説明

ミシンの生産管理装置

【課題】より簡便、正確な生産管理を可能とするミシンの生産管理装置を提供する。
【解決手段】ミシンの生産管理装置は、回転角度検出手段50によるミシンMの上軸の回転角度の検出から回転速度を算出するCPU31と、算出された回転速度変化を回転速度データとして記憶するEEPROM34と、を備え、EEPROM34には所定の縫製作業工程を行った際の回転速度変化を示すと共に上下の補正値が設定されたマスターデータも記憶され、CPU31は回転速度データがマスターデータの上下の補正値の間の速度帯域に属するか否かを判別することで回転速度データの縫製作業工程を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの生産管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ミシンの各部の稼動に関する情報を取得してミシンの稼動状況を記憶管理し、当該稼働状況からミシンによる縫製作業の生産管理を行うことが可能なミシンの生産管理装置が知られている。従来のミシンの生産管理装置としては、例えば、ミシンの主軸の回転速度を一定時間毎に取得して表示することによりオペレータがミシンの稼働状況を把握することが可能な構成が知られている(例えば特許文献1)。また、縫製作業が終了する毎に当該終了時刻を記憶し、単位時間ごとの縫製作業の終了数をカウント可能なミシンの生産管理装置が知られている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−167069号公報
【特許文献2】特開2006−198395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ミシンを用いて行う縫製作業には複数の縫製作業工程が含まれており、縫製作業工程毎に要する時間やミシンの稼動状況は異なる。このため、ミシンの生産管理装置には縫製作業工程毎に生産管理を行う機能が求められている。しかしながら、従来のミシンの生産管理装置は縫製作業工程を自動判別する機能を有していなかった。従って、従来のミシンの生産管理装置を用いて縫製作業を行う場合、あらかじめ各縫製作業工程をミシンの生産管理装置に登録しておき、ミシンで縫製作業を行う際にこれから行う縫製作業工程を選択指定してから縫製作業を行うことで縫製作業工程別のカウントを行っていた。しかしながら、例えば縫製作業工程が変わる際に、それに伴う縫製作業工程の指定変更を失念した場合には誤った生産管理記録となってしまい、正確な生産管理記録を行えなくなるといった問題点があった。また、縫製作業工程が変わるたびに指定変更を行わなければならず、オペレータが煩雑な作業を強いられるといった問題点があった。
【0004】
本発明は、上述の問題点に鑑み、より簡便、正確な生産管理を可能とするミシンの生産管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ミシンの稼動に関する情報から当該ミシンの生産管理を行うミシンの生産管理装置において、
縫製中にオペレータの可変操作により変化するミシンモータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記回転速度検出手段によって検出された前記回転速度を経時的に記憶した回転速度パターンデータを記憶する回転速度記憶手段と、
所定の縫製作業工程についてマスターデータとしての回転速度パターンを縫製作業工程毎に個別に複数記憶するマスターデータ記憶手段と、
マスターデータとしての各回転速度パターンに対して、一工程全体に均一に回転速度の上方補正値を加算する第1補正部と、回転速度の下方補正値を減算する第2補正部とにより速度帯域を演算する速度帯域設定手段と、
オペレータによる実際の縫製作業によって検出された回転速度パターンが、前記マスターデータとして複数記憶された回転速度パターンから求めた速度帯域と一致する工程を判別する工程判別手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のミシンにおいて、前記マスターデータ記憶手段は、前記マスターデータを複数種類記録し、前記各マスターデータ毎に優先度の高低を設定可能な優先度設定手段を備え、前記工程判別手段は、オペレータによる実際の縫製作業によって検出された回転速度パターンが、記憶された複数のマスターデータと一致する場合には、より優先度が高いマスターデータと一致したと判断することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のミシンにおいて、前記上方補正値及び下方補正値を任意に設定可能な補正値設定手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のミシンにおいて、前記補正値設定手段による上下の補正値の設定は各マスターデータに対して個別に設定可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4に記載のミシンにおいて、ひとつの前記マスターデータに対して複数の前記上下の補正値を設定可能であることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のミシンにおいて、前記工程判別手段の判別結果を縫製作業工程毎に個別にカウントするカウント手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のミシンにおいて、前記カウント手段のカウント値を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、回転速度記憶手段には縫製作業に伴うミシンモータの回転速度の経時的変化が回転速度パターンデータとして記憶される。また、マスターデータ記憶手段には所定の縫製作業工程を行った際の回転速度パターンを示すマスターデータが縫製作業毎に記憶されている。さらに、マスターデータの回転速度の経時的変化に対して、第1補正部が均一に上方補正値を加算し、第2補正部が均一に下方補正値を減算して速度帯域を演算設定する。そして、工程判別手段は、実際の縫製時に検出した回転速度パターンが、マスターデータ(標準回転速度パターンデータ)として縫製工程ごとに記憶された回転速度パターンの前記速度帯域に属するか否かにより所定の縫製作業工程を判別する。つまり、ある縫製作業工程の実施に伴い記憶された回転速度データが、マスターデータに対して均一に加減算された上方補正値と下方補正値との間の速度帯域に属すれば、その回転速度データはそのマスターデータが示す所定の縫製作業工程を行ったことによって得られた回転速度データであると判定される。
これによって、縫製作業工程の判別は縫製作業工程の実施後に自動的に行われる。よって、縫製作業の実施前に縫製作業工程を選択指定する必要がなくなる。従って、縫製作業工程を手動で選択指定しなければならなかった為に煩雑な作業を強いられ、また誤った生産管理記録となることがあるといった従来のミシンの生産管理装置の問題点を解消でき、より簡便、正確な生産管理を可能とするミシンの生産管理装置を提供できる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、各マスターデータに優先度の高低を設定可能な優先度設定手段を備え、工程判別手段は、回転速度データが複数のマスターデータに基づく速度帯域に属する場合には、より高い優先度が設定されたマスターデータが示す縫製作業工程であると判別される。これによって、回転速度データに対する縫製作業工程の判定の優先順位を明確にすることが可能となり、よりオペレータの意図した縫製作業工程の判別結果を得られる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、補正値設定手段によって上方補正値及び下方補正値の補正値を任意に設定可能となる。つまり、マスターデータに対して均一に加減算された上方補正値と下方補正値との間の速度帯域を任意に設定可能となる。よって、回転速度データが各マスターデータに基づく速度帯域に属するか否かの判定の閾値を任意に設定可能となる。従って、よりオペレータの意図した通りの縫製作業工程の判別結果を得られる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、補正値設定手段による上下の補正値の設定は各マスターデータに対して個別に設定可能である。よって、例えば縫製作業工程の実施に伴って得られる回転速度データのばらつきが大きい縫製作業工程を示すマスターデータには上下の補正値を大きく設定し、当該ばらつきが小さい縫製作業工程を示すマスターデータには上下の補正値を小さく設定することにより、各縫製作業工程に最適な速度帯域による判別を行うことが可能となる。従って、よりオペレータの意図した通りの縫製作業工程の判別結果を得られることに加え、より正確な判別結果を得ることが可能となり、一層正確な生産管理を可能とするミシンの生産管理装置を提供できる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、ひとつのマスターデータに対して複数の上下の補正値を設定可能である。つまり、工程判別手段による判別において、回転速度データがマスターデータに設定された「ある上下の補正値」による速度帯域に属するかどうかの判別と、当該回転速度データが当該マスターデータに設定された「ある上下の補正値」とは別の上下の補正値による速度帯域に属するかどうかの判別と、を個別に行える。よって、例えば、上方補正値が大きく加算され下方補正値が小さく減算された速度帯域と、上方補正値が小さく加算され下方補正値が大きく減算された速度帯域とを個別に設定するといったようなことが可能となる。従って、各マスターデータに対する速度帯域の設定をより柔軟に行うことが可能となる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、カウント手段は工程判別手段の判別結果を縫製作業工程毎に縫製枚数をカウントする。よって、カウント手段のカウント結果を確認することにより、オペレータは縫製作業工程の実績を把握することが可能となり、ミシンの生産管理がより容易に行える。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、表示手段はカウント手段のカウント値を表示する。よって、オペレータはミシンの生産管理装置に備えられた表示手段を見るだけで縫製作業工程の実績を把握することができる。従って、一層簡便な生産管理を可能とするミシンの生産管理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の全体構成)
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明によるミシンの生産管理装置は、ミシンの稼動に関する情報から当該ミシンの生産管理を行うミシンの生産管理装置である。
図1は、本発明によるミシンの生産管理装置を備えたミシンMの構成を示す説明図である。ミシンMは、縫い針3を支持して上下動する針棒2と、主軸としての上軸(図示略)を回転駆動するモータ4と、モータ4の駆動/停止指示入力及びモータ4駆動時の回転速度の指示入力が可能なペダルスイッチ5と、被縫製物(図示略)を移動させる布移動機構6と、ミシンMに関する各種情報表示及び入力操作を可能とする操作パネル20と、ミシン1の各部の動作制御を行う制御部30と、ミシンMの電源の入/切を切替可能な電源スイッチ41と、を備えている。
【0020】
また、ミシンMは、その上面部に布移動機構6が設けられた土台部1aと、土台部1aから立設された立胴部1bと、立胴部1bから側方に延設されたアーム部1cとを有するミシンフレーム1を備えている。また、アーム部1c内には主軸としての上軸(図示略)がアーム部1cの延設方向に沿って設けられている。また、土台部1a内には上軸に平行に設けられた下軸(図示略)が設けられている。また、上軸はアーム部1c内で、下軸は土台部1a内で回転可能に設けられている。さらに、上軸はモータ4と連結されており、モータ4の駆動によって回転する。さらに、下軸は上軸の回転に伴って回転するよう連結されており、これによってモータ4の駆動によって上軸及び下軸が回転する。
【0021】
さらに、ミシンMには上軸の回転角度の変化を検出可能な回転角度検出手段50(図3参照)が設けられている。回転角度検出手段としては、例えば上軸の回転角度を検出可能に設けられたエンコーダや、上軸の回転に伴って検出光の検出/非検出が切り替わるよう設けられたフォトインタラプタ等による構成が上げられるが、上軸の回転角度が検出可能であればその形態は上述の例に限定されない。回転角度検出手段50が検出した上軸の回転速度は、制御部30に入力される。
【0022】
針棒2は、ミシンフレーム1のアーム部1cによって上下動可能に支持され、その下端で縫い針3を支持する。また、針棒2は上下動機構(図示略)を介して上軸と連結されている。上下動機構は、上軸の回転運動を上下動運動に変換して針棒2に伝達する機構であり、上軸の回転によって針棒2が上下動するよう設けられている。なお、ミシンフレーム1の土台部1aの上面であって針棒2の下方には針板(図示略)が設けられており、縫製作業時には被縫製物が針板の上方に載置される。また、針板には縫い針3が挿通可能な針穴が設けられており、針棒2の上下動に伴って上下動する縫い針3は針穴を挿通する。
モータ4は、立胴部1bにおいてミシンフレーム1のアーム部1cが延設されている方の側部とは逆の側部に設けられており、上述のようにアーム部1c内の上軸と連結されている。モータ4の駆動によって上軸が回転すると、上述のように上下動機構を介して針棒2が上下動する。
【0023】
ペダルスイッチ5は、オペレータによって踏み込み操作されることにより、その踏み込み量に応じてモータ4の駆動/停止指示入力及びモータ4の駆動時の回転速度の可変指示入力を行えるよう設けられている。なお、ペダルスイッチ5によるモータ4の駆動に関する入力は後述するスタートスイッチ8がONの場合にのみ行える。
布移動機構6は、針板の針穴周囲に設けられた溝穴部(図示略)から出没動作可能に設けられた送り歯(図示略)を有している。また、布移動機構6は上述の下軸と連結しており、下軸の回転によって上下方向の出没動作及び所定の送り動作を上述の溝穴部に沿った方向に行うよう設けられている。被縫製物が載置された状態でモータ4の駆動によって下軸が回転すると、送り歯が針板から出没及び送り動作することによって被縫製物は送り動作の方向に沿って布送りされる。なお、縫製作業時には被縫製物を針板上に載置した後、布押え(図示略)を被縫製物に下降させて被縫製物を布移動機構の出没位置に押し付ける。これによって好適に送り歯の送り動作が被縫製物に伝達され、布送りが行われる。
【0024】
また、図示していないが、針板の下方には釜機構が設けられており、下軸と連結されている。つまり、モータ4の回転によって下軸が回転すると、釜機構も回転駆動する。
モータ4が回転すると、縫い針3が上下動すると共に釜機構が回転駆動する。これによって、周知のように縫い針の上下動と釜の回転との協働により縫目が形成される。さらに、布移動機構6によって被縫製物が布送りされることで、周知のように縫いが行われる。
【0025】
(操作パネル)
図2は、操作パネル20の構成を示す説明図である。操作パネル20は、各種情報を表示可能な表示器21と、各種入力を可能とする操作スイッチ22と、外部記憶媒体60を着脱可能に接続するインターフェイス23(図3参照)と、を備えている。
表示器21は所謂液晶ディスプレイであり、ミシンMに関する各種情報を表示する。なお、表示器21に表示される各種情報は後述する制御部30によって制御される。
操作スイッチ22は、表示器21の周囲に配置された各種のボタンを有しており、各ボタンの操作に対応した入力内容が制御部30に入力される。制御部30は当該入力内容に応じた処理を行う。なお、操作スイッチ22の各種ボタンは、ボタンに固定の入力内容が割り当てられたものと、表示器21の表示内容に応じて入力内容が変更するものとがある。
インターフェイス23は、外部記憶媒体60を着脱可能に接続する。インターフェイス23に接続された外部記憶媒体60には、制御部30からのアクセスが可能となる。なお、外部記憶媒体60としては、例えばコンパクトフラッシュ(登録商標)やスマートメディア、SDカードその他の記憶媒体があげられ、インターフェイス23はこれらの記憶媒体の形状に応じて設けられるか、また各記憶媒体を接続するためのマウンタ等の接続部品が接続可能に設けられている。
【0026】
(制御部)
図3は、操作パネル20、制御部30並びこれらに接続されている各部の構成を示すブロック図である。
制御部30は、ミシンMの動作制御に関する各種処理を行うCPU31と、CPU31が行う各種処理に対応した各プログラム、データ等を書き換え不可能に記憶するROM32と、CPU31が行う各種処理において一時的にデータが格納される記憶領域として機能するRAM33と、CPU31が行う各種処理に対応した各プログラム、データ等を書き換え可能に記憶するEEPROM34と、計時処理を行う計時回路35と、を備えている。
また、制御部30は、モータ4、ペダルスイッチ5、回転角度検出手段50、操作パネル20並びにミシンMに設けられた各種スイッチ、センサー類及びアクチュエータ等と接続されている。なお、各種スイッチとして例えばオペレータの操作により糸切り機構(図示略)による糸切りを行う糸切りスイッチ7や、操作(ON)されることでペダルスイッチ5によるモータ4の駆動を可能とするスタートスイッチ8等がある。スタートスイッチ8がONの際にはペダルスイッチ5によるモータ4の駆動/停止指示入力及びモータ4の駆動時の回転速度の指示入力が行える。スタートスイッチ8がOFFの際にはペダルスイッチ5の踏み込み操作に関らずモータ4は常に停止状態となる。
【0027】
CPU31は、ミシンMの動作内容に応じたプログラム、データ等をROM32、EEPROM34から呼び出して実行処理し、当該処理結果によってミシンMの各部の動作制御を行うことでミシンMの動作制御を行う。つまり、CPU31は所謂ソフトウェア処理によって各種動作制御等のための処理を行う。
また、CPU31は上述の回転角度検出手段50が検出した上軸の回転速度を経時的に取得し、EERPOM34に記憶する処理(回転速度記録処理)を行う。以下、回転速度記録処理について詳説する。
図4は回転速度記録処理において取得された上軸の回転速度の経時的変化の一例である折れ線R1を示すグラフ図である。図5は図4に示す上軸の回転速度の経時的変化における時間[秒]と回転速度[rpm]との対応関係を示す表である。回転速度記録処理は、ペダル5の踏み込み操作によるモータ4の駆動指示入力時から、その後に糸切りスイッチ7が操作されるまでの間行われる。スタートスイッチ8がONされ、ペダルスイッチ5が踏み込み操作されると、モータ4が駆動される。CPU31は、回転角度検出手段50によって検出された上軸の回転角度の変化から上軸の回転速度を算出し、算出された回転速度の経時的変化(以下、「回転速度変化」とする)をその縫製データの回転速度データとしてRAM13に格納し、その後EEPROM34に記憶させる。よって、回転角度検出手段50とCPU31は「回転速度検出手段」として、制御部30は「回転速度記憶手段」として機能する。EEPROM34に記憶される回転速度データは、図5に示すような縫製作業の時間[秒]と回転速度[rpm]との対応関係を示すデータとして記憶される。糸切りスイッチ7の操作後、再びペダル5の踏み込み操作によるモータ4の駆動指示入力が行われた場合は再び回転速度記録処理が行われる。複数回の回転速度記録処理によって得られた回転速度データは個別に記憶される。
【0028】
ROM32、EEPROM34はCPU31が行う各種処理に対応した各プログラム、データ等を記憶する。また、EEPROM34は上述の回転速度記録処理による上軸の回転速度を記憶する。さらに、EEPROM34は縫製作業の実施に伴って行われた回転速度記録処理で得られた回転速度データが、どの縫製作業工程に属するかを判別するための比較データを記憶する。比較データは、所定の縫製作業の回転速度変化を示すマスターデータに上下の補正値と優先度とが付加されたデータである。以下、比較データに含まれる各データ又はパラメータについて詳説する。
【0029】
(マスターデータ)
まず、マスターデータについて詳説する。図6はマスターデータの一例である折れ線L1ならびにその上方補正値及U1及び下方補正値D1を示すグラフ図である。マスターデータとは、取得された回転速度データがいずれの縫製作業工程のデータであるかを識別すする際に比較元となるデータ(標準回転速度パターンデータ)であり、上述のマスターデータと比較される実際縫製時の回転速度(パターン)データとは別のデータである。図6の折れ線L1が示すように、マスターデータは、所定の縫製作業を行った際の上軸の回転速度変化を示すデータである。マスターデータは、上述の回転速度記録処理と同様の方法で記録した回転速度データあるいは当該回転速度データに所定の近似処理(例えば最小二乗法等)を施して得られたデータをマスターデータとして用いても良いし、あらかじめマスターデータとして作成した時間[秒]と回転速度[rpm]との対応関係を示すデータを外部(例えば外部記憶媒体60等)から読み込み、EEPROM34に記憶させるようにしてもよい。なお、本発明の実施形態においては、回転速度データからマスターデータを得る場合には回転速度データに近似処理を施したものをマスターデータとしている。また、回転速度データからマスターデータを作成する際には、操作パネル20の操作スイッチ22から所定の入力操作(マスターデータ作成開始入力操作)を行い、その後に登録したいマスターデータに対応する縫製作業工程を行う。
なお、マスターデータはミシンMで行われる縫製作業工程毎に個別に記憶され、個別の番号(工程番号)が付与されている。縫製作業工程毎に上軸の回転速度変化は異なるので、各縫製作業工程に応じた上軸の回転速度変化を示すデータが各縫製作業工程のマスターデータとして記憶される。工程番号の付与は、操作パネル20の操作スイッチ22に対する所定の入力操作(工程番号付与操作)を介して行われる。よって、マスターデータを含む比較データを記憶するEEPROM34は「マスターデータ記憶手段」として機能する。
【0030】
(上方補正値及び下方補正値)
次に、上方補正値及び下方補正値について詳説する。上方補正値は、マスターデータの折れ線L1が示す回転速度変化に対して均一に回転速度値の上方補正(例えば700[rpm])を加えるパラメータ値であり、例えば、マスターデータの折れ線L1に対して上方補正値は図6に示す折れ線U1に示すように加算される。下方補正値は、マスターデータの折れ線L1が示す回転速度変化に対して均一に回転速度値の下方補正(例えば700[rpm])を減ずるパラメータ値であり、例えば、マスターデータの折れ線L1に対して下方補正値は図6に示す折れ線D1に示すように減算される。上方補正値、下方補正値はマスターデータに対する補正値(例えば700[rpm])として設定され、CPU31がマスターデータの回転速度変化に均一に加減算する処理を行う。なお、均一に加減算した結果得られた補正後の回転速度変化を比較データに含めてもよいし、比較データには補正値のみを記憶させて必要に応じてCPU31が上述の加減算処理を行っても良い。
【0031】
なお、上述の上方補正値及び下方補正値の値(700[rpm])に限らず、任意の値の補正値による上方補正値、下方補正値を各マスターデータに対して個別に付加可能である。
図7は補正値の設定入力を行う際の操作パネル20の表示内容を示す説明図である。補正値の設定入力を行う際には、表示部21の左側に補正値を示す4桁の数値Gが、またその右側に操作スイッチ22をテンキーとして機能させるための数字や記号が表示される。なお、操作スイッチ22は表示部21の上下左右に設けられているが、このうち表示器21の上方に配置された各キー(複数の操作スイッチ22a)による入力内容はその直下に表示された表示内容が示す数字、記号に対応し、表示器21の下方に配置された各キー(複数の操作スイッチ22b)による入力内容はその直上に表示された表示内容が示す数字、記号に対応する。従って、例えば補正値として500[rpm]を設定したい場合、表示器21の上下に配置された操作スイッチ22a,22bを用いて「0」、「5」、「0」、「0」、の順に入力することにより、数値Gの表示が「0500」となる。その後、Enterキーに対応する入力を行うと、CPU31は数値Gの表示内容に示された値を補正値として設定し、当該補正値を設定されたマスターデータの回転速度変化に対して均一に加減算する速度帯域を演算する。よって、操作パネル20は「補正値設定手段」として機能する。また、CPU31は「第1補正部」、「第2補正部」として機能し、前記「補正値設定手段」、「第1補正部」、「第2補正部」により速度帯域を演算する「速度帯域設定手段」を構成する。
【0032】
なお、上方補正値と下方補正値の値は同一である必要はなく、また個別の設定も可能である。例えばマスターデータに対する差異としての上方補正値を700[rpm]、下方補正値を500[rpm]とするといったように上方補正値と下方補正値を異なる値としてもよい。
さらに、ひとつのマスターデータに対して複数の上方補正値、下方補正値を設定してもよい。その場合、マスターデータ及び工程番号は同一であるが上下の補正値設定が異なるデータがそれぞれ個別の比較データとしてEEPROM34に記憶される。
【0033】
(優先度)
次に、優先度について詳説する。優先度は、各比較データに含まれるマスターデータに個別に設定される数値であり、設定された数値が大きいほど優先度が高いものとして扱われる。工程番号の付与は、操作パネル20の操作スイッチ22に対する所定の入力操作(優先度設定入力操作)を介して行われる。
後述する回転速度データの縫製作業工程判別処理においては、複数のマスターデータがEEPROM34に記憶されていた場合に、回転速度データとより高い優先度が設定されたマスターデータを含む比較データとの比較処理が優先されて行われる。つまり、回転速度データとより高い優先度が設定されたマスターデータを含む比較データとの比較処理結果が、当該回転速度データがいずれの縫製作業工程によるものであるかを識別する判定の際に優先適用される。
【0034】
(縫製作業工程判別処理)
ここで、縫製作業工程判別処理について詳説する。縫製作業工程判別処理は、回転速度データがどの縫製作業工程を行った際の上軸の回転速度変化に対応するものなのかを判別する処理である。
図8は回転速度データと比較データに含まれる上方補正値及び下方補正値との関係の一例を示す説明図である。なお、図8(a)は回転速度データを示す折れ線R1が比較データの上方補正値U1を上限とし、下方補正値D1を下限とする速度帯域に収まる場合、図8(b)は回転速度データを示す折れ線R1が比較データの上方補正値U2、下方補正値D2の速度帯域に収まらない場合を示す。
ミシンMを用いた縫製作業が行われた場合、上述のように回転速度データがEEPROM34に記憶される。その後、CPU31は、当該回転速度データの縫製作業工程判別処理を行う。縫製作業工程判別処理では、EEPROM34に記憶された比較データのうち最も高い優先度が設定されたマスターデータを含む比較データを呼び出し、当該比較データに含まれる上方補正値と下方補正値との間の速度帯域(以下「誤差帯域」とする)に回転速度データの上軸の回転速度変化が収まるかどうかを判定する。このとき、例えば図8(a)に示すように回転速度データが誤差帯域に収まる場合、当該回転速度データが得られた際の縫製作業工程は当該マスターデータに対応する縫製作業工程を行ったものと判別される。その後、CPU31は当該マスターデータの工程番号のカウント値を+1する。一方、例えば図8(b)に示すように回転速度データが誤差帯域に収まらない場合、当該マスターデータの次に高い優先度が設定されたマスターデータを含む比較データを呼び出し、上述と同様の判定処理を行う。この判定処理は、回転速度データがいずれかの比較データの誤差帯域に収まるまで繰り返され、全ての比較データの誤差帯域に収まらなかった場合、CPU31はどの縫製作業工程か判別できなかった工程(不明な工程)のカウント値を+1する。その後、CPU31はカウント値の増加をEEPROM34に記憶する。以上で縫製作業工程判別処理は終了する。従って、CPU31は「工程判別手段」として機能する。
上記処理では比較元データの帯域に収まった時点で次の比較データとの比較を行うことなく処理を終了するので、結果的により高い優先度が設定されたマスターデータを含む比較データとの一致が優先適用されることとなる。
【0035】
なお、EEPROM34には各マスターデータの工程番号及び不明な工程の実施回数を示すカウント値が記憶されており、上述の縫製作業工程判別処理においてカウント値を+1する処理に際してCPU31は判別結果に対応する工程番号又は不明な工程のカウント値を呼び出して+1し、再度EEPROM34に記憶する。よって、CPU31は「カウント手段」として機能する。
【0036】
なお、ユーザは操作パネル20の操作スイッチ22に対して所定の操作を行うことで、上述のカウント値に対応した各縫製作業工程の実施回数記録を表示器21に表示させることが可能である。よって、操作パネル20は「表示手段」として機能する。
【0037】
(比較データ作成処理動作)
次に、ミシンの生産管理装置を備えたミシンMの動作について詳説する。まず、比較データを作成してEEPROM34に記憶する際の動作(比較データ作成)、特に回転速度データからマスターデータを作成する場合について詳説する。図9は比較データ作成処理動作のフロー図である。
まず、オペレータによって上述のマスターデータ作成開始入力操作がなされる(ステップS1)。その後、オペレータによって作成したいマスターデータの縫製作業工程に対応する縫いがミシンMで行われ、その回転速度データがEERPOM34に記憶される(ステップS2)。ステップS2の縫製作業工程による縫いが終了すると、CPU31は上述の所定の近似処理を行う(ステップS3)。その後、オペレータによってマスターデータの工程番号が入力され(ステップS4)、マスターデータの優先度が設定入力され(ステップS5)、上下の補正値が設定入力される(ステップS6)。以上で比較データ作成は終了する。
なお、マスターデータとして用いる回転速度データを外部(例えば外部記憶媒体60等)から読み込む場合、ステップS1〜S3を行う代わりに当該マスターデータをEEPROM34に記憶させ、その後ステップS4以降を行う。
また、外部から比較データを読み込む場合、その比較データに既に工程番号の付与や優先度、マスターデータの上下の補正値の設定が為されていた場合には、その付与及び設定のためのステップを省略する。このとき、そのマスターデータの工程番号は、その前にミシンMに登録されているマスターデータの工程番号は対応している必要がある。つまり、同じ縫製作業工程に対応するマスターデータには同じ工程番号が振られている必要があり、異なる縫製作業工程のマスターデータには異なる工程番号が振られている必要がある。また、優先度の設定は他の比較データに設定された優先度の数値と重複しない必要がある。
【0038】
(ミシンによる縫製作業とその後の縫製作業工程判別処理動作)
次に、ミシンMによる縫製作業とその後に行われる縫製作業工程判別処理におけるミシンMの動作について詳説する。図10はミシンMによる縫製作業とその後に行われる縫製作業工程判別処理のフロー図である。
まず、ミシンMによる縫製作業が行われる(ステップS11)。ステップS11に伴い、CPU31は回転速度記録処理を行うことにより回転速度データをEEPROM34に記憶する(ステップS12)。その後、CPU31は、まだ呼び出されていない比較データの中で最も高い優先度が設定されたマスターデータを含む比較データ呼び出し(ステップS13)、ステップS12でEEPROM34に記憶された回転速度データがその比較データの誤差帯域に収まるかどうか判定する(ステップS14)。収まる場合(ステップ14:YES)、そのマスターデータの工程番号のカウント値を+1し(ステップS15)、処理を終了する。収まらない場合(ステップS14:NO)、CPU31は、EEPROM34に記憶された比較データのうちステップS13の判定処理においてまだ呼び出されていない比較データがあるかどうか判定する(ステップS16)。ある場合(ステップS16:YES)、ステップS13の処理に戻る。ない場合(ステップS16:NO)、不明な工程のカウント値を+1し(ステップS17)処理を終了する。ステップS12〜S17の工程は、縫製作業(ステップS11)が行われる毎に行われ、ステップ13以降の工程はステップS11の縫製作業が終了し、ステップS12にて当該縫製作業の回転速度データが記憶された後行われる。
【0039】
(本発明によるミシンの生産管理装置の作用効果)
上述の実施の形態によれば、縫製作業工程の実施に伴い記憶された回転速度データが、比較データの誤差帯域に収まれば、その回転速度データはそのマスターデータに対応する縫製作業工程を行ったことによるものと判定され、そのマスターデータの工程番号のカウント値が+1される。これによって、縫製作業工程の判別は縫製作業工程の実施後に自動的に行われる。よって、縫製作業の実施前に縫製作業工程を選択指定する必要がなくなる。従って、縫製作業工程を手動で選択指定しなければならなかった為に煩雑な作業を強いられ、また誤った生産管理記録となることがあるといった従来のミシンの生産管理装置の問題点を解消でき、より簡便、正確な生産管理を可能とするミシンの生産管理装置を提供できる。
【0040】
また、操作パネル20による優先度設定入力操作によって各マスターデータに優先度が付与され、CPU31はより高い優先度が設定されたマスターデータに対応する縫製作業工程との判別を優先する。つまり、回転速度データが複数の比較データの誤差帯域に属する場合には、より高い優先度が設定されたマスターデータが示す縫製作業工程であると判別される。これによって、回転速度データに対する縫製作業工程の判定の優先順位を明確にすることが可能となり、よりオペレータの意図した縫製作業工程の判別結果を得られる。
【0041】
さらに、操作パネル20による入力操作を介して、各マスターデータに対して上方補正値及び下方補正値の補正値を任意に設定可能となる。つまり、各マスターデータの誤差帯域を任意に設定可能となり、回転速度データが各マスターデータの誤差帯域に属するか否かの判定の閾値を任意に設定可能となる。従って、よりオペレータの意図した通りの縫製作業工程の判別結果を得られる。
【0042】
さらに、操作パネル20による上下の補正値の設定は各マスターデータに対して個別に設定可能である。よって、例えば縫製作業工程の実施に伴って得られる回転速度データのばらつきが大きい縫製作業工程を示すマスターデータには上下の補正値を大きく設定し、当該ばらつきが小さい縫製作業工程を示すマスターデータには上下の補正値を小さく設定することにより、各縫製作業工程に最適な誤差帯域による判別を行うことが可能となる。従って、よりオペレータの意図した通りの縫製作業工程の判別結果を得られることに加え、より正確な判別結果を得ることが可能となり、一層正確な生産管理を可能とするミシンの生産管理装置を提供できる。
【0043】
さらに、ひとつのマスターデータに対して複数の上下の補正値を設定可能である。よって、例えば、上方補正値が大きく加算され下方補正値が小さく減算された誤差帯域と、上方補正値が小さく加算され下方補正値が大きく減算された誤差帯域とを個別に設定するといったようなことが可能となる。従って、各マスターデータに対する誤差帯域の設定をより柔軟に行うことが可能となる。
また、優先度との組み合わせにより一層柔軟な運用が可能となる。例えば、あるマスターデータ(マスターデータA)にある上下の補正値(補正値A1)と補正値A1とは異なる上下の補正値(補正値A2)を設定し、別のマスターデータ(マスターデータB)に上下の補正値B1を設定したとする。このとき、補正値A1を設定されたマスターデータAの優先度を最も高くし、補正値A2を設定されたマスターデータAの優先度を最も低くし、マスターデータBはその中間の優先度を設定したとする。この場合、回転速度データが補正値A1の誤差帯域には収まらないが、補正値A2の誤差帯域には収まるとすると、当該回転速度データの縫製作業工程はマスターデータAに対応する縫製作業工程と判別されうる。このとき、当該回転速度データが補正値B1の誤差帯域にも収まる場合には、優先度によってマスターデータBに対応する縫製作業工程と判別される。つまり、優先度と各マスターデータへの複数の補正値設定とによって判別の優先順位をより柔軟に設定できる。
【0044】
さらに、操作パネル20にカウント値に基づく各縫製作業工程の実施回数記録を表示させることが可能である。従って、オペレータは当該実施回数記録を見るだけで縫製作業工程の実績を把握することができる。従って、一層簡便な生産管理を可能とするミシンの生産管理装置を提供できる。
【0045】
(その他)
なお、本実施形態では回転速度記録処理が行われるタイミングをペダル5の踏み込み操作によるモータ4の駆動指示入力時から糸切りスイッチ7が操作されるまでとしているが、回転速度記録処理の実施タイミングは上述に限定されない。例えば、ミシンMの電源が投入されている間は常に回転速度記録処理を行うようにしてもよい。この場合、記憶された回転速度データに対して各縫製作業工程の区切りを付加する手段があることが望ましい。例えば、前述の糸切りスイッチ7の入力を区切りとしてもよいし、操作パネル20の表示部に回転速度データを表示して、手動で各縫製作業工程の区切り目を設定できるようにするといった方法や、回転速度が所定条件を満たした(例えば0より大きくなった)タイミングから回転速度が別の所定条件を満たした(回転速度が0になった)タイミングまでをひとつの縫製作業工程とみなして自動的に区切りを付加するといった方法が挙げられる。そして、縫製作業工程判定処理の際には、区切りと区切りの間の一つ一つの区間を比較データとの比較対象とする処理が行われる。また、判定は一つの区間の回転速度データが得られた都度行っても良いし、複数区間蓄積された回転速度データに対して一度に行っても良い。また、複数区間蓄積された回転速度データに対していずれかの区間を任意に選択してそれのみ判定を行っても良い。
【0046】
また、上述の実施の形態では各マスターデータに対して個別に上下の補正値を設定するようになっているが、他の設定方法を用いてもよい。例えば、EEPROM34に上方補正値、下方補正値を記憶させて各マスターデータに一律で当該上下補正値を設定するようにしても良い。また、あらかじめROM32又はEEPROM34に設定された上方補正値、下方補正値を自動的に各マスターデータに適用するようにしてもよい。また、上方補正値と下方補正値を個別に設定するのではなく、ひとつの補正値設定を上方及び下方に共通で設定するようにしてもよい。また、マスターデータはひとつでも複数でもよいことは言うまでもない。
【0047】
また、上述の実施の形態においては縫製作業工程判別処理において回転速度データが誤差帯域に収まるか否かによって判別が行われているが、工程判別手段によって行われる「回転速度データが速度帯域に属するか否か」の判別条件の設定は上述の実施の形態に限定されない。例えば回転速度データが誤差帯域に属する割合を算出し、当該割合が所定の閾値を上回った場合にそのマスターデータが示す縫製作業工程として判別するといったようにしてもよい。
【0048】
また、本発明のミシンの生産管理装置の特徴を逸脱しない範囲であれば、実施の形態は上述に限定されない。例えば、上述の回転速度検出手段は上軸の回転角度から回転速度を算出しているが、モータの回転角度から算出するようにしてもよい。また、上述の実施の形態において所謂ソフトウェア処理によって実現されている構成に代えて別途専用の装置を用いてもよいし、アナログ回路によってもよい。また、優先度の高低の判断基準が数値の大小に限定されないことは言うまでもなく、例えば数値が小さい方がより高い優先度となるようにしてもよいし、アルファベットの昇順や降順といったものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるミシンの生産管理装置を備えたミシンの構成を示す説明図である。
【図2】操作パネルの構成を示す説明図である。
【図3】操作パネル、制御部並びこれらに接続されている各部の構成を示すブロック図である。
【図4】回転速度記録処理において取得された上軸の回転速度変化の一例である折れ線を示すグラフ図である。
【図5】図4に示す上軸の回転速度変化における時間[秒]と回転速度[rpm]との対応関係を示す表である。
【図6】マスターデータの一例である折れ線ならびにその上方補正値及及び下方補正値を示すグラフ図である。
【図7】補正値の設定入力を行う際の操作パネルの表示内容を示す説明図である。
【図8】回転速度データと比較データに含まれる上方補正値及び下方補正値との関係の一例を示す説明図である。なお、図8(a)は回転速度データが誤差帯域に収まる場合、図8(b)は回転速度データが誤差帯域に収まらない場合を示す。
【図9】比較データ作成処理動作のフロー図である。
【図10】ミシンによる縫製作業とその後に行われる縫製作業工程判別処理のフロー図である。
【符号の説明】
【0050】
4 モータ
20 操作パネル
21 表示器
22 操作スイッチ
30 制御部
31 CPU
32 ROM
34 EEPROM
50 回転角度検出手段
60 外部記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンの稼動に関する情報から当該ミシンの生産管理を行うミシンの生産管理装置において、
縫製中にオペレータの可変操作により変化するミシンモータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記回転速度検出手段によって検出された前記回転速度を経時的に記憶した回転速度パターンデータを記憶する回転速度記憶手段と、
所定の縫製作業工程についてマスターデータとしての回転速度パターンを縫製作業工程毎に個別に複数記憶するマスターデータ記憶手段と、
マスターデータとしての各回転速度パターンに対して、一工程全体に均一に回転速度の上方補正値を加算する第1補正部と、回転速度の下方補正値を減算する第2補正部とにより速度帯域を演算する速度帯域設定手段と、
オペレータによる実際の縫製作業によって検出された回転速度パターンが、前記マスターデータとして複数記憶された回転速度パターンから求めた速度帯域と一致する工程を判別する工程判別手段と、を備えることを特徴とするミシンの生産管理装置。
【請求項2】
前記マスターデータ記憶手段は、前記マスターデータを複数種類記録し、
前記各マスターデータ毎に優先度の高低を設定可能な優先度設定手段を備え、
前記工程判別手段は、オペレータによる実際の縫製作業によって検出された回転速度パターンが、記憶された複数のマスターデータと一致する場合には、より優先度が高いマスターデータと一致したと判断することを特徴とする請求項1に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項3】
前記上方補正値及び下方補正値を任意に設定可能な補正値設定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項4】
前記補正値設定手段による上下の補正値の設定は各マスターデータに対して個別に設定可能であることを特徴とする請求項3に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項5】
ひとつの前記マスターデータに対して複数の前記上下の補正値を設定可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項6】
前記工程判別手段により判別した各縫製作業工程毎に、縫製枚数をカウントするカウント手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項7】
前記カウント手段のカウント値を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のミシンの生産管理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate