説明

ミシン目加工装置

【課題】所望の位置にミシン目加工を精度よく行い、加工用紙に損傷を与えることのないミシン目加工装置を提供する。
【解決手段】ミシン目加工装置10は、制御部30が、ミシン胴21が退避位置Rに配置された状態で、加工用紙送り速度検出部11及びミシン刃位置検出部21cの出力に基づいて、ミシン刃21aの回転位置が加工用紙2のミシン目加工予定位置Pに一致するようにミシン胴駆動モータ21bを制御し、加工用紙2のミシン目加工予定位置Pが、ミシン目加工を実施する加工実施場所Uに到達するまでの間に、加工用紙2の送り速度とミシン胴21の外周の周速とが一致するようにミシン胴駆動モータ21bを制御し、アーム機構部22を駆動して、ミシン胴21を当接位置Qに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用紙にミシン目加工を行うミシン目加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工装置には、ミシン胴及び受け胴を回転させて、ミシン目加工するときにミシン胴及び受け胴の回転を差動させて、ミシン胴のミシン刃及び受け胴の刃受部の同期をとって、加工用紙の所望の位置にミシン目を加工するものがあった(例えば特許文献1)。
しかし、このタイプのミシン目加工装置は、ミシン胴及び受け胴の回転を差動させるための構成が複雑であるため、ミシン刃と刃受部の同期がうまく取れず、所望の位置に正確にミシン目を加工することができない場合があった。
また、このタイプのミシン目加工装置は、ミシン目加工をしない部分にも、ミシン胴のミシン刃が接してしまうため、加工用紙のミシン目加工を行わない部分を損傷させてしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−61888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、所望の位置にミシン目加工を精度よく行い、加工用紙に損傷を与えることのないミシン目加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0006】
・第1の発明は、送り方向(X)に送られる加工用紙(2)に対して、前記送り方向に直交する方向にミシン目を加工するミシン刃(21a)と、前記ミシン刃が外周に設けられたミシン胴(21)と、前記ミシン胴を回転駆動するミシン胴回転駆動部(21b)と、前記ミシン胴を前記加工用紙に対して当接する当接位置(Q)と、前記加工用紙から退避する退避位置(R)との間で駆動する当接退避駆動部(22)と、前記加工用紙の送り速度を検出する送り速度検出部(11)と、前記ミシン刃の回転位置を検出するミシン刃位置検出部(21c)と、ミシン目加工を制御する制御部(30)とを備え、前記制御部は、前記ミシン胴が前記退避位置に配置された状態で、前記送り速度検出部及び前記ミシン刃位置検出部の出力に基づいて、前記ミシン刃の回転位置が前記加工用紙のミシン目加工予定位置に一致するように前記ミシン胴回転駆動部を制御し、前記加工用紙の前記ミシン目加工予定位置(P)が、ミシン目加工を実施する加工実施場所(U)に到達するまでの間に、前記加工用紙の送り速度と前記ミシン胴の外周の周速とが一致するように前記ミシン胴回転駆動部を制御し、前記当接退避駆動部を駆動して、前記ミシン胴を前記当接位置に配置すること、を特徴とするミシン目加工装置である。
・第2の発明は、第1の発明のミシン目加工装置において、前記加工用紙(2)を挟んで前記ミシン胴に対向して配置された受け胴(23)と、前記受け胴を回転駆動する受け胴回転駆動部(23a)とを備え、前記制御部(30)、前記加工用紙の送り速度と前記受け胴の外周の周速が一致するように、前記受け胴回転駆動部を制御すること、を特徴とするミシン目加工装置である。
・第3の発明は、第1及び第2の発明のミシン目加工装置において、前記加工用紙(2)は、製造する紙片(2−1,2−2)に応じて、それぞれ前記ミシン目加工予定位置(P−1,P−2)が異なっており、前記ミシン目加工予定位置の情報を前記加工用紙の表面に記録した加工位置記録部(2a−1,2a−2)を備え、前記加工位置記録部を検出する記録検出部(12)を備え、前記制御部(30)は、前記記録検出部の検出情報に基づいて、前記加工用紙の前記ミシン目加工予定位置を判定し、判定した前記ミシン目加工予定位置に基づいて、前記ミシン胴回転駆動部(21b)及び前記当接退避駆動部(22)を制御すること、を特徴とするミシン目加工装置である。
・第4の発明は、第1から第3までのいずれかの発明のミシン目加工装置において、前記制御部(30)は、前記加工実施場所(U)から前記ミシン目加工予定位置(P)までの距離(L3)が、前記ミシン胴(21)の周長よりも小さくなった場合に、前記当接退避駆動部(22)を駆動して、前記ミシン胴を前記退避位置(R)から前記当接位置(Q)に配置し、ミシン目加工してから、前記加工実施場所から前記加工用紙(2)のミシン目加工後の位置までの距離(L4)が、前記ミシン胴の周長のよりも長くなる前に、前記当接退避駆動部を駆動して、前記ミシン胴を前記当接位置から前記退避位置に配置すること、を特徴とするミシン目加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
第1の発明は、送り速度検出部及びミシン刃位置検出部の出力に基づいて、ミシン刃の回転位置が加工用紙のミシン目加工予定位置に一致するようにミシン胴回転駆動部を制御し、また、加工用紙のミシン目加工予定位置が加工実施場所に到達するまでの間に、加工用紙の送り速度とミシン胴の外周の周速とが一致するようにミシン胴回転駆動部を制御している。このため、制御対象としては、ミシン胴の回転を制御して、ミシン目加工予定位置にミシン刃を同期させればよい。これにより、高精度に制御しなければならない制御対象を少なくでき、加工精度を向上できる。
また、第1の発明は、ミシン目加工をしない場合には、ミシン胴を退避位置に配置するので、ミシン刃及び加工用紙の接触にともなう加工用紙の損傷を防止できる。
【0008】
第2の発明は、加工用紙の送り速度と受け胴の外周の周速とが一致するように制御するので、受け胴及び加工用紙の接触にともなう加工用紙の損傷を防止できる。
【0009】
第3の発明は、加工用紙に設けられた加工位置記録部に基づいて、ミシン目加工予定位置を判定してミシン胴回転駆動部を制御するので、加工用紙毎にミシン目加工予定位置が異なっていても、適切な位置にミシン目加工できる。
【0010】
第4の発明は、加工実施場所からミシン目加工予定位置までの距離が、ミシン胴の周長よりも小さくなった場合に、ミシン胴を退避位置から当接位置に配置し、一方、ミシン目加工してから、加工実施場所から加工用紙のミシン目加工後の位置までの距離が、ミシン胴の周長のよりも長くなる前に、ミシン胴を当接位置から退避位置に配置する。このため、加工用紙のうちミシン目加工予定位置以外の範囲に、ミシン刃が接触することを防止でき、加工用紙の損傷を防止できる。
また、第4の発明は、ミシン胴の当接位置及び退避位置間の駆動を、ミシン胴が1周回転するまでの時間内に行えばよいので、ミシン胴を駆動するタイミングを長くできるため、制御が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態のミシン目加工装置10が設けられた用紙加工装置1の構成を説明する図である。
【図2】実施形態の加工用紙2の概略図である。
【図3】実施形態のミシン目加工装置10の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施形態のミシン目加工装置10の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のミシン目加工装置10が設けられた用紙加工装置1の構成を説明する図である。
図2は、本実施形態の加工用紙2の概略図である。
なお、説明を明確にするために、加工用紙2の送り方向を左右方向Xとし、加工用紙2の面方向のうち、左右方向Xに直交する方向を奥行方向Yとする。また、用紙加工装置1は、加工用紙2の表面(XY平面)が水平面になるように、加工用紙2を送ることとし、加工用紙2の表面の法線方向を鉛直方向Zとする。
【0013】
図1に示すように、用紙加工装置1は、送りローラ3の回転を制御して、右側X2に加工用紙2を送りながら、加工用紙2に折り加工、ミシン目加工を行い、加工後の紙片から冊子や、往復はがき等を製造する装置である。実施形態では、冊子を製造する例を説明する。
用紙加工装置1は、1枚の加工用紙2から、ページ数やミシン目加工位置が異なる複数の冊子を製造できる。
なお、折り加工は、折り加工用の加工装置(図示せず)によって加工されるが、詳細な説明は省略する。
【0014】
図2に示すように、加工用紙2は、左右方向Xに細長い帯状の紙である。図2には、製造される複数の冊子のうち冊子2−1,2−2に対応する紙片の加工位置を示す。
ここでは、冊子2−1,2−2を例に加工用紙2を説明する。
冊子2−1,2−2は、折り線2bの数や、ミシン目加工の予定位置であるミシン目加工予定位置P−1,P−2が相違している。つまり、冊子2−1,2−2は、左右方向Xの長さが異なっており、ミシン目加工する位置が異なっている。これは、例えば、自動車事故の返信用の冊子の場合のように、送信者毎に必要なページが異なり、また、ミシン目で切り取る返信用のハガキの配置が異なるためである。後述するように、ミシン目加工装置10は、ミシン目加工予定位置P(P−1,P−2)を、加工コード部2a(2a−1,2a−2)の後端部からの長さL−1,L−2で規定する。
【0015】
加工コード部2a−1,2a−2は、加工情報を記録した部分であり、例えば、バーコードや二次元コードである。加工コード部2a−1,2a−2は、冊子2−1,2−2毎に、ページ数、折り線2bの加工位置、ミシン目加工予定位置P−1,P2に応じた情報等を有する。つまり、1枚の加工用紙2であっても、割り当てられる冊子2−1,2−2に応じて、加工コード部2a−1,2a−2が異なる。
【0016】
図1に示すように、送りローラ3は、加工用紙2をミシン目加工装置10へ送る回転ローラである。用紙加工装置1は、送りローラ3と同様な回転ローラを複数備えており、用紙加工装置1内で、加工開始位置から加工終了位置まで、加工用紙2を右側X2に送ることができる。
【0017】
ミシン目加工装置10は、加工用紙2に対して、奥行方向Y(図2参照)にミシン目加工を行う装置である。
ミシン目加工装置10は、加工用紙送り速度検出部11、加工コード検出部12(記録検出部)、ミシン胴21、アーム機構部22(当接退避駆動部)、受け胴23、制御部30を備える。
【0018】
加工用紙送り速度検出部11は、加工用紙2の送り速度を検出する光学センサ等である。加工用紙送り速度検出部11は、検出情報を制御部30に出力する。
加工コード検出部12は、加工用紙2に設けられた加工コード部2aを検出するイメージセンサ等である。加工コード検出部12は、検出情報を制御部30に出力する。
【0019】
ミシン胴21は、アーム機構部22のアーム22a(後述する)の一端に回転可能に支持された円柱状のローラ部材である。ミシン胴21は、ミシン刃21a、ミシン胴駆動モータ21b(ミシン胴回転駆動部)、ミシン刃位置検出部21c、ミシン胴回転速度検出部21dを備える。
ミシン刃21aは、加工用紙2にミシン目加工を行う刃物である。ミシン刃21aは、1つ以上の刃が、ミシン胴21の外周面に奥行方向Yに配列されて構成される。
【0020】
ミシン胴駆動モータ21bは、ミシン胴21を回転駆動するモータである(矢印A参照)。ミシン胴駆動モータ21bは、制御部30の命令に応じて駆動する。
ミシン刃位置検出部21cは、ミシン刃21aの回転位置を検出する光学センサ等である。ミシン刃位置検出部21cは、検出情報を制御部30に出力する。
ミシン胴回転速度検出部21dは、ミシン胴21の回転速度を検出するセンサである。ミシン胴回転速度検出部21dは、例えばロータリエンコーダ等である。ミシン胴回転速度検出部21dは、検出情報を制御部30に出力する。制御部30は、ミシン胴回転速度検出部21dに基づいて、ミシン胴21の回転速度を判定する。
【0021】
アーム機構部22は、ミシン刃21aが加工用紙2に対して当接する当接位置Q(図4(b)参照)と、ミシン刃21aが加工用紙2から退避する退避位置Rとの間でミシン胴21を、鉛直方向Zに移動させる機構である。なお、各図には、当接位置Q、退避位置Rを、ミシン胴21の中心軸の高さで示す。
アーム機構部22は、アーム22a、シリンダ22b、空気圧弁22cを備える。
アーム22aは、前述したように一端にミシン胴21を回転可能に支持する腕部材である。アーム22aは、他端に奥行方向Yに平行な回転軸22dが設けられている。アーム22aは、回転軸22dを中心に回転可能に支持されている(矢印C参照)。
【0022】
シリンダ22bは、一端がアーム22aに固定され、他端がミシン目加工装置10に固定された複動式のエアシリンダである。シリンダ22bは、空気圧弁22cで制御された空気圧によって伸縮動作する(矢印D参照)。また、シリンダ22bは、伸縮動作を行うことにより、アーム22aを回転駆動させる(矢印C参照)。
空気圧弁22cは、シリンダ22bに供給する空気の圧力を制御する弁である。空気圧弁22cは、制御部30によって制御される。
【0023】
受け胴23は、ミシン目加工の際、加工用紙2に切り込むミシン刃21aを受け止める回転可能な円柱状のローラ部材である。受け胴23は、加工用紙2を挟んでミシン胴21に対向する位置に配置されている。受け胴23は、受け胴駆動モータ23a(受け胴回転駆動部)、受け胴回転速度検出部23bを備える。
受け胴駆動モータ23aは、受け胴23を回転駆動するモータである(矢印B参照)。受け胴駆動モータ23aは、制御部30の命令に応じて駆動する。
受け胴回転速度検出部23bは、受け胴23の回転速度を検出するセンサである。受け胴回転速度検出部23bは、検出情報を制御部30に出力する。制御部30は、受け胴回転速度検出部23bに基づいて、受け胴23の回転速度を判定する。
【0024】
制御部30は、ミシン目加工装置10のミシン目加工を統括的に制御するための制御装置であり、例えば、CPU(中央処理装置)等から構成される。
制御部30の処理の詳細は、後述する。
【0025】
次に、ミシン目加工装置10の動作について説明する。
図3は、本実施形態のミシン目加工装置10の動作を示すフローチャートである。
図4は、本実施形態のミシン目加工装置10の動作を示す図である。
最初に、ステップS(以下「S」という)1において、作業者が用紙加工装置1に加工用紙2を装填し、入力部(図示せず)から加工部数を設定し、用紙加工装置1の加工開始スイッチ(図示せず)を操作すると、制御部30が一連の処理を開始する。
図4(b)に示すように、処理の開始状態では、ミシン胴21は、退避位置Rに配置されている。
【0026】
ステップS2において、加工用紙2が送りローラ3によってミシン目加工装置10に送られると、加工用紙送り速度検出部11は、加工用紙2の送り速度を検出して、制御部30に検出信号を出力する。
S2において、制御部30は、加工用紙送り速度検出部11の検出信号に基づいて、ミシン胴21及び受け胴23の外周の速度(以下「周速」という)を加工用紙2の送り速度と同じになるように、ミシン胴駆動モータ21b及び受け胴駆動モータ23aを制御する。
【0027】
このように、ミシン目加工装置10は、ミシン胴21を退避位置Rに配置した状態で、ミシン胴21の回転速度を制御するので、加工用紙2及びミシン胴21の接触にともなう加工用紙2の損傷を防止できる。また、ミシン目加工装置10は、加工用紙2の送り速度と受け胴23の外周の周速とを一致させるので、加工用紙2及び受け胴23の擦れ等にともなう加工用紙2の損傷を防止できる。
【0028】
S4において、制御部30は、加工コード検出部12が加工用紙2の加工コード部2aを読み取ったか否かを判定することにより、加工用紙2の加工コード部2aが検出位置に到達したか否かを判定する。制御部30は、加工コード部2aが検出位置に到達したと判定した場合には(S4:YES)、S5に進み、一方、加工コード部2aが検出位置に到達していないと判定した場合には(S4:NO)、S2からの処理を繰り返す。
【0029】
なお、S2からの処理が繰り返されることにより、加工コード部2aが検出位置に到達するまでは、ミシン胴21の周速と、加工用紙2の送り速度とが同じ状態であることが維持される。また、制御部30は、このようなミシン胴21の周速を加工用紙2の送り速度に合わせる制御を、後述するS5〜S8以外の処理において、継続して行う。このため、加工用紙2の加工が繰り返し行われる限り、S5〜S8以外の通常時には、ミシン胴21の周速は、加工用紙2の送り速度と同じ状態であることが維持される。
同様に、制御部30は、受け胴23の周速を加工用紙2の送り速度に合わせる制御を、常に継続する。つまり、受け胴23の周速は、加工用紙2の送り速度と同じ状態であることが維持される。
【0030】
S5において、制御部30は、加工コード検出部12が加工コード部2aを検出したことに応じて(S4:YES)、ミシン刃位置検出部21cの出力情報に基づいて、ミシン刃21aの回転位置を判定する。
S6において、制御部30は、S4で読み取った加工コード部2aに基づいて、ミシン目加工予定位置Pを判定する。制御部30は、加工コード部2aの左側X1の端部を基準にして、ミシン目加工予定位置Pを規定する(図2参照)。制御部30は、加工コード部2aの端部が加工コード検出部12を通過してから、加工用紙送り速度検出部11の出力に基づいて加工用紙2が移動した量を算出することにより、ミシン目加工予定位置Pがどの位置を移動しているかを判定できる。
そして、制御部30は、ミシン刃21aの回転位置が、ミシン刃21aが加工用紙2のミシン目加工予定位置Pと同期するようにミシン胴21の回転を制御する。つまり、制御部30は、加工用紙2のミシン目加工予定位置Pが加工実施場所Uに到達した場合に、ミシン刃21aが加工実施場所U(図4(b)に示す最下点E参照)を通過するように制御する。
ここで、制御部30は、ミシン胴21が退避位置Rに位置している間に、その後のミシン目加工の際に、加工用紙2の送り速度と同じ周速に戻すことを想定した上で、ミシン刃21aの位置とミシン目加工予定位置Pとがミシン目加工の際に同期するようにミシン胴21の回転を制御する。
【0031】
図4(b)に示すように、具体的には、制御部30は、加工実施場所Uと加工コード検出部12の検出位置との距離、ミシン胴21の外周の長さ、ミシン刃21aの位置、ミシン目加工予定位置Pの移動位置、ミシン胴21の回転速度、加工用紙2の送り速度に基づいて、ミシン目加工予定位置Pの加工実施場所Uの到達時間を演算する。そして、制御部30は、ミシン目加工の際にミシン刃21aとミシン目加工予定位置Pとが同期するように、ミシン胴駆動モータ21bを制御して、ミシン胴21を加速又は減速させる。
このように、制御部30は、高精度に制御しなければならない制御対象が、ミシン胴21の回転速度のみであり、制御対象を少なくすることによる加工精度向上を期待できる。
【0032】
なお、前述したように、通常時には、ミシン胴21の周速は、加工用紙2の送り速度に合うように制御されている。このため、ミシン刃21aをミシン目加工予定位置Pに同期させる制御は、ミシン胴21に大きな回転力(回転トルク)を与えることなく行うことができ、かつ、処理時間を短くできる。このため、ミシン目加工装置10は、低コストで高速ミシン目加工を行うことができる。
これに対して、実施形態とは異なりミシン胴が停止している状態から制御を行う場合には、ミシン胴を停止状態から回転させるために、大きな回転力を有するモータ等が必要になり高コストになってしまう。さらに、この場合には、同期をとるための処理時間が多くなり、高速加工には適さない。
【0033】
S7において、制御部30は、ミシン刃21aの回転位置と、ミシン目加工予定位置Pとが同期したか否かを判定する。
制御部30は、両者が同期したと判定した場合には(S7:YES)、S8に進み、一方、両者が同期していないと判定した場合には(S7:NO)、S5からの処理を繰り返す。
S8において、制御部30は、ミシン胴21の周速が加工用紙2の送り速度と同じ速度になるように、再び制御する。
【0034】
S9において、図4(b)に示すように、制御部30は、ミシン目加工予定位置Pが加工実施場所Uに到達する時間に基づいて、空気圧弁22cに駆動信号を出力してアーム機構部22を駆動させ(矢印C参照)、ミシン胴21を退避位置Rから当接位置Qに移動する。
制御部30は、例えば、ミシン刃21aがミシン胴21の最下点Eを通過した直後に、ミシン胴21を当接位置Qへ移動させる。
つまり、制御部30は、ミシン目加工を実施する加工実施場所Uからミシン目加工予定位置Pまでの距離L3が、ミシン胴21の周長よりも小さくなった場合に、アーム機構部22を駆動して、ミシン胴21を退避位置Rから当接位置Qに配置する。
これにより、ミシン目加工装置10は、加工用紙2のうちミシン目加工予定位置P以外の部分に、ミシン刃21aが接触することを防止できるので、加工用紙2の損傷を防止できる。また、ミシン目加工装置10は、ミシン胴21の退避位置Rから当接位置Qへの駆動を、ミシン胴が1周回転するまでの時間内に行えばよいので、ミシン胴21を駆動するタイミングを長くできるため、制御が容易である。
さらに、ミシン胴21は、加工用紙2の送り速度と同じ周速で回転しているので、当接位置Qに配置され、加工用紙2に当接しても、加工用紙2に余計な負荷を与えない。このため、ミシン目加工装置10は、加工用紙2の損傷を防止できる。
【0035】
S10において、図4(c)に示すように、ミシン刃21aは、加工用紙2のミシン目加工予定位置Pを通過することによって、ミシン目加工予定位置Pにミシン目加工する。
S11において、図4(d)に示すように、加工用紙2へのミシン目加工が終了すると、制御部30は、アーム機構部22を駆動して、ミシン胴21を当接位置Qから退避位置Rへと退避させる。このとき、制御部30は、ミシン刃21aが加工実施場所Uを通過した直後に、ミシン胴21を退避位置Rへ移動させる。
つまり、制御部30は、ミシン目加工してから、加工実施場所Uから加工用紙のミシン目加工後の位置までの距離L4が、ミシン胴21の周長のよりも長くなる前に、アーム機構部22を駆動して、ミシン胴21を当接位置Qから退避位置Rに配置する。
これにより、ミシン目加工装置10は、S9と同様に、加工用紙2のうちミシン目加工予定位置P以外の部分に、ミシン刃21aが接触することを防止できるため、加工用紙2の損傷を防止できる。また、ミシン目加工装置10は、ミシン胴21を駆動するタイミングをとることができるため、制御が容易である。
【0036】
S12において、制御部30は、設定部数の加工が終了したか否かを判定する。制御部30は、設定部数の加工が終了したと判定した場合には(S12:YES)、S13に進んで一連の処理を終了し、設定部数の加工が終了していないと判定した場合には(S12:NO)、S2からの処理を繰り返し、次の冊子の加工を行う。
なお、ミシン目加工装置10は、繰り返されるS2からの処理において、新たな加工コード部2aに基づいてミシン目加工を行うので、加工用紙毎にミシン目加工予定位置Pが異なっていても、適切な位置にミシン目加工できる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のミシン目加工装置10は、加工用紙2に損傷を与えることのなく、ミシン目加工を精度よく行うことができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0039】
(変形形態)
(1)本実施形態において、ミシン胴には、1列のミシン刃を設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、ミシン胴には、複数列のミシン刃を設けてもよい。
【0040】
(2)本実施形態において、アーム機構には、エアシリンダを使用する例を示したが、これに限定されない。例えば、アーム機構には、より応答性の速い油圧式シリンダや、電磁式アクチュエータを使用してもよい。
【0041】
(3)本実施形態において、制御部は、加工コード部の端部を基準にして、ミシン目加工予定位置を規定する例を示したが、これに限定されない。例えば、加工用紙に加工位置を示すマークをベタ印刷等によって設け、マークが加工実施場所を通過する時に、制御部がミシン目加工をするようにしておいてもよい。この場合には、マークを検出する検出部(光学センサ等)を設けて、マーク検出後の加工用紙の移動量を加工用紙送り速度検出部の出力に基づいて判定し、マークがどの位置を移動しているかを判定すればよい。
【0042】
(4)本実施形態において、加工コード部は、冊子毎に1つ設けられている例を示したが、これに限定されない。例えば、加工コード部を冊子の各枚目毎に1つ設けて、制御部が、各枚目毎にミシン目を入れるか否かを制御してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 用紙加工装置
2 加工用紙
2a 加工コード部
3 送りローラ
10 ミシン目加工装置
11 加工用紙送り速度検出部
12 加工コード検出部
21 ミシン胴
21a ミシン刃
21b ミシン胴駆動モータ
21c ミシン刃位置検出部
21d ミシン胴回転速度検出部
22 アーム機構部
22a アーム
22b シリンダ
22c 空気圧弁
22d 回転軸
23 受け胴
23a 受け胴駆動モータ
23b 受け胴回転速度検出部
30 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り方向に送られる加工用紙に対して、前記送り方向に直交する方向にミシン目を加工するミシン刃と、
前記ミシン刃が外周に設けられたミシン胴と、
前記ミシン胴を回転駆動するミシン胴回転駆動部と、
前記ミシン胴を前記加工用紙に対して当接する当接位置と、前記加工用紙から退避する退避位置との間で駆動する当接退避駆動部と、
前記加工用紙の送り速度を検出する送り速度検出部と、
前記ミシン刃の回転位置を検出するミシン刃位置検出部と、
ミシン目加工を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記ミシン胴が前記退避位置に配置された状態で、前記送り速度検出部及び前記ミシン刃位置検出部の出力に基づいて、前記ミシン刃の回転位置が前記加工用紙のミシン目加工予定位置に一致するように前記ミシン胴回転駆動部を制御し、
前記加工用紙の前記ミシン目加工予定位置が、ミシン目加工を実施する加工実施場所に到達するまでの間に、前記加工用紙の送り速度と前記ミシン胴の外周の周速とが一致するように前記ミシン胴回転駆動部を制御し、
前記当接退避駆動部を駆動して、前記ミシン胴を前記当接位置に配置すること、
を特徴とするミシン目加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミシン目加工装置において、
前記加工用紙を挟んで前記ミシン胴に対向して配置された受け胴と、
前記受け胴を回転駆動する受け胴回転駆動部とを備え、
前記制御部は、前記加工用紙の送り速度と前記受け胴の外周の周速が一致するように、前記受け胴回転駆動部を制御すること、
を特徴とするミシン目加工装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載のミシン目加工装置において、
前記加工用紙は、製造する紙片に応じて、それぞれ前記ミシン目加工予定位置が異なっており、前記ミシン目加工予定位置の情報を前記加工用紙の表面に記録した加工位置記録部を備え、
前記加工位置記録部を検出する記録検出部を備え、
前記制御部は、
前記記録検出部の検出情報に基づいて、前記加工用紙の前記ミシン目加工予定位置を判定し、
判定した前記ミシン目加工予定位置に基づいて、前記ミシン胴回転駆動部及び前記当接退避駆動部を制御すること、
を特徴とするミシン目加工装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のミシン目加工装置において、
前記制御部は、
前記加工実施場所から前記ミシン目加工予定位置までの距離が、前記ミシン胴の周長よりも小さくなった場合に、前記当接退避駆動部を駆動して、前記ミシン胴を前記退避位置から前記当接位置に配置し、
ミシン目加工してから、前記加工実施場所から前記加工用紙のミシン目加工後の位置までの距離が、前記ミシン胴の周長のよりも長くなる前に、前記当接退避駆動部を駆動して、前記ミシン胴を前記当接位置から前記退避位置に配置すること、
を特徴とするミシン目加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−218131(P2012−218131A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89409(P2011−89409)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】