説明

ミシンシステム、ミシン、及び記憶装置

【課題】記憶装置に記憶された刺繍情報を使用できるミシンの台数を制限することが可能なミシンシステム、ミシン、及び記憶装置を提供する。
【解決手段】USBメモリに記憶されている使用条件情報が復号される。使用条件情報にミシン自身が合致する場合、USBメモリに記憶されている使用履歴データテーブルが復号される(S47)。使用履歴データテーブルに記憶されている、ミシンの個体を識別するための情報である第一個体情報に、ミシン自身の第一個体情報と合致する第一個体情報があるか否かが判断される(S49及びS50)。合致する第一個体情報がない場合(S50:NO)、使用履歴データテーブルに記憶されている第一個体情報が所定の数より少ないか否かが判断される(S51)。所定の数より少ない場合(S51:YES)、刺繍情報が復号され(S55)、刺繍縫製が実行される(S60)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍情報に基づいて布に刺繍を行うミシンシステム、ミシン、及び記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記憶装置に記憶された刺繍情報に基づいて、布に刺繍模様を縫製するミシンが知られている。例えば、特許文献1に記載の刺繍装置付きミシンでは、複数の刺繍模様の模様データが記憶されたROMカードをミシンに装着し、所望の刺繍模様を選択して縫製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−49766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のミシンでは、ROMカードを装着するカードスロットを有しているミシンであれば、ROMカードに記憶されている模様データ(刺繍情報)を読み込むことが可能である。このため、不特定多数のミシンで同じROMカードが不正に使用される場合があるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、記憶装置に記憶された刺繍情報を使用できるミシンの台数を制限することが可能なミシンシステム、ミシン、及び記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るミシンシステムは、布に縫製を行うミシンと、前記ミシンに着脱可能な記憶装置とを備えたミシンシステムにおいて、前記記憶装置は、第一復号鍵で復号可能に暗号化された、前記ミシンが刺繍を行うための情報である刺繍情報を記憶する刺繍情報記憶手段と、前記刺繍情報を使用可能な前記ミシンについての条件の情報である使用条件情報を記憶する条件情報記憶手段と、前記ミシンの個体を識別するための情報である第一個体情報を、前記刺繍情報を使用した前記ミシン毎に所定の数だけ記憶可能な使用履歴記憶手段とを備え、前記ミシンは、前記記憶装置を着脱可能な着脱手段と、前記ミシン自身の前記第一個体情報を記憶する第一個体情報記憶手段と、前記着脱手段によって装着された前記記憶装置の前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報を参照し、前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致するか否かを判断する使用条件判断手段と、前記使用条件判断手段によって前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致すると判断された場合に、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報が、前記所定の数より少ないか否かを判断することで、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能か否かを判断する使用可否判断手段と、前記使用可否判断手段によって、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であると判断された場合に、復号鍵を記憶する復号鍵記憶手段に記憶されている前記第一復号鍵を使用して、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を復号する第一復号手段と、前記使用可否判断手段によって、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であると判断された場合に、第一個体情報記憶手段に記憶された前記第一個体情報を、前記使用履歴記憶手段に記憶させる個体情報記憶制御手段と、前記第一復号手段によって復号された前記刺繍情報を使用して、前記布に刺繍を行う刺繍手段とを備えている。
【0007】
この場合、使用条件判断手段によってミシンが使用条件情報に合致すると判断された場合、且つ、使用可否判断手段によって、使用履歴記憶手段に記憶された第一個体情報が、所定の数より少ないと判断された場合に、第一復号手段は、刺繍情報を復号する。そして、刺繍手段は、復号された刺繍情報を使用して刺繍を行う。つまり、第一復号手段が刺繍情報を復号できるのは、使用履歴記憶手段に記憶された第一個体情報が、所定の数より少ない場合である。よって、刺繍情報記憶手段に記憶された刺繍情報を使用できるミシンの台数を、所定の台数以下に制限できる。
【0008】
前記ミシンシステムにおいて、前記ミシンの前記使用可否判断手段は、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報が前記所定の数より少ないか否かを判断すること、または、前記ミシン自身の前記第一個体情報が前記使用履歴記憶手段に記憶されているか否かを判断することで、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であるか否かを判断してもよい。この場合において、過去に、使用可否判断手段によって刺繍情報記憶手段に記憶された刺繍情報を使用可能であると判断された場合、個体情報記憶制御手段によって使用履歴記憶手段に第一個体情報が記憶され、第一復号手段によって刺繍情報が復号される。つまり、ミシンが過去に刺繍情報記憶手段に記憶されている刺繍情報を復号したことがある場合、使用履歴記憶手段には、個体情報記憶制御手段によって第一個体情報が記憶される。そして、使用可否判断手段は、ミシン自身の第一個体情報が使用履歴記憶手段に記憶されている場合、言い換えると、過去に刺繍情報を復号したことがある場合に、刺繍情報を使用可能であると判断する。つまり、一度刺繍情報を復号したことがあれば、その後も継続して刺繍情報記憶手段に記憶された刺繍情報を復号して使用することができる。
【0009】
前記ミシンシステムにおいて、前記記憶装置の前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報は、第二復号鍵で復号可能に暗号化され、前記ミシンは、前記復号鍵記憶手段に記憶されている前記第二復号鍵を使用して、前記使用条件記憶手段に記憶された前記使用条件情報を復号する第二復号手段を備え、前記使用条件判断手段は、前記第二復号手段によって復号された前記使用条件情報を参照し、前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致するか否かを判断してもよい。この場合、使用条件情報が暗号化されているため、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0010】
前記ミシンシステムにおいて、前記記憶装置の前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報は、第三復号鍵で復号可能に暗号化され、前記ミシンは、前記復号鍵記憶手段に記憶されている前記第三復号鍵を使用して、前記使用履歴記憶手段に記憶されている前記第一個体情報を復号する第三復号手段を備え、前記使用可否判断手段は、前記第三復号手段によって復号された前記第一個体情報を参照して、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であるか否かを判断し、前記個体情報記憶制御手段は、前記第一個体情報記憶手段に記憶された前記第一個体情報を、前記第三復号鍵で復号可能に暗号化して、前記使用履歴記憶手段に記憶させてもよい。この場合、使用履歴記憶手段に記憶されている第一個体情報が暗号化されているため、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0011】
前記ミシンシステムにおいて、前記記憶装置の前記刺繍情報記憶手段と、前記条件情報記憶手段と、前記使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つは、所定の前記ミシンのみがアクセス可能な記憶領域である秘匿領域に設けられ、前記ミシンは、前記秘匿領域にアクセス可能であってもよい。この場合、所定のミシンのみがアクセス可能な秘匿領域に、刺繍情報記憶手段と、条件情報記憶手段と、使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つが設けられている。このため、所定のミシン以外は、各記憶手段にアクセスすることができない。よって、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0012】
前記ミシンシステムにおいて、前記記憶装置は、前記記憶装置の個体を識別するための情報である第二個体情報を記憶する第二個体情報記憶手段と、前記第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報に対応し、前記秘匿領域に記憶され第四複号鍵で復号可能に暗号化されている第三個体情報を記憶する第三個体情報記憶手段とを備え、前記ミシンは、前記第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報と、前記第三個体情報記憶手段に記憶された前記第三個体情報とが対応するか否かを判断する個体情報判断手段を備え、前記個体情報判断手段によって、前記第二個体情報と前記第三個体情報とが対応すると判断された場合にのみ、前記第一復号手段は、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を復号してもよい。
【0013】
この場合、第二個体情報記憶手段に記憶された第二個体情報と、第三個体情報記憶手段に記憶された第三個体情報とが対応する場合にのみ、ミシンは、刺繍情報を復号することが可能である。例えば、刺繍情報と第三個体情報とが他の記憶媒体に不正にコピーされた場合、第二個体情報と第三個体情報とが対応しなくなるため、ミシンは、刺繍情報を復号することができない。このように、他の記憶媒体に不正にコピーされた刺繍情報が使用されることを防止することができる。
【0014】
前記ミシンシステムにおいて、前記第一復号鍵、前記第二復号鍵、前記第三復号鍵、及び前記第四復号鍵のうちの少なくとも2つは、同一の復号鍵であってもよい。この場合、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵のうちの少なくとも2つが同一の復号鍵であるので、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵を別々に記憶しておく必要がない。このため、復号鍵記憶手段の記憶容量を低減することができる。
【0015】
本発明の第2の態様に係るミシンは、第一復号鍵で復号可能に暗号化された、ミシンが刺繍を行うための情報である刺繍情報を記憶する刺繍情報記憶手段と、前記刺繍情報を使用可能な前記ミシンについての条件の情報である使用条件情報を記憶する条件情報記憶手段と、前記ミシンの個体を識別するための情報である第一個体情報を、前記刺繍情報を使用した前記ミシン毎に所定の数だけ記憶可能な使用履歴記憶手段とを備えた記憶装置を着脱可能な着脱手段と、前記ミシン自身の前記第一個体情報を記憶する第一個体情報記憶手段と、前記着脱手段に装着された前記記憶装置の前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報を参照し、前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致するか否かを判断する使用条件判断手段と、前記使用条件判断手段によって前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致すると判断された場合に、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報が、前記所定の数より少ないか否かを判断することで、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能か否かを判断する使用可否判断手段と、前記使用可否判断手段によって、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であると判断された場合に、復号鍵を記憶する復号鍵記憶手段に記憶されている前記第一復号鍵を使用して、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を復号する第一復号手段と、前記使用可否判断手段によって、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であると判断された場合に、前記第一個体情報記憶手段に記憶された前記第一個体情報を、前記使用履歴記憶手段に記憶させる個体情報記憶制御手段と、前記第一復号手段によって復号された前記刺繍情報を使用して、前記布に刺繍を行う刺繍手段とを備えている。
【0016】
この場合において、第一復号手段が刺繍情報を復号できるのは、使用履歴記憶手段に記憶された第一個体情報が、所定の数より少ない場合である。よって、刺繍情報記憶手段に記憶された刺繍情報を使用できるミシンの台数を、所定の台数以下に制限できる。
【0017】
前記ミシンにおいて、前記使用可否判断手段は、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報が前記所定の数より少ないか否かを判断すること、または、前記ミシン自身の前記第一個体情報が前記使用履歴記憶手段に記憶されているか否かを判断することで、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であるか否かを判断してもよい。この場合、過去に刺繍情報を復号したことがあれば、その後も継続して刺繍情報記憶手段に記憶された刺繍情報を復号して使用することができる。
【0018】
前記ミシンにおいて、前記記憶装置の前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報は、第二復号鍵で復号可能に暗号化され、前記ミシンは、前記復号鍵記憶手段に記憶されている前記第二復号鍵を使用して、前記使用条件記憶手段に記憶された前記使用条件情報を復号する第二復号手段を備え、前記使用条件判断手段は、前記第二復号手段によって復号された前記使用条件情報を参照し、前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致するか否かを判断してもよい。この場合、使用条件情報が暗号化されているため、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0019】
前記ミシンにおいて、前記記憶装置の前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報は、第三復号鍵で復号可能に暗号化され、前記ミシンは、前記復号鍵記憶手段に記憶されている前記第三復号鍵を使用して、前記使用履歴記憶手段に記憶されている前記第一個体情報を復号する第三復号手段を備え、前記使用可否判断手段は、前記第三復号手段によって復号された前記第一個体情報を参照して、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であるか否かを判断し、前記個体情報記憶制御手段は、前記第一個体情報記憶手段に記憶された前記第一個体情報を、前記第三復号鍵で復号可能に暗号化して、前記使用履歴記憶手段に記憶させてもよい。この場合、使用履歴記憶手段に記憶されている第一個体情報が暗号化されているため、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0020】
前記ミシンにおいて、前記記憶装置の前記刺繍情報記憶手段と、前記条件情報記憶手段と、前記使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つは、所定の前記ミシンのみがアクセス可能な記憶領域である秘匿領域に設けられ、前記ミシンは、前記秘匿領域にアクセス可能であってもよい。この場合、所定のミシンのみがアクセス可能な秘匿領域に、刺繍情報記憶手段と、条件情報記憶手段と、使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つが設けられている。このため、所定のミシン以外は、各記憶手段にアクセスすることができない。よって、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0021】
前記ミシンは、前記記憶装置に設けられた、前記記憶装置の個体を識別するための情報である第二個体情報を記憶する第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報と、前記記憶装置に設けられた、前記第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報に対応し、前記秘匿領域に記憶され第四複号鍵で復号可能に暗号化されている第三個体情報を記憶する第三個体情報記憶手段に記憶された前記第三個体情報とが対応するか否かを判断する個体情報判断手段を備え、前記個体情報判断手段によって、前記第二個体情報と前記第三個体情報とが対応すると判断された場合にのみ、前記第一復号手段は、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を復号してもよい。この場合、他の記憶媒体に不正にコピーされた刺繍情報が使用されることを防止することができる。
【0022】
前記ミシンにおいて、前記第一復号鍵、前記第二復号鍵、前記第三復号鍵、及び前記第四復号鍵のうちの少なくとも2つは、同一の鍵であってもよい。この場合、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵を別々に記憶しておく必要がない。このため、復号鍵記憶手段の記憶容量を低減することができる。
【0023】
本発明の第3の態様に係る記憶装置は、布に縫製を行うミシンに着脱可能な記憶装置において、前記ミシンが記憶している第一復号鍵で復号可能に暗号化された、前記ミシンが刺繍を行うための情報である刺繍情報を記憶する刺繍情報記憶手段と、前記刺繍情報を使用可能な前記ミシンについての条件の情報である使用条件情報を記憶する条件情報記憶手段と、前記ミシンによって記憶される前記ミシンの個体を識別するための情報である第一個体情報を、前記刺繍情報を使用した前記ミシン毎に所定の数だけ記憶可能な使用履歴記憶手段とを備えている。この場合、使用履歴記憶手段は、刺繍情報を使用したミシン毎に所定の数だけ第一個体情報を記憶可能である。言い換えると、使用履歴記憶手段には、所定の数を超える第一個体情報は記憶できない。このため、使用履歴記憶手段に記憶された第一個体情報が所定の数より少ない場合に刺繍情報を復号できるようにミシンを設定すれば、刺繍情報を使用できるミシンの台数を所定の台数以下に制限できる。
【0024】
前記記憶装置において、前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報は、前記ミシンが記憶している第二復号鍵で復号可能に暗号化されてもよい。この場合、使用条件情報が暗号化されているため、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0025】
前記記憶装置において、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報は、前記ミシンが記憶している第三復号鍵で復号可能に暗号化されて、前記ミシンによって前記使用履歴記憶手段に記憶されてもよい。この場合、使用履歴記憶手段に記憶されている第一個体情報が暗号化されているため、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0026】
前記記憶装置において、前記刺繍情報記憶手段と、前記条件情報記憶手段と、前記使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つは、所定の前記ミシンのみがアクセス可能な記憶領域である秘匿領域に設けられてもよい。この場合、所定のミシンのみがアクセス可能な秘匿領域に、刺繍情報記憶手段と、条件情報記憶手段と、使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つが設けられている。このため、所定のミシン以外は、各記憶手段にアクセスすることができない。よって、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0027】
前記記憶装置は、前記記憶装置の個体を識別するための情報である第二個体情報を記憶する第二個体情報記憶手段と、前記第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報に対応し、前記秘匿領域に記憶され第四複号鍵で復号可能に暗号化されている第三個体情報を記憶する第三個体情報記憶手段とを備えてもよい。この場合、第二個体情報記憶手段に記憶された第二個体情報と、第三個体情報記憶手段に記憶された第三個体情報とが対応する場合にのみ、刺繍情報を復号することができるようにミシンを設定すれば、他の記憶媒体に不正にコピーされた刺繍情報が使用されることを防止することができる。
【0028】
前記記憶装置において、前記第一復号鍵、前記第二復号鍵、前記第三復号鍵、及び前記第四復号鍵のうちの少なくとも2つは、同一の鍵であってもよい。この場合、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵を別々に記憶しておく必要がない。このため、ミシンが復号鍵を記憶するための記憶容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ミシンシステム1を示す斜視図である。
【図2】針棒6、縫針7、押え棒45、及び押え足47と、その近傍を示す要部左側面図である。
【図3】ミシンシステム1の電気的構成を示す模式図である。
【図4】USBメモリ3の電気的構成を示す模式図である。
【図5】PC4の電気的構成を示す模式図である。
【図6】使用条件情報データテーブル95を示す模式図である。
【図7】刺繍情報データテーブル96を示す模式図である。
【図8】機種関連情報データテーブル97を示す模式図である。
【図9】刺繍情報記憶処理を示すフローチャートである。
【図10】使用履歴データテーブル98を示す模式図である。
【図11】メイン処理を示すフローチャートである。
【図12】メイン処理を示すフローチャートである。
【図13】使用履歴データテーブル98を示す模式図である。
【図14】使用履歴データテーブル98を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、ミシンシステム1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1において、ユーザが位置する側をミシン2の前方、その反対側を後方とする。ミシン2のユーザから見た左右方向をミシン2の左右方向とする。
【0031】
図1に示すように、ミシンシステム1は、ミシン2とUSB(Universal Serial Bus)メモリ3とを備える。USBメモリ3は、ミシン2に着脱される。ミシン2は、ミシンベッド11と、脚柱部12と、アーム部13と、頭部14とを備える。ミシンベッド11は、ミシン2の土台であって左右方向に延びるように設けられる。脚柱部12は、ミシンベッド11の右端部から上方へ立設されている。アーム部13は、脚柱部12の上端から左方へ延びる。頭部14は、アーム部13の左先端部に設けられている。ミシンベッド11の上面には、針板(図示せず)が配設されている。針板の下のミシンベッド11内には、送り歯(図示せず)と、布送り機構(図示せず)と、送り量調整用パルスモータ78(図3参照)と、釜機構(図示せず)とが設けられている。送り歯は、縫製される加工布を所定の送り量で移動させる。布送り機構は、送り歯を駆動する。送り量調整用パルスモータ78は、送り量を調整する。
【0032】
ミシンベッド11の上には、加工布100を保持する刺繍枠34が配置される。刺繍枠34の内側の領域は、刺繍模様の縫目が形成可能な刺繍領域である。刺繍枠34を移動させる刺繍枠移動装置92は、ミシンベッド11に着脱可能である。刺繍枠移動装置92の上部には、前後方向に延びるキャリッジカバー35が設けられる。キャリッジカバー35の内部には、Y軸移動機構(図示せず)が設けられている。Y軸移動機構は、キャリッジ(図示せず)をY方向(前後方向)に移動させる。刺繍枠34は、キャリッジに着脱可能である。キャリッジの右方には、刺繍枠34を装着する装着部(図示せず)が設けられている。装着部は、キャリッジカバー35の右側面よりも右方に突出している。装着部に、刺繍枠34の左側に設けられた取付部(図示せず)が装着される。キャリッジ、Y軸移動機構、及びキャリッジカバー35は、X軸移動機構(図示せず)によって、X方向(左右方向)に移動する。X軸移動機構は、刺繍枠移動装置92の本体内に設けられている。これによって、刺繍枠34がX方向に移動する。
【0033】
X軸移動機構とY軸移動機構は、夫々、X軸モータ83(図3参照)及びY軸モータ84(図3参照)によって駆動される。刺繍枠34がX方向及びY方向に移動されながら、針棒6(図2参照)や釜機構(図示せず)が駆動される。このようにして、刺繍枠34に保持された加工布100に対して所定の縫目や所定の刺繍模様等の模様を形成する模様形成動作が実行される。本実施形態では、S60の処理(図12参照、後述)で、刺繍情報に基づいて、刺繍縫製が実行される。刺繍模様ではない通常模様が縫製される場合には、刺繍枠移動装置92はミシンベッド11から取り外される。そして、送り歯により加工布が移動されながら、通常縫製が行われる。刺繍枠34は、内枠と外枠とで加工布100を挟持して保持する周知の構成のものであり、詳しい説明は省略する。
【0034】
脚柱部12の前面には、縦長の長方形形状を有する液晶ディスプレイ15が設けられている。液晶ディスプレイ15には、複数種類の模様、各種の機能を実行させる機能名、各種のメッセージ等が表示される。また、液晶ディスプレイ15には、S57の処理(図12参照、後述)で、刺繍情報に基づく刺繍の画像が表示される。
【0035】
液晶ディスプレイ15の前面には、透明のタッチパネル26が設けられている。液晶ディスプレイ15に表示された画面に対応するタッチパネル26の部位を、指や専用のタッチペンを用いて触れることにより、各種の操作や設定を実行することができる。以下、タッチパネル26に触れる操作を「パネル操作」と言う。
【0036】
アーム部13の構成について説明する。アーム部13の上部には、開閉する開閉カバー16が取り付けられている。開閉カバー16は、アーム部13の長手方向に設けられている。開閉カバー16は、アーム部13の上後端部に左右方向の軸回りに開閉可能に軸支されている。開閉カバー16を開けた状態の、アーム部13の上部中央近傍には、糸収容部18が設けられている。糸収容部18は、ミシン2に糸を供給する糸駒20を収容するための凹部である。糸収容部18の脚柱部12側の内壁面には、頭部14に向かって突出する糸立棒19が配設されている。糸駒20は、糸駒20が備える挿入孔(図示せず)が糸立棒19に挿入されて装着される。糸駒20から延びる上糸(図示せず)は、図示しない糸調子器及び糸取バネ、天秤等を含む糸掛部を経由して、縫針7(図2参照)に供給される。糸調子器は、頭部14に設けられ、糸張力を調整する。天秤は、上下に往復駆動して上糸を引き上げる。縫針7は、針棒6に装着される。針棒6は、頭部14内に設けられた針棒上下動機構(図示せず)により、上下動するように駆動される。針棒上下動機構は、ミシンモータ79(図3参照)により回転駆動される主軸(図示せず)により駆動される。
【0037】
アーム部13の前面下部には、縫製開始・停止スイッチ21等を含むスイッチ群25が設けられている。縫製開始・停止スイッチ21は、ミシン2の運転を開始又は停止させる、即ち、縫製開始又は停止を指示するのに使用される。
【0038】
図2に示すように、頭部14の下側には、針棒6と押え棒45とが設けられている。針棒6の下端部には縫針7が固定されている。押え棒45の下端部には加工布を押える押え足47が固定されている。
【0039】
図3を参照して、ミシンシステム1の電気的構成について説明する。まず、ミシン2の電気的構成について説明する。図3に示すように、ミシン2の制御部60は、CPU61,ROM62,RAM63,EEPROM64、入出力インターフェイス65を備え、これらはバス67により相互に接続されている。ROM62は、プログラム記憶領域621、復号鍵記憶領域622、及び機種関連情報記憶領域623を少なくとも備えている。プログラム記憶領域621には、CPU61に処理を実行させるためのプログラムデータが記憶されている。復号鍵記憶領域622には、暗号化された各種の情報を復号するための復号鍵が記憶されている。本実施形態では、第一復号鍵「ffgg」、第二復号鍵「hhii」、第三復号鍵「jjkk」、第四復号鍵「mmnn」の4つの復号鍵が記憶されているとする。機種関連情報記憶領域623には、後述する機種関連情報データテーブル97(図8参照)が記憶されている。
【0040】
入出力インターフェイス65には、縫製開始・停止スイッチ21、タッチパネル26、USBコネクタ27、駆動回路71,72,74,75,85,及び86が電気的に接続されている。駆動回路71は、送り量調整用パルスモータ78を駆動させる。駆動回路72は、ミシンモータ79を駆動させる。駆動回路74は、針振り・針棒釈放パルスモータ80を駆動させる。針振り・針棒釈放パルスモータ80は、針棒6を揺動駆動したり、針棒6を釈放動作させたりする。駆動回路75は、液晶ディスプレイ15を駆動させる。駆動回路85及び86は、刺繍枠34を移動させるX軸モータ83及びY軸モータ84を夫々駆動する。縫製開始・停止スイッチ21はボタン式スイッチである。USBコネクタ27には、USBメモリ3が着脱される。USBコネクタ27は、詳しくは図示しないが、脚注部12の右側面に設けられている。USBメモリ3がミシン2に取り付けられる際には、USBコネクタ27とUSBプラグ33(図4参照)とが接続される。CPU61は、USBメモリ3に設けられた各記憶領域にアクセスできる。
【0041】
図4を参照して、USBメモリ3の電気的構成について説明する。図4に示すように、USBメモリ3は、ROM31、フラッシュメモリ32及びUSBプラグ33を少なくとも備えている。USBプラグ33には、ROM31とフラッシュメモリ32とが電気的に接続されている。
【0042】
ROM31は、第二個体情報記憶領域311を少なくとも備えている。第二個体情報記憶領域311には、第二個体情報が記憶されている。第二個体情報は、USBメモリ3の個体を識別するための情報であり、USBメモリ毎に異なる第二個体情報が付与されている。
【0043】
フラッシュメモリ32は、秘匿領域325を備えている。秘匿領域325には、第三個体情報記憶領域321、使用条件情報記憶領域322、使用履歴記憶領域323、及び刺繍情報記憶領域324が設けられている。秘匿領域325は、所定のミシンのみがアクセス可能な記憶領域である。所定のミシンは、例えば、同一のメーカによって製造されたミシンである。第三個体情報記憶領域321には、第三個体情報が記憶される。第三個体情報は、第二個体情報記憶領域311に記憶された第二個体情報に対応する個体情報である。使用条件情報記憶領域322には、後述する使用条件情報データテーブル95(図6参照)が記憶される。使用履歴記憶領域323には、後述する使用履歴データテーブル98(図10参照)が記憶される。刺繍情報記憶領域324には、後述する刺繍情報データテーブル96(図7参照)が記憶される。なお、フラッシュメモリ32の各記憶領域には、後述するパーソナルコンピュータ4(以下、PC4と称す)の処理(図9参照)によって各種の情報が記憶される。
【0044】
PC4は、USBメモリ3のフラッシュメモリ32に種々の情報を記憶させる。例えば、メーカの工場内で、PC4によってフラッシュメモリ32に種々の情報が記憶された後、USBメモリ3は市場に出荷されて販売される。そして、USBメモリ3を購入したユーザが、ミシン2にUSBメモリ3を取り付け、刺繍情報を使用して刺繍縫製を行う。
【0045】
図5を参照して、PC4の電気的構成について説明する。PC4の制御部40は、CPU41、HDD42、RAM44、入出力インターフェイス52を備え、これらはバス51により相互に接続されている。HDD42は、プログラム記憶領域421、暗号鍵記憶領域422、使用条件情報記憶領域423、及び刺繍情報記憶領域424を少なくとも備えている。プログラム記憶領域421には、CPU41に処理を実行させるためのプログラムデータが記憶されている。
【0046】
暗号鍵記憶領域422には、各種の情報を暗号化するための暗号鍵が記憶されている。本実施形態では、第一暗号鍵「ffgg」、第二暗号鍵「hhii」、第三暗号鍵「jjkk」、第四暗号鍵「mmnn」の4つの復号鍵が記憶されているとする。第一暗号鍵、第二暗号鍵、第三暗号鍵、及び第四暗号鍵は、それぞれ、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵と同一である。
【0047】
使用条件情報記憶領域423には、USBメモリ3の使用条件情報記憶領域322に記憶させるための使用条件情報データテーブル95(図6参照)が記憶されている。刺繍情報記憶領域424には、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324に記憶させるための刺繍情報データテーブル96(図7参照)が記憶されている。
【0048】
入出力インターフェイス52には、入力部46、USBコネクタ48、及び駆動回路49が電気的に接続されている。駆動回路49は、液晶ディスプレイ50を駆動させる。入力部46は、例えば、キーボードやマウスである。CPU41は、入力部46を介して入力されたユーザによる指示を検出可能である。USBコネクタ48には、USBメモリ3が着脱される。USBメモリ3がPC4に取り付けられる際には、USBコネクタ48とUSBプラグ33(図4参照)とが接続される。CPU41は、USBメモリ3に設けられた各記憶領域にアクセスできる。
【0049】
図6を参照して、使用条件情報データテーブル95について説明する。使用条件情報データテーブル95は、PC4の使用条件情報記憶領域423(図5参照)に記憶され、PC4のS18の処理(図9参照、後述)で、USBメモリ3の使用条件情報記憶領域322(図4参照)に記憶される。使用条件情報データテーブル95には、刺繍情報を使用可能なミシンについての条件の情報である使用条件情報が記憶されている。ミシン2は、ミシン2自身が使用条件情報に合致する場合に、刺繍情報を復号して使用することができる。詳細については、後述する。
【0050】
図6に示すように、使用条件情報データテーブル95には、使用条件情報として、仕向け地情報、機種情報、及び刺繍種類情報が記憶されている。仕向け地情報は、「日本」、「アメリカ」、及び「中国」に対応付けられ、機種情報は、「BB−CC」、「SSS−XXX」、「DD−EEE」と対応付けられている。刺繍種類情報は、「第一著作権」、「第二著作権」、及び「通常」と対応付けられている。
【0051】
仕向け地情報とは、刺繍情報を使用可能なミシンの仕向け地の条件の情報である。仕向け地とは、ミシンの出荷先である。また、機種情報は、刺繍情報を使用可能なミシンの機種を特定する情報であり、例えば、機種名又は機種コードである。本実施形態では、機種情報は、機種名であるとする。また、刺繍種類情報は、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324(図4参照)に記憶される刺繍情報の種類に関する情報である。刺繍種類情報「第一著作権」は、所定の著作権で保護された刺繍情報が、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324に記憶されていることを示している。第一著作権で保護された刺繍情報を使用することができるのは、第一著作権で保護された刺繍情報を使用することを許可されたミシンのみである。同様に、刺繍種類情報「第二著作権」は、第一著作権とは異なる所定の著作権で保護された刺繍情報が、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324に記憶されていることを示している。刺繍種類情報「通常」は、著作権で保護されていない(著作権による保護が不要の)刺繍情報が、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324に記憶されていることを示している。
【0052】
図7を参照して、刺繍情報データテーブル96について説明する。刺繍情報データテーブル96は、PC4の刺繍情報記憶領域424(図5参照)に記憶され、PC4のS23の処理(図9参照、後述)で、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324に記憶される。刺繍情報データテーブル96には、各種の刺繍情報が記憶されている。
【0053】
刺繍情報には、加工布100上に刺繍模様が縫製される際に必要となるデータが含まれている。刺繍情報は、縫針7の複数の針落ち位置を示す座標データ(X,Y)を少なくとも含む。ミシン2が刺繍縫製を行う場合、座標データに基づいてX軸モータ83及びY軸モータ84が駆動され、刺繍枠34がX方向とY方向に移動される。そして、刺繍枠が移動されながら、刺繍縫製が行われる。このように、刺繍情報に基づいて刺繍模様が縫製される。
【0054】
図7に示すように、刺繍情報データテーブル96には、第一刺繍情報、第二刺繍情報、第三刺繍情報、及び第四刺繍情報が記憶されている。第一刺繍情報及び第二刺繍情報は、著作権で保護されていない刺繍情報である。つまり、先述した刺繍種類情報が「通常」である刺繍情報である。第三刺繍情報は、第一著作権で保護された刺繍情報である。第四刺繍情報は、第二著作権で保護された刺繍情報である。
【0055】
図8を参照して、機種関連情報データテーブル97について説明する。機種関連情報データテーブル97は、ミシン2の機種関連情報記憶領域623に記憶されている。機種関連情報データテーブル97には、ミシン2についての種々の情報が記憶されている。
【0056】
図8に示すように、機種関連情報データテーブル97には、第一個体情報「aabbcc」、仕向け地情報「日本」、機種情報「SSS−XXX」、及び刺繍種類情報「第一著作権」、「通常」が記憶されている。これは、ミシン2の第一個体情報が「aabbcc」であり、仕向け地が「日本」であり、機種名が「SSS−XXX」であり、使用可能な刺繍情報の種類が「第一著作権」と「通常」であることを示している。なお、第一個体情報とは、ミシンの個体を識別するための情報であり、ミシン毎に異なる第一個体情報が付与されている。
【0057】
図9を参照し、PC4のCPU41において実行される刺繍情報記憶処理について説明する。刺繍情報記憶処理は、USBメモリ3のフラッシュメモリ32(図4参照)に、刺繍情報等の各種情報を記憶させる処理である。刺繍情報記憶処理は、USBメモリ3が、PC4に接続されることによって開始される。
【0058】
刺繍情報記憶処理では、まず、USBメモリ3のフラッシュメモリ32のフォーマットが行われ、フラッシュメモリ32の記憶領域が初期化される(S11)。次いで、フラッシュメモリ32の記憶領域に、秘匿領域325が作成される(S12)。次いで、USBメモリ3のROM31の第二個体情報記憶領域311から、第二個体情報が読み込まれる(S13)。次いで、S13で読み込まれた第二個体情報から、第二個体情報に対応する第三個体情報が作成される(S14)。本実施形態では、第二個体情報は「abcd」であるとする。そして、S14で作成される第三個体情報は、第二個体情報と同一の「abcd」であるとする。なお、第二個体情報と第三個体情報とが同一であるのは例示であり、第二個体情報と第三個体情報とが、ミシン2のS35の処理(図11参照、後述)で照合が行えるように対応する関係であれば、第二個体情報と第三個体情報とが異なっていてもよい。
【0059】
次いで、S14で作成された第三個体情報が、第四復号鍵で復号可能に暗号化される(S15)。S15で使用される暗号鍵は、PC4の暗号鍵記憶領域422に記憶されている第四暗号鍵である。本実施形態では、第四暗号鍵と第四復号鍵は、共に「mmnn」で同一である。次いで、S15で暗号化された第三個体情報が、USBメモリ3の秘匿領域325に記憶される(S16)。S16で第三個体情報が記憶された記憶領域が、第三個体情報記憶領域321(図4参照)である。
【0060】
次いで、PC4の使用条件情報記憶領域423に記憶されている使用条件情報データテーブル95(図6参照)が、第二復号鍵で復号可能に暗号化される(S17)。S17で使用される暗号化鍵は、PC4の暗号鍵記憶領域422に記憶されている第二暗号鍵である。本実施形態では、第二暗号鍵と第二復号鍵は、共に「hhii」で同一である。次いで、S17で暗号化された使用条件情報データテーブル95が、USBメモリ3の秘匿領域325に記憶される(S18)。S18で使用条件情報データテーブル95が記憶された記憶領域が、使用条件情報記憶領域322である。
【0061】
次いで、所定の数の第一個体情報を記憶可能なデータテーブルである使用履歴データテーブル98が作成される(S19)。本実施形態では、ユーザが個人で所有(使用)するミシンの台数を想定して、所定の数は「3」とするが、これに限定するものではない。この場合、図10に示すように、3つの第一個体情報を記憶可能な使用履歴データテーブル98が作成される。図10において、「−」は第一個体情報が記憶されていないことを示している。
【0062】
次いで、S19で作成された使用履歴データテーブル98が、第三復号鍵で復号可能に暗号化される(S20)。S20で使用される暗号鍵は、PC4の暗号鍵記憶領域422に記憶されている第三暗号鍵である。本実施形態では、第三暗号鍵と第三復号鍵は、共に「jjkk」で同一である。次いで、S20で暗号化された使用履歴データテーブル98が、USBメモリ3の秘匿領域325に記憶される(S21)。S21で使用履歴データテーブル98が記憶された記憶領域が、使用履歴記憶領域323である。
【0063】
次いで、PC4の刺繍情報記憶領域424に記憶されている刺繍情報データテーブル96(図7参照)が、第一復号鍵で復号可能に暗号化される(S22)。S18で使用される暗号鍵は、PC4の暗号鍵記憶領域422に記憶されている第一暗号鍵である。本実施形態では、第一暗号鍵と第一復号鍵は、共に「ffgg」で同一である。次いで、S22で暗号化された刺繍情報が、USBメモリ3の秘匿領域325に記憶される(S23)。S23で刺繍情報データテーブル96が記憶された記憶領域が、刺繍情報記憶領域324である。なお、ミシン2は、刺繍情報データテーブル96に記憶された個々の刺繍情報を、暗号化されたまま、個別に読み込むことができる。S23が実行された後、刺繍情報記憶処理が終了される。
【0064】
以上説明したように、刺繍情報記憶処理が実行される。刺繍情報記憶処理によって、刺繍情報等の種々の情報が暗号化されながら、USBメモリ3に記憶される。刺繍情報記憶処理が実行された後、USBメモリ3は、市場に出荷される。
【0065】
図11及び図12を参照し、ミシン2のCPU61において実行されるメイン処理について説明する。メイン処理は、USBメモリ3がミシン2のUSBコネクタ27に取り付けられることによって開始される。以下の説明では、前述したPC4の刺繍情報記憶処理(図9参照)において各種情報が記憶されたUSBメモリ3が、USBコネクタ27に取り付けられた場合を例示しながら説明する。以下、この例示を「具体例」という。
【0066】
図11に示すように、メイン処理では、まず、USBメモリ3の第二個体情報記憶領域311に記憶されている第二個体情報が読み込まれる(S31)。なお、読み込まれた第二個体情報は、RAM63に記憶される(他の処理において、種々の情報を読み込む場合も同様。)。次いで、ミシン2の第三個体情報記憶領域321に記憶されている第三個体情報が読み込まれる(S32)。次いで、S32で読み込まれた第三個体情報が、ミシン2の復号鍵記憶領域622に記憶されている第四復号鍵で復号される(S33)。次いで、S33による復号が成功したか否かが判断される(S34)。具体例では、第四暗号鍵「mmnn」と、第四復号鍵「mmnn」が合致するため、復号が成功する。
【0067】
復号が成功していない場合(S34:NO)、メイン処理が終了される。復号が成功した場合(S39:YES)、第二個体情報と第三個体情報とが合致するか否かの照合が行われる(S35)。具体例では、第二個体情報と第三個体情報とは、共に「abcd」であるので、第二個体情報と第三個体情報とが合致する。
【0068】
次いで、S35の結果、第二個体情報と第三個体情報とが合致するか否かが判断される(S36)。合致しない場合(S36:NO)、メイン処理が終了される。合致する場合(S36:YES)、USBメモリ3の使用条件情報記憶領域322に記憶されている使用条件情報データテーブル95が読み込まれる(S37)。次いで、S37で読み込まれた使用条件情報データテーブル95が、復号鍵記憶領域622に記憶されている第二復号鍵で復号される(S38)。次いで、S38による復号が成功したか否かが判断される(S39)。具体例では、第二暗号鍵「hhii」と第二復号鍵「hhii」とが合致するため、復号が成功する。
【0069】
復号が成功していない場合(S39:NO)、メイン処理が終了される。復号が成功した場合(S39:YES)、S40〜S45が実行される。S40〜S45では、USBメモリ3の使用条件情報記憶領域322に記憶された使用条件情報が参照され、ミシン2自身が使用条件情報に合致するか否かの判断が行われる。ミシン2自身が使用条件に合致しない場合(後述するS41:NO、S43:NO、及びS45:NO)、メイン処理が終了される。
【0070】
使用条件情報データテーブル95に含まれる仕向け地情報に、ミシン2の機種関連情報データテーブル97に記憶されている仕向け地情報と合致する仕向け地情報があるか否かの照合が行われる(S40)。次いで、S40の結果、合致する仕向け地情報があるか否かが判断される(S41)。具体例の場合、機種関連情報データテーブル97(図8参照)に記憶されている仕向け地情報は、「日本」である。そして、使用条件情報データテーブル95(図6参照)には、仕向け地情報「日本」が記憶されている。このため、合致する仕向け地情報があると判断される(S41:YES)。
【0071】
合致する仕向け地情報がない場合(S41:NO)、メイン処理が終了される。合致する仕向け地情報がある場合(S41:YES)、使用条件情報データテーブル95に含まれる機種情報に、ミシン2の機種関連情報データテーブル97に記憶されている機種情報と合致する機種情報があるか否かの照合が行われる(S42)。次いで、S42の結果、合致する機種情報があるか否かが判断される(S43)。具体例の場合、機種関連情報データテーブル97(図8参照)に記憶されている機種情報は、「SSS−XXX」である。そして、使用条件情報データテーブル95(図6参照)に記憶されている機種情報には、「SSS−XXX」が記憶されている。このため、合致する仕向け地情報があると判断される(S43:YES)。
【0072】
合致する機種情報がない場合(S43:NO)、メイン処理が終了される。合致する機種情報がある場合(S43:YES)、使用条件情報データテーブル95に含まれる刺繍種類情報に、ミシン2の機種関連情報データテーブル97に記憶されている使用可能な刺繍種類情報と合致する刺繍種類情報があるか否の照合が行われる(S44)。次いで、S44の結果、合致する刺繍種類情報があるか否かが判断される(S45)。具体例の場合、機種関連情報データテーブル97(図8参照)に記憶されている使用可能な刺繍種類情報は、「第一著作権」と「通常」である。そして、使用条件情報データテーブル95(図6参照)に記憶されている刺繍種類情報には、「第一著作権」と「通常」が記憶されている。このため、合致する刺繍種類情報があると判断される(S45:YES)。
【0073】
合致する刺繍種類情報がない場合(S45:NO)、メイン処理が終了される。合致する刺繍種類情報がある場合(S45:YES)、USBメモリ3の使用履歴記憶領域323から使用履歴データテーブル98(図10参照)が読み込まれる(S46)。次いで、S46で読み込まれた使用履歴データテーブル98が、復号鍵記憶領域622に記憶されている第三復号鍵で復号される(S47)。言い換えると、使用履歴記憶領域323に記憶された第一個体情報が復号される。次いで、S47による復号が成功したか否かが判断される(S48)。具体例では、第三暗号鍵「jjkk」と第二復号鍵「jjkk」とが合致するため、復号が成功する。
【0074】
復号が成功していない場合(S48:NO)、メイン処理が終了される。復号が成功した場合(S48:YES)、使用履歴データテーブル98(図10参照)に記憶されている第一個体情報に、ミシン2の機種関連情報データテーブル97に記憶されている第一個体情報と合致する第一個体情報があるか否かの照合が行われる(S49)。ついで、S49の結果、合致する第一個体情報があるか否かが判断される(S50)。言い換えると、ミシン2自身の第一個体情報が、使用履歴記憶領域323に記憶されているか否かが判断される。具体例の場合、機種関連情報データテーブル97(図8参照)に記憶されている第一個体情報は「aabbcc」である。そして、使用履歴データテーブル98(図10参照)に記憶されている第一個体情報は存在しない。このため、合致する第一個体情報がないと判断される。
【0075】
合致する第一個体情報がある場合(S50:YES)、後述するS54が行われる。合致する第一個体情報がない場合(S50:NO)、使用履歴データテーブル98に記憶されている第一個体情報が、所定の数(本実施形態では、3つ)より少ないか否かが判断される(S51)。言い換えると、使用履歴記憶領域323に記憶された第一個体情報が、所定の数より少ないか否かが判断される。なお、ミシン2自身の第一個体情報が、使用履歴記憶領域323に記憶されていると判断された場合(S50:YES)、または、使用履歴記憶領域323に記憶された第一個体情報が所定の数より少ないと判断された場合(S51:YES)、刺繍情報が復号されて(S55、後述)、刺繍情報が使用されて刺繍縫製が実行される(S60、後述)。つまり、S50とS51では、刺繍情報記憶領域324に記憶された刺繍情報を使用可能か否かが判断されている。
【0076】
使用履歴データテーブル98に記憶されている第一個体情報が、所定の数より少なくない場合(S51:NO)、メイン処理が終了される。所定の数より少ない場合(S51:YES)、ミシン2の機種関連情報データテーブル97に記憶されている第一個体情報が、S47で復号された使用履歴データテーブル98に登録され、使用履歴データテーブル98が第三復号鍵で復号可能に暗号化される(S52)。具体例では、第三復号鍵と第三暗号鍵は、「jjkk」で同一であるので、「jjkk」が暗号鍵として使用されて暗号化される。なお、例えば、第三復号鍵と第三暗号鍵とが同一でない場合は、予めROM62に記憶された第三暗号鍵を用いて暗号化を行ってもよい。
【0077】
次いで、S52で暗号化された使用履歴データテーブル98が、USBメモリ3の使用履歴記憶領域323に記憶される(S53)。言い換えると、USBメモリ3の使用履歴記憶領域323に、ミシン2自身の第一個体情報が記憶される。具体例の場合、図10に示す使用履歴データテーブル98が、図13に示すように更新される(S53)。図13に示すように、使用履歴データテーブル98にミシン2の第一個体情報「aabbcc」が追加記憶されている。
【0078】
次いで、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324に記憶されている刺繍情報が読み込まれる(S54)。なお、S54では、S45によって、合致すると判断された刺繍種類情報に対応する刺繍情報が読み込まれる。具体例では、刺繍種類情報「第一著作権情報」、「通常」が合致すると判断されているので、S54では、刺繍情報データテーブル96(図7参照)における第一刺繍情報、第二刺繍情報、及び第三刺繍情報が読み込まれる。
【0079】
次いで、S54に読み込まれた刺繍情報が、復号鍵記憶領域622に記憶されている第一復号鍵で復号される(S55)。次いで、S55による復号が成功したか否かが判断される(S56)。具体例では、第一暗号鍵「ffgg」と第一復号鍵「ffgg」とが合致するため、復号が成功する。
【0080】
復号が成功していない場合(S56:NO)、メイン処理が終了される。復号が成功した場合(S56:YES)、復号された刺繍情報に基づく刺繍模様の画像が、液晶ディスプレイ15に表示される(S57)。具体例では、第一刺繍情報、第二刺繍情報、及び第三刺繍情報に基づく刺繍模様の画像の一覧が表示される。ユーザは、パネル操作により、刺繍模様の画像を選択することによって、刺繍情報を選択する。
【0081】
次いで、パネル操作によって、刺繍情報が選択されたか否かが判断される(S58)。選択されていない場合(S58:NO)、処理はS58に戻る。選択された場合(S58:YES)、縫製開始の指示が入力されたか否かが判断される(S59)。ユーザは、縫製開始・停止スイッチ21を押下することによって、縫製開始の指示を入力する。縫製開始の指示が入力されていない場合(S59:NO)、処理はS59に戻る。縫製開始の指示が入力された場合(S59:YES)、S58で選択された刺繍情報に基づいて、刺繍縫製が実行される。これによって、加工布100に刺繍模様が縫製される。S60で刺繍縫製が実行された後、メイン処理が終了される。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の処理が行われる。具体例において一度メイン処理が実行されると、使用履歴データテーブル98に、ミシン2の第一個体情報「aabbcc」が記憶される(図13参照)。このため、次回以降、USBメモリ3に記憶されている刺繍情報が使用されて刺繍縫製が行われる場合、S50で、ミシン2自身の第一個体情報「aabbcc」と合致する第一個体情報があると判断される(S50:YES)。そして、刺繍情報が復号され(S55)、刺繍縫製が行われる(S60)。つまり、一度刺繍情報を復号したことがあれば、その後も継続して、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324に記憶された刺繍情報を復号して使用することができる。
【0083】
また、例えば、ミシン2にUSBメモリ3が取り付けられる前に、他の3台のミシンによって、USBメモリ3の刺繍情報が復号されて使用された場合、使用履歴データテーブル98には、図14に示すように第一個体情報が記憶される。図14では、使用履歴データテーブル98に、ミシン2の第一個体情報「aabbcc」とは異なる第一個体情報「ddeeff」、「gghhii」、「jjkkmm」が記憶されている。この場合、S50で、ミシン2自身の第一個体情報「aabbcc」と合致する第一個体情報がないと判断され(S50:NO)、使用履歴データテーブル98に記憶されている第一個体情報が3つより小さくないと判断される(S51:YES)。そして、刺繍情報が復号されることなくメイン処理が終了される。つまり、本実施形態では、刺繍情報が復号できるのは、使用履歴記憶領域323に記憶された第一個体情報が所定の数より少ない場合である。よって、USBメモリ3の刺繍情報記憶領域324に記憶された刺繍情報を使用できるミシンの台数を、所定の台数以下に制限できる。
【0084】
また、USBメモリ3の使用履歴データテーブル98は、所定の数だけ第一個体情報を記憶できる。言い換えると、使用履歴記憶領域323には、所定の数を超える第一個体情報は記憶できない。このため、刺繍情報を使用できるミシンの台数を所定の数以下に制限できる。
【0085】
また、本実施形態では、刺繍情報に加えて、使用条件情報データテーブル95が暗号化されているため、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0086】
また、使用履歴記憶領域323に記憶されている第一個体情報が暗号化されているため、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0087】
また、所定のミシンのみがアクセス可能な秘匿領域325に、刺繍情報記憶領域324と使用条件情報記憶領域322と使用履歴記憶領域323とが設けられている。このため、所定のミシン以外は、刺繍情報記憶領域324と使用条件情報記憶領域322と使用履歴記憶領域323とにアクセスすることができない。よって、不正に刺繍情報が使用される可能性をさらに低減することができる。
【0088】
また、第二個体情報と第三個体情報とが合致する場合にのみ(S36:YES)、刺繍情報が復号される(S55)。例えば、USBメモリ3のフラッシュメモリ32に記憶されている刺繍情報と第三個体情報とが他の記憶媒体に不正にコピーされた場合、第二個体情報と第三個体情報とが合致しなくなるため(S36:NO)、ミシン2は、刺繍情報を復号することができない。このように、他の記憶媒体に不正にコピーされた刺繍情報が使用されることを防止することができる。
【0089】
上記実施形態において、USBメモリ3が発明の「記憶装置」に相当し、刺繍情報記憶領域324が本発明の「刺繍情報記憶手段」に相当する。使用条件情報記憶領域322が本発明の「条件情報記憶手段」に相当し、使用履歴記憶領域323が本発明の「使用履歴記憶手段」に相当する。USBコネクタ27が本発明の「着脱手段」に相当し、機種関連情報データテーブル97の第一個体情報を記憶する機種関連情報記憶領域623が本発明の「第一個体情報記憶手段」に相当する。図11のS41、S43、及びS45の処理を行うCPU61が本発明の「使用条件判断手段」に相当し、図12のS50及びS51の処理を行うCPU61が本発明の「使用可否判断手段」に相当する。
【0090】
図12のS55の処理を行うCPU61が本発明の「第一復号手段」に相当し、図12のS52及びS53の処理を行うCPU61が本発明の「個体情報記憶制御手段」に相当する。図12のS60の処理を行うCPU61が本発明の「刺繍手段」に相当し、図11のS38の処理を行うCPU61が本発明の「第二復号手段」に相当する。図12のS47の処理を行うCPU61が本発明の「第三復号手段」に相当し、第二個体情報記憶領域311が本発明の「第二個体情報記憶手段」に相当する。第三個体情報記憶領域321が本発明の「第三個体情報記憶領域」に相当し、図11のS36の処理を行うCPU61が本発明の「個体情報判断手段」に相当する。
【0091】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵は、別々の復号鍵であったが、これに限定されない。例えば、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、第四復号鍵のうちの少なくとも2つが同一の復号鍵であってもよい。この場合、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵を別々に記憶しておく必要がない。このため、復号鍵記憶領域622の記憶領域を低減することができる。
【0092】
また、第一暗号鍵、第二暗号鍵、第三暗号鍵、及び第四暗号鍵は、それぞれ、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵と同一であったが、これに限定されない。例えば、第一暗号鍵、第二暗号鍵、第三暗号鍵、及び第四暗号鍵が、それぞれ、第一復号鍵、第二復号鍵、第三復号鍵、及び第四復号鍵と同一でなくても、それぞれ対応しており、各種情報が第一〜第四復号鍵で復号可能に暗号化されていればよい。
【0093】
また、第三個体情報記憶領域321、使用条件情報記憶領域322、使用履歴記憶領域323、及び刺繍情報記憶領域324がすべて秘匿領域325(図4参照)に設けられていたが、これに限定されない。例えば、第三個体情報記憶領域321、使用条件情報記憶領域322、使用履歴記憶領域323、及び刺繍情報記憶領域324のうち、少なくとも1つが、秘匿領域325に設けられていてもよい。この場合でも、所定のミシン以外は、秘匿領域325にアクセスすることができない。よって、不正に刺繍情報が使用される可能性を低減できる。なお、秘匿領域325を設けなくてもよい。
【0094】
また、刺繍情報が記憶されているのは、USBメモリ3であったが、これに限定されない。例えば、メモリカード等の他の記憶媒体であってもよい。
【0095】
使用条件情報が、仕向け地情報、機種情報、及び刺繍種類情報であり、S41、S43、及びS45で、ミシン2自身が、使用条件情報に合致するか否かが判断されていたがこれに限定されない。例えば、ミシン2自身が使用条件情報に合致するか否かを判断するための使用条件情報が、仕向け地情報、機種情報、及び刺繍種類情報のうちの1つであってもよい。また、使用条件情報が、製造年月日等であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 ミシンシステム
2 ミシン
3 USBメモリ
27 USBコネクタ
33 USBプラグ
61 CPU
95 使用条件情報データテーブル
96 刺繍情報データテーブル
97 機種関連情報データテーブル
98 使用履歴データテーブル
100 加工布
311 第二個体情報記憶領域
321 第三個体情報記憶領域
322 使用条件情報記憶領域
323 使用履歴記憶領域
324 刺繍情報記憶領域
325 秘匿領域
622 復号鍵記憶領域
623 機種関連情報記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布に縫製を行うミシンと、前記ミシンに着脱可能な記憶装置とを備えたミシンシステムにおいて、
前記記憶装置は、
第一復号鍵で復号可能に暗号化された、前記ミシンが刺繍を行うための情報である刺繍情報を記憶する刺繍情報記憶手段と、
前記刺繍情報を使用可能な前記ミシンについての条件の情報である使用条件情報を記憶する条件情報記憶手段と、
前記ミシンの個体を識別するための情報である第一個体情報を、前記刺繍情報を使用した前記ミシン毎に所定の数だけ記憶可能な使用履歴記憶手段と
を備え、
前記ミシンは、
前記記憶装置を着脱可能な着脱手段と、
前記ミシン自身の前記第一個体情報を記憶する第一個体情報記憶手段と、
前記着脱手段によって装着された前記記憶装置の前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報を参照し、前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致するか否かを判断する使用条件判断手段と、
前記使用条件判断手段によって前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致すると判断された場合に、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報が、前記所定の数より少ないか否かを判断することで、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能か否かを判断する使用可否判断手段と、
前記使用可否判断手段によって、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であると判断された場合に、復号鍵を記憶する復号鍵記憶手段に記憶されている前記第一復号鍵を使用して、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を復号する第一復号手段と、
前記使用可否判断手段によって、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であると判断された場合に、第一個体情報記憶手段に記憶された前記第一個体情報を、前記使用履歴記憶手段に記憶させる個体情報記憶制御手段と、
前記第一復号手段によって復号された前記刺繍情報を使用して、前記布に刺繍を行う刺繍手段と
を備えたことを特徴とするミシンシステム。
【請求項2】
前記ミシンの前記使用可否判断手段は、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報が前記所定の数より少ないか否かを判断すること、または、前記ミシン自身の前記第一個体情報が前記使用履歴記憶手段に記憶されているか否かを判断することで、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であるか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載のミシンシステム。
【請求項3】
前記記憶装置の前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報は、第二復号鍵で復号可能に暗号化され、
前記ミシンは、前記復号鍵記憶手段に記憶されている前記第二復号鍵を使用して、前記使用条件記憶手段に記憶された前記使用条件情報を復号する第二復号手段を備え、
前記使用条件判断手段は、前記第二復号手段によって復号された前記使用条件情報を参照し、前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致するか否かを判断することを特徴とする請求項1または2に記載のミシンシステム。
【請求項4】
前記記憶装置の前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報は、第三復号鍵で復号可能に暗号化され、
前記ミシンは、前記復号鍵記憶手段に記憶されている前記第三復号鍵を使用して、前記使用履歴記憶手段に記憶されている前記第一個体情報を復号する第三復号手段を備え、
前記使用可否判断手段は、前記第三復号手段によって復号された前記第一個体情報を参照して、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であるか否かを判断し、
前記個体情報記憶制御手段は、前記第一個体情報記憶手段に記憶された前記第一個体情報を、前記第三復号鍵で復号可能に暗号化して、前記使用履歴記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のミシンシステム。
【請求項5】
前記記憶装置の前記刺繍情報記憶手段と、前記条件情報記憶手段と、前記使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つは、所定の前記ミシンのみがアクセス可能な記憶領域である秘匿領域に設けられ、
前記ミシンは、前記秘匿領域にアクセス可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のミシンシステム。
【請求項6】
前記記憶装置は、
前記記憶装置の個体を識別するための情報である第二個体情報を記憶する第二個体情報記憶手段と、
前記第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報に対応し、前記秘匿領域に記憶され第四複号鍵で復号可能に暗号化されている第三個体情報を記憶する第三個体情報記憶手段と
を備え、
前記ミシンは、
前記第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報と、前記第三個体情報記憶手段に記憶された前記第三個体情報とが対応するか否かを判断する個体情報判断手段を備え、
前記個体情報判断手段によって、前記第二個体情報と前記第三個体情報とが対応すると判断された場合にのみ、前記第一復号手段は、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を復号することを特徴とする請求項5に記載のミシンシステム。
【請求項7】
前記第一復号鍵、前記第二復号鍵、前記第三復号鍵、及び前記第四復号鍵のうちの少なくとも2つは、同一の復号鍵であることを特徴とする請求項6に記載のミシンシステム。
【請求項8】
第一復号鍵で復号可能に暗号化された、ミシンが刺繍を行うための情報である刺繍情報を記憶する刺繍情報記憶手段と、前記刺繍情報を使用可能な前記ミシンについての条件の情報である使用条件情報を記憶する条件情報記憶手段と、前記ミシンの個体を識別するための情報である第一個体情報を、前記刺繍情報を使用した前記ミシン毎に所定の数だけ記憶可能な使用履歴記憶手段とを備えた記憶装置を着脱可能な着脱手段と、
前記ミシン自身の前記第一個体情報を記憶する第一個体情報記憶手段と、
前記着脱手段に装着された前記記憶装置の前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報を参照し、前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致するか否かを判断する使用条件判断手段と、
前記使用条件判断手段によって前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致すると判断された場合に、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報が、前記所定の数より少ないか否かを判断することで、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能か否かを判断する使用可否判断手段と、
前記使用可否判断手段によって、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であると判断された場合に、復号鍵を記憶する復号鍵記憶手段に記憶されている前記第一復号鍵を使用して、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を復号する第一復号手段と、
前記使用可否判断手段によって、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であると判断された場合に、前記第一個体情報記憶手段に記憶された前記第一個体情報を、前記使用履歴記憶手段に記憶させる個体情報記憶制御手段と、
前記第一復号手段によって復号された前記刺繍情報を使用して、前記布に刺繍を行う刺繍手段と
を備えたことを特徴とするミシン。
【請求項9】
前記使用可否判断手段は、前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報が前記所定の数より少ないか否かを判断すること、または、前記ミシン自身の前記第一個体情報が前記使用履歴記憶手段に記憶されているか否かを判断することで、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であるか否かを判断することを特徴とする請求項8に記載のミシン。
【請求項10】
前記記憶装置の前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報は、第二復号鍵で復号可能に暗号化され、
前記ミシンは、前記復号鍵記憶手段に記憶されている前記第二復号鍵を使用して、前記使用条件記憶手段に記憶された前記使用条件情報を復号する第二復号手段を備え、
前記使用条件判断手段は、前記第二復号手段によって復号された前記使用条件情報を参照し、前記ミシン自身が前記使用条件情報に合致するか否かを判断することを特徴とする請求項8または9に記載のミシン。
【請求項11】
前記記憶装置の前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報は、第三復号鍵で復号可能に暗号化され、
前記ミシンは、前記復号鍵記憶手段に記憶されている前記第三復号鍵を使用して、前記使用履歴記憶手段に記憶されている前記第一個体情報を復号する第三復号手段を備え、
前記使用可否判断手段は、前記第三復号手段によって復号された前記第一個体情報を参照して、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を使用可能であるか否かを判断し、
前記個体情報記憶制御手段は、前記第一個体情報記憶手段に記憶された前記第一個体情報を、前記第三復号鍵で復号可能に暗号化して、前記使用履歴記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載のミシン。
【請求項12】
前記記憶装置の前記刺繍情報記憶手段と、前記条件情報記憶手段と、前記使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つは、所定の前記ミシンのみがアクセス可能な記憶領域である秘匿領域に設けられ、
前記ミシンは、前記秘匿領域にアクセス可能であることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載のミシン。
【請求項13】
前記記憶装置に設けられた、前記記憶装置の個体を識別するための情報である第二個体情報を記憶する第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報と、前記記憶装置に設けられた、前記第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報に対応し、前記秘匿領域に記憶され第四複号鍵で復号可能に暗号化されている第三個体情報を記憶する第三個体情報記憶手段に記憶された前記第三個体情報とが対応するか否かを判断する個体情報判断手段を備え、
前記個体情報判断手段によって、前記第二個体情報と前記第三個体情報とが対応すると判断された場合にのみ、前記第一復号手段は、前記刺繍情報記憶手段に記憶された前記刺繍情報を復号することを特徴とする請求項12に記載のミシン。
【請求項14】
前記第一復号鍵、前記第二復号鍵、前記第三復号鍵、及び前記第四復号鍵のうちの少なくとも2つは、同一の鍵であることを特徴とする請求項13に記載のミシン。
【請求項15】
布に縫製を行うミシンに着脱可能な記憶装置において、
前記ミシンが記憶している第一復号鍵で復号可能に暗号化された、前記ミシンが刺繍を行うための情報である刺繍情報を記憶する刺繍情報記憶手段と、
前記刺繍情報を使用可能な前記ミシンについての条件の情報である使用条件情報を記憶する条件情報記憶手段と、
前記ミシンによって記憶される前記ミシンの個体を識別するための情報である第一個体情報を、前記刺繍情報を使用した前記ミシン毎に所定の数だけ記憶可能な使用履歴記憶手段と
を備えたことを特徴とする記憶装置。
【請求項16】
前記条件情報記憶手段に記憶された前記使用条件情報は、前記ミシンが記憶している第二復号鍵で復号可能に暗号化されたことを特徴とする請求項15に記載の記憶装置。
【請求項17】
前記使用履歴記憶手段に記憶された前記第一個体情報は、前記ミシンが記憶している第三復号鍵で復号可能に暗号化されて、前記ミシンによって前記使用履歴記憶手段に記憶されることを特徴とする請求項15または16に記載の記憶装置。
【請求項18】
前記刺繍情報記憶手段と、前記条件情報記憶手段と、前記使用履歴記憶手段とのうちの少なくとも1つは、所定の前記ミシンのみがアクセス可能な記憶領域である秘匿領域に設けられたことを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の記憶装置。
【請求項19】
前記記憶装置の個体を識別するための情報である第二個体情報を記憶する第二個体情報記憶手段と、
前記第二個体情報記憶手段に記憶された前記第二個体情報に対応し、前記秘匿領域に記憶され第四複号鍵で復号可能に暗号化されている第三個体情報を記憶する第三個体情報記憶手段と
を備えたことを特徴とする請求項18に記載の記憶装置。
【請求項20】
前記第一復号鍵、前記第二復号鍵、前記第三復号鍵、及び前記第四復号鍵のうちの少なくとも2つは、同一の鍵であることを特徴とする請求項19に記載の記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−135541(P2012−135541A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291249(P2010−291249)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】