッチング(ドライまたはウェットエッチング)などを含むが、これらに限定されない。MEMSヒータの壁の前側は、個別のヒータそれぞれを融解石英基板ウェーハから分離するため、ダイシングソーによって、ダイシングされる。ダイシングすることで平面状の前側壁ができる。平面状の前側壁は、シリコンウェッジをMEMSヒータ100に一貫して。取り付けるうえで不可欠である。TEM内の実験中にサンプル上に電子を放電するために、底面側のプラチナのリード線900が形成される。このリード線900は、TEMアース端子とシリコンウェッジ402とを接続する。検査用サンプル31上に電子を放電することによって、現場ナノ機械検査の電子顕微鏡検査中のプローブ34と検査用サンプル31との間の望ましくない静電気の相互作用が防止される。
【0045】
製造されたMEMSヒータ100は、450℃にて30分間アニールされる。このアニール工程が、ヒータ及びセンサーの特徴を変える金属間拡散をもたらす。作動温度よりも高温でMEMSヒータをアニールすることにより、加熱エレメント202と感知エレメント204は、作動温度範囲内(室温から400℃まで)で同じ特徴を維持し得る。アニール後、感知エレメント204は、反復可能な、線形的な温度耐性的特徴を示した。図12は、異なる温度における感知エレメント204の測定された抵抗値である。感知エレメント204の抵抗値は、20℃おきに100℃から400℃にわたって測定される。抵抗値は、測定された温度範囲内で5.6Ω/℃変化する。測定データから、感知エレメント204の熱係数は0℃における公称抵抗と比較して、1℃の温度変化につき0.217%の抵抗値の変化を示すα=0.00217℃―1と推定される。
【0046】
検査の目的で、MEMSヒータ100を含んで製造されたサンプルステージ52は、図10に示すように、エミュレートされた、PicoIndenterの前端部1000と加熱回路1002とに一体化される。留め具による結合は、ヒータ100及びサンプルステージ52を機械的に損傷せず、良好な電気接続を確実に行う。留め具と形成された金リード線(図2Bに示す)との間の接触抵抗値は、0.5Ω未満と測定される。この低い接触抵抗値は、ヒータやセンサーの抵抗値と比較してごく僅かである。低い接触抵抗値ゆえに前部1000とサンプルステージ52との接触面積は電流フローによって加熱されることなく、それゆえにセンサーの読みを歪ませない。
【0047】
図11は、顕微鏡による加熱実験画像を示す。加熱エレメントの性能を確認するために、電流フローをヒータに流す。ヒータから放たれた光は、ヒータがゆうに600℃を超えて加熱されていることを示し、加熱パワーの変化による放たれた光の強度の変化は、ヒータが適切に応答していることを示す。
【0048】
図13は、検査用サンプルホルダ1300の1つの実施例の概略図を示す。検査用サンプルホルダ1300は、検査用サンプル保持手段1304と結合したホルダ底部1302を含む。本明細書で記載するように、いくつかの実施例において、検査用サンプル保持手段1304は、サンプルステージ及び底部インターフェースを含む検査用サンプルステージを含む(図2A、2B参照)。検査用サンプル保持手段1304は、サンプル1316を透過型電子顕微鏡の電子ビーム1310内に配置するように構成された検査用サンプル表面1312を含む。図13に示すように検査用サンプル表面1312は、例えば、ウェッジ型の突起部など、サンプル1316を受ける表面突起部1314を含む。透過型電子顕微鏡に搭載される際に、保持手段1304と検査用サンプル表面1312は、サンプルを電子ビーム1310内に配置する。
【0049】
検査用サンプルホルダ1300は、加熱手段1318をさらに含む。1つの実施例において、加熱手段1318は、保持手段1304上の抵抗MEMS加熱エレメントを含む。本明細書で前述したように、加熱手段1318は、保持手段1304の一部(例えば、検査用サンプルステージ110)及びサンプル1316を、例えば400℃またはそれ以上の特定の温度に加熱する。加熱手段を有する検査用サンプルホルダ1300は、現場外、現場内での加熱、ならびに、光学、走査プローブ及び電子顕微鏡での観察による使用のために構成される。
【0050】
また、図13は、プローブ1308を有する電気機械式トランスデューサ1306を示す。電気機械式トランスデューサ1306は、検査用サンプル表面1312上でサンプル1316の機械検査と測定を行う。例えば、トランスデューサ1306は、インデンテーション、張力、圧縮、破壊、疲労、摩擦検査などを行う。
【0051】
図13に示すように、加熱手段1318は、検査用サンプル表面1312及び検査用サンプル1316と隣接して配置される。これによってサンプル1316の加熱は、かかる位置にしなかった場合のサンプル及び検査用サンプル表面1312から離れた加熱部分から伝達されるのではなく、サンプル1316において行われる。例えば、耐熱エレメントなどの加熱手段1318は、およそ0.50mmの隣接空間1320によって隔てられ、サンプル1316に隣接して位置する。その他の実施例で記載したように、また、ここで再度記載するが、加熱手段1318は、検査用サンプル保持手段1304の一部分を加熱するように構成されている。例えば、加熱手段1318は、ホルダ底部1302及びかかるホルダ底部と結合した保持手段の残りの部分と比較して、検査用サンプル保持手段1304の最小の体積を加熱するように構成されている。加熱される体積を制限することにより、加熱手段1318は、サンプル1316を載せたまま、保持手段の部分を迅速に加熱でき、より少ない加熱エネルギーの使用で足る。検査用サンプル保持手段1304のその他の部分を通る熱エネルギー伝達が最小であるために、加熱手段1318をサンプル1316と検査用サンプル表面1312双方に隣接させた状態を維持することにより、より少ないエネルギー消費で迅速な加熱が可能である。上記のように、およそ0.50mmの隣接空間1320ごとに、加熱手段1318を配置することは、加熱手段1318をサンプル1316と検査用サンプル表面1312とに隣接(例えば、直接隣接)させることになる。以下でさらに詳細に説明するが、加熱手段1318によって加熱される体積は、いくつかの実施例において、空隙部、カラム、及び検査用サンプル保持手段1304の材料などの部分によって制限される。これらの部分は、加熱手段1318によって加熱される保持手段1304の体積を実質的に制限するために、単独または組み合わせにより、検査用サンプル表面1312と隣接する加熱手段の位置と協働する。
【0052】
本明細書のその他の実施例に記載するように、検査用サンプル保持手段1304は、いくつかの実施例において、空隙部、支持部、及び、保持手段1304の残りの部分及びホルダ底部1302に対して、検査用サンプル保持手段1304の小さな体積内に熱エネルギーを収容するように構成された耐熱材料を含む。これらの部分及び材料は、本明細書に記載され、保持手段1304に適用することができる。図2A、2Bにおけるサンプルステージ52に言及すると、例えば、底部インターフェース53から検査用サンプルステージ110へと延伸する支持カラム203、205は、サンプルステージ52の第一部分(例えば、保持手段1304)から底部インターフェース53への熱伝達をスロットルする。支持カラム203、205は、検査用サンプルステージ110によって定義づけられる平面に対して平行な平面に沿った、より小さな断面積を有する。検査用サンプルステージ110に対して、支持カラム203、205内のより小さな断面積は、検査用サンプルステージ110から底部インターフェース53ならびに図6Bに示すホルダ底部54へ向かう熱伝達をスロットルする。
【0053】
加えて、図2A、2Bに示す1つまたは複数の空隙部208、210は、底部インターフェース53及び底部インターフェース53とホルダ底部54との連結点から間隔をあけて検査用サンプルステージ110を配置する。検査用サンプルホルダ55の材料を通る熱エネルギーの伝導と比較すると、空隙部208、210を横切る熱エネルギー伝達は、困難である。加えて、真空内(電子顕微鏡において一般的)での空隙部208、210を横切る伝達は、最小限の放射熱伝達によってのみ可能であり、対流を通しての比較的大きな熱伝達によってはなし得ない。これにより、空隙部208、210は、検査用サンプルステージ110から底部インターフェース53を含むサンプルステージ52の残りの部分への熱伝達をスロットルする。支持カラム203、205(及びこれらの間にある空隙部208、210)は、検査用サンプルステージ110(例えば、サンプル1316を含む検査用サンプル表面1312)をサンプルステージ52の残りの部分(検査用サンプル保持手段1304)に対して離れたところに配置する。これにより、図2A、2Bに示した空隙部208、210及び支持カラム203、205は、図13に示す保持手段1304の検査用サンプル表面1312(例えば、検査用サンプルステージ)を保持手段の残りの部分と検査用サンプルホルダ1300から熱的に分離する。
【0054】
検査用サンプルステージ110(例えば、検査用サンプル表面1312)は、検査用サンプルホルダ55の残りの部分(例えば、ホルダ1300)からは完全には熱的に分離されないが、検査用サンプルステージ110から検査用サンプルホルダ55及び底部インターフェース53への熱伝達は、ほぼ最小化される。例えば、サンプルと検査用サンプルステージ110(例えば、サンプル1316と検査用サンプル表面1312)が、約400℃またはそれ以上に加熱される1つの実施例において、ホルダ底部54に隣接するサンプルステージ52の残りの部分は約50℃またはそれ未満の温度に維持される。
【0055】
さらに、検査用サンプル保持手段1304は、検査用サンプル表面1312からホルダ底部1302及び保持手段1304の残りの部分(例えば、図2Aに示す底部インターフェース53を含む)への伝導熱の伝達を抑えるように構成された耐熱材料によって構成される。例えば、検査用サンプル保持手段1304は、融解石英によって構成される。融解石英は、熱膨張率約4.0μm/m・K、熱伝導率約1.38W/m・Kの係数を有する。この最小限の熱伝導率により、融解石英は、検査用サンプル表面1312からホルダ底部1302への熱伝達を十分に遅らせる。さらに、融解石英は、その低い熱膨張率の係数ゆえに、加熱された検査用サンプル表面1312の熱膨張を最小化する。
【0056】
直前ならびに本明細書で記載するカラム203、205、空隙部208、210ならびに検査用サンプル保持手段1304の材料を含むこれらの部分は、単体または組み合わせで動作して熱的分離を行い、これによって、検査用サンプル表面1312から検査用サンプル保持手段1304の残りの部分及びホルダ底部1302への熱伝達を遅らせる。これらの部分は、単体及び組み合わせで、比較的少量の熱エネルギーにてサンプル1316の迅速な加熱を提供するために、サンプル1316の加熱手段1318による加熱がサンプル検査用サンプル表面1312に隣接して行われることを確実にする。他の言い方をすれば、検査用サンプル表面1312とサンプル1316の熱的分離のために、加熱手段1318は、検査用サンプル表面から保持手段1304の残りの部分(例えば、図6Bに示す底部インターフェース53及びホルダ底部55を含む)への熱伝達を最小限にしつつ、検査用サンプル表面1312とサンプル1316とを十分に加熱する。
【0057】
検査用サンプル表面1312の加熱は、最小限の熱が保持手段1304の残りの部分に伝達されて検査用サンプル表面とサンプル1316においてほぼ局部的に集中するため、ホルダ底部1302ならびに検査用サンプル保持手段1304の材料の機械的ドリフト及び熱膨張は十分に最小化される。ホルダ底部1302及び検査用サンプル保持手段1304を含む材料の機械的ドリフト及び熱膨張は、加熱手段1318動作中に加熱されたそれらのエレメントの各々の材料の寸法及び体積に比例する。加熱手段1318によって加熱される体積は、検査用サンプル表面1312ならびにサンプル1316にほぼ制限されるため、これによって機械的ドリフトと熱膨張が最小化される。例えば、保持手段の耐熱材料とともに、支持カラム203、205を通り、空隙部208、210にわたる最小限の熱伝達によって保持手段の残りの部分とホルダ底部1302は最小限の加熱ですみ、したがって機械的ドリフトと熱膨張も最小限となる。その他の実施例においては、サンプル表面1312は、融解石英などの熱膨張係数の低い材料で構成される。これによって、サンプル表面1312の加熱の結果、表面の熱膨張が最小化される。
【0058】
これによって、例えば、透過型電子顕微鏡によって観察されるサンプル1316の一部分は、加熱手段1318によって加熱されている間は、実質的に静的に保持される。観察される部分を含むサンプル1316は、電気機械式トランスデューサ1306による機械検査と透過型電子顕微鏡の電子ビーム1310による観察の両方の目的のために、さらに静的に保持される。すなわち、透過型電子顕微鏡によるミクロンスケールまたはそれ未満のスケール(例えば、ナノスケール)のサンプル1316の部分の観察が、加熱時ならびに機械的変形や検査の際に、そしてそれ以後も可能である。これによって、サンプル1316を構成する材料の機械特性について、検査中のサンプルの1つの個別の部分を観察することによって、加熱前、加熱時、機械検査時及びそれらの直後における観察が可能になる。
【0059】
加えて、本明細書に記載のように、その他の実施例における検査用サンプル保持手段1304は、図2Aに示すステージプレート112などの支持部を含む。支持部は、検査用サンプル保持手段1304の検査用サンプル表面1312を固定する。支持部(例えばステージプレート112)は、検査用サンプル表面1312とサンプルとを固定し、電気機械式トランスデューサ1306による機械検査の間の検査用サンプル表面の偏向を最小化する。これによって、検査用サンプル表面の偏向による歪みを伴わずに透過型電子顕微鏡によるサンプル1316の観察と、サンプル特性の正確な評価が可能になる。
【0060】
上記のように、支持部を有する検査用サンプル表面1312は、サンプル1316の配置及び観察のための堅固な表面を提供する。サンプル1316は、検査用サンプル表面1312上にあり、表面は電子ビーム1310の外側に位置するため、サンプル1316において電子透過性が維持され、これによって、歪みを伴わないサンプル1316の観察を提供する。言い換えれば、検査用サンプル表面1312は、電気機械式トランスデューサ1306による機械検査の間、サンプル1316の電子透過性を維持しつつ、サンプル1316を支持し、表面とサンプルの偏向を最小化する。例えば、図13に示すように、サンプル1316を提示し、電子ビーム1310に向かって延伸する、表面突起部1314をもつ検査用サンプル表面1312は、電子ビーム1310と平行に配置される。サンプル1316は、表面突起部1314の縁に沿って提供されるため、検査用サンプル表面1312に対して、サンプルそのものは、電子透過性を維持するために電子ビーム1310内に配置される。
【0061】
対照的に、いくつかの実施例において、サンプルステージは、偏向可能な膜と、サンプルの下にあるワイヤを提供する。ワイヤや膜などの部分は、電子透過性を可能にするが、ナノインデンテーションなどの機械検査からの偏向を固定するには十分に堅固ではない。その他の実施例において、機械検査に対する支持が提供され得る堅固な表面上にサンプルが配置される場合、支持部が電子ビーム軸内に配置されるため、電子透過性が維持されない。本明細書に記載の検査用サンプル保持手段1304は、検査用サンプル表面1312を電子ビーム1310の外側に配置することによって、検査用サンプル表面1312(例えば、ステージプレート112)に堅固な支持部ならびに電子透過性サンプル1316を提供することにより、これらの問題解決手段を提供する。
【0062】
ところで、図14A及び14Bを参照すると、先行技術による検査用サンプルホルダ1400の1つの実施例が示されている。検査用サンプルホルダ1400は、検査用サンプルホルダ内に移動可能に配置された検査用サンプルクレードル1402を含む。検査用サンプルクレードル1402は、透過型電子顕微鏡下で観察するための検査用サンプルを受けるように構成された検査用サンプル領域1406を含む。検査用サンプル領域1406は、検査用サンプル領域1406と検査用サンプルとを加熱するように構成された加熱エレメント1404によって取り囲まれる。図示した実施例において、加熱エレメント1404は、検査用サンプルクレードル1402の周囲に延伸し、検査用サンプル領域1406を実質的に取り囲む加熱エレメントを含む。
【0063】
図14Bを参照すると、検査用サンプルクレードル1402を含む検査用サンプルホルダ1400が、断面図にて示される。加熱エレメント1404は、検査用サンプル領域1406を取り囲むために、ページ内外に、また、検査用サンプルクレードル1402の周囲に延伸する。図14Bに示すように、検査用サンプル領域1406は、離間間隔1408によって、加熱エレメント1404から間隔があけられている。1つの実施例において、加熱エレメント1404は、検査用サンプル領域1406から約1.5mmの間隔をあけて配置される。加熱エレメントは、検査用サンプル領域1406に対する電子透過性を維持するために、検査用サンプル領域1406(例えば、膜)から間隔をあけて配置される。言い換えれば、加熱エレメント1404は、透過型電子顕微鏡で検査用サンプル領域1406上の検査用サンプルを観察可能にするために検査用サンプル領域1406の周囲に間隔をあけて配置される。加熱エレメント1404が検査用サンプル領域1406から離れて配置されるため、検査用サンプル領域1406を特定温度に加熱するためには膨大な量の熱エネルギーが必要となる。さらに、加熱エレメント1404が検査用サンプル領域1406を取り囲む検査用サンプルクレードル1402内に配置されるため、検査用サンプル領域1406を特定温度に加熱するためには、加熱エレメント1404の加熱は、検査用サンプル領域1406のみならず検査用サンプルクレードル1402の残りの部分も加熱しなければならない。
【0064】
1つの実施例において、検査用サンプル領域1406内の検査用サンプルクレードル1402の加熱された体積は、図2A、2Bに示す検査用サンプルステージ110の体積よりも大きい。検査用サンプル領域1406は、検査用サンプルクレードル1402から熱的に分離されていないため、加熱エレメント1404からの熱エネルギーは、検査用サンプルクレードル1402ならびに検査用サンプル領域1406内に伝達される。これによって、いくつかの実施例において、検査用サンプル領域1406を加熱して所定の温度にするために、追加的な熱エネルギーと時間が必要になる。さらに、検査用サンプル領域1406を所望の温度に維持するために追加的な熱エネルギーが必要になる。
【0065】
図14A、14Bに示す検査用サンプルホルダ1400とは対照的に、図13に示す検査用サンプルホルダ1300は、検査用サンプル表面及びサンプル1316に隣接して配置された加熱エレメントなどの加熱手段1318を有する検査用サンプル表面1312を含む。上記のように、例えば、加熱手段1318は、隣接間隔1320によってサンプル1316に隣接して配置される。例えば、隣接間隔1320は、図14Bに示す離間間隔が約1.5mmであるのに対して約0.5mmの間隔を有する。ミクロンスケールやナノスケールでは、検査用サンプルホルダ、1300、1400内の、サンプルと加熱エレメントとの間の間隔の相違は、サンプルの温度を特定の高温へ上昇させるのに必要な熱エネルギーの量において大きな相違となる。別の言い方をすれば、隣接間隔1320は、検査用サンプルクレードル1402の離間間隔1408と比較して、加熱手段1318をサンプル1316に直接隣接させて配置する(上記の加熱の利点によって)。
【0066】
さらに、サンプルに対して加熱エレメントの間隔に相違があるために、加熱エレメント1404によって加熱される検査用サンプルクレードル1402の体積は、加熱エレメント1318によって加熱される検査用サンプル表面1312の体積よりも遥かに大きい。1つの実施例において、検査用サンプルクレードル1402の加熱される体積は、半径、深さ、円周などの寸法の3乗的な関係により指数関数的(例えば3乗)に大きくなる。別の言い方をすれば、サンプル1316に対して検査用サンプルクレードル1402の離間間隔1408が、加熱手段1318の隣接間隔1320よりも大きい場合は、検査用サンプルクレードル1402の加熱された体積は、検査用サンプル保持手段1304よりも指数関数的に大きくなり、これによって、サンプルの特定の温度を達成し、維持するために追加的な熱エネルギーを必要とする。
【0067】
1つの実施例において、検査用サンプル領域1406からの加熱エレメント1404の離間間隔1408と、これに対応する検査用サンプルクレードル1402のより大きな体積のため、検査用サンプルクレードル1402の機械的ドリフト及び熱膨張は、図13ならびに本明細書に示すサンプルステージその他の実施例に示す、対応する検査用サンプル保持手段1304のドリフト及び熱膨張よりも大きい。前述のとおり、体積のより大きな材料を加熱することは、これに対応して、図2Aに示す検査用サンプルステージ110や図13に示す検査用サンプル表面1312と同等の材料の体積など、体積のより小さなものを加熱するよりも、大きな機械的ドリフト及び熱膨張を生ぜしめる。サンプルステージの残りの部分ならびに本明細書に記載される部分(例えば支持カラム、空隙部、耐熱性材料など)を有するホルダ底部1302に対して検査用サンプル表面1312を熱的に分離することにより、対応する機械的ドリフト及び熱膨張が最小化される。別の言い方をすれば、ホルダ底部1302と検査用サンプル保持手段1304の残りの部分(例えば底部インターフェース53)とは熱的に分離されるため、検査用サンプル表面1312(検査用サンプルステージ110)内の熱の僅かな部分のみがこれらの部分に伝達される。
【0068】
前述のとおり、ホルダ底部1302と保持手段1304の残りの部分(例えば底部インターフェース53)は、検査用サンプル表面1312及びサンプル1316と比較して体積が大きい。熱的分離によりこの大きな体積が実質的に加熱されることはないため、これらの部分の機械的ドリフト及び熱膨張は最小化される。対照的に、図14A、14Bに示す検査用サンプルクレードル1402は、検査用サンプル領域1406を取り囲むリング内に加熱エレメント1404を含む。検査用サンプル領域1406を加熱することに対応して、検査用サンプルクレードル1402の全体が加熱され、検査用サンプルクレードル1402全体にわたって機械的ドリフトと熱膨張が起きる。前述のとおり、検査用サンプルホルダ1400などの検査用サンプルホルダの機械的ドリフトと熱膨張は、透過型電子顕微鏡検査で観察されるサンプルの個別部分を含むサンプルを移動させる。いくつかの実施例において、検査用サンプルクレードル1402は、クレードルの機械的ドリフトと熱膨張を最小化できないため、検査用サンプル領域1406の個別部分の一貫した観察は困難である。
【0069】
図14A、14Bを再び参照して、検査用サンプル領域1406は、検査用サンプルクレードル1402にわたって延伸する。検査用サンプル領域1406は、透過型電子顕微鏡検査の間、観察対象のサンプルを含む検査用サンプル領域内を電子が透過することを可能にする電子透過性を有する。検査用サンプル領域1406が透過性を有するため、検査用サンプル領域1406は、疲労、インデンテーション、張力、破壊検査などの機械検査に供されると、偏向し得る。これによって、例えば、電子顕微鏡検査による透過の機械検査時又はそれに近い時間の検査用サンプル領域1406上のサンプルの機械特性の観察は、サンプルの機械特性が検査用サンプル領域1406の望ましくない偏向によって歪むために困難となる。対照的に、図13に示す検査用サンプル表面1312は、電子ビーム1310の外側に位置し、サンプル1316を電子ビーム内に配置する。ステージプレート112(図2A、2Bに示す)などの堅固な支持部が、電気機械式トランスデューサ1306による検査などの機械検査の間、サンプルと検査用サンプル表面1312を固定する。サンプル1316の偏向が最小であり、機械的ドリフトと熱膨張も最小化されているため、電子ビームがサンプル1316に向かい、サンプル1316の機械特性は、加熱、機械検査の間及びその後においても容易に観察される。
【0070】
図15は、検査用サンプルのサブミクロン加熱と機械検査のための方法1500の1つの実施例を示す。方法1500の記載において本明細書で上記した部分及びエレメントについて参照がなされる。適宜、上記の参照番号が、方法1500の記載に含められる。参照は、限定を意図するものではない。例えば、単一の参照番号が付されている場合に、それは全ての同じ部分を有するもののみならず、その均等物にも参照がなされることを意味する。
【0071】
1502において、サンプルなどの検査用サンプルは、検査用サンプルステージ110のステージ検査用サンプル表面201に沿って結合される。検査用サンプルステージ110は、図6Bに示すホルダ底部54などのホルダ底部と結合される。1つの実施例において、ステージ検査用サンプル表面201に沿って検査用サンプルを結合することは、図4、図5に示すように、サンプルをサンプルマウント402上に載置することを含む。検査用サンプルステージ110は、サンプルマウント402の下にあるステージ検査用サンプル表面201を含む。その他の実施例において、ステージ検査用サンプル表面は、ステージマウント402の第一側面408、鋭角部分410及びウェッジ形状部分412を含む。別の言い方をすれば、サンプルマウント402は、検査用サンプルステージ110及びステージ検査用サンプル表面201の一部に含まれる。
【0072】
1504において、ホルダ底部54は、図1に示す電気機械式トランスデュユーサ32などのサブミクロン機械検査器具及び電気機械式トランスデューサのアセンブリ内で結合される。図4に示すように、MEMSヒータ100とサンプルマウント402を含む検査用サンプルステージは、透過型電子顕微鏡搭載時には、電気機械式トランスデューサのアセンブリ32の電子ビーム軸404の外側に位置する。検査用サンプルステージ110は、図4に示すサンプル31などのサンプルを電子ビーム(図4のビーム404を参照)内に配置する。別の言い方をすれば、検査用サンプルステージ110を含むMEMSヒータ100は、検査用サンプルステージ110がサンプル31を通って電子透過性を提供するために電子ビームの外側に配置される一方で、サンプル31を電子ビーム軸内に配置する。
【0073】
1506において、検査用サンプルが、図2Bに示す加熱エレメント202などの加熱エレメントにより、検査用サンプルに隣接する検査用サンプルステージ110で生じた熱によって特定の温度まで加熱される。1つの例において、加熱エレメント202は、検査用サンプルステージ110のステージ検査用サンプル表面201にすぐ隣接して配置される。すなわち、加熱エレメント202は、ステージ検査用サンプル表面に対して離れたところに配置されず、ステージ検査用サンプル表面ならびにステージ検査用サンプル表面に配置されるサンプルへの熱伝達は、ステージ検査用サンプル表面201を含む検査用サンプルステージ110の体積に局部的に集中する。前述のように、熱の発生を検査用サンプル表面201に隣接する領域に局部的に集中させることで、サンプルステージ52及びホルダ底部54の残りの部分材料の機械的ドリフト及び熱膨張が実質的に最小化される。
【0074】
1508において、検査用サンプルは、ミクロンまたはそれより小さなスケールで機械的に検査される。検査用サンプルの機械検査は、電気機械式トランスデューサ32による検査を含むが、これに限定されない。電気機械式トランスデューサ32による機械検査は、インデンテーション、圧縮、張力、疲労、摩擦、破壊検査などを含むが、これに限定されない。サンプルステージ52の検査用サンプルステージ110上のサンプルの検査は、本明細書において前述したように、ステージプレート112が検査用サンプルステージ110に沿って結合しているため、検査用サンプルステージ110の変位による僅かな歪みを伴って、または歪みを伴うことなく行われる。1つの実施例において、ステージプレート112は、検査用サンプルステージ110及びサンプルステージ52と一体的に形成される。ステージプレートは、検査用サンプルステージ110とその上のサンプルを電気機械式トランスデューサ32上の器具から機械検査によって引き起こされる偏向に対して固定する。これにより、検査用サンプルステージ110上の検査用サンプルの観察が、膜及びワイヤを含むその他基板上のサンプルの機械検査による歪みと比較して、検査用サンプルステージ110の偏向からの歪みを最小限に抑えて行われる。上記のように、1508にて記載した機械検査は、機械検査で生じた偏向を吸収し最小化できる堅固な検査用サンプルステージ110を変わらず提供し続けながら、電子スライドである電子ビーム軸内のサンプル上で行われる。
【0075】
1510において、検査用サンプル(例えば図4に示すサンプル31)は、加熱による熱機械的ドリフトや膨張に対して、検査用サンプルステージ110からホルダ底部54ならびに検査用サンプルステージの底部インターフェース53への熱伝達をスロットルすることにより、静的に保持される。1つの実施例において、熱伝達をスロットルすることは、検査用サンプルステージ110から、検査用サンプルステージとサンプルステージ52の残りの部分及びホルダ底部54とを結合する(図2A、2Bを参照)1または複数の支持部203、205への熱伝達をスロットルすることを含む。例えば、1または複数の支持部203、205は、検査用サンプルステージ110からホルダ底部54及び底部インターフェース53への熱伝達の方向に沿って、より小さな断面積を有する。この断面積は、同じ方向の検査用サンプルステージ断面積よりも小さい。言い換えれば、支持部は検査用サンプルステージ110より小さな断面積を有するため、支持部203、205は、サンプルステージ52の残りの部分及びホルダ底部54への熱伝導用の狭い通り道を効果的に提供する。
【0076】
別の実施例において、検査用サンプルステージ110は、ホルダ底部54の第二熱抵抗値より大きい第一熱抵抗値を有する。すなわち、検査用サンプルステージ110とサンプルステージ52の第一熱抵抗値は、ホルダ底部54の第二熱抵抗値より大きいため、検査用サンプルステージ110から支持カラム203、205ならびに底部インターフェース53への熱伝達は、ホルダ底部54に達成する前に材料によって効果的に遅延される。
【0077】
さらに別の実施例において、サンプルステージ52は、図2Aに示すように1つまたは複数の空隙部208、210を含む。空隙部208、210は、支持カラム203、205の間に形成され、検査用サンプルステージ110とサンプルステージ52の底部インターフェース53との間に間隔を提供する。空隙部208、210にわたる放射熱伝達は、伝導熱伝達と比較すると最小である。サンプルステージ52及びホルダ底部54周囲の大気が真空の場合(例えば、加熱中、検査中、及び観察中)、必ず空隙部の放射熱伝達のみが可能である一方、本明細書で記載するように支持カラム203、205の伝導熱伝達が最小化される。空隙部208、210の放射熱伝達は、支持カラム203、205を通ることが可能な既に少量の熱伝達と比較しても最小であり、検査用サンプルステージ110をサンプルステージ52の残りの部分及びホルダ底部54から熱的に分離する。
【0078】
上記のように、検査用サンプルステージ110からホルダ底部54と結合した底部インターフェース53への熱伝達をスロットルすることにより、検査用サンプルステージ110ならびに検査用サンプルステージ110上のサンプル31以外の部分の機械的ドリフト及び熱膨張が最小化される。例えば、加熱エレメントが検査用サンプルの膜に対して離れて配置される場合、加熱エレメントによる加熱は、膜周辺の検査用サンプルクレードルの体積ならびに膜自体も加熱しなければならず、検査用サンプルクレードルと膜の熱膨張及び機械的ドリフトを生ぜしめる。対照的に、サンプルステージ52の加熱エレメント202は、検査用サンプルステージ110ならびにステージ検査用サンプル表面201上のサンプルに隣接した領域(例えば、図14A、14Bに示す先行技術の検査用サンプル膜1406に対する加熱エレメント1404の離間間隔に対して直接隣接する領域)に局部集中されるので、ドリフトや熱膨張が最小化される。検査用サンプルステージ110など、サンプルステージ52の小さい部分の加熱は、対応するサンプルステージ52の残りの部分やホルダ底部54の膨大な加熱を伴うことなく行われる。検査用サンプルステージ110からの熱伝達のスロットルは、その他の構成要素の加熱を実質的に最小化し、これによってその対応する熱機械的ドリフトと膨張とが最小化する。
【0079】
1512において、検査用サンプルのパラメータは、機械検査されながら、及び検査用サンプルを静的に保持しながら、同時に測定される。言い換えれば、サンプルステージ52は、上記のように熱機械的ドリフトや熱膨張がごく僅かか、それらが無い状態で検査用サンプルステージ110上のサンプルを加熱することができるため、機械検査がサンプル上で行われ、透過型電子顕微鏡の電子ビームにより、検査前、検査中、検査直後にわたってサンプルの観察が可能である。検査用サンプルのパラメータの同時測定は、機械検査の検査前、検査中、検査直後に検査用サンプルを観察するのと実質的に同時にまたは同期して観察し、検査することを含む。検査用サンプルステージ110からの熱伝達のスロットルによる熱機械的ドリフト及び膨張が最小化されるため、検査用サンプルの部分、例えば、ミクロンまたはナノスケールの部分が加熱、検査、検査直後を通して観察される。これにより、観察が困難であった部分ならびに検査用サンプル31の特性測定が、方法1500によって観察可能となる。
【0080】
方法1500に関するいくつかの選択肢を以下で説明する。1つの実施例において、ステージ検査用サンプル表面201に沿って検査用サンプルを結合することは、検査用サンプルをサンプルマウント402などのサンプルマウントへ載置することを含む。検査用サンプルを加熱することは、サンプルマウント402全体に熱を均一に分配することを含む。例えば、サンプルマウント402がサンプルステージ52よりも大きな熱伝導率を有する材料を含む場合、サンプルマウント402に伝達される熱は、サンプルマウント全体を均一に加熱するため、直ちにサンプルマウント全体に伝達される。別の実施例において、方法1500は、検査用サンプルステージに配置されている感知エレメント204で検査用サンプルステージ110の温度を感知することを含む。図2Bに示すように、感知エレメント204は、加熱エレメント202ならびにステージ検査用サンプル表面201に隣接して配置される。これらの部分に隣接して感知エレメント204を配置することにより、感知エレメント204は、サンプル31の加熱の間、検査用サンプルステージ110の温度を正確に決定できる。さらに別の実施例において、方法1500は、検査用サンプルステージ110にある加熱エレメント202と感知エレメント204を含むクローズドまたはオープンループ制御システムによって検査用サンプルの加熱を制御することを含む。
【0081】
別の実施例において、検査用サンプルを特定温度まで加熱することは、検査用サンプルステージ110の体積と検査用サンプルのみを加熱することを含む。言い換えれば、熱伝達は、底部インターフェース53などのサンプルステージ52の残りの部分やホルダ底部54に対して効果的にスロットルされる。これにより、サンプルステージ52の残りの部分やホルダ底部54への対応する熱伝達は、サンプルステージ52の加熱が検査用サンプルステージ110の体積と検査用サンプルステージ110上の検査用サンプルに限定されて、最小化される。例えば、検査用サンプルステージ体積と検査用サンプルのみを加熱することは、検査用サンプルステージ110が約400℃以上に加熱される一方で、ホルダ底部54(ならびに底部インターフェース53とホルダ底部54との間の接点)を約50℃以下に維持することを含む。さらに別の実施例において、検査用サンプルのパラメータを同時に測定することは、例えば、透過型電子顕微鏡で、機械検査において、検査用サンプルを静的に保持して、検査用サンプルを同時に画像化することを含む。さらに別の実施例において、機械検査、検査用サンプルの静的保持、及び検査用サンプルのパラメータの同時測定は、画像装置96内に収容された画像検査用サンプルホルダ55内で行われる。検査用サンプルホルダ54の1つの例が図6B及び7に示されている。
【0082】
ここで図16A、16Bを参照すると、チップヒータアセンブリ1618を含む器具アセンブリ1600の1つの実施例が示されている。器具アセンブリ1600は、チップヒータアセンブリ1618、ダイアモンドチップなどのチップ1606、及び延長軸1608を有するチップアセンブリ1602を含む。1つの実施例において、延長軸1608は、最小の熱膨張係数と最小の熱伝導率を有する石英チップ延長軸を含むが、これに限定されない。器具アセンブリ1600は、チップアセンブリ1602(例えば、チップ1606)の動きを測定し、また、サブミクロンスケール(例えばナノスケール)で、インデンテーション、スクラッチなどの機械検査を行うように構成された2以上の蓄電板1605を含むトランスデューサのアセンブリ1604をさらに含む。別の実施例において、器具アセンブリ1600は、張力、圧縮、破壊検査などを測定するための器具を含む。トランスデューサのアセンブリ1604は、チップ1606の動きを測定し、また、機械検査(インデンテーションなど)のためにチップ1606を動かすことができる。チップアセンブリ1602は、チップアセンブリ1602とトランスデューサのアセンブリ1604との間に延伸する相互連結1607によって、トランスデューサのアセンブリ1604と結合する。1つの実施例において、相互連結1607は、MACOR(登録商標)、ZERODUR(登録商標)などの材料によって構成されるが、これらに限定されない。延長軸1608と同様に、相互連結1607は、低い熱膨張係数と最小の熱伝導率を有する材料によって構成される。走査顕微鏡、電子顕微鏡、光学顕微鏡などであるがこれらに限定されない器具と結合する大きさと形状を有するチップ底部1610(例えば、ヒートシンク)を器具アセンブリ1600はさらに含む。
【0083】
再び図16Aを参照すると、熱シールド1612の熱シールド開口部1614を通って延伸する延長軸1608が示されている。図示の如く、延長軸1608ならびに相互接続1607は、器具アセンブリ1600の熱シールド空洞部1616内に配置される。1つの実施例において、熱シールド1612は、冷却水、グリコール、アンモニアなどの冷媒流体を送るための出口及び入口を含む対流熱シールドである。別の実施例において、熱シールド1612は、低い熱膨張係数と最小の熱伝導率を有する材料から構成される。さらに別の実施例において、熱シールド1612は、チップ底部1610を形成するヒートシンクと結合されている。チップ底部は、器具アセンブリ1600から顕微鏡のような結合された器具への熱伝達を実質的に防止するために、上記同様の材料(低い熱伝導率かつ低い熱膨張係数)から構成される。熱シールド1612は、本明細書にて前述したように、チップヒータアセンブリ1618ならびにMEMSヒータ100からの対流熱伝達及び放射熱伝達を最小化する。チップヒータアセンブリ1618ならびにMEMSヒータ100からトランスデューサのアセンブリ1604を含む器具アセンブリ1600への熱伝達をスロットルすることは、トランスデューサのアセンブリ1604及び延長軸1608の熱膨張及びドリフトを実質的に最小化する。
【0084】
図16Bを参照すると、チップヒータアセンブリ1618が詳細に示されている。チップヒータアセンブリ1618は、チップ1606に直接隣接して配置される加熱エレメントとセンサーとを含む。1つの実施例において、加熱エレメントとセンサーとは熱抵抗性の加熱エレメント及び感知エレメントである。加熱エレメントとセンサーとをチップ1606の直接隣接する場所に配置すると、チップ1606の直接隣接するチップアセンブリ1602の体積に対して局部集中的な加熱がなされる。チップ1606ならびにチップヒータアセンブリ1618は、チップヒータアセンブリ1618と軸のその他の部分との間に挟まれた空隙部1620によって延長軸1608のその他の部分から隔てられている。空隙部1620は、図16Bに示すように、延長軸1608に沿ってそこからチップヒータアセンブリ1618に向かって延伸する支持カラム1621によって固定されている。センサーリード線1622と加熱エレメントリード線1624は、1つの実施例において、チップヒータアセンブリ1618と電気的に結合するために支持カラム1621を含む延長軸1608を通って延伸する。
【0085】
MEMSヒータ100と同様にして、チップヒータアセンブリ1618を含む器具アセンブリ1600は、延長軸1608及びトランスデューサのアセンブリ1604の残りの部分にわたる望ましくない大きな熱伝達を伴わずに、チップ1606を局部集中的に加熱する。チップヒータアセンブリ1618は、器具アセンブリ1600の残りの部分から離して配置され、チップ1606と直接隣接する。また、チップヒータアセンブリ1618とチップ1606とは空隙部1620及び支持カラム1621によって延長軸1608の残りの部分から隔てられるため、チップヒータアセンブリ1618からの延長軸1608の残りの部分への熱伝達は、実質的にスロットルされる。支持カラム1621は、最小の断面積を通って相互接続1607及びトランスデューサのアセンブリ1604(図16Aを参照)と結合する延長軸1608の部分への熱伝導率を最小化する。加えて、空隙部1612は、空隙部を通る熱伝導を防止し、対流熱伝達(熱伝導による熱伝達に対して最小の熱伝達の形式)と放射熱伝達のみを許容することによって熱伝達を実質的に遅延させる。器具アセンブリ1600が真空内に保持される1つの実施例において、空隙部1620は、チップヒータアセンブリ1618からの延長軸1608のその他の部分への対流熱伝達を実質的に防止し、空隙部を通る最小限の放射熱のみを伝達させる。加えて、延長軸1608は、熱膨張係数が低く最小限の熱伝導率を有する材料で構成されているため、チップヒータアセンブリ1618からの器具アセンブリの残りの部分への熱伝達は最小化され、これらの構成要素(トランスデューサのアセンブリ1604及び延長軸1608の大部分)の熱膨張と熱ドリフトは、これに対応して同様に最小化される。
【0086】
チップヒータアセンブリ1618におけるチップ1606の加熱を局部集中させることにより、延長軸全体に対して延長軸1608の小さい体積分のみが最小の加熱パワーにて加熱される。別の言い方をすれば、延長軸1608及び器具アセンブリ1600の残りの部分のより大きな体積に対して、チップヒータアセンブリ1618、チップヒータアセンブリ1618に隣接する延長軸1608の部分、及びチップ1606の小さな体積を加熱するためには最小限の力で足る。低体積と最小限の加熱パワーにより迅速な熱安定化が容易になり、機械検査及び観察の間に起きる熱ドリフトが最小化する。さらに、延長軸1608は、チップ1606をトランスデューサのアセンブリ1604ならびに器具アセンブリ1600から離して配置するため、トランスデューサのアセンブリ1604とチップ底部1610の熱ドリフトは、延長軸の材料の使用、チップアセンブリ1602や熱シールド1612の形状によって実質的に最小化される。さらに、支持カラム1621を含む軸の形状や、チップヒータアセンブリ1618を含む延長軸1608の体積は、チップ1606を支え、堅固な支持を提供し、トランスデューサからの力の伝達とチップ1606の動きの測定を正確に行うことを確実にする。
【0087】
例えば、チップヒータアセンブリ1618を含む器具アセンブリ1600が、本明細書に記載のMEMSヒータ100など、サンプル加熱ステージを有するシステムに組み込まれる1つの実施例において、チップ1606は、MEMSヒータを有し、及びサンプルをその上に載せたサンプル台の温度と同一(またはほぼ同一)の温度まで加熱される。これによって加熱されたサンプルから加熱されていないチップへの望ましくない熱伝達が実質的に防止される。言い換えれば、チップ1606の温度を実質的に均一化することで、チップ1606とサンプルとの間のサンプル及びサンプルステージ熱伝達が実質的に防止される。これに対応して、サンプルとサンプルから測定される機械特性の歪みが実質的に防止される。その他の装置において、加熱されていないチップと加熱されたサンプルとの間の接点は、加熱されたサンプルからチップへと熱伝達を行い、その結果、1つまたは複数のサンプルやチップにおける歪み(熱膨張、ドリフトなど)を生ぜしめ、チップによって収集された特性や測定に歪みを生ぜしめる。
【0088】
1つの実施例において、チップヒータアセンブリ1618は、MEMS工程を含む製造工程にて構成される。例えば、器具アセンブリ1600は、集束イオンビームリソグラフィー及びフライス加工、レーザー加工、フォトリソグラフィー及びエッチング(ドライまたはウェットエッチング)などを含むが、これらに限定されない。その他の実施例において、チップヒータアセンブリ1618を含む器具アセンブリ1600は、本明細書で前述したMEMSヒータの実施例とともに提供される。さらにその他の実施例において、器具アセンブリ1600は、本明細書に記載の加熱された検査用サンプルステージとは別個に提供される。
【0089】
(結論)
本明細書に記載し、図面で示した、MEMSヒータを含むサンプルステージは、少量の検査用サンプルを載置し、サンプルやサンプルステージ温度が上昇したときや、サンプルが材料検査用にインデントされたり圧縮されたりしたときにも実質的に静的に検査用サンプルを適切な位置に保持する。サンプルステージは、サンプルステージ加熱を検査用サンプル近傍に集中させ、ステージのその他の部分や、サンプルステージを載置する検査用サンプルホルダの加熱を阻むために、高い耐熱性と低い熱膨張係数を有する材料を含む。望ましくないサンプルステージの熱膨張とドリフトは、こうして最小化される。さらに、検査用サンプルホルダの熱膨張とドリフトは、サンプルステージから検査用サンプルホルダに向かう熱伝達がスロットルされるため、最小化される。検査用サンプルホルダは、サンプルステージよりも実質的に大きく、対応する熱伝達の阻止によって、大量の熱膨張とドリフトが防止される。同様に、検査用サンプルホルダと比較してサンプルステージは小さいため、サンプルステージに加熱が集中する結果、これに対応して熱膨張の低い係数を有する構成要素中のごく僅かなドリフトしか発生しない。
【0090】
さらに、サンプルステージ(例えば別個のステージプレートまたはサンプルステージと一体化して形成されたステージプレートを含む)は、検査に伴うインデンテーションや圧縮による偏向に対する堅固な留め具を提供し、これによって、検査用サンプルのインデンテーションとは対照的に、インデンテーションや圧縮による変位や力の測定がステージ変位による誤差を含まないようにすることができる。膜部分を含むヒータとは異なり、本明細書に記載したサンプルステージは、検査用サンプルに対して確実かつ堅固な支持を提供する。上昇温度下(約1000℃)では、サンプルステージは、検査用サンプルを留め具で留め、同ステージにおける機械コンプライアンスによって生じるナノ機械検査の変位による不正確さは実質的に皆無である。支持カラム、堅固な正面などのサンプルステージ形状は、また剛性(例えば高いヤング率、曲げ弾性率など)を有する材料と組み合わせることで、サンプルステージがMEMSヒータの作動温度範囲にわたる変位に対する抵抗力を確実に有するようにする。
【0091】
本明細書に開示した内容は、好ましい実施形態を参照して記載されたが、当業者であれば、本明細書に開示した発明の精神、範囲から逸脱することなく、その形式や詳細において変更を加え得る点について認識するであろう。上記の記載は、例示を意図したものであり、限定を意図していない点も理解されるべきである。その他の多くの実施形態も、上記の記載を読んで理解した当業者にとっては明らかであろう。本明細書の異なる部分において議論され、または異なる図面において参照された実施形態は、組み合わされて本願の追加的な実施形態を形成することができる。したがって、本明細書の開示内容は、添付の特許請求の範囲と、かかる特許請求の範囲が包含する均等物の全範囲を参照して決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブミクロン機械特性検査器具のホルダ底部と電気機械式トランスデューサとのアセンブリを結合するように構成された底部インターフェースと、
ミクロスケールの加熱ステージが透過型電子顕微鏡内に搭載されるときの前記透過型電子顕微鏡の電子ビームの外側のステージ検査用サンプル表面と、
前記ステージ検査用サンプル表面の下にあり、前記ステージ検査用サンプル表面を固定するステージプレートと、
前記検査用サンプルステージ上にあり、前記検査用サンプル表面に隣接する加熱エレメントであって、前記ホルダ底部が前記加熱エレメントから熱的に分離される前記加熱エレメントと、
を含む、検査用サンプルステージと、
を含む、ナノ機械特性検査を行うように構成されたミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項2】
前記検査用サンプルステージの体積が、前記ホルダ底部の体積よりも小さい、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項3】
前記検査用サンプルステージが、低温状態から高温状態へと加熱可能であり、前記高温状態では、前記検査用サンプルステージ上の前記加熱エレメントが、前記検査用サンプルステージを通って検査用サンプルへと熱を伝導させ、前記検査用サンプルの温度を特定の温度まで上昇させ、
前記検査用サンプルステージから前記底部インターフェースへの熱伝達が前記底部インターフェースと前記検査用サンプルステージとの間の断面積、前記検査用サンプルステージの熱抵抗、及び前記検査用サンプルステージと前記底部インターフェースとの間の空隙部によって実質的に阻まれ、前記阻まれた熱伝達によって加熱中に前記検査用サンプルが実質的に静止位置に配置される、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項4】
前記底部インターフェースと前記検査用サンプルステージとの間に結合された少なくとも1つの支持部を含み、前記少なくとも1つの支持部が、前記検査用サンプルステージから前記底部インターフェースへの方向に垂直であり、同じ方向に対して垂直の前記検査用サンプルステージの断面積よりも小さい、断面積を有する、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項5】
前記支持部が、前記検査用サンプルステージと前記ホルダ底部との間に1つまたは複数の空隙部を含む、請求項4に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項6】
前記検査用サンプルステージが約400℃以上の上昇温度にて加熱状態にある間に、前記底部インターフェースとホルダ底部との間の連結点が前記検査用サンプルステージと前記底部インターフェースとの間の熱的な分離によって約50℃以下である、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項7】
前記加熱エレメントが、耐熱エレメントである、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項8】
前記加熱エレメントが、前記ステージ検査用サンプル表面の下にある、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項9】
前記ステージ検査用サンプル表面に隣接する、検査用サンプルステージ上の温度感知熱抵抗エレメントを含む、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項10】
前記ステージ検査用サンプル表面と前記ステージプレートとが一体化されている、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項11】
前記加熱エレメントが前記ステージ検査用サンプル表面と直接隣接する、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項12】
サブミクロンスケール特性検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリに結合するように構成されたホルダ底部と、
前記ホルダ底部に結合し、前記ホルダ底部から熱的に分離され、検査用サンプルを受けるように構成されたステージ検査用サンプル表面と、前記ステージ検査用サンプル表面を固定し、前記ステージ検査用サンプル表面の下にあるステージプレートとを含む検査用サンプルステージと、
前記検査用サンプルステージ上にあり、前記ステージ検査用サンプル表面に隣接し、前記ステージ検査用サンプル表面で熱を発生させるように構成された加熱エレメントと、
を含む、検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリを含む、サブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項13】
前記サブミクロン機械検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリが、1つまたは複数のインデンテーション、圧縮、張力、疲労、摩擦、破壊の器具を含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項14】
前記サブミクロンスケール特性検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリが、フォースアクチュエータと変位センサーとを含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項15】
前記加熱エレメントが、耐熱エレメントである、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項16】
前記ステージ検査用サンプル表面に隣接する、検査用サンプルステージ上の温度感知熱抵抗エレメントを含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項17】
前記ステージ検査用サンプル表面と前記ステージプレートとが一体化されている、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項18】
前記ホルダ底部と前記検査用サンプルステージとの間に結合された支持部を含み、前記支持カラムが、前記検査用サンプルステージから前記ホルダ底部の方向に垂直であり、同じ方向に対して垂直の検査用サンプルステージ断面積よりも小さい、断面積を有する、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項19】
前記支持部が、前記検査用サンプルステージと前記ホルダ底部との間に1つまたは複数の空隙部を含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項20】
前記検査用サンプルステージが約400℃の温度に前記加熱エレメントによって加熱される場合に、前記検査用サンプルステージと前記ホルダ底部との間の熱的な分離によって、前記ホルダ底部が50℃以下である、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項21】
前記加熱エレメントが前記ステージ検査用サンプル表面に直接隣接する、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項22】
前記検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリが、前記検査用サンプルステージと前記ホルダ底部との間に挟まれた底部インターフェースを含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項23】
検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリを含み、
前記検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリは、
サブミクロン機械検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリに結合するように構成されたホルダ底部と、
ステージプレートを含み、前記ステージプレートと結合した検査用サンプル表面上で検査用サンプルを受けるように構成された検査用サンプルステージであって、透過型電子顕微鏡内に搭載されるときに前記透過型電子顕微鏡の電子ビームの外側にあり、前記ホルダ底部から熱的に分離される検査用サンプルステージと、
前記検査用サンプルステージ上にあり、前記検査用サンプル表面と隣接する加熱エレメントであって、前記加熱エレメントが前記ステージ検査用サンプル表面にて熱を発生する加熱エレメントと、
を含むサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項24】
前記加熱エレメントが、耐熱エレメントである、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項25】
前記ホルダ底部と前記検査用サンプルステージとの間に結合された少なくとも1つの支持部を含み、前記少なくとも1つの支持部が、前記検査用サンプルステージから前記ホルダ底部への方向に垂直であり、同じ方向に対して垂直の検査用サンプルステージ断面積よりも小さい、断面積を有する、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項26】
前記ステージプレートと前記ステージ検査用サンプル表面とが一体化されている、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項27】
前記ステージ検査用サンプル表面が、前記ステージプレートに沿って結合されたサンプルマウントを含み、前記サンプルマウントは、ステージ熱伝導率よりも遥かに大きな熱伝導率を有し、前記検査用サンプルステージから前記サンプルマウントへと均等に熱分配する、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項28】
前記検査用サンプルステージが電子不透過性である、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項29】
前記ステージプレートが、前記ステージ検査用サンプル表面上のサンプルを機械検査することにより生じる偏向に対して前記ステージ検査用サンプル表面を固定する、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項30】
前記加熱エレメントが、ステージ検査用サンプル表面と直接隣接する、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項31】
前記加熱エレメントが、前記検査サンプルステージ内にある、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項32】
前記ステージ検査用サンプル表面が、電子ビームに平行である、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項33】
透過型電子顕微鏡と結合するように構成された検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリを含み、前記検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリは、
透過型電子顕微鏡と結合するように構成されたホルダ底部と、
前記ホルダ底部と結合し、検査用サンプルを受けるように構成された検査用サンプル表面を含み、透過型電子顕微鏡内に搭載されるときに前記透過型電子顕微鏡の電子ビームの外側にあり、前記ホルダ底部から熱的に分離される検査用サンプル保持手段と、
前記保持手段の上に配置され、前記保持手段にて熱を発生させる、前記検査用サンプルと前記検査用サンプル表面の両方を加熱する加熱手段と、
を含む、サブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項34】
前記検査用サンプル保持手段が前記検査用サンプル表面の下のプレートを含み、前記プレートは、前記検査用サンプル表面に配置される検査用サンプルの機械検査から生じる偏向に対して前記検査用サンプル表面を支持する、請求項33に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項35】
前記保持手段の体積が、ホルダ底部の体積よりも小さく、加熱すると、前記加熱手段が前記検査用サンプル表面の下の前記保持手段にて熱を発生させる、請求項33に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項36】
前記加熱手段が、前記検査用サンプル保持手段の上に耐熱エレメントを含み、前記耐熱エレメントが、前記ホルダ底部から熱的に分離される、請求項33に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項37】
1つまたは複数の、
前記保持手段からホルダ底部への方向に垂直であり、前記同じ方向のホルダ底部の断面積よりも小さい、断面積を有する、少なくとも1つの支持部と、
前記保持手段と前記ホルダ底部との間に挟まれた空隙部と、
低い熱伝導率を有する材料を含む前記保持手段と、
前記保持手段から前記ホルダ底部への熱伝達をスロットルし、前記保持手段が約400℃以上に加熱されたときに前記ホルダ底部を約50℃以下に維持する、前記1つまたは複数の材料、前記空隙部、及び前記少なくとも1つの支持部と、
を含む、請求項33に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項38】
ホルダ底部と結合する検査用サンプルステージの検査用サンプル表面に沿って検査用サンプルを結合することと、
前記検査用サンプルが電子ビーム軸内にある一方で、前記電気機械式トランスデューサのアセンブリが透過型電子顕微鏡に搭載されるときに、少なくとも前記検査用サンプルステージは、前記電子ビーム軸の外にあり、前記ホルダ底部をサブミクロンスケール機械検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリ内で結合することと、
前記検査用サンプルを加熱エレメントにより前記検査用サンプルに隣接した前記検査用サンプルステージにて発生した熱によって所定の温度まで加熱することと、
ミクロメートルまたはこれより小さいスケールの、前記検査用サンプルの機械検査をすることと、
前記検査用サンプルステージから前記ホルダ底部へ熱伝達をスロットルすることにより、前記検査用サンプルを前記加熱による熱機械ドリフトや熱膨張に対して静的に保持することと、
前記検査用サンプルを機械的に検査し、静的に保持する一方で前記検査用サンプルのパラメータを同時に測定することと、
を含む、検査用サンプルのサブミクロンスケールの機械検査方法。
【請求項39】
前記ステージ検査用サンプル表面に沿って前記検査用サンプルを結合することが、前記検査用サンプルをサンプルマウントへ載置し、前記サンプルマウントと検査用サンプルステージとを結合することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記検査用サンプルを前記所定の温度になるまで加熱することが、前記サンプルマウント全体に均等に熱分配することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記検査用サンプルステージに配置された感知エレメントにて、前記検査用サンプルステージの温度を感知することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記検査用サンプルを前記所定の温度になるまで加熱することが、前記検査用サンプルステージにて前記加熱エレメントと感知エレメントとを含むクローズドまたはオープンループ制御システムにて前記検査用サンプルの加熱を制御することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記検査用サンプルを前記所定の温度になるまで加熱することが、前記検査用サンプルステージ体積と前記検査用サンプルのみを加熱することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
ステージプレートでサブミクロン機械検査を行うことによる偏向に対して前記ステージ検査用サンプル表面を固定することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記ホルダ底部への熱伝達をスロットルすることが、1つまたは複数の、
前記検査用サンプルステージから前記ホルダ底部に向けた熱伝達の方向に沿った、前記同じ方向の前記検査用サンプルステージ断面積よりも小さい、断面積を有する、1つまたは複数の支持部を通る熱伝達をスロットルすることと、
前記ホルダ底部の第二熱抵抗より大きい第一熱抵抗を有する前記検査用サンプルステージを通る熱伝達をスロットルすることと、
前記検査用サンプルステージ及び前記ホルダ底部との間に挟まれた空隙部にわたる熱伝達をスロットルすることと、
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記ホルダ底部への熱伝達をスロットルすることが、前記検査用サンプルステージが約400℃以上まで加熱される一方で、前記ホルダ底部を約20℃に維持することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記検査用サンプルのパラメータを同時に測定することが、前記検査用サンプルを機械検査し及び静的に保持することによって前記検査用サンプルを同時に画像化することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記検査用サンプルを機械検査し、静的に保持し、前記検査用サンプルの前記パラメータを同時に測定することが、画像装置内に収納された画像検査用サンプルホルダ内で行われることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
チップ底部と、
前記チップ底部と結合したトランスデューサのアセンブリと、
前記トランスデューサのアセンブリと結合した延長軸と、
サブミクロンスケールにて検査用サンプルを機械的に検査するように構成されたチップと、
前記延長軸の第一部上の前記チップに隣接して配置されるチップ加熱アセンブリであって、前記チップ加熱アセンブリと前記チップとが前記延長軸の第二部に対して熱的に分離されるチップ加熱アセンブリと、を含み、
前記延長軸が、
前記延長軸の前記第一部と前記第二部との間に挟まれた1つまたは複数の空隙部と、
前記延長軸の前記第一部と前記第二部との間に挟まれた1つまたは複数の支持カラムであって、前記1つまたは複数の支持カラムは前記延長軸の前記第一部と前記第二部よりも小さな断面積を有する複数の支持カラムと、
を含む、チップ加熱アセンブリ。
【請求項50】
前記延長軸の前記第二部分が前記延長軸の前記第一部分よりも大きな体積を有する、請求項49に記載のチップ加熱アセンブリ。
【請求項1】
サブミクロン機械特性検査器具のホルダ底部と電気機械式トランスデューサとのアセンブリを結合するように構成された底部インターフェースと、
ミクロスケールの加熱ステージが透過型電子顕微鏡内に搭載されるときの前記透過型電子顕微鏡の電子ビームの外側のステージ検査用サンプル表面と、
前記ステージ検査用サンプル表面の下にあり、前記ステージ検査用サンプル表面を固定するステージプレートと、
前記検査用サンプルステージ上にあり、前記検査用サンプル表面に隣接する加熱エレメントであって、前記ホルダ底部が前記加熱エレメントから熱的に分離される前記加熱エレメントと、
を含む、検査用サンプルステージと、
を含む、ナノ機械特性検査を行うように構成されたミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項2】
前記検査用サンプルステージの体積が、前記ホルダ底部の体積よりも小さい、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項3】
前記検査用サンプルステージが、低温状態から高温状態へと加熱可能であり、前記高温状態では、前記検査用サンプルステージ上の前記加熱エレメントが、前記検査用サンプルステージを通って検査用サンプルへと熱を伝導させ、前記検査用サンプルの温度を特定の温度まで上昇させ、
前記検査用サンプルステージから前記底部インターフェースへの熱伝達が前記底部インターフェースと前記検査用サンプルステージとの間の断面積、前記検査用サンプルステージの熱抵抗、及び前記検査用サンプルステージと前記底部インターフェースとの間の空隙部によって実質的に阻まれ、前記阻まれた熱伝達によって加熱中に前記検査用サンプルが実質的に静止位置に配置される、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項4】
前記底部インターフェースと前記検査用サンプルステージとの間に結合された少なくとも1つの支持部を含み、前記少なくとも1つの支持部が、前記検査用サンプルステージから前記底部インターフェースへの方向に垂直であり、同じ方向に対して垂直の前記検査用サンプルステージの断面積よりも小さい、断面積を有する、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項5】
前記支持部が、前記検査用サンプルステージと前記ホルダ底部との間に1つまたは複数の空隙部を含む、請求項4に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項6】
前記検査用サンプルステージが約400℃以上の上昇温度にて加熱状態にある間に、前記底部インターフェースとホルダ底部との間の連結点が前記検査用サンプルステージと前記底部インターフェースとの間の熱的な分離によって約50℃以下である、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項7】
前記加熱エレメントが、耐熱エレメントである、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項8】
前記加熱エレメントが、前記ステージ検査用サンプル表面の下にある、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項9】
前記ステージ検査用サンプル表面に隣接する、検査用サンプルステージ上の温度感知熱抵抗エレメントを含む、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項10】
前記ステージ検査用サンプル表面と前記ステージプレートとが一体化されている、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項11】
前記加熱エレメントが前記ステージ検査用サンプル表面と直接隣接する、請求項1に記載のミクロンスケール加熱ステージ。
【請求項12】
サブミクロンスケール特性検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリに結合するように構成されたホルダ底部と、
前記ホルダ底部に結合し、前記ホルダ底部から熱的に分離され、検査用サンプルを受けるように構成されたステージ検査用サンプル表面と、前記ステージ検査用サンプル表面を固定し、前記ステージ検査用サンプル表面の下にあるステージプレートとを含む検査用サンプルステージと、
前記検査用サンプルステージ上にあり、前記ステージ検査用サンプル表面に隣接し、前記ステージ検査用サンプル表面で熱を発生させるように構成された加熱エレメントと、
を含む、検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリを含む、サブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項13】
前記サブミクロン機械検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリが、1つまたは複数のインデンテーション、圧縮、張力、疲労、摩擦、破壊の器具を含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項14】
前記サブミクロンスケール特性検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリが、フォースアクチュエータと変位センサーとを含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項15】
前記加熱エレメントが、耐熱エレメントである、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項16】
前記ステージ検査用サンプル表面に隣接する、検査用サンプルステージ上の温度感知熱抵抗エレメントを含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項17】
前記ステージ検査用サンプル表面と前記ステージプレートとが一体化されている、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項18】
前記ホルダ底部と前記検査用サンプルステージとの間に結合された支持部を含み、前記支持カラムが、前記検査用サンプルステージから前記ホルダ底部の方向に垂直であり、同じ方向に対して垂直の検査用サンプルステージ断面積よりも小さい、断面積を有する、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項19】
前記支持部が、前記検査用サンプルステージと前記ホルダ底部との間に1つまたは複数の空隙部を含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項20】
前記検査用サンプルステージが約400℃の温度に前記加熱エレメントによって加熱される場合に、前記検査用サンプルステージと前記ホルダ底部との間の熱的な分離によって、前記ホルダ底部が50℃以下である、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項21】
前記加熱エレメントが前記ステージ検査用サンプル表面に直接隣接する、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項22】
前記検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリが、前記検査用サンプルステージと前記ホルダ底部との間に挟まれた底部インターフェースを含む、請求項12に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項23】
検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリを含み、
前記検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリは、
サブミクロン機械検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリに結合するように構成されたホルダ底部と、
ステージプレートを含み、前記ステージプレートと結合した検査用サンプル表面上で検査用サンプルを受けるように構成された検査用サンプルステージであって、透過型電子顕微鏡内に搭載されるときに前記透過型電子顕微鏡の電子ビームの外側にあり、前記ホルダ底部から熱的に分離される検査用サンプルステージと、
前記検査用サンプルステージ上にあり、前記検査用サンプル表面と隣接する加熱エレメントであって、前記加熱エレメントが前記ステージ検査用サンプル表面にて熱を発生する加熱エレメントと、
を含むサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項24】
前記加熱エレメントが、耐熱エレメントである、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項25】
前記ホルダ底部と前記検査用サンプルステージとの間に結合された少なくとも1つの支持部を含み、前記少なくとも1つの支持部が、前記検査用サンプルステージから前記ホルダ底部への方向に垂直であり、同じ方向に対して垂直の検査用サンプルステージ断面積よりも小さい、断面積を有する、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項26】
前記ステージプレートと前記ステージ検査用サンプル表面とが一体化されている、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項27】
前記ステージ検査用サンプル表面が、前記ステージプレートに沿って結合されたサンプルマウントを含み、前記サンプルマウントは、ステージ熱伝導率よりも遥かに大きな熱伝導率を有し、前記検査用サンプルステージから前記サンプルマウントへと均等に熱分配する、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項28】
前記検査用サンプルステージが電子不透過性である、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項29】
前記ステージプレートが、前記ステージ検査用サンプル表面上のサンプルを機械検査することにより生じる偏向に対して前記ステージ検査用サンプル表面を固定する、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項30】
前記加熱エレメントが、ステージ検査用サンプル表面と直接隣接する、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項31】
前記加熱エレメントが、前記検査サンプルステージ内にある、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項32】
前記ステージ検査用サンプル表面が、電子ビームに平行である、請求項23に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項33】
透過型電子顕微鏡と結合するように構成された検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリを含み、前記検査用サンプルホルダと加熱のアセンブリは、
透過型電子顕微鏡と結合するように構成されたホルダ底部と、
前記ホルダ底部と結合し、検査用サンプルを受けるように構成された検査用サンプル表面を含み、透過型電子顕微鏡内に搭載されるときに前記透過型電子顕微鏡の電子ビームの外側にあり、前記ホルダ底部から熱的に分離される検査用サンプル保持手段と、
前記保持手段の上に配置され、前記保持手段にて熱を発生させる、前記検査用サンプルと前記検査用サンプル表面の両方を加熱する加熱手段と、
を含む、サブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項34】
前記検査用サンプル保持手段が前記検査用サンプル表面の下のプレートを含み、前記プレートは、前記検査用サンプル表面に配置される検査用サンプルの機械検査から生じる偏向に対して前記検査用サンプル表面を支持する、請求項33に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項35】
前記保持手段の体積が、ホルダ底部の体積よりも小さく、加熱すると、前記加熱手段が前記検査用サンプル表面の下の前記保持手段にて熱を発生させる、請求項33に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項36】
前記加熱手段が、前記検査用サンプル保持手段の上に耐熱エレメントを含み、前記耐熱エレメントが、前記ホルダ底部から熱的に分離される、請求項33に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項37】
1つまたは複数の、
前記保持手段からホルダ底部への方向に垂直であり、前記同じ方向のホルダ底部の断面積よりも小さい、断面積を有する、少なくとも1つの支持部と、
前記保持手段と前記ホルダ底部との間に挟まれた空隙部と、
低い熱伝導率を有する材料を含む前記保持手段と、
前記保持手段から前記ホルダ底部への熱伝達をスロットルし、前記保持手段が約400℃以上に加熱されたときに前記ホルダ底部を約50℃以下に維持する、前記1つまたは複数の材料、前記空隙部、及び前記少なくとも1つの支持部と、
を含む、請求項33に記載のサブミクロンスケール特性検査器具。
【請求項38】
ホルダ底部と結合する検査用サンプルステージの検査用サンプル表面に沿って検査用サンプルを結合することと、
前記検査用サンプルが電子ビーム軸内にある一方で、前記電気機械式トランスデューサのアセンブリが透過型電子顕微鏡に搭載されるときに、少なくとも前記検査用サンプルステージは、前記電子ビーム軸の外にあり、前記ホルダ底部をサブミクロンスケール機械検査器具と電気機械式トランスデューサのアセンブリ内で結合することと、
前記検査用サンプルを加熱エレメントにより前記検査用サンプルに隣接した前記検査用サンプルステージにて発生した熱によって所定の温度まで加熱することと、
ミクロメートルまたはこれより小さいスケールの、前記検査用サンプルの機械検査をすることと、
前記検査用サンプルステージから前記ホルダ底部へ熱伝達をスロットルすることにより、前記検査用サンプルを前記加熱による熱機械ドリフトや熱膨張に対して静的に保持することと、
前記検査用サンプルを機械的に検査し、静的に保持する一方で前記検査用サンプルのパラメータを同時に測定することと、
を含む、検査用サンプルのサブミクロンスケールの機械検査方法。
【請求項39】
前記ステージ検査用サンプル表面に沿って前記検査用サンプルを結合することが、前記検査用サンプルをサンプルマウントへ載置し、前記サンプルマウントと検査用サンプルステージとを結合することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記検査用サンプルを前記所定の温度になるまで加熱することが、前記サンプルマウント全体に均等に熱分配することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記検査用サンプルステージに配置された感知エレメントにて、前記検査用サンプルステージの温度を感知することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記検査用サンプルを前記所定の温度になるまで加熱することが、前記検査用サンプルステージにて前記加熱エレメントと感知エレメントとを含むクローズドまたはオープンループ制御システムにて前記検査用サンプルの加熱を制御することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記検査用サンプルを前記所定の温度になるまで加熱することが、前記検査用サンプルステージ体積と前記検査用サンプルのみを加熱することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
ステージプレートでサブミクロン機械検査を行うことによる偏向に対して前記ステージ検査用サンプル表面を固定することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記ホルダ底部への熱伝達をスロットルすることが、1つまたは複数の、
前記検査用サンプルステージから前記ホルダ底部に向けた熱伝達の方向に沿った、前記同じ方向の前記検査用サンプルステージ断面積よりも小さい、断面積を有する、1つまたは複数の支持部を通る熱伝達をスロットルすることと、
前記ホルダ底部の第二熱抵抗より大きい第一熱抵抗を有する前記検査用サンプルステージを通る熱伝達をスロットルすることと、
前記検査用サンプルステージ及び前記ホルダ底部との間に挟まれた空隙部にわたる熱伝達をスロットルすることと、
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記ホルダ底部への熱伝達をスロットルすることが、前記検査用サンプルステージが約400℃以上まで加熱される一方で、前記ホルダ底部を約20℃に維持することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記検査用サンプルのパラメータを同時に測定することが、前記検査用サンプルを機械検査し及び静的に保持することによって前記検査用サンプルを同時に画像化することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記検査用サンプルを機械検査し、静的に保持し、前記検査用サンプルの前記パラメータを同時に測定することが、画像装置内に収納された画像検査用サンプルホルダ内で行われることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
チップ底部と、
前記チップ底部と結合したトランスデューサのアセンブリと、
前記トランスデューサのアセンブリと結合した延長軸と、
サブミクロンスケールにて検査用サンプルを機械的に検査するように構成されたチップと、
前記延長軸の第一部上の前記チップに隣接して配置されるチップ加熱アセンブリであって、前記チップ加熱アセンブリと前記チップとが前記延長軸の第二部に対して熱的に分離されるチップ加熱アセンブリと、を含み、
前記延長軸が、
前記延長軸の前記第一部と前記第二部との間に挟まれた1つまたは複数の空隙部と、
前記延長軸の前記第一部と前記第二部との間に挟まれた1つまたは複数の支持カラムであって、前記1つまたは複数の支持カラムは前記延長軸の前記第一部と前記第二部よりも小さな断面積を有する複数の支持カラムと、
を含む、チップ加熱アセンブリ。
【請求項50】
前記延長軸の前記第二部分が前記延長軸の前記第一部分よりも大きな体積を有する、請求項49に記載のチップ加熱アセンブリ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図11】
【図14B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図11】
【図14B】
【公表番号】特表2013−512545(P2013−512545A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541077(P2012−541077)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046865
【国際公開番号】WO2011/066018
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512137256)ハイジトロン,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】HYSITRON,INC.
【住所又は居所原語表記】9625 West 76th St.,Eden Prairie,MN 55344,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046865
【国際公開番号】WO2011/066018
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512137256)ハイジトロン,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】HYSITRON,INC.
【住所又は居所原語表記】9625 West 76th St.,Eden Prairie,MN 55344,United States of America
【Fターム(参考)】
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