説明

ミシン

【課題】互いに直交する方向に延びる固定レールの一方を下軸の下方に配置でき、かつ他方を下軸よりも上方に支持する為の部材の設置空間を十分に確保できるミシンを提供する。
【解決手段】X軸固定シャフト24,25は下軸10よりも下方に配置する。X軸移動部材40は脚部42等によって固定台41を下軸10よりも上方に支持する凸型形状を備える。X軸移動部材40は下軸10を除けることができる。故にX軸固定シャフト24,25を下軸10よりも下方に配置できる。X軸固定シャフト24,25よりも短いY軸固定レールを下軸10よりも上方に支持する。Y軸固定レールはX軸移動部材40の上面に支持してある。故にX軸移動部材40をコンパクトにできるので設置空間を確実に確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンは布送り駆動装置を備える。布送り駆動装置は所定の布に所望の縫い目を形成する為に布をX軸方向及びY軸方向に移動する。特許文献1が開示するミシンのX−Y送り駆動装置は、例えばY軸固定レール、Y軸移動部材、X軸固定レール、X軸移動部材、及び押え台を備える。Y軸固定レールはミシンの下軸より下方に平行に互いに所定間隔を有するように設けてある。Y軸移動部材は各Y軸固定レールに沿って往復駆動する。X軸固定レールは各Y軸移動部材の上面に固定してある。X軸固定レールは下軸と針板との間に位置しY軸固定レールに直交する方向に延在する。X軸移動部材はX軸固定レールに沿って往復駆動する。押え台はX軸移動部材の上面に取り付けてある。押え台は所定の布を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3592379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、Y軸固定レールはミシンの下軸よりも下方に設けてある。X軸固定レールは下軸よりも上方に設けてある。X軸固定レールはY軸固定レールよりも長い。ミシンはX軸固定レールを安定して支持する必要がある。Y軸移動部材の剛性及び耐久性を強化する為に、X軸固定レールを支持するY軸移動部材は大きくなる。従来のミシンは下軸上方の空間は狭いので、Y軸移動部材の設置空間を確保することは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、互いに直交する方向に延びる固定レールの一方を下軸の下方に配置でき、かつ他方を下軸よりも上方に支持する為の部材の設置空間を十分に確保できるミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るミシンは、ミシンの基台内に設け、前記ミシンの釜機構を駆動する為の下軸と、互いに所定間隔を空けて平行かつ水平に配設した少なくとも一対の第一固定レールと、前記各第一固定レールに沿って往復駆動する第一移動部材と、前記第一固定レールに対して直交する方向に延設し、前記第一移動部材の上面において互いに所定間隔を空けて平行かつ水平に配設した少なくとも一対の第二固定レールと、前記各第二固定レールに沿って往復駆動する第二移動部材と、前記第二移動部材の上面に設け、且つ所定の布を保持する布押え部とを備えたミシンであって、前記各第一固定レールは、前記各第二固定レールよりも長く、かつ前記下軸の下方において前記下軸に対して直交して配設している。
【0007】
第1態様のミシンでは、第一固定レールは第二固定レールよりも長い。その第一固定レールを下軸よりも下方に配設することにより、下軸よりも上側において第二固定レールを支持する第一移動部材をコンパクトにできる。第1態様は下軸の上方において第一移動部材の設置空間を十分に確保できる。
【0008】
また第1態様では、前記第一固定レールはシャフトであって、前記移動部はボールブッシュであってもよい。ボールブッシュはシャフトに沿って滑る。故に第一移動部材は第一固定レールに沿って良好に移動できる。
【0009】
また第1態様では、前記第一固定レールはリニアガイドであってもよい。移動部はリニアガイドに沿って直線的に滑る。故に第一移動部材は第一固定レールに沿って良好に移動できる。
【0010】
また第1態様では、前記第一移動部材は、前記各第一固定レールの前記下軸に対して直交する方向の両側において、前記第一固定レールに沿って移動する少なくとも一対の移動部と、前記各移動部から前記下軸よりも上方に立設する複数の立設部と、前記各立設部の上部の間に渡設し、前記各第二固定レールを支持する渡設部とを備えている。第1態様は第一移動部材を移動部、立設部、及び渡設部の構成にすることで下軸をよけることができる。
【0011】
また第1態様では、前記渡設部は、前記各第二固定レールを上面に支持することを特徴とする。渡設部は各第二固定レールを上面に支持することで、第二固定レールを良好に支持できる。
【0012】
また第1態様では、前記第一移動部材を移動する第一移動機構を更に備え、前記第一移動機構は、前記各第一固定レールの間において、前記第一固定レールの長手方向に離間する位置に設けた一対のプーリと、前記一対のプーリを回転駆動するモータと、前記一対のプーリ間に架け渡し、前記第一移動部材に固定する無端状のベルトとを備えてもよい。第一移動機構は一対のプーリと無端状のベルトによってモータの回転駆動を第一移動部材に伝達できる。故に第一移動部材は第一固定レールに沿って良好に移動できる。
【0013】
また第1態様では、前記第一移動部材を移動する第一移動機構を更に備え、前記第一移動機構は、モータと、前記モータによって回転駆動するピニオンギアと、前記ピニオンギアの回転駆動によって、前記第一移動部材を前記第一固定レールに対して平行方向に往復移動するラックギアとを備えてもよい。第一移動機構はピニオンギアとラックギアによってモータの回転駆動を第一移動部材に伝達できる。故に第一移動部材は第一固定レールに沿って良好に移動できる。
【0014】
また第1態様では、前記第一固定レールを下方から支持する支持部材を備えてもよい。第一固定レールは第二固定レールよりも長い。支持部材で下方から支持することにより下方への撓みを防止できる。
【0015】
また第1態様では、前記各第一固定レールは、少なくとも前記下軸に対応する領域において分断して離間した形状を備えてもよい。第一移動部材の移動部は、第一固定レールの下軸に対応する領域では下軸に干渉するためその領域を移動しない。故に第一固定レールの下軸に対応する領域を分断して離間する形状にすることで、第一固定レールの材料コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ミシン1の斜視図。
【図2】ミシン1の右側面図。
【図3】布送り駆動装置20の左上方からの斜視図。
【図4】布送り駆動装置20の右上方からの斜視図。
【図5】布送り駆動装置20の正面図。
【図6】変形例である布送り駆動装置120の斜視図。
【図7】変形例である布送り駆動装置220の斜視図。
【図8】変形例である布送り駆動装置320の斜視図。
【図9】変形例である布送り駆動装置420の斜視図。
【図10】変形例である布送り駆動装置420の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の一実施形態であるミシン1について図面を参照して説明する。以下説明は、図1の左斜め下方、右斜め上方、左斜め上方、右斜め下方を、夫々、ミシン1の前方、後方、左方、右方とする。図3の右斜め下方、左斜め上方、左斜め下方、右斜め上方を、夫々、布送り駆動装置20の前方、後方、左方、右方とする。X軸方向はミシン1及び布送り駆動装置20の左右方向である。Y軸方向はミシン1及び布送り駆動装置20の前後方向である。
【0018】
先ず、ミシン1の構造について簡単に説明する。図1,図2に示す如く、ミシン1は、ベッド部2、脚柱部3、及びアーム部4を備える。ベッド部2は前方部8と後方部9とを備える。前方部8はミシン1の前方に位置し、後方部9はミシン1の後方に位置する。前方部8は作業台支持部18と収容部89を備える。作業台支持部18は前方部8の前壁から前方に突出して設けてある。作業台支持部18は上面に作業台5を備える。作業台5は略中央に針板12を備える。針板12は略中央に針穴13を備える。脚柱部3は後方部9の上部に立設する。アーム部4は脚柱部3上部から前方に延設する。アーム部4は前端部に先端部7を備える。先端部7は針棒、縫針、押え棒、押え足(図示略)等を備える。先端部7の下方に針板12の上面が対向する。図3に示す如く、収容部89は下軸10、釜機構11、布送り駆動装置20等を収容する。
【0019】
布送り駆動装置20は布押え機構80を備える。布押え機構80は後述する押え枠84と挟み枠87との間に加工布(図示略)を挟んで作業台5上にて保持する。布送り駆動装置20は布押え機構80をX軸方向及びY軸方向に移動可能に支持する。縫針は主軸(図示略)の回転にて上下に往復移動する。主軸はミシンモータ(図示略)で駆動する。ミシン1の制御装置は縫製データに基づき布送り駆動装置20を制御する。布送り駆動装置20は布押え機構80をX軸方向及びY軸方向に駆動する。作業台5上にて加工布はX軸方向及びY軸方向に移動する。故にミシン1は加工布上に縫い目を形成できる。
【0020】
次に、布送り駆動装置20の構造について説明する。図3,図4に示す如く、布送り駆動装置20は、左側支持部材21、右側支持部材22、一対のX軸固定シャフト24,25、X軸モータ31、一対のプーリ36,39、無端ベルト27、X軸移動部材40、一対のY軸固定レール61,62、Y軸移動部材73、Y軸モータ65、ピニオンギア67、ラックギア68、連結部材77及び布押え機構80等を備える。なお図4はY軸固定レール61,62、Y軸移動部材73の周囲を図示する為に挟み枠87を省略してある。
【0021】
先ず、左側支持部材21と右側支持部材22について説明する。図3〜図5に示す如く、左側支持部材21と右側支持部材22は下軸10を略中央に挟んでX軸方向に離間する位置に設けてある。図3に示す如く、左側支持部材21は、固定部21A、一対の支持部21B,21C、一対の軸支部21D,21Eを備える。固定部21AはY軸方向に長い細長長方形状の板部材である。固定部21Aはベッド部2の前方部8に設けた収容部89の底面に固定してある。支持部21Bは固定部21Aの上面の前方側に立設する。支持部21Cは固定部21Aの後方側に立設する。軸支部21Dは支持部21Bの上部に設けてある。軸支部21Eは支持部21Cの上部に設けてある。軸支部21D,21Eは軸支穴(図示略)を備える。
【0022】
図4に示す如く、右側支持部材22は、固定部22A、一対の支持部22B,22Cを備える。固定部22AはY軸方向に長い細長長方形状の板部材である。固定部22Aはベッド部2の前方部8に設けた収容部89の底面に固定してある。支持部22Bは固定部22Aの上面前側に立設する。支持部22Cは固定部22Aの後側に立設する。
【0023】
次に、X軸固定シャフト24,25について説明する。図3に示す如く、X軸固定シャフト24の左端は左側支持部材21の支持部21Bの上面に固定してある。X軸固定シャフト25の左端は左側支持部材21の支持部21Cに貫通して固定してある。図4に示す如く、X軸固定シャフト24の右端は右側支持部材22の支持部22Bの上面に固定してある。X軸固定シャフト25の右端は右側支持部材22の支持部22Cに貫通して固定してある。故にX軸固定シャフト24,25はX軸方向に平行に且つ互いに所定間隔を有するよう配置してある。更に図3〜図5に示す如く、X軸固定シャフト24,25は下軸10よりも下方に配置してある。
【0024】
更に図5に示す如く、X軸固定シャフト24,25の略中央部の下部には、被支持部29が設けてある(X軸固定シャフト25の被支持部は図示略)。被支持部29は上方に窪んだ溝状に形成してある。被支持部29には、レール支持部材90の上端部が当接している。レール支持部材90は逆T字状である。レール支持部材90はベッド部2の前方部8の収容部89の底面に固定してある。X軸固定シャフト24,25はX軸方向に長いので中央部が下方に撓み易い。本実施形態はX軸固定シャフト24,25の中央部に設けた被支持部29に対し、レール支持部材90の上端部が当接して支持している。故にレール支持部材90はX軸固定シャフト24,25の撓みを防止する。
【0025】
次に、回転軸34とX軸モータ31について説明する。図3に示す如く、回転軸34は左側支持部材21の軸支部21D,21Eの各軸支穴に回転可能に軸支してある。回転軸34の後端部は軸支部21Eから後方に突出する。回転軸34の後端部はギア35を備える。X軸モータ31は駆動軸32を備える。駆動軸32はX軸モータ31の前方に突出する。駆動軸32はギア33を備える。ギア33はギア35と噛合する。
【0026】
次に、プーリ36,39と無端ベルト27について説明する。図3に示す如く、プーリ36は回転軸34における軸支部21Dと21Eとの間に設けてある。プーリ36は回転軸34と一体して回転する。図4に示す如く、プーリ39はプーリ支持部材37に回転可能に軸支してある。プーリ支持部材37は右側支持部材22の左側に隣接する位置に設けてある。無端ベルト27はプーリ36,39の間に架け渡してある。図5に示す如く、布送り駆動装置20を正面から見た場合に、プーリ36,39は無端ベルト27を下軸10の上側と下側とにおいて平行に搬送する。
【0027】
次に、X軸移動部材40について説明する。図3,図4に示す如く、X軸移動部材40は、固定台41、脚部42〜45、移動部52〜55等を備える。固定台41は平面視長方形状の板部材である。固定台41は下軸10の上方に位置する。固定台41の上面のX軸方向略中央には段部47(図4参照)を設けてある。段部47は固定台41の上面より一段低くなっている。段部47は平面視長方形状である。段部47にはY軸移動部材73がY軸方向に移動可能に設けてある。脚部42は固定台41の前端部の左端側に設けてある。脚部43は固定台41の前端部の右端側に設けてある。脚部44は固定台41の後端部の左端側に設けてある。脚部45は固定台41の後端部の右端側に設けてある。脚部42〜45は固定台41の下面から鉛直下方に延出する。
【0028】
移動部52は脚部42の下端部に設けてある。移動部53は脚部43の下端部に設けてある。移動部54は脚部44の下端部に設けてある。移動部55は脚部45の下端部に設けてある。移動部52〜55は円筒状のボールブッシュである。移動部52,53はX軸固定シャフト24を内挿する。移動部54,55はX軸固定シャフト25を内挿する。移動部52〜55はX軸固定シャフト24,25に沿って滑る。故にX軸移動部材40はX軸固定シャフト24,25に沿って移動可能である。固定台41は下軸10の上方においてX軸方向に移動可能である。固定台41の下面は無端ベルト27に連結してある。故に無端ベルト27の搬送により固定台41はX軸方向に往復移動する。
【0029】
次に、Y軸固定レール61,62について説明する。図4に示す如く、Y軸固定レール61,62は、段部47のX軸方向両側にある互いに対向する一対の内壁面に各々設けてある。Y軸固定レール61,62は互いに対向する。Y軸固定レール61のY軸固定レール62に対向する面には溝部61Aを設けてある。Y軸固定レール62のY軸固定レール61に対向する面には溝部62Aを設けてある。溝部61A,62Aの内側には更にガイド部63(溝部61Aのガイド部63は図示略)を設けてある。ガイド部63は段部47の中央に向けて突出する。
【0030】
次に、Y軸移動部材73について説明する。図4に示す如く、Y軸移動部材73は固定台41の上面に設けた段部47の上面に設けてある。Y軸移動部材73は平面視長方形状の板部材である。Y軸移動部材73の右端部は溝部74を備える。Y軸移動部材73の左端部は溝部75を備える。溝部74はY軸固定レール61の溝部61Aに設けたガイド部63に移動可能に係止する。溝部75はY軸固定レール62の溝部62Aに設けたガイド部(図示略)に移動可能に係止する。Y軸移動部材73は一対のY軸固定レール61,62に沿ってY軸方向に移動可能である。
【0031】
次に、Y軸モータ65、ピニオンギア67、及びラックギア68について説明する。図4に示す如く、Y軸モータ65は駆動軸66を備える。駆動軸66は右方に突出する。ピニオンギア67は駆動軸66に設けてある。ピニオンギア67はラックギア68の歯部69に噛合する。ラックギア68は駆動軸66の直下において直交し且つY軸方向に延設してある。ラックギア68は円柱状の支持部71,72によってY軸方向に移動可能に支持してある。支持部71,72は脚柱部3(図1参照)内の部材に取り付けてある。歯部69はラックギア68の上部に設けてある。
【0032】
次に、連結部材77について説明する。図4に示す如く、連結部材77はラックギア68の前端部に固定してある。連結部材77は移動軸78を支持する。移動軸78はX軸方向に平行で且つ連結部材77の前方に位置する。移動軸78は布押え機構80の後述するアーム部81の基部側に設けたガイド穴85に挿入してある。
【0033】
次に、布押え機構80の構成について説明する。図3,図4に示す如く、布押え機構80は、アーム部81、枠支持部82、L字連結部83、押え枠84、及び挟み枠87を備える。アーム部81の基部はY軸移動部材73の上面に固定してある。アーム部81は基部から上方に円弧状に湾曲しつつ前方に延出している。アーム部81はガイド穴85を備える。ガイド穴85はアーム部81の左右両側面を貫通する。ガイド穴85は上述の連結部材77の移動軸78を内挿する。枠支持部82はアーム部81の前端部に固定してある。枠支持部82は正面視長方形状の板部材である。枠支持部82の前面には複数のレール部82Aを設けてある。レール部82AはL字連結部83を上下方向に案内する。L字連結部83は側面視L字状の板部材である。L字連結部83は枠支持部82のレール部82Aに沿って昇降可能且つ位置決め可能である。
【0034】
押え枠84は平面視略長方形状の枠である。押え枠84は略中央に開口部84Aを備える。開口部84Aは平面視長方形状である。押え枠84の後端部はL字連結部83に連結してある。故に押え枠84は上下方向に昇降可能である。挟み枠87の基部はY軸移動部材73の上面とアーム部81の基部との間に挟持した状態で固定してある。挟み枠87前方は押え枠84の下面に接触している。挟み枠87は押え枠84の下面に接触する部分に開口部87Aを備える。開口部87Aは押え枠84の開口部84Aに対向する。挟み枠87の上面に加工布を配置し、押え枠84を上方から下降して押さえることにより加工布を保持できる。
【0035】
次に、上記構成を備える布送り駆動装置20の動作について説明する。先ず、布押え機構80をX軸方向に往復移動する際の動作について説明する。X軸モータ31が駆動すると、駆動軸32は回転し、ギア33とギア35の噛合によって回転軸34は回転する。回転軸34が回転するのでプーリ36は回転する。プーリ36の回転に伴い、無端ベルト27はプーリ36,39の間を搬送される。無端ベルト27の搬送に伴い、X軸移動部材40はX軸方向に移動する。故に布送り機構80はX軸方向に移動する。布送り機構80のアーム部81は連結部材77の移動軸78に沿って移動する。アーム部81は連結部材77に連結した状態でX軸方向に移動可能である。布送り駆動装置20は作業台5上にて押え枠84と挟み枠87とで保持した加工布をX軸方向に移動できる。
【0036】
次に、布押え機構80をY軸方向に往復移動する際の動作について説明する。Y軸モータ65が駆動すると、駆動軸66と共にピニオンギア67が回転する。ピニオンギア67とラックギア68の歯部69の噛合により、ラックギア68はY軸方向に移動する。ラックギア68は連結部材77を介して布送り機構80のアーム部81を前方に付勢し、又は後方に引き込むことができる。故に布送り機構80はY軸方向に移動する。布送り駆動装置20は作業台5上にて押え枠84と挟み枠87とで保持した加工布をY軸方向に移動できる。
【0037】
次に、布送り駆動装置20の特徴的な構成とその効果について説明する。上記の通り、X軸固定シャフト24,25は、Y軸固定レール61,62よりも長い。故に布送り駆動装置20は布押え機構80をY軸方向よりもX軸方向に大きく移動するものである。ミシン1はX軸方向に加工布を大きく移動できるものである。図3〜図5に示す如く、本実施形態は長い方のX軸固定シャフト24,25を下軸10よりも下方に配置し、短い方のY軸固定レール61,62を下軸10よりも上方に配置している。故にY軸固定レール61,62を支持するX軸移動部材40をコンパクトにできる。故に本実施形態は下軸10の上方において、X軸移動部材40の設置空間を十分に確保できる。
【0038】
更に本実施形態は、下軸10よりも下方に配置してあるX軸固定シャフト24,25の上方にY軸固定レール61,62を支持する為に、X軸移動部材40は上記構成を有する。即ち、X軸移動部材40は脚部42〜45によって固定台41を下軸10よりも上方に支持する凸型形状を備える。X軸移動部材40は下軸10を確実に除けることができる。故に本実施形態は、X軸固定シャフト24,25を下軸10よりも下方に配置することができる。
【0039】
更に本実施形態は、X軸移動部材40の移動部52〜55はボールブッシュであり、X軸固定シャフト24,25に沿って滑る構造である。故にX軸移動部材40はX軸固定シャフト24,25に沿って良好に移動できる。
【0040】
以上説明において、X軸固定シャフト24,25は本発明の「一対の第一固定レール」の一例である。X軸移動部材40は本発明の「第一移動部材」の一例である。Y軸固定レール61,62は本発明の「一対の第二固定レール」の一例である。Y軸移動部材73は本発明の「第二移動部材」の一例である。布押さえ機構80は本発明の「布押え部」の一例である。X軸移動部材40の脚部42〜45は本発明の「立設部」の一例である。固定台41は本発明の「渡設部」の一例である。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のミシン1は布送り駆動装置20を備える。布送り駆動装置20は、一対のX軸固定シャフト24,25、X軸移動部材40、一対のY軸固定レール61,62、Y軸移動部材73、及び布押え機構80等を備える。X軸固定シャフト24,25は下軸10よりも下方に配置し、Y軸固定レール61,62を下軸10よりも上方に配置する。X軸固定シャフト24,25の上方にY軸固定レール61,62を支持する為に、X軸移動部材40は脚部42〜45によって固定台41を下軸10よりも上方に支持する凸型形状を備える。X軸移動部材40は下軸10を確実に除けることができる。故に本実施形態は、X軸固定シャフト24,25を下軸10よりも下方に配置することができる。
【0042】
また上記実施形態は特に、X軸固定シャフト24,25は、Y軸固定レール61,62よりも長い。故に布送り駆動装置20は布押え機構80をY軸方向よりもX軸方向に大きく移動するものである。ミシン1はX軸方向に加工布を大きく移動できるものである。図3〜図5に示す如く、本実施形態は長い方のX軸固定シャフト24,25を下軸10よりも下方に配置し、短い方のY軸固定レール61,62を下軸10よりも上方に配置している。故にY軸固定レール61,62を支持するX軸移動部材40をコンパクトにできる。故に本実施形態は下軸10の上方において、X軸移動部材40の設置空間を十分に確保できる。
【0043】
なお本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。以下三つの変形例を図面を参照して説明する。なお以下変形例は上記実施形態の一部を変更し、その他は共通する構成である。故に同じ構成部品は同符号を付して説明する。
【0044】
第一変形例について、図6を参照して説明する。例えば上記実施形態は、本発明の第一固定レールの一例としてX軸固定シャフト24,25、移動部の一例としてボールブッシュである移動部52〜55を備える。例えば図6に示す布送り駆動装置120は、X軸固定シャフト24,25の代わりに、X軸リニアガイド124,125を備えている。X軸移動部材40の移動部52〜55の代わりに、X軸リニアガイド124,125に沿って滑る移動部153,155(その他は図示略)を備えている。X軸移動部材40はX軸リニアガイド124,125に沿って移動するので、X軸移動部材40をX軸方向における移動の直線性が向上する。
【0045】
第二変形例について、図7を参照して説明する。例えば上記実施形態は、X軸移動部材40をX軸方向に移動する為に、一対のプーリ36,39と、無端ベルト27とを用いている。例えば図7に示す布送り駆動装置220は、ラックアンドピニオン機構を用いてX軸移動部材40をX軸方向に移動する。X軸モータ131はX軸移動部材40の固定台41の右後方に配置してある。X軸モータ131の駆動軸134は前方に突出する。駆動軸134はピニオンギア135を備える。固定台41の上面の後方右隅部には、板状のラックギア100が固定してある。ラックギア100はX軸方向に延設している。ラックギア100はピニオンギア135に噛合する。X軸モータ131の駆動軸134の回転と共に、ピニオンギア135は回転する。ピニオンギア135に噛合するラックギア100はX軸方向に移動するので、X軸移動部材40もX軸方向に移動する。故にX軸モータ131の駆動力をX軸移動部材40の移動に直接変換できるので、X軸移動部材40をX軸方向に確実に移動できる。更に上記実施形態に比べ、部品点数が少ないので、装置全体をコンパクトにできる。
【0046】
第三変形例について、図8を参照して説明する。例えば上記実施形態は、X軸固定シャフト24,25の撓みを防止する為に、X軸固定シャフト24,25の中央部に設けた被支持部29に対し、レール支持部材90の上端部を当接して支持している。例えば図8に示す布送り駆動装置320のX軸固定シャフトは、少なくとも下軸10に対応する領域において分断した形状を備える。例えば布送り駆動装置320の前側に位置するX軸固定シャフトは、左側シャフト24Aと右側シャフト24Bを備える。左側シャフト24Aと右側シャフト24Bは少なくとも下軸10に対応する領域において離間している。
【0047】
その離間する領域には、レール支持部材191,192を設けてある。左側シャフト24Aの左端は上述の左側支持部材21に支持してある。左側シャフト24Aの右端はレール支持部材191に支持してある。右側シャフト24Bの右端は上述の右側支持部材22に支持してある。左側シャフト24Aの左端はレール支持部材192に支持してある。このように第三変形例はX軸固定シャフトを複数本に分けて支持する。故に、X軸固定シャフトの中央部が撓んでしまうのを防止できる。なお第三変形例は一本のX軸固定シャフトを二本に分断しているが、さらに複数本に分断してもよい。更に第3変形例はX軸固定シャフトについて説明したが、第一変形例のようなリニアガイドにも適用可能である。
【0048】
第四変形例について、図9,図10を参照して説明する。図9,図10は、上記実施形態と共通する各種部品を適宜省略して示している。例えば図4,図5に示す布送り駆動装置20は、X軸固定シャフト24,25を下軸10よりも下方に設け、Y軸固定レール61,62を下軸10よりも上方に設けている。図9,図10に示す布送り駆動装置420は、X軸固定シャフト24,25と、後述するY軸固定シャフト171,172の両方を下軸10よりも下方に設けている。
【0049】
布送り駆動装置420はX軸移動部材140を備える。X軸移動部材140は、固定台141、4本の脚部142、4つの移動部168、一対のY軸固定シャフト171,172、移動支持体160等を備える。固定台141は平面視長方形状の板部材である。固定台141は下軸10の上方に位置する。4本の脚部142は固定台141の四隅に設けてある。4本の脚部142は固定台141の四隅から鉛直下方に延出する。
【0050】
各脚部142は下端部に移動部168を備える。移動部168は例えば円筒状のボールブッシュである。X軸固定シャフト24,25は各移動部168の孔部(図示略)に挿入してある。各移動部168はX軸固定シャフト24,25に沿って滑る。故にX軸移動部材140はX軸固定シャフト24,25に沿って移動可能である。固定台141は下軸10の上方においてX軸方向に移動可能である。固定台141の下面は無端ベルト27に連結してある。故に無端ベルト27の搬送により固定台141はX軸方向に往復移動する。
【0051】
Y軸移動シャフト171,172は、固定台141のX軸方向の左右両側においてY軸方向に対向する一対の脚部142の間に各々設けてある。Y軸シャフト171,172はY軸方向に延出する。移動支持体160は、基台部161と、腕部162,163とを備える。基台部161はX軸方向に伸びる細長い長方形状の板部材である。基台部161は長手方向中央部に固定部165を備えている。固定部165はY軸方向後方に突出する板部材である。
【0052】
腕部162は基台部161の左端側に設けてある。腕部162は左方に対して斜め下方に傾斜して延出する(図10参照)。腕部162の先端部はガイド孔(図示略)を備える。ガイド孔はX軸方向に沿って設けてある。左側に位置するY軸移動シャフト171は腕部162のガイド孔に挿入してある。腕部163は基台部161の右端側に設けてある。腕部163は右方に対して斜め下方に傾斜して延出する。腕部162の先端部はガイド孔(図示略)を備える。ガイド孔はX軸方向に沿って設けてある。右側に位置するY軸移動シャフト172は腕部163のガイド孔に挿入してある。故に移動支持体160は一対のY軸シャフト171,172に沿ってY軸方向に移動可能である。布押さえ機構80のアーム部81の基部は、固定部165の上面と、基台部161の上面とに載置して固定してある。故に移動支持体160は布押さえ機構80をY軸方向に移動可能に支持する。X軸固定シャフト24,25と、Y軸シャフト171,172とは何れも下軸10より下方に位置する。故に第四変形例は下軸10の上方においてX軸移動部材140等の各種部品を設置する為の空間を十分に確保できる。
【符号の説明】
【0053】
1 ミシン
10 下軸
20 布送り駆動装置
24,25 X軸固定シャフト
24A 左側シャフト
24B 右側シャフト
27 無端ベルト
31 X軸モータ
33,35 ギア
34 回転軸
36,39 プーリ
40 X軸移動部材
41 固定台
42〜45 脚部
52〜55 移動部
61,62 Y軸固定レール
73 Y軸移動部材
80 布押え機構
81 アーム部
82 枠支持部
82A レール部
83 L字連結部
84 押え枠
87 挟み枠
87A 開口部
89 収容部
90 レール支持部材
100 ラックギア
120 布送り駆動装置
124,125 X軸リニアガイド
135 ピニオンギア
191 レール支持部材
192 レール支持部材
220 布送り駆動装置
320 布送り駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンの基台内に設け、前記ミシンの釜機構を駆動する為の下軸と、
互いに所定間隔を空けて平行かつ水平に配設した少なくとも一対の第一固定レールと、
前記各第一固定レールに沿って往復駆動する第一移動部材と、
前記第一固定レールに対して直交する方向に延設し、前記第一移動部材の上面において互いに所定間隔を空けて平行かつ水平に配設した少なくとも一対の第二固定レールと、
前記各第二固定レールに沿って往復駆動する第二移動部材と、
前記第二移動部材の上面に設け、且つ所定の布を保持する布押え部と
を備えたミシンであって、
前記各第一固定レールは、前記各第二固定レールよりも長く、かつ前記下軸の下方において前記下軸に対して直交して配設したことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記第一固定レールはシャフトであって、
前記移動部はボールブッシュであることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記第一固定レールはリニアガイドであることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項4】
前記第一移動部材は、
前記各第一固定レールの前記下軸に対して直交する方向の両側において、前記第一固定レールに沿って移動する少なくとも一対の移動部と、
前記各移動部から前記下軸よりも上方に立設する複数の立設部と、
前記各立設部の上部の間に渡設し、前記各第二固定レールを支持する渡設部と
を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載のミシン。
【請求項5】
前記渡設部は、前記各第二固定レールを上面に支持することを特徴とする請求項4に記載のミシン。
【請求項6】
前記第一移動部材を移動する第一移動機構を更に備え、
前記第一移動機構は、
前記各第一固定レールの間において、前記第一固定レールの長手方向に離間する位置に設けた一対のプーリと、
前記一対のプーリを回転駆動するモータと、
前記一対のプーリ間に架け渡し、前記第一移動部材に固定する無端状のベルトと
を備えたことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のミシン。
【請求項7】
前記第一移動部材を移動する第一移動機構を更に備え、
前記第一移動機構は、
モータと、
前記モータによって回転駆動するピニオンギアと、
前記ピニオンギアの回転駆動によって、前記第一移動部材を前記第一固定レールに対して平行方向に往復移動するラックギアと
を備えていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のミシン。
【請求項8】
前記第一固定レールを下方から支持する支持部材を備えていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のミシン。
【請求項9】
前記各第一固定レールは、少なくとも前記下軸に対応する領域において分断して離間した形状を備えていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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